学園生活SS LRという名の校則 (391)

学園SS書きたくなった。


LR
・「安価は絶対」。踏まれた安価に書かれた内容のみ採用。あとから追加・補足は認めない。ちょっとしたレスや誤爆などの間違いも安価として採用する。
・連取りなど、本来マナー違反となる行為も禁止。再安価になる。
・また、こちらからの指定に即していないものは再安価となる。(例 行動を決める安価なのに結果や偶然に起きることまで言う、など)
・急に過激な行動を安価でさせようとしても自制が働いて、そのままストーリーが続く場合もある。
・状況によってはコンマ使用もある。

「よくわからんけど安価さえ踏めば俺の思い通りだ」というような人はご遠慮ください。


キャラクター募集テンプレ(中高一貫の、休憩などは同じ場所でとれる学園なので12~18歳までいる)

名前
性別
年齢・学年
外見(身体的特徴)
外見(服装・髪型など)
外見(休日での服装)
性格
特徴
夢・願望

安価↓1~、1人1キャラ。書き始めるまで(深夜を予定)。
ご意見・ご質問等のレスとは区別する。
主人公やヒロインがこの中から決まる可能性もあるし、逆にちょい役で終わる可能性もある。

名前 三島佳奈
性別 女
年齢・学年 17さい 高2
外見(身体的特徴) 巨乳、巨尻、薄い褐色の肌
外見(服装・髪型) ブラが見えそうなくらい胸を開けた制服、ミニスカ、茶髪
外見(休日での服装)ショートパンツ、キャミソール
性格 生意気なギャル、アホ
特徴 嫌なことを嫌とハッキリ言うことができるが知らないことを知ってるフリをし他人の話しに流されやすい
夢・願望 とにかく楽しく生きる

名前 緑谷 弘 (りょくらひろ)
性別 男
年齢・学年 16 高校一年
外見(身体的特徴) 華奢でかなり小柄
外見(服装・髪型)綺麗な髪質
外見(休日での服装)明らかに似合ってないワイルドな服装
性格 臆病なところがあるが心優しい
特徴 自分の体型と性格にコンプレックスを持っている
夢・願望 もっと男らしくなりたい

本当に書ききれんのかコレ
エタるよりは負担を減らして細々でもいいから書いていった方がよさそうだが

名前:湯川 誠
性別:男
年齢・学年:17(高2)
外見:(身体的特徴)周りと比べて背が低い
外見:(服装、髪型など)こだわりの眼鏡をかけており、ちょっとした外出でも常に学生服を着ている
外見(休日での服装)シワひとつない白いYシャツとズボン(私服は部屋着を除いてほとんどない)
性格:超がつくほどの真面目で理屈っぽい。落伍者に厳しいが教えを請われればきちんと教えてくれる
特徴:全国模試で五指に入るほどの秀才。両親がお金持ちで教育に厳しい。故にテレビゲームなど世俗的なことに疎い
夢・希望:難関大学に合格して立派な職に就くこと

名前 川本 真奈(かわもと まな)
性別 女
年齢・学年 15(中3)
外見(身体的特徴) 身長153㎝、バストは中々のもので、オッドアイ(カラコン)
外見(服装・髪型など) 黒髪ツインテール、胸元にはお気に入りの十字架アクセ(『力』を持つ者の証で、手放すと災いが起きるらしい)
外見(休日での服装) 自作のコスプレ衣装。
当人いわく「魔翌力の暴走を抑える拘束具であると共に、効率的に『力』を行使できるように最適化された私専用のドレス」
性格 中二病真っ盛りでキザな言い回しを好むカッコつけ、でも勉強には真面目に取り組む
特徴 真名を呼ばれると魔翌力が漏れてしまうらしく、真実の名(トゥルーネーム)「マナリア・バーンシュタイン=神埼」と呼ぶよう触れ回っているが、誰にも呼んでもらえない
夢・願望 世界を襲う災厄から皆を守り抜くこと

名前 海藤雅人
性別 男
年齢・学年 18歳 高3
外見(身体的特徴)背が高く、見た目チャラ男
外見(服装・髪型)着崩した制服、金髪 
外見(休日での服装)適当に着る
性格 殺人と強盗以外の悪いことは大体やったことがある不良、女好きだが生意気な奴が嫌いで自分の思う様にしようとする
特徴 似たような仲間とつるんでいる、喧嘩が強い
夢・願望 特に無し

想像以上の安価ありがと。
主人公は >>17の緑谷 弘に決定しました。
開始

夏―――

ぼくは、この日も小さく息を吐きながら熱いアスファルトの上を進む。

周囲では暑い暑いと声がする。みんな不満ばかり。

暑さだけでなく、鳥の声やさわやかな風にも目を向ければいいのに。

そんなことを考えていると、見えてきた。青い大きな建物……青昂学園の校舎。

中学生と高校生があの中で一緒に学園生活を送っている。

校舎の真ん中にある、時計を見る。まだ十分間に合う。このままさわやかな風を楽しみながら歩いて教室へ行こう。

と思った時、ぼくの背中に衝撃が走った。


ナナ「おーーーーっす!」

弘「いたたた……七宮さんやめてよ毎日毎日」

ナナ「あははっ」


やってきたのは七宮ナナさん。いつも変わらず元気だけど、この毎日背中を叩いてくるのはどうにかしてほしい……。


ナナ「いやもー暑いね、マジで溶ける! 少なくとも上級生の化粧は溶けるかも!」


そういってゲラゲラ笑う七宮さん。飛び跳ねて本当に元気だ。


弘「あれ、朝練はないの?」

ナナ「うん、今日はね」

弘「そう、なんだ」

ナナ「あははどーしたの?」


笑いながらまたバシバシ叩いてきて……もうやめてよお。


そこに、元気のいい音が響いてきた。

バシバシと叩く音に混じって、ドタドタとしたアスファルトの地面を叩く音。

同じクラスの青木 勇気君が走ってくるいつもの音だ。


勇気「こおらあ! 七宮、イジメはぜってーゆるさねえぞ!!」

ナナ「あ、うるっさいのが来た!」

弘「勇気、おはよう」

ナナ「あ! 私には七宮さんで青木には勇気!? あーひどーいつめたーいそんな人とは思わなかった!」

弘「え、いや、だっていつもそう」


だっていつもそう呼んでいるのは知っているじゃない。ぼくがまごまごしていると、にんまりとしてから口をぱっくりと開けてバシバシ叩いてくる七宮さん!


ナナ「あははかわいー! 本気にしちゃってー!」

弘「いたい、いたいってば!」

勇気「ほったらかしにするな俺を」

七宮さんに叩かれてると、いつも勇気は走ってきて止めようとする。

曲がったことが大嫌いな勇気は、学校のどんなもめごとやイジメ、暴力沙汰に首を突っ込んでは喧嘩ばっかりしてる。

でも七宮さん、そこまで悪いことしてないと思うんだけどな。痛いけど。


ナナ「それにしても弘さあ、シルバーアクセ似合わないからやめたら? 今日なんてドクロって。昨日は剣だったしその前はえーっと、メリケンサック型だったっけ。やっぱ似合わない!」

弘「え……う、うん。で、でも気に入ってるから」

勇気「いやー、でもガラ悪く見えるから俺もやめたほうがいいと思うぞ」

弘「い、いいんだよ。ほっといて」


ぼくは少しでも弱気な自分をかえたくて、普段の服装は似合わないと言われながらもワイルドなものを着ている。

学校の知り合いに見られたことはないけど、街を歩けば笑われる。もし七宮さんに見られたらなんて言われるんだろう。

はあ……この情けない自分をどうにか変えたい……。


恋「皆さん、おはようございます」

勇気「おお! 平瀬先輩! おはよーっす!」

七宮「おはようございます先輩!」

弘「え? あ、平瀬先輩」

恋「早く行かないと遅刻しちゃいますよ?」


この人を見るとドキドキする。太陽に照らされた笑顔に、優しい声。

ふわっとした髪が、風になびいている。

すると、今度は両腕に痛み、そして体全体が前へと引き寄せられる。

七宮さんと勇気が思いっきり引っ張って走りだしたんだ。


勇気「遅れる! やべえ!」

ナナ「遅刻しちゃうよ早くー!」

弘「え、あの、まだ余裕あるんだけどーーーー!?」

教室。

青く塗られた外見と同様、すっきりとした近代的な風景……と言えばいいんだろうか。

ぼくはどっちかというと、小学校までの、木材のあったかみがある学校のほうが好きだなあ。と時々思う。

何でできてるのかわからないけど、無機質な銀色の机に顎を付け、ため息をつく。

ぼくは勇気と隣の席に座っている。七宮さんはぼくを放り込むように手放してから、急いで隣のクラスへ走っていった。

直後、ビターンという音がした。『パンツ丸出しじゃんアンタ』という笑い声と、『み、見るなばかあー!』という七宮さんの声が聞こえたけど……このことは忘れよう。はずかしい。

それより、先輩ともう少し話したかったな。


弘「はあ……先輩ともう少し話したかったな」

勇気「しゃーねーだろ! 遅刻するとこだったんだから!」

弘「十分余裕はあるでしょ……まだチャイムが鳴るまで10分はあるよ?」

勇気「え、マジか」

弘「もう……」


たぶん先輩の『早くしないと遅刻』って言葉でそう思ったんだろうなあ。

先輩自身は『このままそこで話を続けていると遅刻する』って意味で言ったんだろうけど。


勇気「平瀬先輩、マジでいい人だよなあ。この間だって、校門近くに捨てられてた犬の新しい飼い主を一生懸命探してさ」

弘「うん」


先輩は本当にやさしい。それに勇気もある。小さいころに、川に落ちた赤ちゃんを助けたことだってあるらしい。

逆に、そういう正義感ややさしさによる人気を妬まれてよく思わない人もいるらしいけど。

そういった意味では……じゃないけど、勇気も心配だ。


勇気「さーて、授業の準備……ん?」

弘「どうしたの?」

勇気「いや、>>34がこっちに来るんだが」


>>34は募集時のキャラから選択。キャラに応じて勇気からの呼び方も変更。

>>35でそのキャラがしようかと思うことを安価(以後、思考安価と呼称)。

高村 秋斗

サッカーの試合の話し 呼び捨て

勇気「いや、高村先輩がこっちに来るんだが」

弘「先輩が?」


やってきたのは高村先輩だった。いつもサッカーの話をしてくれるんだけど、正直ついていけないところもある。

男らしい人だったらきっぱり断れるんだろうか?

いや、楽しそうに話してるのにそんなにすっぱり断ってしまったらかわいそうだよね?

その迷いはともかく、僕の前の席に勝手に座る高村先輩。


高村「なあ勇気に弘」

勇気「あれ、いままで君付けで呼んできたのに」

高村「ん? ああ、これまで何回もサッカーの話してきたろ。そろそろ他人行儀はやめようぜ!」

弘「は、はい」


ぼくとしてはそれほど仲良くなった気はしないんだけど。でもいい人には違いないし。

サッカーの話題をどんなにされても、耳に入ってこない。

うーん、でもサッカーをやったらもうちょっと男らしくなれるんだろうか……?


弘「せ、先輩」

高村「おいおいお前も秋斗さんって呼べばいいだろー?」

弘「え」

勇気「まあまあ勘弁してやってくださいよ」

弘「あ、あの、先輩。じゃない、秋斗さん。ぼく……さ、サッカーしてみたい……です」

勇気「お?」

高村「おおお!? マジか! いいじゃねえかオイ!」


高村先輩……秋斗さんに、頼んでみることにした。

サッカーなら、体も鍛えられるし、スポーツマンシップだって身について男らしくなれるかもしれない。

ぼくの次の言葉を聞くか聞かないかのうちに、秋斗さんは目を輝かせながら立ち上がる。


弘「お、お願いします」

高村「よーっし。やる気ならマジだぜ! 早速サッカー部に入部だ!」

弘「わわ!?」

勇気「秋斗さん、もうすぐHRですからそれは後に」


またしても腕を引っ張られたけど、勇気に助けられてその場でいきなり入部、にはならなかった。

というか、最初は仮入部というか体験入部くらいにしときたいんだけども……はあ。

それから数分、ようやく先生がやってきてHRが始まった。

先生の名前は岡本喜朗。メガネをかけて無精ひげを生やした、多少ごつい先生だ。

大きな特徴はないけど、特に怖いわけでもない。噂になることもないくらいの先生。

あ、たしか球技がうまいって話は聞いたことあるけど。

その日の授業に関する準備や、夏バテとか水分補給に注意しろとか、最近している話をまた今日も繰り返してる。

なんで同じ話するんだろ? それならチャイムの時間を遅らせて、さっき先輩ともう少し長く話せたかもしれないのに。

はあ。

あ……空が青い。雲が流れていくのが見える。

ちらりと光ったのはUFO? それとも鏡の反射か何かなのかな?

外の景色に気を取られすぎて注意されないようにしなくっちゃ。


岡本「……で、だ」


先生の声が少し、神妙なものになった。


勇気「なんだ? お、なんだ?」


勇気も、息を吐くような小さな声でつぶやいた。


岡本「少し言いにくいのだが……裏門で……」


その次の瞬間、先生は、思春期の僕たちを騒然とさせる言葉を口にしていた。




裏門で起きたらしいR18な出来事を>>40で。
ただし目撃者がいるが詳しいことは不明……であるためあくまでざっくりと。

使用済みコンドームらしきものが落ちていた

コンドームだって……ええ……と大勢のクラスメイトが引いている。

どちらかというと、せいぜい起きたらしい、という噂がある程度の事なのにわざわざ発表する先生に対する声だった。

直後にざわつき、先生が静かに、と止める。

バツが悪そうに教室を後にする先生の背中を横目に、僕は1時間目の数学の教科書を用意し始める。


勇気「学校の裏門で変なことしてるやつがいるってことか! ゆるせねえ!」


がたたっ、と椅子を鳴らして勇気が立ち上がる。数人の女子が『またやってる』『幸せだねー』とコソコソ言ってるのが聞こえた。勇気本人には聞こえてないみたいだけど。


愛美「最低ね」


次に大きな声を出したのは、少し離れた席に座っている水無月さん。

あまりしゃべったことはないけど、よく他の誰かを罵倒してるのは見る。

だから少し怖くて、僕から近づこうと思ったことはない。



勇気「そうだよな! 最低だよな! ぶっ飛ばしてやろうぜ!」


勇気が水無月さんに向かって叫ぶ。まるで水無月さんが犯人であるかのような気合の入れようで。

それに対する水無月さんの視線は、とても冷たかった。


愛美「うるさいのも同様に迷惑よ。座ってて」

勇気「……すまん」


勇気が座った。

数学の授業中、谷町先生の声も聞かずにぼくは考えていた。

今日になって、男らしくなるチャンスが増えた気がする。

サッカーをして鍛えれば、体格が良くなるかも。

コンドームの事件を解決すれば、男らしくなるかも。

短絡的かもしれないけど、挑戦してみたくなった。

その気持ちはぼく自身が少し、男らしくなったことによるものなのかもしれない。

よし……まずは休み時間、裏門に行ってみよう。


谷町「緑谷! 聞いてるのか!? 答えを言ってみろ!」

弘「じゅ、15っ」

谷町「……正解」


さっと口から出た答えが当たったみたい。ちょっとだけ皆が驚いていた。黒板を見ると確かに難しそうな問題だ……。

あとで復習しとかないと。

失敗した。

1時間目が終わってすぐに裏門に行ってみると、黒山の人だかりができていた。

野次馬や、ただスケベなことを目的にやってきた奴。それを見て『最低~』とバカにする女子。じゃあ君たちは何のために来たのさ……。

『あの子も大人しそうなのに~』という声が聞こえてきて、僕は最低な気分になった。

ぼくはこの事件を解決しようと思ったのに、逆に変態扱いを受けてる……という嫌な思い。

同時に、何かが冷めた。ぼくがこの一件に乗り出したくらいで何ができたんだろう?と。

冷静になって考えれば、喧嘩になれば勝てるわけないし……。

サッカーもやめて、6時間目が終わったら帰ろう。とさえ思った。


その時だった。


「昼休み、体育館裏に来て?」


驚いた。

女の人の声。囁くような小さな声が、甘く涼やかに響き渡る。

それ以上に、最近衝撃や痛みしか味わわなかった僕の背中に、柔らかいむにゅりとした何かがぎゅっと押し付けられた。

休み時間の終わるチャイムが鳴るまで、ぼくは立ち尽くしていた。

次の理科の授業も、その次の日本史の授業も、まともに聞こえなかった。

誰か、後でノート写させてくれないかな……。

4時間目は体育だ。この学園では、たまに、学年を越えて合同で授業をすることがある。

高学年の人が低学年の人を教えたり、互いのためになるゲームをしたり、半分ずつチームに分かれて球技をしたり。

高村せんぱ……秋斗さんが、先生にサッカーにしてくれと頼み込んでいるが、今日は野球をすることになっていると軽く突っぱねられている。そしてその後ろで勇気が『わがままはやめてくださいよおおお!』とグイグイ引っ張っている。

その時、ボールが飛んできた。


弘「うあわわわ! 危ない!」


何とか避けるけど、尻もちついた。この慌てぶりを笑われてしまう。うう情けない。

これじゃやっぱり、コンドームの事件なんて解決できるはずないよね……。


乙女「大丈夫ー!? 弘くん!」

清夏「怪我はなかった?」


そこに駆けつけてきてくれたのは、4つの大きな丸い……じゃない、二人の先輩。

宮崎乙女先輩と筒川清夏先輩だ。宮崎先輩は明るくて、筒川先輩はキリッとしてるけどどっちも優しい。


「は、はい、ケガは……大丈夫です」


う。さっきの事のせいで、胸に少し目が行ってしまいそう。だめだ、このままじゃまた変態扱いされちゃう!

乙女「よかったねー」

清夏「誰? ボールを投げたのは。気を付けて!」

乙女「さ、立って立って!」


宮崎先輩に手を貸されながら立ち上がる。女の人にこうやって助けられるのもやっぱり……はあ。今日は、いや今日もため息ばっかりだ。

う、うう!? 立ち上がると、ちょうど顔の目の前に二人の胸が!? あわわわわ!!


