提督「僕は今日もレディの君とデートをする」 (94)

暁「で、デート?」

提督「うんそう。デート」

暁「……暁と?」

提督「そう。君と」

暁「……」

提督「……」

暁「し、仕方ないわね! 暁はレディだから付き合ってあげるわ!」

提督「よかった。ありがとう」

暁「それでどこに連れて行ってくださるのかしら?」

提督「うーんと、そうだね。どうしようかな」

暁「司令官ってば、レディを誘うんだからちゃんと行き先を決めてないとだめじゃない!」プンスカ

提督「すまないね。じゃあ、バーに行くというのはどうだろう?」


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暁「え? バー?」

提督「うん。バー」

暁「えへへ、バー、かあ。とってもおしゃれでレディだわ!」

提督「お気に召したようで何よりだよ」

暁「それでいつ行くの?」

提督「そうだな。思い立ったが吉日ともいうしこれから、なんてどうかな?」

暁「わかった! 準備してくるわね!」タタタ

(……)

暁「わあ……。ここがバーってところなの?」キラキラ

提督「そう。海軍学校時代はたまに来てたんだ」

暁「いきつけってやつね!」

提督「格好良く言えばね」

暁「いきつけのバーがあるなんて司令官はとっても大人ね!」

提督「大人だからね」

提督「そういえば、君はお酒を飲んだことがあるのかい?」

暁「と、当然よ! レディの嗜みのひとつですもの!」

提督「よかった。安心したよ。君にはまだ少し早いかもなんて思ってたんだけど、杞憂だったみたいだね」

暁「む。またそうやって子ども扱いしてー!」

提督「とんでもない。僕はお子様をバーになんて連れてこないよ」

暁「そうなの?」

提督「ああ。まだ捕まりたくはないからね」

暁「……? どういう意味?」

提督「僕は今日一人のレディをバーに誘ったってことさ」

暁「それならよろしい!」

提督「僕はブラッディメアリーにしようか。君はどうする?」

暁「うーんと、そうね」

提督「……」

暁「えーっと」

提督「わからないのなら、聞くといいよ」

暁「そ、そんなわけないじゃない! ただ飲みたいものがありすぎてどれにしようか迷ってただけよ!」

提督「そっか」

暁「でももう決まったわ! この青い珊瑚礁をいただくわ!」

提督「わかった。じゃあ注文してこよう」

提督「乾杯」

暁「乾杯!」

提督「……」ゴク

暁「……」ゴクッ

提督「うん。おいしい。そっちはどうだい?」

暁「……と、とってもおいしいわ!」

提督「そっか。君はミント味は平気なんだね」

暁「ミント?」

提督「わかりやすく言うと歯磨き粉の味だよ」

暁「……あ! ほんとだ! 歯磨き粉の味だこれ!」

提督「うん。僕はどうもミントが苦手なんだ」

暁「だめよ司令官。好き嫌いしたら大きくなれないのよ」

提督「そうだね。肝に銘じておくよ」

暁「……」ゴクゴク

暁「……」トン

提督「あれ? もう飲んだのかい?」

暁「うん。結構すっきりしてて、ゴクゴク飲めちゃった」

提督「でもそれは結構強いお酒だからね。気をつけなよ」

暁「……? 大丈夫よ! 鍛えてるから負けないわ!」

提督「ははは。それは頼もしいね。さて、次は何にする?」

暁「えーっとそうね……」

提督「……君がよかったら僕のオススメでも飲んでみるかい?」

暁「オススメ?」

提督「うん。カシスソーダって言うお酒なんだけど」

暁「……」ゴク

提督「どうだい?」

暁「あ、おいしい」

提督「それはよかった」

暁「司令官のオススメだけあるわね!」

提督「……実は僕が君にそれを勧めた理由は味だけじゃない」

暁「そうなの?」

提督「うん。花に花言葉があるように、カクテルにも酒言葉というものがあるんだ」

暁「ふーん」

提督「たとえば今僕が飲んでいるブラッディメアリーは断固として勝つという意味なんだ」

暁「へー、かっこいいわね!」

提督「だから海軍学校時代は景気付けによく飲んでたんだ。試験の前とかにね」

暁「験担ぎね! 結果はどうだったの?」

提督「もちろん試験の前なんかに酒を飲んでるようなやつがいい成績を収められるわけがない。結果はぼろぼろで上官にひどく怒られたよ」

暁「あはははは! やっぱり!」

暁「でも司令官はすごいね! 何でも知ってるのね!」

提督「そうだよ。僕は優秀な軍人だからね。クラウゼヴィッツもマハンもリデル・ハートも孫子も知ってる。僕は何でも知ってるんだ」

暁「よ、よくわからないけどかっこいい!」

(……)

