【オリジナル】安価とコンマで戦いを生き抜く【魔法少女】 (1000)



寒い冬の事だ

人は空を見ていた

自動車もバイクも歩行者も、信号の色に関わらず動きが止まっていた

人波が停止し、誰しもが空を見上げていた

光だ

空より光の粒が降りた

淡く七色に光るそれを誰も彼もが一心に見ていた

遠く遠く空の彼方

地球を旋回する謎の箒星

そこから光が零れているように見えた

無数に降り注ぐ淡い光は地上の星の人々を祝福するかのように

星夜の夜に光は降りた

誰もが忘れられない夜となった

『Xデー』から、世界は姿を変えたのだ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486374994


ちょっと変わった日本で魔法少女が頑張る
そんなお話です

人が居らっしゃれば早速キャラメイク入ります

参加します


それでは始めます

主人公は女の子です


まずはお名前を
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

輝 翡翠 (かがやき ひすい) 

東条 弥恵 (とうじょうやえ)

>>8採用


名前:輝 翡翠(カガヤキ ヒスイ)


年齢を教えてください(10~17)

安価↓1

17


>>11採用:17


名前:輝 翡翠(カガヤキ ヒスイ)
性別:女性
年齢:17歳


次は貴女の好きな色を教えてください

1、『赤』
2、『青』
3、『緑』
4、『黒』
5、『白』

安価↓から最速で3票獲得した色を採用


最多得票:3、『緑』


それでは、翡翠さんの容姿を教えてください
(例:髪色とか髪型とか身長とか、身体的特徴を)

安価↓3までの要素をMIX

三白目で少し怖い印象のある凛々しい顔


>>20-22採用

名前:輝 翡翠(カガヤキ ヒスイ)
性別:女性
年齢:17歳

【容姿】
腰までかかる銀髪と、三白眼が印象的な少女
身長は135cmとかなり小さいが、凛々しい顔つきをしており怖がられることも多い




次は翡翠さんの内面の事を教えてください
(性格とか好き嫌いとか家族の事とか。内側の設定)

安価↓3までをMIX

引っ込み思案


>>24-26採用


名前:輝 翡翠(カガヤキ ヒスイ)
性別:女性
年齢:17歳

【容姿】
腰までかかる銀髪と、三白眼が印象的な少女
身長は135cmとかなり小さいが、凛々しい顔つきをしており怖がられることも多い

【内面】
引っ込み思案な性格だが、その根っこの部分では深い慈愛に満ちている
可愛いものが大好き



それではこれで最後の質問です
とっても大事な事を聞きます

……好きな動物は何ですか?

安価↓3までで最もコンマの数値が高いものを採用

ウサギ

※熱帯魚は範囲が広すぎるので下にずれさせていただきます。すみません


>>30採用:ウサギ


たくさんの質問に答えて頂いてありがとうございます
これでもう大丈夫です
これで、安心して『僕』を見つけてもらえます

そろそろ眠りから目を覚ますでしょう

どうかその時に、お会いしましょう―――――


――

――――

――――――――


目を覚ます

翡翠「…変な夢だったな」

鮮明に記憶に残っている
頭の中で声が反響していた

大人っぽい子供の声

その声といろいろ話をしていた

話の内容までは、覚えていないけれど


………学校に行かなければ


少しボーッとする頭を押さえて、私はいつものように朝の支度をした


翡翠「いってきまーす」

出掛ける前にお母さんに声をかける
お母さんは主婦だから、いつも家に居る

こんな時代に稼ぎがお父さんだけなのは、よっぽどお父さんが頑張っているんだろう
私はきっと恵まれた子だ

外に出ると風の冷たさに体が震える
ギュッとマフラーを掻き抱いて、小さな歩幅で寒風に耐える

      クリスマス
そろそろ『Xデー』だ

最初の『Xデー』からもう3年
世界各地で天変地異とも言えるほどの変化が起きて、早三年

砂漠が陥没して丸ごと空洞になったり、アメリカの方では年中霧に包まれて吸血鬼が闊歩していたり、ヨーロッパの海峡から100m級の巨大怪獣が発生したり

本当に色々な事が起こっているけれど、私達人間は案外逞しく順応して生きています

日本では『アンノウン』と呼ばれる未知の生物が発生しているけれど、魔法少女と呼ばれる人たちの活躍で、他の国よりはよっぽど平和なんじゃないかなと思ったりします


世界はたくさん変わった気がするけど、私の周りは案外変わっていない
私自身、3年前とどう変わっただろうか?

ガラス張りのショーケースに映る自分の姿を改めてみる

私の身長は12歳の時に止まった

ペタペタと体を触る

何処も何も変わった気がしない

否、本当に変わっていないのだ

いつか来る成長期をずっと待っていたけれど、一向にやってくる気配はない

沈みそうになる気分を何とか奮い立たせ、前を向いて歩きだす

その時、道行く人ごみの雑踏の最中

不思議な光景を目にした


まんまるしっぽに、おっきな足、ふわふわの真っ白な毛

ウサギだった
紛うことなくウサギだ

だが、そのウサギは奇妙な事に、執事のような燕尾服と片眼鏡と小さな帽子をかぶっていた

私は当然目を奪われた

だけど、それを目で追う人は他の誰にも居ない

気の所為かな?

そう思うけど―――



1、好奇心には勝てない
2、学校に行かなきゃ

安価↓1


>>39採用:2


……気のせいだよね

白昼夢のような物だと割り切り、私は改めて学校に向かった―――


その刹那


耳を劈く悲鳴

轟々と立ち込める土煙

ざわめきが徐々に徐々に大きくなる

人並みが徐々に徐々に私の向かうべき道と反対方向に押し出されていく

翡翠「…ッ!」

ドンッと強く誰かに蹴られる

悪意が無いと信じたい

私は小さいから、その人は慌ててたからと信じたい

私は衝撃に耐えきれず前へと押し出されて膝をつく

その先で


爛々と輝く真っ赤な目が、私を見ていた

身長2mはあろうかという巨体

2本の巨腕と4本の触手が怪しく蠢く

バックリと裂けた大きな口を開くと

「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

と怪物は啼いた


それが引き金となってどよめきは混乱に変わる

「きゃあああ!」
                       「おいマジかよ!」

「おまっ!写メ取ってる場合かよ!!」
                       
                       「魔法少女ちゃんまだかよ!」

思い思いの叫びが聞こえる

そんな中、私は情けなく腰を抜かしていた


怪物に睨まれて、私は一歩も動けない

怖い

ただそれだけの事で、私の体の末端に至るまでがマヒしている

怪物「可愛い可愛いお嬢ちゃんだぁ」

おどろおどろしい濁った声が私に向けられる
私はただ、震えるだけだ

怪物の眼は笑っていた

気持ちの悪い悪意が私に向けられている

あの怪物は私に向かってきている

どうして、どうしてこんな事に?

目の前の現実を否定したいと思考が回転する
それでも怪物は止まらない

ああ…もう無理そう

そもそもは知っても逃げ切れそうにないし

……虚しいなぁ

私はせめて心だけでも逃げていようと、きつく目を瞑り、頭を差し出した


終わりの時を待って、その場に座り込んでいた私の耳に


「チェストオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


あまりにも似つかわしくない言葉が聞えた

私は見た

私は前を向いていた

目の前にはあの怪物の大きな腕

そして、それを蹴り飛ばすあの白ウサギの姿だった

一瞬、理解が及ば無い

あまりにも予想を超えた展開だった
助けてくれたのは大人の人でも、ヒーローでも、魔法少女でもなく

私よりも小さな可愛らしいウサギだったのだ


怪物の巨体がガラスのショーケースを叩き割り、横たわる

ウサギ「大丈夫だった翡翠ちゃん!?」

翡翠「喋った!?」

ウサギは怪物を蹴り飛ばすと一目散に私の下に駆けてきた
しかも喋った

翡翠「…っていうか私の名前」

ウサギ「そりゃ知ってるよ!もう!なんで見つけてくれないかなぁ!?危うく遅れるとこだったじゃないか」

翡翠「え、えと見つけたけど学校行こうと思って…」

ウサギ「もう!翡翠ちゃんは真面目さんだなぁ!取り敢えずこの場を離れよう!アレはすぐに起き上がるから!!」

翡翠「う、うん…わっとと…」

ウサギ「こけないようにね!」

私はウサギに手を引かれてどこかへと走った
私の体は、いつの間にか普通に動いていた


ウサギ「ここまで来れば、少し時間が出来る。ちょっと状況を整理しようか」

ウサギに連れてこられた場所は、人目につかない路地の裏
まだ近くでは人のざわめきが聞こえてくる

翡翠「う、うん。お願いえっと……なんて呼べばいい?」

ウサギ「僕かい?僕の名前は……」

ウサギ「……無い」

翡翠「え?」

ウサギ「しまった!決めてなかった!これは困ったぞ!!」

翡翠「ええ~?」

ウサギは本当に困ったというように頭を抱えている
なんというか、よく分からないけどこの子はせっかちなんだろうと容易に想像がついた

ウサギ「そうだ!翡翠ちゃんが決めてよ!それが良い!」

ウサギ「僕に似合うカッコイイ名前を頼むよ!」

翡翠「と、突然言われても…えっと………じゃあ……」



謎の執事風白兎の名前
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

オルス


>>47採用:オルス


翡翠「……オルスなんて、どうかな?」

オルス「うん!いいね!気に入ったよ!!僕はオルスだ」

オルスは誇らしげに胸を張って、改めて名前を名乗った

翡翠「えっとオルス?」

オルス「なんだい?」

翡翠「色々聞きたいことがあるんだけど…えっと…」



1、どうして助けてくれたの?
2、オルスは何者なの?
3、オルスは男の子?女の子?
4、それ以外(自由安価)

安価↓1


>>52採用:1


翡翠「どうして助けてくれたの?」

それが一番に浮かんだ純粋な疑問だった
きっとオルスは私の事を知っているんだろうけど、私は何も知らないから

オルス「勿論、キミが翡翠ちゃんだからさ!」

翡翠「それってどういう意味?」

オルス「僕は僕だ。キミはキミだろ?キミが翡翠ちゃんじゃなかったら助けなかった、僕はオルスだから翡翠ちゃんを助けた。それが理由だよ」

翡翠「……良く分からない」

オルス「う~ん…まあいいじゃないか!運命の出会いって奴だよ!」

思っていた答えがもらえなかった
だけど、本当にそれ以上の理由なんてないのかもしれない

運命の出会い…か


オルス「それよりも、やらなくちゃならないことがあるんだよ!」

翡翠「やらなくちゃならないこと?」

オルス「うん、アンノウンを倒さないとね」

翡翠「そっか。そうだね」

オルス「おお!やる気なんだね!!」

翡翠「うん、頑張ってね」

オルス「ん?」

翡翠「ん?」

オルス「翡翠ちゃんがやるんだよ?」

翡翠「へ?え、無理だよ。私魔法少女でもないし。それに、オルスは強かったじゃない」

オルス「ボク程度の力じゃあ消滅まで持って行けないよ。不意を打って渾身の力を持って、アレが限界さ」

翡翠「じゃあ、やっぱり魔法少女さんが来るのを待つしかないよ」

オルス「チッチッチ。キミが居るじゃないか」

オルスはカッコつけたようにウィンクし、私を指さして言った


翡翠「だから、私…魔法少女じゃないから。別の翡翠ちゃんと勘違いしてない?」

オルス「違う違う。今から成るの」

翡翠「魔法少女に?」

オルス「魔法少女に!僕はその手伝いができるから」

翡翠「ど、どうして私が…」

オルス「キミがキミだからだよ。キミが翡翠ちゃんだから、魔法少女になれるんだ」

翡翠「オルスってば、そればっかり……」

オルス「…あれ?魔法少女になりたくない?」

オルスの小さな手が私の手を握る
気付けば、私の体はもう一度震えていた

オルス「……怖いのかい?」

私は頷く

オルス「そっか、そうだよね。でも、キミはここで震えてるだけかい?」

私はただ肩を震わせる


オルス「……本当に嫌なら、それでもいいよ。でもあのアンノウンは、もう別の女の子を襲い始めているよ」

私は恐る恐る隠れていた路地裏から顔を出し、路上の方に目を向ける

そこには小さな女の子が座り込んでいた
声も上げずに体を震わせていた

少女の傍らには血を流して倒れる、父親と思しき男性の姿

しなる触手が倒れていた男性の体を吹き飛ばす

少女は涙を目いっぱいに溜めて、ガタガタと震えている

オルス「キミが行けば絶対あの子は助かるよ。それでも嫌かい?」

私はギュッと目を瞑る

オルス「……ちょっと卑怯な言い方だったね。僕が行くよ、助けられないかもしれないけど、時間ぐらいは稼げると思うから」

私の手を放してオルスはあの子の下へ向かおうとしていた
ついさっき、私にしてくれたみたいに

私は、思わず手を伸ばした

オルス「…翡翠ちゃん?無理…しなくていいんだよ?」

私の震えを止めてくれたオルスの手を握り、私はオルスに向かいあって言う


翡翠の決意の言葉
安価↓1

怖いけど放っておけないよ…!


翡翠「……行く。私を助けてくれたオルスを、あの子を助けようとしているオルスを…只の卑怯者になんかしたくない」

オルス「…うん。それでこそ翡翠ちゃんだ」

オルスは両手で私の手を強く握り返してくれた

                    アクセス
オルス「合言葉は一言でいい。『繋がれ』。その一言で君は魔法少女さ」

オルス「準備はいいかい?」

翡翠「………うん」

怖くないといったらウソだ
準備なんて何をしたらいいのかさえ分かってない

けど、もう震えは無い

オルスが私に動き出す勇気をくれたから

だから私は―――


    アクセス
翡翠「繋がれ―――!」




その言葉と共に、光が溢れてきた
握ったオルスの手から、力が流れ込んでくるのが伝わった

優しくて包み込んでくれるような

温かい風を感じた


眩いばかりの光に飲み込まれて、私はようやく目を開ける

思ったよりも時間は経っていないらしい
まだ、目の前の怪人はゆっくりと少女に向かって行っている

不思議な感覚だった
外の空気を感じない
服を纏っているという感覚が無い

何かのお腹の中に居るという表現が正しい気がする

鮮明に目の前は見えているけど、不思議なほど高い位置に目がある気がする


………オルスの姿が見えない

翡翠「オルス?」

呼びかけてみると、頭の中に声が響いた

オルス「僕は傍に居るよ。簡潔に説明すると、キミの魂と混ざりあっている感じかな」

オルス「時は一刻を争うよ!混乱してるだろうけど、急いで助けに向かおう!!」

翡翠「う、うん!分かったよ!」

一歩、足を動かした

その瞬間

大きく体勢がぶれる

翡翠「うわっ!?うわわわっ!!!こ、転ぶ――――」

予想を遥かに超えた脚力は、全力でコンクリートを踏み抜いたのだ

それでも勢いは止まらない

私は制御不能の体のまま、盛大にすっ転んだ


全力で転んだ私の体は宙に舞い、はじき出されたボールのように一直線にアンノウンにぶち当たった

翡翠「痛――くない?」

私の3倍はあろうかという巨大な怪物に体当たりをして、その後地面に体を打ち付けて、私の体に痛みは無かった
奇妙な感覚に戸惑いながらも、立ち上がり足元を見回す

居た

翡翠「だ、大丈夫?一人で立てそう?」

震えていた小さな女の子
女の子は、震えながらも頷いて、危なっかし気に立ち上がる

翡翠「ここはえっと…お姉ちゃんが頑張るから、早く逃げて」

女の子「う、うん!頑張って騎士のおじさん!」

翡翠「うん!…………うん?」

今、明らかにおかしな単語が聞えた
………おじさん?騎士?

私は大慌ててガラス張りのショーケースを見つけて、自らの体を映し出した


そこに映っていたのは鎧だった

西洋風の騎士の鎧

滑らかなカーブを描いた緑色の美しい鎧

それが、私の姿だった


翡翠「………オルス?」

オルス「なんだい?」

翡翠「………何か、何かね、私の想像と違うんだけど」

オルス「そうかい?」

翡翠「私、魔法少女だよね?あの可愛くてフリフリした衣装の」

オルス「そうだよ?テレビとかで、見たことあるよね?」

翡翠「……………私だけ、何かごつくない?」

オルス「う~ん……まあこういう時もあるんだよ。うんうん」

翡翠「嘘つき!オルスの嘘つき!!うわーん!!騙された!!」

オルス「嘘じゃないよ!魔法を使って戦う少女!魔法少女だよ!!」

翡翠「この姿どう見ても女の子じゃないッ――」

詐欺師に文句を言おうとした瞬間、体に強い衝撃が走る

車だ

ペシャンコになった車が飛んできたのだ


ぶつけられた左肩がびりびりと痺れる
いや、痺れだけで済んでいる事に驚くべきだろう

アンノウン「さっきからゴチャゴチャゴチャゴチャ!誰と喋ってやがる!!」

翡翠「ひッ!」

敵意…いや、殺意というべきか
初めて向けられた感情に、足がすくむ

アンノウン「おっさんの癖になよなよした喋り方してんじゃねぇ!!」

どうやら声まで変えてもらっているらしい
無駄な所で多機能な鎧だった

しかし、こんな情けない自分の顔を隠せるという意味ではフルフェイスの全身鎧というのは、ある意味ではよかったのかもしれない

鞭のようにしならせた4本の鞭が、私に振るわれる
私は半ばやけくそ気味に両腕を突き出しガードした

その時、一陣の突風が吹き荒れる

まるで私の体(鎧)を守る様に、触手の軌道を逸らした


アンノウン「なんだぁっ!?」

敵も驚いている
今初めて、目の前のアレと共感を持つことができた

どういう事だろう?

オルス「どうやら風を生む出す魔法のようだね」

翡翠「風…」

オルス「見たことあるでしょ?炎とか氷とかを使って戦う魔法少女を」

翡翠「私の場合、魔法少女じゃなくって仮面ライダーか何かだと思うんだけど」

オルス「拗ねない拗ねない。ほら、戦うんだ!」

翡翠「た、戦うって言っても…」

親とも喧嘩したことの無い私に戦い方なんてさっぱりわからない
けれど、この鎧の頑丈さは本物だと思う

こんな姿になった以上、出来そうなことは……

翡翠「想いっきり殴る!!!」

風に触手を弾かれて動揺しているアンノウンに向かって、大きく拳を振り上げた


アンノウン「フッ!!グゥーーッ!!!」

お腹に向けて放った拳は、触手では無い方の両腕で受け止められてしまった
衝撃を追うように後ろから突風が吹くが、それでも目の前の怪人はそれを受け切った

アンノウン「へへっ…ちっと驚いたが…攻撃はそうでもねえな」

翡翠「このっ!」

もう二撃目を叩きこもうとしたとき、横合いから強く打ちつけられて、体が宙に浮く

痛い!
今まで喰らったそれとは比べ物にならない衝撃に、体が異常を訴える

翡翠「ゲホッゴホッ…!」

アンノウン「どうだよ俺様の触手の味は!ホントは可愛い魔法少女を嬲るための腕なんだがな」

アンノウン「おらよっ!!」

上から下へと打ち付けられる鞭を、ゴロゴロと後方に転がって回避する

アンノウン「まだまだァ!!」

続けざまに何度も鞭が振るわれる
感覚が強化されているのか、見切るのはそれほど大変では無かった。無意識的に風も回避に手を貸してくれている

しかし、このままでは周囲を破壊され続けるだけだ



翡翠「攻撃…攻撃手段が欲しい…。何か、風のカッターみたいなのでないかな?」

オルス「いいんじゃないか?出そう?」

翡翠「分かんない。どうやって風が出てるかも分かんないし」

オルス「むむむ…そうだな…魔法の扱いの習得は見よう見まねじゃ何ともならないよね…」

翡翠「ど、どうしよう?このままじゃ追い詰められるだけだよ!折角魔法少女になれたのに…このまま誰かの助けを待つしかないの…?」

オルス「……魔法少女。そうか!」

翡翠「何か閃いた?」

オルス「魔法少女といえば杖だよ!魔法の杖さ!!キミの武器だ!!」

翡翠「ああ!それだ!何処にある?」

オルス「頑張って出して!!」
                             アクセス
翡翠「け、結局それ!?え、ええーいままよ!『繋がれ』――!!」

空を掴むように、がむしゃらに私は手を伸ばして叫んだ……



翡翠の武器
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

薙刀

ハルバード


>>73採用


空を握った掌の中から、風が生まれた
目視できるほどの強大な竜巻がうねりをあげて吠える

その行動に理性は無かった

あるのは心の奥底から湧き上がるイメージ、闘争本能とも呼ぶべき感情
右手に握られたそれの使い方を、私は即座に理解した

柄を両の手でしっかりと握り、私に向かって振るわれる職種に振りかぶる
槍のような見た目のその武器の穂先には鋭い三角刃と、カミソリのような三日月刃がついていた

三日月の刃が、まるで豆腐を刻むように刃の重みだけで筋肉の塊のような触手を両断した
断面からは熱い真っ赤な液体が零れだす

アンノウン「な、なんだぁっ!?お、俺の腕が!?」

一瞬の行動の停止

隙はそれだけで十分だった
やるべきこの道筋が、手に取るように見える


この鎧は追い風を生む鎧だ

この足は制御する事すら難しい豪脚だった

右肩には他の部位に比べて厚い鎧が重なってできていた

ミトン状ではなく、五指を動かせる指

そして、私のこの眼はどんな些細な動きすら見逃さない

見えてきた

この鎧の特性が

私の手の中にあるこの武器の使い方が



私は渾身の力を込めてコンクリートを踏みしめた

右手でハルバードを短めに持ち、アンノウンを眼前にとらえる

大きく、大きく振りかぶり、私はそれを『ぶん投げた』


放たれたそれは巨大な突風を生み、障害物の一切を粉砕して目標まで飛んでいく

一本足りない触手と両腕でアンノウンは丸く体を守る

車すら弾き飛ばす強靭な触手
魔法少女の拳を受け止めきる剛腕と巨体
アンノウンは己の体に絶対の自信を持っていた

穂先が肉壁に突き刺さる

突風を生んでいた回転は止まり、静寂が生まれる

しかし、追い風は止まない

勢いは収まらずギリギリと肉壁に深々と突き刺さっていく

それでも、それでも5重の肉壁は厚く強固だった
最後の腕を貫通し、追い風が止んだ

アンノウン「ヘッ…どう…だよ――」

顔あげたアンノウンの目の前には、疾風纏う騎士が居た
騎士は大きく体を捻り、片足で立っていた


翡翠「シュート!!!」


渾身の力を持って騎士の豪脚はハルバードの尻を叩いた

ゴン!!!

