【FEif】♀カムイ「逆ハーレム……ですか?」 (460)

※前置き注意
・ネタバレあり、透魔ルートで進行
・全員と合流済み、終章ちょっと前くらいまで
・♀カムイ(以下、カムイ)は敬語口調、全員と支援A

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カムイ・マイルームにて

カムイ「念願かなって、ようやく暗夜と白夜が手を取り合う事になりました」

カムイ「進軍も順調ですし、あとは透魔王を倒すだけ……倒すだけ、なのですが」

カムイ「何やら暗夜白夜間の仲が、思わしくありません。主に支援会話が不穏です……」

カムイ「ほとんど皆さん、疑心か不信から会話が始まってますし……ゼロさんなんて、ツバキさんの命を本気で狙っていた節もありますし……」

カムイ「レオンさんとタクミさんの支援Cとか、『えっ、これむしろ仲悪くなってない?』と思うほどギスギスした内容でした。B以降は和んだから良かったですが……」

カムイ「兄さん達に至っては、基本、私に関する話しかしてませんし……この戦いで私に何かあった時、また戦争再開してしまうのではないかと、気が気じゃありません……」

カムイ「暗夜と白夜が真に手を取り合うために、私に出来る事は無いんでしょうか……私なんかには、到底無理なんでしょうか……」

カムイ「私は……一体、どうすれば………………」


アクア「話は聞かせてもらったわ」ババァ――z__ン!

カムイ「あ、アクアさん!」

アクア「カムイ……アナタの危惧は間違いではないわ。共通の敵を戴いたとはいえ、長年争ってきた国同士……表面化していないだけで、積年の怨恨は汚泥のような暗い感情となって腹の底に溜まっているはず」

アクア「戦とは、生き物よ。誰かの言動やミス、もしかしたらもっと些細な事が引き鉄となって、積み重なった憤懣が爆発し、それまで積み上げてきた全てをひっくり返されてしまうかもしれないわ」

カムイ「アクアさん、歌姫の主張とは思えません……さすがです!」

アクア「想像してみて。MAPの終盤も終盤……命中98%を信じて送り出したツバキがものの見事に外し、速さの低さゆえに二回連続で反撃を受け、しかも3%の必殺を喰らってアハ顔ダブルピースを晒す事になったらとしたら……カムイ、たとえアナタでも耐えられるかしら?」

カムイ「そ、そんな……そんなの、想像しただけでも耐えられません! 難易度ルナティックだしリセットせず進めちゃおっかなー、なんて……考えるだけで恐ろしいです!」

アクア「そうでしょう? アナタでさえ、そうなんだから……暗夜・白夜の混成軍なんて、崩壊待ったなしよ。たった1ツバキのために一発ゲームオーバー、花が散るわ」

カムイ「そんなっ……私のごり押し采配のせいで、また皆が犠牲になるなんてっ……」

アクア「問題は戦闘だけじゃないわ。カムイ、アナタ……皆との支援をAまで高めて、誰ともSにしていないわね? 全員にSランプが点灯しているにも関わらず……」

カムイ「はいっ。資料館を充実させるために、がんばりましたっ! えへへっ」

アクア「かわいい。……じゃなく、それが問題なのよ。飢えた男達は焦れに焦れ、夜な夜な星空を見上げてはセンチメンタルにため息を吐き、カムイを想って自らを慰める日々が続いているわ」

アクア「〝if ひとり思う〟が卑猥な意味で使われている現状よ」

カムイ「みずからをなぐさめる? ……良く分かりませんけど、そうなんですか?」

アクア「サイラス辺りは〝カムイとイキたい場所リスト〟を作って妄想に耽ってるし」

アクア「スズカゼは護衛、サイゾウは監視の名目でカムイをストーキングしてイイ感じに昂ってるわ」

アクア「レオンはトマトをカムイに見立ててキスの練習、マークスなんて口を開けば『鎧が、邪魔だな……』しか言わない壊れた暗夜王症候群を患っているわ」

カムイ「レオンさんは何だかカワイイ気がしますけど……ああ、そういえばマークス兄さん、道端で会っても『わ、私と風呂に入りたいのか!? いや、しかしっ……』って葛藤してました。ふふっ、お風呂じゃないのに、うっかりさんですねっ」

アクア「笑い事じゃないわ。そんな感じで皆が皆、カムイを狙って壊れ始めてる現状……」

アクア「これでカムイが誰か一人を選ぼうものなら、溜まりに溜まっていた情欲と鬱憤の全てが爆発し、カムイを巡る争いが勃発してしまうのは間違いないわ」

カムイ「そ、そんな……せっかく、せっかく皆、ようやく手を取り合えたのに……そんなのダメです! アクアさん、私は……私はどうすれば!?」

アクア「カムイ……安心して、たった一つ……両国の不和も、マークスをはじめ壊れ始めてる男性陣の現状も……全てを解決する、唯一にして最上の方法があるから」

カムイ「そ、それは一体……アクアさん、教えてください! お願いします!」

アクア「ええ、カムイのためだもの、もちろんよ。……その方法とは」



アクア「逆ハーレムよ!」

カムイ「逆ハーレム……ですか?」

アクア「カムイ。アナタは……キョウダイと仲が良いわよね? キョウダイの事を大切に思っているし、大好きでしょう?」

カムイ「はいっ、もちろんですっ。暗夜も白夜も、どちらのキョウダイもかけがえのない人達ですし、だからこそ、この道を選んだんです!」

アクア「そうよね。けど、それなら……暗夜と白夜の皆が、キョウダイになれたら……万事解決する、と思わない?」

カムイ「ふぇ? それは、確かに素敵ですけど……とても現実的とは……」

アクア「いいえ、できるわ……アナタにならできるのよ、カムイ。この軍は、そもそもアナタを通じて一つになったの」

アクア「なればこそ、アナタがこの軍の男性達を全て受け入れれば、アナタを通して皆はキョウダイになれる」

アクア「皆が本当の意味で……真の家族となれるのよ」

カムイ「私が頑張れば……皆さんが、家族に……キョウダイに? …………」

アクア「……まあキョウダイといっても、穴キョウダイっていうのかしら。ぷぷっ」

カムイ「っ……アクアさんっ!」

アクア「……そうよね、ごめんなさい……いくら何でも、無茶苦茶よね……」


カムイ「さすがですっ!」

アクア「あらま」

カムイ「アクアさん……私、がんばりますっ! 皆が真に手を取り合えるよう……えーと、あなキョーダイ? になれるようにっ! 私は、私はっ……」

カムイ「逆ハーレムっていうの、やってみますっ!」

アクア「ふっ……その言葉が聞きたかったわ。……ところでちょっと不安だから聞いておきたいのだけど、カムイは普通の恋愛がどういう事なのかくらいは、分かってる?」

カムイ「もちろんです。読書が趣味ですから、一通りは!」

アクア「申し分ないわね。じゃあ早速、男共を片っ端からぶち落としにいきましょう」

カムイ「はいっ! ……あ、でも……」

アクア「? どうしたの、カムイ。気になる事があれば、何でも言って?」

カムイ「は、はい。逆ハーレム、って……結果的に、男の人達を独占する事になりますよね? それって、女性陣は納得してくれるんでしょうか……ほら、特にオボロさんとか、シャーロッテさんとか……」

アクア「カムイ……そうよね、優しいアナタの事だもの、気になっちゃうわよね……けど、大丈夫よ」

カムイ「大丈夫って……それは、どうしてですか?」

アクア「きっとどこかの誰かが〝♂カムイ「ハーレム……だって?」〟とか書いて補完してくれるわ」

カムイ「さすがです、アクアさん」

アクア「じゃ、心置きなくいきましょう」

カムイ「はい! カムイ、がんばりますっ!」

アクア「さて……じゃあまず、誰から攻めていくか、という話だけど」

カムイ「はい。最初の一人が重要ですよね。きっと、今後のためにも……」

アクア「さすが難易度ルナティックに揉まれてきただけあるわね。その通り……この後に弾みをつけるために、また協力を仰ぐためにも、これ以上ないほど重要よ。まあ大方の目星はつけてるんだけどね」

カムイ「えっ、アクアさんもですか? ふふっ、実は私も、この人かなー、という人がいるんですっ。もしかすると、同じ人を思い浮かべてるかもですねっ」

アクア「え、そうなの? ……じゃあ試しに、同時に言ってみる?」

カムイ「はいっ! じゃあ……せーのっ」



カムイ「ジョーカーさんっ!」

アクア「レオン」


カムイ「……あ、あれっ?」

アクア「……うーん」

カムイ「アクアさん、レオンさんが最初なんですか? ……私は、ジョーカーさんじゃないかなー、と思うんですけど……」

アクア「うーん……あー……カムイはなぜ、ジョーカーだと思うの?(まさかカムイは、本当はジョーカーの事が……?)」

カムイ「はいっ。だって第三の道を選んだ時、国も立場も超えて、真っ先に駆けつけてくれましたからっ! 今回も似た状況ですし、ジョーカーさんならきっと協力してくれますっ! 間違いないですっ!」

アクア「ああ、なるほど。……ちなみにジョーカーが、特別好き、とかじゃ……?」

カムイ「? 良く分かりませんけど……私は皆さんの事が、特別大好きですよっ」

アクア「小悪魔め。……まあジョーカーには気の毒だけど、カムイの戦いだものね。それにカムイは一度言い出したら聞かない所もあるし……最初はジョーカーで決定なのね?」

カムイ「はいっ! 折れたりしませんっ……夜刀神はともかく、私は決して折れません!」

やとのかみ「!?」

アクア「時々変なところで強情だものね、アナタ……まあいいわ。じゃ、最初はジョーカーにしましょう。……一応、注意しておくけれど」


アクア「ジョーカー、死ぬかもしれないから、気を付けてね」

カムイ「へ?」

そんなこんなでジョーカー、マイルームに来訪

ジョーカー「カムイ様、お呼びでしょうか。アナタの忠実なる従者にして最愛の男が参りました……この私めに、何なりとお申し付けください」

カムイ「ジョーカーさん! ありがとうございますっ……では、お願いがあるんですっ!」

ジョーカー「っ! か、かしこまりましたっ……左手の薬指は空けておりますっ! さあ、どうぞっ……いつでも、ご随意にっ!」



カムイ「私っ――逆ハーレムを作ろうと思うんですっ!」

ジョーカー「――――」

アクア(あ、ジョーカー死んだかしらコレ)←普通にカムイの横で見てる

カムイ「それで、ジョーカーさんにも協力してほしくて……ん? 聞こえてます? あの、ジョーカーさーん?」

ジョーカー「……ふふっ。全く、カムイ様はいつも私に衝撃を与えてくださる。逆ハーレム……ですね? かしこまりました、準備いたしますので、少々お待ちください。……」

カムイ「あっ、手伝ってくれるんですねっ!」

カムイ「……あの、ジョーカーさん、なぜ天井に縄を括りつけて……えっ、手首に暗器を当てると危ないですよ? あの……そ、それ毒薬です、飲んじゃダメですっ! ジョーカーさん、ジョーカーさんー!?」

アクア「やっぱりこうなったわね。とはいえ、ここまでオンパレードするとはね……仕方ないわ、力尽くで止めるわよ。せいっ」

ジョーカー「おげぅ」

カムイ「アクアさん、さすが素の力の成長率第三位です……頼りになりますね!」

アクア「……さてジョーカー、少しは落ち着いたかしら?」

ジョーカー(縛られて正座中)「……落ち着く? ははっ、俺は最初から落ち着いてますよ」

ジョーカー「落ち着いた上で、あっ死のう、と思った……それだけですよ」

アクア「なお悪いわ。……ほら、カムイからも何とか言ってあげて」

カムイ「…………ジョーカーさん」

ジョーカー「! かっカムイ様っ……くっ! カムイ様に何と言われようと、私はアナタが他の男の手に抱かれる所などっ……想像するだけでも耐えられません! ましてや、逆ハーレムなどとっ……そんなものを見るくらいなら、死んだ方がマシで――」

カムイ「―――ばかぁっ!」ビンタスパーンッ

ジョーカー「ひでぶぅっ!? ……か、カムイ様……?」

アクア(さすがDLCマップまで駆使して鍛えたカムイの力。尋常の威力じゃないわ)

カムイ「死ぬだなんてっ……そんな事、言わないでくださいっ! 北の城塞から、ずっと、ずっと一緒だったのに……」

カムイ「今さらアナタを失って、私が耐えられるとお思いですかっ……!? 死ぬだなんて……言っちゃ、イヤですっ! ……ひっく……」

ジョーカー「か、カムイ様……そんな、私なんぞのために、涙まで……」ハートピロピローン

アクア(ちょろいわ……)

ジョーカー「……い、いえっ! しかし逆ハーレムなんてっ……俺のカムイ様が、そんなっ……ぐ、ぐぬぬっ……!」

アクア(ちっ、しぶといわね。……仕方ないわ)

アクア「ねえジョーカー、ちょっとイイかしら?」

ジョーカー「ああん!? ……っと、し、失礼しました。何でしょうか、アクア様」

アクア「……まあいいわ。カムイはね、本気で逆ハーレムを作るつもりよ。暗夜と白夜を真の意味でキョウダイにするために。……だけど」

ジョーカー「は……? その方法が、逆ハーレムですか? ……はっ、馬鹿馬鹿しい。そんなもん、俺だけじゃなく、他の奴らだって納得は――」

アクア「カムイが真っ先に挙げた名前は――ジョーカー、アナタだったのよ」

ジョーカー「えっ。……えっ、俺……俺、ですか?」

アクア「ね、カムイ。そうだったわよね(嘘は言ってない)」

カムイ「すん、すん……ふぇ? ……あっ、はい! 私としては、やっぱりジョーカーさんが一番かなー、って。ジョーカーさんしか浮かばなかったといいますかっ」

アクア(立ち直り早いわ……こういうトコあるわよね、この子……)

ジョーカー「お、俺が一番? 俺しか……浮かばなかった? …………」

カムイ「ですが、死んだ方がマシとまで言われてしまうなんて……やっぱりアクアさんの言う通り、一番はレオンさ……もがもが?」

アクア「ストップ。それ以上は言わなくていいわ。わかったわね?」クチオサエー

カムイ「も、もがー? もがもが……もがー」コクコク

アクア「イイ子ね。……さてジョーカー、どうかしら? カムイの一番としては……カムイの願いに、どう応えるのが正解だと思う?」

ジョーカー「………………」

ジョーカー「し、仕方ありませんねっ。いささか不満は禁じ得ませんが……カムイ様の忠実なる従者、そして一番の男として、認める事も吝かではないんですからねっ」

アクア「OK……おめでとうジョーカー、アナタが記念すべき一人目よ。胸を張っていいわ」

ジョーカー「し、仕方なくなので……は? 胸を張っていい? ……えっ、カムイ様の胸を張ってイイんですか!? それは平手で!? いや確かにそういう妄想もしますが、さすがに時期尚早すぎると言いますかっ……!」

アクア「カムイ、見て。こんな感じで男性陣は壊れ始めてるのよ。早急に解決する必要があるでしょう?」

カムイ「うーん……ジョーカーさん、私の胸を張りたいんですか? けど、痛いのヤです……つっつくぐらいにしてくれませんか? 出来れば、優しく……」

アクア「ああ男衆がおかしくなってるの、この子のせいだったわ。どうしようもないわね、もうっ」

ジョーカー「……あの、お取込み中、申し訳ございませんが……カムイ様の逆ハーレムについては、文句はありますが、一応、とりあえず、渋々、ギリギリ」

ジョーカー「まあ認めますが……ご協力は致しかねます。その現場を生で見ると……ちょっとまた、[ピーーー]そうなので……」

アクア「ああ、まあ仕方ないわね。……じゃあ最後に、一つだけ聞いておきたい事があるの。皆にも聞いていくつもりだけど……」

ジョーカー「? はあ、何でしょうか」

アクア「アナタがカムイに対して想う……一番捗る性癖を、暴露していって頂戴」

ジョーカー「は? ……はぁ!? い、いや、何でそんなっ……!」

アクア「そういうコンセプトでいくつもりだから。……ほら、カムイはこの後も忙しいのだから、手間取らせないで。答えてくれないなら、アナタだけカムイの逆ハーレムから除外しちゃうわよ。ほら、アナタはどう〝if ひとり思う〟なのか、早く」

ジョーカー「な、なあっ!? そ、それはあんまりで……いやしかし、性癖って。…………」

ジョーカー「それはもちろん……カムイ様にお仕えし、カムイ様の身の回りのお世話をする、それこそが至上の喜び。すなわちカムイ様に尽くす事が、私にとっての幸せであり、快感になります。強いて言うなら、こんなものですが……よろしいですか?」

アクア「ふーん。……そう。間違いないのね?」

ジョーカー「ええ、それはもう。嘘偽る事など、何一つございません」

アクア「ふーん。……ところで一つ、気になる事があるのだけど……アナタ、カムイの身の回りのお世話とやらを、全て行ってるわよね? 炊事、掃除……衣類の洗濯まで」

ジョーカー「へ? はあ、もちろん……それが私の役目ですので。……それが何か?」

アクア「いえ、おかしいわね、って。だってそれ……北の城塞にいた時からでしょ? 男のアナタがカムイの衣類まで洗濯するのは、変じゃないの?」

ジョーカー「!? ……そ、それは仕方ありません。フェリシアはアレですし、任せていたらカムイ様の御衣類が全て無くなってしまいます。それともアクア様は、カムイ様に全裸で過ごすようにお望みですか? そんなの私の前だけで充分ですよ」

アクア「いや、北の城塞にはフローラもいたんでしょ。フローラならそんなドジしないじゃない。なのに、何でフローラに任せず、男のアナタがやってたの?」

ジョーカー「……いえ、ですから、それは……俺が……いえ、私がやったほうが、確実だからで……」

アクア「はい、ここで事前に得ていたタレコミを発表します。深夜、カムイの使用済み下着を手に挙動不審に陥っているジョーカーが目撃されています」

アクア「洗濯するのかと思いきや、おもむろに下着で顔面全体を覆って数十秒ほど深呼吸した後、カムイの下着を自分のズボンに仕舞い込み『エクセレント……』と呟くや否や、満足そうな表情でジョーカーは去って行った、と報告されています」

ジョーカー「何でや!!! 見てたんかコラ!!!! 誰や!!!!!」

アクア「匿名希望のドジっ娘メイド・ふえぇさんからのタレコミです」

ジョーカー「フェリスィアァァァ!! おまえふざけんなよ! 家事以外はホント有能だなドチクショウ!!!」

アクア「匿名希望の嫉妬深い姉さんからは、『百年の恋も冷めますよね。氷の部族だけに』とコメントいただいております」

ジョーカー「意味分からんが何か腹立つな! つーか何の調査してるんですかアンタも!」

アクア「さて、この事案に関して……当事者のカムイさん、何かありますか?」

ジョーカー「! ち、ちがっ……違うんですカムイ様ァ! 魔が差したんです……アレです、ガロン王みたいなもんです! お、俺は操られててっ……!」

カムイ「え? ジョーカーさん、私の下着が欲しかったんですか? うーん……ちょっと恥ずかしいですけど……そんなに必要なら、言ってくれれば差し上げますよ?」

ジョーカー「か、カムイ様……! アナタは天使ですかっ……ついていきます、一生ついていきますぅぅぅぅ!」

カムイ「けど、それなら新品のほうがイイですよね。使っちゃったのなんて汚いですし」

カムイ「次からは欲しい時に言ってくれれば、新品を用意しますし、安心してくださいっ」

ジョーカー「! ……っ……」

アクア「……ねえジョーカー、あんな純なカムイを見て、脳髄まで腐れリビドーに侵されたアナタでも、さすがに罪悪感が湧いてくるんじゃない? どうなの?」

ジョーカー「……はい、そうですね……はっきり、言っておかないとですよね……あの、カムイ様……」

カムイ「? なんでしょうか、ジョーカーさん?」

ジョーカー「下着は新品ではなく、カムイ様が履いておられるものが……特に脱ぎたてのものが理想的です」

ジョーカー「目の前でお脱ぎ頂ければ、なお重畳……汚くなどありません。むしろ神聖さが増した神器級のアイテムです」

カムイ「へ? ……い、いえ……それはさすがに、恥ずかしい……です……」カァァァ

ジョーカー「ああっ……ああっ、それです! その恥じらいもまた堪らないアクセント! イイですよ……最高です! おおお何なら今すぐにでも――おぼっふ!?」

カムイ「ああっ!? ジョーカーさんの後頭部にアクアさんの松の木アタックが!? しっかり……しっかりしてください、ジョーカーさーん!?」

アクア「大丈夫よ、カムイ。峰打ちだから」

カムイ「ああ、それなら大丈夫ですね。安心しました」

アクア「ええ。それじゃ、次に行きましょうか」

カムイ「はいっ! 行きますっ……折れたりしません!」


 カムイとジョーカーの支援レベルがSに上がった

 外

アクア「さて……じゃあ次は、どうする?」

カムイ「はい……やはりアクアさんの助言に従って、レオンさんの所へ行こうかと」

カムイ「ジョーカーさんみたいに、死ぬなんて言われたら……辛いですから……」

アクア「ああ……とはいえ、遅かれ早かれ通る道だったから。……まあ、次はレオンね。でも、どこにいるのかしら?」

カムイ「あ、この時間なら……あそこですっ。ほら、レオンさん自家製のトマト畑っ」

アクア「えっ。……ああ、本当だわ。良く知ってるわね、カムイ」

カムイ「もちろんです! かわいい弟の事ですからっ」フンスー

アクア「押し倒したいドヤ顔ね。……じゃなく、話が早くて助かるわ。それじゃ早速……ん? あの子、トマトと見つめ合ってナニしてるのかしら? ……あ、まさか」

レオン「もう、カムイ姉さんったら、どうしたんだい? そんなに顔を紅くして……弟に顔を近づけられただけで真っ赤になっちゃうなんて、恥ずかしくないのかな? そんな恥ずかしい姉さんには……お仕置きが必要だね?」

アクア「………………」

レオン「ほら、目を閉じなよ……えっ、ナニするのかって? 決まってるじゃないか、いつものお勉強だよ。さあ、先生の言う事を聞いて……今さらお姉さんぶったってダメだよ? そんな真っ赤な顔で……今の姉さんは……カムイは、ただの女なんだから。……んっ……」

カムイ「レオンさーん! 今、私を呼んでましたよね? お姉ちゃんがきましたよーっ」

レオン「ぎゃああああ!? ねっねね姉さん!? い、今の見てたの!?」

アクア(さすがカムイ……ああいう場面でも容赦なくぶっこんでくわね。まあ本人に他意はないでしょうけど)

カムイ「? えっと……特に何も……変なものは見てませんけど……」

レオン「あ、ああ、そう……それならイイんだけどさ……」

カムイ「でもレオンさん、顔をトマトみたいに真っ赤にしながらトマトを食べようとして、何だか可愛かったですよ! ふふっ」

レオン「見てるじゃないか完全にー! ああもう殺してよ! こんな生き恥さらして生きてられるかぁ!」

カムイ「イヤです! もし仮に敵になる世界があったとしても、レオンさんを殺したりなんて絶対しませんっ……だってレオンさんは、私の愛する弟なんですからね!」

レオン「ああもうそういう事じゃないんだけど、嬉しいやら、けど男としては複雑やらで何とも言えなさすぎるよ! どうすればイイんだ僕は!」

アクア「まあまあ、落ち着いて、レオン。アナタの日課でしょ、今の」

レオン「うわあああアクアまで!? ていうか何で日課と!? どんだけ知れ渡ってるんだ!?」

アクア「いいから。……そんな事より、カムイからアナタに、大切な話があるそうよ」

レオン「はあ、はあ……えっ? ね、姉さんから僕に? ……――!?」

レオン「こ、こほん。……姉さん、大切な話って何だい? 僕も暇じゃないんだけどな」

レオン「まあ、どうしてもっていうなら聞いてあげなくもないけど? ほら、早く言いなよ。告白でも何でもすればイイじゃないか。……ほ、ほらっ」

アクア(レオン、今さら立て直せるとでも思ってるのかしら……)

カムイ「あ、はい。えーと……(さっきみたいにいきなり切り出したら、ジョーカーさんみたいにビックリしちゃうかもしれませんよね……)」

カムイ「(うーん、どうしましょう)……え、えっと、その……あのっ……」モジモジー

レオン「!? ……ごごごめん、い、いいよ、ゆゆゆっくりで。急かしちゃって悪かったね。ちゃ……ちゃんと聞くからさ、うん。き、聞くよ」ソワソワー

カムイ「! は、はいっ(さすがアクアさん推薦のレオンさん……優しいですねっ)」

カムイ「えーっと……私、レオンさんにお願いしたい事があるんですっ。本当は……とっても、恥ずかしいんですけど……けど、もう、こうするしかなくてっ……私、私っ……!」

レオン「か、カムイ姉さん……そんな、もう抑えられないほどに……? っ……わ、分かったよ! 僕で良ければ、姉さんに永久の愛を――」

カムイ「私―――逆ハーレムを作りたいんですっ!」

レオン「―――――」

アクア(……今回は私、最後まで黙ってましょっと)

カムイ「私、暗夜と白夜に、真に手を取り合って欲しくって……そのために、皆さんをキョウダイにして、家族となるために……逆ハーレムを作ると決めたんです! お願いです、レオンさんっ……レオンさんも、協力してくださいっ!」

レオン「……カムイ姉さん……それ、本気で……本気で言ってるのかい?」

カムイ「はいっ、もちろんですっ! 折れたりしませんっ!」

レオン「……そう……そっか、ははっ。はははっ……姉さん……いや、カムイ」



レオン「―――ふざけるなよ?」

カムイ「…………えっ?」

レオン「良くそんな爛れた事を誇らしげに言えたモノだね。恥ずかしくないのかい? 気に入らないな、その態度……君を中心とした、逆ハーレムだって?」

レオン「全てが自分の思い通りになるとでも思っているのか? 大した自信家じゃないか、カムイ」

カムイ「そんな……私は、そんな……」

レオン「嫌いだよ……僕は最後の情けすら、お前にかける気はない。優しい弟としての言葉を聞きたかったなら、諦めなよ」

レオン「裏切り者は絶望のまま、闇に沈むのがお似合いだ。さっさと目の前から消えてくれ。……目障りだよ」

カムイ「……レオンさん……」

レオン「話は終わりだ。ほら……さっさと消えなよ。たとえ泣こうと喚こうと、何を言われても、僕の気持ちは絶対に変わらない!」

レオン「絶対にだ……絶対だぞ! 絶対に、変わらないからなっ!」

カムイ「………………」



カムイ「けど私はレオンさんの事、大好きですよ?」

レオン「僕だってっ……本当は、そうだよっ……!」


レオン「嘘だよ、姉さん……嫌いだなんて、嘘だ。本当は、僕だって……姉さんが……」

レオン「大好き……なんだから……!」

カムイ「……はい、いいんですよ。もう何も言わなくていいんです」

カムイ「さあ、レオンさん……来てください。お姉ちゃんが、ぎゅっ、って……してあげますから、ね?」

レオン「う、うう……っ、ううっ……ああっ……姉さん……姉さんっ!」

カムイ「きゃっ。……ふふっ、レオンさんったら、珍しく甘えてくれて……よしよし、お姉ちゃんがいますからねー。大丈夫ですからねー?」ヨシヨーシ

レオン(ちょっ、やっばコレ……ナニコレ、ふっかふかのぷるっぷるっ……! カミラ姉さんとはまた違う、新境地の安心感……! カムイ姉さんの胸には神器がついてるのかい……!?)スリーンスリーン

アクア(あの即墜ちなんちゃってツンデレ王子、無理せず最初から素直になればイイのに……別にいいけど)

 それから十数分後(レオンはずっとカムイの胸にスリスリしていたよ!)

レオン「ふう(ツヤツヤ)。それで、逆ハーレムだって? 全く、どうしてそんな事を思いついたのか……」

レオン「なんて、アクアと一緒に居る所を見れば、大体は想像つくけどさ」

カムイ「さ、さすがレオンさん、お見通しですね……はい、実はアクアさんからアドバイスを頂いたんです」

カムイ「暗夜と白夜、二国の混同軍が真の意味で手を取り合う術を」

レオン「それが逆ハーレム、ってわけ。まあ確かに、カムイ姉さんに対する男衆の異常な雰囲気は、僕も何とかすべきだとは思ってたけどさ……」

レオン「さすが『とりあえず両国の部隊長に殴り掛かってみましょう』とか言いだす歌姫は違うね。……で、アクア?」

アクア「? 何かしら。耳打ちなんてして、内緒話?」

レオン「……君は一体、何を企んでるんだい?」

アクア「! ……何の話かしら?」

レオン「とぼけないでよ。逆ハーレムで皆とキョウダイに……だなんて、この際〝上手くいくか〟というのは問題じゃない。〝それを実現させて、何をする気なのか?〟だよ」

レオン「暗夜と白夜の男達を、全てカムイ姉さんの虜にさせて……ね」

アクア「……………」

レオン「もし君がカムイ姉さんの良心を利用して、悪巧みでもしてるなら……僕は絶対に許さないよ。今度は強がりなんかじゃない。地の果てまでも追い詰めて、必ず後悔させてやる。……何を企んでるのか話すなら、今の内さ」

アクア「……ねえ、レオン」

レオン「何だい? 白状する気になったなら、さっさと――」

アクア「アナタって本当に、カムイの事が大好きよね」

レオン「は。……はっ!? な、何を……いや、アクアだってさっき聞いてただろ!? 改めて言わなくても……」

レオン「って、はぐらかすなよっ!? だから、何を企んでるのかってっ……」

アクア「ああ、その話。別に悪巧みなんてしてないわ」

アクア「私はカムイのために……カムイの事だけを想って、行動してるの。そこに嘘偽りは、微塵も無いわ」

レオン「! …………」

アクア「たとえどれだけ疑われても、構わない。それでも私は、カムイのために行動するわ。もちろん、信じるかどうかは、アナタの自由だけど――」

レオン「……はぁ~っ。いいよ、もう……信じるよ」

アクア「! ……レオン」

レオン「僕だって、別にそこまで偏屈じゃないさ。君が嘘をついてるかどうかくらい、分かるつもりだよ」

レオン「……今のアクアの言葉に、少なくとも嘘や邪心は感じなかった。だから……一応、信じるよ。カムイのためにという、君の言葉をね」

アクア「……ふふっ、そう。ありがとう、レオン」

レオン「か、完全に信じた訳じゃないからなっ。……それに、まあ」

アクア「あー……言いたい事は、何となく分かるわ」


カムイ「……あ、あのー、アクアさん、レオンさん、二人で何のお話です? 私も、私も仲間に入れてくださいよ~。おーい、おーいっ」ピョンピョン

レオン「……カムイ姉さん見てたら、毒気が抜かれるっていうかさ……全く」ハートピローン

アクア「ふふ……分かるわ。ふふ、ふふふっ……」ハートピロピローン

カムイ「? な、何の話ですか? あのー?」

アクア「何でも無いわ、カムイ。……ああいえ、レオンの性癖を暴露してもらおうと、ね」

レオン「はは、そうそう……はあぁぁぁぁ!? 何だい、その話の誤魔化し方!? 下手くそかっ……下っ手くそかっ!」

アクア「いえ、これは皆に聞いていこうと思ってるから。さ、ちゃっちゃと暴露して頂戴」

レオン「いや、ちょ……か、カムイ姉さん本人が見てる前で? そ、それはさすがに……」

カムイ「わあ、ワクワクしますねっ。レオンさん、早く早くっ」

レオン「(意外と乗り気だと……!?)……あ、ああもう、分かったよ!」

レオン「どうせ話さないと進まないんだろうし……ええと、その……僕の場合は、こう……」

――――――
レオン『カムイ姉さん……今日はどうしたんだい? 全然勉強に身が入ってなかったじゃないか。これじゃ赤点、落第だよ?』

カムイ『……ごめんなさい、レオンさん。だけど……私、もう……自分を抑えられなくて』

レオン『何を言って……っ!? な、何だい、急に押し倒してくるなんて……ちょっと、どこ触ってるのさっ。だ、ダメだってばっ……!』

カムイ『わぁ……レオンさんのブリュンヒルデ、すくすく成長してます……こんな立派な大樹に育つなんて、もっと擦ったらどうなっちゃうんでしょう……?』

レオン『くうっ……! や、やめてよ、姉さんっ……そ、そんなにしたら、僕は……!』

カムイ『……イヤです、姉さんなんて……呼ばないでください。今だけは、名前で……それか、もしくは』

カムイ『先生と……呼びなさい……❤』
――――――

アクア「………………」

レオン「………………」

アクア「………………」

レオン「…………勘違いは、しないで欲しいんだけどね?」



レオン「カムイ姉さんの威勢が良かったのは、最初だけさ。結局この後、どうして良いのか分からず、オロオロと立ち往生してしまうんだ」

レオン「そこからは立場が再逆転……申し訳なさそうにするダメな先生を優しく抱きしめて、僕なしではいられなくする。逃がさないよ……覚悟はいいね?」

アクア「………………」

レオン「……何だよ……何だよ! 君が言えって言ったんだろ! だから言ったんじゃないか! 何とか言ったらどうなんだい! 無言は……無言はやめろよ!」

アクア「………………」



アクア「わかるわ」

レオン「わかるの!?」

アクア「もちろんよ。昂る劣情を抑えきれず弟を押し倒しておきながら、恋愛小説程度の知識しかない純なカムイには、そこからの行動が分からない」

アクア「そんなカムイに優しく触れ、真っ白なキャンバスに自分の色を塗り込んでいく……いわゆる……無知シチュね」

レオン「お、おう」

アクア「先生ぶってる、っていうのもポイント高いわね。そのくせ、何をすれば良いのか分からない詰めの甘さもアクセントを添えているわ」

アクア「隙があると、突きたくなるものよ……それがあんまり可愛らしい隙だったら、もはや突かないほうが失礼じゃない」

レオン「概ね同意だけど、何でそんなに分かってるのかが怖いよ、僕は」

アクア「良いわね……さすが暗夜王子。〝グラヴィティ・マスター(笑)〟とか〝トマト・プリンス〟とか呼ばれてるのは伊達じゃないわ」

レオン「何かバカにされてるような気がするんだけど!? 誰だそんな呼び方してんの! ていうか止めてよね、カムイ姉さんに聞かれたらカッコ悪いと思われ……ん?」

レオン「僕の肩を叩いてるのは……姉さん? 何か――」

カムイ「――こらっ。先生をバカにしちゃダメですっ。そんなレオンさんは……オシオキ、しちゃいますよっ❤」

レオン「――――――」

カムイ「ふふーん、どうですっ? 私、ダメなんかじゃないですよ。この通り、先生だって出来ちゃうんですからっ」

カムイ「……あれ、でも何を教えればイイんでしょうね? うーん……わ、わかりません、どうしましょうっ?」オロオロ

レオン「……う、う……ウオオアアアアァァァ!!」

カムイ「え。……きゃ、きゃーっ!? レオンさんのブリュンヒルデ(正式なほう)が暴走して大樹のように!?」

カムイ「しっかりしてくださいレオンさん! とりあえず剪定しますね。えい、えいっ」ザクザク

アクア「全く、手が焼けるわね。せいっ、せいっ」ザクザク

レオン「……はっ!? い、意識が飛んでた……ご、ごめん二人とも。もう大丈夫だよ」

カムイ「ふふふ。イイんですよ、レオンさん。可愛い弟のためですからっ」フンス

アクア「カムイは弟の事となるとテンション上がるわね……ま、いいわ。刈ったブリュンヒルデはその辺で苗木か、肥料にでもするとして……」

アクア「次へ行くにあたって、レオン、アナタにお願いがあるのだけど」

レオン「ん……ああ、大方、僕にも協力しろっていうんだろ? といっても、助言くらいしか出来ないけど……カムイ姉さんのためだし、協力するさ」

アクア「話が早くて助かるわ。正直な話、カムイと私で考えられるのはここまでで、次の展望がある訳じゃないの」

アクア「そのための相談役として、レオンは適切だと思ってたのよ。で……誰から落とせばイイのか、相談したいんだけど」

レオン「うん。……ちなみに現段階で、誰を引き込んでるんだい? ……ま、まさか、僕が最初……とか」

アクア「……残念だけど、一人目はジョーカーだったわ」

レオン「! ……ああ、なるほど……カムイ姉さんの事だから、以前も真っ先に駆けつけてくれたから、みたいな理由だろ? ま、それ以上でもそれ以下でもないんだろうね。ま、それ以上でもそれ以下でもないんだろうね」

アクア(正解なんだけど……脂汗と震えがすごいわね。面白いから黙ってましょっと)

レオン「ご……ごほん! じゃ、じゃあ次、誰に行くか、だね? ……僕の考えで良いの?」

カムイ「はいっ! レオンさんの考えなら安心です。頼りにしてますからっ」

レオン「頼りに……ふ、ふふ、そう? 全く、カムイ姉さんは仕方ないな。いいよ、全力で考えてあげる。そうだな……ん~」

アクア(大概チョロイわよね、この子……まあこの子だけじゃないけど)

レオン「次は……タクミ王子、じゃないかな」

アクア「タクミ? ……うーん、どうかしら……あの子、逆ハーレムなんて聞いたら憤激しそうだけど……」

レオン「遅かれ早かれ、通らなきゃならない道さ。それに、彼は後に回すほど手強くなると思うよ。……まあ、理由を簡単に言えば」





レオン「拗ねるよ」

アクア「ああ、納得」

カムイ「なんだかカワイイですね!」

アクア「まあ、という訳で次はタクミに決定ね」

カムイ「はいっ! ……ふふ、ふふふっ……」

アクア「? どうしたの、カムイ……何だか嬉しそうね」

カムイ「だってだって、レオンさんの口からタクミさんの名前が挙がったんですよっ?」

カムイ「初めは険悪だった二人も、今は互いに趣味を共有する仲良しさんと聞いてますし……それが実感できて、嬉しいんです♪」

アクア「! ……そう(本当に、皆が仲良しなのが良いのね……この計画、必ず成就させなくちゃ……ね)」

カムイ「はあー……弟コンビ、尊いですー……お姉さんとして、全力で甘やかす所存ですよーっ。えい、えい、おーっ♪」

アクア(若干、俗っぽい感情も混じってそうだけど……男共に比べれば遥かに穏やかだし、問題ないわよね、うん)

レオン「で、問題のタクミ王子……どこにいるんだろうね? そこまでは分からないよ」

カムイ「あっ、今の時間なら……弓の稽古をしてるはずですよっ」

アクア「さすが全員と支援Aまで持ち込んだだけはある情報力ね……じゃ、弓道場に行ってみましょうか」


 ?
 カムイとレオンの支援レベルがSに上がった

 弓道場

アクア「さて、タクミは……あ、いたわね。本当に稽古してるわ」

カムイ「的当てですねっ。私も教えて貰ってたんですよー、ふふふー」

レオン(……ていうか僕、普通に付いて来て良かったのかな……)

アクア「にしても、鬼気迫る雰囲気ね。邪魔しちゃ悪いかしら……ん? ……何かブツブツ言ってるわ」


タクミ「……この矢が的心(真ん中)に命中したら、告白する……この矢が的心に命中したら、告白する……」

アクア「あら一大事。青少年の決意の場に居合わせてしまったみたいだわ」

レオン「何でアクアはそんなに冷静なんだい」

レオン「……にしても、確かにとんでもないタイミングだね。偶然とは思えないくらいだな……」

カムイ「? タクミさん、告白するんですか? ……はっ!? ま、まさかタクミさんには、好きな人がっ?」

カムイ「わあっ、弟の恋バナ、ドキドキしますねっ!」

レオン(当事者がド天然だもんなぁ……お互い……いや、みんな苦労するよ……)