暁「……」ボー

提督「さて、もう一杯くらい飲んで帰ろうか」

暁「え? もう?」

提督「そろそろ夜も遅いからね。眠たい」

暁「しょうがないわね。司令官に合わせてあげるわ!」

提督「ありがとう」

暁「うーんと、それじゃあ何にしようかな。えーっと」

提督「どれがいいかわからないの?」

暁「そ、そんなことないし、お酒はレディの嗜みよっ!」

提督「じゃあそんなレディに魔法の言葉を教えてあげよう」

暁「魔法の言葉?」

提督「いいかい? まずはマスターを呼んでこう言うんだ」

「お呼びですか?」

暁「えーっと、……最後の一杯にしようと思うんだけど、私はお酒のことはよく、わからないの」

「左様でございますか」

暁「だからマスター。知恵を、貸していただけるかしら?」

「ええ、喜んで。レディ」

暁「えへへ……、ありがとう」

「それでどのようなものがご希望ですか?」

暁「えーっと、レディっぽいの……とか?」

「ええ、かしこまりました」

「どうぞ、ホワイトレディとコロナでございます」

暁「ありがとう」

提督「ありがとう」

暁「……」ゴク

提督「……」チビ

暁「……!! おいしい!」

提督「それはなにより」

暁「今日飲んだ中で一番おいしいかも! お酒っておいしいのね!」

提督「ああ、お酒は溺れなければおいしいものなんだよ」

暁「……」

提督「……? どうしたの?」

暁「なんでもない」

提督「最初から見栄を張らずに素直になったほうがおいしいものが飲めたかもしれないって?」

暁「!!」

提督「違うかい?」

暁「……気付いてたの? 暁がお酒なんて飲んだことないって」

提督「僕は何でも知ってるからね」

暁「最初のお酒も、強がって飲んでたことも?」

提督「ああ」

暁「そっか。全部バレバレだったのね」

暁「あーあ、知ったかぶって。レディ失格ねほんと」

提督「それは違うよ」

暁「え?」

提督「僕は何でも知ってる。だから君が今日強がってたことも、お酒を飲んだことがないことも知っていた」

暁「……」

提督「そして君がレディになろうと日々努力していることも知っている」

暁「!!」

提督「今日だって僕のためにレディであろうとしてくれたんだろう? デートだから」

暁「……結果はこんなだけどね。がっかりした?」

提督「そんなことはないよ」

暁「ほんとうに?」

提督「もちろん。さっき言い忘れてたけどカシスソーダの酒言葉を知ってるかい?」

暁「……? 知らないけど」

提督「あなたは魅力的、という意味なんだよ」

暁「!!」

提督「僕は誰でもいいからと君をデートに誘ったわけじゃない。君にお酒のおいしさを知ってもらいたかった」

暁「そう、なの?」

提督「うん。何より君とデートがしたかったんだ」

暁「ず、ずるいわよ。もう」

(……)

暁「……」スウスウ

提督(やっぱり寝ちゃったか)

提督(割と強いお酒を飲んでたからね)

提督(……)スタスタ

提督(……)スタスタ

提督(警察に呼び止められたらなんて言い訳しようかな)

提督「よいしょっと」

提督「結局おきなかったな」

提督「ニイサンマルマル鎮守府に帰還っと」

暁「……司令官」ムニャムニャ

提督「ん? おきてたのかい?」

暁「……」スヤスヤ

提督「……寝言か」

提督「……」

提督「おやすみなさい。暁」

バー編・完

暁「え? デート?」

提督「うん。デート」

暁「いいわね! 今回はどこに行くの?」

提督「そうだね。釣り、なんてどうだろう?」

暁「釣り? 私やったことないんだけど大丈夫かな?」

提督「大丈夫さ。僕も海釣りはやったことないからね」

暁「ぜんぜん大丈夫じゃないじゃないの」

提督「ネットで調べたところ太刀魚が今旬らしいんだ」

暁「太刀魚かあ」

提督「それで近くに太刀魚が釣れる所があるらしい」

暁「そこにいくの?」

提督「うん。道具は知り合いから借りてくる」

暁「でも未経験者二人で行って釣れるかなあ」

提督「わからない。もしも釣れなかったら暁の水平線を二人で見るプランに変更しよう」

暁「うーん。ま、それはそれでアリね!」

提督「ああ、そうだ。釣りに行くときは防寒具を忘れずに。寒いからね」

暁「わかった!」

暁「じゃーん! どう? 司令官」

提督「うん。どこから見ても立派な釣りガールだ」

暁「えへへ。似合ってる? 曙から借りたの!」

提督「ああ。とても可愛いよ」

暁「か、かわいいって……。もう! 司令官のバカ!」

提督「ははは。それじゃあ出発しようか」

暁「うん! しゅっぱーつ!」

(……)

