まどか「私たち、エレベーターに閉じ込められちゃった?」 (87)

ショッピングモール

さやか「おーい、まーどかー」

まどか「さやかちゃーん」テテテッ

さやか「おー、たくさん買ったねー」

まどか「ほむらちゃんと見てたら色々と欲しくなっちゃって。ごめんね、待った?」

さやか「そーだなぁ。15分は待ったから、お昼はまどかの奢りってのはどう?」

まどか「えー?」

さやか「あはは、うそうそ」

杏子「あたしらも今着いたところだから、心配すんなよ」

さやか「ちょ、バラさないでよぉ」

まどか「二人も良い買い物できた?」

杏子「おう!」

さやか「杏子ってば、お菓子しか買ってないんだよね。普通、こういうところに来たら服とか買わない?」

杏子「別にいらねーし。あたしはさやかのお下がりでいいぜ?」

さやか「私は古着屋じゃないってばぁ」

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ほむら「お待たせ」ファッサァ

まどか「お帰り、ほむらちゃん」

ほむら「少し手間取ったわ。ごめんなさい」

杏子「便所か?」

ほむら「……」モジモジ

さやか「そんなストレートに聞かないの」

杏子「なんで?」

まどか「そ、それより、買い物も済んだならお昼ご飯にしない?」

さやか「さんせー!」

杏子「何食う? なぁ?」

まどか「最上階にレストランとかたくさんあるから、そこで決めようかなって思うんだけど」

さやか「いいねぇ。そうしよー」

杏子「なぁ、何があるんだよぉ」

まどか「行ってみればわかるから」

ほむら「エレベーター、着たわよ。乗り込みましょう」

2時間後

杏子「んー、食った、食ったぁ」

さやか「結構、いけたね。ここのパスタ」

まどか「美味しかったね」

ほむら「そうね」

杏子「けど、高いよな。昼飯で500円以上はなぁ」

さやか「あんた、いつもどんなもの食べてるわけ」

ほむら「次はどうするの」

まどか「荷物も多いし、一度、私の家にこない?」

ほむら「行くわ」

まどか「さやかちゃんと杏子ちゃんはどうかな?」

さやか「いいよー。まどかの家でおやつタイムだー」

杏子「あたしの菓子はやらねーからな」

さやか「そんなケチケチしなくてもいいじゃん」

ほむら「エレベーター、着たわ。早く行きましょう。時は止まってくれはしないもの」

エレベーター内

杏子「一階でいいのか?」

まどか「あ、ううん。出るところは二階にあるの。一階は駐車場」

杏子「そっか」ピッ

さやか「なんだかんだ、買い物は好きなんだ」

ほむら「別に。必要なものを買い込んだだけよ」

さやか「全部、服? かなりの額になったんじゃない?」

ほむら「まどかが何でもかんでも籠にいれるからよ」

まどか「ほむらちゃんに似合いそうな服が多かったから……」

杏子「律儀に勧められた服を全部買うのってどうなんだよ」

さやか「それもそっか。最終的に買うって決めるのは自分だもんね」

ほむら「放っておいてくれるかしら。私は、孤独が好きなの」

杏子「じゃあ、なんで今日ついてきたんだよ」

ほむら「……」

まどか「あはは。ほむらちゃん、今日は暇だからって特別に――」

ガコンッ!!!

さやか「わぁ!?」

杏子「さやか!」ガシッ

さやか「あ、ありがとう」

ほむら「……」

ほむら「まどか!!」ギュッ

まどか「きゃっ!? ほむらちゃん!? 私は大丈夫だよ!?」

ほむら「そう」

さやか「な、なになに? 何が起こったの?」

杏子「停電でもしたんだろ」

ほむら「非常灯は作動しているわね」

まどか「えーと、こ、こういうときはどうしたら……」

杏子「呼び出しボタンを押せばいいだけだろ」ピッ

杏子「もっしもーし。閉じ込められたからたすけてくれー」

杏子「ん……? おい、聞いてるんだろ。おーい」ポチポチ

まどか「ど、どうしたの?」

杏子「応答がないな」

さやか「そ、そんな……」

杏子「今、メシ時だからな」

ほむら「普通は常駐していると思うのだけれど」

さやか「いや、それ以前にもう二時過ぎてるし」

まどか「通じないのかなぁ」

ほむら「困ったわね」

さやか「まぁまぁ、すぐに動き出すだろうし、ちょっと待ってよっか」

杏子「そうだな。ジタバタしたってどうしようもないしな」

ほむら「杏子の言う通りね。救助を待ちましょう」

まどか(みんな落ち着いてる……。私だけだったらきっとパニックになってるところだったかも。みんな一緒でよかった)

杏子「よっこいしょっと。けど、助けがくるまで暇だよなぁ」

さやか「そうだねー。ま、たまにはこういう経験もアリじゃない? 私はワクワクするけどなー」

ほむら「子どもね」

30分後

杏子「そしたらさぁ、さやかがそこでギャーって言ってさ」

さやか「ぎゃー!! その話は内緒だって言ったのに!!」

まどか「あはは。さやかちゃん、ちょっと恥ずかしいね」

さやか「杏子!」

杏子「いいじゃねえかよ。さやかの意外な一面ってやつだ」

さやか「いちいち喋るなってば。そっちがそういう態度なら、こっちだって考えがあるんだから」

杏子「あん?」

さやか「この前、二人で遊んでるときに杏子がトイレで……」

杏子「や、やめろ!! おい!! さやかぁ!!」

さやか「えー? これも杏子の意外な一面だと思うんだけど?」

杏子「ぐっ……!!」

まどか「トイレでなにがあったの?」

さやか「それが杏子ってば、和式トイレの使い方がわからないって言ってきてさぁ。まずどう座ったらいいのか――」

ほむら(まだかしら……? まどかの家に行く時間がなくなってしまうわ)