タクミ「命中したら、告白する……そう、告白……する……」



タクミ「―――カムイ姉さんが、僕に告白する」

アクア・レオン「「えっ」」

カムイ「? 私がタクミさんに告白するんですか? ……あっ、当たったみたいですね」


タクミ「……ふ、ふふっ……ああ、良かった、また当たった……全く、カムイ姉さんは仕方ないな、こんなに待たせてくれてさ……」

タクミ「けど、これなら大丈夫だね……だって、ちゃんと当たったんだから。はあ……全く、待ちくたびれたけどね」

タクミ「……あれ? けど、これで何回目だっけ……百? 千? ……うーん、何回でもイイか」

タクミ「けど、念のため……もう一回、願掛けしとこうかな。そーれ……」

レオン「……うん、タイミングが合ったわけだよ……え、ナニコレ? 凄く病んでない?」

レオン「何か紫色のオーラが漏れ出てるし、あれ風神弓じゃないよね? なんか禍々しいし、射程4くらいあるし」

アクア「弓撃つ時、ものすっごい体が反ってるわよね……アレで良く当たるわね」

アクア「これ最悪、下手したら逆上して、一射で夜刀神を叩き折っちゃうんじゃない? あの世とこの世の境で、カムイ、誰かと対話してきちゃうんじゃない?」

レオン「イザナ王とかクリムゾンくらいしかいなさそうだけど……あ、ミコト女王とかもいるか」

レオン「……って、冗談言ってる場合じゃないよ。これはさすがに、一旦退いて――」

カムイ「あっ、私、今から告白するみたいなものですし……さっきのタクミさんの言葉、当たるようなものですねっ。よーしっ、行ってきますっ!」

レオン「カムイ姉さんマジなの!? 何でアレ見て普通にいけるの!? ちょっと!?」

タクミ「ブツブツ……ん? ……はっ!? か……カムイ姉さん!?」

アクア(あ、変なオーラ消えたわ。……弓も普通の訓練用に戻ってる。怖っ)

タクミ「っ……な、何だよ急に! 驚くだろ……僕だって暇じゃないのに、何の用だよ、カムイ姉さん!」

レオン「……タクミ王子、カムイ姉さんしか見えてないよね。恋は盲目ってヤツかな?」

アクア「言っとくけど、アナタもジョーカーも似たようなもんだったわよ」

アクア「ついでに言えば、自分では平静を装えてるように思ってるんだろうけど、大いなる勘違いだから」

レオン「……客観的に見ないと分からないものだね……気を付けるよ……」

カムイ「あっ、えっと……その、私、タクミさんにお願いがあって……」モジモジ

タクミ「!? お、お願いって……はっ!? まさか、さっきの的当て占いが……?」

タクミ「……こ、こほんっ! な、何なんだよ、全く……さ、さっさと言いなよ、ほほほらっ」

カムイ「は、はいっ。えっと、実は、私……決めたんです、自分の心を。それを、今から……タクミさんに、聞いて欲しくて」

タクミ「! そ、そう……そうなんだ。ようやく決心したんだ。分かったよ……き、聞いてあげるからさ。……い、いつでもどうぞ?」

レオン(あ、デジャヴ)



カムイ「私――逆ハーレムを作ろうと思うんです!」

タクミ「――――――」

レオン「……カムイ姉さんは、アレ、わざとやってるの?」

アクア「まさか。本人は至って真面目よ。だから厄介なんでしょう?」

レオン「ああ、うん……そうだね。ホント、そう……だね……」


タクミ「……姉さん、それは……本気で言ってるわけ?」

カムイ「? は、はい……もちろんですっ。……あの、タクミさん?」

タクミ「……ふっ……はは、そっか……そうなんだ。……はは、はははっ……」

タクミ「――――ふざけないでく」
レオン「あ、タクミ王子、ちょっと待って?」

タクミ「ぎゃああああ!? れ、レオン王子!? 何でキミがここに……ってアクア姉さんまで!? なんだこれ……なんなんだこれ!」

レオン「言いたい事は分かるけどさ。〝ふざけるな〟のくだり、もう僕がやったから。被っちゃうから、遠慮してくれるかな?」

タクミ「は、はぁ!? 被るとか何とか、意味が分からないってば!」

タクミ「いや意味不明なのはカムイ姉さんの逆ハーレム宣言もだけど! 何なんだ一体、説明してよ!?」

レオン「ああ、もちろん。まあその辺は、姉さん本人に直接聞きなよ。落ち着いて、ね」

アクア(……あ、なるほど。さすがレオン。出端を挫いてタクミのブチギレを回避しつつ、話を聞かせる態勢に持って行ったわね。やっぱり協力を仰いで正解だったわ)

タクミ「くっ、何か腑に落ちないし、微妙に騙されてる気分だけど……いいよ、もう」

タクミ「で、どういう事? カムイ姉さん」

カムイ「あ、はいっ。えーと……カクカクシカジカで、暗夜白夜の皆さんをキョウダイにするためにですね」

タクミ「逆ハーレムで、マルマルウマウマ、と。……うん、何を言ってるんだ。いきなりとか突飛ってレベルじゃないよ。無茶苦茶でしょ、それ」

レオン「気持ちは分かるけどね。けど、何しろカムイ姉さんだからさ……思い込んだら、もう止まらないよ。既に計画は動き出しちゃってるしさ」

タクミ「! ……まあ大方、アクア姉さんの入れ知恵なんだろうけど……」

タクミ「レオン王子がここにいる、っていう事は……僕が最初じゃなかった、って事だね」

レオン「……ああ。とはいえ、僕も最初だった訳じゃない……憎らしい事に、最初はジョーカーさ。……憎らしい事に、ね」

タクミ「あ、あの陰険執事が? ……っ、何だっていいよ。とにかく……僕は……」

タクミ「……やっぱり、どうしても……許せない……!」

カムイ「! ……タクミさん……」

タクミ「こんなの……どう考えたって、おかしいよ。許せる訳ないだろっ……裏切り者っ……オマエは裏切り者だ、カムイ! 何で……何でっ……!」

アクア「……そうよね、逆ハーレムなんて言われて……普通なら、そう簡単に割り切れないわよね」

アクア「悪いのは、私よ。責めるならカムイじゃなく、私に――」



タクミ「何で……僕の所に最初に来てくれなかったんだよっ……!?」

アクア・レオン「えっ、そこ?」

カムイ「タクミさん、それは……だって、よくよく考えると……」



カムイ「私達、血の繋がった実のキョウダイじゃないですか」

レオン「透魔ルートだし、もうほぼお察しだと思うんだけど!?」

アクア「というか、ここまで会いに来て今さら、って感じよね……」

カムイ「うっかり忘れちゃってました。てへへ……」

レオン「可愛らしくはにかめば許されると思うなよ! 押し倒すぞ!」

アクア「同感ね。カムイったら、天然なんだから……」

タクミ「…………」

タクミ「そっか……それなら仕方ないね。けど安心してよ、カムイ姉さん。ここに、ミコト女王から預かってた手紙があるんだ」

レオン「今ので納得したのかい!? タクミ王子はそれでイイのかい!?」

タクミ「ミコト女王からは、〝恋に悩んだら読めばいいんじゃない?〟とか言われててさ」

タクミ「これには……僕とカムイ姉さんは、血が繋がっていないと書かれていた」

タクミ「そして、ミコト女王の手紙には、更に続きがあったんだ。本当の事を言うと、そのおかげで……カムイ姉さんが逆ハーレムなんて言いだした事、そんなに驚いてないんだ……この手紙、読んでみてくれるかい?」

カムイ「えっ、いいんですか? わかりました、えーっと。…………」

カムイ「『ポリアモリーも背徳感あって燃えるわよ。やったれやったれ♪』」

レオン「ミコト女王ってそんなキャラだっけ!? 見た目、確か清楚っぽかったのに!?」

タクミ「最初……僕に複数愛を勧めてるのかと思って、『ナニ言ってんだ』『アホかあの人』『大体イコナ母上もリョウマ兄上も差し置いて、何でお前がトップに立ってたんだ』と悩んだものだけど……」

タクミ「ポリアモリーとやらは、カムイ姉さんの事だったんだね。……馬鹿馬鹿しいよ。本当に、馬鹿馬鹿しい……けど」

タクミ「……正直、複数の男達から滅茶苦茶にされるカムイ姉さんを想像すると、昂るものも否定できない」

レオン「聞きたくなかったー! 似た者同士の異常性癖、聞きたくなかったー!」

タクミ「か、勘違いするなよ!? 手紙を読んでから、何か頭から離れなくなっただけで……刷り込みみたいなもんだから! 本来の僕の趣味じゃないから!」

アクア(……ミコト女王、これを見越して手紙を送ったなら、恐ろしい人ね……予知能力でしょうけど、もしかして私をサポートしてくれたのかしら? いや、どうかしら……)

アクア「……ま、難しい事はいいわ。せっかくの流れだし……じゃ、タクミ本来のカムイに対して想う性癖、暴露して頂戴」

タクミ「は。……は、はあ!? な、何でそんな事っ……!」

レオン「諦めたほうがいいよ、タクミ王子。皆が通る道らしいからさ。言わないと、逆ハーレムから除外されちゃうらしいし」

タクミ「な……ひ、卑怯だぞ! くっ、分かったよ……ぼ、僕の場合……いや、カムイ姉さんに弓を教えてる時とか、実際にあるんだけど……その……」

――――――
タクミ『ほら、力だけで弓を引き絞らない。体全体を使うんだよ。……もう、聞いてる?』

カムイ『は、はいっ。けど、あの……少しだけ、離れてイイですか? その……』

タクミ『何だい、もう休憩? 音を上げるのが早すぎるよ、だらしないな……』

カムイ『ち、違うんですっ。その……今日、暑くて……汗、たくさんかいちゃって……ふ、拭き取りたくて、ですね……』

タクミ『え? あ、ホントだ。汗…………!?』

タクミ(あ……汗に濡れたカムイ姉さん、頬が上気して、全体的にしっとりして……エロッ!? しかも何だコレ……)

タクミ(何だこの、堪らない匂い!? 汗なのに臭くないどころか、お花畑なんだけど!?)

カムイ『あ、あの、タクミさん? その……汗を拭いても――』

タクミ『――ダメだよ!! 甘やかさないって言ったろ!? そんな事言って逃げようったって許さないよ!! ほら、続けなよ!! 手取り足取り腰取り教えてあげるから、早く!!!』

カムイ『ぇ……ひゃああっ!? ち、近いです、タクミさん! そんなにくっついたら……私、汗臭いですから!?』

タクミ『スンッ……別に、気にならないしっ……スンッスンッ……むしろ、悪くないしっ……スススンスーンッ……ほら、弓に集中……クンカッ……しなよっ……クンカクンカァァァ!!』

カムイ『だめ、だめぇ……ふえええ……』
――――――

タクミ「……熱中しすぎた結果、カムイ姉さんが指を怪我するまで続けちゃった事は……心から反省してる」

カムイ「た、タクミさんっ!? やめてください、私が汗臭い話なんて、恥ずかしいですっ!?」

レオン「タクミ王子……わかるよ。正直、カムイ姉さんに勉強を教える名目で接近して、匂いを嗅ぎまくることもある。髪とか首筋とか、もうたまんないよね」

カムイ「レオンさん!? 何言ってるんですか、レオンさーん!?」

アクア「わかるわ。カムイってば、戦闘中ですらフローラルよね。正直、ずっと嗅いでても飽きないくらいよ」

カムイ「アクアさんまで!? 何で皆して私の臭いを嗅いじゃってるんですか!?」

アクア「カムイ、臭いじゃなくて、匂いよ。そこ重要だから、間違えないで」

カムイ「ど、どっちでもいいですー! 恥ずかしいですから、やめてくださーいっ!?」

アクア「さて……カムイの香り談義も終わったところで、次の話だけど」

カムイ「うう、恥ずかしいです、穴に埋まりたいです……うう……」

アクア「普段は天然なくせに、変な所で恥ずかしがるわよね、カムイってば……」

アクア「ま、それはともかく。……レオン、タクミ、次はどうするべきかしら?」

レオン「うーん……次、っていうかさ。逆に、最後は誰か、っていう話なんだけど……そっちは明確に決まってるんだ」

タクミ「ああ……それは、僕も。恐らく、同じ事を考えてるだろうね」

レオン「マークス兄さんとリョウマ王子は、最後にするべきだと思う」
タクミ「うん、僕も同意見」

アクア「? ……そうなの?」

レオン「うん。まあ……受け入れて貰えるか、っていうのが問題じゃなくてね。むしろ、受け入れて貰えなかった時の保険だよ」

タクミ「何せ両国きっての実力者で、反則級の神器持ちだからね。もし認めてくれず、暴れでもした時……最悪の場合、協力者の総力で止めるしかないからさ」

レオン「それに仲間達が既に逆ハーレムを肯定してる状況なら、ごり押しできるかもしれないしね」

レオン「最終手段が力押し、っていうのも情けないけどさ。まあ、だからこそ、一番最後に回すべきだと思うんだ」

アクア「なるほど。……まあ、その通りね。あの二人を力尽くで止めるのは、ちょっと骨が折れそうだわ」

レオン「ちょっと骨が折れそう程度の評価とか、歌姫の言い分じゃないと思うけど……」

レオン「とりあえず兄さん達以外なら、ここまで来たら似たり寄ったりじゃないかな」

レオン「まあ、僕としては……ゼロとオーディンを推すけどね。臣下として良く知ってる二人だから、説得もしやすいよ」

タクミ「それなら僕も、ヒナタを推すよ。さっぱりした性格だし、案外あっさり受け入れてくれるんじゃないかな」

アクア「なるほど。……うん、じゃあ……レオンが先に言ったし、ゼロとオーディンからにしましょうか」

タクミ「そ。……じゃ、ここからは、僕は少し離れた所から見てるよ」

アクア「あら? タクミは一緒に行かないの?」

タクミ「ぞろぞろ付いていくのも変でしょ。それよりは身を隠して、カムイ姉さんを護衛するよ」

タクミ「逆上して襲い掛かってくる奴がいないとも限らないし……近くでサポートするのは、レオン王子とアクア姉さんだけで、充分だろ?」

レオン「近くで支えるやり方もあれば、遠くから見守るやり方もある……って事だね」

レオン「違うようで、想うところは同じ。ふっ、やっぱり僕達は、似た者同士なのかな?」

タクミ「ははっ……さあ、どうだろうね? まあ……お互い、力を尽くそう」握手スッ

レオン「ああ。お互い……共通の想い人のために、ね」握手ガシッ

アクア「……ふふっ、この二人が組むと、頼もしい――」

カムイ「わーわー! 見てくださいアクアさん! 弟達が仲良しです、素敵ですー! お姉ちゃん、テンション上がってきましたよー! わーい!」フンスフンスー

アクア「ああカムイ、完全に立ち直ったわね。……じゃ、次に行きましょうか」


 …………?
 カムイとタクミの支援レベルがSに上がった

~~CM~~
三年インビジ組!

カムイ先生「えっと、えーっと、オーディンさんの句には……? ??」

ドアガララッ
タクミ「カムイ姉さん! 白夜に帰ってくるんだ!」

カムイ「っ、今さらなんですかっ! 裏切り者って言ったくせにっ!」机に竜穿!

タクミ「僕が悪かった……母さんが見たらどう思うかな?」ダキッ

カムイ「ばかっ……寂しかったっ……!」

ドアガララッ
レオン「この泥棒猫……」

カムイ「れ、レオンさん!」


ディーア「……授業しろよ」
イグニス「……ガクガク」(机粉々)

ファンタはグレープが好き!
~~~~~~

一旦ここまでで、ちょっと休憩してきますー
再開は夜の予定、20時半頃に~

ごっつぁんです、再開します~

アクア「……さて、まずはゼロかしら。けど……居場所、分かる?」

レオン「うーん……今日は見てないし、何とも……キャッスル内にはいると思うんだけど」

カムイ「ゼロさんは神出鬼没ですから……うーん、どこでしょう? 呼んだら出てきませんかね? おーい、ゼロさーん」

レオン「はは、動物じゃないんだから。主君の僕でも無理だろうし、さすがに――」

ゼロ「カムイ様……そのいやらしく濡れた口で、俺の名を呼んだかい?」

レオン「何で出てくるんだそれで! お前の主君誰だよ!」

カムイ「……わ、私の口、汚れてます? よだれとか? 今日はまだ、お昼寝してないんですけど……」

レオン「いやカムイ姉さんも真面目に返さないで! こんなの深い意味なんて――」

ゼロ「ああ……カムイ様の口はいつでも濡れてるぜ? 蜜を垂らして節操なしに誘う花の蕾みたいにな……」

レオン「ほらもう姉さんがバカ正直に反応するから! 調子に乗っちゃうんだよ、こいつは! ああもう!」

アクア「まあまあ。話が進まないわ。ほら、ゼロに本題を――」

ゼロ「ああ、アクア様、どうも。……いえ、言わなくても結構ですよ。逆ハーレムってヤツでしょう?」

アクア「! ……察しが良いわね。さすが、独自に情報は仕入れてる、って事かしら?」

ゼロ「いえ、最近はカムイ様をストーキングするのが日課なんで、別に」

レオン「おまえ何してんだよ! 道理で今日は見て無かったし、その割にすぐ現れた訳だよ! 仕事しろよ!」

ゼロ「はあ。とはいえ最終章間近でヤるコトも無いので……あと白夜の忍共にばっかイイ目を見させるのも、癪じゃないですか」

レオン「白夜の人もやってんの!? てことは、その辺にいるのか!? アンタらの番になったら覚えてろよホント!?」

ゼロ「いやもうカムイ様、実際スゴいんですよ。一人の時とか、例えるなら闇の衣……いや、草花の水着ですよ」

ゼロ「無自覚エロっていうんですかね。こっそり覗くだけで、結構クルものありますから」

ゼロ「白夜の自爆忍者とかツラの割には純で、もう顔真っ赤にしながら釘付けですよ。ウケる」

レオン「それはっ! ……まあ僕も興味なくはないけど……いやおまえにそんな仕事、頼んでないからな!? 勝手な事をするなっての!」

ゼロ「ははは、そう言われても……この滾る劣情は、レオン様といえど止められませんよ?」

ゼロ「まあ、抜け駆けするつもりは無いですから、ご安心――」

カムイ「ぜ、ゼロさん。……私を覗いたりしてるんですか? その……こっそり?」

ゼロ「! ……ええ、まあ? くく……一人の時はあんまりにも無防備なもんだから、何度襲いそうになっちまったか数えきれませんよ」

ゼロ「いや……もしかしたら、誘ってたんですかね? それならそうと言ってくれれば、いつでも天国にイカせて――」

カムイ「うーん……あの、もしお喋りしたい、とかなら……覗いたりなんてしないで、いつでも話に来てください」

カムイ「ゼロさんの口調、まだ慣れませんけど……頑張って、お話しますからっ。ね、ゼロさん?」

ゼロ「! ……あ、ええ。まあ……気が向いたら。……そ、その内?」

カムイ「はいっ! いつでも待ってますからねっ」

アクア(……さすがカムイ、あのゼロでさえ、たじたじだわ……)

レオン(ていうかゼロのあの口調……姉さんに対しては、照れ隠しなだけに思えてきたよ)

カムイ「あっ。……それで、あの……逆ハーレムの事、なんですけど……」

ゼロ「ん? ああ……別に、イイんじゃないですか?」

カムイ「えっ? ……イイんですかっ?」

ゼロ「ええ。ま、レオン様がイイなら。俺だってむしろ、気兼ねしなくて済みますし。今の軍の状況を鑑みれば、むしろベストな選択じゃないですかね」

ゼロ「……それに、嫌いじゃないんですよ。そういう風に、欲望に忠実なのは……ね」

レオン「……まあ予想はしてたけど、結構すんなりいったね。我が臣下ながら、割と微妙な心境だよ」

ゼロ「くく……これが俺ですから。ま、揉めるのも面倒ですし、イイでしょ?」

アクア「それもそうね。それじゃ、まあ……恒例の性癖暴露、いってみましょうか?」

ゼロ「ほぉ……また俺好みの展開ですね。しかしイイんですかね? カムイ様ご本人の前で……過激すぎてイッちまっても、知りませんよ?」

カムイ「わあっ、聞かせてくださいっ。大丈夫です……折れたりしません!」

ゼロ「……く、くくっ……! イイですねぇ……イイ感じに躾けられてきてるじゃないですか……! じゃ、遠慮なくイキますよ……俺なら――」

ゼロ「カムイ様の耳元で、ずっと囁き続けてやりますよ……男と女の関係になるんだ、遠慮はいらないですよね? いやらしく、卑猥に、延々と……」

ゼロ「俺の声が、吐息が……耳に、脳に、焼き付いて離れないように……朝も昼も夜も……寝ている時でさえ、絶えることなく……ね」

レオン「…………」

アクア「…………」

カムイ「? ??」

ゼロ「ま、こんなトコですかね。ふっ……俺を引きこんだコト、後悔しても遅いですよ?」

レオン「……えーと? 要するに、まあ……?」

アクア「……言葉責め、って事かしらね。……何ていうか、まあ……」





アクア「普通ね」
レオン「普通だね」

ゼロ「…………え゙っ」

アクア「まあ、他がアレすぎたから、ってのもあるだろうけど」

レオン「アレすぎたとか余計なお世話だよ。……にしても、ゼロにしては、っていうか」

アクア「言葉責めだけ……ねえ? 『暗夜の歩くポイズンしいたけ』の異名を持つゼロにしては、パンチが弱いわ」

ゼロ「ちょっ。何ですかその異名。初めて聞いたんですけど」

レオン「いや、言葉責めにしてもさ、今は卑猥っぽく言ってるけど……実際は〝愛してる〟とか〝お前が欲しい〟くらいのもんで、そんな大したこと言えないんじゃない?」

カムイ「! …………」

アクア「ぶふっ。とんだラブラブカップルじゃない。朝から晩までって熱々だし、寝てる時もって健気すぎでしょ」

レオン「まあゼロは意外と常識人なトコあるし……娘とか生まれたら、悪い道にいかないよう真摯に諭したりしそうだよね」

レオン「娘もゼロの影響で盗賊になっちゃったりするけど、そんなのダメだぞー、みたいな」

アクア「ああ、あるある。それでいて普段の言動がああだから、鬱陶しがられて結構ショック受けちゃったりね。くっ、ふっ……ああダメ、笑いが堪えきれな――」

ゼロ「ちょ――ちょっと待ってください!」

アクア「! あ、あら……何かしら」
レオン「べ、別におかしくなんてないよ? うん」

ゼロ「……な、何か勘違いしてませんか?」

アクア・レオン「?」

ゼロ「言葉責めなんてのは……序の口、最低限の話ですよ? 俺は過去、色々と経験してますからね……ま、軽いジャブから入ったってなもんです」

ゼロ「本当は、もっと、こう……その、凄くハードな、アレを……ぶちこんで……」

アクア「ふーん。……で、本番はどうなるのかしら?」

ゼロ「……だから、えーと、その……つ、つまりっ」




ゼロ「めっ―――目玉を食わせますっ!」

アクア・レオン「!? ……!?!?」

ゼロ「その、残った方の目玉を、抉り出して……カムイ様に、食わせます。……これで俺の残ったタマも、おまえの一部だぞー……」

ゼロ「いつでもお前の内側から、見てるぞー……み、みたいな?」

アクア・レオン「………………」

アクア・レオン「……う、うおおっ」ゾゾゾー

ゼロ「よ、よしっ!(……あれ、イイのかコレ?)」

アクア「いやー……ええ、うん、キテるわね、今のは」

レオン「うん、ハードっていうか……もう、猟奇だね。別ベクトルに突き抜けたよ」

アクア「凄いわよね……ゼロの言葉を真似るなら、イカれた愛、ってやつよね。さすがに思いつきもしなかったわ……もういっそ、引くわよね」

ゼロ「……ふ、ふふ、そうですか? これくらい、普通も普通ですけどね」

ゼロ(やべえ……何か変に意地になって、イキすぎちまった……どうしよう……)

カムイ「……あのー、ゼロさん?」

ゼロ「! か、カムイ様……ふ、ふふ、ドンビキしちまいましたか? けど……俺は本気ですよ。な、なんなら、今すぐっ!(ええい、どうにでもなれっ!)」

カムイ「見えなくなっちゃうと不便ですし、ダメですよ? 私、皆と……もちろんゼロさんとも、同じものを見ていきたいです」

カムイ「だから……自分の目は、大事にしてください」

ゼロ「あ……そ、そうですか。……そ、そうだな、その通りです(女神……)」

カムイ「……あっ! けど、あれはイイですねっ」

ゼロ「え……や、やっぱ目玉を……!?」

カムイ「私の耳元で、ずーっと囁き続けてくれる、というのですっ」

ゼロ「えっ。……そ、そっちなんで?」

カムイ「最初はよく分かりませんでしたけど、アクアさんとレオンさんの説明で分かりましたっ」

カムイ「朝から晩まで、寝てる間も、なんて……ロマンチックです! お伽話みたいです……想像すると、ドキドキちゃいましたよっ」

ゼロ「……お、おお……おぉ……おぉ」

レオン「……ゼロにしては珍しく、感極まって声も出ないみたいだね。姉さん、すごいな」

アクア「不思議な魅力、半端ないわよね。暗夜白夜が悉く夢中になるわけだわ」

ゼロ「カムイ様……ありがとうございます。いや、礼を言うのも変ですが、その……救われた気分です」

ゼロ「俺なんかで良ければ、全面的に協力しますよ」

カムイ「ゼロさん……ありがとうございます! 私、嬉しいです!」

レオン「……ま、結果的には丸く収まったね。何よりだよ――」

ゼロ「カムイ様のためなら、俺のギンギンに漲ったモノをいつでも曝け出しますよ」

ゼロ「くくっ……任せてください。身も心も、全て俺に委ねて……ね」

カムイ「? 良く分かりませんけど……頼りにしてますね、ゼロさんっ」

レオン「……ま、いつものゼロに戻った感じかな……問題ないか」

アクア「そうね。まあ……あれくらいでちょうどいいのよ、ゼロは」

ゼロ「さて。じゃあ俺は……白夜の坊ちゃんが向こうに潜んでるみたいですし、一応遠慮して反対側に隠れてますかね」

ゼロ「ナニかあったら援護しますんで、また後で」

レオン「ああ、よろしく頼むよ。……ちなみに、オーディンはどこにいるか知ってる?」

ゼロ「あー……ええ、はい。確か最後に見たのは……資料館でしたかね」

ゼロ「ナニかコソコソとお楽しみでしたよ。ま、あの様子だと、まだヤってる最中じゃないですかね」

レオン「そ、そっか。じゃあ行ってみるよ。隠れて護衛よろしく、ゼロ」

ゼロ「ええ、お任せを。ナニかあったら、すぐに俺のアツいのをぶちこみますから。……といっても、オーディン辺りは、そんな心配も無いでしょうがね」

レオン「ああ、僕もそこは、あんまり心配してないよ。まあ、次以降って事さ。……じゃ、行こうか、カムイ姉さん」

カムイ「はいっ! 行きます……折れたりしません!」


 カムイと ゼロのの支援レ ベル がSに上がったたた

 資料館

アクア「さて、資料館に来たわけだけど……いつも思うのだけど、ここあんまり資料館って感じがしないわよね。像とか置いてるし、ムービー観れるし……」

レオン「もっと書庫っぽくしてくれれば良いのにね。まあ入ったら、色々と本があるって事でさ。……ほーら、カムイ姉さん。本の森だよ、本の森」

カムイ「わあ、素敵です! 読書が趣味であるという事をここぞとばかりにアピールしていく所存ですよ、私!」

レオン「カムイ姉さんは努力家だなぁ……色んな意味で。っと、肝心のオーディンはどこかな? もしかしたら、もういな…………いたね」

オーディン「…………」カキカキ

カムイ「あ、ホントですねっ。何か書いてるみたいですけど……何でしょう?」

オーディン「……うーん、どうしよっかな……やっぱここは、もっとこう……」

オーディン「『ああっ、我が宿業の姫君よっ。神竜の悲しみを具象化せし貴女の苦痛を、この漆黒の魔術師が晴らしてみせましょう!』」

オーディン「……うん、これだな! よーし、盛り上がってきたぞ! さてさてお次は……」

カムイ「オーディンさーん! 何を書いてるんですかー?」

オーディン「そりゃもちろん、俺とカムイ様の――ひゃわおぉぉぉいっ!? かかカムイ様!? な、何でこんな辺鄙な所に!?」

レオン「辺鄙って……仮にもマイキャッスル内でしょ。失礼だぞ、オーディン」

アクア「どわあああレオン様まで!? ……ってアクア様もいるぅ!?」

オーディン「へろー。相変わらず愉快ね、オーディン」

アクア「何かアクア様もご機嫌っぽいですけどね!? い、一体なんなんですか……何なんですか、一体! 急にびっくりするじゃないですかー!」

カムイ「ふむ、ふむ……オーディンさんが書いてたの、これ……小説、ですか?」

オーディン「わああああ!? 何で読んでるんですか、カムイ様!? 来て早々やりたい放題にも程があるでしょ!?」

カムイ「竜の血を引くお姫様と……別世界に飛ばされた剣士が、その世界では魔術師になって、お姫様を救うお話……これ、とっても面白そうです」

オーディン「! ほ……ホントですか!? ……って、いやいや、だから何しに来たんですかってばー!?」

アクア「まあまあ、落ち着いて。簡潔に説明すると……かくかくしかじか逆ハーレム」

オーディン「ま、まるまるうまうまキョウダイに? そんなことしてるんですか? な、なかなか混沌としてますね……」

レオン「まあ、そこは自覚してるよ。とにかくそんな訳でオーディン、お前も迎えに来たって事さ」

オーディン「え。……む、迎えに、ですか?」

レオン「ああ。……オーディンもカムイ姉さんの事、好きだろう?」

オーディン「……ひぇいっ!? なな、なんでその事を!? だ、誰にも言ったコト無いのに!?」

レオン(うちの軍じゃ今さらなんだよなぁ……)

レオン「まあほら、仮にも主君だからね。とにかく……オーディンも、加わってくれるだろ?」

オーディン「え、あ……ぎゃ、逆ハーレムに、ですよね?」

レオン「うん。正直、今の状況だと、カムイ姉さんと結ばれるのは難しすぎるよ」

レオン「倍率が高すぎるのはもちろん、両国の第一王子まで狙ってる訳だしね」

レオン「それよりは……まあ、不満が無い訳じゃないけどさ。たとえ倫理的に問題アリでも……ただのキョウダイや仲間じゃなく、恋人として」

レオン「カムイ姉さんの傍にいられると考えれば……悪い話じゃないだろ?」

オーディン「それは、まあ、確かに。…………」

オーディン「いえ、けど俺は……遠慮しておきます。すいません、レオン様」

レオン「え? ……えっ!? ど、どうしたんだ、オーディン?」

レオン「あ、やっぱり逆ハーレムは不満かい? いや、まあ、当然かもしれないけど……」

オーディン「い、いえ。それは、もうカムイ様本人も決めてるみたいですし……文句とかは、別に無いですけど」

レオン「じゃ、じゃあ……僕に気を遣ってるとかなら、そんな必要ないぞ?」

レオン「ていうか逆ハーレムとか言って、現段階ですら今さら感あるしさ」

オーディン「あ……いや、それも違います。その、俺は……」

オーディン「……いつか、帰らなきゃ……いけない、ですし」

レオン「え? 帰らないと、って……何だよ、いつもの微妙にイタい設定かい? 全く、思わせぶりな……」

オーディン「いやイタいって何ですかー!? 真面目な話ですよ、真面目な! その、本当に……ずっとここにいられる訳じゃ……なくて」

レオン「……? いや、里帰りくらいで、そんな大げさな……また戻ってくれば良いだけの話だろ? 何をそんな深刻に……」

オーディン「……いえ、一度帰ったら……もう、戻って来れないと……思います」

レオン「え……お、オーディン? お前は、一体何を……?」

オーディン「……とにかく! そういう訳ですから……俺の事は気にしないでください!」

オーディン「なーに、この漆黒のオーディン、出会いも別れも、孤独にも慣れてますから!」

アクア「……待って、オーディン。あなたは本当に、それでイイの? あなたのカムイに対する想いは……その程度なの?」

オーディン「! ……いえ、確かに俺は、今まで感じた事が無いってくらい……カムイ様に、惹かれてます」

オーディン「けど、だからこそです。カムイ様はきっと、逆ハーレムの内の一人だろうと、単なる一臣下だろうと、平等に想ってくれる。そういう情の深い人です」

オーディン「だから、だからこそ……俺みたいな、いつ消えるかも分からないようなヤツが逆ハーレムになんて加わっちゃ、ダメなんですよ」

オーディン「いつかカムイ様を悲しませるって分かってるのに、そんな選択をするべきじゃないんです」

オーディン「だから……イイんです。どうか俺の事は気にしないでください。俺は本当に、大丈夫ですから」

アクア「……いえ、でも……そんな……」

レオン(? アクア、思ったよりも食い下がるな……?)

アクア「……か、カムイっ。アナタからも何とか……カムイ?」

オーディン「カムイ様が何と言おうと……ん? カムイ様、何を……えっ」

カムイ「…………」←小説熟読中

オーディン「かっかかカムイ様ぁぁぁ!? 何で勝手に黙々と読んでるんですか、ちょっと!?」

カムイ「……オーディンさん、この小説……続きは無いんですか?」

オーディン「へ? そ、それは……まだ、途中ですから」

カムイ「そうですか……あのっ、これ、完成したら……読ませてもらえませんか?」

オーディン「……え、ええっ!? いやそれはその……さ、さすがに恥ずかしい……」

カムイ「私……このお話、特にお姫様の事……他人事とは思えません。続き、気になりますし……とっても、引きこまれますっ」

オーディン「! え……ほ、本当……ですか?」

カムイ「はいっ。こんなに夢中になれるお話……今までで初めてです。元剣士の魔術師さんもカッコイイですし……最後まで、読みたいですっ!」

オーディン「! …………」

アクア様まじってんぞ~

>>90 ギャーホントだ恥ずかしい

>>85 間違い ↓が85の修正版

カムイ「オーディンさーん! 何を書いてるんですかー?」

オーディン「そりゃもちろん、俺とカムイ様の――ひゃわおぉぉぉいっ!? かかカムイ様!? な、何でこんな辺鄙な所に!?」

レオン「辺鄙って……仮にもマイキャッスル内でしょ。失礼だぞ、オーディン」

オーディン「どわあああレオン様まで!? ……ってアクア様もいるぅ!?」

アクア「へろー。相変わらず愉快ね、オーディン」

オーディン「何かアクア様もご機嫌っぽいですけどね!? い、一体なんなんですか……何なんですか、一体! 急にびっくりするじゃないですかー!」

カムイ「ふむ、ふむ……オーディンさんが書いてたの、これ……小説、ですか?」

オーディン「わああああ!? 何で読んでるんですか、カムイ様!? 来て早々やりたい放題にも程があるでしょ!?」

カムイ「竜の血を引くお姫様と……別世界に飛ばされた剣士が、その世界では魔術師になって、お姫様を救うお話……これ、とっても面白そうです」

オーディン「! ほ……ホントですか!? ……って、いやいや、だから何しに来たんですかってばー!?」

>>89 からの続き

オーディン「あの、カムイ様……その元剣士の魔術師は……いつか元の世界に帰らないといけない、って……冒頭で姫と出会った時に、言ってますよね」

オーディン「そんな男の事……どう思いますか? お姫様の立場で考えたら……酷い男だと、そう思いませんか?」

カムイ「……そうですね。きっと彼にも事情はあるんだ、と思いますが……」

カムイ「それでも、想いを寄せた彼が、いなくなってしまうなんて……悲しいし、辛いと思います」

カムイ「だけど」

カムイ「いつか、いなくなってしまうとしても……それが、避けられないとしても」

カムイ「別れのその時までは、一緒に居たいと思います。離れたくないと、思います」

カムイ「いつか別れの時が、必ず来るのだとしたら……せめて、その時まで」

カムイ「愛し合いたいと、そう思うのではないか、と……私は、そう考えます」

オーディン「………………」

カムイ「って、私ったらおこがましいですね。こんな魅力的に描かれてるお姫様に感情移入するなんて……恥ずかしいです」

カムイ「……? オーディンさん、どうかしましたか?」

オーディン「……こんなの……諦められる訳、ないじゃないですか……」

カムイ「オ、オーディンさん?」

オーディン「……カムイ様……」

オーディン「……否! 我が宿業の姫君、カムイよ!」

カムイ「へ? しゅ、しゅくごう? お……オーディンさん?」

オーディン「この漆黒のオーディン、身も心も、愛さえも、貴女に捧げよう!」

オーディン「貴女が望む全てを、禁忌に染められし我が力にて叶えてみせよう!」

カムイ「え……それは、つまり……協力してくれるんですか、オーディンさん!?」

オーディン「ふっ、無論だ! ……でもちゃんと、俺の事も構ってくださいね? お、お願いしますよ!?」

アクア「……ふう。一時はどうなるかと思ったけれど、何とかなったみたいね。……さすが、カムイだわ」

レオン「ああ……いや、ゼロの時も思ったけど、主君としては立場が無いんだけどね。……ま、そこはさすがカムイ姉さん、って事にしておくよ」

アクア「ふふ、そうね。……さて、じゃあオーディンにも、恒例の性癖暴露……してもらいましょうか」

オーディン「……へ!? な、何ですか、それ!? 聞いてないんですけど!?」

アクア「言ってなかったもの。さあさ、恥ずかしがらないで。そこにいるレオンだって通った道なんだから」

オーディン「レオン様まで!? う、うう……いやでも……め、めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど……」

レオン「気持ちは分かるよ。けど……避けられないからね。さっさと済ませて、楽になったほうがいいよ」

レオン(聞き手側に回ると楽しいな、コレ……)

オーディン「う、うう! そ、その……お、俺は……カムイ様と、二人でっ……!」




オーディン「――詩とかを作って、詠み合いたいですっ!」

アクア・レオン「…………えっ?」

オーディン「その、すごい恥ずかしいんですけど……こう、二人で夜空を見上げて、星を題材にして吟じたり……」

オーディン「こ、恋人って事になりますし……愛を詩にして、囁き合ったり!」

オーディン「あっ、物語調でもイイですね! 二人の想い描くストーリーを、ありのままに見せ合うっていう!」

オーディン「照れ臭いですけど、そういうのも愛の形っていうか………あの、レオン様、アクア様? ど、どうしたんです?」

アクア・レオン「………………」

レオン(ぴゅ……ピュアだぁぁぁ!)
アクア(ピュアッピュアだわ、この子……)

オーディン「あ、あの……何なんです!? 何とか言ってくださいよ、ちょっとー!?」

カムイ「詩や物語、ですか……わ、私、センスないですし、自信も無いんですけど……そんな私でもイイんでしょうか?」

オーディン「! カムイ様……いや、カムイ! センスなんて些細な事だ! 上手い下手など、関係ない」

オーディン「何かを創り出すのに必要なのは、情熱のみ! それさえあれば誰にでも、物語は創れるのだからな!」

カムイ「そ、そうですか……よしっ、分かりました! 私も……がんばります!」

オーディン「うむ! その意気だ、カムイ!」

カムイ「はいっ! ……あ、でもっ。オーディンさんの小説も……完成したら、読ませてくださいねっ」

オーディン「! ……ああ、もちろんだ。いつか、必ず……カムイに、渡してみせる。俺の魂を……そう」




オーディン「『俺の魔剣ミステルトィンが威力8のわけがない』を完成させてな!」

レオン(センス……)
アクア(センス……)

カムイ「はいっ! 楽しみにしてますからねっ」

 …… ……… …………
 カムイとオーディンの支援レベルがSに上がった



アクア「一時はどうなる事かと思ったけど……何とかなって良かったわね。さすがカムイだわ」

カムイ「えっ? どうなる事か、って……私、普通にお話しただけですけど……」

レオン「カムイ姉さんはオーディンの小説を読み耽ってたから、僕らが苦戦してたの気付いてないんだね」

レオン「それでも最後の良い所は取っていくんだから、ちょっと憎らしいよ」

アクア「レオンの場合、憎さ余って愛しさ千倍、なんでしょ? ……ま、次へ行きましょうか。次はタクミ推薦のヒナタだったわね」

カムイ「ヒナタさんなら……きっと走り込みの鍛錬中ですね。といっても、走る場所は適当らしいですから、どこにいるのか……」

タクミ「――そう思って、先に調べておいたよ。ヒナタならあっちさ」

カムイ「タクミさん!」

タクミ「まあ、僕の臣下の事だからね。ヒナタの番なら、僕が付き添うよ」

レオン「じゃあ、僕と交代だね。それじゃ姉さん、また後でね」スタスター

カムイ「あ、はいっ。それでは……行きましょう!」

アクア「さて、ヒナタは……ああ、いたわね」

タクミ「途中から思ってたけど、流れるように発見するよね……ん?」

タクミ「オボロが通りがかったね。何か話しかけてるみたいだけど……」



オボロ「あらヒナタ、今日も走り込み? 精が出るわねー」

ヒナタ「オウヨ!」

オボロ「まあ程々になさいよー。じゃ、私はベルカの服を見繕う約束があるから……またねぇ」

ヒナタ「オウヨ!」

アクア「……ヒナタは平常運転みたいね。とりあえず安心だわ」

タクミ「そうだね。じゃ、早速いこうか……おーい、ヒナタ!」

ヒナタ「タクミサマ、オウヨ!」

タクミ「やあ。えーと、ちょっと話があるんだけど」

ヒナタ「ハナシ、オウヨ!」

タクミ「うん……うん? ……ヒナタ?」

ヒナタ「オウヨ!」

タクミ「……うん、えーと……どうしたんだ? 大丈夫か?」

ヒナタ「オウヨ!」

タクミ「…………」

ヒナタ「オウヨ! ……オウヨ!」

タクミ「……………」



タクミ「……アクア姉さん、ヒナタ壊れてる!?」

アクア「壊れたオウヨ人形ね。どうしましょ、コレ」

タクミ「どうしましょ、じゃないよ! 何でこんな事になったんだ! 何でこんな病んでるんだよ!?」

アクア「アナタが言うなって感じだけど……ホント、どうしましょ。これじゃロクに話も――」

カムイ「あっ、ヒナタさん! 走り込みですか? お疲れ様ですっ」

ヒナタ「! か……カムイ様!? ど、どーも! あっ、何か汗臭くってすいません!」

タクミ「も、戻ったぁぁぁ! ていうかカムイ姉さんがスイッチかよ! お前の主君、誰だよ!」

ヒナタ「へ? あ……タクミ様じゃないですか。どうしたんです? こんな所で」

アクア(レオンの時もだけど、カムイ争奪戦で主従関係にまで悪影響が及びかねなかったわね。思ったより状況は危うかったようだわ……)

タクミ「もういいよ、もう! そんな事より、重大な話があるから! アクア姉さんからでも聞けよ、ふんっ!」

ヒナタ「は、はあ……あ、ホントだ、アクア様まで。どーしたんですか?」

アクア「やっほう。面倒だから大まかに言うわ。かくかく」

ヒナタ「しかじか。……ええっ、逆ハーレムですってえ!?」

タクミ「この茶番を経るの、めんどくさいな……まあ、そういう訳なんだけどさ」

ヒナタ「は、はあ……ん? タクミ様もここにいる、ってことは……タクミ様も受け入れた、ってことですか?」

タクミ「……まあ、それなりに不本意ではあるけどね。それが、どうかした?」

ヒナタ「……そ、そうですか……そうだったんですか! はは……なーんだ!」

タクミ「な、なんだよ? 何だかご機嫌みたいだけど」

ヒナタ「いえ、その……タクミ様も驚くかもしれないんですけど……実は、俺」




ヒナタ「カムイ様のことが……好きなんです」

タクミ「…………」
アクア「…………」

ヒナタ「そりゃ驚きますよね……声も出ないくらいに。けど、俺……本気なんです」

タクミ「……あ、ああ、そーなんだ……そ、それで?」

ヒナタ「けど……タクミ様も、カムイ様のことが好きでしょ? あ、隠さなくていいです! 俺、タクミ様の臣下なんで……見てれば分かります」

ヒナタ「実のキョウダイってことで……きっと悩んでるんだろうな、ってことも」

タクミ「いや……実は、血は繋がってなかったんだけど」

ヒナタ「え……そ、そうなんですか!? あ、なるほど、それで今……ま、まあとにかく!」

ヒナタ「タクミ様もカムイ様が好きなら、俺は臣下として、友人として……諦めるべきだ、って悩んでたんです」

タクミ(! ヒナタ、まさかそれで……悩み過ぎて、さっきみたいに壊れて……?)

ヒナタ「けど! 逆ハーレムなら……タクミ様も、それを受け入れたんなら。俺も……カムイ様を、心置きなく想ってイイって、そう思ったら……!」

ヒナタ「なんか、すっげぇ嬉しいです! 心の中のもやもやがぶっ飛んだっていうか……晴れ晴れした気分です!」

タクミ「そっか……ごめん、ヒナタ。なんか……すごく悩ませてたんだな」

ヒナタ「いいえ! そりゃ、俺が勝手に悩んでただけですから!」

ヒナタ「それに、これからはタクミ様も一緒でしょ? 二人で……いや、皆でカムイ様を、幸せにしましょう!」

タクミ「……ははっ。そうだね、ヒナタを見てたら細かい事も気にならなくなってきたよ。……ああ、これからよろしく!」

アクア(……さすが、白夜きっての爽やか野郎ね。タクミでさえほだされてるわ)

ヒナタ「へへっ……オウヨ!」

アクア(でもオウヨはまだちょっと怖い……)

ヒナタ「カムイ様……いや、カムイ! 改めて言わせてくれ……俺、ゼッタイお前を幸せにするからな! ここからは、俺も援護するぜ!」

カムイ「ヒナタさん……はいっ! ありがとうございます!」

ヒナタ「オウヨ! へへっ……また一緒に、鍛錬しような!」

アクア「ふふっ、かなりスムーズに話が進んで良かったわ。とはいえ……性癖暴露を避けられると思わない事ね」

タクミ「アクア姉さんは流されないにも程があるよね……」

タクミ「でも、そうだね。僕もやったんだし、ヒナタにも暴露してもらわなきゃ」

ヒナタ「へ? 性癖って……」

アクア「あなたがカムイに対して、最も捗る妄想よ。性的な意味でね」

アクア(……ま、ヒナタの事だから、爽やかなのが出てきそうだけど……)

ヒナタ「え? 要するに、カムイとしたいこと……ですよね?」

ヒナタ「へへっ、そりゃ……二人で思いっきり走り込みしたいですね!」

ヒナタ「気の済むまで、体力の尽きるまで……汗だくになって走りまくって! そんでっ……」

アクア(……まあ性癖と呼ぶには程遠い、予想通りの爽やかネタね……)
タクミ(ま、ヒナタだし、こんなもの――)




ヒナタ「そんで全裸になって汗だくのまま、カムイと思いっきり交わりてぇ」

アクア・タクミ「…………え゙っ」



ヒナタ「二人して汗まみれになって、体液飛び散らせまくって、体力の限界を超えて全てを絞り尽くすまで、我を忘れて獣のように交わりまくりてぇ」

ヒナタ「後ろからカムイを壊れるほど突きまくって、俺の全てを気の済むまで注ぎ込んでやりてぇ」

アクア「……あの……それ……外で、って事?」

ヒナタ「もちろん! 誰かに見せつけながらとか、最高ッスよね!」

アクア・タクミ「………………」

タクミ「さ……爽やかなノリでド変態だぁぁぁ!? 野外露出とかレベル高すぎだろ!?」

アクア「……でもタクミ、汗だくのカムイと、って燃えるんじゃない?」

タクミ「うん。……はっ!? な、何を言わせるんだ!?」

アクア(この主従、ヤバいわね……変態同士、惹かれあうのかしら)

カムイ「……うーん、つまりハードなトレーニング、という事でしょうか……」

カムイ「つ、ついていけるのか不安ですけど……この道を選んだ責任ですっ。折れたりしませんっ!」

アクア「カムイ……なんて健気なっ……!」ホロリ

アクア「けど、何でもかんでも受け入れなきゃいけない訳じゃないのよ? イヤならイヤって言っていいんだからね?」

カムイ「は、はい……じゃあ折れない程度に、がんばりますっ」


 カムイとヒナタの支援レベルがSに上がった

アクア「さて、ヒナタも何かあった時のために隠れてもらったし……次ね、次」

タクミ「うん。まあ、暗夜勢はレオン王子の臣下二人が待機してるし……」

タクミ「ヒナタ一人じゃ寂しいだろうし、次も白夜臣下から選んでいいかな?」

アクア「ああ、まあイイんじゃない? ちなみに、当てはあるの?」

タクミ「うん。ま、ヒナタと仲が良いし……ツバキなんか、丁度いいんじゃないかな?」

カムイ「! ……ツバキさん、ですか」

タクミ「うん。……? 何か問題でもある?」

カムイ「……いいえ、特には。いいですよ、行きましょう」

タクミ「? う、うん……といっても、まずは捜さないとね……ん? 向こうのほうから、何か声が……」

?<ニイサマガ ネエサマニナッテ シマワレマシタ!

アクア「……何だか狂気を感じるけれど。あれは……サクラね。あの子なら、ツバキの居場所も知ってるかも。ねえ、サクラ――」

サクラ「姉様も、兄様になってしまわれればいいのに!」

アクア「サクラ、正気に戻ってサクラ。歌うわよ?」

サクラ「わたしのカムイ兄………あっ、アクア姉様? どうしたんです、こんな所で――」

カムイ「――あっ、サクラさん! こんにちは、うふふっ、お元気そうですねっ」

サクラ「か……カムイ姉様っ!? そ、その……ごきげんよう、です……」モジモジ

カムイ「はいっ。あ……もしかして、お忙しかったですか? ごめんなさい、急に……」

サクラ「い、いえっ、全然そんな! それで、あのう……どうかされましたか?」

カムイ「あ。……はい、ツバキさんを、まあ捜してまして」

サクラ「ツバキさん……ですか? 確かさっき、天馬の厩舎のほうに……」

カムイ「そうですか。……あっ、サクラさん、教えてくれてありがとうございます! いってみますねっ」

サクラ「は、はいっ! その……また、お喋りしてくださいねっ」手フリフリー

タクミ「……ね、ねえ、アクア姉さん。なんかカムイ姉さんの様子、変じゃない?」

アクア「……さあ? 気のせいじゃないかしら。そんな事より、行きましょ?」

タクミ「え? う、うん……わ、分かったよ。……?」

天馬の厩舎

アクア「ツバキは……ああ、いたわね、滞りなく。さて、何してるんだか」

タクミ「て、天馬の世話とかじゃないの? ……ん? 何か喋って……」


ツバキ「よしよしー。うんうん、イイ子だねー。さすが完璧な俺の、完璧な相棒だよー。あははー、よーしよし、気持ちいいー?」

タクミ「……うん、普通に天馬の毛繕い中かな。和やかな光景だね」

アクア「どうかしらね。タクミもヒナタも、ここからアホになっていったんだから。油断できないわよ」

タクミ「誰がアホだ誰が! ……いやでも、どう見ても普通の触れ合い――」

ツバキ「えへへー、ホントに、ホントにイイ子だねー……カムイ?」

タクミ「……えっ」

ツバキ「よしよーし、イイ子だよー、カムイ? ほら、もっと毛繕いしてあげるからねー」

タクミ「……う、うん、まあ、愛馬に好きな人の名前をつけるくらいなら、普通……だよね? ほ、微笑ましいくらいで――」

ツバキ「あははー……気持ちいい? いいよねー? ほらほらー、ここがいいのかなー? カムイは本当に感じやすいよねー……」

ツバキ「それとも、俺が完璧に上手すぎるからかなー? あははー、じゃあ仕方ないかなー……もっと良くしてあげるよー」

タクミ「あ……アウトォォォ! ダメだアレ、天馬を見る目が尋常じゃない! もはや雌を見る目だよ!」

アクア「本人に迫るほどの度胸と実力は無いから、愛馬に想い人の名をつけて無聊を慰めてるのね……さもしい話だわ」

タクミ「なんかアクア姉さん、ツバキに辛辣じゃない!? カムイ姉さんも微妙に様子がおかしいし……って、あれ? ……カムイ姉さん、まさか」

カムイ「どうも、ツバキさん。……なにしてるんですか?」

タクミ「あ、案の定、行ってたー! 行動力が尋常じゃないな、カムイ姉さん!」

ツバキ「わああああ!? か、カムイ様ー!? い、いえ……別に、何も!?」

カムイ「そうですか。……まあ、別にいいんですけど」

タクミ「? あ、あれ……何かカムイ姉さん、やっぱり様子がおかしいな……微妙に冷たい、っていうか……」

カムイ「ただ……完璧、とか聞こえた気がしたので。聞き違いだと思いますが」

ツバキ「えっ? い、いえー……聞き違いじゃありませんよー? だって俺、実際、完璧ですからねー」

ツバキ「カムイ様も、それはご存知でしょ? あははー」

カムイ「…………」

カムイ「いえ、存じません。ツバキさんが完璧、って……何の事ですか?」

ツバキ「へ!? い、いえ、ですから……えっ!? いや、俺って完璧で――」

カムイ「いえ……ごめんなさい、やっぱり分かりません。……だって」


カムイ「ツバキさんは――完璧なんかじゃ、ないでしょう?」

ツバキ「――――」

タクミ「!? か、カムイ姉さん、何を……!?」

アクア「……………」

ツバキ「あ、あは……あははー……な、ナニ言ってるんですか、カムイ様ってばー……お、俺ですよ? 俺が完璧じゃないなんて、そんな……」

カムイ「いえ、完璧じゃないですよ。だって、完璧な人なら――」



カムイ「最終命中率98%を外した上に反撃必殺で墜ちるとか、ありえないですよ」

ツバキ「な、何の話ーっ!?」

タクミ「か、カムイ姉さん……?」

アクア(リセットしたら記憶は残らないはずだけど……カムイの潜在化に残ってたのか、私が変に刺激しちゃったせいか……意外と根に持ってるだけかもしれないけども)

カムイ「私のごり押し采配も悪いですけど……普段から完璧とのたまいつつ、98%を外すなんて……そんなの、完璧じゃありません。完璧(笑)です」

ツバキ「い、いや、良く分かりませんけどー……だったらそれこそ、完璧に100%の時に攻撃させてくれればー……」

カムイ「本当に完璧な人は、足りない2%を自ら補えるものだと思います。そもそもツバキさん、成長も微妙ですし……」

ツバキ「実際のステータスと支援会話が噛み合ってないNo1じゃないですか」

ツバキ「!? な、ななっ……なーっ!?」

ツバキ「そ、それ以上、俺の完璧を否定するなら……カムイ様だって許さないですよ!? こ……このーっ!」グワッ

タクミ「えっ? ……はっ!? しまった、油断してたっ……か、カムイ姉さん――!」

ツバキ「――って、うわーっ!?」

タクミ「え……暗夜勢が潜んでる辺りから、矢が!?」

ツバキ「な、なんなんだいー!? こ、これはまさか……ゼロ!?」

ゼロ「ふっ……ようやく出番がキタってのに、避けられるとは残念だな。とうとう俺の熱いのを、お前にぶちこめると思ったのにな」

カムイ「あっ! 意外にも魔力の成長率が良くシャイニングボウを使いこなせて、アドベンチャラーとして攻めに癒しにと活躍してくれるゼロさんじゃないですか!」

ゼロ「ふっ……任せな」

アクア「けれど透魔では加入が遅く、そのため更に魔力の伸びが良い上位互換のサクラには取って代わる事が出来ず、合流後は二軍のベンチを温め続けているゼロね」

ゼロ「ふっ……任せな(泣)」

>>115 訂正

【×】ツバキ「実際のステータスと支援会話が噛み合ってないNo1じゃないですか」

【○】カムイ「実際のステータスと支援会話が噛み合ってないNo1じゃないですか」

ツバキ「くっ……な、なんだいー? また僕の命を狙ってきたの? いいよ、受けて立つよ!」

ゼロ「そう言いたいトコだが、残念ながら違うな。今回の俺の目的は、カムイ様と……」

ゼロ「いや、カムイと共に、全く完璧じゃないお前に言葉責めしてやるコトさ」

ツバキ「!? な、なんだってー!?」

ゼロ「完璧完璧とのたまいつつ、所々がヌケちまってる甘ちゃん坊やに……現実をぶちこんでやりたいと、前々から思っててな」

ゼロ「二度と完璧なんて口に出来なくなるほど、腰がヌケるまで徹底的に言葉でいたぶってやるよ……なあ、カムイ?」

ツバキ「な、何て恐ろしいことを……くっ、けど僕は屈しないぞ!」

タクミ「……おいおい、いい加減に――」

カムイ「? いえ……ゼロさん、違いますよ? 私は、いたぶるつもりなんてありません」

ゼロ・タクミ「…………へ?」

ツバキ「え……か、カムイ様?」

カムイ「ねえ、ツバキさん……あなたはいつも、完璧、完璧と言いますが……完璧じゃないと、そんなにダメですか?」

ツバキ「!? そ、それは……そうでしょうー? だって僕が完璧だからこそ、皆は安心してー……」

カムイ「いいえ、違います。誰もツバキさんに……完璧なんて、求めてません」

ツバキ「なっ!? そ、そんな……ひ、ひどいで――」

カムイ「完璧なんて、そんな重責を仲間一人に押し付けようと思う人なんて、一人もいないんですから」

ツバキ「えっ? ……え……?」

カムイ「私にはツバキさんが、完璧という言葉に追われ、完璧という言葉に縛られ、無理をしているように見えます」

カムイ「本当のツバキさんを……閉じ込めているように思います」

ツバキ「! そ、それは……そんな、こと……」

カムイ「いいじゃないですか、完璧なんかじゃなくっても。……いいじゃないですか」

カムイ「天馬系にしては速さと魔防がやたら低かったり、ぶっちゃけドジばっかりしてるし完璧なんて名ばかりだったり、裏では皆から『完璧(笑)』とか『ああ、あのしょっちゅう二回攻撃喰らうアホ毛?』とか囁かれていても……いいじゃないですか」

タクミ(カムイ姉さん、さり気に酷いこと言ってるー!?)

ツバキ「……俺、俺……いいん、ですか……? 完璧じゃ、なくても……完璧な男として、皆を支えなくても……」

カムイ「はい……はい、ツバキさん。いいんです……」

カムイ「ぶっちゃけ仲間が増えだした時点で二軍落ちしてましたし……ぜんっぜん、いいんですよ、ツバキさん」

カムイ「少なくとも私の前では、自分を完璧だなんて偽らなくて……いいんです」

ツバキ「カムイ、様……俺、俺……俺っ!」

ツバキ「ホントは辛かったんです……! レベル上がっても2ピンしかしなくて冷たい目で見られるのも、二回攻撃を受けた時にため息が聞こえてくるのも……!」

ツバキ「支援で完璧と口にするたび白い目で見られるのも、サイゾウに『……あ、ああ、俺達、互角だったよネ』って気を遣われるのもっ……!」

ツバキ「ホントは、ホントはっ……辛かったんですぅぅぅっ……!」

カムイ「……そうですよね、ツバキさん……今日日アイドルでもないと押し付けられないような無茶ぶり設定は……本当に、辛かったですよね」

カムイ「構いません……完璧ではないアナタを、私は受け入れます」

カムイ「さあ、思う存分……泣いてください。完璧なんて、捨て去って。あと、完璧だなんて二度と口にしないで」

ツバキ「う、ううっ……ううっ」

ツバキ「う、うわああああんっ……! カムイ様超イイニオイ……うわぁぁぁぁん!」

アクア「……大団円ね」

タクミ「色々と腑に落ちないけど、いいのかなアレ……?」

数分後

ツバキ「お、お見苦しい所を見せちゃいましたけどー……何の用だったんです? タクミ様に、アクア様まで」

アクア「説明めんどいわね。……かく」

ツバキ「まる。……ぎゃ、逆ハーレムですってー!?」

タクミ「カムイ姉さんは許しても、アクア姉さんはツバキを許してないっぽいな……ま、まあ、そういうことだよ。で、ツバキは……」

ツバキ「……いいですよー?」

タクミ「! は、話が早いね……いいのかい?」

ツバキ「ええ、そりゃもうー……だって俺、カムイ様には選ばれないだろうなーって思ってましたもん。………二軍ですし」

ツバキ「けど、逆ハーレムなら……カムイ様を愛する男の一人として、傍にいられるんですよね? なら、何だってイイですよー」

ツバキ「俺を完璧じゃなくてイイって言ってくれる、カムイ様の傍にいられるなら……何だって構いません」

ツバキ「だから、カムイ様……ううん、カムイー! この完璧な……いや! この、全く完璧じゃない俺も……よろしくねー!」

カムイ「ツバキさん……はい! わかりました、よろしくお願いしますね!」

ツバキ「あははー、まっかせてよー! この……全く完璧じゃない俺にねー!」

タクミ(そう名乗られても不安しかないけど……ま、まあいいか。これにて一件落着――)

アクア「じゃ、ちゃっちゃと性癖暴露してもらって次に行きましょうか。ほら、さっさとしなさい。カムイは忙しいんだから」

タクミ(あ、アクア姉さん厳しすぎぃぃぃ!? まるでツバキの失態を実際に見てきたかのようなんですけど!?)

ツバキ「え……え!? せ、性癖暴露って、そんな……」

アクア「このやり取りも食傷気味なのよ。つべこべ言って手間取らせないで。松の木で滅多打ちにするわよ」

ツバキ「え、ええ!? ちょ、せめて説明くらい……」

アクア「みんな、松の木は持ったな!?」
ゼロ「おう!」
カムイ「おうです!」

ツバキ「わわわかりました、わかりましたよー!? え、えっと……俺の場合、その」

――――――
ツバキ『う、うえーん、カムイぃー……また失敗しちゃったよー……俺、俺、完璧なんかじゃないんだー……ホントは、ダメダメなんだよー……』

カムイ『あらあら、ツバキさんってば、仕方ないですねー。』

カムイ『ほーら、いいんですよ、完璧なんかじゃなくたって。抱きしめてあげますから、おいでなさいー?』

ツバキ『う、うう……カムイ、カムイーっ! こんなダメダメな俺を、慰めておくれよー!』

カムイ『うふふ、もちろんですっ。おー、よちよち、ツバキさんは完璧なんかじゃなくて、イイんですからねー?』

カムイ『ちゃーんとイイ子だって、私は分かってますからねー?』

ツバキ『う、うう……うん、うん……ね、ねえ、カムイ……あの、いつもの……』

カムイ『あらあら、ツバキはこんなに大きいのに、仕方ない子ですねー?』

カムイ『はーい、おっぱいですよー? うふふ……好きなだけ、チューチューしてイイんですからねー?』

ツバキ『わ……わーい! えへへー……カムイ……ううん、カムイママ、ありがとー!』
――――――

ツバキ「…………っていう」

タクミ(……うん、これは……さっきのカムイ姉さん、奇しくもツバキの性癖とマッチした説得だったんだね)

タクミ(……いや、っていうか、ツバキの性癖って……)

アクア「完璧とは名ばかりの低成長二軍落ち天馬武者が、更にバブみ趣味とは世も末だわ」
ゼロ「ぶっちゃけヒきますね。恥ずかしくないんですかね」

ツバキ「う……うわぁぁぁん! カムイ……カムイー!」ビャーン

タクミ(ああ……哀れな。……哀れ、だけど)

カムイ「きゃあっ。……仕方ないですね、ツバキさんは。よしよしー、ですよー」

ツバキ「うう……はっ。……う、うへへー……」

タクミ(……同情の余地は無い! っていうか羨ましい……!)ゴゴゴゴ


 カムイとツバキの支援レベルがSに上がった

~~CM~~
一年インビジ組!
DJアクア先生!


アクア「ハイッ、つぎつぎっ、次の問題はー♪ カンカン、カンナちゃんっ♪」

カンナ「はーい! 空を飛べるツバキおじさんを先行させて、敵陣に突入させます!」

ギュッギュッ、ギュワワッ、ギュンギュワワー♪
ギュンギュンギュンターサン♪

アクア「正解よ」


河原
カンナ「よかったのかなぁ……」

ルッツ「きっと大丈夫だよ!」

たまにオレンジ味も飲みたくなる!
~~~~~~