提督「よし、ここらへんで釣るとしようか。足元に気をつけてね」

暁「うん。よいしょっと」

提督「さて準備しようか。えーっと」

暁「ふっふっふ。心配しないで司令官! 私がちゃーんと事前に太刀魚の釣り方をネットで調べてきたわ!」エッヘン

提督「頼もしいね。さすがは暁だ」

暁「まずはこうやって、糸を竿のわっかに通すのよ」

提督「なるほど」スイスイ

暁「それで糸に光るやつを通して針をつけるの!」

提督「こうかな」テキパキ

暁「できたわ!」

提督「よし。立派なものだ」

暁「あとは餌はドジョウとかがいいらしいんだけど……」

提督「ドジョウは高いからね。代わりにキビナゴを買ってきたよ」

暁「ありがとう! じゃあこれを仕掛けにくっつけて」

提督「外れないようにしっかりとつけておこう」グルグル

暁「完成!」

暁「いくわよ! 記念すべき第一投目! それー!」ブンッ

シュルルル

プチッ

ポチャン

暁「……」

提督「……」

暁「切れちゃったみたい」

提督「仕掛けの結びが甘かったみたいだね」

暁「ご、ごめんなさい」シュン

提督「かまわないさ。別にそれほど高いものでもないしね」

暁「よかった」ホッ

提督「どうやって結んだんだい?」

暁「えーっとこうやってギュ……って」

提督「固結びか。それじゃあちょっと弱いかもしれないな。いいかい? こうやってわっかをつくって、こう」

暁「んー、こう?」

提督「そうそう。上手だよ」

暁「できた!」

提督「よし」

暁「じゃあ気を取り直して、第二投! やあ!」

シュルルル

ポチャン

暁「やった! どうかな? どうかな?」

提督「素晴らしいよ。およそ完璧といえる投げ込みだ」

暁「えへへへ。やった」

提督「でも太刀魚釣りではそんなに遠くに投げないでもいいんだよ」

暁「そうなの?」

提督「ああ。彼等は近くにいるからね。だからこうやって」

シュ

ポチャ

提督「これくらいでいい」

暁「なるほどー」

提督「……」

暁「……」ソワソワ

提督「……」

暁「ねえ、まだかかんないのかな?」ソワソワ

提督「もうちょっとかな。釣りは待つことが大事なんだよ」

暁「そっかあ」

提督「そうだよ」

暁「……」ソワソワ

提督「……」

暁「あ! 見て司令官! 光ってるのが! スーってなってる! かかったの!?」

提督「ん? ああ。アタリだね。でももうちょっと」

暁「えいっ!」マキマキ

提督「あ」

暁「あれ? かかってない……?」

提督「うん。バラ、じゃなくて逃がしたんだね」

暁「……何が悪かったのかな?」

提督「そうだね。アワセ、えーっと。糸を巻くタイミングがちょっと早かったかもしれないね」

暁「そうなの? せっかくかかったのに逃げられちゃいけないと思って」

提督「彼等は警戒心が強いからね。慌てないで落ち着いて」

暁「難しいのね……」

暁「あ! 今度は司令官のがかかってるわよ!」

提督「そうだね。でもここであせっちゃいけない」

暁「そっか! 待つのね!」

提督「そういうことだよ」

暁「……」

提督「……」

暁「……」

提督「よし。そろそろいいかな」

暁「待ってました!」

提督「いいかい? こうやってゆっくり合わせて」クイッ

暁「うんうん!」

提督「こうやったら、ほら。餌だけなくなってる」

暁「釣れてないじゃない」

提督「今みたいにゆっくり待つんだよ」

暁「わかったわ! 待つのね!」

提督「行動派の君には少し退屈かもしれないけどね」

暁「ううん! レディは待つことも完璧なんだからっ! だから平気よ!」

提督「……そうだね」

(……)

