ラフィエル「今日はサターニャさんと初デート」 (55)


ラフィエル「うーん、おかしい所とかないですかね……」

ラフィエル「サターニャさんに告白してから2ヶ月」

ラフィエル「あれからサターニャさんすっかりヘタレちゃって、なかなかデートに誘ってくれなかったんですよね……」

ラフィエル「でもようやくデートにこぎつけたんですから、何としても成功させてみせます!」

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ラフィエル「待ち合わせ場所に着きましたけど……」

ラフィエル「サターニャさんまだ来てないですね……」

ラフィエル「早く、来てくれないませんかね」ソワソワ


サターニャ「ごめん遅くなって、待った?」

ラフィエル「サターニャさん!」

ラフィエル「いえ、ちょうど来た所です」

サターニャ「そう、それなら良かった」ホッ

ラフィエル「ふふふ」ニコニコ

サターニャ「何笑ってるの、私、何かおかしい所ある?」キョロキョロ

ラフィエル「いえ、ただ私がサターニャさん来ないかな?って考えたらすぐに来たから、何だか嬉しくなってしまって」

サターニャ「当然じゃない!私はラフィエルのいる所だったらどこにでも湧くわ!」

ラフィエル「サターニャさん、それ私が前に言った言葉ですよね」


ラフィエル「いきなりですけど、お腹が空きましたね」

サターニャ「そう言えば、もうお昼ね」

ラフィエル「サターニャさんは何か食べたいものとかあります?」

サターニャ「特にないかな、ラフィエルの好きなものでいいわよ」

ラフィエル「それでは、最近出来た喫茶店に行きます?」


―喫茶店―

カランコロン イラッシャイマセー

ラフィエル「ここ料理が美味しくて有名で、一度入ってみたかったんです」

サターニャ「結構、オシャレな所ね」

店員「お客様、こちらのカウンター席でよろしいですか?」

ラフィエル「いえ、出来たらテーブル席の方が……」

店員「かしこまりました。それではあちらの窓際の席へどうぞ」

ラフィエル「ありがとうございます」


店員「ご注文はどうなさいますか?」

ラフィエル「私、オムライスでお願いします」

サターニャ「じゃあ、私も同じので」
店員「かしこまりました」


ラフィエル「お昼時ですから、結構込んでますねー」

サターニャ「そうね。ところで、どうしてカウンター席にしなかったのよ」

ラフィエル「だってテーブル席でしたら、サターニャさんの顔を見ながら食事できるじゃないですか」

サターニャ「何よそれ、照れるじゃない」///


ラフィエル「ところでこの後はどうしましょうか?」

サターニャ「そうね……、でもこれと言って予定は立ててないからね……」

ラフィエル「もう、サターニャさんからデートに誘ってくれましたのに……」

サターニャ「うぅ、ごめん……」ショボーン

ラフィエル「いえ、誘って下さっただけでもうれしいです。そうですね、じゃあ映画でも見ませんか?」

サターニャ「映画?面白そうね!」ワクワク


店員「こちら、ご注文のオムライスになります」

ラフィエル「来ましたよサターニャさん。美味しそうですね!」

店員「ご注文は以上でよろしいですか?」

ラフィエル「あれ、サターニャさんの分がまだですね……」

ラフィエル「すみません、もう1つ注文していたんですけど……」

店員「あれ?すみません。今すぐお持ち致しますので」


ラフィエル「サターニャさん、お先にどうぞ」

サターニャ「いいわ、ラフィエル。だってお腹空いてるんでしょ」

