満太郎「この娘って!?」錠二「そうだ、ミューズの小泉花陽だ。」 (99)

喰いしん坊!×ラブライブです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1488719731

花陽(私は小泉花陽です。今日お腹が空いてご飯食べれるお店いったらそこのチャレンジでおにぎり食べに来ようとしたら、ある人に声をかけられました。)

おにぎり、ご飯専門店「およねさん」

花陽「マスターこんにちわー。」

店主「やあ、花陽ちゃんこんにちわ、今日も賞金とご飯食べに来たのかい?」

花陽「そうですよ(^▽^)/ここおにぎり美味しいし、ボリュームもあるから。」

店主「うれしい事言ってくれるねー、じゃあ特別メニューやってみるかい?」

その時

???「オヤジ、今日もチャレンジしに来たぜ。」

???「錠二、今度こそは負けないぜ!ん?おい錠二。」

錠二「ん?なんだ?満太郎?」

満太郎「あの、女の子って?ラブライブのミューズのかよちんじゃねえのか?」

錠二「ああそうだ、俺はここで、小泉花陽が活躍してるのを耳にして、来たが噂はほんとだったみたいだ。後、俺は花陽を見たのは初めてだ。」

満太郎「ああ、俺もだ、後かよちんの喰い動画は、YOUTUBEで見たことあるが、かなりすごかったな。大食いの素質があるぐらい。」

錠二「俺もそう思った、後正道喰いを極めてるからな。後俺は花陽と会って勝負したくてここへ来たのだ。」

花陽(あの人って!?あのTFFの大原満太郎さんとハンター錠二さん!?)

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

花陽(私は小泉花陽です。今日お腹が空いてご飯食べれるお店いったらそこのチャレンジでおにぎり食べに来ようとしたら、ある人に声をかけられました。)

おにぎり、ご飯専門店「およねさん」

花陽「マスターこんにちわー。」

店主「やあ、花陽ちゃんこんにちわ、今日も賞金とご飯食べに来たのかい?」

花陽「そうですよ(^▽^)/ここおにぎり美味しいし、ボリュームもあるから。」

店主「うれしい事言ってくれるねー、じゃあ特別メニューやってみるかい?」

その時

???「オヤジ、今日もチャレンジしに来たぜ。」

???「錠二、今度こそは負けないぜ!ん?おい錠二。」

錠二「ん?なんだ?満太郎?」

満太郎「あの、女の子って?ラブライブのミューズのかよちんじゃねえのか?」

錠二「ああそうだ、俺はここで、小泉花陽が活躍してるのを耳にして、来たが噂はほんとだったみたいだ。後、俺は花陽を見たのは初めてだ。」

満太郎「ああ、俺もだ、後かよちんの喰い動画は、YOUTUBEで見たことあるが、かなりすごかったな。大食いの素質があるぐらい。」

錠二「俺もそう思った、後正道喰いを極めてるからな。後俺は花陽と会って勝負したくてここへ来たのだ。」

花陽(あの人って!?あのTFFの大原満太郎さんとハンター錠二さん!?)

続き

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

花陽(初めてみたよ~かっこいいなぁ~余裕のある男の人で、でも声かけられたら・・・。)

そして声をかけられた

錠二「お嬢ちゃん、君は小泉花陽だな?」

花陽「!?はっ!はいっ!!そうですっ!!」

満太郎「まあそんなに固くなるなよ、かよちん、俺達は、君と勝負したくてここへ来たんだよ。なあオヤジ。」

店主「あうん、そういう事になるね、満ちゃん、でも花陽ちゃんは女の子だから手加減してやりなよ。」

満太郎「そうは、いかねえよ、ここの張り紙でなんか俺達がここ留守にしてる間、なんかかよちんがトップになってたみたいだからさ。」

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

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 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

店主「やっぱ見透かれてたかぁ~、ところで、花陽ちゃんは勝負受けてたつの?」

花陽「もちろんです!!憧れのTFFが!!憧れの二人がここで生で見れているので!!」

錠二「じゃあ決まりだな、小泉花陽、お前さんが相手になるのは、こいつ、大原満太郎でいいな?」

満太郎「俺か?いいぜ!!オヤジ勝負は、いつものチャレンジのおにぎり勝負でいいな!!」

店主「もちろん!!」

花陽「受けて立ちます!!」

そして おにぎり大食い競争が始まる!!



海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

満太郎(うん、うまい!ここのおにぎりは、いつも通り、米だけのおにぎりだが口に程よくほつれて塩加減が絶妙だ!)

花陽(おいしーいここのお米、白米最高ですぅこの口に程よくほつれるのと、絶妙な塩加減がたまらないです。あと自然な甘みが)

そして1分もたたないうちに二人はおにぎりを平らげた。

錠二「小泉花陽、中々の食べっぷりだ、食を楽しんでるな。だが、対決となるとどうかな?」



 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。

 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。

―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。

海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。

 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。

しかもなんでラブライブが後なんだよカス

やっと止んだか

なんだったんだぁ~?一体

>>88

最近、ラブライブと他の作品のクロスに粘着してる荒し

確認できた時点で既に8つ以上のスレが埋め立て被害に遭ってる
IDが飛行機飛ばしまくりの単発末尾Oだからすぐにわかる

後、「>>1はアンチ」「>>1 やめろ」「クロスはゴミ」「ラブライブでやる意味あったか?」とか言い出す末尾oが必ず出たら
そいつも末尾Oと同じ奴、複数回線持ちのキチガイ



>>87
>>88

証拠も無く疑うのは悪いんだろうけどIDが末尾Oでこんだけやらかしてる以上こいつ等、ほぼ同一犯


>>1、もしまた何か書くなら書き貯めて一気に投下するか、スレタイにクロスと分からないようにした方が良いよ

書くのは勝手
ラブライブさえ関わらなければな
>>1はラブライブを他作品上げに使うゴミ
さっさとしね

>後、「>>1はアンチ」「>>1 やめろ」「クロスはゴミ」「ラブライブでやる意味あったか?」とか言い出す末尾oが必ず出たら
>そいつも末尾Oと同じ奴、複数回線持ちのキチガイ


>>94

ID:3gStqsiuo

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