暁「……! 来た! 来たよ! 司令官!」

提督「うん」

暁「……」ウズウズ

提督「……」

暁「……」ソワソワ

提督「……」

暁「……どうすればいいの?」

提督「軽く竿を立ててごらん」

暁「こう、かな?」クイ

暁「!!」

暁「な、なんか重くなった! 引っ張られてる!」

提督「うん。うまくかかったね。あとはリールを巻いて。あんまり早く巻いたら逃げられちゃうからほどほどにね」

暁「うん」マキマキ

ザパア

暁「釣れた! 見て見て司令官! 釣れたわ!」

提督「おめでとう。なかなかの太刀魚だね。指3本半ってとこかな」

暁「えーっとじゃあ針をはずして……」ソー

提督「あ、ちょっとストップ」スッ

暁「……? どうしたの?」

提督「太刀魚は歯が鋭いんだよ。だから針を外すときも素手で触ったら駄目だ」

暁「あ、そうだったの? ごめんなさい」

提督「いや言っておかなかった僕が悪かったよ。ちょっと貸してごらん」

暁「はい」

提督「こうやって、グローブをはめてペンチを使う」メキ

暁「……ありがとう」

提督「どういたしまして」

提督「釣れた太刀魚はクーラーの中に入れておこう」

暁「……さっきから思ってたんだけど、司令官やけに手馴れてない?」

提督「ばれちゃったか。実は予習済みなんだよ。知り合いのところに道具を借りにいったついでに少しだけ、ね」

暁「ず、ずるいわ! 司令官だけ!」

提督「ごめんごめん。でもそのお陰でほら、ちゃんと釣れただろう?」

暁「確かに……。じゃあ仕方ないわね! 許してあげるわ!」

提督「ありがとう」

暁「どういたしまして!」

暁「……! やった! また釣れたわ!」

提督「すごいね君は。僕なんてまだ一匹も釣れてないよ」

暁「えへへ。司令官は合わせのタイミングが下手なのよ」

提督「どうやってするんだい?」

暁「こうやって、スッ……ってなったらガッ……ってやるの」

提督「……? よくわからないな」

暁「こういうのは感覚で覚えるのよ!」

提督「……実は君は釣りの天才かも知れないね」

暁「……」ブルッ

提督「ちょっと寒くなってきたね」

暁「ほんとね。この時期でも夜になると冷え込むわね」

提督「ちょっとまって。いまカフェオレを入れるから」コポポ

暁「持ってきてたの? 準備がいいわね」

提督「まあね。はい」

暁「ありがとう司令官」コクコク

提督「あったかいだろう?」

暁「うん」

暁「……」

提督「……」

暁「……カフェオレ美味しかったわ。ありがとう」

提督「どういたしまして。体はあったまったかい?」

暁「まだ、ちょっと。寒いかも」

提督「それは困ったな。僕の上着を羽織るかい?」

暁「……それじゃ司令官が寒いんじゃない?」

提督「……そっか。じゃあこうすると暖かいだろう?」ピト

暁「うん」ピト

暁「司令官。魚臭いわね」

提督「君だってそうだよ」

暁「……」

提督「……」

暁「……」

提督「……僕はやはり釣り人には向いてないかもしれないな」

暁「……? どうして?」

提督「だってこうやって君と触れ合っていられるなら、このままアタリがこなかったらいいのにと思ってしまうからね」

暁「また、そうやって変なこと言う」カァ

提督「あ、ほら。君の仕掛け引いてるみたいだよ」

暁「あっ! ほんとだ! これで6匹目ゲットね!」ダッ

提督「……」ニコニコ

提督「さてそろそろ撤収しようか」

暁「え? もう? もうちょっとで10匹の大台に乗るのに」

提督「でももう朝の5時だからね」

暁「もうそんな時間なの?」

提督「うん。夢中になってて気付かなかったんだね」

暁「うう。やっとコツがつかめてきたところなのに」

提督「……だったらまた来ようか?」

暁「うん! また来ようね! 司令官!」

(……)

提督「さて、釣りというのはただ釣っただけでは終わらない」

暁「食べるのね!?」

提督「そう。自分で釣った魚を自分で捌いて食べる。これも釣りの醍醐味だよ」

暁「やったー! 待ってました!」

提督「ここに太刀魚が12匹いる。僕と君だけじゃ食べきれないから余ったのは間宮さんのところにでも持っていこう」

暁「そうね。ところで何を作るの?」

提督「そうだな。刺身と天麩羅。あとは塩焼きと蒲焼を作ろう」

暁「なんて豪華なの……! 太刀魚のフルコースね!」

提督「そのためにはまずは下処理をしようか」

暁「うん!」

提督「お腹のところから包丁で割いて、内臓を取り出す」スー

暁「こうね」スー

提督「それで、頭と尻尾を落とす」ストン

暁「うん」ストン

提督「次に三枚におろす。太刀魚は細いから結構難しい」スー

暁「ぬぬぬ。難しい」スー

提督「うん。上手だよ。じゃあこれを刺身と天麩羅と蒲焼にしよう」

暁「わかったわ!」

提督「まずは刺身の作り方だ。一口サイズに切る。それだけ」スッスッ

暁「皮は取らなくていいの?」

提督「大丈夫だよ。でも何本か切れ目を入れとくといい」スッスッ

暁「こうかな」スッスッ

提督「次は天麩羅だね。これも適当に衣をつけて揚げるだけだ」ジュワワワ

暁「結構お手軽なのね」ジュワワワ

提督「次に蒲焼だね。醤油とみりんと砂糖と酒を適当に絡めて焼く」ジュー

暁「調味料は適量、と」メモメモ

提督「最後は塩焼きだ。三枚におろさなくていい。適当な大きさに切って」ザクザク

暁「切ってー」ザクザク

提督「塩を振りかける」パッパッ

暁「ぱっぱっ」パッパッ

提督「それで焼く」ジュー

暁「簡単ね」ジュー

暁「完成!」

提督「太刀魚の塩焼きに刺身。天麩羅に蒲焼だ」

暁「早く! 早く食べましょ! ね?」ワクワク

提督「そうだね。いただこうか」

暁「うん! いただきまーす!」

提督「……」パク

暁「……」パク

提督「……!」

暁「んー! 新鮮な太刀魚の弾力と、歯応えがたまらないわ! 生臭さも全くない!」

提督「太刀魚の淡白な味に絶妙な塩加減。シンプルな味付けゆえに素材の良さがストレートに伝わってくるね」

暁「それにこのサクサクの天ぷらと上品な天つゆ! お刺身とはまた違った食感が私の心をつかんで離さないっ!」

提督「上品かと思えば、蒲焼の香ばしさと絡みつくタレが僕たちの食欲をいたずらに刺激する」

暁「これは!」

提督「確かに」

暁「おいしい!」

提督「……うん。おいしい」

暁「とってもおいしいわ。いくらでも食べられちゃう」パクパク

提督「さて、そろそろ取っておきを出そうか」

暁「取っておき?」

提督「これだよ」ドン

暁「これは、お酒?」

提督「そう。日本酒だ」

提督「少し度数は強いけど、慣れたら癖になる」

暁「へー」

提督「君も飲むだろ?」

暁「もちろん! いただくわ!」

提督「どうぞ」トクトク

暁「ありがとう」グイ

提督「……」チビ

暁「んっ。甘い」

提督「甘くてフルーティなやつをチョイスしておいたんだ。どうだい?」

暁「……おいしい。太刀魚料理の塩気が、お酒の甘さを引き立ててる」

提督「和食にはやっぱり日本酒が合うんだよ」

暁「……」ボー

提督「少し酔いが回ってきたみたいだね。大丈夫かい?」

暁「別に酔ってなんか……」

提督「……?」

暁「し、司令官。私酔っちゃったみたい……」

提督「またおかしなことを覚えてきて」

暁「おかしくないもん。レディだもん」

提督「そうだったね。ごめんよ」

暁「……」ウズウズ

提督「……おいで」ポンポン

暁「……」

ギュウ

提督「うん。君はやっぱり暖かいね」

暁「司令官。……好き」

提督「……僕も好きだよ」

暁「司令官は優しくて、かっこよくて、頼りになるから。好き」

提督「うん。ありがとう」

(……)

暁「……うーん」

暁「ん?」パチ

暁「いつの間にか寝ちゃってたのか……」

暁(……? 毛布? 司令官が掛けてくれたのかな?)

