男「付喪神・・・ねぇ」 筆「はい!」(51)

~10年前~

婆「物には100年大事にすると神様が宿るんだよ」

男「へぇ~。じゃあおばあちゃんの家にも神様がいるの?」

婆「そうねぇ・・・もしかしたらいっぱい神様がいるかもねぇ」

男「すごーい!僕神様さがしてくるー!」

婆「うふふ」

~現代~

男「・・・よいしょ」ドサッ

男「・・・はぁー」

男(いくら高校が近いっていってもなぁ・・・)

男「改めてみるとばあちゃんの家ってこんなに古かったんだな・・・」

男「ここに一人暮らしとか・・・大丈夫か俺?」

運送屋「それじゃあどうもー!」

男「あ、はい、ありがとうございましたー」

男「・・・」

男(片づけ始めるか・・・)

男「やっぱり人の住んでない家ってのは寂しい・・・ん?」

?「・・・」モグモグ

男「・・・」

?「・・・」モグモグ

男(誰だあいつ!?)

?「包丁さんおかわりをください」

包丁「筆!アンタ食べすぎなのよ!その体のどこにそんなに入るのよ!」

筆「お腹ですかね?」

包丁「そういうことを聴いてるんじゃないわよ!」

男「・・・」

筆「そうは言いますけど、包丁さんのご飯がおいしいのでつい・・・」

包丁「・・・ど、どのくらい盛ってくればいいの?」

筆「大盛でお願いします!」

包丁「しょ、しょうがないわねぇ」

男「・・・」

男(なんだあいつら?)

筆「はぁ・・・いいですね~。塩じゃけに真っ白なご飯。ちょっと硬めに炊いた銀シャリは最高です」ムシャシャ

包丁「アンタって本当に食い気ばっかりね」モグモグ

筆「そ、そんなことありませんよ!」



男(んー・・・泥棒・・・って感じではなさそうだが・・・)

ポンポン

男「っ!?」

?「動かないでくださいね?ちょっとでも動くと首がぽろっと落ちちゃいますよ?」

男(ほ、ほかのやつもいたのかよ!?)

ガラガラガラ

?「ただいま戻りました」

筆「あ、刀さんお帰りなさいで・・・す?」

包丁「・・・え?誰そいつ?」

刀「侵入者のようですね。大婆様のお屋敷に盗みに入るとは・・・刺殺はま逃れませんね?」

男「いや、俺からしてみたらお前らのほうが泥棒なんだが・・・」

刀「盗人猛々しいとはこのことですね。すぐに刺殺しましょう」

男「いやいやいや!人のばあちゃん家に勝手に入り込んでるやつらのほうが泥棒にちかいだろ!」

刀「・・・?おばあちゃん?」

男「そーだよ。孫がばあちゃんの家にきてなんで殺されなくちゃいけないんだよ!」

筆「え?ということは・・・」

包丁「アンタ・・・婆様の孫?」

男「そーだよ。ていうかお前らのほうこそ誰なんだよ」

刀「こ、これは失礼しました!まさか、その、大婆様のお孫様だとはつゆしらず!」ドゲザァ!