1時間後

さやか「んー……。ねえ、今何時?」

まどか「もう四時前」

杏子「くそ、いつまでかかるんだよ」

ほむら「ケータイで救助を呼ぶしかなさそうね」

さやか「呼んでみたら?」

ほむら「どういう意味かしら」

さやか「いいから、待ち受け画面でも見て」

ほむら「……?」

ほむら「圏外……」

さやか「でしょ? ケータイじゃ助けは呼べないっぽい」

ほむら「こんな街の中心部で圏外になるなんて。もしかして、ここは、魔女の結界内……!?」

杏子「エレベーター内だろ」

さやか「どうなるんだろう、私たち」

まどか「うん……」

2時間後

まどか「もう六時過ぎちゃったね……」

さやか「こうなったら……!!」

まどか「さやかちゃん?」

さやか「あのー!! すみません!! 閉じ込められてからもう四時間近くになるんですけど!! だれかー!!」ポチポチ

杏子「落ち着けって、さやか。そのボタン。何も反応してないんだ。押したって意味ないって」

さやか「そうも言ってられないでしょ!」

杏子「落ち着け。ほら、食うかい?」

さやか「……ありがとう」

杏子「あんまり騒ぐと酸素がなくなって、倒れちまうぞ」

さやか「ごめん」

まどか「杏子ちゃん、かっこいい……」

杏子「お前らが情けないだけだ」

ほむら「まどか、私も落ち着いているわ」ファッサァ

まどか「自分で言っちゃうんだ、ほむらちゃん……」

30分後

杏子「……」

さやか「杏子がお菓子を買ってなかったら飢え死にするところだったね」

まどか「うん。そうだね」

ほむら「杏子?」

杏子「なんだよ」

ほむら「どうかしたのかしら?」

杏子「どうもしねえよ」

さやか「あ……。ごめん、杏子。杏子の食べたかったやつ、食べちゃった?」

まどか「えー!? そ、そうなの!?」

杏子「いや、そんなことで怒りはしねえよ」

ほむら「だったら、どうして口数が減っているの?」

杏子「貴重な酸素をなるべく使わないようにしてるんだよ」

さやか「私たちも極力、だまってよっか」

まどか「う、うん」

20分後

杏子「……」

さやか「はぁー……」

まどか「すぅ……すぅ……」

さやか「まどか、寝てるし。よく、この状況で寝れるなぁ」

ほむら「この寝顔だけは守らないと」

さやか(過保護の域、越えてる気がする)

杏子「……」モジモジ

さやか「杏子?」

杏子「……ざけんなよ」

さやか「え?」

杏子「いつまで、かかってんだよ……」

さやか「ど、どうしたの?」

杏子「遅すぎるんだよ……何時間待たせるんだ……!! ざけんじゃねええ!!!」

さやか「……!?」ビクッ

杏子「おい!!! こらぁ!!! 聞こえてんだろ!!! おい!!! 何とか言えよ!!!」ガンガンッ!!!

さやか「杏子!! ちょ、ちょっと!!」

杏子「はなせっ!!」

さやか「きゃっ!?」

ほむら「まどかが目を覚ますわ。やめて」

杏子「何やってんだよ!! もう昼飯の時間はとっくに過ぎてるだろ!!! おい!!! ぶっ殺すぞ!!!」ガンガンッ

さやか「杏子!! 落ち着いてってば!!」

杏子「邪魔すんな、さやかぁ!!!」

ほむら「杏子。まどかが起きてしまうわ」

杏子「澄ませた顔しやがって……。ああ、そうか。お前はもう済ませてたもんな……そりゃあ、涼しい顔にもなるよな……」

ほむら「杏子……」

杏子「あたしはここから今すぐ出なきゃいけねえんだよ!!」

さやか「ど、どうして!?」

杏子「じゃなきゃ……出ちまう……もう、でちまうんだ……」モジモジ

さやか「え……え……」

まどか「ん……どうしたのぉ……」

杏子「頼むよ……かみさまぁ……」モジモジ

さやか「あぁ……そ、そういうこと……」

ほむら「杏子」

杏子「な、なんだよぉ……」

ほむら「液体のほうかしら、それとも固体のほうかしら。それによって対応が変わってくるわ」

杏子「いえるかぁー!!!」

さやか(そこは流石に恥じらってくれるんだ)

