健夜「無事に閉幕インターハイ」咲「日常編、ですね」 (714)

健夜「そろそろ閉幕インターハイ」咲「終盤戦、ですね」
健夜「そろそろ閉幕インターハイ」咲「終盤戦、ですね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483081118/)の続きというか、小ネタ集みたいな物です。

いつも通り、咲さんの性格が改変されているので注意です。
前回同様、まったり更新ですので気長にお付き合いくださいっ。
では、よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1489830370



【episode,1冬の日】

~茨城県・つくば女子高校、麻雀部部室~



咲「……戻りました」ガラララ


健夜「あ、おかえり咲ちゃん」

健夜「外、寒かったでしょ」ヌクヌク


咲「むっ…」


健夜「うん?」フフ


咲「これ見よがしにおこたでヌクヌクして…」ジト-


健夜「ふふ、麻雀で負けた咲ちゃんが悪いのである」ドヤ


咲「オーラスに天和出されて捲られるなんて、屈辱です…」グヌヌヌ


咲「しかも正真正銘、偶然の天和ってなんですか、あれ」

咲「偶然に見せかけてお得意の積み込みですか?」


健夜「お得意の!?」ガ-ン


咲「だいたい、私が勝ち越してたんですからあの試合は私が負ける流れでしたし…ずるいです」

咲「±0を利用して私をパシリにするなんて……この鬼畜っ」


健夜「やろうって言ったのは咲ちゃんだよね…?」


咲「まあ、そうですけど……」メソラシ

咲「ま、良いです。では、私も失礼して」ヌクヌク


健夜「ん」スス



咲「ふあぁ…」

咲「温かいです」ニヘラ


健夜(可愛い)

健夜「って、ちょっと狭いよ咲ちゃん」ギュ-


咲「ここは私の席ですもん。隣が嫌なら、健夜さんが動いてください」プイ


健夜「何という暴論…」


咲「ふふっ…♪……っと、そうだ」ゴソゴソ

咲「はい、約束のプリンです」つプリン


健夜「あれ…ほんとに頼んだ物買ってきてくれたんだ」イガイ


咲「どういう意味ですかそれ…」ジト



健夜「あ、あはは…咲ちゃんの事だから、新商品のハバネロ味とか買ってくるかと思って」


咲「ああ、それも考えましたけど」


健夜「やっぱり考えたんだね!?」


咲「店員さんに、お前そんなの食べるのか?って思われたく無かったのでやめておきました」


健夜「できれば、私の事を考えた上で踏み止まって欲しかったよ…」


咲「そうそうそれと、レジで今日は健夜さんと一緒じゃ無いのかと聞かれたので」

咲「買ってこいと言われたんです……と言っておきましたからね」フフ


健夜「ちょ、やめてよ…教え子にパシりさせてると思われちゃうじゃん!」


咲「大丈夫ですよ。困った事があったら相談してね、としか言われませんでしたし」


健夜「それ全然大丈夫じゃないよっ!」



健夜「もう…次からは私もついて行かなきゃ」


咲「それだと賭けの意味が無くないですか?」

健夜(元々±0で、次どっちが勝つか予想がつくから、そもそも賭けとして成立してるか怪しいんだけどね……)

健夜「まあ、負けた方が払う~とかで、良いんじゃないかな」


咲「その手がありました」


咲「私が負けたら店員さんに、無理やり健夜さんの分も買わされたんです…と言えば良いわけですね」


健夜「お願いだからやめて……」


咲「えへ、冗談ですよ」

咲「それでは、次からは一緒に行きましょう」


健夜「放っておくと、ここらの人に変な目で見られる事になりそうだからね」


咲「ふふふ、そんな事にはなりませんよー」


健夜「棒読みすぎる…」


咲「ああ、そうだそれと」ポン

健夜「ん?」


咲「帰ってくる途中に雪が降ってきてましたよ」


健夜「えっ、嘘!?」


咲「まだ小雪でしたけど、大雪になるかもしれませんね」


健夜「道理で寒いわけだよ…」ウゥ


咲「健夜さんは雪、嫌いですか?」


健夜「うぅん……」カンガエ


健夜「綺麗で良いなぁ、とは思うけど、寒いし道が凍って危ないし……微妙な所だよね」


健夜「咲ちゃん、よく転びそうになるからハラハラするし」


咲「う、うるさいですね……」フイッ


健夜「そういう咲ちゃんはどうなの?」


咲「今はそんなでも無いですね。」


咲「小さい頃は、よくお姉ちゃんと雪合戦したりしてましたけど……」


咲「今となっては、よくもまああんな苦行を楽しめていたと思いますよ」


健夜「苦行は言い過ぎじゃないかな……。雪合戦を楽しんでる小さい子に謝った方がいいレベルだよ」


咲「だって、寒い中冷たい雪をぶつけ合って楽しんでるんですよ…?」


咲「小さい頃は楽しかったのかもしれませんけど、今ではとんでもないです」


健夜「そうだなぁ…」


健夜「それなら、雪だるまとかは?可愛いし、良いんじゃないかな」


咲「溶けちゃうじゃないですか」


健夜「それはまあ…雪だしねぇ」


咲「可哀想じゃないですか」


健夜「可哀そ……うん?」ハテ


咲「昔、作った雪だるまに名前を付けて可愛がってた事があるんですよ」


咲「冷蔵庫に保管して、大切に」


健夜「へえ。可愛いね」


咲「ダルマちゃんって名前だったんですけど」


健夜「ネーミングセンス……」



咲「でもある日、別れは突然やってきました」


咲「なんと、誰かが手を滑らせたのか。冷蔵庫付近で落ちて潰れてしまっていたんです。だるまちゃんが」


健夜「あーあ…誰がそんなことを…」


咲「……お母さんにこっ酷く叱られました」


健夜「自らの手で殺めてたんだね!?」


咲「あの時は怒られるし、だるまちゃんが死んでしまって哀しいしで、もう泣きそうでした」


咲「なので私は、雪だるまは作らない事に決めたのであった。おしまい、です」


健夜「咲ちゃんの雪に対するイメージがアレなのは分かったよ…」



咲「……まあ、でも」ヌクヌク


健夜「うん?」


咲「こうやって炬燵で健夜さんと話しながら、まったり眺める雪は、嫌いじゃありませんよ」チラ


健夜「……」

健夜「……ふふっ、私もかな」クス


咲「……」カンガエ


咲「積もったら、雪合戦でもしましょうか」


健夜「おお、珍しいね」


咲「健夜さんは避けるのと投げるの禁止ルールで」ニコッ


健夜「それはただのイジメだよ!?」ガ-ン


咲「ふふっ」クスクス






咲(……雪、積もると良いなぁ)




【episode1,冬の日、カン!】

こんな感じで、短いのやら長いのやらをポツポツ投下していきますっ
前回完結出来なかった長野編も完結させようと思います。

【さぶすとーりー・観察!宮永咲】

~某日・つくば女子校1年教室~




先生「......という事があり、1942年にとある海戦が勃発した訳だな。MI作戦というのは、この戦いに敗れた事で中止とした作戦の事だ」


先生「んー……」キョロキョロ

先生「宮永、この戦いの名前を答えてみろ」


咲「はい」スッ

咲「ミッドウェー海戦です。この戦いで受けた甚大な被害は、文字通り致命的な物となりました。」


先生「うむ、正解だ。ここはテストに出るので、全員しっかり覚えておくように」


先生「宮永、座っていいぞ」


咲「……」スワリ



「さすが宮永さん…当てられても、いっつもそつなく答えてるよね」ヒソヒソ

「しかも習ってない所だし……」

「カッコイイよね…まだ、あんまり話したことないけど」コソコソ

「私も私も。授業終わったら話しかけてみようかなぁ…」

「えー?やめときなって!困らせちゃったら可哀想だよ」





少女「……」


少女(私は少女。席は宮永咲さんの斜め左後ろ。身長147cm、チャームポイントはポニーテール。小さいから、よく引っ張って遊ばれる……そんな私です)


少女(って、誰向けの自己紹介なのでしょうか?)


少女(今日もこの絶好の観察ポジションから、宮永咲さんを観察しているのです)



少女(……にしても、宮永咲さん)


少女(中学はつくば中学……ここの付属ですし、エスカレーター式で上がって来たのですよね)


少女(私は高校からここへ入ったので、同じくエスカレーター式で上がったきた友達から聞いたのですが)


少女(どうやら、中学の頃からあまり人と関わりを持たない子だったとか…ですが、仲の良い友達が2人と、後輩が居たという噂もありますね…)


少女(つくづく、ミステリアスな人です)


少女(立てば芍薬座れば牡丹、そんな言葉がありますが、それは宮永咲さんの為に作られたのではないかと思うほど素敵な彼女…)


少女(是非とも!そんな宮永咲さんとお友達になりたくて、この席から機を伺っているわけなのです!)



少女(……ですが…)


少女(……ですが、入学して早2ヶ月…)グッ




少女「どうして1度も声を掛けられていないのですかぁぁ!!!」ガタッ


咲「ひぅ……!?」ビクッ



「な、なになに?」

「少女ちゃん、いきなりどうしたの…?」

「寝ぼけてたのかな…」


少女「……あ」ヤッテシマッタ


先生「少女ぉ……?授業中にいきなり叫ぶとは、いい度胸だなぁ……?」ピキピキ



少女「あ、あ~……」


先生「あぁ……?」


少女「……えへっ、ミッドレンジ海鮮丼ですよね!覚えてますよぉ!」


先生「少女ぉぉぉぉぉ!!!!!」


少女「ぴぃぃぃぃぃ……っっ!!」




あははははは!
なにやってるのウケるw
せんせーこわいー






咲「……」ナンナンダアノヒト


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~業後~


少女「シクシク…罰としてこの量のノートを職員室まで持ってこいだなんて…先生、鬼畜です……」フラフラ


少女「お、おおお……おっとっと……」グラグラ


少女「い、意外と重いですねこれ……というか下が見えなくて階段が降りずらい…」フラフラ


少女「はぁ……どうして今日に限って、あんな事をしてしまったのでしょうか」ヤレヤレ

少女「って、今更嘆いても仕方ないか……早く持って…」



「よいしょ…っと」つノート半分持ち



少女「え……?」チラ



「危ないですよ、そんなヨロヨロ歩いて」ヨイショ


少女「み、みみ……」




少女「宮永さん!?」


咲「私、ノートを出し遅れたんです。追いついて良かった」


少女(み、宮永さんがこんなに近くにっ……!!)


咲「えっと、これ職員室に持っていけば良いんですよね」


少女(はうあっ……なんかいい匂いします…)スンスン



咲「……あの、少女ちゃん…?」


少女「はっ……!!」

少女「み、宮永さん!ノートですね!はい、持っていきます!お任せ下さい!!」


少女「ってあれ、なんだか軽くなってる気が……」


少女「えっ、宮永さんどうして半分持ってくれているのでございますか!?」



咲「あ、えっと……(変わった子だなぁ…)」

咲「まあ、細かい事は良いので早く運んじゃいましょう。放課、終わっちゃいますよ」テクテク


少女「そんな悪いです……って、宮永さん待ってくださいよぉ~!」アセアセ


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咲「失礼しました」


少女「失礼しましたぁ…」グスン

少女「うぅ、言われた通り運んだのにまたお説教されるなんて…」シクシク


咲「あはは、災難でしたね」


少女「すみません、手伝って貰った上に隣でお説教まで聞かせてしまって…」


咲「いえ。あの様子では階段で転げ落ちそうな感じでしたし」クス


咲「困った時はお互い様ですよ」ニコリ


少女「!!!」ズッキュ-ン



咲「では私、少し中等部に用があるので行ってきますね」


少女「えっ?あ、はいっ……お気を付けて行ってらっしゃいませ……っ!」


咲「あはは、何ですかそれ。では、また後で」タッタッ



少女「……」

少女「誰ですか、人と関わりを持たないくーるびゅーてぃだなんて呼んだのは!!」


少女「すっごい可愛い!!ほっときゅーてぃーじゃないですかぁ!!」

少女「危うく、1発で落とされてしまう所でしたが……よくやりました少女、そんなチョロい女ではありませんね」フンス



少女「……」

少女「でへへ……"また、後で"かぁ…/////」オチテル


少女「このまま仲良くなれると良いなぁ…」


少女(……あれ?そういえば宮永さん、ノートを出しに来たのでは…?中等部に行くという目的もあったのでしょうか…)


少女(でもよくよく思い出してみて、宮永さんはノートなんて持っていたでしょうか?というか、観察していた感じでは授業中に出していたような……)


少女「うぅん……謎ですね…」鈍感


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~中等部~


咲「よし、マホちゃんへの用も済んだし…教室戻ろっと」


咲「……」スタスタ


中学生「あぅ……お、重い…」フラフラ



咲「……?」ピタ


中学生「うぅ…どうして今日に限って係りが私しかいないのよ...」テクテク



咲「……」



中学生「わわわっ、危な、倒れ……っ!」ヨロッ

中学生「きゃあっ……」グラッ



中学生「……」ポフ



中学生「……あれ、倒れない…?」チラリ



「危ないよ、フラフラしながら歩いて」


中学生「へっ……?」

中学生(この人が抱きとめてくれたんだ……)


「大丈夫?丁度私も中等部の職員室に用があったから、手伝うよ」


中学生「こ、高等部のせんぱい……?」ドキ





―――――この後、中等部にて謎の先輩の噂が一時期流行り、色々と察したマホに咲が叱られるのは、また別のお話。



【さぶすとーりー・観察!宮永咲、カン】

少女ちゃんは友人ポジで度々出てくるかもです。

何か、シチュエーション(?)の良い案などあれば参考にしますので是非よろしくお願いしますっ。


【さぶすとーりー!阿知賀女子と空回り咲さん】

~インハイ期間、阿知賀ミニ合宿時・咲宿泊ホテル~



玄「ぽんっ!」


咲「ロンです。8000」


玄「はうっ……ま、また直撃…」


咲「本当に松実さんの手は読みやすいですね…まるで手牌が透けているようです」


玄「うぅ…ドラがいっぱいで嬉しいんだけど…」


咲「あ、そうだ。今から私、開幕で二連続カンするのでその後の松実さんの手牌がどうなるか見てみません?」


憧「鬼か!!」


灼「開幕二連続カンって、どこの言語……?」


咲「どうです?ドラが赤含めて16枚になるんです!」


咲「これには松実さんもニッコリですよね」


玄「ならないよ!?ていうか、そんなに入ってきたら何も役が作れないよ…」


憧「ドラにもよることない?上手く行けば、ツモ、ドラ14とか出来そうね」フムフム


灼「同じドラが連続で来るなら、四暗刻とか四槓子も夢じゃない…」ワクワク


咲「むしろ、その辺りの役満は比較的作りやすいかもです。赤が邪魔ですが」


玄「えっ、どうして3人ともちょっとワクワクしてるの!?やらないよ!!」



咲「ふふっ、やるもやらないも私の手に掛かっているんですよ」フンス


咲「私がカンと言えば、玄さんの手牌の内数枚が確定するわけですから、かなり面白そうですね」


玄「お願いしますやめて下さい!!」


咲「そうは言っても、準決勝本番では松実さんのお願いなんて誰も聞いてくれませんよ?」


憧「チャンプに、カンはしないで下さいってお願いする訳にもいかないしねぇ」


灼「鼻で笑われるとおも……」フフ


玄「か、カンなんて早々できる事じゃないし……って、咲ちゃんの前で言ってもって感じだけど…」ズ-ン



灼「でも実際、致命的な弱点があるって事は考えなきゃダメな事…」


咲「大丈夫ですよ。秘策……それもとっておきのがありますから」ニヤリ


憧「おっ?さっすが咲!」


灼「それさえあれば玄は新ドラゴンロードになるね」


玄「それは一体!?」


咲「カンされる前に和了る♪」ウィンク


玄「咲ちゃん相手には天和地和しろってことだよね!?秘策っていうか、最早祈らなきゃやってられないよ!!」


玄「2人も何か言ってよ……」チラリ


憧「なるほど…その手があるわね…。役満も和了れて、一石二鳥……?」


灼「常人には考えの及ばない戦略……凄い」


玄「憧ちゃん灼ちゃん!?」ガ-ン


咲「阿知賀のドラゴンロードさんにかかれば、お手の物だと思いますけど」


玄「大体、その呼び名も誇張しすぎだよ…私、そんなに恰好いい渾名付けられても困っちゃうし」


咲「いや、特にカッコ良くは無いと思いますけど……まあ松実さんのためにそれは言わないでおきましょう」


玄「言っちゃってるよね…全部包み隠さず本音言っちゃってるよね…」


咲「命名者の三尋木プロには悪いですけど、正直ちょっと痛いですよね」


玄「それ以上言わないで……もう、酷いよ咲ちゃん」プクー


咲「ふふ、すみませんって」クスクス

憧「??????」ジ-ッ

憧「ね、なんか咲って玄と仲良くない?」ヒソヒソ


灼「確かに、距離は近いね……玄のツッコミが小鍛治プロに似てるからかも」コソ


憧「あぁ、ありえそうね」アハハ


咲「ところで、少し気になっていた事があるんですけど」


憧「ん?」


咲「さっき、少しだけ奈良県の予選の映像を見させて貰いました。あの時、晩成高校と打っていて、どうでしたか?」


灼「どう……って?」


咲「いえ。非常に言い辛いんですけど、あの時点での阿知賀女子が晩成高校に勝つのって、ビーバーの作ったダムが決壊する可能性くらい低いと思うんですよ」


憧「それって低いの……?高いの…?」


玄「さ、さぁ……」

玄(相変わらず咲ちゃんの例えは分かりづらい…)


灼「非常に言い辛いって言いつつ、随分すんなり発言してたけど…」


玄「えっと、私が打ったのは小走やえさんって人だったんだけど…凄く強かったよ?」


咲「小学生並の感想ですね…それは分かりますよ」

咲「最強の能力者ドラゴンロード松実さんの能力に初見で対応して、+収支でしたし。名門のエースって言うのも頷けます」


玄「咲ちゃんは私のツッコミを待ってるのかな…」


憧「じゃないの?ほら、なんか目がキラキラしてるし」


灼「キラキラっていうか、イキイキ……?」


咲「結論から言うと、皆さんはあの時明らかな格上と対戦した訳です。初めて出る大会で」


憧「まあ、そうね。内心じゃヤバいなーって思ってたし」


灼「序盤からラスボスと当たった感じだったしね」


咲「……良いですか?それを踏まえてです。明後日から全国の強豪……それも、最上位勢と対局するわけですよね」


玄「うぅ…改めて言われると緊張してきたよ…」


咲「そこです。その事に怯んでしまうかもしれませんが、阿知賀女子にとってその状況は県予選からずっと経験してきた事と同じ」


咲「何も変わらない、相手が少し強くなった程度の事なんです」



玄「す、少し強くって…」


咲「なので、絶対に相手の雰囲気に飲まれないでください。特に松実さん」


咲「宮永照はインハイチャンプ…言わば、王者な訳ですけど、予選で戦った小走さんだって、王者の打ち筋で有名だそうじゃないですか」


憧「ごめん、この子はさっきから何を言ってんの?」


灼「ちょくちょくゴリ押し理論展開する………」


咲「つまり、王者を降した松実さんなら宮永照だって倒せるハズなんです」


玄「あ、あれ……?さっきは、私じゃ勝てないから他の2校と協力しろって…」


咲「ええ、まあ、現実的に考えたらほぼ勝てないでしょう。ですから、心構えの問題です」


憧「最初から負ける気で卓に着くなってこと?」


灼「ていうか、咲の発言がさっきから矛盾しまくってる……」


咲「難しいんですよ、松実さんに説明するのは…ほら、メンタル凄い弱そうですし…」


咲「下手したら精神崩壊までありますよ」


憧「こわっ!?」


玄「い、今の発言で既に若干メンタルが弱まっちゃったんだけど…」


咲「なんだか面倒になってきたので、一言に纏めますね」


灼「諦めた…」


咲「松実さんは対局前に必ず、心の中でも声に出してでもどちらでもいいです」


咲「"よし、頑張るぞ"と呟いてください。おまじない、約束です」


玄「それだけで、良いの……?」


咲「はい。出来れば、今日の私との会話を思い出してくれたら、尚おっけーです」

咲「後、これから私は本気で松実さんを潰しにかかるので、その事もですね」


玄「……えっ」


咲「宮永照だって、少しは骨のある相手と戦えた方が楽しく打てそうじゃないですか?」


咲「なので、松実さんが宮永照を本気にさせましょう!それはもう、つまり実質的に松実さんの勝利という事ですよ!」ウンウン



憧「ごめん…二回目だけど、この子は何を言ってんの?」


灼「分かんないけど、すっごい楽しそう………」



玄「わ、分かったよ!とにかく気合いって事だよね!」


憧「玄は玄で、納得できたの!?」


咲「よし。それじゃあ、頑張りましょう松実さん」


玄「頑張るよ!咲ちゃん!」


灼「玄が洗脳された…」


憧(やっぱり、この2人はどこかしらで気が合うのかもしれないわね…)


~隣の卓~


マホ「健夜さん健夜さん、先輩が近年稀に見る暴走をしてますです」


健夜「ほんと稀にだけど、言ってる事滅茶苦茶になる時があるからね…」


穏乃「さっきまでのクールな咲はどこに…?」


宥「あの咲ちゃんも可愛いよ~」フフ


健夜「多分、咲ちゃんは咲ちゃんで色々考え過ぎて空回りしてるんだと思う…」


マホ「優しい目で見守ってあげて欲しいです」




健夜(でも、あんな楽しそうな咲ちゃんは珍しい…)

健夜(少しだけ、阿知賀が咲ちゃんに頼ってきた事に感謝だね)フフ



【さぶすとーりー!阿知賀女子と空回り咲さん、カン!】

原作での小走先輩とちゃちゃのんの活躍を割と期待してます…
ちゃちゃのんはゲームだとめちゃくちゃ強いですよね。

怜と明華了解です。レスありがとうございますっ(ペッコリン)


【後夜祭episode,1】

~インハイ後夜祭・健夜との事後、雀卓スペース~



みなも「もー…咲ってば、どこ行ってたの?」ギュッ


咲「あはは…私はインハイ出てないし、隅に居ようかなって思ってたんだけどさ」


みなも「隅に居るのは良いけど、わたしも誘ってよ!……ていうか良いねそれ、これからは2人きりで過ごそ?」スリスリ


咲「み、みなもっ……あんまりくっつかれると恥ずかしいって」


みなも「だって、この前はあんまり一緒に居られなかったし…」

みなも「折角隣に咲が居てくれるんだから、くっつかない手はないじゃんっ」


咲「……もう、世話のかかるお姉ちゃんだなぁ」クス


―――――――――



和「な、なんですかあの甘い空間は…」


久「てか、咲の隣にいるあの金髪美少女は一体誰よ…まさか、あのみなもじゃ無いでしょうね」


優希「私達といる時と態度豹変しすぎだじぇ」


まこ「まあ久々なんやし、無理もないじゃろ」


和「咲さんとお話がしたかったですが…まあ、今は我慢しておきますか」クス


久「そうね。この機会だし、他校と交流でもしてきましょう」

久(あのみなもが素なのか、ツンツンみなもが素なのか…非常に気になるわね)


―――――――――



みなも「……」ジ-ッ


咲「ん、どうかした?私の顔、何か付いてる…?」ペタペタ


みなも「んーん」フフッ

みなも「なんだか、夢みたいだなって思ったの」


咲「え…?」


みなも「咲に会うためにここまで来て、本当に咲に会えてさ」

みなも「もう諦めてたのに、仲直りまで出来てこうやって話もしてる」


みなも「咲の顔をさ、こんなにも近くで見れてるんだよ?」


咲「みなも…」



みなも「夢じゃないよね……咲は、ちゃんとそこに居てくれてるんだよね」


咲「……うん、勿論だよ」ナデナデ


みなも「ん…」


咲「みなもが、私の事を見つけ出してくれた。勇気が出なかった私を、迎えに来てくれた」


咲「夢を、現実にしてくれたんだよ」ニコ


みなも「……良かった」ギュゥ


咲「も、もう……っ…この話は、この前したでしょっ……」ジワ


みなも「だって、あの時はあんまり話せなかったし…まだ、フワフワしてたんだもん」


咲「……もう…」ナデナデ


みなも「えへへ…咲の手、気持ちいい」


――――――――――――




マホ「せんぱー……」ピタ


健夜「あはは…今は2人きりにさせてあげた方が良いかもね」クス


マホ「……みたいですねっ」フフ


マホ「みなもさんとは、マホも少しお話がしてみたかったですけど…」


健夜「後でまた来よっか」


マホ「はいです!……あ、マホ宮永照さんと対局してみたいんですけど」


健夜「それ、良いね。私も見たいかも」


マホ「では行きましょー!」


健夜(面子足りなかったら私も混ざろうかな)


マホ「健夜さんは混ざったらダメですよー」


健夜「マホちゃんって、偶に心の声に反応してくるよね……?」


―――――――――



咲「そういえば、みなも」フフ


みなも「ん…?なにさ咲、その含み笑いは」キョトン


咲「これ、なーんだ」ピラ


みなも「??えっと、写真……?」スッ

みなも「一体なんの…」ピラ


みなも「……」



みなも「ふぇ!?/////」



咲「いつの間に、みなもはメイドさんになったのかなー?」クスクス


みなも「こ、ここここ、これ!!!前にまこの雀荘を手伝いに言った時の……っ!!?/////」

みなも「な、なんで咲がこれ持ってるの!?/////」



咲「このメイド服、みなもに凄く似合ってるね」

咲「生で見たっていう原村さんと先輩さんに、少し嫉妬しちゃうよ」アハハ


みなも「ち、違うの咲!!それは無理やり着させられたやつで……っ!!」


咲「ちなみに、こんな動画もあるのです」つスマホポチ-




『やっと終わった…こんな服、早く脱ご……』

『……』ピタ

『の、和は似合ってるって言ってたけど…』チラリ

『……』



『い、いらっしゃいませ…ご主人様っ』ニ、ニコ




『……なんちゃって』

『…』

『あぁぁぁぁぁぁ/////い、今のなしっ!!なしなしなしっ!!/////』カァァ

『……って、わたし1人で何をやってるんだろ…/////』






みなも「」



咲「この動画、奇跡的な可愛さだなって思うよ」クスクス

咲「20回くらいリピートしたもん」


みなも「……ねえ、咲…」


咲「ん??」


みなも「その写真と、動画……誰が"隠し撮り"して、咲に送るなんてマネしたのかな?」


咲「え?原村さんだけど(それは秘密の約束だから、言えないかな)」


みなも「ありがと、咲。ごめんね、少し席外すから待っててね、すぐ戻るから」ユラァ


咲(あっ、口が勝手に……)


咲「み、みなも。私も悪ふざけが過ぎたっていうか、あんまり怒らないであげてくれると」


みなも「ウン、ワカッテルヨ」ゴゴゴ



咲(あ、私の言葉すら届いてないや)

咲(……ごめんね、原村さん。南無)テヘッ



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



咲「みなも、一体原村さんにどんな鉄槌を……ちょっと気になるな…」


玄「なにが気になるの??」ヒョコッ


咲「うわっ……」ビク


玄「そ、その反応は傷付くよ咲ちゃん!!」ガビ-ン


咲「玄さんでしたか…」ビックリシタ

咲「すみません、急に背後から声がしたのでビックリしちゃいました」


玄「あ、そうだったの…ごめんね、驚かせちゃって」


咲「ええ、気を付けてください。危うく玄さんにドラが一生来ないオーラをぶち当ててしまう所でした」


玄「そんな事出来ないよね!?」

玄「……」カンガエ


玄「……できない、よね…?」


咲「……」

咲「当たり前じゃないですかー」


玄「い、今の一瞬の間は何かな……?え、ほんとに出来るの……?」ビクビク


咲「出来るはず無いじゃないですか。だいたい、オーラってなんですか?」シレツ

咲「ぷぷ、玄さんテレビの見すぎだと思います」


玄「がーん……咲ちゃん、酷いよ…」シクシク



咲(がーんって、口に出すの健夜さんくらいかと思ってたよ)


咲「すみません。私だって、久々に玄さんの顔が見れて舞い上がってるんですよ」

咲「……察してください、それくらい」プイッ


玄「咲ちゃんっ!!」パアッ


玄「えへへ…咲ちゃんがそんな事言ってくれるなんて、嬉しいかも」テレテレ


咲「えっ、何がですか?」


玄「へっ?」


咲「ん?」キョトン


玄「あ、いや……あれ?」

玄「……もしかして、またからかった…?」


咲「……」

咲「…ふふっ……」


玄「も、もーーー!!咲ちゃんっ!!/////」


咲「あっはっは!!だって、玄さん…ふふっ……すみませんっ、つい…あははっ!」クスクス



玄「咲ちゃんのいじわる!ばか!えっと……いじわる!」


玄「今日の咲ちゃんは、いつにも増していじわるだよ!」プンスコ


咲「ふぅ……」

咲「ごめんなさい、玄さんが相変わらず可愛らしい反応をするので」フフ

玄「か、かわっ……!?/////」カァ


咲「数日ぶりですね、玄さん」ニコリ



玄「も、もう……調子良いんだから…っ」ニヘラ



咲(大丈夫なのかなこの人……ドラゴンロードじゃなくて、チョロゴンロードなんじゃ)



玄「…探してたんだよ?メールしても返ってこないし、中々見つからないし!」


咲「あー…周りの音が大きいのでメールは気付きませんでした。見つからないのは、隠れてたので仕方ありませんね」

咲「そういえば、玄さんだけですか?」キョロ


玄「皆も途中まで一緒だったんだけど、あそこでマホちゃんと宮永さん、大星さんと辻垣内さんの4人で対局してて」

玄「小鍛治プロも居たから、挨拶ついでに見てくるって」


咲「へぇ、マホちゃんとお姉ちゃんが?それはちょっと気になりますね」

咲(お姉ちゃんに勝つのは、まだ少し難しいかな……いや、今なら良い勝負できるかもだけど)


玄「あ、ならこれから一緒に見に行く?」


咲「それは遠慮しておきます。一応、ここで人を待ってるので」


玄「人……?」


咲「清澄の大将です。私のお姉ちゃんなんですよ」クス



玄「へえ、和ちゃんの高校の……」

玄「……」


玄「えっ!?お、お姉ちゃんっ!?確か、宮永みなもちゃん……」


玄「み、宮永……!!」ハッ



咲「玄さん、表情がコロコロ変わって面白いです」アハハ

咲「ま、お姉ちゃんと言うか、姉妹みたいな関係って事ですけどね」


玄「な、なんだ…ビックリしちゃった」


玄「でも、そうだったんだね…。確かに、長野予選の映像を思い出すと咲ちゃんみたいな雰囲気が放たれてた気がするよ」


咲「それは良い意味で捉えれば良いんですかね?」


玄「も、勿論!あの子も凄く可愛いし…」


咲「……玄さんって、見境ないんですね」ジト

咲「みなもに手を出したらダメなんですからね」



玄「えっ!?そういう意味じゃないよ!!」アセアセ

玄「むしろ、私は咲ちゃんだけというか……なんというか……」ゴニョゴニョ


咲「ま、その話は良いです」

咲「今更ですけど、決勝はお疲れ様でした。見てましたよ」


玄「あ、うん…折角だし、優勝できたら良かったんだけどね」


咲「それは、まあ……なんていうか」


みなも「うん、高望みだよね。100回あの決勝をやっても、今の阿知賀じゃ1回の優勝も出来ないと思うよ」


咲「あ、みなも。おかえり」


玄(い、今散々な事言われた気がする……)



みなも「ただいま、咲」


みなも「この人知ってる、阿知賀の松実玄でしょ?初めまして、宮永みなもだよ」


玄「は、初めましてっ!松実玄と言います…」


咲「みなも、ダメだよ。そんな事言って」メッ

みなも「ふぇ?」チラリ


玄「あぅ……」


みなも「あっ、ごめん。別に悪気があって言った訳じゃ無いんだけど…」


玄「う、ううんっ。大丈夫だよっ」


咲「みなもは、阿知賀の敗因はなんだと思うの?」


玄(えっ、この話続けるんだ!?)




みなも「正直、阿知賀に敗因はないよね。先鋒から大将まで、よくやったと思うよ」


玄「どういうこと……?」


みなも「単純に、他の3校が阿知賀よりも強かったってだけ」

みなも「あー…一つだけ他に挙げるとしたら、エース級の選手がいないってことかな」


玄「エース級の……」


咲「白糸台にはお姉ちゃんと大星淡、臨海はほぼ全員、永水は神代小蒔、薄墨初美、石戸霞だね」


みなも「もしもさ、阿知賀の大将が咲だったら確実に優勝してたと思うよ」

みなも「言いたい事分かるかな」


玄「なんとなく、分かるかも……?」


咲「私が居たら云々は置いておいて、そこは来年に向けての課題ですね」

咲「私的には、玄さんがそのポジションに着くと最善かなと思っていますけど」


玄「わ、私!?」


みなも「ま、そうだね。今年のインハイ、玄は相手が悪すぎただけだよ」

みなも「照お姉ちゃんは麻雀が巧いから、玄みたいなのは確実に封殺されるし」


咲「かと言って、玄さんが先鋒にいないとドラがお姉ちゃんに回っちゃう悪循環だね」


みなも「うん。だから、お姉ちゃんが引退した後の来年は猛威を振るえるんじゃない?」


玄「私、今年のインハイでちょっと自信失いかけてたし…その言葉は嬉しいかも…」


みなも「自分は弱いかもって?」


玄「うん……」


みなも「冗談やめてよ。ドラ占領できる人が弱いって、わたしが知らない内に麻雀インフレしすぎでしょ」


咲「言ってるじゃないですか。玄さんは自信を持っていいんですよ」



玄「そうなのかな」


みなも「って、2回戦敗退のわたしが言うのもアレか」


玄「い、いやいや!予選の天江衣さんとの対局は見たし、凄い人がいるんだなって思ってたよっ」

玄「さすが、咲ちゃんのお姉ちゃんだなぁって」


みなも「!!」

咲「むっ……」

みなも「え、えへへへ……そう?やっぱり、咲のお姉ちゃんに相応しいって思う?」


玄「え?う、うんっ!」コクコク


みなも「そっかそっかぁ…ふふ…♪」

みなも「咲!中々見どころあるよね、玄って!」エヘヘヘ


咲「……やっぱり、私の方がお姉ちゃんっぽくないですか」


玄「えっ?」


みなも「もー、またぁ?わたしがお姉ちゃんだって、5年前に結論は出たはずだよっ!」フンス


咲「玄さんはどう思うんですか」


玄「どうって…そんな、私に聞かれても困っちゃ」


咲「ど う 思 う ん で す か ?」


玄「ひっ……」ビクッ


みなも「当然、わたしでしょ?」ジリッ

咲「私を選びますよね?」スス


玄「えっと、その……」オロオロ


みなも「はっきりしてよ」


咲「私、ですよね」ニッコリ



玄(だ、誰か助けてぇぇぇぇぇっ!!!)



【後夜祭episode,カン!】

これより数レス、前回終わらせられなかった長野編です。
忘れてしまった方は、みなもが咲に会うために清澄麻雀部へ入部して、和と仲を深めて、みなも家で合宿をして、さあいよいよ予選だ!
……という感じで、思い出して頂ければっ。

【story.6県予選】


~県予選当日・会場~


優希「おっ、来たじぇ!」


久「良かったわ、間に合って」


まこ「おはようさん」


みなも「おはよ」


和「おはようございます。無事、宮永さんを連れて来ました」


久「お疲れ様。ありがとうね、和」


和「いえ、お易い御用です」


みなも「別に、一人で来れたのに」


和「さっそく駅で迷子になった挙句違う電車に乗りそうになっていた人のセリフですか…」


みなも「てへ、緊張しちゃって☆」


和「私の方が間に合うかドキドキでしたよ…」ハァ


みなも「それで?予選って、どんな日程なの?」


久「そうね。改めて確認しておきましょうか」


久「まず、団体戦は今日と明日で行われるわ。今日が4つある各ブロックの1、2回戦」

和「明日が決勝戦ですね」


優希「随分と少ない対局数だじぇ」


まこ「それが逆に緊張感を生むのう」


久「4つあるブロックで、各ブロック1位のみが上へ進める。つまり、2回連続でトップ通過をした高校が、決勝へ進むという訳ね」



和「インターハイは1位と2位まで上へ進めますから、比べるとやや厳しいですね」


みなも「つまり、負けなきゃいいって事?」


久「そゆことね」


みなも「ん、了解」


和「随分とあっさりですね…」


みなも「言ったでしょ?全国までは、私が連れて行ってあげるって」


みなも「大船に乗った気持ちでいなよ」


優希「さっすがみなちゃん!頼りになるじぇ!」


和「宮永さんが言うとフラグに聞こえないのが不思議ですね」


みなも「ふらぐ…?旗がどうし」


みなも「……!?」ピクッ


久「あら、あれは…」



モブ「おい!来たぞ!」

モブB「あれが、去年の長野王者……」


記者「今年も去年のメンバー勢揃いだからなぁ…長野代表は、龍門渕で決まりか?」



一「うわぁ…なんかボク達凄い注目浴びてるよ…」

透華「当たり前ですわ!ほら一も、もっとアピールしなさいな!」

一「ボクは良いよ」

純「衣がいたらもっと凄いことになってただろうな」

智紀「試合に間に合えば良いけど……」

純「オレで終わらすから大丈夫だっての」




モブ「あれが、前年度全国MVPの天江衣を擁する龍門渕高校……」

モブB「やっぱ迫力あるな」



みなも「……」ジッ


久「さすがの注目度ねぇ…」


和「宮永さん?」


みなも「……あの金髪は…」


久「あれが龍門渕透華さんね。2年の、副将」


みなも「やっぱり、あれが龍門渕透華……」


和「あの方がどうかしたんですか?」


みなも「……いや。なんでもないよ。和の相手だよね、あの高飛車な態度をへし折ってきなよ」

和「高飛車ということなら、宮永さんも負けていませんよね」


優希「その通りだじぇ」ウンウン


みなも「うるさいな」



みなも(ビデオで見た、去年の試合後…)

みなも(県予選くらいなら、目覚めることも無いか……?)


みなも「私は別に、強いヤツと戦いたい願望とかは無いけどさ」

みなも「ちょっとだけ、あそこと戦うのは楽しみだよ」


久「龍門渕と戦う事になったら、みなもの相手はあの天江衣よ?」


みなも「去年のMVP、ねぇ」


みなも(本調子でもなかったのにお姉ちゃんより良い成績を残したのは、確かに凄い)


みなも「さすがに、わたしも楽には勝てないかもね」


久(勝つことは前提な所がこの子らしいわねぇ…実力的には5分だと思うけど、秘策があるのかしら)


アナウンス『間もなく、県予選1回戦が始まります。出場選手は、速やかに対局室へ移動してください』



優希「おっと!いよいよ私の出番だな!」


和「頑張ってください、ゆーき」


まこ「期待しとるけえの」


久「リラックスして打ってきなさい」


みなも「飛ばなきゃなんでもいいよ。」


優希「おうよ!行ってくるじぇ!」


みなも「あ、ちょっと待って」ガサゴソ


優希「じょ?」


みなも「はい、これ」つタコス


優希「それは!!タコスじゃないか!!しかも1日限定20個の!!」ピョンッ


優希「貰って良いのか!」


みなも「うん。それ食べて、先鋒でケリつけて来てね」


優希「よし来た!一食の恩は3校の点棒を持ってして返すじぇ!!」


優希「じゃっ、行ってくる!」タッタッタ


久「あなたがこんな事するなんて、珍しいわね」


みなも「そ?別に、気が向いただけだよ」


和「素直ではありませんね…。来る途中にタコスのお店に行ってくれとあんなに私に」


みなも「うっさい。ほら、早く観戦室行こ」テクテク


和「あっ、待ってください!そっちは逆方向ですって!」アセアセ


みなも「……ならこっち?」


和「そっちは来た方向じゃないですか!?」




まこ「ははは、これは進展と見ればええんかいの?」


久「勿論よ。というか、あの子はもう、私達を認めてくれているわよ」


久「いえ、そう思いたいものね」クスクス


まこ「…じゃね」クス


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書き忘れていましたが、決勝大将戦以外の闘牌描写はほばスキップです。(大将戦もそんなにありません)

【story,6.5通過】


久「皆、今日はお疲れ様!そして、決勝進出やったわね」


優希「ま、私達にかかれば楽勝だじぇ!」


和「比較的、危なげなく勝ち進む事ができましたね」


まこ「ほんまにこの短期間で強くなったのう…」シミジミ


久「そうね。でも、明日からの決勝は今日みたいにすんなり勝たせてはくれないわ」


久「引き続き気を引き締めていきましょう」


和「はい」


優希「合点だじぇ!」


まこ「当然、そのつもりじゃ」ウンウン


和「……ところで…」


久「……えぇ、私も思っていたわ」


まこ「奇遇じゃね、わしも多分同じこと思っとった」


優希「おう、私もだじょ」


和「……」


久「……」


和「探しに、行きましょうか…」


久「……そうね」



まこ(まったく、締まらんのぅ)クスクス


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【間話】

~会場内・とある廊下~


みなも「…ここどこ?どうして数分前まで皆と一緒に歩いてたのに、わたしは今迷子になってるんだろ」


みなも「最近頻繁に迷子になるなとは思ってたけど、これじゃあまるで昔の咲と照お姉ちゃん…」


みなも「まさか、麻雀を再開した事でわたしにもアレが移ったとか…?」


みなも「……」


みなも「え?それじゃあ何?わたしはもう、迷子になった咲を迎えに行けない…つまり、迎えに行った時の、咲のあの嬉しそうな顔を見られないと…? 」

みなも「……」


みなも「死のうかな…」フフフ


「おいおい、なんて事呟いてんだよお前は」



みなも「うん…?」フリカエリ


靖子「よう。この間ぶりだな」ヨッ


みなも「親子丼か…なに?解説プロが、こんな所でなにしてんのさ」

靖子「だから今はカツ丼だっての。つーか、靖子さんって呼べよ…せめて、藤田プロ」


みなも「それじゃ、間を取ってカツ丼プロで良いよね」


靖子「親子丼で頼む」


みなも「はいはい」

みなも「……で、なに?わたし今、迷子で忙しいんだけど」


靖子「いや、偶然一人のお前を見かけてな。何してんのかと思ったら、迷子って…」


靖子「ああそれと、前哨戦突破おめでとう。強くなったじゃないか」


みなも「余裕だよ。親子丼がボコボコにしたお陰で、和も強くなったしね」


靖子「原村には驚いたよ。正直、見違えた」

靖子「あのペンギンは、みなもの入れ知恵か?」


みなも「さあね。何でもいいでしょ?勝てればさ」


靖子「……」


靖子「……変わったな、お前も」


みなも「…」イラッ


みなも「……うるさいなぁ、あんたに関係ある?わたしが、誰を、どう思って、何してんのか、関係あるわけ?」

みなも「楽しくワイワイ麻雀しろって、説教?」


靖子「そんなつもりは無いが…」


みなも「…別に、変わったって良いでしょ。わたしの目的は、勝って全国に行く…咲に、知ってもらうために」


みなも「それだけなんだから」


靖子「咲、か……」


靖子「なら、そんなお前に一つ朗報だ」



みなも「……?」


靖子「証拠は無いに等しい。だが、信用できる人からの話だ」


みなも「…何言ってんの?」


靖子「あのな、よく聞け。」


みなも「……」



靖子「宮永咲は、麻雀を」



靖子「――――――」






みなも「…………えっ…?」




――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


靖子「はぁ…言わない方が良かったか…?」


靖子「いやでもなぁ…あの口ぶりだと、多分本当の話だろうしな…」


靖子「伝えちゃったもんは仕方ないか。」


靖子(しかし、あの人はどうして知ってたんだ?)