ラフィエル「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて」


ラフィエル「サターニャさん、覚えています?」

ラフィエル「私が告白した時の事」

サターニャ「ええ、忘れるはずないじゃない」

ラフィエル「サターニャさん、告白してからヘタレ具合がひどいですよ」

サターニャ「ヘタレって……、だって告白されてから余計ラフィエルの事を意識するようになっちゃって」///

ラフィエル「少しは治ったかと思いましたけど、ここ1ヶ月近く全然変わりませんね」

サターニャ「ごめん……」ショボーン

ラフィエル「少しずつ治していきましょう、何回もデートを繰り返せばきっと治ります」


店員「大変お待たせ致しました、こちらオムライスでございます」


店員「ありがとうございましたー」

ラフィエル「映画の時間まで少し時間がありますから、ショッピングでもしましょうか」

サターニャ「いいわね、ラフィエルは何を見たいの」

ラフィエル「そうですね……、何かアクセサリーとか見たいですね。せっかくサターニャさんとの初デートなんですから、何か記念になる様なモノを買いましょう」

サターニャ「えっ、記念だなんて、そんな大袈裟な」///

ラフィエル「サターニャさん……、今日という日を私がどれだけ待ったかわかります?」ジトー

サターニャ「ごめんなさい」


―雑貨屋―

ラフィエル「どれも可愛らしいですねー」

サターニャ「ラフィエル、これなんて良いじゃない?」

ラフィエル「うーん、流石に逆十字はちょっと……」

サターニャ「こうすれば普通の十字架よ!」

ラフィエル「ひっくり返せば良いってものでもないかと……」


ラフィエル「あっ!これ良いですね」

サターニャ「コウモリのヘアピン?私のと同じじゃない」


ラフィエル「どうです、似合ってます?」

サターニャ「いいけど、天使が身に着けて大丈夫なの?」

ラフィエル「東洋の一部ではコウモリは縁起物としても扱うらしいですし、逆十字よりかは大丈夫かと」

店員「お客様、お似合いですね」

ラフィエル「これ、ペアルック用なんです」

店員「それは良かったですね。お相手さんも同じものを付けてるんですか?」

サターニャ「そうよ、私の髪にも付いているでしょ。ラフィエルとお揃いのものが」

ラフィエル「そうなんです、彼女とお揃いなんです」

店員「彼女……?」


店員「ありがとうございましたー」

ラフィエル「今度はサターニャさんのも買いましょうね」

サターニャ「私、何が似合うかな?」

ラフィエル「そうですねー、私と同じ十字架のピンを付けます?」

サターニャ「いや、それラフィエルの逆十字と同じだから……」



ラフィエル「あっ、あそこにいるやさぐれた金髪は、ガヴちゃんじゃないですか」

ラフィエル「ガヴちゃーん!」

ガヴリール「ああ、ラフィエルじゃん、何してるの?」

ラフィエル「見ての通り、サターニャさんとデートです。これから映画を見に行くんですよ」ニコニコ

サターニャ「ちょ、ラフィエル、こんな大通りで恥ずかしいじゃない」///
ガヴリール「……そうか」


ラフィエル「珍しいですね、お休みの日にガヴちゃんが外に出ているなんて」

ガヴリール「まぁな、ずっと家にいたんじゃ塞ぎ込んじゃうからな」

サターニャ「へー、あんたもそういう事考えるんだ。ならここは私と勝負なんてどう?」
ガヴリール「ところでラフィエル、時間は大丈夫なのか?」

サターニャ「えっ、無視!?」

