金髪「お前の話、超同人誌すぎだろw」男「そうですか?」 (27)

~校舎裏・伝説の桜の木の下~


男「なあ。どこまで行くんだ?」

女「――……」たったっ…

クル

女「ねえ、男くん。ここ、知ってる?」

男「ん? ああ。クラスの女子が噂してたのってここだろ」

男「校舎裏の桜の木の下で告白すると、幸せになるらしい。とか何とか」

女「そう。なら話は早いや、あのさ男くん」


ザァアァア~…


女「私と付き合ってください」ペコ

男「……」


ヒュウウ~~…


男「急にどうしたんだ」

女「だめ?」コテン

男「いや、ダメとかじゃ無くて。今更だろ、そういうのは」

女「そんなコト無いよ。ちゃんとやっておかないと、こーいうことも」

女「私たちってほら、曖昧に付き合って、なーなーでチュッチュしてたでしょ?」

男(ちゅっちゅて…)

男「…なあなあじゃ駄目なのか?」

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女「んーん、だめじゃない……けど、言い合っておきたくてさ。大事だと思うから、付き合って下さいって、ちゃんと言えるような関係が」

女「だから付き合って欲しい。私と君と。この桜の木の下で、あらためて恋人同士になりたいの」

男「……、その髪」

女「え?」

男「髪。急に短くしたのは、この告白と関係あったりするか?」

女「…別に…ないけど、前から切りたかっただけで…」クルクル

男「誤魔化してる」

女「はあっ? ちょっと、私が聞きたいのは告白の返事! イエスかノーってだけ!」

男「………」ジッ

女「なに、その目。髪を勝手に短くしたの怒ってる? 君がそんな束縛系だとは思わなかったー」ムッ

男「いや、そんな似てるかと思って」

女「…なんの話?」

男「前から思ってた話」

男「俺は眼鏡掛けてもないし、髪型だって違う。背格好も全く似てない。雰囲気もタイプも全然一緒じゃあ無い」

男「どこが似てる? 俺の何処が【お前の兄貴】と似てるんだ?」

女「……………」

男「教えてくれ。言ってくれたらちゃんと返事するから」

女「――は。なにッ、言ってるの…? 超絶意味わかんないですけど…?」

男「そうか。ならハッキリ言ってやる」


男「もう兄貴のことすっぱり諦めて、こっちに逃げるのか?」

女「…ッ…!」ギリッ


ぱぁんっ!