―――数日前・靖子所属チーム―――


靖子「あれ、小鍛治プロ?」


健夜「あ、靖子ちゃん。お久し振り」


靖子「ど、どうしたんすか?」


健夜「これと言って用事は無いんだけどね。お仕事で近くに来たから、挨拶でもと思って」


靖子「こんな田舎に…?ってああ、今は恵比寿じゃなくてつくばでしたね」


靖子「折角ですし、食事でも行きますか?」


健夜「うん。もうすぐインハイの予選だし、長野の話も聞かせて欲しいな」

健夜「少し、気になる子も居るし」


靖子「え?」


健夜「ううん、こっちの話。じゃ、行こっか」



――――――
――――――


~カフェ~


靖子「って感じですかね。宮永みなもって選手なんですが」


健夜「……」


靖子「小鍛治さん?」

健夜「…ここからは、私の独り言だから、聞き流してくれても良いんだけど」


靖子「……?」


健夜「その子が探す子は、同じようにその子を探してるよ」

健夜「あの子は、その子を忘れてない」


靖子「そ、それはつまり!?本当ですか!」


健夜「ふふ、どうかな。あんまり喋り過ぎちゃうと、余計な事するなって怒られちゃうから」

健夜「っと、もうこんな時間。今日はありがとう。お代は出しておくから、またね」テクテク


靖子「……はい、ありがとうございました」





靖子「……」

靖子「はは、そうか…」



靖子(良かったな、みなも)


―――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――――――――


~会場、広間~


みなも「……」テクテク


和「あ、見つけました!宮永さん!」タッタッタ


優希「おおう、結局最初の地点で合流できたじぇ」


まこ「ずっとここで待っとりゃ良かったかのぅ」


久「……?」


和「もうっ、宮永さんってばあんまり心配掛けさせないで」


みなも「……ってた」



和「え?」



優希「のどちゃんだって本気で怒ってる訳じゃ無いから、怖がらなくて平気だじぇ!」


まこ「別に怖がってはないじゃろ…」


久「みなも?」

和「宮永さん?」


みなも「…さ、きが……麻雀………」グス








みなも「咲が麻雀……続けてるって…」ボロボロ





――――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【story7,決勝戦】

~次の日・決勝当日、会場~




久「それで副会長がね~」

優希「それは面白いじぇ」アハハ



和「ぶ、部長!」ハァハァ


優希「あ、のどちゃん遅いじぇ!」


まこ「どうしたんじゃ、そんなに慌てて」


久「また胸でも大きくなってたのかしら?」



和「な、何を言ってますかっ!!/////」

和「違います、宮永さんが」



久「??みなもが、どしたの」


和「今朝、今日は1人で会場へ向かうと連絡が来たのですが、そんな無茶なと思って駅で待ってたんです、なのに全然来なくて」

和「どどど、どうしましょう!昨日の事もありますし、もしや」




まこ「ちょいと落ち着きんさい……」


優希「のどちゃんが、どれだけみなちゃんの迷子を心配してるのかが良く分かったじぇ…」


和「どうして皆そんなに落ち着いていられるんですか!?」


久「和あなたねぇ……迷子が心配なのは分かるけど、少しはみなもを信用してあげなさいよ…」ハァ


優希「みなちゃんなら、もう来てるじぇ」


まこ「ちゅうか、ワシらが来た時にはもう既に着いとった」

和「そんな馬鹿な!?」


久「ほら、あの子ならあそこに居るわ」



みなも「……」



和「ほ、本当ですね……では、一人で来られたという訳ですか」


まこ「みなもだって高校生じゃけえ、そんな心底意外そうな顔する程でも無いじゃろうに…」


和「すみません、かなり取り乱していたもので…」


久「私も、最初にここへ来た時みなもが一人で座ってるのを見て目を疑ったし、大丈夫よ」


和「……ですが、どうしてわざわざあんなにも離れた場所に?」


久「さあ…。あの子も、色々考えているのよ」

久「昨日は表面上、すぐに取り繕っていたけど、内心では複雑な物があるんじゃないかしら」


優希「あ、みなちゃんこっち来るじぇ」



みなも「おはよ、和」



和「お、おはようございます。本当に一人で大丈夫だったんですね…」

みなも「当たり前でしょ?和、わたしの事バカにしすぎ」ジト


和「す、すみません」

和(あまり昨日のことを気にしている風には見えませんが…)



みなも「あと、昨日の事はもう自分の中で整理ついたから」

みなも「優希とまこには悪かったね。訳分からない事で心配させて」


和(そういえば、優希と先輩は聞かされていないんでしたね…)


まこ「気にしなさんな。アンタになにか事情があるっちゅうのは知っとるけえの」


優希「知ってるかみなちゃん。秘密は女を美しくするんだじぇ!」

優希「みなちゃんみたいな美人さんが、秘密を何も隠していなかったら逆に驚きだ!」


和「また漫画から得た知識ですか…」


優希「そのとーり!」イェス


まこ「ま、和や部長ではどうしようもなくなった時に、ワシらを頼りにしたらええ」

まこ「解決できるかは、保証できんけどな」アハハ



みなも「……うん、ありがとう」


和「………」クス

和「頑張りましょうね、宮永さん」ナデナデ


みなも「ちょっ、和、頭撫でるなっ」ブンブン



久「今日も頼りにしてるわよ、大船さん」ナデナデ

優希「別に私で終わらせてしまっても構わんのだろう?」ナデナデ


まこ「それができたらタコス一生分プレゼントじゃな」ナデナデ



みなも「久!優希にまこも……っ、会話ついでに撫でるのやめろぉ!!」ジタバタ



みなも(……咲が、もしかしたら見てるかもしれない…)




みなも「誰が来ようと、叩き潰す…」



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【story8,決勝戦②】


~副将戦終了・控え室~



久「よしっ、完全試合は防がれたにせよ、流石は和ね」


まこ「区間1位じゃね」


優希「りゅーもんの金髪さんはデジタルが所々ぶれてたな?」


みなも(危なかった…まさか、和一人でもアレを引き出しそうになるなんてね)

みなも「さて、と。そろそろ行くよ」


久「少し早くないかしら?」


みなも「部屋の空気に慣れておきたいから。それに、和に伝えておきたい事もあるし」


久「ふふ、そっか。それじゃ、行ってきなさい!」

優希「我らが美少女大将!任せたじぇ!」


まこ「気張らず楽にな!」


みなも「うん……行ってきます」スゥ


――――――
――――――


~廊下~


和「……」テクテク


和「あ、宮永さん!」タッタッタ


みなも「お疲れ。中々やるじゃん」ナデナデ


和「あ、ありがとうございます…っ」フフ


みなも「……」

和「……」


みなも「……ね、和」


和「はい…?」


みなも「和には、感謝してる。ありがとう、いつも支えてくれて」


和「そんなっ、支えられているのは私の方で」


みなも「良いから、聞いて」


和「……」


みなも「その、ね」

みなも「わたし、素直じゃないからさ。変にはぐらかしたり、誤魔化したりしちゃうけど…」


みなも「えっと……あの…」


和「はい」


みなも「和と優希と久とまこ……皆に会えて、良かったと、思ってるから」フイッ



和「……ええ」クス

和「私達も、アナタに出会えて良かったと、思っています」ニコ


和「そして、これからも一緒に居たいと」






みなも「その為に……」

和「宮永さん」






みなも「絶対に、勝ってくる」
和「必ず、勝ってきてください」





みなも「……あははっ」


和「…ふふっ」


和「行ってらっしゃい、宮永さん」




みなも「うん、行ってくる」ニコ



――――――
――――――


~対局室~


みなも「……」テクテク


ゆみ「…」


みなも「あれ、早いじゃん」


ゆみ「気が急いでしまってね。そっちこそ、随分と早いみたいだが?」


みなも「早く来て、高い位置から今から負かす相手の顔でも見下してやろうかと思ってね」



ゆみ「ははっ、それは残念だったな」


みなも「ほんとにね。……清澄、宮永みなも」

ゆみ「鶴賀、加治木ゆみだ。よろしくお願いする」スッ


みなも「うん、よろしくね」ギュ


池田「あれ?華菜ちゃんが一番に来て、後から来る奴を上から見下ろしてやろうと思ってたのに……2人もいるし」


ゆみ「……同じ事を言っているが、宮永の友達かなにかな…?」


みなも「げっ、あんな馬鹿っぽく聞こえるんだ……ごめん、さっきの取り消すよ」


ゆみ「いや、宮永の時は割りと似合っていたが…不思議だな、風越のはそう聞こえない」


池田「開始前からなんか悪口言われてる気がするし!?」

池田「……まあいいし。風越、池田華菜だ」


みなも「清澄、宮永みなも。よろしくね」

ゆみ「鶴賀、加治木ゆみだ。よろしく頼む」




池田「よろしくだし!……てことは、後来てないのは龍門渕だけか」


ウサ耳「」ピョコッ


ゆみ「どうやら、その最後も来たみたいだな」



衣「わーい!麻雀麻雀♪」トテトテトテ


衣「お前達が相手か?」


ゆみ「鶴賀、加治木ゆみだ。」

池田「風越、池田華菜だし!去年の借りはここで返させてもらうし!」


衣「……?去年も衣と打ったのか?」


池田「なっ!?忘れたのか!?」


衣「すまないな。取るに足らない有象無象の事など、一々覚えてはいない」フフン

衣「それに、去年と一緒にはしないでくれ」


池田「……?」


衣「去年は」




みなも「グダグダうるさいなぁ…」





衣「……?」



みなも「去年は月が欠けてて本気が出せなかったとか、そういう言い訳は良いから」


みなも「さっさと、始めようよ」ゴゴゴゴゴゴ


衣「なに……?」


ゆみ(宮永…急に雰囲気が……)


衣「清澄……なるほど、有象無象ばかりでは無かったということか」


衣「……闇の現を見せてやる」ゴゴゴゴゴ


池田(…まさか、清澄まで怪物級って事か…?勘弁して欲しいし)

ゆみ(モモ達には悪いが、勝敗関係なく個人的にこの2人と打てるのは…ワクワクするな)フフ



衣(こやつもどうせ、衣を見たら離れて行ってしまうのだろう…)

衣(分かり合える者など……とうの昔に諦めた)



衣「……始めようか」


みなも「……」ジッ


―――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――――――


~清澄控え室~

ガチャ


和「すみません、少し外の風に当たっていました」

久「おかえりなさい、お疲れさま」


優希「のどちゃん大活躍だったな!」


まこ「ようやったわ!」


和「いえ、そんな。…大将戦は、今どんな感じですか?」


久「予想はしていたけれど、さっきまでと同じ麻雀とは思えないわ…」


優希「今のところ出た役が、嶺上、嶺上、海底、海底だじぇ……ありえない!しかも、まだ天江の親で東2局!」

まこ「ちなみに、嶺上はみなもで、海底が天江衣じゃね」


和「海底撈月……確かに、天江さんは海底前に立直からの一発が多かったですが…」


久「さすがに、みなもでも圧勝は出来なさそうね」


和「そうですか……」

和「あっ」



ゆみ『ロン……槍槓だ。その槓、成立せず』

みなも『…へえ、やるね』




実況『ちゃ、槍槓だああああああああ!!鶴賀学園、加治木ゆみ選手!なんと、東2局で清澄高校、宮永みなも選手へ槍槓を刺してみせた!!』


藤田『これでここまでの役は、嶺上、嶺上、海底、海底、槍槓か』

藤田『まず間違いなく、インハイの決勝でもこんなのは見る事は出来ないだろうな』


実況『彼女達、まるで平和を作るように希少な役を和了りますね…』



藤田『彼女らにとっては、本当に平和みたいな物なのかもしれないな』


実況『そんなまさか…にわかには信じられません』


藤田『麻雀ってのは、時として信じられない事が起きる競技なんだよ』


藤田『だからこそ、打つのも見るのも面白い』


実況『なるほど……』


藤田(みなもと、衣か……)

藤田(当たるべくして当たった、そんな2人だな)


―――――――――
―――――――――


~対局室~


みなも「ツモ、断幺九三色ドラ3」


華菜「ん、三色なんて付いてるか…?」


ゆみ「三色同刻だろう?まさか知らないのか……?」


華菜「め、面前三色同刻とか初めて見たし…」


みなも「早く点棒だしてよ池田」


華菜「敬称つけろし!!」


衣(……おかしい…)

衣(月は出ている…場の支配も、機能している……)


衣(なのに何故だ?何故、清澄は容易く和了る事ができる…)チラリ



池田「ほら!」ジャラ

みなも「毎度~」



衣(清澄が和了った局とそうでない局……なにか、違いがあるのか…?)

衣(……)カンガエ


衣(……そうだ、清澄は他の2校が衣の海底を防ごうと、または衣自身が河の浅い所で鳴いた時に、和了っていた…)

衣(まるで、河の水面を……)



衣(……そういう事か)




みなも(そろそろ気付いたかな?それじゃあ、そろそろ全力を)



衣「……ロン、12000」ボッ


池田「うぐっ……」



みなも「……」ピクッ



衣(清澄……いや、鶴賀に風越も…)

衣(こやつらには、勝てば共に喜び、負ければ共に悲しむ友がいるのだろう…)



衣(くだらない……全員が全員、麻雀に楽しみを見出している…)

衣(煩わしい、目障りだ……麻雀なんて、壊して楽しむために存在していればいい)



みなも(こいつ……)



衣(もう、一切合切……烏有に帰せばいい……っっ!!!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



みなも「……」


―――――――――
――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――


【story9,神か悪魔か】


・清澄高校、待機部屋



実況『ぜ、前半戦終了……っ!!』

実況『なんと言うことでしょう…オーラス、風越女子池田選手に天江衣選手の8600点が直撃!!』

実況『風越は、持ち点が0となってしまいました…。風越だけではなく、龍門渕以外の2校にも辛い展開です』

靖子『わざと手を安くして点数を調節……、か』

実況『とても人間業とは思えませんよ…やる意味も分かりませんし』

靖子『理由はどうあれこの状況、普通なら龍門渕の優勝で決まり……後半をやるまでもないって感じだな』

実況『終わらない内に言ってしまうのも酷ですが、やはりそうですか……』

靖子『あぁ』





靖子『……普通なら、な』



優希「こ、これは不味い事になったじぇ…」


和「……私、宮永さんの所へ行ってきますっ!」スッ

久「やめておきなさい」


和「どうしてですか!?さすがの宮永さんでも、この状況は…」


久「見て分からない?あの子、今誰かに話しかけられたら殺しそうな雰囲気よ」


和「えっ……」チラ


みなも『……う……よね……き……』


優希「なにか呟いてるみたいだけど、聞き取れないじょ…」


久「あの子なら大丈夫よ。逆に、今行っても邪魔になるだけ」



和「そんな……」

和(宮永さん……)



久(画面越しでも分かるわ……)

久「天江衣、とんでもない事をしてくれたわね」


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~対局室~

・後半戦開始、東一局




池田「う…うぅ……」グス


ゆみ(不味いな……天江衣、まさかこんな事をしてくるとは…)グッ


衣(ふふふ、それでいい。塵芥ども、絶望に侵されるといい)クス


みなも「……ねえ、天江衣……さん?」


衣「ん……?なんだ、清澄の」


みなも「あなた、もしかして麻雀を打つと必ず相手の点数が0点になっちゃう……そんな、能力を持っているんです……いるの…?」


衣「……?そんな訳がないだろう」

衣「お前達の絶望する顔が見たくて、"遊んだ"だけだ」


みなも「……そうです………そっか。」


ゆみ(なんだ…?口調が安定していない……?)


池田(もう……早く、終わらせて欲しいし……)



衣「ふふふ、絶望的状況に気が狂ったか?まあ無理もな……」


みなも「……なら、遠慮はいらないですね」


衣「…………!?」ゾクツ


衣(な、なんだ……?前半戦、清澄のからは藤田の言葉と裏腹に大した物など感じたなかった……!!)


衣(それが、今は……っっ!!)ビクビク


みなも「ふふ、分かってるってサキ。うん、うん……」


みなも「…天江衣……」



衣(これは、まずいっ!!さっさと飛ばしてっ!)ゾクッッ









みなも「悔い、改めろ」ズズズズズズズズズズズズズ







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~数分後~



実況『こ、これは……』


実況『私は今、夢を見ているのでしょうか……?』


靖子『……いや。現実だ』


実況『試合、終了……』


実況『試合、終了おおおおお!!!!!!』



清澄・283000
鶴賀・82000
風越・0
龍門渕・-1000



実況『とんでもない事が起きてしまいました!!!』

実況『前半戦、風越女子が0点になり龍門渕以外の3校は絶望的かと思われ始まった後半戦!!!!』

実況『なんとなんと、清澄高校、宮永みなも選手が龍門渕高校天江衣選手へ直撃を当て続け、龍門渕高校のトビ終了!!!』

実況『その上信じられませんが、出た役が全て天江選手への河底撈魚と嶺上開花による責任払いのみ……』

実況『藤田プロ、これは……』

靖子『神の逆鱗に触れた、そんな試合だったな』

靖子『この夏の大会では、毎年常識の外にいる選手が出てきて、牌に愛された子などと呼ばれているが……』


靖子『彼女のこの力は、神か悪魔か……そんな次元だ』


靖子(…みなも、お前は……)


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・対局室



池田「こんな事が、あるのか……?」

ゆみ「いや…今目の前で、起きたことだ」



衣「……」呆然



みなも「ふふ、やったよ咲。わたし、偉い?…うん、うん……そうでしょ」

みなも「ん…また、ね」



衣「…清澄の、お前は一体……」


みなも「……」ギロ


衣「っっ」ビクッ


みなも「衣、"普通"の麻雀を打てるお前が…いや、わたしたちが」

みなも「あんなマネをするのは許されない。わたしが、許さない。絶対に」



衣「ふ、つう……?」

衣「衣は……衣の麻雀は、普通……だったのか…?」


みなも「最後の以外は、ね」


みなも「久々に楽しめたよ」



衣「楽し、めた……」


池田「華菜ちゃんは正直、心折れそうだったし!てか、もう折れてたし!」

池田「けどまあ、あそこまでボッコボコにやられた天江が、宮永にボコボコにされるのを見るのは楽しかったし!少し!」


池田「今度は華菜ちゃんがボコボコにしてやるから、覚悟しとけ!」



衣「今度……?また、衣と麻雀を打ってくれるのか…?」


ゆみ「はぁ?」


衣「っっ……」ビクッ


ゆみ「宮永同様、勝ち逃げが許されると思うなよ?次に打つ時は、私が勝つ」ニヤリ


池田「そういう事だし!」



衣「お前達……」


みなも「衣が最後まで本気で打つなら、わたしもまた打ってあげるよ」

みなも「今度は本気で、ね」


華菜「は、はあ?つ、強がりはよすし!あんな嶺上やら河底やら連発してたのに、全力じゃなかったハズないし!」


みなも「池田ってさぁ…ほんとに、噛ませ犬っぽいセリフ吐くよね」

みなも「うん?噛ませ猫、かな?」


池田「なー!!!どういう意味だし!それと、敬称つけろし!!」ニャ-!!



ゆみ「いや、だが……確かに、最初に風越が直撃を受けた辺りで、宮永は途端に和了しなくなったな…」


みなも「何となく、くだらない事やろうとしてるのが見え見えだったからね」


みなも「一回潰して立ち直れなくしてやろうと思って、池田には犠牲になってもらったよ」

みなも(ま、本人は逆になんか吹っ切れて立ち直っちゃったみたいだけど)


華菜「なぁ!?分かってて止めれたなら、止めて欲しかったし!!心の折れ損じゃないか!」


ゆみ「そうか?逆に、今日最底辺を経験した事でメンタルも強くなったかもしれないぞ?」


華菜「そんなダイヤモンド級のメンタルは持つ必要ないし!?」


衣「……ぷふっ…」

みなも「…」



衣「あははははははっ!!ふふふっ、はははははっ!!」


池田「にゃっ!?な、なんだし…」


衣「いや、ふふ、すまない…」

衣「衣は、大海を知らぬ蛙だった訳か」


みなも「ま、そゆことだよね。上には上がいるって、知っといた方が良いよ」


ゆみ「宮永よりも上か……想像できないな」

池田「そんな奴、小鍛治プロやその弟子くらいだし」


ゆみ「小鍛治プロに弟子がいるのか?」


池田「いや、例え話だし」




衣「…改めて、すまなかった。そして、ありがとう清澄の」

衣「衣は……」


みなも「言わなくて良いよ。」

衣「えっ……?」


みなも「衣は1人じゃない、それが分かったでしょ」

みなも「誰にでも間違いは……ある。勘違いで人を傷付ける事だって、あるから」



みなも「これからは麻雀、楽しめると良いね」ニコ


衣「ッッッッ……」グス

衣「うん……っ!!」ニコッ


ガチャッ!!!


和「宮永さん!!!」

みなも「あれ、和」



ゆみ「それじゃ、そろそろ私達は行くか」


池田「そうするし!それじゃあな!」


みなも「ん、またね」



衣「清澄の……改めて、名前を教えてはくれぬか…?」



みなも「宮永みなも、だよ」


衣「宮永、みなも……覚えた」

衣「……その」


みなも「?」


衣「…また、会おう、ね?」チラ


みなも「当然。今度は徹底的に潰す」


衣「……ふふ、こちらの台詞だ」ニコ



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【story10,そして……】



みなも「どしたの和、そんなに慌てて」


和「どしたの、ではありませんよ!!勝ちました、勝ったんですよ私たち!!」ダキッ


みなも「むぐっ……」


和「流石です!宮永さん、お疲れ様でした!!」ムギュ---


みなも「ぐっ……のどか、くるし……む、むね…窒息するぅ……」ジタバタ


和「はっ……す、すみません…/////」ハナレ


みなも「ぜぇ、ぜぇ……優勝のついでに殺される所だったよ…」


和「うっ……嬉しくて、つい…/////」カァ


みなも「全く…言ったでしょ?」

みなも「全国へは連れていく、絶対に勝つってさ」ニコリ


和「……はいっ!」ニコッ



久「みなも、お疲れ様。良くやったわ」


まこ「一時はどうなる事かと思ったが……いや、一時どころか途中からは終始か…」


優希「私たちに出来ないことをやってのける……さすが、我らが大将だな!」


みなも「正直、途中から若干意識が別の所に行ってて記憶が曖昧なんだけどね」

和「かなり怖かったですよ、宮永さん」


久「人でも殺しそうな勢いだったわね」


優希「ゴゴゴゴゴゴって効果音が聞こえてくるようだったじぇ」


みなも「……」


まこ「みなも?」


みなも「まあ、さ。確かに、わたしが居なきゃ清澄は全国に進めなかったと思うけど…」


久「お、おう…言うわね……」


和「部長、茶化さずに聞いてください」



みなも「えっと、うん…まあ……その」


みなも「皆が居なきゃ、わたしも全国に行けなかったから……」



みなも「わたしをこの場所へ連れてきれくれて、そして全国へ連れていってくれて」


みなも「本当に、ありがとう」ペッコリン


和「……」フフッ



優希「お、おぉう……部長、これが噂のツンデレって奴か!?」


久「そうね……実際に見るのは2度目だけど…やっぱり、萌えるわ」グッ


まこ「アンタらなぁ……」ハァ



みなも「そ、それだけだから!!/////」プイッ


優希「みなちゃん……」


みなも「……なにさ」チラ



優希「可愛すぎるじぇー!!!!」ダキッ


みなも「ぅわわっ!」


久「ほんっと、可愛い後輩だわ」ギュ-ッ


まこ「こんな良い後輩を持てて幸せじゃあ!」ギュ


みなも「ちょ、ちょっと……これ、まだテレビ中継っ!!映ってるってばっ/////」


和「宮永さん……」


みなも「和っ!助け」


和「大好きです、宮永さんー!!!」ムッギュ-


みなも「ぐえっ……ちょっと和ぁ!!」



キャーキャー
ワイワイ




記者「おっ?あれはシャッターチャンスじゃないか?」

記者B「だな。自然体で、素晴らしい」




カメラマン「…あの宮永って選手、チャンピオンや例のあの子に似ていませんか…?特に、あの髪が」

女性記者「……調べてみる価値は、あるかしら…?丁度、明日はチャンプへのインタビューもあるし…」

女性記者「例の子の方は……取材は難しいわね」

カメラマン「っすよね…」





久「まったく、可愛いわねー!!」


優希「特性タコスを進呈するじぇ!」


まこ「ならワシは特性ワカメを……って何言わすんじゃ!」


みなも「いい加減にしてっ……離れてよぉ!/////」


和「宮永さん可愛いです!」スリスリ



みなも「やっぱり……」ワナワナ




みなも「やっぱり、お前らなんて嫌いだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ウガ-





【ルートみなも・県予選編、カン!】

予選はおしまいですっ。
ここからは、合同合宿(対局は多分無し)からの全国編でおしまいの予定です。
まだ何も書けてないので、本編の日常をダラダラ更新しつつ、長野編の書き溜め終えたら一気に投下しますっ。

>>115の点数が間違っている気がしますが、見逃してください(ペッコリン)

【episode2,とある少女のお話】

~ある日、茨城県某所~


アリガトウゴザイマシタ-



健夜「よしっと…買い忘れとか、ないよね」ガサゴソ


健夜「シュークリームとエクレア……その他諸々、うん、大丈夫」


健夜「にしたって、まさか南場4局全部を平和のみで和了ってくるなんてなぁ」


健夜「咲ちゃん、容赦無さすぎ……」トホホ


健夜(でも、甘い物食べてる咲ちゃん可愛いし、役得ではあるんだよね…)


健夜「ふふ、早く戻ろ」テクテク



健夜「……」スタスタ



『……っうぅ…ひぐっ…』




健夜「えっ……?」ピタ


健夜(今の、誰かの泣き声…?)キョロ


健夜「そこの公園から、かな……?」



健夜「……」カンガエ


健夜(様子だけ、一応見ておこう)テクテク


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~小さな公園~



健夜「えっと…」キョロキョロ


「うぅ……ぐす…」



健夜(やっぱり居た…)


健夜(見た感じ小学生、それも低学年の女の子だけど…)



少女「もう、、やだぁ……」グスグス



健夜「……」フゥ

健夜(よしっ)テクテク




健夜「こんにちはっ」


少女「…ふぇ……?」


健夜「こんな所で、どうかしたの?お友達とケンカでもした?」


少女「……うぅ…」グス


健夜「あ、ああ!ごめんね!?話したく無かったら大丈夫!うん、1人で泣いてたから気になって!」アワアワ


健夜(ああぁ…知らないアラサーが急に話しかけてきたら余計にビックリするよね…)


少女「……」グス


健夜「え、えっと……」ウ-ン


健夜「!!」ピコ-ン



健夜「そうだ、よかったらこれ食べる?」ガサゴソ

健夜「はいっ」つシュークリーム



少女「しゅーくりーむ……」チラ


健夜「うんっ、良かったらどうぞ?」ニコリ


少女「……」カンガエ


少女「……いらない、知らない人に食べ物貰ったらダメだって、言われてるから…」ブンブン


健夜「そ、そっか(考えてみたらそうだよ!!私は何食べ物て釣ろうとしてるの!?)」


少女「うん……」


少女「……」グゥゥゥゥゥ


少女「!!」ハッ


健夜「あ、あはは……」


少女「……/////」カァ


健夜「えっと、今さっきそこのコンビニで買ったやつだし大丈夫だよ?」


少女「…ほんとう……?」ウワメヅカイ

健夜「ほんとほんと」ウンウン


健夜(か、可愛い……)キュン


少女「そ、それじゃあ……」スッ


健夜「うん、どうぞ」ニコ


少女「……あむ…はむ…」モキュモキュ

少女「んむっ…」モグモグ


少女「んっ……」ゴク



少女「…ごちそうさまでした」ペッコリン


健夜「ふふ、そんなに急いで食べなくても良かったのに」クスクス


少女「……」チラリ


健夜「……?」


少女「……」グゥゥゥゥゥ

少女「ぁ……」


健夜「もしかして、お昼も食べずにここへ来たのかな……?」


少女「……/////」コクリ


健夜(弱った……見た所、友達とケンカしたとかいう訳でも無さそうだし…)

健夜(もう昼後なのにご飯も食べてないって……)ウ-ン


少女「……」ウゥ



健夜「……とりあえず、エクレアも食べる…?」


少女「……」カンガエ

少女「……」コクリ


健夜「はい、どうぞ」ワタシ


少女「ありがとう……ございます…」ペッコリン



健夜(あれ……?何か忘れてる気がするけど……)

健夜(今はこの子の事を考えるべきだよね…)


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少女「けふ……」ホゥ

少女「おいしかったです」ペッコリン


健夜「それは良かった」ニコリ

健夜(あっという間に食べきっちゃった…でも、食べてる様子は可愛かったかも)



少女「……」

健夜「……」



健夜「えっと……」


健夜「よければ、お話聞かせてくれる…かな?」


少女「え……」


健夜「泣いてた子を1人で置いて行けないし…それに、他人の私にだからこそ話せる事もあるんじゃないかな」


健夜(まず、こんな小さな子が1人でこんな所に居たら危ないし…関わった以上は責任持たなきゃね)


少女「……」


健夜「お家で、なにか嫌な事でもあった…?」


少女「……」ピクリ


健夜(当たり、かぁ)チラリ

健夜(……ん?)


健夜「もしかして、あなた麻雀打ったりしてる?」



少女「!!」バッ


少女「ど、どうして分かったの……?」


健夜「その手、見れば分かるよ。麻雀を打ってきた子の手だもん」



少女「じゃぁ、おねえさんも、麻雀できるの……?」


健夜「おねえさん!!」パァッ


少女「ひっ……」ビクッ


健夜「あ、ご、ごめんねっ!(しまった、お姉さんという言葉の響きについ……)」


健夜「えっと、うん。私も少しだけ打ってるんだ」


少女「そうなんだ……」


健夜「ひょっとして、泣いてたのも麻雀が原因?」


少女「……うん…」コクリ


少女「……」フゥ


少女「あのね……?わたしの家、よく家族麻雀をするんだ……」



健夜「家族麻雀…いいね、面白そう」


少女「面白くなんてないもん!!」


健夜「えっ……」

少女「ぁ……」


少女「ご、ごめんなさい……」


健夜「う、ううん。私の方こそ……」

健夜「その家族麻雀で、なにかあったんだね…」


少女「……うん…」コク


少女「えっとね……?」


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健夜「それは……辛かったね…」


少女「ひぐっ……うぅ…」グスグス


健夜「ごめんね、嫌な話させちゃって」ナデナデ


健夜(家族麻雀で勝ち過ぎたら家族がピリピリしちゃって、負けたらお菓子を取られる……)


健夜(それが嫌で、適度に手を抜いていたのがお姉さんにバレて喧嘩をして、今に至る……と)


健夜(……うぅん…)


少女「ぐす…… 」


健夜「……ねぇ、もし良かったらこの後…」


少女「ぁ……えと、そろそろ…帰らなきゃ…」スッ


健夜「え……あ、もうこんな時間」


健夜「大丈夫なの…?」


少女「うん…今日はもう、麻雀しないから…」


健夜「……そっか」


少女「え……?」


健夜「一度さ、何も気にせずに麻雀打ってみようよ」

健夜「このままじゃきっと、なにか大事な物を無くしちゃう気がするんだ」


少女「だいじなもの……?」


健夜「無理にとは言わないから。もし気になったら、お昼頃にここで」


少女「……」コクリ


健夜「うん、それじゃあ気を付けて帰ってね」フリフリ



健夜(良かったのかなぁ、これで……)


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健夜「ね、良かったら明日もここに来てくれないかな」


少女「え……?」


健夜「一度さ、何も気にせずに麻雀打ってみようよ」

健夜「このままじゃきっと、なにか大事な物を無くしちゃう気がするんだ」


少女「だいじなもの……?」


健夜「無理にとは言わないから。もし気になったら、お昼頃にここで」


少女「……」コクリ


健夜「うん、それじゃあ気を付けて帰ってね」フリフリ



健夜(良かったのかなぁ、これで……)


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~つくば女子校・麻雀部部室~

ガチャ



健夜「ただいま~…」


健夜「ごめんね、遅くなっ」

健夜(あ、なんだか怒られる気がする)ゾクリ




咲「ちょっと、健夜さん……一体どういうつもりなんですか……?」ゴゴゴ


健夜(やっぱりー!!)


咲「すぐそこのコンビニに行くだけで、何時間かかるんです……ケータイに掛けても出ない、メールも返ってこない…」


咲「探しに行こうにも、入れ違いを考えて行けない……まったく、どこかで事故にでも遭ってるんじゃないかって、心配したじゃないですか!!!」


咲「よくもまあ、私の気も知らないで素知らぬ顔で帰って来れたものですね!!」


健夜(しまった、そういえばケータイはマナーモードにしたままだった…)


健夜「ご、ごめんっ!!帰ってくる途中で色々あってさ」


咲「色々……?」


健夜(あの事、咲ちゃんに教えた方が良いのかな……)

健夜(でも、咲ちゃん優しいから一緒になって悩んじゃうかもしれないか……)

健夜(咲ちゃんは困らせたくないし…けど、どの道明日は……)



咲「……」ジッ

咲「……」




咲「はぁ、まあ良いですよ。何事も無く帰ってきてくれて、ホッとしましたし」


健夜(う……優しさが染みる……)


咲「ただ、その、私だって……心配くらいは、するんですから…」チラリ

咲「遅くなるなら、連絡くらい……入れて欲しい、です」


健夜「うん、ごめんね。気を付ける」



咲「わ、分かれば良いんですよ!!ていうか勘違いしないでくださいよ!?」

咲「別に、健夜さんの事を心配していたんじゃなくて頼んだエクレアの事を心配していただけなんですから!!/////」



健夜「……………………………………」


健夜「あっ」



咲「ほら、分かったら早くエクレアを出してください。新発売で楽しみにしてたんです」



健夜「………………」ダラダラダラ


咲「……?健夜さん、どうしたんです。焦らさないで、早くください」

咲「待たせた罰として、健夜さんのシュークリームは半分こですからねっ」



健夜「あ、あー!さきちゃんがたのんだのってえくれあだったっけー!(棒)」


咲「……は?」


健夜「ごめんねー!まちがえておにぎりかってきちゃったから、もういっかいこんびにいってくるよー!(棒)」



咲「はぁ?意味が分からな」


健夜「10分!10分で帰ってくるから!!!それじゃあ、行ってきます!!!」ダッ


咲「ちょ、ちょっと健夜さ」


ガチャ
バタン!



咲「……」唖然


咲「も、もう少し優しくしてあげた方が良いかな……」

咲「健夜さんも疲れてそうだし……う、うん。今後はそうしよ……」



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~次の日、公園~


健夜(昨日はああ言っちゃったけど、いきなり知らない人に明日も来てって言われても、怖いし来ないよね……)テクテク


健夜(というか、無責任に踏み込んじゃったし……大して解決策とか無いのに…どうしよ)


健夜(ううん、どうにかしてあげなくちゃ…どうして、あの子にこんな感情が湧くんだろう…)


健夜「……」テクテク

健夜「っと、着いた」



健夜「……」キョロ


健夜「!!」




少女「ぁ……」ペコリ


健夜「こんにちは、来てくれたんだね」

少女「うん……今日は、麻雀打たなかったから…」


健夜「……そっか」


少女「…」コクリ


健夜「よしっ、それじゃあ麻雀打ちに行こっか?付いてきて?」つ手


少女「あの……どこで打つの…?」ギュ


健夜「ふふ、それは着いてからのお楽しみっていう事で」ニコリ


少女「えぇ~……」


健夜「すぐそこだから、安心してっ」

健夜(さて……連れていくのはいいけど、なんて言われるか…)イガイタイ


少女「……」


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~部室~


マホ「せんぱぁい…健夜さんはまだ帰って来ないんですかー?」

マホ「マホ、早く麻雀打ちたいです」ソワソワ


咲「多分そろそろ帰ってくると思うけど…」


ガチャ


マホ「おお!さすが先輩!言ったそばから帰ってきましたっ」


咲「おかえりなさい、健夜さ……」


健夜「た、ただいま~……」


少女「ぅ……」ビクビク



咲「……マホちゃん、警察に電話しよう」


マホ「女児誘拐事件、ですか…!」


健夜「ま、待って待って!!冤罪だし、話を聞こうよ!!」アセアセ


咲「話を聞くもなにも……ねぇ?」チラリ


マホ「はいです。独り身、アラサー、寂しい、女児、見つける、誘拐」


マホ「方程式は完成しますです」


咲「だよね…」


健夜「うん、私はその式に0点を付けたいかな!?」ガ-ン


少女「……」クイクイ


健夜「!!」ハッ

健夜「と、とにかく聞いてもらえるかな……」



咲「はぁ…まあ、良いですけど」


マホ「その女の子、誰ですか~?可愛いです!」


健夜「えっと、実は…」

健夜「あー……」


健夜「し、親戚の子なんだけどね?2人の話をしたら、興味を持ったみたいで」


少女「ぇ……」チラリ


健夜(事情は伏せておいた方が、打ちやすいでしょ?)コソコソ


少女「……」コクリ



マホ「親戚……健夜さん、そんなに小さな親戚の女の子がいたんですねー」


健夜「う、うん。まあね…」チラリ


咲「へぇ~」


健夜(ご、誤魔化せてる……かな…?)


少女「…」オロオロ


マホ「こんにちは!お名前はなんて言うんですか~?」ニコリ


健夜(あ、そういえばこの子の名前私も聞いてないや……ていうか、自己紹介すらしてなかった気が…)


少女「ぁ……ぇと……」タジ



咲「私は宮永咲。よろしくね」ナデリ


少女「ふぁ……」


マホ「マホは夢乃マホです!中学生ですけど、度々ここの部室にお邪魔してるです!」


少女「よ、よろしく、お願いしますっ」ペッコリン


マホ(何だかこの子、どことなく先輩に似ていて愛らしいですね…)

咲(この女の子……)



健夜(な、何とかなったみたいで良かった……)チラリ

咲「……」ジト-



健夜(うっ……なんだか見透かされてる気がする…)


咲「私、お茶入れてくるよ。健夜さん、手伝ってもらえますか?」


健夜「あ、うん……マホちゃん、少し見ててもらえる?」


マホ「おっけーです!ふふ、マホ妹が欲しいと思ってたんですよねー」


少女「……マホ、おねえちゃん…」チラリ


マホ「か、かわいい……!!なんですか、この可愛い生き物は…!!」


キャーキャー
ワイワイ




咲「……」コトコト

健夜「……」カチャカチャ

健夜(き、気まずい…)

咲「……」コト

健夜「あ、あの咲ちゃん…?」

咲「知りませんでした、健夜さんにあんな可愛い"親戚の女の子"がいただなんて」

健夜「へっ……」

咲「……今は、そういう事にしておいて上げますよ」スッ



『お茶いれてきたよー』


『有難うございますー!』

『あ、ありがとう……』ペッコリン





健夜「……咲ちゃんに嘘はつけないなぁ」クス


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咲「へぇ、9歳……その年で麻雀を打てるなんて、どこかで習ったりしたの?」


少女「……お姉ちゃんに教えて貰って…」


マホ「お姉さん??健夜さんのことですかー?」


少女「!!そ、そう、健夜…お姉ちゃんに…」


マホ「へぇ~……」


咲「健夜、お姉ちゃん……?ふふっ……お姉ちゃんて……」クスクス


健夜「どうして笑うのかな!?私だってお姉ちゃんって呼ばれても良いじゃん!」


咲「ふっ…すみません…あははっ、そうですねっ。健夜お姉ちゃんっ!」アハハ


マホ「健夜お姉ちゃん、中々良いですね!マホもこれからそう呼びましょうか?」


健夜「なんだか、2人に呼ばれると馬鹿にされてる気がしてならないよ…」


咲「うわ、酷いです…傷つきました」


マホ「親戚心を踏み躙られましたねー」


健夜「うん、ニヤニヤしながら言ってなかったら私も真摯に受け止めてたんだけどね!?」


少女「あの…麻雀、打ちたい…」ソワソワ


咲「あぁ、そういえばそんな目的だったね」


マホ「麻雀、好きなんですかー?」


少女「……嫌いじゃ、ない…かな…」


マホ「曖昧ですね~。このくらいの歳なら当たり前なんでしょーか?」


咲「……」ジッ


マホ「先輩?」


咲「あ、ううん。なんでもないよ」


健夜「それじゃあ、早速打とっか?」


少女「……」コクリ


マホ「マホも早く打ちたかったんですよー!四麻ができて嬉しいですっ」


咲「私たちは手加減した方が良いかな?」


健夜「あ、それなんだけど」


咲「私はこの子に聞いてるんです。」


健夜「うっ……ごめんなさい…」シュン


マホ「よしよしです」ナデナデ


咲「で、どうかな」ジッ


少女「…手加減……しなくて、良いです」


健夜(えっ!?さ、さすがにそれは……)



マホ「おお!中々どきょーがありますね!さすが、健夜さんの親戚と言った所でしょうか?」ニコリ


健夜「そ、そうだね…」アハハ…


咲「自分で言うのもなんだけど、お姉ちゃん達強いよ?」


咲「全部飛んで終わっちゃうかも」


少女「そんな事ないもん!わたしだって、家族麻雀ではほとんど負け無しだったから!」ムッ


健夜(あぁ…設定が早くも崩壊していく……)


咲「ふうん。分かったよ」


咲「じゃあ私、靴下は脱がない範囲で本気を出すので」


マホ「それならマホも、全力でいきますです!」


咲「点数は10万点でやりましょうか、一応」


健夜「……うん、分かったよ。よろしくね」


咲「よろしくお願いします」


マホ「よろしくお願いしますです!」


少女「お願いしますっ…!」ペッコリン

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南3局


少女「ロン、12000っ」


咲「……はい」ジャラ


健夜(これは…)

マホ(先輩、本気ってそっち方面の本気ですか!?)


少女117000
マホ103000
健夜102000
咲78000


~オーラス~


健夜(咲ちゃんが執拗に私を妨害してくるのは、お仕置きって事なのかなぁ……)


マホ(あ、明らかに先輩が全体の点数調整してます…どういう意図があるんですか、先輩…)


少女(ちょっと不安だったけど勝てそう!牌も応えてくれてる気がする…っ)

少女(やっぱり、何も気にせずに勝てるのって楽し……)



少女(……勝つ………?)



少女(わたし、勝って…良いのかな…)



咲「……32000点」ボソリ

マホ(やっぱり!!)ゾク




咲「カン」つ中

少女(カン……?中々出ないなって思ったら、お姉ちゃんが全部持ってたんだ…)


咲「もいっこ、カン」つ發


少女(また……!?)

マホ「わぁ…先輩、オーラスでなんていう手を…」


健夜(まさか、咲ちゃん……)ジッ

健夜「……」


健夜「……」つ白


咲「それポン」つ白


少女(大三元……!ツモでもロンでも、和了れば咲お姉ちゃんがトップ…)チラリ

少女(河的に…字牌で待ってる…)



少女(……私は…皆に楽しんで貰いたい…麻雀を…)

少女(勝てなくってもいい……だから…当たり牌は、これ……っ)


少女「……」つ西


少女(これで……っ)


咲「……」スル-


少女(えっ……!?)

少女(どうして……?確かに、西が当たり牌なはずなのに……!!)



咲「……やっぱり」

少女「ぇ……」


咲「……」つ白


咲「カン。ツモ、嶺上開花大三元」西333s白白白白中中中中發發發發ツモ西


咲「8000,16000」


~終局~

咲110000
少女109000
健夜94000
マホ87000




マホ(相変わらずメッチャクチャに和了りますね~……)


健夜(こういう事をやらせて、咲ちゃんの右に出る人は居ないね)


少女(わたしからロンせずに、わざわざ見逃してツモ……!?)

少女「そ、そんな……どうして…」


咲「どうして?それは、私が聞きたいことかな」


咲「真剣勝負を望んだキミが、最後の最後で手を抜くなんて、どういう事かな?」


マホ「確かに、最後の西切りはおかしかったですねー」

マホ(それ以前に、始めからどこか勝ちを迷っている打ち方ではありましたけど~)


少女「そ、それは……」


咲「わざわざ勝ちを譲るようなマネして、何がしたいの?」


健夜「安手を張ってて、突っ張っただけかも……」


咲「本気で言ってますか?手牌、見てみたら良いですよ」トン


少女「ぁ……」パラララララララ


22s55m77m22p44p南南西


マホ「七対子、最後の西で和了れてましたねー」


健夜「もしかして……」チラリ



少女「……」ウツムキ


咲「……」ハァ

咲「今、キミがどうしてこんな事をしたのかは…分からないよ?」



咲「けど、一つだけ言える。今の対局、私は全然楽しく無かった」


咲「こんな打ち方を続けるなら、麻雀なんてやめたら?」



マホ「せ、先輩……少し言い過ぎですっ」


咲「そ?私はそうは思わないけど」


少女「っっ……だって…わたしは、みんなに楽しんで貰いたかったから……っ……」


咲「どうやって楽しめば良いの?仮にあそこでロンをして、勝ちを譲られてさ」


咲「そんな勝ち方して、楽しいって思う人がいると思う?」


少女「…うぅ……」グス


健夜(事情はどうであれ、咲ちゃんの言ってる事は正しい…けどこの子は……)



咲「……もし、仮に。仮にだよ?」

咲「勝ってもダメ、負けてもダメな状況にいるとしよっか」


少女「……え…?」グス



咲「あると思うよ。今でなくても、いつかそういう機会は来ると思う」

咲「そりゃ、勝ちすぎる子を見て嫉妬やらが生まれるのはおかしくないし、負けて、弱い弱いって言われる事もある」


咲「だから、大体の人はその中間を探して、そこに居座って、安心するの」


健夜「……」


マホ「それってつまり、逃げですよねー。何の為に麻雀をしてるんでしょうか??」


少女「逃げ……」


咲「ねえ、あなたの近くには、今みたいにワザと負けた事を知って、叱ってくれる人はいないかな」


少女「!!」


咲「いるなら、一度落ち着いて、よく考えてみて。どうしてその子は怒ったのか、キミは怒られたのか」

咲「その子は、"勝たせてもらった"って知って、どんな気持ちでいるのか」


マホ「それを知って怒るって事は、つまりどういう事なんでしょうかね~」


少女「ぁ……」


マホ「そういう人がいないなら、毎日ここへ通って先輩に教育されるといいですよー」



咲「良いかな。もう一度、周りを見渡してみて。それで、思い出すの」


咲「本当に、自分の麻雀は皆に楽しんで貰える物なのか。楽しく打っていた頃、キミがどんな打ち方をしてたのか」


マホ「さっき、皆にも楽しんで欲しいって言ってましたけど」

マホ「その"皆"の中に、自分も含まれているのか確かめてみるのも良いです」



咲「自分の事が見えなくなると、周りの事も見えなくなる」

咲「案外さ、そのせいで思い込みに悩まされてたって事、あるから」


咲「落ち着いて、話し合って考えてみたら良いと思うな」ナデナデ

咲「それで、今度はキミが周りの人を変えてあげよう?」


少女「っ……それで…もし……だめだったら……」ジワ


咲「大丈夫。その時はお姉ちゃんが助けてあげる、約束だよ」フキフキ


咲「……ねっ?」ニコ


少女「うん…っ……ごめんなさい……!」グス


咲「大丈夫、大丈夫。間違いなんて、誰にでも……あるから」ナデナデ

咲「キミの打つ優しい麻雀、私は嫌いじゃ無かったよ」クス


少女「……っっ……うぅ……!!」ボロボロ


咲「もう…ふふ、泣き虫だね…」ギュゥ





マホ「……一件落着、でしょうか?」


健夜「それは……どうだろう…」


マホ「なにやら深刻そうですしね~」

健夜「うん……」




少女「ぐす……でも次は勝つもん……」グス

咲「へえ?あんな事されてそんな言葉が出てくるなんて、見所があるね」フフ

少女「えへへ……」ギュッ

少女「……咲お姉ちゃん好き…」

咲「……えっ、い、いきなり話が飛んだね…!?」

少女「大好き……」ギュゥ

咲「あ、、あああ、えっとぉ…そ、その歳では、ま、まだ早いよっ…!!/////」アセアセ






健夜「でもきっと、大丈夫な気がするよ」ニコリ


マホ「……ですねっ」フフ


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健夜「本当にここまでで良いの?」


少女「うんっ。大丈夫!」


健夜「でも心配だし一応……」


『……ぉーい!……き!!』オ-イ


健夜「ん……?」


「……き!見つけた、探したよ」ハァハァ


少女「お姉ちゃん……!!」


姉「もう、どこへ行ってたの…心配かけないで……」ギュッ


少女「わわわっ、お姉ちゃん!?」


姉「ごめんね…私、どうかしてた……」

姉「自分が弱いからって、人に当たって…」


姉「その癖、自分が手加減されたら怒って……本当にごめんね!!」


少女「お姉ちゃん……ううん、わたしの方こそ、ごめんね…」

少女「わたし、自分が負ければお姉ちゃんが麻雀を楽しめるって…そう思ってた…」


少女「だけど、違うって、気付いたの…」


姉「そう思わせてたのは私だから……悪いのは私…」

姉「でも、もし許してくれるなら…また、たくさん麻雀が打ちたい」


少女「お姉ちゃん…」


姉「それで、いつか私が追い越して悔しがらせたい!」


少女「……うんっ、負けないよ!」ニコ

少女(お姉ちゃんと仲直りできた……のかな……?)



姉「それにしても、ずっと公園に…?探してたのに、見つからなかったよ」


少女「あ、そうだ!健夜お姉ちゃ……」

少女「あれ……?」キョロキョロ


姉「誰かと一緒にいたの?」


少女「……」

姉「……?」キョトン


少女「……ふふっ、お姉ちゃんにはないしょ!」


姉「えっ?どうして?」


少女「どーしても!ほら、早く帰ろ!」ギュ


姉「えぇ、教えてよ」


少女「内緒ったらないしょー!」



少女(ありがとう、お姉ちゃん達……いつかまた、私が皆を楽しませられるようになったら……)

少女「その時は、一緒に麻雀楽しもうねっ」

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~部室~



咲「……で?」ゴゴゴゴゴ


健夜「は、はい……」正座


咲「嘘って事は分かってましたよ。健夜さん、目が泳ぎ過ぎですし、なんですか親戚の女の子って」


咲「そもそも、あんな可愛い子が健夜さんの親戚な訳ないじゃないですか」


健夜「そ、それはどういう意味かな!?」ガ-ン


マホ「ま、まあまあ。さすがにマホもあの苦しい設定はどうかなと思いましたけど、上手くいったみたいですしそんなに責めなくてもっ」


咲「結果的に上手くいっただけだよ。もし、連れてくるだけ連れてきて何もしてあげられなかったら、どうするつもりだったんです」


咲「希望を持たせてからまた突き落とすなんて事になったら、私の方が耐えられませんよ」


咲「責任を持てない癖に、問題に足を突っ込むのはやめて下さい」


健夜「だ、だって放っておけなくて……」



咲「まず、そこから分かりません。1人で泣いている子供なんて、珍しくは無いでしょう」


咲「なのにどうして、あの子にだけ興味を持ったんですか。私のエクレアを捧げてまで!!」プンスカ


マホ(先輩も見つけたら助けてあげると思いますけどね~)


健夜「そ、それは……その……」


咲「ええ、確かにあの子の事情は可哀想です、可哀想ですが同情だけで人を助けられると思わない事ですね」


咲「一歩間違えれば取り返しのつかない事になっていたのが分かりませんか?」


マホ「でも、健夜さんが声を掛けなければ何もしないまま、あの子の麻雀は終わっていたかもしれないですから…」


咲「……私は、健夜さんの心配をしているんですよ」


健夜「え……」

咲「マホちゃんの言う通り、何もしないよりは良かった……結果的にそうなりました」


咲「でも、結果私たちが何も出来なくて終わった時、一番責任を感じるのは健夜さんじゃないですか」


咲「私は、それが嫌だった。……それだけです」


マホ「先輩……」


健夜「咲ちゃん」



咲「さっきあの子に言った事に似てますけど…」

咲「健夜さん以外に、健夜さんの事を考えてる人がいるって事……忘れないでください」フイッ


マホ「まったくもってそのとーりですね!!今回の件は、健夜さんが100%悪いです!!」ウンウン


健夜「ま、マホちゃんはちょっと手のひら返すのが早すぎないかな…」


健夜「……でも、ありがと。ごめんね、よく分かったよ」


咲「……分かれば良いんです」


マホ「それにしたって、あの子の始めはどちらだったんでしょうかー?」


咲「始め?」



マホ「だって、勝ちすぎたらダメっていうのと負けすぎてもダメっていう条件って、初めからは混在し得ないじゃないですかー」


マホ「強すぎて負ける事を覚えたのか、弱くて勝つ術を身に付けたのか…始まりはどっちかのはずじゃありません??」


健夜「言われてみれば、そうだね」


咲「前者じゃないかな。…というか、それを信じたいよ」


健夜「それはまたどうして?」


咲「だって、点数調整をしたり健夜さんの邪魔はしたにせよ、私は本気を出しました」


マホ「マホもですよー!」


咲「でしょ?なのに、あの子は一度も怯むことなく"普通"に打っていました」


健夜「思い出してみれば、そうかも……」


咲「始めは弱かったのに努力をしてそれほど強くなったとしたなら、成長速度が物凄いという事……それに、まだまだ伸び続ける可能性もある」


咲「まだ、初めからあの才能を持っていたと思う方が……なんて言うか、納得もいきます」


マホ「なんて言ったって、まだ小学生らしいですからねー」


咲「私の小学生の頃よりも強かったかもしれないよ」


健夜(それはどうなんだろう……)



マホ「あ、それで!健夜さんがあの子に声を掛けた本当の理由って、なんなんですかー?」


健夜「う……い、言わなきゃダメ…?」


咲「折角ですし教えてくださいよ」


マホ「うんうん!」


健夜「えっと……その、ね…」モジ


マホ「わくわく」


健夜「さ、咲ちゃんに……」チラ


咲「私に?」キョトン





健夜「咲ちゃんに、どこか似てたから……その、放っておけなくて…」





咲「……」


咲「は、はぁ!?/////」カァ


マホ「あぁ!分かります!健夜さん、それ分かりますです!」


健夜「だよね!大切な子に少し似てて、気になっちゃったんだよ」


咲「た、たいせっ……!?/////」


マホ「確かに、お辞儀の仕方とかすっっっっごく先輩と重なりました!というか、顔立ちとか髪型とか、ほぼ先輩でしたよね!!」


健夜「うんうん!マホちゃんなら分かってくれると思ってたっ」


マホ「あの子を抱きしめると先輩を抱き締めてるみたいで、すごく気持ちよかったです!」


咲「なっ、なぁっ……!!/////」


咲「す、健夜さんのバカぁぁぁぁぁ!!!!/////」ベシッ


健夜「い、いたっ、咲ちゃん痛いよ!?」


健夜「ちょ、マホちゃん助けてっ!!」イタイ


マホ「でもマホはやっぱり本物の先輩が一番ですね~!」(自分の世界)


咲「バカバカバカバカバカぁぁぁ!!/////」ペシペシペシ


健夜「マホちゃんってばぁぁ!!」






【episode2,とある少女のお話、カン】


【小ネタ・後夜祭episode2】

~後夜祭会場・対局エリア~



淡「ダブリー!」ダンッ


咲「またダブリーですか……」タン


怜「ほんま、どうなっとるんや自分…牌に愛されてるってレベルやないで」タン


小蒔「振り込まないように頑張らなくてはいけませんね…っ!」フンス


淡「ふっふっふ、テルー相手に善戦した怜、2年最強の小蒔、そしてサキを一度に相手出来るなんていい機会だよっ」


淡「みんな倒して、私が一番だって証明してあげる」


怜「また、角でカンするん?」


淡「よく分かってんじゃん!」


小蒔(やめた方が良いと思いますが…)

怜(まあ、何事も経験やんな…)



咲「リーチ」


淡「リーチ?ふんっ、サキ遅いよそんなんじゃ!」


淡「カン!」スッ

淡(これで、次跳ねツモ確定と)タン




咲「ロン。18000」


淡「ふきゅっ!?」


淡「あ、あと一巡って所で……っ!!」ワナワナ


咲「残念でしたね」


淡「このっ、サキめ……っ!」グヌヌヌ

淡(次は決めてやる!!)


