衛兵「王殺し?」 (9)

衛兵「こいつが?」

守衛「あぁそうだ。見ろよ狼みてぇに睨んできやがる」

衛兵「もっとおっかねぇ奴と思ったが…まだガキじゃねぇか」

守衛「よせよせ、細い腕だが木製の腕輪くらい砕くぞ」

衛兵「そんな気になるかよ…ほら立て!」

守衛「ほら行ってこい、お前が殺し損ねた"王"がお呼びだ」

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衛兵「囚人をお連れしました!」

大総統「ご苦労、下がっていいぞ」

衛兵「は、しかし…」

大総統「"下がってよろしい"」

衛兵「!! は、はぃ!」タッタッタッ

大総統「…やれやれ、歳のせいか皆が私を老人扱いしようとする」

大総統「そこまで老け込んだつもりは無いのだがな、ハッハッハッハッハッハッ!!」

大総統「…いつまでだんまりを決め込むつもりだ?」

大総統「"王殺し"くん?」

王殺し「───滑稽だったのでな」

王殺し「ここいらが潮時と牢で腹を括っていたのだが」

王殺し「"王"が呼んでいると聞いて来てみれば、つまらぬ話を語るばかり」

王殺し「気が済んだか?ならばこの首を撥ねて終わらせろ」

王殺し「まぁ、まだ死にたいのなら別だが」

大総統「……大胆不敵だな」

大総統「なぁ王殺しよ、お前とは話がしたかったのだ」

大総統「生きておれば、いずれはこの私をも討ちに来るのは分かっておったからな」

大総統「私は今、久方振りに胸が躍っておる」

王殺し「……」

側近「閣下、そろそろ…」

大総統「ん? あぁ、もうそんな時間か」

大総統「いやすまんな、立場ゆえ仕事が多くてな」

大総統「また後日ということだな。彼を牢へお送りしたまえ」

衛兵「は!」

衛兵「行くぞ、立て」

王殺し「……」

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守衛2「お疲れ、交代の時間だ」

守衛1「おぅ、お疲れさん」

守衛2「捕らえて2日か…様子は?」

守衛1「2人で仲良くやってるよ…さっきはうるさかった」

守衛2「待て、2人?」

守衛1「あぁ、大総統の命でな。内一番の女囚は知ってるだろ?」

守衛2「あの"女帝"さんか?なんでまた…」

守衛1「独りじゃ寂しかろうと、誰かあてがってやれとのご命令さ」

守衛1「ウチの女囚からとびきりのベッピン当てたわけよ」

守衛2「とびきりの糞ババアだろ」

守衛1「違いねぇ…。まぁ静かにしてるようだし、好きにさせとけよ」

守衛2「あぁ、そうするよ」

守衛1「んじゃ、あと頼むわ」

守衛2「…」

『…ィ』

守衛2「…ん?」

『オイ』

守衛2「あ、あぁ、なんだ?」

『…コレをどけろ』

守衛2(コレ…?)

守衛2「あぁなるほど。流石の"王殺し"もじゃじゃ馬女には手を焼いたか?」

守衛2「悪いがそれは出来ん。大総統閣下直々の命なんでな、お前に女をあてがえと」

『…女?』

守衛2「うん?」

『女ならもう居らん』 

『俺に取った首を眺める趣味は無いんでな』

『牢の女帝、…骨の無い"王"だった』

守衛2「…は?ちょ、っ…お前っ」

『あぁそれと…拭く物をくれ』

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