男「オレの夏休み」(68)

夏・日本海・昼

連絡船・かむい号・船上

ザザァ、ザザァ

女『夏が過ぎ、風あざみ。誰のあこがれに、さまよう。
青空に、残された。私の心は夏模様』ジャラン、ジャラン

船長「うんうん。海の上で女ちゃんの歌ぁ聴けるとは。贅沢だべさ」ニカ

女「私も久しぶりに船長さんの船に乗れて、嬉しいよ」ニコ

オレ「・・・・・・」

船長「坊ちゃん! 坊ちゃんもそう思うべ?」

オレ「え? ああ、はい」

ザザァ、ザザァ

女「ああ、ごめんなさいね? うるさくなかった?」

オレ「・・・・・・いや、別に」

女「そう」ニコ

ザザァ、ザザァ

女「それで、君はどうして島に行くの?」

オレ「・・・・・・母親が臨月だから、夏休みの間、親戚んとこに預けられるんですよ」

女「親戚って、誰?」

船長「ほれ、坊ちゃんの親父さん、あの父さんだってさ」

女「父さんかぁ! じゃあその親戚ったら、兄君の家だね」

オレ「兄?」

女「うん! 私が本土の高校行くまで、同級生だったんだよ?」

オレ「ああ、そうですか」

女「久しぶりだなぁ。私は夏休みの間だけ、島に帰るの」ニコ

オレ「・・・・・・」

女「君は、何年生なの?」

オレ「高二、ですけど」

女「あはは、なんだ。同い年なんだね」ニコ

オレ「・・・・・・あ、はは」

女「あ! 島が見えてきたよ」

船長「なんだぁもう見えたかー。もうちょっと女ちゃん歌聞きたかったさ」

女「あはは。じゃあ島に着くまで歌うよ」

船長「そりゃあ嬉しいな」ニカ

女『・・・・・・夢が覚め、夜の中、永い冬が。窓を閉じて、呼びかけたままで♪』ジャラン、ジャラン

オレ「・・・・・・」

(新しいお母さんなんていらないよ!! 父さんは! お母さんの事もう忘れたんだ!!!)

(そんな訳ないだろう。それでも、人は前を向いて生きていかないといけないんだよ)

(なんだよそれ! わかんないよ!!)

女『夢はつまり・・・・・・想い出のあとさき』ジャラン、ジャラン

船長「・・・・・・」ニコ

女『夏まつり、宵かがり。胸の高なりに、合わせて』ジャラン、ジャラン

(どうしてお母さんって呼ばないんだ、オレ)

(良いのよ、あなた。ごめんね? オレ君)

(・・・・・・べつに)

(オレ! まだ話は終わってないぞ!!)

