ハルヒ「キョンが女の子だったら良かったのに……」キョン「……は?」 (12)

Rじゃない方で投稿していたのですが、規制されてしまったらしく、書き込めなくなったのでこちらに投稿します……

タイトルの通り、性転換モノです。
苦手な方はご注意下さい。

以下、本編です。

二月も下旬となり、ようやく氷漬けになった北半球が解凍される兆しが訪れた……かのように見せかけて、朝晩はまだまだ冷える、そんな曖昧な季節。

今日も今日とて、部活動という名目で何をするでもなく部室に居座り、俺はひたすらに怠惰を貪っていた。

いや、何をするでもなく、というのは言い過ぎか。

朝比奈さんが淹れてくれた玉露を啜っていると、古泉が例の如くニヤニヤと気持ちの悪い笑みをこちらに向け、何やらボードゲームの駒のような物を並べ始めたので、俺は嫌々ながらその対局に付き合わされていたのだ。

古泉「んふっ。やはりあなたはお強いですね。さすが、と言っておきましょうか」

負けた癖になんでコイツはこうも上機嫌なんだ?

いちいち気持ちの悪いコメントにげんなりした俺は、勝っても負けてもニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべるこの不審人物をこれ以上視界に収めることは目に毒だと判断し、目を逸らす。

キョン「んん~……」

長時間盤上を俯瞰していた為、すっかり丸まってしまっていた背筋を伸ばし、首をコキコキと鳴らしていると、ぶるりと背筋が震え、自らに訪れた生理現象を知覚した。

ふと、時計を見上げると、そろそろ下校時間。
帰る前に、出すものを出しておくことにしよう。

そう思い、席を立つと……

古泉「おや?トイレ、でしょうか?ならば、僕も同伴させて頂くことにしましょう」

古泉が連れションを希望してきた。

そして、この一言が、事件の発端となるのだった。

ハルヒ「ねぇ、それってもしかして……『連れション』ってヤツ?」

古泉と連れションなどまっぴら御免だった俺が、どうやってそれをを阻止しようかと考えあぐねていると、ハルヒは唐突に目を輝かせてそう聞いてきた。

もしかしても何も、これが連れション以外に何に見えるんだ?
おっと、男子生徒2人がトイレの個室でくんずほぐれずなんて不埒な妄想はやめて貰おうか。
何せお前は願望を実現出来る能力があるんだからな。

そんな願望が実現されようものなら、俺はその瞬間に生きることを諦めなければならない。

ハルヒ「別にあんた達で変な妄想なんてしてないわよ。あたしはただ、連れションに興味があるだけ」

半ば呆れたようにそう言い切ったハルヒに、俺は胸を撫で下ろしたのだが……連れションに興味があるというのも如何なものだろうか?

ハルヒ「別に何もやましいことはないわ。一緒にトイレに行って、たわいのない会話をしてみたいのよ」

ふむ。
男の俺からすれば、そんなこと、大して面白いことではないと断言出来るのだが、女のこいつにそれをわかれと言っても無理な話か。

ならば、こういった趣向はどうだろう。

キョン「だったらお前も、朝比奈さんや長門を誘ってトイレに行って来たらどうだ?女だって連れションくらい出来るだろう」

ハルヒ「はぁ……あんたって、本当に馬鹿ね」

我ながら冴えた提案だと思っていたら、ハルヒは嘆息し、にべもなく却下した。

キョン「何が不満なんだよ。朝比奈さんや長門とは連れション出来ないってのか?」

頭ごなしに否定されたことに加え、今もこの身を苛んでいる尿意で余裕がない俺は、苛立ちを隠さずに理由を問う。

すると、ハルヒは腕を組み、顎を突き上げると、勝ち誇ったような笑みともに高々と言い放った。

ハルヒ「あんたってば、なんにもわかってないんだから!いい?女子トイレってのは全席個室なの!だから、用を足しながら気軽に話したり出来ないってわけ」

なるほど。
これぞ、ぐうの音も出ない理由だろう。
だが、敢えて言おう。

そんなこと、知るか。

キョン「なら諦めるんだな。悪いが、こればっかりは男の特権だ」

古泉「そうですね。この時ばかりは、外見上の性別が男で良かったと思いますよ」

外見上の性別って……
中身は違うとでも言いたいのか?

