【咲-saki-】咲「認めたくない恋心」健夜「……??」 (23)

健夜「そろそろ閉幕インターハイ」咲「終盤戦、ですね」
健夜「そろそろ閉幕インターハイ」咲「終盤戦、ですね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483081118/)など、関連作品の設定を引き継いだ短編です。

纏まってしまったので、一つの短編として投下。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1488972523


昔読んだ小説に、"好きな人と過ごす時間は、何よりも変え難い"というフレーズがあったが、それはどの小説だっただろう?



いつもの放課後の部室……私物のパソコンで何やらカタカタ打ち込んでいる健夜さんを、どうしてか備え付けられているベットに寝そべってコッソリ観察しながら、そんな事を思う。

それなら今この瞬間は、私にとって何よりも変え難いものになっているんだろうか?、と。


咲(……いやいや、どうして健夜さんを見てそんな事を思い出さなきゃいけないんだ)


小っ恥ずかしい想像をブンブンと首を振って否定すると同時に、赤くなった頬を抑える。


……だけど、正直な話。本当に正直な話だ。


私は少なからず健夜さんに好意を持っているんだと、思う。


……いや、この際はっきりと言っておく

咲(私は、健夜さんの事が……す、すす、す………)チラリ


健夜「うぅん……」カタカタ

咲「うあぁぁぁぁぁぁ……!!!/////」ゴロゴロ


健夜「!?」ビクッ



なんなんだ、なんなんだこれは。
いつから私は恋愛小説の登場人物の如き悩みに苛まれるような人間になったのか。


でも最早、自分自身の気持ちに嘘を吐き続けるのも無理な気がしない事も無い。

インハイを観戦しに行って……その、色々とあって……思い出すだけで顔が赤く染まっていくのが分かるが、ほぼ告白と取れるような発言をしてしまったのだ、そろそろ認めてしまってもいい頃だろう。



……もっとも私自身、あの時はかなり取り乱していて、そんなつもりで言葉にしていた訳では無いのだけど…

けれど、嘘は言っていない。
言っていないという事はつまり、本音だったという事。


咲(本音だったって事は、つまり、やっぱり私は……)



咲「うぅ……/////」ジタバタ

ああ、もうダメだ。この事ばかり考えていたら身が持たない…恥ずかしすぎる。
茹で上がるとは比喩表現だが、今となっては本当に食べ頃のタコになってしまいそうだ。



……そうだ、発想の転換!
逆に、健夜さんのダメなところ…つまり、好きになんてなり得ない要素を挙げてみよう。
そうすればきっと、この変な気持ちを打ち消してくれるはず……!


そうと決まれば、思い立ったが何とやら。
まずは、健夜さんの容姿から探していこう。


ベットに横になりつつ、健夜さんに気付かれないようパソコンをいじるその横顔を観察する。


……というか、私がいるのにずっとパソコンと睨めっこしているとは、一体どう言う事なのか。少しくらい、私に構ってくれたって良いんじゃ?
なんだか、パソコンに負けたようで腹立たしい。
後でさりげなく壊してやろうか…。

っといけない。また余計な思案に耽るところだった。
ともかく、健夜さんに気付かれないよう最新の注意を払いながら、健夜さんを改めて観察してみる。


ああ、もうダメだ。この事ばかり考えていたら身が持たない…恥ずかしすぎる。
茹で上がるとは比喩表現だが、今となっては本当に食べ頃のタコになってしまいそうだ。



……そうだ、発想の転換!
逆に、健夜さんのダメなところ…つまり、好きになんてなり得ない要素を挙げてみよう。
そうすればきっと、この変な気持ちを打ち消してくれるはず……!


そうと決まれば、思い立ったが何とやら。
まずは、健夜さんの容姿から探していこう。


ベットに横になりつつ、健夜さんに気付かれないようパソコンをいじるその横顔を観察する。


……というか、私がいるのにずっとパソコンと睨めっこしているとは、一体どう言う事なのか。少しくらい、私に構ってくれたって良いんじゃ?
なんだか、パソコンに負けたようで腹立たしい。
後でさりげなく壊してやろうか…。

っといけない。また余計な思案に耽るところだった。
ともかく、健夜さんに気付かれないよう最新の注意を払いながら、健夜さんを改めて観察してみる。


咲(次は……性格?)

