桑原「お兄さん!雪菜さんをオレにくださいッ」 (33)

桑原「男桑原和真、この命に換えても!雪菜さんを幸せにしてみせますッ!」

幽助「……」

蔵馬「……」

桑原「どーだ? 幽助、蔵馬。オレの熱意、ちゃんと伝わってっか?」

幽助「おう、バッチ伝わったぜ」

蔵馬「桑原くんの人となりが率直に表れていていいと思いますよ」

桑原「マジかよォ。何か照れるじゃねーか」

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桑原「あー、しかし。雪菜さんの兄貴に会うと思うと緊張すっな」

桑原「ま、きっと雪菜さんに似て優しくて性格もいいだろうから、そんなに気構えることもねーか」

幽助「なあ蔵馬、飛影のヤツ本当に来るんだろうな」ひそ

蔵馬「軀に確認を取ってます。休暇という形で人間界に来ているのは間違いないですよ」ひそ

幽助「だとしてもよ、アイツの性格だぜ。今さらバラすとも思えねーけど」ひそ

蔵馬「人も妖怪も変わるものです。彼にも彼なりの心境の変化があるのかも知れない」ひそ

桑原「おう、何だよおめーら。ひそひそしやがって!」

幽助「何でもねーよ。こっちのハナシだ」

桑原「つーかよ。何だっておめーら、そんなに名前をひた隠しにすんだよ」

桑原「いい加減教えてくれたっていいだろーが。仮にもこれからオレの義兄になる相手だぜ」

幽助「オレたちの口から言うことじゃねーわな」

蔵馬「じきに本人に会えるはずですから、それで問題ないでしょう?」

桑原「あ、それもそーか」

幽助「しっかし桑原、オメーその袴姿、全然似合ってねーな」

桑原「うるせーやい!オメーこそスーツなんざ着てよォ。馬糞に衣装もほどがあっぜ」

幽助「誰が馬糞だゴラ~!?」

蔵馬「馬子にも、ですよ」

幽助「オレだってこんな堅苦しいモン着たかねーんだけどよ。披露宴なんだからちゃんとした服着ろって螢子が」

桑原「お、そーいやおめえ、雪村とはその後どうなんだよ」

幽助「あ?」

桑原「とっくにあれから3年たっちまってるじゃねーか。一体いつになったらくっつくんだよ」

幽助「るっせーな。こっちはこっちでいろいろあんだよ」

蔵馬「幽助と彼女に関してはもとから熟年夫婦のようなものですからね」

幽助「お、おいおい……蔵馬まで茶化すなよな」

桑原「あっちが神なら」ボソ

ドゴォッ!!

幽助「てんめー桑原!ぶっとばすぞオラ!!」

桑原「いってーな、おい!新郎に向かって何しやがるッ!」

幽助「やるかコラ!」

桑原「おう、やってやっぜ!」

ドガッボガッバキッグシャッ

蔵馬「やれやれ」

蔵馬(人間と妖怪が契りを結んだ例が過去にないわけではない)

蔵馬(だが、たいていの場合、両者の関係はうまくはいかなかった)

蔵馬(理由はさまざまあるが、一番は時間の問題だろう。人間の寿命は短くはかない)

蔵馬(生涯添い遂げることは転生でもしない限り叶わない。それは愛し合う者たちにとって最大の不幸だろう)

蔵馬(だが、それでも)