男「いやまぁそれはどうでもいいんだけどお前らはなんなのさ?場合によっては警察沙汰なんですけど」

筆「んー・・・そーですねぇ・・・私たちはこの家に代々伝わる物品の付喪神というのが一番わかりやすいでしょうか?」

男「いや、全然わかんないんだけど」

筆「あれ!?」

包丁「アンタも聞いたことくらいあるでしょ?大切にされたものには神様が宿るって」

男「・・・あー、そういえばばあちゃんが昔言ってたような気がするけど・・・」

包丁「あたしたちはその付喪神なの」

男「・・・」

包丁「何よそのこいつら頭おかしいって顔は!」

男「いやだって・・・そんなの信用できるわけないだろ。お前らどう見ても人間じゃん」

筆「まぁ、付喪神とはいえ一応神様ですからね。人の同じ肉体を持っていてもなにも不思議なことはありません」

男「いや、不思議ばっかりでなにもなっとくできねーよ」

刀「では、これを見ていただけば納得いただけますでしょうか?」

男「んあ?って・・・」

刀「これで納得いただけましたか?」

男「お前これ・・・腕が・・・」

刀「付喪神ですので、このように体の一部を変化させることも可能なのです」

男「・・・」

筆「信用してもらえました?」

男「・・・まぁ、信用するしないは置いておいて、俺今日からここに棲むんだけど」

筆「まぁ、そうなんですか!じゃあここももっとにぎやかになりますね!」

男「いや、俺としては一人で暮らしたいんだけど」

筆・包丁・刀「?」

男「お前ら出ていってほしいんだけど」

筆・包丁・刀「ふぁっ!?」

男「いやまぁそういう反応されるとは思ったけど」

筆「ど、どうしてですか!?私たちは元々この家の所有物なんですよ!?」

男「いやまぁそれはわかるけどさ・・・仮にも若い男と女が一つ屋根の下でくらすとか・・・」

筆「つ、つまり私たちが男の子だったら問題はないと?!」

男「いやそういうことじゃねーよ」

包丁「大丈夫よ。私たちこう見えても年齢は100歳超えてるから」

男「そういうことでもねーよ」

刀「わ、私達、男様に何か無礼を働いてしまったでしょうか?」

男「いやまぁ、アンタには首切られそうになったし」

刀「うぐっ!?」

包丁「でも追い出すのは少し待ったほうがいいんじゃない?」

男「なに?」

包丁「私を置いておいてくれるなら毎日ご飯の支度をしてあげるわよ?」

男「む」

包丁「どうせアンタ料理なんてまともにできないでしょ?」

男(言われてみれば確かに強みではあるな)

筆「そ、それなら私は手紙の代筆をしますよ!誰よりも達筆ですよ!ほら!」バサッ

男「・・・これは」

筆「ふふ、私の書いたものです。どうです?達筆でしょう!」

男「いや、ごめん。達筆すぎて読めねぇ」

筆「ガーン!」

刀「私は・・・そうですね・・・庭の手入れくらいしか・・・」

男「・・・」

筆「おどござんおねがいじまずー。おいだずどがいわないでぐだざいー」

男「いや、そういってもなぁ・・・」

筆「この家から出ていきたくないんです!この家が好きなんですぅ!」

男「・・・」

包丁「まぁその意見に関しては私も刀も同感ね」

刀「そうですね。大爺様と大婆様への御恩もあります」

包丁「まぁその所有者が亡くなって、その孫がいらないといいうのであれば私達もとやかくは言えないわね」

筆「漢字とひらがなだけじゃなくかたかなとあるふぁべっとも覚えますからー!」

男「いや、そういうことじゃないから」

筆「ガーン!」

ポンッ

筆「へ?」

男「わかったよ。お前らの気持ちはなんとなく伝わった」

筆「そ、それじゃあ!」

男「ん。まぁ今日からよろしくなお前ら」

包丁「はいはいよろしく~」

刀「よろしくお願いいたします」

筆「よろしくおねがいじまずー」

男「お前はとりあえず鼻かんでこい」

男「それで、いま部屋はどこが開いてるんだ?」

包丁「そうね・・・階段上がってすぐ左の部屋と一番奥の部屋かしら?」

男「じゃあ近いし上がってすぐの部屋にするかな」

刀「お荷物お運びしますよ」

男「ん、ありがと」

筆「ちーん!」

~1時間後~

男(なんとか片付いたけど・・・)

筆「男さん、これって何ですか?」

男「ん?そりゃパソコンだよパソコン」

筆「ぱそこん?」

男「うん。それ一台で絵を書いたり字を書いたり・・・いろんなことができるんだよ」

筆「・・・」

包丁「男の私物はいろんなものがあるのねー」

刀「男様これはなんでございますか?」

男「それは・・・」

筆「・・・」コソコソ

男「・・・何してんだ?」ガシッ

筆「ふぁっ!?」

男「パソコンどこに持ってくんだ?」

筆「いやあの・・・あのですね?」

男「・・・」

筆「字が書けてそのうえ絵も描けちゃうなんて・・・私の存在意義が根こそぎ否定されちゃいそうで・・・」

男「とりあえずそこに戻す」

筆「は、はい・・・」

包丁「とりあえず、男の部屋の片づけはこれくらいでいいかしら?」

男「そーだな。ある程度は片付いたし」

包丁「お布団はあとで運んでおくから」

男「あぁ、ありがとう」

筆「どうせ私は字しか書けませんよ・・・えぇ、達筆すぎて誰にも読めませんともえぇ」イジイジ

包丁「ほら、筆もいつまでもいじけてないで、いい時間だしそろそろお茶にしましょう」

筆「・・・お茶請けはなんですか?」

男(・・・こいつ見た目ほど落ち込んでないんじゃないか?)

