如月十早「プロデューサー……。私、何かが足りない気がするんです」 (99)

P「ああ……うん」

十早「仕事は増えてますし、歌も歌えて、アイドルとしては充実しているはずなんです。
   それなのになぜか最近、違和感があるというか……」

P「……」

十早「何かが足りないんです。というより、何かが欠けてしまったというか」

P「欠けてる、ね。うん、欠けてるか……確かに」

十早「このままではまるで、自分が自分でなくなってしまうような……」

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P「うん。ていうか既にそうなってる気がするけど」

十早「えっ? そうなってる、って……どういう意味ですか?」

P「いや、だってそりゃお前……」

十早「プロデューサー、私は真剣に悩んでるんです……!
   冗談や悪ふざけは言わないでください!」

P「い、言ってないよ冗談も悪ふざけも。
 取り敢えずお前、鏡見てこい……そしてもう一度自分を見つめ直すんだ」

十早「鏡、ですか? 今更そんなことをしても意味があるとは思えませんけど……。
   一応はわかりました。それでは、失礼します」

 ガチャッバタン

P「……」

P(何あれ意味わかんねぇんだけど!
 一本なくなってんじゃん! 何があったらあんなことになんだよ!?)

P「くそっ、こういう時どうすりゃいいんだ……!
 病院か!? 何科だ!? いや、それとも俺が眼科か精神科に行った方が……」

 ガチャッ!

日海奏香「ププププロデューサーさぁーーーーーん!」

P「!?」

奏香「た、助けてください! 見てくださいこれ!
   うわぁーんどうしたらいいんですかー!」

P「え、ちょっ……誰!? 誰だお前!?」

奏香「私です! 春香です! 天海春香ですよぉ!」

P「春香だと!? 馬鹿な……い、いや確かによく見ればそのリボンは春香!
 一体なぜそんな姿に!?」

奏香「わ、わからないんです! ここに来る途中でいつもどおりにコケて、
   そしたらこんなことになってて……!」

P「こ、コケたらって……」

奏香「本当なんです信じてください! 私……」

 ガチャッ!

十早「プ、プロデューサー大変です! 画数が、画数が……!」

奏香「あっ、千早ちゃ……え!?」

十早「え、あの、どちら様……あっ! も、もしかして春香!? 春香なの!?」

奏香「ち、千早ちゃんだよね!? どうしたのそれ! なんで百分の一になってるの!?」

十早「春香こそどうしてそんなぐちゃぐちゃに混ざって……!
   どういうことですかプロデューサー!?」

P「俺が知りたいわ! い、いいか取り敢えず落ち着け二人とも! まずは冷静に……!」

 ガチャッ!