という強烈な音と共に生まれた風は、容赦なくアンノウンの体を貫いて弾けた


翡翠「はぁ…はぁ…はぁ……」

私は息も絶え絶えに、その場にへたり込んでいた
アンノウンの消滅を確認すると、一気に気が緩んだのか変身は解けた

オルスは辛そうな翡翠の背中を撫でながら、優しく語り掛ける

オルス「お疲れさま」

翡翠「うん…」

オルス「頑張ったね」

翡翠「うん…」

オルス「キミは今日から魔法少女だ。他の誰でもないキミさ」

翡翠「……うん」

オルス「一先ず。今日はこれで、お疲れさま。これからもボクはずっと一緒だよ」

翡翠「………うん」

言いたいことは色々あった
あんな姿になるなって聞いていないと、文句の一つでも言ってやりたかったけど

私の体にはある一つの感情…『達成感』でいっぱいだった

本当に不思議だけど、満ち足りた心のまま意識を手放した


という感じで、長い長いプロローグが終わりました


騙して悪いが、これは可愛い魔法少女がキャッキャウフフするお話じゃないんだ
カッコイイ鎧の騎士様が魔法少女を助けるお話なんだ
本当にすまない


と、いうわけでここからが本編です


目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった
混乱していると、程なくして看護師の人がやってきて事情の説明をしてくれた

簡潔にまとめると、私はアンノウンの被害者という事になっているらしい
確かに、状況だけ見るとあんな破壊された街中で気絶して倒れている少女
被害者として判断して当然だ

実際は魔法少女としてアンノウンを倒した騎士なのだけれど

とにかく、一日安静にしているようにとお医者さんに言われた私は、オルスと話をしていた


翡翠「ねえオルス」

オルス「なんだい?」

翡翠「オルスの姿は、大人の人たちには見えないの?」

オルス「魔法少女以外には見えない。が正確だね」

翡翠「じゃあ魔法少女になる前に私がオルスを見つけられた理由は?」

オルス「運命の出会いかな。そうとしか言いようがないしね」

翡翠「……そっか」

いろんな事があり過ぎたせいか、こんな冗談みたいな話もすんなり受け入れられた
私の正体が、あの緑色の鎧の騎士だという事よりよっぽど信じられる


翡翠「……あっ、学校休んじゃった」

オルス「仕方ないよ。あんな事があったんだから」

翡翠「連絡入れなきゃ…」

オルス「もう、翡翠ちゃんは真面目だなぁ…」

オルスは呆れながらも、クローゼットにしまわれていた私の制服のポケットから、スマホを取り出してくれた

一先ず学校、次にお母さんに電話をした
どちらもすでに連絡がいっており、とても心配していた様子だった


翡翠「う~ん…迷惑かけちゃったな」

オルス「ちょっと位いいじゃないか!キミはヒーローだったんだから!」

翡翠「……どうせなら、可愛い衣装が良かったな」

そんな事を話しながら、時間を潰す
安静にしているだけというのは、なんだかとても暇だった

出来る範囲で、何かして暇を潰そうかな?


安価↓1

屋上か中庭で日向ぼっこ


>>84採用

屋上で日向ぼっこでもしようとオルスに言うと、『真冬の風は冷たいよ』と窘められて、渋々中庭に向かった

中庭はとても綺麗な場所で、病院側の努力が垣間見える場所だった
麗らかな陽光が差しこむベンチに座る

オルスは隣に座ろうとしていたけど、私は膝の上にのせて抱きしめた


オルス「は、恥ずかしいよ」

翡翠「むぅ…もふもふ……」

むずがるオルスをよそに、その体毛を堪能する
ウサギさんはやっぱり尻尾が可愛いよね

というわけで、重点的に尻を撫でまわす私だった

傍から見ると、きっと怪しい姿に映る事だろう


そんな折、ふと誰かが視界に止まった


1、同じ学校の制服
2、セーラー服の少女
3、お母さん

安価↓1

1


>>86採用:1


同じ学校の制服の……


1、男の子
2、女の子

安価↓1

2


>>88採用:2女の子


その子との関係は……


1、友人
2、知り合い
3、あまり印象にない

安価↓1


>>90採用:2、知り合い



安価↓1その子の名前


安価↓2学年(後輩とか先輩とか)

四条 葵 (しじょうあおい)

一年生 後輩


>>92採用:四条葵

>>93採用:一年生 後輩



容姿とか内面をひっくるめたキャラ設定
安価↓3までをMIX

武術マニア


>>95-97採用


名前:四条 葵(シジョウ アオイ)
性別:女性
年齢:15歳

【容姿】
おさげ髪で、猫耳と猫尻尾のアクセサリーをいつもつけている女の子

【内面】
大人しく弱弱しい性格
一つの事に夢中になると周りが見えなくなるともっぱらの評判の盲目娘
武術マニア


廊下の先に、見慣れた制服の姿が見えた

私と同じ学校の制服だった
しかもあの猫耳と猫尻尾、見間違う筈も無い


四条葵ちゃんだ
彼女はトラブルメーカーらしく、ちょっとした有名人だ

一応手を振ってみたモノの、気づかれる様子も無い

彼女は此方に視線も向けず、どこかへと小走りで去って行った
その後ろを、茶トラの猫が追っていた


翡翠「………あのさ、病院って動物駄目だよね?」

オルス「そ、それを僕に言うかい?僕、抜け毛とか無いよ?だから安心して傍に置いてね?ね?」

不安そうに私を見るオルスのヘタった耳を優しく撫でてやる

……私の見間違いじゃなければ、アレは間違いなく猫だった
病院内に猫を持ち込んで何も注意を受けていないという事は……

もし、話す機会があれば聞いてみようかな

何はともあれ、私達はゆっくりと日向ぼっこを楽しんだ


その日の夜

食事を終えた後、スマホでテレビを見ていると今日のニュースが流れていた
今日あの町で出会ったアンノウン、正にその事だった

そして、思いっきり私の姿(騎士鎧)が写り込んでいた

『翡翠の騎士』
なんて言って大々的に各方面で取り上げられている

そりゃそうだ、アンノウンでもない魔法少女でもない、新たな存在の確認ともなれば大ニュースにもなるよ

……ごめん、それ魔法少女です


翡翠「……どうしようオルス。公表した方がいいかな?」

オルス「きっと大変な事になると思うよ」

翡翠「………私もそう思う」


はぁ、と小さな病室で大きなため息がこだました



と、いうところで今日の更新はここまでです


好きな色によって鎧のデザインとか特性が大きく変化しました
どの色を選んでも結局フルフェイスの鎧なんですけどね


これからもどうぞお付き合いくだされば幸いです
ではでは


そろそろ再開です


名前:輝 翡翠(カガヤキ ヒスイ)
性別:女性
年齢:17歳(高校2年)

【容姿】
腰までかかる銀髪と、三白眼が印象的な少女
身長は135cmとかなり小さいが、凛々しい顔つきをしており怖がられることも多い

【内面】
引っ込み思案な性格だが、その根っこの部分では深い慈愛に満ちている
可愛いものが大好き。特にウサギ


【魔法】
『翡翠の騎士』
翡翠のような美しい緑色をした鎧の騎士に変身する
全長2m15cm
顔を見せないフルフェイスの兜と、右腕だけ分厚い装甲のアシンメトリーのデザイン
厚い装甲の右腕はそのまま盾のようにして使うこともできる
右腕を除くと、すらっとしたフォルムで、やや装甲が薄いが動きやすい
常に風を纏っており、追い風が自動的に攻撃と防御を補助する
拳よりも蹴りの方が力が出やすい
この姿になっているときは声が変わり、渋い大人の男の声が流れる

『ハルバード』
翡翠の騎士の専用武器
突風を纏う嵐の槍斧


名前:オルス
性別:???
年齢:???

【容姿】
燕尾服と片眼鏡、小さなハットをかぶった執事風の白兎
体長は20cm位。重さは3kg位
大人っぽい子供の声で話す

【内面】
そそっかしい性格
正義感が強く、ヒーロー気質な所がある
一人称は『僕』だが、男の子か女の子かはよく分からない
翡翠の事が大好き


【どこかの屋上】


そこに一つの人影があった
いや、正確には二つだろうか?

小さな人形のようなモノが、その人影の周囲をぶんぶんと蟲のように飛び回っていた
その人影は、眼下の町を眺めていた

「『翡翠の騎士』だってさ」

甲高い女の声
どうやら小さな人形のようなモノの声のようだ
奇妙な不快感を抱かせるその声は、何が楽しいのか笑い交じりにその人影に話しかけている

話しかけられた方はと言えば

「…ふ~ん。どうでもいいよ」

と、明らかに鬱陶し気に言葉を返していた



「どうせ何も変わりはしないよ」

「そうかな?本当にそうかな?お前は本当は求めてたんじゃないか?自分以外に戦ってくれる都合のいいヒーローをサ」

「五月蠅い」

「ギャハッ!怒った怒った!相変わらずお姫様は図星がお嫌いだ」

「………」

笑い転げる小さな悪魔に、鋭い眼光が付きつけられる
しかし悪魔は臆せずにやにやと笑い続ける

悪魔がもう一度口を開こうとしたその視線の先で、何かを視界にとらえた
                                                                                クリスタリア
「……獲物だぜ。どうだい?行くかい?行かなくてもいいんだぜ?誰もお前を褒めてはくれない。世間が好きなのはお前じゃなくて『戦姫』だ」

「…別に。どうだっていいよ」

人影は何の迷いも無く、屋上から身を乗り出して飛び降りた

  アクセス
「『繋がれ』――」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次の日の朝、私は無事に退院して晴れて学校に向かっていた
勿論オルスも一緒だ

オルス「分からない問題があったら僕がコッソリ教えてあげるからね!」

とはオルスの弁だった

しかし、一緒に居ないといけない理由は分かるけど、もしオルスが見える人が学校に居たらどうしよう?
魔法少女同士の繋がりとか、寧ろ作っておくべきなのかな?
……でも、私はそんなに気軽に変身できないし、隠しておいた方がいい気もするけど。どうなんだろう?

そもそも、魔法少女ってどんなことをすればいいのかな?
魔法少女の目的とか、全然知らないし
そういう事も、一度オルスと話し合った方がいいかもしれない

なんて、オルスに聞かれたら『真面目だなぁ』と言われそうな事を考えながら学校に向かった



学校が近くなり人が増えてきたなと思ったとき、ふと隣にオルスが居ない事に気付く
周囲を見回していると

オルス(ここだよ)

と頭の中で声が響いてきた

オルス(ごめんね勝手なことして。今キミの心の中に居るんだ)

翡翠(どういうこと?)

オルス(一度魔法少女に変身しただろう?あの瞬間から、ボクと翡翠ちゃんの魂はもう繋がりあっているんだ)

頭の中で考えた言葉で、そのまま会話ができる
不思議な感覚だったけど、なんとなく納得もできた
変身しているときの、オルスと会話しているあの状態に近い感覚だった

オルス(翡翠ちゃんはちょっと普通の魔法少女じゃないからね。僕は姿を隠している方が都合がいいと思ってさ)

翡翠(それはそう思うけど、偶々同じ学校に魔法少女が居るかな?)

オルス(多分ね。意外と多いよ、魔法少女って)

翡翠(そういうもんなんだねぇ)

何となく納得をしながら、学校への歩みを進めた



イベント判定
5以上で発生

直下コンマ


コンマ判定:7 イベント発生



1、茶トラの猫
2、誰かと肩がぶつかる
3、学校一の有名人

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>116採用:2


昨日見た茶トラの猫の事を思い出し、どこかに居ないだろうかときょろきょろしながら歩いていると
不意に誰かにぶつかってしまう

翡翠「ご、ごめんなさ…い」

見上げるほどの高さから、じろりと鋭い視線が向けられる
私も目つきが良い方じゃないけど、それを差し引いても怖い目つきの男の人だった

男の人「……いや、こっちこそ」

ぶっきらぼうにそれだけ言うと、溜息を吐かれながら背中は遠ざかっていく

翡翠(………こ、怖かった…)

オルス(大丈夫かい翡翠ちゃん?)

翡翠(う、うん…)

私は何とか気を取り直し、今度は前を向いて歩き始めた

確か今の人は…全然交流も無いけど、去年同じクラスだった人だ
名前は…『朝 陽一(アサ ヨウイチ)』君だったと思う

所謂不良って呼ばれてる人で、いつも一人で居る
あんまり友達と話しているところとか、見たことの無い人だ

やっぱり、評判通りちょっと怖い人だったな


教室に入ると、騒がしいグループの子達が集まって何かを話していた
自分の席に座ると、意識しなくてもその大きな声が聞こえてくる

「見ろよコレ!マジ凄くね?」

                           「ヤバいヤバいって!そんな近くに居たの?」

「マジよ!大マジ!俺の妹助けてくれたんだって!」
                            
                           「超カッコイイよなぁ『翡翠の騎士』」

「だよなぁ!激シブだったわマジ…」


思わず吹き出しそうになるのを必死で抑える
早速、噂になっていた

それもそうか、一駅超えた直ぐ近くの町で事件があったんだ
学校で話題になって当然だ
…というかあの女の子、齋藤君の妹さんだったんだね
お父さん、無事だといいけれど


「早速噂になってるね」

突然、話しかけられ肩が飛び上がる
話しかけてきたのは隣の席の友達、『夕原 可憐(ユウバル カレン)』ちゃんだった

翡翠「う、噂になってるって?」

可憐「『翡翠』の事に決まってんでしょ?」

翡翠「えええっ!!?」

あまりの衝撃に大声を出してしまい、視線を一手に集めてしまう
私は恥ずかしくなって身を縮める

しかし、まさかこんなにも早く身バレしてしまうなんて
学生の情報網おそるべし

翡翠「あ、あのあの…えと…わ、私の事どどどこで?」

可憐「へ?…ああ!違うってバカね翡翠。アンタの事じゃなくて『翡翠の騎士』の事」

翡翠「だ、だからそれはわた…………あ、そっか。私…じゃ、ないのか」

可憐「ふふっ、もう変な所で天然発揮する子なんだから」

可憐に笑われてしまう
しかし、勘違いで本当に良かった
なんともまぁ、心臓に悪い名前なんだろうか


可憐「もう昨日からネットとかではお祭り騒ぎよ」

翡翠「そ、そうなんだね…」

可憐「アンタ、近くに居たんでしょ?どんな感じだった?」

翡翠「どんなって……えと、よく覚えてないかな」

可憐「それは残念。齋藤みたいに写真の一枚でも取っておきなさいよね」

翡翠「あはは…」

それは自撮りをしろという事だろうか?
流石に冗談だけど

                        クリスタリア
可憐「もうその騎士様のおかげで昨日の『戦姫』様の活躍が全然取り上げられないの。同じ事してるのに理不尽よね」

翡翠「確かに…そうかもね」

クリスタリア…『星涙の戦姫』と称され、『戦姫』と世間一般にそう呼ばれている魔法少女
彼女は他の魔法少女とは特別に、日本中から愛されている
何せ、この世界で一番初めに姿を見せた魔法少女なのだから

3年前の『Xデー』から今日この日まで戦いを続けてきた魔法少女
昨日魔法少女になったばかりの身としては、ただただ尊敬しかない


可憐は『戦姫』の大ファンだ
この扱いの差に納得がいかないのも、仕方ないのかもしれない

翡翠「でも、一過性のブームなだけだよ。すぐに収まると思うな」

可憐「そうよね。『あの人』みたいなもんよね」

翡翠「うん」

それからは可憐から暫く、昨日の授業の話をした


可憐の言ってた『あの人』って、多分『あの人』だろう
学校一の有名人
どうどうと自らを魔法少女だと公言したあの先輩

一度も話をしたことも無いけど、ちょっと気になるかも


昼休み

ぐ~っと大きく背伸びをする
一日学校を休んだだけで、何だか無性に体が疲れやすくなった気がする

しっかり昼ご飯を食べて午後の授業に備えないと

私は……


1、教室で可憐と食べる
2、食堂で食べる
3、一人になれそうな場所を探す

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

1


>>125採用:1


机をくっつけて、可憐と一緒に昼ご飯を食べる
今日はお母さんが作ってくれたお弁当だ

可憐「それ、翡翠が作ってるの?」

翡翠「ううん、お母さん」

可憐「そうよね。意外と翡翠って女子力低そうだし、出来無さそう」

翡翠「むっ…その言い方は聞き捨てならないなぁ」

可憐「私を少しは見習いなさいよね。服装とか」

翡翠「仕方ないじゃん…私の身の丈に合うの、子供用ばっかりなんだし…」

可憐「ふふっもう、拗ねない拗ねない。あたしの卵焼き食べていいから」

女子力の高い可憐と話ながら昼食を食べる
…美味しい


会話の内容

1、『戦姫』について
2、『あの人』について
3、魔法少女について
4、朝君の事について
5、自由安価

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>129採用:3


翡翠「魔法少女って何してるのかな?」

可憐「…あんた、寝ぼけてるの?」

翡翠「えぇ…不思議じゃない?どういう目的があるのかなとか」

可憐「普通に正義の味方でしょ?アンノウンが悪い奴らなんだし」

翡翠「じゃあ、皆善意で頑張って戦ってるのかな?」

可憐「魔法少女が企業経営なんて聞いたことないし、それこそ正義の心なんじゃない?」

翡翠「…そっか、もしかしたら魔法少女なのに戦いに参加したくないって人はいないのかな?」

可憐「そういう人は、そもそも成れないんじゃないかしら。知らんけど」

翡翠「……大変だね、魔法少女って」

可憐「そうよね、国だって魔法少女にお給金あげたらいいのに。守って貰っといて無責任よね」

翡翠「ふふふ…そうだね」


魔法少女に見返りなんてないのかもしれない
それでも、戦い続けないといけないのかな
私はどうだろう?無償の奉仕精神とか、正義の心とか…あるのかな?