オレ「・・・・・・ようするに、厄介払いだろ」ボソ

女『八月は、夢花火。私の心は、夏模様♪ Mu…………』ジャラン

ザザァ、ザザァ・・・・・・ザザァ、ザザァ

オレの夏休み 8月1日

※続きは書き溜めてから更新します。

島、船乗り場

8月1日、昼

おば「いらっしゃい、オレ君」

おじ「久しぶりだな! って言っても覚えてねえか。オレ君はまだこんな小さかったからなぁ」ニカ

オレ「・・・・・・あの、一ヵ月、よろしくお願いします」

おば「なんもなんも! そんなに気を使わないでいいべ」

女「久しぶり! おじちゃん、おばちゃん!」ニコ

おば「おかえり、冬休み以来ね。女ちゃんのお父さんも、まだかまだかって楽しみにしてたわ」

おじ「すっかりめんこくなって、もう本土のお姉さんだな」ニカ

女「もう! おじさんったら。 あはは、ただいま」

おじ「じゃあ帰るか! 女ちゃん、家まで送ってやる」

女「おじちゃんの軽トラ、そんなに人乗れないしょー?」

おじ「がはは! ここは本土じゃないんだから、オレ君と後ろ乗ってけ」

女「そっか! あはは」

おば「オレ君、うちは民宿も兼ねているから、とっても広いわよ?」

オレ「あ、はい」

島はずれ、海の良く見える民宿

おじ「帰ったぞー!!」ガラガラ

兄「声でけえってば! お客の部屋まで聞こえるぞ」

おば「この大きいぼんずは兄、オレ君の従兄弟ってことになるわね」

オレ「あ、よろしく」

兄「おう!」ニカ

おば「兄はオレ君と同い年だから、仲良くしてやってね。で、小さい方は・・・・・・あれ?」

兄「あ、あいつなら部屋じゃねーかな」

おば「弟ー!! 一階に居なさいって言ったべさ!!!」

弟「・・・・・・はーい」スタ、スタ

おば「はあ、またゲームばっかりして! ごめんね、オレ君。この小さいぼんずは弟、中学三年生」

弟「・・・・・・どーも」

オレ「よ、よろしく」

おじ「とりあえず飯だ飯! 兄、オレ君の荷物二階の部屋に運んでやれ」

オレ「あ、いいです、そんな」

兄「遠慮すんなって! 島ん奴はみんな力あるから」ニカ

オレ「あ、ありがと」

民宿、食堂

兄「え!? 女が帰ってくんのって今日だっけか!!」がつがつ

おじ「おう!! 家まで送ってやったぞ」がつがつ

兄「それなら言えって! 俺も迎えに行きたかったのに」

おじ「がはは! 大分めんこくなってたぞー?」ニヤ

兄「そ、そんなこと聞いてねーべや!」がつがつ

弟「・・・・・・」もぐもぐ

おば「あはは、うるさくてごめんね?」

オレ「い、いいえ」もぐもぐ

おば「お客様も泊まっているけど、自分の家だと思って過ごしていいからね」ニコ

オレ「ありがとう、ございます」もぐもぐ

おば「あ、そうだ! あんた今日暇でしょう? オレ君に島ん中案内してあげなさい」

兄「おう。飯食ったら行くか、オレ!」ニカ

オレ「あ、ありがとう」

おば「弟も一緒に案内して上げなさい」

弟「・・・・・・えー、やだよ。暑いし」ボソ

おじ「お前ただでさえモヤシみてえに細いんだから、たまに外出て遊んで来い!」ニカ

兄「そうだぞ、弟」

弟「兄ちゃんには関係ないだろ!」

兄「お前が部屋ん中でゲームばっかしてっからだろ!」

おば「はいはい喧嘩しない。とにかく弟も行って来なさい。女ちゃんにも挨拶するんだから」

弟「・・・・・・はあ、分かったよ」ボソ

オレ「・・・・・・」もぐもぐ

島、中心部

兄「――んでここが中心部な。病院やら役場があるけど、昼間はじじばばしかいないからあんまり楽しくないぞ!」ニカ

オレ「な、なるほど」スタ、スタ

弟「・・・・・・」スタ、スタ

兄「で、ここが商店! 菓子ばば! 来たぞー!!」

菓子ババ「でっけえ声出さなくても聞こえてるわ!!!」

兄「商店っつっても駄菓子ばっか置いてるから、俺たちは菓子ババって呼んでる」

菓子ババ「その呼び方は止めろって言ってるべや!!」

兄「あんまり怒ると売ってくれないから、ほどほどに」コソコソ

オレ「あ、ああ」

菓子ババ「で、なに買いにきた」

兄「ガリガリ君みっつ!!」ニカ

島、山の麓

兄「おっ! 当たり引いた! ラッキー!!」スタ、スタ

オレ「大きい山だなぁ」

弟「・・・・・・ここは島で一番大きな山だから」

オレ「あ、そうなんだ」スタ、スタ

兄「んで、ここが女の家な! ・・・・・・おい、弟。お前がピンポン押せ」

弟「は、はあ? やだよ」

兄「いいから押せって! ガリガリ君買ってやったべ!」

弟「僕の分は自分で買ったし」ボソ

兄「・・・・・・菓子ババに頼んだのは俺だべや!!」

弟「訳分かんないし」

オレ「・・・・・・お、オレがチャイム鳴らそうか?」

兄「お、おおー・・・・・・流石、都会っ子だ」

ピーンポーン

ガチャ、バタン

女妹「はーい! あ、兄ちゃん!」

兄「おう!」ニカ

女妹「・・・・・・と、弟」ジトー

弟「・・・・・・う、うるせー」もじもじ

女妹「あと・・・・・・え? 誰!?」

兄「前に言ったべ。夏休みの間にうちに――」

女妹(ほ、本土の子だ・・・・・・)

オレ「あ、えっと。はじめま――」

女妹「きゃあああ!」

ガチャ、バタン!!