律仔「あーもう! だから知らないって言ってるでしょうが!」

尹織「そんなはずないでしょ!? 早く返しなさいよ!」

P「!?」

P「り……律子と伊織、だよな!? どうしたんだ二人とも!?」

尹織「あっ、ちょっとあんた! あんたからもこのドロボーに何か言ってやりなさいよ!」

律仔「泥棒って、人聞きの悪いこと言わないで!」

尹織「何よ本当のことでしょ!? このドロボー! ぬすっと! ひったくり!」

律仔「あぁもうあったま来た……! 私にだって我慢の限界はあるんだからね!?
   表に出なさい尹織! あんたのその高飛車な態度を強制してやるわ!」

尹織「やってみなさいよ律仔!」

奏香「お、落ち着いてください二人とも! 今は喧嘩してる場合じゃ……」

律仔&尹織「「奏香は黙ってて!」」

奏香「ええっ!? わ、私は奏香じゃなくて春香ですよ、春香!」

P「い、いかん。認識までもが侵されはじめている……!」

十早「律子、水瀬さん、落ち着いて!
   今は解決策を探すことが先決でしょう!?」

律仔「十早……じゃなかった。千早……」

尹織「そ、そうね、悪かったわ十早……じゃなかった。千早」

P「よ、よし、千早の声量のおかげで取り敢えず落ち着いてくれたな。
 それじゃあ、まず何がどうなってこうなったのか説明してくれ」

律仔「いや、それが私にも何がなんだか……。
   事務所の前で出会い頭に尹……伊織とぶつかっただけなんです」

尹織「そしたらこんなことになっちゃって……。あーもう!
   なんでこの尹織ちゃんがこんな目に遭わなくちゃいけないのよ!」

奏香「伊織、名前名前!」

尹織「はっ……! そ、そうよ、私は伊織。私は伊織……」

十早「いけないわ……。このままでは本当に、名前に意識を支配されてしまう。
   それまでになんとかしないと……」

P「ぶつかってこうなったってことは、もう一度ぶつかれば元に戻る……。
 ってことはないか? さ、流石に単純過ぎるか?」

律仔「いえ……その可能性はあると思いますけど、
   逆にもっと大変なことになってしまう恐れも……」

尹織「慎重にやり方を考えなきゃ。確実に元に戻せる方法が見つかるまでは……」

 ガチャッ

あずき「なんでもな~い~なんでもな~い~♪」

P「!?」

あずき「君の笑顔を~……♪ あ、おはようございます~」

律仔「あ、あずきさ……じゃない、あずささん!」

尹織「なんてこと、あずさまで……!」

あずき「? みなさん、どうかしたんですか?」

P「ふ……増えてる……」

あずき「ええっ? ふ、増えてるって、何がですか?
    た、体重は変わってないはずですけど~……」

P「あ、あぁ、いえ体重じゃありません。
 体重じゃないんですけど……」

あずき「ほっ……びっくりしちゃいました。
    でも体重じゃなかったなら安心です~。
    ふんふ~ん♪ 世界中で~僕だけが知ってる~……♪」

奏香「あ、あずきさん。大丈夫なんですか?」

あずき「え? 大丈夫って、なんのこと?」

十早「その、体に違和感があったりだとか、そういったことは……?」

あずき「? 特にはないけど……。
    なんだか妙に歌を歌いたくなっちゃう気分になるくらいかしら~?
    ほら素敵な君さ~♪ うふふっ」

十早「……」

あずき「あら? 十早ちゃん、どうかしたの? そんなにじっと見て……」

十早「い、いえ、なんでもありません。
   ……あずきさんのアレを、私に移植できれば……くっ」

奏香「プ、プロデューサーさん。もしかしてと思ったんですけど、
   あずきさんがさっきから歌を歌ってるのって……」

P「あ、あぁ。この異変の影響かも知れない……」

尹織「や、やっぱり外だけじゃなくて中身にまで影響があるっていうの!?
   ますますマズイじゃない!」

律仔「これはいよいよ、早急になんとかしないと……」

 ガチャッ!