怜(あかん、気付いとらんわ)

小蒔(折角咲さんと打てているのですし、まだ眠るのはやめておきましょう)フフ


咲(インハイ決勝、ネリーさんが開幕天和なんかで運を使い果たさずに堅実に打っていれば、優勝してたのは臨海だったかもしれないね…)



淡「ダブリー!」ダンッ


咲「懲りませんね…」ハァ


怜「振込みにヒヤヒヤして精神すり減らすウチらの気持ちにもなって欲しいもんやわ」


小蒔「本当ですね」



淡「とか言って、2人ともさっきから振り込んでくれないじゃん」

怜「てか、カンする前に振り込んだらダブリーだけなん?」


淡「たまに裏ドラ乗るよ」


怜「乗るんかいな…っと、言ってる内に角やね」


咲「リーチ」チャラ



淡「また咲……?ふん、そう何度も偶然が起こると思わないことだね」


淡(ふふっ、今度こそ目にもの見せてあげる)

淡「カンッ!!」バッ


淡(これで……っ)


咲「ロン、24000。大星さんトビです」


小蒔「お疲れ様でした!」

怜「ウチ、なんもしとらんのやけど…」


淡「」


淡「はっ……ちょ、ちょっと待ったああああ!!!」


咲「なんですか…大きな声出さないでくださいよ」


淡「おかしいでしょ!!どうして二連続で、しかも一発でサキに振り込まなきゃいけないの!」


怜「一発は役に付かへんけどな」


淡「そこはどうでもいいし!!」



咲「どうしてって…」ウ-ン

咲「大星さんが確実に捨てる牌が分かっていて、且つかなりの巡目手を作る猶予があるんですよ?」


咲「ロンされないと思う方がおかしいと思うんですけど」


咲「私にとっては、リーチの裏ドラでおみくじしてる様な物ですよ」


淡「捨てる牌が分かるって……」


咲「私、嶺上牌が見えてますから。正直、必ずカンをしてツモ切る大星さんはカモ当然です」


淡「なっ……なっ…!?」


淡「そんなのずっこいじゃん!!サキずっこい!!」


咲「相手の配牌を悪くできる上に自分はダブリー確定させてる人が言えたことですか」


怜「ド正論やん」

淡「トキには言われたくないし!!」



淡「ずるいずるいずるいー!!!もっかい!!今度はダブリーしないから、もっかい!!」ワ-ワ-


咲「良いですけど、そろそろ本気を出すので気を付けてくださいね」


淡「なにそれムカつく!!サキの本気なんて、私が一瞬で」


咲「いえ、私ではなくて……」チラリ


淡「……えっ」ゾク



小蒔「まだ神様を完全に扱わせて頂くのには慣れていませんが……」スッ

小蒔「よろしく、お願いしますね」ゴゴゴゴゴ


怜「これは、ウチもダブルまで混ぜんとなぁ…」


淡(な、なにこれ……映像で見るのと段違いなんだけど……!?)


咲「では、よろしくお願いします」ゴゴゴゴゴゴ



淡(テルー、私にはまだこの領域は早かったよ…)



この後滅茶苦茶麻雀楽しまさせられた


【小ネタ・カン!】

小ネタもいいとこですが、思いついたネタを…。
実際原作では、能力が発動したらカンからのツモ切りを挟む淡と、嶺上牌が分かっていそうな咲さんでは、咲さんに軍配が上がりそうですがどうなんでしょうっ。

淡には配牌操作もありますし、五分ですかね…

ルートみなも

【story11,集い】

~長野県・某所~




久「え~皆さん、この度は急な申し出にも関わらず合同合宿に快諾して下さった事に感謝し」


みなも「久、かたっくるしい」


和「宮永さんっ。そう言う事は、呼んだ私達が言う事ではありませんよ…」




ゆみ「いや、宮永の言う通りだ。予選で共に卓を囲んだ仲だろう」

モモ「っすね~。らしくないっすよ」

智美「ワハハ…なんだか、部長のセリフを取られた気がするぞ~」



華菜「そうだし。華菜ちゃん相手に緊張するのは分かるけど」


美穂子「こら華菜?余計な事言わないの」メッ


華菜「余計な事!?」ニャッ!?



衣「前置きはいい!みなも、早く打とう!」


透華「衣も待ちきれない様ですわ。卓の準備は整っていますし、始めますわよ」


一「透華……あんまり急かしちゃ悪いよ」



まこ「なんか、思っとったのと違うんじゃが」


優希「だな!私も、もっとこう……ピリピリな感じかと思ってたじぇ」


純「なーに言ってんだよタコス、俺らだって楽しみにしてたんだぞ?」


優希「こらノッポ!その呼び方やめろ!」ウガ-


ワイワイ
ガヤガヤ



久「あー……まさな、こんな気楽な感じになるとは思って無かったわ、ありがとう」クス


久「合宿の日程は、事前に各校部長に渡した冊子に書いてあるから各自見てちょうだい」


みなも「別に、時間外に打っても良いんでしょ?」


久「ええ、勿論。ただ、体力を考えて途中でバテない程度にね?」


みなも「心配無いよ。ご飯さえ食べれば、合宿中ノンストップで打ってもバテないから」


和「それはダメですよ?身体に悪いんですから!」メッ


衣みなも「「えー?」」


和「どうして天江さんまで……とにかく、無理はいけませんからねっ」


衣「ののかはお硬いな」


みなも「胸は柔らかそうなのにね」


衣「まったくだ!」


和「な、何を言ってますか!!/////」


久「えー、それじゃあ始めましょうか!」





「「「「よろしくお願いします!」」」」




ゆみ「こんなにも早くリベンジの機会が来るとはな。手合わせ願えるか?」

華菜「今度こそ、その可愛い顔をめちゃくちゃにしてやるし!」


みなも「滅茶苦茶にされるのはどっちかな?」


モモ「ちょっと待つっす!先輩、まずは私が打ちたいっす」


ゆみ「モモ?」


美穂子「そうね。華菜も、最初は譲ってくれないかしら?」


華菜「キャプテンまで」



透華「衣の仇は、わたくしが取ってみせますわ!」


衣「とーか……」


一「満月の衣が勝てなかった相手だよ…?」


透華「問題ナッシング!ですわっ」




久「あら、みなも人気者ね」クスクス

和「……」ムッス-


優希「どうしたのどちゃん。ジェラシーか?」


和「そ、そんなんじゃありません!!」プイッ





みなも「いいよ。3人纏めて掛かってきなよ」


モモ「やるっすよ~!」


美穂子「御手柔らかにお願いしますね」フフ




透華「……よろしく、お願いしますわ」コォ


みなも「……」ピク



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


~数時間後~



透華「……ん…?」パチ


透華「知らない天井……ですわ」ムクリ



一「と、透華!!良かった、目が覚めたんだね!?」ダキッ


透華「は、一!?い、一体どうし……」

透華「あら?その前に、どうしてわたくしは布団に寝かされて…?」


一「覚えてないの?」


透華「???」ハテ



純「宮永達と打ってる途中で、急に倒れたんだよ」


智紀「雰囲気もまるで別人……まるで、去年のインターハイの時みたいだった」


一「なんとも無い?どこか、痛い所とか」



透華「それは大丈夫ですけれど……」


純「これ、さっきの対局の牌譜だ。透華が別人になって打ち続けたお陰で、衣が打たせてくれないって拗ねたんだぞ」


智紀「6試合分ある」



透華「ふむ……」ペラ

透華「……」ペラ



透華「……」


一「と、透華……?どうかした?やっぱり、どこか痛む…?」



透華「…こんなの……」プルプル


一「こんなの……?」





透華「こんなの、わたくしじゃありませんわー!!!!」



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


~別室~


和「驚きました……まさか、宮永さんが負け」


みなも「負けてない!!3回トップ取ったし、引き分け!!」


モモ「と、とんだ災難だったっす……まさかりゅーもんさんがあんなに強いとは」ウゥ


美穂子「まるで別人のようでしたが…」


衣「アレが、透華の中に潜む物の怪だ」


衣「普段は姿を表さないが、強敵に相見えた時にだけ牙を剥く」


みなも「知ってる。去年のインハイの映像は30回くらい見たから」


久「さ、30て……」


みなも「もしもオーダー変更で、透華が大将になってたらマズイと思ってたからね」



衣「それは、衣なら余裕だと思っていたという事か!?」ガ-ン


みなも「そうだけど?」

和「こ、こら宮永さん!」


衣「むうううう……しかし言い返せない…」グヌヌヌ


ゆみ「今はそうでも、いつかギャフンと言わせてやれば良いさ」ナデナデ


華菜「そうだし!まだまだ機会はあるんだからな!」ポンポン



衣「ふぁっ……あ、あたまを撫でるなぁ/////」



みなも「……」フム


久「みなも?」


みなも「透華のアレは、化け物だよ」

みなも「初見でアレに勝てる人なんて、多分インハイにも居ないかもしれない」



和「お姉さ……いえ、チャンピオンでもですか?」


みなも「……あの人は、別。あの人にとっては、初見なんて言葉は存在しないから」


和「……???」



衣「衣も、いつかはアレをどうにかしたいと思っているのだがな…」


みなも「徹底的に叩きのめそうにも、強すぎるからね」


衣「なにより、出てくる頻度が不規則すぎる」


みなも「……」

衣「……」


2人「「う~む……」」カンガエ




美穂子「えっと……一先ず、今日はこんな時間ですしこの位にしておきますか?」


久「そうね。各自、お風呂に入るもよし先に夕飯を頂くもよし」

久「色々考えたい事はあるでしょうけど、今日は終わりにしましょうか」


ゆみ「じゃあ皆、解散だ」


フゥ、ツカレタ
ダレガデルカナ…ウェ、マタフジタプロ
アッ、ソレワタシモアツメテマス!コカジプロデマシタヨ!


ワイワイ
キャーキャー



久「……ふぅ」カタコッタ


ゆみ「久、美穂子、これから少し良いだろうか?」

久「ん?」


美穂子「はい、どうかしました?」


ゆみ「今日の対局、各卓で気になる点を纏めてみたんだが、2人の意見も聞きたいと思ってな」


美穂子「なにかノートを取っていると思っていましたけど、そんな事を…」

久「ええ、そういう事なら大歓迎よ!」


久「……あぁ、でも、そういう事はみなもを連れて行った方が良いかもしれないわよ?」


ゆみ「いや……まあ、それも考えたんだがな」ニガワライ


ゆみ「これは私の勝手な偏見なんだが、宮永ならすぐに最適解を見い出せてしまえそうでな」


久「あー……」

久(正解ね)


ゆみ「私個人としては、色々な可能性を一頻り考えてみるという事が、今後にも繋がっていくんじゃないかと思っているんだが…」


美穂子「なんだか、監督のような考え方ですね」クス


ゆみ「お、おかしいだろうか……?」


美穂子「いえ、そんな」フリフリ


久「流石、初出場で決勝まで導いた高校の部長ね。素直に尊敬するわ」


ゆみ「部長……?ああ、いや」クス

ゆみ「鶴賀の部長は私ではなく、蒲原だよ」



久「えっ、嘘!?」


美穂子「さ、流石に失礼ですよ?」


久「いや、だって……えぇ…ごめんなさいね、後で謝っておくわ」


ゆみ「いや、気にしないでくれ。彼女も、それを美味しいキャラだと思っているしな」


久「あら、そうなのね。罪悪感の抱き損だったわ」


美穂子「それで良いのかしら……」





――――――そして、夜はふけていく。



~深夜・宿舎外~



みなも「……」フゥ


みなも(全国……)



みなも(照、お姉ちゃん……か…)

みなも(……わたしは…)




「眠れないのか?」


みなも「……衣」




衣「良い夜だな」フフ


みなも「そ?」


衣「あぁ」


衣「あの日、みなもに出会ってから……衣の見る世界は、姿を変えた」


衣「まるで、天に地に……希望があふれているみたいだ」


みなも「……」



衣「……みなも」


みなも「なに?」



衣「みなもの見る世界は……どんなものだ?」


衣「ずっと、あの試合から……一つの悩みが雲散霧消した後で、新たな黒点が衣の頭を占めるんだ」


衣「みなも、其の目は…世界を写しているのか……?」


みなも「……」


みなも「……どうだろ」スッ


衣「!!」




みなも「今のこの世界なんて、わたしには見ている必要無いから」





衣「……」


みなも「そろそろ寝るよ。衣も、風邪引く前に戻りなよ」スタスタ


衣「……あぁ」


衣「……」



衣「必要ない、か……」



衣「ならばみなも……お前は一体、何を求めて…」


――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



優希「むにゃ……たこすうまぁ…」スヤスヤ


まこ「誰が……ワカメじゃ…ごらぁ…」ス-ス-


久「……」スゥスゥ



みなも「……」


衣『みなも、其の目は…世界を移しているのか……?』


みなも「……」


和『……私は、インターハイで良い結果を残せなければ長野を離れる約束を父としています』

和『……全国へ』




靖子『宮永咲は、麻雀を……――――――』




和『咲さんを、信じてあげてください』

和『自分に会うために麻雀をしてきた宮永さんに、何も思わないハズが無いじゃないですか』



みなも「……」



咲『…みなもは……そう…思うんだ…』

咲『私が……適当に打ったって……勝つ気が無くて……手を抜いた……って…』

みなも『そうとしか思えないじゃん!!』




みなも「…」



『みなも、お前は悪くない。気に病む必要は』


『うるさい!!!もう関わらないで!!出ていって……!!』


『……ごめん』




みなも「……っっ…」




咲『私の為にありがとう。ごめんね、無理はしないでねって、伝えて、ください』

咲『その、何となく…感じるんです。きっといつか、みなもは私を探してくれる……ううん、私の願望かも、ですね…』

咲『だから、"またいつか"って……』





みなも「……うぅ……」


みなも「……分かんない…っ……」グス



みなも「誰か……助けてよ…」


みなも「……」



みなも「…」




みなも「」ス-ス-




和「……」


和「…」



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【story11,崩壊】


~次の日・朝~


ガサゴソ



みなも「……んっ…」


みなも「和……?」ムクリ



和「あ、すみません……起こしてしまいましたか?」


みなも「ううん、平気。おはよ」ノソリ


和「おはようございます」ニコ

和「……なんだか目の下が赤いですが…大丈夫ですか?」



みなも「え……?ああ、うん」

みなも「平気だよ。うつ伏せで寝てたせいかな」クス


和「そう、ですか」



みなも「それで、和はどこ行こうとしてたの?」


和「折角露天風呂があるので、朝風呂でも行ってこようかと思いまして」


みなも「朝風呂……良いね、付き合うよ」


和「ふふっ、ではご一緒しましょうか」


みなも「ちょっとだけ待ってね」ガサゴソ


和「急がなくて平気ですよ」


和「……」


みなも「よし、じゃあ行こうか」


和「はいっ」


――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



~露天風呂~



みなも「優希、起きなかったね」


和「昨日、随分はしゃいでいましたから…もう暫く寝かしておいてあげましょう」クス



ガララララララ



みなも「おっ、誰も居ない。貸し切りだ」


和「ほ、本当ですね……」モジ


みなも「ひゃぁ…さすがに朝は寒いっ…早く入ろ」タッタッタ


和「ふ、2人きりですね……って、走ったら危ないですよっ」


みなも「んっ……はぁぁぁぁぁ…」チャプ

みなも「きもちい……」グデ-




和「本当ですね…あまり朝風呂はしませんが、癖になりそうです」フゥ


みなも「これが貸し切りなんて、和も良いときに誘って」



モモ「残念ながら、貸し切りでは無いんすよねぇ~」ユラァ



みなも「きゃぁっ!?」ビックゥ


和(き、きゃぁ……!?どんな可愛い驚き方ですか…)



ゆみ「すまない…中々声を掛け辛くてな」

モモ「おはようっす!」



みなも「び、ビックリさせないでよ。心臓止まるかと思った……」


モモ「悪かったっすね~、影が薄くて」


和「お2人も朝風呂に来ていたんですね」


ゆみ「ああ。この時間なら、ゆっくり入れると思ってな」

モモ「私達もついさっき来たばっかりっすよ」




みなも「ふうん…2人って仲良いんだね」


モモ「当然っす!先輩は、尊敬する先輩っすから!」フフン

ゆみ「そんなに立派なものではないが……」


ガララララララララ




久「あら、やっぱり和達も来てたのね」


美穂子「考える事は皆さん同じという事でしょうか?」

池田「計画失敗だし」


透華「みなもさんも居ますわ。やっぱり、衣を起こしてくるべきでしたわね」

一「仕方ないよ。衣は朝弱いから」



みなも「見事にペアで来たね…」


和「部長はどうして福路さんと?」



池田「華菜ちゃんを人数から外すのやめろし!!」


みなも「え?華菜はソロじゃないの?」



池田「どうしてそうなるし!!キャプテンと来たに決まってるだろ!?」



久「池田さんと美穂子とは、すぐそこで合流したのよ。龍門渕の2人と一緒にね」


みなも「ふーん」




ゆみ「透華はもう平気なのか?昨日、色々あったようだが」


透華「あぁ……昨日はお騒がせしましたわ。記憶が曖昧な点以外は問題ナッシングですので、ご心配なく」


池田「いや、瞬間的でも記憶喪失とか大問題だと思うし……」


一「ボクからもごめんね。強い人が集まってるんだし、アレの事を伝えておくべきだったよ」



みなも「衣に聞いたから気にしなくて良いよ」


透華「あれは忘れてくださいまし……あんなのは私の打ち方じゃありませんわ!」



久「忘れるのは無理があるわよ……でも、気にはしない事にするわ」

ゆみ「少なくとも、今は……な」


みなも「そそ」


透華「……感謝しますわ」ペッコリン





モモ「折角の機会っすし、去年インハイに出場したりゅーもんさんから、話を聞いたらどうっすか?」


久「良いわね。映像はあるけど、実際に会場で打った人の意見が聞きたいわ」



透華「そうですわね…では、そうしましょうか」


池田「全国と言ったら、やっぱり白糸台高校と臨海女子、千里山に姫松だし!」


みなも「……」ピク



ゆみ「そうだな。あとは、永水女子か?」


透華「永水女子……神代小蒔ですわね」


一「去年、会場で少し見掛けたけど…そんなに異常な打ち手には見えなかったよね?」


みなも「あの人は、透華と似てるからね」


久「あら、みなも知ってるの?」



みなも「映像は1通り目を通した。似てるって言っても、小蒔は飼い慣らしてるけど」


池田「永水の神代小蒔は、神様を降ろすって聞いたことがあるし」


和「か、神……?」ソンナオカルト



久「なんだか、えげつない子がいるのね」


美穂子「にわかには信じられませんけど……信じられない事は、とっくに県予選で見てしまいましたからね」


透華「ええ。何が起こるかは分かりませんわ」


透華「だから、"インターハイでは何でも起こる"と考えた方がよろしいかと」



モモ「恐ろしいけど、楽しみっすね」


一「楽しみ、ね……」


一「見る分にはそうかもしれない。けど、実際に試合をする清澄は覚えておいた方が良い」


和「……?」


透華「全国には、知らない方が良かった……と思えるような魔物が住んでいますわ」


透華「その筆頭とも呼べるのが、白糸台高校」



久「宮永、照……ね」


みなも「……」ピク



和「……」




一「ボク達は実際に対局した訳じゃないけど、それでも、見ているだけで分かったよ」


一「チャンピオンとボク達じゃあ、根本的な所……0.1の単位から、全てが異なってるって」


透華「失礼ですが、とても私たちと同じ麻雀を打っているとは思えませんでした」


モモ「そんなにっすか……」



華菜「……ん、宮永…?」

華菜「もしかして、清澄の宮永と白糸台の宮永って、姉妹だったりするのか?」



みなも「……っっ…!!」ビクッ


華菜「えっ、本当にそうなのか!?」


モモ「ま、マジっすか」


ゆみ「驚いたな」


みなも「……ぁ…ぃや……」



美穂子「えっ……?でも、おかしいわ…?」


久「どうしたの?美穂子」




美穂子「私、つい先日ウィークリー麻雀TODAYの記事を書いている記者さんに、取材を受けたんです」


美穂子「その時、やっぱり気になってしまって……その記者の方は、白糸台高校の取材もしていましたし、聞いたんです」


『清澄高校の宮永さんと、白糸台高校の宮永さんは何か関係があるんですか?』


美穂子「……と」


和「……」


美穂子「そしたら、記者の方も同じ質問をしていた様で…こんな返事を貰ったそうなんです」



『私に、妹は居ません。今後は2度と、そんな詮索はやめて下さい』



美穂子「なので、てっきり宮永さんと宮永照さんは無関係なのかと」



みなも「……んな……」ブルブル

久「みなも……?」




みなも「そ、そんな……ぁりえ……ま……さか……」ビクビク



池田「お、おい……?」



みなも「……めんなさい…」


みなも「ごめんなさい、ごめんなさい……わたし…わたしの、わたしのっ……」




みなも「いやだ、いやだよ……ごめんなさい……いやっ、嫌っ……!!」ガクガク

みなも「ばらばら……わたしの、せいっ……みんな…いや、いやいやいやいやいやっっ!!」


和「宮永さんっ、しっかりしてくださいっ!」



みなも「……ぁ…」プツリ




みなも「……う……して…」クラッ


ゆみ「宮永っ!」ダキッ



みなも「……」クテ


透華「み、みなもさん!?」




和「宮永さん!宮永さん、しっかりしてください!!」


久「みなも!みなも!!!」





和「宮永さん!!!!」




――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――




『―――きて!……きてってばぁ!』



みなも「…んっ……?」パチ

みなも「ここは……」


『もー!!やぁっと起きた!!』プンスカ


みなも「え……?この、声……」



咲『もぉ!!!今日は一緒にプール行く約束でしょ!?いつまで寝てるのさ!』


みなも「咲……?あれ、どうして……?」



咲『まだ寝ぼけてる!!早く準備して、プール行こうよ!』


咲『なんなら、私が着替えさせてあげよっか?』



みなも「…」



咲『みなも……?』

咲『えっ、どうして泣いてるの!?』



みなも「え……?」ポロポロ



咲『ご、ごめんね!どこか痛い?私が無理やり起こしちゃったから!?』アワアワ


みなも「う、ううん?違うよっ。欠伸したら涙が出ちゃっただけ!」ゴシゴシ


咲『ほ、ほんとに……?わたしのせいじゃない……?』


みなも「うんうん、咲のせいじゃない!」




咲『……良かった…』





みなも「ほら、早くプール行こ?」

みなも「照お姉ちゃんも待たせ……」


咲『……』


みなも「咲……?どうしたの…?」


咲『……良かった』


みなも「う、うんっ。だから平気だよ?大丈夫、大丈夫!」



咲『……良かったね…みなもは』


みなも「…え……?」


咲『良い友達もできて……楽しく麻雀打ててさ…』


みなも「さ、咲……?」

みなも「何言ってるの…?」



咲『私は、みなものせいで…麻雀なんて、嫌になったっていうのに』


咲『みなものせいで、お姉ちゃんとも離れ離れになっちゃったっていうのに!!!』



みなも「ひっ……」ビク


咲『私、知ってるんだよ?みなもが、私を良い理由にして麻雀楽しんでる事』

咲『ほんとは楽しんでる癖に、私に同情して嘘ついてること!!!!』



みなも「ちがっ……違うの…ねえ、咲……そんな事っ」


咲『私を恨んでることだって知ってるよ?』


咲『私のせいで、私が居なければ、私が麻雀なんかに誘わなければ』

咲『こんなに悩む事、無かったのに』



みなも「違うっ……やめて…やめてよぉ…」





咲『でもね?みなもがあの時、私を見捨てなかったら』


咲『私を信じてくれてたら、こんなことにはなって無かったんだよ?』


咲『酷いよね。あんなこと言ってさ』


みなも「ごめんなさい……ごめんなさい、咲……」


咲『謝ることないよ。仕方なかった』


咲『私は、みなもに信用されてなかった。それだけだもん』


咲『全部、ぜーんぶ、私が悪いんだよね?』





咲『ごめんね?私さえ居なかったら、みなもは幸せだったんだよね』


みなも「…違う……」




咲『私が居るから、辛い思いするんだよね?』

咲『私の事なんて……』



みなも「やめて……やめて…やめて……!!」





咲『私の事なんて、忘れたいんだよね』





みなも「ぁ……」


咲『ばいばい、みなも』



みなも「……」


――――――
―――――――――
―――――――――――――――


~宿舎・部屋~


和「あ……」

和「み、宮永さん!大丈夫ですか!?私が分かりますか?」


みなも「…の…どか……?」


和「良かった…」ホッ


みなも「わたし、どうして……」



和「その……」


みなも「……あぁ」

みなも「どのくらい寝てた?」


和「今は午後2時なので、5時間ほどです…」


みなも「……そう。ごめんね、心配掛けて」ノソリ


和「み、宮永さん!?まだ寝てなくてはダメですっ」



みなも「あはは、和ってば心配性だなぁ。大丈夫だって」


みなも「折角、衣とか美穂子とか、強いやつが沢山いるんだし、寝てられないよ」


みなも「ああ、もちろん和も強いよ?」


和「宮永さん……?」


みなも「ふふっ、でもまだ少しだけわたしや衣の領域に来るのは難しいかなぁ」


みなも「でも大丈夫。全国の面子と比べても、遜色ないくらいには強くなってるから!」

みなも「オカルトに不慣れな所は、この合宿で衣とかと鍛えよ?」


和「宮永さん」

みなも「和が覚醒してくれれば、全国優勝なんて余裕余裕!」


みなも「あ、この話で思い出したんだけど、昔は私もインターハイに憧れたりしてたんだよ?」


みなも「咲と照お姉ちゃんとさ、同じ高校入って、制覇してやるんだーって」


みなも「まだわたしと咲は小学生だったのに!おかしいでしょ?でも、あの時はやる気満々だったんだよね」


みなも「照お姉ちゃんも酷いよねっ。妹は居ないなんてさぁ」

みなも「いやいや、わたしが咲たちにやった事を思い出せば、自業自得だと思うよ?」


みなも「でもさぁ、そんな言い方したら……」


みなも「そんな、言い方……」



和「宮永さん!!!」ガシッ


みなも「……ねえ、和…」



みなも「わたしは……照お姉ちゃんに、どう思われてても…仕方ないと、思ってる…」

みなも「ううん、そもそも、初めに咲と照お姉ちゃんを姉妹じゃないって言ったのは、わたし……」



和「……」


みなも「それは、自業自得……でも…」


みなも「どうして照お姉ちゃんは……咲の事まで……」


みなも「咲の……ことまでっ……!!」



みなも「わたしのせい……?わかってる…咲の言うように、わたしのせいだ……」


みなも「でも違うっ……わたし、そんなつもりで…こんな事になるなんてっ…!!」



和「宮永さん……いえ、みなもさん。少し、黙ってください」スッ


みなも「……ぇ…?」




みなも「んっ……!?」





和「……っ…」チュッ


和「……ぷは」ハナレ


みなも「の、和なにして……!」



和「私は、みなもさんの事が好きです」



みなも「えっ……?」





和「こうして、ファーストキスを捧げてしまう位には、愛していると言えます」


みなも「そんな、いきなりっ……」



和「みなもさんは、どうですか?」


みなも「どう、って……」


和「私のこと、好きですか?」



みなも「それは……好」


和「咲さんよりも、ですか?」



みなも「……」


和「そうですか……なら、私の事は嫌いなんですね」



みなも「!?ど、どうしてそうなるの!」


和「はい。当然、そう思いますよね。」


みなも「……?」


和「では逆に聞きます。どうして、みなもさんはそんな結論に至るんですか?」


和「宮永照さんが、咲さんとまで縁を切ってしまった……だなんて」



みなも「だって、それは……」


和「一つ一つ、思い出してください」


和「あの夜にも同じように聞きました。」



和「咲さんと照さんは、そんなに容易く絶縁するような関係でしたか?」


和「みなもさん、あなたの知る2人は、そんなにも脆い関係でしたか?」



みなも「そんなのっ、わたしが知らない間に……!」



和「……私は、みなもさんが知っている2人を聞いているんです」


和「知らない間?……くだらない、そんな自分が不幸になるだけの想像で、勝手に勘違いしないで」




和「良いですか?私は、こう聞いているんです」


和「あなたが大好きだった2人は、そんなにも半端な関係だったのかと」



和「真意も何も知らない、たった一言の言葉を間接的に聞いただけで」

和「自分が壊したと、自分のせいだと、そう思えてしまう程くだらない物だったんですか」



みなも「……そんな、事は……」


和「……」



みなも「そんな事、無い……」


みなも「照お姉ちゃんは…私のお姉ちゃんは、妹を見放すような、そんなお姉ちゃんじゃない…」



「よく言ったわ」



ガララララララララ


久「みなも。あなたは、あなたが信じる物を信じなさい」


和「ぶ、部長」


みなも「わたしが、信じる……」


久「あなたは、色んな事を考えすぎなの。もっと、単純でいいのよ」

久「疑ったり不安になるのは、貴方が本当に信じられなくなった時だけでいい」



久「今はまだ、その時じゃないでしょう?」



みなも「……うん」


久「ん、よろしい」フウ


久「和は、もう少しみなもに付いていてあげなさい」テクテク


みなも「久」

久「うん?」


みなも「美穂子に、気にしないでって伝えといて。むしろ、ありがとねって」


久「……了解よ」クス

久「じゃ、和頼んだわね~」フリフリ



和「はい、分かりました」




みなも「……」


和「……」



みなも「和」


和「……はい」



みなも「わたし、和の事は好きだよ」


和「……」


みなも「でも、その、」

みなも「咲の方が、10倍くらい……あの、好き……なんだ」



和「じゅ、10倍とかは言わなくても良くないですか!?」


和「そりゃ、咲さんに勝てない事くらいは分かっていましたけど、そうはっきり言われると……こう、クるものがあります」ガ-ン



みなも「で、でも…わたしも、き、キスは、初めて……だったから…」


和「そ、そうだったんですか……/////」



みなも「うん……えっと、小さい頃に咲とした事は、あるけど…」



和「それ、つまり初めてでは無いですよね!?」


みなも「え?いや……えっと、お、大きくなってからは初めてだから!」


和「それは!ファーストキスとは!!言わないんですよ!!」



みなも「え、えぇ~……?」


和「はぁ…まあ、良いです」

和「私としては、言いたいことを全部言えましたから。色んな意味で」


みなも「もしも、わたしに咲って存在がいなかったら和の事好きになってたかも」


和「そんなフォローいりませんから…複雑な心境になるだけですよ…」


みなも「あ、あはは…」


和「あはは、じゃないですよ全く」

和「あぁ、少し待っていてください。何も食べていませんし、お腹も空いたでしょう」


みなも「言われてみれば、確かに」グゥゥゥ


和「持ってきますから、ちゃんと横になっていてくださいね」スッ


みなも「はーい」



みなも「……あ、和」


和「はい?」クル



みなも「ありがとね。愛してる」


和「なっ……!?/////」

和「お、お昼とってきますからね!!/////」タッタッタ


みなも「あはは、初心だなぁ…」クスクス


みなも「……」フゥ



『……ふぅん。自分で私を捨てたくせに、壊したくせに、元に戻れるとでも思ってるわけ?』


みなも「さあ?」


『……?』


みなも「戻れなかったら、戻れるまで頑張るだけでしょ」


『……無駄だよ。みなもは、私を恐れてる。一度拒絶されれば、すぐに折れる』


みなも「恐れてる?わたしが、咲に?」

みなも「あははっ、なにそれジョーク?」


『……』


みなも「わたしは、咲が……あなたが、大好きで大好きで堪らないんだよ?」


『……くだらない』

『絶対に後悔するよ』


みなも「しない」


『またあの辛い思いをする』


みなも「しない」


『どうして、そう言い切れるの……!?』



みなも「わたしは、咲のお姉ちゃんだから」


『なっ……』


みなも「咲がまだ困ってたら、今度はわたしが必ず助ける」

みなも「怒ってたら、謝って、仲直りする。……当たり前の事でしょ?」


『馬鹿馬鹿しい』


みなも「だから待ってて。すぐに、迎えに行くから」


『……』





和「お待たせしました。……って、横になっててって言ったじゃないですか!」プンスカ


みなも「もう寝るの飽きたんだもん~」


和「ホントにこの人は……私がどれだけ心配していたか分かってるんでしょうか…」


みなも「分かってる分かってる。キスしてくる位心配だったんでしょ?」アハハ


和「なーっ!!ま、まだそのことを言いますか!!/////」


みなも「あははっ、ごめんごめん」





みなも「……和、これからもよろしくね」


和「……はいっ。こちらこそ」ニコ






みなも「くれぐれも、夜這いとかはしないでn」



和「ふんっ!!」ベチンッ



みなも「痛い!?」





【ルートみなも・合同合宿編、カン】

深夜に書いていたせいか、シリアスな割りに随分適当な感じに…すみません。
本編では随分前に仲直りしている……というか、みなもがこんなに悩む必要は無かった感じなんですが、そこまでの過程として見て頂ければ幸いですっ。

長野編は多分、次の投下で終わりになる予定です。

【episode3,日常】

(注意.山も谷もオチも何もなく、ただ日常っぽい会話が繰り広げられるだけです)


その1,読書の楽しみ方

~土曜日つくば女子、麻雀部部室~



咲「……(読書中)」ペラ


健夜「…」ペラ

健夜「……」チラリ


咲「……」ペラペラ


健夜「……」ジ-ッ


咲「……?」チラ


健夜「!!」メガアウ



咲「……なんですか?」ペラ


健夜「ううん、なんでもっ」


咲「そうですか」ペラ


健夜「うん」



咲「……」


健夜「……」ペラリ


咲「……」チラ


健夜「……」フムフム


咲「…」ジ-ッ



健夜「えぇ…犯人がまさか先s」

咲「ちょっと!声出てます、ネタバレしないでください」


健夜「はっ!!」クチフサギ

健夜「ご、ごめん。また、声に出てた?」


咲「出てましたよ……。もう、犯人分かっちゃいました」ムス


健夜「あわわわわ、ごめんね!!?」アセアセ

健夜「あ、よ、よく見たら私の勘違いだったよ!」


咲「良いですよ、もう。そもそも、私が犯人かなって思ってた人と同じでしたから」


咲「でもほんと、健夜さんは私より先の巻を読むんですから気を付けてくださいよ」マッタク


健夜「うぅ…。反省するよ」ゴメンネ


咲「もう」

咲「……」ペラ


健夜「……そうだ。ずっと気になってたんだけどさ」


咲「…?」


健夜「咲ちゃんはいっつも、私に先を譲ってくれるけど、どうしてなの?」

健夜「私、同じことで何回も注意されるからさ。咲ちゃんが先を読んだ方が良いんじゃないかな?」



咲「あー……」ペラ

咲「それはそうなんですけどね」


健夜「???」キョトン


咲「えっと、まあ、なんて言うか」モジ


咲「健夜さんは、本を読んでる時に色々表情が変わったり、今みたいに声が漏れたりしますよね」



健夜「えっ!?声は漏れるけど、表情変わってたりするかな……恥ずかしいや」

健夜(ていうか、見られてたんだ……)テレ



咲「なので、健夜さんの後に読む時に『あー、ここで笑ってたんだ』とか」

咲「そんな風に知る事が出来るので、好きなんですよ。後に、読むの」チラ


健夜「な、なんだか照れちゃうね」アハハ…

健夜「でも、ちょっと嬉しいかな……なんて」


咲「べ、別に……それほど深い意図は、ありませんからね」プイ


健夜「う、うんっ」



咲「……」ペラ


健夜(そんな楽しみ方もあったんだ……なら、私もマネしてみようかな)フフ


健夜「……」ペラリ



咲「……」ペラ

咲「……ふふ…」クス



健夜「??」チラリ


咲「そういえば健夜さん、この巻を読んでる時、定期的に悲壮感を漂わせてましたよね」


健夜「えっ?あ、ま、まさか……」


咲「なるほど、主人公が度々年齢で弄られる場面があるから……ふふっ…健夜さんも、悲しくなってたんですね…!」

咲「ふふっ、あははははっ!」


健夜「も、もー!!やっぱり、これからは読んでる時観察してちゃダメっ!!/////」プンスカ


健夜「そ、それに別にそんな事ないもん!!」


咲「気にしなくたって良いんですよ。ふふ……ほ、ほら、ヒロインも言ってるじゃないですか」オナカイタイ


『人は人を好きになるんです。そこに年齢の壁なんて、存在しません』


咲「……って!あ、ちなみに健夜さんが若干嬉しそうな顔してたのはその辺りでしたk」



健夜「よ、よし分かった咲ちゃん!!それ以上その話はやめよ、ね!?/////」


咲「えー?そうですねぇ…」

咲「なら、麻雀部らしく麻雀でかたをつけましょうか?」パタン


咲「犯人もバラされちゃいましたし、息抜きも含めて」ニコ


健夜「……勝敗のメリットとデメリットは?」


咲「私が負ければ、今後は本を読む健夜さんを観察しないでおいてあげます」

咲「私が勝てば、今後も続けます。あ、それとそろそろお昼なのでご飯お願いしますね」



健夜(あれ?あんまり私にメリットが無いような……)

※すこやんは見てくれている事を嬉しく思っています。



咲「ち、な、み、に」


健夜「ま、まだ何かあるの?」



咲「前回は健夜さんが勝ちましたよね」ニッコリ


健夜「……あっ」



咲「ふふ、是非とも今回も勝ってプラマイゼロ、破ってくださいね♪」


健夜(嵌められたああぁぁぁぁぁ!!)



健夜「お、終わった後で泣いても知らないからねっ」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

咲「震え声で言われても、説得力ありませんよ?」ズズズズズズズ



健夜(こうなったら、今日こそ勝ち越して見せる……!!!)



咲「では、よろしくお願いします」ニコリ

健夜「よろしくねっ」

――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


咲さんのプラマイゼロおさらい。


呪い→小学6年時夏に発現。中学1年時夏に小鍛治健夜によって解除。(効果…意思を持って打つ全ての対局の自分の最終点数が、±0になる)

能力→中学2年時、1年と数ヶ月を掛け呪いを点数調整の能力として昇華させる。(効果…靴下有→2翻以下を好きな符数で和了れる。好きな点数で和了る事ができる(乱発不可)・靴下無→発動後、支配が崩されなければ終局時に設定した点数に必ず収束する。)


呪い?(健夜との縛り)→±0の呪いが消滅した後の対局、健夜勝利時に同時発現。
小鍛治健夜と宮永咲の対局勝利数が互いに+1を越すことはない。(なので、健夜が+1の時、次に勝つのは咲。そのすぐ後はどちらも可能性がある。この法則を崩す事が、咲と健夜の最終的な約束である(一緒にいる口実とも))



その2,ファミレスにて


~茨城県某所・ファミレス~



健夜「はぁ…今回もダメだったよ…」ガックシ


咲「ふふん、約束を守って素直にお昼に連れて行ってくれる所は好きですよ」クスクス


健夜「ほんと、毎回思うけど不思議だよね…なんで勝てないんだろ?」


咲「それは、私が負ける時にも思いますよ」

咲「けどまあ、何かの制限がかかるわけでもありませんし、もう別に良いかなって思えてきましたけど」


健夜「咲ちゃんはそうかもしれないけど…なんか、私が根本的に負けた感じがして納得いかないんだよね」


咲「あはは。健夜さん、意外と負けず嫌いですもんね」


健夜「一番に、咲ちゃんの事を適当に流したくないっていうのもあるけど……」


咲「……」


健夜「あれ、どうかした?」キョトン


咲「……いえ」フリフリ

咲「健夜さんらしいなって、思っただけです」クス


健夜「え?そ、そうかな?」


咲「はい」コク

咲「……健夜さんを見てるとたまにですけど、思うんですよね。羨ましいなあって」


健夜「羨ましい……?えっ、私が!?」

健夜「若くて料理とか家事もできる、咲ちゃんの方が羨ましいよっ」



咲「誰が独り身で家事ダメダメな、ちょっと可愛いくて優しい所と麻雀以外取り柄の無いアラサーを羨ましく思うんですか。追い込まれすぎでしょうその人」

健夜「うっ」グサリ



咲「……違いますよ、そういうのじゃなくて」



咲「健夜さんが私を気にしてくれるように、私も健夜さんの為に麻雀を打ってあげる事が出来たらなって…そういう所です」

咲「別に、私の為だけに麻雀を打っているなんて思ってはいませんけど。まあ、なんですか……」モジ

咲「はい……そんな、感じです」プイッ



健夜「……」ジ-ン

健夜「えへへ、ありがと、咲ちゃん。嬉しい」ニコッ


咲「か、借りを作りっぱなしにしたく無いだけですから」


健夜「うーん、でもこの立ち位置は譲れないかな?」


咲「どうしてですか。いっぱい借りを作らせといて、なにを要求するつもりですか」ジト


健夜「違うよ!?そのジト目やめようね?」


健夜「……むしろ、ね。私の方こそ、咲ちゃんには沢山のものを貰ったから」


健夜「今は、咲ちゃんの為に何かをしてたいの。恩返しとか、そんなの関係なくて」



健夜「それに、私にとってはそれが凄く楽しくて、好きだから」


咲「……」


健夜「だから、この立場を楽しむのは私だけの特権ってね」エヘヘ


咲「……もう、信じられないくらいお人好しですね」クス


健夜「咲ちゃんだからだよ。それに、その言葉はそのままお返しするね」フフ



咲「まあ、そこまで私に尽くしたいって言うなら仕方無いです。」

咲「まだ暫くは、譲ってあげますよ」


健夜「うんっ」


咲「……な、の、で」


健夜「??」


咲「すみませーん」


店員「はい、ご注文はお決まりでしょうか?……って、咲ちゃんに小鍛治さん」←結構常連



咲「どうもです。いつもの二つに、後からこの新作のデザートを全種類お願いします!」


健夜「……え゛っ」


店員「おぉ…流石。かしこまりました、少々お待ちくださいませ~♪」ペコリ



咲「ふふっ、麻雀でエネルギー使ったので丁度良かったですね?」


健夜「ま、まさかあんなに頼むとは……」


咲「大丈夫ですよ!そんなに高くないですし…それに」クス


咲「私の為に、なにかしたいんですよね♪」



健夜「……はい、仰せのままに」



健夜「……って、色々間違ってないかな!?」



咲「安心してください、食べたかったら健夜さんにも分けてあげますから!」

咲「なんなら、お礼に食べさせてあげるオプションも付けますよ」クスクス


健夜「いらないよっ!!」


咲「そうですか?」

健夜「……あ、やっぱりちょっとアリかも…」


咲「残念、やっぱりはナシです~」


健夜「そんな!?」ガ-ン


咲「あはは、どうしてもって言うなら考えない事もないですけどねっ」



ワイワイ
きゃーきゃー





店員(結局、ああ言ってても最終的にいつも咲ちゃんからアーンを差し出すんだよねぇ…)

店員(あぁぁぁ…砂糖吐きそうね、まったく!)





店員「お待たせ致しました~!」



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


その3,思い出


咲「ふぅ~、久しぶりにこんな食べました」マンゾク

咲「ありがとうございます、美味しかったですっ」ペッコリン


健夜「あはは。ううん、どういたしまして」

健夜(相変わらず、食べてる咲ちゃん可愛いし役得なんだよね)


咲「お礼と言ってはなんですが、今度お弁当でも作ってきますよ」


健夜「えっ、良いの?」


咲「はい。流石に、今日の賭けは意地が悪かったですからね」

咲「その内持ってきますから、楽しみにしててください」


健夜「うん、ありがと。ほんとに楽しみだな」


咲「んー……」ピト

咲「確か、健夜さんのお母さんは料理上手なんですよね?」


健夜「少なくとも、私よりはね……」


咲「健夜さんはせめて、目玉焼きくらい作れるようになってくださいよ」


健夜「ううん……説明書通りにやってるのに、何故か失敗しちゃうんだよね」


咲(説明書って……)


咲「そんなの読むより、お母さんに教わった方が上達すると思いますけど」


健夜「それがね、家のお母さん、教えるのがほんっっっとに苦手で」


健夜「確か、高3くらいの時だったかなぁ……」



『はい!今!あれをこうするのよ!』

『えっ、どれをどう……?』

『だから!それをあれするの!』

『さっきと言ってる事違くないかな……!?』

『あぁぁ、焦げる焦げる!!頑張ってどうにかしなさい!』

『頑張って!?』






健夜「……みたいな、こんな感じなの」


咲(ひ、酷い……)


健夜「だから、お母さんには教わらない方が良いんだよね。……食材の為にも…」


咲「そうみたいですね…」


咲「良かった、料理の勉強しといて」ボソ



健夜「え?何か言った?」



咲「困った時は私がご飯を作ってあげますって言ったんですよ!」クス


健夜「困ったらコンビニ弁当……は、咲ちゃん怒るもんね」

健夜「お言葉に甘えさせていただきますっ」ハハ-


咲「はい、よろしいです」フフ



ボール「ゴロゴロ……w」コロガル



健夜「あ、爆弾」


咲「えっ!?」ビクッ


健夜「……ごめん、嘘…ふふっ……」


咲「もう!!健夜さん!!!」キッ


健夜「あははっ!ごめんって、つい魔がさして」


咲「むぅ……!!」プク-


子供「おーい、お姉ちゃん!そのボール取って~!」オ-イ

少年「パス!パース!」



咲「あ、うんっ!投げるよー!」


健夜「平気なの?」


咲「当たり前です。現役の高校生ですよ?」フンス

健夜(フラグかなぁ……)


咲「行くよー!!」ギュルルルルルル


健夜(えっ、コークスクリュー!?ていうか、この動きどこかで見たような…)


咲「せえの……」ギュルルルルル

咲「えいっ!」ドゴォォォォォォォォ



健夜(可愛い掛け声と裏腹に勢い凄くない!?)



ボール「びゅーーーーん!w」



少年「うぉぉっ!!!!」バシッッッッ


健夜(あの子はあの子で普通に取れるの!?)