ほむら「言えない方ね。つまり、固体かしら?」

杏子「いうなよぉ……」

まどか「なにがあったの、さやかちゃん」

さやか「どうにも、杏子が我慢の限界みたいでさ」

まどか「何を我慢してるの?」

さやか「トイレ、だと思う」

まどか「えぇー!?」

ほむら「いえ、気体の可能性もあるけれど。気体なら、気にせずに放出しなさい。恥ずかしがることではないわ」

杏子「お、おまえ……ここからでたら……おぼてろよ……くそ……」モジモジ

さやか「杏子」

杏子「な、んだよ」

さやか「大丈夫。私たち、友達だからさ」

まどか「私、気にしないよ。杏子ちゃん、我慢なんてしなくてもいいんだよ」

杏子「……」

まどか「これからもずっと、大切な友達だから」

杏子「余計にできねーよ!!! はやくだせってー!!! 菓子ならいくらでもあげるからー!!!」

さやか「そうはいっても、ここまで待って救助が来ないんじゃあ……」

ほむら「外で何かが起こっていると考えたほうが良さそうね」

杏子「うぅ……あたしがなにしたっていうんだよ……」

『ここにいたのかい? 探しちゃったじゃないか』

まどか「え……このこえ……」

キュゥべえ『どうやら、とても困っているみたいだね。まどか』

ほむら「キュゥべえ……!!」

さやか「どこにいるの!?」

キュゥべえ『僕はいつだって傍にいるよ』

ほむら「エレベーターの天井裏にいるわね」

キュゥべえ『正解だ』

さやか「外はどうなってるの!? 全然、助けがこないんだけど!」

キュゥべえ『外かい? 外は闇に包まれているよ。ニンゲンたちが築き上げた文明の火が全て消えてしまっている』

ほむら「大規模な停電に見舞われているみたいね」

ほむら「まさか……ワルプルギスの夜……!!」

キュゥべえ『いや、人為的な失敗が引き起こしただけさ』

さやか「どっちにしろ、復旧までにはまだまだ時間がかかるってことでしょ。それじゃあ、まずいんだって」

キュゥべえ『何かあったのかい?』

まどか「杏子ちゃんが大変なの!! キュゥべえ、助けてあげて!!」

キュゥべえ『それが望みだね。契約成り――」

ほむら「違うわ」

キュゥべえ『何も違うことはない。まどかが佐倉杏子を救いたいと願い、魔法少女になる。何も間違ってなんていないじゃないか』

ほむら「まどかは魔法少女にはならないわ。それに、今、そんな願いで魔法少女になればどんな能力がつくのか……」

ほむら「想像したくもないわ!」

まどか「ほむらちゃん……」

杏子「なんでもいいから……だ、出させてくれ……」

さやか「ビニール袋なら、用意できるけど」

杏子「無理にきまってるだろ!!」

キュゥべえ『僕は別に構わないよ。ここでまどかが契約しなければ、杏子は地獄を味わうだけ。その地獄も時間が解決してくれるだろうし』

杏子「そ、それだけは……絶対に……嫌だ……」

ほむら「キュゥべえ、巴マミを呼んできて」

キュゥべえ『それがまどかの願いなら、聞いてあげるよ』

ほむら「くっ……悪魔……」

キュゥべえ『僕はインキュベーター。悪魔じゃない』

さやか「どうして、どうして、こんな酷いことを!!」

キュゥべえ『なにを怒っているんだい? 全く、わけがわからないよ』

杏子「くっ……うぅぅ……」プルプル

まどか「杏子ちゃん……。キュゥべえ!! お願い!! 杏子ちゃんを救って!!」

キュゥべえ『それが願いなんだね』

ほむら「やめなさい、まどか!!」

まどか「でも……でも……!」

ほむら「杏子」

杏子「な、なんだよぉ」

ほむら「まどかのために、死んで」

杏子「な……」

さやか「勝手な事いわないで!」

ほむら「杏子がここで粗相をしても、私たちが黙っていればそれで済む話よ。まどかが魔法少女になる必要はないわ」

さやか「そ、そりゃ、そうかもしれないけど」

杏子「も、もらせって……いうのか……」

ほむら「衣類を汚すのが嫌なら、全部脱いで、このビニール袋の中にしなさい。ほら、早くしなければ間に合わないわ」

杏子「うぅ……」プルプル

さやか「あ、あんまりだって!! こんなの女の子にしていい仕打ちじゃないじゃない!!」

ほむら「杏子は魔法少女になることを選んだわ。魔法少女は死と隣り合わせだということも理解しているはず」

さやか「だ、だからって……」

ほむら「これが魔法少女になるということよ」

さやか「くっ……」

杏子「ぜったい……かんけいない……と……おもう……」

まどか「キュゥべえ!! マミさんを呼んできてくれるだけでいいから!!」

ほむら「まどか!! あの悪魔に何を言っても無駄よ!!」

キュゥべえ『分かったよ。巴マミを呼んで来たらいいんだね』

まどか「キュゥべえ……!」

ほむら「どういうつもりかしら」

キュゥべえ『こんな形で契約を迫っても、まどかが辛い思いをするだけなら、辞めておくよ』

さやか「おー! ちょっと見直したよ、キュゥべえ!」

キュゥべえ『少しだけ待っているんだ』

ほむら(何を企んでいるの……)

5分後

杏子「ふぅー……ふぅー……。ちょっと、波が引いた……」

さやか「凄い汗。ちょっとハンカチで拭いてあげる」

杏子「わ、わりいなぁ……」

さやか「いいから、いいから」

まどか「まだかな、キュゥべえ」

ほむら「このまま戻ってこない可能性もあるわ」

まどか「えぇ!? そこまでするかなぁ!?」

ほむら「するわ。奴なら」

まどか「そんなぁ……」

『みんな!! もう大丈夫よ!!』

さやか「え!?」

まどか「この声は……!!」

『私が来たから安心して!! もう何も怖くない!!』

杏子「ま、みぃ……たのむ……」

『はっ!!』

ガンッ!!!

まどか「きゃっ!?」

さやか「なになに!?」

マミ「みんな。おまたせっ」ガチャッ

さやか「マミさーん!!!」

まどか「マミさんだー!!」

ほむら「天井はそこが開くようになっていたのね」

マミ「よっと」シュタッ

ほむら「あ……」

マミ「それで、どうしたの? キュゥべえにすぐここへ行ってほしいと言われたけれど」

さやか「そ、それが!! エレベーターに閉じ込めれちゃったんです!!」

まどか「杏子ちゃんももう、危なくて!! マミさん、すぐに助けてあげてください!!」

杏子「マミぃ……うぅ……」

マミ「まぁ……。辛かったでしょう、佐倉さん。けど、もう何も心配しなくていいわよ。すぐに助けを呼んでくるわ」

さやか「さっすがマミさん!! いつもすみません!!」

マミ「気にしないで。可愛い後輩のためなら、多少の無茶ぐらいなんでもないわよ」

まどか「マミさん、かっこいい……」

ほむら「巴マミ」

マミ「何かしら、暁美さん?」

ほむら「助けを呼びに行ってくれるのね?」

マミ「ええ。もちろんよ。貴方だって、ここで酸欠したいだけじゃないでしょ? うふふ」

ほむら「では、聞くわ。どうやって助けを呼びに行くの」

マミ「何を言っているの? そんなのここから出てに決まっているじゃない。ケータイ電話は使えないみたいだしね」

さやか「おぉー! もうそこまで気が付いていたんですか!! 流石です、マミさん!!」

マミ「当然じゃない。何も調べないで、侵入なんてしないわ」

まどか「わー」パチパチパチ

ほむら「どうやって、出るつもり?」

マミ「え?」

ほむら「ここから簡単に出られるなら、とっくに出てているわ」

マミ「天井から……」

ほむら「肩車しても届かないわね」

マミ「こっちの扉を手動で開ければいいんじゃないかしら?」ググッ

ほむら「私たちが試していないと思うの?」

マミ「……」

ほむら「……」

さやか「マミさん?」

まどか「あのー……」

杏子「あ……で、でる……でるかも……んっ……まだ、まだいける……」

マミ「だったら!! 死ぬしかないじゃない!!!」

さやか「えー!?」

まどか「もうやだよぉ……こんなのぉ……」

マミ「う……うぅ……」

ほむら「どうして、他に人を連れてくるなり、ロープを用意しておくなりしておかなかったの」

マミ「だって……みんなが困ってるってきいて……いてもたってもいられなくなって……」

ほむら「ふりだしに戻ったわね。いえ、一人増えた分、状況は悪化したかしら」

マミ「ごめんなさい……」

さやか「いえいえ! もう、マミさんが傍にいてくれるだけで心強いっていうか!!」

まどか「そうです! マミさんと一緒ならなんでもできる気がしてきますから!!」

マミ「ありがとう……ふたりとも……」

ほむら(キュゥべえ……。巴マミを焦らせ、救助道具を一切持たせずにここへ急行させたのね……)

