静香「夢の線上で」 (42)

※このSSの中には実在の人物と似た名前のキャラクターが出てきますが、全てフィクションです。

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楽屋


「……ず ……あず」

静香(…… ん、私眠ってたのかしら、リハーサル前なのに、疲れがたまってたのかな)

「ころあず、起きてころあず」

静香(この声…… 未来? 今日は未来は来てなかったと思うんだけど)

静香「ごめんなさい、少し眠ってたわ」

ぴょん吉「あ、良かったー 結構ぐっすり寝てたからこのまま背負って帰らなくちゃいけないのかなーって思ったよー」

静香「え……」

静香(だ、誰この人…… ? ていうかよく見たらここ劇場じゃないわ!)

ぴょん吉「ん、どしたの?」

静香「きゃっ!」

静香(これ…… 鏡よね!? てことはこれ私!?)

ぴょん吉「本当どうしたの…… ? どこか具合悪い?」

静香「……」

静香(…… そっか、きっとこれは前に未来が言ってた『入れ替わってる』って奴ね)

静香(つまり私は今『ころあず』さんとしてここに居るってことで)

静香(怪しまれないように上手く切り抜けないと……)

静香「ううん気付いたら眠ってて、いきなり声かけられたから驚いちゃっただけよ」

ぴょん吉「あっ、そうだったんだ、あんまり待たせちゃったから怒ったのかと思って心配しちゃった」

静香「ううん、そんなこと無いわよ」

ぴょん吉「それじゃあ行こっか」

静香「ええ」

静香(ど、どこに行くのかしら……)

静香(でもある意味ラッキーかも、この人に着いて行けば悪いようにはならないわよね、多分……)

ぴょん吉「あ、タクシー!」

運転手「どこまで行きますか?」

ぴょん吉「◯◯駅までお願いします」

ぴょん吉「ふふっ、何かこうやって移動にタクシー使ってると芸能人って感じするよね」

静香「そ、そうかもね……」

静香(発想が未来と同レベルだわ……)

静香(それよりこの人のこと調べなきゃ、携帯は…… ロックされてるし無理ね)

静香(あっ…… そう言えば楽屋に確か『山崎はるか』って書いてあったはず……)

静香(それならこの人は『山崎はるか』さん、かしら)

ぴょん吉「ね、ころあず」

静香「な、何?」

ぴょん吉「いやさっきから黙って難しい顔してるしどうしたのかなーって」

静香「そ、そんなこと無いわよ」

ぴょん吉「あ! もしかして緊張してる?」

静香「緊張?」

ぴょん吉「私の家でお泊まりって結構久々だよね」

静香(お、お泊まり…… !?)

ぴょん吉「明日はお仕事午後からだからさ…… ね?」

静香(えっ! 手握られた…… ?)

ぴょん吉「楽しみだね」

静香「そ、そうね……」

静香(わ、私どうなっちゃうの……)

最寄駅


運転手「ここで大丈夫ですか?」

ぴょん吉「はい、ありがとうございます」

ぴょん吉「それじゃ、ちょっと歩こっか」

静香「え、ええ」

ぴょん吉「……」

ぴょん吉「手、繋いでいこっか」

静香「えっ!?」

ぴょん吉「家まで少しだけどさ、恋人気分…… みたいな?」

静香「う、うん……」

静香(な、何この状況……)

静香(なんで私さっき初めて会った人と恋人繋ぎして、そのままお泊まりしようとしてるの……)

静香(『恋人気分』って言ってたけど、この二人付き合ってるんじゃないの? この沈黙してる感じだってそれこそ付き合い初めのカップルみたいだし……)

ぴょん吉「ねぇ」

静香「な、何?」

静香(あと、この未来に似た声もまだ慣れない…… 声だけ聞いてるとまるで未来とデートしてるみたいだし)

ぴょん吉「手汗凄くない?」

静香「えっ!?」

ぴょん吉「ほら見て、ころあずの手 こんな汗かいてるよ」

静香「……」

静香(この人はなんでデリカシー無いところまで未来と似てるのよ!)

静香「もう! ほっといてよ!」

ぴょん吉「あはは なんか面白くてさ~」

ぴょん吉 自宅


ぴょん吉「着いたね」

静香「お、お邪魔します……」

静香(着いてしまったわ……)

ぴょん吉「じゃあころあずの分のパジャマ出すからそこで待ってて」

静香「う、うん」

静香(何でこの人の家に私の分のパジャマがあるの……)

静香(…… この部屋、なんでダンボールがこんなに沢山あるんだろう)

静香(引っ越したばっかりって訳でも無さそうだし…… 中は何かしら……)

静香(漫画…… ?)