勇気「大丈夫かー」


またしても立ち尽くすことになった僕。顔が真っ赤で、皆がまた笑ってる。ああ……

昼休みが来た。

お弁当の卵焼きを食べながら、勇気と話をする。


勇気「でもよ、コンドーム犯って誰なんだろうな?」

弘「うっ、げほっ!」


ご飯の時にする話じゃないよそれ。そんなことも口にできず、既に収まったむせが続いているふりをするぼく。

そこにまた、背中に衝撃。痛いってば!


ナナ「なによ、私が来る前に食べてるんじゃないっつーの!」

勇気「別にお前を待つ必要ないだろ。いつも一緒に食ってるわけでなし」

ナナ「アンタには言ってないよーだ」

勇気「こら失礼だぞ!!」


喧嘩を始める二人。はあ……男らしさが上がる日だとか何とか言ったけど、自分自身の情けなさの再確認と、ため息の数が増える日だったのかな。

……。

…………。

………………だめだこのままじゃ。

行こう。まずは、体育館裏だ。







そこに待っていた人は……なにも身に着けずに体を大の字にして横たわっていた。


誰が横たわっていたか 安価↓1~5で投票 女性キャラ限定で。バラけた場合はコンマで決定(出そろった後のこっちのコンマとの近似値による)

弘「うわあああああああああああああああああ!!!」


真っ白な清廉な肌と、それに似あわない、丸くて、重力に垂れ堕ちて形が変わりぐにんとしている胸の……そう、胸。

そしてそこから手前に……てらてらと輝きを放つ……えっと、えっと……その、赤い……あ、あそこ。

叫んだ。腰を抜かした。動けなくなった。

自分の意志によるものなのかそうでないのかわからないけど、瞼も動かない。見開いたまま。動かない。

気づくと、声も出なくなっていた。口をただ開け閉めしている。

この夏の暑さにもかかわらず、日陰になっていたせいで土は冷たい。その上にぼくは座り込みm……その人は、背中全体をつけていた。

まるで張り付けられているかのように。



清夏「来てくれたのね」


そう言って笑う。この声で初めて、ぼくはこの人が誰かに気づいた。


弘「筒川……先輩?」

清夏「あふっ」


その人は、僕に呼びかけられたとたんに妖しい声を出し、笑う。

びくんびくんと体を揺らし、腰をリズミカルに前後上下させる。まるで恥ずかしい踊りを踊っているかのよう。

まだ、僕は一度も瞬きをしていない。

最初はわからなかった。いつもおさげの髪を下して、しかも乱雑に地面と顔の上に振り撒いて。

こんなにとろりとした笑顔だって見たことがない。最も、合同授業以外であまり会ったこともないんだけど。

あ、でも入学式でいきなり、服装について怒られたことがある。

女の子が男子の制服を着ないの! って。あの時は泣きそうになった顔を見て謝ってきたんだっけ……。

その人が、今はぼくの目の前で、完全に何も着ないで横たわっている……。


弘「え、ええっと」

清夏「さ、やろっか」

弘「え!?」


急に体を起こして、今度は膝をついて状態を下して……つまり四つん這いになって。

舌を左から右へとじゅりっ、と音を立てながら滑らせて。

む、胸が思い切り……水を入れたゴム風船のようにたっぷるっと下がる。

先輩がぼくへと向けて進むにつれて、腕の動きに合わせてか、一つずつ別々に、前後に揺れる。

同じ前後上下の動きだが、全く別物。それがたまらなく感じる。ごくり、と喉奥。

清夏「うれしいわ……あはぁっ」


胸に気を取られているうちに……先輩の顔が目の前に!?

うわ、うわ、うわ!

じゅっとりと濡れた赤い唇が迫ってくる、あああ、あああああ。


弘「だ、だめです! あ、あああっ、あのっ、ぼ、ぼく、す、好きな人が……あうっ」

清夏「……」


言ってしまった。ギリギリで。恥ずかしい。でも、ここでやめるわけにいかない。

先輩は……ぼくの好きな人は、平瀬恋先輩。

だから、ほかの誰かを簡単に受け入れるなんてできるわけない。

筒川先輩には悪いけど、このまま立ち去ろう。

とした瞬間、僕自身のあ、あそこ……に、びっちょりとした感触。

え? なにこれ。あ。


清夏「ふふ、ふふふ、体は正直ね……」

弘「ひゃあ! あ、ああっ、ああああ!」


濡れていた。ズボンの中で、熱く押し上げられた最低なものが、冷たい液体を溢れさせて、それがズボンやパンツを濡らしたんだ。

最悪に情けない姿だ。筒川先輩も普段なら、どんなに怒ったろう。でも……

目の下に手を伸ばして、僕のチャックを開け始めた!


清夏「あぁ……さあ、生で見せてみなさい……っ!」

弘「わああああ! だ、だめえええええええええええ!!」



思考安価 清夏 >>56
弘 >>58



今回はここまで、次は明日の昼~夕方のどっちかと思う

可愛い。食べちゃいたい。

とにかく逃げ出したい

人間のなかにある数々の選択肢から一つだけ行動として世にでる、その行動に至る前の最終的な思考を指定するのが思考安価と見た

そこから>>1が状況やキャラの性格、心情から結果を出して書くものだと

逃げよう。勇気と力を振り絞って。

腰が抜けたのをどうにか腕の力で立ち上がり……はできなかった。なんとかどうにか、足に力を入れた。

一気に、後ろを振り返りながら立ち上がり走ろうとする。

その瞬間、とても……冷たい。風を受けて、恥ずかしい液で濡れた、ぼ、ぼくのあそこがひやりとした。

布越しじゃない。動いた風圧をモロに浴びて、そこに涼しい風を感じたんだ。

……丸出し。


弘「ひえわああああああああああああ!!」


気づいたと同時に出る、情けなすぎる声。

ズボンのチャックからぽろりと出ていたんだ。恥ずかしいものが。ぼくの一番弱い部分。

知らない間に、気づかないうちに、そこまで引きずり出されていたんだ。

それを一瞬のうちに解し、ぼくはみじめさと情けなさの感情をあらわにして叫んだんだ。

清夏「ふっ、ふふっ、かわいすぎ!」


ベルトが信じられない力で引っ張られた。ぼくが弱すぎるのか?

後ろへ下がってしまう。逃げるべき相手によって、引き戻される。

いや、もともと前に進めてもいなかった。そうなる前にあそこ丸出しに気づいたから。


弘「や、やめて、やめて!」

清夏「わかってて来たんでしょ……さあ、もっと良く見せなさい。そのかっわいいモノを!」

弘「あ、ああああっ!」


かわいいって言わないでっ! ここも言わないでほしいところなのに!

子供のようなぼくのあそこが、なんとか大人のマネをしようと硬さを帯びて伸びているところは誰にも見られたくなかったのに!

それが、空気にさらされ、必死に逃げようとするぼくと、その場にとどめようとする裸の筒川先輩によって、ぷらぷらと揺れる。

とても情けない恥ずかしい姿だった。

弘「お、お願い、やめて……」

清夏「だーめ」


あの感触が、頭の後ろによみがえった。むにゅり、と、ぎゅっ。

いや、少し違うのは、そこに一点の曇りもなく、あくまで直接にその感覚があったことだ。

筒川先輩の、丸出しの胸が僕の後頭部に当たって押し付けられている。

同時に、腰回りがきつく締めあげられた。

むっちりとした肉付きのいい脚が、ぼくの腰に絡められている。

下を見ると、きゅっとしまった足首がねっとりと動き始め、ぼくのあそこを撫でまわしてくる。

まるで、何か恐ろしい肉を食べる生き物が、小さな生き物を襲って食べるような姿だった。


くちゅり


ああああ


ずっ、ちゅっ、ぐちゅっ、ぐりゅっ。


あああああああああああああ


ぴゅっ、ぴゅっ。



男らしくなりたい男にとって、人生が終わったような、あまりに情けない姿だった。



清夏「うふっ、はは……」


清夏、次の一言。思考安価↓

清夏「あなたの今の顔すごく可愛い……」

弘「いいいっ、ひいいいっ」


暖かく柔らかい大蛇に食べられる……そんな感覚に見舞われていた気がする。

後ろからしがみついた右上から、ぼくの顔を覗き込む筒川先輩のその貌は、人間とは思えない形相だった。

蛇……いや、あくまでも人間の形を変えていないその形は、赤く染まり、影がついて、目を光らせている。

唾液まみれの口元には真っ赤な舌がぬらりと這いずり、その上の整った鼻からは熱い空気がふっと吹き上がる。

足はと言えば、ぐりぐりとぼくのあそこの根元と……そ、その下の、た、玉と呼ばれる弱い部分をこね回している。

そしてもう片方の足が、先端をやさしく撫でつけつつ上下している。正気を保っていられないような感覚。

胸がどきどきと、ずきずきと。

顔が熱い。あそこも熱い。

それでいて、頭の中は冷たく震えるように――いや、凍るようだ。

どうにかなってしまいそうな恐ろしさがあるのだとりかいできるかできないかわからないくらいのわけのわからないかんかくがつつみこまれたすべてのぶぶんにしはいされている

まだはなしてくれないの


おねがいゆるして


はなして


はずかしい

…………

…………

……。


清夏「ふふ、簡単にイってくれちゃって。素敵だわ」


ぼくにとっては永遠に思える時間を終え、筒川先輩が見下ろしながら言う。

恐ろしくさえ思えたあの貌は、ただの笑顔に変わっている。

ひんやりとした地面の感触が、ぼくの背面へと。

あそこはと言えば、ぬめぬめとしたものに濡らされながら、風を受けてはみじめさを味わっている。


清夏「楽しかったわ。たったあれだけで、まさかここまで楽しめるなんてね。次は本番してあげるわね」

弘「ほ、本番!?」

清夏「そんなに感激しないの。こんなこと初めてよ? 君のかわいさだけで私までイっちゃったんだもの」

弘「えっ」


その時ぼくは、先輩のあ、あ、あそこ、から、重量を持っているかのようにのっそり垂れ流れる透明の液体が足元に溜まっていっているのに気付いた。同時に、腰元にびっとりとした冷たい感触があることも。


清夏「きみとはもっとじっくり楽しみたいのよ。じゃ、またね」


先輩は、裸のまま去っていった。手には服が握られていて、振り回された先輩の腕の動きにつられ、マントのようにたなびいていた。

昼休みが終わり、5時間目が終わり、6時間目が終わった。

その間、ぼくは保健室で眠った。

体調不良と言った。恥ずかしい染みは、なんとか制服の前部分で隠した。

疲れたのか、恥ずかしさで気を失ったのか。気が付いた時には6時間目終了のチャイムが鳴らされていたんだ。

授業、サボっちゃったな……。

長くぼーっとしたあと、保健の……西島先生にお礼を言い、部屋を後にする。

カピカピになったズボンとパンツがあそこに当たるのが、あれを夢と思わせない。

ぼくの心に未だに、やすりをかける存在だった。

教室に戻ると、ちょうどHRが始まる頃になっていた。

ぼーっとしていたせいで、掃除の時間もサボってしまったらしい。

いつものぼくなら、サボるなんて男らしくない、なんていうところもあるかもしれないけど……。

勇気やほかに数人が心配してくれたようだけど、あまり声は聞き取れなかった。

唯一まともに届いたのは、『体調が悪いくらいで掃除までいなくなるの?!』という水無月さんの怒った声だけだった。

HRが終わり、ワイワイと帰っていく皆。いや、部活に行く人もいるんだろうけど。





高村「おーい、勇気! 弘! サッカーやるぞーっ!!」

元気のいい高村先輩の声が今はとてもつらく感じる。

どうしよう。サッカー……行きたくないな……


弘の思考安価↓

弘「あの……今日はやっぱり」

高村「え、どういうことだよ!」

勇気「いやーすんません先輩……じゃない、秋斗さん。こいつ、今日は昼休みに思いっきり体調崩しちゃって」

高村「なんだそうか……まあお前、体弱いところあるからな。じゃあまたな、行くぞ勇気」

勇気「あ、俺はいくのか……ま、待ってくださいよ先輩~!」


勇気と高村先輩はそう言ってグラウンドへ走っていった。

高村先輩からすると、僕は体も弱い扱いなんだ……。

結局サッカーもやらなかった。

やっぱり行けばよかった気さえしながら、ぼくは一人、屋上へと歩いた。

屋上には誰もいない……よね。

屋上。

たまに、昼休みにお弁当を食べる子がいるらしいけど、放課後になるとさすがに誰もいない。

助かった。ぼくは太陽に熱された熱い床に横たわる。こういうのも床って言うんだっけ?

さっきの地面とは対照的に熱い。筒川先輩の垂らしたあのすごい汁を蒸発させてほしい。

……まあ、すでに乾いているけど。

ここまで惨めになるなんて思ってもみなかった。

男らしくなれる日だと思った小さな希望は粉々に……男としてのプライドとともに砕かれた。

女の人に、おちんち……いや、あ、あ、あそ…………こ、を外で丸出しに引きずり出され、簡単に性を吐き出させられ、かわいいと言われた。

筒川先輩はどうしてぼくにあんなことをしたんだろう……ああ。

童貞やファーストキスが奪われなかったのはよかったのだろうか。助かったというべきなのだろうか。

それとも、あそこまでのことをされたのに、それすらなかったのは逆に男としてダメな姿だったのだろうか。

どっちにしても負けだ。

考えがどんどん巡ってくる。渦を巻くように、いや、まだら模様か、それともぐにょぐにょと蠢いているような。はたまた大量の蟲が、思い思いに這いずり回るような……気持ち悪くなってきた。

次に襲ったのは、筒川先輩が、あの筒川先輩が、柔らかい大蛇になって僕を締め付けるあの感覚だった。

思い出されるあのすごい感覚。あそこがむずむずする。

ひぐっ、ひぐっ、と声を出しながら、僕は情けなく腰だけを上げて、天に向け、地面に打ち下ろす訳の分からない動きを始めてしまっていた。

カピカピのパンツにあそこが押し当てられる。あのねっとりした感覚とは打って変わってざらついた嫌なものなのに、あの足のねっとりした”こね”を思い出して、僕は腰を前後させる。

……パンツの中で、ぼくはまた精を出した。


涙が止まらなかった。

より最悪な後悔を抱え込むことになった。

濡れたズボンを乾かすことさえせず、もう哀れな自分を苛みつつ、ぼくは下へ降り、廊下へ出た。

脚を不格好に開き、ああ、ああ、と歩き進む。たぶん家に帰るんだと思う。

たまに運動部の騒ぐ声が聞こえてくる。

勇気や高村先輩は今頃サッカーをがんばっているのかな、と思うと余計に情けない。

彼らが男らしく運動している時に、ぼくは情けなくひとりで恥ずかしいことをしていたんだと思うと。

ああ、ああ。


「……緑谷君? どうしたんですか?」




今、一番逢いたくない人の声だった。


「平瀬……先輩」


振り返ったそこに、先輩が。ぼくの好きな人。

平瀬恋先輩が、そこにいたんだ。

ああああああ、そんな声が小さく漏れてくる。

そのままゆっくり、全身で振り返る。しまった。


「緑谷君……それ」


見てはいけない物を見てしまったような表情。目を見開いて、口元を片手で覆い、ぎゅっと左手で持っているカバンを握りしめる手。

ぼくの、なさけなさすぎる濡れたズボンを見られてしまったんだ。


思考安価……
弘 >>75

恋 >>77

‥終わった

もしかして・・・いじめられたんですか?

一応再度説明

思考安価は何を思うかというより、何をしようとするかの安価
>>62の言ってるのは的を得てる
何を思うか、とか何をしゃべるか、というのも、有りだが

↑何をしゃべるか、というのも有りだと説明したばかり
まずよく読んでほしい

こんな時にまで優しい声。

このやさしさがより僕をみじめにする。

好きな人に、いじめられっ子だと思われた。

弱いと思われた。

弱いなんて、弱い男なんて、女の人に好かれるはずがない。

恋先輩はぼくを心配してくれるけど、それはぼくを頼ったり、一生カッコいいなんて思ってくれるはずがない視線なんだ。

ぼくはもう終わりだ。




------終




とできたら、どんなにいいだろう。そうすればぼくは、映画の終わった真っ暗な画面のように消えることができるのに。

人生は、続く。

「誰にされたんですか?」

「先生の所へ行きましょう」

「負けちゃだめですよ、さあ!」


必死に僕を励ましながら職員室へ連れて行こうとする平瀬先輩。

だめだ、このままじゃ。ぼくは先生たちの晒し者になってしまう。

それに、あまりのこと……筒川先輩にされたことを話したら、弱い男としての自分が白日の下に晒される。


「いいです、やめてくださいっ!!」

「っ!」


ぼくは、こんな時にだけ強く叫んだ。

こんな時に、限って。


「ご、ごめんなさい。緑谷君の気持ちも考えず」

「う、うっ」


先輩が目を潤ませている。

そんな。ぼくは、ただ。


ぼくは、ただ……



気が付くと走っていた。

はあ、はあ。

息を切らせて誰もいない昇降口に立つ。

ズボンはびっとりとしたまま。

途中で10人くらいの人とすれ違った。

まるでおもらししながら走り回っているかのように見えたかもしれない。

そのうち何人かは笑っていた気がする。

見られたんだ。ぼくの……ぼくを。

先輩も、ぼくがおもらししたとおもったんだろうか。

いじめに負けて、おもらし。

おしっこを赤ちゃんのように漏らしたと。

ああ……映画じゃなくても、いや、映画より唐突に終わらせることはできる、そう頭に浮かんだ。

その時、昇降口の簀子をかあん、と鳴らす音と一緒に、同じくらいの大きな声が響いた。


「待ってください! ごめんなさい!」

「先輩」


平瀬先輩が追い付いていた。ぼくを追いかけてきてくれたんだ。そして声とさらに同じ時に、深々と頭を下げていたんだ。

ふわりとしたピンクの髪の毛が集まる頭の後ろ側が、僕の目の下にある。あのきれいな髪が。

『ピンクの髪は淫乱だ』ってだれかがいってたけど、この人にだけはそれは当てはまらないだろうなと思ったあの髪だ。

顔を上げた先輩は、涙を流していた。

「本当に、ごめんなさい。緑谷君の気持ちも考えずに、先生に言おうだなんて」

「あ、あ、その……あの、いいです。やめてください。ぼくが悪いんです」


先輩の涙が途切れた。でも、その頬に伝った涙の跡は残っている。

ぼくがつけた傷のように見えた。


「一体何があったんですか? それだけでも……話してくださいませんか?」

「う」


言えない。そればっかりは。でも、何も言わないわけにもいかない。

そう思って戸惑って、何も言えないでいると、先輩は信じられない言葉をぼくに言ったんだ。


「今度の休日、一緒に遊びに行きませんか?」

「え」


ええええ!?





