しぶ谷りん「お花やさんのアイドル」 (26)


お店番をしていると、おきゃくさんに「えらいねー」とほめられます。

ほめられるとうれしいので、お店番をします。

ちゃんとお手つだいをすると、お母さんはちょこれーとを買ってくれるし、「りんはおりこうだね」と言ってくれます。

ちょこれーとはすきだし、おりこうと言われるのもすきなので、お手つだいをします。

だから、お店番のお手つだいをするわたしはえらくておりこうなのでした。


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学校から帰ると、まず「ただいま」と言います。

すると、お父さんとお母さんが「おかえり」と言ってくれます。

かぜをひくのはいやなので、手あらいとうがいもわすれません。

手あらいとうがいをしたら、ぼうしとランドセルを自分のへやにおいて、かわりにポシェットをさげて家を出ます。

出ようとしました。

出ようとしたら、お母さんによび止められました。

「凛。宿題は?」

「やった!」

早くあそびに行きたいからうそをつきます。

「嘘でしょ。分かるからね」

すぐにばれてしまいました。

なんでお母さんはわたしのうそが分かるんだろう。




おこられる前に、ごめんなさいをして、自分のへやににげてきました。

今日のしゅくだいはかん字ドリルなので、すぐに終わります。

かん字テストはいつも百点だし、ならってないかん字も少し分かります。

きっとこのしゅくだいは、かん字がにが手な子のためなのだな、と思いました。

でも、そんなことを言ったらかん字がにが手な子がかわいそうだから、言いません。

なんて考えているうちにしゅくだいはおわってしまいました。

わたしはやっぱりゆうしゅうみたいです。




しゅくだいがおわったので、もう一どポシェットをさげてお店の方に行きます。

こんどもまたお母さんによび止められました。

「凛?」

「やった!」

「知ってる。暗くなる前に帰ってくるのよ?」

「うん」

「じゃあ、何時に帰ってくればいいんだっけ?」

「ごじ!」

「正解。じゃあ、気を付けてね」

「行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃい」

そう言って、お店の方から家の外に出ました。

おきゃくさんが花を見ていたので「いらっしゃいませ!」とあいさつもしました。

そういえば、お母さんはなんでわたしがしゅくだいをやったことを知ってたんだろう。

やっぱり、お母さんにはすごい力があるのだと思います。




公園につくと、友だちはもうみんな来ていて、「りんちゃん、おそい」と言われてしまいました。

なので、「しゅくだいやってたんだからしかたないじゃん」と言いかえすと、「りんちゃんはまじめだなぁ」と言われました。

まじめと言われてわるい気はしません。

なので、えっへんとむねをはりました。




今日はジャングルジムであそびました。

公園のゆうぐで、ジャングルジムほど、わたしにゆうりなものもありません。

なぜなら、わたしはしん長が高くて、手が長いから、うんていが得意なのです。

お店に来るおきゃくさんにも「りんちゃんは、すたいるがいいねぇ」とよく言われるくらいだから、よっぽどなのだと思います。

すたいるが何かは分かりません。




それからは、いろんなルールでおにごっこをしました。

こおりおにでは、すぐにつかまってしまって、しばらくたすけてもらえなかったので、ひまでした。

そのつぎの、ドロケイではだいかつやくでした。

わたしはどろぼうチームで、チームのみんながつかまってしまったときに、こっそりこっそり近づいてみんなをたすけました。

してやったり、です。

みんなにほめられました。

やっぱりほめられると気もちがいいです。




友だちが「いったん、休けい!」と言ったので休けいの時間になりました。

ふー、と大きくいきをはいてベンチにすわります。

ちらりと時計を見たら短いハリが五の数字に近づいていて、長いハリが十のところにありました。

たいへんです。

あと十分で帰らなくてはいけません。

ずっと走り回っていたので、へとへとですが、それでもいそがなければいけません。

わたしはほめられるのはすきですが、おこられるのはいやでした。




家をめざして、ぜんそく力で走りました。

きっと今、五十メートル走のタイムを計ったら、六年生にまけないくらいのタイムが出ていたと思います。

それくらい、ぜんそく力で走りました。

お店をとおって家に入ります。

カウンターにいたお母さんの「おかえり」に「ただいま」をかえそうとしたけれど、ぜえぜえといきが出るだけで、声が出ませんでした。