亞美「うあうあー! 大変だよー!」

P「!?」

奏香「あ……亞美!? どうしたのそれ! 中のとこ何か変じゃない!?」

亞美「落としちゃったっぽいよー! いつの間にかなくなってたんだよー!」

律仔「落としたって、落とすようなものじゃないでしょ!?」

尹織「それを言ったら私たちだって全員そうじゃない!」

律仔「うっ……た、確かに」

十早「でも落としたということは、
   もしかしたら誰かが拾ってくれてるかもしれないわ」

P「そ、そうだな。亞美、どのへんで落としたんだ?」

亞美「それがわかんないんだよー!
   ちょっと前に撮影スタジオで真美と別れた時まではあったから、
   そこから事務所に来るまでに落としちゃったのかも……」

あずき「あらあら~。それなら、今からみんなで探しに……」

 ガチャッ

響「はいさーい!」

貴音「おはようございます。今日も良き日和ですね」

P「! 響、貴音!」

P「良かった、お前たちは無事だったか!」

響「おはようプロデューサー! それからみんな、も……」

貴音「……? あの、あなたがたは……?」

亞美「うあうあー! 亞美は亞美だよお姫ちーん!」

響「え、えぇぇ!? ど、どうしたんだみんな!? なんでそんなことに!?」

律仔「実はかくかくしかじかで……」

響「そ……そうなんだ。そんなことが……」

貴音「面妖な……」

あずき「それで、亞美ちゃんの落し物を
    みんなで探しに行こうって言ってたところだったの~。
    あいつじゃない~こいつじゃない~僕が見つける~♪」

亞美「ひびきん、お姫ちん、事務所に来るまでに見なかった!?」

貴音「響? 亞美の落し物というのはもしや……」

P「! 心当たりがあるのか!」

響「ああ、えっと……。さっき事務所の前で拾ったんだけど。これのこと?」ウネウネ

亞美「それだ!!」

奏香「ひいっ!? なにそれ!?」

尹織「キモッ!!」

亞美「うおおお! ありがとうひびきん!」

響「ドアの前で寂しそうにしてたから、拾ってきたんだぞ。
 もしかしたら事務所で飼えないかなって思ってさ」ウネウネ

P「お前それを事務所で飼うつもりだったのか……」

十早「さすがね、我那覇さん……」

律仔「そ、それじゃあ早くそれを亞美に戻してあげましょう!」

尹織「そうよ響、さっさと戻しなさい! なんか寄生虫みたいで気持ち悪いわ!」

響「えー? そうかなぁ。可愛いと思うけど」ウネウネ

奏香「と、とにかく、ね? ほら、もともとは亞美のものだから……」

響「うん、わかったぞ。それじゃあウネ丸、ウネ衛門、
  亞美のところに戻るんだぞ。……って、あっ!?」ピョンピョン

奏香「ひいいいいいっ!? に、逃げ、逃げたぁぁぁぁ!」

P「出口の方へ向かっていくぞ!」

亞美「こ、こらー! 待てー!」

尹織「ひ、響! 捕まえて! 早く!」

響「わ、わかった! 待つんだ、ウネ丸、ウネ衛門! 大人しく……」

 ガチャッ

やよい「おはようございまーす!」

P「やよい!?」

十早「た、高槻さん、逃げて!」

やよい「えっ? 何が……はわっ!?」ピトッピトッ

尹織「嫌ああああっ!」

律仔「ま、まずいわ! あの変なのがやよいに!」

やよい「な、なんですかこれ! 虫ですかー!?」ウネウネ

響「だ、大丈夫! やよい、そのまま捕まえてて!」

P「……!? ま、待て! 何か様子がおかしい!」

貴音「あ、あれはもしや……!」

やよい「あっ……! な、なんですか、これ、あっ、あっ……!」ウネウネズブブ…

十早「た……高槻さんの中に入ろうとしてる!?」

響「な、なんだって!?」

奏香「ひいいいいっ!? や、やよい早く捨てて! 早く!」

やよ’い「あっ、あっ……だ、だめです、体が、動かな……あっ、あっ……」ズブブ…

亞美「や、やよいっちーーーー!!」

やおい「うっうー! ばねたけ最高ですー!」

尹織「あ、あぁあ……」

やおい「でもP冬も捨てがたいかなーって!」

十早「た、高槻さん……嘘よ、そんな……」

律仔「なんてことなの……! 完全に人格まで侵食されてるわ!」

響「うぎゃーーーー! なんだよこれーーー!」

P「ど、どうすりゃいいんだ!? 病院か!? 手術とかで取り出せるのか!?」

貴音「わかりませんが、放っておくわけにもいきません!
   今すぐ病院へと向かいましょう!」

響「じ、自分も一緒に行くぞ! 自分があれを拾ってきたせいだし!」

P「他のみんなは事態の悪化を防ぐために待っててくれ!
 やおいは俺たちで病院へ連れて行く!」

奏香「は、はい! お願いします!」

P「よし、じゃあ行……」

 ガチャッ!

小鳥「ああっ、ダメ! ダメよ小鳥ぃ~!」

P「!?」

響「わあっ!?」ドンッ

貴音「あうっ!?」ドサッ

小鳥「いたっ!?」ゴチンッ

P「お、音無さん!? どうしたんですか急に駆け込んできて!」

小鳥「いたたた……はっ! ご、ごめんなさい!
   ドアを開けようとしたら魅惑的なワードが聞こえてきたものでつい妄想しちゃってて……!
   響ちゃん、貴音ちゃん、怪我はない!?」

