女「こ、これは私が待ち望んでいた理想の告白っ!?」 (77)

男「胸がいっぱいに膨らむような。風をどこまでもきっていくような」

男「そんな日々だった」

男「君とだったら坂道をどこまでも転がっていったっていい。そう思えたんだ」

女「…………」

男「女さん」

男「好きです。俺と付き合ってください」

女「……ごめんなさい」

男「ど、どうして!」

女「人が自転車のタイヤに空気入れてる時に言う?」

シュポシュポ…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1489931452

校長先生「今年は特別な年です。ニュースでも騒がれているように……」

女「校長先生の話ながいなぁ。ちょっと退屈」

女友「まぁまぁ。ちゃんと聞いてあげなって」

女「もっと刺激のある内容ならいいのに」

女友「女はわがままだなぁ」

校長先生「勉学に勤しみ。運動に励み。後悔のないような学生生活を送るよう……」

男「女さん!!!!!」

校長先生「!?」

男「好きです!!!俺と、付き合って下さい!!!」

女「あの、男くん?」

校長先生「君!何事だ!」

男「後悔のないような学生生活を送れと先生がおっしゃいました!!!」

校長先生「はっ……!」ジーン…

校長先生「君、壇上にあがりたまえ!!」

女「ちょ、ちょっと。なにこの展開」

女友「よかったじゃん願いが叶いそうで」

女「今朝は散々だったよ」

女友「壇上の人の話を生徒があそこまで夢中に聞くことなんて前代未聞じゃないかな」

女友「それにしても意外だなぁ。男くんってずっと硬派なイメージだったし」

女「…………」

女友「そうだ。今日帰りにちょっとハンバーガーでも食べていこうよ。あんたの恋愛話でも聞きたいし」

女「私はいいってば」

女友「まぁまぁ」


~~~


店員「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりですか」

女「コーラのSサイズひとつください。それとポテトのSサイズ」

女友「じゃあ私は……」

男「コーラのMサイズひとつと、ポテトのMサイズひとつください。それと、君のスマイルも」

女友「なんでいるの?呼んだ?」

女「いいえ」

男「好きです。僕と付き合ってください」

女「苦笑いしかでないよね」

男「君はSだね」

女友「男くんはMかな?」

友「男!何やってるんだ!!」

男「ダメだ!!」

友「早く戻るんだ!!走れ!!!」

男「ダメだ、できない!!!」

友「おとこおおお!!!」

男「僕は、女さんだけを守って生きていくと決めたんだ!!」

男「好きです!!俺と……」

生徒「ゴール!!よっしゃああ!!」

友「キーパーの役目を果たせよ!!!」



女友「さっきから体育の授業放ってずっとあなたに告白してるわよ。返事してあげたら」

女「レッドカードどこかにないかな」

女友「厳しいわねぇ」

女友「今朝も生徒指導の門の前で告られてたわね」

女「見てたんだ…」

女友「何回断ってるの?」

女「今日はまだ2回…」

女友「今日で2回?なに?101回は告白されるの?男くんも素敵だけど、高嶺の花に恋をしてかわいそうね」

女「違うよ!!」

女友「どこがよ」

女「私から告白したんだってば!」

女友「えっ、どういうこと?」

女「あなたのやさしさを見てきました。繊細なのに、全然気にしてないようなふりをして、周りの人を思う姿に憧れていました」

女「好きです。付き合って下さい」

男「ダメだ」

女「そ、そんな……」

女「他に……好きな人がいるんですか」ポロポロ

男「いない」

女「ならどうして」

男「こういうのは男からするものだ」

男「前に君と話していた時に、君がこぼした願いを叶えたいんだ」

女「あ、あんな恥ずかしいこと」

男「僕が必ず、実現させてみせるよ」

女「ほんとう?」

男「ああ。だから、最高のタイミングがくるまで待っててくれ。不器用だし、ずっと真面目でつまんない男だから、時間はかかるかもしんないけど」

女「うん。大丈夫。待ってる。男くんのこと、ずっと待ってるから」

女『普通の女の子が経験したことのないような、愛の告白を受けてみたい』

女「テレビも見ずゲームもやらず、真面目に生きてきた男くんが私をおどろかせるために一生懸命頑張ってくれてるんだけど……」

女友「なにそれ。すごい良い話じゃん」

女「タイミングや発想がすごいんだよいつも」

女友「たとえば?」

男「好きだ!付き合ってくれ!」

女「ほら、今みたいに友達と雑談してるときに通りすがりに告白してきたり」

女友「…………」

女「本人は一生懸命考えてるの。多分、女性は友達の前で誉められると喜ぶみたいな記事でも読んだんじゃないかな」

男「…………」カァァ

女友「顔赤くなってる。まじか」

女「背景に合わせた告白をするのがドラマチックだって思ってるみたいで。言葉にもタイミングにもよくよく振り返ったらいつも理由があって」

女友「男くんもちゃんと考えてんのね」

女「そうだね」

女友「あんたを喜ばすのは至難の技だわ」

女「えっ」

女友「だって男くんを理解してるから好きになったんでしょ。その理解を上回るものを求めるなんて酷だわ」

女「私のせいなの?」

シルクハットから出た鳩よりも、驚かせようとしてくれたあなたの心に驚かされる。

大きなバラの花束よりも、それを持つあなたの手に惹かれてしまう。


映画の中で、王女は兵士に告げた。

『もしもあなたが100日の間、昼も夜も私の部屋のバルコニーの下でずっと待っていてくれたらあなたのものになります』

私が、兵士だったら、99日目にきっとこう叫んだに違いない。

これでもまだ、信じられないのか。

私が王女様だったら、1日目にきっとこう思ったに違いない。

あなたが100日の間訪れることを、信じています。

人を想うということに、残酷なすれ違いは付き物だ。

次回「好きです。付き合って下さい」

改札の前で告白するの、やめてくれませんか。

一発ネタです。
30回告白したら終わる予定です。

まってるぞ
おつ

新作だ。楽しみにしてたぞ。

なんかスレタイからして惹かれるものがある
期待

ペース早くて嬉しいよ

女友「もう金曜日だ。やったね」

女「うーん」

女友「あっ、そうか。土日だと男くんに告白されないから悲しいんだね」

女「ち、違うってば。土日バイト入れてるから気が重いの」

女友「そうなんだ。じゃあ部活はやってないんだ」

女「昔はやってたんだけど、めんどくさくなってやめちゃった」

女友「本当?」

女「な、なんで」

女友「男くんの告白がうるさすぎて退部させられたんじゃない?」

女「公害じゃないんだから。その頃はまだ告白されてなかったし」

男「公害と言われようと、校外であろうと、校内であろうと、君に伝えたいんだ」

男「好きです。付き合って下さい」

キーンコーン

女友「あっ、休み時間終わった」

女「男くん、普通の告白でもいいからね?」

男「ぐっ……うっ……」スタスタ…

女友「女ちゃん最低だよ、男の命より大事なプライドを踏みにじるなんて」

女「わ、私はこんな特異なシチュエーションじゃなければ受け入れるのに」

女友「普通では味わえない告白を受けてみたいって言ったのはあんたなんでしょ」

女「そうだけど」

女友「それともあれかしら。普通の告白がどんなものかすら知らないのかも」

女「えっ」

女友「あんたはどうやって告白したの?」

女「放課後の校内の人気のいない踊り場で」

女友「普通ねぇー」

女「普通で何が悪いの!」

女友「ブーメランになってるよ」

女「うう、今日もショッピングモールお客さんいっぱいいるな」

女「うちのレストランも激混みなんだろうなぁ。はぁ」

女「大学生がみんなやりたがるって聞いたもんだから楽しいのかと思ってたけど、こんなに働くのが大変だとは思ってもみなかった」

女「変なお客さんだけは来ませんように……」



