ジャンとエレンの遠回しな愛情表現(42)

食事


ジャン「てめぇ!」

エレン「なんだよ!」

ジャン「なに勝手に人の飯食ってやがんだ!」

エレン「お前がピーマン睨みつけたまま食わねぇから、俺が代わりに食ってやったんだろうが!」

ジャン「この野郎……今度チーハンが出たら、俺のを半分、てめぇの口に突っ込んでやるからな!」

エレン「雛鳥よりも大きく口を開けて、待っていてやるよ!」

立体機動


エレン「殺傷能力を見る試験かぁ……」

ジャン「なんだ? 珍しく語尾が弱々しいじゃねぇか」

エレン「それなりに深く削げる自信はあるし、良い成績は残せるだろうけど、俺は目標を見つけるのが上位に比べると遅くてな」

ジャン「立体機動の移動速度がとろいから仕方ねぇだろ」

エレン「んだと?」

ジャン「おっ、悔しいか? なら今日は俺の後を追って来いよ。気が向いたら、譲ってやるかもな」

ジャン「もっとも、てめぇなんぞ、すぐに撒いてやるが」

エレン「上等じゃねぇか。俺が獲物奪っても恨むんじゃねぇぞ」

ジャン「はっ。出来るもんならやってみろ、死に急ぎ野郎」

兵站行進


ジャン「うぉ!」

エレン「なに転んでんだ! さっさと起きろ!」

ジャン「わかってる――痛っ!」

エレン「……お前、まさか足を」

ジャン「なんでもねぇ! てめぇはさっさと行きやがれ!」

エレン「……動くんじゃねぇぞ」

ジャン「お、おい! 俺を女みたいに抱きかかえるんじゃねぇよ!」

エレン「黙ってろ。ただでさえ、重てぇ荷物背負ってんだ」

ジャン「運んでくれなんて頼んでねぇ!」

エレン「勘違いすんな。人一人と荷物を追加で走り切って、ミカサより高評価を得たいだけだ」

ジャン「……チッ、勝手にしやがれ」

兵站行進後


ジャン「てめぇが目的地百メートル手前で倒れたせいで、最後は俺がてめぇを引きずる事になったじゃねぇか! 怪我してるのによ!」

エレン「てめぇが転んで怪我しなきゃ、俺は普通に完走出来てたんだよ! おかげで俺まで罰則中だ! 一人で責任取りやがれ!」

ジャン「知るか!」

エレン「クソッ、ただでさえ、馬鹿みたいに重いもん抱えて腕が疲れてんのに、腕が千切れるギリギリまで懸垂しろだなんて……」

ジャン「勝手にアホな真似しやがったからだ。さっさとやめて、精々教官に怒鳴られてろ」

エレン「んな事言われて、やめるわけねぇだろうが!」

十数分後


キース「様子を見に来てみれば……イェーガーはもう倒れたのか?」

ジャン「自分が二人分やります。だから、今回だけは……」

キース「……キルシュタイン。足の具合はどうだ?」

ジャン「捻挫用の軟膏を塗ってテーピングで固めておりますので、無理をしなければさほど痛みはありません」

キース「貴様には数日間、特別な訓練メニューを言い渡す。そのつもりでいろ」

ジャン「わかりました」

キース「それから、貴様が言い出した事だ。イェーガーの分もしっかりやれ。今日の借りを残したくなければな」

ジャン「ハッ!」

対人格闘訓練


ジャン「俺と組め」

エレン「なんだ? やっと調子が整ったのか?」

ジャン「てめぇをガキみてぇに泣かせられる程度にはな」

エレン「上等だ。ほらよ、先にならず者をやらせてやる。いつでもかかって来いよ」

ジャン「なら、遠慮なくっ!」

エレン「シッ!」

ジャン「いッ!?」

エレン「どうだ、アニ直伝のローキックの味は? 地面に膝をついてるその情けねぇ格好見れば、言わなくてもわかるけどな」

ジャン「……やってくれるじゃねぇか」

エレン「次は食堂で見せた技を披露してやる。俺に仕返ししたきゃ、体で覚えてみろよ。気絶しなければ、な」

ジャン「その油断がてめぇの命取りになるぜ」

エレン「忠告はいいから、さっさと立てよ。痛みに耐えて学んだ格闘術、全部見せてやる」

座学


エレン「……」

ジャン「……」

エレン「……なぁ、馬面。ここってどうやるんだ?」

ジャン「アルミンに聞けよ」

エレン「今は近くにいないから、聞けねぇよ」

ジャン「……前回やった練習問題の問六を見てみろ。それでわかる」

エレン「どれどれ……あぁ、こういう風にするのか」

ジャン「……」

エレン「……」

ジャン「……おい、死に急ぎ野郎。この問題、何回やり直しても答えが違うんだけど、お前どうやってんだ?」

エレン「どの問題だ?」

ジャン「これだ」

エレン「……ここの代入の仕方、間違ってんぞ。こうするんだよ」

ジャン「そうだったか? とりあえずお前の方法でやってみる」

エレン「……」

ジャン「……」

技巧


エレン「あれ? なんだこれ? 上手く嵌らねぇ」

ジャン「なに基礎的なとこで戸惑ってんだ? コニーでもスムーズに出来るぞ、そんなもん」

エレン「うっせぇ。今は話しかけんな」

ジャン「……」

エレン「……」

ジャン「……おっといけねぇ。こんなところのネジつけたまんまだった。先に取らねぇと、他のパーツ組むのに邪魔だな」

エレン「ネジ? あっ、そういう事か。このネジが邪魔だったんだな。見え難いから忘れてた」

ジャン「……」

エレン「……感謝なんてしねぇからな」

ジャン「俺は独り言呟いただけだ」

馬術


ジャン「……クソッ! なんで俺の馬は指笛吹いてもこっち来ねぇんだよ!」

エレン「なにやってんだ、お前? うわっ、汚ぇ! 指と口の周りが涎でネッチョォォってしてんぞ! ネッチョォォって!」

ジャン「うるせぇ! あっち行ってろ! お前に構ってる暇なんてねぇんだよ!」

エレン「もしかして、馬を呼べねぇのか?」

ジャン「……」

エレン「……ったく、仕方ねぇな。手本見せてやるから、よく見とけ、聞いとけ」

ジャン「頼んでねぇよ……」

ピィィィ!