お母さんにちゃんと「ただいま」できなくて、わるい気もちでいっぱいでしたが、とりあえずは手をあらいます。

うがいもします。

そのあとで、またお店の方へ行きました。

「ただいま」

「はい。おかえりなさい」

「走って帰ってきたの」

「うん」

「じゃあ、お母さんご飯作るからお店番お願いしていいかな?」

「お父さんは?」

「配達。ノド、渇いたでしょ?」

「うん。からから」

「お茶、お水、グレープ、オレンジ。何がいい?」

「オレンジ!」

「持ってきてあげるから、お店番お願いね」

「わかった」




少しして、お母さんはやくそくどおりオレンジジュースが入ったコップを持ってきてくれました。

こおりが二つ浮かんでて、わたしのすきな青色のストローがさしてあります。

一気にのんでしまうと、もったいないので、少しずつのみます。

のんだら、いつおきゃくさんが来てもいいように、しゃきっとすわります。

一口目。

しゃきっ。

二口目。

しゃきっ。

三口目をのんで、しゃきっとしようとしたところにおきゃくさんが来ました。

「いらっしゃいませ!!」

「あら、かわいい店員さんね」

かわいい、と言われて少してれてしまいましたが、今は店いんさんなので、しゃきっとします。

「どんなお花をおさがしですか?」

「お嬢ちゃんが選んでくれるの? お見舞い用に持っていきたいんだけど……」

おみまい……おみまい……。

おみまいはどんな花がいいのかな。

うでを組んで考えます。

でも、よく分かりませんでした。

なので、お母さんをよぶことにします。

「しょうしょう、おまちくださいませ!」

そう言って、おじぎをして、キッチンまで走っていきました。




「どうしたの?」

「おきゃくさん!」

「何が欲しいって?」

「おみまいようのお花!」

「じゃあ、凛にはまだ難しいね」

お母さんはそう言ってエプロンを外すとお店の方におりて行きました。




お母さんはおきゃくさんに「おまたせいたしました」と言って、おじぎをしました。

それから、お花のこのみと、よ算を聞いて、てきぱきとえらんでいきます。

お母さんがお花をえらびおわるタイミングでわたしは声をかけました。

「つつむ?」

いっぱいれんしゅうしたので、つつむのはじょうずになりました。

だから、そう聞きました。

「ううん。バスケットにしようか。お見舞いだし」

「じゃあ、リボンだ」

「正解。凛にはリボンをお願いしようかな」

「わかった!」

元気よくへんじをして、ラッピング用のものがおいてあるたなにリボンをとりに行きました。




「もってきた!」

一番すきな、青色のリボンです。

「じゃあ、凛がつけて」

バスケットのまんなかにリボンをきゅっとむすびました。

「はい、よくできました。お客さんに渡してくるね」

「わたしも行きたい」

「ふふ、じゃあ一緒に行こっか」

「うん!」




お店の入り口には、おきゃくさんがまっていました。

お母さんの持っているバスケットを見て、目をきらきらさせています。

わたしがリボンをつけたんだよ、と言いたかったけれど、がまんしました。

「まぁ、素敵。急に来たのに見繕ってもらっちゃって……」

「いえいえ、またのご来店、お待ちしてます」

「ええ、是非とも。かわいいお店番さんもいますし」

あ。きっと、わたしのことだ。

「わたしのこと?」

「そうよー、お嬢ちゃん、お名前は?」

「りん」

「りんちゃんね。りんちゃんはこのお店のアイドルさんね」

「ふふふふふ」

アイドル、と言われて思わず、わらってしまいました。

「じゃあ、また」

「はい。ありがとうございました」

「りんちゃんもまたね」

「うん。ばいばい!」




おきゃくさんが帰って、しばらくすると、お父さんがはいたつから帰ってきました。

「お。今日も店番してくれてたのか」

「うん!」

「お客さんは来た?」

「来た!」

「ちゃんと対応できた?」

「できた!」

「偉いなー。凛はもう一人前だなー」

「ふふー」

「じゃあ、今日はそろそろ閉店にしようか」

「シャッターやっていい?」

「シャッターは重たいし、危ないからだめ。凛は外の鉢をお願い」

「はーい」

「あれ、今日は『えー』とか言わないんだな」

「今日はねー」

「なんか良いことあった?」

「さぁ、ひみつ!」

そう、ひみつです。

お花屋さんのアイドルをやっていることは、お父さんにはないしょです。



おわり

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