『希望と絶望は表裏一体だ。得られた希望の先には、必ず新たな絶望がある』

ほむら「キュゥべえ……!!!」

キュゥべえ『僕は約束通り、巴マミを呼んできたよ。何も間違ってはいないはずだ』

ほむら「必ず、この世から消し去ってやるわ……!! キュゥべえ!!!』

キュゥべえ『何を怒っているんだい? 僕には理解できないよ』

ほむら「けれど、天井が開いただけでも進展したわね。これで酸欠の恐れは――」

バタンッ

キュゥべえ『開けたら閉める。常識だよね』

ほむら「しまった!?」

さやか「どこまで、どこまで私たちを追い詰めるつもりなのよ」

まどか「お願い、キュゥべえ!! もうやめて!! 杏子ちゃんが……杏子ちゃんが……!!」

杏子「もう……いいぜ……まどか……」

まどか「え……?」

杏子「覚悟、決めたからよ」

さやか「杏子……まさか……」

マミ「佐倉さん? 何をするつもり?」

杏子「お前らの前で無様なことだけはしたくないからな」

ほむら「……」

杏子「それ、渡してくれ」

ほむら「杏子……」

杏子「サンキュ。それじゃあ、始めるぜ」

さやか「マジで?」

杏子「わりぃな、さやか。あたし、頭よくねえから、これ以外の方法が思いつかないんだ。――生まれ変わっても、友達でいてくれるよな?」

さやか「きょ、杏子ぉー!!!」

5分後

さやか「杏子……がんばったね……」

まどか「杏子ちゃん……」

杏子「さやか、まどか。これがあたしなんだ」

さやか「うん……」

杏子「見捨ててくれてもいいぜ。どうせ、ひとりは慣れてるからな」

まどか「ひとりぼっちは寂しいよ?」

杏子「まどか……」

さやか「そうだね。ここで見捨てるぐらいなら、友達なんてやってられないって」

杏子「さやか……うぅ……」

まどか「大丈夫だよ、杏子ちゃん。私たちがずっと、ずっとそばにいるから」

さやか「うん。杏子のこと、ずっと守る」

杏子「な、なんだよ……くそ……へんなこというなよな……まったく……」

マミ「このビニール袋、どうしたら……?」

ほむら「何重にも袋を使って厳重に縛って置いておくしかないわ」

マミ「隅にあるビニール袋が異彩を放っているわ」

ほむら「他人事じゃないわ」

マミ「え?」

ほむら「いつ、私たちが杏子の立場になるかわからない」

まどか・さやか「「……!!」」

まどか「それだけは……」

さやか「早く脱出しないと」

杏子「なんだよ!! おまえら!! やっぱり嫌なんじゃねーか!!!」

さやか「いやいや、杏子と友達でいるのと同じ立場になるのはちがうっていうか……」

杏子「どうちがうんだよ!!!」

マミ「脱出できるルートはやっぱり天井しかないわね」

杏子「でもよ、どうやったら届くんだ? あたしらの身長じゃ無理だろ」

ほむら「肩車でも無理……となると……」

マミ「5人いるならピラミッドを作ってみるのはどうかしら?」

まどか「あ、それなら届くかも」

さやか「三人の上に二人が乗る感じですね」

マミ「その上の二人は肩車をしないとダメでしょうけど」

ほむら「私がまどかを肩車するわ」

マミ「理由は?」

ほむら「巴マミが下段にいるだけで足場の安定力が上がる。杏子はその……上に行かない方が……」

杏子「ちゃんと拭いたところ見てただろ」

さやか「みてたけどさぁ」

まどか「さやかちゃん、みてたの!?」

ほむら「美樹さやかは縁の下の力持ちという印象がある」

さやか「あったの?」

ほむら「必然的に私がまどかを肩車するしかないみたいね」

まどか「そうなの、かな」

マミ「理由になっていない気がするけれど、まぁいいわ。やりましょう」

杏子「よし。さっさとここからおさらばしようぜ」

さやか「そーだよね。いい加減、お腹もすいてきたし」

さやか「準備オッケー!」

マミ「暁美さん! 鹿目さん! 乗って!」

杏子「ドンとこい!」

ほむら「行くわよ、まどか」ファッサァ

まどか「う、うん」

ほむら「ふっ!」グッ

マミ「むっ……!」

ほむら「まどか、きて」

まどか「ご、ごめんね、杏子ちゃん」グッ

杏子「気にすんな」

さやか「まどか! がんばって!」

まどか「うん!」

ほむら「それじゃあ、肩に足を」グイッ

まどか「あれ? ほむらちゃん? 顔、逆じゃないかな? 普通は体のほうに顔は向けないと思うんだけど」

ほむら「ふぉいふぉうふふぉ、ふぉふぉふぁ!」スーハースーハー

マミ「鹿目さん、天井に手は届くかしら?」

まどか「十分とどきます!」

杏子「おし! 思い切り押し上げろ!」

まどか「うんっ」

まどか「うーん……!」ググググッ

さやか「いっけー! まどかー!」

まどか「ふーん……!!」ググググッ

ほむら「ふぁふぉふぁー!」スーハースーハー

まどか「んー……!! あ、あかない……よぉ……!!」ググググッ

さやか「な、なんで……」

杏子「もっと力入れろよ、まどかぁ」

まどか「や、やってるんだけど……んっ……あっ……」ピクッ

ほむら「ふぁふぉふぁー!」スーハースーハー

マミ「美樹さん。代わってもらえる?」

さやか「はい」

さやか「どう?」

まどか「んー……!」ググググッ

ほむら「何故、私が降格されなければいけないの」

マミ「適材適所よ、暁美さん」

ほむら「くっ……」

まどか「だめ。上に何かあるみたい」

杏子「なんかあったか?」

マミ「いえ。何もなかったはずだけど」

ほむら「まさか……! キュゥべえ!!」

キュゥべえ『なにかな?』

ほむら「そこに座っているのね。重し代わりになるように」

キュゥべえ『僕がどこにいようと君たちには関係のないことじゃないか』

まどか「キュゥべえ……」

さやか「反則だー!」

杏子「このやろう……!! これ以上、あたしみたいな被害者を増やそうっていうのかよ」

キュゥべえ『この密室から出る方法は一つだ。まどかが魔法少女になればいい』

まどか「な……」

ほむら「それが狙いだったのね!!」

キュゥべえ『君たちは助かる。僕も嬉しい。最高じゃないか』

ほむら「ふざけないで!!!」

杏子「やめろ。叫ぶな。益々酸素が薄くなるぞ」

ほむら「そうね……」

さやか「そういえば、なんだか息苦しくなってきたかも」

まどか「うん……」

マミ「そう?」

ほむら「このままでは、全員酸欠になるわ……。どうにかしないと……」

マミ「換気口、ないのかしら?」キョロキョロ

杏子「はぁ……はぁ……。どうする、もうすぐ体もまともに動かなくなるかもしれないぜ」

まどか「そ、そんなの……いやだよぉ……」

さやか「なんとかして、早く脱出しないと……死ぬ……」

15分後

ほむら「……キュゥべえの仕業ね」

さやか「え?」

ほむら「街の中心にあるショッピングモール内で圏外。数時間経っても電気すら復旧しない。そのうえ、唯一の脱出口を塞ぐ」

ほむら「まどかを魔法少女にするための策略だったのよ」

さやか「ひどい! ここまですることないのに!」