ご飯を食べた後、可憐と教室で話しているとある人物が入ってくるのが目に入る

際立って目立つ猫耳と猫尻尾
四条葵ちゃんだった

ちょっとしたトラブルメーカーとして有名な彼女だけど、割と先輩方から可愛がってもらっている姿をよく見る
部活動に入っているし、その繋がりなのだろう

そんな彼女の足元には、あの時病院で見た茶トラの猫
誰もその猫に視線を向けることさえない
もう決まりだろう

彼女、四条葵は魔法少女だ

翡翠「…ねえ可憐。葵ちゃんのクラスって何処か分かる?」

可憐「ん?確か…1-Aだったと思うわよ」

翡翠「うん、ありがと」

突然の質問に不思議がりながらも、可憐は直ぐに話を戻して語りだした
私はそれに適当に相槌を打つ

四条葵
彼女に話をするなら、1-Aを訊ねることにしよう


放課後

時刻は夕方、今日一日の学校での授業が全て終わった
やはり学校に通っていると、一日の流れがとても早く感じる


翡翠(ねえオルス)

オルス(なんだい?)

翡翠(アンノウンってさ、いつ出現するとか分かるの?)

オルス(う~ん…難しいね。近ければなんとなく気配を感じる物だけど)

翡翠(そっか、パトロールとかってした方がいいのかな?)

オルス(キミの好きなように。無理にライフワークを崩すことは無いよ)

オルス(少し身勝手な言い方かもしれないけど、他にも魔法少女は居るからさ)

翡翠(……そうだね、無理に気負いすぎることは無いよね)


さて、これからどうしようか?


行動安価
安価↓1

1-Aに行ってみる


>>134採用


私は1-Aを訪ねて来ていた
下級生の教室と言えど、知り合いが全然いない場所に顔を出すのはとても勇気がいる

というかそもそも何を話すか全然決めていない

どうしようかと思っていると、勢いよく目の前の扉が開かれる
飛び出してきた人影にぶつかりそうになりながらも、寸でのところで停止する

葵「あ!ごめんなさい!急いでるので!!」

しっかりとお辞儀をされ、猛烈な勢いでどこかへと走り去っていった
その後ろを茶トラの猫がセコセコと走って追いかけていく

……お話をしようと思ったけど、どうやら何か用事があるらしい

出直した方がいいかもしれない


走り去る葵ちゃんを見た後、教室に居た子に少しだけ話を聞いた

結論から言うとどんな用事かは知らないとの事だった
部活を休むとも言っていたらしく、何処に向かっていったかすらよく分からないとの事だ

今から追おうにも、完全に見失ってしまった
追いつけるほどの足の速さも無い

私は諦めて家に帰ることにした



イベント判定
5以上で発生

直下コンマ


コンマ判定:2 不発


私はそれから本当に何事も無く、家に帰り着いた
自分の部屋のベッドに倒れ込むと、オルスが姿を現す

オルス「今日はお疲れさま。翡翠ちゃん」

翡翠「オルス……今日、何もしてないよ?」

オルス「学校で、お勉強頑張ったでしょ?」

翡翠「……私、魔法少女なのにこんなんでいいのかな?何か、しないといけない気がするんだ」

オルス「翡翠ちゃんは真面目だね。でも、毎日のようにアンノウンが現れてるわけでもないから、気にし過ぎなくていいんじゃないかな?」

翡翠「そうかなぁ…う~ん……修行とか、パトロールとか、しなくていいのかな」

オルス「いいんじゃないかな?翡翠ちゃんは魔法少女である以前に、一人の女の子なんだからさ」

翡翠「…オルス。いい子!!」

オルス「うわっ!ふふふっやめてよ、くすぐったいよ!」

思う存分、オルスをもしゃもしゃと撫でまわした


それから私はいつものようにお母さんと晩御飯を食べて、いつものように勉強をした

もう暫くしたら、お風呂に入って寝よう
……それまで、なにをしようかな?


行動安価
安価↓1

パトロール


>>140採用


やっぱり何もしないままでは自分の気持ちが収まらない
そう思ったので、私はパトロールのようなモノをしに外に出た
……のだが

お巡りさん「迷子かい?こんな時間に出歩いちゃ危ないよ?お父さんとお母さんは?」

翡翠「ち、違います!私もう高校生です!!」

お巡りさん「どっちにしろ補導対象だよ。今は見逃してあげるから、遅くなる前に早く帰りなさい」

通算3度目の呼び止めだった

翡翠(これじゃあパトロールも一筋縄じゃいかないなぁ…)

オルス(げ、元気出して翡翠ちゃん!)

オルスに励まされながらパトロールを続けていると、再び誰かに声をかけられる
またあのお巡りさんかと少し苛立ちながら、声をかけてきた人物を睨んだ


振り返った先に居たのは、今朝にも見た鋭い眼光
朝陽一君だった

陽一「なあお前、うちの学校の奴だろ?」

翡翠「うえっ!?あ、うん…えと何かな?」

陽一「こんな時間に何やってんだよ」

翡翠「よ、陽一君こそ…」

沈黙
お互いが何も答えようとしない

私はビクビクと陽一君の反応を窺う
情けないかもしれないが、今の私には正直不良の男の人はアンノウンよりも怖い

陽一君は面倒くさそうに溜息を吐き

陽一「…あのさ、夜だから…最近危ないから、その…帰った方がいいぞ」

翡翠「い、いいよ…」

陽一「……………」

無言の圧力が私を睨む
しかし、私としてもはいそうですかと変えるわけにはいかない

何で陽一君はこんなにも私を帰らせたがるんだろう?
こんな見た目だけど、意外と優しいのかもしれない

その優しさが、今の私にはちょっと困ったことになってるんだけど
しかし、自分が魔法少女だというわけにもいかないし


早くどこかに行ってくれ、そう祈っていた時

どこかからざわめきが聞こえる
そのざわめきは徐々に大きくなっていき、大きな悲鳴が鳴り響いた

翡翠(オルス!)

オルス(間違いない!ちょっと遠いけど、間違いなくアンノウンだ)

いいタイミングで現れてくれた
私は一目散に、その悲鳴の方に向けて走り出そうとした

その手を、陽一君に掴まれる

翡翠「えっ?」

陽一「お前、止めろ!行くべきじゃない!」

私の手を掴む陽一君の顔は、見たことも無いほど真っ青で、その手は震えていた

陽一「アレは、アンノウンだぞ。俺には分かる、だから早く逃げよう」

陽一「どんな理由が、あるかなんて、関係ない。魔法少女がやがて来る。だから、逃げた方が…いいぞ」

何度も唾を飲み、詰まりながらの不格好な話し方
だけど、今までのぶっきらぼうな面倒くさそうな喋り方よりも、ずっとずっと思いを感じる声だった

そう言えば聞いたことがある、陽一君のお母さんはアンノウンに殺されたと
もしかしたら、さっきまでの行動もそれが関係しているのかもしれない

……でも、私は『魔法少女』だから
私は陽一君の手を振り払った


陽一君の手を振り払って、言った言葉
安価↓1

行ってくる


>>144採用


遠くの方でまた、悲鳴が聞こえた
居てもたってもいられず、私は陽一君の手を振り払う

翡翠「私、行ってくる!」

陽一「おい!!」

焦燥の混じった怒鳴り声が背中に向けられる
だけど、止まるわけにはいかない

私は混乱による渋滞が起こった道路を横切って、直線距離で悲鳴の下へと向かった


少女の背中を少年は目で追う

陽一「………クソッ…俺は…結局ここで立ち止まってるだけかよ…」

陽一「あの時も……」

少年はきつく拳を握りしめる
そして、少年は悲鳴とは別の方向へと走り出した


近くで、何かの破壊音が聞こえる
私は取り敢えず悲鳴の方へと走り、状況を少し確認した

もう既に魔法少女がアンノウンと戦っていた
しかし、状況が芳しくない
かなり追い詰められている様子だった

私は少し離れた人目につかない場所に隠れていた


オルス「準備はいいかい?」

翡翠「……うん」

オルス「これで二度目だ。今度も必ず助けようね」

翡翠「うん」


      アクセス
    「『繋がれ』」


私はオルスの手を握り、そう呟いた
光が、私の体を包んでいく

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(やっぱりアンタ、才能ないよ)

うるさい

(時間稼ぎにもなりゃしない。町を壊すだけの欠陥魔法少女さ)

うるさいうるさいうるさい

葵「私だってわかってるよ!!!」

少女…四条葵は追いつめられていた
煌びやかな衣装は、既にその面影を見せず、ただ痛々しく肌の裂傷を晒している

四条葵は魔法少女だ
1年ほど前からそうだ
茶トラの猫『マーリン』と出会ってから、ずっと魔法少女だ

何度もアンノウンを見てきた
何度もアンノウンと戦ったことがある

彼女は、ただの一度でさえアンノウンを倒したことが無かった


腕太さほどの巨大な針が、ミサイルのように飛んでくる
必死に体を縮め、それを避ける

しかし、よけきれずに肌をかすめた針はごっそりと皮膚をはぎ取る

葵「ぐうぅ!」

痛みは一瞬だ
即座に、痛みを近くの車に押し付ける

彼女の魔法は『痛み分け』
痛みや苦しみを、誰かから引き受け、何者かに擦り付ける魔法
擦り付けるといっても、本当に『痛み分け』つまり、半分半分だ

受けられる痛みにも限界はあるし、押し付けられる苦しみにも限界がある

傷を治せるわけではない
病気を取り除いてやれるわけでもない
かといって、アンノウンを倒せるだけの魔法でもない

アンノウンを倒せるだけの痛みなんて、この身では一時でも耐えられないだろう

彼女の魔法は、誰も救えない、何者をも倒せない
正に『欠陥魔法少女』だった


そんな彼女だったが、一つだけ特異な能力があった

危険を察知する能力

正確に言えば、アンノウンが発生する場所がなんとなく分かる能力だ
この能力を生かして彼女は誰よりも現場に駆けつける
そしていつも、最後には誰かの助けを待つだけだ

葵「ふっ!はあああ!!」

何とかアンノウンに近づき、足を掴む
相手の体重を利用して、思いっきり転ばせる

重々しい音と共に土煙が上がる
しかし、アンノウンは即座に立ち上がる

アンノウン「またそれか!それしか出来ねえのかよ!!」

葵「くっ…」

大きく後ろに飛び、振るわれた尾を避ける


転ばせる、投げ飛ばす
彼女に出来ることと言えばこれくらいだ

アンノウンを倒せるようになるためにと始めた武道だった
しかし、こうして実践できても相手は人間ではない
大したダメージも無く、ただ破壊を増やすだけ

何の意味も無い努力だった


アンノウン「俺に気持ちよく殺させろよ!!俺は人を殺したいんだよ!!」

葵「させないっ!」

せめて、せめて誰かが逃げる時間だけでも稼がないと
そうじゃないとここに立っている意味が分からなくなる

マーリン(アンタ、見えてるかい?)

まただ
また、うるさい声が聞こえる
いつもの事だ、この憎たらしいマスコットは私を小馬鹿にすることしかしてくれない

マーリン(ちょっとは冷静になんなさいな。目の前の敵、何処を見ているね)

葵「どこって!私……!?」

ギラギラとしたアンノウンの目玉の中
そこに映っているのは私の姿ではなく、子供を抱きしめている女の人の姿だ

足を怪我しているらしく、上手く歩けていない

私は即座に体を翻し、女の人に駆け寄った


葵「失礼しますね!」

女の人の足に触れ、痛みを引き受ける
引き裂くような痛みが全身を駆け巡る

耐えろ
この女の人はもっと痛い筈だ

葵「歩けますか?」

女の人「は、はい」

葵「良かった…」
マーリン(アンタ後ろ!!)

喉から発した声を、頭の声がかき消す
後ろを振り向く

アンノウンが体を小さく丸めている
一度見た、あれは針を飛ばす予備動作だ

今なら避けられる

けど、後ろには女の人が居る

耐えられるか?
いや、耐えないと
私は魔法少女なんだから、耐えて…耐えて…頑張らないと

でも、私がこれで倒れたら…

最悪のイメージばかりが頭の中を駆け巡る
でも、それでも私は――!!


私は大きく両手を広げた

被弾面積を少しでも大きく
絶対に後ろに逸らしたりしない

アンノウン「キヒヒッ、死ね…死ね!!!」

死んでもいい
私は死んでもいいから

どうか、後ろに居る人だけは助けてあげてください

私は覚悟を決めて目を閉じた
きっと次の痛みは耐えられないだろうから

どうか、この行動に意味があったと信じたい
私がここで立っていることが、誰かを救う事に繋がったのだと信じたい


目を閉じたとき音が聞こえた

風を切る音だ

それは私に迫る風切り音ではなく

私を守る追い風のような気がした

次に、目を開いたときその先には―――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


翡翠「『繋がれ』!!!」

間一髪だった
ほんの少しでも躊躇がなかったら、追いつけなかっただろう

あのアンノウンが針を放つ前に喋りさえしなければ、間に合わなかったかもしれない

届けと願って伸ばされた私の手には、突風吹き荒れる嵐の槍斧
振るわれたハルバードの切っ先が、ミサイルのように放たれた大きな針を切り払った

翡翠「…間に合った」

葵「………『翡翠の騎士』」

翡翠「大丈夫かい?もう安心していいよ。私がアレを倒す」

身を挺して女の人を守ろうとしていた魔法少女
私は彼女らを庇うように、前に出る

アンノウン「何者だ?魔法少女でもないのか?人か?」

翡翠「私は……」

なんと言えばいいのか迷い、言葉に詰まる
名乗り口上とか考えてきた方がいいのかもしれない


葵「待って!私も…まだ戦える!」

私より前に出ようとする魔法少女を押しとどめる
流石にそんな怪我をした子をこれ以上戦わせたくない

葵「止めないで!助けられてばかりは嫌なんです!」

ど、どうしよう?
この鎧の制御も全然うまくないし、正直一人で戦いたい

何て言ったら納得してくれるかな?



怪我をした魔法少女へかけた言葉
安価↓1

アナタはもう十分頑張った
…わたしにも少しはカッコつけさせて?


>>156採用


翡翠「アナタはもう十分に頑張ったよ」

翡翠「アナタがその女の人を救ったんだ」

翡翠「…ここから先は、私にも少しはカッコつけさせて?」

葵「……ッ…」

翡翠「…!ハッ!!」

空気も読まずに飛んできた二撃目の針を再び切り払う

葵「…また、すぐに駆け付けます!」

魔法少女は女の人を抱きかかえて、即座にその場から離脱した
その姿を見届けて、私は一先ず安心した

これで好きなだけ暴れても大丈夫だ

柄にもなく私の中に、ちょっとワクワクした感情が灯っていた


アンノウンは大きな太い尾と、胸に湛えた針が特徴だった
さっきの戦いを少し見て、大体の行動はつかめてきた

重要なのはむしろ相手より、この体の動かし方だ

今回は転ばずに済んだけど、まだ動きになれていない
自分の体を動かすよりもずっと、遥か強くに体が動く
繊細な動作がとても難しかった

そしてもう一つ、魔法の練習もさせてもらおう

翡翠(確かイメージが大事ってオルスが言ってた)

行動をイメージする
風の動きをイメージする

穂先が背中に来るほど、大きくハルバードを振りかぶる

翡翠「セェイ!!!」

地面をかち割るつもりでハルバードを振るう
コンクリートを叩いた槍の穂先から、強烈な突風と共に衝撃波が生まれる
イメージ通りに、その衝撃波は形を持って地面を抉りながら真っ直ぐに飛んでいった


アンノウン「うおおおおおっ!!!??」

大袈裟な声をあげてアンノウンは飛びのく
大した速度じゃないでしょと思ったけど、それはこの鎧の状態での動体視力のおかげな事を思い出す
ともなれば、結構な速度で衝撃波は進んでいたのかもしれない

衝撃波は真後ろのトラックを両断し、風となって霧散した
威力も上々だ

前回の戦いでも思ったけど、この鎧は近接戦闘にはあまり向いていないらしい
防御や回避に秀でた鎧ではあるけど、攻撃に転用できるような力は少ない

しかし、このハルバードは別だ
速さが乗れば乗るほど、強い力と嵐を生む

私の魔法は、このハルバードで戦う事を初めから想定されたものらしい

アンノウン「このッ!!死ねや!!」

横薙ぎに尾が振るわれる
あの衝撃波よりも遅い
呆れたスピードだ

振り下ろしたハルバードの手の上下を持ち替え、左から右へと切り上げる

ズプッ

と嫌な音がして、尾は綺麗に両断された


半分以下の長さになった自らの尾に、アンノウンは金切り声をあげる
アンノウンにも痛みとかの感情はやっぱりあるようだ

今度は体を丸めて、反動をつけている
針を飛ばす気だ

私は敢えて何もしない
そのまま針を待ち構える

アンノウン「うわあああああああああああ!!!!!」

きっかり3秒で胸を開く
針が放たれる

私が出した衝撃波と同等くらいの速度
中々早いと思う

けど、見えている

私は一歩体をずらし、針の軌道から体をどける
そして手を伸ばした

大人の腕ほどの太さの針
私はそれを片手で掴んだ

翡翠「うわっ!っとと…意外と勢いがある」

少し体を後ろへ引っ張られるが、直ぐに追い風が体を立て直す


翡翠「あ」

少し力を入れて掴むと、その針は粉々に砕けてしまった
思ったよりも脆いらしい

アンノウン「な、なな何なんだよテメェ!!!!」

アンノウンは激しく動揺し、短くなった尻尾をぶんぶんと振り回す
私はそれを軽くハルバードで切り払う

翡翠「何って、どう見ても魔法少女でしょ」

アンノウン「如何にも見えねぇよ!!クソクソクソッ!!!ただ俺は殺したいだけなんだ!!!」

アンノウンは駄々をこねる赤ん坊のように、手当たり次第に物に当たり始めた
そういえば、魔法少女について何度か考えたことはあったけど、このアンノウンも何者なんだろうか?
魔法少女を続けていれば、分かる時が来るだろうか

アンノウン「頼むから死んでくれよおおおおおおおおおおおお!!!」

また懲りずにアンノウンは体を丸める
私は心の中で数を数える







翡翠「今っ!」

一歩、強く踏み込んだ
アンノウンまでの距離6mほどを、一瞬で詰める

見える、動きが見える

目の前に現れた騎士に驚くアンノウンの眼
発射されようとしている針の動き

私は吐き出される前に針を引き抜き、再び針が生成されるほんのわずかな時間の間に、短めに持っていたハルバードの三角刃を腹にねじり込んだ

強い衝撃音と共に叩きこまれた刃、風が生まれる振動を感じる
そして、その瞬間にアンノウンの体はバラバラに弾け飛んだ


翡翠「ふぅ……ちょっとは慣れてきたかな」

葵「……終わったんですね」

翡翠「あ、うん。終わったよ。えっと……」

葵「マルヴァです。私の名前」

翡翠「うん、お疲れさま。ありがとうマルヴァ」

葵「お礼を言うのは私の方です。助けられたのは私――危ない!!」

翡翠「へ…?」

マルヴァに体を強く押される
反応が遅れて後ろを見ると、何かが…なにか鋭い牙のようなモノが私の背中に迫っていた

しかし、マルヴァの力では私の体(鎧)はそう簡単には動かない

間に合わない

私に吹く追い風は、後ろから迫る脅威を逆に引き寄せてしまっている
私は何とかマルヴァを抱きしめ、彼女を守ろうとした


刹那

流星が奔る


私の目で追いきれないほどの軌跡で、それは標的を射抜いた

私の後ろ、約30mほど先から伸びる肉の牙
それを伸ばしている元凶、アンノウンを見事流星は射抜いたのだ

軌跡からはキラキラと輝く結晶が零れ落ちる

     クリスタリア
それは『星の涙』と呼ばれる、魔弾の軌道

アンノウンとの反対方向
軌道の対角線上にそれは居た

一切の穢れを感じさせない白で出来たドレス
まるでウエディングドレスかのような華やかで、目を奪われる出で立ち

その白に映えるように、美しい金髪がたなびいている

夜色の美しい瞳さえハッキリと見えた
まるで物憂げなその印象は、きっと彼女の泣き黒子がそれを感じさせているのだろう

 スターライト・クリスタリア
「『流星、星の涙』」

遠くの方で、風が音を運んでくれた

その声は、まるでこの世のモノとは思えないほど
美しい音色だった


葵「あ、あの…!」

翡翠「……」

葵「あの!!!」

翡翠「ひゃっ!え?なに?」

葵「あの、そろそろ離してもらえると助かるんですけど…」

翡翠「ああ…ごめんごめん……」

『戦姫』の美しさに圧倒され、完全に状況を忘れてしまっていた
そういえばマルヴァを抱きしめたままだった

葵「……また、助けられました」

翡翠「へ?」

葵「……貴方はいいですね。強くて、カッコよくて、私とは大違いです」

翡翠「そ、そんなこと…」

葵「いいんですよ。謙遜しなくても…私は結局…居なくても良かったのかもしれない」

よく分からないけど、相当落ち込んでいるらしい
どうしようか?