エレン「……ほら来たぞ。あれ、お前の馬だろ?」

ジャン「お前の指笛、教官に教わったのとやり方が違うな」

エレン「クリスタに教えて貰った」

ジャン「……次からその方法、試してみる」

エレン「勝手にしろ」

就寝前


ジャン「おい、死に急ぎ野郎」

エレン「なんだ、馬面」

ジャン「お前とミカサの関係は、本当にただの家族でいいんだよな?」

エレン「一緒の家で過ごしたんだから家族だろ」

ジャン「その、い、一緒に風呂とか……」

エレン「はぁ? 頭沸いてんのか? 入るわけねぇだろうが」

ジャン「毎晩同じベッドで寝てたりは?」

エレン「しねぇよ。別々のベッドがあったっての」

ジャン「だ、だよな! そうだよな!」

エレン「あっ。でも、ミカサが寝惚けて俺のベッドに潜り込んで来た事は結構あったな。三日に一度くらいのペースで」

ジャン「ふざけんなよ、てめぇ!」

休日


ジャン「木漏れ日浴びながら読書なんて、随分優雅な休日を送ってるじゃねぇか。似合ってねぇぞ」

エレン「なんの用だよ」

ジャン「用なんてねぇよ。ぶらついてたら、てめぇが見えたからな。馬鹿にするために寄ってみただけだ」

エレン「帰れ」

ジャン「つーか、珍しいな、お前が自主練してねぇなんて」

エレン「やろうとしたら、アルミンとミカサに口煩く止められたんだよ」

ジャン「ほんと訓練馬鹿だな、お前」

エレン「ほっとけ」

ジャン「アルミンとミカサは一緒じゃないのか? 姿は見えねぇが」

エレン「ここで昼食を食べようとか何とか言い出して、調理場に行った」

ジャン「軽いピクニック気分だな」

エレン「癪だけど、俺もお前と同じ事思った」

ジャン「ところで、なんの本を読んでるんだ?」

エレン「キュクロって人の英雄譚」

ジャン「キュクロって、確か立体機動装置使って、初めて巨人を殺した人だったような……」

エレン「そのキュクロ」

ジャン「面白いのか?」

エレン「結構な」

ジャン「俺にも読ませろ」

エレン「そこに一巻が転がってるだろ。好きにしろよ」

ジャン「そうする」

チェス


エレン「マルコ、チェスやってるのか?」

マルコ「まぁね」

ジャン「おい、意図的に俺をいない者扱いしてんじゃねぇよ」

エレン「いたのか?」

ジャン「この野郎……」

マルコ「まぁまぁ。エレンもやらない?」

エレン「遠慮する」

ジャン「誘ってやるなよ、マルコ。ルールもろくに覚えられないなんて事、他人に知られたら可愛そうだろ?」

エレン「ルールくらい知ってるっての」

ジャン「その程度の教養はあったのか。けど、それが精一杯だったんだろ? ん?」

マルコ「全く、なんで二人は、一々挑発的な言い方をするんだよ……」

エレン「……マルコ、代わってくれ。こいつを叩き潰してやる」

マルコ「いいけど、手を出したらダメだよ」

エレン「出さねぇよ」

ジャン「さっさと席に座れよ。始めるぞ」

エレン「一瞬で終わらせてやる」

数分後


エレン「ウソ……だろ? こんなハズじゃ……」

ジャン「弱っ」

エレン「ま、まだ! まだ俺は……ッ!」

マルコ「エ、エレンはそんなにチェスで遊んだ事ないだろうし、最初はこんなもんだよ!」

エレン「……いや、慰めは良いよ、マルコ。どんだけ取り繕っても、これが俺の実力なんだ」

マルコ「エレン……」

ジャン「……おい、死に急ぎ野郎。次を始めるぞ」

エレン「次?」

ジャン「いつだったか、対人格闘術の時に受けた恨みをここで晴らす。とことん仕返ししてやるから覚悟しろ」

エレン「……絶対に、今日中に勝ってみせる」

ジャン「吠えてろ」

プレゼント


ジャン「聞きたい事がある」