郷「……あぁ、うん……」

貴「怪我は、ありませんが……。何か違和感が……」

小鳥「え……? な、え? 郷ちゃんと、貴ちゃん……?」

律仔「……音が……」

尹織「無くなってる……」

奏香「そ、そんな、まさか……!」

P「お……音無さん、あんたなんてことを……!」

小鳥「ええっ!? わ、私!? 私が何か!?」

P「音が無いんですよ!! わかりますか!? 音が! 無いんですよッ!!」

貴「こ、これは一体? 何か、言いようのない喪失感が……」

奏香「あ、でも良かった! 貴さんはあんまり中身は変わってなさそうです!」

律仔「ね、ねぇ。あなたは大丈夫なの? 郷……」

郷「郷(ふるさと)……」

律仔「え?」

郷「郷(ふるさと)に、郷(ふるさと)に帰らなきゃ……」

小鳥「え、郷ちゃん!? どこに行くの!?」

郷「離して! 自分は帰るんだ! 郷(ふるさと)に……! あんまーに会いに帰るんだ!」

あずき「あらあら~……」

尹織「きーっ! やっぱりおかしくなってるじゃないのよ!」

十早「が、我那覇さん落ち着いて!」

律仔「ちょっ、暴れるんじゃないの郷! 大人しくしなさい!」

 ガチャッ

真「おはようございまーっす……って、な、なんですかこの騒ぎ?」

律仔「真! ちょうど良かったわ、郷を抑えるのを手伝って!」

真「え!? だ、誰!?」

P「説明はあとでする! 今は取り敢えず、律仔の言うとおりにしてくれ!」

真「プロデューサー! え、えっと、よく分からないけど分かりました!」

十早「真は足を抑えて! 私は手を抑えてるから……」

郷「うがーーーーー! 離せーーーーーー!」グイッ

P「!? ばっ、やめ……!」

律仔「わあっ!?」ドンッ

十早「きゃっ……!」ゴチッ

真「うわっ!?」ドサッ

葎仔「いたたた……」

干冒「こ、これは……」

八「……」

P「な、なんじゃこりゃああ!?」

小鳥「ひえええっ!」

尹織「何よこれ!? また知らない奴が増えたんだけど!?」

奏香「八!? 八って誰ですか!?」

八「ボ……ボクは、一体……いや、わ、私は……?」

P「ま……真だ! 八じゃない! こいつは真だ!」

八「まこ、と……?」

P「まずい! 原型が残ってなさすぎて自我を失いかけている!」

貴「なんと……! 早急に手を打たなければ手遅れになってしまいかねません!」

亞美「うあうあー! こんな時真美が居てくれたら、真美の真をわけてあげられたのにー!」

P「と、取り敢えずあずきさんは郷をお願いします!
 あずきさんの母性ならきっと郷を落ち着かせられるはず!」

あずき「あ、はい分かりました~。よしよし、郷ちゃん。
    君がいいね~抱きしめたいよ~♪」

郷「あっ、すごい……落ち着く……あんまー……」

P「よし! 次は八だな!」

P「八にはとにかく十と目と一だ! 干冒から引っこ抜いてぶっかけろ!」

尹織「引っこ抜くって、簡単に言うんじゃないわよ!」

奏香「それにプロデューサーさん!
   引っこ抜いちゃうと干冒ちゃんが日ちゃんになっちゃいますよ!?」

亞美「そしたら今度は干冒お姉ちゃんが危なくなるんじゃないの!?」

P「ぐっ……そ、そうか。しかし他に十はどこにも……!」

葎仔「何言ってるんですかプロデューサー! 私に二つくっついてるじゃないですか!」

P「え……あぁ! ほ、本当だ!」

葎仔「こうなったらイチかバチか、私たち三人でもう一度ぶつかってみるしかありません!」

貴「そうですね、事態は一刻を争います。迷っている暇はありません……!」

亞美「もうやるしかないっしょー!」

P「わ、わかった! なら葎仔、やってくれ!」

葎仔「はい! それじゃあ行くわよ干冒、八! 準備はいい?」

干冒「え、えぇ!」

八「……?」

葎仔&干冒「せーの、えーい!」ゴツン!

具「いたっ……!」

十日「くっ……!」

小鳥「ああっ、惜しい!」

尹織「ちょっと葎仔! あんただけ勢いが足りなかったんじゃないの!?」

葎仔「そ、そんなことないわよ!」

具「あ、あれ? ボクは何を……」

奏香「! 具、思い出したの?」

具「は、はい、なんとか……。あれ、でもボクって具で良かったんだっけ……」

P「よ、良かった。完璧ではないにしろ、
 取り敢えず自我を保てる程度には回復したようだ」

具「すみません……なんだか迷惑かけちゃったみたいで」

亞美「いやー、安心したよー。
   でも真美の出番は必要なかったみたいだね。一応呼んではおいたんだけど」

葎仔「できればあの子が来るまでには解決しておきたいわね。
   なんかまた混乱が起きそうだし……」

奏香「ところで、十日ちゃんは大丈夫なの……?
   なんか、だいぶ具に持って行かれちゃったみたいだけど」

十日「だ、大丈夫……だと思うわ。でも、少しギリギリな気も……」

小鳥「じゃあもう一回チャレンジしてみた方がいいんじゃ……?
   よく分からないんですけど、葎仔さんは何も変わってないですよね?」

亞美「葎っちゃんのを十日お姉ちゃんにちょっと分けてあげたら、
   だいぶゴールに近づくっぽいよ!」

葎仔「そ、そうね……。私の方は多分、これ以上増えそうにはないし、
   少なくとも悪化することはない……はず。
   よし、やってみましょう、十日!」

十日「え、えぇ、わかったわ。お願い、葎仔」

葎仔「行くわよ! せーのっ……えいっ!」ゴツン!