今回はここで中断セーブします
読んでくださっている方に感謝です
大体お昼頃に再開します~

再開します~
毎回ツバキさんを、何となくイメージで金鵄武者にしちゃう自分も悪いんや……
(金鵄武者の成長補正の悪さは異常)

ツバキ<アレッ、ヒナタモイタンダ
ヒナタ<オウヨ!

アクア「さて、順調……と言えるのかしらね? 結構、時間食っちゃってるけど」

タクミ「うーん……まあ、考えても仕方ないんじゃない? それより……とりあえず僕は、そろそろ裏手に回るよ」

アクア「あら、どうして?」

タクミ「いや……さっきツバキが逆上しかけたじゃない。あれを見ちゃうと、やっぱり僕の弓はカムイ姉さんの護衛に専念したほうが良いと思ってさ」

タクミ「それに……さすがにちょっと疲れてきちゃったしね」

レオン「……そう言うと思って、交代しにきたよ」

タクミ「! 何だ……お見通しってわけ? ま、そういうことだから……頼んだよ、レオン王子」

レオン「ああ、任せてくれ。……さて、という訳で」

レオン「か、カムイ姉さん、その……ただいま」

カムイ「わあっ、レオンさん! おかえりなさいっ、頼りにしてますねっ」ガバチョッ

レオン「わっ!? ちょ……カムイ姉さんは愛情表現が大げさだよ! も、もう……」

アクア(言いながら頬が緩みきってるのよね……やれやれね、全く)

レオン「さ、さて……次かな? まあ、今はせっかく臣下で進めてる事だし、まずは臣下系を集めようか?」

アクア「臣下系とか、気分はコレクションね。さて、残ってる男の臣下は……えーと」

レオン「暗夜はエリーゼ臣下のハロルドと、マークス兄さん臣下のラズワルド」

レオン「白夜はヒノカ王女臣下のアサマと、リョウマ王子臣下のサイゾウかな。ちょうど二人ずつだね」

アクア「なるほど。……じゃ、とりあえず暗夜臣下コンプリートからいってみましょうか?」

レオン「ん、分かったよ。なら、先に名前が出たハロルドから……かな?」

レオン「さて、どこに……とか言ってたら、きっと手がかりが向こうから来るんだよ」

エルフィ「はあ、お腹が空いたわ……」
エリーゼ「もーっ。エルフィったら、いっつもお腹空かせてるんだからーっ」

レオン「ほらね。……おーい、二人ともー!」

エリーゼ「あれ? あっ、レオンおにいちゃんと、アクアおねえちゃんと……」

エリーゼ「! カムイおねえちゃんだーっ! わーいっ!」ダキツキーッ

カムイ「きゃっ、天使……いえエリーゼさんったら、ビックリしちゃいましたよっ」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、どうしたのーっ? あたしと結婚するっ?」

カムイ「ええ、別の世界線では、必ずっ!」

エリーゼ「えへへっ、約束だよーっ! ……あっ、それで今は、なにしてるのっ?」

カムイ「あ、はいっ。実は、ハロルドさんを捜してて……」

エリーゼ「ハロルド? ハロルドなら、確かまた人助けなんだってー」

エリーゼ「けど、ノスフェラトゥの大群が近くに出たって聞くし……心配かも」

カムイ「なるほど……下手をすると、また巻き込まれてるかもしれませんね。早くいかないと――んっ?」

カムイ「あ、あれっ? 誰かが……具体的にはとっても力持ちさんが、私の袖を引っ張っているような?」

エルフィ「……あの、カムイ様……わたし、お腹が空いて……」クーキュルキュル

カムイ「えっ? う、うーんと、うーんと……」

カムイ「あっ! そうです、私が作ったクッキーで良ければ……どうぞっ!」

エルフィ「! カムイ様……ありがとうございます、恩に着ます、嫁に貰ってください」

カムイ「もちろん、別の世界線では、必ずっ!」

エルフィ「わーい。……では、いただきますね」モキュモキュ

レオン「……え、エルフィ? それ……食べて、大丈夫なのか?」

エルフィ「鋼の味……インパクト抜群……きっと生まれ変わっても忘れないほど……」

レオン(……すごい、黙々と食べてる……ノスフェラトゥですら一撃なアレを……)

エルフィ「不思議とお腹に溜まるわ……味だけじゃなく、重さも鋼のよう……もぐもぐ」

カムイ「さて……ハロルドさんを捜しにいってきますっ。お二人とも、またっ!」

エリーゼ「うん! 良く分かんないけど、おねえちゃんファイトーっ!」ブンブン
エルフィ「また……です。……モキュモキュ」フリフリ

 森の中

ハロルド「くっ! まさか不運にも、ノスフェラトゥの大群と遭遇してしまうとは……」

ノスフェラトゥ「Wooooo…...」
ノスフェラトゥ「Grrrrrrr…..!」

ハロルド「ふ……カムイ様への叶わぬ慕情を振り切るため、無理をしていたツケがやってきたというコトかな……」

ハロルド「が、しかぁーしっ! どうせ死ぬ覚悟なら……この窮地を乗り切り、私の想いを打ち明けよう!」

ハロルド「そう、もし生き残ったら……私は、カムイ様に告白するのだ……」

ハロルド「というわけで、かかってこいノスフェラトゥ共! この正義の使者ハロルドが、愛の力で見事お前達を打ち破ってみせよう!」

ノスフェラトゥ「Mmm…!」
ノスフェラトゥ「―――Gahhhhhhhh!!!」

ハロルド「うおおおおお! ここを通りたくば……この私を倒して見せよーーーっ!」

カムイ「―――ハロルドさーんっ!」

ハロルド「え……か、カムイ様っ!? ここは危険だっ、お下がりをっ!」

カムイ「いいえ、退きません……折れたりしません! 私も一緒に戦います!」

カムイ「仲間を……ハロルドさんを見捨てて、逃げたりしないんですからっ!」

ハロルド「か、カムイ様……!」ジーン

カムイ「さあ、行きますよっ……アクアさん、援護をお願いします!」

アクア「ええ、任せて、カムイ」

オーディン「ふっ……俺を忘れてもらっては困るな! いくぞ、《アウェイキング・ヴァンダー》!」
ゼロ「やれやれ、また出番か? 全く……いやらしい欲しがりだなッ!」

タクミ「早速、隠れて護衛に回ったのが功を奏したみたいだね……いくよ、お前達!」
ヒナタ「オウヨ! 切り込み隊長は任せてくださいって!」
ツバキ「あははー。今だけは……完璧に、援護するよー!」



カムイ「竜穿! 疾風迅雷! 天空! やあぁぁぁーーーっ!!」
アクア「ユーラリユールレリー……トドメよ、カムイ!」
カムイ「はい! もう一発、竜穿! からの……天空必殺です! ええーーーーいっ!!」

ノスフェラトゥ「あー(´;ω;`)」
ノスフェラトゥ「うー(´;ω;`)」

男共「「「………………」」」

男共「「「」」」ササーッ←戻った

レオン(……な、何も出来ないまま終わった……)

カムイ「ふう。……何とかなりましたねっ」

アクア「ええ、朝飯前ね」

ハロルド「あ、あの、カムイ様に、アクア様まで……こんな所で何をしているのだ?」

カムイ「はいっ! ハロルドさんを捜しに……」

ハロルド「えっ。……えっ!? わ、私を……かね!?」ソワソワ

アクア「期待してる所、悪いけど……かくかく」

ハロルド「しかじか? ……ぎゃ、逆ハーレムだってぇ!?」

レオン「……そういう事だよ、ハロルド。理解してくれたかな?」

ハロルド「れ、レオン様まで!? そういえばさっき、果敢に飛び出して来た割には特に何もせず引っ込んでいった者達がいたような……」

ハロルド「という事は、既に計画は、着々と進行しているという……?」

アクア「ええ。それで、ハロルド……アナタは、どうするのかしら?」

ハロルド「わ、私は。…………」

ハロルド「いえ、わざわざ迎えに来て頂いたのに、申し訳ない。私は辞退するよ」

アクア「……それは、もしかして……アナタの体質が理由?」

ハロルド「……さすがはアクア様。その通り……この私の、不幸さゆえさ」

ハロルド「お察しの通り、私はカムイ様の事を想っている……が、だからこそ、悩み、迷ったものだ」

ハロルド「仲間の皆も同じ気持ちだから、というだけでなく……」

ハロルド「私のような不幸な男が傍にいれば、カムイ様を巻き込んでしまうのではないか、と」

ハロルド「だからこそ……私はこうして、人助けに明け暮れていた。こうしている間は……全てを忘れられるからな」

ハロルド「……なに、心配する事はない! この通り、私は一人でもへっちゃらさ!」

ハロルド「今まで通り、人助けに奔走する生き甲斐に従事するとしよう!」

ハロルド「だから……カムイ様は己の道を、心置きなく進むのだ。振り返る必要はない!」

ハロルド「その道が正しい事は……この正義の使者、ハロルドが保証するからな!」

カムイ「…………」

カムイ「ハロルドさん。本当に、それで……イイんですか?」

ハロルド「! ……カムイ様?」

カムイ「一人でも、なんて……さっきだって、危なかったじゃないですか。ノスフェラトゥの大群に囲まれて……」

カムイ「いいえ、今までだって、何度も危ない目に遭ってきたはずです」

カムイ「なのにどうして、一人でへっちゃらだ、なんて言うんですか?」

カムイ「私を巻き込むだなんて……私は、そんなにも頼りないですか?」

カムイ「私は……私は、ハロルドさんの」

カムイ「幸運のキーマンでは、無かったのですか?」

ハロルド「! …………っ」

カムイ「言ってください、ハロルドさん。アナタの本当に望むことを」

カムイ「正義の使者なら、嘘なんて吐かず……私に、言ってください!」

ハロルド「……私は」

ハロルド「………私は………」

ハロルド「…………」

ハロルド「カムイ様と……カムイと一緒に……いたいっ……!」

カムイ「! ……ハロルドさんっ」

ハロルド「一人でへっちゃらなどと、どの口が言ったものか。へっちゃらなどではないから、私はこんな無茶をしていたのではないか」

ハロルド「カムイが誰かの腕に抱かれる事を恐れ……それを見るくらいならば、と」

ハロルド「人助けを言い訳に奔走し、自身の命も省みず……逃げ回っていたのではないか……!」

ハロルド「笑ってくれ、カムイ。私は弱い人間だ。貴女の傍にいる資格も無い程に」

カムイ「……ふふっ」

ハロルド「……そうだ、それでいいんだ。こんな情けない男の事など、いくらでも――」

カムイ「それで真っ先にする事が、人助けなんて……ハロルドさんらしくて、おかしいですっ」

ハロルド「! ……か、カムイ様?」

カムイ「ハロルドさん、私はアナタの弱さを笑いなんて、しないです。いいえ……出来ないです。私だって、弱い人間なんですから」

カムイ「皆がいないと、何も出来ない。皆がいなくなるのが、何より怖い」

カムイ「私は独りぼっちじゃ何も出来ない、ただの怖がりで弱い人間なんです」

カムイ「だけど」

カムイ「こんな私でも……皆は、一緒に居てくれる。支えてくれる」

カムイ「だから、弱い私なんかでも、立っていられる」

カムイ「だから、ハロルドさんが、弱いというのなら」

カムイ「私が、支えますから。私を支えてくれる、皆と一緒に……支えますから」

カムイ「だから、ハロルドさんも」

カムイ「私を……支えて、くれませんか?」

ハロルド「……ははっ」

ハロルド「はははっ……はーっはっはっは!」

ハロルド「完敗だ、カムイ……言える事なんて、何も……無い」

カムイ「ハロルドさん……それじゃあっ」

ハロルド「ふっ……この正義の使者、改めっ――愛の使者、ハロルド!」

ハロルド「この身に宿る無尽の愛を、湧き上がる力の全てを!」

ハロルド「全て、カムイに捧げると――誓おうッ!」

カムイ「……ハロルドさんっ!」

アクア「……まあハロルドに関しては、予想通りの流れだったわね」

アクア「彼が不幸だからって、カムイが放っておくはずなんて無いもの」

レオン「カムイ姉さんは優しいからね。僕も今回は、そこまで心配してなかったよ」

アクア「ええ。……とはいえ、性癖暴露はしてもらいましょうか、ハロルド?」

ハロルド「む? ……せ、性癖だって!? それはつまり、カムイ様との……!?」

アクア「話が早くなってきたわね。そういう訳だから……さあ、はよ」

ハロルド「むむう、何となく釈然としないが……」

ハロルド「いいだろう、この愛の使者ハロルド、逃げも隠れもせん! 私が良く妄想するのは……」

――――――
ノスフェラトゥ『Grrrrrr….!』
ノスフェラトゥ『Eeeeeeehaaaaaa….!!』

カムイ『くっ……私とした事が、大ピンチですっ。折れちゃいそうですっ!』

カムイ『うう……こんな時……あの人が、あの人がいてくれればっ……!』

?『ハーッハッハッハ! この私を呼んだかね、カムイ!』

カムイ『はっ!? あなたは、あなたはっ……謎のヒーロー、マスク・ド・ハロルDさん!』

ハロルD『そうとも! 今、助けるぞ――トリャアアアア!』

ノスフェラトゥ『んー……(´・ω・`)』
ノスフェラトゥ『もー(´・ω・`)』

カムイ『さすがハロルDさん! けど……アナタは一体、何者……はっ!?』

カムイ『さっきの目まぐるしい激戦でマスクが破れて……あ、アナタは……ハロルドさん!?』

ハロルド『くっ、バレてしまっては仕方ない……隠していてすまなかった、カムイ。私はもう、キミに合わせる顔など……』

カムイ『No! そんな事言わないで、ハロルD……いえ、ハロルド! アナタが何者でも関係ない……私は、私はアナタと、一緒に……!』

ハロルド『! そ、そこまで私の事を……ッ、カムイッ!』

カムイ『ハロルド……!』
――――――

ハロルド「――そして二人は幸せなKissをして、ハッピーエンド……と」

レオン(……いや、まあ別にイイんだけど、その……)
アクア(さっきのカムイの戦いを見た上で、良く言えたわね……ある意味、さすがだわ)

ハロルド「そ、その……お恥ずかしいのですが。えーと、だね……」

アクア「ああ、大丈夫。もっと恥ずかしい人は他にも沢山いたから。ね、レオン?」

レオン「やややかましいよ! まあ、とにかく……これでハロルドも逆ハーレムの一員だね。援護も頼んだよ」

ハロルド「もちろん、任せてくれたまえ! 愛の使者、ハロルド……カムイ様を、見事に守り抜いてみせよう!」


 カムイとハロルドの支援レベルがSに上がった

アクア「さて、ハロルドも裏方に回ってもらったし……次はラズワルドかしら」

レオン「うん。……マークス兄さんの臣下に対して、こう言うのも悪いけど……楽勝の部類じゃないかな。女好きだし……」

アクア「そうかもね。ただ、居場所は……ん? あれは、ベルカ?」

レオン「あ、本当だ……何か挙動不審だね。どうかしたのかな――」

カムイ「あっ……ベルカさーん! おーいっ!」

レオン「カムイ姉さん、ちょっとは考えてから動かない!? とりあえず突撃は事故の元だよ!?」

ベルカ「!?」ビクッ

カムイ「どうしたんです? ベルカさん……きょろきょろしてましたけど」

ベルカ「あっ。……か、カムイだったのね。いえ、ちょっと……オボロから逃げてて」

カムイ「へ? オボロさんって……確か服を見繕う約束をしてた、とか」

ベルカ「し、してないわ。向こうが勝手に言ってるだけで……私の持ってる服は質素なものばかりだから、フリフリのついたのとか」

ベルカ「いかにも目に悪くて目立ちそうな色彩のとか……とにかく女の子っぽい可愛い服を見繕わせろ、って」

アクア(……正直、見たいわね)

ベルカ「私にそんなの、似合うはずないのに……本当に、迷惑――」

カムイ「えっ、そんな事ないですよっ! ベルカさん、きっと似合いますっ、私も見てみたいですっ!」

ベルカ「!? な、なにを……本気で言ってるの? それとも、からかってる?」

カムイ「からかってないですっ。だってベルカさんは、かわいい女の子なんですからっ」

カムイ「絶対に似合うって、私が保証しますっ!」

ベルカ「……そ、そう……そう、かしら。…………」

ベルカ「じゃ、じゃあ……着たら、その……カムイになら、見せても……」

オボロ「言質を」
ルーナ「取ったわよ」

ベルカ「きゃっ!? はっ……い、いや、今のはっ」

オボロ「あらあら~、かわいい悲鳴ねぇ、むふふっ」

ルーナ「カムイ様に気を取られて、珍しく無防備だったわね。さあ、女同士で姦しく、お買い物に繰り出しましょうか!」

ベルカ「あっ……や、そ、そんな……か、カムイ……」

カムイ「わあっ、いいですねっ……ベルカさん、かわいい服を着たら、是非とも私にも見せてくださいねっ!」

ベルカ「あう。そ、そんな……ああ……ぁ~~~……」

レオン「引きずられていくね。……って!? ちょっと待った、ラズワルドがどこにいるか知らない!?」

ベルカ「ぅぅ……ぅ? ラズワルドって……アレかしら、あの……ナンパ男?」
オボロ「ああ、アレ……? えーと、わたしは知らないわね……」

アクア(アレ扱いとは……まあ、支援が低いとこんなもんかしら……)