どこに行く? >>86

そこでやってるイベント >>88-89(別々もしくはミックス)


今回ここまで。このルール、難しいところもあるかとも思うけど付き合ってくださればこれ幸い

美術館

裸像展

信じられない日だった。

平瀬先輩が、平瀬先輩と、平瀬先輩に……あれ?

とにかく、平瀬先輩と一緒に美術館デートできるなんて!

お風呂の中でぼくは、お湯に潜って全力で声を上げていた。

ごぼごぼがぼがぼと音がして、ぶくぶくとした泡の感触が顔を下から上へと一気に伝って消えていく。

その感触が消えると同時に、また新しい泡が次々と……そんなのどうでもいいや。

とにかく平瀬先輩とデート! やったーーーっ!!

魚みたいに、水面から飛び上がる。ここからは声が出ないようにしなくっちゃ。

湯船から出て、浴室からも出ようとすると、頭の上にぴちゃりと水が垂れた。

水が天井まで跳ね上がってくっついちゃったんだ。

あとで家族が入る時、大丈夫かな?

なんて思ったのは、パジャマを着てベッドに飛び乗って、少ししてからだった。

「こぉーらアニキっ! シャワーで天井濡らした!?」

「あ、やっぱり? ごめん」

「水滴がボトボト落ちてきて雨みたいだったんだよ!? もー最悪!」


階段をどたどたと鳴らして、バン! とドアを吹き飛ばすくらいの勢いて開き、妹の美晴(みはる)が飛び込んできた。

乾いてない、濡れた黒髪がそれらしい光沢を放っている。


「ごめん、ちょっと」

「ちょっとじゃないわよ! ったくもー! 短小包茎バカアニキ!」

「う」


激しく傷つくことを言って、べーっと舌を出して、出て行ってしまった。

この激しいダメージ……まるで嵐だあ。


はああ……結局今日は散々なこととばっかりだったなあ……。

……今日も、熱い夏の日だった。

昨日と違うのは、鳥の声が少し大きく、風がそよそよと、小さく歩くような速さと強さでずっとこの道を通り抜けていること。

そして、僕自身の気持ちが飛び跳ねるように浮ついていること!

平瀬先輩! 次の休み……明後日だ。明後日は、最高の日になる!

ネットで場所だけ調べたけど、近くにカフェとかもあるし!

お昼とか帰りとかも、楽しそう! イベントもなんかやってるらしいけど、それはその日の楽しみに取っておこう。

……。






その日の服装とか、どうしよ?

その時、また背中に衝撃と痛み。七宮さんが襲ってきた。


「なんか楽しそうじゃない、どーしたのっ!?」

「え、それは……えっと」

「怪しい……赤くなってにやけちゃって? ふーん? 白状しなさい!」

「わあああ!」


首! 首! 僕の首に、汗で湿った細い腕が絡みつき、関節がおよそ動く逆の方向へと引き寄せられる。

スリーパーホールドだ。

苦しい。まずい。落ちる。最初の叫びはあっさりと消え去り……死ぬかと思ったその時、腕の力が抜けた。

勇気が助けに来てくれたのかと思ったけど、違った。

後ろを見ると、ナナが筒川先輩に向かって、頭を下げていた。


「学園の生徒として、暴力行為は許さないわよ?」

「す、すみません。ちょっと悪ふざけが過ぎました」

「わかったら行きなさい」

「え、でも」

「行きなさい」

「はい!」


強くにらまれ、七宮さんは逃げるようにその場を去った。

そして……僕の目の前に、筒川先輩。

「せせ、先輩」

「あなたも、あまりビクビクするものではないわ」

「はい」


今回は、それだけだった。

ぼくは、七宮さんの後を追うようにその場を走り去った。

そして教室につくと、ぼくの机に……>>96


----

「弘ちゃんかわいい……あぁっ」


昨日のあの日、私はわざとコンドームのうわさを流した。

そうすれば、今まで私が起こしたいくつかの事件……バイブ放置やおしっこの事。

先生たちがほかの生徒に秘密にし、私のような一部の者しか知らない事。

先生に、もういい加減にしてください、全校生徒にこのことを話して犯人を突き止めてください!と強めに言ったら効果覿面。

先生方は学園の高等部全員にこのことを伝え、何人もの興味を持った子達がやってきた。

どうせなら中等部にも伝えてくれればよかったと思ったけど、それは間違い。

緑谷君までが来てくれるなんて……私のターゲットはもう彼しかいない。

あぁ。下着を穿いておいてよかった。そうでなければ、今頃足まで”よだれ”が垂れていたところだわ……。

ねっとりとした口から、舌がべろりと顔を出した。誰も見てないわよね?

水無月さんが座っていた

「あ、あの?」

「遅いわよ」

「ええっと」


なんでぼくの机に水無月さんが座ってるの?せめて椅子に座ってよ……

クラスメイトの皆も、あきれたような困ったような目で見てる。

というか、昨日のぼくのあの姿、噂になってないよね……?


「どうして、ぼくの机に座ってるの?」

「さあ」


何で急にいじわるするんだよお。全然わからない。

何かしたっけ? うーん……なにも思いつかない。

昨日のことがバレた?

まさか、突然言い出すのか? 『だってあなた、昨日おもらししながら帰っていったでしょ』とか『屋上で恥ずかしいことしてたでしょ』とか!?

ひ、人前では言わないでえっ!!


「……て」

「え?」

水無月さんが、小さな声で何かを言った。


「こっちへ、来て」

「え?」

「早く!」


小さいながらも叫ぶ声に驚いて、僕は水無月さんの顔の横に近づく。

すると、水無月さんはすっと机から降りた。

その時……


「わ」


一瞬、一瞬だけ。水無月さんのお尻がぼくの机から離れる一瞬だけ。

白いものが……見えました。

「おーっすおはよーみんなー! あれ、弘も水無月も赤いぞどうした?」

「う」

「う」


二人同時に「う」と言った。直後、水無月さんがすごく怒った顔で振り向いた。


「言わないで」

「……はい」ちょっと震えながらうなづいた。カッコ悪い……



----

全く恥ずかしいわ。

出てきたゴキブリにびっくりして、慌てて走って緑谷君の机に座り込んでしまった瞬間に棚山君が入ってきて。

動こうとしたときに気が付いた。スカートの布が……下手をしたらパンツが見られてしまうかも位置になってしまっていたのよね。

迷っていたら次々とクラスメイトが登校してきて、どうしたらいいかわからなくなって……

最後の手段で、緑谷君に近寄ってもらって、彼の体で隠す。それしかない。

我ながら頭の悪い作戦だったわ……結局、彼にも見られてしまったようだし。

ああもう。気に入らないわ……けど、一応は助かった。彼なら、そこまで変なことは考えないだろうから。

……きつい言い方をしてしまったけど、後でお礼しようかしら? そうしたら意外と優しいとか思われて、友達になれるかもしれないし……

よし。次の休み時間に実行よ。い、いや、時間が少ないかもしれない。昼休みに実行よ。

……放課後にしようかしら?


結局いつにする? >>100
何をする?思考安価>>102

昼休み

自分の昼御飯を分けてあげよう

今日の授業もあまりうまく聞けなかった。

平瀬先輩とのことや、水無月さんとのことも……う。

あそこがちょっと熱くなってきた。

昨日のことのせいだ。うん。そうだ。

真っ白だったな……柔らかそうで……あーもうやめろおっ!

このままじゃ平瀬先輩にも嫌われるー!

こんなことを4時間目までずーっと考えていた。

あとは高村先輩が2時間目の後に、今日こそサッカー来いよって言ってたのしか覚えてない。

今度こそは行こうかな?



と、お弁当を食べる前に、勇気を待たなきゃ。勇気はいつも学食でパンとか買ってくるから。

そのうち平瀬先輩と一緒に食べたりできるのかな……?

あんな惨めな姿を見たのに、あんなにやさしくしてくれた上にデートの約束まで。

まさかのチャンスに……ああ。


「何をにやけているの?」

「わっ!」


水無月さんだ。朝以来何も言ってこなかったけど……


「さっきは、助かったわ」

「えっ」


さっき? 何か助けたっけ? どっちかというとごめんなさいと言ったほうがいいと思うけど。

などと思っていると、水無月さんは自分のお弁当箱の、ピンクの包みを解く。

コンパクトな真っ白いお弁当箱が現れ、そのふたを開けるとまるで宝石箱みたいな色とりどりの豪華なお弁当が現れた。

ぼくの茶色いのとは大違い……見せびらかしに来たの?


「……まあいいわ。お弁当、忘れたなら私の半分あげるわ」

「え? いや、あるけど」

「なっ」


ぼくがカバンからお弁当を取りだすと、ショックを受けて固まったかのようなリアクションを取る水無月さん。

なんでそんなに驚くの。


「えっと、その……一緒に食べる?」

「(机の上にないから忘れたと思うじゃない! 好都合と思ったのに……)う。ま、まあいいわ。頂きます」

そう言って水無月さんが、卵焼きをひょいと口に入れた。

卵焼きというよりはプリンのような……透き通って、ふるふるしてる。

どっかの郷土料理にそんなのあったような?


「食べないの?」

「え、ま、まあ今は」


勇気を待たないといけないんだけども……そう言おうとすると、なんと水無月さんが視線を逸らし、眉をつりさげ、下を向く。

プリンが入った口も、動かず……いや、小刻みに震えてる。


「い、いや、勇気を待っててさ! ねえ、泣かないで!」

「ば、バカを言わないで! だれが泣くの!」


口元を細い指で隠しながら怒る水無月さん。いったい何が目的なんだあ。


「おー、待たせたな友よ! 今日も焼きそばパンジャンボサイズ買ってきたぜー! ……ん?」


戻ってきた勇気の思考安価 >>107

一緒にご飯食べるところはじめてみる

「うん、なんだか今日はいきなりやってきて」

「おおー? なんだどうした? さっきは机に座ってたって言うしよ、お前まさか……」


ニヤニヤとあからさまな笑みを浮かべ、勇気が水無月さんの顔を覗き込む。

すると水無月さんは顔を赤くして、いきなり勇気の顔を叩いた!


「馬鹿なことを言わないで! 最低!」

「いってえええ! いきなり殴るのはひどいだろお!」

「と、年頃の女の子に向かってそういう勘繰りをするのはセクハラよ!?」

「う……すまん」


そのまま黙ってしまう勇気。まあ確かにそうなのかもしれないけど。殴ってチャラか……。

すると、どこかから低い、男らしい声がした。


「セクハラして謝るなら、殴ったほうも謝るべきなんじゃないのか?」

「えっ」


そういってその声の主は、そのまま去って行ってしまった。誰いまの。

結局、3人でお弁当を食べた。

いつも二人だけだったからちょっとうれしい。他に友達いないわけじゃないけど、一緒にはあまり食べないな。

学食派とか、校庭の木のあたりで食べたりするグループがそれぞれあるけど、ぼくはそれで人が少なくなる教室で食べるのがちょっと好き。

程よく静かなのがいいんだ。

平瀬先輩となら、きっと静かで楽しい時を過ごせるんだろうなあ。


「おい、おいお前」

「え?」

「弘、どうした? 上の空だぞ」

「あ、ごめん。何の話?」


焼きそばをほっぺたに何本もくっつけたまま勇気が話を再度始めようとする。

それを見て水無月さんは『下品。最低』と冷たく言い放つ。すると勇気は『お、すまん』と口を手で拭いた。それで水無月さんはあきれ顔。


「サッカーの体験入部、するだろ? って話だよ」

「あ、うん。今日はやるつもり」

「そう来ると思ったぜ!」


右手を上げてガッツポーズをとる勇気。それを見て、お茶の入ったペットボトルから口を離し、水無月さんが言う。


「私も見学しようかしら?」

そして放課後。

いよいよ、サッカーをすることになった。


「なかなかハードだけど楽しいぞ」

「へ、へえ」


ハードと言われるとちょっと怖い。ジャージ姿でグラウンドに立つ。

その瞬間、肩を思いっきり抱き寄せられた。痛!


「おー弘、ついに来たなー! これでお前も最高の仲間達の一人だぜ!」

「た、高村先輩」

「おいおい、秋斗さんって呼べって言ったろーがよお!」


高村先輩がすごくうれしそうな顔でぼくと勇気の肩を抱え込んでいる。

勇気も先輩につられてか高笑い。


「怪我するんじゃないわよー」


遠巻きに聞こえてくるのは、水無月さんのちょっと冷たいながらも心配してくれてる?声。

他にも大勢の女の子が応援に来ている。やっぱりサッカー部はモテるなあ。

平瀬先輩は……いないよね。というか、いたら先輩もサッカー部の誰かを好きってことになっちゃうかもしれない。むしろ良かった。

そう言えば、今日は先輩と会ってないな……まあ何時も会うわけではないけども。

でも、あの約束の後なんだし、会いに来てくれてもよかったんじゃないかな、と思ってしまった。


するとそこに、サッカー部の人たちが歩いてきた。

皆楽しそうだったり、真面目そうな顔をしていたり、涼しく笑っていたりといろいろだけど、全員背が高いしカッコいい。

何より堂々としてる。いいなあ……


サッカー部のうち3人、弘を見ての思考安価↓2~4


今回はここまで

視線があまりよくない。

というか、怖い。

どうしてお前が来た、と言わんばかりのサッカー部の先輩たちの……いや、中には同級生も混じっているかもしれない。

みんな背が高いからほんとにわからない。ぼくがチビなんだろうけど……。


「みんな、こいつ今日から入部した緑谷弘だ! よろしく頼む!」

「ああ」

「まあ……」


えっ。入部じゃないんですけど。そう言おうとしても声なんて出るわけない。

いつも引っ張られて何もできないぼくに、反論ができるわけない。

勇気がぽんと、肩を叩く。

ぼくはサッカー部員になってしまったのか? 入部届けも出してないのに。


「やる気あんのかホントに?」

「う」

「あったりめーだろ、自分から言い出したんだ」

「お前がしつこく勧めたんじゃねーの?」

「ちげえよ! なあ!」


他の部員の皆さんの中は不満だらけ。高村先輩が無理に参加させたんじゃないかと疑っている。

でも確かに、ぼくが昨日自分で望んだことなんだから……それは言わなくっちゃ。

「た、たしかにぼくが昨日、自分から」

「よーっし、練習始めるぞ! まずストレッチだ!」

「うーーーーす!」

「え」


顧問の高橋先生の掛け声でぼくの勇気は吹き飛ばされた。

せっかく言おうと思ったのに。というか、先生に紹介されてもいないんだけど。


「よし弘、座れ。俺が押してやる」

「うん……」

「がんばんなさいよー」


勇気に言われて、他の部員の皆さんがやってるように、足を延ばして座る。水無月さんの声に少し励まされながら、背中を押してもらう。

ふう……こういうのは得意。勇気には力いっぱい押してもらい、指先をぴたっと足の先につける。少しは感心されるかな?

……珍しく思惑通り、周囲は少し驚いたり感心した様子を見せていた。

「新入り! ニヤついてんじゃねえぞ!」

「は、はいっ!」


得意げになっているのが表に出たのか、怒鳴りつけられてしまった。さっき高村先輩に文句を言ってた人の声だったと思う。

でも確かに、こんなことで調子に乗ってしまうのはマヌケすぎる。

この後の練習でどこまでボロボロになるかと思うとなおさらだ。

それにしても昨日から、ニヤついてるって言葉を多く聞くなあ……はあ。

何しろ、平瀬先輩と……だめだ、またニヤついちゃう。


「じゃ、交代な」

「うん」


次は勇気を押す。ほどなくして『いててててやりすぎだあ!』という声が響き渡り、見に来た女の子達が笑い出す。

水無月さんも『本当にバカね』と呆れている。

ストレッチの後、ランニングや軽い筋トレ、それにリフティングやドリブルなどいくつかの練習をした。

やっぱりつらい……他の皆は平然と、勇気も少し息を切らす程度で対して苦もない様子。

ぼくはと言えば、思いっきり息を切らせて今にも倒れ込んでしまいそうなくらいな状態だ。


「ほら見ろ、まともに練習もできねえ」

「最初は誰だってそうだよ」

「んなわけねえだろ、俺は……せいぜい青木くらいだったよ」

「青木は才能ある。緑茶にはないな」


皆ぼくの体力の無さを非難している。中には緑茶って……名前を間違って覚えてる人もいる。

やっぱり、入るのは無理だったのか……はあ、はあ。


「いいのは体の柔らかさだけか」

「チンコもふにゃふにゃなんじゃねーの?」

「あはははそれ受ける!」

「全身フニャフニャ野郎だ!」


ひどい。ショックを受けたぼくをよそにゲラゲラ笑うサッカー部の人たち。

女の子達の笑い声まで聞こえる。

やめればよかった……。


「お前らいつからイジメするようになったんだよ、サッカーちゃんとやってるのか!? サッカーやればみんなサイコーの友達になれる筈だろ!」

「……」


高村先輩の声が響くと、皆黙った。

反省して黙ったんじゃない。その不満そうな顔といくらか聞こえた舌打ちがそれを物語る。

勇気が元気出せよとスポーツドリンクを渡してくれたけど、もう……。


その時だった。


「あら、緑谷君もサッカー部に入ったんですね、頑張ってください!」



……えっ!!!

あの優しくて元気の出る、丁寧なしゃべり方は……!