落ち込んでいるマルヴァへとかける言葉、もしくは行動
安価↓1


時間も時間なので、この安価の続きから次回は進めたいと思います
ではでは、遅くまでお付き合いいただきありがとうございました


安価↓

あなたが居ることで助けられた人もいるはずです


>>167採用


そろそろ再開です


翡翠「あなたが居ることで助けられた人もいるはずですよ」

マルヴァ「…本当に、そう思いますか?」

翡翠「当たり前です。だって私が来る間、ずっと戦ってくれてたじゃないですか」

マルヴァ「それでも、アンノウンを倒せない魔法少女なんて居なくても一緒じゃ…ないですか?」

その声からは、反発の意思ではなく深い不安が感じ取れた
彼女はきっと、とっても寂しがっている
誰かに、認められたがっている

翡翠「それじゃああの時助けた女性はどうですか?果たして私は、あの状況であの女の人を助けられたと思いますか?」

マルヴァ「思いま――」
翡翠「絶対に無理だった。だってほら、私はこんなに壊してしまう」

周囲に広がるのは様々な破壊の後
地を割った衝撃波の後や、両断されたトラック、踏み抜かれたクレーター
全て私が作った破壊の後だ

翡翠「私、きっと誰かを守りながら戦うなんて上手くできないから。間違いなく、あの時あの瞬間、あなたはあの女の人を救ったんです」

マルヴァ「……そう、でしょうか」

翡翠「それにほら、さっきだって助けられました。隠れていたアンノウンを倒したのは『戦姫』でしたけど、私を救ってくれたのはあなたです」

翡翠「あなたが私を助けようとしなければ、避けられなかったでしょうから」

翡翠「ほら、もうあなたは2人も救っています。凄い魔法少女です」

ほんの少し嘘を織り交ぜたけど、救われたという想いは本物だ
あのまま『戦姫』が助けてくれなかったとき、私一人だったら不意打ちを喰らって致命傷を負っていた
あの時私を守ろうとしてくれた行動も、女性の盾になってでも助けようとしたあの行動も
称賛されて当然だ

翡翠「あなたの行動は決して、何一つ。無駄なんかじゃありませんよ」

マルヴァ「…………ありがとう…ございます」

俯いて彼女はそう言った
表情は窺えなかったけど、その声の震えからなんとなく察した
私はそれ以上は何も言わず、その場を去った


マルヴァ「っ…待ってください!」

背中に声がかけられる

マルヴァ「アナタは結局、何者なんですか!」

マルヴァ「魔法少女でも、アンノウンでもない、でもこうして私達の味方をするアナタは一体!」

翡翠「……」

非常に困った質問だった
私としては、魔法少女のつもりなんだけど
……どう見てもそうには見えないしね

なんと答えようか?


何者かに対する返答
安価↓1

力無い人のために戦うただの戦士です


>>172採用


翡翠「……強いて言うなら、力ない人のために戦うただの騎士です」

翡翠「あなた達と何も変わりはしません」

そう言って、今度こそ、その場を後にした

マルヴァがどう思ったのかは分からない
だけど、現状こうとしか言いようがない

これから『翡翠の騎士』にどんな尾ひれがついていくのか
それだけが心配であり、ちょっと楽しみであった


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


翡翠の騎士「……強いて言うなら、力ない人のために戦うただの騎士です」

翡翠の騎士「あなた達と何も変わりはしません」

そう言って、今度こそ、騎士はその場を去って行った
人の目を避けるように、暗い路地へと入っていく

とても、不思議な体験だった

今目の前で起きた事は、全て幻だったのではないかと疑ってしまいたくなる
遠ざかっている騎士の背中は、とても大きく、だけど少しだけ寂しそうなモノだった

翡翠の騎士『あなたの行動は決して、何一つ。無駄なんかじゃありませんよ』

その言葉ずっと心に響いている
どこかで、期待していた
どれ程自分を奮い立たせようと思っても、自分の声では虚しい言葉

だけど、誰かにこうして言って貰えるだけで、どうしてこんなにも胸が熱く苦しくなるんだろう

誰かに、私は居てもいいと言って欲しかった
誰かに、感謝されたかった
ずっと、ずっと誰かに認めて欲しかった

あの『翡翠の騎士』は私の願いを全て叶えて去っていた
なんて、なんて都合のいい

救われたのは、やっぱり私だ


マーリン(アンタ、何ボーっとしてるのさ)

葵(何さ。なんか文句でもあるの?)

マーリン(あの騎士様の背中を思い出すのもいいけどね、まだやることあるでしょ)

葵(わ、分かってるよ!もう、ホントお節介)

マーリン(ふぅ…小娘の世話は大変だわ。……お疲れさま、今日はよく頑張ってたわよ)

葵(…!何さ、突然。……いうのが遅いんですよ)


葵「怪我をしている人はいませんかー!直ぐに応急処置に向かいます!!」

葵「救援のお手伝いもしています!情報があればすぐに仰ってください!!」

町の人たちに声をかける
逃げ遅れた人たちは必ずいる

事後救護も立派な私の仕事だ

こんな事が起こる前に何とかしろと怒られたこともあるけれど、今なら胸張って行動が出来る
私の行動は、無駄なんかじゃないんだ

人が呼ぶ声が聞こえる
私はすぐにその方向に向かって走り出した



マルヴァ
葵の花の花言葉は『素敵な恋』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


人が居ない事を確認して変身を解く

翡翠「はぁ…はぁ…はぁ……!」

変身を解くと一気に襲ってくる疲労
変身している状態だと全く感じないけど、思ったより体に負担があるのかもしれない

だけど、気絶まではしていない
一度目の変身よりかは、体が慣れてきたのだろう

オルス「大丈夫かい?ちょっと休んでいこうか」

翡翠「うん……そうする…」


     「おい」


ビクリと肩が飛び上がる
低い男の人の声が私にかけられる

私は恐る恐る声がした方向を振り返ると……


翡翠「陽一…君…?」

陽一「よかった…無事だったんだな」

走っていたのか、汗をかき、肩で息をしていた

翡翠「ど、どうしたの?」

陽一「どうしたも何も、お前がここに向かっていくのを見て、俺も追いかけたんだよ」

翡翠「えっ!?」

陽一「今、事後処理の救護活動を手伝ってる。えっと…ボランティアって奴」

陽一「怪我とかしてる奴、一つの場所に集めてて、そこにお前が居なかったから。その…心配した」

翡翠「そう…だったんだね…」

陽一「今、マルヴァが頑張ってくれてる。えっと、怪我とかはしてないか?してるなら、マルヴァに頼むといい」

翡翠「怪我はしてないよ。えっと…マルヴァってあの魔法少女だよね。名前、知ってるんだ」

陽一「………か、勘違いするなよ。別に俺はオタクとかそういうんじゃないからな。ほ、本当だぞ?ただちょっと魔法少女に詳しいだけで…その…」

わたわたと言及していないのに、勝手に弁明を始める陽一君
何だかその様子が可愛くて、私は思わず笑ってしまった


文章訂正
× お前がここに向かっていくのを見て、俺も追いかけたんだよ
○ 人の声がして、覗いてみたら、お前が居たんだよ

状況がまるっきり変わってしまう…すみません


翡翠「陽一君って怖いと思ってたけど、意外と可愛いところがあるんだね」

陽一「なっ!?か、かわ…」

翡翠「私は平気だから。他の所に行ってあげて」

陽一「…ああ。じゃ、じゃあな。気をつけろよ、建物とかヒビが入ってることもあるから」

翡翠「うん。ありがと」

私が手を振って見送ると、陽一君も控えめに手を振り返してくれた

うん、やっぱり陽一君はいい人だ
あの長い前髪さえ切ったら、目つきが怖いのも緩和されると思うのにな

少しその場で休憩をして、私はそっと自分の家へと帰った
家に着くころにはもうくたくたで、お風呂に入らないままベッドに寝転がった
私はそのまま、意識を微睡の向こう側へと持っていかれてしまった



視点選択


1、『どこかの屋上』
2、四条葵
3、『あの人』
4、オルス

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>183採用:4



オルス「翡翠ちゃん?翡翠ちゃん?」

ベッドに倒れ込んだ彼女の体を揺さぶる
うにゃむにゃと口を動かし、むずがって体を揺するだけだ

オルス「寝ちゃったんだね」

あの変身は思った以上に彼女に無理をさせているらしい

オルス「ごめんね…僕が僕なばっかりに、キミに苦労させて」

彼女の体を引っ張り、ちゃんとベッドに寝かせてあげる
下敷きになっている布団もなんとか引っ張り出して、彼女の体にかけてあげる

オルス「………嬉しいな。また、こうして君といられるのは」

昔と変わらない彼女の髪をそっと撫でる

オルス「……でも、これは泡沫の夢のようなモノ」

電気を消し、カーテンを閉じようと手にかける
窓の向こう側には美しい月と、はるか遠く、空の果てにある箒星

オルス「――――『繋がれ』」

そう呟き、僕は『彼女』と連絡を取り合った


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次の日の朝、私は早くに目を覚ました

自分の体には布団が掛けられていた
お腹の辺りにはオルスが丸まっていて、私が寒くないようにと気遣ってくれたのだろう

なんと気の利くいい子なんだろうか

翡翠「ありがと、オルス」

優しくオルスの頭を撫でて、私は浴室に向かった
昨日お風呂に入っていなかったから、体が汗でべとべとだった


私は変わらずに日常にまた足を踏み入れる

一つの場所に吸い込まれていく人波、それに流されるように私も波に乗る
ぎゅうぎゅうの満員電車に詰め込まれ、苦しい思いをしながら学校へと向かう

あまり電車は好きではない

だけど、都内だともっと凄まじいらしいから驚きだ
あれ以上のぎゅうぎゅう詰めなんて、私だと息が出来ないだろう

私がこうしてわざわざ電車を乗って来たのは、ちょっと昨日の事が気になったからだ

あれほどの破壊起きた町の様子
それを少し確認するためだ

私が戦って、地面をたたき割ったあの場所

そこはもう昨日の戦闘の俤などなかったかのように、綺麗に舗装されていた

そこで確信する
やっぱり、あの場所で私を助けてくれたのは『戦姫』だと

『戦姫』が称賛される理由は、強さ、美しさ、誰よりも長く戦ってきたという戦歴
それ以上に、その後のアフターケアにある

彼女が戦った戦場は、『綺麗サッパリ修繕される』のだ

それが多分、『戦姫』の魔法の力


翡翠「それにしても、綺麗だったなぁ…」

美しいという言葉はまさに彼女の為にあるんじゃないかと、そう思ってしまうほどの姿
テレビやネットで何度も見たことがあるけど、生で見た迫力はそれを遥かに凌駕していた

それに何よりあの『流星』

私(翡翠の騎士)の眼でも追いきれないほどのスピード
30m以上離れた距離を正確に射ぬき、一撃で仕留めるその腕前
マルヴァにはちょっと失礼かもしれないけど、あの『戦姫』は多分魔法少女の中でも別格だ

翡翠「実はこの周辺が、一番『戦姫』の目撃情報が多いんだよね」

案外近くに、彼女は住んでいたりするかもしれない

翡翠「どんな美少女なんだろう?………って、変身後の姿はあんまり信用できないかな」

正にそれを体現するのが此処に居る
案外地味な女の子が、『戦姫』なのかもしれない


町が直っていることを確認し、私は改めて学校に向かった


イベント判定
4以上で発生

直下コンマ


コンマ判定:9 イベント発生


学校の道中に出会った人

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

『あの人』


>>192採用:『あの人』


学校の校門に足を踏み入れて、玄関口までの道
その道中、何かがおかしい事に気付いた

右と左、人の波が真っ二つに左右に切り開かれている
そして何故か私を見ているような気がする

どういう事だろう?
ちゃんと制服は着て来てるし、禁止されてるアクセサリーとかもつけていない
全然目立つような格好してないと思うんだけど

怖くなり、ビクビクと歩いていると

  「おどきなさい」

と後ろから声が降りかかる
その声の正体にすぐに察しが付く
やってしまったと、慌てて私は端に飛びのいた

「……次からはもっと早く気付く事ね。子ウサギさん」

人を見下したような冷ややかな赤い視線
クスリと笑う、艶やかな表情

学園一の有名人
私の一つ先輩のこの人は……


『あの人』の名前(女性)
安価↓1

姫神 沙耶香(ひめがみ さやか)


>>196採用


『姫神沙耶香(ヒメガミ サヤカ)』
自ら魔法少女であると名乗り、本当に魔法少女として活動している人
大企業の令嬢であり、その麗しい容貌から、一時はメディアに引っ張りだこだった
だけど、『ある事件』を境に多くの人々から後ろ指をさされるようになってしまった

本人はあまり気にしていないという風に、堂々たる振る舞いだけれど
少しだけ、以前よりも痛ましく見えてしまうのは気のせいではないと思う

道を譲った私の横を通り過ぎる
香水のような濃い甘い匂いがふんわりと香る

そんな彼女の足元、その傍らにはまるでガードマンのように、雄ライオンが付き従っていた

勿論、彼女がお金持ちだからと言って学校にペットの持ち込みは許されていない
だのに、誰もそれを注意しないというのは

誰にも見えていないからに他ならないだろう

私のような魔法少女以外
……というか、マスコット…ライオンなんですね
流石お金持ち、スケールが違う


オルス(うさぎ!ウサギだってイイと僕は思うよ!キック力なら負けてないよ!スケール負けてないよ!!)

翡翠(もう、何処で競ってるの?心配しなくても私はオルスが一番好きだよ)

オルス(ホント?実は肉食動物の方が好きだとか言わない?)

翡翠(言わない言わない)

オルスの的外れな必死さに、クスリと笑ってしまう
本当にかわいい子だ

そういえば、沙耶香さんのライオンとか、葵ちゃんの猫とか、私のオルスとか
全員動物の姿を取っているけど、何か意味があるんだろうか?

そもそも、私は勝手にマスコットと呼んでいるけど、ちゃんとした呼び名があったりするのかな?

オルスと手を握ってないと変身できないらしいから、変身するために大事な存在だとは分かるんだけど


新たな疑問を考えながら、自分の教室へと向かった


昼休み


特に何事も無く午前の授業を終える
何処で昼食を食べようかな?


昼食を食べる場所(誰かと食べるとかも可。新キャラ出したいときは新キャラとかきこんでください)
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

葵に会いに行く


>>201採用:



私は改めて1-Aを訊ねることにした

葵ちゃんは間違いなく魔法少女だ
その事で話をしたいんだけど、こっちの事を明かしてもいいものか

どういう体で話を切り出すかだけでも決めておこう



1、まだ魔法少女じゃないけど、オルスも居るしマスコットは見えるという体
2、自分も魔法少女だと明かす
3、自分が『翡翠の騎士』だと明かす
4、それ以外

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>206採用:1


…うん、まだ魔法少女ではない
というのが一番自然かな

オルスも居るし、簡単に誤魔化しもきくと思う

そう決めて、私は葵ちゃんの教室を訊ねた


葵「あ、あの…葵に用事ですか?」

翡翠「うん。ちょっと話がしたいんだ」

葵「昨日葵を訪ねてきた先輩っていうのも…あの…」

翡翠「うん、私だよ。輝翡翠。好きに呼んでいいよ」

葵「じゃ、じゃあ翡翠…先輩」

翡翠「二人きりで話がしたいから、ちょっとついて来て」


そう言ってあまり人が来ない場所で、一緒にご飯を食べることにした


翡翠「…話っていうのはね。これなんだ。出てきていいよ」

そうして、彼女にオルスの姿を見せる

葵「ひゃっ!え?ウサギさん?可愛い…」

翡翠「でしょ!?……じゃなくて、貴女も居るでしょ?茶トラの猫」

葵「え?ええっ!?それって先輩!魔法しょうじ…!!」
翡翠「ストップストップ!!静かに、ね?」

彼女はこくこくと頷くと、小さな声で「マーリン」と声を出した
すると、彼女の方にいつの間にか茶トラの猫が乗っていた

マーリン「驚いた。まさか同じ学校に二人も魔法少女が居るなんてね」

翡翠「えっと、魔法少女って言っても私は………」


そこで、改めて私があらかじめ考えていた事情を伝える

魔法少女の素質はあるんだけど、まだ戦いに赴く勇気が無くて尻込みしている
病院で猫を連れている姿を見て、葵が魔法少女なんじゃないかと思って話しかけた
概ねそんな内容だ


葵「そう…だったんですね……」

翡翠「それでね、他の魔法少女の人と話をしてみたいと思って。葵ちゃんは何時から魔法少女なの?」

葵「葵はえっと…一年ほど前から。あの…『マルヴァ』って魔法少女知ってますか?」

翡翠「マルヴァ!うん、知ってるよ!」

昨日正に出会ったばかりだ
こんな偶然もあるモノか、意外と世間は狭いんだね

葵「葵は…それなんです」

翡翠「そうなんだ」

葵「えっと…葵はちょっと特別で、ある能力があるんです」

翡翠「ある能力?魔法じゃなくて?」

葵「はい。魔法とは別になんとなくアンノウンが発生する場所が分かるんです。昨日の用事はそれで、すれ違ったみたいです。すみません」

翡翠「ううん、大事な事だよ!凄いね、他の魔法少女は出来ない事なの?」

葵「は、はい。多分。殆どの人が持ってないと言ってました」

翡翠「殆どっていう事は、知り合いの魔法少女に似たような能力を持っている人が居るの?」

葵「じ、実際はなしたわけではないですけど、『戦姫』さんももっているらしいです」

翡翠「そうなんだ……」

意外な所で、また『戦姫』の凄さを知ってしまった


それにしても、彼女の能力はとても便利なものだ
私にもあればなぁ…

こうして魔法少女と知り合いになれたのは凄く貴重な事だ
なにかもっと聞いてみよう


葵かマーリンに話す内容
安価↓1

他に魔法少女の知り合いはいるの?


>>212採用


翡翠「他に魔法少女の知り合いは居るの?」

葵「えと……」



知り合い判定
0-1  1人
2-4  3人
5-7  4人
8,9   5人
ゾロ目 ゾロ目の数÷11

直下コンマ


コンマ判定:2


葵「3人ほど…」

翡翠「そうなんだ」

これを意外と多いというべきか、少ないというべきかは分からない

翡翠「それって私も知ってる人かな?」

葵「一人は知っていると思います。その、この学校の有名人なので」

つまり、姫神沙耶香さんの事なんだろう

葵「あと二人は……」



一人目の設定


安価↓1名前

安価↓2年齢

甲 鳳麗


>>216,217採用


名前:甲 鳳麗(読み方の指定が無ければこっちで勝手に決めます)
性別:女性
年齢:14


14歳なので別の学校の中学生ですね


外見とか性格とか、魔法少女としての振る舞いとか
とにかく何でも設定

安価↓3まででをMIX

猪突猛進タイプでよくも悪くも自分に正直


>>221-223採用


ですが髪型で矛盾があるのでコンマで決めます


偶数で紅髪お団子
奇数で金髪サイドテール

直下コンマ


コンマ判定:奇数 金髪サイドテール


設定枠一個潰れたので設定継ぎ足し
安価↓1

魔眼持ち


>>229採用


魔眼とは?