これに関しても、はっきり言ってしまうと好きな方だ。
寛容で優しいけど、間違ったことをしたらちゃんと叱ってくれる。

……ちょっとヘタレで鈍感な所もあるけど、そこに助けられてきた事も多いしプラマイゼロかな。


性格が悪い人というのを想像して思い当たる節が無いから比較はできないけど、きっと健夜さんは性格が良い方なんだと思う。


咲(べ、別に、好きってことじゃ……ないけど……っ)


乙女宮永咲、言っていることに矛盾が生じ始めた。




咲(次は、身長と年齢……)


実は最近気が付いた事なのだが、健夜さんより私の方が身長が高い。
まあ、パッと見で分かるほど差がある訳では無いけどね。

この事を健夜さんに教えた翌日、部室の冷蔵庫に見覚えのない牛乳が増えていた時は、さすがにお腹を抱えて笑った。


咲(別に、気にしなくったって良いのに)クスクス


ともあれ、身長は特に気にする要素でもなしに、年齢差もあまり気にした事は無かった。

出会い方が出会い方だっただけに信頼は全て預けているし、健夜さんに対しては年齢ではなく人柄で接しているから、簡単な話、近所の仲のいいお姉さん位の認識でいる。
アラサーアラサーとからかう事はあっても、その事で躊躇いや気遣いがある訳ではない。
これは多分、マホちゃんも同じだろう。



しかし、そういう私たちの健夜さんへの態度が中々どうして珍しい物だという事は、インハイ観戦時に教えて貰ったことだ。



麻雀を少し嗜んでいる人にとって小鍛治健夜とは尊敬に値する人物であって、言うなれば雲の上の存在だと、長野の選手や阿知賀女子の面々、後夜祭で知り合った人は言っていた。
あのみなもでさえ、生半可な人じゃないと評価を下す程だ。


国内無敗、永世称号七冠、元世界2位……改めてこの目の前で私を放ったらかしにしてパソコンと睨めっこする人の成績を思い出せば、なるほど、確かに次元の違いを感じさせるなぁと思う。

けれど、今更それを私が再認識した所で(いや、健夜さんの輝かしい成績は重々承知済みであったが)健夜さんへの評価が変わるかと聞かれても、答えはNOだろう。

>>6の前が一つ抜けてました。


咲(まず、顔立ち……)


やっぱり、アラサーとは思えない程の童顔……。高校生時代の映像を見た事があるけど、全くと言っていいほどに変わってない。

贔屓目に見ても、恐らくだけど、可愛らしい部類に入るとは思う。
というか、三尋木プロとか野依プロ辺りのインハイで解説に呼ばれていたプロは、ほとんどが綺麗だったりした印象がある。

マホちゃんが、『顔が良くないとプロ雀士にはなれないんでしょうか~?』だなんて結構な真顔で言うほどに、だ。

『もしそうだったとしても、マホちゃんは可愛いから大丈夫だね』って返したら顔を真っ赤にしていた。可愛い後輩だな。



しかし話を戻すと、健夜さんの顔立ちが好きになり得ない要素となるかと聞かれたら、NOだろう。
健夜さんが可愛いというのは、不本意ながらも認めざるを得ない事実であるし……。

そりゃ、雑誌や過去の戦績だけを知る人は尊敬の眼差しを向けて気安く接するなんて無理な話だろうが、私は今の小鍛治健夜という人物を知っている。
知っているからこそ、気安く罵る事もできるし、話しかけて緊張なんてしない。

言葉にはし難いが、そういう関係になってるんだ。
過去の健夜さんに憧れていないかと言われたら否定するけど、肯定も必要ない。


健夜さんが過去の私じゃなく今の私を見ていてくれるなら、私も同じ事をしたい。
そう、家事全般ダメダメで、どこか抜けていて、だけど優しくて厳しい…そんな健夜さんを隣で見ていたいな、そう思う。



咲(……あれ?私、どうして健夜さんの良いところを挙げてるんだろ…)

いつの間にか、当初の目的と真逆の事を脳内で繰り広げていた。


咲(し、しっかりしなさい宮永咲!どうにか、どうにかしてあの人の悪い所を見つけなければ!)