~~~

ピンポーン

女「お待たせいたしました。ご注文をお願いします」

男「ハンバーグと、ドリンクバーと、君」

女「かしこまりました。ドリンクバーと脳内彼女はセルフサービスになっております」

男「がはっ……」

女「振られるたびに吐血しかけないでください」

女「それでバイトが終わったあとも告白されたの」

女「洋服屋に入ってたらバーゲン中で、いきなり隣に男くんが現れて」

女「君も今、値下がりしてないか。僕に、買い取られてくれないか」

女友「ないわぁ」

女「品切れですって言ったら帰っていった」

女友「あんたもよく冷めないわね」

女「あの人が苦手なのは告白だけなんだと思う。やさしい姿、強い姿、繊細なところはたくさんみてきたの」

女「国語も、英語も、算数もできるけど家庭科は大の苦手みたいな人がいるように」

女「たまたまあの人の大の苦手科目が告白だったというだけなの」

女友「普段は普通に話せるの?」

女「ちょっと変わり者だけどね、すごくしっかりしてるよ。生徒会長もやってるくらいだし」

女友「えっ!?そうだったんだ!」

女「告白というステップさえなければなぁ……」

女友「確かに不思議ねぇ。告白って」

女「えっ?」

女友「告白抜きで男くんと話してみればいいじゃない。その時間が好きだったんでしょ?」

放課後

女「男くん、今大丈夫?」

男「くっ!ま、まだ準備が!」

女「またなんか考えてたの」

男「まぁ」

女「こうやって二人で話すの懐かしいね」

男「そうだな」

女「最近生徒会のお仕事はどう?」

男「そんなに大したことやってないよ」

女「男くんは頭いいからなぁ」

男「まぁね。認めざるを得ない」

女「出た、ナルシスト」

男「ふっ」

女「あのさ、たまにはまた変な話しよっか」

男「変態な話?俺が女さんの横通るたびに深呼吸してる話がしたいの?」

女「帰ろうかな」

男「ごめん!嘘!いや、嘘じゃないけど!」

女「他の生徒の前にいるときとはやっぱり大違いだなぁ……」

女「まぁそこも……」

男「んっ?」

女「話を続けるよ」

女「付き合うっていうのさ、すごいおかしなシステムだと思わない?」

女「昨日までただの一人の男と一人の女だったのに、片方からの告白という行為をもう片方が承諾することによって、恋人という分類に入るようになるんでしょ」

女「よくさ、友達っていうのは気づいたらなってるもんだってセリフがあるじゃない。こうしたから友達とか、ああしたから親友とか、そういう条件なしになる関係だって」

女「だけど恋人は違う。好意を言葉で伝えて、相手も言葉で好意の受取を伝えたら、二人はその瞬間から恋人という関係になる」

女「恋人がいる人には手を出してはいけないことになっている。好意の大きさは測れないけれど、付き合ってもないのに両思いの二人もいる一方、付き合っているのに大してお互いを思っていないカップルもいる」

女「でも、告白するという好意はやっぱり凄い勇気が必要でさ」

女「なんだろう。私、何が言いたかったんだっけ……」

男「フランスでは、告白して付き合うっていう習慣がないって聞いたことがある」

女「そうなの?」

男「二人で出かけたり、ボディタッチが増えていったり、次第に仲が深まってはいくけれど、告白してから付き合うっていう日本みたいな流れじゃないらしい。告白して恋人という契約を結ぶという流れじゃないから、相手の気持ちを確かめるのが難しそうだなって思う」

男「気持ちを汲むのが得意な日本人、なんて和歌の時代以降とっくに滅んでしまっているのかもしれない」

男「告白は、あったほうがいいと思うんだ。わずらわしいからさ。告白するのって凄い勇気がいることだし。告白された方だって凄い悩むし」

男「そのわずらわしさを乗り越えてまで、付き合うってことに意味があるんだと思うんだ」

男「こんな感想で充分だったかな?」

女「うん。ありがとう。自分が何について悩んでたのかもよくわからなかったけど、男くんと話せて心が軽くなったよ」

男「よかった。じゃあまた明日」

女「うん。ばいばい」





女「あー、やっぱり男くんっていいな。私が変な話もちかけても、気味悪がらずに真面目に答えてくれる」

女「…………」

女「放課後の夕陽の差す教室での恋話……」

女「こういう時にこそ告白してよ!!!」


墓小便の人の新作か!?

女友「デートしてみたら?」

女「急に何」

女友「学校の中であんたを驚かせようとする告白をするのが難しそうじゃない」

女「普通に夕暮れ時の校舎の裏で告白してくれれば充分だってば」

女友「もうね、あんたが仕掛けた方がいいかもしれないよ。花火を夜空にうちあげて、オペラをBGMで流して、七人の小人を周りに踊らせて男くんに告白させるの」

女「夢物語だと思う」

女友「あんたのバイト先色々あるんでしょ?バイト帰りにちょっと遊びにいきなって」

女「緊張するなぁ」

女友「男くんの方が毎日緊張してるわよ」

女「私だって告白したし……」

キィ-ン

『迷子のお呼び出しをします。女さん。運命の相手がお待ちしています。至急ぬわぁぁまってぇえええ』

女友「校内でこれ以上事故を増やす前にさ」

女「そうする…」

1です。他作品のあらすじを書いててしばらく放置してました、すみません…
時間を見ては少しずつ投稿致します。

他の作品も晒しても大丈夫だぞ
過去作も完結させてほしい

>>23
お気持ちありがたいです。

[投稿中]
・告白の話(このスレ)