子供「お姉ちゃんすげぇ!!」キャッキャ

少年「姉ちゃんありがとう!!」



咲「どういたしましてー!道路に飛ばさないように気を付けてねー!」


健夜「い、今の何……?」


咲「今の??」ハテ

咲「ああ、ボールを投げた時のですか?」


健夜「うん。なんだか、尋常じゃないパワーを感じたんだけど……」


咲「実は、あれは昔お姉ちゃんに教わった投げ方なんですよ」フフ


健夜「だろうね。なんていうか、似てたもん」


咲「みなもと知り合いたての頃で……小学5年生の秋頃でしたかね、あれは」



悪い少年『へへっ、これは俺らが使うからな!』



みなも『ひぐっ……うぅ……』グスグス

咲『ぼ、ボール返して!私たちが遊んでたんだから!』


悪い少年『はぁ?知らねーよー!転がってきたのをオレらが取ったんだから、オレらのもんだろ!』

取り巻き『そうだそうだ!最後に触ったヤツの物なんだよ!』

悪い少年『分かったら、女は家でおままごとでもしてろよ!』


咲『ぐぅ……!』

みなも『うぅ……さきぃ…』グスグス


咲『だ、大丈夫だよみなも!私が取り返してあげるからっ』


取り巻き『うっせー!ちんちくりん!』

悪い少年『そっちの弱虫みたいに、お前も弱虫なんだろ!』


咲『み、みなもの事悪く言うなら許さないから!!』


悪い少年『はぁー?許さないって何様?』

取り巻き『調子のってるな!一回ぶたれたいのか?』バッ


咲『ひぅっ……』ビクッ



ボール「ごろごろ……ww」トン

『……』

ボール「ぴたっ……w」




みなも『さ、さき……もう良いよっ…帰ろ?ね……?』

咲『だめ!悪いのはあっちだもん!!謝るまで許さないからっ!』


悪い少年『あーうるさいうるさい!そんなに泣かされたいならそうしてやる!』

取り巻き『やっちまおうぜ!』


咲『うっ……うぅ…』


ゴォォォォォォォォォ

悪い少年『ん?なんか聞こえないか?……てか、ボールはどこに』


ボール「どーん!w」

悪い少年『ぐはぁっ!?!?!?』ズドォォォォォン


取り巻き『!?』



照『私の妹達に、随分な事してるみたいだけど』ギュルギュル

照『そのくらいにするか、続けて飛ぶか……どっちか選んで』ギュルルルルルルルル


咲『お、お姉ちゃん!!』

みなも『照お姉ちゃん!』


取り巻き『ちゅ、中学生!?ずる!ずるだぞ!!』


照『……それが答え?じゃあ、今度は石でいく』ギュルルルルルルルル

石「じゅんびかんりょう!w」



取り巻き『ひぃぃぃぃぃ!!お、覚えてろよっ!!先生に言うからな!!』カツグ

悪い少年『』


取り巻き『せ、先生に言うからなぁぁぁぁぁぁ!!』ダッダッダッ


照『……ふぅ』

照『大丈夫?ケガはない?』


みなも『照お姉ちゃぁぁぁぁん!』ダキッ

みなも『うぅ……ぐす…怖かったよぉ……』


照『もう撃退したから大丈夫だよ』ナデナデ


照『咲、平気?』


咲『う、うんっ……へい、平気……うぅ……』グス

照『……おいで』


咲『……ふぇぇ…っっ…怖かったよぉぉ……!!』ダキッ

咲『みなもに何かあったらどうしよって、私……わたしぃ…!!』


みなも『咲ぃ……さきぃぃ!!』ビェェン


2人『うわぁぁぁぁぁぁん……!!』






咲「……そして私は、二度とあんな失態を犯さないようにと、お姉ちゃん秘伝の殺陣投球を覚えたって訳です」


健夜「て、典型的な悪い子も居たもんだね」


咲「あの時は怖かったんですよ。昔の私はよく頑張ったと褒めてあげたいです」


健夜「ちなみにその後、殺陣投球が本来の目的で使われたことはあったの?」


咲「いえ、無いですよ?なので、懐かしいあの技を出させてくれたあの子供達には感謝です」クスクス


健夜(あんな必殺技、3年一緒に居るのに知らなかったや……何かの間違いで、私が喰らう側になってなくて良かった…)


咲「にしても、今日は天気が良いですね」


健夜「そうだね。外出して良かったかも」



咲「部室に帰ったら、屋根上でベッドのお布団でも干しましょうか」


健夜「あ、良いね!」


咲「ふふ、そうでしょう。まあ、散歩がてらゆっくり戻りましょう」


健夜「最近運動不足だったからなぁ…」


咲「なら、私の殺陣投球でキャッチボールでもしますか?」


健夜「ま、まだ生きてたいから遠慮しておくよ」

咲「なーんだっ、残念」アハハ



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



その4,部室の時間と訪問者

~部室~



健夜「んー……」カチカチ


咲「健夜さん、飲み物入れてきますけどコーヒーいりますか?」


健夜「あ、うん、お願いー」


咲「分かりました」テクテク



健夜「うーん…難しい……」カチカチ

PC「……」ブ-ン


健夜(世界ジュニア参加予定国の大規模大会の牌譜から各国への注意点を~なんて頼まれてもなぁ……)

健夜(無理でしたぁって断ろうかな…)



咲「どうぞ。熱いですよ」コト

健夜「ありがと、咲ちゃん」


咲「さっきから何を唸ってるんですか?お仕事?」


健夜「というか、頼まれ事というか……」

健夜「世界ジュニアの相手について、色々考えてくれ~って言われちゃって」


咲「ふーん……少し見てもいいですか?」


健夜「ん、いいよ」スッ


咲「……」フムフム


咲「うわっ、なんですかこれ……」



健夜「ね?国の数はそうでもないんだけど、人数が多すぎるの」

健夜「この牌譜の中から要注意人物を一人一人見つけてどうにかして~なんて、さすがにちょっとね……」


咲「世界大会と言えば、ドイツやイタリア、イギリスが強いんですよね?」


健夜「プロの方だと、まあ……そうなのかな?」


咲「あぁ……健夜さんは誰が来ようと余裕で勝ててしまっていたんでしたっけ?ならどこも同じような物ですね、すみません」


健夜「その言い方やめて!?」


咲「インハイの時、ネリーさんや明ちゃんに聞いた限りでも、その辺りは強いって言ってましたし」


健夜「ドイツはまあ、そうかな。今の世界一位もドイツの選手らしいし」


咲「なら、その辺の主要国は他に任せて健夜さんは、もっとこう、ダークホースになりそうな国を中心に見ましょうよ」

咲「日本で言うところの阿知賀みたいな……」カチカチ



咲「ほら、例えば……ここ、スイス」


健夜「うーん……」


咲「この牌譜ってつまり、日本で言えばインターハイと同じって事ですよね?」


健夜「うん、そうだね。外国ではどういう形式なのかよく分かんないけど、そんな感じ」


咲「このスイスのこの牌譜、多分準決勝辺りでしょうか?平均放銃率が他の国や試合と比べて異様に低いです」


健夜「ホントだ」


咲「いくら何でも、その卓の全員が全員そんな頭のおかしな低放銃率を叩きだせるわけないですよね」

咲「実際、この北家の人は並程度に振り込んでます」


健夜「という事は、誰か一人……この数字にしている選手が……」カチカチ


咲「……居ましたね」


健夜「放銃率0%……しかも、立直を頻繁に掛けててこれかぁ」


咲(愛宕さんみたい……?いや、少し違う?まあ、いいか)

咲「でもそのチームは負けています。という事は、その放銃0%チームに勝った所には、もっとおかしい選手がいる」


咲「こうやって芋づる式に見ていけば、完全とまではいかないにしても何となくの把握はできます」



健夜「律儀に一人一人見ていこうと思ってたよ、私……」


咲「まあ、それでも面倒と言えば面倒ですけどね」


健夜「……じゃあ、もうスイスのレポートだけ送信して、終わりでいっか!」パタン


咲「え、良いんですか?」



健夜「別に、ボランティア的な扱いで頼まれてるだけだし……」

健夜「なにより、あんまり知りすぎちゃうと今年の大会の面白みが半減しちゃうからね」


咲「なるほど」


健夜「あと、面倒くさい……」


咲「あ、本音が出ましたね」


健夜「だってさぁ……」ウ-

咲「ま、私も健夜さんがパソコンばかり眺めていると私も暇なので、賛成ですけど」


健夜「そうでしょ?よし、咲ちゃんの許可も降りたしやめよっと」


咲「そもそも、誰から頼まれたんです?」

咲「日本代表の監督とかですか」



健夜「あ、ううん。違うよ」

健夜「難しい話になるんだけど……なんて言うかな、日本の麻雀界を取り仕切ってる協会みたいな所からかな」


咲「あぁ、テレビで麻雀の試合がやる時に毎回提供に出てくる、日本麻雀協会ですか」


健夜「うん。もう恵比寿にも所属してないし、お断りですよ~って雰囲気出してるんだけど、度々こういうのを頼まれるんだ」


咲「まあ、元とは言え日本でトップ張ってたプロ雀士ですしね」


咲「それに健夜さんって、一度断っても押せば折れてくれそうな人No.1ですし」


健夜「ううん…ならもっと、ビシッとした方がいいのかなぁ…」


咲「そういう所が、私は結構好きですけどね」クス


健夜「そ、そうかな」テヘヘ

健夜(なら、変えなくて良いかな)



トントン



咲「ん……?」


健夜「誰か来た?珍しいね」

健夜「マホちゃんかな?」


咲「マホちゃんはわざわざノックしませんよ」スッ


『あの!生徒会長だ!入っても良いだろうか?』


咲「えっ、会長…?どうしてこんな所に?」

健夜「さ、さぁ。私には分かりかねないけど…」



咲「もしかして、ついに廃部決定とか……?」


健夜「ええ!?それは困るよっ!」


咲「だって、そのくらいしか会長水から来る理由が」


『お、おーい…?困ったな、誰も居ないのだろうか…』

『一度覗いて…いや、無礼だよな…』



健夜「とりあえず、話聞いてみたら?」

咲「いけません、忘れていました。」タッタッタ



ガチャ



咲「はい。すみません、ウトウトしていました」

咲「会長が、こんな所にどんな用ですか?」


会長「あぁ、すまない。睡眠の邪魔をしてしまったか」


咲「いえ、嘘なので気にしないでください」フリフリ


会長「えっ?あ、ああ……うん、それなら良かった」

会長「いきなり押し掛けてすまないのだが、今生徒会で部費の配分の話をしていてな」


咲「土曜日までご苦労様です。……部費、ですか?」

咲(部費……?)


会長「あぁ。それでだな、こちらの手違いで5月から今月10月までの部費を、こちらの麻雀部に渡すのを忘れてしまっていたんだ」


会長「本当に申し訳ない」ペコリ

会長「何分、今年初めて、それも少々特殊な形で作られた部という事で、このような間違いが起こってしまった」


咲「は、はぁ……」

咲(え、部費なんて貰えるの?部員私だけなのに……ていうか、卓のメンテとかは健夜さんのチームでやってくれてるし、別にいらない…)


会長「毎月の予算が少しずつ食い違っていたことに、もっと早く気が付くべきだった」

会長「すまない」ペコリ



咲「いえ、気にしないでください」フリフリ

咲「私の方こそ、すみません。部費が麻雀部も貰えるなんて知らなくて」


咲「もっと早く気が付いて、伝えに行くべきでした」ペッコリン


会長「いや、本当にそちらに不備は無い。」

会長「……でも、少し安心したよ」


咲「??」


会長「言い難いんだが、この学校は進学校という事もあって他校と比べて部活に力を入れてはいないだろう?」

会長「事実、ほとんどの学校にある麻雀部がこの学校には無かった訳だ」



咲「まあ、そうですね…。中学もでしたけど、麻雀部が無いのは少し珍しいです」



会長「だから、そんな麻雀部に一人だけいる部員がどんな子なのか…内心、ビクついていてね」クス

会長「ついこの前、ヤクザ物の映画を見たせいもあるんだが」


咲「あはは…」


会長「でも、キミのような物腰の柔らかそうな子で良かった」

咲「そんな、褒めてもなにも出ませんよ」


会長「いや、他意は無いよ。本心だ」

会長「っと、すまない。あまり席を外す訳にはいかなくてな」


咲「あ、はい」



会長「これが、渡せていなかった分の部費だ。改めて、すまなかった」


咲「いえ。わざわざありがとうございます」ペッコリン

咲「生徒会のお仕事もほどほどに、休んでくださいね」


会長「……ふふ、ああ。ありがとう」ニコ

会長「では、失礼する」


ガチャ
……バタン




咲「……ふぅ」テクテク


健夜「随分話してたね。どんな用件だった?」


咲「これです」スッ


健夜「なにこれ?何か入ってるみたいだけど…」


咲「中身、見てみてください」


健夜「んーっと……」チラ


健夜「……えっ、お、お金!?」ビクッ



咲「それをやるから、今日中に部から撤去しろと言われました」


健夜「えぇぇぇぇぇぇー!?お、お金で!?」アワアワ

健夜「ど、どうしよう!?ていうかこれ、大丈夫なお金なの……!?」


咲「ていうのは嘘で、部費だそうですよ。手違いで、数ヶ月分渡せていなかったみたいです」


健夜「……部費?」


咲「はい、部費です」ニッコリ


健夜「……撤去は…?」


咲「しません」


健夜「このお金は綺麗な……?」


咲「はい。別に、賄賂とかじゃないです」

咲「部費ですよ、部費。いくらか数えてはいませんけど、かなりありますね」


健夜「よ、良かったぁぁぁぁぁ!!」

健夜「もう、咲ちゃん質の悪い冗談はやめてよね!」プンスコ



咲「あはは、ごめんなさい」クスクス

健夜「でも、この学校の会長さん初めて見たよ。」


咲「集会とかで、よく前に立って話してますよ」

咲「さすがに、私も個人的に話した事はありませんでしたが」



咲(会長かぁ……初めて話したけど、誰かに似てるような…)ウ-ン



――――――
――――――

~旧校舎外~


少女(高1の方)「あ、おかえり~」


会長「あぁ。すまない、待たせたな」


少女「それで、どうだった??」


会長「お前の言った通りだったよ。芯が強そうな、今どき珍しい子だった」フフ


少女「でしょでしょ!なんたって、あの宮永さんだからね~」


会長「しかし、いくら進学校とは言えこの麻雀人気。あれなら、他に部員が入っても良さそうだが」


少女「あー、無理無理!それは難易度高いんだよね」


会長「何故だ?」



少女「麻雀部にはね、宮永さんの他にコーチ?みたいな、顧問みたいな人がもう一人居るんだけど」


会長「ああ、聞いている。小鍛治健夜プロだな」


少女「そそ!その小鍛治さんと宮永さんって、仲がすっっっっごい良いんだ」

少女「あと、たまに同じくらい仲の良い中等部の後輩が遊びにくるらしいしっ」


会長「……?それが、どう難易度高いに繋がるんだ?」

会長「険悪なよりは、いいと思うが…」


少女「鈍いなぁ!だから、あまりにあの部は完成され過ぎてて、逆に入り辛いの!」

少女「言うなら、そう!夫婦仲良くしてる所に、他人が割り込む……みたいな?」



会長「ああ、なるほどな。理解した」


少女「一時期は私も入ろっかな~って考えたんだけどね」

少女「クラスで仲良くなれたから、満足しちゃった」エヘヘ


会長「そうか」クス

会長「お前が入れ込む理由、少し分かった気がするよ」


少女「あー!!ダメだからね!お姉ちゃん、宮永さんに手を出したらダメだから!」ム-


会長「そんな気は無いさ。安心してくれ」


少女「なら、良いけどさ」


会長(……宮永咲、か。)

会長(来年の会長候補にでも、推薦しておこうか)フフ



――――――
――――――

もう暫く日常が続きますっ。
数レス完結の話をいくつかと思っていたんですが、書いていたらいつの間にかストーリー的な感じになっていましたorz


その5,部費の使い道


~部室~


健夜「それにしてもこの部費。どうしよっか…」


咲「私に聞かないでください。そんな大金、使い道が思い浮かびません」


健夜「雀卓のメンテとか麻雀の道具とかは、心配いらないからなぁ」

健夜「……もう一台雀卓を買うとか…?」


咲「要りませんよ…。ただでさえ、今ある雀卓ですら若干持て余してるんですから」


健夜「だよね…」


健夜「いっその事、使い道がありませんって返してきちゃう…?」


咲「それも考えてましたけど、生徒会はあくまでも学校の決めた予算配分を行ってるだけですし…」

咲「急にこんな額を返されても困るんじゃないかと思ってやめたんです」


健夜「それもそっか」ウ-ン


咲「……あ、そうだ」つケータイ取り出し


健夜「ん??」


咲「こういう時に、他の学校の知恵を借りたら良いんです」

咲「折角、インハイで何人か連絡先を教えて貰ったんですから」フフン


健夜「あ、その手があったね!」

健夜「グッジョブだよ、咲ちゃん」


咲「えっと、じゃあまずは……無難に玄さん辺りでいいでしょうか?」ピッピッ


健夜「真面目そうだもんね」


咲「じゃあ、掛けます」ピッ


プルルルルルルル、プルルルルル



健夜「電話するの初めて?」


咲「いえ、何回かありますよ」



玄『もしもし、咲ちゃん?』


咲「こんにちは玄さん」

咲「いきなりすみません、今少し時間ありますか?」


玄『うん!部活中だけど、平気だよ』

玄『珍しいね、咲ちゃんから電話くれるなんて。えへへ、嬉しいよ』


咲「実は、少し困ったことが起きていまして」


玄『こ、困ったこと?大丈夫…?』

玄『あ、ちょっと待ってね』


咲「はい」


『誰から?もしかして、彼氏?』

『ち、違うよ!咲ちゃんからっ』

『咲から?珍しい、ちょっと代わってよ』

『あ、私も私も!咲と話したい!』

『ちょっと待つのです!今は私っ』

『えー、なによケチね』

『おーい、あんまり玄を困らせるなよ』

『はーいっ』



玄『ご、ごめんねっ。皆近くに居るから……』

玄『困ったことって?聞かれたくなかったら、外出ようか?』


咲「ああ、いえ。別に、それほど深刻な事じゃないので」

咲「むしろ、阿知賀の意見を聞きたいので大丈夫です」


玄『あ、そうなんだ…』


玄『うん、それで、どうしたの??』


咲「実は、いきなり結構な額の部費を貰っちゃいまして」


玄『部費?』

咲「はい。多分、玄さんが大会の先鋒で溶かした点棒の数と同じくらい……いえ、もう少しあるんです」


玄『そ、その例えは私どう反応したらいいのかな…?』

玄『でもそっか、部費……部費が、どうかしたの??』


咲「知っての通り、こっちって人も居ませんし雀卓のメンテとかも健夜さんのチームにお願いできるので、使い道が無いんですよ」


玄『あー……なるほどなるほど』


咲「なので、阿知賀ではどんな事に使っているのかなって」



玄『ふむ……ちょっと、皆にも聞いてみるね』

咲「お願いします」



『ねえねえ、この部の部費ってどんな事に使ってたっけ??』

『部費?』

『うん、実は――――――らしくて、咲ちゃんに聞かれたんだ』

『へえ、良いじゃない』

『お菓子いっぱい買える!』

『いや、部費でお菓子買ったらダメでしょうに』

『私らの所は、まず雀卓のメンテと……後は、インハイ前の遠征の費用の足しにしたりしたな』

『あとは、牌譜用の用紙だとかなんだが……その辺のは全部、小鍛治さんのとこで事足りそうだよな』

『コタツ……買うとか…?』

『それ、お姉ちゃんが欲しいだけでしょう!』

『えへへ』ポカポカ

『悪いけど、麻雀関係以外では、あんまり思い浮かばないな』



玄『うーん、ごめんね咲ちゃん。あんまり、いい案出なかったや』

咲「いえ。普通はメンテなどに使うでしょうし、仕方ありませんよ」


玄『私個人としては、別に咲ちゃん達が使いたい物に使うのがいいと思うけどね』

玄『あんまり難しく考えなくてもいいと思うよ!』


咲「はい。玄さんの気の抜けた声を聞いていたら、そんな気分になってきました」クスクス


玄『それはあんまりだよ!?』ガ-ン


咲「それじゃあ、阿知賀の他の皆にもよろしく伝えておいてください」



玄『うんっ。あ、皆話したがってるからその内電話掛かってくるかも』


咲「今からもう何件か電話をする予定なので、数時間後にしてくださいね」


玄『ん、分かったよ。それじゃあ、バイバイ?』

咲「はい、ありがとうございました。また」

玄『またねーっ』



ピッ


健夜「あんまりいい案は出なかった?」


咲「はい。やっぱり、メンテとか阿知賀はインハイの前の遠征などに使ったそうで」

咲「私達には縁の無さそうな感じでした」


健夜「そうだよね……」



咲「玄さんは、私達の使いたい物に使えばって言ってましたけど」

咲「健夜さん、何か欲しい物ありません?」


健夜「欲しい物……ううん、そう言われてもなぁ…」

健夜「咲ちゃんは?」


咲「そうですね……」

咲「一つ思い浮かんだのは、この部室の電球が切れかかってるので、電球ですかね?」


健夜「それは多分、学校に言えば貰えるんじゃないかな……」


咲「……そうでしたね」

咲「あ、それじゃあ、掃除機とか」


健夜「掃除機!?」


咲「ほら、この部室ってスリッパ履かなきゃじゃないですか?」

咲「一々面倒ですし、なんだか落ち着きません」


咲「なので、掃除機でも買って床の清潔を保てる状態にしておけば、靴下でも平気になると思うんです」


健夜「なるほど…さすが、掃除関係は私には思いつかなかったや」


咲「掃除機なら基本一家庭に一台ですし、どこかから持ってくる訳にもいきませんから」


健夜「よしっ、なら一つ目は掃除機で決定ね」

健夜「ホワイトボードに書いておくよ」キュッキュッ




咲「次は誰に電話しよう」

咲「小蒔さん……は、なんだか部費の存在を知らなさそうだしな…」


咲「よし、じゃあ明ちゃんに電話してみます」


健夜「あそこは人数も凄いし、麻雀関係が多そうな気がするけど…」


咲「私も、既に半ば諦め状態ですよ」ピッピッ


プルルルルルルルルル、プルルルルル




明華『Allo?』


咲「あ、明ちゃん?急にごめんね、咲だよ」


明華『あら、咲さん?すみません、連絡元を確認していませんでした』


明華『電話をくれるなんて嬉しいです』


咲「今って時間平気?ちょっと、聞きたい事があるんだけど」


明華『ええ、勿論。ネリーと智葉しか近くに居ませんから』




『ん?なにさ、ネリーになんか用?』

『いえ。咲さんから電話が来たので』

『えっ、サキ!?ちょっと貸してよ』

『ダメです。すみませんサトハ、少し電話をしても?』

『ああ、構わない』

『明華のケチ!!』ムッス-




明華『すみません。それで、お話ってどんな事ですか?』

咲「実は、――――――――――――って事なんだけど…」

咲「臨海はどんな事に使ってるかなって」


明華『部費……すみません咲さん、留学生の私では詳しい事は分からなくて』



咲「そっかぁ~……ううん、平気」


明華『少しサトハに聞いてみるので、少しだけ待ってください』


咲「あ、助かるよ!ありがとっ」




『サトハ、咲さんが部活の部費を何に使っているのか聞きたいみたいなんですが…』

『ぶひ……?なにそれ、豚の鳴き声?』

『違います。学校から、部活に必要な物を買うために支給されるお金の事です』

『えっ!?そんなの貰えるの!』キラキラ

『いや、個人じゃなく部に与えられる物だぞ』

『……ううん?』

『ネリーは貰えない、という事です』

『なにそれ!!喜んでソンしたよ!!』プンスコ

『部費か……わざわざ聞いてくるということは、雀卓のメンテというありきたりな返答ではダメだろうな』

『ええ、恐らく』

『そうだな…。うちでは部員のやる気を損なわせないよう、甘味とかも買っているが』

『他には、珈琲や紅茶とかだな。要望があればココアなどもか』




明華『……だ、そうです。』

明華『個人的に、紅茶などはそそられますね。部室は長くいる場所ですし、お気に入りの物があると居心地もいいです』


咲「なるほどね。確かに、良いかも」ウン


明華『あまりお役に立てなくて心苦しいです』

咲「そんな事ないよ。ありがとね、明ちゃん」

咲「時間があったら、また遊びに来てよ」


明華『はい、是非!今日にでも行きます』

咲「きょ、今日はちょっと難しいかな」



明華『ふふ、ジョークですよ♪』


明華『では、Salut。咲さん、また今度』


咲「うん、またねっ」



ピッ



健夜「明ちゃん、元気そうだった?」


咲「はい。時間があれば遊びに来てって言っておきました」

咲「それと臨海からの案は、紅茶や珈琲です」


健夜「据え置きの飲み物だね」


咲「一応、両方とも置いてはありますけど…健夜さんの家から持ってきている物ですし、新しいのを試してみますか?」


咲「それとも、この際コーヒーメーカーでも買ってみます?私は、珈琲飲めませんけど」



健夜「なんだか段々、家の家具を揃えるみたいになってきたね…」


咲「ちょっと楽しくなってきました。どうせなんです、部室を過ごしやすくしましょうよ」


健夜「えっとじゃあ、2つ目は珈琲と紅茶……コーヒーメーカーっと」カキカキ


咲「にしても、学校はよく部員一人の麻雀部にこれだけの部費を出してくれますね」


咲「これも、地元の英雄小鍛治健夜パワーですかね?」アハハ


健夜「や、やめてよっ。そんなパワー無いからね!」


健夜「えっと、どうしよっか?もう少し聞いてみる?」


咲「そうですねぇ…それじゃあ、もう一校だけアテがあるので、そこを最後にしましょう」


健夜「どこ?白糸台かな」


咲「惜しい、清澄です。白糸台は多分、お姉ちゃん用のお菓子以外は麻雀関係ばかりだと思うので」


健夜「お菓子……そういえば、照ちゃんも甘い物大好きだったね」


健夜「ちょっと意外かも」


咲「インハイ効果で、なんていうか怖いイメージがついてますもんね」アハハ


咲「よし、じゃあ最後清澄に聞いてみます」ピッ


健夜(誰にかけるんだろ?みなもちゃんかな)



プルルルルル、プルルルルルル




久『あら咲?珍しいわね、どうしたの?』


咲「先輩ですか、こんにちは。今時間ありますか?」


健夜(あ、久ちゃんか)


久『ええ、部室にいるけど暇よ?』

久『もしかして、デートのお誘いかしら?』


咲「ええそうです。なので、今から10分以内にこっちの高校まで来てください」


咲「遅刻したら、先輩が変なコトしてきたってみなもに言いますから」


久『ちょっ、それはシャレにならないわ』

久『……全く、冗談が通じるようになって嬉しいわ』クスクス


咲「なんですかそれ。昔だって、反応してあげてたじゃないですか」


久『躊躇いもなく足蹴にしてた子が言う言葉かしら……』


咲「私なりの愛情表現ですよ、気付いてなかったんですね。この鈍感」


久『あら、そうだったわね。私が引っ越した後で部室で大泣きするくらい、私の事が大好きだったのよね』クスクス


咲「なーっ!?/////」

咲「そ、その事誰にっっ!?/////」


久『知ってる人なんて、一人しか居ないんじゃないかしら?』



咲「す、健夜さん!!!!」ジロッ


健夜「へっ!?」ビクッ

咲「後でお話があります。楽しみにしていてください」ニッコリ


健夜「は、はいっ……」

健夜(なに!?何がバレたの!?)



久『あははっ、相変わらず仲良いわねぇ』

咲「……まあ、それなりにですよ」



久『それで?まさか、本当に私が恋しくて掛けてきた訳じゃないわよね。どしたの?』


咲「大した事では無いんですけど……」



咲「――――――――――――って事になって、清澄は何に使ってるのかなと」


久『ちょっとちょっとぉ、部費を渡しそびれるなんて、そっちの会長弛んでないかしら?』


咲「でも先輩と違って真面目そうな人ですし、好感持てましたよ。先輩と違って」


久『そんなに強調されると照れるわ/////』


咲「はい?」


久『咲はツンデレですものね。うんうん、そんな事言って本当は私を気に入ってるの、知って』


咲「切っていいですか?」


久『そうね、部費、部費ねぇ』ウ-ン

咲(この人はホントに……)


久『どうしても何かに使いたいの?』


咲「どうしてもって訳じゃないですけど、できれば手元に残しておきたくないかなって」


久『あー、まあ、分かる気もするわね』

久『うちの場合は、合宿をしたりする時の足しにしたりが主かしら?』


久『って言っても、あなた達は合宿なんてしないか……ああ、だから困ってるのね』



咲「そゆことです」



『ただいまー』

『ただいま戻りました』

『戻ったじぇ!』

『あ、おかえりなさい。』

『ん?誰かと電話してんの?』

『珍しいですね』

『まさか彼氏か!』

『……ん?あ!咲でしょ!!咲の感じがする!!』

『へっ!?よ、よく分かったわね……』

『犬ですか……』



久『咲、スピーカーにしていいかしら?』


咲「はい」



みなも『咲ぃー!聞こえてる?わたしだよ!』


咲「やっほ、みなも。元気?」


みなも『咲の声聞いたら元気になった!』

咲「ふふっ、私もだよ」


和『こんにちは咲さん、和です』


咲「原村さん。見ましたよ、ウィークリー麻雀TODAYの写真」


和『へっ!?あ、ありがとうございます…っ!』テレ

みなも『咲!わたし!わたしは!?』


咲「勿論、見たよ。すごい可愛かった」フフ

咲「よくカメラに耐えて頑張ったね」


みなも『えへへ……///咲が見てくれるかなって思って、頑張った///』


和『それで部長、咲さんはどうして電話を?』


久『部費の使い道について聞かれてね。2人、なにか案はないかしら?』


和『部費の使い道ですか……使わなくても、もしもの為に残しておくべきでは?』


久『さすが、堅実ね……』

咲「やっぱり、すぐに使わなくても残しておくのが良いんですかね」


みなも『雀卓のメンテとかは??』


咲「その辺は、清澄と同じ理由で困ってないんだよね」


みなも『あー、健夜のとこでかぁ…』


みなも『それならさ。毎週1日だけ何か楽しみでも作ったら良いんじゃない?』


咲「楽しみ?」


みなも『ほら、昔さ?お小遣い貰ったら、その週の日曜はパフェ食べに行くって決めてたじゃん』

和『それはまた可愛らしいですね』


みなも『そんなふうに、週1回は部費使って美味しい物食べに行くとか』

みなも『咲はどうせ、なにか形に残るものを考えてるんだろうけどさ?別に、楽しい時間を買ったらいいんだよ』


久『珍しく良いこと言うわね。見直したわ』


みなも『うっさい!』プンスカ


咲「……なるほど、うんありがと!」

咲「今までで一番、参考になったかも。さすが、頼りになるね」


みなも『へへ……それなら、良かった』テレ


久『問題は解決できそうかしら?』

咲「お蔭さまで。先輩も、ありがとうございました」


久『良いのよ。可愛い後輩からの電話、嬉しかったわ』クス


みなも『ちょっと、なに咲のこと口説いてんの?』

和『そうですよ』


久『あなた達ねぇ……』


咲「それじゃあ先輩、みなもを宜しくお願いしますね」

咲「みなもと原村さんは、先輩をよろしくね」


久『任されたわ』


和『分かりました!』

みなも『えー、もう切っちゃうの……?』シュン


咲「また連絡するから、ね?」


みなも『約束?』

咲「うん、約束。大好きだよ」


みなも『えへへ…うんっ!わたしも、好き』



久『砂糖吐きそう……』

和『私達は何を聞かされているんでしょうか』


みなも『じゃあ、ばいばい!』

和『その内こちらに遊びに来てくださいね』

久『風邪引かないように気をつけるのよ』



咲「分かってますよ。それじゃあ、また」



ピッ



咲「ふぅ……」



健夜「久ちゃんの方に掛けたんだね」


咲「先輩が適任かと思ったので」

健夜「それで、何か思いついた??」


咲「えっと、はい……」

咲「一応っ」


健夜「おお!それは?」


咲「……」モジ

咲「あの、別に、嫌とかダメなら遠慮せず断ってくれても大丈夫なんですけど」チラ


健夜「??」キョトン


咲「その、私小学生の頃はおこづかいを貰う度に、照お姉ちゃんとみなもと一緒に近くの喫茶店でパフェを食べるのが楽しみだったんです」

咲「2週間に一度貰えたので、第二日曜日と第四日曜日に行ってて……」


咲「たまに、2回分を貯めておいてちょっと豪華なのを食べたりして」



健夜「へぇ…楽しそう」フムフム


咲「なので、えっと……」

咲「す、健夜さんはきっとそういう楽しい青春を送れていなかったと思うので、私が、つ、付き合ってあげてもいいですよ」ウワメヅカイ


健夜「……へっ?」



健夜「……」カンガエ






健夜「あ、え……つ、付き合っ!?/////」カァ




咲「さ、最後の所だけ抜き取らないでくださいっ!//」ブンブン


咲「だから、毎週…じゃなくても良いですけど、2人で喫茶店にでも行きましょうって言ってるんですっ!」


健夜「だ、だよね!そういう事だよね…あはは、ちょっとビックリしちゃったよ」


咲「も、もう……」

健夜「果たして、部費をそういう使い方しても良いのかグレーゾーンではあるけど…うん、それ良いね」


健夜「1週間のご褒美みたいになるし……賛成かなっ」ニコリ


咲「そ、そうですか」ホッ

咲「……じゃあ一先ずの使い道はこのくらいで留めておきましょう」



健夜「そうだね。これでも多分少し残ると思うけど、何か必要な物が思いついたらその都度揃える方向で」

咲「はい」コク



咲「……健夜さん、明日は何も予定ありませんよね?」


健夜「え?あ、うん。日曜日だし、無いかな」


咲「なら、今日決まった物でも買いに行きませんか?」

咲「私も、暇ですし」チラ




健夜「ん、咲ちゃんの時間があるならそうしよっか」


健夜「お昼過ぎ、咲ちゃん家に迎えに行けば良い?」


咲「迎え……あぁ、健夜さん車持ってますもんね」ナットク

咲「分かりました。お願いします」


健夜(咲ちゃんと2人で買い物かあ)


健夜(意外と久しぶりかも)フフ


咲(健夜さんと買い物……)


咲(随分久しぶりだな)フフ



――――――
――――――


~その夜、咲家~


咲「お父さん、ご飯できたよ」オ-イ


界「おー、分かった」

界「いつも悪いな、咲」


咲「そう思うならお母さんを呼び戻してよ」


界「そこは、それは言わない約束でしょ!……がお約束だろ…」

界「アイツは東京で照の事があるからなぁ…中々難しいんだよ」


咲「知ってる。お母さんが居なくちゃ、お姉ちゃんは朝昼晩お菓子で済ませそうだもんね」クスクス


界「冗談に聞こえないのが怖いな……」


界「じゃ、頂きます」パン

咲「はい、どうぞ」


界「今日はなんかあったか?部活で」パクリ

界「おっ、肉じゃが美味いな…さすが」モグモグ


咲「ありがと。……んー、部費を貰えて驚いた、くらいかな」


界「部費?ほお、良かったじゃないか」


咲「でも、卓のメンテとかは全部健夜さんの所に任せてるからさ。正直、使い道が無かったんだよね」



界「雀卓でも買ったらどうだ?昔はめっちゃ高かったけど、今ではそうでもないみたいだし」


咲「お父さんまで……」ハァ

咲「2台もいらないし、買うくらいなら家にある卓を持ってくよ」


界「それもそうか…」


界「長野の家に置いてある方もここにある方も、使ってなくて勿体ないしなぁ」



咲「でも、なんとかして部費の使い道を決めたから、明日健夜さんと出掛けてくるよ」


界(おっ、いい感じじゃないか)

界「何を買いに行くんだ?」


咲「えっとね、掃除機とコーヒーメーカー」


界「……」


界「えっ、なんて?」


咲「だから、掃除機とコーヒーメーカー!」


界「いやいやいや、麻雀部の部費でなんで掃除機とコーヒーメーカー……?」

界(今の時代は、それでもいいのか?)


咲「まあ、色々あって決まったの。そこはもう蒸し返さないで」


界(色々あって部費で掃除機とコーヒーメーカーを買うことになった経緯とか、かなり気になるぞ)


界(……まあ、咲の事だし部室を過ごしやすくする為とか、そんな感じか)


界「そうか。照だったら、部費でお菓子ばっか買ってそうだな」アハハ


咲「あー、今のお姉ちゃんに言っとこ」

咲「心外だって怒るかもね」


界「おいおい!その顔は、咲も同じこと思ってた顔だぞ」


咲「えー?そんな事思ってないけど?」


界「……なんか咲お前、母さんに似てきたな…」


咲「えっ、全然違うでしょ!」


界「いや、地味に意地が悪い所とかな、ほんと高校時代の母さんを思い出す」


咲「えぇー……なんか、ちょっと嫌だなそれ」



界「ほいっと、今の発言は母さんに伝えとくぞ?」


咲「あっ、いや、待って。ダメです、お母さん最高!」


界「今更取り繕ってもなぁ?」


咲「お姉ちゃんには内緒にしておくので、何卒お願いします……」


界「ははは、それでいいんだよそれで」ウンウン


咲「……」イラッ

咲「……もうご飯作ってあげな」


界「すまん俺が悪かった許してください」ペコ


咲「ふふ、よろしい」


界(日に日に、父親としての威厳が失われていってる気がする)ガックシ



――――――
――――――

もうすぐこの話もおしまいですっ。
この後は、長野編を終わらせて、日常編を挟んで、何かしらを書いてこのスレも終わりになる予定ですので、もう暫くよろしくお願いしますっ

おつおつ
新婚生活かな?

おつ
いつまでも続けてくれていいのよ?

>>330
おつありがとうございますっ。若干、そんな感じで書いてみました!

>>331
おつありがとうございます。
そう言って頂けて嬉しいです。ネタが思い付かなくなるまでは、頑張りますっ

全然投下できずすみません、今週中には今の話を終わらせたいと思いますっ。
冷やし透華回も少しずつ書き溜めているので、もう暫くお待ち頂けるとっ

その6.お買い物

~日曜日、昼過ぎ車内~



咲「それで、お母さんに似てきたなーって言われて」ムゥ


健夜「愛さんかぁ…」ン-

健夜(確かに、少しだけ似てるかも)


咲「あれ?」ピト

咲「健夜さん、お母さんと面識ありましたっけ」キョトン


健夜「対局した事はないけど、恵比寿にいた頃一度だけお話した事はあったかな」

健夜「咲ちゃんに会う前だし、当然咲ちゃんのお母さんって事は知らなかったけど」


咲「へー。それは初耳ですね」


健夜「私がまだ7歳くらいの時に活躍してたプロ雀士だよね」

咲「17歳では?」


健夜「まだ私アラサーだよっ!!20年前にその歳だと、今私あらふぉーになっちゃう!」

咲「おお、テレビでよく見るツッコミですね」


健夜「テレビでって……まあ、確かに咲ちゃんはあんまりそのネタ振らないもんね」


咲(ネタを振るって……)



健夜「それでっ」

健夜「やっぱり、お母さんは麻雀が強いのかな?」


咲「んー…小学生の時は、一度も勝てませんでしたね」

咲「お姉ちゃんとみなもと手を組んでも、纏めて飛ばされたりしました」アハハ


健夜「さすが、咲ちゃんのお母さんだね」



咲「何故か、今でもお母さんに勝てる気がしません。……あ、信号変わりましたよ」


健夜「っと、ホントだ」ブ-ン


咲「……健夜さんって、運転は上手い方なんですか?」


健夜「え、どうだろう…。まず、上手い下手の基準が分からないからなぁ」


咲「あんまり揺れたり酔ったりしませんし、上手いのかもしれませんよ」

咲「私もよく分かりませんけど」


健夜「確かに、思い出してみると恒子ちゃんの運転とか、かなり激しかった記憶があるな」

健夜「あれと比べたら、恒子ちゃんには悪いけど私は上手い方なのかも……」


健夜「って、どうかした??」


咲「……別に、なんともありませんよ」プイッ


健夜(あ、あれ……ちょっと機嫌悪くなったような…)


咲「……」ツ-ン


健夜「まあ今日は咲ちゃんが隣にいるし、いつもより安全運転を心掛けてるっていうのもあるけどね」アハハ


咲「……!!」


咲「そ、そうですかっ。ありがとうございます……っ」


健夜(あれ、機嫌直った?……気の所為だったのかな)

咲「あ、そろそろ着きますね!」


健夜「う、うん。だね」



咲「~~♪」


――――――
――――――



~ショッピングモール~


ワーワー、ガヤガヤ



咲「さすが日曜日。結構混んでますね」ウワァ


健夜「だね。(咲ちゃんを見失わないようにしなきゃなぁ)」コク

咲「……」ウ-ン


健夜「??どうしたの?」


咲「やっぱり、もう帰りましょうか……」ズ-ン


健夜「えぇ!?まだなんの目的も果たしてないよ!?」


咲「じょーだんですよ。人混みが凄くて、つい」

健夜「本気のトーンだったよね…。まあ、気持ちは分かるけどね」


咲「仕方ありません。折角来たんですし、目的の物を買ったついでに色々見て回りましょう」


健夜「だね。2人でこんな所まで来るなんて、中々無いし」


咲「なんだかデートみたいですね?」クス


健夜「うん……」

健夜「……」


健夜「えっ!?」


咲「なーんてっ!」フフッ

咲「さっ、いつまでも立ち止まってたら邪魔になっちゃいます。行きましょう」テクテク


健夜「も、もー!咲ちゃんめ……」ムス-


咲「そんな膨れっ面したって、可愛くありませんよ?」


健夜「分かってるよ!」プンスカ



咲「っと、お店内の地図あります」ピタ


咲「はぇ~……ほんと、こうして見ると無駄に広いですね…」


健夜「ね。ここらで一番大きな所なだけあるよ」


咲「東京のお店を思い出します…あんまり思い出したくはありませんけど」


健夜「あっちは大都会だからねぇ……お店の規模も、基準が違うよ」アハハ

健夜「それに人混みで言えば、朝の電車に乗らなかっただけ幸運だったかもね」


咲「そんなに凄いんですか?」


健夜「うん。あっちに居た頃、偶に乗ってたんだけどね…」

健夜「咲ちゃんがあの満員電車に乗ったら、控え目に言って3日はダウンするかな」


咲「私と同じくらい人混みが苦手な健夜さんがダウンしなかったのは、逆に周りの乗客をダウンさせていたからですよね」

咲「ゴゴゴゴゴ……って」


健夜「テロの容疑で捕まりそう……。ていうか、威圧を感じる人って麻雀やってる一部の人だけだからね」

健夜「電車でやっても、あんまり効果ないかも」


咲「あー…まあ、そうですね。やりたくても、殺れませんね」ハハ


健夜「2回目のやるが、ちょっと違う意味に聞こえたけど」


咲「気のせ……」

咲「あ!健夜さん、見てください犬ですよ犬!ペットショップです」ワ-


健夜(話がコロコロ変わっていく…)フフ


イヌ「わんわん」ハッハッ


咲「可愛い……一年くらい前、マホちゃんと見たのを思い出すなぁ…」


健夜「マホちゃんとペットショップに来たことあるの??」


咲「ええ、まあ。……あっ、見てくださいこの犬」


ブルドッグ「……」


咲「ぜんぜん可愛くないですよね!」


ブルドッグ「…」ガ-ン


健夜「そ?私は結構好きだけどなー」


ブルドッグ「!!」キラキラ


健夜「飼うなら別の子が良いけどさ」

咲「やっぱり、そうなんじゃないですか」


ブルドッグ「」



健夜「あ、猫もいるね」


猫「……」ツ-ン


咲「中々こっちを向いてくれませんね」


健夜「猫はツンデレってよく言われるしね。ツンツン状態なのかも」

健夜(咲ちゃんは動物に例えると猫だよなぁ~)


咲「こうやって見てると、ペットが飼ってみたくなります」


健夜「それじゃあ飼ってみたら??」


咲「んー…難しいですね。お父さんは夜までお仕事、私もなんだかんだで帰るのは夕方ですし……」


咲「家事に手一杯で、犬や猫のお世話までしてあげられません」


健夜「あ、そっか…。遊んであげられないのも可哀想だもんね」


咲「それに、死んじゃったりした時にとてもじゃないですけど、耐えられそうにないです」


健夜「分かるなぁ、それ」


咲「……さて、そろそろ移動しましょうか」

咲「可愛いので、ずっと居座っちゃいそうです」アハハ


健夜「そうだね」ウン


――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


お買い物②

~電化製品店~


咲「あ、ありましたよ。掃除機」


健夜「へぇ~…掃除機一つにしても、色んな種類があるんだね」

健夜「って何これ、丸い円盤……?ゆーふぉー?」


咲「それ、設定しておけば留守中でも自動的に動いてお掃除してくれるヤツですね」

咲(UFOって健夜さん……)


健夜「そ、そんな事できるの?」ビックリ


咲「みたいですよ」

咲「全く、科学の進歩は本当に私達を自堕落にさせますね…掃除くらい、自分が手を動かしてすればいいのに」


健夜「一人暮らしの人とか、お仕事が忙しい人は助かるんじゃないかな?」


咲「まあ、そうかもですけど」


咲「さてそれで、どれを買っていきましょう?」


健夜「うーん…」

健夜「こういうのは咲ちゃんの方が慣れてそうだし、任せるよ」


咲「任せると言われても。そういうのが一番困るんですけど?」


咲「夜ご飯に何が食べたいか聞いて、何でもいいと答えるような物ですよ」マッタク


健夜「そ、そうなんだね」

健夜(今度から、何が食べたいか聞かれたら詳しく答えるようにしよう)


咲「にしても、ホントに色々あるな……」


咲「貰った部費だけじゃ、買えないような額の物まであります」ウワァ


健夜「他のとどう違うんだろうね?」


咲「吸引力とかじゃないですか?」

咲「よくCMで、驚きの吸引力!ゴミを一切逃さない!……って謳い文句を耳にしますし」


健夜「ゴミを一切逃さないって……。掃除機なのに、ゴミを吸い逃すのがあるのかな」


咲「使えば違いが分かるのかもしれませんけど、あんまり高いのは必要ありませんね」

咲「でも、できれば丈夫なのにしたいですけど……」キョロ


健夜「これとかは?」ヒョイ


健夜「安心長持ち、驚きの耐久性!……だって」


咲「丈夫なのを求めた私が言うのもなんですけど、掃除機なのに売り文句が耐久性というのはどうなんでしょうね…」


健夜「きっと、他の会社の製品とは違う売り方していかないと売れないんじゃないかな」


咲「商戦ってやつですか」

健夜「難しい言葉知ってるなぁ……」


咲「仮に健夜さんが何かの商品だったら、売り出し文句は"驚きの雀力!雀力のみを鍛えた一品"ですね。雀力のみですよ、のみ」


健夜「いきなりなにかな、その酷い例えは!?」ガ-ン


咲「あはは、じょーだんですよ」フフ

咲「あー…優しさとかもありますしね(適当)」


健夜「褒められてるんだろうけど、なんとも言い難い感覚だよ……」


咲「それじゃあ、掃除機は健夜さんが選んでくれたコレにしましょうか」


健夜「え、いいの?もっと気に入るやつがあるかもしれなよ??」


咲「良いんですよ。それに、そんな事言ってたらいつまでも決まりませんし」


健夜「咲ちゃんがそう言うなら私も良いんだけどね」


咲「はいっ」ニコ


健夜「なら、レジで預かっておいて貰おうか」


咲「ですね。また戻ってくるのも面倒ですし」


店員「何かお困りでしょうか?」シュババッ


咲(え、はやっ……)

健夜(ここぞとばかりに来たなぁ)ハハ


健夜「えっと、これを買いたいんですけどもう一つ見たいのがあるので……」


店員「かしこまりました!お預かりしておきますね!」

店員「お会計の際は、あちらのレジへお越しくださいませ。では、ごゆっくり~」


咲「あ、すみません一つ聞きたいんですけど」


店員「はい!」

咲「コーヒーメーカーって、どこに置いてありますか?」


店員「コーヒーメーカーでしたら、3つ奥のエリアになります!ご案内致しましょうか?」


咲「いえ大丈夫です。ありがとうございます」ペコ


店員「いえいえ!それでは、ごゆっくり~」ニッコリ


咲「どうもです」ペコリ

健夜「あ、ありがとうございます」


咲「さて、ということらしいので行きますか」


健夜「こういうお店の店員さんって、どこに何があるのか全部把握してるのかな……」


咲「じゃないですか?」

咲「聞かれて答えられなくて、『あ、ならいいです』って帰られたら困りますし」


健夜「凄いなぁ。私にはできそうにないや」アハハ


咲「でしょうね」ハハ


健夜「……そう同意されちゃうと、傷付くな」ガ-ン


――――――
―――――――――
――――――――――――――――



店員「ありがとうございました~♪」



咲「買ってその場で部室まで発送してくれるなんて、便利ですね」


健夜「ね。車まで運ぶのも大変だし、助かるよ」

咲(この人、まだ27歳だよね……)



健夜「目的は達成したけど、これからどうしよっか?」

健夜「折角だし色々見て回る?」


咲「……そうですね」コク


咲「健夜さんがそう言うなら少し見ていきま」


プルルルルル プルルルルルルルルル


健夜「ん、着信?」


咲「私ですね」スッ


咲「あれ、マホちゃんだ。どうしたのかな」ピッ



咲「もしもし、マホちゃん?」


マホ『あ、先輩ですか?お買い物ちゅ…コホン、…いや、突然すみません!』


咲「ううん、平気だよ。どうしたの??」


マホ『いえ、特に用事は無かったんです!』

マホ『先輩の声が聞けたらなって思っただけで』エヘヘ


咲「な、なんか恥ずかしいよ」テレ

咲「そうだ、マホちゃん今どこに?」


マホ『マホですか?』

マホ『マホは……』


咲「……?」


マホ『ええと、両親とお買い物に!』

マホ『どうしてですか??』


咲「あ、ううん。なんでもっ」


マホ『そうですか!』

マホ『では、先輩の声も聞けて満足したので切りますです!』


咲「え?ほんとにそれだけだったの?」


マホ『えへへ、マホにとっては重要な事なんですよーっ!』

マホ『では先輩、また明日っ!』



健夜「マホちゃん、なんだって??」


咲「よく分かんなかったんですけど、特に用事は無かったそうです」

咲「暇だったら誘おうかなって思ったんですけど、家族でお買い物中らしいのでやめておきました」


健夜「それは残念だね…」


咲「今日の話をしたらきっと羨ましがると思うので、今度は3人で来ましょう」


健夜「うんっ」フフ


咲「じゃ、行きましょう!」

咲「実は気になってたお店があるんですよ」テクテク


健夜「あ、ちょ、1人で先に行くと迷子に!迷子になるよっ!!」アワアワ


健夜(マホちゃんには少し悪いけど、私も楽しもうかな)クスクス



――――――――――――


~その頃~


友「電話、終わったの?」


マホ「はいっ、終わりました」


友「そ。急に隠れて電話掛け始めたからビックリしたわよ」モウ


マホ「部活の先輩達を見かけて」エヘヘ


友「そうなの?なら別に、電話じゃなくて声をかければ良かったじゃない」


マホ「そうなんですけど~……」

マホ「先輩の事です、一緒に行動しようと誘われる気がして」


友「……?私は別に気にしないわよ?」

友「むしろ、"あの"宮永先輩なら一度お話してみたいし」


マホ「そうじゃないんですよねー」


友「どういう事よ?」クビカシゲ

マホ「まあまあ、マホの事は良いんです!買い物を続けましょう!」グイクイ


友「ちょっ、あんまり押さないでよ」


マホ(惜しい事をした気がしますけど……)グイグイ

マホ(なんだかいい雰囲気でしたし、邪魔をするのも野暮ですよね)グイグイグイ


友「ま、マホってば!押しすぎ!自分で歩けるっ、歩けるから!」アワワワ


マホ(でもちょっと寂しいですし、今度なにか埋め合わせが欲しいですね…)グイグイグイグイ



友「いい加減にっ、スピード早っ、てか怖い!早くて怖いから離しなさいってばぁぁ!!」



――――――
―――――――――
―――――――――――――――



~部室~


健夜「っとと……」


健夜「んー」ミワタシ

健夜(よしっ、こんな所かな)



健夜「咲ちゃーん、お掃除終わったよー」

『はーい』カチャカチャ




咲「どれどれ~」フムフム


健夜「どうかな……?」ドキドキ


咲「……うん、良いと思います!」ニコ


健夜「ほんと?へへ、良かったっ」テヘヘ



咲「ちょっと不安でしたけど、さすがに掃除機くらいはしっかりとできますね」フフ


健夜「家ではお母さんがやってくれてるし、ほんと久々にお掃除なんてしたかも」


咲「もう、ダメですよ?そんな事じゃ」マッタク


健夜「うっ、そうだよね…」


健夜「でも、どうしてお掃除を私に?」


咲「この健夜様に掃除をさせるとはいい度胸じゃないか、と?」ジト



健夜「あ、いや、違う違う!!そういう事じゃなくってね!」アセアセ


健夜「咲ちゃんの方がもっと早くできたと思うし…」


咲「掃除機に上手も下手もありませんよ…」



咲「でもまあ、そうですね。理由はいくつかあるんですけど」


健夜「うん」


咲「なんていうか、言葉にするのが難しい気持ちなんですよね」


咲「健夜さんのお掃除が終わるのを待つのが楽しそうだった~……みたいな」チラ


健夜「うぅん……?」キョトン


咲(2人の時間を楽しむって、きっとこういう)


健夜「ごめん、よくわかんないや」アハハ


咲「……」

咲「…」




咲「~~~~っっ/////」カァ



咲「ど、どうして分からないんですか、この鈍感!!」プイッ


健夜「えぇ!?そんな事言われても困るよ!」



咲「はぁ」

咲「……無駄に意識してた私が馬鹿みたいじゃないですか」ボソ


健夜「うん……?」イマナンテ



咲「なんでもありません!」



咲「それと、もう一つの理由はですね……」



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【最終話・二人の午後】


普段通りの日常が、私にとって少し豪華な日常へと変わったのはつい最近のこと。
部費の使い道をあれこれ考えて、咲ちゃんと一緒に買いに行った日からだ。


なにも特別な事がある訳じゃない、いつもの放課後。
日課になりつつあったお掃除も終えてお仕事をしている私に、最近になってよく聞くようになった声が届く。


「お疲れ様です、健夜さん。コーヒー淹れました」


「ありがと咲ちゃん」



お掃除が日課になりつつある私に対して、こうしてパソコンに向かっている時、そして掃除が終わった後にコーヒーを差し出してくれるのが、咲ちゃんの日課にもなっていた。


『もう一つの理由は、お掃除を頑張った健夜さんへご褒美にコーヒーを淹れてあげる為……ですかね』



少し照れながらそんな事を言う咲ちゃんを思い出すと、今でもちょっと恥ずかしくなる。

……まあそんな訳で、あれから私がお掃除をして、咲ちゃんがコーヒーを淹れてくれる。

そんな役割分担が、自然に成り立ってた。



それ以前までも咲ちゃんが私に淹れてくれる事は多かったけれど、なんだか咲ちゃんは今の方が楽しそうにしている様に思える。

それとなくどうしてか聞いてはみるものの『内緒です』と微笑まれて教えてくれないのは、どうしてなんだろう…?


