「あなたが好きです。大好きです」(22)

夕方、放課後、美術室

先生「・・・・・・ほら、男君。もう君しか残っていないよ。早く終わらせないと」

男「・・・・・・んー、最後の色が決まらないんですよ」

先生「そういう時はね、思い切って好きな色を塗ってみよう」

男「好きな色って・・・・・・この絵、花瓶ですよ?」

先生「いいのいいの。嫌いな色で塗った絵なんて、楽しくないでしょう?」

男「そういうものなんですか?」

先生「私にとってはそういうものです」ニコ

男「んー・・・・・・先生の好きな色ってなんですか?」

先生「そうだなぁ、水色かな」

男「・・・・・・水色の花瓶かぁ」

先生「いや、自分の好きな色で塗るんだよ?」

男「ははは。分かってますって」

先生「・・・・・・あ、でも今は銀色が好きかも」

男「先生の好きな色を話しても、仕方ないんじゃなかったでしたっけ」

先生「あはは、ごめんごめん」

男「・・・・・・あ、指輪ってことか」

先生「うん、そうそう」

男「ご結婚おめでとうございます」

先生「おお、男君がしっかりと丁寧な言葉を」

男「茶化さないで下さいよ、しっかりと丁寧に祝っているんですから」

先生「ありがとう」ニコ

キーンコーンカーンコーン

先生「あ、もう時間だね」

男「はああ、やっと帰れるー」

先生「続きは明日の朝やりなさい」

男「うわ、まじすか」

先生「まじです。提出期限を一日延ばしただけでも、ありがたいと思いなさい」ニコ

夕方、放課後、校門

男「・・・・・・はあ、明日六時起きかよ」スタ、スタ

女「・・・・・・」

男「・・・・・・あ」スタ、スタ

男(足なっげーな)ドキドキ

女「え? ああ、男か。 なに、補習?」

男「いや、美術の課題が終わんなくてさ。放課後まで居残り」

女「それは、補習」

男「・・・・・・お前は? 何してんの」

女「補習帰り」

男「あはは、お前もかよ」

女「疲れた」

男「もう帰るんだろ? 駅まで一緒行くか」ドキドキ

夕方、駅のホーム

男「・・・・・・」ドキドキ

女「・・・・・・誘ったんだから、何か話してよ」

男「いや、だって何もないんだよ」

女「・・・・・・つまんない奴」

男「そんなこと言われたってなぁ」

女「・・・・・・美術の補習ってことは、先生か」

男「え? ああ、そうそう、先生な。好きな色が水色から銀色に変わった方の」

女「あれさ、何で水色か知ってる?」

男「あ、そこまでは聞いてない」

女「恋の色っぽいからだって」

男「ぶっ! ははは。何だよそれ。似合わねー」

女「そう? 案外お似合いだと思うけど」

男「あー・・・・・・まあ言われてみれば、確かに。でもさ、恋のイメージって赤とかピンクじゃないか?」

女「安直だなぁ」

男「素直って言え」

女「でもさ、恋の色って一種類じゃないと思う。ほら、人の数だけーみたいな」

男「恋の色を語る、お花畑な女子高生」

女「と、痛々しい男子高校生」

男「やめろ、なんか途端に恥ずかしくなってくるわ」

女「まあ、ようするに。赤とかレモンイエローとか水色みたいに、真っ黒な恋とかもあると思う」

男「真っ黒は流石にないだろ」

女「・・・・・・あるって。これだけ人が居るんだから」

男「あー・・・・・・そうかも」

駅員『まもなく、江別行き普通列――』

女「・・・・・・」

男「・・・・・・やっぱり真っ黒はないだろ」

女「分かった分かった」

翌日、始業前、廊下

男「はあ、ねみい」スタ、スタ

友「あれ、男じゃん、おはよー。ていうか今日早いな」

男「おう、お疲れ」

友「お疲れ?」

男「朝から補習だった。六時起き」

友「だはは! ざまーみろだ」

男「声でけえ、頭痛くなるわ」

友「俺なんか朝練で毎日五時半起きだぞ? 少しは俺の凄さが分かったか」

男「ああ、早起きが凄く好きなんだな」

友「いや、バスケが好きなんだよ」

友「そういえば、昨日の放課後女と歩いてたって?」

男「あ、ああ」

友「付き合ってんの?」

男「はあ? なんでそうなるんだよ」

友「二人きりで歩くってそういうことだろ」

男「それなら俺とお前も付き合ってることになるけど」

友「いや、それはないわ」

男「・・・・・・うわ、ごめん。キモいな」

友「ああ、スーパーキモいわ」

男「まあとりあえず、付き合ってはいないぞ」

友「とりあえず?」ニヤ

男「・・・・・・全く付き合ってはいない」

友「ははは、寂しい男だな」

男「お互い様だろ」

始業前、教室

ガラガラ

友「おいーっす」

帰宅部「おう、おはよ。てか男早くね?」

男「もう聞かないでくれ」

友「朝補習だってさ」

帰宅部「ははは」

女「・・・・・・」

男「・・・・・・女、おはよ」ドキドキ

女「おはよ」ニコ

男「え!?」

友「どーした男、大きい声出して」

男「あ、いや。・・・・・・別に」

友「そっかそっか。てかお前そろそろバスケ部入れよー、人足りねえ」

帰宅部「いやだよ、朝練したくねーし」

男(・・・・・・なんかいつもと違わないか?)ドキドキ

女「・・・・・・」

四時限目、教室

先生「その西洋人の優れて白い皮膚の色が、掛茶屋へ入るや否や、すぐ私の注意を――」

ギャル「先生質問」

先生「ん? なにかな?」

ギャル「結婚生活はどうですかー」

先生「俺の話は良いだろ。はい、みんなも笑わない」

ギャル「あはは、はーい」

友「・・・・・・すう、すう・・・・・・ぐが・・・・・・すう、すう」

男「・・・・・・」チラ

女「・・・・・・」スラスラ

男(朝の笑顔は何だったんだろう、いつもは無表情なのに)