静香「……」

静香「……」

静香「ナニコレ」

ぴょん吉「お待たせ~ って、もー何読んでるの」

静香「あっ! え、えっと…… ごめんなさい!」

ぴょん吉「あ、別に謝らなくてもいいけど」

静香「て、違うわ何よこれ! こんなもの見えるところに置いとかないで!」

ぴょん吉「えー、そんな今さら」

静香「て言うかもっと片付けなさい! ダンボールに詰め込むのは片付けじゃないのよ!?」

ぴょん吉「これでもころあずが来るから頑張って片付けたのに~」

静香「多過ぎるのよ! 少し捨てなさい!」

ぴょん吉「えぇ! これは私の宝物なんだよ!? 捨てるなんて絶対ダメ!」

静香「もう、ほんと信じられない…… いつの間にそんな趣味になったのよ未来は……」

ぴょん吉「え?」

静香「あっ!」

静香(しまったつい『未来』って……)

静香「は、はるか…… ?」

ぴょん吉「え?」

静香(ち、違った? 『山崎はるか』さんじゃなかった……)

静香(ど、どうしよう…… 名前呼び間違えてこの二人の関係が悪くなったら…… 私責任取れないわよ……)

ぴょん吉「『はるか』って、ふふっ 下の名前そのまま呼ぶなんて珍しい~」

静香(だ、大丈夫…… だったのかしら)

ぴょん吉「そうだよね、せっかく二人きりなんだし今日は特別な呼び方しよっか? あずさ」

静香「う、うん…… はるか」

静香(何かどんどん引き返せなくなってるような……)

ぴょん吉「ご飯出来たよー」

静香「ありがとう」

静香(落ち着いてご飯食べてる場合じゃないわよね……)

静香「ん、おいしい……」

ぴょん吉「ほんと? ありがとう」

静香「ええ、とってもおいしいわ……」

ぴょん吉「あずさのことを思って作ったからね」

静香「あ、ありがとう……」

静香(もういっそ私は『ころあず』さんじゃないって言った方が……)

ぴょん吉「♪~」

静香(無理ね…… こんな楽しそうにしてる人に対してそんなこと言うのは)

ぴょん吉「お風呂、どっちが先に入る?」

静香「貴女か

ぴょん吉「そだ! 一緒に入る!?」

静香「い、嫌よ!」

ぴょん吉「えー…… ?」

静香「あ、いや その、やっぱり一緒に入るのは…… ちょっと……」

ぴょん吉「私とあずさの仲なのに?」

静香「っ……」

静香(う、嘘でしょこの二人って そ、そんな関係なの…… ?)

静香「え、えと……」

ぴょん吉「ふふ、ごめんごめん やっぱり一緒にお風呂入るのは少し恥ずかしいよね 先入ってきていいよ」

静香「あ、ありがとう…… はるか……」

ぴょん吉「ん!」

ぴょん吉「お風呂も上がったし、髪も乾かしたし、次は~」

静香「寝ましょうか」

ぴょん吉「えぇ! もう!?」

静香「だってもう11時よ? 早く寝ないと健康にも悪いわよ」

ぴょん吉「え~ せっかく二人で見るためにブルーレイ用意してきたのに~」

静香「それに…… 私もう眠いわ……」

ぴょん吉「うぅ~ それじゃあベッドでガールズトークしよ……」

静香「まぁ寝る前に少し話すくらいなら……」

静香「……」

静香「ねぇ、私が寝る布団は?」

ぴょん吉「え、一緒に寝るでしょ?」

静香「え……」

静香「ええええっ!?」

ぴょん吉「えっ、そんな驚くとこ?」

静香「…… あ、ごめん」

静香(こ、この二人はそういう関係なんだからそのくらい覚悟しなくちゃダメよね)

静香(き、きっと二人一緒に寝て…… その……)

静香「そ、そうね 私もはるかと一緒に寝たいわ」

ぴょん吉「ふふ…… ばーんっ」

静香「きゃっ! ちょっと何するのよ!」

ぴょん吉「押し倒した?」

静香「そ、そういうこと聞いてるんじゃなくて!」

ぴょん吉「私もたまにはオオカミさんになろうかな~ って」

静香「っ……」

静香(や、やだ この人本気の目してる…… これって本当に……)

ぴょん吉「ね…… 目閉じてよ」

静香(か、顔近い! こ、これじゃほんとに……)

静香(やだ…… 私ファーストキスなのよ…… いやこれは他の人の体だから厳密にはファーストキスにならないのかもしれないけど!)

静香(でも…… それでも…… 今日初めて会った人と人違いされたまま初めてのキスを奪われるなんて嫌!)