「平瀬先輩!」

「ちょっとグラウンドを見たら走っていたから、見に来たんです」

「あ、ありがとうございます!!」



一気に周囲が明るくなった。ぼくは手に持ったスポーツドリンクを一気飲みして、気合を入れる。

ふふ、勇気も度肝を抜かれている。部員の人達も、高村先輩も、周りの女の子たちでさえもびっくりだ。

平瀬先輩が話しかけてくれるのはいつもの事。大体の生徒に対し、先輩は笑顔で接してくれるからだ。

それが、これだけいる中、ぼく一人を応援してくれるなんてすごいことなんだ。

何しろ先輩は、学園の女神とさえ呼ばれている。

これはさすがに、笑みを浮かべずにはいられなかった。

それ以前に、笑顔で応援されたら笑顔で返さなきゃ。


「先輩、ぼくがんばります!」


これが、他の皆に大きく気に入らなかったようだった。


「女神があいつに……なんでだよ!」

「ざっけんな……」


……明るさが、途絶える。

この後の試合練習で、ぼくはいきなりフォワードをやらされた。

そして……



他の部員による”嫌がらせ”内容 >>122-123

高村の思考安価 >>124

反則スレスレのタックル

パスを出さない

ものの数分で、ぼくは予想以上にボロボロになっていた。

女の子達の叫び声が聞こえるけど、先輩や水無月さんがどんな顔をしているかは見れない。見る余裕がない。

ボールが来れば皆が寄ってきて……体当たりして来たり、手を出してくるんじゃないかと思うくらいの迫力で迫って来たり。

怖い! 簡単にボールを奪われるし、ひどいときにはぼくの頭の上を通るように蹴るし。心なしか、近くでキックするときだけものすごい殺気を感じる。

いや、ぜったいそうだ。

味方の筈の人達も、ぼくを敵側のチームから守るふりをして、ぶつかってきそうなくらい寄ってきて、ぼくが敵であるかのように冷たくボールを奪っていく。

かと思えば、敵側の誰かがぼくの目の前にドリブルしながらやってきて、なんだかすごいテクニックでぼくを翻弄して抜き去って行ったりする。

そうなると、女の子たちはその人に黄色い声援を送りつつもぼくを笑う。それを見て、部員の人達も笑みを浮かべる。

サッカー部ってこんなに陰湿なものなの?

高村先輩助けてよ……と思って先輩を見ても、不機嫌そうにプレーを続けるだけで何もしてくれない。


「よそ見してんじゃねえぞ!」

「わ!?」


倒れた。その場で。交通事故に遭ったかと思った。

また、体当たりを受けたんだ。

ものすごい勢いだった。

右の真横から、ボーリングの玉がお腹に向かって叩き込まれたような衝撃。

左肩を地面に打ち、右わき腹を抑えて動けなくなる。

息はできる。

なんとか。

骨が折れてないかさすって確認する。

血も出てない。

はあ、はあ……恐ろしい思いをした。

周りではまだワーワー言っている。ぼくを無視してる?

勇気だけ駆け寄ってきて、心配してくれるけど。


「大丈夫か弘!」

「う、うん。けがはしてない……ひどいよこれ」

「うーん、まあ反則スレスレってところだな。試合中に転んだようなもんだ」

「そ、そう」

「大丈夫そうね。立てる? あ、擦り傷」

「え? あ、どうも」


勇気だけかと思ったら、マネージャーの人もいた。う。覗き込んでくるその顔の下に……お、大きい。

「ありがとうございます佐々江先輩」

「いいのよ、それより消毒しないと」


この人は佐々江先輩というらしい。長めの髪がキレイな人。

でも、せっかく先輩が言ってくれてるのに、サッカー部の人が強く怒鳴りつけてくる。


「新入り二人! 大した怪我でもねえなら早く戻れ!」

「は、はいー!」


そのままぼくは、先輩にお礼も言わずに、戦場のような……えっと。サッカーでボールを中心に人が集まってワーワーやってる状態の場所へ走り、戻っていった。勇気と一緒に。

いや、ここは戦場だったのかもしれない。佐々江先輩に心配してもらったせいなのか……部員の人達、余計に殺気が漲ってきたような気がするんですけど、


------

昨日あんなことになったけど、緑谷君、なんだか元気になったみたいですね。

あんなに激しいスポーツだったのでしょうかサッカーって。

ラグビーみたいな体当たりだったけど、他の子達も何も言わないし悪いことではないんでしょうか。

でも、頑張ってる緑谷君、ちょっとカッコイイですね!

……と思っていたら、サッカー部員の皆さん、なんだかどんどん顔が怖くなってません?

隣の子に聞いたら、『試合が近いから気持ちが強くなってるんですよ』って言ってるけど……あ、え!?

緑谷君……あんな姿に!?



とある部員による、弘に恥をかかせるひどい嫌がらせ >>130

ぶつかって揉み合って転んださいにどさくさ紛れにズボンを脱がした

「うわあっ!」

「おおっと」


自分からボールを取りに行った。勇気を出そうとした。

でもサッカーはチームプレー。同じようにボールを取りに行った人とぶつかった。

転んだ。その人ともつれあうように。

脚と脚が絡まり合い、互いに崩れ落ち、また左肩を打った。


「いたた……すいません」

「気を付けろよな、バカ」

「すいません!」


謝る。確かに、勝手な行動をしたのはぼくだ。

こういうところでしっかり謝れないのは、男らしくない。

……と頭を上げると、今度はみんな動きを止めてこっちを見ている。

なんだろう。ぼくじゃなくて、ぶつかってきた人が転んだのを心配しているのかな。

いや、ぼくだけを見ている。ぼく反則しちゃった!?

慌てて先生のほうを見ようとすると、先に女の子達の顔が目に映った。

顔が赤い?

平瀬先輩も、水無月さんも、佐々江先輩も目を見開いて固まっている。

と思えば、他の女の子たちは薄笑みを浮かべている。え、え? 何かおかしかった?

他の部員の人達も……勇気以外はニヤニヤ笑ってる。ほんとに『ニヤ』って言葉が多く浮かぶなあ。

先生が、何か言っている。


「早く穿け!!」


え? 吐け? 刑事さん?

はけ? 吐け 掃け……穿け?


ま さ か


「うわあああああああああああああああああ!!!」


下に視線をずらすと、青い半ズボンが落ちている。それでほとんどわかってしまった。

わかった時には、叫びながら両手で脚の間を押さえ込む。そして、それが視界に入った。

白いトランクスだけの……パンツ一丁。


「あははははは!」

「パン一だ!」

「馬鹿だろ今更気づくとか!」

「きゃーやだー」

「変態パンツ男~!」


笑い声が、響き渡る。

男の子も女の子もみんな笑ってる。ぼくは恥ずかしさで動くこともできない。ぼくは、とうとう人前で大恥をかいた。

下を向いて、何もできない。後ろから見れば丸見えなのに、ズボンを穿きに行くことさえできない。

平瀬先輩にも水無月さんにも見られてしまった。

その瞬間に、今度は、筒川先輩とのことや屋上でのオナニー、ズボンを濡らして走り回った惨めな自分の姿がどんどん思い起こされていく。

ああ、おしまいだ。本当におしまいだ。

人生は終わらなくても、ただ誰からも褒められず、格好もつけられず、軽蔑され恥をかき続けるそんな人生しかもうぼくにはないんだ。


それぞれ思考安価

ズボンを脱がせた部員・浜野 >>134

平瀬恋 >>136

水無月愛美 >>137

佐々江サエ >>139

ふみたまえ

↑そこ安価先なんだが…

いつまでもズボンを上げないことについて煽る

顔に出さないようにしてるが本気で気持ち悪いという思ってる

走ってはかせにいく

「お前らいい加減にしろーーーーっ!」


勇気が怒号を上げた。皆、黙った。

ズボンを拾い上げてくれた勇気に促されるままに、ぼくはみんなの見ている前で、片足を上げてズボンを穿いた。

この上なく情けない姿だと思った。

もう、誰の顔も見られなかった。


「ふみたまえ」


ズボンが脱げる前にぶつかった人が、意味の解らないことを言っている。ぼくをからかっているんだろうか。

知らない。もうどうでもいい。帰る。

もう、二度とサッカー部には来ない。学校にもきたくない……。


------

緑谷君の姿を見て、私はどうしていいかわからなかった。

女の子が大勢いる前で、異性が大勢いる前で、あれは。

私だけなら、まだいい。黙っていてあげればいいことだから。

あの日の惨めな……あの日の屈辱がよみがえる。

もう、思い出したくもないあの過去。

もう、誰も知らないはずのあの過去。

もう、思い出さなくていい筈の過去。

もう、誰にも知られる事のない過去。

最後に、そこ安価先なんだが……という、あの日に聞いたあの人の一言が思い返された。

ごめん、緑谷君。あなたがいなくなるまで、私はなにも動けなかった。

----

「あははは!」

「無様すぎでしょ!」

「高村君とかと同じ男とは思えないわねー」

緑谷君を応援すれば仲良くなれると思った。

だけど、こんな状態の彼を応援なんて。

可哀想だけど、ここで彼の味方をしたら、周囲の別の皆が私を変に思うだろう。

そうなったら、友達ができない。

逆に、一緒になって彼を笑い、彼女らと同じ気持ちを共有すれば、大勢友達ができるかもしれない。

悪いけど、申し訳ないけど、私も彼を笑うしかない。

どう言えばいい?

考える必要はない。

何時ものように言えばいいだけ。

最っ低。と。


「お前ら、いい加減にしろーーーーーーーーっ!!」


青井君の声で、はっと我に返る。危ないところだった……。

私は、とぼとぼと力なく去っていく緑谷君へ駆け寄る……ことまではためらわれたが、気づかれないようにこの場を後にした。

後で、彼を励ましてあげればいいのよね?

家。

あの後、何をしたか覚えていない。

ただ一人で家に帰ってベッドに横になった気がする。

でも、勇気が何も言ってくれないわけがない。

たぶん、その声も聞こえずに無視してしまったんだ。

ごめん勇気。

先輩はどうしただろう?

先輩にも合わす顔がない……いや。

はっとなって起きた。

先輩は、ぼくがズボンを濡らしている姿を見ても、誘ってくれた人だよ?

そうだ、簡単に僕を見捨てるはずない……ない、よね?

すくなくとも、約束を破るはずはない……けど。

あああ、だけど、もしも、ぼくのことを軽蔑した状態で美術館に行くことになったら?

そんなの、一日恥ずかしい地獄に落ちるだけじゃないかあ! ああああ!

自分の頭を叩きまくって、枕に顔を押し付けじたばたと脚を叩きつけた。


「うるさい!!」


妹の叫び声が下の階からした。足の動きを止めた。

妹にまで怒られて、足が動かなくなるなんて。やっぱりぼくはだめだ……。


明日はどうしよう……思考安価↓

学校にはいくが誰にも話しかけてほしくないため授業が終わるとすぐ人気のないところにいく

次の日、通学路。

今日はわざと遅れた。勇気にも、七宮さんにも会ってない。もちろん部活の朝練も終わってる。

あの時の事を知っている人がその場にいないことを祈りつつ、熱いだけのアスファルトの上で右足、左足、と交互に前に出す。

重い。

右足も、左足も。

どうせ教室につけば、勇気はいる。

サッカー部も、そのファンの女の子達もたくさんいる。廊下を歩けば笑いものだ。

いや、写真にとられて学校中、いや! いや! 世界中に知れ渡っているかもしれない。

マヌケな高校生の、爆笑ハプニング! とか言って。

誰にも会いたくない。誰とも話したくない……

明日のデート、断ろうか。

LINE……ああ、スマホに手を出す気力もない。


「緑谷君、遅刻ギリギリよ?」


こんな時に、筒川先輩。厳しい顔つきで立っていた。

「ごめんなさい、先輩」

「いいのよ、実際に遅刻したわけじゃないし」


厳しい顔つきのまま、先輩が言った。気づくと周囲にはもう誰もいない。足取りの重いぼくより、ずっとはやく教室についたんだ。

鳥の声が聞こえた。風は来ない。


「さ、行きましょ」

「あ、あの先輩」

「何?」

「お、おとといの事……なんですけど」


口から不意に、出た。

あまり思い出したくない出来事の筈なのに。

最悪の日々の、きっかけ。

でも、先輩の顔は、冷たく乾いた砂地が、熱くじっとりした泥沼に変わっていくかのように変容していく。

ぬっぷりと、口を開き、ぬばっ、と舌を出す。

先輩の下あごの上で、その怪物のような赤いものが、透明な唾を這わせてべえろりと。

ぼくは、怖くて動けなくなった。

先輩は、言った。


「楽しかったわね……」


じゅるり、と音がした。

ぼくのあそこが、張り詰める。




今回ここまで。次の書き始め(今日の夜か明日の朝かと思う)まで、>>1と同じテンプレでサブキャラ(先生とか既存キャラの家族・友人など自由)を募集。
ただしこちらはちょい役の可能性が高かったり、出ない可能性、さらには都合で書かれた設定を変更する可能性もあるので、承知の上の事。

名前:國松茂夫
性別:男
年齢・学年:36・生徒指導の先生
外見(身体的特徴)筋肉質でデカイ
外見(服装・髪型など)角刈りでジャージ
外見:(休日での服装)ジャージかスウェット
性格:スケベで声がでかくよくセクハラをする
特徴:風俗に通いつめテクニシャン
夢・願望:気に入っているウチの学校の女子とヤりたい

名前 大江 文歌 (おおえ ふみか)
性別 女
年齢・学年 18歳・高校3年
外見(身体的特徴) 平均以上の胸と身長
外見(服装・髪型など) ミニスカ・黒髪ロング片目隠れ
外見(休日での服装) 季節に合わせた服装だが全体的に黒い
性格 普段は無口だが誰が相手でも言いたいことがあればはっきり物申す。
特徴 平瀬恋とは親しい間柄だが性格や立ち振舞いも平瀬とは正反対のため彼女以外の友人は皆無に等しい。学校の自由時間のほとんどを読書に充てている。時折哲学的な命題を投げかける。学業成績も優秀で学年トップだが本人は全く興味がない。休日は本屋でバイトをしているが目的は不明。
夢・希望 家を買う

ものすごい貌に、ぼくは固まった。

その無様な姿を見て、より筒川先輩の表情が乱れる。

べつのせかいをおもわせるほどの、ぐにゃりとしたかおつき。

ほんとうに怖かった。

だけど、それから先は何もしなかった。

ぼくは筒川先輩と一緒に昇降口に立ち、靴を履き替えたのちに自分の教室へ行った。

1年3組。

たまに誰かがさわやか3組と言うけどなんのことだかわからない。

ともかく、息を切らせてぼくは自分の机についた。

今日は水無月さんも座っていない。

委員長の浅野さんが水無月さんを睨み続けているけど、そのせいだろうか。

ぼく自身は、怖くて何もできずに、ただ何事もなかったかのように過ごすだけ。

HRの前に、現国の授業の準備をしておく。

教科書、ノート、筆記用具。

それだけ机の棚の、一番上においておけばいい。

何事も、なかったかのように……誰かに、指摘されるまでは。

あぅう、恥ずかしいよおおお! カッコ悪いぃいい!

ふう……。

勇気が話しかけてきたけど、

ぼくが黙っているのを見て話すのをやめた。

気遣ってくれたんだろうな。そう思う。

ふう。


HRでは、先生がいつものように話をする。

もうすぐテストだとか、頑張っていい大学には入れだとか。

変な人が出たとか。

それって、筒川先輩なんだろうか。


恥ずかしい。

あんなことにまたなってしまったらと思うと。あああ。

筒川先輩が、いつ『またやりましょう』とか言ったらどうしよう! あああ。

そのうち、ぼくと筒川先輩が『スクープ! 変態カップル!』とか学校新聞に晒されたらおしまいだ。

平瀬先輩とのデートもまだなのに……。

それ以前に、昨日のアレは大丈夫なんだろうか。

それについて、筒川先輩に知られたら……?

どうして今は大丈夫なんだろう。誰にも何も言われず……怖い状態のまま、1時間目は5分後に迫っていた。

その瞬間に気づいた。

もうすぐテストだ。

ああもう、この2日、何もしてないじゃないか!

先生の言葉も聞こえなかった! 何か重要なことを言っていたりしてないだろうか!

先輩とのことや、サッカー部のことに注意が行って、それを忘れてたあ!

それまでの日は頑張って勉強はしてきたのに! ああどうしよう!

どうしよ、どうしよ!? あと1週間しかないよー!


……平瀬先輩と一緒に勉強するとか?


うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

恥ずかしぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!


頭の中で大爆発が起こった。

とにかく、その辺に頭を働かせるのはやめよう。

勇気ならまじめだから、ノートくらいとってるはずだ。

一緒に勉強すれば教えてくれるよね……あはは、あっははは……


はあ。ぼくって、本当に情けない。

1時間目が終わった後、勇気に声をかけられる前に早々に人気のない場所へ行った。


そうして、それこそ誰も近寄らない、体育館裏へ行ったんだ。

なのに、まさか人に遭うなんて。


誰に遭ったか選択安価↓2、&↓3(コンマ50以上の時のみ)。募集キャラの中から選択で。

------

私は朝野沙綾。

そう、私は朝野沙綾。

自分で確認する必要もなく、朝野沙綾。

誰も疑いようもなく、朝野沙綾。

朝野沙綾。

1年3組で委員長をしている。

皆、私を慕ってくれたり、頼りにしてくれたりしている。

……でも、悩みがある。

おとといくらいから、緑谷君の様子がおかしい。

顔を赤くしたと思えば、急に落ち込んだり、眉をしかめたり、ああああー、と叫ばんかの勢いで落ち込みだしたり。

彼は大丈夫のなのかしら。

前々から、気弱そうなのに周囲に振り回されてて心配なのに。

……よし。


今日こそ秘密を掴もう。

1時間目の現国、漢文についての授業。それが終わったら彼に話を聞いてみよう。

レ点……難しいわね。


あっと。危ない。彼に話を聞かなくちゃ。

1時間目が終わってすぐあと、私は教室から出ていく彼を追いかけた。


----


うたの、うたのと気やすく呼ばないで。

みんなそう呼ぶ。

クラスに、同じ干賀矢という、読み方だけが同じ人がいるだけで。

いいな、あの子は。いつも賑やかなクラスの人気者。

大勢のクラスメイトとLINEでつながっているし、このご時世にガラケーって子のメーアド……メルアドだっけ。とにかくそれも知っているらしい。

うらやましい。

私がつながっている人と言えば、家族と幼馴染だけ。

幼馴染の……あああ。

私、結婚したい。

だけど、そんなことを言ったら迷惑するだろうな。

私なんて。

誰も……誰にも好かれない、私なんて。

誰もいない、体育館裏で考えよう。

ああ……。


そう思ってせっかく体育館裏にいったのに。

既に、知らない男子がそこにいた。

後輩かと思ったけど、制服から高等部みたい。

あんな男の子がこの世にいたのね……。


って。あ、ああっ。ああああ……!