男(なんか、良いことでもあったのかな)

女「・・・・・・」ニコ

男(あ、また笑ってる・・・・・・可愛い)

男「いや! 違う違う!」

友「・・・・・・ほえ?」

先生「どうした、男」

男「あ! いや。・・・・・・すいません」

先生「・・・・・・大抵は頭に護謨製の頭巾を被って、海老茶や紺や藍の色を波間に浮かし――」

男(は、恥ずかしい・・・・・・ていうか女こと見過ぎだろ、俺・・・・・・友が余計なことを言ったせいだ)ドキドキ


昼休み、美術室

男「・・・・・・」もぐもぐ

先生「・・・・・・あ、今日の卵焼きは成功だ」

男「そうすか」もぐもぐ

先生「・・・・・・それで、どうしたの?」

男「え?」

先生「私に何か話したいことがあるから来たんでしょう?」ニコ

男「あ、あー・・・・・・はい」

先生「言ってみなさい」

男「・・・・・・笑わないで下さいよ? えっと」

――――
―――
――

先生「あははは!」

男「わ、笑わないでって言ったじゃないですか!」

先生「ごめんごめん、はは、可愛いなぁ。というより、そういうのはクラスメートとかに話すことじゃないの?」

男「いや、ほら。先生、最近結婚したじゃないですか。そういうの話し易そうっていうか」

先生「なるほど」

男「・・・・・・なんか、最近女が変なんですよ。目で追っちゃうっていうか。今日なんかニコって笑ったんですよ?」

先生「それは女君が変わったっていうより、男君が変わったんじゃないのかな?」

男「そうなんですか?」

先生「うんうん。相手を好きになるとね、前とは見え方が変わってくるものだよ」

男「す、好きとは言ってないじゃないですか!」

先生「あれ? そういう話じゃないの?」

男「そう、ですけど」

先生「よし、ならデートに誘ってしまおう」

男「え!? は、早くないですか?」

先生「こういうのは早い方が良いと思うよ。ぼやぼや片思いをしていたら、他の人に取られるかも」

男「あ・・・・・・それは」

先生「そうでしょう? 高校生活も後一年なんだから、思い切ってやってみなさい」ニコ

男「は、はい!」

先生「うんうん」



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          19:22「お疲れ」

女「なに?」19:31

          既読
          19:38「土曜日暇?」

女「暇じゃ」19:45

          既読
          19:48「暇じゃ、ない?」

女「暇じゃ(おじいさん)」19:50

          既読
          20:02「ああ、そういう」

女「で、なに?」20:07

          
          20:29「遊びに行かない?」

夜、男の部屋

男「・・・・・・返事、来ないな」

男「・・・・・・」

男「・・・・・・なんだこれ。なんの間だよ」

ピコン

男「うわ! き、来た」ドキドキ

女「い」21:04

男「お、お・・・・・・?」

ピコン

女「ミス。いいよ」21:04

男「・・・・・・はあ。心臓に悪い」

男(・・・・・・そっか、俺、デートするのか・・・・・・女と)

男「・・・・・・うおぉぉ!」バタバタ

深夜


女「・・・・・・ん・・・・・・あっ」

先生「・・・・・・はあ・・・・・・ん」

女「・・・・・・んん・・・・・・先、生・・・・・・?」

先生「・・・・・・はあ、はあ・・・・・・なんだい?」

女「ヨダレ、糸引いてる」

先生「は、はは。お互い様じゃないか」

女「・・・・・・ねえ先生、嬉しいですか?」

先生「ああ、嬉しいよ」

女「・・・・・・幸せですか?」ギュ

先生「はあ、はあ・・・・・・ああ、幸せだ」

女「そう」ニコ

先生「・・・・・・そろそろ、名前で呼んでくれないか?」

女「あれ? 制服のまま押し倒すから、そういうのが好きなんだと思っていました」

先生「俺は、そ、そんな変態じゃないよ」

女「あはは、そうですね」

先生「・・・・・・お、女君、本当に、良いのかい?」

女「・・・・・・いいよ、おいで?」

先生「あ、ああ」ゴクリ

女「・・・・・・その前に、指輪、はずしてくれますか?」

先生「・・・・・・え?」

女「私が欲しいんでしょう?」ニコ

先生「・・・・・・は、ははは。ああ、ほ、欲しいよ・・・・・・これで、いいんだろう?」スル、ポトリ

女「はい」ニコ

先生「・・・・・・じゃ、じゃあ・・・・・・入れるよ」ズイ

女「んあ・・・・・・痛っ・・・・・・ああ!」

先生「あ、はぁぁ・・・・・・あ、あはは、温かいよ」ズイ

女(ああ・・・・・・私、真っ黒だ。最低の、クズだ。はは、は・・・・・・でも、)

女「先生だって、そうでしょう?」ボソ

先生「・・・・・・はあ、はあ、え?」

女「・・・・・・」ニコ

ポタ、ポタ

――――
―――
――

※続きは書き溜めて更新します。


深夜、先生の家

ガチャ、バタン

「おかえりなさい」ニコ

「・・・・・・あ、ああ。ただいま」

「遅かったんだね」

「ほら、大学の同期と飲むって昨日言っただろ」

「そうだったね。お風呂どうする?」

「入った」

「え?」

「あ、いや、入るよ」

「はーい」ニコ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年03月13日 (月) 07:39:47   ID: 6VKp7GPm

ハッピーなエンドであってくれー!!

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