男「…痛ッた…」

女「分かったようなコト言わないでよッ! 君がッ、私のなにを知ってるて言うの……ッ!?」

男「分かるわけがないだろ。それはお前の問題だ、俺が知るわけ無い」

女「じゃあ変なこと言わないで、私と付き合えるかどうかだけ返事すればッ!?」

男「さっきも言った。お前がきちんと答えるなら、俺も答える」

女「…っ…」ギュッ

男「でも、まあ、それもさっき言ったとおりだけどな」

女「なによっ、それっ」

男「代わりなんて誰だって嫌だろ、普通に考えて」

女「……」

男「一度だって今の関係が良いとは思ったことは無いよ、俺は」

女「……。今更なに? もういい、忘れて。告白、無かったことにするから」

男「そうか。だったらもう、良いよな」スッ

女「……嫌なヤツ」

男「知ってる。それにお互い様だろ」


スタスタスタ…


「…ねえっ!」

男「ん」チラ

「確かに似てないけど――一個だけ、似てるんだ。君ってさ」

男「おう。参考までに聞いとく」

「笑顔。君の笑顔ってすごくお兄ちゃんに似てる。だから、良いなって思ったんだ」


「――良いなって思ってたんだ…」ポロ


男「……。頑張れ、応援してる」

「ありがとう。頑張る。それと、今までありがと…」

男「おう」


ヒュウゥウウ~…


~文芸部~

金髪「んー、五点?」

男「それは何点中の?」

金髪「もちろん百点満点中の五点だし。ダメだわ、最後まで鳥肌凄いし」

男「そうですか…」

金髪「どっかのエロ同人誌でも参考にした? ならセリフ長過ぎ。当て馬テイドのお前が出張りすぎ。一コマで収まってないと」

男「一コマ……」

金髪「あんさ、べっつに妄想でもイイケドさ、もうちっと現実味出してよ」ヘラヘラ

金髪「単なる暇つぶしでの恋バナだし、気軽にさ、意地張らなくても良いから」フリフリ

男「しかし、れっきとした実話なのですが」

金髪「恐れ入ったね。後輩君の根性入った妄想話、感動すっけど聞いてるこっち疲れちゃうんでー勘弁願いたいって言うかー」

男「なるほど。勉強になります」

金髪「ッショ? 文芸部の部長サン、超リスペクト出来るっしょ?」

男「はい。これからもよろしくお願いします」

金髪「オナシャース!」

男「だがしかし、文芸部部長。恋バナというのは難しい。貴方を満足させるような過去が、果たして俺にあるのかどうか」

金髪「ん? なんでもイイヨ? ただ妄想くっさいのマジ勘弁ってだけ」

男「妄想くっさいの…」

金髪「ほら、見た目悪くないし? オレほどじゃないけど、身体がっしりしててバリバリスポーツやってます系狙い所っしょ?」

男「はい。中学までバスケ部の部長やってました」

金髪「バリ運動系でモテるじゃ~~~ん! バスケ部とか女子超困んないじゃ~~~ん!」

男「ですが、先ほどの恋バナはお気に召さなかったようなので…自信が…」

金髪「他なんかないの? バリって恋しちゃってるっしょ?」

男「……。ああ、ならばこれならどうでしょうか――――」


~放課後・教室~


眼鏡「なあ。部活、辞めるって本当か?」

男「昨日、退部届を出した。明日から晴れて帰宅部になる」

眼鏡「…どうして」

男「どうして? もう部長としてやることはやったんだ、邪魔者は消えないと」

眼鏡「なら! …なら退部届を出さずに、卒業までやり通せば良いだろう? どうして禍根を残すような事をするんだ」

男「……。さっきからどうして、ばっかりだな」

眼鏡「! キミが気にかかることをするからだろ!?」バッ

男「……」

眼鏡「…すまん、急に大声を出して…悪かった、謝る…」

男「気にしない。それじゃあな」ガタリ


「待ってくれ!」ギュッ


男「――っ、なんだ急に…?」

眼鏡「いかないで、くれ。置いていかないで、くれ。私を…ひとりぼっちにしないでくれ…」

男「ひとりぼっちじゃないだろ。部員は良い奴らばっかりで、他に女子マネだって居るだろ」

眼鏡「そういう事じゃない! 私が言いたいのは、そうじゃない……そうじゃないんだ…」

男「………」

眼鏡「なにが、悪かったんだ。なにをそこまで、キミを追い詰めたんだ。…私か? 私が悪かったのか? だったらっ、」ギュッ

男「違う」

眼鏡「なら私の目を見て言ってくれ…!! どうしてだっ、なぜキミは一度もっ! ここ数日間私の目を見てくれない…っ?」

男「…だって目が恐いんだもん、お前」

眼鏡「生まれつきだ! 悪かったな生まれつき眼光鋭くてッ! そうじゃない…そうじゃないだろ…!」

男「……」

眼鏡「…そうやって見てくれないんだな。私は今、キミに抱きついているというのに」

ぎゅっ

眼鏡「最後の最後まで私を見ないのだな…私を責めないんだな…」

男「ああ」

男「これ以上、眼鏡の側に居ちゃダメだってことぐらい、俺にだって分かってるから」