いよいよもって古泉の脅威度が増してきたこともあり、そんな脅威など感じることすらお断りのいたってノーマルな俺は、ため息混じりについこんな妄言を吐いてしまった。

キョン「俺が女だったら……ハルヒ、お前とも連れションしてやれるんだがな」

冗談のつもりだった。
しかし……

ハルヒ「キョンが女の子だったら良かったのに……」

俺の言葉に同調したようにハルヒは独りごち、その瞬間、古泉は珍しく焦ったように俺の二の腕を掴み、何やらアイコンタクトを送ってきた。

キョン「……は?」

しかしながら何を伝えたいかわからない上に、二の腕を掴むその力が思いのほか強く、その痛みと気色悪さから古泉を睨むと、奴は掴む力を緩め、場を取りなすような口調でハルヒに声をかけた。

古泉「涼宮さん、貴重な男性団員が僕だけになってしまっては少々困ります。今後の活動に支障を来す恐れが……」

ハルヒ「それもそうね……」

古泉の具申にハルヒは納得し、古泉だけでなく固唾を飲んでやり取りを見守っていた朝比奈さんや長門も肩の力を緩めた。

何故かは知らないが、俺以外の連中は相当緊張していたようだ。

しかし、そんな弛緩した空気をぶち壊すように、ハルヒはポンと手を打ち……

ハルヒ「なら、いっそのこと、団員全員の性別を入れ替えるってのはどうかしら?うん!とっても面白そうだわ!あたしも一度は男になってみたかったのよね~」

状況は加速度的に悪化した。

ここまでくれば如何に鈍い俺だって、団員達が何を恐れているのかを理解できた。

先述した通り、涼宮ハルヒは願望を実現出来る能力がある。

つまり、古泉達はその能力で此度の願望が実現されるのではないかと恐れているのだ。

なるほど。
それが実現したら確かに恐ろしいことだ。
だが、俺から言わせてみれば、他の団員達は少々過保護過ぎると思うし、大変大袈裟である。

考えてもみろ。
いくらハルヒと言えども、まさかこんな馬鹿げた願望を本気で叶えたいと思っている筈も無かろう。

だから、適当な落とし所さえ作っておけば、それだけで十分さ。

キョン「……確かに、面白い考えだな」

ハルヒ「でしょ!?やっぱりあんたもそう思うでしょう?」

ハルヒに同意した俺に向かって目を見開き、息を飲む団員達。

そんなに心配するなよ。
大丈夫だって。
何よりそろそろ尿意が限界だ。
この辺で事態を収束させて、トイレに行かせて貰おう。

キョン「そのアイデアは、次の映画に活かそう。きっと一作目よりも良い映画になるだろうよ」

古泉「上手くいきましたね」

キョン「ふん。毎度毎度、大袈裟なんだよ、お前は」

難なく窮地を脱した俺達は現在、絶賛連れション中である。
もちろん、古泉と連れションなど、不本意なのは言うまでもないことではあるが。

古泉「いいじゃないですか。もし本当に僕達が女性になっていたら、こうして並び立つことは出来なくなっていたのですよ?共に連れションをすることが出来る喜びを噛み締めましょう」

キョン「お前と並び立つなんて怖気が走るし、連れションをすることに対しては嫌悪感しか感じないな。これならいっそ……」

いっそ……本当に、ハルヒの言う通り……

古泉「おっと。それ以上は胸に秘めておくことをお勧めします。万が一、ということもありますからね」

わかってるよ。
いちいちうるさい奴だ。
というか、顔が近い。
男同士の連れションの際は、間を一つ空けるというマナーを知らんのか、こいつは。

古泉「……ふむ。安心しました。どうやら性転換は本当に不発に終わったようですね。立派なモノです」

キョン「何見てやがる!」

不覚だ。
意図的に古泉の存在を意識外に追いやっていたせいで、視線の先への注意が疎かになってしまっていた。

素早くイチモツを仕舞い、さっさと手を洗う俺の背に、不愉快な愉悦を含んだ笑みがまとわりつき、出し終えたばかりだというのに、またしても悪寒を感じる羽目となったのだった。

てす

規制ではなく、本文が長かっただけだったようなので、Rじゃない方での書き込みを再開します。
不慣れで申し訳ありません。

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