「健夜さん」

「……健夜さんってば!」



思わず考え込んでボーッとしていた私は、咲ちゃんの声でハッとする。


「あ、ご、ごめん。ちょっとボーッとしてたよ。どうしたの?」

「……大丈夫ですか?あんまり無理しない方がいいですよ」


歳が歳なんですから。
そう続くと思いきや、その後に続いたのは真面目に心配そうに私を見る咲ちゃんの瞳だけだった。

いけないいけない、反省しなくちゃ。



「ううん、ほんとに平気。心配してくれてありがとう」

「べ、別に……」フイッ


なんだかこれ、お父さんを労うお母さんみたいだな、って思ったけれどきっと口に出した時の咲ちゃんの反応が予想できたので黙っておくことにする。

……なにより、私が恥ずかしい…。


「結局、世界ジュニアについての頼み事、受けたんですね」

「うん。考えてみればインハイも終わって他にする事も無いし…」


「それに、こうしてれば咲ちゃんが優しくしてくれるからね」クスクス



本音である。
普段はツンデレな咲ちゃんだけれど、私がお仕事をしていたり忙しそうな時は決まって優しくしてくれる。

高校一年生の彼女に優しくされて癒される私もどうかと思うけど、私はその時間が大好きだった。
言葉に表すのは難しいけど、なんだか咲ちゃんは人を落ち着かせる雰囲気を纏ってると思う。

みなもちゃんなんかは、きっと分かってくれるかなぁ…。

もちろん、普段の咲ちゃんも同じくらい好きだけどね。



「優しくって……私に優しくされる為にお仕事するのも、なんだか不純だと思います」ジト


そんな事を言いつつも、ちょっと嬉しそうに口元が緩んでいる咲ちゃんは、本当に可愛い。
だから少しだけ、イジワルをしてみたくなるのである。



「ダメ、かな?」


「……だ、ダメじゃないですけど…」



頬が赤く染まる。
それは夕日のせい?それとも……



「少し待っていてください。ココア、淹れてきますから」


そうだ思い付いた、とばかりに戻っていく咲ちゃん。
……はて?コーヒーはもう貰ったはずだけど


そう思っているうちに咲ちゃんが戻ってくる。


「さて、再開しましょうか。私、イギリスに一人気になる選手がいるんです」

「……え?」


さっきまで熱心に読書をしていたハズだけど、良いんだろうか?
声に出さずとも表情に出ていたようで。


「読書ですか?読み終わりましたよ。」

「次の巻は健夜さんの読み終わり待ちなので、暇なんです」



「あ、そっか。ごめんね?」



「いいですよ。ほら、早く画面動かしてください」スッ


そう言いながら私との距離を詰める咲ちゃん。
その横顔をチラリと盗み見て、改めて思う。


私は幸せ者だな。





なんでもない、けれど私にとってはとても有意義な午後。
もう一度、ごめんねと心の中で呟く。


明日も咲ちゃんにはコーヒーとココアを淹れて貰うことになりそうだな、そう思い味わうコーヒーの味は、ココアの様に甘く感じた。


【日常、カン!】」

次回投稿では長野編を完結させたいです……っ。

一先ず書き終えた所まで投下します。
書いて決してを繰り返していたら、かなり適当に……

長野編

【全国編1,インターハイ】


~インハイ開始数日前・東京、某所~



「―――さん」


みなも「ん……」


「―――さん……くだ…い」ユサユサ


みなも「うぅん……」

みなも「おかーさん……あと5時間だけぇ…」ムニャムニャ


「…なもさん!みなもさんってば!」




和「みなもさん!あと5時間どころか、すぐに起きないと降り損ねてしまいます!!」ユサユサ




みなも「…あ……」ムクリ

和「やっと起きましたか」


みなも「そういえば、新幹線乗ってたんだっけ…いつの間にか寝てたや」ノビ-


和「優雅に伸びをしてる暇はありませんよ!ほら、荷物持って!」

和「行きますよっ」


みなも「はぁい」ノソノソ

みなも「もう、和はせっかちだなぁ」


和「なんですかその言いぐさは!私が起こさなかったらですね、どこまで行ってしまってたか……」ア-ダコ-ダ


みなも「はいはい分かったってば!ありがと和ー」

和「全くもう。ほら、行きますよ」



お爺さん「ちょいとお嬢さん達、何かの大会かい?」


みなも「ん……?ああ、うんそうだよ、麻雀のね」

和「み、みなもさんっ。少しは言葉遣いを……」


お爺さん「おぉ、麻雀のインターハイかね。ワシも毎年楽しみにしていてのお」

お爺さん「どれ、飴玉をやろう。頑張っての」スッ


みなも「ありがと。わたしアメ好きだから嬉しいよ」ヘヘ

みなも「それじゃ、もう降りるから。ばいばいお爺さん」フリフリ


お爺さん「うむ。健闘を祈っておるよ」フリ


和「あ、ありがとうございましたっ!」ペコペコ


みなも「あ、この飴おいひぃ」モゴモゴ


和「まったくみなもさん、少しは礼儀を重んじてくださいっ」


みなも「お固いなあ、和は。フランクに接してくる人にはフランクで良いの」

みなも「変に気を使う方がおかしいよ」


和(みなもさんが誰かに気を使っている所を私は見たことがありませんが…)


和「そもそも、人見知りじゃなかったんですか?」


みなも「さすがに、ああいうお爺さんなら平気だよ」


和「そうなんですか」



久「あ、やっと降りてきたわね」


まこ「おはようさん、みなも」


優希「乗って10分で夢の世界に旅立ってたじぇ!」


みなも「え、ウソ。わたしそんなに早く寝てた?」チラ


和「はい。私にもたれかかってきたお陰で、若干肩が凝りましたよ」フゥ


みなも 優希「「それは、その胸についてるメロンのせいじゃない?(だじぇ!)」」


和「ふ、2人ともっ!」プンスカ


久「はいはい。はしゃぐのはその辺で終了!」パンパン

久「一先ずホテルへ向かうわよ~」


まこ「和、みなもから目を離さんようにの」

優希「ここではぐれたら、みなちゃんとは一生会えなくなると思うことだじょ」


みなも「失礼だなぁ……」

みなも「まあ、その通りだけどさ。和、よろしくね」


和「分かっています、みなもさんの事は私に任せてください」グッ


久「頼りにしてるわ。じゃ、他の皆もはぐれずに付いてきてね~」テクテク


優希「夢の東京だじぇ」ワクワク


和「遊びに来た訳じゃないんですからね」


久「でも、時間があれば観光しても良いかもしれないわ」


まこ「そうじゃね」フフ




和「み、みなもさん!手を握っているのにどうして逆方向へ進もうとしているんですか!」


みなも「いや、あっちかな?って思って」


和「意味分かりませんよ!?どんな根拠で言ってるんですか!」

和(目を離さない所か、手も離してはいけませんね……)


みなも(どうしてだろ……本当に、あっちの気がしたんだけど…)


和「ほら、部長について行けばいいんですからっ!手を離さないでくださいね」ギュ


みなも「ん、りょーかいだよ」ギュ-


和(……大変ですが、役得ですね)


――――――少し離れた場所


『ちょっ、先輩そっちは逆方向ですよ!!』

『どうして手繋いでるのに真逆に行こうとしてるのかな……』


『いや、あっちかなぁ…と思いまして』


『その自信は一体どこから……!?』

『そんな先輩も可愛いです』


『でもホントに、あっちな気がしたんですよ』

『死神が先輩を誘っているんじゃないでしょうか……迷ったら生きて帰ってこれそうにありまし…』

『不吉なこと言わないようにね!?』



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



~東京、清澄高校某宿泊ホテル~



優希「とうちゃーーーく!!」ワ-イ


久「中々いい部屋ね」マンゾク


まこ「和、大丈夫か?」


和「し、心配ありません大丈夫です……」クタクタ

みなも「ご、ごめんね?なんか、わたしが疲れさせちゃったみたいで」


久「みなもが気を使って謝るレベルって……どれだけ壮絶だったのよ」


優希「私達の見ていない所でなにが!」


和「いえ、本当に大丈夫ですので。みなもさんも、気にしないでください」


みなも「そう?まあ、後で肩でも揉んであげるよ」


和「ふふ、ありがとうございます」


久「えーっと、それじゃあ皆聞いてくれるかしら?」

久「ああ、楽にしたままで良いわ」



久「無事東京に着いたわね、一先ずお疲れ様」


和「お疲れ様です」

みなも「おつかれー」

優希「新幹線は耳が痛かったじぇ……」



久「えっと、今日から大会までの予定だけれど」


みなも「麻雀でも打ち続ける?」


久「いえ。それも考えたけど、大会までは各自自由行動とするわ」


和「えっ?」

まこ「ふむ」


久「あまり気を張りすぎるのも逆効果だと思うしね」

久「観光するも良し、ここで寝て過ごすのもよし、強豪校の研究もするもよし。」

みなも「近くの雀荘を荒らしに行くのもよし」


久「……それはまあ、程々にしなさい」


和「止めないんですね……」

久「そんな感じで各々、自分の為になる事をするように!」


久「ただし、鈍らないよう最低限の調整はする事」


優希「おおお、自由とは部長太っ腹だじぇ!」


みなも「りょーかい」


和「部長がそう言うのなら……分かりました」


久「高校生らしく、節度のある行動をして頂戴ね」

久「それじゃ、解散!」




優希「よっしゃぁー!のどちゃん、みなちゃん!早速近くの探検に行くじぇ!」


和「あまりはしゃぎ過ぎると転びますよ」


まこ「ワシはホテルの施設でも見てくるかの」


和「みなもさん、行きましょう?」


みなも「ああ、うん……」

みなも「先にロビーで待ってて。すぐに行くから」チラ


久「……?」


和「分かりました。出口にいれば迷って外に出る危険もありませんしね」


みなも「ホテルの中で迷子になんてならないってば」


優希「それじゃあ、先に行って待ってるじぇー!」タッタッタ

和「あ、こら!ゆーき、走らないでくださいっ」テクテク


バタンっ



みなも「優希、元気だなぁ」


久「そうね。あの子らしいわ」クスクス


みなも「……それで?」チラ

久「??」


みなも「久は、そう見えないけど」


久「……あら、心外ね。」

久「私だって、こう見えて楽しんでるわよ?」



みなも「……そ?」


久「ええ」


みなも「……」

みなも「わたしが言えた事じゃないけどさ」


久「……?」


みなも「優希も、まこも、和も。久が思ってる以上に強いから」

みなも「余計な事考えずに、久は麻雀を楽しめば良い。夢のインハイでしょ?」



久「……」


みなも「大丈夫。わたしは……わたしたちは、負けない」

みなも「だから久は、久の麻雀を打って」


久「……」


みなも「それじゃ、わたし行くね」テクテク



久「みなも」


みなも「……」ピタ


久「……今貴女は、誰のために麻雀を続けているのかしら?」


みなも「……」


みなも「……そんなの、決まってるよ」クルリ




みなも「わたし自身のため」





久「……」ジッ

みなも「……」


みなも「それじゃ、行ってきます」スッ



ガチャ……バタン



久「……」

久「……ふぅ」


久「まったく、あの子らしいわね」



久「……でもね、みなも。私は、貴女の方が…」



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【全国編2,抽選会、そして】


~インハイ会場~


優希「おおおー!ここが抽選会場かぁ!」


和「さすがに広いですね」


まこ「部長は既にステージ脇に待機しとるんじゃろうか」


優希「でも惜しいじぇ。抽選に参加するのが部長って決まりがなければ、私が行って宣戦布告してきたのにな!」


和「恥ずかしいから絶対にやめてください」


優希「なんですと!?のどちゃん、戦いは始まる前に勝敗が決まるんだじぇ」

優希「まさに先手必勝!」


まこ「いや、意味不明じゃ」


和「そうですよ……みなもさんも何か言って」ピタ

和「……」


優希「どうしたのどちゃん?」

優希「……あれ?そういえば、みなちゃんはどこだ?」


まこ「……おいおい、まさか…」



和「しまった……気を抜いていました…!!」


和「また迷子ですかぁぁ!!」



――――――
――――――


~会場内、廊下~


みなも「……」プルプル


みなも「ここ、どこぉ…?」グスッ



みなも「まったく…和ってば、しっかり見ててよね!!」プンスカ


みなも「にしても、気付いたらここにいたよ……」

みなも「気を付けないと、ホントに命が危ないかも」



みなも「はぁ…こんな事なら、恥ずかしがらずに和の手握ってれば良かったや」


みなも「……とりあえず、直感で…」テクテク


みなも(うーん……)キョロキョロ


みなも「こっち、かな」スタスタ





「なあ、もし偶然和に会っちゃったらどうする?」

「それはもう、仕方ないんじゃない?」


「……会っちゃうかもなぁ…!」

「あはは、ほんとは早く会いたいからね」



みなも(……ん?)ピク



「ひうっ…!?」ビク

「な……っ!?」ビクッ


「え、2人ともどしたの?」



みなも「……」テクテク



みなも「……」ゴッッッ


「うっ…」クラ



(な、なに?この嫌な感じ……あの人から…?)


みなも「……」テクテク



「な、なにあの子……」

「暖かくない……」プルプル


(あれは……確か、長野県の…)


(なにか、尋常じゃなく冷たい物を感じたのです…)ビクビク





みなも「……」テクテク


みなも(あの先頭歩いてた長髪……危険だ)

みなも(どこの高校…?まさか見落としてたなんて)


みなも「……全国…」


みなも「この会場に、お姉ちゃんも……」

みなも「……」ブルッ



みなも「みんなのとこに、早く戻ろ……」スタスタ


――――――
――――――



~抽選会、開会式終了後・宿泊ホテル~



久「みんな、今日はお疲れ様」


久「お約束通り迷子になってたみなもと、探し回ってた和は特にね」


みなも「……悪かったね!」プイッ


和「部長も、抽選会お疲れ様でした」


久「いやぁ、面目ないわ。2回戦でいきなり永水に姫末と当たることになるなんて」


優希「永水と言えば巫女さんのとこだな!」


まこ「ほぼ全員が巫女服来とったな…うちの店でも取り入れてみようか」


みなも「まあ、いつかは当たる相手でしょ。叩き潰すのが少し早くなっただけ、何も変わんないよ」


久「みなもは平常運転ね」


和「できれば、迷子の方は平常通りをやめて欲しいのですけど…」


みなも「もう大丈夫だってば。」


久「とにかく、早いもので明日は早速一回戦が待っているわ」

久「……ま、和とみなもの出番は来ないと思うけどね」


みなも「久……どれだけ自身ないのさ…」

みなも「いくらなんでも1回戦で中堅が飛ばされるなんて事ないから安心しなよ」


久「違うわよ!!」ビシッ


久「私で、どこかを飛ばして終わらせて来るって事」ジッ


みなも「あ、そっちね」


和「またそんな常識的じゃないことを……」


みなも「なら和、賭けようか」


和「えっ?」



みなも「わたしは、久で終わる方に賭ける」

みなも「負けた方は……そうだなぁ、言う事をなんでも聞くってことで」


和「な、なんでも!?」


みなも「うん。なんでも」ニコ


久「あら、みなもが私に賭けるなんて意外ね」


みなも「そ?わたし、久の事は信頼してるつもりだけど」


久「……そっか」




和(なんでも……なんでもということはつまり、なんでも!!)ドキドキ


和「良いでしょう。賭けます」キリッ

和「なんでもという約束、忘れないでくださいね」フフン



みなも「そっちこそ。後で恥ずかしいですー!って言ってもやめてあげないから」


和「な、何をするつもりなんですか!?/////」


みなも「ふふ、さーねー」


優希「染谷先輩はどうだと思うんだー?」


まこ「……そんなん、決まっとるじゃろ」


優希「??」


まこ「あの、みなもが賭けたんじゃ。結果は分かりきっとる」


優希「……それもそーだな」フフ



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【全国編2.5,いつかの記憶】


咲「ねーねー、お姉ちゃん!」


照「……」カキカキ



咲「むっ……」

咲「ねえ、みなも?」チラ


みなも「うん?なに、さk」


照「みなも」カキカキ

みなも「!!」ハッ



みなも「……」カキ

みなも「……」チラリ


咲「むぅ……!」ジ-ッ


みなも「……あぅ…」カキカキ



咲「2人ともぉ!!もう30分も経った!宿題始めてから30分も経った!!」

咲「早くプール行こーよー!!」ワ-ワ-



照「咲、お母さんと約束したでしょ?」

照「ほらみなも、どんな約束だっけ」


みなも「えっと……算数の宿題を終わらせ」チラ


咲「うっ……」ウルウル


みなも「……30分、宿題を頑張る…だったかな」



咲「!!」パァッ


照「み、みなも…!?」エッ


咲「ほら!ほらほら!みなもだってこう言ってるよ!」

咲「たすーけつで2対1!私たちの勝ちだよ、やったねみなもー!」ギュ-ッ


みなも「えへへ……咲、あんまり抱きつかれると熱いよっ…///」


照「まさか、みなもが裏切るとは……」ハァ



みなも「だ、だって、咲が可哀想で……」


照「それじゃあ、咲が宿題終わらなかった時に、みなもも手伝ってあげなきゃいけないよ?」



みなも「ええっ!?な、なんでわたしも……?」



照「お姉ちゃんでしょ?お姉ちゃんっていうのは、そういうものなの」フフ


みなも(お姉ちゃん!!)キラキラ

みなも「しょ、しょーがないなぁ!」


みなも「咲、安心して?わたしがちゃんと、咲の宿題を手伝ってあげ」


咲「んぅ……」スヤスヤ



みなも「え、寝てる!?」

照「みなもに抱きついたまま……器用に寝るね」


咲「…へへ……はやく…ぷーる、いこぉよ…」ムニャムニャ


照「寝てたらプール行けないけど……」


みなも「あはは、咲可愛い」ナデナデ

照「それには同意」ウンウン



みなも「……っていうかさ照お姉ちゃん?」

みなも「お姉ちゃんが妹の宿題手伝うなら、照お姉ちゃんも咲の宿題を」


照「いやいや。2人も必要ないよ。ここは新米姉のみなもに任せる」


みなも「ずるい!!そーいう時だけお姉ちゃんの権利を発動させて!」


照「ふふ、次女は長女と末妹に板挟みされて大変だね」クスクス


みなも「むぅ!!分かったよ!なら、咲の面倒はわたしが見るんだからね!」

みなも「お姉ちゃんには渡さないんだから」プイッ



照「それなら私は、可愛い妹2人の面倒を見るよ」


みなも「だ、だめっ。もう咲はわたしのだから、照お姉ちゃんは触れませーん!」ギュ-


照「残念。妹2人のものは私の、つまりみなものものは私のものなので、触れてしまいます」ムギュ-ッ


みなも「ぐえ……て、照お姉ちゃん!急に抱きつかれると熱いよぉ!!」


照「みなもは可愛いなぁ」ナデナデ


みなも「やめてってばー!分かった!少しは咲をあげるから、やめて!その変な触り方やめてーっ!!」ジタバタ


照「よいではないか、よいではないかーってね」ギュゥ


みなも「むにゃぁぁぁぁ!!」




咲「う、うう……熱い……」ウ-ン



―――――――――
―――――――――――――――
―――――――――――――――




みなも「!!」バッ


みなも「……」

みなも「……夢、か」


みなも(随分と、懐かしい夢だな)


みなも「……照お姉ちゃん」




【全国編3,崩壊、変貌、選択】

~一回戦終了後・夜~


みなも「ふふん、悪いね和。コンビニ付いてきて貰った上に、奢ってもらっちゃって」


和「まさか、本当に部長が他校を飛ばして終わらせるなんて……」


みなも「久は無理なことは口に出さないからね」

みなも「にしても、律儀にお願い聞いてくれるんだね」


和「なんでも、という約束でしたし。コンビニで甘味をせがまれるとは思いませんでしたが」

和(もっと辱めを受けると思っていました)


みなも「夜って、どーしてこんなに甘いものが食べたくなるんだろうね」


和「……太りますよ?」



みなも「それが、わたしっていくら食べても太らない体質なんだよね」


和「なぁ!?」

和「そんなオカルト、ありえません!」


みなも「はは、それが本当……」


みなも「……」ピタ



和「そんな羨ましすぎる体質……」

和「って、みなもさん?」チラリ



みなも「……ぁ……あ…」ブルブル



和「みなもさん!?どうしたんですか、顔色が悪いですよ!」






みなも「…ね…ちゃ……んで…」






和「え…?」



菫「おい、照?」




照「みな、も……?」


みなも「ッッッッッ!!」ダッ




和「みなもさん!?」

照「待っ、みなも!!」




菫「おい、一体どうしたっていうんだ……ん、原村和?」


和「すみません、ゆっくりお話をしている暇はありません。私はみなもさんを追います」

照「なら私も」


和「少しは考えてください!あなたを見てあんな様子になったんですよ!?」


照「っっ……」


和「あ……ごめんない…」

和「……とにかく、任せてください」



照「……うん…」

菫(どういう事だ……?まさか、さっきの少女が昔照の言っていた…?)


和「……」

和「これ、私の連絡先です」スッ


照「え……?」


和「あなた達"3人"の間に何があったのか、全ては知りませんけど、みなもさんは元に戻りたいと願っています」


照「……」


和「では」タッタッタ


照「……」ギュ

菫「照……」



照「ごめんね菫。戻ろうか」


菫「良いのか…?あれは……」

照「違う。あの子は、菫に話をした子じゃない。」

照「……けど、同じくらい、私にとって大切な子」


菫「……そうか」


照(まさか、こんな場所で会うなんて…)



照(咲。私は、どうすればいい……?)



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



みなも「げほっ、げほっ……」

みなも「はぁ…はぁ……」クテ


和「みなもさん!!」ダッダッダッ


みなも「の、どか……」フラッ


和「大丈夫ですか!?少しおデコを失礼します」スッ

みなも「へへ……わたし、どれだけ弱虫なんだろうね」


和「凄い熱……みなもさん、いつから体調が悪かったんですか!!」


みなも「東京に来て、ずっと感じてはいたんだよ……?」

みなも「でも、いざ目の前に立つと……会うと…」



みなも「なんて言ったらいいのか、どんな言葉を発していいのか、分からなかった…」



和「喋らなくていいです。……とりあえず、ホテルに戻りましょう」オブリ



みなも「おんぶ……久しぶり…」

みなも「昔は、よく……ね…ちゃ……に…」



みなも「……」


和「……ごめんなさい。気が付かなかった、私は……」

和「アナタの力になるって、決めたハズなのに…」グッ



みなも「…」





『……ホント、馬鹿らしい』



――――――
――――――――――――
―――――――――――――――


~次の日・2回戦次鋒終了、昼休憩~




衣「だから、衣が出てやると言っている!」


和「無茶です!選手登録していない人が出ては、失格ですよ!」


衣「髪の色も似ているし、欺けるだろう!!」ワ-ワ-

一「衣、少し落ち着きなって」


衣「一……」


久「申し出はありがたいけれど、もう決めた事だわ」

久「あんな状態のみなもを試合には出せない。何があるか分からないからね」


透華「棄権、ですの?」


まこ「まあ、そうじゃね。」

優希「体調が悪いのに気が付かなかった、私達に責任はあるじぇ……」


衣「それで良いのか?お前達は、負けられない理由が」


和「……良いんです」


衣「ののか……」

和「……」


衣「……そうか。そう決めたのなら、衣は何も」



みなも「皆、何言ってるの??」


まこ「なっ!?」


和「み、みなもさん!?」


久「いつの間に起きて……って、寝てなきゃダメよ!!」


優希「そうだじぇ!もう無理する必要はないじょ!」



衣(これは……あの時の、あの大将戦の時の"ヤツ"に似ている)




みなも「???」キョトン

みなも「私は平気だってば!!ほら、中堅戦始まるよ?」


久「みなも……?」


みなも「棄権?しなくて大丈夫!ほら、体調なんてもう悪くないから!」ピョンピョン


みなも「……ね?」ニコリ


和(なんでしょう、この感じ……)

和(目の前にいるのは、みなもさん……ですが、みなもさんではないような…)



みなも「もーっ!ほら、皆固まってないで!」


みなも「後半戦も、頑張ろうっ!」ニッコリ



久「え、ええ……」コクリ


優希「どゆことだ!?みなちゃん、復活したのか…?」

まこ「分からん……けど、そのようじゃな」


衣「……」ジッ






みなも「ふふ、大会かぁ」





みなも「楽しもうね」




――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


~インターハイ2回戦、大将戦~


恒子『さあさあさあ!!インターハイBブロック2回戦!』

恒子『永水女子に姫松高校という強豪校が当たる好カード!その大将戦の時間だぁぁぁぁぁ!!』


恒子『この激戦区を勝ち抜き準決勝へと駒を進めるのはどの高校か!!各校、大将の選手の紹介です!!』


健夜『……』



恒子『……?へいへいすこやん!!なんかボーッとしてない?』


健夜『あっ……ご、ごめんね?』

健夜『えっと、2回戦とは思えない程にレベルの高いブロックだなと思ってて』


恒子『ですよねー!言わずと知れた永水女子に姫松高校、それに加えて期待の新生の2校!』

恒子『宮守女子と、清澄高校ですからね!胸が高鳴ります!』



健夜『清澄……』


健夜(宮永、みなもちゃん……)

健夜(明らかに様子がおかしい。あれは、まるで出会った時の……いや、私の知らない、それ以前の……?)


恒子『では、選手の紹介です!!』

恒子『まずは永水女子~――――――』


健夜(大丈夫かな……。)





和「部長。本当に良かったんでしょうか……?」


久「分からない。……ごめんなさい、この決断は、半分私のワガママだったわ」

久「あの子、私に言ったのよ。私は私の麻雀を打て、麻雀を楽しめって」


和「……っ…」


久「なにが、どんな選択が正解だったのか……ごめんなさいね、本当に、部長として情けないわ」


和「そんな事はありません。私にも、分かりませんでしたから……」


和(みなもさん……)


和(私は結局、大事な所でアナタの役に立てない……)





――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――

――――――――――――――――――

~対局室~


豊音「よろしくね~」ペコリ


恭子「よろしくお願いします」ペコ


霞「よろしくお願いしますね」ニコ


恭子「永水に宮守……あと来てないのは清澄だけですか」

豊音「早く打ちたくって、来るのが早くなっちゃったよ~」エヘヘ

霞「あらあら、麻雀が好きなのね」クスクス


豊音「そーなんだよー。私と皆の、繋がりなんだよ~」


みなも「へえ、そんなに麻雀が好きなんだね」


豊音「わわっ!」ビックリ

恭子「い、いつの間におったんや……全然気が付かへんかった」


霞(この子……)


みなも「ねー」


みなも「一つ聞きたいんだけど、麻雀ってなにが楽しいの??」


豊音「え…?」


みなも「だってさ、負けたら悔しいでしょ?」


恭子「そらまあ、当たり前やんな」



みなも「でも、麻雀って競技は勝者が一人。結局は、勝った人以外はみんな負けて不幸になる」


みなも「人を不幸にする、それが麻雀」

みなも「違う?」


豊音「えっとぉ~……」アウアウ


恭子「あんなぁ……それは人それぞれやろ?」


みなも「えー、そうかなー?」

みなも「まあ、私だってあの頃は楽しいって思ってたんだけどね」


みなも「それなら教えてよ。麻雀の楽しさ、私にさ」


豊音「分かったよ~!私が皆から教わったこと、えっと、宮永さん……だよね!にも教えてあげる!」


恭子「生意気な1年は教育やな」



みなも「……よろしくね」


霞「……」

霞(少し……いえ、かなり不味いわね、これは……)



――――――
――――――



和「……部長…」


久「これは…まさか、こんな事が…?」


衣「……」フム






恒子『い、一体全体、何がどうなっているのでしょうか!!』

恒子『Bブロック2回戦大将戦。前半戦は各校が凌ぎを削り合う、接戦が繰り広げられていた……はずです!!』


健夜(……いや。前半戦も、そんな試合は行われていなかった。全て、あの子の掌)

健夜(一体どうして……なにがあったの?)



恒子『ですが後半戦……これは…』



清澄120000
永水98000
姫松95000
宮永87000




恒子『現在、南三局が終わりオーラスへ差し掛かるに至るまで……』

恒子『4校にツモは無し。全てロンのみ……それも、他校が清澄高校へ直撃を取る度に、清澄高校が直撃をした高校へロンをするという状況が繰り返されています』


健夜『つまり、点数が動いていない訳ですね』


恒子『どうなっているんですか…?私には、偶然こうなったとは思えないんだけど』


健夜『…分かりません』


健夜『……』

健夜『いえ、違いますね』



恒子『……?』


健夜『そっか、これが……』


恒子『すこやん??』



健夜(分かろうとしない、理解されない。)

健夜(これはきっと、あの時の……)



恒子『おっと!?オーラス、親の清澄高校宮永選手、動きますでしょうか!』


健夜『……槓材。予選でも、宮永選手は槓材を使った役、嶺上開花を和了る事が多かったですね』

健夜『現に、この後半戦でも頻繁に嶺上開花を和了っていました。』


恒子『では、ここで決めに来ると?』


健夜『……そうでしょう。』


健夜『これから起こる事。その選択は、"彼女"にとって、何を意味するんでしょうね』



恒子『……??』


健夜『始まります』



――――――
――――――――――――
―――――――――――――――――




霞(想像以上だわ……前半戦で妙に大人しかったのは、この点数調整をするために私達の打ち筋を観察していたから)


恭子(訳分からへん…。どうなっとるんや、これ)


豊音(まるで、点数そのものが宮永さんに従ってるみたいだよー)



みなも「これでも、楽しい?」

みなも「人それぞれだって、言える?」



みなも「そんな訳ない、楽しくない。こんなの」

みなも「ねえ、分かったでしょ?もう、やめよ?」


みなも「辛いでしょ?もう、嫌だよね?だからさ"みなも"、もうやめよ。」



恭子(何言っとるんや……みなもはあんたやろ?)

豊音(なんだか……とっても、寂しそうな顔)




みなも「……っっ…」

みなも「どうして分かってくれないの……?私は、ずっと、みなもの為に……」



みなも「……うるさい、うるさい、うるさい!!黙ってよ!!」



みなも「昨日の事も忘れたの!?逃げ出して、あんなに辛くて」

みなも「……ああ、もういいよ。」



みなも「安心して」

みなも「私が助けてあげる。ずっと、私が」



霞(確定ね。この子は、宮永みなもさんじゃないわ)

霞「……」



霞「そうね……少し驚いたけれど」

霞「私は、楽しいわよ?この試合」



みなも「……は?」


豊音「そーだねー……ちょっと怖いけど、ワクワクする!」


みなも「……適当な事言わないで」




恭子「適当ちゃうわ。当たり前やろ?」

恭子「アンタみたいな強者、そう対局できへんし」


みなも「……うるさい。私のことを、何も知らないくせに」


みなも「みんな、私を置いていっちゃう癖に」


豊音「え……?」



みなも「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



恭子「っっ!?」ゾクッ

霞(これは……っ)

豊音(これ……)ビク



みなも「カン」ダンッ


みなも「……」スッ



みなも「……」


みなも「…」



みなも「ぇ……?」



みなも「……2度と、させない…」



霞(……!!)


豊音(ツモ切り……)


恭子「楽しかったで」




みなも「そう、決めたから。咲」タン




恭子「……ロン。24000」







恒子『し……』


恒子『試合、終了ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!三倍満直撃!!!』

恒子『清澄高校、宮永みなも選手、嶺上開花ならず!!ツモ切りをした牌は、姫松高校末原選手の当たり牌でした!!』


恒子『トップ通過は姫松高校!!そして、2位は永水女子で大将戦終幕となりました』


恒子『準決勝進出は、姫松高校と永水女子です!!』


恒子『……小鍛治プロ、今の試合は…』


健夜『……非常に、良い試合でした。』

健夜『私から言えることは、そのくらいしかありません』



恒子『そうですか…っ』


恒子『わたくしも、インターハイという大会の面白さ、なにが起こるか分からない』

恒子『麻雀の楽しさを、改めて教えてもらいました!』


恒子『さてさて!準決勝にも期待が膨らみます!』


健夜「……」



健夜(最後……あの嶺上開花が決まっていたら)

健夜(大将戦、前半後半を含めた場合の清澄の獲得点数……)



健夜「……みなもちゃん。ありがとう」




~試合終了~


姫松119000
永水98000
清澄96000
宮永87000


―――――――――
―――――――――


【全国編3,真相】


~会場・医務室~


みなも「ん……」


みなも「こ、こは……」パチ



和「みなもさん!良かった、目が覚めたんですね」


みなも「のどか……?あれ、どうしてわたし、こんな所……」

和「大将戦が終わった後、控え室に戻ってきた途端糸が切れたように倒れてしまったんです」


みなも「……そうだ、試合…」


みなも「ぁ……」


みなも「ごめん、和……ごめんなさい、わたし……」ジワ



和「謝る必要なんて、どこにもありません」


みなも「違う……わたしは、わたしの為に、皆を切り捨てた」

みなも「わたしのワガママで、みんなを……」


和「いいえ、違います。」

和「忘れたんですか?」



和「私達は、目的のためにみなもさんを利用する。みなもさんも、同じように私達を利用する」

和「そんな約束でした」



みなも「だけどっ!!!」



和「そんなに後悔してくれるということは、みなもさんにとって、少しでも私達の存在が大きくなったという事でしょうか?」

和「最後の決断の時……私達の事を想って、迷ってくれたんですよね」


みなも「それは……」


和「ありがとう。それは、私にとって……いえ、きっと他の皆にとっても」

和「嬉しい事でしたよ」ナデナデ


みなも「……負けた、のに…?」


和「ええ」ニコ

和「もっと大切なものを、私達は貰いました」


和「お疲れ様。よく、頑張りましたね」ギュ


みなも「……」

みなも「ごめんね。……ありがとう」


和「ふふ。素直なみなもさん、可愛いです」


みなも「…茶化さないでよ」


和「色々お話したい事もありますけど……」

和「私よりもその必要がある人が来ているので、私は退出しますね」


みなも「え……?」


和「では。また後で」ニコ


みなも「わたしと話す必要が、ある人……?」

みなも「……」




みなも(もしかして)



ガララララララ




みなも「あ……」




照「みなも」



みなも「照……お姉ちゃん…」


照「……」


みなも「……」



照「その、久しぶり……だね。昨夜顔を合わせたけど」


みなも「……うん」


照「……」

みなも「…」



照「話が、あるんだ。聞いてくれるかな」


みなも「……」コク




照「竹井さんや原村さんから、少し話を聞いた」

照「私のせいで、辛い思いをさせた。本当にごめん」


みなも「……」フリフリ

みなも「……仕方ないことだよ。わたしは、それくらいの事をした」


照「違う。確かに、私は姉妹がいるのかと取材を受けた事がある」

照「……その時、いないと答えたのも本当」



みなも「っ……」ズキ



照「でも違うんだ」


みなも「なんにも……違くない…」

みなも「わたしはもう、姉妹でもなんでも」



照「みなもは私と咲の姉妹。これは、五年前から変わってない」


みなも「……そんな、思ってもないことっ…」



照「取材の時みなもの話が出て、妹なのかと聞かれた時は、凄く驚いた」

照「正直、麻雀はもう……やっていないかと思っていたから。」


照「まさか、インハイを目指してたなんてって。でも、同時に分かったこともある」

照「みなもは、私達を探してるんだって」


みなも「……それは」



照「私は、取材で姉妹はいないと言った」

照「けどそれは私がそう答えた結果、みなもに取材が行って、迷惑を掛けるんじゃないかと思ったから」



みなも「……ぇ…?」


照「……言い辛いけど、私達とみなもの関係は複雑」

照「だから、私とみなもの関係を素直に答えたら、昔の事を蒸し返されるかもしれない」


照「そうなってしまえば、みなもと咲に迷惑が掛かる」



照「……だから、取材の場ではああやって答えたんだ」

照「まさか、みなもの耳に入るとは……思わなかった。本当にごめん」



みなも「じゃあ……それじゃあ、わたしは」


みなも「ううん、咲と照お姉ちゃんは……」



照「ばか。私と咲が離れるはずないでしょ?」

照「みなもの心配してたような事は、なんにも無い」


照「忘れた?咲とみなも、2人は私の……大切な妹だって」


みなも「……そう、だったんだ」



照「むしろ私は、私の方こそ避けられてると思ってた」


みなも「そ、そんな事ない!!」


照「昨夜も逃げられたし。……結構、ショックだった」


みなも「あれは……心の準備が出来てなかったし…」



照「でもありがとう。みなもがここまで来てくれて、本当に嬉しかった」ニコ


みなも「……勘違いしないで」

みなも「わたしは、咲の為にここまで来たんだから」


照「……そっか。ふふ、変わらないね。咲の事になると、私に張り合う」クス


みなも「当然でしょ?…わたし達は、咲のお姉ちゃんなんだから」


照「うん、そうだね」

照「……なら、もう少し頑張って」


みなも「照お姉ちゃん、咲は……」


照「ヒミツ。ここで私が話したら、意味無いでしょ?」

みなも「むぅ……」


照「それじゃあ、私はもう行くね」スッ


みなも「もう行っちゃうの…?」


照「無理言って抜けさせて貰ったから。」

照「テレビで試合見てて、飛び出してきちゃったよ」


みなも「……ありがと、照お姉ちゃん」


照「ううん。こっちこそ」


みなも「……」ジワ


照「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫。また、いつでも会える」


照「姉妹なんだから。……ね?」ナデ



みなも「……うんっ…」ゴシゴシ


みなも「わたしの分まで暴れてきてよ、照お姉ちゃん!」ニコ


照「当然。長女の凄さ、しっかり見ててね」



ガララララララ


……ばたん



みなも「……」



みなも「そっか……」

みなも「結局、和の言った通り」



みなも「……凄いなぁ、こんなこと。本当に、あるんだ」



みなも「……ね。そう思わない?」


『……』



みなも「麻雀、続けて良かったよ」


ガララララララ


和「失礼します」



みなも「あ、和」


和「お話は終わったみたいですね」


みなも「……うん。全部、わたしの勘違いだった。結局、和が正解だったよ」


和「そうでしたか。ふふ、少しは見直しました?」


みなも「正直、惚れちゃいそうかな」


和「そうでしょうそうでしょう……」

和「……えっ?」


和「……」



和「ええっ!?/////」



みなも「あははっ、顔真っ赤」


和「も、もう!!からかわないでくださいっ!/////」

和「少し体調が良くなったらこれなんですから!」プンプン


みなも「あ、和ちょっと目閉じて?ゴミついてるよ」スッ


和「へ?あ、はい……」トジ




みなも「……んっ」チュ





和「!?!?!?!?」バッ


和「み、みなっ、みなもさん!?/////」



みなも「へへ、感謝の印。お返しはいらないよ」ニコ


和「なあ……う…と、突然すぎます!!/////」


みなも「さーて!体調も問題ないし、皆を安心させてあげなきゃ」テクテク


和「大体ですね、そういう事はもう少しムードというものを大切に……」

和「あれ、みなもさん?ちょっと!!なに立ち歩いてるんですか!」


みなも「ふぇ?心配しすぎだって。もう平気だよ」


みなも「ほら!わたし一人だと迷子になっちゃうかもしれないよ?」


和「みなもさん、貴女という人は……」ハァ

和「せめて、手を握っていてください」スッ


みなも「はーい。……目離したらダメだよ?」


和「当たり前です。」


和「みなもさんから目を離したことなんて、ありませんでしたよ」ニコ


みなも「……ぅ…」


みなも「そ、そっちからそーいう事言うのは、反則!/////」


みなも「早く行くよ!!」ギュッ


和「はいはい。そんなに急がなくても皆はどこにも逃げませんよ」


みなも「……」テクテク




みなも(ねえ、咲?)

みなも(照お姉ちゃんは、ずっとわたしの事を忘れないでいてくれてた……)




みなも(少しは期待しても、いいのかな)



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――

点数表示で宮守が宮永になってるでー

【長野編最終話】


「会いに来て、くれたんだね」


わたしは言う。

もっと、話したい事はあった。なのにどうしてだろう?

嬉しくて、言葉が出ないなんて、初めてだった。


やっぱり、凄いな。
いつだって、わたしの思いもよらない事をしてくる。

かっこよくて、憧れて。
大好きで大好きで仕方のない、彼女。



「大好きだよ」


彼女達は言う。

それはわたしのセリフ、わたしが一番に伝えたかった事なのに。


どーして先に言っちゃうの。


そう言って拗ねたいのに、溢れ出るのは涙と笑顔だけ。



「会って、謝りたかったの」



わたしは言う。



「私も……同じだった。けど、勇気が出なくて」


彼女も言う。


なんだ。
本当に、わたしが悪いように考えてただけだった。


わたしは、記憶にある少女よりも少し大人びた彼女を見る。

彼女の目もまた、わたしを捉えている。



ああ、夢でも見ているんだろうか?
何度も夢見た、理想の光景。

唐突にわたしの前へ姿を見せてくれた彼女は、ひょっとしたら触ったら雲のようにすり抜けてしまうんじゃないか。


「ん……苦しいよ」

いつの間にか、わたしは彼女に抱きついていた。


温かくて、柔らかい。
懐かしい。


夢なんかじゃない、現実だった。




咲「話を、しよっか」



彼女は……咲は、優しい声で囁く。



みなも「うん、話をしよう。……思う存分」


わたしは答える。
伝えよう。余すところなんて無く、全部。
話をしよう、わたしの、話を。貴女に。




5年間、ずっと話をしたかった。
顔が見たかった、触れたかった。



今、話ができる。
顔が見られる、触れられる。

もう絶対に、失いたくない。




そうこれは、わたしが大切なものを得て、失って、また取り戻すまでの話。



そしてこれからは、わたしのまだ知らない。


大好きな咲と、わたしの物語。




~長野編、Fin~

これにて長野編終了です。
色々考えたのてすが、2人の再開については既に書いていたので二番煎じにするのもな、と思いこういう形にしました。
手抜きです。すみません。

もっと軽い感じで書くはずの長野編でしたが、ここまで長くなるとは思っていませんでした…。

ありがとうございました!

