的場梨沙「飛鳥が鏡の前で千鳥の練習してる」 (20)

飛鳥「ふっ!」シュババッ

飛鳥「………」

飛鳥「ふむ……包帯の巻き方はもう少し緩めたほうがいいか……」

梨沙「………なにしてんの?」

飛鳥「やあ、梨沙。おはよう」

梨沙「おはよう……で、なに?」

飛鳥「なに、とは」

梨沙「なんで千鳥の真似してるの」

飛鳥「千鳥?」

梨沙「違うの?」

飛鳥「ボクはただ、包帯を巻いた状態で左手から雷を喚び起こす技を繰り出す練習をしていただけだが」

梨沙「千鳥でしょそれ」




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飛鳥「少し共通点があるくらいで、自分の識る範囲のものに当てはめるのは感心しないな」

飛鳥「確かに千鳥はボクも知っているけれど。ボクは今、次の舞台のための準備をしていただけさ」

梨沙「次の舞台?」

飛鳥「あぁ。公演で演じるキャラクターの必殺技が、左腕に眠りし雷帝の力を解き放つというものなんだ」

梨沙「へえ、そうなんだ。じゃあ遊びで千鳥の真似してたわけじゃないのね」

飛鳥「そういうことだね」

梨沙「そっか……疑って悪かったわね」

飛鳥「気にすることはないさ」


心「飛鳥ちゃーん! この前言ってたNARUTOの続き、貸しに来てあげたぞ☆」

飛鳥「あぁ、ありがとう。そこに置いておいてくれ」

梨沙「………」

梨沙「ホントに関係ないのよね? 千鳥」

飛鳥「うん」



仁奈「うおーーっ! バチバチバチ!」

心「お、仁奈ちゃんも飛鳥ちゃんの真似して必殺技の練習?」

仁奈「うちはのきもちになるですよ!」

梨沙「………」

飛鳥「………」

梨沙「うちは」

飛鳥「気のせいだろう」

心「必殺技の設定とか、自分で考えたりしてないの?」

飛鳥「実は、ある程度演者に裁量が認められていてね。むしろ考えることを推奨されているんだ」

心「いいなあそれ♪ 自分でいろいろ考えると、演じる時に気合い入りやすいし☆」

梨沙「どんな設定考えたの?」

飛鳥「そうだな……いくつかあるけれど。まず、強大な技にはそれ相応のデメリットがあるべきだと思ったから」

梨沙「うんうん」

飛鳥「動きが速すぎるが故にカウンターをもらいやすいことにした」

梨沙「千鳥でしょそれ」

飛鳥「?」

梨沙「すっとぼけるな!」

飛鳥「いや、偶然そうなっただけだよ」

梨沙「そんなわけないと思うんだけど……まあいいわ。うん、信じる」

心「ちなみに技の効果音は?」

飛鳥「効果音か。それも考えたよ」

飛鳥「演じるのがボクな以上、ボクらしい要素を入れたいと思ったから」

心「思ったから?」

飛鳥「鳥の鳴き声のような音にした」チチチチチチ

梨沙「やっぱり千鳥じゃないのよ!」

飛鳥「偶然そうなっただけ――」

梨沙「そんなわけないでしょうが! 明らかに影響受けてるでしょ!」

飛鳥「まあ、ちょうど都合よく名前に『鳥』が入っていたから」

梨沙「あー! 認めた! 今認めたわね! パクリだって!」

飛鳥「リスペクトと言ってくれ」

心「もう技の名前まで千鳥な勢いだね♪」

飛鳥「さすがにそれはない」

心「じゃあなんて名前なの?」

飛鳥「雷切」

梨沙「同じ技!!」


飛鳥「まあ、冗談だよ。冗談」

飛鳥「確かにポーズや構図に関して、アレを多少意識していることは否定しない。参考資料として優秀だからね」

飛鳥「けれど、さすがに弱点や効果音、名前までそのまま持ってきたりはしないさ。これはボクと、ボクの演じるキャラクターが紡ぎだす技だからね」

梨沙「本当でしょうね」

心「めっちゃ疑ってるね、梨沙ちゃん」

梨沙「当たり前よ。今までさんざんからかわれてるんだから」

飛鳥「フフ、今度は嘘じゃないさ」

梨沙「じゃあ、本当の技名言ってみなさいよ」

飛鳥「技名か……実は、まだ決まっていないんだ」

心「考え中ってこと?」

飛鳥「あぁ。いくつか使いたい単語は出てきているんだけど、どう組み合わせたものかと思ってね」