暁(とりあえず今日の準備しないと。えーっとシャワー浴びてそれから)

暁「……」ボー

暁「……」ボー

暁「……!」ハッ

暁(も、もしかして私昨日司令官にとんでもなく恥ずかしいこと言わなかった!?)アタフタ

暁(司令官に、好きっていったような、気が)カァ

暁(……どうしよう)

提督「ああ、おはよう。その様子だとお酒はもう残ってないみたいだね」

暁「……おはよう司令官」

提督「……? まだどこか調子が悪いのかい?」

暁「べ、別にそんなんじゃ」

暁(うう、昨日のことがあったから司令官の顔をまともに見れない)

提督「そういえば今日の朝食は太刀魚定食だそうだ」

暁「え? 太刀魚?」

提督「うん。限定10食だそうだから早く行こう」

暁「……」

提督「……どうしたんだい?」

暁「いや司令官は何も気にしてないんだなーって」

提督「……?」

暁「もう、いいわよ。早く行きましょ」

提督「……よくわからないけど元気になったのならよかった」

(釣りデート編 完)

暁「デート?」

提督「そう。デート」

暁「別にいいけど、今度はどこに行くの?」

提督「これを見てごらん」

暁「えーっと、温泉宿泊ペアご招待券……ってことは!?」

提督「そう。温泉に行こう」

暁「温泉かあ。いいじゃない!」

暁「今回も車で行くの?」

提督「いや今回は少し遠いからね。飛行機で行こう」

暁「飛行機……。私乗ったことがないのよね」

提督「僕も里帰りの時くらいしか乗らないよ」

暁「ふーん。そういえば司令官の実家ってどこにあるの?」

提督「すごく辺鄙なところだよ。最近、インターネットが普及したくらいのね」

暁「故郷って感じ?」

提督「うん。そうだね。都会の人からしたらひどく退屈かもしれないけどね」

暁「ううん! 私は自然が好きだから平気よ!」

提督「ははは。それはよかった」

暁「……? なんで笑うの?」

提督「なんでもないよ」

暁「変な司令官」

(……)

「おやまあ。遠いところからよくぞお越しくださいました」

提督「はい。今日はお世話になります」ペコ

暁「お世話になります」ペコ

「あらあら。兄妹でお越しですか? 仲睦まじくて羨ましいですね」

提督「ええ。恋人ですけどね」

「……え?」

提督「恋人です」

「あ。そ、そうでございましたか。大変失礼いたしました」

提督「いえいえ。かまいませんよ」

暁「……司令官の馬鹿」カァ

提督「温泉宿についたらまずは浴衣に着替えるんだよ」

暁「浴衣に?」

提督「うん。着方はわかるかい? わからなかったら手伝うよ」

暁「……」ジー

提督「……? どうしたの?」

暁「もう。相変わらずデリカシーがないわね」

提督「ああ、すまないね」

暁「大丈夫よ。ちゃんと鳳翔さんに習ってきたもの」

提督「君はほんとに準備がいいね」

暁「お待たせ。司令官」

提督「うん。やっぱり思ったとおり浴衣も似合うね」

暁「ええ、ありがと」

提督「じゃあ早速温泉に行こうか」

暁「え? まだお昼過ぎくらいじゃない。早すぎない?」

提督「あまりおそいと混み始めるからね。それに今入ったら湯上りは夕方くらいになるだろうしね」

暁「……? それがどうしたの?」

提督「それが、いいんだよ」

暁「ふーん」

提督「さあ着いた。ここだよ」

暁「わあ……。すごいね。映画とかに出てきそう!」

提督「うん。なんとこの温泉、何千年も前からあるそうだ」

暁「それじゃあ温泉の効能もすごそうね! とっても楽しみだわ!」

提督「それじゃあ一時間後にここでまた会おう」

暁「うん。わかった」

(……)

提督「待ったかい?」

暁「……そこまで待ってないけど、相変わらずお風呂が長いわね」

提督「うん。なんとなく温泉は落ち着くんだ」

暁「ふーん」プニプニ

提督「……なんだい」

暁「やっぱり肌がすべすべになってるわね」

提督「君だってそうだろう」

暁「私はピチピチギャルだからね」

提督「ほんとにどこでそんな言葉を覚えてくるんだ」

暁「いいじゃない。それよりほら、ここらへんを探索しましょ」

提督「ああ」

提督「僕はね。こうやって温泉上がりに浴衣で夕方の商店街を歩くのが好きなんだ」

暁「うん」

提督「のぼせた体に夕方の生ぬるい空気。一日の終わりが近づいてきて活気に満ちた商店街に差し込む夕日」

暁「うん。確かにいいわね」

提督「それに隣には君がいる。これほど幸せなことはないよ」

暁「……結局、それがいいたかっただけでしょ?」

提督「そうかもしれないね」

暁「ね、司令官」

提督「なんだい?」

暁「手、繋がない?」

提督「ああ、いいとも」

ギュ

暁「……」テクテク

提督「……」スタスタ

暁「ねえ司令官」

提督「なんだい?」

暁「私たち、ほかの人から見たらどんな関係にみえるかな?」

提督「……決まっているさ。マドンナとうらなりだよ」

暁「……だったら司令官左遷されちゃうじゃない」

提督「それは困ったな。じゃあ赤シャツあたりにしておこうか」

暁「それだったらうらなりの方がいいかなあ」

「よお! そこのお二人さん! デートたあうらやましいねえ! どうだい? いっちょ射撃をやっていかねえか?」

提督「うーん、射撃か」

暁「私たちに射撃を勧めるなんていい度胸じゃない! 後悔しても知らないわよ?」

「ほう! 威勢のいい嬢ちゃんだねえ!」

暁「ほら! 行きましょ! 司令官!」

提督「……ああ」

暁「……」チャキ

タン!