ラフィエル「あっ、そろそろ時間ですね」

ラフィエル「ではガヴちゃんまた明日学校で」

ガヴリール「ああ……」


ガヴリール「ラフィエル!」

ラフィエル「どうしました、ガヴちゃん?」

ガヴリール「……本当に楽しそうだな」

ラフィエル「当然です、だって待ちに待ったサターニャさんとのデートですよ」

ガヴリール「そうだったな……。その、何だ。何か力になれる事があったらいつでも言えよな」

ラフィエル「?」


ラフィエル「」プクッ

サターニャ「ラフィエル、さっきガヴリールと別れてから、ずっと機嫌悪いけど……」

ラフィエル「……サターニャさん、私とのデート中なのにガヴちゃんと勝負しようとしてました」

サターニャ「もしかして、やきもち?」

ラフィエル「私がサターニャさんにやきもちを焼くなんてありえません!」

サターニャ「本当にごめん、次からは気を付けます……」

ラフィエル「……しょうがないですね、今回だけは許してあげます」


ラフィエル「映画良かったですね」

サターニャ「まさか、ホラーものだったとはね……」

ラフィエル「サターニャさん途中から私の腕をずっと掴んで離さなかったですもんね」

サターニャ「ちょ、そ、そんなことないわよ。ただそこにちょうどラフィエルの腕があったから掴んだだけよ」///

ラフィエル「私は、そんなサターニャさんの怖がる表情をずっと見てましたよ」

サターニャ「アンタは映画を見てなさいよ」


ラフィエル「今日は本当に楽しかったですね」

サターニャ「私もすごい楽しかった!なんでもっと早くデートしなかったのかしら―」

ラフィエル「……」ジトー

サターニャ「そ、そうね。私が中々誘わなかったのが原因だったわね」アセアセ

ラフィエル「サターニャさん……、あの……、またデートしましょうね」

サターニャ「もちろんよ!」


ラフィエル「それでは、サターニャさん、また明日学校で」

サターニャ「気を付けて帰るのよ」

ラフィエル(そうだ明日、サターニャさんの為にお弁当を持って行きましょう)

ラフィエル「そうだサターニャさん―」


ポツーン


ラフィエル「サターニャさん、すぐにいなくなっちゃうんですね……」


その夜

ラフィエル「今日はとても楽しかったですねー」

ラフィエル「今度のデートはどこに行きましょう」

ラフィエル「明日学校でサターニャさんに会ったら話してみましょうか」



ラフィエル「サターニャさんがいないだけでこんなに寂しいんですね」

ラフィエル「学校に行くまで会えないんですね……」

ラフィエル「どうせなら、学校に行く時もサターニャさんと一緒に行きたいですね……」


翌朝

サターニャ「ラフィエル、遅いじゃない!」

ラフィエル「サターニャさん、どうして私のマンションの前に……」

サターニャ「たまたまラフィエルのマンションの前を通ったから、せっかくだから一緒に行こうと思ってね」

ラフィエル「ふふふ、ありがとうございます。わざわざ遠回りして家に寄って頂いて」ニコッ

サターニャ「べ、別にそんなんじゃないわよ。ただ今日は何となく遠回りしようと思っただけよ」

ラフィエル「そんなサターニャさんにはお昼にこのお弁当を差し上げます」

サターニャ「え、どうしたのよコレ」

ラフィエル「私が作ったんですよ、お口に合うかは分からないですけど……」

サターニャ「ラフィエルが作った物でしょ、私の口に合わないはずがないじゃない」

ラフィエル「」///


お昼休み

ラフィエル(待ちに待ったお昼休み。サターニャさんを誘って2人で食べましょう!)