眼鏡「…っ…ダメじゃ無い! 私はもう、キミと一緒に居られる! もうやましいキモチになんて抱かなくても済むんだ!」

男「え…?」

眼鏡「わか、れたんだ。もう先輩とは付き合ってない、私は……もう、誰とも付き合ってない」

眼鏡「今までずっとキミの側で曖昧な態度をして、長い間…困らせていた…」

男「気にしすぎだろ」

眼鏡「思い上がりでも良いッ! 私はキミに負い目を感じてるのは事実だ…!」

眼鏡「だから、もう、キミが私のことで振り回されている姿を…見たくは、ないんだっ」

スッ…

男「……?」チラ

眼鏡「っ…っ……っ…」フルフル…

男「お、おい…なんで下、なにも穿いてないんだ…っ!?」

眼鏡「好きに、していいから。もう、キミの思うがままに私を…使って…良いから…」ギュッ

眼鏡「――どうか、私の前から居なくならないでくれ…」


~~~~


金髪「一点」

男「手厳しいですね」

金髪「アノ、気になるんだけどサ。どっしてさっきからntrっぽい展開ばっかなワケ? 聞いてるこっちが嘘っぱちでもこっぱずかしいんですケド!」

男「すみません。言われたとおり部活、セリフ少なめ、妄想臭くない恋バナ選んだつもりだったんですが」

金髪「ああ…要望通り選んだら、それになったと…」

金髪「でもサァ? それ、妄想くささなくなってないよ? むしろマシマシに盛っちゃってるから」

男「マシマシ……」

金髪「フフ。でも文芸部部長さんとしては? シャイで妄想ボーイの物語聞いてて楽しくなっちゃう系の人なんよ! どうどう? まだ語れるっしょ?」

男「ええ。恋バナに関しては事欠きません、まだまだあります」キッパリ

金髪「カァ~ッ!ww 将来有望だわ~wwwwwwこの子、すっごいわ~wwww安心して将来の部長の座を明け渡せられるわ~wwww」

金髪「まww 部員なんてオレとお前だけなんだけど。お前が入部する前に、他やめちまったしさ」

男「そういえば何故、先輩は文芸部を?」

金髪「ん? 見た目や雰囲気がやりそうにないって? …ふっふっふ、ここ、格好のヤリ場向きなの」

男「ヤリ場とは?」

金髪「人気少ない北校舎。誰も近寄らない四階の端っこ。都合の良い収納スペース。取って付けたかのような寝心地の良い高級ガウチ」

金髪「ここまでお膳立てされてちゃ使うっきゃないっしょ!?ww」

金髪「あーもちろん、部員となったお前も使ってよし! けど掃除はこまめにな? そこ先輩超うるせーからな?」

男「成る程。では今度シフト表作りましょう、先輩と俺、日にちが被らないようきっちりと」

金髪「んん~~wwwwwwwwww 前がそーいうのならーwwww うん~~wwwwww」

男「はい」

金髪「あーお前超笑えるわ。どっからその自信沸いてくんの? じゃあよ、恋バナ続けて続けて。引き出しあんなら存分に語っちゃってよ~ww」

男「分かりました。先輩の満足が得られるのなら、俺はやれるだけのことを語ります」コクコク


~自室・夜~


男(もう寝るか。受験勉強はやれるだけやったしな)パチン

男「……そういや今日、両親帰ってこなかったか」

男(何時までも仲良いのは良いことだが、子供達に放任すぎないか)ゴソ

コンコン

男「? なんだ?」


「…お兄ちゃん、起きてる?」


男「今から寝るところだ。何か用事か、だったら明日にしてくれると嬉しいんだが」

ガチャ

妹「――なら都合いいな、って思う、かな?」ヒョコリ

男「……。どうして枕持ってるんだ?」

妹「寝るためですけど…」

男「じゃあ寝ろよ」

妹「ここで寝たいんですけど…」

男「ダメだ」

妹「返事は聞いてないんですけど…」

パタン

男「お前なぁ、もう中学生だろ? 一人で寝るのが恐くなっても、ちゃんと我慢できるように…」

妹「よい、しょっと…」モゾモゾ

男「おいこら」

妹「うひひ。あったかいでゴンスなぁ~」ムフフ

男「……はぁ」バタリ


チッチッチッチッ…


男「…すぐ寝ろよ、抱きつくなよ、涎も垂らすな、わかったか」

妹「りょーかいです」ぴしっ

男「ん」


チッチッチッチッチッ…


妹「ねえ。お兄ちゃん」

男「寝ろ」

妹「今日、お母さんとお父さん、帰ってこなかったね」

男「……」

妹「いまごろ。なにやってるんだろうね」

男「知らん」

妹「わたし知りたい」

男「なら明日の朝聞いてみれば良い。教えてくれるぞ、きっと教えてくれる」

妹「わたし、お兄ちゃんから知りたい」

男「…………」

妹「だめ?」

男「…ダメだ」

妹「なん、で…? んっ、どうしてお兄ちゃんは教えてくれないの…?」ゴソゴソ

男「そりゃ兄貴だから。一人の家族としては、言ってはダメなこともある」

妹「んっ、あっ! ひゃっ…ふふ、お兄ちゃんらしいね、んふふ…」チュク…

男「………。お前、俺の後ろで、なにやってる、んだ?」

妹「え? そりゃもちろん、オナ―――」