P「やったか!?」

早「くっ……!」

P「違うそうじゃない!」

尹織「きーーーーーっ! なんなのよもう!」

奏香「あっ、でもさっきよりちょっと近付いた気がしません!?
   ねぇ早ちゃん、気分はどう!?」

早「気分ですって……? そんなことより、早く解決する方が先でしょう!?」

奏香「えっ?」

早「急ぎましょうプロデューサー! 私には時間がないんです!」

P「お、おいどうした早! そんなに慌てて……」

早「早くしてください! ほら早く早く!」

早「あぁもうじっとしてられない! 早くしないと!」シュババババ

P「は、早くったってお前……ってなんだその動き!?」

葎仔「あ、あまりのスピードに風が舞い上がってる……!」

尹織「ちょっと、誰か早を止めなさいよ!」

 ガチャッ

雪歩「おはようございますぅ」

P「雪歩!」

雪歩「……」

早「あっ、萩原さん!」シュバババババ

雪歩「……す、すみません。私、事務所を間違えちゃったみたいですぅ。
   お邪魔しました。失礼しますぅ……」

奏香「ああっ、待って雪歩! 合ってるから! ここ765プロの事務所だから!」

雪歩「え、だ、だってプロデューサー以外は知らない人ばっかりだし……」

P「実はかくかくしかじかなんだよ!」

雪歩「あ……なんだそういうことだったんですね。
   ……ってい゛えええええええ!?」

葎仔「驚くのも無理はないわ。でも落ち着いてちょうだい!」

雪歩「お、落ち着いてなんかいられませんよぉ! 大事件じゃないですか!
   私、こんな物足りない感じの具ちゃんや四条さんは嫌ですぅ!」

具「そりゃボクだって嫌だよ……」

貴「しかし、いいですか雪歩?
  こういう時こそ冷静に解決策を練らなけれ」

早「冷静になんてなってる場合じゃありません!」シュバババババ

早「さぁみんな急ぎましょう早く! 早く早く!」シュババババババ

P「ちょっ、だからおまっ、止ま、おい早、ストッ……あ゛あ゛ッ!!」

尹織「ああああもう鬱陶しいわね!!」

奏香「っ! そ、そうだ、もしかしたら雪歩なら早ちゃんを止められるかも!」

葎仔「あ……わかったわ、そういうことね! ちょっと雪歩、こっちに来なさい!」

雪歩「えっ!? な、なんですか!? 怖いですぅ!」

奏香「ごめん雪歩! イチかバチか……えーい!」

雪歩&早「あうっ!?」ゴチンッ!

奏香「ど、どう!? 上手くいってれば多分……!」

雪少「ひぃ~~~ん! 痛いよぉ、いきなり何するの奏香ちゃん!」

止早「」

葎仔「やった! 成功よ!」

P「よ、ようやく止まってくれたか……! でかしたぞ奏香!」

奏香「えへへ……」

雪少「くすん……たんこぶとか出来てないかな。鏡、鏡……。
   ……い゛えええええええええ!!!!????」

雪少「あ、あんまりですぅ! 奏香ちゃん、これどうやったら治るの!?」

奏香「えっ? あ、えっと……」

雪少「も、もしかして一生このままなんじゃ……。
   ぐすっ……ひんそーでちんちくりんなばっかりか雪少になった私なんて、
   もう、もう……穴掘って埋まってますぅ~~~~~!」