[書き溜め中]
・ドラゴンの話
・受験勉強の話
・青春の話

[完結]
女「人様のお墓に立ちションですか」
女「また混浴に来たんですか!!」

[過去に中断]
・ダンスパーティの話(書き直し検討中)

混浴の話の文字数が短いラノベ一冊分くらいだったのですが、
書き溜め中のものも長編になりそうなので(読みやすくする努力はします!)一つずつ投稿します。

最近過去の有名なSSをいくつか読み直したのですが、5回以上読み返したくなるほどクオリティーが高いものも多く、
SSという文化は本当に良いなぁと感じました。

女子高生たちを活字の虜にした携帯小説という文化もやはり消えるべきではなかった。
虫酸が走るほど小説が大嫌いな人が文学の出版社に勤めてくれたらなぁと学生時代に思っていたのですが、
ライトノベルというジャンルが生まれてこれは喜ばしいことだと思った記憶があります。

思ったことを好きなように書ける時代や環境はありがたいですね、人を傷つけてしまう望まぬ可能性はありますが。

話がそれ過ぎましたね。少しずつ投稿していきます!

男「僕は君に、財布のヒモを握らせたっていい」

男「好きです!付き合って下さい!」

女「お会計1,080円になります。お財布のヒモは自分で緩めてください」

男「僕が君のヒモ男になってもいいってこと!?」

男「だ、だめだ!!いくらそれが君の願いだとしても、僕は君を経済面でも支えながら生活して……」

女「私あと30分であがるんだけど、このあと空いてる?」

男「うっ……今日は塾の予定なんだ」

女「確かに私が退店するまでドリンクバーとデザートの追加注文でいつも粘ってるもんね……」

男「ふとったらどう責任とってくれるんだ」

女「どうしよう……」

男「あ、いや、頑張って運動して痩せるから大丈夫だよ」

女「やさしい」

男「今日の塾は休みます」

女「それは駄目」

男「厳しい」

女「私が終わるまで待つよ」

男「それは駄目」

女「厳しい」

男「終わるの22時とかだから。ところでなんか用があったの?」

女「あー、まー、二人でショッピングモールでも歩こうかなって」

男「今日の塾は休みます」ピポパポ…

女「それは駄目」ブチ

男「厳しい」

しえん

男「僕は君と曲がり角ではなく、同じ食卓でパンを食べたい」

男「涙とともにパンを食べたものにしか人生の味はわからないという名言があるけれど、僕は君とパンを食べたら涙のない人生を味わうことができると思う」

男「好きです。付き合って下さい」

女「男くんおはよう」

男「おはよう」

女「朝から曲がり角で待ち伏せしてたの?」

男「うん。でも女さんはパンを咥えてなかった」

女「転校生でもなかった」

男「遅刻しそうでもなかった。うまくいかないもんだ」

女「昨日遅くまで塾で大変だったのに、早起きしてくれたんだ」

男「遠足の当日に早起きしてしまうタイプの人間だからさ」

女「そうなんだ」

男「返事は?」

女「いつでもオーケーだけど、理想の告白ではなかったかな……というかまだちょっと寝ぼけてるし」

男「それじゃあダメだ」

女「男くんは厳しいなあ」

男「早朝は告白に向いてないと学んだから、一歩前進だよ」

女「エジソンみたいなこと言うね」

男「好きな子の心に光を灯す言葉を発明するのが夢なんだ」

女「(あっ……今のちょっとよかったかも……)」

女「朝って眠くて大変だよね。放課後が二時間削れてもいいから朝を二時間増やして欲しい」

男「そしたらその分夜中にのんびりする時間が二時間後ろ倒しになって、結局今みたいな状態になるんじゃ?」

女「うっ、痛いところを」

男「自然と目覚められれば最高なんだけどね」

女「そうなの。目覚まし時計に無理やり起こされてさ。ただでさえ起きたくないんだから、もっと起きたくなるような起こし方をしてほしいって思う」

男「そうか……」



<翌日>



女「ZZZ……」

『さぁ、しらゆき姫よ!!』

女「……んん」

『目覚めの時間が参りました。夜の次に朝がくるのではない。あなたが起きたら太陽が目覚めるのです』

女「窓の外から声が」

『さあ!今こそ近いのキスを!』

男『する前に、私と付き合ってください!』

女「男くん!?なにやってんの!?」

男「さぁ姫よ!」

女「近所迷惑だからやめて!!」

男「    」

男「ZZZ……」

女友「ねぇねぇ」

女「うん?」

女友「男くん、珍しく授業中に寝てる」

女「知ってる」

女友「今朝家の前で奇声あげられてらしいじゃん」

女「告白されたの」

女友「またぁ?寝不足と失敗続きがたたって狂気的になってたんだろうね」

女「奇をてらって告白しなくてもいいのに」

女友「あんたも満足したふりしちゃいなよ」

女「それは男くんへの裏切りだよ」

女友「相手を想う嘘は重要だよ?私のおねえちゃんも彼氏に気持ちいいって嘘ついてるって」

女「授業中に下ネタはやめましょう」

女友「はいはい」

男「ううう……」

男「好きです。付き合って下さい……ZZZ」

「クスクス…」

「すごい寝言w」

女「…………」カァ///

女友「授業中に告白はいいの?」ニヤニヤ

女「寝言だからいいの!」

先生「以上が中間テストの範囲だ」

女友「もう中間テストの時期かぁ」

女「時が過ぎるのってあっという間だね」

女友「男くんって凄く頭良いって評判だよ。あんたもちょっとはがんばらないとね」

女「う、うーん……自信ないなぁ」

男「僕は君と、昇り降りの激しい人生を共に歩んでいきたい」

男「好きです。付き合って下さい!」

女「あのさ」

男「放課後に昇降口で待ち伏せしていたのはやはりまずかったか……」

女「それはいいんだけどさ」

男「いいんだ」

ヒューヒュー!!