まどか「くるしいよぉ……」

ほむら「まどか。私の酸素を分けてあげるわ」

まどか「ほむらちゃん……」

さやか「それだと二酸化炭素しかおくれないような」

マミ「窒素じゃないかしら?」

杏子「どっちでいいだろ。はぁ……はぁ……。もう駄目かもな」

さやか「しっかりしてよ、杏子」

杏子「あたしは、このままでもいいかもな。ここから出ても、生き恥を晒すだけだ」

まどか「大丈夫だよ、杏子ちゃん。今日のことは誰にも言わないから」

杏子「頼むな……ホントに……」

さやか「杏子にちゃんと恥じらいがあって、安心した」

杏子「あたしだって……女だからな……」

ほむら「奥の手を使うしかないわね。私たちが閉じ込められる前まで時間を戻して……」カシャン

マミ「ダメよ。暁美さん。こんなことで魔力を消費してはいけないわ」

ほむら「けど、命に関わることよ」

マミ「みんな、落ち着いて。冷静になりましょう」

まどか「マミさんはどうしてそんなに動じてないんですか?」

マミ「うふふ。みんなが焦っていると、何故か気分が落ち着いてしまうのよね」

杏子「……変態か?」

マミ「そうじゃなくて。なんていうか、そうね。これが年長者の余裕ってやつかしら?」

さやか「おー」パチパチパチ

まどか「マミさん、やっぱり頼りになりますね」

マミ「普通よ、普通」

ほむら「何か、策はあるの? この状況を打破できるほどの策が」

マミ「鹿目さんには、今、気になる人っているの?」

まどか「へぇ!?」

ほむら「巴マミ。ふざけないで。状況を見て」

マミ「リラックスよ、暁美さん。こういう関係のない話をして、気分を紛らわせないと」

ほむら「大体、こうして話せば話すほど、酸欠する時間が迫ってくるっていうのに」

マミ「上を見て」

ほむら「上……?」

マミ「ね?」

ほむら「……?」

マミ「さぁ、鹿目さん。最近、恋してる?」

まどか「あ、いえ……そんな……そういうことは……さやかちゃんのほうが……」モジモジ

杏子「バカ!!」

まどか「あっ!?」

さやか「きょう……すけぇ……」

マミ「美樹さん? どうしたの?」オロオロ

さやか「うぇぇん……」

まどか「ごめんね……まだ、立ち直れていないよね……」ナデナデ

マミ「そう……。美樹さん、ごめんなさい」

杏子「さっさと告白しないからとられるんだろ」

さやか「……」

杏子「うっ……。いや、まぁ、あんな男、おまえとはつりあわねーっていうかさ」

さやか「うわぁぁぁん……」

まどか「さやかちゃん。私たちがいつまでも傍にいるから」

さやか「じゃあ、まどか。私のお嫁さんになって」

まどか「それは……」

さやか「うぇぇぇん……」

まどか「あぁぁ……」

ほむら「状況は悪くなる一方ね」

マミ「ごめんなさい……良い考えだと思ったのだけれど……」

杏子「さやかぁ、泣き止めって。なんか食うかい?」

10分後

さやか「ちょっとスッキリした」

まどか「よかった」

ほむら「キュゥべえ!! こんなことをしてもまどかは魔法少女にならないわ!! 諦めなさい!!」

キュゥべえ『魔法少女にならない限り、ここから出ることはできないけど、別に無理に契約してほしいわけじゃないんだ。だから、好きにするといいよ』

ほむら「殆ど、脅迫じゃない……」

まどか「ほむらちゃん、私……」

ほむら「ダメ!! まどかだけは魔法少女になったらダメなの!!」

まどか「あ、違うの。その……」

ほむら「どうしたの?」

まどか「お手洗いに行きたくなってきたんだけど……」

ほむら「……」

まどか「まだ、我慢はできるんだけどね。でも、その……えへへ……」モジモジ

さやか「まどかまで!?」

杏子「ビニール袋、まだあるのか?」

マミ「いいえ。佐倉さんのを封じ込めるために全てのビニール袋を使用したわ」

杏子「何個も使わなくてもいいんじゃないか」

マミ「臭いが漏れてくるわよ」

杏子「密閉しとけば、出した直後よりかはマシになるだろ」

さやか「直後の話はしないでよ。あと、そこも恥じらってほしいんだけど」

杏子「あたしはもう、隠すものなんてないんだ」

さやか「杏子……かわいそう……」

杏子「まどか用として二つか三つ分ければ使えるだろ」

マミ「それなら佐倉さんのとブレンドさせてしまったほうがまだいいかもしれないわね」

まどか「ブレンド……!!」

杏子「……やるか?」

まどか「あ、えと……はずかしい……」

ほむら「残念だけれど。まどか、もう袋はないわ」

まどか「えー……どうしたら……」

ほむら「急いで、脱出するしかないわね」

さやか「けど、今完全に手詰まりじゃない」

ほむら「知恵を絞り合うしかないわ」

杏子「なんか、あるか?」

さやか「天井はキュゥべえが陣取っていて開かないし、扉も人力じゃあどうしようもないし」

杏子「魔法でぶっ壊すか」

マミ「ダメよ。無駄な力はつかないで」

杏子「けどよぉ」

ほむら「そういえば、こんな話を知っているかしら」

まどか「なになに?」

ほむら「銃につけるサイレンサーって、映画では殆ど音がしないけれど、実際にはかなり大きな音がするのよ」

まどか「……」

さやか「へぇー」

杏子「そうなのか」

ほむら「ええ。あと、拳銃を水中に向かって撃つとどうなるか知っているかしら?」

マミ「暁美さん?」

ほむら「なに?」

マミ「急に無駄な話を始めたけれど、どういう心変わりかしら」

ほむら「貴方が言ったことよ。リラックスしてからなら、妙案が浮かぶかもしれない」

マミ「ま、まぁ、そうなんだけど。ごめんなさい。急だったから驚いてしまったわ」

ほむら「気にしていないわ」

マミ「……」

ほむら「それでね、まどか」

まどか「あ、あの、ほむらちゃん」

ほむら「なに?」

まどか「今は、ここから出る方法を探してほしいな……」モジモジ

ほむら「わかっているわ。心配しないで。もしものときは……」

まどか「もしものときは……?」

ほむら「私が全てを受け止めてあげるから」

まどか「ほむらちゃん……!」

まどか(ほむらちゃん、精神的にかなり追い詰められる……! 私がしっかりしないと……)

杏子「どっちにしろ、ここにそう長くはいられない。まどかも気絶してから垂れ流すことになるかもしれないしな」

まどか「やだよぉ」

さやか「とにかく、キュゥべえをどかしてみるしかないね」

杏子「マミ! 土台になれ! あたしとさやかで天井をこじ開ける!!」

マミ「はいはい」

杏子「さやか! あたしを肩車して思い切りジャンプしろ!!」

さやか「えー……」

杏子「ちゃんと拭いてただろ!!!」

さやか「冗談だってば。杏子、しっかりしてよね」

杏子「誰に言ってんだよ!」

さやか「マミさん、失礼します!」グッ

マミ「ふぐっ」

さやか「杏子!!」

杏子「いくぜ、さやかぁぁ!!」グッ

さやか「えーい」ピョン

杏子「ひぐっ!?」ゴンッ!!!

