ごんさん狐「First comes Rock……」兵十「!?」 (37)

<川>

兵十「うーん……ダメか……」ザバッ

兵十「病気のおっ母のために、ウナギを捕まえたいのに、ちっとも捕まらない……」


ごんさん狐「何をやっている、兵十」


兵十「ひっ!?」ビクッ

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兵十「今の声は……ごんさん!?」

兵十「あ、あれ……いない……」キョロキョロ





ごんさん狐「This way(こっちだ)」

兵十(いつの間に後ろに……!? 完璧な“絶”だった……)

ごんさん狐「何をしていたのだ?」

兵十「実はですね、病気のおっ母のためにウナギを捕まえようとしているのですが」

兵十「なかなかうまくいかなくて……」

ごんさん狐「ならば俺が手伝ってやろう」

兵十「え!?」

兵十「でも、この川にはもうウナギがいないみたいなんですよ」

兵十「いくらごんさんでもいないものを捕まえるのは無理では……」

ごんさん狐「……」ギロッ

兵十「ひっ、す、すみません!」

ごんさん狐「まぁ、よく見ておくのだな」

ごんさん狐「ウナッ、ウナウナナナ! ウナウナァァァン!」


ザザザッ……!


兵十「うわぁぁぁっ! 大量のウナギが集まってきた!」

兵十「あなたはウナギ言語が分かるのですか?」

ごんさん狐「全部な……」

兵十「ありがとうございます!」

兵十「これだけウナギがいれば、俺でも……」

ごんさん狐「そう急くな」

ごんさん狐「これから、お前がもっと捕まえやすくしてやろう」

ごんさん狐「First comes Rock……」グゴゴゴゴ…

兵十「!?」

ごんさん狐「ジャン……ケン……」





ザザァン……


ごんさん狐「しまった……」

ごんさん狐「水面を殴り、集まったウナギを失神させるはずが、川ごと吹き飛ばしてしまった」



途切れかけた意識の底で、兵十は安堵していた。

兵十(よかった……!)

兵十(吹っ飛んだのが川だけで済んでよかった……!)

数日後――

<村>


ザワザワ……


ごんさん狐「なにやら村が騒がしいな」

ごんさん狐「おい」

村人「ひっ、ご、ごんさん!」

ごんさん狐「村中が辛気臭いが、何かあったのか?」

村人「実はですね、兵十のおっかさんが亡くなったんです」

ごんさん狐「なんだと……?」

ごんさん狐(そういえば、兵十は病気の母親のためにウナギを……)

ごんさん狐(しかし、俺のせいでウナギが全部吹っ飛んだので、捕まえることはできなかった……)

ごんさん狐(兵十には悪いことをしてしまった……)

ごんさん狐(こうなれば、なんとかして兵十に償いをせねばならぬな)ゴゴゴゴゴ…



村人(どれほどの代償を払えば、これほどの“おおら”を……!)

イワシ売り「イワシ~、イワシはいらんかね~」

ごんさん狐(ちょうどいい。イワシを贈り物にするか)

ごんさん狐「おい」

イワシ売り「ゲ、ごんさん!?」

ごんさん狐「そのイワシ、兵十にくれてやれ。全部な……」

イワシ売り「いくらごんさんの頼みでも、それはちょっと――」





<兵十の家>

イワシ売り「……」ピクピク…

兵十「俺の家に瀕死のイワシ売りが倒れてる!?」

イワシ売り「う、うう……」

兵十「大丈夫か!?」

イワシ売り「イワシ……全部やる……だから許して……」

兵十「全部やるって……いったい何があったんだ!? 誰にやられたんだ!?」

イワシ売り「それをいったら……今度こそ消されちまう……」

イワシ売り「ひいいいいいっ!」タタタタタッ

兵十「……」

兵十「きっと誰かに脅されたんだな……」

兵十「脅した奴は許せない! このイワシもあとで返そう……」



ごんさん狐(兵十はこういう贈り物は好まぬのか)

ごんさん狐(ならば俺が自力で贈り物をするしかあるまい)

<山>

ごんさん狐「たしか、兵十は栗や松茸が好物だといってたな」

ごんさん狐「ならば栗の木を殴り、山を掘ることで、栗と松茸を持っていこうではないか」





次の日――

<兵十の家>

兵十「!?」

兵十「なんだこれは……!?」

兵十「俺の家の前に、大量の栗と松茸が……!」

兵十「栗は10万個はあるし、松茸は20万本はある……!」



ごんさん狐(これならば兵十も喜ぶだろう)