1ーB

ラフィエル「サターニャさん」

ヴィーネ「あら、ラフィどうしたの?」

ラフィエル「その、サターニャさんとお昼を食べようかと思ったんですけど……」キョロキョロ

ラフィエル「見た所教室にはいなさそうですね」



ヴィーネ「……ラフィ、サターニャは―」

サターニャ「ラフィエルじゃない、どうしたの?」

ラフィエル「どうしたの?じゃないですよ、どこ行ってたんですか!お昼を持ってきたって言ったじゃないですか」

サターニャ「ふぇ、そんな大声で言ったら皆に聞こえちゃうじゃない」///

ラフィエル「別にいいじゃないですか、隠す事でもないじゃないですし」

サターニャ 「もぅ、ラフィエルったら……」///

ラフィエル「それではヴィーネさん、また後で」

ヴィーネ「……」


ヴィーネ「ねぇ、ガヴ……」

ガヴリール「ラフィの事か……」

ヴィーネ「私、どうしたらいいのか……」

ガヴリール「……そろそろ限界だな」


放課後

サターニャ「ねぇラフィエル、私と一緒にいて楽しい?」

サターニャ「昨日だって本当は私がデートプラン考えなきゃいけなかっただろうし……」

サターニャ「今日も美味しいお弁当を用意してくれて……」

サターニャ「それに比べて、私、ラフィエルに何にもしてあげられないし……」

サターニャ「せっかく告白してくれたのに、私ラフィエルを幻滅させてないか不安で……」

ラフィエル「サターニャさん……」

ラフィエル「そんなことないですよ、私はサターニャさんが側にいてくれるだけで幸せです」ニコッ

サターニャ「……」ショボーン

ラフィエル「そんな、悲しい顔しないでください。そうです、駅前に美味しいメロンパンのお店があるらしいですよ、一緒に行きましょう」


タプリス「あれ、白羽先輩じゃないですか?」

ラフィエル「あれ、タプちゃんどうして人間界に?」

タプリス「やっと心の整理が就きましたので、皆さんのお顔を伺いに。白羽先輩は今帰りですか?」

ラフィエル「そうですよ、これからサターニャさんと一緒にメロンパンを買いに行くんですよ」



タプリス「……白羽先輩、何言ってるんですか?」





タプリス「胡桃沢先輩はもういないじゃないですか……」


ラフィエル「何言ってるのタプちゃん。サターニャさんなら私の隣にいるじゃないですか」

タプリス「先輩……、私に見えるのは白羽先輩おひとりだけですよ」

ラフィエル「そんなことないです、だってずっとずっと私の側にいるじゃないですか」



ガヴリール「ラフィ」

ラフィエル「ガヴちゃん!」



パシン!

タプリス「天真先輩!どうしたんですか、白羽先輩を叩くなんて!」



ガヴリール「いい加減目を覚ましてくれ!」



ガヴリール「サターニャはもういないんだ……」


1ヶ月前

サターニャ「えっ、デート!?」

ラフィエル「そうです、だって私たちが付き合い初めて1ヶ月経ちますけど、まだどこにも行ってないじゃないですか」

サターニャ「だって、その、まだ早いんじゃないかな」///

ラフィエル「そんな、付き合う前から2人で遊んだりしてたじゃないですか」

サターニャ「いや、それとこれはまた別で」///

ラフィエル「もう、今までの逞しいサターニャさんはどこへ行ったのやら」

サターニャ「その、ごめんなさい……」ショボーン

ラフィエル「いいですよ、私はサターニャさんと一緒にいれるだけで満足ですから」

サターニャ「ラフィエル……」



サターニャ「じゃあ2ヶ月!」

ラフィエル「?」

サターニャ「付き合い始めて2ヶ月の記念でデートしよう!」

サターニャ「それくらい経てば、私もラフィエルをリードできる様になるからさ……」

ラフィエル「サターニャさん……」

ラフィエル「分かりました。それじゃあ1ヶ月後楽しみにしてますね」ニコッ


そんな事を話ながら私たち2人は歩いていました

この時はデートが出来ることを疑いもしませんでした

だってすぐ後にあんなことが起きるなんて


ワン ワン!