~~~


金髪「しゅーりょーーーー!!! はい! お前の持ち点ゼロになりました~~~~!wwwwww」

男「いつの間に持ち点制度が…ならば先ほどの点数は加点制…!? 把握をぬかりました先輩! もう一度チャンスを俺に!」ガタァッ

金髪「いや、単なるノリだからww 点数も持ち点ゼロも、オレのキモチの代弁的なヤツだからww」

男「ぐぅぅ…先輩に気を遣われ、ましてや言い訳もさせるとは…っ」クッ

金髪「いや本音っすから! うんうん、もうなんつぅーかさ、家族はダメ? ましてや妹とか超ひくっていうか? 妄想の範疇超えちゃったというか?」

男「ええ。俺もこれは恋バナなのか、と判断に迷いました」

金髪「そこじゃなぁ~~~い!ww 悩むとこそこじゃなぁ~~~い!wwww」

男「そう、ですか。すみません、俺自身もあまり気配りできない人間だと思ってる次第で…」

金髪「そういったこでもなーーーし! …はぁ、うん、うん、はぁ~~~~……」

男「先輩?」

金髪「お前、童貞だろ?」

男「どうして分かったんですか!?」ガタンッ

金髪「アッハハ~! …真性ですか、そうですか」ボソリ

金髪「オレも途中まで笑っちゃってっし、ここまで聞いておいて邪険にすんのもカワイソーだから言ってあげるケド」

金髪「ぜーんぶ―――どっかのエロ漫画か、同人誌から話パクってるだろ?」

男「……っ…!!」

金髪「やめた方が良いと思うなーそういう見栄っ張り? 大人ぶり? 見てて聞いててどん引きなんよ、つか、妹まで出しちゃうとか神経どうにかしてるっしょ?」

男「先輩……」

金髪「別に良いじゃんドーテイでも、彼女いなくても、モテなくてもサ」

金髪「でもさ。お前見た目悪くないし、身長もたっかいし、ちょっと抜けてるけどさばさば系で喋りやすいし、なんでウソなんてつくのよ?」

男「………」

金髪「あ~イイヨイイヨ~ww トラウマとかあんなら無理して喋んなくてww それすら妄想ぽかったら、お前のどこを信じれば良いのかわかなくなっしwwww」

男「………」


スッ トン…


男「先輩。ありがとうございます」ペコ

金髪「アリガトウゴザイマス? なんで感謝?」ヘラヘラ

男「俺、やっぱり思い切って文芸部に入部して良かった。先輩、ズバズバと俺の恋バナを否定してくれる」

男「…それに部室に置いてあるたくさんの同人誌、読ませて貰って勉強にもなりました」

金髪「べ、勉強? なにを同人誌で勉強すんだ? …妄想の糧にしてた感じ?」

男「それは…」


男「【俺の恋バナが変だという事。それを勉強するためです】」


金髪「……」

金髪「は?」

男「だから是非とも先輩に聞かせたい。俺の最初で最後の、本当の恋バナを――」

男「――どうか、それは何点なのか、ご教授願いたいです」

~~~


中学一年生の頃。
俺はとある女子生徒に【呪われた】。

経緯は多分、二学年で人気だった女子を振ったから。


「無理。部活が忙しいから、つきあえないです」


無難な返答だったと今でも思うのだが、しかしそれがダメだったらしい。

次の日から壮絶な【悪質な噂】が周囲に立ちこめ始めた。


『両親と血が繋がってないらしいよ。親がアバっててとっかえひっかえで』
『中学生何人か堕ろさせたってマジ? すげーよな、やっぱモテるヤツは』
『隣町の女子も言ってた。すぐ手が出るんだって、こっわーい』