タン!

タン!

ポト

「上手いねえ! お嬢ちゃん!」

暁「当然よ!」エッヘン

提督「……」チャキ

タン! スカッ

タン! スカッ

タン! スカッ

提督「難しいね。これは」

暁「相変わらず司令官は射撃が下手ね」クスクス

提督「僕の得意分野は作戦立案だからね」

暁「仕方ないわね。どれがほしいの? 私に任せなさい!」

提督「そうだね。じゃああれがいいな」

暁「あれね!? いい? 見てなさい!」チャキ

ターン

暁「ふっふっふ。大漁ね」

提督「すごいね。上手いものだ」

暁「まあ、日ごろの訓練の賜物よ!」

提督「頼もしいね。……ん。そろそろ宿に帰ろうか。もうすぐ夕飯の時間だしね」

暁「そうね! もうおなかぺこぺこよ!」

提督「あの旅館の夕飯は結構評判がいいんだ。楽しみだね」

暁「うん!」

暁「あーおいしかった!」

提督「まさか、あそこまでボリュームがあるとは。甘く見ていたよ」

暁「でもなーんか物足りないなー」チラッ

提督「ふふふ。君にはお見通しだったみたいだね」スッ

暁「やっぱり! 司令官秘蔵の日本酒を持ってきてたのね!」

提督「もちろん君も飲むだろう?」

暁「うん!」

提督「でもね。ただ飲むだけじゃつまらない。せっかくだから温泉に入りながら飲もうか」

暁「え? そんなのできるの?」

提督「ああ、特別に頼んでもらった。さあ行こうか」

(……)

暁「……むむむ」

提督「どうしたんだい?」

暁「こ、混浴なんて聞いてないわよ!」

提督「誰も見ちゃいないさ。月以外はね」

暁「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいの!」

提督「月に肌へを見するだに恥じらう乙女。だね」

暁「……? どういうこと?」

提督「君は立派な淑女だってことだよ」

暁「……レディだからね」

提督「大丈夫だよ。貸切にしておいたから僕ら以外は誰も入ってこない」

暁「……もう。しょうがないわね」

暁「はい。司令官」トトト

提督「ありがとう」

暁「じゃあ、乾杯」

提督「うん、乾杯」

暁「……」チビ

提督「……」チビ

暁「……いいお酒ね」

提督「この日のために準備してきたからね」

暁「あら、準備がいいじゃない」

提督「もちろん。僕はずっと君とこうして温泉に行きたかったからね」

暁「そうなの?」

提督「そうだよ」

暁「ふーん」

提督「ほら見てごらん。今日は満月だよ」

暁「あ、ほんとだ。綺麗ね」

提督「うん、月見酒だ」

暁「月見酒?」

提督「そう。月を見ながらお酒を飲むことだよ」

暁「……」チビ

提督「……」チビ

暁「……味は変わらないわね」

提督「そうかもしれないね。こういうのは風流を楽しむんだよ」

暁「……よくわかんない」

暁「……」

提督「……」

暁「司令官、私ね。夜は嫌いなの」

提督「そうかい」

暁「うん。暗くて怖くて悲しくて、なんでか知らないけど泣きたくなるから」

提督「……」

暁「でも」

提督「……?」

暁「司令官と見る、月は好き」

提督「そっか」

暁「風流、でしょ?」

提督「そうだね」

暁「……」チビ

提督「……」チビ

(……)

提督「大丈夫?」

暁「体が熱い」ボー

提督「のぼせちゃったんだんね」

暁「そうみたいね」ボー

提督「はい。冷たい牛乳かって来たよ」

暁「ありがとう」ンクンク

暁「……」プハー

提督「ちょっとは楽になった?」

暁「んーん。無理。部屋まで連れて帰って」

提督「じゃあ肩を貸すよ」

暁「無理。立てない」

提督「うーん。困ったな。どうしようかな」

暁「だっこ」

提督「え?」

暁「だっこして司令官。じゃないと帰れない」

提督「……仕方ないな」

提督「……」テクテク

暁「……」

提督「これは、なかなかアレだね。恥ずかしいな」

暁「しれいかんのうで、あったかいね」

提督「気持ちいいかい?」

暁「うん。夜風が涼しくてとってもいい気持ち」

提督「……ならいいか」

暁「うん。いいの」

(……)

暁「……ん」パチ

提督「……」チビ

暁「……司令官まだ起きてたの?」

提督「うん。なんだか眠れなくてね」

暁「じゃあ私も付き合う」

提督「いいの? 眠いだろうに」

暁「いいの。今は司令官とお月見をしたい気分なんだから」

提督「うん。そっか」

暁「……」ウトウト

提督「眠たいのかい?」

暁「うん。少し」

提督「もう寝る?」

暁「ううん。もうちょっとだけこうしてたい」

提督「そうかい」チビ

暁「……」ウトウト

暁「……」スースー

提督「……」チビ

提督「……ん。なくなったか」

提督「……」

提督(二人で飲むお酒は減るのが早いなあ)

暁「……」グーグー

提督「……」チラッ

提督(この子はいつも幸せそうな顔をして寝ているな)

暁「……」スヤスヤ

提督(僕もそろそろ寝ないと明日が辛いだろうな)

暁「……」ムニャムニャ

提督(でも、もうちょっとだけこうしていよう)