ラフィエル「サターニャさん、あそこに!」

サターニャ「えっ、どこ?」

サターニャ「あっ、いつもの犬じゃない!」

犬「ワン、ワン!!」

ラフィエル「ふふ、サターニャさんがメロンパンを持ってると思って駆けてきましたね」

サターニャ「くっくっくっ、メロンパンは持ってないけど、ここで会ったが100年目。今日こそ決着を付けてあげるわ」


いつものことでした

いつもと変わらない日常

それがずっと続くと

そう思っていた



犬目掛けてトラックが突っ込んで来るまでは


サターニャ「えっ、何であのトラック止まらないのよ……」

サターニャ「このままじゃ!」ダッ

ラフィエル「サターニャさん!!」


サターニャさんは一目散に走りだしました



犬はサターニャさんが突き飛ばし助かりました





でも、代わりにサターニャさんが


ラフィエル「サターニャさん!!」

サターニャ「ラフィエル……」

サターニャ「私ったら何やってるんだろうね……、悪魔なのにたかが犬一匹の為にトラックにはねられるなんて……」

ラフィエル「サターニャさん!しっかりしてください!今すぐ、病院へ!」

サターニャ「ねぇラフィエル……、私がいなくなったら皆泣くのかな……?」

ラフィエル「なに言ってるんですか!!冗談でもそんなこと言わないで下さい!!私とデートするってさっき言ったじゃないですか!!」

サターニャ「ごめんね、ラフィエル……せっかく付き合い始めたのに……、何もしてあげられなくて……」

ラフィエル「サターニャさん……、お願いですから……、私を悲しませないでください……、ひとりにしないでください……」ポロポロ

サターニャ「私って死んだらどうなるのかな……?彼女を泣かすなんて……悪魔的行為をやっちゃったんだから……来世も大悪魔かな……」

ラフィエル「サターニャさん!!!」



サターニャ「ラフィエル、私の分まで生きて……幸せになって……」


サターニャさんがいなくなった

当たり前だった日常は簡単に壊れた

きっとこれは私への罪なんだろう

ガヴちゃんやヴィーネさん、タプちゃんも辛いだろうに私を励ましてくれた

私は得意の作り笑顔を振る舞った

それでも1人になると悲しさと孤独で押し潰されそうになった



そんな時だった、彼女が私の前に現れたのは


サターニャ「何、泣いてるのよラフィエル」

ラフィエル「サターニャさん……?」

サターニャ「私ならずっとラフィエルの側にいるわよ」



自分もどこかでは分かっていた

これは追い詰められた私が見ている幻だって

それでも……



ラフィエル「サターニャさん、どこ行っていたんですか?もうどこにも行かないでくださいね」



壊れてしまった私はこの幻に心を委ねるしかなかった


ラフィエル「ねぇガヴちゃん。私、嫌な夢を見たんですよ」

ラフィエル「サターニャさんがトラックに轢かれて、私たちの前からいなくなる夢です」

ラフィエル「でも夢で本当によかったです」ニコッ

ガヴリール「ラフィ……いい加減にしてくれ、お前も辛いだろうけどな、私だって―」

ラフィエル「そうそう聞いてくださいガヴちゃん、この間、サターニャさんがですね、ついに私をデートに誘ってくれたんですよ!」

ラフィエル「そうですよね、サターニャさん」ニコニコ



ガヴリール「……サターニャがそこにいるのか?」

ラフィエル「どうしました?ガヴちゃん。サターニャさんなら私のすぐ側にいるじゃないですか。もしかしてゲームのし過ぎで寝ぼけていますね」