>>440
本当だ…。すみませんっ。

~清澄宿泊ホテル~


和「はい、はい……」


和「分かりました。皆に伝えて、検討してみますね」

和「はい。……では、また後ほど」


ピッ


久「電話は終わったかしら?」


和「はい。それで、面白そうなお誘いを頂いたのですが」

久「面白そう?」


優希「なんだー?タコス食べ放題なら任せとけ!」

まこ「そんなイベント一生やらんじゃろ」


和「どうやら、今夜インターハイの後夜祭……?を開催するそうなんです」

和「阿知賀の皆が、私達も来ないかと」


みなも「後夜祭ぃ?」


久「露骨に嫌そうな顔するわね」


みなも「面倒。咲と電話してたい」


和「小鍛治プロも来るそうですし、咲さんも来ると思いますが」


みなも「よし、行こう。すぐに行こう!」

みなも「もう、和ってば!それならそうと、早く言ってよ!」バシバシ


和「ちょっとみなもさん!バシバシしないでくださいっ」


優希「みなちゃんの手首はゆるゆるだじぇ」



久「後夜祭ねぇ」


みなも「え、行くよね?行くでしょ!だって、ウチには個人戦2位がいるんだよ!」

みなも「行かなきゃだめだよ!うんうん、和も何か言って!」


和「どれだけ楽しみなんですか……そりゃ、私も咲さんに会えるのは楽しみですが」



久「そうねぇ……折角のお誘いだし、OKしようかしら?」


みなも「やーったぁー!」バンザ-イ


優希「あんなに可愛い喜び方をしたみなちゃん、見たことないじぇ」

まこ「よっぽど嬉しいんじゃろうね」クスクス


和「では、参加しますと返事をしておきますね」

久「うん、任せたわ」


みなも「ねえ、久!早く行かない?会場の下見とか、した方がいいと思う!」


久「いやいやいや落ち着きなさいって!今行っても誰も居ないわよ」


みなも「うぅ~!まーちーきーれーなーいー!」


和「そんなに時間を持て余しているのなら、夏休みの宿題でも終わらせたらどうです」


みなも「……えぇ…」ズ-ン


久「テンションの差が激しいわね」


和「ほら!咲さんにも言われたんです、みなもさんの面倒を見てくれと」

和「宿題!出してくださいっ」


みなも「……や」


和「や、じゃありません!どうせまだ全然終わっていないのでしょう?」


みなも「……終わってますぅ~、ぜんぶ終わってますぅ~」メソラシ


和「……」イラッ

和「……断りの電話を入れても良いんですよ?」


みなも「やります!!宿題でしょ?やる!うん、楽しいよね宿題!」


和「ふふ、よろしいです。ではまず数学から……ああ、みなもさんは数学が得意なので、古文からにしましょう」


みなも「うぐっ……りょ、了解…」



久「あはは、ほんとに扱い上手いわね」




久(後夜祭、ね。楽しみだわ)フフ



【後夜祭episode4,激戦】



~後夜祭会場・対局エリア~



みなも「それで親子丼がさぁ…」


咲「へえ、あの親子丼さんがね。今日は来てないのかな?」


みなも「さあ?」

みなも「プロの自分より強い高校生がうじゃうじゃいるこの会場には、来づらかったんじゃない?あははっ」プ-クスクス


咲「そんな事言わないの。五年前は、私とお姉ちゃんで親子丼さんを集中砲火したから勝てたんだよ?」

咲「1対1でやってたら、多分勝ててなかった」


みなも「ふぇ、そうだったの?」

みなも「わたしてっきり、親子丼が弱いから振込みまくってたのかと思ってたよ」


咲「いやいや、一応プロなんだから…」アハハ

咲「現に、あの時は親子丼さんに何回も槓材を掴ませてたけど、全部抱え込まれたからね」


みなも「へー…今度会ったら謝っとくよ。ただの雑魚プロじゃなかったんだねって」


咲「まったく…。みなも、もう少し言葉遣いを良くしないとダメだよ。折角可愛いんだからさ」


みなも「えへへ、わたしは咲にだけ可愛いって思われてれば、それでいいから」スリスリ


咲「なっ……/////」カァ


みなも「ふふっ、咲好き」ギュ-


咲「……この子は……もう」フフ



照「ここに居た……咲、みなも」


咲「あ、お姉ちゃん」

みなも「照お姉ちゃんだ」


照「私だけ仲間外れは傷付く……」ガックシ


咲「えっ!?いや、違うよ!お姉ちゃん、対局で忙しそうだったから」


みなも「うんうん。だから、その隙に咲はわたしが独り占め!させて貰ってるよ」フフフ

みなも「お、ね、え、ちゃ、ん……としてね?」チラ


照「ほう……?」

みなも「うん?」ニコリ


照「みなも、随分な口を叩くようになったね」



みなも「まーね。いつまでも照お姉ちゃんと咲の後ろに隠れてた、あの時のわたしじゃないって事」


照「なら、どっちが咲に相応しいか……決めようか」


みなも「良いね。チャンプだかチャンプルーだか知らないけど、1回地に堕ちた方がいいと思うよ?」



照「……」ゴゴゴゴゴゴ

みなも「……」ゴゴゴゴゴゴ


咲「ちょっと2人とも……どうしてそんな険悪なのさ」


みなも「え、険悪?」


照「別に険悪じゃ無い。久々で、ちょっとテンションが上がってるだけ」


みなも「だよね」ウン


咲「もうそれは戦闘狂だよ……」



みなも「なんなら、咲も混ざって打とうよ!」


咲「いや、私は」


照「怖いの?小鍛治プロに鍛えてもらっておいて負けるのが」


咲「……うん?」


みなも「それなら仕方ないね!それに、姉に勝る妹なんていないんだよっ」フンス

照「末っ子はお姉ちゃん達には追いつけない」フフ


咲「……なに?2人とも、私に喧嘩売ってるのかな?」


みなも「いやいや、そんな~」

照「逃げても大丈夫だよ?」



咲「……2人とも、私に謝る準備をしておくことだね」


みなも(よし、かかった!)

照(こうでもしないと打ってくれそうにないからね)


みなも(でも、照お姉ちゃんに売られた喧嘩は……)

照(買う)




みなも「聞いた?照お姉ちゃん。チャンプの名折れになるだろうけど、頑張ってね」ゴゴゴゴゴゴゴ


照「私は悲しいよ。あんなに素直だった妹達がこんな生意気に育って……。1回、叩きのめして教育し直さなきゃね」ゴゴゴコゴゴゴゴ


咲「2人とも、ちょっと大会で活躍したからって良い気にならないでね?上には上がいるって、当然の理だから」



憧「ほ、ほらシズ…咲を対局に誘うんでしょ……?行ってきなさいよ…」


穏乃「む、むむむ無茶言うなよ!怖くて行けないって!」


初美「あの方達、何かが取り憑いているのではないでしょうか~……」


霞「清澄の宮永さんに至っては、あながち間違いでも無いけれど」


由暉子「あれが魔界の住民さんですか?」


和「なに言ってるんですか。咲さんとみなもさんは天使ですよ」


玄「ちゃ、チャンピオンのあんな顔見たことないよ」


ネリー「どうでもいいけど、サキはネリーの嫁。異論は認め無いよ」


明華「はい?異論しか無いのですが」ゴゴ


ネリー「げっ、明華いつの間に……」


洋榎「しっかしまあ、オモロイ事になってきたやん」


怜(咲の事知らへん人も多いやろし、泉なんて腰抜かすんちゃうか…)


憩「せっかくやし、誰が勝つか賭けましょ~。ウチはチャンプで~」


淡「そりゃ、テルーでしょ。瞬殺だよ、瞬殺」


豊音「う~ん…やっぱり、宮永さんかなぁ…あ!清澄のね!」


ネリー「咲に全財産で」


明華「咲さんですかね」


怜「チャンプと迷うけどなぁ……咲やな」


爽「私は清澄の宮永さんかな?」


恭子「結構割れるもんやな。ウチはチャンプで」


恭子(あの咲っちゅう子は、そもそも知らへんしなぁ…)



健夜「なんか始まりそうだね」


マホ「先輩、楽しそうです」フフ


久「ま、久々なんだし無理もないわね」


マホ「わわっ、ビックリしました……」


健夜「久ちゃん」


久「どもども~」


マホ「確か、先輩の元先輩でしたか~??」


久「あら、聞いているのね。じゃあ、アナタにとっての私は大先輩って所かしら?」


マホ「マホが先輩って呼ぶのは宮永先輩だけなので」プイ


久「あら、これは手厳しい」アハハ


咏「おろ、なになに?小鍛治プロに夢乃ちゃんに清澄の部長ちゃんって、珍しい組み合わせだねぃ」


マホ「三尋木プロです~」


はやり「それがそうでもないんだよね☆武井さんは、咲ちゃんの元先輩なんだよ☆」


咏「へぇ~?わっかんねー所で繋がってるもんだねぃ」


久「牌のお姉さんまで」


健夜「えっ、はやりちゃん知ってたの?」


はやり「アイドルは耳がいいんだゾ☆」


健夜「要するに盗み聞きなんだね…」


マホ「ネットで自分の悪口とかないか探してそうですね」

はやり「……はや?★」


咏「ま、細かい事は良いからさ。私らもあの3人で誰が勝つか賭けようぜぃ~」


健夜「咲ちゃんがどこまで能力を使うかによるかなぁ……」

マホ「靴下は脱がないでしょうね~。それでも、マホは先輩に賭けますけど」


久「私はみなもね。ウチの大将だし」


咏「そんじゃ、流れ的にと、私的な期待も込めてチャンプで」


はやり「期待ってもしかして、この前咲ちゃんにボコボコにされたから、仕返して欲しいってことかな☆」


咏「ふふん、正解」


はやり「なら、はやりも照ちゃんにするね★」


健夜(この2人、まだ根に持ってるの……)



マホ「あの件を蒸し返しますか?なら、マホが二度とあんな事を思い付かない様にしてあげるです」ゴゴ


咏「おっ、ならこっちもやるかい?言っとくけど、手は抜かないよん?」


マホ「負けた後で言い訳されるのも嫌ですし、その方が都合が良いです~」


はやり「先輩に似て、ちょっと口が過ぎるみたいだね★」


マホ「ありがとうございますです~。マホにとってそれは褒め言葉なので…♪」


咏「あはは~」ゴゴゴ

はやり「はややっ」ゴゴゴ

マホ「えへへ」ゴゴゴゴゴ



久「あ、あの3人なんかあったんですか?」


健夜「あー……まあ、色々ね…」メソラシ


久「ふーん……」

久「ところで、小鍛治さんは誰に賭けるんです?」


健夜「え?」


久「ほら、宮永姉妹の」


健夜「あぁ……私は、賭けるのはやめておくよ」


久「おろ、それはまたどうして?」


健夜「んーっとね…」ニガワライ



健夜「この事が咲ちゃんの耳に入った時、私が咲ちゃんに賭けたって知ったら」



咲『……は?お姉ちゃんやみなもを馬鹿にしてるんですか?』

咲『あんまりあの2人を甘くみないでください』



健夜「……って怒られそうだし、逆に咲ちゃん以外の2人を選べば」




咲『ふぅん……健夜さん、そんなに私に信用が無いんですね』

咲『私、傷つきました。長野に帰らせて貰います』



健夜「……という具合に拗ねちゃいそうだから」アハハ


久「なんて言うか……思考が完全に夫婦ですね…」


健夜「……へっ!?」


久「咲があそこまで小鍛治さんに懐くのも、納得出来ましたよ」クスクス

久「これからも咲の事、大切にしてあげてくださいね」


健夜「そ、そんな風に頼まれたら恥ずかしいけど……」


健夜「うん、頼まれなくたってそのつもりかな」クスクス


久「あはは、今のを咲が聞いてたらツンデレ発動でしょうね」


健夜「く、くれぐれもご内密にお願いするよ」


久「分かってますよ」



久(これは、みなもには強大なライバルが立ちはだかるわねぇ~……面白い)フフ



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



~一部対局シーン~



みなも「かんっ!」スッ


みなも(当然、咲が卓にいる時は嶺上は使えない……けど、これは和了る為のカンじゃなくて咲への妨害っ)つ九萬


みなも(咲が、その手にある槓材で嶺上を狙ってるのは分かるからね。これで、しばらくは手作りに時間がかかるはず)


みなも「からのリーチ!」ダンッ

みなも(貰ったっ)


咲「……カン」ゴゴ


みなも「はぇ!?」

みなも(カン?咲が?なんで!)


咲「ツモ、嶺上開花。6000オール」


照「はい」チャラ


みなも「嶺上開花!?えっ、どういう事!?確かに、咲の和了牌は潰しておいたはず……」


咲「甘いよみなも」


咲「みなもは私の打ち筋を知ってるから、今ので封殺出来たと思ったんだろうけど……」

咲「私だって、そのくらいは想定済み」


みなも「まさか……」


照「一つ目の嶺上牌はフェイク。咲はみなもがカンで邪魔してくる事を読んで、初めから二つ目の嶺上牌を見ていた」


咲「さすがお姉ちゃん、正解だよ」


みなも「むうううううう!!!そんな可愛くない真似してぇ…!!」プンスカ

みなも「お姉ちゃんはかなしいよっ!」


咲「まあ、昔なら今ので潰されてたけどね」


照「やっぱり強くなった、咲」フフ


咲「えへへ、ありがと」テレ



みなも「……」スゥ

みなも「……」


みなも「……」パチ



照「!」ピクッ

咲「うわ……これは、凄いな…」



みなも「……再開しようか」ニコリ


照「面白くなってきた」ゴゴゴゴ


咲「負けないよ」ゴゴゴ




憧(な、なんで私この卓に着いてるのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!)←ジャンケンで負けました


―――――――――
―――――――――



照「ツモ、2000,4000」ゴゴゴ


照「ツモ、4000.8000」ゴゴゴゴゴ



みなも「ロン、河底18000」

照「河底……」


みなも「ロン、槍槓。国士無双」



咲「なっ……4巡で13面…」

咲(聴牌気配も感じられなかった……予選の天江さんへの河底といい、この槍槓といい…)


咲(そういえば、昔もよく嶺上できると思ってカンしたら不要牌で、捨てたらみなもに直撃受けた事があったけど……それの延長かな…?)


みなも「リーチ」


咲「通らないね。それ、カン」

咲「もう1個、カン」ゴゴ


照(これは……)


咲「またカン、もういっこ……カンッ!!」ゴッッッッ

咲「ツモ、四槓子。責任払いで32000」


みなも「うっ……やっぱり…」チャラ


照「咲相手に、不用意に生牌の字牌なんて出すもんじゃない」


みなも「通れば一発だったんだけどなぁ…」


咲「通れば一発のリーチを、私が通すと思う?」


照「ちなみに、咲の頭ハネで意味無いからロンしなかったけど、私もそれロン牌だから」パラララララ


みなも「げっ、ダブロンあったらヤバかったよ」




憧(だ、誰か変わって……いや、ホントに……)



――――――
――――――


~オーラス・1巡目~


咲(点数状況的に、満貫以上をツモれば逆転勝ち……)

咲(でもそれは、みなもも同じか…)


みなも(オーラス……照お姉ちゃんをねじ伏せるっ)


照(早さで終わらす)



咲「……8000点」ゴッッッッッッッッッ



みなも「うっ……!?」ビクッ


照(この感じ、プラマイゼロの!?……いや、違う…)

みなも(あの呪いを、能力へ昇華させたのか)




咲「あの力で、私は2人に嫌な思いをさせた……」

咲「だからこそ、もうあの時の私じゃないって、心配いらないって……伝えるね」



みなも「……勝ったつもりになるのは、早くないかなっ!!」ズズズズズ


照「負けるつもりは、無い」ゴゴゴゴゴ



咲「ううん、悪いけど……」

咲「これで」スッ



みなも(うわ……まじで?咲……)

照(本当に過去を乗り越えられたのか、確かめるよ)




咲「カン」スッ



みなも「あぁ……もう、咲はほんとに…」






咲「ツモ、嶺上開花。2000,4000」




みなも(かっこいいなぁ)フフ



~終局~



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



~対局後~


穏乃「うはあああああ!!憧、見た!?見てた!?今の対局!!」


憧「見てたっていうか、一緒に打ってたわよ……咲には悪いけど、魔物過ぎるわ…」ゲッソリ


玄「あ、あの3人ってあんなに凄かったんだ……」


和「みなもさんは、予選で天江さん相手に見せたのと同じ力を出していたように見えましたが……咲さんはアレにも勝てるんですね」


ネリー「いや。正直、誰が勝ってもおかしく無かったよ」

恭子「どういう意味や?」


ネリー「ナイショ」

ネリー(最後の……あれが、サキの見た闇か)


智葉「良い物を見させて貰った。」


ハオ「チャンピオンは、団体や個人戦以上に強かった気がします」


爽「あの2人と打って、リミッター外れたとか?」


揺杏「げっろ……あれでリミッター掛けてたとか、勘弁して欲しいわ…」


豊音「宮永さん、凄かったね~!!」


シロ「てか、清澄の宮永さんと咲とチャンピオンが知り合いだったんだ……」


塞「今更?そこら中で噂になってたじゃない」


胡桃「色々似てるよね…」


エイスリン「サキ、ツヨイ!」


晴絵「まさか、後夜祭であんな試合が見られるなんて」



トシ「……健夜んとこの宮永ちゃん、世界ジュニアの話受けてくれないかね」


ネリー「多分断ると思うよ?そんな話をネリーもこの前したけど、興味無さげだったし」


郁乃「そんな事言って~。日本が強うなんのが嫌なだけやないの~?」


ネリー「まさか。世界でサキと打てるなら、大歓迎だよ」


ネリー「無論、負けるつもりは無いしね」


トシ「そうかい。…まあ、健夜を通して聞くだけ聞いてみるとするかね」


憩「ていうか、チャンピオンとみなもちゃんでも充分やと思います~ぅ」


明華「言っておきますが、世界にはあのレベル……とは言いませんが、近いレベルの選手なんてざらに居ます」


久「まあまあ、今はそんな野暮な話は良いじゃないの」


優希「そうだじぇ!今はインハイの後夜祭!祭りを存分に楽しむじぇ!」



淡「それにしたって、サキのあの能力ってなんなの?」


小蒔「私には、点数そのものを操っているように見えましたが」


玄(確か、点数調整が得意って言ってたような…)


怜「ほんま、底が知れへんなぁ…」


ネリー「……てかさ、皆サキと親しそうだけど、どんな関係なワケ?」ジロ


明華「それは私も聞きたかったですね?」ニコ


淡「どんな関係って……ライバルだけど?」


小蒔「私にとって、大切な方ですね」フフ


玄「み、右に同じ……なのです……/////」


怜「そらもう、素晴らしい太ももの持ち主や」


ネリー「……」

明華「……」

淡「……」

小蒔「……」

怜「……」




玄(な、なんなのこの空気……!?)ガクブル



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


みなも「はぁぁぁぁぁ、悔しい!!」


照「お疲れ。楽しかった」ニコ


咲「お疲れ様。勝った私が言うのもなんだけど、誰が勝ってもおかしくなかったよ」


みなも「むぅ……咲ってば、また謙遜して」プク-

みなも「負けたの悔しい!!咲、慰めてっ」ダキッ


咲「え、えぇ~?」


みなも「はやくっ!」プンスカ


咲「もう……えっと、よしよし…?」ナデナデ



みなも「……えへへ…」ニヘラ


照(妹よ、さすがにチョロすぎる……)

照「どうして、誰が勝ってもおかしくないって?」


咲「だって、最後のアレは多分偶然だったから」



みなも「えぇ!?」バッ


照「偶然…?にしては、宣言通りに当然の如く初手カンから満貫和了ってたけど」


咲「ううん、それがさ。確信はないんだけど、2人に点数調整の能力は効かないと思うんだよね」

咲「発動した途端に、支配が相殺された感じがしたから」


みなも「わけわかんない!なら、どうして満貫和了れたのさ!」


咲「うん、だから"多分"偶然で、誰が勝ってもおかしくなかったの」


咲「仮に私の勘違いで普通に能力が発動してたなら、私の勝ちだし」


咲「能力が破られてて、本当に偶然の満貫だったなら、運が私に味方しただけ」



照「言いたい事分からなくもないけど……それでも、勝ちは勝ちだよ」

みなも「そーだよ。それどころか運も味方に付けた、咲の大勝利じゃん」


咲「……あれ、珍しい」

咲「昔は2人とも『今のは運で負けた!もう1回!!』って言って引かなかったのに」クスクス


照「そんな事言ってたのはみなもだけ」


みなも「なー!?照お姉ちゃんでしょ!!」


照「みなもだよ」


みなも「照お姉ちゃんだしっ!!」


照「むむむ」


みなも「ぐぬぬ……っ」


照「なら決着つける?」

みなも「望むところだよ」


咲「え、またやるの……」


健夜「咲ちゃん、お疲れ様」


咲「健夜さん」


マホ「お姉さん2人も、お疲れ様でしたー!」


咏「くっそぉ……結局勝敗は五分かぁ…」


はやり「さすが、健夜ちゃんの教え子だけあってマホちゃんも強いね……★」ピクピク


マホ「チョンボしなければマホの勝ち越しでしたけどね」


咏「言ってくれるねぃ…」

はやり「ならもう一回やるかな?★」


マホ「そんなにプロとしての威厳を失いたいのなら、是非♪」


咲(一体何が……)


照「夢乃さん。三尋木プロに、瑞原プロも」


みなも「確か、咲の後輩だっけ…。ね、高校での咲の事色々教えてよ」


マホ「マホはまだ中学生ですけど、知ってる事は教えますです!」

マホ「その代わり、先輩の小学生時代のお話が聞きたいですっ!あ、暗い部分は知ってますので、可愛い所で!」


みなも「ふふ、OK。交渉成立だね」


マホ「えへへ、話がわかる方で良かったです」




咲「なんか、私抜きで話進んでるし……」ハァ


健夜「あはは…マホちゃんは、ずっと話がしてみたいって言ってたからね」


咲「そうなんですね。……ていうか、お姉ちゃん元気だなぁ」ハァ


健夜「疲れちゃった?」


咲「はい…でも、少しだけですよ」コテン


健夜「……楽しかった?」


咲「……」チラリ


健夜「……」ジ-ッ


咲「ふふっ、なんですか。私が楽しそうに打ってるのを見て、ヤキモチでも妬いちゃいました?」クスクス


健夜「なぁっ!?/////」カァ

健夜「べ、別にそんな事は……なくも、ないかもしれないっていうか……その…」ゴニョゴニョ


咲「何言ってるか聞こえませーん」クスクス


咲「……まあ、楽しかったですよやっぱり。昔を思い出しました」


健夜「……そっか。うん、それは素直に私も嬉しいかな」


咲「……」


健夜「……」


咲「ふあぁ……」

咲「少し、寄りかかりますね」コテン


健夜「えっ……こ、こんな所で…」アワアワ


咲「なに恥ずかしがってるんですか?大人のよゆーを見せてくださいよ」フフ


健夜「そ、そんな事言われても」

健夜「もう、咲ちゃんなんだかフワフワしてない?まさか、お酒でも……!?」


咲「そんな訳無いじゃないですか」


咲「……ただ、なんだか嬉しくなっただけです」


健夜「嬉しく……?」


咲「またお姉ちゃんとみなもと、ああやって麻雀を打てて……」


健夜「……」


咲「ふふっ、それと…」

咲「こうやって、私を支えてくれる」チラリ


咲「帰ってこれる場所があるって、改めて感じられてです」ニコ



健夜「!!」


咲「……健夜さんは、どう思ってますか?」



健夜「……」

健夜「うんっ……」



健夜「その…私も、同じ気持ち……かな」


咲「……意気地無し」プイッ


健夜「ええ!?」ガ-ン


咲「でもまあ、今はそれで十分です」ニコリ




咲「……私の事、見失わないでくださいね?」




健夜「……うん。任せて」ニコ




【後夜祭episode4、カン!】

このスレはGW中の完結を目指していますが、できるでしょうか……頑張りますっ

乙ですー
さっきの宮永×3の麻雀で咲は靴下脱がずに、照とみなもに対して互角でしたけど、靴下脱いだらもう一段階強くなったりするんですかねー?
それとも、結局二人には点数支配効かないから実力は同じですか?

乙ありがとうございますっ。
>>490どうでしょう…。姉妹に対して靴下を脱ぐ事は無いので、その辺りは好きなように想像して頂ければっ。
ただ、実は咲さんの能力はある理由でみなもにだけ相殺される感じで書いていましたっ。

個人的には、靴下無し咲さんに勝てるのはすこやんだけという設定で書いてますねっ。

【閑話・治水】

~インハイ期間中・長野勢宿~



咲(…これは……)タラリ



衣(なんだ…?いつもと、強度が違う)


みなも(おかしい。合宿の時はこれ程じゃなかったはず……)



透華「……」コォォォォォォォォォ



透華53000
咲23000
みなも13000
衣11000




モモ「ま、マジっすか……」


和「咲さんが、ほぼ何も出来なかった?」


久(龍門渕さん、とんだ大物ね)



咲(いくら初見とは言え、こんなに大負けするなんてね)


咲「……健夜さん」チラ



健夜「ううん……微妙かなぁ」

健夜「でも多分、考え方はあってると思うよ」


咲「そうですか」フム



みなも「??なんの話してるの?」

衣「衣にも教えてくれ!」


咲「合宿で対局した時の話を聞いた限り、この状態の龍門渕さんの能力は至極単純」


咲「河に干渉できない状態が"作られる"っていう能力」


咲「基本的に鳴けないし、ロンもできない。流し満貫とかは論外」


咲「それともう一つ。河が河でいる間……つまり、深い所までたどり着く前に必ず龍門渕さんは和了れる」


久(天江さんとの相性は最悪ね。それに対して、みなもとは良さそうだけれど)



衣「ああ。……いや、だが」

みなも「合宿の時はわたしでも鳴けない程に支配が強かったけど、今回は……」



咲「うん。鳴ける機会はあったし、現に何度か鳴いた」

咲「ロンは、相変わらず出来なかったけどね」



咲「代わりに、和了る事が出来なかった。それどころか、鳴く行為によって龍門渕さんのアシストをするように」



咲「ズレた先の牌が、龍門渕さんの有効牌になる始末……」


みなも「……」カンガエ


衣「前回と性質が変わったのか?」


みなも「……いや、違うね」


健夜(さすが、みなもちゃんは気付くか)



みなも「変わったんじゃなくて、そこまでを含めて透華の能力って事?」


咲「そう。今の局、私は和了る事よりも場全体に"鳴き"の支配を組み込む事を優先させた」


咲「槓材を使って無理やり鳴ける状態を生み出したって言った方が、分かりやすいかな」



衣「いくら鳴きがし辛くなるとはいえ、同じ牌を4枚ずっと抱えていれば、自ずと鳴かせて支配を崩せるタイミングは来る、か」


咲「でも、龍門渕さんにはその先の能力があった」

咲「河を乱す相手に、牙を剥く」



みなも「……龍、ね」


みなも(なるほど、ずっと感じてた違和感はこれか……)


みなも(治水は龍を呼び起こすための鍵)



衣「"治水"の時は、"ほぼ"河に干渉できない。仮に干渉出来たとしても、河を乱した罰として龍に喰い殺される」


衣「こんな所か」


咲「はい。ついでに、河の浅い内に和了る為に"のどっち"並の異常な牌効率に、それを成り立たせるツモ運と、配牌の良さが伴っていますね」


咲「……龍門渕さんは原村さんのデジタルを目標にしていたそうですが…」


みなも「皮肉なもんだね。最凶のオカルトを得た副産物で、完璧なデジタルまでも手に入るなんて」


和「アイドルがどうたら、というのはそういう事だったんですか」


久「いやいや、気付きなさいよ」ペシ



健夜(でも、この力は圧倒的だなぁ。初見とは言え咲ちゃんが負けるなんて)


咲「……」フム


咲(鳴くことが困難、仮に鳴けても反撃をくらう……ロンもできない。龍門渕さんは平均7巡で和了る、か)



一「ねえ、宮永さん」


咲「はい?」



一「その……」

一「透華のその力は、消せないのかな」


健夜「……!」ピク


咲「……」


衣「一?」



一「透華は、いつも言ってるんだ」


『いつか原村和のデジタルを超えるデジタルを私が身に付けて、原村和よりも上を目指しますわ!』



一「ってね」

一「でも、上に行けば行くほど、透華はこの状態になっちゃう」


一「それは、透華のやりたい麻雀じゃないんだと思う。実際、元に戻った後に酷く後悔してるんだ」



みなも「やりたい、麻雀……」


一「この力に振り回される透華を、ボクは見たくないんだ」




咲「……」


みなも「咲?」

健夜「……」



咲「……龍を殺して鎮めることは、できます」

咲「結果それは、能力の抹消に繋がるでしょう」


和「出来るんですか……?そんな事が…」



咲「"必ず"できます」


咲「……いえ…そう、なってしまいます」



みなも(そう、なる……?)


みなも「咲、まさか」




衣「しかし咲、龍を殺すと言っても容易くはないぞ?」


咲「……むしろ、私にとっては容易いんです」




咲「皆さんが思っているよりも簡単に、きっとこの件は片付きます。」



衣「なに……?」


咲「けれど、取り返しはつかない」

咲「一度消せば、もう力は戻ってきません」



一「……それでも、透華を助けて欲しいんだ」


健夜「龍門渕さんは、そう望まないかもしれないよ?」


咲「健夜さん」



健夜「ううん、言っておいた方が良い」

健夜「仮に勝手に消される事を望んで居なかったとして、その時に矛先がいくのは咲ちゃんだよね」



「いえ……私も、それを望みますわ」



一「えっ?」チラ



透華「ごめんなさい、実は意識は戻っていましたの」

透華「……宮永咲さん。私からも、お願いしますわ」



透華「私が目指すのは……ずっと、目指してきた麻雀は、あんな紛い物ではありません」



透華「私は、私の麻雀を打って、先へと進みたいんですの」



咲「……そう、ですか」


健夜「咲ちゃん」


咲「……良いですか?」



健夜「……」


咲「自分の麻雀が打てないのは、とても辛いです」




健夜「……分かってる」

健夜「いいよ。でも、私も卓には入る」


咲「ふふ、それはそれは。願ってもないチャンスですよ」ニコ



衣「だが、元に戻ってすぐに龍を呼べるのか…?」


透華「問題ありませんわ…」

透華「先程から、出せ出せと煩いんですの」


一「透華……」



咲「時間もありません。始めましょうか」

咲「……みなも、ごめんね」


みなも「やっぱり、咲」



咲「……」ヌギ


咲「…………………………」



透華「……ありがとう、ございます」


透華「……」


透華「……」コォォォォ


健夜「じゃ、よろしくお願いします」


咲「……」フゥ




咲「よろしくね」ニコッ



―――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――――――――



【結末】



咲「……ん…」パチ

咲「……」ボ-ッ


咲「……知らない天井…」




健夜「咲ちゃん、目が覚めた?」


咲「……健夜さん…」ムクリ

咲「いっつ…」ズキ


健夜「大丈夫!?」



咲「……大丈夫です。…久々に使ったので、少し疲れただけですから」


健夜「…そっか」


咲「……」


健夜「……」



咲「怒ってます……?」


健夜「……少し、ね」


咲「……すみません」

健夜「ううん、咲ちゃんの気持ちも分かるから」





健夜「結果的に上手くいったよ」


健夜「適応できない龍は消えて、そうでない部分だけ残った」


咲「てことは、やっぱりデジタルの部分だけ残りましたか」

咲「……才能の塊、ですね」


健夜「そうだね」


咲「……」フゥ


咲「あーあ、勿体ない事をしました。もしかしたら、最強のデジタル兼オカルト持ちの選手と対局する機会があったかもしれないのに」


健夜「後悔してるの?」



咲「……嘘ですよ。怒らないでください」



健夜「もう」

咲「……」



健夜「やっぱり、まだ呪いのあの部分は完璧に制御しきれて無かった」


咲「……そうですか。私、どうなってました?」


健夜「……キャラ崩壊?」

健夜「みなもちゃんが言うには、昔の咲ちゃんだって」


咲「あはは……みなもには、悪い事をしました」



健夜「…能力の抹消、ね……」

健夜「ほんと、咲ちゃんのプラマイゼロは色んな能力の上で成り立ってたんだね」


咲「なんとしてでも、私にプラマイゼロをさせたかったんでしょうね。呪いは」


咲「どんな状況下でもプラマイゼロを成立させる為に、邪魔な対局相手の能力自体を消し去る……」



咲「それはつまり、私はアレを使う時、誰かを邪魔と認識する訳です。自分勝手な麻雀を打つくせにですよ?」


咲「つくづく、私は人と打つのに向いていませんね」クスクス


健夜「……」


健夜「……だから、私がいるんでしょ?」



咲「……!」


健夜「……」


咲「……」



咲「はい、そうでしたね」ニコ

健夜「うんっ」


咲「……」

咲「目は覚めましたけど、もう少しだけ、このままでいいですか」


健夜「もちろん」ニコリ


咲「ありがとうございます」



咲「……健夜さんの膝は、なんだか落ち着きますね」フフ


健夜「そ?ふふ、良かった」


咲「はいっ」ニコリ



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



みなも「うぅ……咲ぃ…」シクシク


咲「もう…泣かないでよ。いつでも会えるって」


みなも「いつでもって、ホントにいつでも……?」チラ



咲「……まあ、限度とかはあるけd」


みなも「やだあああああああ!毎日がいいの!」ワ-ワ-


咲「そ、そんなワガママ言われても困っちゃうよ」


みなも「むううう……」プク-


和「みなもさん、子供じゃないんですから」


みなも「子供ですぅー!わたし、まだ高一だから子供ですぅー!!」

みなも「だからワガママでもいいんですぅー!」



和(この場面、動画に収めて後で見せてあげましょうか……)



咲「分かった、電話ならいつでも掛けてきてもいいから、ね?」


みなも「……ほんと?」チラリ


咲「ほんとほんと。約束」ナデナデ


みなも「……うん…」コク



久(ほんと、咲の前じゃ人が変わるわね…)

健夜(咲ちゃん、みなもちゃんには優しいなぁ)ウラヤマシイ



透華「あの、宮永さ……いえ、咲……?」タッタッ



咲「龍門渕さん。体調は平気ですか?」


透華「ええ…。少し違和感がありますけれど、大丈夫ですわ」


咲「そうですか。良かった」ニコリ


透華「……ぅ…////」カァ



咲「……?」


透華「そ、その……」モジ

透華「本当に、感謝しますわ。ありがとう」


咲「……」


咲「えへへ、どういたしまして」フリフリ


透華「私は私の麻雀で、いつか原村和を追い越して見せますわ」


咲「それなんですけどね」


透華「……?」


咲「……いえ」

咲「応援してます。いつか、私とも打ちましょうね」スッ


透華「ええ、是非お願いしますわ」ギュ


健夜「じゃあ、行こっか。マホちゃんが待ちくたびれてるよ」


咲「お詫びになにか買っていかないといけませんね…」


みなも「うぅ……咲ぃ、ばいばい…」フリフリ

和「また会いましょうね」

久「あんまり小鍛治さんに意地悪しちゃダメよ~」


咲「先輩うるさいです。……原村さん、みなもの事をよろしくお願いしますね」


衣「今度は満月の夜に打とう!」

一「是非1回、ボク達の高校へ遊びに来てよ」



咲「長野に帰ったら、寄らせてもらいます」


透華「最高のもてなしをしますわ!」






咲「では、またいつか」フリフリ


透華「……ありがとう、咲」ニコ


【閑話・治水、カン!】

あんまり長い話が書けず、短くなってしまいました……
GW中に完結……できますかね?いえ、できません。
後は書き溜め中の3話くらいを書き終わり、投下して終わる予定なので、もう暫くお付き合いくださいっ。

作者「ごめんなさい、実は意識は戻っていましたの」
作者「……読者Cさん。私からも、お願いしますわ」
作者「私が目指すのは……ずっと、目指してきた作品は、あんな紛い物ではありません」
作者「私は、私の作品を書いて、先へと進みたいんですの」
読者C「……そう、ですか」
読者D「読者Cちゃん」
読者C「……良いですか?」
読者D「……」
作者「自分の作品が書けないのは、とても辛いです」
読者D「……分かってる」
読者D「いいよ。でも、私もコメ入れる」
読者C「ふふ、それはそれは。願ってもない事ですよ」ニコ
読者A「だが、すぐに作品を出せるのか…?」
読者B「問題ありませんわ…」
作者「先程から、出せ出せと煩いんですの」

【超番外・ふくすこインハイれでぃお】


~東京都・某スタジオ~

・BGMインハイレディオ



恒子「はい、今週も何故か始まりましたふくよかすこやかインハイレディオ!」


恒子「夜ふかしは良くないから、早く寝た方がいいぞ!」


健夜「いやいや、その通りだけどこの時間にラジオしてる身からしたら複雑だよ…」


恒子「スーパーアナウンサーにして、このラジオのスーパーメインパーソナリティ、福与恒子ですっ!」


健夜「同じく、パーソナリティの小鍛治すこ」

健夜「……ちょっとなにこーこちゃん、その、私もなにか肩書きを言えみたいな目は…私は恥ずかしいから言わな」



恒子「自称、世界最強アラフォー雀士小鍛治健夜でお送りします!」


健夜「アラサーだよ!!って、そんなの自称してないよ!!」


健夜「……コホン、小鍛治健夜でお送りします」


恒子「すこやん、今日は一段とキレのあるツッコミだね」


健夜「そんなキレ磨きたくないよ…磨かせないでよ……」ハァ


恒子「さて、この番組は!」



健夜「現在開催中のインターハイについて、様々な情報やトークを、ゲストの方を交えて展開する麻雀情報番組です」

健夜「……前回までは」


恒子「そう!前回までは、ココ重要だよ!」

恒子「既にインターハイは終わってるからね!ていうか、この番組も前回で終わったハズだったんですけど」


健夜「今日からこの時間に始まるハズだった番組が、1週先送りになった関係で番外編として一夜限りの復活……って、台本に書いてあるね」


恒子「復活とは言うけど、先々週に感動の最終回を迎えたばっかだよね?」


健夜「色々台無しになった感がすごい……」



恒子「まあけど、楽しくお喋りするだけでお金が貰える!こんな素敵なお仕事は他にはないし、不肖福与恒子、頑張らせてもらいます!」キラキラ


健夜「正直過ぎるよ!!」


恒子「そんなに褒められると照れるよすこやん」テレテレ


健夜「褒めてないよ……」



恒子「っと、そんなわけで!」

恒子「今夜も楽しく1時間半!リスナーの皆さんには付き合って貰えたらと思います!」


健夜「よろしくお願いします」




恒子「じゃあすこやん!今日はよろしく!」


健夜「えぇ……番外編なのに、いつもと同じスタイルなの?」


恒子「テンションMAXの私に進行を任せられるなら、私でも」


健夜「分かった、私がやるよ…」


恒子「へっへっへ、やったね」


健夜「もう……」

健夜「あ、えっと、"いつもと同じスタイル"というのを一応説明しておくとですね。」


健夜「私達2人は、ダブルMCってあまり得意じゃないので、毎回どっちが全体的に番組の進行をするか、決めてたんです」


恒子「この番外編では、それがすこやんに決定したって事ですね!」

恒子「ゲストに話を振ったりする役目もあるから、大変だったりする」ニシシ


健夜「まあ、インハイの実況ではこーこちゃんが喋りっきりだったし、今日くらいは任されるよ」


恒子「さっすがすこやん!太い!」


健夜「太いって言い方やめて!?ちゃんと太っ腹って……」

健夜「いや、この流れでその言葉使われるのも意味深に感じで嫌だけどさ…」


恒子「大丈夫。すこやん、あんまり太ってないから」ウンウン


健夜「そういう事言うから気になるんだよ!!」



スタッフ『カンペ』



健夜「……早く進行しろとのスタッフさんからの指令があったので、進めます」


恒子「相変わらず、流れをぶった斬るカンペだね」


健夜「えっと、さっきも説明した通りこの番組はインターハイの情報を伝えたり、その振り返りとかをするって趣旨なんですけど」

健夜「前回の最終回で、振り返りとかまとめまで全部終わっちゃったから、今回はゲストとのトークがメインだそうだよ」


恒子「あ、ゲストがいるんだ。最初の挨拶の所以外、台本真っ白だから何も分からない」


健夜「打ち合わせも無かったしね。どうやら、ゲストは誰が来るのか分からないサプライズ形式の方が面白そうって考えらしいけど…」

健夜「進行を任されてしまった私には、不安でしかないや……」


恒子「私はそういうアドリブ得意だから、楽しみだけどね」


健夜「恒子ちゃんはむしろ、アドリブが台本よりも長くなるからね」

恒子「女優とか目指してみようかな?」


健夜「アナウンサーにすら成り立てなのに、何を言い出すの!?」



恒子「顔もそこそこ良いし、愛嬌もある!イケそうじゃない?」


恒子「……すこやんとか」


健夜「いつの間に私の話してたのかな!?女優とか無理だよっ」

健夜「ていうか、別に良いけど、そこそこ良いって上から目線過ぎる!!」


恒子「あははっ、やっぱりすこやんのツッコミはこう、脳にビシッとくる快感があって堪らないね」


健夜「麻薬か何かかな私のツッコミは……」



健夜「はぁ……こんな序盤で体力を使い果たしてもなんなので、早めにゲストの子に来てもらいましょう」


恒子「おっ、いいねいいね!そうしよ!」


スタッフ『準備おっけーです』カンペ



健夜「準備も出来たそうなので……って、なんですか?……台本?」

健夜「あ、さすがに進行役の私にはちゃんとした台本が渡されるようです」


健夜「……良かったぁ…」


恒子「どれどれ……あれ、でもやっぱりゲストの名前の所は空白だね」


健夜「台本があるだけでも満足だよ」


健夜「それでは、今夜のゲストはこの人です!」


恒子「わくわく」



テ-テレッテ-レ-レ-



「……」テクテク



健夜「……え゛!?」

恒子「おおおお!!!!?」







「えっと……皆さん初めまして、こんばんは」





咲「ゲストとしてお呼ばれしました、健夜さんの地元茨城県で、健夜さんに麻雀を教わっている宮永咲です」

咲「完全な素人で、不慣れですが、よろしくお願いしますっ」



健夜「……」パチクリ


健夜「……ゆ、夢?」



恒子「まさかの咲ちゃん!!!よーこそ!驚いたよ!」

恒子「ほらほら、おねーさんの隣座って?」


咲「ふふっ、失礼します」スワリ


健夜「現実だ!!?」



咲「…健夜さん、呆けてないで進行してくださいよ」


健夜「そりゃ、呆けるよ……びっくりしたぁ…」


恒子「すこやんに内緒で来たの?」

咲「はい。スタッフの人に、秘密にしてくれって言われたので」クスクス



健夜「え、えっと、リスナーの方で知っている人は多分0に近いんじゃないかと思います」



健夜「私の地元、茨城県のつくば市にある高校の麻雀部で、私が麻雀を教えて……教えているというか、立場上コーチをしているんですけど」

健夜「そこの部員の、宮永咲ちゃんですっ」



健夜「ど、どうしてまた、咲ちゃんなのかな……」


咲「私が来たらいけませんでしたか?」ジト


健夜「そ、そんな事ないよ!そんな事ないけど……ねえ?」


恒子「台本に書いてあるんじゃない?」


健夜「あ、そうだ、その為の台本だったね」ナニナニ


健夜「えーっと……急な番外編の放送決定で、スケジュールの合う有名雀士がいなかった……」

健夜「随分適当な理由だね!?」


スタッフ『……』メソラシ



恒子「でも意外だなー。咲ちゃんとはちょっとしか話したことないけど、こういう場は得意じゃないと思ってたよ!」


咲「おっしゃる通り、あんまり得意ではないんですけど……」


咲「なぜか、ラジオ番組なら大丈夫な気がして。来ちゃいました」


健夜「別に、咲ちゃんは話すのが苦手な訳じゃないもんね」


恒子「ふむふむ!いいねいいね、なんだかやる気が出てきた!」


咲「いや、やる気は事前に出しておいてくださいよ」


健夜「あっ、私のツッコミが取られた」



恒子「……咲ちゃんのツッコミも、なんか気持ち良いかもしれない」ゾクゾク



咲「……」ジト


恒子「あー!冗談だよ!そんなじっとりとした目しないで?」



健夜「という訳で、今夜は宮永咲ちゃんと一緒に番組を盛り上げていきますっ」



咲「頑張ります」


恒子「ではでは!ここで一曲お送りします!!」


健夜「ちょっと整理もしたかったし、ナイスタイミングだよ…」


恒子「咲ちゃん、曲振りしてみる?」


咲「え、良いんですか」


恒子「もちろん!」


咲「……コホン、では、一曲お聞きくださいっ」


咲「橋本みゆきさんで、TRUE GATEですっ!」



恒子「おお、完璧!」



テレレレ-ンテレレ-ンテレッテテ-ンテレレ-♪
テレレレッテレッテテ-レ-レ-レ-テッテテッテッレ-ン♪


――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――



健夜「お送りしています、ふくすこインハイレディオ!」

健夜「メインパーソナリティ、そして今日の進行を務める小鍛治健夜です」


恒子『同じくメインパーソナリティの福与恒子!』


咲「ゲストの宮永咲です」



健夜「……こーこちゃん、どうしてメインパーソナリティなのに、スタッフ側に座ってるのかな?」


恒子『いや、今日はこっちのポジションの方が、色んな意味で面白いかなって』

恒子『スタッフの許可も取ってるから安心して!』グッ


健夜「安心できないよ!?」


スタッフ『……』カンペ



健夜「えっ、ホントにこのまま進行するの……?台本もそうなってる…?」

健夜「うわ、ホントだ!?」


恒子『あっはっは!頑張れすこやんー!』


咲「えっと……」


健夜(はっ…咲ちゃんが困ってる)

健夜(タダでさえ慣れてないんだし、私がしっかりしなくちゃ!)


健夜「あ、あはは……なんかごめんね、変な展開になっちゃって」


咲「いえ、別に。でも、こうして2人で話しているとラジオというよりか、普段通りみたいですね」クス


健夜「確かに。ああ、けど、リスナーさんからしたら見慣れない光景だよ絶対」


咲「あはは、でしょうね」


アシスタント(アシ)『一応、咲ちゃんについて話したら?』


健夜「それもそうだね……って、こーこちゃん完璧にスタッフと化してるね!?」


アシ『気にしないで!』


咲(なんか……この感じ、どこかで体験した事がある気がする…)ウッアタマガ


健夜「なんかまた変なボードが送られてきたよ……なになに」

健夜「……ああ、なるほど」


咲「なんですか?」


健夜「えっと、今から咲ちゃんにいくつか質問をしてくね?」

健夜「なんとなくの形だけでも、リスナーさんに知ってもらう為……らしい」


咲「分かりました」コク


健夜「じゃあ、一つ目。年齢は?」


咲「えっ、そんな所からですか……。15歳、高校1年生です」


健夜「麻雀は打てますか?」


咲「打てますね。一応、麻雀部なので」


健夜「好きな食べ物!」


咲「パフェとか、甘い物全般ですかね。あと、オレンジジュースが好きです」


アシ『スリーサイズ!』


咲「えっ」


健夜「こら!こーこちゃん!!オジサンみたいな質問するのやめて!?」


アシ『ちぇー。まあ、それは番組終わった後で個人的に測らせて……』フフフ


健夜「だ、ダメダメ!!絶対ダメだから!」


咲「ふふっ、待ってますね」


健夜「咲ちゃん!?」


咲「じょーだんですよ。もう質問は終わりですか?」


健夜「慣れてないとか嘘だよね…。えっと、好きな麻雀の役!」


咲「嶺上開花ですかね。七対子も好きです」


健夜「七対子?それはまた、どうして?」


咲「より良い待ちに手替わりさせやすいですし、なによりキレイです」



健夜「じゃあ二盃口も好き?」


咲「いえ、特には」

咲「健夜さんは好きですよね、二盃口」


健夜「えっ?」


咲「だってよく、一盃口を作るくらいならついでに二盃口も作れと」


健夜「言ってないよ!?」


咲「そうでしたっけ」


健夜「一盃口と二盃口とじゃ、難易度が違いすぎるよ…」


健夜「えっと、次ね。好きな雀士!(学生とプロ)だって」


咲「学生って、インハイや予選に出ていた選手とかって事ですよね」


健夜「そうだね」


咲「難しいです。皆さん、とても尊敬していますし」



アシ『じゃあその中でも、1番対局したい相手!』


咲「うーん……」

咲「迷いますけど、辻垣内智葉さんですかね。臨海女子の」


健夜(あれ、意外……)


健夜「どうして?」


咲「一緒に打てたら、得られるものが多そうだからですかね」


健夜(なるほど。能力に頼らないスキルって意味かぁ)


健夜「……じゃあ、プロは…?」


咲「……」カンガエ



健夜「……」チラッチラッ


アシ『ぷふっ、すこやん、ちらちら見すぎ!』アハハ


健夜「こ、こーこちゃん余計なこと言わないで!/////」



咲「健夜さんがアリなら健夜さんですけど、ナシなら野依プロですね」


健夜「え、えへへ。そ、そうなんだ!」ニコニコ


アシ『うわ、すっごい嬉しそう…』


アシ『野依プロかぁ。確かに、ちょっと咲ちゃんに似てるよね』


咲「えっ、そうですか?」


健夜「怒ってるようで実は怒ってないとことか?」


咲「……それは、褒められているんですかね?」


健夜「も、もちろん!!」コクコク

咲「なら、いいですけど」



健夜「質問はこんな所かな。……え、お便り?咲ちゃん宛て?」


アシ『仕事早い!!』


咲「お便り……なんだか、ラジオっぽいですね」


健夜「いや、ぽいじゃなくてラジオだからねこれ…」

健夜「それじゃあ、お便りが届いてるから読むね?」


咲「はーい」


健夜「R,Nエトペリカになりたかった人間さんから……」

アシ『エトペリカって、あれだよね。個人戦2位の原村和さんがいつも抱いてた……えっ、そういう意味?』


健夜「深く突っ込まないようにしよう……」

咲「気持ちは少し分かります」クスクス


健夜(咲ちゃん!?)