やおい「ええええっ!? 穴掘っちゃうんですか!? やおい穴ですかーーー!?」

尹織「やめなさいやおい! 目を覚まして!」

小鳥「やおい穴……はっ! だ、だめよ小鳥! 今はそんなこと考えてる場合じゃ……!」

奏香「お、落ち着いて雪少! きっと大丈夫! 大丈夫だから!」

P「い、いいか、聞くんだみんな!
 せっかく止早が大人しくなったんだから、今のうちに解決策を練ろう!」

貴「あの……プロデューサー。そのことなのですが……」

P「貴! 何かいい案があるのか!?」

貴「い、いえそうではなくて……止早の様子が、何かおかしいような……」

P「え?」

止 早「……」プルプルプル

葎仔「なっ……!? ぶ、分離しようとしてる!?」

具「そ、そんな! せっかく止まったのに!」

P「くそっ、やはり無理矢理過ぎて繋がりが弱かったのか!」

止  早「あ、あ……」ブルブルブル

貴「このままではもちません! 『止』が弾き飛ばされてしまいます!」

雪少「ひぃぃぃぃ!」

P「み、みんな! 今すぐ伏せ……」

 バァン!

葎仔「ぐはっ!?」ガツンッ!

尹織「葎仔ーーーーっ! ……って、あら!?」

律仔「いたたたたた……な、なんで私の方に……」

具「り、律仔! ちょっと元に戻ってるよ! 余計な部分がなくなってる!」

律仔「え……? ほ、本当だ! 今の衝撃で吹き飛んだんだわ!」

P「待てよ、それじゃあその吹き飛んだ部分はどこへ……」

草「wwwwwwwwwww」

P「お前かよ!!!!!」

奏香「草ちゃん!? なんで!?」

P「なんでお前ばっかこんな変わるんだオイ!」

草「私に言われても困りますwwwwwwww
  どうして私ばかりこんな目にwwwwwwwww」

雪少「な、何がおかしいの草ちゃん……。全然笑えないよぉ!」

草「えwww笑ってるって誰がwwww」

貴「あ、あなたですよ、如月草……」

草「なっwwwwそ、そんなwwwwwww」

尹織「自覚がないなら黙っててちょうだい!
   なんだか分からないけど、ものすっごく腹が立つわ!」

律仔「そ、そうね。半分は私のせいみたいなものだから申し訳ないけど、
   せめてもうちょっと静かに喋ることはできないかしら……?」

草「静かにって、こう?w」

尹織「……」

草「どうかしらw これなら大丈夫でしょう?w」

律仔「……ごめんなさい。やっぱり黙ってて」

草「えw」

P「くそっ、どうすればいいんだ……!
 結局『止』はどこかへ飛んでいってしまったし、
 これ以上何かやっても悪化する気しかしない!」

小鳥「そ、そうですね。もう下手に動かない方が……」

 ガチャッ

真美「おっまたせーい!
   呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん! 双海真美、参上だよーん!」

亞美「! 真美!」

真美「えっ? あれ……? なんか亞美、変じゃない? そんなんだっけ……?」

具「あはは……まぁ色々あってね」

真美「んんっ!? まこち……んんっ!?」

P「混乱するのもわかるが落ち着け真美、一旦落ち着け」

真美「兄ちゃん……そっか、亞美がまこちんを助けてって言ってたのは
   こういうことだったんだね!
   タックルすればまこちんは元通りなんだよね!?」

P「え? いやもう別にいいというか山は超えたというか……」

真美「待っててまこちん! 真美が今助けてあげるよ!」

具「え!? ま、待って真美! ボクはもうそんなに……」

真美「とぉりゃああああああああ!」

具「真美ストップ! ストッ……うわぁああ!」ドンガラガッシャーン!