女「今も4,5人の通行人に囃し立てられてて気まずいけどね」

女「それよりさ、テスト期間は勉強のことだけに集中してもいいんだよ?」

女「生徒会もおやすみなんでしょ。私は男くんが1週間告白しないからって、男くんへの気持ちが薄れたりはしないから」

女「男くんは男くんで、自分の時間を大切にしてほしいの」

男「…………」

男「1分1秒も無駄にしたくないならそうしているかもしれない」

男「でもさ。いくら俺が真面目だからって、テスト期間中に全くぼおっとしないわけでも、テレビをみないわけでも、つい漫画に手を伸ばさないわけでもない」

男「勉強する以外の時間も必ず一日のうちに何時間かはあってさ。その時間のうち君に注ぐ時間を0にする理由はなくってさ」

男「なんていえばいいかな」

男「両立したいんだ」

女「文武両道みたいな感じ?」

男「そんなに健全じゃないよ。自分でもおおまかに、時間を2つに大別しているんだ」

男「自分が求められている時間と、自分が求めている時間」

男「求められている時間っていうのは、親や教師が望むこと。勉強とか、運動とか、生徒会とか」

男「求めている時間っていうのは、俺が望むこと。漫画とか、音楽とか、好きな人とか」

男「どちらの時間も同じくらいに大切な時間だと思うんだ」

男「どちらかを完全にするために、どちらかを見捨てるような生き方なんてしたくない」

男「難しいことだとはわかってるんだけどね。うちのお父さんも凄く働く人で、そのおかげで良い塾にも行かせて貰ってるし生活に不満はないんだけど」

男「俺は別に一緒にいなくてもいいんだけどさ。でも、お母さんはお父さんのことが好きで結婚を受け入れたんだから。もうちょっと二人の時間があってもいいって思うときがある」

女「そうだったんだ」

男「二兎を追うものになりたいんだ」

女「…………」

男「もしも、自分が二兎を同時に得るだけの器がないとわかったとしても」

男「その時に諦めるものが、決して恋であってはならないと思う」

男「だから中間テスト期間中も、告白は続けます」

男「生徒会長失格でしょ」

女「……もう」

女「これで無理やりとめても余計悩むのが男くんだからなぁ」

男「よくわかってるね」

女「ちゃんと勉強してね」

男「うん」

女「片方の兎は逃げないから……」ボソ…

男「ん?」

女「朝の待ち伏せは禁止ね!」

男「ええー!!」

女「うう、今日バイト入れてたの忘れてた……」

女「なんでシフト入れちゃったんだ。テスト1週間前の貴重な放課後勉強タイムなのに」

女「しかも遅刻しそうだし。あと1分で電車来ちゃう!」

ピンポーン!

女「うげっ、改札ひっかかった!」

男「「これからは僕が君にオートチャージしてあげる」

女「男くん!?ちょっとどいて!遅刻しそうだから!