否定しても否定しても新しい噂が蔓延っていく。
どす黒くて、真っ新で、純粋で邪悪な悪意。

じきに部活も行きづらくなって、学校にすら行く気を無くしていって。


「……今日も良いっすか」ガラリ


それでも、俺が中学一年間を続けられたのは、とある女子生徒のお陰だった。

「こんばんわ。男くん、今日はどうしたの?」

「新しい本、読みたくなって。また、オススメを教えて欲しいなって、思って…」

「うふふ。そうなんだ、じゃあこれなんてどうかな? 今の気分にぴったりだと嬉しいけれど」

「ウッス…」テレ


放課後の図書室に何時も残っていた上級生。
丸い野暮ったい眼鏡をかけた、影が薄くて記憶にあまり残りにくい女子生徒。

でも、

好奇な視線と悪意的な噂から逃げ場所を探してた俺にとって、彼女はもう女神当然だった。

彼女だって俺の噂を耳にしているはず。
俺のような背の高い生徒なんてそう居ない。だから、邪険にされたって仕方ない。

でも、

「あ。そうだ男くん、君ってば同人誌は知ってる? 商業誌ではなくて、個人誌。そこにはたくさんの自由があって、色んな物語ができるんだよ」

彼女は何時だって俺の側に居て、たくさんのことを教えてくれて、その優しさは暖かった。



でも。
それも今では届かない過去の想いだった。



「……嘘だろ」

彼女が自殺したと知ったのは【俺がバスケ部に復帰し、やけにモテ始めた頃だった】。

中学一年終了間際。彼女にとっては卒業間際。
何があったのか、彼女に身に一体どんな悩みがあったのか――

俺は知るよしも無かった。だって、噂なんてなくなってて。
確かに図書室に行く機会も減っていたのは事実だが、それでも、彼女が思い悩んでる姿なんて。

「……どうしてだよ、なんで、一言も」

ああ、そうか。
きっと彼女は俺に言いたくなかったんだ。幸せになっていく俺を邪魔したくなかったんだ。

だから黙ってたんだ。俺の前だけは押し隠して、何度も何度も作り笑いを浮かべて。
いつも通りをふりを通し続けていたということか。


ああ、なんて恩知らずで馬鹿な人間なのだろう。俺というヤツは。


訪れた彼女の葬式には多くの友人とみられる人たちが来ていた。
意外にも彼女には友人関係が広かったらしい。当たり前だ、俺自身が知らなくてどうする。

彼女の優しさは人を癒やす。俺が一番知っていることだろうに。

でも、少しだけ気になった。
同世代があまりにも少ない。年上か、ましてや異性。その年齢層が広すぎる。

「あの、すみません」

だから聞いてみたのだ。
どういった関係性なのだと、…興味本位で、一つでも彼女の気持ちを知りたくて。

「君。もしかして、過去に酷い噂をされたり、いじめを受けてたことある?」

「…え?」

「ああ。ごめん、私は彼女と同業者だったの。同人誌販売とかしてて、もちろん彼女も描いてたよ」

「は、はあ…」

「ふーん。そっか、なにも知らないだ。そうだよね、こうやって葬式にこれるぐらいだし」


「そっちのほうが幸せだものね」


同業者と語った人が言う、その意味を俺は理解できなかった。
でもなんとなく、ただなんとなく、ちょっとした思いつき程度の考えで。


――彼女の作品を、ここ最近に置いての同人誌を、読んでみたのだ。

――それが、彼女の全てが詰め込まれた【俺の対する呪いだと知らずに】。