静香(それに…… きっとキスだけじゃ終わらないわよね…… キスの先のもっと……)

静香(あぁ…… 助けて、助けてよ未来! 私は初めては貴女としたかったの!)

静香「……」

ぴょん吉「ぷっ……」

静香「…… え?」

ぴょん吉「ふふふ……」

静香「し、しないの…… ?」

ぴょん吉「いやぁ…… さっきから目を閉じてぷるぷる震えてるの見てるのが面白くて……」

ぴょん吉「ねぇ、あなた静香ちゃんでしょ? 最上静香ちゃん」

静香「えっ!?」

静香「な、何言ってるのよ 私は……

ぴょん吉「うん、ころあずと体が入れ替わったんだよね? 私も経験したことある、て言うか会ったことあるよね私たち」

静香「え…… ?」

ぴょん吉「ほら、この前私が未来と入れ替わってた時」

静香「あ、貴女あの時の…… !」

ぴょん吉「ふふっ、ほんと静香ちゃんは純真で可愛いね~」

静香「……」

ぴょん吉「途中で気付いたんだけど静香ちゃんの反応見るのが面白かったからついイタズラしちゃった ごめんね」

静香「いつから私だと……」

ぴょん吉「んー、うちに着く前にはそうなんじゃないかなーって思ってたかな」

静香「大分前から気付いてるじゃないですか!」

静香「どこでころあずさんじゃないとわかったんですか?」

ぴょん吉「んー、挙動不審なところとか、ちょっと発言が変なところとかもあるけど、やっぱり一番は私に甘えてこないところかな」

静香「…… ノロケですか?」

ぴょん吉「うん、ころあずとだったらもっとイチャイチャしてたんじゃないかなー?」

静香「もういいです……」

ぴょん吉「それじゃ、ガールズトーク再開しよっか!」

静香「ちょ、ちょっと待ってください! 私はころあずさんじゃないんだから別の布団で」

ぴょん吉「静香ちゃんはもう実質私の家族みたいなものだから全然オッケーだよ!」

静香「私が気にするんです!」

ぴょん吉「一緒に寝ようよ~」

静香「うぅ……」

静香(この人…… 未来より押しが強い……)

静香「…… で、何を話すんですか」

ぴょん吉「うん、未来ちゃんのことを聞かせて欲しいな」

静香「未来のこと?」

ぴょん吉「そう、静香ちゃんは未来ちゃんと仲いいでしょ? だから未来ちゃんのこといっぱい聞かせて欲しくて」

静香「そう言われても…… 未来の何を話せば」

ぴょん吉「じゃあ…… 静香ちゃんって未来のこと好き? もちろん恋愛的な意味で」

静香「な、なんですかその質問!」

ぴょん吉「あ、聞くまでも無かったかな~?」

静香「からかわないでください!」

ぴょん吉「ねぇ静香ちゃんて未来と付き合ってたりするの?」

静香「つ、つつ…… あぁ もう!」

ぴょん吉「ふふっ、中学生には刺激が強すぎた?」

静香「何か別の話無いんですか?」

ぴょん吉「あ、じゃあ静香ちゃんと入れ替わってるころあずの話する?」

静香「それなら、まぁ」

ぴょん吉「ころあずのことなら何でも知ってるからね、何でも聞いて」

静香「えっ、じゃあ…… えっと、その…… 貴女とこのころあずさんはどういう関係で……」

ぴょん吉「え? 嫁だよ」

静香「はっ!?」

ぴょん吉「私たち結婚してるの!」

静香「…… 嘘ですよね」

ぴょん吉「え、バレた?」

静香「悪い大人の顔してました」

ぴょん吉「ころあずの好きなところは~」

静香(聞いてないのに語り始めたわ……)

ぴょん吉「私に甘えてくるところとか、たまに拗ねるところとかもなんだけど」

ぴょん吉「ふともものさわり心地とかがね~」

静香「ひゃっ! ちょっと何するんですかセクハラで訴えますよ! 中学生に手を出すなんて……」

ぴょん吉「えー? 今はころあずの体でしょー?」

静香「セクハラするならころあずさんとやってください!」

ぴょん吉「いや~ ころあずこういうのイヤがるからさ~ 静香ちゃんだったら」

静香「私も嫌です!」

ぴょん吉「まぁまぁそう言わず~」

静香「やめてください!」

結局、2時くらいにはるかさんが眠るまで、永遠こんな話の繰り返しでした

こんなことになるなら付いていかなければよかった……

静香(そう言えば私と入れ替わったころあずさんは今ごろどうしているんだろ……)

改めて書きますが、現実の「山崎はるか」さんとは無関係なのであしからず。
来週までにはころあず編書きます。

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