エレン「なんだよ」

ジャン「その……そ、そろそろミカサの誕生日だろ?」

エレン「そうだな」

ジャン「な、なにをあげたら、喜ぶと思う?」

エレン「ミカサに直接聞けよ」

ジャン「それが出来たら苦労しねぇよ!」

エレン「めんどくせぇやつだな。うーん、ミカサが喜ぶ物かぁ……マフラーあげたら喜ぶんじゃねぇの?」

エレン「あいつ、いっつも巻いてるし、今のは大分古くなってたからな」

ジャン「マフラーだな! よし! 今から買って来る!」

エレン「門限に遅れて帰って来い」

ジャン「んな真似するかよ!」

ミカサの誕生日後


ジャン「断られたじゃねぇか! 受け取ってさえ貰えないなんて、惨め過ぎるだろ、俺!」

エレン「知らねぇよ!」

ジャン「チェスで俺に百連敗した恨みか!?」

エレン「そんな陰険な真似するわけねぇだろうが!」

ジャン「このマフラー、どうしろってんだよ!」

エレン「自分で使えよ」

ジャン「それこそ惨めだろ……」

卒業模擬戦闘試験


ジャン「これに合格さえすれば、馬鹿な事をしない限り、十位以内確定だ。やっと息苦しい最前線の街から脱出出来る」

エレン「合格して、それで全部終わりみたいな言い方だな」

ジャン「その通りだ。内地での暮らしが俺を待ってるんだからな」

エレン「最後まで快適な頭してんな、お前」

ジャン「てめぇと俺は違う。わざわざ自分から巨人の腹に飛び込むような選択肢なんて、俺は選らばねぇよ」

エレン「なんにしろ、全ては合格した後の話だ。捕らぬ狸の皮算用にならねぇようにな、お互い」

ジャン「当たり前だ」

解散式の日


ジャン「……」

エレン「……なんだよ、こんなとこに呼び出しやがって」

ジャン「お前、やっぱり調査兵団に入るつもりか?」

エレン「当たり前だろ? 今更なに聞いてんだ?」

ジャン「……憲兵団に入れよ。お前はその権利を得たんだ。わざわざ放棄してまで、死にに行く必要はねぇだろ」

エレン「は?」

ジャン「おふくろさんの事は知ってる。外の世界を探検したいってのもな」

エレン「それがどうした? また笑うのか? 死んだ人間のために戦う事が馬鹿らしいって。無謀な夢を見る憐れなやつだって」

ジャン「もう笑わねぇよ。けどな、全部諦めろ。諦めたら安全な暮らしが約束されるんだ」

ジャン「それにお前が憲兵団に入れば、ミカサも入るだろうし、アルミンも裏方の技巧か駐屯兵団を選ぶかもしれねぇ」

エレン「なんだ、ミカサたちの事を心配してくれてるのか。なら、あいつらに直接――」

ジャン「俺は! ……俺はな、これでもてめぇに死んで欲しくねぇと思ってる。だから、エレン・イェーガーに直接訴えてんだ」

エレン「……それでも俺は調査兵団に行く。俺自身のためにも、その意志を曲げるわけにはいかねぇんだよ。……悪いな、ジャン」

ジャン「……そうか」

エレン「憲兵団に行くんだろ? それぞれの兵団に入ったら、いつ会えるかわからねぇけど、そん時まで元気でな」

ジャン「死ぬまでに、討伐数は百を越せよ」

エレン「駆逐し尽くすまで殺してやるよ、巨人を」

ジャン「死ぬんじゃねぇぞ」

エレン「お前にチェスで勝つまではな」

ジャン「……」

エレン「……」

ジャン「……手を出せ」

エレン「入団式の日にもしたな、それ」

ジャン「あの時は、ただの手打ちで、これは約束だ。クソみてぇな同期との、な」

エレン「あぁ、約束だ。いつかまた、必ず喧嘩するって」

終わり

なんかエレンもジャンがこれじゃない感酷いけど仕方ないね

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