飛鳥「ライジング。サンダー。ボルテック。エンドレス。エレキ。ザケルガ。クラッシャー。軽く挙げただけでこれだ」

梨沙「なんかガッシュ混ざってない?」

心「雷帝だからゼオンを連想したんじゃない?」

梨沙「少年漫画に影響受けすぎでしょ」

飛鳥「さすがに全部を繋げる寿限無のような形をとるわけにもいかないし、どうするべきか」

心「エンドレスライジングクラッシャーとかどう?」

飛鳥「思いつきで選んでないかい」

心「こういうのはとっさのフィーリングが大事だったりするんだぞ☆」

梨沙「エンドレスライジングクラッシャーねえ」

仁奈「えんどれすらいじんぐくらっしゃー! 強そうですよ!」

薫「えんどれすらいじんぐくらっしゃー!」

ありす「エンドレスライジングクラッシャー……終わりなく昇る破壊者……」

心「ほら、ちびっ子たちにも好評だし♪」

飛鳥「いつの間にか大勢集まっている……」

薫「あすかお姉ちゃん、エンドレスライジングクラッシャーきらいなの?」

飛鳥「………」

飛鳥「いや。それで……ううん。それがいいかな、ボクも」

梨沙「いいの? まわりに流されてない?」

飛鳥「そんなことはないさ」

飛鳥「いささか美しさには欠ける気もするけれど……直情的なネーミングも、たまには悪くない」

梨沙「ふーん。アンタがいいなら、それでいいけど」

飛鳥「それに。早いところ設定を固めないと、練習に使う時間がなくなってしまう」

心「わお、切実☆」

薫「キメぜりふとかないのかなー?」

ありす「雷鳴とともに散れ――なんてどうでしょう」

梨沙「麒麟でしょそれ」

仁奈「さすけのきもちになるですよ!」

その日の夜


心「にしても、今日の飛鳥ちゃんは冗談多めだったねー」

飛鳥「急に人の部屋に来て、どうしたんだい」

心「いいじゃん、たまには二人きりで語り合おうぜぃ♪」

飛鳥「……まあ、暇だからかまわないけど」

心「それでそれで? いつになく梨沙ちゃんをからかってたけど」

飛鳥「ボクのキャラじゃないと、そう言いたいのかい」

心「まあ、ぶっちゃけそうかなーって。今まで、そういうことしてなかったし♪」

飛鳥「………そうだね。それは否定しない。むしろボクが梨沙にからかわれていた回数のほうが多いだろう」

飛鳥「にもかかわらず、今日のボクがああだった理由を挙げるとするなら……」

心「……するなら?」

飛鳥「そういう気分だった、としか言えないね」ケロリ

心「っておい☆ 溜めといてそれかい!」

飛鳥「仕方ないだろう。事実なんだから」

飛鳥「ボクの中の小悪魔の主張が強かった。今日はそういう日だったんだ」

心「………ふうん♪」

飛鳥「その意味深な笑みはなにかな」

心「べっつに♪ たぶん、飛鳥ちゃんがそれだけ心を許してるんじゃないかなあとか、そういうことは特に思ってないぞ☆」

飛鳥「思ってるね、その言い方は」

心「フハハ☆ 細かいことは気にすんな♪」

心「とりあえず、はぁととしては……いろんな顔の飛鳥ちゃんが見られるだけでうれしいし、楽しいから☆」ニコニコ

飛鳥「………」

飛鳥「そうか。まあ、期待に沿えるかどうかは理解らないけどね」フッ

飛鳥「ただ、『二宮飛鳥はこういうヤツだ』と簡単に捉えられるのは癪に障るから……今後も、意外性を生み出せるようにはしていこう」

飛鳥「いうなれば、二宮飛鳥像の……革命とも言えるかな」フッ

心「………」


心「サスケじゃん」

飛鳥「今のは狙ってなかったんだが」



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
飛鳥の新SRが完全に千鳥だったので書きました。ああいう少年漫画っぽい表情ずっと見たかったので純粋にうれしいです。

シリーズ前作:衛藤美紗希「女子力アップよ!」 二宮飛鳥「じょ、女子力……」

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