男「家賃も、食費も、養育費だって、僕の稼ぎは全て君にオートチャージする」

女「ちょっとどいて!!うしろもつまってるから!!」

男「好きです。付き合って下さい」

女「男くーん!!!!!」

どんなに仲の良い、話の合う相手でも。

告白するというのは、頭の中がくらくらになるほどに緊張する行為だ。

無事成功しても、喜びながらもまだドキドキしていているし。

案の定失敗したら、冷たい水が心臓に刺したように悲しい思いに満たされるし。

全く割に合わないものなのだ。

それがましてや、明らかな一方通行の思いである場合や、趣味や価値観が合わないのに好きになってしまった場合はなおさらで。

ダメもとで、なんて言いながら、希望は完全に捨てきれるはずもなく。

自分には無いものを持っているあの人に、吐き気を一旦忘れて近づくしかない。


運命なんて言葉はほうきで掃いてしまえ。

共感や共鳴なんてものは雑巾で拭いてしまえ。

全く同じ形状で、全く同じように置かれている歯車は一生噛み合うことはない。

あなたと私は少しずれているから、こんなに日常が楽しくまわっているんだ。

次回「好きです。付き合って下さい」

試着室の前で告白するの、やめてくれませんか。

更新を確認してくれている人がいて嬉しかったです。
おやすみなさい。

乙!!
男かっこいいのに残念すぎるわ

>>34
コメディの最中にいきなり心抉ってくるとは
油断した

女友「はぁー、やっとテスト全部終わったー」

女「ほっとしたね」

女友「あんたはこれからドキドキするんじゃない?」

女「うっ」

女友「男くんと今度こそデートの……」

男「5教科7科目よりもあなたが好きです」

男「俺と付き合ってください!」

女友「5教科7科目ってどれもそんなに好きなものじゃなくない?」

女「男くんは勉強が好きだから……」

女友「男くん今のはさすがに追試だよ」

男「…………」トボトボ…

女「あのさ、今日放課後あいてる?」

女「一緒に、買い物に行きませんか?」

男「…………」

男「好きです。付き合ってください」

女友「今のはあんたのやさしさにまじで惚れたね」

女「買い物に付き合うという意味ならオーケーです……」

女友「デートの約束できてよかったね。これで私も一安心だ」

女「デートじゃなくて買い物だからね」

女友「今更照れる必要もないだろうに。今からもう放課後が楽しみで仕方ないんじゃない?」

女「からかわないでよー」

女友「くぅー、いいなぁ学園ドラマしていて。私が楽しみなのは今夜放送されるドラマくらいなもんだよ」

女「恋愛もののやつだよね」

女友「続きが気になるなぁ。先週の放送は驚いたよ。まさか兄妹オチだったなんて。運命が2人を分かつってせつないよねぇ」

女「でもその切なさがたまらないんだよね」

女友「しっし、あんたは現実で楽しんでおきなさいよ」

女「お母さんに録画頼むしー」




男「…………」

女「一緒に行くの恥ずかしいから現地集合ってことにしちゃったけど」

女「うう、夕方は混むなぁ。ちょっと空いてるし女性専用車両に乗っちゃおう」

ガタンゴトン…

女「バイト先の駅も隣の駅だし、まぁ多少迷っても会えないなんてことは……」

「たとえ!!」

女「……この声」

「たとえ運命が!!」

女「隣の車両からだ」

男「二人を引き裂こうとも!!」

女「ちょ、ちょっと男くん。そっちすし詰め状態なんだから静かに!」


男「世の中のルールが二人を引き裂こうとも、僕は君を人生の終点まで追いかける!!!」

男「好きです!付き合ってくだもがぁあああ……」

女「次の駅でおりるよ!!」

女「お疲れ様」

男「満員電車に乗るたびにさ」

女「うん」

男「これが全員君なら天国なのになって」

女「な、何いってんの!セクハラだからねそれ」

男「セクハラって何の略?」

女「セクシュアルハラスメントでしょ」

男「セクシュアルってどういう意味?」

女「せ、性的な……とかじゃないかな」

男「おおふ!」ゾクゾク

女「セクハラという言葉を使ってセクハラしないでくれる?」

女「この洋服屋さん、何度も前を通り過ぎてもついつい覗き込んじゃうな」

男「休日はどんな服着るの?」

女「肌色っぽいスカートとか、紺色のセーターとか」

男「へー」

女「男くんは?」

男「基本灰色。もしくは黒」

女「おしゃれには無頓着かな」

男「そうだね。お店に入ってもさ、どんな洋服買えばいいのかわかんなくて、数時間歩いたのちに結局既に持ってるような地味なのを買うだけ」

女「もったいないなぁ。お父さんが言ってたよ。ワインは知識があるとなお美味しい。靴はブランドを知っているとより輝きが見える」

女「そして娘は、服は着こなしのルールを知っていると楽しめるようになると述べましたとさ」

男「そもそもワインと靴に興味わく年齢じゃないからなぁ」

女「大学生になったら毎日私服だよ」

男「それがめんどうくさいから制服けっこう気に入ってるんだけどなぁ」

女「確かに便利だよね」

男「私服なぁ。たしかに今までは洋服屋にも無頓着だったけど、女性物のアパレルには興味わいてきたかも」

女「えっ、そうだったんだ……。でも、私は否定したりしないよ。好きなように生きればいいって本気で思うよ」

男「女装癖じゃないって」

女「違ったの」

男「女性ものの服を見てるとさ。これ女さんが着たら似合うんだろうなぁとか。自分の服装には無頓着なのに、女さんが着ることを想像するのは楽しいというか」

女「へー……」

男「せ、セクハラだったかな!忘れて!」

女「どうしようかな。女装してくれたらいいかも」

男「…………」ゴクリ…

女「覚悟を決めた顔をしないで」

女「男くんはこれが似合うかな」

男「なんだよこのハードロックっぽいシャツ」

女「意外と似合うかもしんないじゃん。ほらほら」

男「ええー、本当に着るの?」

女「ほらほら。試着室入って」

男「わかったよ」サー

女「…………」

女「(無理やり着替えさせた私の方がセクハラっぽいな)」

女「(でも普段真面目な男くんがああいう激しいシャツ着てる姿も見てみたいし……)」

「着替えたよー」

女「う、うん!一体どんな感じ……」

男「やぁ」

女「あの、どうしてタキシードを着てバラを胸に差しているんですか」

男「君と同じ洗濯機で衣類をまわす生活を送りたい」

男「次は君がウェディングドレスを着る番だ。好きです。付き合って下さい」

女「…………」サー

男「こら、カーテンをしめるな!」

女「マジシャンにでもなったらどうなの」

男「そんなに器用じゃないさ。不器用なのさ、これでも」

女「うん。それは感じてる」

男「不器用な人間はいい。落ちこぼれた分だけ人の気持ちに気づけるからな」

女「たしかに、そういう人はさりげないやさしさがあるかもね。勉強で悩んでる人の前ではさりげなくスポーツの話題を持ち出すとか」

女「露骨じゃないやさしさは身にしみるよね」

男「同感だ」

女「喉も乾いたしちょっとカフェにでも寄ってく?」

男「そうするか」



店員「ご注文をどうぞ」

女「アイスコーヒーの普通のサイズで」

店員「ご注文をどうぞ」

男「ダークモカチップクリームオレトツキアッテクダサイフラペチーノのグランデサイズを1つ」

店員「……ダークモカチップクリームフラペチーノのグランデサイズをおひとつですね」

男「返事は?」

女「えっ、なんかいった?」

男「さっきさりげないのがいいって」

女「はじめはさ、このショッピングモールが好きで、この好きな場所で働けたら楽しいんだろうなって思ってた」

女「でもファミレスって凄く大変でさ。混んでる時はパニクりそうになるし。嫌なお客さんもいるし」

女「だから、部活の合間に来ていた頃のようにうきうきすることはなくなっちゃったんだ」

男「そうだったんだ」

女「虹は遠くから見なくちゃ駄目だね」

男「そうかなぁ」

女「そうだよ」

男「幻想が崩れるくらいに、好きな人を知り尽くしたいって思うけど」

女「…………」

女「ちょっとしたおふざけが原因で、長距離走の有望な選手である部員を大会前に怪我させてしまったとか。そんなの知って好きになるかな」

男「好きになる材料にはならなかったかな」

女「でしょ」

男「でも批判する気にもなれなかった」

女「他人だからじゃない?」

男「そうかも」

女「いいの? 生徒会長がそんな無責任で」

男「君の責任だから。僕は関係ない」

女「冷たいなぁ」

男「重荷を背負わせてしまうことがより負荷のかかる重荷になってしまうことだってあるだろ。やさしい人ならなおさら。自分一人で持った方が楽なことだってあるよ」