ガヴリール「……ごめん、ゲームのし過ぎで寝ぼけてたみたいだ、私ったら何言ってるんだろうな」ハハハ


ヴィーネ「えっ、ラフィが幻を見ている?」

ガヴリール「ああ、ラフィはサターニャがいなくなったという事実を受け止められずに自らサターニャの幻を生み出してるんだ」

ガヴリール「一応天使学校次席卒業だからな。持っている力自体は凄く大きいはずだ。その気になれば自分の思い通りの幻を作る事ぐらい出来るはずだ」

ガヴリール「ただ、それを制御できずに幻だと認識せずサターニャだと思い込んでいるのだろう……」

ヴィーネ「じゃあ何で真実を教えてあげないの!このままじゃラフィは……」



ガヴリール「教えようとはしたさ。ただ、ラフィの今までに見たことがない笑顔を見ていたら言い出せなくて……」

ヴィーネ「ガヴ……」




ラフィエル「……ガヴちゃん、何を言ってるんですか?」

ガヴリール「お前の側にいるサターニャは幻だ。私もタプリスも見えていない」

ラフィエル「嘘です。サターニャさんは昨日も私と一緒にデートしてたんですよ。ガヴちゃんと会った時もいたじゃないですか!」



ガヴリール「ラフィ……、サターニャといた時の行動をよく思い出すんだ」



ラフィエル「サターニャさんとの……行動?」


店員「こちらのカウンター席でよろしいですか?」

この時、店員がカウンター席を勧めたのはお客が私1人しか見えなかったから


店員「こちら、ご注文のオムライスになります」

この時、店員が1個しか持ってこなかったのはサターニャさんの注文が聞こえていなかったから


店員「お相手さんも同じものを付けてるんですか?」

この時、サターニャさんが隣にいたのに店員が訪ねたのはサターニャさんが見えなかったから


店員「彼女……?」

この時、店員が反応したのは女性同士という事ではなくて、私が指し示した先に誰もいなかったから


ラフィエル「早く、来てくれないませんかね」
サターニャ「私はラフィエルのいる所だったらどこにでも湧くわ!」

ラフィエル「出来たら、学校に行く時もサターニャさんと一緒に行きたいですね」
サターニャ「別に、ラフィエルと一緒に学校に行きたいからマンションの前で待ってた訳じゃないわよ」

サターニャさんが現れたのは、私が望んだから。


ラフィエル「サターニャさん、告白してからヘタレ具合がひどいですよ」
ラフィエル「少しは治ったかと思いましたけど、ここ1ヶ月近く全然変わりませんね」

変わらないのは当たり前、だって私の中のサターニャさんは1ヶ月前





サターニャさんがいなくなった時で止まっているのだから


ラフィエル「あ……」ポロポロ

ラフィエル「サターニャさん……、どうして私を……1人に……」

タプリス「白羽先輩……」

ガヴリール「ラフィエル、お前が辛いのは痛いほど分かる。だが現実と向き合わなきゃいけないんだ」

ラフィエル「サターニャさんが……いない―」





ラフィエル「なら、私からサターニャさんに会いに行けばいいじゃないですか―」


タプリス「白羽先輩が消えました……」

ガヴリール「くそっ、ラフィのやつ、神足通で!」

ガヴリール「タプリス、手分けをして探すんだ!」

タプリス「わ、分かりました!」

ガヴリール「ヴィーネにも連絡を!」

ガヴリール「もしもし、私だ。ラフィが―」

ガヴリール(ラフィ、頼む、早まらないでくれ……)


