岸波白野「行こう。 セイバー」 剣崎「あぁ。 マスター」 (12)

最初だけ安価があります

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「───あ、」

 人形は、敵の大きな蹴りを受けたのを最後に、ガタンと床に崩れて落ちてしまった。負けた。闘える者は居らず、残された自分に待つのは死───。

 絶望に支配され、思わずその場に人形と同じく崩れ落ちてしまう。終わった。何もかも。全て。もう何も残されていない。ここで、このまま死を待つばかり……。

『……ふむ、君も駄目か』

 倒れ伏す身に、遠くから声が聞こえた。

『そろそろ刻限だ。君を最後の候補とし、その落選をもって、今回の予選を終了としよう。───さらばだ。安らかに消滅したまえ』

 声はそう言い放った。残念そうに、かつ、祈りを捧げるように。この結末が覆らないと断言しているかのように。

 否定する力もなく、ぼんやりと床を見つめる事しか出来ない。その言葉通りに、このまま死んでいくのだろうか。
 突然、霞んだ視界に、土色の塊がいくつも浮かび上がった。いや、今になって見えただけで、元からそこにあったのかもしれない。
 それは、その塊は、幾重にも重なり果てた月海原学園の生徒達だった。

 どうやら、ここで力尽きたのは先程の彼だけではなかったらしい。ここまで辿り着き、しかしどうにも出来ず、果てていった者達は。
 ……そして間もなく、自分もその仲間入りするのだろう。


 ───このまま目を閉じてしまおうか。そうすれば楽になれる。

 やれる事はやった。これ以上何を望む?

 もう終わりにしてもいいのかもしれない。本当に?



 本当に、これで終わってしまって良いのか?




 答えは“否”だ。諦めたくない……。そう思って、起きあがろうと力を入れた。けれど、体中に激痛が走り、まったく動かない。人形の敗北=使役者の死とはこういう事でもあったのだろう。
 それならば……いや、それでも───

このまま終わるのは、許されない。全身に駆け巡る痛みは、もう許容外の感覚だ。あまりに痛すぎて、目から火が出るどころの話じゃない。痛覚だけで眼球が燃えている。五感は指先から断裁されていく。
 恐い。痛みが恐い。感覚の消失が恐い。先程見た死体と同じになる事が恐い。

恐い
怖い
コワイ

無意味に消えることが、なによりも恐ろしい。

ここで消えるのはおかしい。おかしいと、ノイズにまみれた意識が訴える。ここで消えるなら、あの頭痛は何のために。ここで消えるなら、彼等は何のために。

身体中に疾る激痛を無視し、私は虚空に手を伸ばす

あぁーーーそれでも、私は



↓3

1「この手は、まだ一度も、自分の意志で闘ってすらいないのだから───!」

2「たす……けて…」

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