奏香「だ、大丈夫二人とも!?」

真「いたたた……」

律仔「! も、元に戻ってる!?」

P「そ、そうか! 良かったな! 取り敢えず真は元通りだ!」

真「えっ、本当! いやー、わざわざ助けに来た甲斐があったよ~」

P「え?」

真「んっふっふ~。ねぇ兄ちゃん、真えらい?
  えらいっしょー? 褒めて褒めて!」

貴「こ、これはもしや……」

具美「いてて……。こら真、危ないじゃないか! いくらなんでも無理矢理すぎるよ!」

具美「……って、あれ? ボ、ボクが二人……いや違う、そんなはずは……」

律仔「も……戻ってないわ二人とも!
   それどころか余計に訳のわからないことになってる!」

真「へっ? なに葎っちゃん、どういうこと?」

P「美が移ったんだ! まずい、今までの感じからするとこのままでは……!」

具美「うっ……な、なに? この感覚……なんか……」

真「兄ちゃ……い、いや、プロデューサー……?
  あ、あれ? ボ、ボク、は……」

奏香「あ、あぁ、そんな……!」

真「へへっ、なんかバリバリ元気出てきましたよ!」

具美「ん~……なんか物足りないけど、別にいっか。
   さっきより落ち着いたっぽいし。ね、兄ちゃん!」

P「やはりそうだ……! 名前に人格を支配されてしまった!」

亞美「うあうあー! これじゃ亞美たち、もう全然双子じゃないよー!」

尹織「もうわけわかんない! どうすりゃいいのよこんなの!」

 ガチャッ

美希「おはようなのー。……あふぅ」

草「美希wwwwwwwwww」

美希「? 誰? 事務所に知らない人がいっぱいいるの」

真「知らない人だなんて酷いなぁ。美希、ボクのこと忘れちゃったの?」

美希「あっ、真くんだ! おはようなのー」

亞美「ち、違うよミキミキ! 真は真だけど、まこちんじゃないんだよー!」

美希「……? あれっ、ほんとだね。よく見たら違うの。
   むー……これどういうことなの? 意味わかんないってカンジ!」

P「実はかくかくしかじかでな……」

美希「へー、そっか。大変なんだね」

尹織「そんな他人事みたいに言ってんじゃないわよ!」

美希「でも取り敢えず真くん……じゃなくて、真だけは元に戻せるって思うな。
   だって、ミキもおんなじようなの持ってるし」

律仔「それが簡単にできたら苦労してないんだけどね……」

希「はい真、これあげるの☆」ブチッ

一同「!?」

真美「へっ? あ……あれ!? 真美、元に戻ってる!?」

具美「うあうあー! なんで!? どうやったの!?」

亞美「もしかして、自分で取り外しできるの!?」

希「うん、できるよ? みんなはできないの?」

尹織「や……やるじゃない希!
   じゃ、じゃあ私にもちょっと貸してちょうだい! その斜めのやつと縦のやつ!」

雪少「そ、それじゃあ私も! 縦二つと、横二つ……!」

希「えーっと、ちょっと待ってね。斜めと、縦と、縦と、横と……」ブチッブチッブチッ

P「ま、待て希! そんなに一気に外したりしたら……!」

伊織「や……やったわ! これでいつもの伊織ちゃんよ!」

雪歩「私もいつもの雪歩ですぅ!」

奏香「す、すごい! 本当に戻ってる!」

乂「あはっ☆ 二人ともよかったね!」

P「誰だお前!?」

乂「誰って、乂は乂だよ? ……あれ? 乂って誰だっけ……?」

具美「うあうあー! これじゃあ具美が八になった時と同じっぽいよー!」

P「と、取り敢えず真美! お前の美はもともと乂のものだろ! それを返すんだ!」

真美「えっ!? で、でも真美、せっかく元に戻れたのに……」

P「美はあとで具美から返してもらいなさい! さぁ早くその美を乂に返すんだ!」

真美「わ、わかったよー! でもできるか分かんないかんね!? えいやっ!」ゴチンッ!

乂「あうっ!?」ゴツンッ!

支「いたたた……いきなり何?」

貝美「ほらやっぱダメじゃん!」

貴「むしろ遠ざかってしまったような……」

P「ちくしょう!!!!!」

小鳥「あっ……! た、大変ですプロデューサーさん!」

P「なんですか!? これ以上に大変なことがあるとでも!?」

小鳥「みんなが出演する生放送の時間がもうすぐなんです!」

P「えええええええええええええええええええ!!!!?????」

P「ぜ、全員出演の生放送!? そんな予定ありましたっけ!?」

小鳥「ありましたよぉ! だからこうしてみんな事務所に集まってるんです!」

P「な、なんてことだ……でもこんな状態じゃ……!」

奏香「プロデューサーさん……! 出ましょう! 出るしかありません!
   ファンの皆さんは、きっと楽しみにしてくれてるはずです!
   そんな皆さんの期待を裏切るわけにはいきませんよ!」

P「い、いやしかし、このまま出たとしてもそれはそれで期待を裏切るような……」

奏香「確かに、失敗しちゃうかも知れません……。
   だけど私、精一杯やりたいんです! ここで諦めて後悔したくないから!
   もしかしたら、もっといい方法があるのかもだけど……。
   でも……私は、日海奏香だから!」