オレ「・・・・・・え?」

兄「あっはっは! 女妹は島ん外の奴が来るといつもこうなんだわ」

ドア『ちょ、ちょっと! 来るなら言ってよ!! 私髪ボサボサじゃない!!』

兄「中三だから、俺たちの二つ下な。弟と一緒に島ん学校通ってる」

オレ「な、なるほど」

二階の窓『兄君! 弟君! ただいまー!!』

兄「おえ!? お、お、おかえり!! そんなに窓から乗り出したら危ねえぞ!!」

二階の窓『あはは! 分かってるって!! 今降りるね』

兄「・・・・・・あれは女。って船で話したんだっけか」

オレ「ああ。少しだけ」

ドア『ちょ、ちょっとお姉ちゃん!! 開けないでって!!』

ガチャ、バタン

女「久しぶりだね! 皆」ニコ

兄「お、おう! 本土で、か、か、風邪引かなかったか?」

女「全然元気!」

兄「な、ならいい」

弟「・・・・・・おかえり、女さん」ボソ

女「ただいま、弟君」ニコ

女「オレ君は、さっきぶりだね」ニコ

オレ「ああ」

女妹「ちょ、玄関閉めてよ!!」

女「また恥ずかしがって! ちゃんとオレ君に挨拶しなさい」

女妹「・・・・・・女妹です」

ガチャ、バタン

弟「・・・・・・あ」

女「あはは、ごめんね?」

オレ「いや、別に」

兄「こ、今年も夏休み一杯いるのか?」

女「そうだよー?」ニコ

兄「そ、そっか!! あは、ははは」

――――
―――
――


――
―――
――――

女「ああ、オレ君に島を案内してるんだ! いいなぁ」

兄「お、女も、一緒に行くか?」

女「ごめん、今日は親戚が集まってるから出られないんだー」

兄「そ、そうか」

女「また明日にでも皆で一緒に遊ぼう?」ニコ

兄「! お、おう!!」ニカ

女「弟君もね?」

弟「はあ。うん、分かった」ボソ

女「オレ君、この島は何もないけど、楽しいことも一杯あるからね」ニコ

兄「夏祭りとかな!」

オレ「・・・・・・そっか」

女「じゃあまた明日ね!」

夜、民宿、食堂

「ご馳走様でした!!」

おじ「ふう、食った食った。で、どうだった?」

兄「おう、一通り案内した!」

おじ「ばっかちげえよ! 女ちゃんだよ」ニヤ

兄「はあ!? な、何にも変わってなかったわ」

おば「ふーん」ニヤ

兄「な、なんだよ!」

弟「ガキくさ」ボソ

兄「お、お前だって女妹の前でいいふりこいてたべや!!」

弟「ち、違う!!」

おば「はい喧嘩しない。オレ君、どうだった? 楽しく過ごせそう?」

オレ「・・・・・・はい、楽しいです」ニコ

おじ「当たり前だべ! 俺なら泳いでるだけで一ヵ月過ぎちまうわ」ニカ

兄「その通り!!」

おば「あっはっは! それは流石に無理だわ」ニコ

深夜、浜辺

ザザァ、ザザァ

オレ「・・・・・・」ザス、ザス

(がっはっは! こいつの飯は美味いべ!? オレ君!)

(オレ! 明日は泳ぎ行こうぜ!!)

オレ「・・・・・・」ザス、ザス

(汗かいたでしょう? お風呂はいっちゃいなさい、オレ君)