数日後――

<村>

兵十「おい、加助」

加助「どうした、兵十じゃねえか」

兵十「相談したいことがあるんだ」

加助「なんだ?」

兵十「実は、このところ毎日毎日俺の家の周囲に大量の栗や松茸が置いてかれるんだ」

加助「へえ、そりゃよかったじゃないか」

兵十「それがよくないんだよ」

加助「どうして?」

兵十「毎日、あまりにも大量に置いていかれるから、今や栗と松茸の山ができちゃってさ」

兵十「今日もここまで来るのに、二刻(約四時間)もかかったんだ」

加助「なんだって!?」

加助「そりゃきっと神様の仕業だよ」

兵十「神様が……?」

加助「そうさ、神様がお前に悪さをしているのさ!」

加助「そんな大がかりな嫌がらせ、神様じゃなきゃできっこないだろ?」

兵十「た、たしかに……!」

兵十「どうすればいい?」

兵十「これ以上、栗と松茸を置いてかれたら、俺は生き埋めになっちまう!」

加助「こうなったら、やられる前にやれ、だ!」

加助「火縄銃で神様をブッ倒すしかない!」

兵十「やっぱりそれしかないか……」

兵十「分かった! やってみる!」

次の日――

<兵十の家>

ガサガサ……


兵十(物音がする! きっと神様だ!)

兵十(殺るしかない!)

兵十(俺の念能力で、火縄銃を具現化!)ズズズ…



『俺の右手は火縄銃(ファイヤー・ロープ・ガン)!!!』

兵十「喰らえッ!」ズドンッ!!!




キィンッ!




ごんさん狐「ん?」

兵十「ごんさん!?」

兵十「ま、まさか……」ガタガタ…

兵十「貴方だったのですか? いつも栗をくださったのは……」

ごんさん狐「そうだ」

兵十(なんてことだ……!)

兵十(神様になら勝つ自信もあったが、ごんさんに勝てるわけがない!)

ごんさん狐「今のは念による銃弾だな……」

ごんさん狐「なるほど、母親の仇を取ろうというわけか」

ごんさん狐「家(アジト)は壊したくない」

ごんさん狐「This way(こっちだ)」

ごんさん狐「Follow me(ついてこい)」ザッザッザッ…



兵十(終わった……)

<墓地>

ごんさん狐「ここは墓場」

ごんさん狐「貴様の母親のな」



兵十(ごんさんを攻撃してしまった以上、もはや俺の命運は尽きた)

兵十(かくなる上は全力でごんさんと戦い、おっ母も眠るこの墓地で散ろう……)

ごんさん狐「First comes Rock……」グゴゴゴゴ…

兵十(おっ母……今、会いに行くよ……)

ごんさん狐「ジャン……ケン……」キィィィィィィィ

ごんさん狐「グーッ!!!」

兵十(すごい迫力)(拳でかい)(回避――)(絶対無理)(死)





兵十「……」

兵十「……?」

兵十(あ、あれ……生きてる……? どうして……?)


母「兵十!」


兵十「――おっ母!?」

兵十「なんで、おっ母が生きてるんだ!?」

母「私にも分からないんだよ。墓の下で眠ってたら、すごい衝撃で起きてしまったんだよ」

兵十「ごんさん、これは!?」

ごんさん狐「俺のパンチの衝撃で、貴様の母を蘇らせたのだ」

ごんさん狐「いや正確には……貴様の母は心臓と呼吸が止まってただけで、まだ生きていた」

ごんさん狐「だから俺のパンチで息を吹き返させることができたのだ」

ごんさん狐「遺体を燃やしてなくて幸いだったな」

兵十「そうだったんですか……!」

兵十「でも、どうして俺にここまでしてくれるんです?」

ごんさん狐「貴様が母親にウナギを食べさせられなかったのは俺の責任だからな」

ごんさん狐「その後、罪を償おうとイワシ屋を拉致したり、栗や松茸を与えたりしたが」

ごんさん狐「なかなか貴様に笑顔が戻らなかった」

兵十(嫌がらせじゃなかったのか……!)

ごんさん狐「そしてついさっき、仇討ちに燃える貴様の姿を見て」

ごんさん狐「母親を生き返らすのが何よりの償いになると分かったのだ」

兵十「ごんさん……」

ごんさん狐「俺のパンチで母親の病気は吹っ飛んだ。かなり長生きできるはずだ」

ごんさん狐「これで貸し借りはなしだ。少しだけ救われた」

ごんさん狐「達者で暮らせよ……兵十」

兵十「ごんさんこそ……お元気で!」







                                   ~おわり~

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