~~~


男「先輩。『色野トーコ』という作者をご存じですか」

金髪「…え? え、あ、おう、知ってるというか…『陵辱系』やら『純愛系』やら…」

金髪「ジャンル問わず、とにかく多くの同人誌をネットやら本誌やらで描きまくってて…」

金髪「すげー短い期間だったけど、なんか超信教的なファンばっかりの有名作家、だろ…?」

男「読んだことは?」

金髪「あ、あるけど? つか、短期間で絵柄変わって上手くなって、話もやばいぐらい変で、けど…ああ、そうだ…」

男「――そう、いつもいじめられていた男子生徒が主役だった」

金髪「……、……っ……」ゴクリ

男「それ。俺の好きだった先輩なんです」

金髪「…え、えっと」

男「俺が好きで、なのに彼女の悩みを一つたりとも知らなくて」

男「だけど、俺が初めて好きになって。今でも思い続けてる人で、そして…」


男「今でも俺を呪い続けてる。死んだ今でも尚、俺の側に居てくれる人なんです」


金髪「―――は、」

金髪「は、ははっ! んだよそれっ、今度は恐い系の話!? まったく話つきねーなーお前なぁーww」

男「読んでいるのなら知ってますよね、先輩」


男「明るく、楽しいギャグ調子の純愛系は主人公が幸せになる」

男「暗く、酷いオチがある救われない陵辱系は主人公が不幸せになる」


男「そして何か似通ってませんか? どこか見覚えがあったりしませんでしたか?」

金髪「なっ、ないけど!?」

男「いえ。その同人誌を読んだ当時、ではなくて、今まで俺の恋バナに対してですよ」

金髪「…ごく、り…お前が、経験したことって……」

男「はい。貴方が言ってくれたとおり【本当に同人誌っぽい恋愛ばかり】だった」

金髪「…どう、して」

男「呪われたんです。彼女は俺に対し、憎しみか、それとも別の感情か。それを抱えたまま黙って同人誌を書き続けた」

男「なにも俺に伝えないまま自殺をして、残ったモノは同人誌。描き上げていった主人公は全て俺」



男「関係性なんて、ないわけがない。俺は……もう、普通の恋をさせてもらえない」

男「俺は一生【同人誌のような恋愛】ばっかりし続けるんでしょう…」



金髪「………」

男「…わからないんです、恋愛の普通さが、日常の境目と創作めいた境界線が」

男「だからここの文芸部を知ったとき心から嬉しかった。やっと同人誌を読むことが出来る」

男「…対処法を学ぶことが出来る」ギュッ

金髪「ばっ!!」ガタァッ

金髪「ばっかだなぁ~~!! お前ってば、んなこと事実だったとしても真に受けるなっつーの!」

男「………」

金髪「あのなぁ!? 幾ら何でも突拍子もなさ過ぎっつーか!? なによなによ、じゃあお前は、それから恋愛全部そんな感じってワケか!?」

男「そんな感じです。超同人誌っぽいです」キッパリ

金髪「阿呆いえ! ああーーーーーーくっだらねぇーなぁ! おい、話としてはじゅーぶん笑えたけど、語ってるお前の態度が気に食わん!」

金髪「マジで語るのやめてくんない? はぁーあ、いいよもう、今日は帰るぞ、かえろかえろ」

男「…はい」ガタリ

金髪「……」チャリチャリ

男「先輩。明日から俺、その…」

金髪「んだよ」チラ

男「…すみません、なんでもない、です」

金髪「………はぁ、イイヨべっつに」

男「えっ?」

金髪「気にくわねーけど、入部は認めるって。ぜんぜん良いから、パイセン達が置いていった同人誌、ばんばん読んじゃってよ」

男「いいん、ですか?」

金髪「ほいほい。けどオナった匂い残すなよ!? オレそこんところウルセーからな!」

男「…………」じぃ~~~ん…

金髪「きめーよ、んだよノッポくんよ」

男「先輩。俺、すごく感動って、いうかっ、………感謝します」ペコォオオオオ!!

金髪「どぅあっ!? 気をつけろよ! あぶねぇ!!」ヒョイ

男「先輩! あとでシフト表作りましょう! 俺、頑張りますから! というか俺、今日夜なべして作ってきます!」

金髪「ああ、そう……じゃ、頑張ってね」ハ、ハハ…


ガチャン スタスタスタ…


金髪(不思議な奴が入部したもんだ。見た目、完全に運動部系でどうすかっと思ったが)

男「あ」

金髪「どした?」

男「忘れ物しましたッス! 先輩! すみません! すみません!」ペコペコ

金髪「謝るな謝るな…その程度でよ、こっちも危ねえから…ほれ、鍵だ」チャリ

男「ありがとうございます!」

ダダァンッ

金髪「ったく、早まったかなオレも。ちっと面倒くさいキャラ臭がほんのりするわ…」グテー

金髪(ま。融通効かなそうだが真面目だし、こっちのことも深く詮索してこねーだろ)

金髪「ハハッ!ww なにが同人誌みたいな展開ばっかりだよ。くっく、そうだったらここでオレも、」


シーン


金髪「―――………」サー…


くるっ ダダダダダダダダ!!!

ガラァ!! どがぁーん!


金髪「おいっ!! こ、後輩…っ…お前変なところ触るんじゃねーぞ!!」バッ

男「え?」

金髪「はぁ…はぁ…!? あっ、いや、何でも無いなら、別に…!」ブンブン

男「は、はあ…」

金髪(思い過ごしか、そりゃそうだ。なにがあるってんだ、オレはちゃんと隠して――)


ミチミチ… バキン メシメシ…ッ


金髪「…ん?」

男「?」

バギィイイッ!! 

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ドッサーーーーーーーー!!!


金髪「…………………」

男「……………………」


カチッ ブィッ ブブブ ブィイイイイイイイイイイインンンンン!! ガタガタガタガタガタ…


金髪「待て」

男「はい」コクコク

金髪「これは、だな。違う、オレのじゃなく、過去ここでヤリ目的で使ってきた先人達の、」


ピチュン! ブゥーン…

『はぁーいっ! おまたせ全国津々浦々の、男の娘だいちゅきなヘンタイお兄さんたちーっ!』

『もう準備はで・き・て・る・よん! だめだめ~! もっとイイね押してくれなきゃ、だ・め♪』


男「あ、この声。先輩に似てますね」キッパリ

金髪「………」ダラダラダラダラダラ

金髪「あの、さ。後輩君よ」

男「はい?」


金髪「お前、本当に、同人誌すぎ、マジで」

男「? そうですか?」



続くかも知れない

元気が出たら ノシ

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