女「冷たいんだかやさしいんだか」

男「変態だとはよく呼ばれるけどな」

女「正しいかも」

男「そうなのか」

女「ねぇ、変態さん」

男「はい」

女「私が放課後を楽しむことを、許してくれてありがとう」

男「俺は好きな人を笑わせようとしただけだ」

女「私笑っててもいいのかな」

男「ダメだっていうのは君も知ってるだろ。だから、誰にも見られてはいけない」

女「狭苦しい生き方だなぁ」

男「俺も一緒に同じ部屋にいるから」

女「満員電車みたいに?」

男「そう。そしてそれは、俺にとっては天国だから」

女「人の不幸なのになぁ」

男「ちょっと、場所移動しようか」





男「やっとついた」

女「あれ、この音楽……」

男「君が好きだって言ってた曲だ」

女「ずっと前に少し言っただけなのに。覚えててくれたんだ」

男「あぁ……」

女「…………」

男「ねぇ、女さん」

女「はい」

男「好きです。付き合って下さい」

女「…………」

女「ごめんなさい」

男「どうして!」

女「だって」

『さぁ、はじめるドンッ!』

女「今から太鼓叩かなくちゃ」

雨の日に大型の店舗に入って傘をビニールに入れようと悪戦苦闘している時に。

高層ビルのエレベーターに乗って耳が聞こえにくくなっている時に。

ジェットコースターに乗っていそいそとシートベルトを付けている時に。

観覧車がまわりはじめてからまだ7秒しか経っていない時に。



もう行う必要のない告白をし続ける彼氏を見て思う。

私はあなたが極端に空気を読めないのか、感動的なシチュエーションというものを勘違いしていたのかと思っていたけど。

一つのことに尽きたんだね。

私も、そのことに、少女時代から待ち望んでいた理想の時に気づいた。

『どんな瞬間も、あなたが好き』

最終話「好きです。付き合って下さい」

感動的な夕陽の落ちる景色の中で告白するの、…………。

おやすみなさい。

今回は短そうだな

女「おまたせ」

男「おお……おお……」

女「な、なんなのその反応」

男「私服を初めて見た」

女「そうだね」

男「至福のとき」

女「ダジャレかな」

男「とても似合ってる」

女「どういたしまして」

男「休日会ったのも初めてだ」

女「そうだね」

男「嬉しい」

女「私も嬉しいよ」

男「いつまでもつきまとっていたい」

女「それは……」

男「君のためなら悪者にだってなれる。宝石だって盗みだす」

男「好きです。付き合って下さい」

女「とりあえずここ交番の前だから声を抑えましょう?」

女「またショッピングモールだけどよかった?」

男「君とならどこでも」

女「そんなこと言ったら凄くつまんないとこ連れ出しちゃうよ」

男「例えば?」

女「うーん」

女「男くんといてもつまんないところかぁ」

女「うーん……」

女「…………」

女「…………」

女「うーん……」

女「…………」

女「…………」

男「好きです。付き合って下さい」

女「うわ、びっくりした」

女「とりあえずエスカレーターの途中ではやめよ?」

男「君の沈黙に反比例して気持ちがエスカレートしてしまって……」

女「ショッピングモールに来るとさ」

男「うん」

女「これから言うことに引かないって約束してくれる?」

男「うん」

女「ショッピングモールに来ると、世界が滅ぶことをいつも妄想しちゃうんだ」

男「それアルバイトするどころの気分じゃなくない?」

女「そういうツッコミがくるとは」

男「なんでだと思う?」

女「世界滅亡と最も無縁であるべきところだと考えてるからじゃないかな」

男「逆説的だね」

女「食べ物も洋服も映画館もゲームセンターも、場所によってはスポーツする場所もそろってるショッピングモールに勝てるのは遊園地くらいだよ」

男「確かになんでもあるね」

女「こんな幸せな場所で世界滅亡なんて想像したくない」

男「だからこそ考えてしまうのか」

女「ショッピングモールのドアが故障して、2日間閉じ込められたいな」

男「修学旅行みたいな」

女「枕投げをしたり、好きな人の名前をうちあけたり」

男「好きです。付き合ってくだい」

女「って告白したりとかね」

女「楽しそうだな。ショッピングモール旅行」

男「流された……」

男「ゲームセンターなんて久しぶりに来たな」

女「男くんはゲームセンター好き?」

男「自分からはそんなにはいかないかな」

女「まじめだなぁ」

男「単にゲームが得意じゃないだけだよ」

男「やけくそな気分の時に足を運んだりしたけどさ。何もゲームセンターにいる人はみんなやけくそだから来てるわけじゃなくてさ」

男「携帯でゲームが無料で出来てしまうこの時代にわざわざゲームセンターでお金を払ってゲームする人はみんなうまそうでさ。真剣な顔をしている人も多くて」

男「自分みたいなにわか者が楽しむにはレベルが足りないなって思って出ちゃう」

女「なるほど」

男「UFOキャッチャーとかも絶対取れる気がしないしね」

女「私も苦手」

男「たとえ何度両替機に足を運ぼうが必ず取る覚悟が必要なんだ」

男「それはぬいぐるみに限った話ではなく」

男「たとえ財布の中身が空になるくらいにお金を注ぎ込むことになったとしても」

男「必ず透明な檻から君を救って見せる」

男「好きです。付き合って下さい!」

女「お金で解決するのは最小限にとどめようよ」

男「はい……」

女「私たちはこれからUFOキャッチャーに挑戦するんだよ。力押しじゃなくて、テクニックを考えなくっちゃね」

男「それが君が求めていること?」

女「私は男くんが檻の外にいるのが見えたら自分から抜け出すよ」

男「そうなの?」

女「そうするたびに君が押し戻してくるんだよ」

君が押し戻してくるんだようまいな乙

女「うう、これかわいい」

男「ぬいぐるみ好きなんだ」

女「このキャラクターが好きなんだよね」

男「チャレンジする?」

女「うん。とりあえず100円入れてみる」

男「待って。本気で取りたい?」

女「ええ、もちろん」

男「500円入れよう。そしたら一回分おまけされる」

女「後に戻れないのが怖いなぁ」

男「俺も200円入れるから」

女「男くんもほしいの?」

男「違うよ!やるだけ」

女「なんか悪いなぁ」

男「男は狩りをして報酬を受け取るんじゃない。狩りそのものが報酬なんだ」

女「肉食系男子だね」

男「じゃあやってみよう。チャンスは6回」

女「うう、なんか緊張してきた」

女「取れそうで取れない!!こんなかわいい顔して、お金搾取する気満々だよ!!」

男「落ち着いて。あと2回あるから」

女「手前に転がせばいいんだよね。よーし」

女「集中……」

ウィーン…

女「…………」

男「女さんが真剣な眼差しになって」

女「…………」

男「そこまでほしいと思われる人形が羨ましいな」

女「…………」

男「お金は入れなくていいので、僕も同じように見つめてくれませんか」

男「好きです。付き合って下さい」

女「!?」ガタン!

男「奥にいっちゃったね」

女「また変なタイミングで告白して!」

男「ごめんごめん」

女「(なんだかニヤついてるなぁ……わざとじゃないよね)」

女「千円札両替してくる」

男「俺も両替してくる」

女「悪いよ」

男「このまま取らずに帰れない」

女「まんまと術中にはまってるね」

男「ちょっと店員さんに切ない顔して位置動かせないかお願いしてくる」

女「初期位置から大して動いてないもんね」

男「位置を動かすお願いをする時の切ない顔を手に入れるための投資だったんだ」

女「はやくこの戦争を終わらせましょう」

ウィーン……

男「集中……」

女「もう少しだね」

男「…………」

女「私もお返しに集中の邪魔になるような話をするね」

女「陸部の友達とゲームセンターに時々行っててさ。一度UFOキャッチャーに挑戦して喧嘩したことがあったんだ」

女「取れそうもない大物を私が取ろうって言って3人でやって。結局大金を注ぎ込んだんだけど取れなくて」

女「仲の良い一人が、帰り道不機嫌になっちゃってさ。私はその不機嫌な態度が嫌で、私まで不機嫌になっちゃって」

女「私は、時間を共有したかっただけなんだ。取れそうもないものを3人で取ろうとして、お金を注ぎ込んですっからかんになっちゃう時間を愛おしく思いたかったんだ」

女「私は道を絶対に間違えない人より、道を迷っても一緒に笑ってくれる人が好き。いつも完璧な料理をつくってくれる人より、一緒に料理をつくって失敗しても笑って食べてくれる人が好き。一緒にハズレの映画を観ても、その内容に深く突っ込んで話してくれる人が好き」