『すこやん、こーこちゃん。そしてゲストの宮永さんこんばんは!』


健夜「こんばんはー」

咲「こんばんは!」


『ゲストが誰なのかドキドキしていましたが、まさか巷で噂になっていたすこやんの教え子さんだったとは、驚きました』


健夜「私も驚きましたよ…ほんとに、何も知らされて無かったんですから」


咲「サプライズが成功したみたいで良かったです」アハハ



『さて、そんな宮永さんに質問なのですが、普段の小鍛治プロの意外な一面など、ありましたら教えてください』



健夜「っていうお便りなんだけど…」


咲「意外な一面ですか?」


アシ『私も知りたい!!』



健夜「あ、あんまり意外な一面とかは無いと思うんだけど」


咲「まず、世間一般での健夜さんのイメージがどんなのか分からないんですけど」



アシ『えっとね、くたびれた専業主婦みたいな感じ?』

健夜「へっ!?そ、そんなイメージないよね!?」


咲「専業主婦……?」


咲「あははっ、それは真逆ですね。健夜さんは料理も洗濯もお掃除も、ついでにご近所付き合いも苦手ですから」


健夜「前三つは認めるけど、最後のはどういう事かな!!」


健夜「ちゃんとご近所さんとの面識もあるよ…」


アシ『地元のスーパースターだもんね!』


咲「そうでした。つくばで知らない人はいない、超素敵な有名人ですもんね」


アシ『道を歩けば黄色い歓声!』

咲「道行く人にサインを求められる」



咲 アシ『「そんな女性ですもんね(だもんね!)」』



健夜「どうしてご近所の話から、そんな大規模な話に変わってるの……」


咲「冗談は置いておきまして、まあ、意外な一面とかはあんまり無いですかね」


咲「優しくて、良い人ですよ」


健夜「えへへ…ちょっと嬉しいかな」



アシ『くぅぅ!私も咲ちゃんみたいな子が欲しいいいい!!』


健夜「今の発言、ちょっと捉え方を間違えたらとんでもない発言だったよ!?」

咲「別の捉え方とは?」


健夜「えっ?あ、いや、それは……」テレ


咲「……?」キョトン



アシ『どこかにアナウンサー志望の可愛い女の子いないかな!いたら、このラジオのHPまで!』


健夜「公共の電波を利用して勧誘しないで!?」

アシ『へへへ、ごめんごめん』


咲(自由な番組だなぁ……)


健夜「じゃあ、次のお便り……咲ちゃん読む?」


咲「いいんですか?」


健夜「うん、これよろしくっ」つ

咲「分かりました」コク



咲「えっと、RN,いーぴん、さんからです」


健夜「ありがとうございますっ」



『すこやん、こーこちゃん。そしてゲストの宮永咲さんこんばんは!』


咲「こんばんはっ」


『すこやんに部活の顧問をしてもらっているということは、宮永咲さんも麻雀がお強いのでしょうか!』

『是非、3人で……こーこちゃんはアシスタントに徹しているので、2人でですかね?』

『今年のインターハイの感想を話し合って欲しいです!』



咲「……という事らしいです」


健夜「インハイの感想かぁ…」



咲「今更ですけど、ホントに私がゲストで良かったんですかね?」

咲「知名度とか、あったもんじゃないんですけど…」


アシ『心配ないよ!この回は世界観とか、そういうの無視でいいらしいし』


咲(世界観て……)


咲「なら、まあ気にせずにやりますけど」



健夜「今年のインハイは、とにかくレベルが高かったよね」

咲「そうですね…。素人の私から見ても、その事だけはヒシヒシと感じられました」


健夜(し、素人…?あんまり麻雀強くない設定でいくのかな)



アシ『印象に残った選手とか、対局とかある?』



健夜「私はやっぱり、個人戦の決勝卓かなぁ」

健夜「宮永照さん、原村和さん、神代小蒔さん、荒川憩さんの対局は、本当に熱かったよ」


咲「原村さんの成長ぶりには、私も目を疑いました。県予選や団体戦とは、別人のようでしたし」


健夜「あれで1年生だからね。先が楽しみだよ」


健夜「でもやっぱり、チャンピオンはチャンピオンだったね」


咲「おね……照さんは、ああ見えて勝ちへの執着が凄いですから」

咲「王座を守るために、その分努力も欠かしていなかったと思います」


健夜(咲ちゃん、もう素人の意見じゃないよそれ……)


健夜「咲ちゃんは?印象に残った試合とかある?」


咲「そうですね……。見た試合は全て印象深いですけど、その中でもAブロック準決勝の先鋒戦は、面白かったです」


健夜「あー……分かるな、それ」


咲「本当に、全体を通して得られるものが沢山あった大会でしたね」

咲「見に来てよかったです」


健夜「という訳で、お便りは以上ですね!」


咲「え?まだ結構な数残ってますよ?」



健夜「あ、の、残ってるけど時間の都合上、以上なの!」


咲「そうなんですか。残念ですね」


アシ『後で一緒に読も!』


咲「ふふ、お願いします」



健夜「急な番外編、そしてゲストにも関わらずお便りを送ってくれたリスナーの方ありがとうございました!」


健夜「以上、お便りのコーナー……あれ、コーナーいつ始まったんだっけ……」


咲「さあ?特にタイトルコールも無しに、自然と始まってましたね」


健夜「い、今のがお便りのコーナーでした!」


アシ『あははっ、相変わらず適当な番組!』ケラケラ


咲(ラジオ番組って、こんなに適当なものなんだ……)


――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【時は流れエンディング!】


恒子「ふぅ……1時間半、色んなコーナーとかあったけど、どうだった?」



咲「最初は不安でしたけど、とても話しやすくて楽しかったです」

咲「あんまり考えた事無かったですけど、ラジオのパーソナリティとか良いなって思いました」


恒子「おお!!なら、私が局に掛け合って話をしてみよっか!」


健夜「いやいや……新人アナウンサーにそんな権力ないでしょ」


咲「それに、私まだ高校生ですからね」アハハ


恒子「そっかぁ~…すこやんと2人で、ただひたすらトークする番組とか良さそうなんだけどな」

恒子「福与情報によると、結構評判良いみたいだし!」


咲「あはは…それは、出た甲斐がありましたかね」

健夜「福与情報って、さっきスマホ弄ってたのはSNS見てたからなんだね…」


恒子「That's right!」


健夜「仕事中なのに……」ハァ





恒子「そうそう、まだ夏休みだけど2人はなにか予定とかあるの?」


咲「予定ですか?」


恒子「例えば、海とか!」



健夜「海……」


咲「暑いの嫌です」

健夜「人混みがね……」


恒子「じゃ、じゃあ……お祭りとか!」


咲「暑いのが」

健夜「人混みが」



恒子「ぷ、プール!」


咲「まあ、プールくらいなら」

健夜「良いかもね」



恒子「この時期なら海も祭りもプールも、人混みは等しく凄いよ……」


恒子「すこやんが引き篭もりなのは知ってたけど、咲ちゃんもインドア派なの?」



健夜「私にだけ引き篭もりって言葉をチョイスしたのはどうして!?」


咲「そうですね…。あまり外に出掛けたりはしない方です」

咲「読書が好きなので、休みは麻雀を打っているか読書をしてますね」


恒子「へぇ~!ちなみに、家ではそのお下げ髪を降ろしてたり?」


咲「え?いや、特には…。家でも結んでる事が多いですかね」

咲「学校に行く時、時間が無かったりしたら結ばずに行ったりしますけど」


健夜(髪降ろした咲ちゃんも可愛いんだよね)


恒子「いーなー、女子高生…。私も戻りたい……」


咲「宿題とかありますよ?」


恒子「……宿題のない女子高生時代に戻りたい!」



健夜「そんなの無いよ!!」



咲「私は逆に、早く大人になりたいなーって思ったりします」


健夜「それは初耳かも」

恒子「大人になってもね……増えるのは顔のシワと責任と腰の痛みだけだよ……」


健夜「こーこちゃん、そんな事気にして」



恒子「って、すこやんがいっつも愚痴ってる」



健夜「私の話!?……って、そんな事愚痴ったことないよ!!」


咲「あはは、それは嫌ですけどね」



恒子「大人ってことは、すこやんに憧れてたりするの?」


咲「へっ?」

咲「……」


咲「えっ、誰に憧れるって言いました?」


健夜「その反応は予想してたけど酷い!」ガ-ン


咲「ふふっ、残念でしたね」クスクス

咲「もう少ししっかりしてくれたら、考えなくも無いですよ」


健夜「うう……頑張る…」


恒子(なんだろう……こう、ツンデレにしか見えない)



スタッフ『……』カンペ


恒子「っと、そろそろ時間だね」


健夜「なんだか、これまでで一番早く感じた回だったなぁ」


咲「貴重な体験をさせてもらいましたっ」



健夜「急に決まった番外編でしたけど、聞いてくれたリスナーの方に感謝です」

恒子「もしかしたら!すこやんと咲ちゃん2人の番組がその内始まるかもしれないから、その時は聞いてあげてね!」


健夜「絶対無いからね!?」


咲「そんな否定するほど嫌なんですか?」ムス


健夜「えっ!?いや、そういう意味じゃ」


咲「……べーっ」


健夜「も、もー!こーこちゃんのせいで咲ちゃんがむくれた!」


恒子「うわー、人に責任を押し付けた!咲ちゃん、こういう大人になったらダメだよ?」


咲「はい、反面教師にしようと思います」


健夜「最後の最後でどうしてこんな流れになったんだろう……」ズ-ン



恒子「それじゃあ、今夜のお相手は!スーパーミラクルアナウンサー、福与恒子と!」


健夜「咲ちゃんがいるから、この後は飲みに行けないよ、小鍛治健夜とっ」


恒子「ええ!?そんなぁ」



咲「今日はとても楽しかったです。えっと、ゲストの宮永咲でしたっ。……で、いいんですかね」


恒子「ばっちし!」



健夜「ではでは皆さん」



「「「おやすみなさい~!」」」




恒子「この番組は、東京ラジオステーションと、全国麻雀協会さん」

恒子「愛すべきリスナーのお前らの提供で、お送りしました!」



咲「お前らって……」フフ


健夜「もー!最後に爆弾投下しないで!?」




――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


~部室~



咲「っていう、夢を見たんですよ」


健夜「いやいや……ラジオのゲストで咲ちゃんを呼んだりしないよ…」


咲「そんな真面目に返されても。夢だって言ってるじゃないですか」


マホ「でもでも、とても面白そうですね!」

マホ「マホ、先輩が出るラジオとかあったら毎日聞きますです」


咲「ふふ、ありがと」


チャラリラ-ン


咲(メール?珍しいな、誰だろ)ピッ



咲「……」



マホ「でも、健夜さんの出てるラジオ、ちょうどそろそろ最終回ですよね~」

健夜「さすがに、インハイ終わってるのにあのラジオが続いても仕方ないからね…」

健夜「既に、ただのトーク番組と化してるし」

マホ「マホはあの雰囲気好きです!」

健夜「き、聴いてるんだ…。なんか恥ずかしいな」



咲「……そのラジオ番組って、いつが収録日でしたっけ?」


健夜「え?来週の土曜日だけど」


咲「……」



マホ「先輩?どうかしましたか?」


咲「…あはは、ううん、何でもない!」

咲「聴いておかなくちゃなって思って」フフ


健夜「恥ずかしいからいいよ!」


マホ「楽しみですね、先輩!」

咲「うん、楽しみ」



健夜「もー、やめてってばぁ~!」




【超番外編・カン!】

【後夜祭episode5,嶺上開花使いと運命奏者】


~後夜祭・対局スペース~



ネリー「カン」ボッ


穏乃(えっ、咲じゃなくてネリーさんがカン!?)

淡(へぇ~)


ネリー「リンシャンカイホー、6000オール」


咲「はい」チャラ



ネリー「ふふんっ」ドヤッ



淡「ムカつくなぁ、そのドヤ顔……」


ネリー「オオホシには負けるよ」

淡「どういう意味よこら!!」ウガ-



咲「あはは…」


穏乃「ねえ咲、今のは?」

咲「今のですか?」


淡「このチンチクリンの嶺上の事でしょ」


ネリー「……ねえ、もしかしてケンカ売ってる?」


淡「気付くの遅いね?」


ネリー「……」イラッ



穏乃「ま、まあまあまあ!同じ一年なんだし仲良くしようよ、ね?」


淡 ネリー「「無理」」



咲「そんな、私じゃない人が嶺上開花した時に、私の方を不思議そうに見られても困りますよ」

咲「私専用スキルじゃないんですから……」



穏乃(2人のケンカはスルーなんだ…)


穏乃「そうだけどさ?なんだか、咲を意識した嶺上開花に見えたから驚いて」



ネリー「まあ、サキを意識したからね」


咲「明らかに私がカンを狙うタイミングに被せてきましたよね」


ネリー「サキってば、目線のフェイクいれるからタイミングが図りにくくて難しかったよ」ムゥ


淡「どういう事?」


咲「えっと、ネリーさんを見てて「あ、私が嶺上する前にネリーさんも嶺上する気だな」って気付いたので」

咲「何度か視線でフェイク入れてたんですよ。まあ、全部躱されましたけど」



淡「……?」


淡「そんな事しなくても、和了れるなら和了れば良かったじゃん」



ネリー「それじゃツマンナイでしょ?」


ネリー「サキが、次に嶺上するぞ!って思ってる時に、ネリーが先に掠め取る方が楽しいじゃん」



淡「うわ、性格悪っ」ドンビキ


穏乃「よく分かんないけど、異次元だなぁ…」


ネリー「そうは言うけど、南場だったらネリーは嶺上出来なかったよ。多分」


穏乃「へ?」


ネリー「ネリーは別に王牌の支配で嶺上した訳じゃなくて、運を少し使って和了っただけだからね」


ネリー「それじゃあ、タカガモの支配には勝てないもん」

ネリー「サキならホームグラウンドだし、勝てると思うけどさ」


穏乃「は、はぁ…」クビカシゲ


淡「私だって、穏乃がいてもダブリーしてみせるし」ムス


咲(大星さんの能力も、相変わらず常識を卓越してるよね…)



憧「穏乃、ちょっと来てー」オ-イ


菫「淡、お前も少し来てくれ」



穏乃「あ、なんか呼ばれてるや」

淡「もぉー!対局中なのに……続きは後でね!」


淡「逃げたらダメだから!」ビシッ



ネリー「勝てる試合から逃げるとでも?」


淡「ぐぅぅぅぅ、ほんと腹立つ!!」プンスコ




穏乃「ま、まあまあ!ほら、行こうっ」

穏乃「じゃあごめん。後でっ」テクテク



咲「はい。楽しかったです」フリフリ


淡「べーっ!!」





ネリー「……」フゥ


咲「……」




咲「……ご飯」


ネリー「うん?」



咲「ご飯、しっかり食べてますか?」


ネリー「……なにさその質問…」



咲「あんな出会い方をしたんですから、心配にもなりますよ」



ネリー「前も思ったけど、サキはネリーのママみたい」ジト


ネリー「ママも、ご飯食べてるかーってよく電話してくるんだよ」

ネリー「ネリー、もうそんな子供じゃないのにさ」ムッス-


咲「お母さんの心配、バッチリ当たってるじゃないですか…」



ネリー「あ、あの時は特別だったの!だいたい、アレはタヴァンのせいだし…」

ネリー「普段はちゃんと食べてるもん。心配いらないよ」プイッ


咲「ふふ、そうですか。それなら安心です」ニコ


ネリー「まったく…。ネリーはサキよりも人生経験だって豊富なんだからね」

ネリー「ネリーからしたら、サキの方がお子様なんだから」


咲「はいはい、そうですね」クスクス

咲「ネリーさんは世界大会でも活躍してますし、凄く大人ですねー」ニコニコ


ネリー「なんか、言葉と裏腹に子供扱いされてるような……」ムゥ

ネリー「まあいいや。それはそうとサキ?」


咲「なんですか?」



ネリー「サキは、日本で世界ジュニアに出るつもりは無いんだよね?」


咲「ええ、まあ……」

咲「さっき、出る気は無いかと言われたんですけど、断っておきました」

咲「……心変わりしたらいつでも言ってくれと言われて、形式上保留みたいになっちゃいましたけど」


ネリー「ふぅん……」


咲「どうしてそんなことを?」キョトン



ネリー「不思議なんだよね。サキは、公式の大会に出てないとはいえ、勧誘が来るほどに実力は認められてる」

ネリー「この前話した時だって、世界に興味がありそうだったのに、どーして断るのさ?」


咲「どうして、と聞かれると返答に困りますね」


咲「うーん……どうしてなんでしょう?」


ネリー「特に理由もなく断ってたの?」


咲「……」フム

咲「……実は、私にもまだよく分かってないんです」


ネリー「……?」


咲「ずっと…それこそ、東京に来る前までは、私なんかが大会に出たらいけないって思ってて」


ネリー「……なんで?」


咲「詳しくは話す気になれないんですけど、ずっと昔。」

咲「私は、大会を台無しにしたんです」



ネリー「台無し……それは、全国規模の大会?」


咲「いえそんな。もっと小さな、地区レベルの大会です」


ネリー「……」フム



咲「その頃、一時期麻雀もやめてたんです。今でこそ、色んな人のお陰で普通に打てるようになりましたけど」


咲「そんな事もあって、私は大会には出ないって決めたんです。……いえ、誓ったって言った方がいいですかね」


咲「あの大会に出ていた子達、みんなに」



ネリー「それは、バカらしくない?」



咲「そう、なんですかね 」


ネリー「よく分かんないけどさ。そんなのじゃ、いつまで経ってもサキが救われないよ」

ネリー「何かに縛られて大会に出ない、出ようとしないなんて、違うと思う」



咲「……マホちゃんにも、同じようなことを言われました」


ネリー「そうでしょ?サキはさ、考えすぎだよ」



咲「だからこそ、分からないんです」


咲「私は東京へ来てから、世界の色が少し変わった気がします」



咲「失ったものをもう一度取り戻して。インハイでの色々な麻雀を見て」


咲「……大会には出ないと決めていたのに、今では出てみたいなと思うようになったんです」


ネリー「なら、出てみたら良いんじゃないの?」

ネリー「少なくとも、ネリーは世界でサキと戦えたら嬉しいよ」




咲「……ふふ。もし対戦する事になっても、その時はあの時みたいに甘やかしてあげませんよ?」クス


ネリー「とーぜん」

ネリー「ネリーだって、恩があるからって手を抜いてあげたりしないからね!」


咲「へえー、恩を仇で返すんですか?」


ネリー「えっ!?いや、そういう訳じゃ」アセアセ


咲「あはは、冗談ですよ」

咲「……ありがとうございます。なんだか、気が楽になりました」



ネリー「じゃあ、誘いを受けるの?」


咲「それはどうでしょう?ただ、考えてみようかなとは思います」


ネリー「……そっか」ニコ


ネリー「どうせなら、冬季大会とか春季大会にも出てきて欲しいな」


咲「うーん…それは難しいですね」

咲「私の学校、部員は私1人ですし」


ネリー「ああ、そういえばそうだっけ」


ネリー「個人戦はネリー達出られないしなぁ……ネリーが戦えないなら、別に出なくていいや」


照「勝手に決めないで欲しい」


咲「あ、お姉ちゃん」

ネリー「チャンプだ」



照「咲、ネリーさんと知り合いだったんだね」


咲「うん、まあ色々とあってね」


照「そう。……ネリーさん、少し打たない?」


ネリー「ネリーと?」

照「ずっと打ってみたいと思ってたけど、大会じゃ無理だったから」


ネリー「別に構わないけど…」

照「良かった。咲も入らない?」


咲「ううん、私は少し休憩中だから」フリフリ


照「そっか。……そういえば、みなもと一緒じゃないんだね」


咲「あぁ…。なんだか、マホちゃんと2人で色々話してるみたい」



照「なるほど。まあ、気が向いたら来て」

ネリー「ネリーもサキと打ちたいよ」


咲「ん、分かった。」コク


咲「……ふぅ」



咲「大会、か」


咲「……」ボ-ッ



晴絵「私は、出てもらいたい派だな」


咲「ふぁっ……!」ビク

晴絵「やぁ」


咲「あ、赤土さん」



晴絵「少し盗み聞きさせて貰ったよ」

晴絵「……まだ考える時間はたっぷりある」


晴絵「ただ、後悔しない道を選んで欲しいな」


咲「そう、ですね」

咲「わざわざ、それを言いに?」


晴絵「いやいや。やっと落ち着いて話ができそうだったからね」

晴絵「世間話でもするチャンスかなと思って」


咲「ふふ、嬉しいです」

咲「じゃあ、お話しましょうか」ニコ




―――こうして夜は耽ていく。世界大会出場について咲さんが返事を出すのは、そう、遠くない未来のこと。



【後夜祭episode5,カン!】

国麻については「国民麻雀大会」とも
「国際麻雀大会」ともいわれますけど、
「両者が別々に存在する」という説も
あるようですね(^^)

【episode4,誕生日だいさくせん!】


(都合上、一年前の物語です)

~咲、中学3年生・11月~




咲「え、健夜さんの誕生日?」


マホ「はいです!」


マホ「なんでも、11月7日…今週の日曜日らしいですよ!」


咲「へぇ~」ペラ


マホ「……」


咲「……」ペラペラ


マホ「……」


咲「……」ペラ



マホ「……えっ、それだけですか!?」


咲「えっ?」


マホ「えっ?は、マホのセリフですー!」


マホ「誕生日会とか、やらないんですか!」


咲「……誕生日会?」


マホ「はいっ!」


咲「って、誰の?」


マホ「えぇ!?健夜さんのですよっ!」


咲「健夜さんの……」フム


咲「ふっ…健夜さんのって……」


咲「小鍛治健夜27歳!…の誕生日を祝うの?」


マホ「へっ?お、おかしいでしょうか~?」キョトン


咲「おかしいって言うか…大人って、誕生日会なんてやるのかなーって」


マホ「あー……それは確かにです」


咲「ほら、27本のロウソクの火を消す健夜さん……ふふっ…」


咲「そ、想像できる?ふふっ、あははっ」クスクス


マホ「ふむ…ちょっとシュールですね…」


咲「ふふ…お腹痛い…」ナミダメ


マホ「なら、お誕生日会は無しですかぁ」


咲「ふぅ……」深呼吸


咲「でもまあ、偶にはそういうのも良いかもしれないね」


咲「健夜さんには、結構、それなりに、多少はお世話になってる訳だし」


マホ「!!」パァ


マホ「ですよね!!」ヤタ-ッ


咲「うん。良いんじゃないかな…たんじょ…ふふっ…」


咲「た、誕生日会…あはははっ!」クスクス


マホ「宮永先輩、笑いすぎですよー!」


咲「ごめんごめんっ…ちょっとツボで」フゥ


マホ(宮永先輩かわいい…)


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咲「誕生日会をやるにしても、今日は木曜日……」


咲「ひーふーみー…当日まであと3日しかないよ?」


マホ「はいです!なので、早速色々と決めちゃいましょう!」


マホ「折角ですし、サプライズにしたいですよね!」


咲「そうだね。まあ、健夜さんって鈍感だからちょっと気にしておけばバレる事はないと思う」


マホ「鈍感って、宮永先輩が言いますかぁ……?」ジト-


咲「え?」


マホ「いえ、何も!」



マホ「とりあえず、健夜さんには内緒の方向でっ」


咲「うん。なら、健夜さんが来る前に色々と……」


ガチャ



健夜「ごめんっ、ちょっと遅れちゃった」


マホ「す、健夜さん!!?」ビクッ


咲(ま、マホちゃん?動揺しすぎじゃないかな)


健夜「えっ、ど、どうしたの?」


マホ「い、いいいえいえ!何も隠してませんよ!?」アセアセ


咲(マホちゃん!?)


健夜「か、隠し?」



咲「健夜さん、遅いです。何やってたんですか?」


健夜「あ、咲ちゃん」


咲「お茶入れてきますので、待っててください」


健夜「自分でやるよ?」


咲「いえいえ、老体は労わらないと……じゃなくて、疲れたでしょう?座っててください」


健夜「突っ込んだ方が良いかな今の!?」ガ-ン


マホ「あ、ま、マホも手伝いますっ!」


咲「う、うん。ありがと」テクテク


健夜「素直に感謝しづらいよっ!」プンスカ




咲「ま、マホちゃん動揺しすぎ……隠し事苦手すぎでしょ」コソコソ

マホ「す、すみませんっ…突然だったのでっ」ヒソヒソ

咲「普通にしてれば気付かれないから……ていうか、少し鋭い人だったらもう放銃してたよ?アウトだったからね?」

マホ「は、はいっ…しっかり安牌だけ切っていきますっ」

咲(手牌に危険牌しか持ってなさそうだなぁ……)

咲「とりあえず、さっきの話は帰りにね」コソコソ

マホ「合点承知です!」ヒソヒソ

咲(……本当に大丈夫かなぁ)フアン






咲「はい、どうぞ」つお茶


健夜「ありがとー」


マホ「……」カチコチ


咲「……」ジト-


マホ「!!だ、大丈夫です!」


健夜「えっ」



咲「そっか。今日の小テストはいい点数取れたんだね」


マホ「へっ、小テスト……あ、はいです!」


咲(ダメだこりゃ…今日はボロが出る前に帰った方が良いね)


健夜「マホちゃん、さっきから何かおかしくない?」チラ


咲「そうでもないと思いますけど」


マホ「……」コクコク


健夜「いや、でも……」


咲「そうでもないと思いますけど?」ニコッ


マホ「!!」コクコクコク


健夜「そ、そう?」


健夜(凄い剣幕だ……)



咲「そんな事より、どうして今日は遅かったんです?」


マホ「そ、そうですよ!」


健夜「あ、そうだった。その事なんだけど」


健夜「今日のこの後からと、明日の放課後にこの部室……っていうか、旧校舎の点検を行うらしくて」


咲「あー…そういえば、先生も言ってたような」


健夜「それに伴って今日はもう部活お終いで、明日も部室の使用が出来ないみたいなんだ」


マホ「もし、重大な欠陥とかが見つかったら、取り壊されちゃうんでしょうか…」


咲「そしてそのまま麻雀部も……」


健夜「不吉な想像はよそうね!?大丈夫だから!」


健夜「……多分」


健夜「それで、どうしよっか?雀荘か、クラブチーム行く?」



マホ「マホは先輩に従いますっ!」


咲「……いえ、それなら逆に都合が良いです。私、マホちゃんに勉強を教える約束していたので」


咲「明日の放課後は、それをしてますよ。ね、マホちゃん?」


マホ「は、はい!宜しくお願いします!」


健夜「そうだったの?なら、丁度良かったのかな」


健夜「あ、なんなら私も一緒に」


咲「結構です」キッパリ


健夜「へっ?でも、私も多少なら教え」


咲「結構、です」ニッコリ


健夜「そ、そっか……」ショボン


咲(うっ…)


咲「か、代わりと言ってはなんですが、今度私に勉強を教えてください」


咲「頼りにしていますよ?」


健夜「!!」


健夜「えへへ…うん、任せてっ」ニコニコ


咲「……」ホッ


マホ「えっと、それじゃあ今日はもう解散で良いんでしょうかー?」


健夜「うん。待たせておいて悪いけど、そうなるかな」


マホ「了解です!」


健夜「私は、この部室の点検に付いてなきゃだから、もう少し残ってるね」


咲「分かりました、お疲れ様です」


咲「気をつけて帰ってくださいね。アラサーでも見た目は童顔高校生並なんですから、不審者に会わないように」

咲「あぁ、不審者でもちょっと"ゴッ"ってやればワンパンなので大丈夫でしたか」


健夜「普通に心配してくれても良いんだよ…?」



マホ「先輩なりの照れ隠しなんですよ!分かってるでしょう」アハハ


咲「べ、別にそんなんじゃ……」フイ


健夜「ふふっ…うんうん、分かってるよ咲ちゃん!」ニヤニヤ


咲「っっ……」


咲「か、帰るよマホちゃん!」スタスタ


マホ「はーいっ。では健夜さん、またです」フリフリ


健夜「うん、またね」フリフリ


咲「……べーっ」ベ-


健夜 マホ(可愛い……)


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【咲、マホ帰り道】



マホ「ふあぁ……、緊張しましたぁ」テクテク


咲「もー、私の方こそヒヤヒヤしたよ?」クス


マホ「隠し事って難しいです…」ムム


咲「あはは…まあ、気付かれなかったみたいだし結果オーライだね」


マホ「良かったですっ」


咲「…にしても………」ウゥ


マホ「どうしました?」


咲「……寒い」ブルッ


マホ「もう11月ですからねー。そろそろ冬も本番です」


咲「マホちゃんが入部してから、随分経つんだね……早いなぁ」


マホ「ですねー」



マホ「……」


マホ「マホ、宮永先輩には勿論ですけど、健夜さんにも凄く感謝していますし、とっても大好きです」


咲「……うん」


マホ「なので、日曜日は喜んでほしいです!」


咲「ふふっ、そうだね」ニコ


咲「なら、まずは何から決めよっか?」


マホ「んー…とりあえず、どこで開催するかーでしょうか」


咲「場所かぁ……」ウ-ン


咲「場所は部室で良いんじゃないかな?」


マホ「使えるならそれが良いと思うですけど、あの部室って一応学校の設備ですよねー?」


マホ「そういった事に使っても良いんでしょうか?」



咲「一昨年とか去年とか、クリスマス会……って言っても、ケーキ食べて麻雀やってただけだけど」


咲「とかやってたし、その辺りは心配しなくても大丈夫だよ」


マホ「クリスマス会!!」パアッ


マホ「今年はマホもやりたいです!!」


咲「あはは、分かってるけど今は誕生日会の事ね?」クスクス


マホ「そうでしたっ」テヘヘ


マホ「じゃあじゃあ、場所は部室で決まりですね!」


咲「時間は…お昼頃で良いのかな?」


マホ「というか、日曜は部活お休みですけど健夜さんの予定とか平気なんでしょうか?」


咲「あ、その辺も大丈夫。健夜さん、日曜は予定入れない人だから」


咲「……入れないっていうか、やる事が無いだけだから、連絡いれれば買い物とかは付き合ってくれるんだけどね」


マホ「へぇ~」



マホ「健夜さんって、本当に麻雀と宮永先輩の事しか頭に無いですよね……」


咲「そうだね」クスクス


咲「……」


咲「……うん?」イマナンテ


マホ「なら、場所は部室、時間はお昼頃に決まりですね!」


マホ「あ、マホあれやりたいです!飾り付け!」


咲「飾り付け??」


マホ「はい!ほら、テレビでよく見る…あの、折り紙の輪っかを繋げてるやつです!」


咲「あー、あれかぁ」


咲「……」


咲「……想像したら、大人の誕生日とは思えないほど可愛らしい光景が浮かんだよ」フッ


マホ「やっぱりちょっと子供っぽすぎますかね??」


咲「ううん、良いと思うよ。やろっか」ニコリ


マホ「ほんとですか!やりましたぁ!」ピョンッ



咲「ならさ、明日の放課後私の家来る?」


マホ「……へっ!?」


咲「そういう小物とかは早目に作っておきたいし、もう少し決めることもあるでしょ?」


咲「私の家じゃなくても、どこかのお店とかでも良いけど」


マホ「ご、ご迷惑じゃないですか?」


咲「あはは、そんな事ないよ」


咲「お父さんは多分お仕事で居ないから、誰にも気を使う事ないし」クス


マホ「2人きりですか……」ボソッ


咲「うん?」


マホ「い、いえっ!」アセ


マホ「えと、それならお邪魔したいですっ!」


咲「ふふっ、決まりね」


マホ(先輩のお家……)



咲「……っと、私こっちだから」ピタ


マホ「では先輩、また明日ですー!」フリフリ


咲「うん、気を付けて帰ってね」フリフリ


マホ「はいっ、宮永先輩も……」


マホ「あ、先輩!」


咲「ん?」クル


マホ「最重要項目を忘れてましたです」


咲「最重要項目……?」







マホ「誕生日プレゼント、決めてきましょう!!」



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【夜・咲宅】


咲「……」チャプ


咲「……はぁ…」グッタリ


咲「寒い日のお風呂は気持ち良い……」チャプチャプ


咲「……」


咲「誕生日プレゼント……、かぁ…」ブクブクブク


咲(健夜さんへのプレゼント……)


咲(…どうせあげるなら喜んで貰える物が良いよね……)ブクブク


咲「……」ブクブク



咲(若返りの薬、とか?)


咲「…ふふっ……んんっ!?」ブク


咲「けほっ、けほっ!…っつー……鼻にお湯入ったぁ……」ナミダメ


咲「うぅ…」ケホケホ


咲「…いけないいけない、ちゃんと考えなきゃ…」グス


咲「……うーん…」


咲「冬、かぁ」


咲「……よしっ」


界『おい咲、のぼせるなよ?』


咲「あ、うん。今出るよー」ザプン


咲「……って、わわっ!?」ツルッ


ザッパーン!



咲「あうぅ……」イタタ


咲(なんかお風呂に嫌われてる気がする…)グス



界(何やってんだ、咲のやつ……)アキレ


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【次の日・金曜日】

~咲宅~



咲「どうぞ、上がって?」


マホ「お、お邪魔しますっ!」カチカチ


咲「ふふっ、そんなに固くなることないよ」クス



咲「えっと、階段登って突き当たりが私の部屋だから、先に行っててくれる?」


咲「私、飲み物とお菓子持って行くから」


マホ「は、はいっ。分かりましたです!」


マホ「えと、お気遣いなくっ」


咲「あはは、なんか他人行儀」クス


咲「それじゃ、少し待っててね」テクテク




マホ「…えっとぉ…」カイダンノボリ


マホ(階段登って突き当たり……)キョロ


マホ(ここ、かな?)


ガチャ



マホ「失礼しま………」


マホ「……えっ」


雀卓「」



マホ「雀卓……?宮永先輩、お家に雀卓あったんだ…」


マホ(ホコリ被ってるけど、しばらく使ってないんでしょうか)


マホ「……」ジ-ッ


マホ「!!」ハッ


マホ(勝手に違う部屋に入ってしまいました!)スッ


キィ……バタン




マホ「えっと……こっちじゃなかったし、こっちでしょうか…」



『マホちゃーん!ココアで良いかな?冷たいのと温かいのあるけどー』オ-イ


マホ「あっ、宮永先輩と同じのでお願いしますー!」


『はーい、了解っ』


マホ(宮永先輩、家庭的です……)


マホ「ん」ピタ



¦さきの部屋!¦


マホ「……」



マホ「か、かか……」


マホ「可愛い……っ!」キュン


マホ(……てことは、こっちが宮永先輩のお部屋でしたか。関係ないお部屋覗いちゃって、反省です)


マホ「……」ピタ


マホ(先輩のお部屋……)


マホ「な、なんか緊張しますね…」ドキドキ



咲「あれ、マホちゃん?どうしたの、部屋の前で」テクテク


マホ「ひぁ!?」ビクッ


咲「う、うん?」


マホ「せ、先輩……」


マホ「いえ、何だか少し緊張しちゃって」エヘヘ


咲「ふふっ、何それ」クスクス


咲「えと、私両手塞がっちゃってるから開けてもらって良いかな?」つお盆


マホ「あ、そうですねっ!すみませんっ」


マホ「……ふぅ…」


マホ「では……失礼しますですっ」


ガチャ




~さきの部屋!~



マホ「……ふあぁ…」


マホ(これが先輩のお部屋……)



咲「あはは…一応片付けたんだけど、少し散らかってるかも」


マホ「そんな事ないです!なんていうか、宮永先輩って感じのお部屋ですね!」


咲「そ、そうかな…ちょっと恥ずかしいや」テレ


咲「…よいしょっと……」コト


咲「寒かったから、温かいのにしちゃったけど良かったかな?ココア」


マホ「あ、はい。ありがとうございますっ」


咲「いえいえ」クスクス


咲「適当に座って良いからね」ヨイショ


マホ「は、はいっ…」ポフ


咲「んっと、じゃあ早速だけど昨日決めた事も含めて、色々決めちゃおうか」


マホ「あ、そういえばそれが目的でした……。先輩のお家に来て、目的達成した気になってましたー」エヘヘ


咲「こらこら」クス


咲「って言っても、場所も時間も既に決まってるし、後は飾り付けの準備とかプレゼントとかの事決めるだけなんだけどね」



マホ「先輩、何にするか決まりましたか??」


咲「うん、一応」


咲「~~~にしようかなって思ってるんだけど…どうかな」


マホ「ホントですか!マホは、~~~にしようって思ってたんですよ!」


咲「ふふっ、考えてる事は一緒だね」クス


マホ「えへへ…はいです!」ニコ






咲「ふむ……」カンガエ


マホ「あの、宮永先輩」





咲「なら、明日一緒に買いに行かない?」

マホ「でしたら、明日一緒に買いに行きませんか?」




咲 マホ「「あっ……」」



咲「……また一緒の事考えてたね」クス


マホ「は、はい……/////」


咲「なら明日、お昼頃に駅前集合で良いかな」


マホ「分かりました!えへへ、楽しみですっ」


咲「うん、私も」ニコ


咲「よし、これでプレゼントも大丈夫っと……」


咲「後は、飾り付けの小物の準備だけだね」


マホ「それなんですけど、見てください!」ガサゴソ


マホ「じゃーん!ああ言うのって、折り紙で作るんですよねっ」


咲「おぉ…色んな折り紙がたくさん」


マホ「お母さんに聞いたら、使ってないのが沢山あるって、全部くれたんです!」


咲「よくこんなに余ってたね?」


マホ「一時期、とても折り紙にハマってた時期があったんですよー」


マホ「……すぐに飽きちゃいましたけど」エヘヘ


咲「あはは、なんかマホちゃんらしいね」クスクス


咲「よしっ。なら、後は作るだけだ」


マホ「はいです!気合入れて作りますよー!」


咲「……」クスクス


マホ「?どうかしましたか??」キョトン


咲「ううん、なんでもっ」ニコ


咲(なんだか懐かしいなぁ…)


――――
――――――――
――――――――――――


~数時間後~



咲「……これくらいかな」

咲「マホちゃん、そっちはどれくらい……」チラ

咲「あ…」

マホ「……んぅ…」ス-ス-

咲「……」

――――――――

『おねえちゃん!みなも、これだけしか作ってないのに寝てる!』

『しーっ、起こしたら悪いよ』

『んもぅ…お姉ちゃんを自称してるのに、私より先に脱落なんて!』

『んん…』

『!!』

『えへへ……さきぃ…くりすますぷれぜんと……』ムニャムニャ

『なんだ、寝言かぁ…』

『ふふ、よほど楽しみなんだろうね』

『……もう、仕方ないんだから』ナデナデ


『えへへ…けーきはわたしのものだよ…』ムニャムニャ


――――――――


咲「……」スッ


咲「……」ナデナデ


マホ「んん……」ス-ス-


咲「……」クス

咲「いつもありがとう、マホちゃん」ナデ


――――
――――――――
――――――――――――


マホ「んっ……」ムクリ

マホ「あれ…マホ、いつの間に…」


咲「おはよう、マホちゃん」ニコ


マホ「あぁ!!す、すみません先輩!!マホ、寝ちゃって!」アウアウ


咲「ううん、気にしないで?」クス


咲「寝顔、可愛かったから捗ったよ」ニコ


マホ「ふぇ!?/////せ、先輩何言って////」ボッ

マホ「あぅ……////」カァ


咲「という訳で、このくらいあれば足りるかな?」つ 飾り


マホ「は、はい……/////充分だと思うです!」


マホ「任せてしまって、本当にごめんなさいです」



咲「気にしなくて良いってば」フフ


咲「っとと、気付いたらこんな時間…」

咲「マホちゃん、時間平気?」


マホ「えっ、もうこんな時間ですか!?マホ、どれだけ寝てたんですか…」


咲「あはは、きっと疲れてたんだね」


マホ「すみません、ではそろそろ失礼しますですっ」


咲「あ、もう夜も遅いし送って行くよ」


マホ「そんな、悪いですっ」


咲「ううん、さっきお父さんが帰ってきてね。帰る時は車で送るからって」


咲「外、もう凍えるくらい寒くなってるから」



マホ「そうなんですか…」


マホ「すみません、ではお言葉に甘えます!」ペコリ


咲「大丈夫大丈夫、任せてっ」フンス




ガチャ



界「任せてって、運転してくのは俺なんだがな」


咲「ちょ、お父さん!入ってくるならノックして!あと立ち聞きしないで!」


界「ははは、悪い悪い」


咲「もう……」


マホ「ふふっ、仲が良いんですね」


咲「そんなんじゃないよ」フイ


界「咲も反抗期かぁ……夢乃さんだったか?今後とも咲を宜しくな」


マホ「お、お任せ下さいです!」グッ


咲「もうお父さんうるさい!!早く車出して!」プンスカ


界「おー怖。そんじゃ、行くぞー」


咲「まったく、お父さんはもう……」ハァ




マホ(お父さんに先輩を任されてしまった……)ドキドキ


――――
――――――――
――――――――――――


~マホ宅前~



マホ「本当にありがとうございましたです!」ペッコリン


界「いやいや、こちらこそウチの咲と遊んでくれてありがとう」


咲「お父さん黙って」ジロ


界「親に向ける殺気じゃねえ……」ソソクサ


マホ「宮永先輩も、今日はありがとうございましたっ」


咲「うん。また、いつでも来てね」


咲「それと、明日はお昼に駅前……で良かったよね?」


マホ「はいっ!土曜日まで宮永先輩と一緒だなんて、なんだか嬉しいです!」


咲「ふふっ、私もだよ」ニコ


咲「それじゃあ、外も寒いし…」


咲「おやすみ、マホちゃん」フリフリ


マホ「はい!おやすみなさい、先輩!」フリフリ



――――
――――



~咲、車内~



咲「……」ボ-ッ


界「なんだ咲、明日どっか行くのか」


咲「あ、うん。明後日、健夜さんの誕生日なんだ」


咲「だから、プレゼント買いにね」


界「そうか」クス


咲「……なに」


界「いや、今年もかと思ってな」ニヤリ

咲「……」


咲「……なっ!!?/////」カァ


咲「ど、どうしてそれを……っ!!?」


界「はは。去年までの、机の引き出しにしまってるんだよな?」


界「ふっ…咲、ちょっとは可愛い所あんじゃねえか」


咲「う、うるさいうるさい!!/////」


咲「別に、去年と一昨年のこの時期に買ったものを引き出しに隠してるからって、それが渡せなかったプレゼントとは限らな……」


咲「…あ……」


界「あぁ、やっぱ去年までは買ったけど渡せて無かったのか」


咲「ち、ちがっ/////今のは、言葉の誤というかっっ/////」


界「はいはい、そうかそうか。明後日にまとめて渡せると良いな」アハハ


咲「~~~~ッッッ!!/////」カァ




咲「違うからぁぁぁぁぁ!!!!/////」



――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――――――――――


【次の日・駅前】


ワイワイ
ガヤガヤ




咲「ん…」キョロ


咲(少し早く着いちゃったかな?)


コチラフユモノセ-ルヤッテマ-ス!
イラッシャイマセ-

ガヤガヤ
ワイワイ


咲「やっぱり、駅まで来ると人凄いなぁ……学校の方とは大違い…」


咲「そういえば、冬物のチラシ入ってたっけ…人が多いのもその影響かな…」


咲「……ふぅ」ホゥ

咲(マホちゃんと2人で出掛けるのって、久しぶりだなぁ)

咲(なんだか人多いし、迷子だけにはならないように気をつけなきゃ)グッ


咲「……」



「えいっ!」スッ


咲「わっ!?」ビクッ


「ふふっ、だーれだ♪ですっ」メカクシ-


咲「び、ビックリしたぁ…」




咲「もう、マホちゃんでしょ?」クス


マホ「お見事!正解ですーっ!」ニッコリ


マホ「こんにちは、宮永先輩♪」


咲「うん、こんにちはマホちゃん」


咲「急に目隠しされるから、驚いたよー」ム-


マホ「えへへ…無防備でしたから、ついイタズラしちゃいましたっ」



マホ「すみません、待たせちゃいましたか?」


咲「ううん、私も今来た所だから、気にしなくて平気だよ」ニコ


マホ「ほっ…それなら良かったです」エヘヘ


咲「って言うか、まだ約束の時間の20分前だね」


マホ「ホントですね…」


マホ「マホ、なんだか気が急いじゃってちょっと早く来ちゃいました!」


マホ「マホの方が早いかなって思ってたですけど、宮永先輩の方が先に居てビックリしちゃいましたよー」


咲「あはは…私も、待ちきれなくて」クスクス


咲「とりあえず、今日1日もよろしくね?」


マホ「はい!こちらこそ、今日はよろしくお願いします!」ピョン



マホ「……あっ…」ジ-ッ


咲「ん、どうかした?」ハテナ


マホ「宮永先輩の私服姿、素敵ですっ!」キラキラ


咲「えっ…?」


咲「そ、そうかな」テレ


マホ「はいっ!いつもは制服姿ですし、なんだか目新しさも相まってとっても素敵ですねっ」


咲「もう、マホちゃん…そんなに見られると恥ずかしいよ…///」テレテレ


マホ(可愛いです……)


咲「マホちゃんの方こそ、その服似合ってるよ?」


咲「なんだか、取って付けたような褒め方になっちゃうけど、ほんとに!」


マホ「えへへ、ありがとうございます!」テレ


マホ「でもマホ、私服姿だと高確率で小学生と間違えられちゃうんですよね…」ショボン


咲「……あー…」ナルホド


咲(確かに…これは小学生にしか見えない、かも…)



マホ「今の『あー…』は、宮永先輩もそう思うって事ですか!?」ガ-ン


咲「あっ、いや、うーん…」カンガエ


咲「ま、まあ…実際に、去年までは小学生だった訳だし…ね?」アセアセ


咲「ほら、年老いて見られるよりは若く見られる方が良いし…うん、そういう事だよっ!」


マホ「フォローになってませんよぅ…」


咲「あはは…でも、私はそんなマホちゃんも好きだよ?」ニコ


マホ「……」


マホ「へっ?」


咲「よしっ、それじゃあいつまでも立ち話してるのもなんだし、そろそろ行こっか?」チラ


マホ「……/////」プシュ-


咲「おーい、マホちゃん?」ツンツン




マホ(宮永先輩、狙ってるのか天然なのかどっちなんでしょうか…/////)カァ


――――
――――――――
――――――――――――


~ショッピング街~


マホ「にしても先輩、今日はまた随分と盛り上がってますね~」キョロキョロ


咲「うん。色々とセールなんかがやってるみたいだね」

咲「あとは、子供向けアニメのイベント?が、近くでやるみたい」


マホ「そういう事ですかぁ…道理で、子供連れの人が沢山来てるわけですねー」


マホ「健夜さんに良さそうなのが、見つかるといいんですけど~」


マホ「……」



マホ「……?先輩??」チラ




咲「あ、あの…困ります…」オド


店員「そんな事言わずに!試着だけでもどうですかー?」


店員「すっごく可愛いし、きっと似合うと思いますよ!」


咲「えっと……」




マホ「ちょ、先輩何やってるんですか!」


マホ「少し目を離した隙に……目を離した……?」


マホ(あれ、マホ先輩から目なんて離しましたっけ……?さすが、先輩のミラクル迷子癖です)




咲「あ、マホちゃん」ホッ


店員「お友達?恋人さん?わわっ、どっちにしても可愛い!」


店員「よかったら2人で……」


マホ「すみません、私たち急いでますのでっ」


マホ「行きますよ!先輩っ」つ 手

咲「う、うん…っ」ギュ







店員「行ってしまった……」

店員「はぁ、私も可愛い恋人が欲しいなぁ……あ、いらっしゃいませーっ!」

――――
――――――――
――――――――――――


マホ「…まったく先輩ってばぁ」マッタク


咲「うぅ…」


咲「だって、声掛けられて」


マホ「店員さんに声掛けられて全部に応えてたら、日が暮れちゃいますよっ!」


咲「で、でも、なんだか断るのが申し訳ないんだもん!」


マホ「……もう」クス

マホ「先輩のそういう優しい所、マホは大好きですけどね」ニコリ


咲「ま、マホちゃん」テレ


マホ「けど、今日は声を掛けられても興味が無かったらスルーしてくださいねっ!」


マホ「さっきは目につく場所に居てくれたので大丈夫でしたけど、この人混みで先輩の迷子スキルが発動したら……」


咲「したら……?」ゴクリ


マホ「おっきなメガホンを買って、先輩の名前を叫びながら探さなくてはいけなくなるかもです」


咲「それはかなり恥ずかしい……」


マホ「あはは、なーんてっ!」クス


マホ「マホ、もう先輩から目を離しませんから、安心してください♪」


咲「まあ、私だってそう頻繁にハグれる訳でもないしね」フラグ


マホ「……でも、やっぱり心配ですので」ギユ


マホ「手は、繋いだままにしてましょう」ニコリ


咲「えぇ……」

マホ「むっ……マホではご不満ですか??」



咲「不満って言うか…二つも下の子に手を引いてもらうのはどうかなーって」アハハ…


マホ「大丈夫ですよ!みんな、仲のいい姉妹だなーとしか思いませんから!」


咲「そうかなぁ」ウ-ン


マホ「そうですそうです!」

咲「なら、良いけど…私も繋いでた方が安心できるし」


マホ(良いんですか!)ヤタ-ッ


マホ「ではでは、気を取り直してお買い物ぞっこーです!」オ-


咲「うんっ!」

――――
――――


~だいじぇすと!~

【〇〇ショップ】


?「ハァ…ハァ……」

?「ペロペロ」

咲「わっ…ちょ……」


咲「ま、マホちゃん助けてっ」

マホ「ふふっ、先輩!ピースしてください、ピース!」カメラモチ-

咲「ええっ!?そ、そんな事言われてもっ……やぁっ/////」

咲「写真撮ってないで助けてぇ……っ////」

?「ぺろぺろ」ハァハァ

咲「ちょ、んっ…どこ舐めてぇっ…あははっ、くすぐったいってばぁ!」キャ-




マホ「……なんだか、イケナイ事をしてるみたいです…」

店員「そうですね…なんかこう、クるものがありますね」

マホ「分かりますか」グッ

店員「分かります」グッ


犬「ハッハッ…わんっ!ぺろぺろ」ペロ

咲「ま、マホちゃぁぁん!!」キャ-


【ざっかや!】


マホ「わぁ、先輩その髪留め可愛いですっ!」

咲「そ、そうかな……////」←髪留め咲さん

マホ「写メ!写メ撮っても良いですか!?」パシャパシャ


咲「も、もう撮ってるよね…」アハハ


咲「でも確かに、いつもは髪留めとかしないし、少し新鮮かも」

マホ「ふふっ、この写真は待ち受けに……♪」ニコニコ


咲「ちょっ、それは恥ずかしいからやめてよー」

マホ「え~?良いじゃないですかぁ!」


マホ「誰にも見せませんからっ!ねっ?」


咲「うぅ…ま、まあ、それなら良いけど…」


マホ「やたっ♪」


マホ(というか、この可愛い先輩はマホだけで独り占めしたいですし、誰にも見せませんけど)


【ケータイショップ】


咲「これがけーたい?」つスマホ


マホ「はいっ。それはスマホですね~」


咲「……すまほ??じゃあ、けーたいじゃないんだ?」


マホ「いえ、ケータイですよ?」


咲「え?でも、すまほって言うんだよね…?」


マホ「ふっ……で、ですからケータイですね」プルプル


咲「でも今すまほって……けーたい…すまほ……」

咲「う、うーん……?」アウアウ


マホ「えっとぉ……(先輩、本当に機械に弱いです…)」



マホ「先輩が知ってるケータイは、折り畳み式のやつですか?」


咲「え?うん、お父さんが使ってるの見たことあるから、知ってるんだ」フンス


マホ「それを世間一般では、ガラケーと呼ぶんですけど…」


マホ(はっ、しまった!!)