コンマ判定
偶数で邪王真眼的な意味で
奇数で本当に魔法

直下コンマ


コンマ判定:奇数 魔法




名前:甲 鳳麗(ハジメ ホウレイ)
性別:女性
年齢:14歳


【容姿】
肩甲骨辺りまでの長さの金髪をサイドテールに縛っている
右目は金眼、左目は青っぽい銀目のオッドアイ

【内面】
猪突猛進な性格であり、良くも悪くも自分に正直
魔眼という特別な魔法が使えるらしい




もう一人の設定


安価↓1名前

安価↓2年齢(10~17)

漣 色葉(さざなみ いろは)


>>234,235採用


名前:漣 色葉(サザナミ イロハ)
性別:女性
年齢:11


11歳なので別の学校の小学生ですね


外見とか性格とか、魔法少女としての振る舞いとか
とにかく何でも設定

安価↓3まででをMIX

明るく誰にでも優しい活発的な性格だが病弱


>>238-240採用


ですが外見の言及がないので追加設定

外見について
安価↓1

漆黒のドレスにベール

こげ茶色のゆるふわセミロング


>>242採用ですが魔法少女の時の姿か普通の時の格好なのかよくわからん!!
ので魔法少女の服として採用して、面倒なので>>243も同時採用します


名前:漣 色葉(サザナミ イロハ)
性別:女性
年齢:11歳

【容姿】
こげ茶色の緩いカールを描いたフワフワとしたセミロングの髪
大きな黒目の少女

【内面】
明るく誰にでも優しい活発な性格
やや口が悪いが、根はやさしい
魔法少女に変身しているときは一切喋らないという自分ルールがある


葵「姫神先輩以外は、『甲 鳳麗』さんと『漣 色葉』ちゃんと知り合いです」

翡翠「ふ~ん…二人とも高校生?」

葵「いえ、甲さんは中学生で、色葉ちゃんは小学生です」

翡翠「小学生も居るんだ…」

よっぽど勇気があるんだろう
…いや、子供だからこそなのかもしれない

翡翠「連絡とか、取りあってるの?」

葵「えっと……」



仲の良さ判定
0ほど仲が悪い、9ほど仲がいい


葵と鳳麗
直下コンマ


葵と色葉
↓2コンマ


直下判定:3 プライベートの付き合いまでは無い
↓2判定:6 程々に連絡を取り合う仲




葵「鳳麗さんとはあんまりですけど、色葉ちゃんとはよく連絡を取り合ったりします」

翡翠「そうなんだ。機会があったら、紹介してね」

葵「はい!」

魔法少女同士の繋がりというのは、アニメのようにチームとして行動して、プライベートでも仲がいいという感じではなさそうだ
意外とそういう人間関係は生々しいんだね


葵「…あの、翡翠先輩はこれからどうするんですか?」

翡翠「ん?これからっていうのは…」

葵「えと…魔法少女として活動するかどうかです」

翡翠「ああ……う~ん……もう少し、色んな人の事を聞いてみたいかな。それで、決めたい」

葵「葵も…そうした方がいいと思います。い、一年先輩の魔法少女として言わせてもらいます」

葵「魔法少女になって、辛い事ばかりでした」

葵「葵…全然力の無い魔法少女で、今でもアンノウンを倒す力なんてありません」

葵「居る意味がないとか、いっぱい馬鹿にされたことがあります…ちょっと前まで、葵もそう思ってました」

葵「でも、それでも、葵の行動に…マルヴァが居ることに、意味があると言ってくれる人が居ました」

葵「葵の支えはそれだけです。それだけで、葵は戦っています」

葵「……え、えとつまり…大変な事だと思います。でも翡翠先輩が魔法少女として活動することに、必ず大切な意味があると思います」

顔を真っ赤にしながら、とても恥ずかしそうに葵ちゃんはそう語った
全然性格も背格好も違うはずなのに、そう語っていた葵ちゃんは、あの場に居たマルヴァの姿と重なって見えた

               マルヴァ
間違いなくこの言葉は、魔法少女の言葉だった


翡翠「……うん、心に留めておくよ」

丁度、そんな時にチャイムが鳴る
思っていたよりも長話をしてしまっていたようだ

葵「つ、次音楽室でした…あの!失礼します!!」

翡翠「うん!また話そうね!!」

葵「はい!」


そうして葵と急いで連絡先を交換して、別れた
葵は体育会系の部活の子らしく、見た目以上の力強い走りで校舎の中に入っていった

私も慌ててお弁当を持って、教室に帰った


と、言う所で今日の更新はここまでです
次回は放課後の行動からです


少し戦闘についてお聞きしたいことがあります
今までは全て私が文章でかたずけてきましたが、やたら長くて安価スレである意味とは?みたいな感じになっているので改善案をお聞きしたいです

考えている案として

1、コンマでの戦闘形式にする
メリットしては安価コンマスレならではの展開になること間違いなし
デメリットはシステムを作るのが大変な事と、グダリ易いという点ですね

2、戦闘中に選択肢(行動安価)を取ってもらう
メリットは安価で戦闘に参加できること
デメリットはあまりないですが、強いて言うなら選択肢を用意する場合3通りの展開を考えないといけない点ですかね


今までのままでもいいという声が多ければ、今まで通りというのも全然アリです
こっちも楽ですし。ただ一人でダラダラずっと書いてるとちょっと寂しいという点を除けば


そんな感じで改善案について意見を頂けるとありがたいです
ただの感想とかも、一言でも貰えればとても嬉しいです


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


ご意見ありがとうございます
戦闘は2で一応は進めてみようかと思います

久しぶりにキャラ募集とかしたいなとかも思うんですが、現状のキャラ数で特に困ってもないのでやる意味があまりない悲しみ
多分、しないと思います


それではそろそろ再開です


名前:四条 葵(シジョウ アオイ)
性別:女性
年齢:15歳

【容姿】
おさげ髪で、猫耳と猫尻尾のアクセサリーをいつもつけている女の子
身長は145cmとかなり小柄

【内面】
大人しく弱弱しい性格
一つの事に夢中になると周りが見えなくなるともっぱらの評判の盲目娘
武術マニアであり、アンノウンに対抗するために武術を習い始めた
1年間魔法少女として活動を続けて、一度もアンノウンを倒せたことが無いのがコンプレックスである
変身してる時と素で、大きく性格を変えている



【魔法】
『マルヴァ(葵の花の魔法少女)』
『痛み分け』の魔法を扱う魔法少女
痛みや苦しみを半分引き受けたり、半分何かに押し付けたりする
衣装は、赤紫色を基調とした花が開いたようなフリルが重なったスカートが特徴的
肩と背中が見えるぴっちりとしたインナー、マントのような白い大きなボレロ
指が露出しているアームガードは、肘辺りまでを覆っている
ヒールが高くないブーツ、太ももまで覆う黒いサイハイソックスといった具合


名前:マーリン
性別:女性?
年齢:???


【容姿】
茶トラの猫
かなり丸く体格がいい、不愛想な顔つき
重さは5kgほど
低めの大人の女の人の声で話す


【内面】
皮肉屋な性格
葵に付き合ってあげているというスタンスで、傍に居る
一見冷たい事ばかり言っているようだが、それも葵の成長の為である
好きなものは葵


放課後

今日一日の学校での活動を終えた

これから何をしていこうか?
やっぱり、色んな魔法少女と話をしてみたいと思う
私はまだ、この魔法少女の世界について知らないことがあり過ぎる

姫神先輩
正直とても怖いけど、なぜ『あの事件』が起きたのか
魔法少女となった今では、とても気になってくる

他にも甲さんと漣さんという魔法少女
彼女たちもどういう子か、知ってみたい

……そういえばあれから陽一君はどうしてるだろう?
また、一人で街を歩いているんだろうか?

久しぶりに、可憐と遊びに行ってもいいかな?
いや、寧ろオルスと遊びに行くのもいいかな



さて、どうしようか?


行動安価
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

ぶらぶら散歩


>>264採用


特に何も考えないままに、ぶらぶらと散歩に出かけた


世界が、というか私自身が大きく変わってしまったからかもしれないけど
最近はずっと何かしら考え詰めだ

偶にはこうやって何も考えない時間っていうのもいい



イベント判定
5以上で発生
直下コンマ


コンマ判定:5



1、屋上の人影
2、オルスが誰かと話してる?
3、花の匂いに誘われて
4、自由安価

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>271採用:2


オルスと河川敷を散歩していると

ぴるぴるぴるぴる

と、何処からか間の抜けた音が響く
音のした方に顔を向けると、それは足元

オルスからだった

オルス「あ、電話だ。ゴメンね翡翠ちゃん、ちょっと待ってて」

翡翠「あ、うん…」

オルスは少し離れた草陰に行くと、何やら誰かと会話を始めた
……何か、色々ツッコミ足りない気がする

程なくしてオルスは何事も無かった顔をして

オルス「ほら、行こうか。僕はずっと翡翠ちゃんとこうして散歩がしたかったんだ」

嬉しそうに私の手を握る

翡翠「………」

さて、何処からツッコんでやろうか?


翡翠からオルスへのツッコミ
安価↓1

マスコットも電話持ってんだ…


>>274採用


翡翠「マスコットも電話持ってるんだね…」

オルス「ああ、そっか言って無かったかな。通信料とかはかかってないから安心して。例えるなら、トランシーバーのような無線機だよ」

翡翠「う、うん。真面目に答えてくれてありがとう」

どうやらマスコット界では電話を持つのは普通の事らしい

翡翠「ええっと…誰とお話してたの?」

オルス「友達だよ」

翡翠「友達いたんだ…」

オルス「酷いよ翡翠ちゃん!?僕、友達居なさそうに見られてたの!?」

翡翠「ち、違う違う。ずっと私と一緒に居るから、私以外と話をしてるのがちょっと不思議な気がしただけ」

オルス「そう?まあ確かに、キミと一緒に居る時は君としか話をしないよね」

翡翠「うんうん。それだけ、全然悪気とか無かったんだ。ゴメンね」

オルス「こっちこそ。ちょっと繊細なもの言いだったね。さぁ、散歩を続けようか!」

翡翠「う、うん……」


正直、その友達とやらの事がとても気になる
私は何気にオルスの事全然知らないし

でも、一応はプライベートとか気にしないであげた方がいいのかな?
っていうか、私と一緒に居るのはビジネスなの?
ご飯とかも食べないし、そもそもオルスって…結局どんな存在なの?


1、思い切って友達の事を聞いてみる
2、マスコットという存在について聞いてみる
3、自由安価

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>278採用:2


翡翠「ねえオルス」

オルス「何かな?」

翡翠「オルスってこう、分類するとなんていう生物なの?私は勝手にマスコットって心の中で呼んでたんだけど、ちゃんとした公式名称は無いの?ネザーランド・ドワーフとか、アンゴラとか、ロップイヤーとか」

           キー
オルス「僕達は『聖獣』というのが総称かな」

      聖夜
オルス「『Xデー』に生まれたからね」

翡翠「やっぱりちゃんとした呼び方があったんだね」

オルス「でも、僕の事はオルスって呼んで欲しいな。翡翠ちゃんから貰った大事な名前だから」

翡翠「それは当然だよ!自分の買ってる犬の事を『犬』!って呼ぶ人なんていないよ」

オルス「そ、そうだよね…うん。別に、ペットという括りに自分が居ることに、ショックなんて受けてないよ」

翡翠「ああ、ごめんごめん。えっと、大事な相棒だよ」

オルスはこういう所だけちょっと繊細なところがある


翡翠「……ちょっと失礼なこと聞いてもいい?」

オルス「何かな?出来る限り、答えるつもりだけど」

翡翠「オルスって生きてるの?」

オルス「え?それは僕がロボットか何かだといいたいのかい?」

翡翠「…うん、その可能性も含めるかな。えっと、どうやって生きてるのかなって。ご飯とか食べるてる所を見たことが無いから」

オルス「エネルギー源の事かい?それなら答えられるよ」

オルス「君の『喜び』さ」

そう言ってバチッとウィンクをしてくる
上手く誤魔化された気がしないでもない

オルス「嘘じゃないよ?翡翠ちゃんの喜びが僕の原動力なんだよ!僕が一度だって嘘を言ったことがあるかい?」

翡翠「…魔法少女になろうと誘われて、騎士にされたっていう前歴に目をつぶればね」

オルス「あ、あれは僕もちょっと予想外だったんだよ」

ただ、無暗に疑う事も無いかな
オルスはいい子だ。間違いなく
絶対に信用できる

だから、その言葉も信じてあげよう


今日はずっとオルスと話をしながら散歩をした

私にはオルスの知らないことがまだまだいっぱいあった
まだまだ疑問は尽きないけれど

でも、オルスは私の事知ってるみたいなんだよね
…ちょっと不公平な気がするなぁ

でも、こうやって一緒に居て知っていけばいいよね



夕ご飯を食べ終えて、宿題も終わらせて一息つく

お風呂に入って寝る前に、何かしようかな?


行動安価
安価↓

今日もパトロールしよ


>>283採用


今日も昨日のようにパトロールをしようかな

そう思い立って、私はまた夜の町に足を踏み入れた
昨日とは別の方を中心に練り歩く

…そうだ、葵ちゃんに聞けば何処にアンノウンが発生するか分かったりしないだろうか?

………いや、駄目かな
戦えないのに、聞いてどうするのと言われたら答えられない

やっぱりこうして地道に歩くしかないかなぁ…



イベント判定
4以上で発生

直下コンマ


コンマ判定:1  不発


……そう立て続けにアンノウンが現れたりしないか…

アンノウン…アレは何者なんだろう?
どんな目的があって、人に危害を加えているんだろう?
良いアンノウンとか、居ないのかな…

翡翠(案外、人間社会に溶け込んでたりしないかな?)

オルス(可能性は0じゃない気はするけど、あまり考えなくていいと思う)

翡翠(そうなの?)

オルス(僕はアンノウンじゃないから分からないけど、なんとなくね)

珍しくオルスにしては歯切れの悪いもの言いだった


そろそろ時間も遅い
帰ろうかな?

1、もう少し続ける
2、帰って寝る

安価↓1


>>287採用:2


それからも暫くパトロールを続けたのだが、至って平和な街並みで
犯罪の一つもなさそうだった

オルス(そろそろ帰らないとお母さんも心配するよ)

翡翠(むぅ…仕方ない。今日は切り上げよっか)


そうして家に帰って、お風呂に入ってから眠りについた
オルスをお風呂に入れようとしたら、とても嫌がられた
水はあまり得意じゃないのかもしれない

人間っぽいのか動物っぽいのか、相変わらず基準が曖昧だなぁ


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



視点変更

1、姫神沙耶香
2、朝陽一
3、『とある屋上』
4、オルス

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>292採用:3


とある屋上


大型ビルが立ち並ぶ現代の街並みに、童話の中のような異物が一つ
真っ白なドレスを風に晒し、眼下の人波を、愁いを帯びた瞳で眺める美しい少女が一人

その少女の周りには、これまた場違いな蟲が飛んでいた
蝙蝠の様な薄羽に、ゴムのような質感の黒い尻尾、そして天に向かって伸びる角
体長10cmにも満たないそれは、まさに小悪魔と呼ぶのが適切だろう

「誰を探してるね?お姫様」

「……別に」

「『翡翠の騎士』……違うかい?」

「…別に」

「あひゃっひゃっひゃっひゃ!嘘が下手だねぇお姫様は」

ツンとした表情で姫と呼ばれる少女は、悪魔の笑い声を無視する
その姿さえもおかしいとばかりに、小悪魔は笑う事をやめない


「あの時どうして助けたね?アレを見極めるって言ったのはお姫様の方じゃないか」

「…結果的に助けただけ。アンノウンを倒すことが一番」

「それならどうして、わざわざあの騎士の戦いを見てたんだい?」

「………」

「『恋』してるね?」

「五月蠅い」

「キャッキャッ!怒った怒った!お姫様は図星がお嫌いのようで」

流石にムッとしたのか、少女は小悪魔に反論する

「『恋』じゃない。訂正しろ」

「気になるんでしょ?だって疲れたもんね、アンタには正義もクソも無い。ただ『戦姫』だから」

「………」

「自分の代わりにあの騎士に戦って欲しいんでしょ?」

「………」

「戦いたくない。最強の力を持ってるのに。何だってできるのに。本当は今すぐにでも逃げ出したい」

「…別にいいでしょ」

「卑怯者ッ!臆病者ッ!!最低の屑!!アンタみたいな半端者が『戦姫』だって知られたら、日本中がっかりだわ」

少女はただ、小悪魔の罵倒を黙って聞き入れていた
小悪魔はずっと少女を罵倒し続けた


小悪魔の罵倒はしばらく続き、パタリと止んだ

「満足した?」

「ええ、大不満。だけど、そんな屑だから。アタシは傍に居てあげてるのよね」

「別に居なくなってもいいけど」

「残念。アンタが死ぬまで、アタシはアンタの耳元で囁き続けるわ」

「…………今日はもう終わり。帰ろう」

そう言いながら少女は屋上から飛び降りる
地面に降り立った時にはもう、美しいドレスは脱いでいた

誰も知らない『戦姫』の素の顔

「はぁ……」

鬱陶しそうに溜息を吐く
何処からかイヤホンを取り出し、耳に装着する

それはきっと、周囲を飛び回る悪魔の囁きをこれ以上聞きたくないからだろう


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


朝、目を覚ます

私が目覚めてすぐにとった行動はニュースの確認だった

………本当に昨日は何も無かったらしい
当たり前か、そんな日ぐらいあって当然だ

寧ろこういう平和のために、魔法少女は居るはずなんだし

心のどこかに物足りなさを覚えながら、私は朝の支度を始めた


翡翠「いってきまーす」

余裕を持って家を出る

これがいつもの私の一日だ
これが普通なんだよ、うんうん

行く先を阻む寒い風に耐えながら、私は学校に向かった



イベント判定
4以上で発生

直下コンマ


コンマ判定:4 イベント発生


出会った人物またはイベント内容
安価↓1

朝陽一


>>300採用

登校中
陽一君の背中を見つけた

ちょっと声をかけるか躊躇ったけど、勇気を出して声をかける

翡翠「陽一君」

陽一「っ!あ、ああ…輝。えと…おはよう」

翡翠「うん、おはよ。今日も寒いね」

陽一「そうだな…」

少し前まで怖いなと思っていた彼の視線も、今ではどことなく柔らかく感じる
こうして自然に会話もできるようになっていた

陽一君は眠たそうに大きく欠伸をする

陽一「ふゎ……」

翡翠「…昨日、夜更かしでもした?」

陽一「ん?ああ…まぁ…ちょっとな」


曖昧な言い方だったけど、多分一昨日みたいに夜の町を出歩いていたのだろう



会話の内容
安価↓1

もしかして夜に散歩してた?
実は昨日の夜に私も散歩したんだ


>>302採用:


翡翠「もしかして夜に散歩してた?」

陽一「ん?まぁ…な」

翡翠「実は昨日の夜に私も散歩したんだ」

陽一「輝も懲りないのな。また警察のお世話になってたんじゃないか?」

翡翠「うっ…い、一度だけだよ」

陽一「……お前はさ、どうして夜回りなんてしてんだ?しつこいようだけど、危ないぞ」

翡翠「それ…は…」

陽一「………また、この前みたいに危険な場所にわざわざ行こうとしてるのか?」

翡翠「……うん」

誤魔化すべきか迷ったけど、あの時、あんな事を言った以上、誤魔化しようも無いだろう
そう思って頷いた


陽一「……お前、魔法少女なんだな」

翡翠「っ!」

鋭い指摘に息を飲む
私の態度が露骨なのか、それとも陽一君が目敏いのか

陽一「…悪い。変なこと言った。ただの、俺の妄想だから」

多分私の反応から答えも察しているだろう
この言葉は恐らく、陽一君の気遣いだ

陽一「オタクとかではないけど、ちょっと魔法少女に興味があるって前にも言ったよな?」

翡翠「…うん、言ってたね」

陽一「……魔法少女はさ、怖くないのかな。あんな化け物に立ち向かってさ」

陽一「ずっと、気になってるんだ…」


翡翠の返答
安価↓1

きっと怖いよ。だから……


>>305


翡翠「彼女たちもきっと怖いよ。だから……」

翡翠「だから、勇気を出すんだよ」

まだ魔法少女になって日も浅いけど
それが私の答えだった

陽一「勇気?」

翡翠「うん。誰かの為って思えば、震えを止めて立ち上がれる。……と思うよ」

例えば、例えば初めて変身したあの時
私は震えていた
怖がって、どうして私がと思っていた

でも、オルスが居た
私を助けてくれて、震える私の手を握っていてくれた
倒せない相手と分かっていても、もう一度立ち向かおうとしていた

そんなオルスが居たから、私は勇気が湧いてきたんだ


翡翠「こう…自分が一人だと怖くて一歩も動けなくなるけど、大切な誰かを想うと、頑張ろうって気にならない?」

陽一「……なったことが無い」

翡翠「そ、そっか…」

陽一「でも、そういうモノなんだろうな」

陽一君はそう言いながらどこか遠くを見ていた
上を向く横顔を、その時初めて見た

前髪に隠されていた眼を初めて見た

その瞳は美しい緋色の輝きで
横顔に愁いを感じさせるのは、きっと涙ぼくろの所為だろう

陽一君、実はとてつもなくイケメンなのでは?
と、ちょっと場違いなほど能天気な事を考えてしまうほど、綺麗な顔立ちだった

陽一「……輝には、その…居るのか?えと…大切な誰かって奴?」

翡翠「う~ん…うん。居るよ」

翡翠(心の中にね)

ちょっと迷ったけど、そう答えた
私の勇気の源は間違いなくオルスだし

陽一「……そっか。そっか…そうだよな…」

翡翠「?」

どういうわけか、目に見えるほど落ち込んでいる陽一君を不思議に思いながら、教室の前で別れた


昼休み


午前の授業を終えて、英気を養う長い休み時間

スマホに新しく登録された名前を見て、少し奇妙な感覚を覚える

朝陽一

別れ際に陽一君と連絡先を交換した
いつも夜回りをしているから、何かあれば連絡するかもとの事だった

実を言うと、このスマホの連絡先に音尾さん以外の男の人の名前が登録されるのは初めての事だった
罰に悪い事をしてるわけでもないのに、誰かに見られたらイケナイような気がする

……なんて、考えすぎだ



お昼ご飯、どうしようか?