ルーナ「……ラズワルドなら、確かキャッスルの片隅で踊りの練習中よ?」

カムイ「えっ……ルーナさん、本当ですかっ?」

ルーナ「ええ。夢中だったし、今もやってるでしょうけど。…………」

カムイ「? ルーナさん……ど、どうかしましたか? 不機嫌そうですけど……」

ルーナ「……カムイ様、ラズワルドを捜したり、ベルカにかわいいとか言ったり……」

ルーナ「あたしには、何かコメントないわけ!?」

オボロ「あっ。……わたしも何か、欲しいです……」

カムイ「えっ!? こ、コメント……え、えーと、えーとっ」

ルーナ「……もーっ、薄情者っ! カミラ様の言いつけで、ベルカと一緒にカムイ様をこっそり監視してた時期もあったのに……冷たいんじゃないっ!?」

カムイ「そ、そこに相互の友情を育む要素は無いと思いますけど……うーんと、うーんと……」

カムイ「る、ルーナさんはっ……いつも頑張り屋さんで、すごいと思いますっ!」

ルーナ「! それって……一番?」

カムイ「え? そうですね……はい。私が知ってる限りでは、ぶっちぎりの一番ですよっ」

ルーナ「……ふーん……ふっふーん! まあ当然ねっ! 今日の所は、それで勘弁したげるわっ。ありがたく思いなさいよね!」

カムイ「ふえっ!? はあ……わ、わかりました? う、うーん?」

オボロ「あ、あの、カムイ様~……わ、わたしにも何か~……」

カムイ「あっ……オボロさん! ベルカさんの服を見繕いに行くんだとか?」

オボロ「へぁっ? あ……はい! そ、そうですけど……」

カムイ「そうですか……ふふっ、私、嬉しいです」

カムイ「暗夜嫌いだったオボロさんが、ベルカさんやルーナさんと仲良くしてくれてるみたいで……本当に!」

オボロ「あう。ま、まあ……ベルカとは話し合いましたし、ルーナは……不思議と暗夜って感じが、あまりしなくて」

オボロ「だからこそ、なんですけど……」

カムイ「それでもですっ。ふふっ……ベルカさんの服、頑張って見繕ってあげてくださいねっ」

カムイ「出来れば今度は、私の分も……オボロさんのセンス、とっても素敵ですから!」

オボロ「! そ、それはもちろんっ! うふふ~……張ぁり切っていきますよぉ!」

レオン(……カムイ姉さんを狙う男共と違い、女性陣は良好な関係を築けてるみたいだね)

レオン(まあこれも、カムイ姉さんの不思議な魅力の賜物――)

オボロ「カムイ様には何が似合うかしら……白夜風猫又コスとか……」

オボロ「いえ、せっかくだしここは暗夜風にチャレンジして、妖怪・食い込み尻うさぎ娘なんかでも……」

レオン(何それバニーガールの事か見たいんですけどちょっとぉぉぉ!」

アクア「レオン、気持ちは分かるけどダダ漏れてるわよ」

カムイ「とりあえず……次はラズワルドさんの所ですね。よーし、いきましょうー!」

 キャッスルの隅っこ

ラズワルド「……はあ」タメイキ

ラズワルド「…………」ウロウロ

ラズワルド「……はあ~~~っ……」オオキクタメイキー


レオン「……ラズワルドは、一体何してるんだろう……?」

アクア「ため息吐いて、その場をうろうろ、時々立ったり、座ったり……かと思いきや、天を仰いで、首を振ったり」

アクア「まあ、見方によっては踊りの練習にも見えるわね」

レオン「あんなネガティブな踊り、やだな……まあ忙しそうだし、一旦時間を置いてから……とか言っても」

カムイ「あれっ? ラズワルドさーん! ため息なんて吐いて、どうしたんですか?」

ラズワルド「え……う、うわあああ!? か、カムイ様!?」

レオン「……っていう感じで、突撃していくんだもんね。もう慣れたよ」

ラズワルド「れ、レオン様にアクア様までいるし……何なんですか、もーっ!?」

ラズワルド「こんなトコ見られるなんて……恥ずかしいよー!?」

アクア「ナンパとかはするクセに、相変わらず初心よね……」

アクア「まあこれから更に恥ずかしがる事になりそうだけど。ねえラズワルド、かくかくしかじか」

ラズワルド「へ? まるまる……って、ええーっ!? 何ですか逆ハーレムって!? そんなとんでもない話、省略しちゃいます!?」

アクア「御尤もだけど、私達も大変なの。ついつい流れ作業になっちゃう事も、時には大目に見て欲しいわ」

ラズワルド「いや困るんですけど!? 僕のカムイ様への恋心を、流れ作業で済まされちゃ……あっ」

ラズワルド「あ、ああ……今まで誰にも悟られないよう、隠し通してきたのに……こんな形でバレるなんて、あんまりだよー! うわーん!?」

カムイ「あっ……ラズワルドさん!? 待ってくださ――」

?「――待つのだ、ラズワルドっ!」

カムイ「あっ、アナタは……オーディンさん!」

ラズワルド「オーディン!? ちょっ……ど、どいてよ!?」

オーディン「いや、そうはいかないな……我が宿業の姫君の願いを叶えるために」

オーディン「ラズワルド! 俺は貴様を、逃がしはしない!」

ラズワルド「え? 宿業の姫君、って……何言ってるんだい、オーディン」

ラズワルド「まさか……まさかとは思うけど、オーディン……逆ハーレムに!?」

オーディン「……さすがは蒼穹のラズワルド。ご明察だな」

ラズワルド「っ……ふざけてる場合かい!? 僕達の役目、分かってるのか!?」

ラズワルド「僕達は、いつか……いつか、元の世界に……!」

オーディン「ああ、無論だ。全て、分かった上で、それでも決めたのだ」

オーディン「……ごめん、ラズワルド。お前の言うこと、ホントに分かってるんだよ。俺だって、色々考えたんだ」

オーディン「けど……やっぱり、ダメだった。カムイ様のこと……諦められなかった」

オーディン「だけど、ラズワルド……それはお前だって、同じなんだろ? だから、さっきも悩んでたんだろ?」

ラズワルド「そ、それは……ち、違うっ! 僕はちゃんと、自分の使命を……!」

オーディン「ああ、分かってる。でも……その言の葉を紡ぐかどうかは、ちゃんとカムイ様と話した後で……考えるんだ」

カムイ「……ラズワルドさん……」

ラズワルド「えっ……あっ。か、カムイ様……ぼ、僕は……」

カムイ「……………」

カムイ「ラズワルドさん、私と――踊ってくださいませんか?」

ラズワルド「えっ? ……え、ええーっ!? な、何で急に!?」

カムイ「いいじゃないですかっ。さあさあっ、女性から誘うなんてはしたないですが、お手を取らせていただきますよーっ」

ラズワルド「わ、わわっ……か、カムイ様!? とっ、とっ、とっ……」

カムイ「ふふっ、いかがです? 私これでも、一応お姫さまですからねっ。少しはダンスの心得、あるんですよ」

ラズワルド「あ……は、はいっ! お上手ですし、その……お綺麗、っていうか……」

カムイ「……元気、出してくれましたか?」

ラズワルド「………えっ?」

カムイ「ラズワルドさん、さっき溜め息なんて吐いて、元気なかったから……心配してたんです」

カムイ「けど、ラズワルドさんはそういう時こそ、踊りの練習してたのを思い出して……ちょっぴり強引でしたけど、誘っちゃいましたっ」

ラズワルド「か……カムイ様」

カムイ「私は……ラズワルドさんの、いっつも前向きな所、すごいって思います」

カムイ「女性をお茶に誘うのに失敗して、落ち込んでも、すぐに立ち直って」

カムイ「いつもは恥ずかしがり屋さんなのに、元気のない人を見たら、踊りを見せて元気にしてあげたり」

カムイ「そんなラズワルドさんだから……元気がないと、心配になっちゃいます」

カムイ「だから、もしもラズワルドさんが、元気のない時は」

カムイ「私が……ちょっとでも、元気をあげられたらな、と思って……」

カムイ「……うふふっ。こんな事を言うのは……恥ずかしいよーっ、ですねっ」

ラズワルド「……カムイ様……」

ラズワルド「………」(チラッ)

オーディン「……な?」

ラズワルド「……あははっ、そうだね……」

ラズワルド「ホント……諦められっこ、ないよね」

カムイ「ラズワルドさん? あの、どうかしましたか?」

ラズワルド「カムイ様。……いや、カムイ」

ラズワルド「僕も……逆ハーレムの一員に、加わってもいいですか?」

カムイ「えっ……ラズワルドさんも、協力してくれるんですかっ?」

ラズワルド「うん、もちろんさ! そりゃまあ、逆ハーレムなんて、恥ずかしいですけど」

ラズワルド「今の軍の妙な雰囲気を何とかしようと頑張ってる、そんなカムイを見捨てるなんて」

ラズワルド「そのほうが……よっぽど恥ずかしいもんね!」

カムイ「ラズワルドさんっ……ありがとうございます、頼もしいですっ!」

アクア「ふふ……さすがはカムイね、いい踊りだったわ。思わず私も歌いたくなるくらい」

アクア「と、しんみりするかと見せかけて……恒例の性癖暴露、いっちゃいましょうか?」

ラズワルド「はい! ……はい? え……アクア様、性癖暴露って、なんです?」

アクア「あなたがカムイに対して、どう〝if ~ひとり思う~〟してるのか発表しなさい、と言っているのよ」

アクア「言っとくけど、既に加わってる皆は、もう通った道だから。言わないなら逆ハーレムから除外しちゃうわよ」

ラズワルド「え……ええっ!? そ、そんな……う、うう、でも、その……」

ラズワルド「ぼ、僕は……僕は、カムイとっ……」


ラズワルド「――お茶したいですっ!」

アクア「…………」

アクア「あのねラズワルド、そういう誤魔化し、いらないから。それとも隠喩かしら? なら、そのお茶の内容を話してみて?」

ラズワルド「え、ええっ!? そんなこと言うの、恥ずかしいよーっ!?」

アクア「ふっ……そうよ、それでいいの。さあ、一体どんな『お茶』をするのか……」

ラズワルド「そのっ……一緒にお茶を飲みながら……カムイと、お喋りしたいですっ!」

アクア「……あのね、ラズワルド。いい加減にしないと、怒るわよ。ちゃんと正直に――」

ラズワルド「あと、もう一歩踏み込むなら、そのっ……こ、恋バナとか、してみたりっ」

ラズワルド「こう……お菓子を取ろうとした手が、偶然重なっちゃったりすると……って考えただけで、ドキドキするっていうかっ」

ラズワルド「でも、何より一番なのは……僕とお茶してるカムイが、にっこり微笑んでくれたら、それだけで……」

ラズワルド「最高、っていうか……う、ううっ……は……恥ずかしいよーーーっ!」

カムイ「わあっ、素敵ですね……って、どこ行くんですか、ラズワルドさーん!?」

アクア「…………」

アクア「……………………」

アクア「えっ?」

アクア「ええと……これ、マジというやつなの? ……普段、あんなにナンパしてて……望むのは、そんなピュアの化身みたいな?」

レオン「……ど、どうも、嘘をついてる感じはしなかったけど……」

アクア「う、嘘でしょ……というか何なの、ここまでの暗夜のピュア率は」

アクア「暗夜でアホなのはジョーカーとレオンくらいしか、いないじゃないっ」

レオン「だだ誰がアホだ誰が! ……いやでも、このピュアさ、どこかで……」

オーディン「くっ……さ、さすが蒼穹のラズワルド! なかなかの発奮ぶりだ……この漆黒のオーディン、肌の粟立ちを禁じ得んぞ!」

レオン「こ、こいつだったー! そういえば何となく訳知り顔だったし、似た者同士か!?」

アクア「なんだか、意外なような、逆に納得したような……ま、まあいいわ。何とかなったんだし、良しとしましょう……」


 カムイとラズワルドの支援レベルがSに上がった

ラズワルド<アー、ハズカシカッタ……ッテ、ナンカイッパイイルー!?
暗夜物陰<ワイノワイノ

レオン「これで暗夜の直属臣下はコンプリート、かな。……なんか物陰が賑やかになってきたけど」

アクア「そうね。あとはブノワとサイラスもだけど……まずは予定通り、白夜を揃えていきましょう」

タクミ「――となると、今度は僕の出番かな」

レオン「タクミ王子。……ふふ、そろそろ寂しくなって出てきたのかな?」

タクミ「ははっ、なに言ってるんだか。レオン王子もそろそろ疲れただろうと思って、交代しにきてあげただけさ」

レオン「全く、強がっちゃって。……まあ、今回はお言葉に甘えようかな。それじゃカムイ姉さん、また後でね」

タクミ「さて。……こほんっ。カムイ姉さん? わざわざ僕が来たんだから――」

カムイ「わっ、タクミさんっ! 今度はタクミさんの番なんですね、よろしくお願いしますっ!」ダキー

タクミ「わわっ!? も、もうっ……そんなに抱き着くと暑苦しいだろ!? 離れなよっ!」

アクア(……と言いつつ、全く引き離さないのよね。分かりやすすぎるわ、タクミ……)

アクア「さて、それにしても……次はアサマなのよね。……ふう」

タクミ「? アクア姉さん……アサマが何か、気になるのかい?」

アクア「ああ、いえ……アサマが、といより、ここまでの流れも含めて、ちょっとね」

アクア「何というか……暗夜に意外とピュアなのが多かったのは意外だけど、まあそれはそれで、いいとして……」

アクア「……なんかここまでで、白夜の闇をやたら見せつけられてる気が……」

タクミ「闇とは何さ闇とは!? 失礼な事を言わないでくれる!? そもそもアクア姉さんが性癖暴露とか言い出したんだろ!?」

タクミ「大体、人間なんて少なからず、そういう闇はあるっての! ちょっとくらいで大げさなんだよ!」

アクア(ちょっとじゃないし、アナタがその筆頭なのよ。……って言ったらキレそうだから、まあ黙ってましょ)

アクア「でもまあ、次はあのアサマだし……また白夜の闇が深くなりそうで――」

アサマ「闇とは失礼ですねぇ。アクア様もなかなかのものをお持ちだと思うんですが」

アクア「……びっくりしたわ。心臓が止まるかと思ったじゃないの」

アサマ「全くそうは見えないんですが……あなたの強心臓を止められる人なんて、あなた自身以外にいるのか見てみたいものですよ」

アサマ「そこのとこ、タクミ様を見習っては? まあ、どうでもいいですけどね」

タクミ「――(チーン)――」(アサマの登場に驚きすぎて白目)

アクア「あらタクミったら。立ったまま失神するなんて器用ね。まるでスリープをかけられたみたいだわ」

タクミ「――ってうわあっ!? い、いきなり出てくるなよ、驚いて声が詰まっちゃっただろ!?」

アサマ「見栄っ張りですねえ、どう見ても失神していたのに」

タクミ「し、してないってば! ちょっと驚いただけだってば! 大体――」

アサマ「まあまあ、そんな事はどうでもいいんですよ。……私はちょっと用事があって、ここに来ただけですので」

タクミ「どうでも良くな……は? 用事って、何だよ?」

カムイ「あっ、こんにちは、アサマさんっ。私達、アサマさんを捜してたんですよっ」

アサマ「ああ、これはどうも、カムイ様。ええ……実は私も、カムイ様を捜していたのです。用事というのは、そのことで」

カムイ「へ? 私を、ですか? それは一体、何の御用で……」

アサマ「ええ。私も……カムイ様の逆ハーレムとやらに、さっさと入れて頂きたくて」

カムイ「えっ……い、いいんですか、アサマさんっ!?」

アサマ「だからそう言ってるじゃないですか。相変わらず察しの悪い方ですねえ」

アクア「……何やら話がすんなり進みすぎて、怪しいわね」

アクア「カムイに対しても、相変わらず辛辣だし……あなた、ちゃんと本気なの――」

アサマ「微妙に締りのない顔も、いつも通りで……その幸せそうな顔を見てると、天上の女神かと疑ってしまいますよ、全く」

アクア「…………んっ?」
タクミ「……な、なんか……」

カムイ「あ、あう。ごめんなさい、気が抜けた顔で……お恥ずかしいです……」

アサマ「本当ですよ。貴女がそうやって妖精のような愛らしさを惜しみなく振りまくから、逆ハーレムなんて必要になってしまったんでしょうに」

アサマ「少しは反省しなさい。いくらこの汚らわしい世界に舞い降りた天使とはいえ、無自覚で許されるのは……」

アサマ「その太陽のように輝く微笑を見せている間だけですよ」

カムイ「あ、あううっ……いつもみたいに、すごく怒られちゃってますっ……」

カムイ「ご、ごめんなさい、せめて少しは許されるよう、できるだけ笑ってますーっ!」

タクミ「……いやカムイ姉さん、良く聞いて!? それ単なる褒め殺しだからね!?」

タクミ「ていうか『いつもみたいに』って、いつも言われてるわけ!?」

アサマ「……全く、相変わらず喧しいですねえ、風神弓……ああいえ、タクミ様は」

タクミ「おまえ今、風神弓つったろ! 撃つぞコラ! 誰が『弓が本体』だ誰がァ!」

アクア「タクミ、ぶちぎれないで。話が進まないわ。……こほん、アサマ?」

アサマ「なんですか、アクアネキ………………いえ麗しの歌姫様」

アクア「賢明ね」拳ゴキッゴキッ

アクア「まあいいわ。そんな事より……あなたの真意、ちゃんと聞かせてくれるかしら?」

アクア「私達だって、逆ハーレムが無茶苦茶なのは百も承知よ。それをすんなりと受け入れられると、逆に怪しく思えちゃうわ」

アサマ「はあ……やれやれ、自分達で進めておいて、難儀な性格ですねぇ。まあ、別に真意も何もないので、いいんですけどね」

アサマ「私はね、争い事が嫌いなんですよ。特に一人を巡る色恋沙汰なんていうのは、普通にやればほぼ必ず、不幸になる人が出ますしね」

アサマ「しかもそれが……はあ、こんな事を言うのは柄じゃないんですけどね」

アサマ「……私の想い人を中心に渦巻いている、というのが、また……」

アサマ「どうにも、我慢できないんですよねえ。そんな争い、さっさと終わってしまえ、と私は思う訳です」

アサマ「できれば私の、優しい想い人が、傷つかない形で……という所で、逆ハーレムと聞き、上手くやれば、あるいは……」

アサマ「ま、結果がどうなるか、まだ分かりませんが……それでも、選べる道としては、可能性はありそうですから」

アサマ「……と、私の真意はそんな所ですが、伝わりましたか?」

アクア「………………」

アクア「あなた誰? 本当にアサマ?」

アサマ「あなたは私にどうしてほしいんですか一体。これ以上聞かれても何も出ませんからね」

アクア「……い、いえ、ごめんなさい……生臭坊主にも程があるあなたが、そんな……何だか信じられなくて……」

アサマ「アクア様も大概失礼な方ですよねぇ。言っときますけどね」

アサマ「『とりあえず殴りかかりましょう』とか提案する脳筋歌姫よりは、まだ深く考えているという自負が……」

アサマ「すいません、松の木を構えるの、やめてくれません?」

アクア「……ふう。そ、そうね、とりあえず……話自体はスムーズにいったんだものね」

アクア「いいわ。あとは性癖暴露だけね。それじゃ、お願いできるかしら?」

アサマ「はあ……いや、その話も、逆ハーレムの話を聞いた時、伺ってましたがね。神仏に仕える身にさえ、問い訊ねるとは」

アサマ「そもそもただでさえ困難な道なのに、なぜわざわざ敷居を高くするような真似をするんですかね? それで相手を逃がせば、意味もないでしょうに」

アサマ「全く、理解に苦しみますね。そんなだから、脳筋と呼ばれるんで――」

アクア「アサマの性癖はドM、という事でいいかしら? そこ突っ立ってくれる?」

アサマ「すぐ暴力に訴えるの、よくないと思うんですよね! はあ……まあいいです。言えばいいんでしょう、言えば」

アサマ「といっても、つまらないものですよ? ……まあ、私は、ただ」

アサマ「カムイ様に……いえ、カムイさんに、料理でも振る舞いたいですね」

アクア「料理? ……あなたって、料理が趣味だったかしら?」

アサマ「いえ別に? まあ、何と言えばいいのか……以前、カムイ様に、熊鍋を振る舞った事があるんですよ」

タクミ「え、ええっ? 仮にも王女のカムイ姉さんに? ……って、そういえば前の行軍の時、皆で食べたような……」

アサマ「ははっ、まあ最初は、軽い悪戯心だったんですがね。目の前で丸々一頭、調理してみたり」

アサマ「まあ、私はほとんど泣いた事がありませんのでね……その時のカムイさんの、慌てて逃げ回る姿や、泣きそうな顔を見て、なかなか楽しませてもらいましたよ」

アクア「……まあ、アサマらしいわね。アサマの捻れ性癖って感じかしら――」

アサマ「ただ。その後……料理を終えた私が冗談半分で呼ぶと、カムイさん、恐る恐る近づいてきたんですよねえ」

タクミ「えっ? ……直前まで、逃げ回ってたのにかい?」

アサマ「全く、熊の返り血で汚れてる私に……さっきまで逃げ回って、きゃあきゃあと騒いでいたはずの王女様が……」

アサマ「私の手から、料理を直接受け取って」

アサマ「『ありがとうございます、アサマさん!』なんて……微笑むんですよ」

アサマ「その時の笑顔が、まあ、何と言いますか……面白おかしい泣き顔よりも」

アサマ「天上の女神のように美しくて……」

アサマ「また、料理でも振る舞いたいな、と……思った訳です」

アサマ「……以上ですが、御満足いただけましたかね?」

アクア「………………」

アクア「あ、あなた、本当に誰?」

アサマ「アクア様は何なんですかね。私をそんなに変人に仕立てあげたいんですかね」

アクア「い、いやだって、普段の言動が言動だし……それに、その性癖にしたって」

アクア「要約すると、料理を振る舞うなんて過程でしかなくて……」

アクア「『カムイの笑顔が見たい』……って、事でしょう?」

アクア「……信じられないわ……だって、そんな……これじゃ……」

アクア「白夜で最初の光が、まさかのアサマという事に……」

タクミ「まさかのアサマって何か語呂いいな」

タクミ「じゃなく、アサマの言い分じゃないけど、アクア姉さんは何なの本当に。白夜が嫌いなの?」

アクア「いえ、全然そんな事ないけど……ここまで白夜の闇が続いてた所で、まさかのアサマが意外すぎて、ちょっと驚きすぎて……」

タクミ「アクア姉さん、それ気に入ったの? まさかのアサマ」

アサマ「人の名前で遊ばないでもらえませんかねぇ。……ま、そういう訳なので」

アクア「ちょ、ちょっと待って……ね、カムイも意外だったわよね、まさかのアサ――えっ?」

カムイ「?」ニッコニコォォォ

アクア「ふぐうっ!? 天使のスマイル!」
タクミ「ぐはあっ!? 女神の微笑!」

アクア「か、カムイ……なんでそんな、微笑んでるの……?」

カムイ「あ、はいっ。さっきアサマさんに、笑ってないと許されないと言われて」ニコニコーン

カムイ「よし、笑うぞー! と、張り切って笑ってるんですー!」ニコニコズキューン

アクア「な……なんて、素直な……うう、眩しいわ……!」

タクミ「ぁぁぁ……く、くそっ、僕とした事が……この程度で絆されるなんてぇ!」

アサマ「………………」

アサマ「ぷっ……あーっはっはっは!」

カムイ「? あ、アサマさん?」ニコ…?

アサマ「全く、本当にお馬鹿さんですねぇ、カムイさんは」

アサマ「別に無理して笑えなんて、そんな事を言った訳じゃないんですよ?」

カムイ「えっ……そ、そうなんですか……?」ニコン…

アサマ「そうですよ。はあ……本当にあなたは、世話が焼けますねえ」

アサマ「まあ、放っておくのも、神仏に怒られてしまいそうですし……」

アサマ「これからは、私も逆ハーレムという馬鹿馬鹿しいお遊びに付き合って」

アサマ「カムイさんを……笑わせてあげましょうかねぇ」

カムイ「……あっ……」

カムイ「はい! ……ありがとうございます、アサマさんっ!」ニコッ!

アサマ「ふふ……そうそう、あなたには、そういう能天気な笑顔がお似合いですよ」

アサマ(この捻れた私だけでなく、皆が夢中になっているのが……あなたの、その笑顔なんですからね)


 カムイとアサマの支援レベルがSに上がった

タクミ「はあ、はあ……な、なんか今回は、やけに疲れたけど……」

アクア「カムイの笑顔にもやられたわね……でも、立ち止まってはいられないわ」

タクミ「アクア姉さんはHPと守備は低いくせに、タフだよね……でも次は、サイゾウか」

アクア「あまり気にしてなかったけど、今もどこかから見てるのよね。……主にカムイを、でしょうけど」

タクミ「でもまあ、命令すれば来るはずさ。白夜の忍は優秀だからね。……おーい、サイゾウ?」手ぇパンパンッ

タクミ「……あれ? 聞こえないのかな……おーい、サイゾウ!?」パンパンッ!

タクミ「サイゾウ! ……サイゾォォォォイ!!」スパパーンッスパパーンッ!!

タクミ「はあ、はあっ……だ、ダメだ。どうやら近くにいないみたいだよ。多分、リョウマ兄さんから仕事でも言いつけられて……」

カムイ「あれ、サイゾウさん、いないんですか? おーいっ、サイゾウさーんっ?」

サイゾウ「ふん、気安く呼ぶな、カムイ……下手に大声を出して、戦場なら死んでるぞ」

タクミ「じゃあ僕、さっき圧倒的に死んでたじゃねーか! ていうか僕が呼んでもこいよ! 王子だぞ一応!」

サイゾウ「……それで、一体何の用だ」プイッ

カムイ「あっ、えーとですね……サイゾウさんっ」カオノゾキコミー

サイゾウ「……なんだ」カオソラシー

カムイ「あっ……あ、あのですねっ」カオノゾキコミー

サイゾウ「……ああ」カオソラシー

カムイ「え、えっと、えっとっ」ノゾキッ

サイゾウ「うむ……」ソラシッ

カムイ「あ、あのー……サイゾウさんっ」ノゾキッ
サイゾウ「だからなんだ」ソラシッ
ノゾキッ、ソラシッ、ノゾキッ、ソラシッ、ノゾキッ、ソラシッ、ノゾキッ、ソラシッ、ノゾキッ、ソラシッ

サイゾウ「っ……だあああああっ! 俺の顔を見ようとするなっ!」ガバッ

カムイ「きゃあっ!? いえ、見ようにも半分ほど見えませんけど……おっと」ヨロッ

サイゾウ「! カムイっ!」ダキッ

カムイ「わあ。あ……サイゾウさん、倒れそうなところ、ありがとうございますっ」

サイゾウ「…………」

サイゾウ「お、おおおっ!? きき気を付けろ! 以後、気を付けろォ!」ズザザーッ

カムイ「あ……さ、サイゾウさん、なぜそんな後ずさりを!?」

サイゾウ「っ……だあああああっ! 俺の顔を見ようとするなっ!」ガバッ

カムイ「きゃあっ!? いえ、見ようにも半分ほど見えませんけど……おっと」ヨロッ

サイゾウ「! カムイっ!」ダキッ

カムイ「わあ。あ……サイゾウさん、倒れそうなところ、ありがとうございますっ」

サイゾウ「…………」

サイゾウ「お、おおおっ!? きき気を付けろ! 以後、気を付けろォ!」ズザザーッ

カムイ「あ……さ、サイゾウさん、なぜそんな後ずさりを!?」

タクミ「あ、あれ? サイゾウって確か昔、カゲロウと付きあってたって聞くけど……」

アクア「まるで思春期男子のような反応だけど……本当なのかしら」

?『ええ……それは本当ですが、色々とありまして』

タクミ「えっ? その声は……」

カムイ「あっ……スズカゼさんっ!」

スズカゼ「はい(イケボ)、私の主君……カムイ様」

アクア「音もなく現れるとは、忍者らしい登場ね……それで、色々あったって、なに?」

スズカゼ「はい。まあ……純粋に、兄さんとカゲロウさんは、合わなかったのですよ」

タクミ「合わなかった? 一緒に仕事してるくらいなのに……?」

スズカゼ「まあ、男女の関係としては、難しかったのでしょう。具体的には、こう……」

ポワンポワン

 ~~~回想~~~
カゲロウ『サイゾウ、私達は付き合う事になったの……だな? だが、何をすればいい?』

サイゾウ『うむ。……鍛錬か?』

カゲロウ『えっ? いつも通りな気が……ま、まあいいか。付き合おう』


カゲロウ『サイゾウ! 何やら付き合っている男女は、共に食事をとったりするそうだぞ!』

サイゾウ『なるほど……では、これを食べるべきだな』

カゲロウ『これ? これは……固いパン??』

サイゾウ『顎が鍛えられる』

カゲロウ『……鎧も貫くパンを食すのは、顎どころの話ではないような……』


カゲロウ『サイゾウ、ちょっと……』指チョン

サイゾウ『!? うおおお、急に触れるなァ! ふしだらだぞカゲロウ!』

カゲロウ『……………』


カゲロウ『……サイゾウ、別れないか?』

サイゾウ『そうだな、二手に別れたほうが効率的だな』

カゲロウ『いや、そうでなく……男女の関係を、清算という意味で』

サイゾウ『む。……そうだな、あまり効率的ではないしな。元の同僚に戻るか』

カゲロウ『……し、仕事と同位の扱いとかっ……もう二度と付き合わんからな、ばかああああっ!』

サイゾウ『え……ぶっ!? 力、強っ!? 忍なのに強すぎるだろ、カゲロウ貴様!』
 ~~回想終了~~

タクミ「……お、思った以上に悲惨というか……手も繋げてないよね、それ」

アクア「カムイに対する反応も、頷けるわね。けど……困ったわ」

アクア「そこまで初心だと、逆ハーレムも性癖暴露も、それどころじゃないんじゃ……」

スズカゼ「ご安心を、アクア様……こちら、既に機密情報を入手しております。兄さんの」

アクア「あら? これは……日記、かしら?」

タクミ「え、どれどれ? ……ん? 『カムイ監視日記』……?」

スズカゼ「かなり分厚いので、重要部分に赤丸で囲っております。そこをお読みになれば、分かりやすいでしょう」

アクア「さすが忍者。優秀ね。それじゃ、遠慮なく……」

サイゾウ「はあ、はあ……ん? スズカゼ、貴様いつから……ん? はあっ!? その日記は!?」

サイゾウ「待てっ……開くな! や、やめろおっ!」

タクミ「えーと、どれどれ………えっ」

『今日もカムイは、美しい。』

タクミ・アクア「………………」

サイゾウ「読むなっ……読むなぁぁぁぁぁ!!」

『今日もカムイを監視する。しかしカムイめ、憎らしい。憎らしいほどに、美しい。』

『俺が監視しているとも知らず、呑気なカムイめ。そんなに呑気だから、美しいのか。それとも美しいから、呑気なのか』

『カムイを監視するため、木に潜む。俺とした事がうっかり虫よけの煙玉を忘れてしまったが、そんな事より森林浴をするカムイは美し……カムイの肩に小鳥がとまった。おのれ小鳥め。』

『虫に刺されて体が痒い。だが、カムイからおにぎりをもらった。こんなもので俺が油断すると思ったか、ばかめ。でも大事に食べよう。』

『今日もカムイを監視する。まだちょっと体が痒い。だがカムイからもらったおにぎりはうまい。痒いが、うまい。かゆ、うま。』

サイゾウ「アアアアアアアア! やめろおおおおおおおお!!」

『今日も屋根裏からカムイを監視する。あの女、隙だらけすぎる。暗夜にも見張っている者がいるのに。呆れてため息が止まらない。鼻血も止まらない。』

『暗夜の歩くポイズンしいたけが俺を見てウケていた。おのれ、許さん。爆裂手裏剣を投げたが、それにしてもカムイは美しい。爆発音に驚いていたが、驚いた顔も美しい。』

『カムイめ、俺が監視しているのも知らず、すやすやと眠っている。まるで眠り姫だ。その無防備さが笑えるぞ。笑ったのなんて久しぶりだ。』

『今日はカムイが美しいだけだった。全く、気の抜けた美しさだ。美しい意外にする事がないのか。』

『最近、カムイの元気がない。白夜と暗夜の仲が思わしくない事に悩んでいるようだ。長年、争い続けてきたのだから当然だろうに、甘い女だ。だが、落ち込んだ顔も美しい。』

『いつもカムイは美しい。だが、今日はいつもより美しかったのではないだろうか。カムイめ、どこまで美しいのだ。』

『今日もカムイは美しかった。きっと明日も美しいのだろう。』

サイゾウ「ウオオオオオオ!! アイエエエエエエエ!!!」

アクア・タクミ「……………」

アクア「サイゾウ」

サイゾウ「っ……黙れ! 何も言うな、俺を見るな、息を吸うなァ! アアアアア!」

アクア「いいから聞いて。……カムイを、見なさい?」

サイゾウ「はあ、はあ……な、なに? カムイを、だと? なぜそんな……」

カムイ「~~~/////////」プシュー

サイゾウ「真っ赤な顔も美しい! ……じゃなく、どうしたカムイ!?」

カムイ「……わ、わたし……うつくしくなんか、ありませ……

サイゾウ「なんだと、ふざけるな! 貴様が美しくなかったら、白夜の真珠も暗夜のクリスタルも石ころ同然だろうが!」

サイゾウ「貴様はもっと、自分の美しさを自覚しろ! 危機感を持て! 油断していたら、いつ誰に奪われるかわからんぞ!」

サイゾウ「これ以上、俺をやきもきさせるな! 貴様を愛する俺の気持ちも考えろ!」

サイゾウ「分かっているのか、カムイ! わか、って、い………………」

カムイ「……ふぁ、ふぁい、しゅみましぇん……//////」プシュウウウウ

サイゾウ「あ……いや、これは、その、違……わない、が……いや」

アクア・タクミ「サイゾウ」

サイゾウ「ビクッ」



アクア・タクミ「ようこそ……逆ハーレムへ」

サイゾウ「…………ッス」


 カムイとサイゾウの支援レベルがSに上がった

カムイ「はあ……やっと少し、落ち着きました。お騒がせして、すみません……」

アクア「いいのよ。一番お騒がせしたのは、そこの文字通り自爆忍者なんだから」

サイゾウ「……す、すまん、カムイ。つい興奮して……」

カムイ「い、いいえっ! その、恥ずかしいですけど……美しいは、言いすぎですけど……嬉しくは、ありましたので」

サイゾウ「……そ、そうか。うむ……」顔マッカ

カムイ「あ……スズカゼさんも、ありがとうございましたっ。おかげでサイゾウさんの協力も、得られましたっ」

スズカゼ「ふふ、お気になさらず、カムイ様。私は貴女のためだけに、貴女のお役に立つ事だけを生きがいに、存在するのですから」

スズカゼ「さて、無事お役に立てたようですので……私は、そろそろお暇します」

スズカゼ「困った事があれば、いつでもお呼びください。カムイ様の直属従者として、すぐに駆けつけます。……ではっ」



サイゾウ「待てコラ」肩ガシッ

スズカゼ「おやっ」

サイゾウ「貴様……随分と好き勝手やってくれたな。このまま逃がすと思ったか?」

スズカゼ「兄さん……しかし結果的には、これで兄さんも素直に、カムイ様のお傍にいられるようになったじゃないですか」

スズカゼ「むしろこれは、兄想いな行動と言えますよ。放っておけば、兄さんは永遠にカムイ様を監視するだけで終わってたはずですから」

スズカゼ「むしろ、感謝されても良いくらいだと思うのですが……違いますか?」

サイゾウ「……ああ、そうだな。その通りだ」

スズカゼ「でしょう? それでは、私はこれで……」

サイゾウ「なら、お返しに俺も、弟想いな所を見せねばな?」

スズカゼ「……は、はい?」

サイゾウ「――カムイ! アクア様とタクミ様も! 次の逆ハーレムの一員は、この愚弟スズカゼでどうか!?」

スズカゼ「!? に、兄さん、何を……」

アクア「あら、悪くないわね。せっかく出てきてくれたんだし、このまま話を進めちゃいましょうか?」

アクア「といっても……スズカゼ? アナタはカムイの逆ハーレムに入る事、異論なんてあるかしら?」

スズカゼ「……いいえ、まさか。何の異論もございません。喜んで加わらせて頂きます」

スズカゼ「では、これで解決ですね。さて、それでは私も、皆さんと共に潜んで――」

アクア「待ちなさい。性癖暴露、忘れてないかしら?」

スズカゼ「…………」

サイゾウ「……どうしたスズカゼ。遠慮するな。ほら、言ってみろ」

スズカゼ「………………」

スズカゼ「」ダッシュ

アクア「あっ。こら待ちなさい! スズカゼ」

サイゾウ「往生際が悪いぞ、愚弟!」

タクミ「あっ……くそっ、やたら足速いな! 守備は低いから当たれば一発なのに!」

カムイ「あ、あの、スズカゼさーん!? どこ行くんですかー!?」

スズカゼ「すみません、カムイ様……しかし私も、もちろん協力しますので。ほとぼりが冷めた頃に、また――」

?『―――逃がすかよっ!』シュババッ

スズカゼ「……なっ!? くっ、これは……暗器!?」

?『捕らえたぜ。……カムイ様、すみません、随分と遅くなってしまいました』

カムイ「あ……あ、あ……あなたはっ!」

?『はい。本当に……寂しい想いをさせてしまい、申し訳ございません』

?『しかし、もうご安心ください。ここからは、私も共に参ります』

?『この私が、貴女の行く道を、お支えします。……そう、今ここに!』

ジョーカー「カムイ様の、第一の従者――ジョーカー! 冥府の底より帰参しました!」

カムイ「じょ――ジョーカーさんっ!」

スズカゼ「くっ……ジョーカーさん、あなたでしたか。さすがですね……完全に油断していましたよ」

ジョーカー「けっ、てめぇにさすがと言われても、これっぽっちも嬉しくねぇんだよ」

ジョーカー「カムイ様を前に逃げ出すとは……直属の配下失格だな。覚悟が無いからそんな事になるんだ。だったら今すぐ、直属なんて辞めちまえ」

スズカゼ「……お言葉ですが、ジョーカーさん。私は最初から潜んで、一部始終を見届けていたのですよ?」

スズカゼ「もちろん、あなたの往生際の悪い誤魔化しも……中々みっともなかったですが、それは直属として相応しい行為だったのですか?」

ジョーカー「てめぇっ……言ってくれるじゃねぇか。覚悟は出来てるんだろうな!」

スズカゼ「カムイ様の配下同士で争うなど、無益な事ですが……カムイ様への覚悟を疑われた事については、承服しかねますね」

スズカゼ「主義には反しますが、今回ばかりは、売られた喧嘩を買わせて頂きますよ」

 ザザッ
レオン「まずいね、これは……あの二人、カムイ姉さんの直属でありながら、水に油のようだよ」

タクミ「レオン王子! キミも来たのかい……ああ、僕も少し驚いてるよ。まさかあの二人、あんなに仲が悪いなんて」

アクア「まあ元から、『カムイの直属なのに支援会話がない』辺りで、ちょっと闇深を感じていたけど……ここまでとはね」

レオン「あんなに仲が悪いのに、カムイ姉さんの直属なんてやっていけるのか……? 不仲なんて、誰よりもカムイ姉さんが嫌がりそうだけど……」

カムイ「あ、あの、ジョーカーさん、スズカゼさん? ……二人とも、仲が悪いんですか……?」

カムイ「だとしたら、私……とても、悲しくて……」グスン

ジョーカー・スズカゼ「いえ全然、仲良しですよ?」ガシッと肩組み

レオン「はい合点がいったー! カムイ姉さんが遠心分離機のようだよ! そんな事だろうと思ったけどさ!」

タクミ「いや、レオン王子……見るんだ、あれを! あいつらっ……」

ジョーカー「いや本当、カムイ様の直属同士で仲が悪いとか、ありえませんよ」足踏みつけグーリグリ

スズカゼ「全く、ジョーカーさんの言う通りですね。この通り、私達は仲良しですよ」手甲の変な刃でグッサグサ

ジョーカー「ははっ、こいつぅ~。いい後輩を持ったもんだぜぇ~」グリグリグリグリ

スズカゼ「ははっ、やめてくださいよ先輩~。照れますって~」グサグサグサグサ

レオン「水面下で仲悪すぎるだろ! いやもう見え見えだけど!」

カムイ「わあっ、良かったですっ! 二人が仲良しさんだと、私も嬉しいですっ!」

タクミ「カムイ姉さんも騙されないで!? そいつらの仲、もう最悪だよ!?」

アクア「本当、直属同士で呆れたものだけど……ジョーカーはお手柄ね。さあスズカゼ、ちゃんと性癖暴露していきなさい」

スズカゼ「うっ。……そ、それは……どうしても、ですか?」

アクア「あら、まだ往生際の悪い事を言うつもり? ……いいわ、それじゃ、あなただけ逆ハーレムから除外――」

スズカゼ「わ、わかりました、言いますから! わ、私は、その……カムイ様、の」チラッ

カムイ「? スズカゼさん?」

スズカゼ「っ……わ、私は、そのっ……」

スズカゼ「――カムイ様の、犬になりたいですっ!」

カムイ「ふえっ? ……ワンちゃん、ですか?」

サイゾウ(……弟が何か、変な事を言い出したぞ……)

スズカゼ「カムイ様……お、驚かれるのも、無理はありませんが、しかし」

スズカゼ「私はカムイ様にお仕えし……命令を受け、それを遂行するたびに」

スズカゼ「貴女に褒められ、笑いかけてくださる事が……嬉しくて、仕方なかったのです」

スズカゼ「今まで、こんな事はありませんでした……なぜか寄ってくる女性に顔を褒められても、全くピンとさえこなかったのに」

スズカゼ「他の全ての言葉を足したとしても……あなたのかけてくださる、何気ない一言にさえ、足元にも及ばないのです」

スズカゼ「だから……だから、私は……」

カムイ「スズカゼさん……」

スズカゼ「貴女の犬になりたいな、と強く思うようになりまして」

レオン「なんでさ! 発想が一瞬でぶっ飛びすぎだろ! 崖下に突き落とされた気分だよ!」

スズカゼ「き、気持ち悪いですよね……その、忘れてください。そんな事などなくても、私はカムイ様の、忠実な僕ですから」

スズカゼ「ですから……も、もう、いいでしょうか? 私も裏に潜みますので――」

カムイ「スズカゼさん」

スズカゼ「えっ……は、はい、なんでしょう、カムイ様?」

カムイ「私はスズカゼさんに、いつも助けられていますし、感謝してます」

カムイ「ワンちゃんになりたい……というのは、少し驚いちゃいましたけど」

カムイ「もちろん、スズカゼさんをそんな風に思った事は、一度も無かったんですけど」

カムイ「それがスズカゼさんの、望む事なら……私は」

スズカゼ「……カムイ様……」

カムイ「おすわりっ、ですっ!」

スズカゼ「ワァン!」シュバブアッ

タクミ「反応速度ォ!」

カムイ「さあ、次はスズカゼさん……お手、ですっ!」

スズカゼ「ウォオンッ!」ソヒンッ

スズカゼ「……え、ええと、カムイ様……その、引かれたのでは……」

スズカゼ「いえっ、それも仕方ない事なのですが、そのっ……」

カムイ「スズカゼさん……」

スズカゼ「は、はいっ! ……っ……」

カムイ「よしよし、イイ子ですっ……よくできましたねっ♪」ナデナデ

スズカゼ「! あ……ああ、あ……」

スズカゼ「……ぁ……」

スズカゼ「……………」

スズカゼ「わ……わおーん♪」

アクア(堕ちたわね……)

ジョーカー「チッ……みっともねぇ、見てられねぇな」

スズカゼ「! むうっ……」

レオン「いやまあ、尤もだと思うけどね……人としての尊厳さえかなぐり捨ててるし」

タクミ「いくらジョーカーといえど、呆れてもしょうがないっていうか――」

ジョーカー「……代われ」

レオン・タクミ「えっ」

ジョーカー「そこを代われ、スズカゼ……その程度の犬っぷりで、調子に乗るんじゃねぇ」

ジョーカー「カムイ様の忠犬として……誰が最も相応しく、優れているか」

ジョーカー「年季の違いを……見せつけてやるよ……!」

ジョーカー「――というわけでカムイ様! 貴女の忠実な犬がきましたよ! わんわんわっふわふくぅーん!」

カムイ「きゃっ? ジョーカーさんもですか? えっと、では……おー手っ♪」

ジョーカー「ウォオン!」ズヒュバウン

カムイ「うふふ、よしよしですよー。では次は、えーと適当に手頃な……そーれっ、取ってこいですーっ」キノコの杖をポイーッ

レオン「カムイ姉さん、なにそのチョイスぅ!?」

ジョーカー「わっふぅ……! そいやウォーン!」パシッ

ジョーカー「……ふっ、ざっとこんなもんだぜ……」キノコの杖くわえてドヤァ…

スズカゼ「くっ……やりますね、ジョーカーさん……私も負けませんよ!」

ジョーカー「はっ……受けて立つぜ!」

サイゾウ「……弟の性癖が思った以上にアレだったのは、もう諦めるとしてだ……」

アクア「まあ、これはこれで……うまくいったの、かしら?」

カムイ「二人とも、楽しそうですっ……ふふっ♪」


 カムイとスズカゼの支援レベルがSに上がった


 ジョーカ――とスズカゼ――の支援が――ががCに――上がっ――たたた