体育館裏に来た。ここならきっと、誰もいない。筒川先輩も、今日はぼくを呼んでいないからいないだろう。

ここでなら、すこしはゆっくりできる。

誰もいないから。

はあ……う。筒川先輩とのことが、また頭に浮かぶ。



と思ったとたん、がたっと音がした。

何か知らない、金属の缶のようなものが倒れていた。

その場で最初から何かがあったのを、誰かが倒したのだろう。

ちょうど、脚が見えたから。

その上に、見覚えのない顔があった。


「え、ええっと?」

「えっと?」


ほぼ同時に声が出た。

誰だろ、かわいい女の子。制服から、中等部とわかる。

一瞬恐怖が生まれた。もし、年下の子にまで恥ずかしい姿を見られたら?

いや、さすがにそれは無い。

だって、そういう意思を持ってるような……筒川先輩や、サッカー部の人達はここにいない。

ふう。


……落ち着くなんて、なんて愚かなんだろう。

筒川先輩のことを思って、ぼくは……ぼ、ぼくのあそこは……あああ、とても恥ずかしいことになっていたんだ!

ぼくのあそこを凝視して真っ赤になって、しばらく口を閉じ……その子は口を開いた。



>>172


しかも、直後。後ろから、聞き覚えのある声がした。


>>174


クラス委員の、星ヶ谷さんがそこにいた。


*どちらも思考安価からの一言

・・・私邪魔だった?

校舎裏で何をしてるの?

「うわっ! わわわああ!」


叫んでいた。

前を抑えて、足を右に左に前に後ろにじったんばったん。

空中でこの上なく無様に騒いでいた。

まるでバカだ。

突然やってきた女の子の前で、こんな。

しかも背が高く髪も長い。

やけに大人っぽい。気がする。

ぼくより背が高いってだけなのに、中学生の女の子を年上に感じてしまった。

オマケに、すでにぼくは、この情けない姿を見られているんだ。

前を、また両手で隠そうか。それも十分に……いや、さっきまでよりカッコ悪い。

バカだぼくは。


そんなことをものすごい速さで考えた。

その直後に聞こえたもう一つの声にも、対処しなければならない。


「校舎裏で何をしてるの?」


そう、星ヶ谷さん……じゃない、朝野さん。星ヶ谷さんは、そっちの中等部の人だ。前に文化祭で見た人だ。どっちも背が高くて髪が長いから間違えた。ごめん。

「と、とにかく違うんです違うんですぅううう!」

「何も警護使わなくても……お、男の人ならだれでもすることですから」


中等部の子が気を使ってるぅ! うわああ!!


「え? 何をしたの? 男の人なら普通……って何が?」


朝野さん、変に説明させないで!


「あ、あの、ここは一人にさせてあげるのが良いと思うのですが」

「どういうこと? ……はっ」


星ヶ谷さんのどこか冷静な説明が、朝野さんにすべてを告げる。

同時に、ぼくをよりかっこ悪くする。

二人の顔は、真っ赤だった。



-----

この、高等部の先輩、鈍いのかな?

この高等部の男の子。あ、そう言ったら失礼だけど、”子”って感じだから。

どうみてもこの場でその……えっと。たまに……う。

わ、私も……あああ、名前が言えない! 考えただけで死んじゃう!

と、とにかく同じように、好きな人を想って変なことをしてしまうから!

だから、この高等部の男の子の気持ちはわかってる。

もう一人の、鈍い先輩がよくわかってないみたいだったから……ぜ、全力を以って教えてあげた。

『あ、あの、ここは一人にさせてあげるのが良いと思うのですが』

すると先輩は、一度考え込んでからはっとした顔をして、真っ赤になってしまう。

私の顔も熱い……真っ赤だったのだと思う。

朝野さんが、一度うなずいた。

わかってくれたような誤解されたような気がするが、直後。

彼女は、顔をばっと上げて、想像もしないことを言い放った。


「わ、私が手伝ってあげるわ! 何とかしましょう!」


ええええーーーーーーーーー!?

筒川先輩に続いて、朝野さんまで!? や、やめてーっ!!

星ヶ谷さんまで目を真ん丸にしてるじゃないかあ!!


「ぼ、ぼくは、その、あ、あの!」

「頑張りましょう!」


ひえええ!

いつも凛として、時折筒川先輩(普段)くらいのきっつい顔をしている朝野さんが、まさかこんなことを!

ぼくの目の前に迫り、かがんでその顔をもうすぐくっつくんじゃないかってくらいのところに浮かばせる朝野さん。

さらりとした髪と、すらりとした曲線を描いている……ようなイメージの体が胸を熱くする。

う。む、胸もちょっと下がってるし。

ここからそれを隠す布が無くなったら大変なことに……うわああああ! ぼくは何をかんがえてるんだーーっ!!



思考安価

>>181

>>183 沙綾(場合によっては弘の行動に対するものになる)

>>184 詩乃


番号よく見てね

足が持つれて後ろに倒れる状況が飲み込めず動けない

優しく胸に抱きしめて落ち着かせる

なんとか二人をなだめる

>>181
この後何をするか、という思考でなく状況を決めてるから再安価↓

どうしよう。

どうしよう!

ぼくは、思わず、星ヶ谷さんに視線を向けていた。

この場では背が一番高いから、頼りになるとでも思ったんだろうか!?

年下を頼るなんてやっぱり僕はダメだ……

と落ち込むか落ち込まないかのうちに、朝野さんが体を押し付けてきていた。

いや、ぼくを抱きしめていた。

胸がどきんとした。

顔が、熱い。


風も感じないし、鳥の声も、しない。

-----

私は何をしているんだろう。

緑谷君を、抱き寄せてしまった。

あまりにもはかなく、今にも死にそうな……そんなじゃない。

今にも、泣き出しそうな感じだったから。

儚い花を守るというより、泣き出しそうな小動物を撫でてあげる感情に等しい。

その割には、下腹部に触れるものが熱いけど。

つつかれてる感じがなんというか、不快。

不快というよりは、胸が傷つきながら落ちていくような変な感覚に見舞われる。

股間からなにか、凝縮して引きよせてくるような感覚を覚えた。

今はとにかく、恥ずかしい思いをしているだろう緑谷君を助けたいと考えての行動を、そのまま続けたいだけ。


そう思ったはずなのに。うう……

-----

私は、ただこの場で考えたかっただけ。

それなのに、こんな状況に遭って、あまつさえ年上の筈の男の子が、私をじっと見る。

自分でも思わない行動だったのだろうか、すぐに目をそらした。

すると、もう一人の女の先輩が、男の子を抱きしめる。

やだ……二人で何かするつもり?

噂では、なにか大人なグッズが裏門あたりに落ちてたらしいというし……。

と、止めなくっちゃ。


「あ、あの、せ、先輩方、そ、そそ、そういうことはもう少し大人になってからのほうが」

「え……え!? ち、違うのよこれは!」


顔をより真っ赤にして、女の先輩は男の子の先輩を突き放した。

男の子の先輩は、よろめきながらも腕をぐるぐると回して、そこに立った。

あ、アレはと言えば、未だにズボンの布地を引き寄せて恥ずかしい形を作っている。

う。あうっ、うああああうううう。


チャイムが、鳴った。



----



チャイムが、鳴った。

二人の女の子の前で情けない。

どうしたらいいんだろう。その結論は出なかった。

でも、代わりにこう思った。

もう一度ここにきて、一人で考えよう。さすがに次の休み時間には現れない……よね?




次の休み時間、どうする二人(体育館裏に来ないなら出番もない)?

沙綾 >>192

詩乃 >>194

弘が気になるからやっぱり来る

体育館裏に行ってみる

>>184  連投で再安価↓

今回ここまで

誰にも会いたくないはずなのに、なんでまたいるの。

ぼくが恥ずかしいものをいきり立たせてしまったんだから、そのまま来ずに忘れてくれれば助かるのに。

朝野さんも、星ヶ谷さんも。

なにか、他に用事があるのか。

じゃあぼく、邪魔?


「ん……と。緑谷君」

「あ、へ?」


朝野さんが、ぼくを見つめている。

なんだか顔が赤い。息も荒い。

さっきのを見て、ぼくに対してすごく怒るつもりなんだろうか。

少なくとも5分はあるし。

でもやめて。後輩の星ヶ谷さんの前ではやめてよお。

『こんなところであそこを立てて発情するなんて変態だわ!!』とか言われたら……。

人前でパンツ姿にさえなったのに。

このままじゃ……あああ。


「さっきは、突き飛ばしてごめんなさい」


あ、そ、そっちか。いいよ、と告げた。お願いだから去って。

それから1分は過ぎただろうか。

10分とか1時間とか経ったかと思ったけど、さすがにそれは無い。

たぶん1分だと思う。たぶん。

無言のまま時が過ぎたから、わからないけど。

もしかしたら2分かもしれないし、やっぱり5分かもしれないし……そんなことどうでもいいよっ!!!

……朝野さん、もういいよ。

真っ赤になったまま、手を前に押し当てて、唇をぐにぐにさせて。

お願いだから、もうそろそろやめてよ……。


そう思ったあたりだ。

星ヶ谷さんが、星ヶ谷さんが……>>204



------

気になって、しょうがなかった。

もう一度ここに来れば、また何かあるような気がしていた。

どうしてこんなことを考えてしまったんだろう。

ああ。

だけど、ああ。

……名前は出せないっ!

幼馴染の……あ、あの人が同じような感じになった気がして。

ほんとうにどうすればいいか。

ああ。

そのまま、二人の先輩の姿を見ているとどうしようもなくなる。


あああああ。


私、星ヶ谷詩乃は気づくと、>>204していた。

ウジウジするなと励まし

本人も驚いた顔をしていた。

『うじうじするな』。

言葉としては、言われたぼくがカッコ悪いけど。

でも、なんだろ。

彼女自身、勇気を出して絞り出すようにしていたあの言い方。

どこまでもがんばって、ぼくを励ましてくれたんだと思う。

そう実感する。

勘違いかもしれないけど。

朝野さんにもお礼を言った。

そして、ぼくは堂々と胸を張って……せ、背を丸めてないって程度だけど。

……とにかく、ぼくは。




ふう、後輩のおかげでってところがやっぱり情けないなあ。

そう思ったけどぼくの心は、なにか軽くて力強かった。

窓から透けてくる、日差しの強い廊下を行く。

そうだ、どんな恥ずかしい目に遭ったって、何も変わらないんだ。

ぼくが堂々としてさえいれば。

うじうじしているから、余計に恥ずかしいんだ。

より、人からダメな奴だと思われるんだ。

うん。

堂々と。

どんな恥ずかしい姿になったって。




……パンツ姿をいろんな人に見られた。

た、確かに情けなくて恥ずかしい。でも別に、ネットにも流されてないし、誰かから指摘されたってわけじゃないし。

う、うん。うんうん。

明日のこともあるし、がんばろ! うん、がんばろ!


……あれ以上の人達に、見られてませんようにーーーーーーっ!!



-----

どうやら、元気が出たみたい。

いつも引っ込み思案というか臆病な彼が、なんだかいい顔をして、お礼を言って去っていった。

私より、中等部の後輩の子に言われたことで奮起したみたいだったのは無念だけど。

せっかく気にしてあげたのに。これじゃ私がバカみたい。

……ま、いいか。どうせ私、ただ周囲の皆を気にしてるだけだもの。

なにかあったら、また言ってね?

待ってるから。



顔がちょっと熱い。



------


それから昼休み。

ぼくは、階段を歩いていると、その窓から体育館裏が見えた。
すると>>210(安価での募集キャラから)が、星ヶ谷さんに>>212しているのを見てしまった。

海藤

絵を書いてもらっている

驚いて、頭の中で文章を間違えてしまった。

絵を描いてもらっているしている、なんて。ぼくはバカか。

あの海藤先輩が星ヶ谷さんのモデルになって……確かにそう見える。

背が高く金髪で、崩した着方の服。

悪い噂ばっかり聞いてるけど、こんな素朴な姿を見るなんて。

意外といい人なのかな、と思ってその場を立ち去ろうとすると。

えっ。

星ヶ谷さんが、手を止めて顔を俯いた。

なんだろ。

あっ。

海藤先輩が明らかに怒った素振りで星ヶ谷さんに迫っていく。

どうしたんだろ。

気が付くと、ぼくの脚が震えてる。

でも、いかないと。

走り出していた。途中で水無月さんにぶつかりかけて謝って、そのまま靴も履き替えずに体育館裏へ走ったんだ。

「ほ、星ヶ谷さん!?」

「あ」

「なんだお前」


う。振り返った海藤先輩は、すごく怖い。

2,3メートルくらい先にいるその人の眼光に怯み、勢いがピタリと止まる。


「なんだよお前」

「あ、あ、ああ、あ、あのっ、あのっ」

どもってしまって何一つ言えない。このままだと殴られるんじゃないだろうか。

星ヶ谷さんはと言えば、スケッチブックを膝の上に置いたまま、震えている。

スケッチブックの上に、青いシャーペンと真っ白な消しゴムが置いてあるのが目に映ったけど、そんなことを気にしている暇はなかった。

海藤先輩が、ものすごい速さでこちらへ足を延ばしてきたんだ。右、左、右、左。うわわわわ!!!

逃げることもできずに詰め寄られていた。

海藤先輩は、ぼくを嫌な顔で睨んでいる。顔が近い。

かなりかがんでる。慎重には差がある。

首に何かが光ってる。シルバーのネックレスだ。光に気を取られた、その矢先。


「誰だお前」

「あうっ」

「あうじゃねーよバカ」

「そ、その」

「そのじゃねーよクソ」


ぼくのおびえる姿にすっかり呆れてしまったのか、海藤先輩はぼくの目の前で、横の地面に向けて唾を吐いて、くるりとまた振り返った。

大きな背中だ。


「あ、あっと! 何を、何をしてたんですか!?」

「あぁ?」


ぼくが今更になって大声で話しかけてきたことで、振り返った貌には明らかないら立ちが見えていた。

「おいシノ、そいつお前の彼氏か?」

「え!? ち、違います」


びくびくしながら答える星ヶ谷さん。

ぼくもおなじくらいおびえてると思うと情けない。

後輩の女の子と同じって……。


「関係ねえのに口出すなよクソ」


また、唾を吐いた。今度はぼくの足元だ。うっ、とたじろぐ。

海藤先輩はそれを見て表情に笑みが浮かんだようだったけど、それが確認できる頃にはまた、ぼくに背を向けている。


「俺はな、楽しく絵を描いてもらってただけだよ。早く続き、描いてくれ」

「う……はい」


本当に、ただ描いているだけだろうか?

ただ単に、怖い先輩に頼まれて、怖いながらも断れなかった程度の話なんだろうか。

だとしたらぼくはただの邪魔かもしれないけど。

その場を一歩引こうとした瞬間、こんどは星ヶ谷さんが怯えた色の目を向けてくる。

逃げられない、逃げたらいけない。そう思った。

どうしよう……


思考安価↓

描かれている絵の内容(ポーズ・シチュなど) 安価↓3

どうしよう。なんとかして、星ヶ谷さんを連れ出さないと。

いきなり走って星ヶ谷さんの腕をつかんで引っ張ったとして、座ってるしすぐに立てない。

逃げる前に後頭部にパンチされるところを想像してしまった。

いや、向かってっただけで殴られるだろう。

避けながら走るの絶対無理だし……うー。

だめだ。いきなりは無理だ。

なにかいい方法を考えなくちゃ。

そうだ。


「あ、あの、なんの絵を描いているんですか?」

「あぁ?」

「い、いや、それが気になってここに来たんですけどね」


変に引きつった愛想笑いで、数歩近寄る。

さっき吐かれた唾を踏んだかもしれないことに気づく。

あっと思ったけど、遅かった。

でも、海藤先輩は何も言わず、ぼくが近づくのを止めようとしない。

い、今のうちに少しでも近づこうかなー。

「えっと……い、いいかな?」

「はい……」


シュンとした顔から、ぼくが近づくにつれて驚いた顔になったけど、ぼくがスケッチブックに手を伸ばした瞬間またがっかり。

す、すぐに助けられるわけじゃないよ!?

と、スケッチブックを見ると……なにこれ。

海藤先輩が、片手をぐっと上げて空を見上げている……。

これ、ラ王だよね。北斗の拳って有名な漫画の。

わが生涯になんとかかんとか。

カッコいいシーンだけど……海藤先輩、これを描かせたの?

自分からそんなのを描かせようとするなんて……

中二病と言おうかナルシストというか。

ちょっと、憐みの視線を向けた。

その途端。わ!


「あぁん!? なんだそれはよ!!」


すごい怒った!! まずい!


「ほほほほ星ヶ谷さあん!」

「きゃ!!」


星ヶ谷さんの腕を捕まえて、そのまま一気に逃げようとした!

でも、互いに慌てて、すぐに立ち上がることもできないし脚はもつれるしで……

結局、ぼくは星ヶ谷さんの上に覆いかぶさってしまった。


「いやああああーーーーーーーーーーーーーっ!!」

「ごめええええんっ!!」

「お前ふざけんじゃねぇええええっ!!」


星ヶ谷さんの悲鳴と、ぼくの謝罪、そしてラ王……じゃない、海藤先輩の怒りが同時に響き渡った。

-----

どういうことなの。

さっきのことがまだ気になって、体育館裏のちょっとしたスペースで座って、絵でも描こうと思っていたら。

いきなり高等部の悪名高い海藤先輩がやってきた。

私のスケッチブックに書いている名前を見たのか、それとも前から知ってたのかな。

いきなり『シノ』と呼ばれた。

『うたのです』、と訂正したかったけど、大変なことになりそうだからやめた。

すると海藤先輩は、『お前、絵がうまいんだって? 俺を描いてみろよ』と言う。

だから描いた。

怖かったけど、いや、怖かったから、描いた。

大事な人からもらったシャープペンシルで、何も考えず一気に描いた。

描いている間、先輩がこぶしを握って、上にあげた。

その時、私のインスピレーションががっと働き、イメージが浮かび上がった。

北斗の拳のラオウを重ねて描こう。

一気に、一気に……あ。

やっちゃった。

これを見せたら怒られるかも……って絵が出来上がった。

どうしよ……膝の上にスケッチブックとシャープペンシル、それと消しゴムを置いて俯いてしまう。


「何やってんだよ?」


先輩が、急な私の動きが気に入らなかったのかツカツカと詰め寄ってきた。どうしよ。

「おい、どうした? 描き終わったなら見せろよ」


肩に手を置かれた。少しずつ、手に力がこもっているのがわかる。

背中にしっとりと濡れた感触が生まれる。

汗だと思う。

その時だった。


「星ヶ谷さん!」と声がした。


顔を上げると、あの先輩の男の子がいる。

顔は可愛い感じだけど、変態っぽいみたい。

でも、もしかして、私を助けに来てくれた……?