昼ご飯を食べる場所、もしくは誰と食べるか
安価↓1

屋上でご飯


>>309採用:屋上



文章訂正

× 音尾さん
○ お父さん

誰やねん音尾さんって!!!


今日は屋上でお昼ご飯を食べることにした

春とか秋とかなら人気のスポットなんだけど、現在は冬真っただ中
滅多に人は訪れない

私も冬には屋上に来ないけど、今日は外で食べる気分だった

中庭に行けよと自分にツッコミが入ったけど、もう既に階段を上る途中
わざわざ五階まで来て降りるのも億劫だったため、今日は屋上で食べる

屋上の扉を開く
風が吹く
冷たさと同時に、爽やかさを感じさせる風だ


しかし、そこには意外な先客が居た



1、朝陽一
2、姫神沙耶香
3、新キャラ

安価↓1


>>314採用:3、新キャラ


1、知り合い
2、友人
3、印象にない

安価↓1


コンマで決めましょうかね

0-2 知り合い
3-5 友人
6-9 印象にない

直下コンマ


コンマ判定:2 知り合い


性別は女性です


名前を
安価↓1


年齢を(先輩とか後輩とか)
安価↓2

赤月 暁(あかつき あきら)


>>319,320採用


名前:赤月 暁(アカツキ アキラ)
性別:女性
年齢:17歳


内面とか外見とか、とにかく何でも設定

安価↓3までをMIX

何らかの事情で自身の「女」という性を嫌悪しており(あくまで自分に対してのみ向けられるもので、女嫌いではない)
男子のように振る舞う俺っ娘


>>323-325採用

名前:赤月 暁(アカツキ アキラ)
性別:女性
年齢:17歳

【容姿】
腰辺りまである黒髪を一つにまとめている。所謂ポニーテール
切れ長の黒目
身長は172㎝と女の子にしては大きい

【内面】
一人称が俺で、男子のように振る舞う。所謂俺っ娘
自分の性別が『女』であるという事に強い嫌悪感を持っており、現在のような性格になった
別に女性自体が嫌いではない。寧ろ女子にとことん優しい
そんな性格になったのには、何らかの事情があるらしい



ちょっと半端ですが、時間も時間なので今日の更新はここまでです

俺っ娘とかボクっ娘とか、正直大好きです


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました

うん、大好きさ!


そろそろ再開です


名前:朝陽一(アサ ヨウイチ)
性別:男性
年齢:17歳


【容姿】
身長は174cm
暗い赤髪に、緋色の瞳、鋭い視線が特徴的な青年
前髪はとても長く、右目をすっぽり覆っている
前髪の所為で顔を顰めがちで、目つきが悪いとよく言われる
右目の目尻に泣き黒子がある
隠れイケメン


【内面】
優柔不断で臆病な性格であり、小心者。そんな自分に苛立ちを覚えている
人並みの正義感を持ってはいるが、今一歩踏み込めない自分の勇気の無さを心の底から嫌っている
良くも悪くも普通の青年
他人との交流の機会があまりなく、喋り方はたどたどしい
しかし、その容貌から不良と思われることが多く、喋り方が拙いのも面倒くさそうに見られがち。溜息をよく吐くのも、その印象を助長させている
趣味はアニメと漫画観賞
誰にも言わないし本人も認めないが、魔法少女オタクである


名前:夕原 可憐(ユウバル カレン)
性別:女性
年齢:17歳


【容姿】
明るい茶髪。長さは肩甲骨辺りまであるセミロング
瞳の色は緑
シュシュが好きで腕にブレスレッドのようにつけている。偶に髪をくくる
ピアスなどの装飾品を好み、割と派手


【内面】
明るくさっぱりした性格
非常に素直で、我慢が利かない悪い癖がある
女子力が高めで、趣味もかなり女性的であり家庭的
男は嫌いだが、ちやほやされるのは好き。なので男受けする格好も好き
ビックリするほど友達が居ない。翡翠だけと言ってもいい
魔法少女オタクであり、『戦姫』の大ファン。『翡翠の騎士』の事はあまり良く思っていないらしい
好きなものは美少女と魔法少女と翡翠


屋上にある見晴らしのいいベンチ
そこで、先客と目が合ってしまう
その時に、うっと思ってしまった

赤月暁
私と同じクラスで、ちょっと不良な怖い人だ

私、不良っぽい人と縁があるのかな?
陽一君もっぽい人だし、可憐も割とそういう分類に居る人だし

そんな事を考えていると、先に声をかけられる

暁「悪ぃーな。ここどくぜ」

翡翠「えっ?」

暁「俺が居ると食いづらいだろ」

翡翠「う、ううん!全然全然!!」

ぶんぶんぶんと首を振る
暁さん、いい人だ!
最早私の中で不良っぽい人=良い人という方程式が成り立ちそうだ


暁「気を遣わなくたっていいんだぜ?」

翡翠「ううん。寧ろ、私も…ご一緒していいかな?」

暁「…変わった奴だな。別にいいけどよ。えっと……」

翡翠「輝翡翠です」

暁「翡翠か。俺は暁でいいぜ」

翡翠「うん、よろしくね。暁さん」

同じクラスの人だから名前は知っていたけど、改めて自己紹介をした
私は知り合いのつもりだったけど、暁さんは私の名前も覚えてない様子だった
……まぁ私、地味だし

そんなこんなで、暁さんと一緒にご飯を食べることになった


………どんなこと話そう?


安価↓1

寒いのになんでここに?


>>335採用


翡翠「寒いのに何でここに?」

暁「ブーメランって知ってるか?」

翡翠「わ、私は外で食べたいなって思って。寒いの覚悟で来たんだよ」

暁「俺も似たようなもんさ。…教室だとちょっと食いづらくてな。周りの奴らに気を遣わせたくねーし、こうやって人の居ねぇ屋上で食ってんだよ」

翡翠「…そっか」

暁「案外誰も俺の事気にしてねーのかな?ぼっちだから分かんねーや」

そう言いながらにひひっと笑う
自虐ネタのつもりだったのかもしれないけど、私は苦笑いしか返せなかった
だけど、その言葉の節々から、暁さんはいい人なんだろうと伝わった

…私はよく知らないけど去年の今頃から、急に暁さんは荒れるように…所謂不良のような行動を取るようになったという
それ以前には、普通に友達と居る姿も見たことがある



閃き判定
4以上で何かを閃く

直下コンマ


コンマ判定:3



…う~ん、去年の今頃か
何かあった気もするけど、思い出せないな

暁「しっかしお前、俺と話そうなんて度胸あんな」

翡翠「そう、かな?」

暁「ああ。どいつもこいつもビビッて、声かけると逃げられるってのに」

……しかし、確かに言われてみると、昔の私なら間違いなく逃げ出していただろう
最近、よく自分から行動を起こそうという気持ちが強い

魔法少女になってから、精神性が変化があったのかもしれない

翡翠「暁さん、話してみるといい人だし。全然怖くないよ」

暁「…へへっ、ありがとな。割と嬉しいよ」


それからも、昼休みの間暁さんと話をして過ごした
勉強の事とか、結構真面目な普通の話だ


放課後

さてさて、ここからが学生の本分と言っても過言ではない
部活動にも入って無い私には、いくらでも時間がある


放課後は何をして過ごそうか?


安価↓1

葵に会いに行く


>>340採用


葵ちゃんに会いに1-Aに向かった
……のだが、葵ちゃんは今部活をしているらしい

………だよね、普通の高校生は、放課後部活に精を出して、青春してるよね
…私も、何か入っておくべきだったかなぁ

一応何処に居るかは教えてもらった

武道場
柔道をやっているらしい

ちょっと覗きに行こうかな?
それとも、邪魔しない方がいいかな?


1、行く
2、行かない

安価↓1

1


>>345採用:1


ちょっと覗くくらいいいよね
そう思い、武道場に向かった

ええと葵ちゃんは…………………あ、居た

見つけるのにずいぶん時間がかかってしまったが、居た
道着に着替えており、いつもの猫耳とか猫尻尾とかのアクセサリーを外していた
当たり前か、そんなのつけてたら怒られるよね

受け身の練習?だろうか
何度も投げられたり、投げたりしている

一度目があった気がして手を振ると、小さく手を振り返してくれた


あんな風に動けたら、戦闘にも活かせるかも
そんな事を考えながら練習風景をしばらく眺めていると、休憩時間になったらしく此方に駆けよって来た

葵「ひ、翡翠先輩!どうしたんですか?ビックリしましたよ」

翡翠「何となくね。練習、頑張ってるね」

葵「そんな!葵なんてまだまだですよ!」

必死に手と首を振って否定しているが、私には十分凄いなと思えた
運動とか全然得意じゃないし

翡翠「あれ、あの。投げられてバン!って床叩く奴。受け身だよね?」

葵「はい。そうですよ」

翡翠「ああいう動きが出来たら、あれにも役立ちそうだなって思っちゃった」

葵「……確かに、何も知らないよりはいいかもしれませんね。ちょっとやってみますか?」

翡翠「へ?」

葵「大丈夫ですよ。ゆっくりやりますから」

翡翠「え?ちょっ―――」


私は肩を掴まれ、足を掛けられるッ――――!



イベント判定
5以上で発生

直下コンマ


コンマ判定:6


翡翠「うわっうわっ!!…ととと…」

ぺたん

と気の抜けた音で床を叩く
本当にゆっくり体を倒されただけだったけど、体のバランスを崩すとどうにも体に力が入らず、思うような動きにならなかった

葵「だ、大丈夫ですか?」

翡翠「うん、大丈夫大丈夫。えへへ…結構難しいんだね」

葵「基礎ですけど、大事な事なので、よく練習するんですよ」

葵「これはその『実戦』でも役に立つ方です」

この場合の実戦とは、魔法少女としての戦いの事を言っているのだろう

翡翠「そうなんだ。やっぱり凄いなぁ、葵ちゃんは」

葵「も、もう!褒めても何も出ないですよ!」

恥ずかしそうに葵ちゃんは否定するけど、これは紛れも無い本心だった
葵ちゃんは魔法少女として、こうして努力を重ねているのだろう
それはきっと同じ魔法少女だからこそ、より尊敬できる行動だと私は思う

……尚更、私の強さはあの鎧の力だけなのだとも実感してしまう
動体視力も、腕力も、脚力も、風も、全てあの鎧に依存している
私も何かした方がいいのかなぁ?


もう一度、という時にスマホの通知音が鳴る
葵ちゃんに断りを入れて、内容を確認する

陽一君からだった
文面は

『○○の××というビルの近くでアンノウンが出たらしい。危険だから絶対に近づくな』

との事だった

近づくなと書いているけど、行かないわけにはいかない
それを分かったうえで、陽一君はこう書いているのだろう

ありがとう陽一君

心の中で感謝する

翡翠「ごめん葵ちゃん。急用が出来ちゃった」

葵「そうですか。葵もこれから部活の練習がありますから」

翡翠「うん。またね」

葵「はい!……あっそうです!言い忘れてました。○○の××ビルの近くを通る時は気を付けてください。……いえ、見に行くのもいいかもですけど。とにかく気を付けて」

翡翠「う、うん。わかった」

よく分からないけどそう言って、私は目的の場所へ向かう
葵ちゃんが言った場所も、陽一君が教えてくれた場所と同じ
つまり、アンノウンが来ることを予見していたという事だろう

その後の言葉が、何か引っかかる言い方だったな

疑問に思いながらも、私はアンノウン退治に向かった


翡翠(やっぱり電車で行くより早そう)

私は――翡翠の騎士は走っていた
一度、電車に乗って近くまで行ってから変身しようと思っていたけど、途中適当な場所で変身をして、目的の場所まで走っていた

電車を使って10分ほどの距離
それを、4分ほど。あと1分もかからないという速度で向かっているのだ

一体どれだけの速度が出てるんだろう?
車も余裕で追い抜けるし、電車より早いって事だよね?

……これから学校に行くときも変身してから近道しようかな

なんて邪な事を考えてしまうほど、出鱈目なスピードとスタミナだった
そう、疲れないのだ

薄々感づいてはいたが、変身中に疲れはない
息も切れないし、酸素不足を感じない
もしかしたら海の中ですら無呼吸で動き続けられるかもしれない


そんなこんなで、漸く人の動きがおかしい場所を見つける
そこが恐らく目的地だ

翡翠「うおおおおおおおおお!」

私は己の存在を知らしめるように大声を出してその場に姿を現した


そこに広がっていたのは無残な破壊の後
人の姿は殆どなく、恐らくもう退避しているのか

そこにあったのは、倒れ伏すアンノウンの死に体と、その上に腰を掛ける少女の姿だった

「あら、本当に来ましたのね」

それは私のよく知る姿だった
かなり容姿が変わっているはずだが、間違いなく同一の存在であると認識できる

翡翠「姫神…沙耶香…」

沙耶香「あら、私の事ご存知ですのね。でもいけませんわ、今の私は魔法少女。『スパーダ』とお呼びなさいな」

沙耶香さん――スパーダは死体から優雅に飛び降りる
重力を感じさせない柔らかな着地

沙耶香「『翡翠の騎士』会いたかったですわ」

翡翠「……活動を止めたはずでは?」

沙耶香「ふ~ん、その事も知っていらっしゃるのね。意外と俗っぽい方ですこと」

クスクスと口元に手を当てて笑う
平時ならば優雅な仕草と思えたかもしれないが、今は怪しさを撒き散らす仕草にしか見えなかった


事件があったのはそう、確か去年の今頃
スパーダが魔法少女のアイドル的な存在として注目を集めていた、正にその時
まるでその名声を利用するかのように、その名を知らしめるかのように事件は起きた

その日、大量に同時に、同じ場所でアンノウンが複数で騒動を起こした
その日は休日で多くの人が賑わっていたショッピングモール
そこでアンノウンが騒動を起こした

現場は当然大混乱、多くの死人が出た

事件を納めたのはスパーダだった
現場にはいくつものアンノウンの死骸と、数えきれない死人の姿
そして、残念ながら戦いで命を落とした魔法少女が二人
それでも、その場に居て助かった人は死んでしまった人の何倍にも上ったという

メディアは当然そのことを取り上げ、スパーダを英雄として称えた
しかし、悪戯のようにその当時の動画がネットにアップされては消されるという事が起こるほど、凄惨で異常な光景だった
それだけならば、そんな大きな事件だったで済んだだろう

そう、その数あるうちの動画の中に『魔法少女の体を剣で貫くスパーダの姿』さえなければ

当然その事が発覚してからメディアの態度は一変、スパーダに対して厳しい追及がされた
スパーダは『知らない』の一点張り
あの映像を真とするなら、スパーダは間違いなく殺人者として裁かれるだろう
しかし、あの映像を真とする証拠は何もなく。本人は否定の一点張りで他には何も語らない

その後、スパーダは突然の活動休止を宣言し、真相は曖昧なままに表舞台から姿を消した


彼女の対応に対して、世間の声は厳しく、彼女は激しく非難された
大企業の令嬢という事もあって、あらゆる方面からの強いバッシング
その中には『彼女が全てを仕組んだ黒幕』という身も蓋も無い声もあったという

そうして私と同じ学校に通う彼女、姫神沙耶香は今でも後ろ指をさされる生活を送っている

スパーダ

魔法少女でありながら、魔法少女殺しの汚名を被った少女
事の真相は、彼女以外の誰にも分らない

そんな彼女が今、私の目の前に立っていた
長い間見せなかった魔法少女の姿で

沙耶香「マルヴァに無理を言ってアンノウンを探させた甲斐がありましたわね」

翡翠「………」

成程、葵ちゃんのあの微妙な物言いは既にスパーダが現場に居ることを知っていたからか
だから、危ないから行くなではなく、見に行くのはいいけど気を付けて、だったのか

真実はどうあれ魔法少女殺しとして知られる相手
その人物と私を会せることを心配して当然か


沙耶香「私がアンノウンを見つけて6分。中々お早い到着ですのね。この辺に住んでらっしゃるの?」

翡翠「………」

沙耶香「だんまりですか。そういう態度を取るのですか」

翡翠「答えたくないだけです」

沙耶香「人に言えないお家柄ですの?」

翡翠「家は関係ない」

沙耶香「その言い方、貴方にも家族がいらっしゃるようね。やっぱり人間なのかしら?私達魔法少女のような」

翡翠「………」

話せば話すほどボロを出してしまう気がする
そもそもアンノウンを倒すという目的は達されている
これ以上此処に居る必要も無いか

翡翠「アンノウンを倒してくれて、感謝します」

それだけ言って背を向けた


沙耶香「あら、逃げるんですのね」

翡翠「………」

沙耶香「まあ関係ありませんわ。そっちの方がありがたい」

これで興味を失ってくれたかと胸を撫で下ろす
その時だった

刃が、見えた

脇腹のあたり
曲線を描く鋭い刀身が突き出ている

翡翠「なっ!!?」

混乱
そして恐怖
私は後ろを振り向く

私の真後ろで、ニタリと赤い唇の端を曲げる魔法少女

その手に握る剣が、私の背中に深々と突き刺さっている


翡翠「っっっコノッ!!!」

ほぼ反射だった
私は分厚い装甲で覆われた右腕を、スパーダに向かって振るう

振り抜いたその先
そこに既に彼女の姿は無く、一呼吸遅れて空から音も無く地上に降り立つ

沙耶香「…あら?変ですわね、確かに体を貫いたはずなのですが。血がついてないですわ」

確かに私の体から引き抜かれた彼女の剣に血は一滴もついていない
私は自分の刺された箇所を確かめる

鎧には確かに穴が開いている
しかし、血は一滴も溢れていない
痛みも感じなかった

沙耶香「貴方もしかして兵器の類?しかし、それにしては容易に貫けましたわね。手ごたえも鉄の塊という感じでもありませんでしたし…」

スパーダは不思議そうに私の正体について頭を捻っている
確かに血が出ないのは私も変だと思うけど!けど、それどころじゃないでしょう!?