女「その子とはもう数日したら仲直りしてたんだけどさ。でも、私は嫌なやつで、その日のことを笑い話にするでもなく、気持ちが冷めちゃったんだ」

女「私は完璧なんて求めないから、不完全を共有してくれる人と親友になりたいなって」

女「でも、こんな馬鹿な考え方をしてたから、不注意で人を傷つけてしまって……」

男「取れた」

女「えっ」

男「だらだら遠い目をしてずっと喋ってるから君の分もやっちゃったよ」

女「ご、ごめん」

男「どうぞ」

女「いいの?」

男「いいよ」

女「ありがとう」

男「でもこうも思うんだ」

女「ん?」

男「一緒に勝った方が楽しい」

男「どうでもいい人となら、そもそも勝負に挑もうとすら思わないよ」

男「鬼ヶ島から命からがら逃げ出したけど、その後1人と2匹と1羽は仲良く暮らしましたとさ、じゃなんだかすっきりしないじゃん」

女「たしかに、そうかもね」

男「今日は勝利した」

女「そうだね」

男「楽しい。嬉しい」

女「気分が良い」

男「やっぱり休日は、勝利するに限るってもんだよ」

女「ねぇ、外見て」

男「雨ふってんね」

女「傘持ってきた?」

男「忘れた」

女「私も」

男「しばらく止みそうにないな」

女「雨があがるまで帰れないね」

男「ずっとやまなかったらどうする?」

女「ショッピングモールで生涯を過ごすとか」

男「ゲームもあるしレストランもあるし」

女「展示されてるハンモックで寝ることもできるし」

男「ゲームもあるし最新のおもちゃもあるし」

女「ずっと飽きないで過ごせそう」

男「おまけにあそこに傘も売ってる」

女「…………」

男「とても安い」

女「…………」ギュッ

男「痛いっ」

男「ちょっとトイレ行ってくる」

女「私もちょっとお花を摘んできます」

男「証拠のお花見せてね」

女「それって物凄いセクハラ?」

男「ちがうよ!!!」

女「ふふっ」




女「ふぅー、おまたせ……って、なにその花束」

男「君の代わりに、お花を摘みにいってたんだ」

男「君と、嫌なことや悲しいことは全て水に流す人生を送りたい」

男「好きです!付き合って下さい!」

女「トイレの行列に並んでる女性が見てるからやめて」

女「おもちゃコーナー入るのは懐かしいな」

男「昔はお人形遊びとかしてたの?」

女「してたよ。お人形を2つ持って会話とかさせてた」

男「俺も今でも脳内で女さんとよく会話してるよ」

女「へ、へえ……。昔はどんな遊びしてたの?」

男「色んな形のレールを組み合わせてミニカーを走らせていた記憶がある」

男「ミニカーを走らせることよりもさ、いかにかっこいいレールの組み合わせをするかに夢中になってた」

男「レールは自分で作り上げていくものなんだって、幼稚園に入る前には理解してたかな」

女「悟るのはやいなぁ」

男「小さい頃は目に入るおもちゃ全てがほしかったのに、今見ても欲しいとは思わないのってよくよく考えたら恐ろしいことだな」

女「今欲しいと思っているものも、いつかは色あせてしまうのかな」

男「青春チックなセリフだな」

女「人間関係でも同じことがいえるのかな」

男「きっと、そんなことないよ」

男「もしも、君と進む道が途中で分かれてしまっても、僕は必ず2つのレールを1つにつなぎ直す」

男「ラジコンに飽きたら二人で飛行機に乗ろう。小さいお家の模型に飽きたら二人の住む家を買いに行こう。幼いころに描いてた夢を現実にしよう」

男「好きです。付き合って下さい」

女「男くん……」

男「なんだい」

女「子供達にミニカー体中走り回されてるけど大丈夫?」

子供「わーわー!!」

男「自分が道だと思う所すべて道になるんだって学んでほしくてさ」

女「ふふっ。良いお父さんになりそうだね」

男「音楽コーナーは久しぶりにきたな」

女「CD借りたりしないの?」

男「兄貴が一人暮らしする時に懐メロ集を置いてってくれたから、そればっかり聴いてる」

女「いいなぁ」

男「どういう種類の音楽が好き?」

女「今流行の音楽。ドラマの主題歌とか」

男「ミーハーだなぁ」

女「さてここで質問です」

男「どうぞ」

女「あなたがアーティストなら、現代の人々に爆発的にウけるけど時が経ったらすっかり忘れられてしまう作品と、決して多くの人には受けないけれどあなたの死後も名作として一部の人に愛され続ける作品、どっちをつくりたいですか」

男「今の人だけに爆発的にウける作品」

女「私と同じだ」

男「同じか」

女「ふふ」

男「洋楽は聴かないの?」

女「ビートルズだけたまに」

男「好きなんだ」

女「他のアーティストを知らないってだけなんだけどね。英語の授業中にも先生たまに流してくれたりするし」

男「日本語の歌を聴いても歌詞なんて4割は聞き取れないのにさ。海外の歌なんてさっぱり聞き取れないよ」

女「わかるそれ。Jpopで何度も聴いてる曲でも、ずっと何言ってるのかわからない箇所があったりする。ある時ネットとかで歌詞を見て、こんな言葉だったんだって気づいたときから、その言葉を聞き取れるようになるの」