と思いきや、いちいち怖がって、何一つまともに言えない。

一度、私にどんどん近づいてきたから連れ出して走ってくれるかと思って期待したのに。

私の横に座って、結局スケッチブックに手を伸ばした。ばか……。

そう思ってると、急に海藤先輩が怒鳴りだした。

それにびっくりして、立ち上がりそうになる。

同時に男の子もびっくりして、脚が絡まって腕が引っかかって。

わ、私は……私は、その男の子に……いやあああああああああ!!


わ、私には、幼馴染の……>>228がいるのよ! いやいやいや変態ーーーーーーっ!!


そして、同時に、海藤先輩も怒鳴り声を上げながらすごい勢いでこっちに来た!!


-----

海藤の思考安価 >>230


*>>228 は詩乃の幼馴染で唯一の友達、詩乃は>>227と結婚したいと思ってる。

これは募集キャラからかな?

真々島 歩

さっさと見せろよ

>>227 こちらは何も指定していないのだから、ルールにのっとっていれば何でも構わなかった
無論募集キャラでもいいけど

がつっと掴まれた。右のわき腹だ。

そのまま、物をどかすかのように、というかどけるかのように。放り投げるというのが一番正しいかもしれない。

捕まれたのと、コンクリートの地面に軽く左半身がぶつかった二つの痛み。

理不尽さに怖さより、怒りがこみ上げた。

だからって何かできるわけじゃないけど、体を回して、海藤先輩と星ヶ谷さんのほうを向く。

海藤先輩はスケッチブックを乱暴に一枚一枚めくり、自分の姿が描かれているだろうページを探している。

星ヶ谷さんは……ああ。こっちをすごい嫌な目で見てる。

でもすぐに、慌てたようなおびえたような目で、スケッチブックと海藤先輩に視線を交互に向けるようになる。

なにかまずいものでも描いてあるのだろうか?

「あ?」


海藤先輩の手が止まった。一つのページに注目している。

一度、前のページが落ちたけどすぐに戻し、もう一度見る。

気に入ったの? ラ王。

より覗き込むようにじーっと見て、それから数秒……先輩は不意に笑い出した。


「ははっ、ははは! へーそーかあ。お前、あいつに惚れてんのか」

「や、やめてー! 歩君とは違うの!!」


あゆむくん? だれの事だろう。

スケッチブックの中に描かれていたんだろう。海藤先輩はそれを見て、星ヶ谷さんがその人を好きなんだと言っているんだ。

眉を吊り上げたり下げたり、とてもいじわるそうな顔で、仰向けに倒れ込んだまま顔を真っ赤にしている星ヶ谷さんを笑う。


「そーかそーか……歩君に惚れてんのなー、そっかそっか」

「ち、違う、違うの……やめて」


もう泣きそうな顔をしている星ヶ谷さん。赤ちゃんのように身を縮ませて、小さく震えている。

ぼくは、立ち上がった。

小さな石や砂が制服から転げ落ちた。かちっ、と音がした。

目の前に涙が浮かんでいる。

歯が鳴っている。自分でも止められないくらいにがちがち、がちがちと。


「やめてください」

「は? まだいたのか」

「やめて……ください」


二度、言った。意識が真っ赤になってまともに火も噴けない。

口の中から何かが出そうだ。

脚も震えるし、地面も震える。

肩がよろめいて頭が逆さになる。

ああ。ぼくは何を考えているんだ。

つ、次にいうべきことは……えっと。


「な、なか、泣かすな!! ばか!」


……ばか。

直後、顔からあったかい水が出た。ぬるりとしていた。そのあとにいたみがきたた。

つぎにうしろがぶつかった。ごつんといった。


ごつん

-----

なんだこいつ。

バカだ。完全にバカだ。

あーあ、面白かったのによ。

クソみてーに叫びやがるから一発ぶん殴ったら死んじまった。

シノの奴、俺がせっかく口説きに来てやろうとしてたのにママ島なんかにベタ惚れしてやがってよ。

なんだこれ。

しかも、からかっただけで泣き始めやがった。ガキじゃねえか。

俺が大人にしてやってもよかったのによ。

そーいや、前に付き合ってた女は俺が何度も楽しませてやったのに『もう嫌』ってよ。

仕方ねーから無理やり寝かせて床に頭を押し付けて、横向かせて、鼻だけ思いっきり踏んだんだった。

鼻を抑えてひっくり返るマヌケな格好は笑えた。そのあと俺からフったんだ。おめーみてーな鼻が腫れた女、誰が相手にするんだよ!って。

いつもなら思い返すと笑えるんだが、今日は笑えねえ。

おいシノ……どうしてやろうか?


どうしてやろうか? 思考安価↓2

「おい、そこの死んでる雑魚とやれ」

「え?」


信じられない、って顔してやがるな。

へっ。

つかその雑魚、本当に死んでねえだろうな?

笑みがこぼれるのがわかる。鼻血出してマヌケ面晒してんだ。笑えるとしか言いようがねえ。


「しないとブッ殺す」

「え、え!?」


そいつのほうへ、首を振って、慌てるシノ。

ようやく笑えそうだな。

俺のことをないがしろにしやがったクソを全裸にして、土の上でヤ……いや、交尾させてやるんだ。

まるで雌豚になった気分を味わえるようにいろいろ演出してやろうか?


「ははっ!」

「あ、あの、何をやればいいのでしょう……か?」


あ?

ホントにつまんねえ奴だな。手順説明も兼ねて、はっきりと言ってやった。


「素っ裸になれ」



-----

ああああ、あああああ。

うそ、うそ。

やれって、そう言うこと?

裸になれ、ですって?

そして、そこの変態な男の子と……ああああ。

歩君、助けて。

逃げようにも、まだ倒れてるし、先輩は怖いし。

倒れている変態な男の子は、死んでしまったかのように動かない。

怖い。恐い。こわい。

どうしたら……ああ。

歩君、助けて。歩君、助けて。

このままじゃ私……絶対いやあ!


「立てよ、コラ!!」


腕を掴まれて、無理やり立ち上がらされた。

そして、数メートル先の、すこし陰になっているところに引きずられるように連れて行かれた。

ここでやれということなの? いや、嫌。

涙で視界がにじんでいる。

震えながら首を振っても、先輩は背中を向けている。

振り返ると同時に、変態の男の子の足をもっているのがわかった。

今度は本当に引きずってここに連れてきた。

その間も、怖くて動けない。


「ほら、早く脱げよ」

「い、ひい、違……やめ」


声を震わせながら、膝から崩れそうになる。

だけど、無理やり首と頭を掴まれ、その場で立っていないといけないようにされた。

どうしよう。どうしよう。

私……こんな外で、学校で。ほとんど知らない先輩の……変態で、男らしさもない人と恥ずかしいことをするの。

ひどい人に命令されて。

裸で。

何も着ないで。

素っ裸で。

すっぽんぽんで。

頭がぐるぐる回りだした。あああ……

私は泣きながら、制服に手をかけた。

歩君助けて……!!



海藤の思考安価 >>242

弘の思考安価 >>244

↑で

酷いと思いながらも凝視してしまう

震えていたら、恫喝された。メスガキ、と呼ばれた。

止まらない振るえの中、どうにかYシャツを脱いだ。

熱い日差しから陰に隠れた、ひんやりとした土の上に、汚れることを考える余裕さえなくそれを置いた。

もう、ただの白い布だった。寒くもないのに、震えがくる。

無理をして付けた白いブラジャーを見られた。

ニヤニヤと笑う海藤先輩。私をあざ笑っているのがよくわかる。

いろんな女の人と付き合ってるらしい。色々なことをしてきたんだろう。

それらと比べて、私は魅力がない。

そんな私を笑っているんだと悔しくなった。

その悔しさは、惨めな今の状態に上乗せされる。

靴と靴下を脱いだ。

裸足だ。土が冷たい。

次は……スカートを、脱いだ。

ぱさりと寂しい音がした。


「タイツねえ。パンツのラインが良く見えるな」


笑わないで。悔しい。もっと悔しい。唇をかんだ。

パンツを見せるよりは、胸を見せてしまうほうがまだ私にはマシだったのか、先にブラジャーを脱いだ。

成長のない乳房……胸板と言っていいそれがあらわになる。

また、笑われた。次は……ほんの少し見せるのが延びただけだった。パンツを見せるために、タイツを脱ぐんだ。



純白のパンツを、他人に見せた。

顔が熱くなったのは一瞬、すぐひえた。

つめたい。私は死んだの?

ああ、あああ。

青ざめているのがわかる。

人生の終了を告げる鐘の音が聞こえる。

歩君の顔が、お母さんの顔が、お父さんの顔が、おじいちゃんやおばあちゃんの顔が、交互に浮かぶ。

私、私……ああ、ごめんなさい。

怖くて何もできない。ただ、残った二枚の白い布を自分の身から剝ぐことしか。

「色気ねえな。 付き合わなくてよかったなこんなの」

「っ!!」


ひどすぎる。余りにも。涙が頬へつたって、ぼろぼろとこぼれる。

足やつま先を濡らした。


「泣いてんのかよ」


先輩が言う。情けを期待できるような言い方じゃない。


「胸に涙がたまったらエロかったろうに、おまえじゃな」


胸が張り裂けそうよこっちは!! ああっ! ああっ! ああっ! ああっ!!

……脱いだ。

…………脱いだ。

頭が真っ白になって、ブラもパンツも一気に脱いだ。

まるで変態だった。

最低の気分。私はこんどこそ、崩れ落ちた。


「おいおい何してんだ? いよいよ本番だぞ、お?」


容赦のない声が私を苛む。


「あ、豚のマネしてんのか。性欲つえーんだな。最後は一瞬で脱いだしな!」


やめて……やめて。


-----

ぼくは、ずっと青い空をみていた。

風で雲が流れているのが見えていた。

痛い。顔も、後ろの頭も。

手や足にも痛みがある。擦りむいたんだ。

ゆっくりと、体を起こす。

すると見えたのは、星ヶ谷さんがブラを外す姿だった。

え、エッチな……どうして?

海藤先輩が急かし、メスガキとどなると、星ヶ谷さんはびくっとしてからもう一枚脱いだ。

靴に靴下、スカート……う。パンツのラインが良く見える黒タイツ。

海藤先輩が無理にやらせているんだ。ひどい!

どうしたら……う、うう。

パンツ丸出しの下着姿……靴も履かずに、地面の上に白い足を置いている。

ああ。あ、あそこが熱い。ズボンとパンツを押し上げ、またみじめな汁を発してる。

どうすれば……ああ、でも。

一気に下着を外してしまう星ヶ谷さんに、ぼくは視線を集中するだけで何一つできなかった。

そして海藤先輩が言う。


「さ、ヤれ」


え。


この後どうなるか安価投票1~5

1 セックス開始
2 弘が抵抗(もしくは逃げる)
3 詩乃が抵抗(もしくは逃げる)
4 助けが来る(コンマが大きいほど頼れる人)

すまん同率の時のこと考えてなかった。
今回の場合、同率一位で両方起きることにする
ただし今後こういう場合はその場その場で前もって投票前でルール設定しとく

「何やってんだお前らーーーーーーーーーっ!」


どどどどどど……とものすごい勢いで地面を叩く音がする。

後ろからだ。

海藤先輩がぼくのうしろを見て、驚いている。口もだらしなく開いている。

星ヶ谷さんはと言えば、ものすごく怖いものが迫ってくるかのように……いや、これを他の人に見られたらそれは怖いよね。

そんな顔をして、体の全面と顔を隠すようにうずくまる。

直後、ぼくの目の前に、長い脚が現れた。

制服だ。男子の。男の制服。

そう言えば声も男のものだった。それも、聞き覚えのある。

あ。

高村先輩だった。

「いや、うわあああーーーーーーーーーーーっ!!」

星ヶ谷さんが、叫びながら逃げた。

脱ぎ捨てたYシャツを右手で広い、顔に当てて。

左手にはスカート。これで、胸と……ま、前の、肝心な部分を一応かくしている。

そのまま、裸足で走り去った。誰にも見つかりませんように……。


「あ、こらテメエ!」

「何考えてんだお前は! 最悪だな! 今すぐ警察に言うぞ!」


追いかけようとして振り向いた海藤先輩の肩を強く叩き、大声でまくしたてる高村先輩。どうしてここに現れたんだろう。

偶然見たのかな?

とにかく助かった?

でも海藤先輩がすぐに逃げないのが、気になる。

どちらかというと、冷静だ。


「うるせえ」


海藤先輩は、薄く笑っている。

高村先輩が、なんだと、とうなるように言った。

それに対して、海藤先輩は続ける。


「そうなったらな、あいつ、大勢の人間にこうなったことを知らしめられることになるぜ!?」

「なっ」


高村先輩の勢いが、止まった。


「そうだろ? なあ」

「く」


そうだ、海藤先輩が捕まったら、少なくとも警察とか裁判の人達に、星ヶ谷さんが裸にされたことがわかってしまう。

ぼくも人前でパンツ姿を晒したからよくわかる。

でも、だからって……うう。

うう。うううう。

海藤先輩が、高村先輩の手を払いのけた。


「じゃあな」

「待て!!」



ぼくが、さけんだ。

「ぼ、ぼ、ぼくはっ! ぼくはっ!」


震えが今までで一番大きい。

足まで震える。体を支える腕さえ震えてしまう。

でも、でも。でも!

うわ、うあ、うわあ! うわああ!

跳ね上がるように立ち上がった。

逆に、前に倒れそうになったけど。

今でも倒れそうだけど。震えて。


「ぼ、ぼくはお前に殴られた! いきなり、なにもしてないのに!」

「はあ?」


口を大きく開けて、頭だけをぼくに向けて伸ばす海藤先輩。

高村先輩もきょとん顔。


「あ、あなたは、い、いや、おまえ、は、女の人を裸になんてしてない! ぼくの事だけいきなり殴ったんだ! こ、これは、これは暴力事件だ! ただの暴力事件だ! で、でも捕まれ!」

「んだと?」


そうだ。ぼくが殴られただけにすればいい。星ヶ谷さんは何もされなかったことになる。

高村先輩は星ヶ谷さんの顔を見てないし、星ヶ谷さんが逃げた後に裸のところを見つかったりしなければバレることはない。

海藤先輩が『やった』と言ったところで、ただのたわごとにできるし、それ以前に罪が重くなるから言おうともしないだろう。

海藤先輩……どうする!?


海藤の思考安価↓1&↓2(下のほうが優先的に発動)


海藤先輩は、舌打ちをして逃げて行った。

最後に、なんであんなメスガキ庇ってんだよ!って捨て台詞を吐きながら。

どうしよ……警察に言おうか?

なんて考える余裕もなく、ぼくは腰から崩れ落ちた。

横にたたずむ高村先輩が、言った。


「昨日は悪かったな……見直したぜ」

「え? は、はい」


昨日、何か悪いことされたっけ?

よくわからないけど、もう何もする気が起きない。

怖さのせいか……疲れたのか。

ああ、はあ、ふう。

呼吸を何度か繰り返して……はあ。

暫く呆然としていた。


そのあと、目立たない位置に星ヶ谷さんの脱ぎ捨てられた下着とスケッチブックを拾って、近くに置いておいた。

スケッチブックに名前が書いてあったから、ちょっと別々の場所に置いた。

ほかの誰かが拾ったら元も子もないもの……ね。

----

逃げた。

逃げた。

とにかくあの場から離れたかった。

恥ずかしい。恥ずかしい。

歩君に顔を合わせられない。

人前で、それも顔見知りの男の子の目の前で私はすっぽんぽんになった。

顔を隠すために身を丸め、うつぶせたけど、とても惨めなポーズだったに違いない。

あの時来た人、助けに来てくれたと思うけど……ああ。

海藤先輩や変態の男の子に続いて、その人にも見られてしまった。

ああ、恥ずかしい。ああ。恥ずかしい。

生きていられない……あああ。生きていられない。

私は誰も見ていないことを確認しながら、焼却炉の裏にある草むらに隠れて服を着た。

パンツもブラもタイツも、靴も履いてない。惨めな気持ちは終わらなかった。

その時、最悪の声に私はぞっとした。


「なにしてんの詩乃?」


歩君だった。


歩の思考安価↓&↓↓

歩君は、草むらの中からゆっくりと上体を起こして姿を現した。

そこで寝てたの?


「どした~詩乃こんなとこで」

「な、なんでも。歩君がいるかなーって思ってきてみただけ」

「……なんだ。そう」


ゆるい声だった。服を着た後でよかった。

足だって、草むらに隠れている。

見られたらもう、二度と顔を合わせられない。

年が3つ離れた幼馴染。

私の唯一の……友達。

彼がもう一度横になった。

上から見ると草むらにも隠れることがなく、その顔が見える。

そして、彼がまた声を出す。

今度は、すこし重かった。


「なあ」

「な、なに?」

「なんかあったろお前」


う。

こうなると歩君は厳しい。

何も言えない。

むしろ何か言わなきゃいけないんだけど。

ど、どうしよう。


「何かあったんだろ。言えよ。わざわざこんなところまで来て」


凛々しい。す、すごい素敵……やっぱり素敵!

ああ、結婚したい……!!!


「い、いいの別に。特に何もないから。た、ただえっと」

「……」

「横で寝かせて」


彼の横に、ごろりと。

なんだろう。一度裸にさせられたせいなのかな。

ちょっと大胆になった自分がいた……気がする。


-----

いよいよ明日だ。

ぼくは、ついに明日を迎えることになった。

平瀬先輩との、デート。美術館デートがついに始まる!

いつも何らかのイベントをしてるらしいけど、先輩と連絡を取り合って、それは後の楽しみにしようとわざと知らずにおくことにした。

って。

しまった。どうしよ。

服、どうしよう。

やっぱり男らしく見せたいんだもの。

ワイルドな格好いい男にあこがれて、たくさん用意した服にシルバーアクセサリー。

よーっし、最高の服を選ぶぞ!

どんな服にするか安価↓1~3(どれか一つ、もしくはミックス)、シルバーアクセサリーはどうする? 安価↓4

恰好の内容とコンマによって好感度が変わる? 今回ここまで

うーん。スラックスよりはダメージジーンズのがワイルドでかっこいいよね!

あとは……青いシャツ。

薄い色のほうがジーンズに映えるかな。よし。

あとは……そうだ、メガネもかけよう!