幽助「おいおい桑原、最近体がなまっちまってんじゃねーか?」

桑原「るっせー!……痛てて、つかオメーちっとは手加減しろよな……」

幽助「けけ。フツーの喧嘩に手加減なんかすっかよ」

蔵馬「桑原くん」

桑原「おう、何だ蔵馬」

蔵馬「氷女(こおりめ)である彼女と結婚することに、本当に迷いはないんですね」

桑原「たりめーよ。何なら人間界と魔界の懸け橋にでも何でもなったらー!」

桑原「絶対に、後悔しねえ」

幽助「桑原」

蔵馬「ふ、それを聞いて安心しました」


「お前が後悔しなくても、向こうは後悔するかも知れんがな」

幽助「!」

蔵馬「!」

桑原「その声は!」


飛影「……ふん」


「「「飛影!!」」」

桑原「て、てめー!招待状出してねーのにどうしてここが」

幽助「そりゃ邪眼があっからな」

桑原「あ、そっか。いや、そんなことより、今何つった!?」

飛影「何度でも言おう。たとえお前は後悔しなくても、雪菜はいつか必ず後悔する」

飛影「軽い弾みで一介の人間と深く関わりあってしまったことに」

飛影「忌まわしい氷女の宿命にお前の人生を巻きこんでしまったことに」

飛影「後悔はお前が死んでからも一生続く。お前の選択は雪菜を永遠に苦しめ続けることになるんだぞ」

桑原「……ッ……」


飛影「それでもお前は、雪菜と結ばれる道を選ぶのか?」

桑原「選ぶぜ」

飛影「……」

桑原「どんな困難が待っていようとも、オレは雪菜さんを守り通す」

桑原「そう決めたんだ。オレの決心は揺るがねーよ!」

桑原「オレが死ぬだ? ヘッ、言ってろ。オレはそう簡単には死なねー!」

桑原「もし死んだら、霊界からとっ帰ってきて魂だけでも雪菜さんと添い遂げてやるぜ!!」

桑原「そんときゃ力貸してくれよな、浦飯ィ!」

幽助「おう、任せとけ!」

飛影「ふふ、はははは!」

蔵馬「……飛影」

桑原「な、何がおかしい!オレは本気だぞ」

飛影「相変わらずバカな奴だ。だが安心した」

飛影「この程度の言葉で決心が揺らぐようでは任せられんからな」

桑原「つべこべ言いやがって~。そもそもオメーにオレと雪菜さんの間のことどーこー言われる筋合いねーだろ!」

桑原「オレは新郎だし忙しーんだよ。オメーなんざと話してるヒマはねぇんだ」

桑原「今だって雪菜さんの兄貴が来るのを待って……て」

桑原「……え」

桑原「ま、まさか……」

桑原「雪菜さんの兄貴って……」

桑原「なあ、幽助!蔵馬!」

幽助「……」

蔵馬「……」

桑原「飛影。お、おめーが……」

飛影「……」

飛影「そうだ。オレが雪菜の兄だ」


桑原「!!!!!」

飛影「とでも言うと思ったか。バカめ」

桑原「あらっ」すってんころりん

飛影「雪菜の兄が今どこにいるのか、オレの邪眼を使っても分からん。魔界は果てしなく広いからな」

飛影「そんなやつが今になってのこのこと、この式場に現れるとでも思ったか?」

桑原「は、はは……だよなー。今まで姿を現していない相手がいきなり現れるわけねーよなー」

桑原「第一、オメーのような目つきも性格も悪い奴が雪菜さんの兄貴なわけねーよな。一瞬でも疑ったオレが馬鹿だったぜ」

飛影「……殺すぞ貴様」

「桑ちゃ~ん!どこにいるんだい!もう披露宴始まるよ~!新郎がいなくてどうするんだい!」
「幽助ー!忙しいんだからあんたもちょっとは手伝いなさいよ!」


桑原「お、やっべ。オレ行かねーと」

幽助「ったく螢子のヤロー。先行ってるぜ、蔵馬、飛影!」

ダッ!


飛影「騒々しい奴らだ」

蔵馬「彼らは変わりませんね。おそらく、これからも」

飛影「……」クルッ

蔵馬「見ていかないんですか?妹さんの晴れ姿を」

飛影「言いたいことは言った。もはやここに留まっている理由はない」

蔵馬「てっきりカミングアウトするものとばかり思っていましたが」

飛影「始めから名乗るつもりなどない。いつから『雪菜の兄が来る』という話になっていた?」

蔵馬「あなたがちょうど人間界に滞在しているという情報が入ってからですね。名乗るならまたとないタイミングでしょう?」

飛影「ちっ、迷惑な話だぜ」


「飛影さん」

飛影「ッ!?」

雪菜「飛影さんも来てくれたんですね。私……嬉しいです」

飛影「お前」


幽助「よっと。蔵馬、足止めサンキュな」

蔵馬「早かったですね」

飛影「どういうことだ?」

幽助「オメーのことだから、会わずにとっとと帰っちまうだろーと思ってよ。逃げられねーようにこっちから呼んできてやったんだよ」

蔵馬「そういうこと」

飛影「キサマら……」

幽助「耳貸せ、飛影」

飛影「……」

幽助「別にここで名乗れだなんて言わねえ。ただ、いてやってくれればいい」

幽助「新婦側の家族が一人もいねーなんて寂しいだろうが。オメーがあの子の、たった一人の肉親なんだからよ」

幽助「頼む」


飛影「……………………」


飛影「ふん、急いで魔界に戻ったところで、つまらん雑務に追われるだけだからな」

幽助「……飛影」

――屋上――


コエンマ「……」

ばたんっ

ぼたん「コエンマ様!」

コエンマ「おう、ぼたんか。どうした」

ぼたん「どうしたじゃないですよ!もう時間ですよ?コエンマ様のスピーチを皆待ってるんですからね」

コエンマ「ああ、そういえばそうじゃったな」

ぼたん「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないですって~」

コエンマ「わしのカタい話など待っとる奴もおらんだろう。もう勝手に始まっとるんじゃないか?」

ぼたん「たははは、その通りです」

コエンマ「ぼたんよ」

コエンマ「この建物の中は今、さながら伏魔殿のようになっているが」

コエンマ「人間も妖怪も、わしらのような霊界の存在までが一堂に集まって、笑い合い喜び合い祝杯を挙げておるのじゃ」

コエンマ「これから先、魔界も霊界も人間界もまだまだ大きくその在り様を変えていくだろうが」

コエンマ「ここに今確かにある絆が、これからの世にも失われないでほしい。わしはそう思うよ」

ぼたん「そうですね。私も同じ気持ちです」

コエンマ「じゃ、わしらも連中のところに行くとするか」

ぼたん「はいっ」



メチャメチャひとりぼっちの 人にあげる

唇の 裏側に 隠してある

ホ・ホ・エ・ミ・ノ・バ・ク・ダン!


                               (おしまい)

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