(……)

提督「さ、名残惜しいけどこの町ともお別れだね」

暁「楽しかったね。また来たいなあ」

提督「そうだね。また来よう」

暁「……司令官と一緒に」

提督「うん。一緒にね」

提督「ふう。鎮守府に着くと休暇も終わりって気がするね」

暁「そうね。休みの終わりってなんか寂しくなるわね」

提督「それじゃあね。また明日。今日はゆっくり休んでおいて」

暁「そっちは司令室じゃない。もう仕事するの?」

提督「うん。今回は結構無理をいって行かせてもらったからね」

暁「……しょうがないなあ。私も手伝うわ」

提督「さすがに悪いよ」

暁「いいの! 私がやりたくてやってるんだから!」

提督「……。じゃあお願いしようか」

暁「まっかせなさい!」

提督「ふぅ。お疲れ様」

暁「一日留守にしただけなのに結構仕事が溜まってたわね」

提督「手伝ってくれてありがとう。おかげで助かったよ」

暁「どういたしまして。それじゃあ私は部屋に帰るわね」

提督「ああ。また明日」

暁「あ、そうだ司令官。ちょっと耳貸して」

提督「?」スッ

チュ

提督「!!」

暁「温泉旅行楽しかったわ! またデートに行こうね! 司令官!」バタン

提督「……」

提督「……まいったな」

(温泉デート編 完)

暁「デートかー」

提督「うん。どうだい?」

暁「あのね。そんなことやってる場合? もうすぐ大規模作戦が始まっちゃうじゃないの」

提督「だからだよ。気晴らしも兼ねてね」

暁「うーん」

提督「……」

暁「まあ、たまにはそういうのも必要か」

提督「君ならそういってくれると信じてたよ」

暁「だったらあそこに行かない? ほら最近オープンしたとこ」

提督「……ああ、あそこかい? いいんじゃないかな」

暁「……と思ったけどもうどこに行くか決まってるみたいね。行き先は司令官に任せるね」

提督「え?」

暁「じゃあね。楽しみにしてるわ」スタスタ

提督「……」

提督「最近、あの子に見透かされることが多いなあ」

(……)