オレ「・・・・・・家族って、あんなに賑やかなものだったんだな」ザス、ザス

『目が覚めて、夢のあと♪』ジャラン、ジャラン

オレ「・・・・・・あ」

女「長い影が、夜にのびて、星く――あ」

オレ「あー・・・・・・えっと」

女「こんばんは、オレ君」ニコ

オレ「・・・・・・ああ、こんばんは」

夜、浜辺

ザザァ、ザザァ

女「今日は月が大きいね。ほら、星もこんなに」

オレ「・・・・・・」

女「・・・・・・今日は、楽しかったかな?」ニコ

オレ「ああ、うん」

女「そう」ニコ

オレ「・・・・・・本土の学校、行ってるんだっけ」

女「そうだよー。寮生でね。大型連休の時だけ帰ってくるんだ」

オレ「そっか」

女「オレ君は、何処から来たの?」

オレ「札幌」

女「あはは、都会だなぁ」

オレ「そう?」

女「そうだよ! ・・・・・・遠いなぁ」

オレ「・・・・・・え?」

ザザァ、ザザァ

女「・・・・・・この島ってさ、皆良い人なんだ」

オレ「そっか」

女「生まれた時から皆一緒に居るの。ずーっと一緒居て、ずーっと島に居る」

オレ「・・・・・・」

女「・・・・・・何だかさ、オレ君の目って、私に似てるよ」

オレ「・・・・・・?」

女「何かから、逃げてる目だ」

オレ「・・・・・・そんなことない」

女「ううん、そうだよ」ニコ

オレ「・・・・・・」

女「・・・・・・」

ザザァ、ザザァ。ザザァ、ザザァ。

兄「おーい! オレー! 母さんがスイカ切ったぞー!!」ザス、ザス、ザス

女「・・・・・・あはは! ほら、良い人が多いでしょ?」ニコ

兄「あれ!? お、女じゃんか!」

女「こんばんは! ギターの練習してたら、男君に会ったの」

兄「・・・・・・す、スイカ食うか?」

女「食べる」ニコ

ザザァ、ザザァ

女『夏が過ぎ、風あざみ。誰のあこがれに、さまよう♪』ジャラン

兄「美味いべ、スイカ」シャク、シャク

オレ「ああ」シャク、シャク

兄「女、やっぱ良い声だ。きっと歌手になれる」

オレ「・・・・・・」

兄「・・・・・・なんていうかさ、散歩とか、俺もかぜろって」

オレ「・・・・・・かぜろ?」

兄「あー・・・・・・誘えよ。俺ら従兄弟なんだし。仲良くしよーぜ」ニコ

オレ「・・・・・・うん」

女『八月は、夢花火。私の心は、夏模様♪ Mu…………』

ザザァ、ザザァ

8月1日・終

※続きは書き溜めてから更新します。
言い遅れましたが、PS2ソフト、『ボクの夏休み2』から設定を一部借りています。

8月2日、朝、民宿

お客「おー! 凄い! 時代を感じる!!」

お客「うん、そうだね」ニコ

おば「うちは三代続く民宿ですから。今日はご旅行ですか?」ニコ

お客「はい」

お客「あはは、楽しー」

兄「母さん行ってくる!!」タッタッタ

おば「こら! お客さんの前で!」

弟「・・・・・・いらっしゃいませ」スタ、スタ

オレ「あの、海、行ってきます」

おば「はーい。行ってらっしゃい」ニコ

朝、浜辺

ザア、ザア

兄「・・・・・・お、おは、おはよう!! 女!!」

女「おはよー」ニコ

兄「そ、それ、本土で買ったのか!」

女「え? ああ、そうそう。あっちのプール学習はみんな自分で水着選ぶんだよね」

女妹「兄ちゃん、お姉ちゃんの水着に興奮してるんだ」ジトー

兄「ち、違うわ!!」

オレ「・・・・・・凄いな、やっぱり。すげー青い」

兄「青くないわ!!」

弟「兄ちゃん、海の話だと思う」


ザア、ザア

女「あはは! いくよー! それ!」ポーン

女妹「弟! 遅いってば!!」

弟「う、うるせー」タッタッタ

兄「引き篭もってるからきついんだぞー! やっぱり男は外だー!」ニカ

オレ「・・・・・・毎日こういうことしてるの?」

兄「おう! 山も行くけどな」ニカ

オレ「あー・・・・・・クワガタ捕ったり?」

兄「ははは! それは流石にしないな。小学生の頃はよくやってたけどな」

オレ「・・・・・・そっか」

兄「お! クワガタ採りしたいのか?」

オレ「あ、いや。そーじゃなくて」

オレ(やったことないんだよな)

兄「よし! 午後は久しぶりにクワガタ採りに行くか!!」

女「久しぶりだね!」

女妹「えー子供臭くない?」

弟「そうだぞー」

女妹「真似すんな」ジトー

弟「ま、真似してる訳じゃねーよ」

透き通った海中

ザブーン!

オレ(・・・・・・すげえ。ずっと先まで見える)

女「・・・・・・」ニコ

兄「もが、もが!」ニカ

オレ(・・・・・・え? なんて?)