筆「お饅頭おいしいです」モグモグー

包丁「アンタって本当に食いしん坊ねー」

刀「良いではないですか。元気な証拠ですよ」

包丁「そう?ほっぺたに饅頭を詰め込む様なんか食い意地のはったリスみたいだわ」

男「包丁って意外と毒舌なんだな。まぁ食い意地のはったリスはいいたとえだと思うけども」

包丁「んー・・・自分ではそんなに毒舌だとは思わないけれど」

筆「ほうへふほ!ほうほうはんはふこひ・・・」

包丁「まずは口の中の物を飲み込んでからじゃべりなさい」

男「ところで・・・一つ聞きたかったんだがここにはお前ら以外にも付喪神がいるのか?」

刀「今のところはいませんね」

男「・・・今のところ?」

包丁「そう。今のところ。ここにいる私達3人がこの家で一番の古株なのよ」

男「ふーん」

筆「そうですね、私達に次ぐとなると・・・箪笥さんあたりですかね?」

男「箪笥?」

筆「はい。御年98歳くらいですかね?」

男(なんとも感覚が狂いそうになる話だ・・・)

ボーンボーンボーン

包丁「あら?もうこんな時間・・・私はそろそろ夕飯の準備に入るわね」

刀「では私は風呂焚きの準備に」

男(ふーん・・・みんな家事やってんだなぁ)

男「・・・」

筆「・・・なんですか?」

男「筆はなんかしないのか?」

筆「?」

男「いや「なにが?」って顔されても」

筆「男さん。餅は餅屋という言葉をご存知ですか?」

男「なんだ急に」

筆「何事にも向き不向きというものがあるのです」

男(手伝いたくない言い訳にしか聞こえねーぞ)

筆「例えば私が包丁さんのお手伝いをして夜ご飯のおかずが一品減るくらいなら手伝わないほうがいいでしょう?」

男「それほどに壊滅的なのか」

包丁「違うわよ」

男「ん?」

包丁「筆は別に家事は普通よ?」

男「だったらなんで」

包丁「筆がつまみ食いするからおかずが一品減るのよ」

男「・・・」

筆「・・・」ニコッ

筆「そうだ!男さん、今は世間でいうところの春休みというものではないですか?」

男「そうだけど?」

筆「私でよければ学業のお手伝いをいたしますよ?」

男「ちなみにお前は何を教えられるんだ?」

筆「古い文献であればある程度はお答えできると思いますよ?」

男「古い文献・・・古文か漢文か?」

筆「短歌、俳句などもお手の物ですよ?男さん、私をちょっと、見直した?」

男「むかつく575だな」

筆「ふむふむ。私たちの時代の文学は男さんの時代では古い学問として親しまれているのですね」

男「まぁ古文っていうくらいだからなぁ」

筆「あ、これなんて私は好きですね」

男「ん?」

筆「恋ひわび しばしも寝ばや 夢のうちに 見ゆれば逢ひぬ 見ねば忘れぬ」

男「まぁ・・・57577ってのはわかるな」

筆「とても有名な方の和歌ですよ?」

筆「これは小野小町の歌の一つです」

男「ふーん・・・名前くらいは知ってるけども」

筆「これは恋をする女性の気持ちを歌にしたものですね」

男「で、どういう意味なんだ?」

筆「男さんはどういう意味だと思いますか?」

男「ん?んー・・・少し寝て夢の中で・・・わるい、まったくわかんね」

筆「確かにこの文章だけでは少しわかりづらいかもしれませんね」

筆「これはですね、恋に疲れてしまった女性の心情を表しているんです」

男「ふむ?」

筆「夢のうちに 見ゆれば逢ひぬ は夢の中であの人と会えるかもしれないという意味ですね」

男「んじゃこの後ろはなんだ?」

筆「これはもし夢で出会えなかったとしても眠っている間は恋しいという気持ちを忘れていられるという意味ですね」

男「・・・」

筆「どうですか?恋する女性の切なさがこの一文に込められているんです」

男「・・・」

筆「?。どうしました?私の顔に何か?」

男「お前・・・食い意地だけの女じゃなかったんだな」

筆「むー・・・男さん・・・私はこう見えても一応は神様なんですよ?」

男「うん。だからごめん。ちょっと見直した」

筆「あ・・・い、いえ・・・そう面と向かって言われると・・・照れますね・・・えへへ」

男「神様が何照れてんだよ」

筆「い、いやぁ、今までそうやって褒められたことなどなかったもので・・・」

ガラガラ

刀「失礼します男様、そろそろ夕食のお時間で・・・あら?」

筆「あ、刀さん」

刀「筆殿もここにいらっしゃったのですか」

男「ちょっとだけ勉強を見てもらってたんだ」

刀「そうでしたか。そろそろ夕食の時間ですので切りの良いところで居間のほうへお願いします」

筆「はふ~・・・いい匂い・・・」

男「・・・」

男(さっきの見直した発言は取り消そうかな)

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