翡翠「何故私を襲うんですか!?」

沙耶香「何故って…おかしな人」

クスクスと口元に手を当てて笑う
今はその仕草が何よりも腹立たしい

翡翠「何がおかしいんですか!?私に襲われる理由はないでしょう?」

沙耶香「アンノウンを殺すのに理由が必要ですか?」

翡翠「ッ!?」

彼女の顔が目の前にあった
眼前に刃が迫る

私は間一髪のところで大きく後ろに飛びのく

沙耶香「中々の動体視力。今まで見てきたどのアンノウンより優れていますわ」

後ろで声がした

翡翠「ぐっ!うぅ!!」

私は両手を突き出しガードの体勢を取る
強い追い風が吹くも彼女の振るう剣の勢いは止まらず、硬い金属音と共に右腕に当たる


翡翠「…!?」

重い!
少女の細腕から体重が乗せられているとは到底思えない重さ

ギリギリと音をたて、刃が分厚い装甲を削り、徐々に内側へと侵入しようとする

しかし、これなら何とか話が出来そうだ


翡翠「待ってください!私はアンノウンではありません!!」

沙耶香「そう仰る証拠は?」

翡翠「例えアンノウンだとしたら、今までの行動に矛盾があるでしょう?何故同胞であるアンノウンを倒し、魔法少女を助けるんですか!!」

沙耶香「では、アンノウン同士、別に同胞ではないのでしょうね。魔法少女は結果的に助けられただけなのでしょう」

翡翠「だからといって私がアンノウンであるという証拠も無いじゃないですか!!」

沙耶香「アンノウンではなくとも、正体不明の怪物には相違ありません。理由はそれで十分ですわ」

翡翠「こんのっ分からず屋!!」

流石に我慢の限界だ
私は彼女に向かって蹴りを放つ
全力ではないが、彼女の体を吹っ飛ばすには十分な威力の筈だ

彼女は即座に飛びのき、また音も無く着地する

…どうやら防御面は、回避以外の選択は無いらしい


沙耶香「あら、紳士だと思ってらしたのに、うら若き少女に手をあげるのね」

翡翠「正当防衛です」

此方も反撃してくると分かったのか、先ほどのように安易に攻めてはこない

しかし、しかし非常に困った
今までのアンノウンなんか比じゃ無いくらいに戦い辛い

仮にも相手は魔法少女
相手が相手とはいえ、倒してしまってもいいものか?

それに、彼女のあの言動
私をワザと煽っているようにも見える

何か真意があるのかな?

沙耶香「あのハルバード、お出しなさいな。私に手加減は無用ですわよ」


…どうする?


行動、または会話安価
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

魔法少女は相手にしないと退く


>>363採用


翡翠「…魔法少女とは戦えない!」

私が取った選択は逃走だった
何が目的かは知らないけど、手加減して戦えるほど私は器用じゃない
それに、脚力になら自信がある

私は背を向けて駆けだした

沙耶香「させませんわよ」

背を向けたはずなのに、目の前には彼女の姿があった
反対方向に体を捻ってもう一度逃げようとするも

沙耶香「残念ですが、速さでは到底私の上にはいけませんわよ」

やはり目の前には彼女の姿

…そういう事らしい
逃げ出すことは絶対に不可能だと、確信する

どうしようか?
じんわりと冷や汗が湧き出る感覚がする

戦いたくはない
どうにかして説得できないかな?


行動方針『不戦』
説得会話

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

>>362


説得のヒント
スパーダは本当に『翡翠の騎士』を人間だと思っていない
『怪物ならば』殺すべきだと考えている
戦う事に対するデメリットを示すといいかもしれない

これは安価に含まれません

安価↓


>>365採用:変身を解除
※特殊イベント発生


翡翠「……分かりました。では、私が何者か今お見せします」

沙耶香「どういう事ですの?」

…本当はやりたくないけど、これが一番手っ取り早い方法だろう
どれだけの人に見られているんだろうか?
多分、テレビとかにも映るんだろうなぁ

戦う理由なんてない、それを理解してもらうにはこれが一番だろう

翡翠(行くよ、オルス)

オルス(本当にやるんだね?)

翡翠(うん。こんな勘違いのまま戦う方が間違ってると思うから)


私は変身を解こうと、強く念じた時――――



1、『白』の流星
2、『黒』の剣戟
3、『赤』の叫び

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>371採用:『白』

 スターライト・クリスタリア
「『流星、星の涙』」

何処からか、声が聞こえた
そう認識した時には、目が何かを捕えていた

光だった

流れる星を連想させる白き光の軌跡
その軌跡から、光の粒が柔らかに降り注いでいた

その光の粒は破壊された町に降り注ぎ、一切の破壊の後を消していく

不思議な光景だった
まるで夢の世界に居るかのような、理解の外にある光景だった

光の粒は私の体(翡翠の鎧)にも降り注ぎ、たちどころに破壊個所を修復していった

呆気にとられる
それは、スパーダも同じだったようだ


光の粒が消えると、もうそこには破壊の後など感じさせない、現代の街並みが復活していた

そして、圧倒的な美が私達の降り立った

まるでスローモーション
空から降り立つ彼女の姿、ドレスのスカートの揺らめきに至る一切の動き
全てが目に焼き付いて離れない

息を飲む

その場に立っている理由すらも忘れそうになる、この世ならざる輝きが目の前にある
『星涙の戦姫』その人が、私の目の前に居た

戦姫「剣を収めて、スパーダ」

凛とした声が空気を震わせる

沙耶香「…!い、意外ですわね。貴女はその騎士の肩を持つの?」

流石のスパーダも戦姫を前にして余裕では居られなかったようで、その声はわずかに震えていた
戦姫は無言でコクリと頷いた
                    クリスタリア
戦姫「『翡翠の騎士』は味方。『星涙の戦姫』が保証する。それでは、足りない?」

沙耶香「……いいでしょう。この場は剣を収めますわ。ですが、次は無いですわよ『翡翠の騎士』」

スパーダは堂々とその場で変身を解き、長い黒髪を翻して、その場を後にした
彼女の後ろにはのっそのっそと大きなライオンがついて歩く


翡翠(……助けられた。のかな?)

オルス(多分だけど、そうだろうね)


戦姫は沙耶香さんの背中を見送ると、悲し気な表情で私と向き合う
私(翡翠の騎士)よりも小さなその体
美しい少女の姿をしてはいるが、その圧力たるや尋常ではない

というか本当に綺麗すぎない?
表情もいつも儚げで、触れたら壊れてしまいそうだ

そんな美しい少女が、そっと頭を垂れた

翡翠「うえぇ!?あ、そんな!私なんかにそんな頭下げないで!!」

申し訳なさでひどく慌てた声を出してしまう
少女は顔をあげると、何も言わずに背を向けた

も、もう帰るの!?

こんな目の前で戦姫を見る機会なんてもう二度とないかもしれない
何か、言うべきことは無いだろうか?


会話安価
安価↓1

大ファンです!
……妹、が


>>377採用


翡翠「あのっ!!」

去ろうとする戦姫を呼び止める
彼女はゆっくりとこちらを振り返った

とにかく何かを言ってあげたいという気持ちが先行して、何も考えず呼び止めてしまった
その勢いのままに言葉にする

翡翠「大ファンです!………妹、が」

……何故誤魔化したんだろうと自分でも思う
なんか身バレしたくないとかそんな感じだろうか?

戦姫は何も言わず背を向けた
その横顔、真っ白な雪のような頬に、薄く赤みがかかっていた

トンッと軽い音をたてて飛びあがると、戦姫の姿は忽ちに見えなくなっていった

翡翠(……今、今の見た?)

オルス(照れてたね)

翡翠(うおおおおおおおおおおおお!!!!)

あまりの可愛さに悶絶して立ち尽くす私の姿(翡翠の騎士)が、そこにはあった
暫く、ピクリとも動かなかったという




私は自室に帰った後も、ふにゃふにゃと頬を緩ませベッドをゴロゴロしていた

オルス「そんなに良かったかい?」

翡翠「アレを見てきゅんと来ない人なんていないよ~、うへへ…」

あの戦姫のあんな表情を見ただなんて、可憐に言えば嫉妬で殺されそうだ

オルス「僕には翡翠ちゃんの笑顔の方が素敵だと思うな」

翡翠「またまたぁ~、あざとさが過ぎるってば~」

オルス「本当なのに……」

口をとがらせてしゅんとするオルスの愛らしい姿に、もふり欲を刺激されるも、今の私は戦姫に夢中だった
あんな可愛い人間が存在していいものか
世の中、酷く偏って性能が盛られてるんだなぁ。でもあこまで完璧だと嫉妬する気も起きない


オルス「戦姫もいいけど、スパーダはどうするんだい?」

翡翠「…忘れてた」

そうだ、戦姫の事もいいが、最重要案件はこっちだろう

スパーダ
私に明確な敵意を向けてくる魔法少女
魔法少女殺しの魔法少女と言われる彼女

翡翠「まだ2体アンノウンを片付けただけじゃ、味方だって分かって貰えてないのかな?」

少し気になってネットで翡翠の騎士について検索を掛ける
殆どは、その正体を知ろうとする人たちの声ばかりだったけど、概ね翡翠の騎士は『正義』であるという認識だった

翡翠「……と、なるとスパーダは自分の考えで動いてるっていう事になるよね」

オルス「そうだね。値踏みするような目で、翡翠ちゃんを鋭く観察していたね」

翡翠「…疑っている段階ではあると思うんだけど。それ以上に容赦が無さ過ぎるよ」

オルス「不確定因子の排除。が目的と言ったところかな」

何者か分からないから排除する
それが確固たるスパーダの考え方だと予想できる

見た目がおじさんだからそのままファンというと怪しく感じるかなと


翡翠「あんな風に、他の魔法少女も殺したのかな?」

オルス「あれだけの容赦のなさだと、全然あり得そうなのが怖いよね」

翡翠「でも…う~ん……」

心のどこかで、まだ引っかかるところがある
本当に勘でしかないけど、悪人ではないような気がする

あんな事をされた後じゃあ、流石に善人とは言えないけど

翡翠「……それにしても、戦ってて怖いと思ったのは初めてかもしれない」

スパーダは強かった。間違いなく
全く反応の出来ない速度、音のしない謎の歩法
そして、一切の容赦のない剣先

アンノウンとの戦いでは感じた事の無い、死の恐怖を感じた

翡翠「本気で戦ったらどうなるんだろう?」

そう思えば、不思議と胸が高鳴った

翡翠「…?」

奇妙な心の違和感を抱きながらも、気持ちを本題に戻す
どうするべきか…


>>381
成程、そういう感じでしたか
まだまだ安価捌きが甘くてすみません



と、いうところで今回の更新はここまでです

戦姫とスパーダは白と黒で対比という設定
視覚情報が無いのがもどかしい


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


そろそろ再開です


『星涙の戦姫』
始まりの魔法少女
ウエディングドレスを想わせるような白いドレス
スカートのフリルは大きく広いが、腰回りは体のラインを出すほどに細いデザイン
胸の大きさは程々で少女らしさを失わせないボディライン
蝶を連想させるロングケープは、シースルーのような感じで肌を見通せる
手首辺りまでを覆う手袋をしており、白百合を連想させるデザイン
白タイツを履いており、靴は丸っこいパンプス。止め具のあるタイプで、ヒールはそれほど高くない
肩にかかるくらいの金髪、瞳の色は深い夜色
星をちりばめたような銀のティアラをつけている
涙を湛えたような瞳、儚げな雰囲気、鈴のような凛とした声
人々を守る魔法少女でありながら、庇護欲を掻き立てる少女的美の集大成のような姿


夕ご飯を食べている間も、私はスパーダの事が頭にあった
宿題も身に入らず、全く集中力が続かない

どうしようどうしようと考えても、どうしようもないという結論が何度も頭をよぎる

唯一突破口を開けそうなのは、自分の姿を見せるという事
つまり『翡翠の騎士』ではなく、輝翡翠を見せる事

あの時取ろうとした行動は、結果的に達せられなかったけど、身の潔白を証明する唯一の手段だったように思う

しかし、そんな事していいのかな?
デメリット…といえば、それでも信じてもらえなかったとき、それが一番恐ろしい

あれだけ迷いの無い人だ。あり得ないと言い切れない

あの動画のように、私にも容赦なく剣を突き立ててくるかもしれない

そのデメリットを考えれば、安易に変身を解くのは危険だ
本当の最終手段という事になるだろう

もう一つの妙案と言えば、完膚なきまで負かす事
殺せないと分かれば多少は諦めもつくかもしれない

しかし、これはデメリットが多すぎる
私だって、取りたくない方法だ


これから私が姿を見せるたび、彼女は恐らくやってくるだろう

さてさて、どうしたものかなぁ?



行動安価
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

正面から堂々と決闘して倒す、小細工は一切なし


>>392採用
※特定行動達成。カルマ値が上昇


翡翠(……ああもう!私、あんまりこういう事得意じゃないんだね)

オルス(ほとぼりが冷めるまで、活動を自粛するのは嫌かい?)

翡翠(…それも悪くないのかもしれないけど。ハッキリと決着をつけようと思う)

オルス(……翡翠ちゃんがそれでもいいなら、僕は傍に居るよ)

  アクセス
「『繋がれ』―――」


外に飛び出した私は、ワザと人目の多い場所を通って、ある場所に向かった


時刻は22:00

場所は私の通う学校
その校庭

見慣れているはずの場所なのに、夜という時間が、雰囲気を一変させていた

シンと静まり返る広い土庭
月光だけが頼りとなるこの場所に、音も無く彼女は降り立った

スパーダ「お早い再開ですのね。『翡翠の騎士』」

翡翠「……スパーダ。私は貴女に決闘を申し込む」

スパーダは意外そうに大きく目を見開き、やはり楽しそうに笑う

翡翠「この戦いで私が勝利すれば、私を殺すことを諦めて欲しい。…出来る事なら魔法少女と戦いたくなかったけど」

スパーダ「では、私が勝利すれば。貴方は何をして下さるの?」

翡翠「…それは、考えてなかったけど。貴女の好きにするといい」

スパーダ「そう。大した自信ですこと」

スパーダは剣の切っ先をこちらに向ける
私は一度目を瞑り、『繋がれ』と心で強く念じた

激しい風と共に、手にはハルバードが握られる

※間違ってスパーダ表記にしてました。ここから本来の沙耶香表記に戻します。すみません!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


沙耶香「死ぬ前に一つ、お聞きします」

翡翠「…何ですか?」

死ぬつもりなんて毛頭ないけど、私は会話に応じた

沙耶香「貴方が守るべきものは何ですか?貴方に、誰にも譲れない正義はありますか?」

翡翠「……守るべきもの……正義」

漠然とした問だ
何故、こんな事を聞いてきたのかもわからない

…なんと、答えるべきなんだろう


会話安価
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

私を必要としてくれる人達


>>412採用


翡翠「……私は、私を必要としている人たちを守りたい」

翡翠「私の力はきっと、その為にある」

沙耶香「……そう」

息吐いただけのような小さな声

初めて見る表情だった
睨みつけるような鋭い眼でもなく、怪しく頬を吊り上げて笑うわけでもない

右下に視線を逸らし、唇を噛む
酷く、辛そうな顔だった

目の前に剣を持ち、目を閉じる
その姿は祈りを捧げているようにも見え、修道女のような彼女の服装も相まって、とても様になっていた

沙耶香「我が業をお許しください」

それが、開戦の合図となった


一瞬で姿を見失う
しかしそれは想定内

私はハルバードで強く地面を叩く
瞬間、突風が生まれ

沙耶香「ぐっ…!」

背後に忍び寄っていた彼女を吹き飛ばす
彼女の体は大きく空を舞い、空中で何度も回転し、着地する
彼女の頬には汗が伝っていた

どういう原理かは分からないけど、概ね予想は合っていたかな

彼女の魔法は『重さを犠牲にした素早さ』
音の無い着地や、今の風で吹き飛んだことからも、彼女の体重の軽さを予想できる

問題は受け止めた時の剣の重さだけど、その時は魔法を解除した彼女の腕力
そう考えると一応の辻褄は合う


素早さは彼方が上
だけど、それ以外の全て、私が上だ!

ハルバードを力強く握る
私の意思を反映するように、ハルバードから風が生まれる
生まれた風は私に吹く追い風を更に強いものとし、暴風となって彼女に向かって吹きつける

私は鎧を鳴らし、一歩づつ彼女へと近づいていく

沙耶香「…あまり相性がよろしくないようね」

体を屈めて踏ん張っているが、立っている事すら辛そうだ
零した言葉からも、私の優位性に確信を持つ

翡翠「降参しますか?」

彼女の頭に切っ先を向ける
暴風は止めない

沙耶香「まだまだ、始まったばかりですのよ」

追い詰められて尚、彼女はタフな台詞を吐く
私は一瞬躊躇ったが、大きくハルバードを振り上げ―――彼女の頭に振り下ろす!!


ガン!!

と音をたて、私の手に持っていたハルバードは遥か上空へと打ち上げられる

反応が遅れる
状況の理解が遅れる

彼女は立つことすらままならなかったはずだ
ならば何故?

何故、吹き荒れる風に向かって平然とこうして剣を振るえた!?

沙耶香「どうしました?私、何かおかしなことを?」

彼女は怪しくニヤリと笑う

沙耶香「速さだけでは貴方に勝てない。ですので、少し趣向を変えさせていただきます」

翡翠「…っ!」

私はその場に屈んで反動をつける
何としてもハルバードを取り返さなければ。何をするにしても、あれが無ければ此方にまともな攻撃手段などない
遥か上空と言えど、この脚力ならひとっ跳びで!!


今度は真逆の状況、屈む私と、武器を振り上げるスパーダ
だけど、体の頑丈さならこちらが上の筈!

校庭にクレーターが出来るほどの本気の跳躍、私の肩に彼女の剣が当たる
関係ない
彼女の剣を弾き飛ばしてでも飛び上がるつもりだった。しかし――

翡翠「……!?」

飛び上がろうとする体のバネを、真っ向から押さえつけられる
重い!重すぎる!!

彼女の剣先は跳ね上がるどころか、私の鎧を地面にさらに押し付けてくる

沙耶香「速さも私が上。力も、私の方が上ですわね」

翡翠「ぐっ!ううぅ!」

踏ん張る、何とか体を持ち上げたい
この体勢では落ちてくるハルバードすら拾えない
しかし、ピクリとも持ち上がらない
体に纏う追い風も、今の彼女にはそよ風同然のようだ


沙耶香「また風は吹かせないんですの?それとも、何かが邪魔をしていて?」

翡翠「……」

沙耶香「読めましたわ。貴方の本体、鎧ではなくあの武器の方ですわね」

翡翠「…!」

私は無我夢中に腕を突き出す
何とかして彼女を退かせなければこのままジリ貧だ
彼女の体に、左腕が触れそうになる瞬間

沙耶香「…はっ!!」

私の体を押さえつけていた剣を持ち上げ、胸のあたりに蹴りを叩きこまれる
その蹴りもまた強烈で、少女の足から放たれた力とはとても思えない衝撃が全身に響き渡る

5mほど宙に浮き、何とか着地する
鎧に吹く追い風は柔らかなクッションのように私の体を包み、体勢を無理なく整え、着地しやすくサポートしてくれた

沙耶香「ふーん、その鎧の方は、自動で体を包む風。ですか」

沙耶香「…まああまり関係ない事ですの。本体は此方にありますもの」

音をたてて、彼女の真横にハルバードが突き刺さる


強い
彼女の強さは想像を超えていた

ハルバードさえあればと、あの時は考えていたが、ハルバードがあってこの様

速さも、力も、分析力も
全て彼女の方が上だ

ただ、付け入る隙があるとすればその防御力
一度も此方から触れていないけど、逆に、触れられるのを恐れているのではないか?
多分だけど、そこに隙があるはずなんだ

……なんにせよ最優先はハルバード
アレが無ければ何ともならない

私は大きく一歩踏み出し、彼女との距離を詰める
そして地面を強く踏みつける

クレーターと共に地面は弾け、土ぼこりが舞う
これを追い風に乗せて彼女に向ける

一瞬でいい
隙を作りさえすれば―――

沙耶香「単調ですわよ」

声は、後ろからやって来た


横薙ぎに彼女の剣が振るわれる
幸い地面は強く踏みしめている。踏ん張りを利かせて私はそれを左腕で受け止めようとする

オルス(駄目だよ翡翠ちゃん!)

翡翠(えっ?)

オルスの叫びが脳内に響く
しかし、彼女の速さに対処がすでに追いつけない

私は正面から剣を受け止めてしまった

ベキベキベキ!!