 ~~~CM~~~
 ファーイアーエーンブレーム♪ てーごわいシミュレーショーン♪
 勝ーって くーるぞっとー いーさましくー♪

セリカ「ソフィアに王女なんかいないわ。もう王家は滅びたのよ!」
アルム「セリカ! 待ってくれ……セリカ!」

 少女は神の力によって 平和を求めた。
 少年は戦うことで 平和を求めた。

ルドルフ「そうか、ついにきたか……この上は、是非もない」
「栄光あるリゲル騎士団として、最後の戦いを見せてやろう!」

 運命に導かれ 集う仲間達。
シルク「わたしはシルク。ミラの女神に仕えるシスターです」
パオラ「ね、セリカ。一緒にゆきましょう」
リュート「頼む、妹を助けてくれ。一緒に助けに行ってくれ!」

『生きとし生ける者 全てに 確実な死が訪れる』
『アルムよ 何故行く? この恐ろしい山の中に 一体何があるというのだ』

ジーク「きみがアルムくんか。ティータを助けてくれたそうだね。ありがとう、礼を言う」

グレイ「おとこは かおじゃない こころさ」
ロビン「なんでお前だけFC版のまんまなの?」

 進んでいく道は 二つ。

セリカ「私はこれ以上、何も望みません。だけどアルムは……なんとかアルムを、たすけてあげたい……」

 いつか必ず 交わる運命。

セリカ「あっ、アルム、たすけて……このままでは皆が……皆、死んでしまう……」
アルム「僕がきっと、助ける! きっと助けるから、僕を信じて」
     「頑張るんだよ、セリカ!」

 ファイアーエムブレム史上、初めて自軍の総戦力を表示していた、
 やり応えたっぷりの第二作『ファイアーエムブレム外伝』を大幅リメイク。
『ファイアーエムブレムEchoes もう一人の英雄王』
 ――2017年4月20日発売!!――

 ………………

カムイ「よう、俺は傭兵のカムイ。ifの事もあるし改名されるか、下手したら存在が消えそうだなって恐怖に怯えてるんだぜ」
バルボ「大丈夫だって! 最悪、改名で済むって! 信じよう!?」

 Let's play FE!!

 ~~CM終了~~

アクア「サイゾウに続き、スズカゼも何とかなったわね。思った以上にスムーズに進んで、何よりだわ」

アクア「この調子でいけば、何とか……目的は果たせそうね」

レオン「……うん、そうだね。でもちょっと、いいかな?」

タクミ「僕とレオン王子は……暫く別行動する事にしたんだ」

アクア「あら……それはまた、どうして?」

レオン「うん。……暗夜と白夜の第一王子、つまり兄さん達の動向が気になってね」

タクミ「あんな目立つ二人に、ここまで一切出くわしてないのも気になるし……二人を捜して、様子を探ろうと思うんだ」

レオン「カムイ姉さんは、アクアに任せて大丈夫だよね? もうあと、残り少ないしさ」

アクア「なるほど。……ええ、大丈夫よ。こっちは任せてちょうだい」

タクミ「助かるよ、アクア姉さん。……それじゃ、行こうかレオン王子」

カムイ「えっ……レオンさんとタクミさん、行っちゃうんですか……?」

レオン・タクミ「! か、カムイ姉さん……」

カムイ「うう~……寂しいです。かわいい弟達が行っちゃうなんて……けど、ワガママ言っちゃダメですよね……」

カムイ「じゃあ、せめて……弟エネルギー、今の内に補給ですっ!」ダキツキィーッ

レオン「え……わわっ、カムイ姉さん!?」
タクミ「ちょ、二人まとめて抱き着くなんて、そんなっ……」

カムイ「ふふふ、ぐりぐりー♪ はあ~、癒されますー……」

レオン「も、もう……本当に、カムイ姉さんは……」
タクミ「し……仕方ないなあ、全く……」

アクア(カムイってば、弟ズに甘々よね……弟共も、何だかんだで顔が緩みきってるけど)

アクア(ま、これくらい平和なほうがいいわよね。そうなるために……カムイは、頑張ってるんだもの)

アクア「さて、弟達は行ったけど……私達は逆ハーレムを進めなきゃね」

アクア「カムイの直属臣下も、さっきスズカゼを攻略して、ジョーカーも合流したし」

アクア「あとは他の……ん? 直属……あら? 何か、忘れてる気が……」

カムイ「あ、アクアさん? あの、お一人、忘れてませんか?」

アクア「え。……えーと、他に誰か……いたかしら」

カムイ「い、いますよっ。ほら、私の旧友で、親友の……」

?『おーい、カムイー!』

アクア「あっ。……あ、ああ~……そうだったわね」

カムイ「サイラスさんっ!」

サイラス「はあ、はあ……おいおいカムイ、冷たいじゃないか」

サイラス「逆ハーレムなんて大変な事……親友の俺にも相談しないなんて」

サイラス「……まさかとは思うけど、俺、また忘れられてたんじゃ……」

カムイ「こ、今度は忘れてないです、今度は!」

アクア(以前はがっつり忘れてたものね。……まあ、今は私が忘れてたけど)

サイラス「本当か~? カムイは前科があるからな~、心配だぞ?」

カムイ「も、もーっ。サイラスさんってば、ヒドイですっ。子供の頃の事を忘れてたのだって、理由はありましたし……」

カムイ「私なんかのために、騎士にまでなって……それなのに暗夜を飛び出してまで、こうして私に付いてきてくれた、サイラスさんを……」

カムイ「忘れたりなんて、するはずないじゃないですかっ!」

サイラス「……か、カムイ……ああ、そうだよな」

サイラス「その言葉だけで……俺は、すっごく嬉しいぞ!」グスン

カムイ「もう、サイラスさんってば……涙ぐまなくてもいいじゃないですか」

サイラス「ば、ばか。これはアレだ、心の汗ってヤツだぞ!」

カムイ「ふふっ、そういう事にしておきますねっ♪」

アクア「こほん。あー……ええ、さすがカムイの親友にして騎士、見事な忠義ね」

アクア「もちろん、私も覚えてたわ。ええ、ホントよ? ……さて、というわけで」

アクア「サイラス、あなたもカムイの逆ハーレムに……加わってくれるのよね?」

サイラス「アクア様。……そんな事、聞くまでもないでしょう?」

サイラス「むしろ、遅いくらいですよ。俺がこの軍に加入するのが、なぜかやたら遅かったように」

サイラス「任せてください。カムイの親友にして、騎士であり、そして……」

サイラス「カムイを愛する男の一人として、カムイの望みを叶えてみせますから!」

カムイ「さ、サイラスさん……ありがとうございます!」

アクア「ふふ、カムイも嬉しそうだし、よかったわ。……さて、それじゃちゃっちゃと性癖暴露してもらおうかしら」

サイラス「い、いきなりですね……でも、その話も聞いてますよ。大丈夫です」

サイラス「カムイの関わる事を……カムイとやりたい事を明かすのに、後ろめたい事なんて、何一つとしてありませんから」

アクア「ふ……よくぞ言ったわ。じゃあ、心置きなく明かしてちょうだい」

サイラス「もちろん! えーと、俺……カムイが昔、行きたいって言った場所の事、全部覚えてるんですけど」

サイラス「大人になった今、それだけじゃ味気ないなって……もっと、何かないかなって」

サイラス「そうだ、じゃあ……俺が見つけた面白そうな場所に、カムイを連れて行ってやろう! って」

サイラス「そして、カムイと一緒に楽しむぞ、というのが……最近、俺が考えてる事です」

カムイ「わあっ……素敵ですっ、楽しそうですっ!」

サイラス「だろ!? それで差し当たって行ってみたいのが……色んな街で、たまに見かける」


サイラス「お城みたいな建物を、暗夜白夜の街、全部コンプリートしたいなって」

アクア「おっと雲行きが怪しくなってきたぞ」

アクア「ねえサイラス、まあ私もあんまり聞きたくないけど……その建物、何の用途に使われるものか、分かってる?」

サイラス「え? さあ……でも、何だかやけに煌びやかで、派手で、一風変わってはいるけどお城みたいでしたし」

サイラス「カムイは王女様だし、きっと似合うぞ! と思って……気にかけてたんですが」

アクア「そ、そう。別にやましい事は、何もないのね?」

サイラス「え、当たり前でしょう? カムイに関してやましい事なんて、考えませんよ!」

サイラス「むしろ俺が守らなくちゃ、って思うくらいのに!」

アクア「そう……なら、まあ良かったわ」

アクア「じゃあ、その建物の中で二人きりでいい雰囲気になっても、別に手を出したりはしないわけね?」




サイラス「え。いや、男女の関係なんだし、そこは流れ次第っていうか」

アクア「おう親友ナイト。あなたもハーレム勢じゃ、どっちかっていうと闇寄りよ」

サイラス「なんでですか! 愛する人と何やかんやしたいって思うのは当然じゃないですか! むしろ光ですよ! カムイは俺の光だし!」

アクア「良かったわねサイラス。暗夜じゃ闇はレアなほうよ。白夜と比べれば」

サイラス「暗夜も白夜も関係ないですよ! むしろ俺は共通ルートなんですから!」

アクア「そうね、どのルートでも追っかけてくるあなたには、執念めいたものを感じるわ」

アクア「……いかんせん、やっぱり闇と言わざるを得ないわね……カムイも苦労するわ」

カムイ「? そうですか? 良く分からないですけど、一緒に遊びに行くのは楽しそうですけど……」

サイラス「だよな! 俺、絶対にカムイを喜ばせてみせるから……楽しみにしてくれよな!」

アクア「……カムイは私が守護らねば……」


 カムイとサイラスの支援レベルがSに上がった

目が疲れたーん、少し休憩してきます~
休みの内に何とか終わらせたい……がんばりますーん

アクア「さて……サイラスにも裏方に回ってもらったし、久し振りに二人きりね、カムイ」

カムイ「はいっ! アクアさんには、最初からずっと……それこそ、第三の道を選んだあの日から、助けられていますが」

カムイ「私には、アクアさんの支えが必要です……それは今も、痛感しているところです」

カムイ「だから……これからも、よろしくお願いしますね。アクアさんっ」

アクア「……ふふっ、もちろんよ。あなたのためなら、私は何でも出来るわ」

アクア「まあ二人きりとは言っても、裏方の男連中もいるんだけどね」

木陰<ヤイノヤイノ
物陰<オウヨオウヨ

アクア「で、そんな裏方に回ったジョーカーからの情報なのだけれど……この近くでブノワを見たらしいわ」

アクア「だから次は、ブノワかしらって――」

カムイ「えっ。……ブノワさん、ですか?」

アクア「えっ。……ええ、ブノワだけれど」

カムイ「……そう、ですか」

アクア「どうしたの? まさか……ツバキみたいに、ブノワも何か――」

カムイ「ブノワさん……ブノワさん」

カムイ「……ブノワさんですかーっ!」キラキラキラ

アクア「!? か、カムイ、どうしたの?」

カムイ「アクアさんっ、はやく、はやく行きましょうっ! ブノワさんですよっ!?」

カムイ「私、もう我慢できません! 近くにいるのなら、急ぎましょうーっ!」

アクア「え……ちょ、ちょっと待って、カムイ……テンションがおかしい、っていうか」

アクア「……もしかしてアナタ、ブノワの事が好――」

カムイ「だってブノワさん、かわいいんですもん! 大きくて、優しくて……」

カムイ「森のくまさんみたいです! 折れたりしません! 行きますよーっ!」ズダダダダ

アクア「あっちょっカムイ待っ速っ」

アクア「………………」

アクア「ま……マスコット的な?」

物陰アサマ(……熊鍋は失敗でしたかねぇ……控えましょうか)

 お肉のとれる森の中

アクア「って、カムイってば、ブノワの居場所を聞かずに飛び出しちゃって」

アクア「おっちょこちょいよね……まあそういう所も可愛い……ん?」

<ギャーギャー!

アクア「この声、聞き覚えが……行ってみましょう」

シャーロッテ「だぁーから! ウジウジしてんじゃねーっつーのよ鬱陶しい!」

シャーロッテ「カムイ様が逆ハーレムってんだから、さっさと仲間にしてもらやイイだろ!」

シャーロッテ「こんなトコでボーッと動物と戯れてる場合じゃねーでしょ! ……ブノワ!」

ブノワ「………………」

ブノワ「俺は、いい」

シャーロッテ「はあ!? ンでだよ、カムイ様のコト好きなんだろ!? なら――」

ブノワ「この軍には、優れた男がたくさんいる。強い男も、賢い男も」

ブノワ「俺のような……ただデカいだけのこわもては」

ブノワ「カムイ様の傍には……相応しくない」

シャーロッテ「っ。……あー、そーかよ、そーですか」

シャーロッテ「だったら……勝手にしろっつんだ、ばーかっ! ふんっ!」ズカズカズカ

ブノワ「………………」

ブノワ「……すまん、シャーロッテ」

アクア「謝罪なんて、相手に聞こえていなければ、意味のない無駄口よ」

ブノワ「! あ……アクア様」

アクア「こんな所で何をしているのか……なんて、さっき聞こえてたんだけど」

アクア「ブノワ……アナタはそんなに、自分がカムイの傍にいるのは相応しくない、なんて思っているのかしら?」

ブノワ「……ああ。聞こえていたなら……そのままの通りだ」

ブノワ「俺のような、ただ体がでかいだけで、しかも顔の怖い男は、邪魔になるだけだ」

ブノワ「俺では、カムイ様を……笑わせる事も、出来ないのだから」

アクア「ブノワ。………」

アクア「その言葉、後ろを振り向いてからも、言える?」

ブノワ「……えっ?」クルッ

カムイ「ブーノーワーさーーーんっ!」ニコニコダッシュ

ブノワ「え……か、カムイ様!?」

カムイ「やっと見つけました……とうっ!」ダキツキッ

カムイ「はあ~、やっぱりブノワさんは抱き着き甲斐がありますっ。両手いっぱい広げても、背中に届かないんですからっ」

ブノワ「か、カムイ様っ……ダメだ、そんな、俺なんかに抱き着いてはっ」

ブノワ「カムイ様には。…………」

ブノワ「抱き着くにせよ、もっと……相応しい男が、いるはずだ……」




カムイ「へ? 何でですか? 私はブノワさんに、抱き着きたいと思ったんですよ?」

ブノワ「――――!」

カムイ「というかっ、こうやって遠慮なしに力いっぱい、全身を使って抱きしめても余っちゃうほどの人なんて」

カムイ「ブノワさん以外には、いないんですからっ!」

カムイ「だから……ダメなんて言われては、傷ついてしまいますっ!」

ブノワ「……そうか」

カムイ「はいっ。あ、それとも……ブノワさんのほうが、イヤだったりします?」アセアセ

ブノワ「いいや……そんな事は、全くない」

ブノワ「……なら、カムイ様が……カムイが、たまには遠慮せず、抱きしめられるよう」

ブノワ「傷ついたり……しないよう」

ブノワ「俺も……傍にいなければ、いけないな……」

カムイ「えっ? ……あっ、それって……逆ハーレムの?」

ブノワ「ああ。俺なんかが……いても、よければな……」

カムイ「! そんなっ……もちろんです! 大歓迎ですよっ!」ニコニコ

アクア「…………」

アクア「お母様から、昔……繋がりの歌、というのを、教えてもらった事があるわ」

アクア「誰かを思うこと。誰かに思われること。そうやって人は繋がっていく……」

アクア「そんな歌を、あの子の……カムイの笑顔を見て、思い出したわ」

アクア「ブノワにとって……いいえ、カムイに惹かれ、カムイに導かれ、ここに集った、皆にとって」

アクア「カムイの笑顔こそが……繋がりの歌なのかも、しれないわね」



カムイ「ふふっ……これからも、よろしくお願いしますね、ブノワさんっ!」
ブノワ「ああ、そうだな……よろしく、カムイ」

アクア「でもまあ、性癖暴露はしてもらうっていうね」

ブノワ「え。……性癖って、まさか……あの性癖、か?」

アクア「左様。さあ、疾く。疾く、述べなさいな」

ブノワ「………」

ブノワ「………………」

ブノワ「アクア様がこわい……」ガクブル

カムイ「ああっ、ブノワさんが小動物のように震えています! かわいい!」

アクア「ほらほら、私はカムイと違って甘くないわよ。相手が誰であろうと、徹底的に追及するわ」

アクア「それはさながら借金取りのようにね。さあ、言いなさい。さあ」

ブノワ「わ、わかった。わかったから……し、しかし、性癖と言われても……」

ブノワ「うう、む……うーん、うーん……」

ブノワ「こ……こんなもので良いのか、分からないが……一つだけ」

アクア「おっ。いいわよ、何でも。さあさ、暴露しちゃいなさい」

ブノワ「俺は、カムイの……抱き枕に、なりたい」

アクア「ほっほう。なかなかね……さりげに夜を共にする宣言とは……」

ブノワ「いや……抱き枕でなくとも、たとえば……熊のぬいぐるみや、置物でもいい」

アクア「え? それって……どういう意味になるのかしら」

ブノワ「カムイは……俺が知る限り、結構……スキンシップに飢えている」

アクア「ああ……そういえば、弟達に対しても、そんな感じが……」

ブノワ「だが……カムイには、この軍の長としての役割もある。ストレスは人一倍だろうに……その立場上、欲求が満たされない状況も、ある……」

ブノワ「だから、俺は……カムイが好きな時に、好きなだけ」

ブノワ「力一杯、抱きしめられるような……抱き枕や、ぬいぐるみに……なりたい」

ブノワ「……もちろん、カムイが、嫌でなければだが……」

カムイ「イヤです」

ブノワ「!?」

カムイ「ブノワさんは、枕でもぬいぐるみさんでも、ありません。ブノワさんは、ブノワさんです」

ブノワ「あ、いや……それは、ものの例えというか……」

カムイ「私だけが、一方的に抱きしめるなんて……そんなの、イヤです」

ブノワ「……えっ?」

カムイ「私が力一杯、ギューッと抱きしめたいのは、単なる置物じゃないんです」

カムイ「ちゃんと生きている、ブノワさんなんです」

カムイ「それはまあ、私はブノワさんから見れば、小さく見えちゃうでしょうけど」

カムイ「私が抱きしめたら、ブノワさんからも……力一杯、抱きしめてほしいんです!」

カムイ「大丈夫です――折れたりしませんから!」

ブノワ「……そうか……そうだな……」

ブノワ「カムイの……言う通りだ……」

アクア「……ふふ、ブノワもカムイには、完敗ね」

アクア(いえ……カムイに勝てる人なんて、この軍にはきっと……いないんでしょうね)


カムイ「あっ、そうだ。竜石を使って竜になれば、抱きしめ甲斐があるかもですよ!」
ブノワ「い、いや……それは、しなくていい。というか、しないほうがいい……」


 カムイとブノワの支援レベルがSに上がった

カムイ「はあ~……やっぱりブノワさんは最高ですっ。私の抱きしめ欲が、一気に昇華されましたっ」

アクア「カムイにそんな欲があると聞いたら、名乗り出る男共が湧いて出そうだけど……」

アクア「まあ、いいわ。ブノワにも隠れてもらったし……かなりはみ出てるけど」

ブノワ<スマン

アクア「これだけぞろぞろいたら、隠れたって今さらだものね。細かい事は言いっこなしにしましょ」

カムイ「あ、あはは……確かに、こんなに揃ってたら、目立っちゃいそうで――」

ニュクス「……あなた達、何をしているの?」

カムイ「きゃーっ。にゅ、ニュクスさんっ? いつの間に後ろに……」

ニュクス「こっそりとね。……にしても、きゃ、きゃーっ、って……ぷっ、ふふっ」

カムイ「も、もうっ。ニュクスさんってば、からかわないでくださいっ」

ニュクス「ふふっ……ごめんなさい。貴女を見ていると、つい、ね」

ニュクス「それにしても、この集まり……例の逆ハーレム、というやつね?」

カムイ「あっ、ご、ご存知でしたか……はいっ、ちょっとお恥ずかしいんですけど……」

ニュクス「噂になってるし、今さらよ。……それに、まあ、これは私が伝えて良い事かは分からないけれど」

ニュクス「軍の女性陣は、ほぼ皆……カムイを応援しているわ」

カムイ「えっ。……そ、そうなんですか!? でも、そんな……」

ニュクス「まあ、一瞬は不満も上がったけど……カムイなら、って、満場一致でね」

ニュクス「それに、まあ……何より、最大の理由としては……」

カムイ「さ、最大の理由としては……?」




ニュクス「変人が多すぎて、こりゃもう自分達の手に負えないな、って」

カムイ「そ、そんな事ないですよ!? ちょっと個性的なだけで、皆さんとってもイイ人なんですよっ!?」

アクア(そう言えちゃうカムイの器が大きすぎるだけなのよね……やっぱりカムイ以外では、無理だわ……)

ニュクス「でも、そうなると……なるほど、ツクヨミの用件は、逆ハーレムに関係する事なのね」

カムイ「えっ……つ、ツクヨミさんが、何か?」

ニュクス「ん。……私は何度もやめさせようとしたし、危険性は説いたのだけど」

ニュクス「あの子は……やめなかったわ。ついに、作り出してしまったの」

カムイ「つ、作り出したって……一体、一体何を、作ってしまったというんです……!?」

ニュクス「それは……」

ニュクス「副作用の強い、危険な……薬よ」

カムイ「!!」

ニュクス「ツクヨミは、カムイのために……カムイに相応しい男になるのだと言って」

ニュクス「作り出してしまったわ……己の望みを叶える、その薬を」

ニュクス「けれど……その副作用は、あまりにも強い」

ニュクス「三日三晩は高熱が続き、全身には引き裂かれんばかりの痛みが襲い」

ニュクス「胃は食事を受け付けず、眠る事さえ出来ないほど苦しみ、なぜか突き指する」

ニュクス「そんな、恐ろしい薬を……今まさに、服用しようとしているの」

ニュクス「そう……その薬というのは――」
カムイ「すみません、ニュクスさん……私達は、行きますっ!」シュババババ
アクア「当然、私も行くわ……急ぎましょう」シュドドドド

ニュクス「背が伸びる薬なんだけどね」

ニュクス「………………」

ニュクス「あら? カムイ達……もう行っちゃったみたいね」

 風の吹く崖

ツクヨミ「ふ、ふふふ……いよいよだ。いよいよ、私の望みが叶うのだ!」

ツクヨミ「副作用など怖くない……といえば嘘になるが、少しの間、耐えれば良い事」

ツクヨミ「これを飲みさえすれば……私とて、大人に負けはせぬ」

ツクヨミ「逆ハーレムなんぞの中でも……この手でカムイを、抱きしめられるのだ!」

ツクヨミ「よしっ、飲むぞ……本当に飲むぞ! 飲むからな! いざ飲むぞ……そーれ!」

カムイ「ツクヨミさん、いけませーーーーーんっ!」ドーン

ツクヨミ「え――わあああっ!? あっ、秘薬の入った瓶が落ちてー! 風に飛ばされてー!」

ツクヨミ「崖から落っこちてー! 岩肌にガンガンぶつかってー! ……粉砕したぁぁぁ!?」

ツクヨミ「な……何をする、カムイ!? おま、あれっ、私がどれほど苦労して……」

カムイ「ツクヨミさんのバカっ!」ギュッ

ツクヨミ「苦労も吹っ飛ぶ柔らかさ!」チョウド顔に胸ェェェ

カムイ「なぜですかっ……なぜそんな、危険な薬を飲もうとしたのですっ……一体、何のために!」

ツクヨミ(背が低いとカムイに釣り合わぬと思い、背が伸びる薬を作った……などと言えるかァァァ!)

ツクヨミ「ど、どうでもよいではないか! 私がどんな薬を飲もうと、私の勝手で……」

カムイ「どうでもよくありません! ツクヨミさんが苦しい目にあおうとしているのに、どうでもよいだなんて……言わないでください!」

カムイ「そんな恐ろしいお薬になんて頼らず……私や、仲間達に……頼ってください!」

ツクヨミ「! か、カムイ……私は……」

ツクヨミ「……いや、実は、あの薬は、その……」

アクア「……まあ大方、大人になる薬とか、身長が伸びる薬なんでしょうけど」

ツクヨミ「な、なぜそれを!? ……あっ」

カムイ「ツクヨミさん……そう、なのですか?」

ツクヨミ「い、いやっ……ちが、これは、その……だ、だからな!?」

カムイ「……ツクヨミさんは確かに、いつもちょっぴり背伸びして、周りの皆さんに負けないよう頑張っています」

カムイ「けれど……だからといって、お薬で不自然に成長したとしても……それは大人になったとは、言えないのではないでしょうか」

ツクヨミ「! む……む、むむう」

カムイ「私だって、昔はとっても小さかったです。けれど、皆に支えられながら、少しずつ、大きくなっていったんです」

カムイ「その支えられていた小さい頃の時間が、無駄だとは思いません。いいえ、今だって私は、皆さんに支えられています」

カムイ「だから、私もツクヨミさんを、支えますから……ツクヨミさんも、お薬なんかに頼ったりせず」

カムイ「頑張り屋さんの、ツクヨミさんのペースで……一緒に、大人になっていきましょう?」

ツクヨミ「む、うう……えーい、私を諭すなっ! これでは本当に子供のようではないか!」

カムイ「きゃっ……つ、ツクヨミさん?」

ツクヨミ「全く……そのような事を言われては、興がそがれるわ」

ツクヨミ「だから、まあ、今回のところは……カムイの言う通りに、してやろう……」

カムイ「! ツクヨミさんっ……ありがとうございますっ!」

ツクヨミ「う、うむ。……だが、良いのか? 逆ハーレムの事は聞いておるし、私も加わるつもりではいるが」

ツクヨミ「その……自分で言いたくはないが、私のような子供でも、いいのかと……」

カムイ「もちろんですっ。私は別に、子供だからとか、大人だからとか、そんな基準で仲間を見るつもりはありません」

カムイ「ツクヨミさんはツクヨミさんのままで、だからこそ、一緒にいたいと思うのですっ」

ツクヨミ「そ、そうか……私は、私のままで……ふ、ふふ。なら、何も言うまいっ」

アクア「これでツクヨミも、逆ハーレムの一員という事ね。……じゃあ晴れて、性癖暴露でもしてもらいましょうか」

ツクヨミ「は。……な、なにっ!? いや、おぬしっ……こ、子供にまでそんな事を聞くのか!?」

アクア「普段は子供扱いされると怒るくせに、虫がいいわよ」

アクア「このアクア、相手が子供だろうと赤子だろうと、容赦はせんわ。さ、言いなさい」

ツクヨミ「くっ……こ、この鬼め……わ、わかったわ! 私は、その……」

ツクヨミ「カムイを、この手で……抱き上げたい、と思っておる」

アクア「ふむ。……それってつまり、お姫様だっこ……という形で?」

ツクヨミ「う、うむ。まあ、そうとも呼ぶな」

ツクヨミ「とはいえ、私は見ての通り、まだ少しばかり体格が足りん」

ツクヨミ「呪い師ゆえに力も弱いし、さすがにこの腕では、難しい事も承知している」

ツクヨミ「だからこそ、先の薬を使おうとしたのだが……もう、それは良い」

ツクヨミ「これから私は……カムイの言う通り、地道に精進し、成長すると決めたのだからな!」

アクア「なるほど……そう、そういう事なのね」

アクア「……………」



アクア「パラレルプルフ使えば?」

ツクヨミ「……………」

ツクヨミ「そ、その手があったか!」

カムイ(筋肉ムキムキのツクヨミさん………)

カムイ「……大丈夫です、たとえムキムキでもツクヨミさんはツクヨミさんです。折れたりしません!」

ツクヨミ「か、カムイ……!」ジーン

アクア(ツクヨミは感激してるけど……さすがのカムイでも折れない覚悟が必要なくらいなのね。ムキムキツクヨミは……)


 カムイとツクヨミの支援レベルがSに上がった

アクア「さて、ツクヨミも抱き込んだ事だし……もう、後は残り少ないわよ」

アクア「気付いているかしら、カムイ。逆ハーレムの完成まで、もうすぐという事に」

カムイ「えっ? あ……も、もうそんなにですかっ?」

アクア「ええ、そうよ。あとは、残すところ――」

<ガルルルルルッ!
<ウウウウウウ~!

アクア「……? 何かしら。向こうのほうから、獣の唸り声が……」

カムイ「あ……この声、まさかっ!」ダッ

アクア「えっ……カムイ、待って。私も行くからっ」ダダッ

フランネル「ガルルルルッ……いい加減にしろよ、ニシキ!」

ニシキ「ウウウーッ……こっちの台詞だよ、フランネルっ!」

アクア「この騒ぎ……フランネルとニシキだったのね。一体何を……」

カムイ「二人とも……一体どうしてしまったんでしょうか……!」

フランネル「もう我慢ならねえっ! 直接、分からせてやるっ!」

フランネル「獣石! オオオ……ガアアアアッ!」

ニシキ「こっちの台詞さっ! 獣石っ……ウウウ、アオーーーン!」

カムイ「あっ……二人とも、まさか本気で……!? だ、ダメですっ!」

アクア「何を揉めているのか知らないけれど……ちゃんと話し合いなさい、二人とも――」

フランネル『見ろよ! このたくましい腕、体つき! カムイは俺のほうが、ぜってー好きだって!』

ニシキ『冗談! そんな手入れしてないゴワゴワの毛皮で良く言ったね! カムイはボクの美しい毛皮のほうが、断然好きさ!』

フランネル『何をー!? このゴワゴワ感がイイんだろうが! ニシキのこんこんちきー!』

ニシキ『こっちの台詞さ! フランネルの分からず屋ー!』

アクア「殴りあって決めなさい」

カムイ「あ、アクアさん、投げっぱなしは良くないですよっ」

フランネル『あっ、カムイ、良い所にきたな! なあカムイ、お前は俺の方が好きだよな!』

ニシキ『カムイ! そんなコトないよね。ボクのほうが美しくて好きでしょ!?』

フランネル・ニシキ『……どっち!?』

 争奪戦が勃発しました。

カムイ(……………)

カムイ(私は……私の選択は。…………)

→あっちと言って逃げる。
 軽いジョーク。
 おどおどする。

 ピッ ピッ ……ピッ

 あっちと言って逃げる。
 軽いジョーク。
 おどおどする。
→どちらも選ぶ。

 ピコンッ

カムイ「フランネルさん……確かにフランネルさんは力強いですが、私はフランネルさんの力だけに魅力を感じている訳ではありません」

カムイ「フランネルさんの、素直ではないけれど、純粋な性格が……誰よりも思いやりのあるところが、私は好きです」

フランネル『カムイ……あ、ああ、俺もだ。俺だって、カムイのことが……』

カムイ「ニシキさん……ニシキさんの美しい毛皮は、確かに素晴らしいです。手入れの入念さには、常日頃からの努力を感じます」

カムイ「けれど……私は、ただ美しいから、ニシキさんの事が好きな訳ではありません。ニシキさんのいい所は、他にもあるんです」

カムイ「具体的には、モフモフ感とか」

ニシキ『か、カムイ……そんなにもボクのコトを……!』

カムイ「二人とも、良い所はたくさんあります。でもそれは、それぞれ違うモノです」

カムイ「けれど……違うからこそ、認め合える。お互いの良い部分を、見つめ合える」

カムイ「だからこそ、私は……そんな良い所をたくさん持った、大好きな二人に」

カムイ「仲良くしてほしいんです。いつものように、手を取り合って……欲しいんです」

カムイ「それは……ダメ、でしょうか?」

フランネル・ニシキ『…………』

フランネル・ニシキ「…………」ボフンッ(人化する)

フランネル「ダメなんかじゃねぇよ……俺もつい、その、意固地になりすぎたっていうか」

ニシキ「カムイのコトとなると、負けられない、って気持ちが先行しちゃってさ」

フランネル「けど……そうだよな。それで喧嘩してカムイを困らせるのは、違うよな」

ニシキ「ボク達が、間違ってたよ……ボク達がやるべきなのは、二人で手を取り合うコトだったのに」

フランネル・ニシキ「……」コクッ

フランネル「ニシキ……ワリィ! 変なことで喧嘩しちまったけど、俺達さ……」

ニシキ「分かってるよ、フランネル! こっちこそゴメン……僕達は」

フランネル・ニシキ「二人でカムイを――幸せにしよう!」握手ガシッ

カムイ「フランネルさん……ニシキさん!」

アクア「喧嘩を始めた時は驚いたけど……二人とも、収まるべき所に収まったわね」

アクア「で、二人とも? 逆ハーレムの事は知っているのかしら?」

フランネル「おう、アクア! そりゃまあ、知ってるぜ。性癖暴露とかのこともな」

ニシキ「というか、実はそれで喧嘩してたんだもんね、ボク達」

アクア「あら、そうなの? それって逆ハーレムの事でなく……多分、性癖のほうよね?」

フランネル「ああ。ま、簡単に言うと……お互いに譲れないことがあってな」

ニシキ「そう。……僕とフランネル、どっちが――」

フランネル・ニシキ「――カムイのペットに相応しいのか!」

アクア「殴りあって決めれば」スタスタ

フランネル「ちょ、待てよ、つめてーよ!」

ニシキ「真剣なんだからね、ボク達!」

カムイ「あ、あのう……ペットだなんて、お二人の事、私はそういう風には……」

フランネル「お、おう、わかってるよ! そうじゃなく、何ていうか、こう……」

ニシキ「せっかく獣化できるんだし、どっちのほうが可愛がられるか、っていうのをね?」

フランネル「張り合ってたら、まあ……あんな感じになっちゃってさ」

ニシキ「今にして思えば、無意味な争いだったけど……でもまあ、せっかくだし……」

ニシキ「カムイ……今から試しに、ボクを愛でてみるといいよ!」

フランネル「あっ、ず、ズリーぞニシキ! カムイ、俺も可愛がってくれよ!」

カムイ「えっ、えっ。じゃあ、えーと、じゃあっ……」

カムイ「お……お手っ!」

フランネル「! い、犬じゃね……くっ、手が勝手に!?」ポスーン

ニシキ「まあボクは喜んでするけどね! そいっ!」ポッスン


スズカゼ「ッ!!」ザッ
ジョーカー「てめぇじゃねぇ座ってろ」
スズカゼ「…………」スチャ

ジョーカー「ったく……」

ジョーカー「俺の出番だろうが」ザッ
サイラス「ジョーカー座ってろってば」

ニシキ「はああ~……カムイの手つき、すごくいいよー。もっと尻尾を毛づくろいしておくれよー」

フランネル「お、俺もっ……カムイ、頼むぜ!? あ、ああ~……たまんねーな……」

カムイ「ふふっ……ニシキさんの毛並は、安定のモフモフ感です。ずっと触ってても飽きませんね」

カムイ「フランネルさんの毛並も、しっかりしていて力強いです。なかなか新鮮ですね」

カムイ「はあー……モフモフ撫でるの、とっても幸せですー……」

ニシキ「う、うああ……こ、こ……コンコーン……」

フランネル「お、おおぅ……おう、おう……ウオオン……」

アクア「……獣男二人が、すっかり骨抜きね……さすがナデナデで好感度を上げるカムイの手腕だわ」

アクア「まあ、何よりカムイが幸せそうだし……これはこれで、いいわよね」


 カムイとフランネルの支援レベルがSに上がった

 カムイとニシキの支援レベルがSに上がった

アクア「カムイ、どう? 堪能した?」

カムイ「はいっ! 二人とも、とってもモフモフさんでしたっ!」

カムイ「逆ハーレムを始めた時は、私なんかで大丈夫なのか、不安でしたけど」

カムイ「弟達を甘やかせるし、皆さんともいつもよりお喋りできるし、抱き着いたりモフモフできるし……」

カムイ「はあ~……私、こんなに幸せで、いいんでしょうか……」

アクア「……これまでの変人発掘伝を真正面で見て、大変と思うどころか、幸せさえ感じられる」

アクア「カムイ……それがあなたの、すごい所よ」

カムイ「ええっ。アクアさんまで、ニュクスさんのような事を……もうっ、皆、イイ人ですってばっ」

アクア「ふふっ。……そうね、あなたはさすがだわ……」

カムイ「も、もうっ、さっきから何なんですか、アクアさんったら――」

?『――カムイよ、少しいいか?』

?『……話があってな』

カムイ「えっ? ……あ、あなた達はっ」

カムイ「……フウガさんに、アシュラさんっ!? び、びっくりしましたっ」

フウガ「ははは。つい思わせぶりに登場してみたが、兄上殿達でなくてガッカリさせたか?」

アシュラ「いやー……俺達のこと、忘れられてるんじゃないかって、自分から来てみたんですけどね」

カムイ「え……そんなはずないですっ。ちゃんと会いに行くつもりだったんですからっ」

アクア(……私は忘れていたなんて、口が裂けても言えないわ……)

フウガ「はっはっは、カムイは優しいな。老若の別なく、分け隔てなく接してくれるとは」

アシュラ「全くですね……そんなだから俺達も、逆ハーレムなんてもんに、素直に協力したくなったんですよね」

カムイ「えっ? ……お、お二人も、協力してくれるのですかっ?」

カムイ「ちょ、ちょっぴり意外です。特にフウガ様は厳格な方ですから、私、怒られちゃうのではないかと……」

フウガ「そうかな? こう見えて私も、昔はスメラギとやんちゃしていた時代もあったからな」

フウガ「それに……ここまでの苦労も、伝え聞いている。そんな若者の道を無下に妨げようなど、それは大人のする事ではないわ」

アシュラ「ええ、その通り。俺達がするべきなのは……若い連中の道を切り開く事ですからね」

カムイ「フウガ様、アシュラさん……あ、ありがとうございますっ!」

フウガ「なに、気にするな。では、老人は去り、行く末を見守りながら、茶でもすすっているとしようか」

アシュラ「お供しますよ、フウガ様。それじゃ、カムイ様……俺らは、これで」

アクア「待たれい、お二方」ガシッ

フウガ「うがっ」 アシュラ「んごっ」

アクア「何か忘れていないかしら? カムイの逆ハーレムに入りたいというのなら……」

アクア「性癖を暴露してもらわなくちゃ、困るのよね。……皆やってる事よ」

フウガ・アシュラ「…………」

アシュラ「ちょっフウガ様、話が違うじゃないですか! カムイ様の逆ハーレム入りに、下ネタ暴露を強要されるらしいから」ヒソヒソ

アシュラ「先手を打って自分から入れば、追求される事もなく誤魔化せるはずだって!」ヒッソヒソ

フウガ「いや、私も驚いている……まさか私達にまで、普通に聞いてくるとは」ヒソヒソー

フウガ「どうなってるんだろうな、あの子。歌姫どころか魔王の貫録というか」ヒッソソーン

アクア「二人とも、ひそひそ話しているところ悪いけれど……私、耳はいいの」

アクア「少しでも容赦されたかったら、素直に暴露しちゃいなさい?」

フウガ・アシュラ「………………」

フウガ「はっはっは、アクアは恐ろしいな。老若の別なく、容赦なく追い込もうとする鬼ババの精神イダダダダダ」

アシュラ「ふ、フウガ様ー!? 力強すぎだろアクア様! 鍛え上げてるフウガ様も片手で捻るとか!」

アクア「ごめんなさいね、若いもので。それじゃ……どちらから話すの?」

フウガ「………アシュラくん、ここは若者に譲るとするよ」

アシュラ「おいふざっけんなよジジイ! こんな時ばっか年寄ぶりやがって、あんたに似たんじゃねーのかツクヨミは!」

フウガ「すまんのう……わしゃ耳が遠くてのぅ……」

アシュラ「あああああ! こんのクソジジイ! 覚えとけよコラ許さんぞぉぉぉ!」

アクア「どっちでもいいのだけど。……言うなら、ちゃっちゃとしてくれる?」

アシュラ「……アクア様が怖い……ちっちゃい頃は、普通に儚かったのに……」

アクア「今は儚くなくって悪ぅございましたね。じゃ、アシュラからね、どうぞ」

アシュラ「う、うう。俺は……俺は……っ!」

アシュラ「かっ、カムイ様に―――踏まれたいですっ!」

カムイ「ふえ。……え、えええっ!? 踏むって……足で、こう、ふみふみ?」

アシュラ「うぐうっ……そ、そうです、その……されたい、です」

アクア「あらあら、アシュラったらドMなのね。まさかそんな趣味があろうとは……」

アシュラ「いや違いますよ!? ドMじゃないですし、カムイ様と愛し合えるなら、普通にしたいんですけど……その、何ていうか」

アシュラ「カムイ様の顔を見るたび、こう……踏まれたい欲求が、強くなって……」

アクア「あらあら、言えば言うほどドツボだわ。それがドMじゃなければ何と――」

アシュラ「なんか、自分でも意味不明なんですけど、こう……別の世界で踏まれた事があるような、そんな錯覚が……」

アクア「…………えっ」

カムイ「? ……あ、あれっ、何だか私……?」

アシュラ「いや、なんでなのかなぁ~……ぜんっぜん、そんな趣味ないし、そんな事実は無いはずなんですけど……」

アシュラ「なぜか、こう……カムイ様に踏まれたいというか、それこそ俺の使命みたいなトコあるっていうか……」

アシュラ「もうちょっと具体的に言えば、カムイ様の…………靴になりたいっていうか」

カムイ・アクア「…………」

アシュラ「いや、引いちまいましたよね!? ホント、自分でも変だと思うっていうか、こんなこと言ってすいません――」

カムイ「アシュラさん、あの……私にも、何が何だか分からないんですが……本当に、ごめんなさい」

アクア「私からも、謝るわ。でもあれは、選択肢があること自体が悪いと思う」

アシュラ「何の話なんで!? 選択肢って!? ちょ……お、お二人ともー!?」

アクア(ていうか別に、アシュラを素材に作った訳じゃないと思うんだけど)

アクア(……おえ。想像したら思いのほかにエグいわ。やめましょ)

アクア「まあ、いいわ……じゃあ、最後はフウガ……こほん、フウガ様の番ね」

フウガ「うーむ。文字通り片手間に拘束されている状態で、様付けもないと思うが」

フウガ「……性癖暴露と言われてもな、私は常日頃、修行に明け暮れる身。煩悩を制する術は心得ておる」

アクア「無い、とは言わせないわよ。あなただって、カムイが好きなんでしょう?」

アクア「それに、本当に無いなら、さっきだって誤魔化そうとする必要もないはずだし」

フウガ「……悪いが、無い袖は振れぬな。こればかりは、どうしようもあるまい?」

アクア「むう……あくまでもしらばっくれるつもりか、本当なのか……読めないわね」

?『――ちょっと待った! 私は知っているぞ、フウガ様の秘密を!』

フウガ「あっ。……はははっは。なな何を言う、ツクヨミ。なぜお前が――」

ツクヨミ「フウガ様、ここまで来て、御自分だけ誤魔化すのは、卑怯だと思うぞ」

ツクヨミ「実は……」

フウガ「ちょ、待つのだツクヨミ! それ以上はアイッタタタタタ!」

アクア「ツクヨミ、構わないわ。気にせず続けて」ギリリィ…

ツクヨミ「……う、うむ。えーとだな……風の部族の村では、なぜ風が吹いておると思う?」

カムイ「えっ? 進軍を妨げるためとか……自衛のため、でしょうか?」

ツクヨミ「まあ、一応はな。カムイ達は確か、一度……そこで私達と交戦したな」

ツクヨミ「あの時……カムイのクラスは、侍だったな」

カムイ「は、はい。あの時は確か、速さを高めたかったので……」

ツクヨミ「う、うむ。それで、その、スカートというか、前垂れが……少し、際どかったではないか……それで、その」

ツクヨミ「カムイ達は気付かなかっただろうが、実はこんな事があってだな……」

 ポワンポワン

 ~~回想~~
カムイ『きゃ……きゃあーっ! すごい風ですねっ、味方が飛ばされちゃいます……』

ジョーカー『……カムイ様、少々、身だしなみにお気を付けくださいませ』鼻血ボタボタ
スズカゼ『風が強いですからね……少し、その、スカートを気にしたほうが……』鼻血ダバダバ

カムイ『えっ? ……ふ、二人とも、大丈夫ですか!? 鼻血が……攻撃を受けたのですか!? 早く癒さないと!』ドタバタ


ツクヨミ『ふう、この風、私達にも厳しいな……なあ、フウガ様……おわあああ!?』

フウガ←うつ伏せで地べたにピトォォォォ

ツクヨミ『な……何をしておるのだ!? ふ、フウガ様……?』

フウガ『ツクヨミよ……これもまた、私の修行の一つ』

ツクヨミ『えっ? そ、そうなのか?』

フウガ『覚えておくがよい……普段とは違う目線からならば、普段は見えない光景が見える事もある……そういう事だ』

ツクヨミ『お、おおっ……何やら含蓄ある言葉だなっ!』

フウガ『ふっ……そうであろう。まあ、お前にはまだ早いが』

フウガ『いつか……分かる日が来るだろう……』鼻血ダラダラ

ツクヨミ『おおっ、鼻血が出るほどの修業を……深い、深いなフウガ様!』
 ~~~~~~

アクア「…………」腕ギリギリ
フウガ「…………」腕ギラレギラレ
ツクヨミ「…………」

ツクヨミ「……浅かったな」

フウガ「………ウス」

アクア「やれやれね……年長者がそんな事だったなんて、呆れてものも言えないわ」

アクア「カムイ、あなたはどう思う……カムイ?」

カムイ「…………」ウツムキー

フウガ「うぐ……その、あれだぞカムイ、別に私は、そんな変態じゃないというか……」

フウガ「その時だけだからな……まさかその時のカムイを忘れられなかったから、軍にまで来て参戦したという訳ではなく」

フウガ「だからその、決して――」
カムイ「……フウガ様」

フウガ「!? か……カムイ?」

カムイ「……ふ、ふ……」

カムイ「ふーがさまの……えっち///」

フウガ「上目遣い頬赤らめガッハァァァ!」鼻血噴射ノックアウッ

ツクヨミ「ぎゃああああ!? 鼻血が、鼻血がかかったぁ! なぜこっちに!? 汚い!」

カムイ「あうぅぅぅ……恥ずかしすぎて、埋まりたいです……」

アクア(おぉ……トドメを刺されながらも、何と幸せそうな顔でしょう)

アクア(ホント、カムイは最終兵器ね……最終兵器カムイだわ)

アクア「ま、さすがのカムイ……と、いうことで」


 カムイとアシュラの支援レベルがSに上がった

 カムイとフウガの支援レベルがSに上がった

アクア「……ふうっ。ついに……ようやく、ここまで来たわね」

カムイ「……あ、あの、アクアさんっ……今、数えてみたんですけど」

カムイ「兄さん達を除けば……これで皆、逆ハーレムに加わってくださったのでは!?」

カムイ「では、後は兄さん達だけ――!」

アクア「……………」

アクア「カムイ、まだよ。……あと一人だけ、忘れていないかしら?」

カムイ「えっ? あと一人、って」

カムイ「………………」

カムイ「! まさか……アクアさん!?」

アクア「気付いたようね。……そう、彼がまだ、残っているわよ」

カムイ「わ、忘れてた訳じゃありませんっ。けど……あんな事があったのに……」

カムイ「しかもあの人は、なぜか不自然なほど、私を避けて……会話すら、ままならず」

アクア「……そうね、確かに、そうよ。だけど……カムイは彼の事が、嫌い?」

カムイ「! ……いいえ、そんな事はありません……そんな事はっ」

アクア「ならば、行きましょう。この逆ハーレムを、真の意味で完成させるために」

アクア「あの、彼の所へ――そう」



アクア「――ギュンターの所へ」

 リリスの神殿の裏

ギュンター「……」

ギュンター「………?」

カムイ「ギュンターさん。……こんな所にいらっしゃたんですね」

ギュンター「……これは、カムイ様。それにアクア様も」

ギュンター「この老骨に、何か御用ですかな? 特別な任務でも? それとも――」

ギュンター「ようやく、この裏切り者の首を、刎ねに来られたのですかな?」

カムイ「……いいえ、ギュンターさん。私は、そんな事はしません」

カムイ「私は、ギュンターさんを……迎えに来たのです」

ギュンター「……ほう」

ギュンター「まさか……逆ハーレムに、などと……言うつもりですかな?」

ギュンター「……はっはっは……」

ギュンター「冗談も、程々にしたほうがいい」

ギュンター「私が透魔王を名乗り、倒された後にも言いましたが」

ギュンター「私は、私から妻と子を奪ったガロン王を……そして王族を、憎んでいる」

ギュンター「そんな私が、まさかあなたに甘い慕情を抱いているなどと、そんな夢想を抱いているなら……改めたほうがいい」

ギュンター「私の目的はあくまで、暗夜への復讐……そのために、あなたの傍にいたのですから」

カムイ「…………」

カムイ「それは、嘘です」

ギュンター「……なんと?」

カムイ「暗夜への復讐のためだけに……私の傍にいた、というのなら」

カムイ「なぜ今も、この軍にいてくれるのですか? 目的が露見したなら、その遂行は、もはや不可能です」

カムイ「それなのに、なぜギュンターさんは……まだここに、いてくれるのですか?」

ギュンター「……さて、行く所もない老人ですからな……いえ、ただの気まぐれとも」

カムイ「それに。……本当に、全てが嘘だったのですか?」

カムイ「北の城塞で、共に過ごしてきた日々も、私に教えてくれた沢山の事も」

カムイ「幼い私に優しくしてくれた事も、遊んでくれた事も」

カムイ「初陣の……旅立ちの刻、未熟な私についてきて、助けてくれた事も」

カムイ「初めて透魔の地へ降り立った時、また私を助けにきてくれた事も」

カムイ「透魔王に操られながらも、私に剣を振り下ろさず……自分の身に、剣を突き立てた事も」

カムイ「全てが……全てが、嘘だったというのですか!?」

ギュンター「…………」

ジョーカー(……ジジイ……)

カムイ「私には……そんなの、信じられません。ギュンターさん自身が何と言おうと、すぐに騙されちゃう私といえど」

カムイ「それだけはっ……信じられません!」

ギュンター「…………」

ギュンター「…………………」

ギュンター「だからといって……」

ギュンター「私が心奥では、カムイ様をお慕いしているからといって……」

ギュンター「私の罪が、許される事はないッ!!」

カムイ「! ギュンターさん……」

ギュンター「私はそれだけ、許されぬ事をした! 優しきカムイ様を、裏切ったのだ!」

ギュンター「そんな私が……今さらどの面を下げて、人並みの幸せを望む事など出来ようか!」

ギュンター「クリムゾン殿にも、申し訳が立たぬ……許されるはずがないっ……!」

クリムゾン「そーだ、そーだー」

ギュンター「そうだ! このような私が、許されてはいけないのだ!」

ギュンター「クリムゾン殿もそう言って! …………」

クリムゾン「ホントだよ。反省しなよ、全く」

カムイ「………………」

ギュンター「………………」

カムイ・ギュンター「えっ」

カムイ「…………えっ」

カムイ「………クリムゾン、さん?」

クリムゾン「うん、そうだよ。私の顔、忘れちゃったかい?」

カムイ「え、いえ、そんな事……えっ。足、えっ」

クリムゾン「足もちゃんとついてるよ。幽霊じゃないって」

カムイ「えっ。でも、えっ。……えっ、だって、あの時、確かに」

クリムゾン「いや、死んでなかったよ。気を失ってただけでね。……まあ、とはいえ」

クリムゾン「まさか胸につけてた花が散っただけで死亡判定くだされるとは思わなかったし、そのまんま埋められちゃうとはね」

カムイ「ごごごご、ごめんなさーーーーーいっ!?」

クリムゾン「いやもうホント、カムイだけじゃなく……誰も気づかないんだもんね、生きてるのに」

クリムゾン「地面から這い出た後、さすがに私も怒っちゃってさ……けど、それがいけなかったね。シェンメイってのに操られてさ」

カムイ「え……あっ!? そういえばあの時、襲ってきたのは……」

クリムゾン「うん。まあ私も、抵抗はしたんだけどね。つい、感情に流されて、操られるまま襲い掛かっちゃて……」

カムイ「クリムゾンさん……」

クリムゾン「タクミ王子とサクラ王女が号泣しながら弓撃ちまくってきた時は、今度こそ死んだと思ったよ。はははは」

カムイ「ごめんなさい本当にごめんなさい! 指示を出したの私ですごめんなさい!?」

クリムゾン「いいよもう、操られてたとはいえ襲い掛かったのも事実だし、お互い様って事でさ」

クリムゾン「それに、倒されたおかげで解放されたし……助けてもらえたからさ」

カムイ「え? 助けられた、って……だ、誰にです?」

?『私ですよ、カムイ様』

カムイ「えっ……あ、あなたは……!」

カムイ「り……リリスさん!?」

リリス『はい、カムイ様。シェンメイ様を倒された後……倒れていたクリムゾン様を見つけ、介抱させて頂きました』

リリス『支配は解けておりましたし、もう大丈夫だと判断しての事ですが……勝手な真似をしてしまい、申し訳ございません』

カムイ「い、いえっ、むしろクリムゾンさんを助けてくれたのは、ありがたいですが……」

カムイ「なぜ……なぜ、教えてくれなかったんですかっ!? 私……いえ私達っ」

カムイ「クリムゾンさんが亡くなってしまったと思って……悲しかったのにっ!」

クリムゾン「カムイ、それは……深い、深い事情があるんだ……」

カムイ「えっ……事情、ですか?」

リリス『はい、カムイ様……話せば長くなるのですが……実はですね』

 ~~~回想~~~
クリムゾン『なんか出てくの気まずいし、もうちょっと匿ってもらっていい?』

リリス『いいですよー』
 ~~回想終了~~

リリス『……という』

アクア(回想が短すぎて逆に怖いパターンだわ)

カムイ「そんな……そんな深い事情があったなんて……」

クリムゾン「私が言うのもなんだけど、カムイはそれでいいの?」

クリムゾン「ま、とにかく……私はかなり根に持つ方だから、許しちゃいないけど」

クリムゾン「私を殺したから、なんて後ろめたさは……もう感じる必要、ないんじゃない?」

ギュンター「…………」

クリムゾン「ま、私は許してないし、どーでもいいんだけど。それじゃカムイ、アクアも、私はこれで」

クリムゾン「リリスも匿ってくれて、ありがとね。楽しかったよー。さて皆、どんな顔するかな……」

サクラ<アッ、クリムゾンサン、コンニチ……エエエエエエ!?
クリムゾン<オッ。…オノレ、サクラ…コノウラミ、ハラサデオクベキカ…
サクラ<ゴメンナサイゴメンナサイ、ウッテゴメンナサイ! シャイニングボウ!
クリムゾン<ハハ、ジョーダン…オオオウアアアア

リリス『……い、一応、私も皆さんに説明してきますね。それでは……』フヨフヨ

カムイ「…………」

ギュンター「…………」

カムイ「あ、あのっ、ギュンターさん――」

ギュンター「それでも」

ギュンター「それでも、私は……カムイ様を裏切った罪を、許せません」

カムイ「! ……ギュンターさん……」

ギュンター「性癖暴露……とか、言われておりましたな。あえていうなら、私はそれです」

ギュンター「私は、自分の罪を許せない。妻子を失った過去も、カムイ様を裏切った事も」

ギュンター「だから……もう、いいでしょう。これ以上は、もう……」

ギュンター「どうか……もう、何も言わずに」

ギュンター「……お引き取りください……」

カムイ「…………」

カムイ「…………」クルッ…スタ、スタ…

ギュンター(……そうだ……)

ギュンター(これで……いいのだ……)

カムイ「…………」ピタッ

カムイ「ギュンターさん」

ギュンター「? カムイ様……まだ、何か――」

カムイ「ざっと剣、五本分です」

ギュンター「! ……カムイ様、それは……」

カムイ「昔よく投げて遊んでくれた……あの時の球。まだ……持っていましたよね」

ギュンター「…………」

ギュンター「……はい」スッ

カムイ「……良かった、まだ捨てていなくて……まだ、持っていてくれて」

カムイ「ギュンターさんは昔から、私が取りやすいように……やさしく投げてくれました」

カムイ「けれど私は、高く投げ上げられた球だけは……なかなか捕れませんでした」

カムイ「……ギュンターさん」

カムイ「賭けを、しましょう」

カムイ「そこからギュンターさんは、その球を、私に投げてください」

カムイ「出来る限り、私が捕りにくいように……私が、捕れない様に」

カムイ「もし、私が捕れた時は……私の勝ちです。ギュンターさんは、自らの罪を許さず、悔い続けてください」

カムイ「けれど、私が捕れなかった時は……ギュンターさんの、勝ちです」

カムイ「その時は……ギュンターさんは」

カムイ「自分を、許してあげてください」

ギュンター「! ……そのような……私にばかり、都合の良い……!」

カムイ「ギュンターさん。人は……誰かの代わりには、なれません」

カムイ「だからこそ、唯一かけがえのない、大切なものを奪われ……許せないという気持ちは、分かります」

カムイ「だけど……許してあげてください。たった一人、傷つき続けているその人を、許してあげてください」

カムイ「ギュンターさん自身を――許してあげてください」

ギュンター(……私は、許されて良いような人間では……ない)

ギュンター(カムイ様に……許される資格など、ない)

ガロン『言う事を聞くようになるまで、このムチでカムイを叩き続けろ! これは命令だ!』

ギュンター(あんな男の下らぬ命令に、従ってたまるかと……幼いカムイ様の目の前で、鞭を丸め……その場に叩き付けただけだ)

ギュンター(それなのに……カムイ様は、勘違いなさっただけだ。球遊びだと……丸めた鞭を拾い、私に投げ返して……)

ギュンター(…………)

カムイ『ギュンターさん……楽しいですねっ』

カムイ『ギュンターさん……ありがとうございますっ』

ギュンター(………………)

ギュンター(もしも……許されると、いうのなら……)

ギュンター(一度だけ……ただの、一度だけで、いい)

ギュンター(今、この時の……ただの、一度だけ)

ギュンター(……………………)



ギュンター「いきますぞっ―――カムイ様!」

カムイ「―――はいっ、ギュンターさんっ!」


アクア(ギュンターの投げ上げた球は……事情を知らない私から見ても)

アクア(空高く舞い上がった……とは、お世辞にも言えなかった)

アクア(まるで、罪の重さを一身に背負ったように、ゆっくりと、低く飛んでいった球は)

アクア(カムイが捕れないようには、まるで見えなくて)

アクア(………………)

アクア(だけど、手を伸ばし、微笑んだカムイは)

アクア(ゆっくりと、ゆっくりと、飛んでくる球を)

アクア(まるで、その罪を……)

アクア(―――許すかのように―――)

 …… …… …… …… 

 カムイと*ギュン@ターのC援レBルがggがgAに上が#ったtったた

 ………………… …………… ………
 …………

 カムイとギュンターの支援レベルがSに上がった

アクア「さあ……これで残す所は、あと二人」

カムイ「はいっ! アクアさん……ついにここまで来たんですねっ……」

アクア「ええ。あとは、問題の……長兄ズ」

カムイ「マークス兄さんと、リョウマ兄さんだけですっ!」

アクア「ええ、本当に……」

アクア「本っ当~~~~~~に、大変だったわ」

カムイ「あ、アクアさんの言葉が、真に迫ってます……!」

カムイ「ですが、あとは兄さん達の協力を得られさえすれば、逆ハーレムは完成です」

カムイ「皆が、真の意味で手を取り合えるんですっ……私は、それが嬉しくてっ」

アクア「ええ……そうね、カムイ。実は私も、最初のほうは、さすがに無茶かと思ったけれど……」

アクア「今では……あなたなら、簡単にやれちゃいそうな気もしているわ。ふふっ」

アクア「……けれど、ちょっと気になるのは……問題の二人の動向ね」

アクア「レオンとタクミが探ってるはずだけど、どうなってるのか――」

レオン「カムイ姉さん、アクアっ!」

タクミ「たっ……大変だよっ!」

カムイ「あっ……レオンさーん、タクミさんーっ! 久し振りですーっ!」ダキツキィィィ

レオン「わっ、か、カムイ姉さんったら……はしゃぎすぎだよ」デレデレ

タクミ「本当に、もう……し、仕方ないんだからさ」デレデレ

レオン「……って、そんな場合じゃないんだよ、大変なんだって!」

アクア「落ち着いて、二人とも。大変っていうのは……リョウマとマークスの事?」

タクミ「あっ……そ、そうだった! そうなんだ、兄さん達が!」

レオン「と……闘技場で!」

レオン・タクミ「一騎打ちを始めちゃったんだよっ!!」

カムイ「えっ。……一騎、打ち?」

アクア「………えっ」

カムイ・アクア「………………」

カムイ「えっ……えええええええっ!?」

アクア「マジか」

 ――来たる、最終局面――

 ~~CM~~
 三年インビジ組!
 帰ってきたカムイ先生!

カムイ「ミタマさんの句には……寝ていたい、ああ寝ていたい、寝ていたい。……??」

ドアガララッ
リョウマ「カムイ! 白夜王国に帰って来るんだ!」
サクラ「姉さまっ……」 ヒノカ「カムイ!」 タクミ「ッ……」

窓ガシャーン
マークス「カムイ! 暗夜王国に……戻って、こい(イケボ)」
エリーゼ「お姉ちゃんっ!」 カミラ「ああ、カムイ……」 レオン「姉さん……」

カムイ「そんな、皆さん……私は、私の選ぶべき道は……」

 ミコト女王やリョウマ達のため、白夜軍の防衛に協力
 ガロン王やマークス達のため、暗夜軍の侵略に協力
 どちらにも協力しない
 大乱闘に参戦する
→新たなる戦場で無双乱舞する

 ピコンッ!

カムイ「ファイアーエムブレム無双に参戦しますっ!」ズバッズバッ

リョウマ「何をやっているんだ、カムイ!」

カムイ「ごめんなさい皆さん! 私は千人斬りせずにはいられないのです!」ズバズバーン

マークス「どちらにもつかないどころか、まだ情報不足の戦場に参せお前こそが真のFE無双よ!」(台詞キャンセル発動)

サクラ「しかしこのゲーム、すごく面白そうですよ!?」
エリーゼ「あたしもおねえちゃんと一緒にあそびたーい!」

カミラ「……私の出番はあるのかしら」
ヒノカ「ヒーローズではカミラ王女は目立ってたな。なぜ私じゃない? 胸か、胸の差か?」

レオン「そもそも、姉さんは出られるのかな。公開された映像だと、確か……」
クロム『俺の出番は……あるぞッッッ!!』
タクミ「夜刀神は出てたし、出られるんじゃないかな」
レオン「誰だ今の」

♀ルフレ<スイマセン、オジャマシテ……カエリマスヨ、クロムサン。トロン!
クロム<アアアッ! ワキニ、ワキニササッタァ!

カムイ「私は選びましたっ……ファイアーエムブレム無双で、一騎当千する道を!」

 シミュレーションRPGの王道ファイアーエムブレムと、
 戦場を暴れ回る一騎当千の爽快感、無双が融合!
 新ハード「Nintendo Switch」と、「Newニンテンドー3DS」で開発中
 『ファイアーエムブレム無双』――2017年秋、発売予定!


 キーンコーンカーンコーン

ジークベルト「……クラスチェンジ、間に合うかな……」
シノノメ「チャイルドプルフ使おうぜ」

 ~~CM終了~~

次が本当に最終局面なのでちょっと書き溜めして
一旦休憩してごはん食べてきます~

 闘技場

マークス「………………」

リョウマ「………………」

リョウマ「フンッ! フンッ! トリャア!」ザンッ ザンッ ズアッ

マークス「ムウンッ……ハアアアアアアッ!」ズンッ… グオオッ

リョウマ・マークス「オオオオオオオ!」ガキィィィン!

カムイ「に、兄さん達がっ……本当に、一騎打ちしちゃってますっ!?」

アクア「暗夜と白夜……黒白二剣が相打って、まるでOPムービーのようね……」

カムイ「恐ろしい、文字通りの剣幕です……二人とも、全力ですっ……!」

アクア「ええ……とんでもない気迫だわ……」

アクア「………………」

アクア「ただ……どうしても、気になる事があるのだけれど……」



マークス「――ウオオオオッ!」←ワインボトル装備

リョウマ「ルアアアアアアッ!」←大根二刀流

アクア「アレでよく、剣戟の音を出せるなって」

カムイ「れ、冷静に見てる場合じゃないですよーっ!?」

アクア「まあそうね。……二人とも、やめなさい! よりによって第一王子が、軍内で何をしているの!」

リョウマ・マークス「!」

リョウマ「アクアか……邪魔をするな」

マークス「私達は、決着をつけねばならぬ」

リョウマ「どちらのほうが、真にカムイの兄として、そして夫として相応しいか」

マークス「カムイの全てを支える者として……相応しいのは、どちらか」

リョウマ「白黒はっきりつけるための戦いだ!」

マークス「たとえ誰であろうと……何人たりとて!」

リョウマ・マークス「邪魔は……許さんっ!」ガキィン!

アクア「………………」

アクア「カムイ、仲裁」背中をポンッ

カムイ「あっはい。……兄さん達、やめてくださいっ、話を聞いてくださいっ!」

リョウマ「可愛い妹の頼みなら」ピタッ
マークス「断る訳にはいかないな」ピタッ

カムイ「ふ、二人とも……ありがとうございますっ!」

アクア「よし。……それで、どうしてこんな争いを始めたの? 原因は一体、何なの?」

リョウマ「それは……いや、他者に知らせるような事ではない」

マークス「うむ。これはあくまで、我々の問題だからな」

アクア「………………」

アクア「カムイ、聞いて」背中ポンッ

カムイ「あっはい。……兄さん達、どうして……どうして二人が、戦っているのですか?」

カムイ「お願いです。理由を……教えてください。でないと、私……私……」

カムイ「……悲しくて……涙が……」ホロリ

マークス「あああ、わかった、何でも教える! だから泣かないでくれ、カムイ! お前の涙だけは見たくない!」

リョウマ「本当に悪かった! 飴いるか!? 煎餅もあるぞ!? そうだ、大根を剥こうか!?」

レオン「うん、カムイ姉さんはナニ? アクアの操り人形なわけ?」

タクミ「背中ポンッてしたら動く絡繰りなの?」

カムイ「うう……いえ、兄さん達が戦ってるのみたら、頭が真っ白になって、言葉も出なくて……」

カムイ「アクアさんにポンッとしてもらったら、ようやく声が出ました……」

レオン「あのポンッは気付けかなんかなの? 歌以外にも変な力ありすぎでしょ」

アクア「それで……二人とも? 一体なんで、一騎打ちなんてしていたの?」

リョウマ「む。う、む……それは、まあ、その……」

アクア「決着をつける、とか言ってたけど……まさか、カムイを巡ってじゃないでしょうね」

アクア「だとしたら、逆ハーレムの話は、二人の耳には届いてないのかしら?」

マークス「いいや、無論、聞いている。そしてそれを……私達は、否定しない」

リョウマ「ああ。俺達はカムイが第三の道を選んだ時、カムイを信じてやる事が出来なかった……」

マークス「だから、今度こそは……カムイが選んだ道を、妨げる事はすまいと」

マークス「いや……カムイが選ぶ道を迷わず肯定し、支えようと誓ったのだ」

カムイ「マークス兄さん……リョウマ兄さん……ありがとうございますっ……!」

アクア「……待って。それなら、なおさら解せないわ」

アクア「カムイの道を支えると言いながら……なぜ今、二人は争っているの?」

アクア「あなた達は……この決闘で、一体何を得ようとしているの?」

リョウマ「……それは……」コクリ
マークス「……うむ」コクリ

リョウマ・マークス「カムイの第一夫の座だ」

カムイ「……ふえっ? だ……第一夫?」

リョウマ・マークス「つまり、カムイの……一番の夫、という事だ」

カムイ「…………」

カムイ「え……ええっ!? 一番の、って……それはっ」

アクア「ちょ、待って……待って! それは……それだけは、今言っちゃ……」

レオン・タクミ「――聞き捨てならないな」

アクア「……ああ、もう~……」

レオン「カムイ姉さんの……第一夫、だって? まあ本妻に対する本夫、という言葉もあるくらいだけどさ……」

タクミ「それを二人だけで勝手に決められるのは……甚だ不本意だよ」

レオン「僕達だって、カムイ姉さんを愛している……はっきり言うよ。それだけは、ここの誰にも負けない自信がある」

タクミ「僕だって、同じだ。そしてそれは、影から見守っている皆だって、同じはずさ」

物陰<ソウダ、ソウダー!
柱陰<フザケンナーカネカエセー

マークス「……ふむ。だが、カムイの第一夫として相応しい物を探すとすれば」

リョウマ「両国の第一王子のどちらか、と考えるのが……普通ではないか?」

マークス「それとも……割って入ってみるか? 力尽くで」ジークフリートォォォ

リョウマ「挑戦を受けて立つのも……王の責務だからな」雷神刀ォォォ

タクミ「ふん……望むところだよ。……軍隊らしいじゃないか」風神弓ゥゥゥ

レオン「それしか選択肢が無いなら……勝って、手にするだけさ」ブリュンヒルデェェェ

レオン(………………)

レオン(正直、神器的に僕だけ自信ないとは言い出せない)

アクア(……そんなの……)

アクア(誰が一番、とか言い出したら……)

アクア(誰も彼もが、自分がカムイの一番だ、と主張し始めたら……)

アクア(カムイを狙って、皆がおかしくなってた最初と……何も変わらないじゃない)

アクア(ここまで来て……振り出しに、戻っちゃうなんて……そんなの……)

アクア(お願い……誰か、誰か……)

アクア(この流れを……変えて……!)




カムイ「――――やめてくださいっ!!」

アクア(! か……カムイ!)

カムイ「やめてくださいっ……私なんかの事で、争わないでください……」

カムイ「一番が誰か、なんて……そんな事で、争わないでくださいっ……」

カムイ「皆で……笑って、いたいんです……みんな一緒に、幸せに……」

カムイ「私の、大好きな……キョウダイ達の、ようにっ……!」

キョウダイ達「!!」

カムイ「だから、お願いです……私にとっては、皆が同じくらい大好きな人なんです……」

カムイ「だから、もう……もう、争わないで……!」ポロポロ

マークス「カムイ」

マークス「………………」

マークス「すまなかった、カムイ……」頭に手をポン

カムイ「……マークス、兄さん?」ポロポロ

マークス「私達が、どうかしていた。お前の気持ちも考えず、こんな事で争うなど」

マークス「お前の事を、本当に愛している男の……する事では、ない」

マークス「何度でも言う。すまなかった、カムイ」

マークス「私達は、もう、決して争ったりなどしない」

マークス「だから、もう……泣かないくれ」

マークス「私は……」

マークス「お前の涙を見るのが……一番、辛い」

レオン「……僕達も、どうかしてたよ。ごめん……カムイ姉さん」

タクミ「頭に血が昇ってた。……本当に、すまないと思う」

カムイ「レオンさん……タクミさん……」

レオン「はあ……らしくないよね。冷静さを失って、カムイ姉さんを悲しませるなんて」

タクミ「本当……馬鹿だったよ。こんな事、当のカムイ姉さんが望んじゃいないのに」

レオン「マークス兄さんの言う通りだ。カムイ姉さんの涙を見て……実感したよ」

タクミ「僕達が、一番恐れるのは……カムイ姉さんが、泣いてしまう事なんだって」

レオン「だから。カムイ姉さんが望むなら……皆が平等だ」

タクミ「逆ハーレムの皆が、平等に……同じ、キョウダイのような、関係に」

レオン・タクミ「それで……いいよね?」

カムイ「っ……はい……はいっ!」

マークス「リョウマ王子。……リョウマ王子も、それでいいだろう?」

リョウマ「………………」

リョウマ「ふっ、聞かれるまでもない。当然だ」

カムイ「! リョウマ兄さんっ……」

リョウマ「全く……一番を決める必要はない、皆で平等などと、むしろ一番難しい事だ」

リョウマ「それなのに、涙を流しながら、それでも迷わずに、その道を選ぼうとする」

リョウマ「それが皆を、幸せに出来る事だと、信じているのだろうな」

リョウマ「全く……お前には、いつまで経っても、勝てる気がしない」

リョウマ「だが……そんなお前だからこそ」

リョウマ「俺の心を……惹きつけて、やまないのだろうな」

カムイ「……リョウマ兄さんっ……ありがとう、ございます……!」

マークス「ふっ……恰好つけるな、リョウマ王子」

レオン「ははっ、マークス兄さんが言えた事かい?」

マークス「おいおい、お前は私の味方をしてくれないのか?」

レオン「そうじゃないさ。ただ……僕達は平等なキョウダイだからね。誰に味方するにせよ、平等にさ」

タクミ「ははっ。まあ、リョウマ兄さんがカッコつけなのは事実だよ。しょっちゅうさ」

リョウマ「おいおい、今度はお前がマークス王子の味方をするのか? 全く」

マークス「はははっ! 全く、兄というのは苦労が絶えないな」

リョウマ「はっはっは! いや、全くだ……うむ。ふう……さて、それでは」

マークス「うむ? どうした、リョウマ王子……何かあるのか?」



リョウマ「今から、誰がカムイの『最初の男』になるかの議論にシフトする方向で」

マークス「おいコラ待て海老」


カムイ「えっ、えっ……りょ、リョウマ兄さん、最初の男って、つまり、その」

カムイ「……~~~///」プシュー

カムイ「そ、それは……また今度で、いいのでは……ない、でしょうかっ」

カムイ「そんな大事なことでは、ない、ですしっ。私もその、心の準備が、ですねっ」

リョウマ「はっはっは。これは大事なことだぞ、カムイ。ちゃんと議論せねばな」

リョウマ「いいか、カムイ……こういう言葉がある」両肩に手をポンッ

カムイ「こ……言葉? それは、えっと、どのような……」

リョウマ「『選べる処女は、一つだけ』」

カムイ「~~~~~~~/////」プッシュゥゥゥゥ

マークス「リョウマ王子ェア! 純粋無垢なカムイに卑猥な言葉を聞かせるなァ!」




リョウマ「でも!! 最初は大事だろが!!!!」

リョウマ「本音言うと!!! なりたいだろが!!!!!!」

リョウマ「男の!!!! 浪漫だろが!!!!!!!!」

マークス「………………」

ポワンポワン

~~妄想~~
カムイ『マークス兄さん……お願いです。私に、剣だけでなく……教えてください』

カムイ『男のひとに、愛されるという事の喜びと……その悦びを』

カムイ『あなたが……最初に、刻み付けてください』

カムイ『私の……心と、カラダに……❤』
~~~~

マークス「うん、まあ」

レオン「おいこらマークスゥ!」

マークス「呼び捨てはやめろ。傷つく」

レオン「ああもうっ、どいつもこいつも! カムイ姉さんの初めてを、野獣のように狙うなんて……」

レオン「だったら……せめて僕が、優しく教えるしかないな! 先生だし!」

タクミ「人の事を言えるか!? だ、だったら僕にだって……その権利はあるっ!」

マークス「待て! カムイに優しく手ほどきするのは……兄である私の役目だ!」

リョウマ「ふざけるな、俺とて兄だ! そして男である以上……譲れんっ!」

とても仲の良いキョウダイ<ワーワー! ギャーギャー!

カムイ「け、結局争うんですか!? もうもうっ……やめてくださいーっ!」

アクア(――いいえ、違う! 流れは、確かに変わったわ!)

アクア(カムイの作り出してくれた、このチャンス……無駄にはしないっ!)

アクア「待ちなさい――リョウマ、マークス! あなた達、大切な事を忘れていない!?」

アクア「カムイの初めてがどうのと言う以前に、あなた達はスタートラインにも立っていないのよ!」

リョウマ「!? それは……」
マークス「どういう事だ!?」

アクア「決まっているでしょう……ここにいる男達は、カムイの逆ハーレムに加わる者は、誰もが通った道」

アクア「そう、まだあなた達が、やっていない事」

アクア「―――性癖を、暴露しなさいっ!」

マークス「……性癖、だと? それは、つまり……」

リョウマ「ふっ……何かと思えば、そんな事か」

マークス「むっ、リョウマ王子?」

リョウマ「暗夜は知らんが……勇猛で知られる白夜の第一王子は、その程度では動じん」

リョウマ「聞きたければ、聞かせてやろう。良く聞け……」

リョウマ「俺が常々、カムイについて〝if ~ひとり想う~〟妄想だ」

アクア(人にif使われるとなんかムカツクわね)

――――――――
仄暗い地下室
カムイ『……………』

カムイ『……うぅ……』鎖ジャラ…

リョウマ『……カムイよ、気分はどうだ?』

カムイ『! に、兄さんっ……リョウマ兄さん!』

カムイ『ここは、どこなんですか……皆は……キョウダイ達は、どこへっ……きゃっ!?』

リョウマ『カムイ……他の者の事など、気にするな』顎クイッ

リョウマ『お前は、俺さえ見ていれば……それでいい』

カムイ『な、なにをっ……こ、怖いです、リョウマ兄さん……ここから、出してください!』

カムイ『皆に……会わせて、くださいっ……!』

リョウマ『……皆には、もう……会えない。いや、お前はもう、誰にも会えない』

カムイ『なっ……リョウマ、兄さん……何を、言って』

リョウマ『お前がここにいるのを知っているのは、俺だけだ。俺は誰にも、ここを教えん』

リョウマ『今は、憎んでくれてもいい。だが……知っておけ。お前には、もう……俺しか』

リョウマ『――俺しか、いないのだ』

カムイ『! あ、ああ……そんな、そんなのっ……』

カムイ『……っ! う、ううっ……』

リョウマ『……まだ、分からんだろうな。だが、すぐに分かる』

リョウマ『じきに、俺を待ち侘びるようになる。俺に会いたいと、願うようになる』

リョウマ『俺の事しか考えられず、俺を想うだけで体が火照り、俺だけが世界の全てになる』

リョウマ『それが、お前にとっての……幸せなのだ』

カムイ『うっ……う、ううっ……あっ……』

カムイ『あああっ――――』

リョウマ『その日が来るのが……楽しみだ、カムイ。その時こそ、俺達は、二人で』

リョウマ『 幸 せ に、 な ろ う な 』

――――――――

一同「………………」

リョウマ「……あと、ついでに言っておくが」

リョウマ「割と結構、本気だ」

リョウマ「具体的に言うなら……そうだな、例えばだが」

リョウマ「仮に俺とカムイが敵対したとして、カムイの身内が風土病に罹り、白夜にしかない薬が必要になった時」

リョウマ「薬の身代わりにカムイを要求して、今言った事を実行しようと思うくらい本気だ」

アクア「なにその見て来たかのような具体的な例え。真顔で言うのやめてくれる」

カムイ「りょ、リョウマ兄さん……私、私、皆と一緒にいられなくなるの、イヤです……」

カムイ「お、お願いです……どうか、どうかそんなこと、考えないでください……」ウルウル

リョウマ「おっ、カムイ、そんな愛らしい涙目で見上げないでくれ……子作りするか?」

タクミ「――オラァァァァァ! カムイ姉さんに近づくな海老外道がァ!」

レオン「カムイ姉さんはこの身に変えても守る! 近づかせないぞコラァァァ!」

リョウマ「はっはっは、どうしたんだ二人とも。やけに仲良くなったものだな」

タクミ「うるせぇ寄るなぁ! 今の僕は近接射撃スキル覚える勢いだぞウラァ!」

レオン「かかってこ……ん? ……あれ?」

 ~♪ ~~♪♪

アクア『ユラリ、ユルレリ……♪ 泡沫、想い、巡る、秤……♪』

レオン「アクア? 何で今、歌って……」

タクミ「――兄さん、兄さん!? 急にどうしたんだ!?」

リョウマ『ウ、ウウ、グ、オオッ……ウゴオオオ……!!』

レオン「えっ? ……なっ!? ど、どうしたんだ!?」

タクミ「わ、わからない……けど、アクア姉さんが歌い出したら、急に苦しみだして」

アクア『伝う水脈……♪ その手が、拓く、未来は……♪』

タクミ「一体、何が……う、うわあっ!?」

リョウマ『オ――ゴアアアアアア!』オエー
スメラギ『――ウオオオオオオ!』

タクミ「りょ……リョウマ兄さんの口から、すっ……スメラギ父上!?」

レオン「霧みたいだし、なんか禍々しいけど……って、あ」

アクア『ユラリ、ユルレリ……♪』

スメラギ『あ、ああ、あ……――――』

レオン「……消え……た」

カムイ「あっ……リョウマ兄さんっ! ……気を失っちゃってます……」

マークス「……アクア、今のは一体……」

アクア「……人は誰しも、心に光と闇を持つわ。透魔王に操られたスメラギ王は、私達の手によって倒され、光へと還る事が出来たけれど」

アクア「残った闇が、最も近しい息子であるリョウマに憑りつき、彼を蝕んだ。その闇が……性癖暴露によって、表に出たの」

アクア「それを私の歌で、浄化したわ。もう手遅れだった暗夜王とは違い……リョウマは、間に合ったようね」

タクミ「……いや、でも! あのスメラギ父上に……一体、どんな闇があったと……!」

アクア「ん。……そうね、具体的に言うなら……つまり」



アクア「どこからともなく亡命してきた素性の知れないやたら胸の大きな女性を王城で匿ったかと思いきや、前妻がバリバリ存命にも関わらずいきなり正王妃に据え、後事の全てを素性の知れないままのその人に託しちゃった挙句、二回目の死に際には実の子供たちも見てる前で『私は彼女を本当に愛していた』とか言っちゃう」

アクア「そんな闇よ」

タクミ「ん~聞くんじゃなかった! 本物だよ、最大級の白夜の闇だよ! 表に出しちゃいけないヤツだよコレ!」

アクア「サクラが生まれたのがどのタイミングだったかによって、また闇深議論が白熱しそうなところね」

タクミ「もう止めよう!? この話に触れるのは! 下手したら白夜崩壊、待ったなしだよ!」

アクア「まあまあ。とにかくこれで、リョウマも大丈夫なはずよ。だから安心して……」

カムイ「あっ……リョウマ兄さんが、目を覚ましました!」

一同「!」

リョウマ「む、むう……? ここは……ん? カムイ……皆も、どうした? そんな心配そうな顔をして……」

タクミ「……りょ、リョウマ兄上、大丈夫? 僕らの顔、分かる?」

リョウマ「うむ? もちろんだ……が、記憶が少し飛んでるな。性癖暴露……云々の辺りから」

タクミ「……あ、あのさ、リョウマ兄さんに聞きたいんだけど」

タクミ「もしもカムイ姉さんが一人きりで、隙だらけで、簡単に攫われちゃいそうなのを見た時」

タクミ「リョウマ兄さんは……ど、どうする?」

リョウマ「? それは当然……カムイに注意喚起して、ぴたりと離れず護衛し、共に安全な場所まで移動するに決まっているだろう?」

タクミ「りょ……リョウマ兄さんだ! リョウマ兄さんが帰ってきたよ!」

リョウマ「俺は一体、どこに行ってたんだ? おい、タクミ……タクミ?」

カムイ「リョウマ兄さん……よ、よかったです~……」

リョウマ「むっ? カムイ……ふっ、どうした、そんなに気の抜けた顔をして」

リョウマ「綺麗な顔立ちが台無しだぞ。まあ……そういうお前の顔も、可愛らしいが」

カムイ「ふ、ふあっ!? リョウマ兄さんってば……な、何を言うんですか、もうっ!」

リョウマ「はっはっは。むくれたところで、愛くるしさに変わりはないな、はっはっは」

タクミ「……うん、見てるとちょっと腹立たしいけど……ちゃんと正気に戻ったみたいだ」

タクミ「一先ず、何とかなって……本当に、良かった――」

リョウマ「じゃ、改めて子作りするか、カムイ」

カムイ「ふえっ」

タクミ「おいまだ白いヒゲダルマ残ってるぞー! アクア姉さん、浄化して浄化ー!」

アクア「私は見れば何となくわかるんだけど、残念ながら、あれは素よ。純粋な性欲に、光も闇もないわ」

タクミ「じゃあアレがリョウマ兄上の正しい性癖かよ! あけっぴろげすぎだろ! 誘うにしても、少しはオブラードに包めよ!」

レオン「タクミ王子も、苦労するけど……まあこれで、なし崩し的に性癖暴露も済んだな」

レオン「……そういえばさっきまで、カムイ姉さんの初めてを……って騒いでたのに、いつの間にか、そんな雰囲気じゃないし……」

レオン「……まあ言い出したのは闇リョウマ王子だし、そんな話はしなくていいか。……それよりも、今は」

カムイ「りょ、リョウマ兄さん……近いですってば! だ、抱き寄せようとしないでくださいーっ!」

リョウマ「はっはっは、照れているのか。カムイは可愛いな……俺の宝物だ……」

マークス「ええいリョウマ王子、貴様! カムイに淫らな真似をするのは止せ!」

レオン「……あの直情性欲王子を止めるのが先決だ! カムイ姉さんを離しなよっ!」


 カムイとリョウマの支援レベルがSに上がった

タクミ「ふう……にしても、まさかリョウマ兄上に、あんな悪霊が憑りついてたとはね」

レオン「自分の実父を悪霊呼ばわりとは、タクミ王子もなかなかだね」

レオン「……まあうちも、よそ様の家の事は言えたものじゃないけど……」

レオン「……いや、よそ様の事を言えない、という意味じゃ……」チラッ

タクミ「……ああ」チラッ

マークス「む、どうしたレオン、タクミ王子も」

レオン・タクミ「………………」

レオン・タクミ(逆ハーレムのラストが、コレかぁ~……)

マークス「何やらとても失礼な視線を感じるぞ。なんなのだ、二人とも」

アクア「さて、マークス。……性癖暴露、最後はアナタだけど」

マークス「うむ? ……それは、その……どうしても、しなければならないのか?」

アクア「ええ、もちろん。皆もやってきた事だし、ちゃんと――」

レオン「ちょちょ……ちょっと待った! あのさ、アクア、もしかしてなんだけど……」

レオン「アクアが性癖暴露なんて妙な事を言い出したのって、リョウマ王子みたいに変なものに憑りつかれている人を探るためなんじゃ?」

レオン「それなら納得だし……それなら、マークス兄さんには聞かなくても――!」

アクア「? いえ……全然そんな事は考えてないわ。リョウマの中からヒゲダルマが見つかったのは、ただの偶然よ」

レオン「……ああ、そぉ……(一縷の望みが……)」

レオン「……い、いやでも、意味が無いなら尚更、暴露なんてする必要は――!」

マークス「待て、レオン。……これは逆ハーレムの皆が、やっている事なのだろう?」

マークス「ならば私だけがそれを逃れるなど、それこそ道理に合わんだろう。待ってくれているカムイに対しても、失礼だ」

カムイ「どきどき……マークス兄さんのセイヘキとは、何なのでしょう……?」

レオン「……い、いや、だけどさっ!」

マークス「ふっ……兄を庇おうとしてくれる、お前の気持ちは……嬉しく思うぞ。だが、もう何も言うな」

レオン(いや違うよ……違うんだって! マークス兄さんの暴露はヤバそうだから、止めたいんだって!)

レオン(だって最近は口を開けば『鎧が……邪魔だな?』しか言ってなかったんだよ!? 今は姉さんがいるから普通に喋ってるけど!)

レオン(そんな兄さんが暴露する性癖なんて……何が出るか、分かったものじゃない)

レオン(もしかしたら……暗夜の歴史に残る汚点になるかもしれないのに……!)

マークス「では、始めるか。……うむ、確かにこれは、恥ずかしいな……」

マークス「だが。暗夜の第一王子として、逃げる訳にはいかん!」

レオン(暗夜の第一王子だからこそ逃げてー!? 空気を読んでー!?)

アクア「ふふっ……頼もしいわね。じゃ、ちゃっちゃか暴露してもらいましょうか」

カムイ「わあっ、楽しみですっ。マークス兄さん、応援してますねっ」

マークス「ふっ……カムイに応援されれば、頑張らない訳にはいかんな。……ゆくぞっ!」

レオン(ああ、ダメだ……カムイ姉さんの、あのキラキラした期待の視線からは、僕だって逃げられない)

レオン(こうなったら……もう、意外にも光でありますように! 暗夜の闇じゃありませんように!)

レオン(――最悪、『けだもの』だけは勘弁してくださいっ!)

マークス「うむ。そうだな……まず、要点から言うとだな。私は、カムイに……」

マークス「鎧を、脱いで欲しいのだ」

一同「……………」

一同(やっぱり、『けだもの』だった……)ハァ~…

レオン(ダメっぽい……)ズーン

カムイ「鎧を……ですか? で、でも……鎧を脱いじゃったら、戦場で危険ですよ?」

マークス「うむ。……だからこそ、鎧を脱いで欲しいのだ」

レオン・タクミ「…………は?」

アクア「………ふーん?」

レオン「ちょっと、兄さん……どういう意味? 危険でも、いいってこと?」

タクミ「返事によっちゃ、ただじゃ済まないよ。僕の弓でハリネズミにしてやる」

アクア「剣一本で、放り出すっていうの? 追い剥ぎされた訳でもあるまいし……いくら何でも、許されないわよ」

マークス「いや。……剣も、持って欲しくない」

アクア「……なんですって?」

マークス「竜石も、魔道書もだ。槍だろうと、弓だろうと……持って欲しくない」

レオン「っ……兄さん! どういう事!? カムイ姉さんが敵に滅茶苦茶にされてほしいとでも言うの!?」

レオン「っ……何が性癖だ、最低だよ、そんなの! キョウダイの……いや、男の考える事じゃない!」

レオン「カムイ姉さんは……女の子なんだ! 守ってあげないとダメなのに、そんな――」

マークス「その通りだ、レオン。私は、カムイに……戦ってほしくなど、ないのだ」

レオン「…………」

レオン・タクミ・アクア「えっ?」

リョウマ(………ふむ)

マークス「私は幼い頃から、カムイを見てきた。あの北の城塞にいた、あの頃からだ」

マークス「小さなカムイは、可憐な花のようで……風に吹かれれば手折られそうなほどに儚かった」

マークス「争い事が嫌いで、皆が笑っているのが好きで、誰よりも優しい少女だった」

マークス「だが、そんなカムイも成長し、剣を取り、一人前の戦士となり……」

マークス「いつの間にか、私には考えられなかった道を選ぶほどに……大きくなった」

マークス「だが今、この軍の中心として、皆を束ね、最前線で戦うカムイは……」

マークス「誰よりも優しい少女だった、あのカムイとは、違うのか?」

マークス「いいや、違わない。何も、違わない」

マークス「カムイは、昔も今も、ずっと変わらないまま」

マークス「争い事が嫌いで、皆が笑っているのが好きで、誰よりも優しい」

マークス「――カムイの、ままなのだ」


マークス「誰よりも先頭に立ち、誰よりも勇敢に戦う……そんなカムイが」

マークス「戦いが起こるたびに胸を痛めている事を、私は知っている」

マークス「誰よりも優しいカムイが、戦いに出る為……鎧を身にまとうたび」

マークス「私は、胸が張り裂けそうになりながら……願う」

マークス「争い事など無い世で、陽だまりの下で、カムイが皆と笑い合えますように、と」

マークス「鎧ではなく、幼い日のように……可憐なドレスを、身に纏って」

マークス「私の隣で、ずっと……幸せに、笑ってくれますように、と」

マークス「だから私は、戦いが終わる日を夢見て……カムイに、こう言うのだ」

マークス「争いのない世の、お前の姿を想像しながら……私は、こう言うのだ」

マークス「……なあ、カムイ?」




マークス「鎧が、邪魔だな……?」



レオン・タクミ・アクア「………………」

マークス「カムイの力が、この軍には、まだ必要だろう」

マークス「カムイは、まだ……戦わなければ、ならないだろう」

マークス「だがいつか、そんな日が、来なくて済むように」

マークス「カムイが、二度と……邪魔な鎧など、着なくても済むように」

マークス「私は、強くなると決めたのだ」

マークス「カムイを一生守り抜き、幸せにする事こそが……私の望む、全て」

マークス「それこそが……私の、性癖だ」

レオン・タクミ・アクア「………………」



アクア「あの……けだもの要素は?」

マークス「けだもの? なんだそれ、ガンズとかか?」

アクア「………………」

アクア「し、信じられないわ。まさか、壊れた暗夜王症候群を患ってると思ってた、あのマークスが……」

アクア「『鎧が邪魔だな』の意味に……そんなイイ話じみたポエムを混ぜ込んでるなんて」

レオン「……ははっ、そっか……そうだったね。何でこんな事、忘れてたんだろう」

アクア「? れ、レオン?」

レオン「元々、マークス兄さんは……カムイ姉さんに、甘かったよ」

レオン「そのクセ不器用だから、黙々と剣の素振りをするだけの事もあったけど……」

レオン「北の城塞での最後の稽古の時、超手加減しまくってた上に、カムイ姉さんがちょっと怪我しただけで龍脈まで使って休ませたり」

アクア「何それ甘いどころかドロ甘じゃない。過保護にも程があるでしょ」

レオン「そんな兄さんだから、カムイ姉さんに対して欲情ばかり表に出すのは、良く考えればおかしいんだよ」

レオン「あれだけカムイ姉さんを大事にしてたんだから。……確かに過保護だけどね」

マークス「むう。……そんなに私は過保護か? これでも厳しくしているつもりだが……」

リョウマ「いいや、マークス王子……気持ちは良く分かるぞ」

マークス「! リョウマ王子……」

リョウマ「暗夜にカムイを攫われていた頃、俺もカムイを救うため、自らを鍛えていた」

リョウマ「先ほどマークス王子が、カムイの為に強くなると言っていたのと、同じにな」

マークス「……ふっ、そうか。どうやら弟達だけでなく、我々も似た者同士のようだな」

リョウマ「ああ、そうかもな。だが……どうやら俺達の姫君は、御不満らしいぞ?」

マークス「なに? それは一体、どういう……」

カムイ「マークス兄さん――剣を構えてくださいっ、えいっ!」竹刀アタック

マークス「か、カムイ!? ぬ……ぬおおっ!?」ワインボトル

マークス「きゅ、急に何を……何か怒っているのか、カムイ!?」

カムイ「……マークス兄さん、どうです? 私は、弱いですか?」

カムイ「ただ守られる事しかできない……弱い女ですか?」

マークス「え……?」

カムイ「マークス兄さん。私は確かに、争いは好みません。この戦いを終わらせるため、全力を尽くします」

カムイ「だけど……戦うたび、ただ傷ついて、嘆いてるだけと思われるのは、心外です」

カムイ「皆と一緒に……こんな私を信じて付いて来てくれた、仲間と共に戦える事が、私は嬉しいんです」

カムイ「そして……幼い日から、私に剣を教えてくれた……」

カムイ「マークス兄さんの隣で戦える事が、嬉しいんです」

マークス「! ……カムイっ……」

カムイ「戦いが終わって、皆と一緒に笑い合える日は、必ず来ます」

カムイ「けれど、私は守られるだけじゃ、イヤです」

カムイ「私だって、マークス兄さんを、守ってみせます」

カムイ「だから、幸せになるのなら……」

カムイ「一緒に、幸せになりましょう?」

マークス「……ああ、そうだな……」

マークス「カムイ、お前がいるのなら……私は必ず、そうなるだろう」

マークス「なぜなら、私はずっと、昔から……」

マークス「お前と一緒にいられる事が……幸せだったのだから」

カムイ「―――はいっ!」

マークス「カムイ……これからは、剣だけではない。もっと色々な事を、お前に教えよう」

マークス「逆ハーレムの一員とはいえ……男として、愛というものを教えよう」

カムイ「は、はいっ……でも、剣よりも難しそうです。だ、大丈夫でしょうか?」

マークス「ふ……当然だ。幼い頃からお前を見続けてきた、私自身が教えるのだぞ?」

カムイ「! そ、そうですよねっ……よろしくお願いしますね、マークス兄さん!」

マークス「ああ、無論だ。……なに、お前が案じる事はない」

マークス「私に任せておけば、大丈夫だ。お前に……全ての愛を、教えてみせよう」



マークス「マークスの指南槍(隠喩)で」

一同「イイ話で終わらせろっ!」


 カムイとマークスの支援レベルがSに上がった

アクア「……これで……」

アクア「これで、ついに……逆ハーレムが、完成したわね」

カムイ「は、はい。アクアさん……何だか大変だった割に、呆気ない気もしますけど」

カムイ「けど……これで皆が、真に手を取り合えるようになるんですよね……」

カムイ「これで皆が……キョウダイのように、仲良くなれるんですよねっ!」

カムイ「……あの、アクアさん?」

アクア「………………」

アクア「ふふっ」

アクア「ふふ……ふふふ……」

アクア「――ふふふっ!」

カムイ「あ、アクアさん? ……アクアさんがこんなに声を上げて笑うなんて、珍しいです……」

アクア「ふふふ……ああ、ごめんなさい、カムイ。ちょっと……嬉しくってね」

カムイ「えっ? 嬉しいって……あっ、もしかしてアクアさんも、皆が仲良くなれる事を喜んでくれてるんですかっ?」

アクア「ええ、そうね……ある意味、その通りよ。ふふっ……最高の結果よ、これは」

カムイ「わあっ。そうですよね! 皆で仲が良いのが、一番ですしっ」

アクア「ええ、そうね……それじゃ、最後の仕上げを手伝ってくれるかしら?」

アクア「さあ……カムイ……こっちに、おいでなさい……?」

カムイ「え? は、はい……アクアさんがそう言うなら――」

レオン「―――アクアから離れるんだ、カムイ姉さん!」

カムイ「へ? れ、レオンさん?」

アクア「! ……あら、どうしたの、レオン」

タクミ「動かないでよね。……少しでも妙な動きを見せたら、容赦なく撃つよ」

アクア「……あら、タクミまで……一体、どうしたのかしら、二人とも」

カムイ「! なっ……タクミさん、なぜアクアさんに矢を向けるんです!?」

カムイ「ダメですっ、弓を下ろしてくださいっ!」バッ

タクミ「どいてよ。……といっても、アクア姉さんを信じ切ってるカムイ姉さんの事だ」

レオン「納得できる理由が無いと、どいてくれない事は……分かってるよ」

カムイ「と、当然ですっ。一体なぜ、アクアさんに……」

レオン「――理由があるからだよ。それを今から、カムイ姉さんに教えてあげる」

アクア「……ふーん」

レオン「そもそも最初から、僕は……いや、タクミ王子も、アクアを怪しく思ってたんだ」

タクミ「ああ。そもそも白夜暗夜の混成軍で逆ハーレムなんて、滅茶苦茶だ……怪しく思わないほうが、どうかしてる」

レオン「だからこそ……僕達二人は協力する事にした。アクアの真の狙いを、探るために」

レオン「ほら……途中、僕達は一時的に別行動を取ったろ? あの時からさ」

タクミ「二人で調査し、考えるためにね。残念ながら……手がかりもなく、手探りの状況じゃ、決定的な証拠は掴めなかった……けど」

レオン「この逆ハーレムを完成させた時、何が起こるのか。一体、どんな利益を得られるのか……考えた末に、僕達は思い至った」

アクア「ふーん。……何が起こるのか、ね。なかなかいい所を突いてるわ……」

アクア「さすがね、二人とも。私の、真の目的が何か……本当に、分かっちゃったのかしら?」

タクミ「! ふふんっ……甘く見ないでよね、アクア姉さん」

レオン「アクア、キミのその答えが……そして逆ハーレムが完成した時の反応が、僕らの推測の信憑性を裏付けたよ」

 ~~探偵パート~~

タクミ「この軍は、暗夜と白夜の混成軍――しかし両国の第一王子と第二王子が所属しているという、異常な状態だ」

レオン「更に、各国の未来を担う王子全てが、軍の長であるカムイ姉さんに……自分で言うのもなんだけど、夢中になってる」

タクミ「いや、王子達だけじゃない。軍に所属する実力者揃いの男達、全てが……カムイ姉さんに首ったけだ」

レオン「そんな皆を、手中に収められれば……それはもはや、暗夜と白夜を手に入れたも同然」

レオン「その手段が……カムイ姉さんに男共を骨抜きにさせる、逆ハーレム。しかも……性癖暴露なんていう弱みを握った上で、ね」

タクミ「そう、この性癖暴露は迂闊だったね……怪しすぎたんだよ、これは」

タクミ「アサマが言ってた通り、逆ハーレム入りの敷居を上げるだけなのに……アクア姉さんは、頑なに強行した」

レオン「だからこそ僕達は、この結論に辿り着いたんだ。……そう、つまり!」

 ~~法廷パート~~
タクミ「カムイ姉さんの逆ハーレムとは、仮の姿――その実態は!」

レオン「暗夜と白夜、そして透魔まで――裏から手を引き実効支配する、隠れた国家共同体!」

タクミ「即ち、カムイ姉さんを傀儡とし、男共を利用して実現する――三国支配!」

レオン「それこそが――アクア、キミの狙いだっ!」

 ババァ――――z____ン!

レオン「」ドヤァ…
タクミ「」ドヤヤァ…

アクア「……」

アクア「………………」

アクア「…………………………………」





アクア「は………はい?」

レオン・タクミ「………あれっ?」

アクア「あの……二人とも、何を言ってるの、大丈夫? 三国支配? ??」

レオン「えっ、いや、あの……ち、違うのかい?」

タクミ「なんかもう、『これだ!』って感じだと……思ってたん、だけど……」

アクア「いえ、考えてもないわ。むしろこっちがビックリしてるくらいよ」

アクア「というか、何と言うか……まあ、ねえ」

アクア「……男の子って、そういう陰謀論とか憶測するの……好きよね」

レオン・タクミ「………………」

レオン・タクミ「~~~~~///」ボッ

リョウマ「……まあタクミは、思い込んだら止まらない所があるからな」

マークス「ああ、うちのレオンも……昔、外に出られなかったカムイを城から連れ出して、星を見せに行こうとした事もあってな」(暗夜編ドラマCDオススメ)

リョウマ「はっはっは、そちらもなかなか苦労している」

マークス「はっはっは、なに、お互い様だ」

レオン「やめろぉ! 生温かい目で見るなァ!」

タクミ「身内の苦労話で共感するなァ!」

弟ズが無事、盛大にスベったところで少休憩します~

カムイ「うーん、私も別に、アクアさんの事を疑ったりはしてませんでしたが……」

カムイ「レオンさんとタクミさんは、ちゃんとアクアさんに謝らなきゃダメですよ?」

カムイ「言いがかりになっちゃったんですから、謝らないと……お姉ちゃん許しませんっ」

タクミ「うっ! ……わ、わかってるよ!」

レオン「この上、恥の上塗りなんて恰好悪すぎるからね……え、えーと」

タクミ「アクア姉さん、その……ごめん。なんかレオン王子と調査してると、テンション上がっちゃってさ」

レオン「うん……なんかこう、使命感みたいなものに突き動かされて、歯止めが利かなくなっちゃって」

オーディン『わかりますよレオン様!』

レオン「けど、カムイ姉さんの言う通り……言いがかりだったのは事実だ。……本当にごめん、アクア」

アクア「いいわよ、別に。私は全然気にしてないわ」

タクミ「い、いや……それは、本当かい? 怒ってるなら、正直に言ってくれても……」

アクア「本当だってば。というか、気にしているように見える?」

レオン「う、うーん……全く見えないけど……無理してるんじゃ、って……」

アクア「だから、無理なんてしてないってば。大丈夫よ、このくらい」



アクア「メンタル強すぎて『アクアが真の黒幕なんじゃ?』と多くのプレイヤーから色んなルートで疑われた私にしてみれば、このくらい屁でもないわ」

タクミ「なんか良く分からないけど切ないな!」

レオン「まあ確かに、アクアのメンタルの強さは異常だけどさ……」

レオン「け、けどさ。じゃあ……さっき急に笑い出したのは、何だったの?」

アクア「だから言ったでしょ。嬉しかったんだってば」

タクミ「い、いや……まるで黒幕が正体を現す時のような笑い方だったけど」

アクア「失礼ね。私は基本、あの笑い方よ。まあ言葉足らずだったのは認めるけど」

レオン・タクミ(……そういう思わせぶりな所が、黒幕とか疑われるポイントじゃないかなぁ……)

レオン「じゃ、じゃあ……一体何が嬉しかったんだい? 思わず笑っちゃうほどにさ」

タクミ「逆ハーレムが完成したら、何かが起こる……って口ぶりだったけど」

レオン「カムイ姉さんを招きよせてたし……一体、何をしようと……?」

アクア「ああ」

アクア「…………」

アクア「えーと、それは……あー……」

タクミ「アクア姉さん? ……なんか、珍しく歯切れが悪いね?」

アクア「だから、その……私の目的、というか、やりたかった事、というか……」

アクア「結論から言っちゃうと、その……ね?」

レオン「ね? って言われても……はっきり言ってくれなきゃ、分からないよ」

アクア「う。……だから……っ、だ、だからあっ」

アクア「~~~~~~」



アクア「わ、私もカムイと、支援Sになりたいのっ!」

レオン・タクミ「………へっ?」

アクア「……なんかハッキリ言っちゃったら、落ち着いてきたわ。じゃ、説明するけど」

タクミ「やっぱメンタル強いな! ……そ、それで、うん、どういう事?」

アクア「……そもそも逆ハーレムなんて、無茶な話よ。倫理的に、道徳的に、とかじゃなく……出来ないのが当然なの」

レオン「それはまあ……普通なら皆、認めないだろうしね」

アクア「……まあ、分からない所は適当に聞き流して」

アクア「とにかく、それでも私達は、逆ハーレムを強行したわ。その結果、本来ならあり得なかった道が開き始めた」

アクア「具体的に言えば……ジョーカーとスズカゼの間の支援」

ジョーカー(……そういや、なんか不本意ながらコイツと息が合いだしたな)
スズカゼ(忠犬大決戦を御覧じた、あの時くらいですかね……)

アクア「そして……ギュンターよ。彼は本来、気兼ねしてか……カムイとは絆を繋ごうとはしなかった」

ギュンター(……その通りだ。何があろうと、と心に決めていたのに……私は……)

アクア「勘違いはしないでね。それを可能にしたのはカムイだし、カムイとギュンターの意思があってこその話よ」

アクア「けれど、おかげで……『世界の理(システム)』とでも言うのかしら、それを超える事が出来た」

オーディン<ホホウ!
ラズワルド<スワッテテ

アクア「そして私にとって、実は重要だったのは……ゼロ、あなたとカムイの支援よ」

ヒョッコリ
ゼロ「ん、俺ですか?」

アクア「ええ。仮にだけど……カムイが男の子の世界があるとして、同性にも拘わらず好意を抱いちゃったとしたら」

アクア「あなた、♂カムイと結ばれる事、出来るでしょう? 吝かじゃないんじゃない?」

ゼロ「うーん、実際なってみないと、何とも言えませんし、俺自身はこっちのカムイの事で身も心もイッパイですが」

ゼロ「……まあ可能性はありますね。何しろ俺ですし」

アクア「でしょ。だから……私がカムイと結ばれるため、必要だったのよ」

レオン「……せ、性癖暴露については?」

アクア「それは普通に、面白いかなと思って」

タクミ「動機ひっどいな!?」

アクア「冗談よ。何でもいいから、支援会話の代わりになるものが欲しくてね。……そんな訳なんだけど、理解できたかしら?」

レオン(……よくよく思い返せば、思い当たる節はいくつもあったんだ)

タクミ(最初から潜んでたサイゾウやスズカゼからも、調査の時に聞いてみたけど……)

アクア『押し倒したいドヤ顔ね。……じゃなく、話が早くて助かるわ』

アクア『私はカムイのために……カムイの事だけを想って、行動してるの。そこに嘘偽りは、微塵も無いわ』

アクア『わかるわ』 レオン『わかるの!?』

アクア『ふふ……さすがはカムイね、いい踊りだったわ。思わず私も歌いたくなるくらい』

アクア『……カムイは私が守護らねば……』

アクア『……ふふっ、もちろんよ。あなたのためなら、私は何でも出来るわ』

アクア『ふふっ。……そうね、あなたはさすがだわ……』

レオン「あれって、全部……」
タクミ「……そういう事、だったんだね」

アクア「そもそもね」

アクア「私とカムイに支援Sが無い事が、おかしいじゃない」

アクア「『同性婚あるで』と知った時、『あ、私の事だな』と確信を持ったわ」

アクア「しかし蓋を開けてみると、全ルートで内容の違いはあれど、A止まり」

アクア「カムイのために、カムイを支え、『こいつ黒幕じゃね?』と疑われても挫けなかった私が」

アクア「カムイと支援Sできないなんて、おかしいじゃない!」

アクア「私だって、私だって……」

アクア「♀カムイとイチャイチャする権利はあるはずでしょうっ!?」

レオン「アクアの心からの叫びが怖い!」
タクミ「こんなに感情を表に出すとか、珍しすぎるんだけど……」

カムイ「……アクアさん」

アクア「か、カムイ。……ごめんなさい、その……いきなりこんな」

カムイ「はい。すっごく驚いちゃいました、まさか女の子同士で、そんな……」

アクア「う。……そ、そうよね……気持ち悪かったら、ごめんなさい」

アクア「あなたがイヤなら、もちろん私は身を引くから、気にしないで――」

カムイ「いいえ。驚きはしましたけど……気持ち悪いなんて、思ってません」

アクア「! か……カムイ」

カムイ「私のために頑張ってくれて、皆が手を取り合える道を示してくれて……」

カムイ「私なんかの事を好きになってくれる、そんなアクアさんを……嫌いになんて、なれません」

カムイ「だから……こんな私で良かったら、これからも……よろしくお願いしますっ」

アクア「カムイ……そんなの、当たり前でしょ……」

アクア「鑑映しのような運命を持つ、私達だからこそ……」

アクア「ずっと……一緒よ……」


アクア「というわけで、暫し茶番の続きにお付き合い頂くわ」

レオン・タクミ「一体何が始まるというんだい!?」

 ――――――
カムイ「うーん、アクアさん、いつもの泉にいけば会えるでしょうか……ん?」
 ~♪ ~~♪♪

カムイ「あ、この歌声は……アクアさん! おーい、アクアさーんっ」

アクア「! カムイ……びっくりしたわ。今日も国の事について話をしにきたの?」

カムイ「あ、えーと、今日は何だか寝付けなくて……国の事じゃなくても、アクアさんとお喋りできたらな、と……」

カムイ「あっ、そうです! アクアさん、私に子守唄を歌ってくれませんか?」

アクア「……子守唄を?」

カムイ「はいっ。母から子へと、するように……そういう記憶は、私にはおぼろげにしかありませんから」

カムイ「こ、子供っぽくて、恥ずかしいですけどね。……ダメですか?」

アクア「……ふふっ、そんな事はないわ。いいわ、子守唄ね……母から子へ、するように」

アクア「それじゃあ。………………」

カムイ「……アクアさん?」

アクア「……ごめんなさい、それは……出来ないわ……」

カムイ「えっ? あ、アクアさん?」

アクア「母から子へとするようには、できない……私はあなたに、そういう風に歌えない」

カムイ「え、ええっ!? 何か私、アクアさんの気に障るような事でも……」

カムイ「もしかして、歌の邪魔をしちゃったから……いえ、行き当たりばったりの采配に怒って……」

カムイ「ううっ、思い当たる節が多すぎます。アクアさん、ごめんなさいっ!」

アクア「違うわ……違うの。そうじゃないの……だって、私は……私は」

アクア「カムイ、あなたの事を……愛してしまったんだもの……」

カムイ「えっ。……え、ええーっ!? あ、アクアさん!?」

アクア「……ごめんなさい、気持ち悪かったわよね。金輪際、こんな事は言わないわ」

アクア「もう、あなたには近づかない。迷惑はかけないから、せめてこの戦いが終わるまでは……」

カムイ「ちょちょ、ちょっと待ってください! 勝手に話を進めないでください!」

カムイ「確かに、その……驚いちゃいましたけど。……けど、イヤでは……ないです」

アクア「え……か、カムイ?」

カムイ「……私も、アクアさんと同じ気持ちです。言われてから気付くなんて、情けないですけど」

カムイ「私も……アクアさんの事を、愛しちゃってたんだと思います」

アクア「……カムイ……!」

カムイ「話をしたいとか、歌を聴かせてほしいとか言って、私は結局、アクアさんの隣にいたかっただけなんです」

カムイ「そして、アクアさんの事が大切で……アクアさんを、守りたいんです」

アクア「カムイ……私だって、そうよ。私達は鏡に映したような二人だからこそ、巡り会えた」

アクア「だからこそ……たとえ世界が敵に回っても、二人の絆は永遠だと、信じているわ」

カムイ「はい、アクアさん。私はどんな事があっても、あなたから離れません」

カムイ「世界を敵に回しても……アクアさんを、守ってみせると」

アクア「ありがとう……カムイ」

カムイ「今ここで、誓います。アクアさん……私達は、ずっと一緒です」

 私はずっと……あなたのことが、好きだった……
 この世界なら、私たちきっと幸せになれる
 もう二度と……離さないで……

 ――――――

 カム………クアの ………………に…………

 カムイとアク ………………………上がった

 カムイとアクアの支援レベルが …………… 



 カムイとアクアの支援レベルがSに上がった!

本来の百合婚可能な相手が草葉の陰で泣いてやいませんかね?

>>379
シャラ「くっ」

アクア「――とっても満足よ」ツヤツヤ

タクミ「でしょうね!」

レオン「好き放題してくれちゃってさ!」

アクア「はあ~……ようやく目的を完遂できたわ。これで全てが上手くいきそうね」

タクミ「? まあ……カムイ姉さんを好きな気持ちは分かるし、文句は言わないけどさ」

レオン「逆ハーレム……と言っていいのか分からないけど、まあアクアもその中の一人として、対等に――」

アクア「……はい? 何を言っているのかしら」

レオン・タクミ「……えっ?」

アクア「そもそもね、カムイを巡って軍内の雰囲気を悪くしたり、カムイの初めてが誰かで揉めたり」

アクア「これまで暴露してきた性癖についても、中には目も当てられない闇があったわ」

アクア「逆ハーレムの外にいれば、私に何か言う権利はないでしょうけど」

アクア「逆ハーレムの一員になれば、私にも発言権はあるはずよ」

アクア「言いたい事、わかるかしら?」

アクア「私はカムイのために、カムイのためだけを想い、カムイのために行動する」

アクア「つまり」

アクア「私が逆ハーレムの内側から、暴走しがちなあなた達を止める――抑止力になるのよ」

レオン「なっ……そ、それじゃあ何だか、アクアだけ特別じゃないか!」

タクミ「ず、ずるいぞ!? そんなの贔屓だ、贔屓っ!」

アクア「私が男性なら、確かに贔屓でしょうね。でも、私はこれでも女よ」

アクア「同じ女性としての目線だからこそ、カムイの心身を思いやり、客観的にあなた達の無茶を止められるわ」

レオン「うっ、そ、それは……いやでも! アクアの性癖はどうなんだい!?」

タクミ「そ、そうだ! アクア姉さんの性癖が闇まっしぐらなら、抑止力どころじゃ……」

アクア「性癖? ……はあ、あなた達、今さら何言ってるの?」



アクア「カムイと結ばれるためだけに男共全員を落として逆ハーレムなんて完遂するとか、その時点でお察しでしょ」

レオン・タクミ「そ、それは確かにー!」ガビーン

アクア「それに……カムイ」顎クイッ

カムイ「ふえ。……ああ、アクアさん、一体何を!?」

アクア「逆ハーレムで……いえ、この軍の中で……一番頼りになって、男前なのは……誰かしら……?」耳元ササヤキー

アクア「声を聴かせて……?」必殺発動

カムイ「ふええ……アクアさんですぅ……」ガクガクビクンッ

アクア「……という訳よ」

レオン「何者だよアンタは! カムイ姉さんが腰砕けなんだけど!?」

アクア「ま、とにかく……私がいる限り、カムイに無理はさせないわ」

アクア「和やかに話すくらいなら自由だけど……デートは予約制、マイルームナデナデは順番を守る事」

アクア「もちろん性交渉は常識の範疇で、カムイに決して無理させない事。それと他には――」

リョウマ「――待てい!」

マークス「――いくら何でも横暴が過ぎるぞ!」

アクア「! あら……」

マークス「カムイの体を案じ、無理をさせまいとするのは正しい……が、何から何までがんじがらめにしすぎだ!」

リョウマ「そうだ! というかぶっちゃけると、アクアは四六時中カムイと一緒っぽくて羨ましい!」

マークス「ぶっちゃけるなリョウマ王子! ……だが、デートとか、もっとこう……条件緩くてもよかろう!?」

リョウマ「……子作りも」 マークス「子作りは置いといて!」

リョウマ「……とにかく、アクアよ、その我を通したければ……」

マークス・リョウマ「この壁を、超えて行け!」

アクア「……ふーん」

暗夜第一王子マークス 兵種・パラディン Lv20
持ち物・ジークフリード(守備+4) ワインボトル+2
力と守備に優れ、次いで技も高い

マークス「逃がしはせん」



白夜第一王子リョウマ 兵種・剣聖 Lv20
武器・雷神刀(力+4) 大根+2
技と速さに優れ、力にも定評がある

リョウマ「立ち向かえ!」


カムイ「た、大変です、アクアさん! 兄さん達の気迫は、本気です!」

アクア「ええ。まさか最後の最後に、こんな壁が出てくるなんてね……」

カムイ「ど、どうしましょう……私は一体、どうすればっ……」

アクア「……………」

アクア「とりあえず、二人ともぶん殴って黙らせましょうか」スチャッ

マークス・リョウマ「えっ」

カムイ「さすがです、アクアさん!」スチャッ

マークス・リョウマ「えっ」

アクア 兵種・歌姫 Lv60
持ち物・守りの薙刀+3 松の木+7 神雷の薙刀+5 訪問王の紋章 アクアの秘薬
全パラメーターほぼ緑(MAX) クレイジーカムイレズ

アクア「DLCで鍛えといて良かったわね」



カムイ 兵種・ダークブラッド Lv80
持ち物・サンダーソード+7 夜刀神・終夜 真竜石 戦闘王の紋章 逆神・丑寅+6
全パラメーター緑(MAX) 軍の中で一番、恋人が多い

カムイ「逃げたりしません!」



マークス・リョウマ「……………」

マークス・リョウマ「……………………」

マークス・リョウマ「えっ」

マークス「……いや、うむ……その、ちょっと……れ、レオン!」

リョウマ「た、タクミ! お前達も……えっ」

レオン『大変だタクミ王子。兄さん達と距離が離れすぎていて、すぐに助けに行けないよ』

タクミ『困ったね。どんなに急いでも、5ターンはかかりそうだね』

マークス「いつの間にあんな遠くに!?」

リョウマ「こ、この薄情者……あっ」

カムイ・アクア「…………」

マークス・リョウマ「…………」

カムイ・アクア「………ニッコリ」

マークス・リョウマ「……ニコォ……」



<アアアアアアアアアアアア!!

アクア「こうして至極平和に物事は解決し、カムイを中心とする逆ハーレムは完成したわ」

アクア「暗夜と白夜は手を取り合い、皆が平等にカムイを愛し、カムイも皆を平等に愛す」

アクア「ある意味、恐ろしく固い絆で結ばれた私達は、とうとうハイドラに戦いを挑み」

アクア「そして……」

~~~~~~
ハイドラ『怖いか人間よ! おのれの非力を嘆くがいい!』

カムイ『えーいっ!』
アクア『ゆらりゆるれりー』

ハイドラ『えっちょなにこの子たち強すぎ……ギャァァァァ』

謎のフードの男(カムイ……我が娘よ、立派になって……!)ショウメツー
~~~~~~

アクア「瞬殺だったわ」

カムイ「やりましたっ、やりましたよ、皆さん!」ピョンピョンッ

マークス「ああ、やったなカムイ! 私達は何もやってないが!」

リョウマ「ふっ、大変な戦いだったな……俺達は何もやってないが」

アクア「これで平和になるのね。……まあ、逆ハーレムは続いていくんでしょうけど」

レオン「当然でしょ。もうこうなったら、何と言われようとカムイ姉さんから離れないよ」

タクミ「僕達は、もう……カムイ姉さん無しじゃ、生きていけない気がするよ」

アクア「そうね。……そうなると、白夜と暗夜、透魔を……どう治めるか、だけど」

アクア「……………」

アクア「レオン、タクミ。あなた達の勘違い陰謀論……意外とアリだったわね?」

レオン・タクミ「へ?」

アクア「暗夜と白夜の中間地に誕生した、女王カムイの治める『新生透魔王国』」

アクア「暗夜と白夜の王子達から協力を得て、カムイに傾倒する男達の手腕によって支えられる、この国は」

アクア「『女王カムイ様の愉快な逆ハーレム王国』と呼ばれる事もあるそうよ」

アクア「………………」

アクア「不本意ね」

アクア「でもまあ、倫理的には問題あれど、世界は順調に平和への道を歩んでいく」

アクア「そして」

「―――逆ハーレムの皆は―――」

 ~~~エピローグ~~~

 ゼロ
『誇張性癖』
 ゼロはレオン直属の部下として王国の発展に力を尽くし、
 王国の影の一面を支え続けた。
 しかし、隙あらば女王カムイの下に顔を出し、言葉責めをしたという。

ゼロ「よう、カムイ。相変わらず幸せな顔だな……その顔がイヤらしく歪むのを想像するだけで、イッちまいそうになるぜ……」

カムイ「あっ、ゼロさん。えーっと……ゼロさんこそ、いつも通りイヤらしい視線ですね。その濡れたお目目で私を見つめて、一体どんな想像をなさっているのでしょう?」

ゼロ「……ありがとな、カムイ……」

カムイ「いえいえ、良く分かりませんけど……どういたしましてですっ♪」

 オーディン
『ピュアに封印されし者』
 レオンの直属として仕事をこなしつつ、片手間に書を執筆した。
 いくつかの書がなぜか市場に出回り困惑するも、一部の国民に好評だった。
 ただし中には未公表の、女王に献上するためだけの書もあったという。

オーディン「カムイ、完成したぞ! 『俺の魔剣ミステルトィンが威力8のわけがない』が!」

カムイ「わあっ! 本当ですかっ、読ませてくださいっ!」フンスフンス

オーディン(……これで、俺がいつか帰るべき時が来ても……俺のいた証が、お前の傍に残る)

オーディン(俺は……それで幸せだ。……だけど、今だけは)

カムイ「うう~……剣士さんとお姫さま、幸せになってよかったです……うう~」

オーディン(……この幸せを、我が宿業の姫君と共に、享受しよう!)