P「いや誰だよ!!!!!」




P(……結局予定通り全員生出演することになってしまった……)

伊織「テ……テレビの前のみんな、元気~!?
   え、えーっと、今日の司会は伊織ちゃんと……」

雪歩「ゆ、雪歩の二人で、お送りしますぅ!」

伊織「そ、それじゃあ早速、最初のコーナー行ってみよー!
   最初はみんなで歌を歌うわよー!」

雪歩「き、聞いてください! 765PRO ALLSTARSで……」

伊織&雪歩「THE IDOLM@STER!」

奏香「もーう伏し目がちな昨日なーんていらない♪」

律仔「今日これから始まる私の伝説♪」

草「きっと男が見ればwwwwww他愛のない過ちwwwwwwwwww」

あずき「なんでもな~い~なんでもな~い~♪」

亞美「あずきお姉ちゃん、それ違う歌!」

郷「でいご~の花が咲き~♪」

貴「郷、それも間違っております……!」

貝美「わっ……! ちょ、ちょっと具美、そこ貝美のポジションだよ!」

具美「えーっ! 違うよ具美のポジションだよ!」

草「機嫌取るにはwwww何よりwwwwプレゼントwwwwwwwwwww」

やおい「男では耐えられない痛みってなんですか!? やおい穴ですかー!?」

支「ここはどこ……私は誰……」

あずき「あっという間に~あっという間に~♪」

郷「はいさいおーじさんっ♪ はいさいおーじさんっ♪」

伊織「きーーーーーっ!! もう滅茶苦茶よ!!」

雪歩「や、やっぱり私なんかが司会しちゃいけなかったんですぅ!
   穴掘って埋まってますぅ~~~~~~~!!!」

P「……ゆ、夢だ。これは夢なんだ……!
 あははは! 目が覚めたらいつもの事務所なんだ! あははははははは!」




P「うぐぐ、夢だ、夢なんだ……はっ!?」

春香「あ、プロデューサーさん! 大丈夫ですか?
   なんだかうなされてましたけど……」

P「は……春香? こ、ここは……事務所……?」

美希「ハニー、大丈夫? ミキ心配だから、添い寝してあげようとしたんだけど……」

千早「ダメに決まってるでしょう? もう……」

P「み、美希、千早……」

響「あっ、プロデューサー起きたみたいだぞ!」

やよい「プロデューサー、おはようございまーす!」

雪歩「わ、私、お茶用意しますね」

真「それにしても事務所で寝ちゃうなんて珍しいですね、プロデューサー」

貴音「お疲れなら、一度休みを取られては……?」

伊織「そうね、倒れられたりなんかしたら迷惑だし。疲れてるなら休んじゃいなさい」

亜美「えーっ、兄ちゃんが居ないとつまんないよー」

真美「そうそう、イタズラもできないしね。んっふっふ~」

あずさ「あらあら、プロデューサーさんを困らせちゃダメよ。亜美ちゃん、真美ちゃん」

律子「まぁ確かに、最近のプロデューサーは働き詰めでしたからね。
   一日くらい休みを取っても……」

P「い……いや、大丈夫だ! 全然平気だぞ、ほらこの通り!」

春香「わっ! ほ、本当に平気ですか? 確かに元気そうですけど……」

P「あぁもちろんだ! いつもの765プロでいつも通り働ける!
 こんなに嬉しいことはこの世にない!」

律子「……? よく分かりませんけど、無理だけはしないでくださいね?」

P「大丈夫だって! それよりみんな、今日はレッスンだろ? さぁ早く行った行った!」

響「っと、そうだった……。よーし、真! 今日もダンス勝負だぞ!」

真「望むところだ! 昨日はやられちゃったけど、今日は負けないよ!」

やよい「それじゃあプロデューサー、行ってきまーっす!」

P「あぁ、行ってこい!」

P「……ふー……」

P(そうか、全部夢だったのか……。
 そりゃそうだよな、あんなのが現実なわけないし。でも良かった……)

小烏「プロデューサーさん? どうかしたんですか……?」

P「! 音無さん……いえ、実はさっき少し恐ろしい夢を見て……」

小烏「まあ、うふふっ。プロデューサーさんってば、可愛いところがあるんですね」

P「あはは……お恥ずかしい限りです。でも安心しましたよ。あれが夢で……」

P「……」

P「……ん?」


  おしまい

何これ

付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ様でした

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