咲「が、がらけー?それは、すまほともけーたいとも違うの……?」


マホ「い、いえ!ガラケーもケータイで合ってるんですけど、えっと」アワアワ


マホ「あうぅ…」


咲「ご、ごめんねっ?私の物分りが悪くてっ」アセアセ


マホ「そんなっ!マホの方こそ、上手く説明出来なくてごめんなさいですっ」アウアウ


咲「高校入ったらケータイ持たせてくれるらしいけど、この調子じゃあ使いこなせそうにないなぁ」アハハ…


マホ「!!」ヒラメキ


マホ「で、でしたら、もし良ければマホと同じ機種にしませんか?」


咲「えっ?」


マホ「あ、えっと…お、同じのでしたら使い方を教えてあげやすいですし!」


マホ「そ、それと……その」モジ

マホ「お揃いとか、良いな~……なんて」チラ


マホ(勢いで言っちゃいましたけど、図々しい事だったでしょうか…)


咲「……」カンガエ


マホ「すみませんっ、心の片隅に置いて置いて貰えたら」


咲「……それ」

マホ「は、はいっ!?」ビク


咲「それ、ナイスアイディアだね!即採用だよっ!」


マホ「えっ……ほ、本当ですか!!?」バッ


咲「うん。1人じゃ絶対に使い方覚えられないし……」


咲「私も、マホちゃんとお揃いって良いなって思ったから」ニコリ


マホ「やりましたぁ~!(何事も提案してみる物です!)」ピョン


マホ「約束ですよ!先輩♪」


咲「うん、約束ね」ニコ


キャーキャー
イチャイチャ



店員「始めは、先輩ちゃんが攻めかと思いきや…」

店員「まさかの機械オンチ!やば…ギャップで死にそう……」ガハッ

店長「お客様をその汚れた目で見るのやめなさい」ゲシッ

店員「痛い!すみません!」

店長「……でも確かに…茶髪の子は意外と押しに弱そうね」ポツリ

店員「声、出てますけど」ジト

店長「はっ……!」クチフサギ-



【麻雀道具屋】


咲「見てこれ、ガラスの牌だって」


マホ「わぁ…凄いです!」

マホ「今はこんな種類の牌が売ってるんですね~」ホエ-


咲「他にも、黒牌とか竹牌とかあるね…うわ、高いなぁ…」


マホ「こういう特殊な牌って、どんな場所で使われてるんでしょうかぁ~?」


マホ「特に黒牌なんて、見にくくてマホ到底使えそうにありません」

咲「うーん…大会とかでは、オーソドックスな普通の牌を使ってるし」


咲「やっぱり、趣味で集めてたり、身内で打ったりする人とかが買うんじゃないかな」


マホ「ほえ~…一度こういう牌で打ってみたい気もしますけど…」


マホ「って、よく考えたらガラス牌って自分の手牌が相手に筒抜けじゃないですか!」


咲「それこそ、コレクションくらいしか用途が無いよね」アハハ


【買い物しゅうりょう!】


~小さなカフェ~



マホ「へぇ~……こんな所に、こんな素敵なお店あったんですね~」オオ


咲「ふふ、そうなの。唯一、行きつけって呼べる位は来てるお店なんだ」


マホ「へぇ!という事は、健夜さんも??」


咲「どうして健夜さんが結びつくのか、非常に遺憾ではあるけど……まあ、その通りかな」


咲「私が1年の時健夜さんに連れてきてくれて、それ以来ね」


マホ「なるほどぉ……」ニコニコ


咲「す、健夜さんの事はいいからっ!中入ろっ」スッ


マホ「えへへ、はーいっ」


ガチャ

カラン♪カラン♪




店員「いらっしゃ……」


店員「あれれぇ、咲ちゃん~!」ポワポワ


咲「どもです」ペコ


店員「いらっしゃぁい!元気してましたかぁ~?」ニコニコ


咲「まあ、そこそこですかね」


店員「今日も咲ちゃんは可愛らしいですねぇ~」ニヘヘ


店員「ってあれぇ~?今日は健夜ちゃんと一緒じゃないんですかぁ~?」


咲「別に、いつも健夜さんと一緒という訳では無いですし……」ムゥ


店員「そうです~?いつも夫婦のようにセットで来てる気がぁ……」


店員「って、わぁ!なんですかぁ~、そこの可愛い子はぁ~!」キラキラ


マホ「は、初めましてっ」


店員「初めましてぇ~!あ~もしかして、咲ちゃんデートだったりぃ……?」


マホ「でっ……!?/////」カァ


咲「まあ、そんなところです」フフ


マホ「先輩!?/////」


店員「わぉ……咲ちゃんも罪な女の子だねぇ~」クスクス


マホ「あぅ……/////」テレテレ


咲「ふふ、冗談はこのくらいで。この子は部活の後輩です」


マホ「も、もう……先輩、からかわないでくださいです…っ////」プンプン


咲「えへへ、ごめんごめん」ペロ


店員「だいたい予想はついてましたよぉ~。咲ちゃんがここへ一緒に来る人って、健夜ちゃんか……」


店員「例の、"可愛い新入部員"ちゃんだけかなぁ~って思ってましたからぁ~」


マホ「ふえ?」キョトン


店員「あなたが夢乃マホちゃんですよねぇ~?お話は、2人からたくさん聞いてますよぉ♪」


店員「確かに、すごく可愛い子ですねぇ~」


マホ「え、えっと……ど、どういうことでしょうか…」オロオロ


咲「ちょ、ちょっと余計な事言わなくても」


店員「咲ちゃんと健夜ちゃんってばぁ、少し前まではこのお店にくる度に"可愛い新入部員"ちゃんのお話ばかりしてましたからぁ~」


店員「2人ってば、自分たちの娘の話をするみたいだったんですよぉ~」クスクス


マホ「それでマホの事を……」フムフム


マホ「えへへ、なんだか恥ずかしいです////」チラ



咲「ま、まぁ……私達だって、マホちゃんが入部してくれて嬉しかったし…」プイ


マホ「先輩……!」パァ


咲「も、もうこの話はおしまい!!/////」


咲「というか、早く席に案内してくださいっ。またマスターさんに叱られますよ?」


店員「あ、そういえば2人ともお客さんでしたぁ~」


咲「この人は……」ハァ


店員「それでは、こちらへどうぞぉ♪」


咲「相変わらず、お客さんがいませんねこの時間のこのお店は」


店員「落ち着いた雰囲気で良いですよねぇ~?」フフ


マホ(そういう言い方もありますね…)


店員「では、このお席へ~。ご注文決まりましたら、お呼びください~」ペコリ


咲「……もう、あの人は本当に」プンプン



マホ「この時間のこのお店は…という事は、別の時間帯は盛況なんですか??」


咲「ん?あぁ、ここって夜になると喫茶店からバーに変わるんだよね」


マホ「ばー??」


咲「大人の人がお酒とか飲むとこ。だから、夜の時間帯によく人が集まるんだよ」


咲「勿論、喫茶店の常連さんもいるけどね」


マホ「なるほどぉ……」


咲「とりあえず、何か頼もっか?ここのメニュー、なんでも美味しいから迷っちゃうんだ」フフ


マホ「それは!マホ俄然楽しみになってきました♪」ワクワク


マホ「……」ハッ


マホ(な、なんだか…本当に、で、デートみたいでドキドキします……/////)


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マホ「ご馳走さまでした!」


咲「やっぱり、ここのモンブラン美味しいなぁ…」シアワセ


マホ「マホもこのお店、ハマっちゃいそうです」エヘヘ


咲「ふふ、それは良かった」ニコリ


マホ「なんと言っても、ケーキ以外にメロンパンまで置いてある所が」


マホ「……………………あ」


咲「??どうかした?」


マホ「せ、せ、せせせせせ、先輩!!!!」ガタッ


咲「ぅわわっ!!」ビクッ


咲「な、なに……?」



店員「あら~?なにか、問題がありましたかぁ…?」テクテク


マホ「ま、マホ……大変な事に気がついてしまったです…」


マホ「すみません…これは、マホの失態です…。途中から、先輩とのお出かけをメインに楽しんでしまった、マホの……」ガックシ


咲「マホちゃん、とりあえず落ち着いてっ?」アセアセ


店員「そうですよぉ~。まずは深呼吸してみましょぉ~」


マホ「あ、は、はいっ……」


マホ「すぅ……はぁ……」シンコキュ-


マホ「ふぅ…すみません、取り乱してしまいました…」オチツキ


咲「落ち着いた所で、どうしたのか教えてくれる?」


マホ「はい……」



マホ「先輩…マホ達が今日一緒にお出かけをした理由、覚えていますよね…」


咲「え?そりゃ、勿論……覚えてるよ?」


マホ「今、ケーキを食べていて思い出したんですけど…」






マホ「誕生日会なのに、肝心のケーキがありませんです………っ!!」


咲「…………………………」


咲「あっ」


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マホ「ど、どど、どうしましょう!?今から買いに戻るには少し時間が……」


咲「まずったなぁ…ごめん、プレゼント買ってすっかり安心してたよ…」


マホ「そんな!マホが今日の目的を忘れかけていたのが悪いんですっ……」


咲「どうしよ…この辺りにケーキ屋さんなんて無いし…家で作るにしても、時間と材料が……」


店員「誕生日会ですかぁ~?2人とも、誰かへのプレゼントを買いに出かけていた訳ですかぁ~」ナットク


咲「忘れたんですか?明日、健夜さんの誕生日ですよ」


店員「健夜ちゃんの……?」ハテ


店員「あぁ~!確かに、そうでしたねぇ~!最近はお祝いをしていなかったので、忘れていましたぁ~」


咲「中学からの付き合いのアナタがそんな事で良いんですか…」


店員「だってぇ、最近の健夜ちゃんは年齢の話に過敏ですからぁ~」


咲「あぁ、納得しました」ナルホド


マホ「へ?お姉さんと健夜さんって、前からのお友達だったんですか??」


マホ「確かに、健夜さんをちゃん付けで呼ぶ方は珍しいとは思ってましたけど…」


店員「お友達……うぅん、まあ、そんな所ですか~?」


店員「私、実はこのお店のマスターの娘で中学の頃からお手伝いをしていたんですけどぉ~」


店員「その頃から、ちょくちょく健夜ちゃんが1人で来てたんですよぉ~。それで、そのまま知り合って~って感じですかねぇ~」


マホ「へぇ~…健夜さんの学生時代のお知り合いって、あまり聞いたことが無かったので驚きです」


店員「だから、健夜ちゃんが初めて咲ちゃんをこのお店に連れてきた時は、私もびっくりだったんですよぉ」


店員「中学時代から、一度だって誰かと一緒に来た事なんて無かったですからぁ~」ニコニコ


咲「友達が居なかったんですね。可哀想です……」


咲(まあ、私が言えた事じゃないか)ハハハ…


マホ「ほえぇ…」


マホ(健夜さんも健夜さんなりに、先輩との事を頑張っていたんですね…)フフ


マホ「って、今はそれどころではありませんでした!!」ハッ


咲「だね…どうしよっか、ケーキ無しの誕生日会っていうのは……さすがにねぇ…」


マホ「はい……格好がつきませんです…」ウ-ン


店員「……」フム


店員「それならぁ、ケーキはここの店のをホールで持って行ってください~」


咲「え?いや、でも、ここのお店持ち帰りはしてないんじゃ…」


店員「今回は特別案件という事でぇ~。私も、健夜ちゃんの誕生日をお祝いしたいですしぃ」


店員「それに丁度、新作ケーキがあるんですよぉ。咲ちゃん達さえよければ、私からのプレゼントって事で持って行ってください~」


マホ「それは願ってもいないチャンスですけど…本当に良いんでしょうか…?」


店員「……本当の事を言いますと、ですねぇ。お2人には、恩返しをしたいんですよぉ」


店員「勿論、プレゼントとしてっていうのも含まれてますけどぉ~」


咲「恩返し、ですか?」


店員「咲ちゃんも言ってましたけどぉ、健夜ちゃんって昔は今みたいなツッコミキャラじゃなくて、どっちかと言うと暗い女の子でぇ友達も少なかったんですよぉ」


店員「いや、少し違いますねぇ~。あんまり人と関わりを持たなかったと言うべきでしょうかぁ~」


マホ「今の健夜さんからは、あんまり想像できませんです…」


咲「……」


店員「知っての通り、高校で麻雀を始めて凄く強くなってからもぉ、全然笑わなくてぇ何を考えてるか分からない子でしたねぇ~」


店員「根は優しい子だって事は知ってましたけどぉ」フフ


咲「……それで、恩返しとは?」


店員「端的に言うとぉ、東京のチームを出て茨城に帰ってきて、咲ちゃん達に出会って」


店員「健夜ちゃんは、よく笑うようになりましたぁ。とても楽しそうです~」クスクス


マホ「そうなんでしょうか…?」


店員「そうなんですよぉ。少なくとも、私はそう感じています~」


店員「なのでぇ、健夜ちゃんをありがとう。これからも宜しくお願いします」


店員「……っていう意味も込めてぇ、プレゼントしたいなぁって、そういう意図ですぅ~」



咲「……そうですか」


咲「でしたら、お言葉に甘えさせて貰います。有難うございます」ペッコリン


マホ「あ、ありがとうございますです!!」ペッコリン


店員「いえいえ~。今日はマホちゃんの事も紹介して貰いましたし~、これ位はさせてください~」ニコリ


店員「それじゃあ、少し待っていて貰えますかぁ~?包装して持ってきます~」


咲「はい。待ってます」


店員「~~♪~~♪」テクテク



マホ「とても素敵な方ですね、先輩」


咲「うん。あの人から見た健夜さんはきっと、私から見たマホちゃんみたいな感じなんだろうね」クス


マホ「ほぇ?どういう意味ですか??」


咲「一番身近な、大切な友達……私の場合は後輩、かな」


マホ「先輩……嬉しいです…っ」


咲「あぁ、でも一つあの人と私の違うところ」


マホ「??」キョトン


咲「私は、私の手でマホちゃんを笑顔にするよ。他の人には頼らない」


咲「……ねっ?」ニコッ


マホ「せ、先輩……/////」カァ


マホ「そ、それじゃあ……マホの顔を曇らせないでくださいねっ、宮永先輩?」


咲「ふふ、任されましたっ」クス


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店員「それじゃあ、これケーキですぅ~。健夜ちゃんにおめでとうって伝えておいてください~」つ箱


咲「ありがとうございます。……にしても、本当に無料で貰っちゃって良いんですか…?」


店員「大丈夫ですよぉ~?後で3倍にして請求とか、そんな事しませんから安心してください~」


咲「あなたが良くてもマスターが……」


店員「お父さんならぁ、健夜ちゃんの名前を出しただけで即OKを出しましたよぉ」クスクス


咲「そういえば、どうしてか健夜さんに甘々でしたね、マスターは」


店員「そういう事ですぅ~♪」


咲「それじゃあ、私たちはそろそろ失礼します」


マホ「ケーキ、本当にありがとうございました!ここのお店とっても素敵なので、また来ますです!」


店員「あらぁ~嬉しいです~!焼きたてメロンパン置いて待ってますねぇ~」ニコリ


マホ「明日にでも来ます!!」ヤッタ-


咲「いやいや…明日は誕生日会あるからっ」


マホ「あ、えへへ、そうでした!」テヘ


咲「では、また来ます」フリフリ


店員「はぁい!ありがとうございましたぁ~♪」フリフリ


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_______________


~帰り道~


マホ「……あれ?そういえば、マホ達おかいけいをしてこなかったような…」


マホ「せ、せせせ、先輩!!どうしましょう!?マホたち、食い逃げ…っっ!!?」アタフタ


咲「あはは、大丈夫だよ。ちゃんと払ってきたから」クスクス


マホ「ふぇ?い、いつの間に……」


咲「さて、いつでしょう?こういうのは、バレちゃったら格好がつかないからね」フフ


マホ「だ、ダメですよ!宮永先輩に払ってもらうなんて、そんな事できませんですっ!」


咲「言うと思った~」


咲「でも、気にしないで?元々、あのお店に行ったのも今日付き合ってくれたお礼をしたかったからだし」


マホ「そんな!付き合って貰ったのはマホの方ですよっ!」


咲「いいから、こういう時は先輩の私にいい格好させて欲しいな」


マホ「せ、先輩はいつでも恰好いいですし……////」ゴニョゴニョ


咲「うん?」イマナンテ


マホ「あ、い、いえっ!なんでもありませんっ///」カァ


マホ「なら、今日はお言葉に甘えてご馳走になりますですっ」


咲「その代わり、その……」モジモジ


マホ「??」キョトン


咲「ま、また…一緒に、出掛けて欲しいなぁ…」


咲「なんてっ……/////」チラ


マホ「!!!!」ズキュ-ン


マホ「!!!!」ズキュ-ン


マホ「……い…ぎます……」ボソ


咲「ん……?」


マホ「もうー!!!先輩ってば、可愛すぎますー!!!」ダキッ


咲「ぅわわっ!?」


マホ「可愛い可愛い可愛い!!先輩って、どーしてこんなにも愛らしいんですかぁー!!」スリスリスリ


咲「ま、マホちゃん!?/////ちょ、急にスリスリしないでぇ!!/////」アワワ


マホ「宮永先輩からのお誘いなら、いつでも飛んで行くに決まってますー!!むしろ、マホの方からお願いしたいです!!」ホッペスリスリ


咲「う、うんありがとう!とりあえず離れてぇ/////!!人が!人が見てるからぁ!/////」


マホ「もう先輩大好きですー!!先輩先輩、宮永先輩~!!」ギュゥゥゥゥ



咲「ま、マホちゃんってばぁぁぁぁ!!/////」


_______________
______________________________
_____________________________________________

【その日のよる!】

~マホ宅・お風呂~


マホ「ふぅ~…」チャプン

マホ「今日は本当に楽しかったぁ…」フフ


マホ「先輩、顔真っ赤にして可愛かったですし」クスクス

マホ「……」オモイダシ


マホ「で、でも、確かに人前であれは少し恥ずかしかったかな…/////」ブクブク


『マホ~?のぼせない内に出なさいね~』


マホ「あ、はーい!」ザプン


マホ「……ふふ、明日…健夜さん、喜んでくれるといいなぁ…」クス



~咲宅・寝室~


咲「……はふぅ」ポフ

咲「今日は久々に遠出して、疲れた…」ゴロゴロ


咲「明日、かぁ」



ガチャ

界「咲、入るぞ~」コンコン


咲「お、お父さん!!入ってきてからノックしないでよ!」


界「悪い悪い。これやるから機嫌直せって」ポイッ

咲「わわっ……なにこれ、クラッカー?」


界「誕生日会っぽいだろ?」



咲「……これに驚いて寿命が縮まっちゃったりしないかな…」

咲「まあいいや。ありがとお父さん」


界「おう。小鍛治さんによろしく伝えといてくれ」


咲「うん。おやすみ……あっ、明日は私朝から居ないから、適当にお昼済ませておいてね?」


界「分かってるよ。おやすみ」

バタン



咲「……」フゥ

咲「よしっ、寝坊するといけないし寝よ」



咲(……良い日になるといいなぁ…)フフ


――――
――――――――
――――――――――――

この話が終わった後、みなも編と本編の短めの話を二つ投下して終わります。
来週中には完結しますので、もう暫くお付き合いくださいっ。


~当日、部室~


マホ「いよいよですね、先輩っ!」ワクワク


咲「うん。昨日、健夜さんには連絡入れておいたから12時頃には来ると思う」


マホ「勘付いたりしていませんでしたか……?」


咲「まさか。あの健夜さんだよ?ていうか、今日が自分の誕生日だって事すら忘れてるかも」


マホ「まっさかぁ…さすがにそれは……」


咲「現に、一昨年と去年は忘れてたからね……」

マホ「へっ?プレゼントとか渡したんですかー?」


咲「いや……その、なんだか小っ恥ずかしくて」スッ


マホ「……まさか、その新たに増えている包み紙は…」



咲「うん、去年と一昨年渡せなかったプレゼント……かな」


マホ「先輩…いくらなんでも、それは意気地が無さすぎたんじゃぁ……?」


咲「う、うるさいなっ!だってあの人、本当にタダの平日みたいな顔するから……」モジ


マホ「ちなみに、どんな感じだったんですか??」


咲「そうだなぁ……確か…」


――――おととし――――


咲『す、健夜さんっ』

健夜『ん?…どうしたの、そんな真剣な顔して?』

咲『その…あの、きょ、今日は健夜さんの誕生日……じゃ、ないですか…』ゴニョゴニョ

健夜『え?私の……なんて…?』

咲『だからぁ!た、たた……た……』

健夜『た……?』ハテ

咲『っっっ!!!/////』カァ

咲『きょ、今日は健夜の夕飯は担担麺だって言ったんです!!!/////』

咲『それじゃあ、帰りますまた明日!!!!』タッタッタッ

健夜『…えぇ……?』

健夜『た、担担麺……?』




――――去年――――


咲(落ち着いて私、大丈夫……去年みたいな失態はしない…)

咲(健夜さん、今日誕生日ですよね。これ、プレゼントです)

咲『うぅん……これじゃ少し堅苦しい…?』

咲(べ、別に健夜さんの為に用意した訳じゃないんですからね……!でも、大事にしてください…っ)

咲『……いやいやいや、これはおかしい』

健夜『なにがおかしいの?』ヒョコッ

咲『ふきゅっ…!?』ビクッ

健夜『あはは、面白い驚き方』クス

咲『こっ……ここ…こ……』

健夜『こ……?』キョトン

咲『こ、心の準備が整って無かった訳じゃ無いんですからねーっ!!!/////』ピュ-

健夜『えっ、咲ちゃんどこ行くの部活は!?』

『健夜さんのバカぁぁぁぁぁ!!!』

健夜『……えぇ…?』

健夜『私、嫌われてるのかな……』ガ-ン







咲「……みたいな」


マホ「先輩も先輩ですけど、毎年気付かない健夜さんも相当ですね…」


咲「大人になるにつれて誕生日なんて気にならなくなるって言うし、仕方ないのかもしれないけどね」

咲「だからまあ、実を言うとマホちゃんが今回こういう場を作ってくれたのは、かなり有難かったんだ」



マホ「でも先輩ってば、興味がないフリしてちゃんと今年も健夜さんの誕生日お祝いして上げるつもりだったんですねー?」

マホ「ふふ、先輩のそういう所、可愛いです」クスクス


咲「か、からかわないでよ!///」


咲「ほら、話はこれくらいで準備済ませちゃうよ!私は飾り付けしてくるから、テーブル周りよろしくね」


マホ「ラジャっ!任務了解です!」ビシッ


咲「……期待しておるぞマホ隊員?」

マホ「た、隊長!早速ですが、机の上のケーキが食べたいであります…!」


咲「食べたら処刑である」ジト-

マホ「うぅ……!!我慢するであります…!」ムムム


咲「ふふっ、もう少しの辛抱だから、ね?」

マホ「はーいっ。急いで準備するです!」ソソクサ


咲「うんっ」クスクス



咲(あ、後でお父さんに貰ったクラッカー、マホちゃんにも渡しておかなくちゃ)



――――
――――――――
――――――――――――


~数時間後~


健夜「うーん…部室に呼び出されたのはいいけど、何があるんだろ……」テクテク

健夜「要件は聞いても秘密って言われるし」


健夜「……」ウ-ン


健夜(も、もしかして!)



咲『私、長野へ帰らせてもらいます』

咲『え、健夜さんはどうなるのかって?』

咲『……はっ、知りませんよ』

咲『もういい大人なんですから、そろそろ自立したらどうです?』プ-クスクス

咲『あ、マホちゃんも付いてくるそうなので、麻雀部も解体ですね』

咲『じゃ、さよなら』




健夜「……」ブルブル


健夜「そ、そんなの嫌だ……」アワアワ

健夜「なんとか考え直して貰わなくちゃ!」タッタッタ


――――――
―――――――――
―――――――――――――――



~部室~


マホ「先輩、飾り付け完了しました!」


咲「お疲れ様。こっちも終わったから、あとは健夜さんが来るのを待つだけだね」


マホ「マホ、なんだかドキドキしてきました」


咲「ふふ、私も」

咲「どうせなら、ビックリさせt」



バーン!!




健夜「さ、咲ちゃん!!考え直して!」ハァハァ






咲「ふぇ!?」ビクッ


マホ「す、健夜さん!?」


咲(ど、どうしてこんな慌てて駆け込んでくるの!?)

咲(クラッカー鳴らせずじまいだよぉ……)



健夜「私が少し頼りないのは承知なんだけど、せめて!せめて高校までの間は私と一緒にいよ!?ね!?」


咲「ちょっ、落ち着いてくださいよ!どうしたんです、怖い夢でも見たんですか!?」

マホ「まさか、誕生日だと気付いて錯乱してるんじゃ……」


健夜「うわぁぁぁん、嫌だよぉ!!長野に帰ったら寂しいよぅ……」グスグス


咲「は、はぁ?言ってる意味が分かりません」


健夜「だ、だって、今日呼び出したのはその事を……」


咲「な訳ないじゃないですか……。少なくとも、高校卒業まではここにいますよ…」ハァ


健夜「ふぇ……?じゃ、じゃあマホちゃんは……?」


マホ「マホですか?はい、マホも先輩と健夜さんの傍にいますです」


健夜「なら、今日呼び出したのは……」


咲「まだ気付かないんですか?……ていうか、健夜さんのお馬鹿な妄想のせいで計画がおジャンですよ、まったく」


マホ「驚かされたのはマホ達の方でしたね~」



健夜「え?え?」


健夜(な、なに?私はどんな勘違いしてたの?)



咲「健夜さん、誕生日おめでとうございます。普段はあんまり言えませんけど、その、感謝……してます」

咲「これからもよろしくお願いします」


マホ「おめでとうございますですー!健夜さん、先輩の次に大好きです!」

マホ「これからも先輩共々よろしくお願いしますです!」


健夜「た、誕生日……?」


健夜「……」カンガエ

健夜「……」


健夜「あ、あぁー!!私、今日誕生日だった!」


咲「分かってはいましたけど、やっぱり忘れていましたか」

マホ「こうして、知らない内に年を重ねていくんですね…」



健夜「え、凄い……これ、全部2人が用意してくれたの?」


咲「まあ、そうですね」


マホ「先輩と2人で頑張ったです!」



健夜「ありがとう……。まさか、お祝いして貰えるなんて思っても無かったから」


健夜「ていうか、尚更ごめんね……?なんか、台無しにしちゃう登場しちゃって」



咲「それはもう良いですって」


マホ「先輩に泣きつく健夜さん、いい写真が撮れましたし♪」


健夜「恥ずかしすぎるよ……」




咲「ケーキもありますよ、ほら」


健夜「わぁ、可愛い!」

健夜「こんな物まで用意してもらっちゃって……あれ?この箱、あの喫茶店のロゴが入ってる」


咲「そのケーキはあの人からの贈り物です。新作だそうなので、食べたことないでしょう」


マホ「途中でケーキを忘れてる事に気付いて大慌てだったんですけど、店員さんのお陰で助かりました!」


健夜「あの子が……」


健夜「……」クス



健夜「嬉しいな、本当に」



咲「喜んで貰えたようで。企画したかいがあったね、マホちゃん」


マホ「はい!」

マホ「マホ、健夜さんの嬉しそうな顔大好きですから!」


健夜「マホちゃん……」



マホ「えへへ、先輩もですよねっ」


咲「……まあ」


咲「健夜さんが喜んでくれると、私も……あの、少しは嬉しくなります」フイッ



健夜「咲ちゃんまで……そ、そういうのは反則だよっ…」

健夜「涙出てきそうだから」グス



マホ「まだまだですよっ!」ガサゴソ


マホ「はい、プレゼントです!」

咲「私からも、どうぞ」


マホ(あれ?先輩一つだけだ。例のは渡さないんでしょうか?)


健夜「プレゼントまで?……あ、もしかして、ここの所2人でいる事が多かったのって…」


咲「はい。今日の計画練ったり、プレゼント買いに行ったりですね」


健夜「全然気付かなかったや……」


マホ「マホからは手袋です!ここからもっと寒くなってきますから、良ければ使ってくださいです!」


咲「私からはマフラーですね。健夜さん寒がりのくせに、毎年マフラー付けませんから」


健夜「ありがとう……!2人だと思って大切に使わせて貰うよ」ニコ


咲「それは気持ち悪いのでやめて下さい…」

マホ「セクハラですよ、セクハラ!」


健夜「あれ、落差が酷い!?」



咲「さて、プレゼントも渡した事ですしケーキ食べましょう。」

マホ「先輩、今日くらいは健夜さんに食べさせてあげたらどうですか?」


咲「えっ!?」


健夜「え……」


咲「じ、自分で食べられますよね……?」チラ


健夜「えっと…。お言葉に甘えてもいいなら……なーんて思ったり…?」


マホ「決定ですね♪」



咲「もう……分かりましたよ。今日は健夜さんのしたい事をさせてあげます」

咲「特別、ですからね」


健夜「えへへ、うんっ」


マホ(自分で提案しておいてアレですけど、砂糖吐きそうです…)グヌヌ


マホ「マホ、写真撮ってあげますね!」つスマホ構え


咲「それは恥ずかしいよ!」


マホ「いいからいいから♪ほら、頑張ってくださいです!」


咲「むぅ……わ、分かったよ」スッ


健夜「ホントに良いの……?」ドキドキ


咲「良いですよ、これくらいは」プイ



咲「……はい、口開けてください」スッ


マホ「ダメです先輩!はい、あーん。ですよ!重要なとこです!」


健夜(ま、マホちゃん凄いノリノリだな)




咲「うっ……/////」


咲「……」ハァ




咲「は、はい……あ、あーん…/////」スス


健夜「んっ…」パク


マホ(照れ顔の先輩ゲットです!)エヘヘ



咲「ど、どうですか?」


健夜「うん、美味しい!…咲ちゃんに食べさせて貰ったから、尚更かな?」


咲「なっ!?」

咲「ば、馬鹿なこと言わないでください!!/////」ポカポカポカ


健夜「ふふっ、本当だよ」ニコ


咲「~~~~~~ッッッ!!/////」カァ

咲「もう、知りませんっ!///」


マホ「先輩、顔真っ赤ですよー」アハハ


咲「うぅぅ…………」


健夜「あははっ!」クスクス



健夜(……咲ちゃんがいて、マホちゃんがいて)


健夜(私が居られる場所)



健夜「……ね、咲ちゃんマホちゃん」


咲「なんですか、もうあーんはしませんよ」

マホ「そんな事言うってことは、先輩はもう一度したいって事ですか?」

咲「ち、違うから!!///」



健夜「ありがとね、大好き」ニコ


咲「……!」


マホ「どういたしまして!マホも大好きです、健夜さん!」


咲「……私も、好き……です」

咲「これからも傍に居てくださいね」


マホ(おぉ!?こ、これは……!)

マホ(もしかして、もしかすると)



健夜「もちろん、これまでと同じようにね」ニコッ


咲「……鈍感」ボソッ


マホ(ですよね~……)




マホ「折角ですし、3人で写真撮りましょう!」


咲「あ、良いね」


マホ「ほらほら、健夜さんは真ん中に!」グイッ


健夜「わわっ、私真ん中?」


咲「主役ですよ?当たり前です」

健夜「なんだか照れるなぁ…」


マホ「先輩、もっとくっついてくださいですー」


咲「う、うん……」ギュ


健夜(ち、近い……!!)ドキ


マホ「じゃ、撮りますよ!」スッ



マホ「はい、ちーずっ!」パシャッ



――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――


【そして】


~誕生日会終了・夜~


マホ「では、マホはお先に失礼しますです!」


咲「1人で平気?」

マホ「迎えが来てるので、大丈夫です!」


咲「そっか、それなら良かった」

健夜「今日は本当にありがとう。楽しかったよ」ニコ


マホ「マホもです♪おやすみなさいっ!」


咲「うん、おやすみっ」

健夜「また明日ね」フリフリ


キィ……バタン



健夜「……ふぅ。もう夜遅いし、私達も帰ろっか?」

咲「……」モジ


健夜「咲ちゃん?」


咲「……」ガサゴソ


健夜(カバン探って、どうしたんだろ)



咲「……ん」つ包み


健夜「え?」


咲「……実は、去年と一昨年もプレゼントを用意してたんですけど、渡せなかったので」

咲「大した物じゃないですけど」


健夜「去年と一昨年……って、誕生日プレゼントってこと?」


咲「そうです」フイッ


健夜「……」カンガエ

健夜「そ、そういえば咲ちゃん、この時期になると妙にそわそわしてた様な」


咲「健夜さん、毎年完全に忘れてるんですもん。なのでその、渡すタイミングが分からなくて、そのまま……」


咲「とにかく、どうぞ!/////」グイ


健夜「そうだったんだ。ふふっ、ありがとね」


咲「……いえ」フイッ



健夜「これ……手紙かな?」


咲「はい。一昨年のは……そうみたいですね」


健夜「……読んでいい?」


咲「い、今はダメっ!/////」

咲「家で読んでください!」


健夜「えー?ふふっ、どーしよっかなー?」


咲「い、イジワルしないでください!/////」


咲「ほら、帰りますよ!電気消してください!」スタスタ


健夜「あはは、はーいっ。家でゆっくり読むね」クスクス


咲「きっと大したことは書いてませんからっ」


健夜「なら今読んでも」


咲「破り捨てますよ!?/////」


健夜「仮にも誕生日プレゼントになにを!?」


健夜(仕方ない、家で読もっと)フフ



咲「……」


咲「ね、健夜さん」


健夜「ん?」


咲「健夜さんは、私といて楽しいですか?」


健夜「……」

健夜「うん、勿論。人生で一番」


咲「……来年も、そう言ってくれますか?」


健夜「咲ちゃんが傍にいてくれたら、必ず」


咲「……そうですか」ニコ


健夜「うんっ」



咲「……」クス

咲「誕生日おめでとうございます、健夜さん」


健夜「ありがと。これからもよろしくね」ニコ



【誕生日だいさくせん、カン!】



~オマケ、咲の手紙~


拝啓
健夜さんへ


この手紙を読んでいるということは、私は無事に渡す事ができたんですね。良かった。

健夜さんの欲しい物が思い浮かばなくって、手紙しか送れなかった事を許してください。
来年は、何かもっとしっかりとした物を贈りたいです。


……おかしいですね、手紙なら言いたい事をすらすらと綴れると思っていたんですけど、中々筆が進みません。



……今年、健夜さんと出会うことができて、私は心の底から良かったと感じています。
普段は照れくさくて、言葉を濁したり、つんけんしてしまいますが、本心です。

きっと、来年の私も、再来年の私も、その次の私も。
この気持ちは変わらないでしょう。


なので私も健夜さんには、来年も再来年もその次も幸せだって言って欲しいです。
私と会えて良かったって、思っていてくれたら嬉しく思います。


私を受け入れてくれてありがとうございます。
もう暫くは、貴女の優しさに甘えてしまいそうですけど、許してください。


では、誕生日おめでとうございますっ


咲より




~オマケその2~


・数日後某所、スタジオ



健夜「……」ジ-ッ


健夜「……えへへ」ニヘラ



恒子「うわ……すこやん気持ち悪いよ?」


健夜「はっ……い、いけないいけない」ブンブン


恒子「わっ、なにそれ!可愛い写真立てじゃん!」

恒子「どこで買ったの?」


健夜「ううん、貰い物。手作りらしい」フフ


恒子「て、手作り!?……すこやんにそんなプレゼントをしてくれる人がいるんだ…」


健夜「私をなんだと思ってるのかな!?」


恒子「んー、どれどれ写真に写ってるのは……」


恒子「すこやんと……え、誰この可愛い学生!?」

恒子「すこやん、もしかして如何わしいお店に」


健夜「そんな訳ないでしょ!?」

健夜「えっと~……じ、地元のクラブチームに遊びに来てる子達だよ」


恒子「へぇ~、いいないいなぁ!羨ましい!」


『本番入りまーす』


健夜「ほら、お仕事するよ!」


恒子「それ眺めてにやけっ面してたの、すこやんじゃん」ジト


恒子「まあ、頑張りますか!」


健夜「うん、よろしくね」



健夜(咲ちゃん、今何やってるかなぁ)




【オマケ、かん!】

実はこの話、前スレかその前のスレかを書いている時に、すこやんの誕生日記念として投下しようとした話でした。……間に合わずに眠っていたのです。

あと2話、短めの〆なので、あと3日か2日以内には完結ですっ。


【長野編エピローグ・宮永みなも】


わたしの中に、彼女が生まれたのはいつ頃だっただろう。
確か、咲を失って……咲を求めた、あの時だ。


あの時から、わたしの中に彼女は生まれた。
……いや、わたしが創り出したのかもしれない。

彼女には随分と助けてもらったし、苦しめられもしたっけ。



これはそんなわたしと、彼女の。
おしまいのお話。


~いつか・どこか~



私が彼女の中に生まれたのは、彼女が"私"を求めた時。


彼女が求めているのは私じゃない、別の"私"。
そんな事は分かっていたけど、私は私なのだから彼女を守ってあげなきゃいけない。

彼女を守ろう。
それだけを、ずっと考えてきた。



私は彼女を守りたい、彼女を笑わせたい。
彼女が幸せになれるなら、なんだってしよう。

それは全部、私が壊してしまったもの達なのだから。


そう思っていたはずなのに。



……予感はしていた。

彼女はもう一度"私"を求め、歩き出した。


"私"も、彼女を求めている事くらいは分かった。

だって、私自身の事だもん。


きっと、彼女と"私"はもう一度繋がる。
それは、彼女の願いであり、求めてきた夢。

彼女はそれで幸せになれる、それは、私の願いであり、夢。




……けど、どうして?
私は、素直に喜べない。


ううん、分かってる。



彼女が"私"を手に入れた時、私はもう必要なくなる。
私は、一人になっちゃう。


……嫌だ。一人は嫌。

一人にならない為には、彼女に"私"を捨てて貰わなくちゃ。
そうすれば、彼女は私を求め続けてくれるはず。



……あれ?
私は、それを望んでいるんだっけ。

最初は、何を望んでいたの?

最初から私は彼女を求めていた?




―――ああ、最低だ。


私は彼女を求めてはいけなかった。
だって、彼女は"私"を求めているのだから。

けれど、私は彼女を求めた。
あの日と同じ、彼女じゃなくて私の事だけを考えた。


だから私は、彼女に認めて貰おうとした。
求めて貰おうとした。

偽りでもいい、私の力を……私を求めて欲しかった。







けれど彼女は私の力を求めず、試合を捨てた。

どうして!?どうして……。


簡単だった。

……私は、ずっと勘違いをしていた。
彼女がずっと思ってきたのは、"私"だけじゃない。

あの日で時が止まったまま、歩き出せないままでいる私もだった。



『今度は助ける』



彼女は確かにそう言った。



……私は、どれだけ彼女に救われるんだろう。

どうして、私の為なんかに。

投げかけた疑問に、彼女は自信満々に答えてみせた。


『―――――――――』


……そっか。
そうだったね。私は、そんな事すらも忘れていた。
やっぱり、相応しいのは彼女の方だ。






『ありがと、お姉ちゃん』

『大好きだよ。』





私と彼女のお話は、ここで終わる。




そして、これからは"私たち"と、彼女の。

始まりのお話。



【長野編、カン】

【終局】


~ある日、部室~




咲「だから、私は好きなようにすればと言っているんです!」



健夜「そ、そんな事言って、咲ちゃん怒るくせに!」



咲「怒りませんって!一々そんな事に目くじら立てていられませんし」プイッ

咲「どうぞご自由に!」フンッ


健夜「そんな事!今、そんな事って言った!」


咲「えーえー、何度でも言いますよ!そんな事ですよね?」


健夜「もー!!」プンスカ


咲「……べーっ!」





2人「「……ふんっ」」プンスコ



健夜「そんな態度だと、もう迷子になった時迎えに行ってあげないから!」


咲「お好きにどうぞ?私にはマホちゃんがいますから」

咲「私だって、もう健夜さんに構ってあげません」

健夜「なーっ!?」



咲「あーあ、健夜さんはこれで天涯孤独ですね!」


健夜「べ、別に咲ちゃんが構ってくれなくたって……」


咲「誰か構ってくれる人でもいるんですか?」


健夜「……」



健夜「そ、それはナシだから!!せめて、コーヒー淹れてあげません、とかが限度だよ!」


咲「そんな子供みたいな事言われても知りませーん。もう構わないので、話しかけないでくれます?」


健夜「うぅ……さ、咲ちゃんのイジワル!」


咲「なんとでも言えばいいです」プイッ


やいのやいの
ワーワー




マホ「……」ズズ

マホ「……ふぅ」


マホ(ココア美味しいです…)ホッコリ



マホ(にしてもこの2人、マホが来る前から喧嘩をしていて、マホが来てからもう1時間ですけどよく飽きませんね……)

マホ(2人の仲が上手くいくのはけっこーですけど、こう目の前でイチャイチャされると、流石に思う所があるです)



マホ「まあまあ、先輩も健夜さんも少し落ち着いてください」


咲「マホちゃん…」


マホ「一体どうしたらこんなに長時間の言い争いができるんですか?」

マホ「マホに経緯を教えてくださいです」


マホ「それと先輩。マホは先輩の迷子保護率が健夜さんと違って100%では無いので、健夜さんがいなくなるのは死活問題です」


咲「……うぐっ」


健夜「ふふん」ドヤ

咲「……」イラッ


マホ「あと、マホはいつだって先輩の味方なので、先輩が健夜さんに構わなくなった時はマホも構いませんです」


健夜「ええっ!?」


咲「……」フフン

健夜「むー……」


マホ「ほら、いいからマホにケンカの理由を教えてください」


マホ(こんなに先輩が感情的になるなんて、一体何が起きたんでしょうか……)




咲「……だって、健夜さんが」

健夜「だって、咲ちゃんが……」


マホ「はい」




咲 健夜「「昨日の夜、全然電話に出てくれなかったんだもん!!」」




マホ「……」


マホ「は?」





咲「出なかったのは健夜さんでしょう!」

咲「私はちゃんと約束通り10時にかけましたもん」


健夜「ちょっと席を外してて出られなかっただけじゃん!」

健夜「10分後に折り返したのに、咲ちゃん出なかったし」


咲「寝てましたよ!!あなたが出てくれないから、ふて寝したんですよ!!」


健夜「や、約束通りの時間に出られなかったのは悪かったけど、ふて寝しなくたっていいじゃん!」


咲「はぁ?すっぽかされた方の身にもなってくださいよ!」

咲「そんなだから独身のままアラサーまで来ちゃったんじゃないですか?」


健夜「い、言っていいことと悪いことがあるよ!」ガ-ン


咲「そっちこそ!私が楽しみにしてる事なんて知らずに」



マホ「はいはい!ちょっと2人とも静かにしてくださいです!」パンパン


マホ「……はぁ」

マホ「まったくお2人は、付き合いたてのカップルか何かですか」


健夜「なっ……////」


咲「か、かっぷるって…////」


マホ「いい加減、そういうのはマホお腹いっぱいなんです!」

マホ「ケンカするにしても、もう少しドキドキワクワク、修羅場的な動機にしてくれないとっ」


咲「そ、それはどうなんだろ…」

健夜「マホちゃん楽しんでないかな…?」


マホ「お2人が好き合っているのは良いことですけど、お互いもう子供じゃないんですから!」

マホ「特に健夜さん。話を聞く限り、時間に遅れた健夜さんに非がありますです」


健夜「うっ……」


咲(す、好き合ってる……/////)カァ


マホ「先輩も、大好きな健夜さんとお話できなくて残念だったのは分かります」

マホ「マホだって、先輩と約束をしていてすっぽかされたら、どうなるか分かりませんし」


咲「別に、大好きなんかじゃ……っ」

健夜(マホちゃん、目が本気だ…)コワイ


マホ「でも、健夜さんに構ってあげないは言い過ぎです!」


健夜「マホちゃん!」パアッ


マホ「孤独死しちゃうかもですよ?」


健夜「マホちゃん!?」ガ-ン



咲「……ごめんなさい」ペコ

健夜「謝られるとすっごい傷付くよ……」ガ-ン




マホ(何事かと思えば、惚気を聞かされただけでした……)ハァ


健夜「その、咲ちゃん?」


咲「……なんですか」


健夜「私が悪かったよ、ごめんね。大人げなかったかも」ペッコリ


咲「……いいですよ、もう。私も柄にもなく感情的になりました」

咲「すみません」ペッコリン



マホ「もう、来てみたら2人でケンカしてるのでビックリしちゃいましたよ」


健夜「あはは…ごめんね」



咲「……っと」


咲「もうこんな時間ですし、そろそろ出ますか?」


マホ「ですね!マホ、早く行きたいです」


健夜「東京に行くのは2年ぶりだね」



咲「私達にとって全国は初だね、マホちゃん」

マホ「はい!いよいよ開戦、ですね!」


健夜「……うっ、なんだか緊張してきたよ」


咲「どうして健夜さんが緊張するんですか」


健夜「だ、だってさぁ」


マホ「平気ですって!決勝までは安心して見ててくださいです♪」

咲「ダメだよ?あんまり油断したら」


マホ「ふふん、油断じゃなくて自信です!」


咲「あはは、中々言うようになったね」クス


咲「まあ、見ててくださいよ。過去に健夜さんが果たせた事が、私達にできないハズありませんから」


健夜「……うん、それじゃあ楽しみにしてるね」


マホ「任せてください!」


ピロリロリ-ン


咲「ん、メール……」チラ

咲「……」


咲「……ふふっ」



マホ「どうかしましたか?」


咲「ううん、ちょっとおかしなメールが来ただけ」フリフリ

マホ「そうですか!」


健夜「よしっ。それじゃあ、行こっか」


マホ「おーっ!」ピョンッ

健夜「……」


咲「健夜さん?」




健夜「……期待してるね」


咲「……!」



咲「……ふふ、当然」ニコ

咲「アナタの教え子がどれだけやれるのか、見ててくださいよ」


健夜「うんっ」


マホ「ほら!先輩、健夜さん!早く来てくださいー!」


咲「うん、今行く!」ギュ


健夜「あ……」

健夜「……」クス



健夜「楽しんで、楽しませてね。咲ちゃん」ギュ


咲「はい、任せてくださいっ」ニコ






咲(……ねえ昔の私、安心して?)

咲(きっと一つ。一つのドアを開けるだけで、世界は変わる)

咲(だから、頑張って)


咲(頑張ればきっと、それは実を結んで花を咲かせる。大切な人に、繋がるから)





咲「……ありがとう、大好きな人」





【カンッ!】


これにて完結ですっ。

最初から最後まで自己満足なスレでしたが、レスをくれた方などが居てくださり本当に嬉しかったです。
まさかここまで長く続けられるとは思っていませんでしたが、読者の方がいてくれたおかげで続ける事ができたんだと思いますっ。

あまり期待通りの話を展開出来なかったかもしれませんが、その辺りは今後の課題にさせてください。
長野編は抽象的な表現が多すぎましたね……反省。


では、読んでくださった方ありがとうございました!
よければ次の作品もよろしくお願いします(ペッコリン)

乙ありがとうございますっ。

予告にあった話ですが、中々一つの形にする事が出来なかったので、ボツにしてしまいました……orz
覚えていてくれた方には申し訳ないです。
もし新スレを建てたら、その時にっ。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年05月16日 (火) 23:56:04   ID: B1W7Iz7H

完結、おめでとうございます&お疲れ様でした!

次回作も楽しみにしています!

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