2ヶ月前

サターニャ「手紙に書いてあった場所はここね」

サターニャ「まったく、このサターニャ様の下駄箱に手紙を仕込んでおくなんていい度胸してるじゃない」

サターニャ「それに、名前も書かずに『放課後、屋上へ来てください』なんて常識知らずにもほどがあるわね」

サターニャ「出てきなさい、このサターニャ様が相手して―」



ラフィエル「サターニャさん!」



サターニャ「ラフィエルじゃない、どうしたのこんな所で?」

ラフィエル「手紙、読んでもらえました?」

サターニャ「手紙って、これラフィエルが書いたの!?」

ラフィエル「そうですよ」

サターニャ「まさか、あんたが私の相手をするなんてね、いいわ、受けてあげる!」



ラフィエル「……」

サターニャ「どうしたの、早く来なさいよ」



ラフィエル「サターニャさん……」

ラフィエル「私……」





ラフィエル「サターニャさんが好きです!!」


サターニャ「好きって……、そりゃあ私もラフィエルの事は好きだけど……」

ラフィエル「サターニャさんのその好きは、友達としてですよね」

サターニャ「そりゃあ……他に何があるっていうのよ」

ラフィエル「私はサターニャさんの事恋人として好きなんです!」

サターニャ「ふぇ」///

サターニャ「何よそれおかしいじゃない。だってアンタと私は天使と悪魔でしかも女同士じゃない」

ラフィエル「そんなこと分かっています!」

ラフィエル「それでも、サターニャさんを見ているとこの胸のドキドキが止まらないんです……」

サターニャ「……」


ラフィエル「覚えています?私とサターニャさんが初めて会った時の事……」

ラフィエル「あの時、サターニャさん、犬とパンの取り合いをしてましたね」

ラフィエル「私にとってそれは退屈だった日常に輝きを導いてくれたんです」

ラフィエル「最初はサターニャさんをからかうのが楽しみでした」

ラフィエル「それでもサターニャさんは、そんな私に対して、離れることなく、いつも側にいてくれて、付き合ってくれて、遊んでくれて……」

ラフィエル「そんな日々を過ごしていく内に、私の中でサターニャさんなしの日常は考えられないものになっていました」



ラフィエル「天界にいた頃は誰かを好きになるという感情は持つことがありませんでした」

ラフィエル「天界ではガヴちゃんのように私と対等に付き合ってくれる人もいましたけど、家柄故に私を好きと言ってくれる人の誰もが私ではなく私の家を見ていました……」

ラフィエル「そんな中、下界に降りて初めて感じたこの感情……」

ラフィエル「私の心の中に留めておくだけでなく、しっかりサターニャさんに伝えたかったんです!」



サターニャ「……」



ラフィエル「やっぱり、無理ですよね……」

ラフィエル「ごめんなさい、貴重な時間を取らせてしまって……」

ラフィエル「それでは、また明日……」



ラフィエル「あの、サターニャさんさえ良ければ、これからも今までと同じ様に仲良くして下さいね……」





サターニャ「ちょっと待ちなさいよ、ラフィエル!!」


ラフィエル「離してください、今の私の顔をサターニャさんに見られたくないです!」



サターニャ「確かに最初は私をからかう変な天使が来たと思っていたわ」

サターニャ「私が邪険に扱っても、いつでも、どこでも私の前に現れた」

サターニャ「ずっと、悪魔である私を見ていてくれた」

サターニャ「次第に迷惑という感情はなくなっていたわ」

サターニャ「それどころか学校がある日はラフィエルが今日どんなことするのかなって楽しみになってきたわ」

サターニャ「そんな日々を過ごしていたら、次第にラフィエルの事が気になってきてね……」

サターニャ「私も、ラフィエルと一緒にいる時、特別な気持ちを感じてたの」

ラフィエル「えっ……」

サターニャ「でも、ラフィエルの気持ちを聞いて初めて分かったの」



サターニャ「私のこの気持ちも、きっとラフィエルのと同じだって」





サターニャ「私もラフィエルのことが好き、恋人として」


ラフィエル「サターニャさん……」グスッ

サターニャ「もう、何泣いてるのよ、せっかくの可愛い顔が台無しじゃない」ニコッ





現在 ―学校の屋上―

ラフィエル「ここはあの日から変わりませんね……」

ラフィエル「サターニャさんがいなくなっても……」

ラフィエル「ねぇ、サターニャさん……」



ラフィエル「私、疲れました」


ラフィエル「天使が自殺なんて凄い悪魔的行為ですね」

ラフィエル「そんな事をすれば来世で悪魔になれるかもしれませんね」

ラフィエル「そうすればまたあなたに会えますね」





ラフィエル「さよなら、ガヴちゃん、ヴィーネさん、タプちゃん……」





ヴィーネ「ガヴ見て!屋上にいるの、あれラフィじゃないよね……」

タプリス「白羽先輩……何をしようとしてるんですか……」

ガヴリール「ラフィ!!」




ラフィエル(飛び降り自殺をする時って、永遠の様に感じられるって聞いたことがありますけど本当なんですねー)

ラフィエル(あっ、下の方でガヴちゃん達が何か叫んでますねー)



ラフィエル(もうお別れですか……)

ラフィエル(思えば下界に来てから楽しいことばかりでしたね……)

ラフィエル(皆で海に行ったり、ハロウィンで仮装したり、クリスマスパーティしたり、そうだ、タプちゃんと一緒にタコパもしましたね……)

ラフィエル(ガヴちゃんがいて、ヴィーネさんがいて、タプちゃんがいて、そして……)



ラフィエル(サターニャさんがいて……)