女妹(近づくな! 弟!)ブンブン

弟(近づくな! 女妹!)ブンブン

山中、昼

弟「ちょ、ちょっと・・・・・・ぜえ、ぜえ。待って」スタ、スタ

女妹「だっさー」ジトー

兄「ここら辺でいいか」ニカ

女「そうだね」ニコ

オレ「はあ、はあ・・・・・・」

兄「ええっとー、この木でいいか。いくぞー?」

女「うん!」

兄「ふん!」ドカ

オレ「はあ、はあ・・・・・・え?」

ボトボトボトボト

オレ「うおお!?」

女妹「ぎゃー!? 降ってきた!!」

弟「・・・・・・あ、ミヤマクワガタ」ガシ

女「ノコギリゲットー!」ガシ

兄「だはは! カナブン採れた」ガシ

女妹「ちょ、兄ちゃん! それあっち捨てて!」

兄「なんだ、まだ虫嫌いなおってないのか! ほれ!」ズイ

女妹「ぎゃー!! やめてー!」タッタッタ

兄「ほれほれー!」タッタッタ

女「あはは」ニコ

オレ「こ、これは・・・・・・?」ガシ

弟「それは、アシアカ」

オレ(な、生クワガタだ。生きてる)

昼、商店の前、ベンチ

兄「・・・・・・」シャクシャク

弟「・・・・・・」シャクシャク

女「・・・・・・」シャクシャク

女妹「・・・・・・」シャクシャク

オレ「・・・・・・いって!」

女「あはは! キーンてなった?」ニコ

女妹(都会っ子ってかっこいーなぁ)チラ

兄「やっぱブルーハワイだな!」

弟「ガキ臭」ボソ

兄「お前なんか牛乳だろ!? 邪道だろ!」

女「はいはい喧嘩しない」ニコ

菓子ババ「・・・・・・」シャクシャク

兄「・・・・・・なあ、なんで菓子ババも一緒に食ってんの?」

菓子ババ「その呼び方やめい!!」

夕方、島の中心部

女「楽しかったね。こんなに遊んだのは久しぶりだったよ」ニコ

兄「な、夏休みはこれからなんだから。沢山遊ぼうぜ」

女「そうだね」ニコ

女妹「したっけ。兄ちゃんとオレさん。あと弟」ジトー

弟「な、なんだよ」ジトー

オレ「うん、また」

ピリリリ、ピリリリ

兄「ん? 誰の携帯だ?」

女妹「私じゃないよ?」

オレ(そこは現代っ子なんだな)

女「あれ、オレ君のじゃない?」

オレ「・・・・・・あ」

携帯『親父』

女「出なくていいの?」ニコ

オレ「・・・・・・うん、いい」

女「・・・・・・そっか」

兄「帰るか! 腹減ったなぁ」スタ、スタ

弟「・・・・・・したっけ、女妹」スタ、スタ

女妹「ふん」

女「こらこら。そしたらね、皆」ニコ

夜、弟の部屋

コンコン

弟「・・・・・・どうぞー」ピコピコ

ガチャ、バタン

オレ「おばさんが、お風呂入れって」

弟「・・・・・・そっか」ピコピコ

オレ「・・・・・・それ、スト4?」

弟「え? 知ってるの?」

オレ「あ、ああ。こっちで流行ってるし」

弟「・・・・・・島の奴らってさ。みんな外だスポーツだ泳ぎだって、そればっか」

オレ「・・・・・・ああ」

弟「なんでかな、納得いかないよ」

オレ「面白いのにな、ゲームも」

弟「・・・・・・みんなにも言ってよ、それ」

オレ「ああ、分かったよ」

弟「ほんと!?」

オレ「え? あ、うん」

弟「・・・・・・あ。・・・・・・ありがと」

オレ「うん、そしたら」ガチャ

弟「あ、待って。僕も一緒に出るから」

オレ「うん」

夜、ベランダ

オレ「・・・・・・」

(オレ、夏休みは俺の生まれた島に行ったらどうだ)

(・・・・・・なんで?)

(お母さんは臨月で入院で、俺は出張だからだ)

(・・・・・・厄介払いだろ? つまり)

(なんでそんなことを言うんだ。お前が、一人だと心細いだろうからって)

(子供扱いすんなよ! もう17だぞ!?)

(あ、ああ。悪かった)

(・・・・・・行くよ。行ってやるよ)

(なんだそれは)

(うるせえな! 行くって行ってんだろ!!)