これではまるで、自分の脳内で自分に対して健夜さんへの惚気をしているようではないか。
そう考えると私はなんて恥ずかしい事をしていたんだと、またもゆでダコの出来上がりである。



しかしもう、ここまで来ると諦めもつく。
いや、元々勝ち目の無い勝負をしていたも同然だったんだ。
健夜さんへの気持ちは、どう私が頑張ろうとも覆りはしない。


ふと、少し前にマホちゃんから『先輩ほど、嫌よ嫌よも好きの内という言葉が似合う人も居ませんね』と言われた事を思い出す。

その時私は、嫌がどうすれば好きと繋がるのかと不思議に思ったが、なるほど的を射ているなと今となっては感じてしまう。

あの言葉はそのまま、私と健夜さんの事を言っていたのか。
それも踏まえるのなら、やはり答えは分かりきっていた。





結論、私宮永咲は不本意ながらもあの小鍛治健夜の事が好きなのである。


ここで不本意という言葉を意地でも付けてしまうから、マホちゃんに『素直じゃ無いですね~』と全てを見透かされているような笑顔で言われてしまうんだろうか?

でも、照れるものは照れるのだから仕方がない。
なんせ、恋なんて感情は初なのだから。


愛、ならばある。
姉である宮永照、宮永みなもの事は愛しているし、勿論後輩のマホちゃんの事も愛している。

しかし、恋となれば話はまた別で……



健夜「咲ちゃん、さっきから1人で百面相してどうしたの?」


咲「ふきゅっ!?」ビクッ


健夜「あははっ、面白い驚き方」クスクス



なんという事、いつの間にこの人はすぐ隣にいたんだろうか……。
考えていた事が事だけに、取り繕うのが大変だ。



咲「……なんだ、絶賛パソコンに浮気中だった健夜さんじゃないですか」

咲「デートの予定は取り付けられましたか?」フイッ


健夜「う、浮気!?」


……でも、折角だ。
折角、断腸の思いで恥ずかしい結論に至ったんだから、少しくらいは成果を出してみたくなる。



咲「ついには無機物に縋るなんて……可哀想で声もかけられませんでしたよ」


健夜「……もしかして、構ってあげられなかったの怒ってる…?」


咲「……別に、怒ってませんけど?」


健夜「やっぱり、怒ってる」


咲「怒ってないです」


健夜「……それなら、またパソコン触ってきても良い?」


咲「私の機嫌を悪くする趣味があるのなら、どうぞ」


健夜「……やっぱり、怒ってたんじゃん」フフ


咲「怒ってはいませんが、私の機嫌を良くしたいならここで私の枕代わりにでもなってください」


健夜「素直に膝枕してって頼んだら良いのに」


咲「……」ジッ


健夜「ふふ、分かってます。仰せのままに」ニコリ


私にとって想いを素直に伝えるというのは、この世の何よりも難しい事だ。
だから私は、言葉にしなくても察してくれる健夜さんに、いつも甘えてしまうんだと思う。


だからこれは、甘えを必要としなくなる為の第一歩だ。



咲「」コソリ

健夜「!!」




健夜「……うん、分かってる」ニコリ




"好きな人と過ごす時間は何よりも変え難い"

それはきっと、その時間は特別に良いモノではなく、変えられない程に人生にとって当たり前のモノになるという事なのかな。


ならば私は、既にそれを手に入れているなと微笑み、そして眠りについた。

カンです。
初めて地の文を主に書いてみましたが、難しいですね。
読んでくださった方、ありがとうございましたっ!(ペッコリン)

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