オーディン「はっはっは! その書の良さが分かるとは、さすが瞳を持ちし我が伴侶――カムイよ!」

 ツバキ
『微成長主義』
 戦闘はからっきしだったが、内政・外交方面で優秀さを発揮する。
 一度他国に外交に赴いた際、贈答用の鏡を何となく頭上に掲げてみたところ、
 宝を己の頭に叩き付けるつもりと勘違いされ、「完璧の使者」と持て囃される。
 その結果、それを伝え聞いた女王カムイに、一週間ほど無視されたらしい。

ツバキ「よーし、今日も完璧に、内政のお仕事だー! えーと――」

 ドアガチャッ
カムイ「ツバキさん……今、完璧と聞こえたような気がしましたが……?」

ツバキ「きっききき気のせいだよ!? 僕は全く完璧じゃないから、ねっ!?」

カムイ「……そうですかっ♪ ふう、安心しましたー……それでは、またっ」
 ドアバタン

ツバキ(……あ、危ない危ない、もうカムイの機嫌を損ねるのは真っ平だよー……)

ツバキ(仕事だけはちゃんとするけど……完璧じゃない俺を、カムイママに慰めてもらうんだからねー!)

 ちなみにバブみ趣味が矯正される事は、生涯なかったという。

 ヒナタ
『破天荒な野外露出』
 戦後もタクミに仕え、主に治安維持のための戦闘部隊を指揮する。
 多くの賊や怪物を討伐し、彼らに「オウヨ!」をトラウマとして刻み付けた。
 身分の違いなど気にせず、夫の一人として、女王カムイを鍛錬に誘う事もあるらしい。

ヒナタ「おっ、カムイ! 今日は時間ありそうだな、一緒に外で鍛錬するか!?」

カムイ「わあっ、いいですね! 久し振りに、思いっきり体を動かしたいですっ!」

ヒナタ「おし、決まりだな! じゃあ……汚れてもボロボロになってもいい服を着てくるんだ。俺も褌を洗っとくからな。カムイも下着を……ああ別になくてもいっか、あと――」

アクア「カムイへの性交渉は私の書類審査をお通しください」松の木ドゴォッ

ヒナタ「オプティックブラストゥッ」

カムイ「きゃーっ!? ヒナタさんの目が、一瞬飛び出したような……しっかりしてくださいー!?」

 ハロルド
『不運だったアメリカンヒーロー』
 主君エリーゼから「不運にも」御暇を言い渡され、感謝して女王カムイに仕える。
 相変わらずの人助けに勤しむ日々が、女王カムイの名声を高めたとか。
 今日も今日とて、人助けに奔走する。

ノスフェラトゥ「WrrrrrrHaaaaa……!」

ハロルド「くっ……平和になった世に、まだこのような強力なノスフェラトゥが残っていたとは……こ、このままではっ……!」

?『ハロルドさん、下がってくださいっ!』

ハロルド「な……あ、アナタは、まさか!?」

?「そう、私こそが謎のヒーロー……ヤトノカムイ!」

ヤトノカムイ「悪を成敗します! えいっ、竜穿……じゃなくドラゴンスティンガー!」

ノスフェラトゥ「ほらー(´‐ω‐`)」

ハロルド「た、助かったぞ、ヤトノカムイ! しかし、キミは一体……?」

ヤトノカムイ「ふっ、名乗るほどではありません……それでは、さらば! ですっ!」

ハロルド「ああっ、ヤトノカムイ! 一体、何者なんだ……」

ハロルド「……しかしどこかで会った気がするような。うーむ?」

 ラズワルド
『お茶する笑顔』
 女王カムイに仕え、踊りによって皆を元気にした。
「再行動できない」とか「上昇量ささやかッスね」などと陰口を叩かれるが、
 努力して神軍師になって七色の叫びを習得し、確固たる個性を樹立した。
 カムイをお茶に誘う事が、最大の楽しみ。

ラズワルド(僕もオーディンも、いつかきっと、元の世界に帰るか選択を迫られる)

ラズワルド(その日が来るのが、怖い。このまま時が止まってしまえばと思うくらい)

ラズワルド(……けど、それでも、今だけは)

カムイ「ラズワルドさん……楽しいですね、ふふっ♪」

ラズワルド「……うん、そうだねっ!」

ラズワルド(大好きなこの人と、共に歩く時間を……噛みしめよう)

 アサマ
『褒め殺しした僧』
 各地を巡り、王家の目の届きにくい地方を中心に活動し、人々を癒す。
 物事に執着しない性格のはずだが、割と頻繁に透魔王国には通っていた。
 女王カムイに説教している様子が良く見かけられ、事情を知らない者は肝を冷やした。

アサマ「全く……元々が女神同然の方が女王にまでなって、一体何になろうとしてるんですかね」

アサマ「輝かしい魅力を振りまくのも結構ですが、少しは自重しなければ、国民に男共ばかり増えて傾国しかねませんよ」

カムイ「は、はううっ……! 相変わらずアサマさんには、怒られてばかりですっ……」

カムイ「ごめんなさいっ! せめてアサマさんに愛想を尽かされないよう、精進しますー!」

アサマ「……やれやれ、あなたは本当に、相変わらずのお馬鹿さんですねぇ……」

アサマ「私のこの言葉が、捻れた私の、精一杯の愛情表現だということに」

アサマ「一体いつになったら気付くんでしょうねぇ……?」

 サイゾウ
『ポエム日記使い』
 裏で不当に利益を得る商人などを成敗し、「悪代官殺し」として勇名を馳せた。
 サイゾウの活躍を題材とした物語は、演劇として大人気となる。
 しかし当の本人は自分の本業を「女王カムイの監視」と言い張った。
 だが最近では、カムイと向かい合って何か練習しているようである。

サイゾウ「っ……い……いくぞ、カムイ!」

カムイ「は、はいっ……どどどうぞっ!?」

サイゾウ「……ぅ、お……お、お前は……いや、か、か……」

サイゾウ「カムイは、今日も……美しい、な……?」

カムイ「……ありがと、ござい、ます/////」顔マッカ

サイゾウ「……こ、こちらこそ、だろうが……」上半分顔マッカ

 ブノワ
『強面のクマさん騎士』
 女王カムイの直属護衛兵として、生涯を賭して彼女を守り続ける。
 初めの頃は恐れられていたブノワだが、その意外な可愛らしさは徐々に有名になった。
 しかし、そんな彼を独占できるのは、女王カムイだけである。

カムイ「わーいっ、ブノワさーん! 抱きしめさせてくださーいっ!」ダキツッキー

ブノワ「ぐぉっ。……どうだ、カムイ……満足か?」

カムイ「うーん、まだまだですねー。もっと抱きしめないと、足りませんー」スリスリ

ブノワ「そうか。…………」

 ブノワからギュッ

カムイ「あっ。……えへへ、あったかいですねぇ」

ブノワ「………………」

ブノワ「ああ……幸せだ、な……」

 ツクヨミ
『ショタ顔○○師』
 かねてからの念願だったはずの、世界を巡る旅に出たような気がした。
 しかし何かと理由をつけては頻繁に透魔王国を訪れ、女王カムイに会っていく。
 その手に、パラレルプルフを握りしめて……。

ツクヨミさん(修羅)「This way……(こっちだ)」

カムイ「…………」

ツクヨミさん「Follow me……(ついてこい)」

カムイ「…………………」

カムイ「折れたりしませんが、いつものツクヨミさんに戻って頂いて良いですか?」パラレルプルフをスッ

ツクヨミさん「あっはい」トゥートゥートゥトゥトゥートゥー♪

カムイ「ツクヨミさん! お久しぶりですっ、元気にしてましたかっ?」ガバッチョ

ツクヨミ(陰陽師)「わわっ、抱き着くなカムイ! 胸が顔に当たる~!」

 フランネル
『人狼のペット』
 激戦の末、たったの二枠しか存在しない地位を勝ち取る。
 そう、女王カムイのペットの座である。
 カムイの外出時には護衛として付き従い、王宮では外敵の侵入を許さなかった。

賊『ひいいっ……か、勘弁してくれーっ!』ダッ

フランネル「カムイを襲おうなんて、ふてぇ奴らだ! 一昨日きやがれっ!」ガルル

兵(ひっ……味方ながら、怖いなぁ……)

カムイ「フランネルさん! ありがとうございますっ!」

カムイ「よしよしっ、イイコですねー♪ よしよしよーし」ナデナデナデナデェ

フランネル「お、おお、っふ……わ、わふぅ……ワフーン!」尻尾ブンブン

兵(……大型犬?)

 ニシキ
『妖狐のモフモフ』
 激戦の末、たったの二枠しか存在しない地位を勝ち取る。
 案の定、女王カムイのペットの座である。
 基本的には王宮で気ままに生活し、癒しを求めるカムイにモフられる日々。

ニシキ(カムイの部屋に呼び出されたかと思いきや……はあ)

カムイ「はぁ~……モフモフです、モフモフですっ。尻尾、もふぅ……♪」トローン

ニシキ(いきなり抱き着かれ、身動きできないまま、モフられて……)

カムイ「ニシキさんの毛触りは、いつも最高ですねぇ……ん~♪」

ニシキ(尻尾を、耳を……時には獣化して、全身を……好き放題にされて)

ニシキ(はあ……こんな、こんな日々……)

ニシキ(………………)

ニシキ(幸せすぎてヤバイよぉ~……)トロトローン

外<キャーイキナリ、カミナリガ!?
外<ダレカ、トローンツカッテナイ!?

 アシュラ
『髪の色分けがかなり不思議』
 透魔女王カムイの厚意により、コウガ公国を再建する。
 公王となったが、透魔王国への外交使者が必要な際は、必ず公王自ら赴いた。
 透魔女王とコウガ公王が二人きりになった部屋を覗けば、
 決して見てはいけないものを見る事になるだろう。

アシュラ「あの、カムイ様……足、気持ち悪かったりしませんか?」

カムイ「……いえ、全然……むしろ不思議なほど馴染んで、快適です……」

アシュラ「そ、そうですか、その……毎回毎回、ありがとうございます……」

アシュラ「踏んでいただいて……」○TL

アシュラ「でも俺、こうしてると、なんか凄く満ち足りて……」

アシュラ「殺されてもいいって気持ちと、ああ俺は今生きてるんだなって気持ちが」

アシュラ「二律背反のはずなのに、不思議なほど実感できて……へへっ」

カムイ「……ええ、私もアシュラさんを踏んでると……移動力が1つ上がりそうな」

カムイ「………………」

カムイ「本当にごめんなさい……」ポロポロ

アシュラ「か、カムイ様!? そんな、なんで泣くんですカムイ様ー!?」

 フウガ
『風のチラリズム』
 風の部族の族長としての日々に戻る。以降は村から出る事はないと思っていたら、
 なぜかしょっちゅう外交の名目で透魔王国に通っている。
 理由は謎だが、カムイ女王との謁見は屋外を希望し、女王がスカートでない時はあからさまにガッカリしていた。
 そしてこれも理由は謎だが、彼が透魔に訪れる事を、男の国民は大歓迎している。

カムイ「う~ん、今回もフウガ様はお外で会いたいとの事ですが……」

カムイ「国民の皆さんも不思議と集まっていますね……なぜか男性の比率が多いですが」

フウガ「……おーい、カムイよ。元気だったか? はっはっは……」

カムイ「あっ、フウガ様がいらっしゃいましたね。はーい――」

フウガ「風よおォォォォォォ! 巻き起これィエアァァッァ!!」ビュゴォォォ

カムイ「えっ……きゃ、きゃーっ!?」スカートオサエー

民草『ウオオオオオオオオオオ!!!』

カムイ「も、もうっ! フウガ様ってば、何をするのですっ!」

フウガ「はっはっは、風の部族なもので、風を吹かさずにはおれず。すまん」鼻血ボトー

カムイ「そうでしたか……風の部族なら仕方ないですね……」

アクア「何か言い遺す事は?」フウガの後頭部ガシッ

フウガ「風はいつもそこにある……私は何度でも、舞い戻って来るさ……」

フウガ<ヌワァァァァァァ

 ・・・・・・・・・・・

ギュンター「………………」

カムイ『えーと、この書類は……ジョーカーさーん。……うう、いないみたいです』

ギュンター(……カムイ様は、大きく、強くなられた……立派になられた)

ギュンター(いつまでも変わらず、優しい心のままで……罪深い私を、許してくれた)

ギュンター(もはやこれ以上、望む事などあろうか)

ギュンター(いいや……これ以上は、贅沢すぎる……何も、あろうはずがない)

ギュンター「……さらばです、カムイ様」クルリ

ジョーカー「待ちやがれ、ジジイ」

スズカゼ「どこへ行かれるおつもりですか?」

ギュンター「! ジョーカー、スズカゼ……」

サイラス「すみませんが、ここを通す訳にはいきませんよ。……カムイが悲しむので」

ギュンター「サイラス……お前まで」

ジョーカー「……チッ。おいジジイ、俺が一人前になるまで死にきれんと言っときながら」

ジョーカー「くたばっちまう前に、さっさとどっか消えちまう気かよ」

ジョーカー「そんな無責任な奴になれと、教わった覚えはねえぞ」

ジョーカー「アンタは、まだまだ俺に……指導する事があるんだろうが」

ギュンター「……ジョーカー、お前……」

スズカゼ「ほう、そんな指導があるとは……どうやら私も、御教授いただく必要があるようですね」

スズカゼ「ギュンターさん。……まだまだ引退されては、困りますよ」

ギュンター「……スズカゼ」

サイラス「俺もカムイを守る騎士として、ギュンターさんからは学ばなきゃいけない事が沢山ありますから」

サイラス「いや最近、武術だけじゃカムイを満足させられなそうで……ご指導ご鞭撻、お願いします!」

ギュンター「……そうか……そう、だな」

ギュンター(これ以上は、贅沢がすぎるだろう)

ギュンター(しかし、こんな私を許してくれたカムイ様が)

ギュンター(こんな私が、いなくなる事で……悲しまれるというのなら)

ギュンター(………………)

ギュンター「よかろう。確かにお前達は、まだまだ未熟」

ギュンター「カムイ様の直属として、どこへ出しても恥ずかしくないよう」

ギュンター「全力で……厳しく指導してやるから、覚悟を決めておけ!」

スズカゼ「はい。……よろしくお願いします、ギュンターさん」

サイラス「カムイのためなら、いくらでも!」

ジョーカー「はあ、またジジイの指導かよ……お前ら、呑気してる場合じゃねえぞ……」

ギュンター(もう少しだけ……もう少しだけで、いい)

ギュンター(カムイ様のお傍に、いても……よろしいですかな……?)

 ギュンター
『指導騎士』
 戦後、表に立つ事はなくなるが、後進の育成に余念がなかった。
 地獄のように厳しい指導に、「まさかこれほどとは」と前髪の寝癖がひどい騎士が、「崖から落ちそうなほうが幾分か楽」と忠犬忍者が多少後悔するも、手加減は全くしなかった。
 それから、多くの若者たちを指導し続け、
 終生、女王カムイのために仕え続けた。

カムイ「あっ……ギュンターさん、ギュンターさーん!」

ギュンター「おや……カムイ様、いかがなさいましたかな?」

カムイ「業務にちょっと手こずってしまいまして……ちょ、ちょっとだけですよ?」

カムイ「ジョーカーさんやスズカゼさん、いつも近くにいるはずなのに、今日に限っていなくって……」

カムイ「もうもうっ、どうしたらいいのでしょうか~っ!」

ギュンター「ふむ、あれらは今、裏で気絶……いえ、熟睡中」

ギュンター「主君を放って眠りこけるなど、直属従者の風上にも置けませんが」

ギュンター「今回だけは、私が尻拭いをしてやるとしますかな……お手伝いしますぞ、カムイ様」

カムイ「えっ、本当ですか!? 頼りになります!」

カムイ「ギュンターさん……ありがとうございますっ!」

ギュンター「ええ、カムイ様、もちろんです」

ギュンター「あなたの笑顔のためならば……いくらでも」

 ジョーカー
『忠実ではある執事』
 戦後も変わらず女王カムイに仕え続け、ますます忠実になったという。
 持てる全ての力をカムイのために捧げ続け、生活から職務に至るまで、全てを支えた。
 もちろん、衣類の洗濯も含めてである。

ジョーカー「カムイ様……お茶が入りました、休憩しましょう」

カムイ「あう……す、すいません、今日はお仕事が多くて、休憩している暇は……」

ジョーカー「ふっ……ご安心を、控えている仕事は全て、僭越ながらこのジョーカーめが片付けさせて頂きました」

ジョーカー「カムイ様が今なされている仕事が済めば、今日の政務は終わりです」

カムイ「わ、わあっ、本当ですか!? ……まだお昼前なのに、いいんでしょうか……」

カムイ「って、あ。……お、お茶の前に、ちょっと行ってきていいですか?」

カムイ「我慢してて、その……お、お花摘みに……」

ジョーカー「……ふふっ、カムイ様……それも、ご安心ください」

ゴロンッ

カムイ「……あ、あの、ジョーカーさん? なぜ床に倒れられて……」

ジョーカー「さあっ……いつでもどうぞっっっ!!」

アクア「油断も隙もない」松の木グシャッ

ジョーカー「オボッ」

カムイ「じょ、ジョーカーさーん!」

 スズカゼ
『忠犬の忍』
 戦いの後の記録はあまり残っていない。残せなかったという説もある。
 女王カムイの直属として仕えた事は間違いない。
 同僚のジョーカーと、どちらがよりカムイに相応しいか、度々何かで張り合っている。

スズカゼ(カムイ様……私はあなたに命を拾われ、心を救われました……)

スズカゼ(今では、あなたの笑顔を見る事が、私にとって無上の喜びです)

カムイ「……さあ、いきますよ、スズカゼさんっ……」

スズカゼ(ゆえに……そんなあなたのため、私は、私はっ……!)

カムイ「お手! おかわり! 伏せ! ジャンプ!」

スズカゼ「ウォン! ワッフゥ! イェア!」シュン、シャン、ゴロン

スズカゼ「―――セイヤァァァ!」跳躍

カムイ「よくできましたっ! イイ子ですねー、スズカゼさんっ♪」ナデナデ

スズカゼ「ぁぁ……カムイ様こそ、さすがのお手並み……」ビクンビクン

スズカゼ「……では、そろそろ次の段階……新しい芸に挑戦しましょうか」

カムイ「新しい芸、ですか? わあっ、楽しみです! どんなのですか?」キラキラ

スズカゼ「はい(イケボ)」

スズカゼ「―――ちんちん、と申しまして」

アクア「しょうこともなし」松の木ズゴッ

スズカゼ「オッフ」

カムイ「す、スズカゼさーんっ!」

 サイラス
『友情の行き過ぎた騎士』
 女王カムイの直属親衛騎士となり、王城騎士の教育にも余念がなかった。
 後輩騎士から大いに慕われたが、カムイとの時間を何より大切にした。
 しかし前髪の不思議な跳ねっ返りだけは、一度として治る事はなかったらしい。

サイラス「よう、カムイ! 今日も見回り終わったぞ!」

カムイ「あっ、サイラスさん! いつもありがとうございますっ」

サイラス「いやいや、平和なもんだから、散歩してきたようなもんだよ」

サイラス「にしても、カムイが女王様か……何だか感慨深いな」

カムイ「サイラスさん?」

サイラス「王城や王宮で、こうして生活する姿も、様になって。…………」

サイラス「………………」

サイラス「ところで王城とかって、お城みたいな建物の極みみたいなもんだよな」

サイラス「よしカムイ、ちょっと休憩しないか!? ベッドとかある所で――」

アクア「己の罪を数えよ」松の木ズドーン

サイラス「ウオォン」

カムイ「さ、サイラスさーん!」

 リョウマ
『白夜の伊勢海老』
 リョウマは白夜王となり、戦禍に荒れた国を復興させ、透魔王国に良く支援した。
 王にも拘わらず、透魔王国に頻繁に出没した。
 基本的には公正無私だが、透魔女王カムイに対してだけは、所構わず子作りを迫った。
 後世、そんな彼を識者はこう評した。
「偉大なる父王スメラギを超える者」

リョウマ「カムイ、久し振りだな。かなり長らく離れていたが、元気にしていたか?」

カムイ「あっ、リョウマ兄さん! 三日ぶりですね!」

リョウマ「はっはっは、元気そうで何よりだ。健康なのが何よりだな」

カムイ「ふふっ、皆さんのおかげですっ。それで兄さん、今日は何を……?」

リョウマ「ああ、子作り……いや国作りについてな。まぐわい……いや語り合いに来たのだ。はっはっは、世継ぎ……いや矢継ぎ早に喋ってしまって申し訳ないが」

カムイ「なるほどですっ。分かりました、存分に語り合いましょう! 折れたりしません!」

リョウマ「はっはっは、こちらこそ決して中折れは……いや折れないから安心してくれ」

リョウマ「………ところで」

アクア「……………」ゴゴゴゴゴゴゴ

リョウマ「あそこで覇王のような威圧感を放ってる人、何とかしてくれんか?」

 マークス
『暗夜の過保護騎士』
 マークスは暗夜王となり、王国繁栄の礎を築き、透魔王国に良く支援した。
 王にも拘らず、透魔王国に足繁く通った。
 女王となり、ドレスを着たカムイを見て、号泣して周囲を軽く引かせた。
 もう、鎧が邪魔だとは、言わなくなった。

マークス「カムイ、久し振りだな。とても長らく離れていたが、元気にしていたか?」

カムイ「あっ、マークス兄さん! 二日ぶりですね!」

マークス「ははは、今日も元気だな。女王となっても、お前は昔から変わらない」

マークス「……そのドレスも、良く似合っているな」

カムイ「も、もう、兄さんったら……会うたびにそんな事を言って……」モジモジ

マークス「すまん。つい、口に出てしまうのだ」

マークス「本当に……お前が幸せになって、良かった……」

カムイ「マークス兄さん……これもマークス兄さんと、皆さんのおかげです」

カムイ「マークス兄さんが隣で剣を振ってくれたから、皆が支えてくれたから、私は立っていられるのです」

マークス「そうか……ふっ、しかしまだ、私はお前に教えきれていない愛がある」

マークス「だが、今の姿では、教えるのには少し不都合だな。ふむ……」

マークス「……カムイよ」

マークス「服が、邪魔だな……?」

アクア「………………」ゴゴゴゴゴゴゴ

マークス「なんでもないです」

 タクミ
『風神弓』
 タクミは透魔に移り住み、執政の面で透魔を支えた。
 女王カムイとの関係性の割には、相変わらず素直でないように見える。ツンデレの鑑だ。
 しかし、傍から見ればカムイにデレデレなのは明らかである。
 最近はやたらと長い髪が犬の尻尾のように揺れ、スズカゼとフランネルを脅かしている。

タクミ「カムイ姉さん、今日の仕事は終わったよ。……そっちはまだなの?」

カムイ「ふえっ!? も、もう終わったんですか? まだお昼前ですよ?」

タクミ「もう、これくらい当然でしょ。まだまだだね、カムイ姉さんは」

タクミ「……仕方ないな、僕が手伝ってあげるよ。感謝してよね」

カムイ「わ、わあっ、タクミさん、ありがとうございます! …………」

カムイ「あ、あのー、座る場所、近すぎませんか? ……あ、あの、タクミさん?」

タクミ「そんな事……クンカッ……ないでしょ。ほら、集中……クンスクンス……しなよ。そんなだから……クンクンクッホォ……終わらないんだよ。さあ、ちゃんと……クンクンクンカクンカァァァ!」

カムイ「た、タクミさーん!? におい嗅いじゃダメですってば、タクミさーん!」

カムイ「なんでそんなっ……も、もう、タクミさんったらー!」

タクミ「はあ……もう、本当に……幸せすぎるってば……」

 レオン
『闇のトマト・プリンス』
 レオンは透魔に移り住み、時には憎まれ役を引き受けてまで、王国の発展に尽力した。
 しかし女王カムイが事あるごとに彼を庇ったため、実際に憎まれる事はあまりなかった。
 強いて言えば、弟大好きな女王カムイに甘やかされている事で、嫉妬を買ってはいた。

レオン「……カムイ姉さん? ほら、ここも間違ってるよ、もう……」

レオン「『女王として精進するため勉強を教えてください!』なんて言いながら」

レオン「こんな簡単な問題を間違えるなんて……やっぱり、僕が傍にいないとダメだね」

カムイ「う、うう、レオンさんは、相変わらず厳しいです……」

カムイ「お姉ちゃんはこんなにも、弟の事が大好きなのにーっ!」ワーン

レオン「むっ。……弟、ね。それはタクミ王子の事も含めてだろうし……気に入らないな」

レオン「お姉さんぶる出来の悪い生徒には……教育が、必要かなっ」オシタオシー

カムイ「むむっ。……えいっ、隙ありですっ!」オシタオシカエシー

レオン「え……わ、わわっ!? ね、姉さん!?」

カムイ「ふふーん、生徒としては不出来ですが、先生としてはどうでしょう? 可愛い弟を可愛がってあげますよ……」

カムイ「何しろ私は、お姉ちゃん先生ですからねっ♪ ……あれ、でもこれからどうすればいいんでしょう? あれ、あれー?」

レオン「……くっ、血液が足りない!」鼻血ブシャー

カムイ「きゃー!? レオンさん、トマト……トマトを食べて補充してくださいー!」オシコミー

 アクア
『カムイの歌姫』
 戦後、女性でありながら、カムイの逆ハーレムの一員として、誰よりも活躍した。
 暴走しがちな男共を時には歌の力で鎮めるため、「消滅待ったなし」と思われたが、
 なぜかどんどん元気になっている。「レベル上げすぎたかしら」とは、本人の弁。
 しかし最近はいちいち歌うのも面倒になってきて、松の木をよく振り回している。
 とても長生きしそうである。

 カムイ
『透魔の逆ハーレム女王』
 戦後、透魔王国の女王として即位したが、まさかの逆ハーレムの主だったため、当初は国民を不安のどん底に陥れた。
 しかしその評価はすぐさま覆る事になり、透魔王国は繁栄の道を歩んでいく。
 女王カムイはその不思議な魅力でもって、老若男女、貴賤の別なく、全ての国民に愛された。
 女王として多忙のはずだが、彼女を愛する男達がほとんどの仕事を肩代わりしてくれるため、割と暇である。
 ある意味では固すぎる絆で結ばれた逆ハーレムは、キョウダイのように仲が良く、
 その中心にいるカムイは、いつまでも幸せそうだったらしい。

アクア「逆ハーレムの主である透魔女王カムイを中心に、世界は平和への道を歩み始めた」

アクア「中央の透魔王国を挟んでいるおかげか、暗夜と白夜の争いもなくなり」

アクア「透魔、暗夜、白夜の三国は……恒久の平和を約束したわ」

アクア「ここまで上手くいきすぎると、少し怖いくらいだけれど……」

アクア「カムイが誰よりも頑張って、皆を繋いでくれたからこそ……」

アクア「カムイがいたからこそ、ようやく実現できた……と思えば、不思議ではないわ」

カムイ「……あ、あのー、アクアさん……それはどう考えても、過大評価すぎですし……」

カムイ「それにっ。アクアさんがいてくれたからこそ、私は前に進めたんですからっ」

カムイ「そして皆がいるからこそ……私は今、折れずに立っていられる」

カムイ「だから、私ではなく……皆さんのおかげなんですよっ」

アクア「……ふふっ、そう。あなたがそう言うなら……そういう事に、しときましょ」

カムイ「だ、だから……アクアさんー? もうーっ」

アクア「そんな事より。あなたを愛する男共との調子は、どう?」

アクア「いつも言ってるけど、無茶な事をされそうになったら、すぐ私に相談するのよ?」

カムイ「だ、大丈夫ですよっ。皆さん、とても優しいですし、イイ人しかいませんっ」

カムイ「たまにビックリさせられちゃう事もありますが……アクアさんがきまって割り込んでくれますし」

カムイ「……まあ、『もっと二人だけの時間を』と良く言われてしまいますが……」

カムイ「立場上、なかなか実現できないのが申し訳ないですね……うう」

アクア「いいわよ、気にしなくて。あなたはちょっと愛情深すぎるし、愛されすぎている」

アクア「分け合うくらいで、ちょうどいいのよ。……多分ね」

カムイ「な、何だか適当な気が……う、うーん」

アクア「気のせいよ。……ああ、まあ、今後の事で問題があるとしたら」

アクア「子供――」
 ビターンッ
アクア「……どうしたのカムイ? 急に顔を机に突っ伏して」

カムイ「……う、うう、子供を、その……作る、行為が、ですね」スンッ…

カムイ「皆さんの言ってた意味が……まさかあんな、その、ハードだとは……」グリグリ

カムイ「思わなくて……う、うう~~~……!」顔マッカ

アクア「ああ~……そうね、私があなたに保健体育を教えてみたら、色々知っちゃったのよね」

アクア「まさかほとんど知識が無いとは思わなかったから……驚いたわ」

カムイ「だ、だってだって、北の城塞にあった恋愛小説には、その描写はなくって……」

カムイ「一緒のベッドに入ったら、次のページでは夜が明けてるだけだったんですもんー!」

アクア「そうよね……良く考えたら、周りにいたのはジョーカーやギュンター、フェシアとフローラくらいで」

アクア「あとは暗夜キョウダイくらいで……過保護軍団じゃ、変な本は持ってこないわね」

アクア「この透魔のあなたの部屋に移送された本を見た時は、さすがに戦慄したわ」

アクア(……まあ戦慄したのは、内容が、主従モノと近親モノと、百合モノまであった事なんだけど)

カムイ「うう、恥ずかしいです、もうお嫁に……いってるんでしたっ。しかも大量にっ」

アクア「いいじゃない。男共は恥ずかしがってるカムイを見て、『これはこれで』って喜んでたわよ」

カムイ「よ、よくないですーっ! アクアさんまで何だか嬉しそうですしっ!」

アクア「ふふふ、カムイは可愛いわね。私の宝物だわ……」

カムイ「なぜどこぞの風の聖戦士(諸説あり)のようなセリフを……」

アクア「とにかく……これで逆ハーレムは成り、平和への道は実現したわ」

アクア「あなたにしてみれば、これから大変な事も、たくさんあるでしょうけれど」

アクア「カムイ」

アクア「本当に……おめでとう」

カムイ「! アクアさん……ありがとうございます」

アクア「皆を信じ、私が考える事も出来なかった、第三の選択……透魔への道を歩み」

アクア「更に、本来ならあり得ないはずの、もう一つの道を開き、皆を繋いでみせた」

アクア「カムイ、あなたの作り出した、この新しい絆は――決して砕ける事はないわ」

アクア「……絶対に、ね」

カムイ「! ………………」

カムイ「私達を繋いだ……もう一つの道」

カムイ「決して砕ける事のない、新しい絆」

カムイ「………………」

カムイ「……ふふっ、アクアさん、それって……」



 ―――――――――――――――

 カムイ「逆ハーレム……ですか?」

 ――――――――――――――――

 ~fin~

面白かった乙
♂カムイハーレムはよう

以上で終了です。初SS、ちゃんと最後まで書けて良かったです
色々と至らず拙いわ失敗もあるわで、お目汚し失礼しました
最近読んだ「ドラゴン嫁はかまってほしい」にハマった勢いでなんか書いちゃったんだ……竜のお姫さまはやっぱり至高
コメントを頂くたびに励みになりました、ありがとうございました
読んでくださった方にはとにかく感謝です~

とりあえず、html化依頼を出してきます~
♂カムイ「ハーレム……だって?」
も、ぼちぼち書き溜めるつもりです
かなり時間かかってしまうかもですが、その時は読んで頂けたら嬉しいです

>>435
ありがとうございます
書いてる途中はコメ返信できず申し訳ない……

>>436
ありがとうございました~

なかなか良かった
♂カムイも書いてくれるのであれば是非

>>440
時間かかっちゃうかもですが、書いていきます~
読んで頂きありがたや、ありがたや……

この世界線の女性陣は独り身なのだろうか…乙

>>442
ありがとうございます~
深く考えると怖い……

つまり同性含めた真のハーレムを成すSSが必要だと

>>444
挑戦的な長編に……!?

面白かった
乙です

>>446
ありがとうございます、そう言っていただけると嬉しいです~

乙かれ
みんな幸せそうで何より

しかし・・・
>命中98%を信じて送り出したツバキがものの見事に外し、速さの低さゆえに二回連続で反撃を受け、しかも3%の必殺を喰らってアハ顔ダブルピース
このやたら具体的な例はまさか>>1の実体験なのか・・・?

>>448
皆が幸せ大好き、ありがとうございます~

>>449
実体験かどうかはツバキさんの名誉のために何とも言えないところですが
ヤツのことはもう二度と信じねぇと心に決めています~

乙です
控えめに言って最高だった
♂カムイ編はよ

>>451
ありがたいお言葉です~
♂カムイ編は、ぼ、ぼちぼち書き溜めてからということでっ……

乙です
男カムイも焦らず書いてくれると嬉しいです。しかし結局一番闇が深いのは白夜のヒゲダルマなのが笑える
次点でツバキかな。うちのツバキは命中84の二連撃を両方外した挙句に5パーの必殺受けて沈んだ過去あるんで他人事に思えない

>>453
男カムイも少しずつ……というかツバキさん被害者がこんなにも……!

サクラ→言うことなしの万能ユニット
カザハナ→育てれば火力のある回避盾として使える
ツバキ→論外
どうしてこうなったのか

>>455
ツバキさんも序盤に侍にチェンジプルフするか、金鵄でなく聖天馬に乗せれば、あるいは……
しかしそこまでする気になれないという喜劇……もとい悲劇

フェリシア「ドジで駄目な私ですけど、精一杯頑張ります!」
→三竦み、魔殺し、天馬も真っ青な魔防と速さで完璧な魔導師キラー。爆炎か氷皿入手でアタッカー、暗器で援護、杖で回復と序盤から活躍
ツバキ「任せてよ。完璧、完璧~!」
→三竦みと本来の天馬ステなら魔法盾になれるのに、削り殺される。当然弓にも即落とされる。単純な槍アタッカーとして、アクアに相当な差をつけられる
というか、全ステがサクラ以下になることすらある

本気で支援会話と性能が噛み合わない男である。サクラに成長率半分もってかれてるんじゃないか?

>>457
主君に成長率を献上するとは何という忠義……そんなことせんでいいので普通に育ってください(ソイヤッ

乙乙 面白かった
でも依頼受理されるまで結構かかる(そもそもされるのか?)し全レスしてると>>1000まで話し続けることになるかもよ

>>459
ありがとうございます~
ふおー、ご指摘も感謝です、そろそろほどほどにしないとですね……!
書き込みは何かある時だけにして、これからは控えますという主張~

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