ガラガラ

兄「おう、オレ。ここに居たか」ニカ

オレ「・・・・・・ああ」

兄「アイス持ってきたぞ。どっちがいい?」

オレ「あ、じゃあこっちで」

兄「・・・・・・あ、女のギターの音だ。今日も浜辺で練習してんのかな」

オレ「・・・・・・」

兄「・・・・・・あいつさ、ミュージシャンになりたいんだって」

オレ「そうなんだ」

兄「・・・・・・本土の学校行ったのもさ、島から離れたかったからなんだと思う。あいつの親父さん、音楽とか嫌いだから」

(・・・・・・何だかさ、オレ君の目って、私に似てるよ)

オレ「・・・・・・」

兄「あいつすげー歌上手いし、可愛いしさ。多分なれると思う。ミュージシャン」

オレ「・・・・・・そうかもな」

兄「・・・・・・でもさ、それってなんか、すげー寂しい」

オレ「・・・・・・」

兄「・・・・・・あ、アイス溶けてきた」

8月2日・終


――
―――
――――

義母「ほら、オレ君。あなたの弟よ?」ニコ

父「可愛いだろう?」

オレ「あ、ああ」

義母「ほんっとにかわいいわよね。オレ君とは大違い」

オレ「・・・・・・え?」

父「これでやっと俺たちだけの子供が出来たんだ」

オレ「な、なんだよそれ」

義母「そうだ、これからは三人で暮らしましょう? 親子三人で」

父「ああ、死んだ女の子供なんかもういらない」

オレ「やめ、ろよ」

義母「なにしてるの? 早く出て行ってよ」

父「そうだ。お前はもう他人なんだから」

オレ「やめろって」

義母「ずっと邪魔だと思ってた」

父「手のかかる餓鬼だなぁ」

オレ「やめろよ!!!」

――――
―――
――


オレ「・・・・・・はあ、はあ・・・・・・夢?」ポタ、ポタ

オレ「・・・・・・あ」ごしごし

8月3日・朝

※続きは書き溜めてから更新します。

いいな

8月3日・朝

民宿、食堂

サァァァァァァ

おば「・・・・・・今日は小雨ねえ」

兄「父さん仕事は?」もぐもぐ

おじ「漁には出れねえな。船の様子だけ見に出てくるわ」

弟「・・・・・・」もぐもぐ

オレ「・・・・・・」ぼー

おば「あ、そうだ。あんたら宿題は進んでいるの?」

兄「ああ、ばっちりだぞ」ニカ

おば「弟は?」

弟「・・・・・・え? ああ、まあ」

おば「今年は受験生なんだから、しっかりしないと!」

兄「そうだぞー、勉強しろ」もぐもぐ

弟「どうせ兄ちゃんと同じ隣島の高校なんだし、いいじゃんか」ボソ

おば「だからって勉強しなくていいことにはならないべさ」

弟「・・・・・・分かってるってば」ボソ

おば「はあ、もう。・・・・・・オレ君はどうなの? 本土の学――オレ君?」

オレ「・・・・・・あ、え?」ぼー

おじ「ん? なした、オレ君」

おば「ちょっと、熱あるんじゃないの? 顔赤いわよ?」

オレ「あ、そうかも・・・・・・しれないです」

おば「・・・・・・あんたらー、昨日オレ君になにさせたんさ」じとー

兄「なにって、海泳いで山行ってクワガタとって、そんくらいだぞ」

おじ「そりゃあ・・・・・・普通だわな」

おば「普通って、島ん子じゃないのよ? オレ君は」

弟「・・・・・・大丈夫?」

オレ「・・・・・・ああ、うん。ありがとう」

おば「・・・・・・あんた、この後診療所連れて行ってくれる?」

オレ「いや、そんな」

おじ「遠慮すんな、軽トラ回してやっから」

おば「そうよ? 大事な父さんの子なんだから」

オレ「・・・・・・はい」

兄「あー・・・・・・ごめんな、オレ。もうちょっと考えるべきだったわ」

オレ「いや、オレが悪いから」

島、小雨の降る畦道、軽トラの中

サァァァァァ

ブロロロロロ

おじ「ったくはっきりしねえ天気だなぁ」

オレ「・・・・・・ありがとうございます」ぼー

おじ「おう、気にすんな。ぼんず共がもっと小せえ頃なんか、しょっちゅうだったわ」ニカ

オレ「はあ」

おじ「父と俺がガキん頃の時も・・・・・・ああ、お前の父さんことな?」

オレ「・・・・・・はい」

おじ「あいつはなぁ。小さい頃は兄ちゃん兄ちゃんって俺ん後ろヒョコヒョコついて来てたのに、
隣ん島の高校出たら大学行くんだって本土に行っちまった。そんなで綺麗な奥さんと小せえお前連れて帰って来てな」

