最初だけ安価があります
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「───あ、」
人形は、敵の大きな蹴りを受けたのを最後に、ガタンと床に崩れて落ちてしまった。負けた。闘える者は居らず、残された自分に待つのは死───。
絶望に支配され、思わずその場に人形と同じく崩れ落ちてしまう。終わった。何もかも。全て。もう何も残されていない。ここで、このまま死を待つばかり……。
『……ふむ、君も駄目か』
倒れ伏す身に、遠くから声が聞こえた。
『そろそろ刻限だ。君を最後の候補とし、その落選をもって、今回の予選を終了としよう。───さらばだ。安らかに消滅したまえ』
声はそう言い放った。残念そうに、かつ、祈りを捧げるように。この結末が覆らないと断言しているかのように。
否定する力もなく、ぼんやりと床を見つめる事しか出来ない。その言葉通りに、このまま死んでいくのだろうか。
突然、霞んだ視界に、土色の塊がいくつも浮かび上がった。いや、今になって見えただけで、元からそこにあったのかもしれない。
それは、その塊は、幾重にも重なり果てた月海原学園の生徒達だった。
どうやら、ここで力尽きたのは先程の彼だけではなかったらしい。ここまで辿り着き、しかしどうにも出来ず、果てていった者達は。
……そして間もなく、自分もその仲間入りするのだろう。
───このまま目を閉じてしまおうか。そうすれば楽になれる。
やれる事はやった。これ以上何を望む?
もう終わりにしてもいいのかもしれない。本当に?
本当に、これで終わってしまって良いのか?
答えは“否”だ。諦めたくない……。そう思って、起きあがろうと力を入れた。けれど、体中に激痛が走り、まったく動かない。人形の敗北=使役者の死とはこういう事でもあったのだろう。
それならば……いや、それでも───
このまま終わるのは、許されない。全身に駆け巡る痛みは、もう許容外の感覚だ。あまりに痛すぎて、目から火が出るどころの話じゃない。痛覚だけで眼球が燃えている。五感は指先から断裁されていく。
恐い。痛みが恐い。感覚の消失が恐い。先程見た死体と同じになる事が恐い。
恐い
怖い
コワイ
無意味に消えることが、なによりも恐ろしい。
ここで消えるのはおかしい。おかしいと、ノイズにまみれた意識が訴える。ここで消えるなら、あの頭痛は何のために。ここで消えるなら、彼等は何のために。
身体中に疾る激痛を無視し、私は虚空に手を伸ばす
あぁーーーそれでも、私は
↓3
1「この手は、まだ一度も、自分の意志で闘ってすらいないのだから───!」
2「たす……けて…」
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