暁「……結局ここなんだ」

提督「行きつけだからね」

暁「まあいいけどね」

提督「バーはほら、おしゃれでレディだから君も好きだろ?」

暁「……そうね。おしゃれでレディだから大好きよ。愛してるわ司令官」

提督「……まいったな」

暁「ふふふ。ほら、早く入りましょ」

提督「乾杯」

暁「乾杯」

キン

提督「……」チビ

暁「……」ゴク

提督「うん。おいしい」

暁「紫蘇焼酎って飲んだことないんだけどおいしいの?」

提督「まあね。最近飲み始めたんだけどね」

暁「ふーん。ちょっと頂戴」チビ

提督「どうだい?」

暁「……やっぱりまだ焼酎は合わないみたい」

提督「そっか。残念だ」

提督「君はまたカシスソーダ?」

暁「うん。ここにきたら一杯目はこれって決めてるのよ」

提督「なんで?」

暁「さあ? 昔誰かさんに回りくどく口説かれたせいかしら?」

提督「……とんでもないやつがいるもんだね」

暁「ええ。その人にわけもわからずポートワインを飲まされたこともあったしね」

提督「……意地悪だな。君は」

暁「司令官ほどじゃないわよ」

暁「さて、私は生チョコレートと日本酒をいただこうかしら」

提督「……合うのかいそれ?」

暁「割と。日本酒の辛さがチョコレートの甘味を引き立てるのよ」

提督「ウイスキーボンボンみたいなものかな」

暁「そうそう。司令官はどうする?」

提督「じゃあ僕は鴨肉のたたきと日本酒かな」

暁「さすが! いいところを押さえてるわね!」

暁「……」チビ

提督「……」チビ

暁「……おいしい」フゥ

提督「それにしても君もずいぶんお酒が似合うようになって来たね」

暁「あらそう?」

提督「うん。すごく」

暁「司令官だって、焼酎が似合うようになってきたわ」

提督「そうだろう? ダンディズムを醸し出すようになったからね」

暁「ふふっ。はいはい」

暁「うん。やっぱり合うわね」モグモグ

提督「チョコレートか。洋酒が合うのは知ってたけど」

暁「食べてみる?」

提督「ありがとう。頂こうか」

暁「はい。あーん」ヒョイ

提督「……」パク

暁「おいしい?」

提督「……甘いね」モグモグ

暁「でしょ?」

提督「……」チビ

暁「どう?」

提督「……合うね」

暁「でしょ!」

暁「そういえば司令官」

提督「なんだい?」

暁「覚えてる? ここって私と司令官が初めてデートで来たところよ」

提督「もちろん」

暁「じゃあこれも覚えてる?」

提督「……?」

暁「今日まで私と司令官がデートした回数!」

提督「えーっとさすがにちょっと覚えてないな」

暁「正解はね。今日で82回目」

提督「……よく覚えてるね」

暁「司令官との思い出は全部覚えてるつもり。今までのもこれからのも」

提督「うん。僕もだよ」

暁「そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」

提督「なにを?」

暁「今日ここに来た理由」

提督「……ただ、なんとなくだよ」

暁「ふーん」

提督「それに、ここは僕にとって特別な場所だからね」

暁「始めてデートした場所だから?」

提督「それもあるけどそれだけじゃない。ここは僕の昔からの行きつけだから変わっていくのがわかるんだよ」

暁「まあそうね。季節によってメニューが変わったりするしね」

提督「そう。それに僕も、この店に来たばかりのころは右も左もわからぬ若輩者だった。今では大艦隊を指揮する提督様だ」

暁「……ちょっと頼りない、ね」

提督「大丈夫。隣には優秀な秘書艦様がついているからね」

暁「えっへん!」

提督「……どちらが勝つにせよ 、この戦争はもうすぐ終わるだろうね」

暁「そうね」

提督「そうすれば僕も君も提督と艦娘ではなくなる」

暁「司令官も?」

提督「ああ。どうせ僕らは十把一絡げで集められただけだ。役目が終わればお払い箱だよ」

暁「ふーん。そっか」

提督「君は普通の女の子になったらどうするんだい?」

暁「私か。私は……。大学にいきたいかなあ」

提督「大学?」

暁「うん。大学。それで英語を勉強して、留学するの」

提督「すごいな」

暁「そうやって見聞を広めて、将来は世界を飛び回る外交官になれたらいいな」

提督「それは素敵だね」

暁「もしそうなったら司令官にも会えなくなっちゃうね」

提督「そうだね」

暁「そうなったら、どうする?」

提督「うーん、もしそうなったら寂しくて泣いちゃうかもしれないね」

暁「ふふふ。司令官は寂しがりやだもんね」

提督「ばれてたか」

暁「あのね、司令官。今だから言うけどね。昔は司令官に憧れてたのよ」

提督「そっか」

暁「うん。だって司令官はすごく大人で、何でも出来て、何でも知っていると思ってたもの。レディを目指してた私にはとっても眩しく映ったのよ」

提督「照れるな」

暁「憧れてたころはとても手の届かないところにいたような気がしたけど」

暁「いまは」スッ

提督「……」ペタ

暁「ほら、こんなに近くにいる」

提督「……」ペタペタ

暁「遠くから見てたときはもっとかっこよく映ってたんだけどな。おっかしーなー」

提督「今は違うのかい?」

暁「うーん、そうね」

暁「ほんとの司令官は優柔不断で、どこか抜けていて、とっても頼りない人」

提督「ああ」

暁「だから今は」

暁「大好きよ司令官」

(……)

暁「……」ウップ

提督「大丈夫かい? 飲みすぎるなんて君らしくもない」

暁「うるさい」

提督「ほら。お水と薬を買ってきたから」

暁「ん。ありがと」ゴクゴク

提督「歩けそうかい?」

暁「だめ。無理そう」

提督「仕方ないな。よいっしょっと」ダキッ

暁「……お姫様抱っこはさすがに恥ずかしいんだけど」

提督「大丈夫だよ。僕も恥ずかしいから」

暁「心配だなあ。また司令官の近所の評判が悪くなるったらどうしよう。今度は誘拐に手を染めたって」

提督「平気さ。悪く言われるのは慣れっこだ」

暁「うそばっかり。そんな剛毅な性格じゃないでしょうに」

提督「貞女も逃れられぬが世間の陰口……と言うだろう?」

暁「……」

提督「そんなものだよ」

暁「……春の若芽に虫がつき、蕾のままに枯れはてつ。露しげき初春の朝まだき、若き血潮に染み入る毒気」

提督「……なんだ知っていたのか」

暁「まったく。司令官は本当に意気地なしね」

提督「僕は臆病者だからね。怖くて仕方ないんだよ」

暁「……もう楽になった。おろして」

提督「ああ」スッ

暁「ありがと」

提督「もう歩ける?」

暁「当然よ」

提督「それはよかった」

暁「……ん」ギュ

提督「……君の手はあったかいな」ギュ

暁「……」テクテク

提督「……」テクテク

暁「あ、もう着いちゃったね」

提督「そうだね。もう着いてしまったね」

暁「……」

提督「……」

暁「司令官。私ね。私……」

提督「なんだい?」

暁「……なんでもない」

提督「そっか」

暁「私は、意地悪だから」

提督「……?」

暁「だからね。私からは言ってあげない」

提督「……そうだね」

暁「……うん」

提督「暁、僕と……」

(……)

暁「おはよう司令官」

提督「やあ、おはよう暁。よく眠れたかい?」

暁「うん。やっと大規模作戦も終わったしね。肩の荷が下りたわ」

提督「お疲れ様」

暁「司令官もね」

提督「さて、今日も一日頑張ろうか」

暁「あ、コーヒー入れてくるね」タタタ

提督「頼むよ」

暁「はい。コーヒー。お砂糖は二つね」

提督「ああ、すまないね」

暁「……」コク

提督「あれ? 今日はブラックで飲むのかい?」

暁「うん。たまにはそんな気分のときもあるのよ」

提督「そっか」

(……)

暁「はー、終わった終わった」

提督「お疲れ様」

暁「司令官もね」

提督「はい。ココア」

暁「あら、ありがとう」

提督「どういたしまして」

暁「……ふう。おいしい」

提督「うん。おいしいね」

暁「……」コクコク

提督「……」コクコク

提督(……)

提督(ねえ暁)

提督(君は僕の事をよく知っていると言うけれど)

提督(僕は君の事を何も知らない)

提督(少しずつ変わってゆく君も)

提督(少しずつ成長してゆく君も)

提督(何も知らないんだ)

提督(だから)
 
提督「ねえ暁」

暁「なあに? 司令官」

提督「デートに行こうか」

暁「……ええ、喜んで」ニコッ

提督(僕は今日もレディの君とデートをする)



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