オレ「・・・・・・」

おじ「オレ、あいつが本土行くのは反対だったからよ。どうせ上手くいきっこねえって。
それが帰ってきたら、あいつ嬉しそうな顔してやがんのよ。小せえお前抱きかかえて、どうだ、可愛いだろって。
オレぁなー、なんだか・・・・・・がはは、ちょっと羨ましかった」ニカ

オレ「・・・・・・」

おじ「お、もう着くぞ」

ブロロロロロ

診療所、朝

先生「――こりゃあ、あれですな。遊びすぎです」

オレ「・・・・・・すいません」ぼー

おじ「がはは! 熱出すまで遊ぶってのは良いことだわ!」ニカ

先生「遊び過ぎるのは良いことではありませんな」

おじ「・・・・・・すんません」

先生「今日は雨だ。船の様子も見に行くんでしょう? とりあえずオレ君はここのベットで寝かせときますから」

おじ「そりゃあ助かりますわ。んじゃ、ちょっと行ってくるからな、オレ君」

オレ「・・・・・・あ、はい」

おじ「おっかねえ先生だろ? ぶっとい注射打たれなくてよかったな?」ボソ

先生「聞こえてますよ」

おじ「が、ははは・・・・・・いや、こりゃあ、はは。そんじゃ!!」

診療所、病室

先生「この時期はよく子供が来るんですよ。やれ風邪を引いた、足くじいたーとね」

オレ「はあ」ぼー

先生「今は幸い静かな病室です。ゆっくり休みなさい」

オレ「ありがとうございます」

先生「はい布団から肩を出さない」

オレ「す、すいません」

先生「・・・・・・何かあれば大声で呼びなさい。私はいつでも居ますから」

ガラガラ、ピシャ

オレ「・・・・・・」ぼー

オレ「昨日、楽しかったなぁ」ボソ

患者「ねえ、君、本土の子?」

オレ「・・・・・・あ、え?」

患者「ああ、ごめんね。驚かせちゃった?」ニコ

オレ「いや、人が居ると、思わなくて」

患者「私はもうずっとここに入院してるの。肺が悪いんだって」

オレ「そう、すか」

患者「ねえねえ、君、遊びすぎて熱が出たんでしょう?」

オレ「・・・・・・あ、いや」

患者「ふふふ、さっきのおじさん声が大きいんだもの。ここまで聞こえてきたわ」ニコ

オレ「ああ、はは」

患者「いいなぁ。もう随分外を走ってないや」

オレ「・・・・・・」

患者「ねえねえ、本土の子なんでしょう? 言葉が綺麗だもの」

オレ「はい」

患者「青函トンネルって、もう繋がった?」

オレ「・・・・・・ああ、もう随分前に」

患者「すごーい!」

オレ「・・・・・・はは」

患者「あ、商店のお姉さんには会った? 怒るとすごい怖いんだから」

オレ「ああ、かき氷食べてました」

患者「そっか。もう夏だもんね」ニコ

オレ「・・・・・・」

患者「・・・・・・悲しい顔をしているのは、熱があるから?」

オレ「・・・・・・え?」

患者「あれ? 悲しいんじゃないの?」

オレ「・・・・・・悲しくないです」

患者「そっか」

オレ「・・・・・・」

患者「・・・・・・悲しい時はね、楽しいことをするんだよ」

オレ「・・・・・・」

患者「一杯遊んで、一杯笑って。そしたらね? 悲しいことなんて、なくなるんだから」ニコ

オレ「・・・・・・はい」

患者「悲しいことなんて、なにもないんだよ」

オレ「・・・・・・」

患者「ああ、楽しいなあ。誰かと話すのは」

オレ「・・・・・・」

患者「・・・・・・あれ?」チラ

オレ「・・・・・・ぐう・・・・・・すう、すう」

患者「・・・・・・」ニコ


――
―――
――――


――
―――
――――

「オレ君。迎えに来たぞ」

「静かに。寝ているんですから」

「・・・・・・がはは、子供みてえな顔して寝てやがる」

「彼はまだ子供ですよ」

「そうだ。はは、まだ子供ですわ」

オレ「・・・・・・ん・・・・・・あ、れ」

おじ「起きたか! どうだ、調子は」ニカ

先生「顔色は良いようですな。うん、熱も大分引いた」

オレ「・・・・・・あの、すいませんでした」

おじ「ん? なにがだ?」

オレ「いや、その、わざわざ運んでもらって、迷惑かけて」

おじ「なに言ってんだよ。家族じゃねーか」ニカ