もちろん伊達メガネ。

こういうおしゃれが要りそうな時用に買っておいたんだ!

そしてワンポイントの、よし。十字架っぽい剣の形したネックレスだ!

よーっし、よーっし!

カッコよくなった!


……と、ぼくが思うといつも美晴に『ぶわーーーっ』って言われる。

それはさすがにあいつが変だっ!

翌日。

ついに、ついにあの平瀬先輩とデート!デートぉっ!

ドキドキと心臓の音が止まらない。

朝出かける直前、美晴が『ぶわーーーーーーーーーっ』って腰を抜かしてたけどあいつはおかしい。

おかしい奴の言うことなんてどうでもいい!

……先輩は言わないよね?

ドキドキしながら熱いコンクリートの上で熱い風と熱い鳥の声を感じながら進む。進。

右。左、右、左。

あっと、花を踏みつけそうになって足をよけて、一度立ち止まって時計を確認。

あと10分だ。

よし。息を吸って吐いて……もう一回。すうはあ。

さ、行こう。



周囲の人がぼくを見て、>>280とか>>281とか言ってる……。




今回少しだけだけど次はデート書く

痛すぎる...

せっかく可愛いのにあんな変な格好して・・・

完全にバカにされてる。

そんなに痛い?

そんなことない筈なのに!

ぼ、ぼくのことを言っているとは限らない。

可愛いって言ってるし。ぼくの後ろに、可愛いけどアニメの”プリティアムーン”みたいな格好している女子中学生がいるに違いないんだ。

そ、そう。そうだよ……。

でも、もしぼくに言ってたとしたら。

かといって今更着替えられないし、このままいくしかない。

先輩の反応が怖いーーーーーーーーーっ!

早く結論が知りたいせいか、純粋に先輩に早く会いたいからか。

ぼくは駆け出していた。

くすくす笑いがどんどん強くなって、ぼくの耳に届く。

なんだよーっ!


ここで『ふざけんなてめえら! ぶっ飛ばすぞ!』とでもいえばカッコいいのかな。

『ぶっ殺す』のがいいかな?

そういう悪い言葉は使っちゃダメ! と心の中で振り切ったころ、ぼくの視界に平瀬先輩が入り込んだ。

美人。

かわいい。

素敵。

美麗。


なんて言ったらいいんだろう。

どんな言葉を並べてもこの人を褒めるのにふさわしい言葉が思いつかない。

ただそこにいるだけで、周りの空気が変わる。

輝いてる。

学園の女神と言われるだけはあるよね。

そんな言葉じゃ足りないってば。

ピンク色の髪に、ふうわりゆったりとした白いワンピース。

淡い、赤のハンドバッグも。茶色のサンダルも。

どれも先輩の可憐さによく似あっている。カッコいいし美しいしああすごい。

「おはようございます、緑谷君」

はわあああああああああああ。

にっこりとほほ笑んで、ぼくの名前を言って! あまつさえ頭まで軽く下げる上品さ!

なんでこんなにきれいなんだあああああああああ!

心の中で悶えうねるぼく。

「あの……緑谷君?」


はっとなった。

しまった。

まず、ぼく自身の姿を気にすべき時だった。

不思議そうにぼくを見つめる先輩。

や、やっぱりおかしかったかな?

どうしよ。どうしよ。

今更着替えられないし!

これからデートが始まるんだよー!?

と思ったら先輩が、すこし強調して、言った。


「おはようございます、緑谷君」


……あ。おはようございます、平瀬先輩。

そう言えば、挨拶してなかった。ごめんなさい。

服のことは何も言ってこないし、別段おかしいと思っているそぶりもない。

よかった。

やっぱりぼく、かっこいい男になってきているみたい!

……だったらいいけど大丈夫かな?

先輩優しいからなあ。

わざと表に出さないのか、それとも、もともと見た目で判断しないから相手がどんな服を着てるかなんてどうでもいいとか。

一番最初のだったらどんなにいいだろう。

はあ。


いよいよ、二人で。

レンガ造りの、歴史ある西城美術館の受付へ並んだ。

受付のお姉さんが……どっかで見たような気がするけど、えっと言うような驚いた顔をしている。

やっぱり自信がない……。


-----

ある夏の日。

美術館受付のバイト中、あの学園の女神が、顔が可愛いけど変なカッコした……後輩のなんだっけ。

名前はともかく、そいつと一緒にその美術館のチケットを買った。

すごく赤くなってドキドキしてたみたい。

まさか女神、あんなのが好み!? うそお。

でなければ説明がつかないよねー。だって。

裸像展と春画店を二人で見るなんてさ。

ちょいと驚いていると、マジな館員のババアが『三島さん、手を止めないで』とキレ気味だった。

うざい。

-----

うそ。

うわ。

やだ。

ひえ。

先輩の顔を覗くと、真っ赤になっている。

ぼくの顔もたぶん真っ赤。

熱いもの。

どうしよう。

最初のうちは、花とか風景とか、たくさんの人々とかきれいな絵を楽しんでいた。

『これいいですね』『そうですね』って楽しく話せた。

もうちょっとカッコつけた言葉が言えたらなあ。なんて考えてた。

でも。そのあと。

特別イベント会場の……立ち並ぶ石膏像に問題があった。

胸の大きな女の人が立ち上がって腕を振り上げているもの”舞”や、両手をまげて、口を大きく開けた顔の前でゆびをくねらせ……体は何一つ隠そうとしない”口(こう)”。

他にも片足を上げて、だ、大事なところを良く見えるようにしている……”色”。逆立ちして、両のつま先を床につけてる”動”とか、すごいのもある。

めちゃくちゃ恥ずかしいんだけどっ!

周囲にはニヤついてる男の人や逆に女の子。

本気で芸術にのめり込んでフムフム言ってる人もいる。こういう人はいいなあ。

ああ……どうしよどうしよ。

先輩、すごく恥ずかしそう。まともにものを見れないみたい。手で目を隠して、床を見ながら足早に歩を進め始めた。

ぼくも一緒に行こう。

でも、その時だった。

ぼくはあっと声を上げた。

それによって先輩は驚き、手を外してしまった。

そしてみてしまった。


……先輩そっくりの完全に裸の像が、>>290のポーズをとって、>>292の顔をして、立っているじゃないか!!!

膝に手をついて胸を寄せる

雌豹

とても……きれい。

きれいだけど、恥ずかしい!

せ、先輩がすごくエッチなポーズをして、こんなふうに誘うように、自信たっぷりに迫ってきたらどうしよう!

う。まずい。あ、あそこが熱いし痛い。

右に左に身をよじる。


「も、もう行きましょう!」


その声とともに、右肩をグイッと引き寄せられた。

バランスを崩して転びそうになりながらも、その後ろをついていく。

けっこうな力が肩にかかっていたかった。

先輩は足早に、石膏像の森をかき分けるようにイベントコーナーからでていった。

なんだか、ぼくが悪いことをしたみたい。

髪がたなびく先輩の背中を見ながら、ぼくはため息をついた。

「ご、ごめんなさい」

「そ、そんな、ぼくこそ……えっと」


通路と通路の間で、ぼくたちは互いに謝り合った。

なんで謝るのかわからないけど。


「……調べればよかったですね。まさかこんなイベントがやってるなんて」

「ほ、ほんとですよね。それに先輩そっくりの像があるなんて」

「それを言わないでください!」


真っ赤になって怒る先輩。

ちょっと涙目になってる。ごめんなさい。

ホントに、まさかあんな像があるなんてなあ……。

気を取り直して、次の、第二イベントコーナーに……あ。


春画展ん……!?

うわああああ。

女の人の、女の人の……一人で裸になってたり、男の人と交わってたり!

なんでこんなにエッチなの描けるんだろ昔の人!

昔の絵って、ぼくからするとそんなにきれいでもないしむしろ不気味な気がするけど、こういう風にねっとりとした絵ってなんだか胸を押さえつけて離さないような……ううっ。

先輩の反応は……あれ。

割とふつうにみてる?


「江戸時代の絵だとあんまりさっきみたいな感じはしませんね。ふう」


普通に笑ってる。かわいい。

ドキドキする。

本当に……ああ。

……裸婦像のイベント、来週もやってるかな? う。やめろ、ぼく!

先輩で変なこと考えるな!

と、心の中で叫んでいると、嫌な声がした。

聞き覚えのある……あの声だ。


「お前ら二人してエロイベントとかどういう関係だよ?」


海藤……先輩。なぜここに?

エッチなイベントに釣られてきたのか?

違う……気がする。

ぼくに対して、絡むような視線を投げかけてきているからだ。

昨日の復讐に来たんだ……と直感した。



海藤の思考安価 全体的な計画 >>297 いますること >>299

コイツ彼女か?手込めにすれば気も晴れそうだな

冷やかす

-----

昨日のことが気に入らなくって、なんかねえかとうろついてた。

そしたら、似合わねえマヌケな格好して走ってくあのクソガキの姿があるじゃねえか。

似合わねっつっても、服自体は悪くねえ。

俺のにしてやろう。

公衆トイレにでも連れ込んで、あいつ自身がカッコつけるために身につけてるシャツやダメージジーンズや、剣のネックレス。

あれ全部奪い取ってやる。人前で素っ裸にしてやるぜ。

あ、きたねえからパンツはトイレに流そう。あいつの見てる前でな!

泣きながら許しを請う姿が目に浮かぶ。

そう思って、あいつの走ってった方向に歩いていくと、あったのは美術館。

あいつの後ろ姿が見えた。やっぱりあっちに入っていくんだ。

裸婦画展がやってるって? あいつそんなの見るのか?

まずはからかってやるかな。と思って普段は全く入らないようなレンガの建物に並んで入り、あいつを探した。

どーでもいい花とか風景とかの絵を突っ切って、あいつを探す。

どこだ。ん? 

あ、でも裸婦画展がやってるなら、あいつはまずそこに行ったんじゃないか? と探す。

うぜー化け物みてえな石像を蹴っ飛ばしたくなる。

あー、どこだあんのやろ!

しかもなんだ。裸婦画って、”イソベイソベー”のエロ画像かよ!

マジかよつまんねえ!

その場でマジ切れしそうになったが、その時にやっとあいつを見つけた。

っしゃあ。憂さ晴らしも兼ねて楽しませてもらうぜ!

っと。おい?

あん? おい。

なんだこいつ。

美人な彼女か?

と思ってたらオイ。

平瀬恋?

マジかよ。

平瀬恋とこのクソガキが一緒にいるのかよ。

信じらんねえな。

おもしれえ。

上手くいけば、こいつの目の前で彼女を奪うどころじゃねえ、学園の女神を俺のモノにできるってことじゃねえか。

余計にやる気が出てきたじゃねえか。

とりあえず冷やかしてやれ。


「町のベストカップルにしちゃあ、アンバランスだなオイ」

-----

「二人でエロ画像見に来たのかよ、私達もこんなセックスしましょーってか?」

「子供は何人作るんだ?」

「結婚式は緑の丘の上か? なあ、ははっ」


最悪だ。

海藤先輩に見つかってしまうなんて。

平瀬先輩を前にして、何もできないところを見せたくない……昨日みたいな勇気が欲しい。

平瀬先輩はと言えば……笑顔!?


「海藤君、楽しそうですね。あなたが美術に興味を持っていたなんて意外です」


ホントに楽しそうに話しかけてる!? さ、さすが女神。

それに対して海藤先輩は、一瞬えっと言うような顔をしてからまた一瞬顔を引きつらせ、やっと平静を取り戻したかのように笑った。

平瀬先輩のと違う、最低な下衆の笑顔だ。

その下衆な笑みを作る口から、次にどんな嫌な言葉が出てくるだろうと身構えた。


海藤の思考安価 >>305(セリフ及び直後の行動をそれぞれ)

周囲(モブ)の行動 >>307-309

今回ここまで。

安価取る人は一応 >>1>>33(の最後の行)のLRをもう一度読んでほしい。あと弘は高等部。

警備員が注意に

余所見をしたせいで足をぶつけ大声で痛がる

>>308 再安価↓ LRを読んでからの安価取りをお願いします

「最近な……最近美術に興味があってな、平瀬が知ってるなら教えてもらいてえなと思ってよ」

「え、ええっと……」


海藤先輩がなれなれしく、平瀬先輩の肩に手を置く。

やめてください、と言いたかったけど足がすくんでしまう。

平瀬先輩も口は笑ってるけど、目が困ってえる。

そして半歩ほど後ずさって、ぼくのほうを見た。

う。やっぱりぼくが何かしなくちゃいけない……よね?


「お客様、館内では静かにしてください」

「ん? ああ、ちょっと知り合いがいたからよ。ちょっと話してるだけだよ」


警備員の人が注意しに来てもまったく気にしない。

他の人達もこっちを見てるし、中にはひそひそ話してる人もいる。

それに気づいてか気づかずか、海藤先輩は態度を変えようとしない。

そしてまた平瀬先輩の顔を見て、口を開く。

うねるような赤い舌……その表面を覆うぬるりとしてそうな下品な唾が、電気に照らされ光を放つ。

最低の光だった。

「なあ、平瀬、いいだろ?」

「ごめんなさい。今日は緑谷君と見て回ることになっていますから」

「ん?」


平瀬先輩はやっぱり女神だ……!

こんな人にでも、満面の笑顔で切り返して、しかもぼくとの約束をちゃんと守ってくれるんだ!

顔が少し熱くなるのを感じる。

海藤先輩はと言えば、ちょっと呆然として口をへの字にし、平瀬先輩を見て……


……ぼくを、思いっきり睨みつけた。

「おい」

「は、はい!?」

「来いお前」


びっくりしたぼくに、追い打ちをかける乱暴な言葉遣い。

そして思いっきり首を掴んで、引き寄せてきた。

平瀬先輩があっと言う間に……ぼくはその迫力と痛みによる恐怖によってろくに抵抗もできずについていくしかなかった。

ぐいぐいとくる痛みと、海藤先輩の早い歩調のせいで、足早にならざるを得なくなる。

どこに連れてくつもりなんだろう?


「待ってください、ちょ、ちょっと!」


少し遅れて平瀬先輩が小走りで追いかけてくる。周りの人たちにごめんなさい、ごめんなさい、と頭を下げながら。

頭の上から海藤先輩が『へへっ』と笑うのが聞こえた。

何をするつもり……まさか、ぼくを人質にして先輩に何かしようと言うんじゃ……!!

連れてこられたのは、男子トイレだった。

全体が綺麗に磨き上げられ清潔が保たれたトイレの入り口に、海藤先輩は清掃中の札を置いた。

ぼくは未だに首根っこを掴まれ、本当に人質のようになってしまっている。情けない。

そして、平瀬先輩。ぼくらを追って男子トイレに入ってしまったことでか、少し顔が赤くあたりを見回している。

またしても海藤先輩の『へへへ』と笑う声が耳に障る。

どうしよう……どうしよう!

う。痛い! 首が痛いっ!

締め付けられる。どこを押さえれば痛くて苦しいかよく知っているかのように海藤先輩の指先がぼくの首を!


「けふ、く……くぅ゙」


変な声が出る。無理やり押さえつけられた喉から、変な空気が漏れているんだ。



「やめてください! なんでこんなことをするんですか!?」

「うるせえな」


思考安価 海藤 安価↓ 恋 ↓2  弘 ↓3

「だ……!」


先輩がくるりと背を向けた。

えっ?

少し、いやかなりのショック。え?

ぼくを、置いて逃げようとした……?

何かを叫ぼうとしていたようだけど、海藤先輩に呼び止められその声はかき消された。


「逃げてんじゃねえ! こいつを捨てるとか最低だな!」

「ち、ちがっ」

「うっせえ! 裸踊りしろ!」

「え!?」


平瀬先輩の顔が、一瞬で青ざめた。

それが今度は、少しずつ、赤くなっていく。

歯がカチカチとなっている。

当然だ。今の海藤先輩の言ったことは信じられないひとことだ。


裸踊りを踊れって……?

「そ、そんなことできません!」

「しなきゃダメだろ。お前は後輩を捨てて逃げようとしたんだぜ?」

「だ、だからそれは!」

「うるせえ!」


平瀬先輩は、奥の壁に移動するよう命令され、そこに立っていた。

どうにか恥ずかしい踊りを拒否しようとしているけど、海藤先輩は絶対に許そうとしない。

鼻息が荒い。興奮が見て取れる。

ぐぎっ、と頭の中で音がした。ぼくのこめかみに、海藤先輩が尖らせた人さし指がぐりっと食い込んだからだ。

『いぐっ!』とカッコ悪く叫んだ。

ものすごい痛みだった。

この時ぼくは、いや……すでに。一瞬だけ心に宿った最低な想いをより大きくしていた。

平瀬先輩を犠牲に、ぼくだけは助かりたい……と。


「ほら、脱げよ。真っ裸の素っ裸だぞ? アクセサリーとか一つもつけんじゃねえ、人間やめて野生動物になるんだよ」

「そ、そんな。そんな……!」

「嘘、嘘、嘘……」

「嘘じゃねえよ早くしろ。あとでけえ声とか出すんじゃねえぞ。わかってるよな?」


真っ赤な先輩の顔。目には涙が潤んでる。

でも、ぼくを見捨てようとした人。

好きだと思ってたのに、こんなのって。

いい人だと思ってたのに、こんなのって。

ぼくは最初人質にされた時から、こう言えたらカッコいいって思ってた。

『俺のことはいい! 先輩は逃げろ!』って。

でも、そんな必要、この人にない。

だって、そういう前に逃げた。逃げようとした。

ぼくがその言葉を言いさえしなければ……いや。

むしろ、言ったらどうだろう?

ぼくがそう言ったら、むしろ罪悪感のようなものから逃げられなくなるかも……!?

胸の中に、どんどん黒くどろりとしているものが注がれる感触があった。


--------

助けを、呼びに行こうと思った。

なぜ自分でそうしようと思ったのかわからない。

たった一つのチャンスだったのに。

ただ大声を出せばそれでよかったかもしれないのに。

背を向けてしまった。

走って、誰かを呼びに行こうとした。

混乱したせいだったのだろうか。

そして、この命令。

まるで悪魔。

私に、私に。

裸踊りを踊れ、だなんて。

誰だってそんなこと嫌に決まってる。

ある年齢を過ぎた女性ならそれはなおさら。

でも、緑谷君が捕まって、今にも泣きだしそうな顔をしている。

拒否すれば、あの悪名高い海藤さんの手にかかって……最悪の事態もありうる。

どうして、どうして。

あんな惨めな過去を背負っている私に。

あの屈辱の日々をやっと抜け出せた私に。

今日また、さらなる悲劇の扉が開かれようとしている。

ああ、ああ。あああ。


その時緑谷君が、言った。


「ぼ、ぼくはいいから先輩は許してください」



……あああ。


恋の思考安価↓2

もう、いっそ我を忘れて泣き叫びたい……そう思った。

確かに涙は出てくる……だけど、だけど。

そんなことをして何になるの?

