女「寒いからあっためて」(7)

男「じゃあ、ストーブつけるね」

女「そうじゃなくて…」

男「えっ?」

女「抱き締めて」

男「でも、それじゃあ…」

女「いいから」スッ

男「……分かったよ」ギュッ

女「ん、あったかい」ギュッ

男「風邪引いちゃうと大変だからストーブつけるよ」

女「このまま抱き締めてくれてたら、引かないよ」

男「一応だよ、えい」ピッ

女「相変わらず凄いね」

男「あはは、スイッチ押すくらいなら出来るんだよね」

女「便利便利」スリ

男「くすぐったいよ」

トントン ガチャ

女母「女、あんた帰って来たならリビングに顔出しなさいよ」

女「ごめんなさい」

女母「あんた、一人で何してんの?」

女「社交ダンスの練習」

女母「また馬鹿なこと言って…」

女母「部屋はちゃんと暖かくしなさいよ」

女「はーい」

ガチャン

男「……………………」

女「どうしたの、男?」

男「やっぱり見えてないんだなー、って」

女「そうだね、でも」ギュッ

男「女?」

女「男に触れられて見えるのは私だけでいい」

女「男は、そう思わない?」

男「…そうだね、女だけでいい」

女「うん…!」ニコ

男(僕は死んでいた)

男(いつどうして死んだのか、僕には記憶がなかった)

男(ただ、今もはっきり覚えてるのは)

男(雪の降る日に誰も僕の存在に気付かない町の中)

男(たった一人、気付いてくれた女の顔だった)

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