女「ずっと勘違いしたまま聴いてて、カラオケの時に言葉が表示されて驚いて、感激で歌ってるどころじゃなくなっちゃう時もあるくらい」

女「そのアーティストの言葉や価値観が好きで聴くようになったはずなのに。不思議と、自分が勘違いしていた歌詞の方が、しっくりくるって感じてしまうこともあるんだよね」

男「勘違いか」

女「そう。自分にとって正しい勘違い」

男「でもこれからの言葉は勘違いなんかじゃない」

女「…………」

男「女さん」

男「好きです。付き合って下さい」

女「……ごめんなさい」

男「どうして!」

女「アンパンマンマーチをBGMに告白された女の子は確かにいないとは思う」

女「もう夕方だね」

男「本当だ」

女「あっという間だったなぁ」

男「夜は家でご飯食べるんだよね」

女「うん。お母さんのお姉ちゃんが遊びにくるの」

男「俺も遊びにいっちゃだめかな」

女「お父さんと挨拶することになるね」

男「…………」

女「今日は楽しかったよ」

男「俺も。駅まで歩こうか」

女「うん」

男「結局今日は全敗だっったなぁ」

女「全勝してるって。男くんが全部棄権してるんだよ」

男「普通の女の子が受けたことのないような告白って、どんな珍しいシチュエーションだよ」

女「少女漫画みたいなやつだよ。少女漫画には女の子が叶えられない願望が詰め込まれているの」

男「まず財閥の御曹司にならないと……」

女「もっと現実的だってば!」

男「……ん」

女「また無茶なこと思いついたの?」

男「あの子供、おもちゃ売り場にいたよね」

子供「…………」

女「うーん、いたような気もする……。一人できょろきょろしてどうしたんだろう」

女「ちょっと話を聞いてみる?」

男「そうだね」



女「どうしたの?」

子供「…………」

女「お父さんとお母さんは?」

子供「…………」

女「迷子なの?」

子供「うぁわあああんん!!!」

女「ご、ごめんね!!」

女「男くん、この子迷子みたい。一緒に親御さん探す?それとも店員の人に言ったほうがいいかな?」

男「お父さんとお母さんはどこ行ったの?」

子供「……あっち」

女「場所わかるんだね。じゃあお姉ちゃんたちと一緒に行こうか」

子供「うわぁああああんん!!!」

女「怖がらなくてもいいよ!安全だよ!お姉さんわるいひとじゃないよ、にへへ」ニマァ……

子供「うわぁあああんん!!!!」

女「まずった……怖がらせちゃったみたい」

男「違う。この子は迷子じゃない」

女「えっ」

男「妹を探してるんだね」

「申し訳ございませんでした。少し離れていた間に……」

男「いえいえ」

「本当にありがとうございました。ほら、二人もお礼を言って」

子供(兄)「…………」

妹「あはは!!」

「こら、二人とも!」

男「いいんです。じゃあまたね」

女「またね」




女「(子供コーナーで小さな兄と妹の二人は遊んでいた。兄が夢中になっているうちに、妹さんはトイレに行っていた)」

女「(親御さんが少し離れている間に、小さなお兄ちゃんは妹の世話をまかされていた。妹がいなくなっていることに気付き、責任を感じて探しだしにいってしまった)」

女「(トイレから戻った妹は、兄がいないからと、自由に女児用のコーナーや文具売り場で遊んでいた)」

女「(ご両親が戻った時は、二人ともいなくなっていた。もうすぐアナウンスをかけるところだった)」

女「男くん、塾間に合いそう?」

男「間に合うよ」

女「よかった。それにしても、本当に頭いいんだね」

男「はは、どこが」

女「一人で歩いて泣いてる子供がいたら、迷子だと思っちゃうよ。迷子を探してる側だとは思わない。それで妹さんが行きそうなところまで行くなんて」

女「それにしても、どうして探しているのが妹だってわかったの?」

男「あのくらいの年の男の子は、注射されても泣かないものなんだ。俺も兄もそうだったらしい」

女「そうなんだ」

男「男の子が泣くのは、女の子を守れなかった時だから」

男「大人の兄貴が泣いたのを見たのもそういう時だったから」

女「本当に素敵な一日だったね」

男「うん」

女「ふぅー、あめやんでるかなぁ」

男「外に出てみようか」




女「あれ、雨、すっかりあがってるね」

男「傘買う必要もなさそうだ」

女「もしも凄い降ってたらどうするのが正解なのかな」

男「他の女の子だったら、1つの傘を買って帰る」

女「他の女の話は結構です」

男「君となら、一緒に雨に濡れて帰る」

女「うふふふ」

男「それにしても、君が男の子を安心させようとして、ひきつった笑顔をしたのは印象に残ったなぁ」

女「慌ててたから自然な笑顔を向ける余裕なんてなかったの!」

男「そういう人間らしいほうが、自然だなぁってこっちがほっとしちゃったよ」

女「建物の中は色んな音で溢れてたけど、外に出ると静かだね」

男「……女さん」

女「うん」

男「ちょっといいかな」

女「…………」

男「学校にいる時も、今日遊んでいる時も、君がいない一人の家での時間でも」

女「(な、なにこれ)」

男「僕はいつも君に夢中だった」

女「(綺麗な夕陽の差す、人通りのない広地の中で)」

男「君から告白された時は本当に嬉しかった。でも、こうも思っていた」

女「(好きな男の子と一対一で)」

男「僕はこの人に幸せにさせてもらいたい気持ちより、この人を幸せにさせたい気持ちが上回ってるって」

女「(わ、わっ、おまけに虹まで差してる!!)」

男「こんな、普通の場所で言うには、君には物足りないかもしんないけど。それでもやっぱり言いたいことがあるんだ」

女「(もしかして……)」

女「(こ、これは私が待ち望んでいた、理想の告白っ!?)」

男「何度でも言うよ」

女「(私、今、告白されかけてる?)」

女「(自転車に空気を入れてるときでも、学生の溢れる玄関の昇降口でもなく)」

女「(迷子の子供を見つけた後の、虹の差す輝かしい夕陽のもと、二人きりで)」

男「女さんのことが――」

女「ちょ、ちょっとまって!!」



女「(気づいてしまった)」

女「(不器用な男くんを、私はずっと好きだった)」

女「(子供の思考や恋愛にまつわる考え事に鋭い想像力を発揮できても、少女漫画が好きな女の子が求める告白に関してはからっきしアウトなことをし続けるところも、全部含めて男くんなんだ)」

女「(たとえ、今日という日以降、素敵なシチュエーションで告白されることが一生ないとしても)」

女「(ゴミ捨て場のど真ん中でカラスが私の頭にとまってるときでも、腹痛のおじさんが公衆便所の外まで聞こえるような物凄い大きな音を出している時でも)」

女「(男くんからの告白ならどんな場所でもどんな時でも嬉しくて、どんなセリフでも受け入れたいくらい彼のことが好きなんだ!!)」

女「(変なタイミングで告白してくる男くんも含めて大好きなんだ!!)」

女「(たった一度の、奇跡の瞬間だけを気に入って男くんの告白を受け入れることなんて私にはできないんだ!!)」

女「わ、わたしも!!」

女「いつもの男くんが好き!!!」

バッ!!!!

女「うう……」プルプルプル…

女「今、告白してください!!」

男「…………」

男「…………」

男「…………」




女「(あれ)」

女「(どうして)」

女「(わたし、ブリッジなんてしてしまっているんだろう)」

女「まって!ちがうの!!」プルプル…

男「こ、これは……」

女「男くん!これはね!」

男「これは……!!」

女「これはね!!!」

男「これは!!!!」

男「これは、僕が待ち望んでいた、理想の告白っ!!」

女「ええええ!?」

~Fin~

おしまいです。
読んでくれてありがとうございました。
オチは当初から真剣に考えていました。


ツイッターアカウント
@humikiri5310

新しいSSを投稿する時につぶやきます。
次は受験勉強かドラゴンの話を投稿する予定です。

おつおつ
理想と願望は違うもんだな
次回も楽しみだ

どういうことなの……乙

どういうことなのか分からないが
面白かったぜ!楽しませて貰ったわ
雰囲気が好みだったわ次回作も期待!

お墓、混浴に続いて読んでくださった方もいたみたいで、ありがとうございました。

次回作が長編なので、投稿までしばらく空く予定です。

HTML化依頼を出してきます。


楽しみにしてる

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