さやか「きゃぁ!?」

ほむら「頭突きで開けた……!?」

まどか「やった!」

マミ「あとはあそこから出るだけね! みんな! 早く私を踏み台にして――

キュゥべえ「やれやれ、乱暴だね」

ほむら「キュゥべえ!」

キュゥべえ「それじゃあ、閉じるね」

バタンッ

マミ「しまった!!」

杏子「あうぅ……いてぇ……」

さやか「キュゥべえが天井に居る限り、すぐに閉められちゃうのかぁ」

まどか「そんなぁ……キュゥべえ……意地悪しないで……」モジモジ

ほむら「作戦を練り直す必要があるわね」

マミ「いいえ。このまま行きましょう」

ほむら「天井のキュゥべえをどうにかしない限り、この作戦は無意味よ」

マミ「いいえ。少なくとも道は開けるわ」

さやか「本当ですか!?」

マミ「二段構えで行くのよ」

まどか「二段構え……?」

マミ「佐倉さん、美樹さん。さっきと同じように天井をこじ開けて」

杏子「お、おう!」

マミ「天井が開いたら、必ずキュゥべえは扉を閉める。そのときがチャンスよ」

ほむら「なるほど。すかさず、私がまどかを肩車して、貴方を踏み台にして跳躍するということね」

マミ「ええ。そして、キュゥべえを捕獲するの」

まどか「私が、ですか」

マミ「貴方にしかできないわ」

杏子「まどか、時間はないぜ」

さやか「やるっきゃないよ、まどか」

まどか「うんっ。私、がんばってみる!」

マミ「いい? チャンスは一度きりだと思って」

ほむら「ええ」

杏子「任せろ」

さやか「一回あれば十分!」

まどか「はいっ」

マミ「セット!」

杏子「行くぜ、さやかぁぁ!!」

さやか「うりゃぁぁぁぁぁ!!!」グッ

マミ「ふぐっ……!」

さやか「杏子ー!!!」ピョーン

杏子「おりゃぁぁぁぁ!!!!」

杏子「ひぐっ!」ゴンッ!!!

キュゥべえ「また無茶な開け方を――」

ほむら「はっ!!」グッ

マミ「ぅぐっ……!!!」

キュゥべえ「なんだって……!?」

ほむら「まどかー!!!」ピョンッ

まどか「キュゥべえ!!!」

キュゥべえ「まどか!」

まどか「ごめんね!!」ガシッ

キュゥべえ「きゅっぷい!?」

まどか「さやかちゃん!!」ポイッ

さやか「ナイス! まどか!」パシッ

キュゥべえ「こんなことをしても君たちはここから抜け出すことはできないよ」

さやか「杏子!!」ポイッ

杏子「おう!」パシッ

キュゥべえ「杏子? 何をするつもりだい?」

杏子「ここに入っていてもらうぜ」

キュゥべえ「そこは……! ありえない! こんなこと魔法少女がしていいわけがないよ!!」

杏子「幸せに想えよ。あたしに包まれるんだからな」

キュゥべえ『きゅっぷい!! ここはまずいよ!!』ガサガサ

杏子「はぁ……はぁ……」

マミ「キュゥべえ。帰ったら、ちゃんとお風呂にいれてあげるから」

キュゥべえ『全く理解できないよ!! 恥ずかしくないのかい!?』

杏子「恥じらいなんて、もうねえよ」

さやか「杏子……ちゃんと責任とるからね……」

マミ「はぁ……はぁ……」

ほむら「あとは……天井から出るだけね……」

まどか「あの……思ったんだけど……」

杏子「なんだよ」

まどか「一人ぐらいならあの天井から出られるかもしれないけど、二人目、三人目からはどうやってあそこから出るの?」

さやか「そんなの最初の一人が引き上げればいいじゃん?」

まどか「手で?」

さやか「うん」

まどか「えっと……無理だと……思うんだけど……できるのかな……?」

まどか「天井にあがれたよー」

ほむら「まずは美樹さやかからね」

さやか「よーし! まどかー! ひきあげてねー」

まどか「う、うん!」

さやか「せーの!」ピョンッ

まどか「ふんっ!」ガシッ

さやか「そのままひっぱってー」

まどか「ふーんっ……!!」グググッ

さやか「オーエス、オーエス」

まどか「うぅぅ……」ググッ

さやか「まどか! もうちょっとだから!!」

まどか「も、もう……だ……め……ぇ……」ズルッ

さやか「まどか!?」

杏子「落ちる!?」

まどか「きゃぁ!?」

まどか「……ごめんね」

さやか「気にしない、気にしない」

杏子「キュゥべえが居なくても、結局その先にはいけないってことかよ」

ほむら「誤算だったわね」

マミ「やっぱり救助を待ちましょうか」

まどか「で、でも……それだと……」モジモジ

ほむら「心配はいらないわ」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「気体、液体、固体。どれでも、喜んで受け止めるから」

まどか「……」

まどか(ほむらちゃん、もう限界なのかな)

