あい「今日もまた、いつもの河原で」 (10)

モバマスSSです。字の文(ただし会話多め)、短いです。

U149の設定を少し使ってます。

よろしければどうぞ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486477160

 河原。サキソフォンが高らかに歌う。ジャズの名曲「枯葉」の旋律だ。冬の早い夕暮れにそれは凛と響く。近くで憩う人々はみな、その音に聴き入っていた。
「あっ、あいおねーちゃんだ!」
 プロデューサーと一緒に散歩をしていたうちの一人、龍崎薫がその音の源に駆け寄る。
「ああ、薫じゃないか。どうした?」
 旋律を吹き終えた音の主は、東郷あい。そのままかがんで、駆け寄ってきた薫の高さに目線を合わせる。
「うん、かおるね、せんせぇたちと一緒におさんぽしてたの! そしたら、あいおねーちゃんが吹いててね! かっこよかったぁー」
「ふふ、ありがとう。プロデューサーたちとみんなで散歩か、いいな」
 そうしてあいはプロデューサーたちに目線を寄越す。子供たちが手を振っているのが見える。

 一緒に散歩していたキッズアイドルたちは鬼ごっこに興じ始めた。それを横目に、プロデューサーは手招きに応じてあいの横に座る。
「あいさん、よくここでサックス吹いてるよね」
「あれ、君もよくここに来るのかい? なんだか少し気恥ずかしいな。見かけたなら声の一つでもかけてくれればいいのに」
「いやあ、あんまり綺麗な音だからつい聴き入っちゃってね。あと、演奏の邪魔したくなかったし。昨日の『酒と薔薇の日々』もよかったよ。今日は『枯葉』か」
「昨日もか……フフッ、君は『分かる人』みたいだね」
「これでもピアノ弾いてたからね、最近は時間取れてないけど」

「君のピアノか……聴いてみたいな」
「うーん、ちょっとリハビリしなきゃな……しかし弾くにしても、どこで? サックスならこういうところでも吹けるけど」
「事務所にあったろう?」
「え、あそこで?」
 たしかに事務室にもインテリアのようにピアノが置いてある。実は調律もされている。
「ああ。よかったらそこでセッションでもどうかな?」

「……やってみるか。面白そうだし」
「決まりだな。今度事務所で時間ができたときにでも」
「あまり期待はするなよ?」
「いやいや、できるならそれで十分楽しみだよ」
「そうか……ちょっと指慣らしとくね」
「ありがとう、楽しみにしてるよ」

「さて、そろそろ事務所に戻るとするか」
「そうだな……私も戻ろうか」
「おう……おーい、みんなそろそろ帰るぞー」
「「「はーい!」」」
 帰路につく頃には日はもうほとんど沈んでいた。年が明けたとはいえ、冬の夜は早い。
「うう、寒いでごぜーますよ……」
「そうか? オレは平気だけど」
「アンタがおかしいだけよ」
 相変わらずにぎやかな帰り道だ。

「フフッ、子供たちは元気だな」
「だね。第三芸能課はプロデューサーもにぎやかだし。俺もあいつと交流があるからこの子たちの散歩も引き受けたけど、やっぱり楽しいもんだな。俺たちにもいい感じになついてくれてるし」
「ああ、こちらも元気をもらえるからありがたいものだよ」
「うちの課の落ち着いた雰囲気も好きだけどな」
「こっちはみんな大人だからな」
「出かけるといえばバーか居酒屋なのはどうにかしたほうがいいと思うが」
「だね……同意だわ、俺も肝臓の数値が気になるし、そろそろ抑えたい……」

 たくさんの小さな影と、大きな影が二つ。つきはじめた街灯に照らされ、ゆっくり歩いていく。不思議と穏やかになる喧噪が、今日もまた街の奥に消えていった。明日はどの旋律が聞こえるのだろうか。

以上です。乱文失礼いたしました。子供たちを優しく見守るあいさんが書きたかった。
ということで東郷あいさん、お誕生日おめでとうございます。また一緒にセッションしましょう。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom