勇者「ドジ、アホ、ポンコツ、チョロい」女騎士「ぜ、全部違うっ!」 (20)

【宿屋】


勇者「(……今日はあまり戦闘がなかったな……こういう日は大抵……)」


たったったっ……ばあんっ!

女騎士「うわぁぁん! 勇者ぁー! 財布落としたー!」


勇者「ほら来た……」


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勇者「またか」

勇者「(必要金額だけ持たせておいたのがせめてもの幸いか)」



女騎士「ど、どうしよう…!」

勇者「どうしようもないだろ。お前の小遣いはその分減らす」

女騎士「そ、そんなぁ…!」



女騎士「わ、わざとじゃないんだよぅ……!」

勇者「わざと落とされてたまるか。これで財布落とした回数は二桁だぞ」



女騎士「ぅぅ……これ以上減らされたらお菓子が買えなくなるぅ……」グスッ

勇者「子どもか」



女騎士「ううっ……気を付けてたのに……」

勇者「ドジめ」

女騎士「ど、ドジじゃない!」


【ピラミッド】


スフィンクス「汝らに問う」

女騎士「人間!」どやっ

スフィンクス「はっ?」

女騎士「答えは人間だ! 知ってるんだぞ!」ふんすっ

スフィンクス「……それが答えでいいのか?」

女騎士「もちろ……もがっ!?」

勇者「すまない。このアホは無視してくれていい。問いを教えてくれ」

女騎士「むー!」もごもご……


スフィンクス「川渡り問題だ。制限時間内に狼と山羊とキャベツの問題を答えろ」

女騎士「???」

勇者「分かった」



女騎士「なーなー、川渡り問題ってなんだ?」

勇者「飴やるから、静かにしてろ」

女騎士「ぐぬぬ……」ころころ…

スフィンクス「(大人しく舐めるのだな……)」



勇者「よし、これでどうだ」

スフィンクス「ほう、幾何的に答えたか。うむ、正解だ」

女騎士「ふふんっ、当然だ!」どやっ

スフィンクス「お主は飴を舐めてただけでは……」



勇者「アホめ」

女騎士「あ、アホじゃない!」


【ボス戦】


女騎士「喰らえ! でりゃぁっ! 」がきんっ

ドラゴン「ふん、人間の小娘の剣なぞ効かぬわ!」がっ

女騎士「きゃぁっ……!」

ドラゴン「他愛ない!」



勇者「はっ」ずどっ

ドラゴン「がっ……!? それは、聖剣……!?」

ばちちっ

ドラゴン「」しゅぅぅ……



勇者「やはり、聖剣は魔物に対して絶大な効力を発揮するな」

女騎士「ぅぅ……それズルいぞっ!」ぼろっ



勇者「生きてたか」

女騎士「生きてたよ! ばーか!」

勇者「ばかはお前だ。回復魔法かけてやるから、こっちに来い」

女騎士「そこはこっちに来いよ……! くそぅ……鬼……悪魔……」

勇者「それだけ悪態がつけるなら回復魔法は要らないか」

女騎士「ぐぬぬ……っ……お願いします、回復してください……」



しゅぅぅ……

女騎士「あー、死ぬかと思った……」はふぅ…

勇者「敵もかなり強くなってきた。お前の攻撃はもうロクに効かないな」

女騎士「う、うるさいなっ」



勇者「……そろそろ限界か」

勇者「(身体強化の魔法をできるだけかけてもこのケガ……もう普通の人の身じゃ無理だ)」

女騎士「っ……アタシは最後まで絶対についてくからな! そ、それにここらでも弱っちいのはまだ倒せるぞ……! あいたたたた……! もうちょい優しく……!」



勇者「ポンコツめ」

女騎士「ぽ、ポンコツじゃない!」


【魔王城近く】


女騎士「つ、ついに辿り着いたな……あそこに魔王がいるんだな!」

勇者「お前みたいなやつとでも来れるもんだな」

女騎士「ふふん、むしろアタシのおかげだろ」

勇者「役立たずがよく言う」

女騎士「役立たずじゃ……うぁ……?」くらっ…

勇者「お前は魔王との戦いには連れていけない。魔法で少し眠ってろ」

女騎士「勇者……っ、おま…………きゅぅっ……」zzz...



勇者「この辺りなら他の魔物もいないな」

女騎士「むにゃ……」zzz....

勇者「ふん、相変わらずのアホ面だな」


勇者「……迷惑かけられてばかりだったが、お前との旅は……悪くなかった」

【魔王戦】


勇者「ぐぁっ……」

魔王「ふん、この程度か勇者!」



勇者「(強い……今まで戦ってきた魔物たちが赤子のようだ……ここまでとは……)」げほっ…


勇者「(……出来れば使いたくなかったが、アレしかないか)」



魔王「ふん、滅びる覚悟は出来たか?」がしっ

勇者「……ばーか。こちとら、念には念を入れてるんだよ」

魔王「む?」


勇者「この距離ならお前でも致命傷だ」ぐぐっ……

魔王「……っ! 女神の力で自爆するつもりか!? くっ、離せ!」



勇者「(利用されるだけのクソったれな人生だった…………まあ、どっかのバカのおかげで最後は少し楽しかったが……)」



勇者「……ありがとな」ぼそっ








女騎士「でやぁぁあ!」ガキンッ




魔王「しめたっ……!」



勇者「…………」



女騎士「ふぅ! 間に合って良かった! まったく、ピンチを救ったんだから感謝しろよ!」

勇者「こぉの…………どアホがぁぁ!」ぐりぐりぐり……

女騎士「あだだだだ……っ!? なんで……!?」



魔王「くっくっくっ、惜しかったな勇者! その小娘さえ邪魔しなければ、我輩を滅ぼすことができたというに!」

女騎士「ええっ!?」

魔王「ここからは、ひたすら魔法でなぶってやる! もはや貴様らに打つ手はないぞ! ふはは!」



女騎士「もしかして、また勇者の邪魔したかぁ……?」うるうる…

勇者「……お前はいつだって俺の邪魔ばかりだ!」

女騎士「うぅ……」



勇者「…………ったく」



勇者「絶対生きて帰るぞ。俺もお前も」


女騎士「!!」



女騎士「ああ!」

・・・

魔王「くくく……」



勇者「はぁ…はぁ…」

女騎士「はひぃぃ……」



魔王「よくぞ我を打ち滅ぼした勇者たちよ……」しゅぅぅ…



女騎士「勝った! 勝ったな勇者!」だきっ

勇者「抱き着くな」



魔王「…………しかし、貴様のその憎しみに囚われた瞳を見れば分かる……貴様は魔王の力に取り込まれ、次なる魔王へと……」



女騎士「勇者ぁ……もう疲れたよぉぉ……」ぐてぇ…

勇者「俺だって疲れた……寄りかかるな、鬱陶しい……」ぐぃぃ

女騎士「あぅぅ……」



魔王「あ、これ、魔王の魂引き継がれねえな……悪態つきながらどこまでも優しい目をしてやがる。憎しみのカケラもねえ」



魔王「ぐわぁぁぁ……リア充爆発しろぉぉぉ………!」



悲痛な叫びと共に魔王は滅びた。



【凱旋の道中】


女騎士「帰ったら、いっぱい褒美が手に入るな!」

勇者「どうだろうな。危険な存在として消されるかもしれない」



女騎士「勇者いつもネガティヴだなぁ……きっと、たくさん感謝されて、美味しいものが食べられるに違いないぞ!」

勇者「能天気なやつめ……」



女騎士「勇者はお姫様と結婚できるんじゃないか? 姫様の勇者を見つめる視線は恋する乙女だったからなー。うりうり、幸せ者めー」

勇者「……やかましい」



女騎士「……」

勇者「……? 急に黙り込んでどうした?」



女騎士「やっぱり……姫さまと結婚できるとしたら、喜んでするよなぁ……」

勇者「……泣いてるのか?」

女騎士「な、泣いてなんかないっ! 別にお前が誰と結婚しようが何とも思わないんだがらな……!」ぐすっ…


勇者「……」



勇者「……お前と結婚するって言ってもか?」

女騎士「は、はあぁ……!?」



勇者「……チョロいな」

女騎士「ちょ、チョロくない!」


女騎士「チョロくなんかない……だって、アタシはずっと前から……お前に助けてもらった、最初のあの時から、お前のことが……!」

勇者「……それ、やっぱりチョロいだろ」

女騎士「うぐっ……」



女騎士「なあ……結婚って……本気なのか……?」


勇者「……俺がそんな冗談を言う男だと思ってるのか?」


女騎士「……」


勇者「……何をぼけっとしてる。早く帰るぞ」ざっざっ


女騎士「ま、待てっ! あっ……勇者の耳が赤い!」


勇者「やかましい……っ」



なーなー! もう一回! ちゃんと言え!

くっつくな! きびきび歩けドジアホポンコツチョロ女騎士!

チョロいのはむしろそっちだ! チョロ勇者! 大好き!




ぎゃーぎゃー……!!




完!

くうつか
これにてかんけつです

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