キュゥべえ『だから言っているじゃないか。まどかが魔法少女にならない限り、ここからはでることはできないって』

ほむら「黙りなさい」

マミ「考えてみれば、天井に全員が上がれたとしても、その上に行く方法がないわね」

杏子「長いロープでもあればいいのにな……」

1時間後

ほむら「はぁ……はぁ……」

杏子「はぁ……ふぅ……」

さやか「まどか……平気……?」

まどか「うん……眠くなってきちゃったけど……」

さやか「まどか、寝たら死んじゃうから……」

ほむら「はぁ……もう……酸素もなくなってきたわね……」

杏子「天井に上がる元気もなくなったな……」

マミ「換気口あるし、密閉されてるわけでもないわよ?」

まどか「あの……ほむらちゃん……」

ほむら「なに……まどか……」

まどか「わたし……魔法少女になる……」

ほむら「ダメよ……それだけは……」

まどか「でも、ならないと……もう……わたし……」モジモジ

ほむら「それは私の上ですればいい。魔法少女になる必要はないわ」

まどか「私だけじゃない……みんなもこのままじゃ……しんじゃうから……」

ほむら「ダメ……ダメなの……まどか……それだけは……」

マミ「みんな。しっかりして。気のせいだから」

杏子「マミは……一番遅く来たから、あたしたちより。元気あるよな……」

さやか「マミさんだけでも……助かって……ください……」

マミ「ちょっと! みんな! 落ち着いて!!」オロオロ

まどか「キュゥべえ……聞こえてるでしょ……」

キュゥべえ『聞こえているよ。まどか』

まどか「私の願いを……」

ほむら「まどか……やめて……おねがいだから……」

まどか「私の願いを叶えてよ……インキュベーター……」

キュゥべえ『まどかの願いはなんだい?』

まどか「ここから……みんな……を……」ガクッ

ほむら「まどか!? まどかー!!!」

マミ「鹿目さん!?」

さやか「まどか……」

まどか「……うぅぅ」

杏子「まだ、生きてるな」

まどか「もう……もれちゃうよぉ……」モジモジ

ほむら「まどか!! 安心して!! 私が全部!! 回収するから!!!」

まどか「うぅぅ……」モジモジ

マミ「なにか……なにか突破口は……」

さやか「もう……だめ……」

杏子「さ、やか……」

まどか「みたかったなぁ……ほむらちゃんが……新しい服を……きてくれるところ……」

ほむら「着る! 着るから!! まどか!! 諦めないで!!」

まどか「でも……あっ……くっ……」

ほむら「無理しないで、まどか! 我慢は体に毒よ!!」

マミ「服……? 暁美さん! これ、開けるわね!!」ガサガサ

ほむら「それはまどかが私のために……!!」

マミ「これでロープは完成したわね」ギュッ

ほむら「あぁ……」ガクッ

杏子「服を全部結んで……一本の縄にしたのか……」

マミ「これで抜け出せるわよ、みんな」

さやか「無理ですよ……マミさん……もう……酸素がなくなってて……」

マミ「深呼吸して」

さやか「え?」

マミ「エレベーターで酸欠はしません」

さやか「そうなんですか!?」

杏子「マジかよ!?」

さやか「杏子にだまされたー!!!」

杏子「あたしの所為にするなよなぁ!!!」

ほむら「そういえば、冷静になれば息苦しくもないわね」

まどか「わたしは……くるしいよぉ……」

マミ「とりあえず、鹿目さん以外、天井裏に移動するわよ。私が先に上にいって、それからこの即席ロープでみんなを引き上げるわ」

エレベーター 外

マミ「よいしょっと」

ほむら「あとはまどかだけね」

マミ「鹿目さーん。済ませたら声をかけてー」

まどか『はぁーい』

杏子「エレベーターの中ってこうなってるのか」

さやか「あそこに扉がありますね」

マミ「ええ、なんとかこの即席ロープをひっかけられたらいいんだけど」

杏子「ギリギリ届くかどうかって距離だな」

ほむら「わたしのふく……まだ試着すらしてなかったのに……」

さやか「試着はしなさいよ」

まどか『マミさーん、おわりましたー!』

マミ「オッケー。引き上げるわね」

まどか『キュゥべえと杏子ちゃんのが詰まったビニール袋はどうしましかー?』

マミ「そこに置いてていいわよ。余計な荷物があると脱出しにくくなるもの」

まどか「うーん……!!」

さやか「もうちょっと……!」ググッ

杏子「このぉ……!!」ググッ

まどか「はぁー……。みんな、ありがとう」

マミ「すっきりしたかしら?」

まどか「でも、良かったんですか……。エレベーター、汚れちゃいましたけど」

ほむら「私があとで清掃しておくから、問題ないわ」

まどか「いいの?」

ほむら「もちろんよ」

まどか「……やっぱり、私が掃除するね」

ほむら「何故?」

マミ「今は脱出することだけに集中よ」

杏子「あそこに届くのか?」

マミ「お姉さんに任せなさい」

さやか「マミさーん! 頼りにしてますよー!!」

マミ「一発で決めるわよ。ティロ・フィナーレっ」ポイッ

さやか「おぉー!!」

まどか「すごい! 引っかかった!!」

杏子「やるな、マミ」

マミ「これぐらいわね」ドヤッ

ほむら「それから?」

マミ「これで向こうの扉のところまでつたっていけばいいだけよ」グイッグイッ

ほむら「上手くいくかしら?」

マミ「まぁ、みてなさい。行くわよ!」

まどか「マミさん、がんばってください!!」

マミ「見ていて!! はっ!!」バッ

ブチッ!!!

まどか・さやか・杏子「「……!?」」

ほむら「な……!?」

マミ(え……みんなが遠ざかっていく……どうして……)

まどか「マミさん!!!」ガシッ!!!

さやか「わぁぁぁ!?」ガシッ

マミ「あ……え……?」

杏子「まどか! さやか! そのまま即席ロープを掴んでろ!! あたしがマミを引き上げる!!」

ほむら「手を貸すわ、杏子」

マミ「みんな……ありが――」

ブチッ!!!

マミ「あぁぁぁ」ヒューン

まどか・さやか「「マミさーん!!!」」

杏子「させるか!!!」ガシッ

ほむら「巴さん!!!」ガシッ

マミ「あ……」

杏子「ぐ……うぅぅ……!!」

ほむら「い、今、ひきあげる……わ……」

マミ「二人とも……」

まどか「さやかちゃん! 私たちも!!」

さやか「う、うん!!」

杏子「ダメだ……たえられない……」

ほむら「ん……くっ……」

マミ「……離して」

杏子「な、なにいってんだよ」

ほむら「離す、理由がないわ……」

マミ「一緒に死ぬことなんてないんじゃないかしら」

まどか「私はほむらちゃんを引っ張るから!!」

さやか「じゃあ、杏子を引っ張る!!」

杏子「はなすかよ……!!」

ほむら「ここまできて……見殺しにはしないわ……!」

マミ「もう、いいから……もう……」

杏子「つか……体勢をいじできそうにな……」ズルッ

ほむら「あ――」ズルッ

まどか「ほむらちゃん!!!」ガシッ

さやか「杏子!!!」ガシッ

杏子「お、ぉぉ……」

ほむら「まどか……」

マミ「やめて、鹿目さん! 美樹さん!!」

まどか「んん……!!」プルプル

さやか「やっぱり……三人を引き上げるのは……むりかも……!」プルプル

ほむら「まどか!! 後ろ!!」

まどか「え?」

キュゥべえ「まどか……さぁ、願い事を……言うんだ……」ドロォ

まどか「きゃぁー!?」

さやか「くさい!!」

杏子「なんだと!?」

ズルッ

まどか・さやか「「あっ」」

まどか「いやぁぁぁ!!!」

杏子「ちくしょう!! このまま落ちてたまるかぁぁぁぁ!!!」シャキン!!!

マミ「はぁ。魔法はなしで行こうと思ったけれど、仕方ないわね」

さやか「剣を壁に刺して!!」ザンッ!!!!

杏子「気が合うな、さやか!!」ザンッ!!!!

さやか「うりゃぁぁぁ!!!!」ガガガガガガガッ!!!!!

杏子「こんのぉぉぉ!!!」ガガガガガガガッ!!!!!

マミ「もう少し、スマートに速度を殺しなさい」

さやか「勢いが落ちない!!!」

杏子「くそー!!」

マミ「任せて!! えーいっ」シュルルルル

ポヨンッ

まどか「きゃふ!? あ、マミさんのリボンだ……」

ほむら「助かったわ。巴マミ」

マミ「朝飯前よ」

ほむら「やっぱり、魔法少女は魔法少女らしく、魔法を使うべきだったわね」

マミ「余計な力は使わない。そういう約束だったはずよ」

ほむら「……」

さやか「酷い目にあったぁ」

杏子「今日は厄日だな……」

まどか「でも、こうして助かったんだから――」

ブツンッ!

ほむら「え?」

マミ「なんの音――」

ゴォォォォ……

杏子「お、おい、まさか……」

キュゥべえ『さぁ、望みを言うんだ!! まどか!!』

ほむら「キュゥべえ!!!」

マミ「エレベーターが落ちてくる!!」

さやか「……私がやります」

さやか「ふんっ!!!」ズンッ!!!

杏子「受け止めやがった」

ほむら「斬ればいいのに」

さやか「斬っちゃったら、まどかのが……」

まどか「あ……ごめんね……」モジモジ

『往生際が悪いね、さやか』

さやか「それはこっちの台詞――」

キュゥべえ「僕からは逃げられはしないのに」ベチャァ

さやか「……」

マミ「み、美樹さんの顔に……」

まどか「あぁぁ……」

ほむら「逃げるわよ、まどか」ギュッ

まどか「え!? でも!?」

さやか「あ……」フッ

杏子「バカ!! 力を抜くな!! さやかぁぁぁ!!!!」

駐車場

ズゥゥゥゥゥン!!!

まどか「さやかちゃん!! 杏子ちゃん!! マミさぁぁん!!!」

ほむら「なんとかエレベーターからは脱出できたわね」

まどか「こんなことになるなら……最初から魔法……使っておけば……」

ほむら「そうね」

杏子「おい!! しっかりしろ!! さやか!! あたしのが顔についたぐらいで気絶するなよ!!」

さやか「するに決まってるでしょ!!!」

マミ「いたた……。みんな、無事みたいね」

ほむら「これではまどかのを回収するのは無理ね」

まどか「……」

まどか(ほむらちゃん、今日はどうしたんだろう?)

杏子「で、キュゥべえはどうしたんだ」

マミ「さぁ。けど、死にはしないんじゃないかしら?」

ほむら「行きましょう。もうここに用なんてないわ」

マミの家

『本日発生した大規模な停電ですが、現在90%復旧したとの発表が――』

さやか「良いお湯でしたぁ」

杏子「助かったぜ、マミ」

マミ「ゆっくりできた?」

さやか「はい! まぁ、杏子が何度も顔を洗おうとしてきましたけど」

杏子「あたしなりに気を遣ってやったんだろ」

さやか「あれ? まどかは?」

マミ「さっき、暁美さんと一緒に寝ちゃったわ」

さやか「そうですか。ま、つかれるよね」

杏子「これ、今日のニュースか」

マミ「ええ」

杏子「結局、原因はなんだったんだ?」

マミ「今から説明するみたいよ」

『停電の直接的な原因となったのは、発電所で起こった原因不明の爆発であり――』

まどか「すぅ……すぅ……」

ほむら「まどか……」

ほむら「今度は必ず……」

キュゥべえ「君も随分と回りくどい方法をとるんだね」

ほむら「何のことかしら」

キュゥべえ「でも、いいよ。僕は状況を最大限に利用させてもらうだけさ」

ほむら「まどかには指一本触れさせないわよ」

キュゥべえ「時間を止めることができるなら、もっと簡単な方法があるとおもうけどね」

ほむら「魔法なんて使うまでもないことよ。それに無闇に魔力は使えないもの」

キュゥべえ「そうなんだ。ま、僕が気にすることでもないけどね」

ほむら「さっさと行きなさい。でないと、蜂の巣にするわよ」

キュゥべえ「それじゃ、またね。暁美ほむら」

ほむら「二度と、見たくはないわ」

まどか「すぅ……すぅ……」

ほむら「……そうだわ。次は……」

数日後 学校 トイレ

さやか「この前の停電、結局は謎のままなんだってさ」

まどか「みたいだね。またあんなことがあったら怖いよね」

杏子「全くだ。冷蔵庫の食い物、全部ダメになってたしなぁ」

マミ「原因不明の爆発か……」チラッ

ほむら「……」

マミ(考えすぎよね。彼女も死にそうになったんだし)

ほむら「まどか、こっちの個室、空いてるわ」

まどか「あ、うん」テテテッ

バタンッ

杏子「さっさとすませて、教室いこーぜー」

さやか「次、小テストだってさー」

杏子「マジかよ」

マミ「うふふ」

ほむら「……」

まどか「はぁ……」

まどか「ふぅ。さて――」

まどか「あれ? あれ?」キョロキョロ

まどか(紙が……ない……!?)

まどか「あ、えと……えと……」

キュゥべえ「さぁ、まどか。願い事を言うんだ!」

まどか「きゃぁぁ!!!」

ほむら『まどか!! どうしたの!?』

まどか「あの!! 紙がなくて!! それで!! キュゥべえが!!」

ほむら『開けるわよ!!』

まどか「え!? ちょっとま――」

ほむら「まどか!! 紙を持ってきたわ!!」ガチャ

まどか「きゃぁぁぁ!!!」

マミ「ちょっと!! 何をしているの!!!」


まどか(私がほむらちゃんの本性に気が付いたのは、このすぐあとでした)


おしまい

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