オレ「・・・・・・はは」

先生「そうです。彼の監督不足が悪いのですよ」

おじ「いぇ!? がは、ははは・・・・・・すんません」

先生「君も疲れたらちゃんと休みなさい」

オレ「すいません」

先生「・・・・・・心配しなくても、時間はたっぷりありますよ。夏は、これからなんですから」

おじ「違ぇねえ」

患者「また、話しにきてね」ニコ

オレ「・・・・・・あ、うん」

おじ「どうした、オレ君。行くぞ?」ニカ

オレ「・・・・・・え? あ、はい」スタ、スタ

おじ「先生、そんじゃ、また来ますわ!」

先生「来なくていいようにしなさい」

ガラガラ、ピシャ

先生「・・・・・・まだ、居るのかい?」

先生「・・・・・・」

サァァァァ・・・・・・ァァァ・・・・・・ポツ、ポツ

先生「・・・・・・おお、綺麗な虹だ」

昼、民宿、二階、オレの部屋

おば「今日は大事をとって寝てなさいね」ニコ

オレ「はい」

おば「お父さんも心配してたわよー?」

オレ「・・・・・・え?」

おば「ああ、電話したのよ。さっき」

オレ「あいつは、心配なんか」ボソ

おば「ん?」

オレ「・・・・・・いえ」

おば「昨日お父さんからの電話出なかったんでしょう?」

オレ「いや、その」

おば「ちゃんと出なさい」ニコ

オレ「・・・・・・はい」

おば「女ちゃんも心配してたわ。お見舞い、きてくれるって」

オレ(じょ、情報が速い・・・・・・)

昼、山の麓、女の家

女母「あらそう。じゃあ向こうでもしっかり出来てるのね」ニコ

女「うん、頑張ってるよ」ニコ

女父「・・・・・・そうか。この先、島で使えるようなことは勉強出来てるか」

女「・・・・・・うんっ! 気象情報の勉強もあるからね」

女父「そうか」

女「・・・・・・」

女妹「良い男は居るのー?」ニヤ

女「あはは、それ――」

女父「本土の奴ぁは駄目だ」

女「・・・・・・」

女父「しっかり勉強して、帰ってこい」


――
―――
――――

夕方、民宿、二階、オレの部屋

オレ「・・・・・・はあ」

オレ「・・・・・・」

ガラガラ

女「・・・・・・お邪魔しまーす」ボソ

オレ「・・・・・・こんにちは」

女「あ、起きてたんだ」ニコ

オレ「ごめん、お見舞いさせて」

女「いいのいいの! 今日は暇だったし、外を歩きたかったから」

オレ「そっか」

女「・・・・・・」

オレ「・・・・・・」

女「来週はね、夏祭りがあるんだよ」ニコ

オレ「ああ、そうなんだ」

女「島の人達がみんな集まるし、隣島の人たちも沢山来るから、結構凄いんだ」

オレ「そっか」

女「オレ君も一緒に行こう?」ニコ

オレ「う――」

ガラガラ

兄「お、俺も一緒に行く!!」

女「きゃあ!? なんだ兄君か、びっくりしたー」

兄「俺も行くぞ、夏祭り!!」

女「うん、毎年一緒に行ってるじゃない」ニコ

兄「そ、そうだ!! オレに沢山美味いもん食わせてやるからな」ニカ

オレ「あ、ありがとう」

夜、民宿、二階、オレの部屋

弟「だから中パンチだと1フレーム遅いんだよね。だから――」

オレ「うんうん」

弟「・・・・・・分かってる?」

オレ「・・・・・・ごめん、全然」

弟「・・・・・・はあ、そうだよね」ボソ

オレ「・・・・・・今度、一緒にゲームやろう。教えてくれ」

弟「! うん、いいよ」ボソ

オレ「ああ」

弟「何がいい? 本土はFPSやってる人が多いんでしょ?」

オレ「お、おすすめで」

弟「2Pだと何かなぁ・・・・・・」

オレ「みんなでやるんじゃないの? 兄とか、女とか、女妹とか」

弟「! そ、そっか。うん。そうだ。それなら――」ニコ

オレ「うんうん」

オレ(今日は全然寝れなかったなぁ)

8月3日・終

※続きは書き溜めてから更新します。

お前何回スレ立てて何回投げ出すわけ?

※すいません、立てた後で一つずつ完結させていっているので。

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