ラフィエル(死んじゃったら、そんな楽しい時間を過ごした場所にもう来れないんですね…………)



ラフィエル(そういえば、最後にサターニャさんが言ってましたね……)





ラフィエル(私の分まで生きて……幸せになって……って……)






ラフィエル「サターニャさん!!」







「なにやってんのよ!!」


ラフィエル「えっ?ここは屋上……」

ラフィエル「私、さっきここから飛び降りたはずじゃ……」





「全く、あんたがそんなんじゃ、転生も出来ないじゃない」



ラフィエル「サターニャ……さん!」

サターニャ「言ったじゃない、私の分まで生きて幸せになってって」

ラフィエル「サターニャさん、どうして……ここに……」

サターニャ「言ったでしょ」





サターニャ「私はラフィエルのいる所ならどこにでも湧くって」


サターニャ「可愛かったわよ、お揃いのヘアピン」

サターニャ「怖かったわね……、ホラー映画……」

サターニャ「美味しかったわよ、お昼のお弁当」

サターニャ「嬉しかったわよ、側にいてくれるだけで幸せって言ってくれて」

サターニャ「本当は、ラフィエルの側には本物の私がいたはずだったのにね……」



サターニャ「それでも1日だけだったけど楽しかったわよ」

ラフィエル「サターニャさん……もしかして昨日からずっと……」

サターニャ「神って奴がね、最後に天使的行為をしたから、霊として下界に行ってもいいって言ってね」

ラフィエル「それじゃあ!」





サターニャ「でも、そろそろ時間かな」

ラフィエル「えっ……」



サターニャ「決まりとしてね現世に干渉はしちゃいけないことになってるみたい」

ラフィエル「それじゃあ、私を助ける為に……」

サターニャ「だって、大好きな彼女がね自殺しようとしていたら止めないとね。ガヴリール達にまた怒られちゃう」

ラフィエル「サターニャさん……、消えかかって……」



サターニャ「ラフィエル! 私に見合う位の天使になるまでに死ぬんじゃないわよ!」

サターニャ「そんな事したら、このサターニャ様が許さないからね!!」

ラフィエル「サターニャさん!!」




「ラフィエル、こんな私と付き合ってくれて本当にありがとうね」


「おい、ラフィしっかりしろ!!」

「目を覚まして、ラフィ!!」

「白羽先輩!!」



ラフィエル「ガヴちゃん……、ヴィーネさん……、タプちゃん……?」

ガヴリール「ラフィ!気が付いたのか!」

ラフィエル「私、一体……」

ガヴリール「ラフィ、お前屋上から飛び降りたんだ」

ガヴリール「ただ、謎の影がお前を助けたのが見えた」

ラフィエル「影ですか……」

ガヴリール「私達がここに来た時にはその影はもういなくて、お前が倒れていたんだ」

ラフィエル「そうですか……」



ヴィーネ「そういえば、ラフィの側にこんな物が落ちていたわ」



タプリス「コウモリのヘアピン?白羽先輩が今付けているのと同じですね」

ガヴリール「コレって……」


ラフィエル「全く……」

ラフィエル「あの人は本当に駄目な悪魔ですね。自分を顧みず犬を助けたり、死んでもこんな駄天使を助けようとしたり」

ラフィエル「それでも、私は―」

ラフィエル「あの人のそんな所に惹かれたんですけどね」ニコッ

ガヴリール「ラフィ……」

ラフィエル「皆さん、心配をかけてごめんなさい」





あれから私の側にサターニャさんが現れることはありませんでした

それでも、私は生きていこうと決めました

私の周りにはガヴちゃん、ヴィーネさん、タプちゃんもいます



それに……





「ねぇ白羽さんが付けているコウモリのヘアピン可愛いね」

ラフィエル「ありがとうございます。これ、大事な人から頂いた物なんです」ニコッ



サターニャさんが見守ってくれているはずですから



END


ここまで読んでくれた人、ありがとうございます。

SSって初めて書いたけど、やっぱり難しいね

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