そんなことをしたら、身を挺して私を救おうとしてくれる緑谷君がどんな目に遭うか。

私が従わなかった時点で、彼はきっと怪我をするだろう。

もう、一つしか答えはない。

最悪……ではない。

だって、彼を救える、

私自身が恥をかいて、悪魔のような男……海藤が、さらに深みに落ちることになっても。

私が助かって、緑谷君が暴力を受け、海藤が罪を重ねる。

それよりは、まし。

そう、ましなの。

最悪だけは避けられる。

見捨てることだけは絶対にできない……絶対。

私の手から、赤いバッグが落ちた。どさり、と無機質な音がした。

ワンピースに手をかけた。

お気に入りの……去年の誕生日にプレゼントされた白いワンピース。

季節外れよ、とお母さんが笑って、お父さんがそうかー?と頭をかいて。

するすると、肌の上をすべるようにして裾が上がっていく。

ひざ下からあっさりと感触が消え、膝を通り……う。

手が止まる。


「なんだよおい?」

「せ、先輩」


ここから上に、上げたら。

ああ。あああ。

あの日……あの日の屈辱が。あの日の屈辱が。

震える。目の前が滲んでいく。

なんで、なんでいつもこうなの。

私の人生は……ああ、よみがえったはずの私の人生が。

また、終わる。

スカートの裾が、おなかを叩いた。

パンツを見せた。男の人二人に。


「ピンクか。色気ねえの穿いてんな」

「先輩の……」


前から、ごぶっ、と生唾をのみこむ音が聞こえた。

そこまで行ったらもう、私がワンピースを捨てるまで時間はかからなかった。

パンツを見せるまであれだけ長かった時間が。

あきらめと言うものかもしれなかった。

ただ脱ぐだけじゃない。このあと、踊る。

首輪をかけられ吠えさせられ、駆け回らされたあの時のように。

そう……私はペットになった。

中学の夏休み。

同級生に合宿と騙され、離れた地でクラス全員のペットになった。

動物扱い。

ペット扱い。

いや、叩かれたり蔑まれたり。動物以下だった。

排泄も自由にならない惨めな日々……。

そこから解放された筈が。ああ。ああ。

ブラを外した。

ぼうん、と胸が音を立てて、上に下にと揺れた。

外す動作が速かったせいで、その勢いで揺れたのだ。

ああ、情けない。悪人により喜びと楽しみを与えてしまった……。



思考安価によるセリフ 海藤下2  弘下4

>>332が連取りなので再安価↓

「愉快愉快」

「助けてもらってるのに……ああっ」

「ん? オイ平瀬、こいつ勃起してっぞ!」

「わ、わあっ!」

「!!」


なんてことなの。

緑谷君も男の子なのね……こっちは、君を助けるためにパンツ一枚とサンダル一足の姿を晒しているのに。

両の胸を両腕で必死に抑える姿はきっと滑稽。

悪い人には笑われ、いい子だと思っていた後輩にもおかしな目で見られ……なんてみじめ。

友達だと思っていたはずの皆にも笑われたあの時もそうだった。

裏切り……そう、裏切り。

まるで私が悪いことをしたように囃し立ててきたり、恥ずかしい部分をじっとみて……あんなことをしたり。

緑谷君もそうなの? ……そうなの?

顔が涙に覆われている。

それでも私はサンダルを脱いだ。

かたん、かたんと、トイレの床にサンダルの底の固い素材が落ち、打つ音。

最後の一枚……これだけは嫌。本当に嫌。嫌……!

裸足の足に、冷たい床の感触がみじめに伝わってくる。ああ。


「へへ、なんだお前変態じゃねえか!」

「ち、違っ!」

「ほほー、ならなんで見てるんだよ? 勃起してんだよ! おら!」

「ぎゃうっ!!」




海藤が緑谷君のズボンの中に手を入れて、たぶん、あ、あれ……を、握っている!

やだ。

そんなひどい。

きゅ、急所……でしょ!?


「やっぱりな。小さいながらも硬くしやがって。おめえも見てえんだな裸踊り。おい、なあ!」

「あ、あああ、ぼ、ぼくは見ない! 見ないから! だからもうっ!」


あ。

緑谷君が……目を閉じた。

海藤はすっと手を、緑谷君のズボンから抜き出した。

その手を洗いもせず、緑谷君のシャツで拭ってから耳をつまんだ。

そしてまた私を見て、嫌な笑顔を作ってみせた。


「こいつ見ねえってよ。もったいないなー。超貴重シーンだってのに」


緑谷君の耳をひっぱる海藤。痛そうなうめき声をあげる緑谷君。

私のために目を閉じてくれた彼を救うため……そして、彼を疑った私を罰するため。

やるしか、ない。


……裸踊り。


意を決した私は、右手でパンツを掴み、左手を前に持っていく。

胸は完全に出てしまった。

ひひ、といじわるそうな笑い声が耳にいやな重さをかけてくる。

手が止まる。

でも、それでは終われない。今からごねて時間をかけてしまっては、誰か別の男の人までやってくるかもしれない。

そうなったら……早く終わらせるのが最善策!


「う、は、はああっ!」


おろした。腿まで。

パンツを下した。

人前で。

自分から。

ああ。

ああ。

ああ。


「っしゃああああ! 素っ裸だあっ! はやく完全に脱ぎ捨てろぉ!」

「わ、わかって……ます」

「せ、先輩……」


足元からパンツが完全に去り、ただのぬのきれと化した瞬間、私は頭の中が真っ白になった。

ものすごい脱力感と喪失感……そして屈辱感。

どうして私がこんな目に?

悪いことをしたの?

どうしてなの?

誰か教えて……

教えてくれる人なんて、いない。

もうやるしかない……やるしか。

これから踊る。踊ります。

裸踊り。

笑顔を作って脚を開き、膝を曲げて。

右手を授業の、質問をする小学生のように上に伸ばして。

それを、アレにむけて、空気を縦に切るように下へ降ろす。

それが……あ、アソコの前にたどり着いた瞬間、今度は左手を上げる。

失敗したら、見えてしまう。少しのタイミングのズレも許されない。

左手がまた一番上まで上がった時。すぐに同じルートで戻す。

左手で前を隠したら、右手を上げる。アソコを隠す。

右手を上げたら、降ろす。アソコを隠す。手を上げる。必死にアソコを隠す。

交互に自分の股間を隠す。ちょっとでも失敗したら、股間丸出しの大恥をさらしてしまう。

海藤は笑いながら、当然のようにスマホで撮影。緑谷君は真っ赤になったまま、必死に目を閉じている。

私は裸踊りをしている。



私は裸踊りをしている。

「おい、腕を上げる時に足も上げろ! 四股みてえに高くな!」

「そんな!」

「そうでなきゃ裸踊りとは言えねえんだよ! あとな、笑えよ! それに掛け声だ! 忘れてんじゃねえぞ!」

「あ、あああ……はい」

「せ、先輩……」

「は、はいっ、はいっ、はいっ、はい!」

手を上げ脚を上げ……バランスが崩れる!

胸に腕が当たってしまう! タイミングがずれる!

声を上げると、みっともないけどタイミングが直る。

こんなことで少しでも喜んでしまうなんてわたしのばか!

ああ、あああ。

笑っているのよね。海藤に文句も言われない。だからたぶん、笑っている。

自らの意に反して、楽しいとき、うれしいときにする筈の顔を作っている。

それがどれだけ悲しいことか。

時間がたつにつれ、嘘でしょ、嘘でしょう? 私の頭の中でその一文が駆け巡る。

涙なのか汗なのか、胸やお腹や、腕やつま先に、雫が垂れる。

ぐるぐるとすべてが回っている。すごく速く。

右に回って左に回って、ああ。ああ。

胸が揺れる。顎に当たった。

汗が口に入ってしょっぱい。涙なのかもしれない。

ひんやりした床の感触が足の裏に……嫌。嫌。

その時、海藤が口を大きく開けた。


「よーし」


終わった!? ふう、ふう。助かったのね……。私は両手で前を抑えて、両足で立った。

足元に散らばった服や下着を目で確認。左手を伸ばそうとした、その時。

海藤の嫌な声がした。


「こっから本番だ。お前も見ろ。でなきゃ動画晒す」

「え」


……え?

海藤が、顔の下の緑谷君に対して言った言葉だった。

うそ、でしょう?


踊り直し。

疲れと、結局見られる屈辱感。卑劣な工作による驚きと失望。

私はやり直して数秒で、両手を上げてしまった。

がに股で、万歳。そんな無様な姿をしっかりと映像に残されてしまった。

どんな顔をしていたのだろう。私はどんな顔していたのだろう。

あああ、あああ。口から声がこぼれてくる。

言葉にならない声。

私はこの、ひどいポーズのこのまま、そんな惨めで無様なポーズのこのまま、口と目が大きく開いて下を覗き込んでしまうという最低な格好で。

私は固まった。


思考安価

海藤 ↓ 弘↓3

-----

思ったよりはるかに最高だぜ。

学園の女神による裸踊り。

ぎこちない笑顔と、エロくぶるんぶるんに揺れ廻る胸やケツ。

みっともねえ。

人間を捨てた奴。

スクールカースト最上位から一気に最下位。

あり得ねえ無様さ。

笑いが止まらねえや。

くく、くくく。と。

どうせなら大声出してえとこだが今回はそうはいかねえ。

他の奴が来たら危険だからな。ちっ。場所を間違えたぜ。

このガキに恥をかかせるのなんてもうどうでもいい。

平瀬恋を俺の手籠め……いやもう、奴隷にする。何をしてもいい何を言ってもいい、奴隷にだ。

失敗させて、この場で床にウンコさせてやる。小便もだ。

失敗させるにはどうするか。

手を出すのもいい。邪魔をしないとは言ってない、と言えばいい。

だがそれだとこのガキが邪魔だ。この間みてえに計算外の行動をとってくるかもしれねえからな。

あ、そうだ。

こいつにも見せるって言えば平瀬は動揺する。

よし。丸出しだ。

最高のピンクが目の前に現れた。



うまくいった。平瀬はがに股バンザイのマヌケなカッコに、口と目を思いっきり開いて驚く無様な表情。涙と汗で全身濡れ濡れになって、その場で固まった。



「何失敗してんだよばーーーか」

「あ、あ、あ、あ、ああ、あああ」

「失敗の罰だ。お前ションベンとウンコしろ。トイレにじゃねえぞ、この床にだ!」

「や、やめろぉおおおお!!」

「あん!?」


ちっ、しまった。ガキが騒ぎ出した。これが計算外の行動だ。

他に誰か来るかもしれねえってのによバカが。

だがちょっと腕を振り下ろせばそれで終わりだ。

ごっ、とガキの背骨を叩く音。へ、これで……あん?!


「わ、わあああああーーーーーーーーーーーっ!!」


おっぱい!? いや、平瀬!?

-----

緑谷君が、勇気を振り絞った時。

私の中に、熱い何かがたぎった。

あの時から出すことのできなかった勇気……それが足を、手を動かした。

私はわああーっ、と叫びながら、裸のままぺたぺたっ、と走って、緑谷君を叩いた海藤を突き飛ばしていた。

からあっ、と、スマホが床に落ちた。


「あ、ああっ、ああああっ!」


スマホを拾った。


思考安価 恋 ↓2  海藤 ↓4  弘 ↓6

スマホを拾って……それなのにもう一回、『スマホを拾わなきゃ』と思ってしまった。

その一瞬で隙ができていたら危なかったけど、海藤はまだ立ち上がれていなかった。

そんな海藤の上体に、緑谷君がつかみかかっていた。



-----

クソふざけやがって!

スマホに気を取られてんだろ!? 服奪って取り返してやるぁっ!

と思って立ち上がりながら振り向こうとした時だった。

ガキが俺の左腕あたりにしがみついてきやがった!

何だこの野郎!


-----

海藤が倒れ込んで、先輩がスマホを拾った。

そのまま少し固まる先輩を見ないように背を向けつつ、海藤の左腕に食らいついた。

海藤はすごい力だった。

右手でぼくの顔をがっしりとつかみ、首をもぐ勢いで押し付けてくる。

そのまま僕はトイレの床に転げた。立ち上がる海藤。

海藤は先輩への方向を、目を見開き歯を食いしばっている。

すごい怒りの形相だった。

海藤が走り出したその瞬間、ぼくは腕の力を全部出して、たった。

跳ね起きた。

そして左手を掴んだ。両手で、全力で。

全力で。

海藤が食いしばった歯の間から『い゙っ』、と声を噴き出す。

体ががくついている。今のでバランスを大きく崩したのだとわかった。

この後どうしたらいい?

先輩がスマホを壊したり、トイレに沈めたところで、ぼくがまた人質にされて先輩が裸踊り……どころか、う、うんちをさせられることになる!

それだけは避けなきゃ! どうしたらいい!?

僕の力でこいつを倒せないのか!?

どうしたら、どうしたら!

海藤の脚がぼくのおなかに深く入り込んだ。

かばっ、とぼくは口から汚い何かを吐き散らして倒れこんだ。

口の中が苦い。

息が苦しい。

横になった景色の中で、海藤の黒いズボンと、先輩の白い肌が動いてる。

先輩、すっぽんぽんでいじめられてる……。

ピンクの髪を引っ張られて、大事なところをさすられてる。

ひどい。ひどい。やめて……!


「やめてっ、ああっ、痛い! やめっ!」

「流石にいい体してやがるじゃねえかよ! へへへ、あはは!」

「お願い……っ」


先輩の涙がこぼれる。ぼくの視界もいつの間にかうるんでいた。


「許しを請うなら土下座だろ。そしたらウンコとションベンして、それをなめて掃除城しろ! その動画流してやる!」

「ど、動画まで!?」

「ああ! 断ったら……は、ははっ、そのガキ、殺す」

「……っ!」


ぼくを、殺す?

うわあ。うわあ。

うわあああああああ。

ぼくは、>>363(思考安価)していた。

金的

蹴っていた。

思いっきり。

後ろから。

それによって海藤が先輩をどうしようとしたのか、容易に想像できた。

後ろ向きに、仰向けに倒れ込んだ海藤のズボンのチャックが大きく開いてボタンが外れ、パンツが下がって大きなアレが丸出しになっていたからだ。

天井に向かってそれは、真っ赤にいきり立っていた。

怪物のようなアレだった。


「いやもうほんとに……」

先輩が手で顔を覆っている。自分の体を隠すのも忘れてそれを見ないようにするところは……かわいいかも。

でも、服を着たほうが……う。

綺麗だ。きれい。

白い肌にむっちりした肉付き……って考えてる場合じゃない!


「せ、先輩! 早く服を!」

「あ、そ、そうでしたいやんっ!」


いやんっ、って!今時いう人あんまりいないと思うけど……その言い方やあどけない感じがものすごく……イイです。

あ。ズボンに染みができちゃった……そんな感触を覚えつつぼくは海藤を見張った。

海藤はおお、あああ、とうなるような声を上げていた。

タオルで手と足を縛っておこう。


そのあと、先輩は服を着た。

白いワンピースがやっぱり似合う。素敵だよ。

頬が熱くなって胸が暖かくなる。

さっきのことが嘘みたいに思える。やさしさに包み込まれ……だから考えてる場合じゃないって。

先輩と一緒に、海藤のスマホを持ってその場を去っていく。

前が人に見られないように、不自然ながらも手の位置に気を付けて……と。

で、今回の事は警察に言おうかと言ったけど、先輩は大事にしたくないと言った。

確かに、警察とは言え人にバラされたくない事だものね。

……もう二度とここに来ることはないと思う。たぶん。

そう考えたと同時に気づいた。ぼくと先輩のデートは、これで終わりだってこと。

海藤のせいで最悪のまま終わってしまったんだ……はあ。


いつの間にか外は夕焼けだった。

白いワンピースが真っ赤に。シルバーアクセがレッドメッキに見える。

家へ帰ろうとするサラリーマンの足音がけたたましく思える。

その雑踏の中で、先輩が、言った。


>>367>>369』って。



今回ここまで。

助けてくれてありがとう

私なんかの為に...ごめんなさい.....

悲しそうだった。

目に涙が潤んでいるそんな顔。

でもわかる。

自分があんな姿になったから泣いているんじゃなくて。

ぼくが、あんな悲惨な現場に巻き込まれた。

みじめな姿を見せてしまった。

だから、ごめんなさい、と謝って頭を下げた。

それが恋先輩だから。

ぼくは、何も言えず。


言葉に詰まったのは、先輩が嫌いになったとか、痛ましく思ったからじゃない。

ただ。綺麗だったから。

寂しい夕焼けを背負って、目に涙をためる先輩の姿は言葉を失うほど美しかったんだ。

ぼくは、何も言えない。

何も言えなかったけど、一緒に歩いた。

月曜日。小鳥の歌う学校への道。

勉強がすごいらしい先輩とか、武道全般すごいっていう巨漢の先輩とか、おかっぱ頭の子とかやたら細い子とか、明らかに女の子っぽいのに男子の制服着てる人とかがなんとなく視界に映っては消えていく。

隣で歩いてる勇気の声が全然入ってこない。

オイ聞いてんのか、と大声で言われて、やっと「うん」と応えた程度。

あれから……何一つ意識した記憶がない。何かしたんだっけ?

まるで急にこの時間になってしまったかのように、心の中での動きがなかったんだ。


「あ、そうそう。こないだの土曜に海藤先輩が警察に捕まったらしいぜ?」

「え」

「なんか全裸で美術館のトイレにいて、それを見つけた警備員をぶん殴ったらしい」

「どういうこと」


後で調べたけど、別に全裸ではなかったらしい。あの後、きっといら立ちに任せて警備員さんに暴力を振るったんだろう。

……風が吹いた。

ピンク色の、綺麗な風。

振り返ったその顔は、いつもと変わらない笑顔----。

終わり。

個人的理由ですごい延びたうえ、結局終わっちまってすまん。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom