シャドウ「よくも魔大陸に置き去りにしてくれたな……!」 (27)

― 瓦礫の塔 ―

ロック「いよいよ、この先にケフカがいるはずだ……みんな、準備はいいか?」

セリス「うん!」

ティナ「大丈夫!」

エドガー「いつでもいいぞ」

マッシュ「ここまできたら絶対勝とうぜ!」

カイエン「拙者、武者震いしてるでござる!」

ガウ「ガウッ!」

セッツァー「今までで一番でかいギャンブルになりそうだな」

リルム「じじい、足手まといにならないでよ!」

ストラゴス「分かっとるわい」

モグ「世界を救うクポ!」

ウーマロ「ウガーッ!」

ゴゴ「ウガーッ!」

ロック「よし、行こう!」

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ロック「誰か倒れてる!」

セリス「まさか……私たちより先にケフカに挑んだ人がいたんじゃ……」

ティナ「いえ、あれは……!」

ロック「ケフカ!?」





ケフカ「……ぐ」

ロック「ケフカ! なんでお前が倒れてるんだ!?」

ケフカ「う、うぐ……」

ケフカ「破壊しようとしたら……破壊されちゃった……」

ケフカ「シ、シンジラレナーイ……」ガクッ

ロック「死んだ……」

マッシュ「ケフカはとんでもなく強くなってたはずなのに、どうなってんだ!?」

リルム「あっ、あそこに誰かいるよ!」

ロック「あれは――」

ロック「シャドウ!!?」




シャドウ「よく来たな、お前たち」

シャドウ「全員必ず来ると思って、相応しい言葉を一生懸命考えていたが――」

シャドウ「言いたいことは一つしかない」

シャドウ「よくも魔大陸に置き去りにしてくれたな……!」

シャドウ「奇跡的に俺は生き残り、ケフカを始末した」

シャドウ「次はお前たちの番だ……!」

シャドウ「必ず戻ってみせるっていったのに、俺を置き去りにした恨み、晴らしてくれる!」

ロック「うう……」

ロック「で、でも……あんな風にいわれたら、シャドウなら大丈夫だって思っちゃうじゃん!」

セリス「そうよ! あなたなら独自に脱出方法持ってそうな雰囲気あったし!」

ティナ「それに時間制限もあって、焦っていたし……」

シャドウ「うるさい!」

シャドウ「何人か知らん顔もいるが、全員まとめてあの世に送ってやる!」

シャドウ「まずは金縛りにしてやろう」ズオォォォォ…



ロック「う、動けない!」

セリス「どうなってるの!? とんでもない力だわ!」

マッシュ「俺の筋肉でも抜け出せそうにないぜ!」

ティナ「だったら私が変身して……」シュンッ

エドガー「そうか! トランスしたティナなら抜け出せるはず……!」

ティナ「……!」

ティナ「ダメ! ビクともしない!」

ロック「なんだって!?」

セリス「トランスしたティナでも無理だなんて……!」

エドガー「シャドウはたしかに優れた暗殺者だったが、こんな力を持っていたのか!?」

カイエン「いや……これは彼一人の力ではござらんな」

ロック「どういうことだ、カイエン?」

カイエン「この感覚、あの時と似ているのでござる!」

カイエン「アレクソウルという魔物に心を乗っ取られた時と……」

ロック「アレクソウルってのは、たしか怨念の集合体みたいな奴だったよな?」

ロック「つまり、シャドウの力の源は怨念ってことか!?」

カイエン「その通り……」

カイエン「なんというか、何百、何千、何万という数のシャドウ殿の怨念を感じるのでござる」

カイエン「よくも置き去りにしたな、と……」

ロック「何万て……シャドウは一人しかいないのに、なんでそんなに数がいるんだよ!」

カイエン「そんなこと、拙者に聞かれても……」

エドガー「よく分からんが、あのシャドウは大量の怨念に乗っ取られてる状態だってことか」

カイエン「多分そうでござる」

カイエン「その力があるからこそ、ケフカを倒し、拙者らを一網打尽にできたでござる」

セッツァー「やれやれ、とんでもないことになっちまったな」

リルム「おじいちゃん……!」

ストラゴス「大丈夫、お前のことはわしが守るゾイ!」

ストラゴス(彼の正体はおそらくリルムの……このままじゃ最悪の結末になってしまうゾイ!)

シャドウ「さぁ、おしゃべりの時間は終わりだ」

シャドウ「手裏剣を急所に投げつけ、一人一人葬ってやろう」サッ



セリス「くっ、動けない……!」

ティナ「ここまでなの……!?」

ロック「ん……!」キィィィィン…

ロック(フェニックスの魔石が、反応してる……!?)キィィィィン…

『やめろ……』

シャドウ「誰だ!?」

『やめろ……クライド……』

シャドウ「なぜ俺の本名を!? ――ま、まさか!?」

『そうだ……俺さ……』

シャドウ「ビリー!?」

シャドウ「なぜ!? なぜお前がここに!?」

ビリー『俺はずっと……あの世からお前を見ていた……』

ビリー『あの世ってのは不思議な場所で、過去も未来もなく、しかも色んな並行世界を覗くことができるんだが』

ビリー『クライド……お前は多くの世界で仲間たちによって魔大陸に置き去りにされ、死んでいった』

シャドウ「……そうなのか!」

シャドウ「だが俺がお前にした仕打ちを思うと、当然の結末なのかもしれないな」

シャドウ「俺とて、お前を置き去りにしたんだから……」

ビリー『最初の内は……そうだった』

ビリー『魔大陸で死んでいくお前を見て、俺を見捨てた報いだ、と思った』

ビリー『だが、流石にだんだん辛くなってきてな』

ビリー『魔大陸に何度も何度も置き去りにされるお前を不憫に感じるようになっていき……』

ビリー『今となっては、お前に救われて欲しいとすら思うようになった』

シャドウ「そんな……俺は救われていいはずはない!」

シャドウ「俺はもっともっと苦しんで死ぬべきなんだ!」

ビリー『そう……それこそが今、お前を突き動かしている怨念の正体だ!』

シャドウ「!」

ビリー『魔大陸で命を落とす時、お前は自分が死ぬと認識する暇もないほどあっさり即死する』

ビリー『そうして天に召された魂は、こう考える』

ビリー『親友を見捨てた俺がこんな楽に死んでいいのか、と』

ビリー『そのようにして積み重なった怨念は、数千、数万と重なっていき……』

ビリー『この世界のクライド、つまりお前に乗り移ったんだ』

ビリー『その結果、お前は魔大陸の崩壊を生き延び、あのケフカって奴も容易く倒すことができた』

シャドウ「……」



エドガー「そういうことか……」

エドガー「並行世界で魔大陸に置き去りにされた無数のシャドウたちは」

エドガー「俺たちに置き去りにされたことを恨んでいたんじゃなく」

エドガー「魔大陸で楽に死んでしまったことを悔いて、怨念になってしまったんだ……」

ビリー『だが……もういいんだ』

ビリー『クライドよ……無数のクライドの怨念よ……俺はもうお前を許している』

ビリー『それどころか、平和になった世界で、平穏に暮らして欲しいと願っている』

シャドウ「ビリー……だけど俺は……!」

ビリー『おっと、そろそろ時間が来たようだ』

ビリー『じゃあな……また俺の頼みを聞かなかったら、今度という今度は許さないぜ……』

シャドウ「ビリー!!!」

……

……

シャドウ「……俺の中の無数の怨念が、消えた……」

マッシュ「よっしゃ、帰ろうぜ、シャドウ!」

ガウ「みんなで、ここをでるー!」

モグ「脱出クポー!」

シャドウ「俺はお前たちを殺しかけたんだぞ……許してくれるのか?」

マッシュ「当たり前だろ? 別に死んだわけじゃねえしな! なぁ、みんな?」

「うん!!!」

マッシュ「だってさ」

シャドウ「……すまん」

ゴゴゴゴゴ……!

セリス「きゃっ!?」

ロック「どうやら、この塔が崩れるみたいだ。みんな、脱出しよう!」

ティナ「私がみんなを導くわ!」

ゴゴ「ゴゴゴゴゴ……!」

エドガー「物真似しなくていいから」

ティナ「こっちよ!」

ロック「急げーっ!」



シャドウ「ぐ……!」ヨロヨロ…

シャドウ(あれほどの力を行使した影響か、体がいうことを聞かない……)

シャドウ(どうやら俺は……この崩れゆく塔で死んでいく定めのようだ……)

シャドウ(すまないビリー……お前の頼みを聞けそうにない……)

リルム「ちょっとちょっと、なにやってるの!」

シャドウ「!」

リルム「うひょひょ野郎をやっつけたあなたが死んじゃったら、後味悪くなっちゃうじゃん!」

リルム「それにインターセプターちゃんも外で待ってるんだから……」

シャドウ(インターセプター……生きていたか……)

リルム「リルムがひきずってあげるから、一緒に行こう!」

ストラゴス「わしも手伝うゾイ!」

シャドウ「……すまん」

ストラゴス「よいしょ! よいしょ! 重いゾイ!」

リルム「もう二度と、あなたを置き去りになんかしないからね!」

シャドウ「……ありがとう」ズルズル…



ストラゴス(おっと……わしとしたことがちょっと涙が……)ホロリ…







― おわり ―

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