と、嫌な音がする
振り抜かれたスパーダの剣は、一切勢いを殺されず、鎧の中に刃が侵入する
踏ん張りを利かせていたため、体は弾き飛ばされずその場で固定されてしまっていたからだ

翡翠「うわああああああああああ!!!!!!」

私は自分の腕に半分以上刃が刺さっているという光景に混乱してしまっていた
そして、恐らく、その時一番やっていけないであろうことをしてしまった

腕を引くでもなく、もう片方の手で刃を握って勢いを押しとどめることもせず
反射的に、彼女の剣を押し返そうとしてしまった


ガン

鎧の胸に、刃が当たる

遅れる、反応が遅れる
普通ではない光景に脳が思考を止めそうになる

だが、痛みがそれを許さない

翡翠「いっ―――!!!」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

時間差で音をたてて、何かが地面に落ちる
翡翠色をした、人の手を模ったモノ
さっきまで、この左腕にくっついていたものだ

私は狂乱のままに後ろに飛びのいた
逃げなければ
彼女の剣から逃れなければ!

警告が鳴り響く
彼女の攻撃を受けてはいけない

この鎧では受け切れない!!


沙耶香「学習しないお方ね。これくらい、前にも見せたでしょう?」

声は、後ろから聞こえた
強い衝撃と共に、体が上手く動かなくなる


目の前に人はいない
私の眼には、刃だけが見える

曲線を描く片刃の剣
その鋭い切っ先が何処から出ている?

胸だ
胸の中心を少しずれた場所

なんとか首を後ろに向ける
そこにはやはり、彼女の姿

スパーダの持つ剣は、私の背中から貫通して胸を貫いていた

脱力

体から力が抜ける
敗北感に体が呑み込まれていく


膝をつく
剣が体から引き抜かれ、支えを無くした体はそのまま地面に伏す

沙耶香「……これで終わり。ですわね」

沙耶香「しかし解せませんわ、アンノウンでも血ぐらい流しますのに、一滴の血も流さないなんて」

彼女は私に背を向ける
不思議だ、意識がどんどん覚醒していく
痛い筈なのに、苦しい筈なのに、勝てそうもないと悟ったはずなのに
胸の奥が熱くて仕方ない

強い
何て強いんだ

今まで戦ってきたアンノウンとは比べ物にならない強さ

凄い、彼女は凄い
どれ程の修羅場をくぐって来たのだろう?
どれ程の鍛錬を積んだのだろう?

たかが二度の戦闘経験の私では、到底敵わない


敵わないと思うからこそ
この身は奮い立つ

気付けば、私は立ち上がっていた

沙耶香「…っ!まだ、やる気ですの?何をすれば死ぬのかしら」

翡翠「……ははっ…ふふ…ははは!あははははははははは!!!!!」

声が溢れて止まらない
この体はずっとこれを求めていたんだ

翡翠「くははははははははははははは!!!!!!」

そうだ、そうじゃないか
ずっと物足りなさを感じていた
何かをしたいと、胸の奥に秘められたコイツが爆発しそうだった

沙耶香「………どうやら貴方。私の見立ては間違っていませんでしたわ」

何か言っている
良く聞こえない

笑い声でよく聞こえないよ

ああ、この胸に高まる充実感
これが――――



『喜び』



ドクン

と、貫かれたはずの心臓が唸りをあげる
メキメキメキと音をたて、鎧は新たな体を作っていく

斬り飛ばされたはずの左腕が蘇る
その左腕は、光を反射する美しい光沢の翡翠色ではなく、禍々しい光を飲む、暗い深い緑色だった

体が変わっていくのを感じる/
                  心が浸食されていく

顔などない筈の鎧が笑う/
                何かが壊れていくのを感じる

鎧が至上の喜びに打ち震える/
                   帰ってきてと誰かが叫んでいる


左手で顔を覆う
笑いが止まらない
顎が、顎が割れそうなほど痛む

それでも、笑いが止まらない


顔を覆う左手を取り払う
そこには無機質な騎士の仮面ではなく、大きく発達した顎があった

翡翠「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」

月に向かって吠え立てる
声が溢れて止まらない

楽しい!
何て楽しいんだ!!

強き敵に屈することが、敵わないと思う相手が居ることが、こんなにも喜ばしい事だったなんて知らなかった
それをこれから打ち倒すと思うと、笑いが止まらないよ


沙耶香「懺悔など必要ありませんわね。『アンノウン』」

翡翠「………?」

今の…私に言ったのか?
私に、向けられた言葉なのか?

『アンノウン』

この…私が?


コンマ判定
5以上で………

直下コンマ


コンマ判定:0 否定


違うだろ
私はアンノウンじゃない
人間だ

間違いなく

何処をどう見ても、私は『正義の味方』だ

面白い
面白いなぁ
こんな事を言われたのは初めてだ

翡翠「ふはははは!!強き者よ!私と死合おう!!その果てに答えはある!!」

沙耶香「死ぬのは貴方だけですわ!!」

溢れ出る感情のまま、私は大きな顎をガチリと鳴らした



コンマ判定
0以外……

直下コンマ


コンマ判定:7  蹂躙


月の光さす校庭
そこには、異様な光景があった

翡翠色をした鎧の騎士
いや、最早騎士と呼ぶのも憚られる異形の姿

大きく発達した顎のような器官
手足は人の形とも言えず、獣のような鋭い爪を蓄えている

月に吠え立てるその姿は、まさに『狼』のようだと形容できる

翡翠の狼の足元には、無残にも体を引き裂かれた少女の姿
足は無く、腕も片方だけ、首と体は皮一枚で繋がっている

しかし、最後の最後まで剣を手放すことなく、その切っ先は狼の体を貫いていた


私はのそりと体を起こす
胸に灯った熱い思いは、風に吹かれたように消えていた


勝てた
私は勝った

ハルバードなどなくとも、この鎧だけで私は勝った

足りない
まだ足りない
まだ『喜び』足りない

ハルバードを掴むと、不意に奇妙な感覚が襲い来る

声が響く
大人のような子供の声
痛む、頭が痛む
何かが、何かが違う

私は…彼女を殺した?
姫神沙耶香を?
スパーダを?

私が?

翡翠「あ…ああ……オルス…どこ?何処に居るの?聞こえないよ…オルス?」

居ない

居ない

居ない

私のどこにも聞こえない

オルスの声が聞こえてこない


翡翠「ねえオルス!居るなら返事をして!!この鎧を外して!!戻りたい!!早く戻して!!」

翡翠「オル――」

時が止まったかのような錯覚
視線の先にあったのは光

零れるような光の軌跡が、私の体を貫いていた
なんどスパーダの剣を受けても動き続けられた身体が、一切の活動を停止した

後ろを振り向くと、そこにあったのは、星の光を擬人化したかのような美しい少女

     
戦姫「『流星、星の涙』」


私を見る彼女の眼は、真実涙を湛えていた

戦姫「……ああ…やっぱりこうなのね。何も救えない」

少女は背を向けて、二度と振り返ることは無かった
その傍ら、月に光に照らされた雫の煌き、それをみるとなぜか心が安らいだ


気付くと、私の体は人間の姿に戻っていた
声が聞こえる
大人っぽい子供の声

オルス「ごめん!ゴメン翡翠ちゃん!!僕が!僕が居たから!!」

ボロボロと涙をこぼす
違う、違うよ
オルスは悪くないよ

涙を拭ってやろうと手を伸ばす
だけど、ピクリともこの体は動かない

小さな柔らかい手が、私の顔をペタペタと触る

オルス「お願いだよ!目を覚まして!!嫌だ!嫌だよ……!」

オルス「キミの『喜び』だけが…僕の望みなだけだったんだ……」

オルス「こんな事なら…二度と会えなくてよかったのに…」

ああ、泣かないでオルス

泣かないで…………

そこで、私の意識は途絶えた


と、いう事でBADENDでございます


個人的にBADEND大好きなんでね、かなり力入れて楽しく書かせてもらいました
やっぱりわざとバッドエンド見に行くのも、ノベルゲームの楽しみの一つだと思うんですよ

一応救済処置はありました

>>408で特定のキーワードを含む正義を語る
>>435の判定で自分の姿を認識する
>>440の判定で敗北する

いずれかを達成できればBADENDを回避できました
判定についてですが0はそのまま0の扱いです。コンマの最大値は9ですね


というわけでどっからロードしますか?

1、>>391の行動から
2、>>408の発言から
3、>>435のコンマから

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>456採用:1、>>391の行動から


という事になりました

私は基本的にBADEND大好きですけど、HAPPYEND前提な所があるので、そこらへんは安心してくださいね

ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


そろそろ再開です


これから私が姿を見せるたび、彼女は恐らくやってくるだろう

さてさて、どうしたものかなぁ?



行動安価
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

沙耶香やスパーダについてもっと調べてみる


>>466採用


沙耶香さんも、私も、お互い無暗に人を気付けたいと思っているわけではないと思う

……和解、交渉
方法は色々とあるけど、どうにかして誤解を解きたい

その為にも必要なのは、沙耶香さんの事をスパーダの事を知る事だろう

早速調べてみよう

スパーダと言えば『あの事件』は切っても切り離せないだろう
その事について知っていそうな人…誰かいないかな?


閃き判定
4以上で

直下コンマ


コンマ判定:8


直接本人…というのが一番手っ取り早そうだけど、一番難しいと思う
学校の人たちの態度から考えて、今まで面識のない私が仲良くなって事件の事を聞き出すまで、どれだけ時間がかかる事か
これは多分、最終手段かな

後は…可憐かな
魔法少女オタクだし、『あの事件』に関して何か思う所もあるだろう
沙耶香さんの事を嫌って入るけど、嫌いだからこそキチンとした情報を探している、という可能性は大いにある。可憐はそういう子だ

魔法少女オタクという意味では陽一君も候補に挙がるかな

……それに、ずっと引っかかっていたことが漸く思い出せた
去年の今頃、それは丁度『あの事件』が起きた日でもあり、暁さんの様子がおかしくなった日でもある
関係性があると決まったわけじゃないけど、無関係ではないとも決まっていない
一度、話を聞いてみてもいいかもしれない


詳しそうな人と言えば、こんなところかな?

さて、誰を頼ろうか?

人物指定
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

可憐


>>473採用:可憐


…可憐にしよう
一番気兼ねしないし

可憐の連絡先は知っている
私は早速電話を掛けた

可憐「もしもーし、どったの?」

翡翠「もしもし可憐。お願いがあるんだけどいいかな?」

可憐「お願い?珍しいじゃん。言ってみてよ」

翡翠「…去年の今頃、ショッピングモールで起きた事件の事なんだけど」

可憐「ああ、あのスパーダの?それが?」

翡翠「今、それについて調べてるんだ。当時の新聞記事とか雑誌記事とか、可憐持ってない?持ってたら見せて欲しいんだけど」

可憐「ええ?そりゃ持ってるけど、何で今更調べてんの?」

翡翠「こ、これには深いわけがありましてね…その…色々…ね?」

可憐「……まあいいけどさ。何?どういうの欲しいわけ?被害者の事?当時の状況?スパーダの行動?アンノウンの出した被害?」

翡翠「えっと……」


全部欲しいというのが本音だけど、流石それは膨大な量になる
まずは、どれから調べて行こうか?

安価↓1

被害者のこと


>>476採用:被害者のこと



翡翠「…被害者の事を重点的に」

可憐「おっけー分かった。明日学校に持ってってあげるから」

翡翠「ありがとう可憐」

可憐「そうそう、感謝しなさいってば。今度なんか奢りなさいよね」

気のいい友人に感謝を伝え、電話を切る

可憐に相談して正解だったかもしれない、想像以上にすんなり情報が得られそうだ
そして想像通り、可憐はあの事件について熱心に調べているらしかった

こればっかりは魔法少女オタクの友人に感謝だ


私は明日に備え、早めに寝ることにした


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

深夜イベント
視点選択

1、とある屋上
2、姫神沙耶香
3、赤月暁
4、輝翡翠

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>479採用:輝翡翠


寝よう寝ようと思っていても、今日はうまく眠れなかった
心も体も、多かれ少なかれ疲労しているのに、上手く寝付けない

カーテンを開けて月の光を拝む

本当は夜風にでもあたろうかと思ったけど、寒すぎたので自重した

オルス「…寝れないのかい?」

オルスが布団の中から這い出して来る
いつもの執事服と帽子がないと、すっかりただの白いウサギだ

翡翠「ごめんね、起こした?」

オルス「いいんだよ。キミが眠れるまで、僕が傍に居るよ」

翡翠「ありがとうオルス」

ちょいちょいと手招きをし、オルスを膝の上に座らせた
オルスの毛並はとっても綺麗で、ふわふわで気持ちのいい手触りだった


翡翠「……懐かしいな」

オルスを撫でていると、遠い昔の記憶を思い出す
殆どの記憶にもない、自我の芽生え始めた頃の幼い夢の記憶だ

翡翠「私ね、小さい頃ウサギが飼いたかったんだ」

オルス「…そうなんだね」

翡翠「うん、でもね。飼えなかったんだ。パパがうさぎアレルギーなの」

オルス「僕の姿が見えていたら、今頃大騒ぎだね」

翡翠「うふふっ…うん、そうだと思う。ああ…本当に懐かしい…」

ふつふつと記憶が蘇る
今では可愛い笑い話、昔の私にとっては苦い思い出


翡翠「お母さんがね、妊娠してるとき、パパと手を繋いで病院に行ってたんだ」

翡翠「私ね、お母さんに会いに行くの大好きだったの。お母さんに会えるっていうのもあるけど、道中にペット屋さんがあったの」

翡翠「小さくてちょっと狭くて、古臭くて、パパは嫌がってたけど、私は絶対そこに寄りたいって駄々をこねてたの」

翡翠「白くて可愛らしい日本うさぎさん。私はその子に会うために、何度も何度も駄々をこねた」

翡翠「私があんまりにも熱心に見てるもんだから、おじいちゃんの店員さんがね、ちょっぴりサービスしてくれて、触らせてくれた」

翡翠「フワフワで、ちょっと重くて、ちょっぴり臭かった。ふふっでもね、すっごく可愛かった」

翡翠「オルスに負けないくらい。…ううん、可愛さならあの子の方が上かな」

翡翠「おじいちゃんに名前は?って聞いたけど、まだ無いんだって言ってた。買い取り先が決まってないから普通の事なんだけどね」

翡翠「私、それがかわいそうだって思ってうんうん唸って、名前考えてた」

翡翠「そうしたらね、私がいつまで経っても出てこないから、パパが心配して中に入って来たの」

翡翠「私、パパを見つけた時真っ先に『飼いたい』って言った。当然駄目だって言われた。パパアレルギーだからゴメンねって頭を撫でてくれた」

翡翠「でも、ど~してもかいたくてわんわん泣いた。おじいちゃんもお父さんも困らせた。ぎゅ~って抱いたウサギさんにいっぱい涙擦りつけてた」

翡翠「ふふふっ…今思うと、ウサギさんも迷惑だったかな」

つらつらと、詰まることなく言葉が出た
まるで物語を語る様に、童謡の一節のように、自然と光景が目に浮かんだ


オルス「…もしも僕がそのウサギなら、泣かないでって思ったかな」

翡翠「本当?ふふっ、オルスは優しいね」

オルス「だって、翡翠ちゃんは笑顔がとっても可愛いから。翡翠ちゃんが喜んでくれると、ボクも嬉しい」

翡翠「……ありがとう。オルス」

オルスの頭を優しく撫でる
こうして幼い頃の夢が叶ったと思うと、オルスに出会えて本当に良かったと思う

なんて、またペット扱いしたら怒られちゃうな

翡翠「そろそろ寝ようか」

オルス「うん」

カーテンを閉じて、再び布団を体に被る
お腹の当たりには、ちょっと熱いくらいの温かみを感じる

じんじんと伝わる熱に、私はどっと力が抜け、私は意識を手放した



夢判定
5以上で成功

直下コンマ


コンマ判定:0  覚えていない



………

…………

……………


朝、目を覚ます
やけに頭がボーッとして重い

夢を見ていた気がする
……何か、昔の夢を見ていたような気がする

もう、思い出せないけど

私はのそのそと起きだして、朝の支度を始めた


ちょっと早くに学校を出て、ある場所に向かって歩く
学校に向かう道中を、ちょっと寄り道するだけだ

記憶の糸を辿って、確かここだという場所に来た
そこにあったのは錆びれた民家だった

………そっか、あのペット屋さん潰れちゃったんだね

ノスタルジックな気分になりながら、学校に向けて歩き続けた


イベント判定
5以上で発生

直下コンマ


コンマ判定:1 不発


自分の席に着くと、可憐から声をかけられる

可憐「はい、アンタの望みの物」

翡翠「ありがとう!」

手渡されたのは青いファイル
中を開いてみると、雑誌の切り抜きや新聞の切り抜きなんかが、丁寧にファイリングされていた

可憐「わざわざこんなかったるいことしてた昔の私に感謝ってね」

翡翠「すごいすごい!ありがとう可憐!助かるよ!」

可憐「ふふ~ん、そして、これな~んだ?」

可憐はUSB記憶媒体を見せて、にやにやと笑う
しかしよく意味が分からなかった



翡翠「それ、何?」

可憐「秘蔵映像。誰にも見せんじゃないわよ。一人でこっそり見るのよ」

翡翠「う、うん…」

よく分からないけど手に握らされる
秘蔵映像…何かの動画?

……見れば分かるか

私はファイルとUSBを大事にしまい込んだ

ファイルの中身は、授業中にもコッソリ目を通しておこう


昼休み


ファイルに一通り目を通した
もう少し読み込めばもっと何かが見えてくるかもしれないが、一応大事そうな話をメモしておいた

死者87名、負傷者300余名、消滅が確認されたアンノウン11体
死者のうち2名に魔法少女が居たとされている

休日のショッピングモールという事もあり、家族連れが多く、目の前で家族を失ったものも多いという
被害者のインタビューも多くあり、今でも大きなトラウマとなっている事だろうと想像できる

そのインタビューの中で、少し気になるモノを見つけた
内容は『スパーダが俺の妹を刺し殺す姿を見た』という物だ
それだけならば、ただのアンチスパーダと言った内容の記事なのだけど

インタビューに答えている人が問題だ
赤神暁
実名で公表されていた

普通、こういったインタビュー記事の回答者は名前を隠すのが通例
しかし、名前を公表しているという事は、匿名性の否定。つまり、存在を知らしめるためだと考えられないだろうか?

……とにかく、暁さんは関係者で確定だ


被害者について大事そうなのはこれくらいかな
後で家に帰ったら、USBの中身も確認しないとね


さて、まずは昼食だ


どうしようか?


場所、もしくは人物指定
安価↓

赤神に会ってみる


>>495採用

赤月さんと間違ったのか、姫神さんと間違ったのか……



どっちか分かんないので最安価

1、赤月暁
2、姫神沙耶香

安価↓1

ごめんなさい
1です

>>493で赤神になってるね


>>497採用:1


>>499
マジか!!マジだったよ……
ホンマすんません…反省してます……


暁さんは屋上だろうか?
そう考え屋上に向かうと、やはり暁さんは居た


翡翠「暁さん!」

暁「ん、また来たのかよ。こりねー奴、まぁ座んな」

暁さんはちょっと嬉しそうに自分の隣を空けた

暁「お前、ひょっとして友達居ねーのか?」

翡翠「い、居るよ!?暁さんだってもう友達だよ」

暁「…成程な。コイツは一本取られた」

翡翠「暁さん以外にも居るからね?」

暁「分かってるって、んな意地悪なこと言うなよ。ちょっと傷つくだろ」

翡翠「あ、ご、ごめん」

イマイチ距離感が掴み切れていないまま暁さんの隣に座る

暁「んで、今日はどうした?また外が恋しくなったのか?それとも、俺に用事か?」

翡翠「えっと……」


会話安価
安価↓1

去年の事件で暁さんがインタビューに出ているのを知っちゃた


>>502採用:

翡翠「うん、ちょっと話がしたくて」

取り敢えずお弁当の包みを広げ、ご飯を食べる

なるべく自然に、あんまり問い詰める感じにならないように話を切り出さないと
とても繊細な話題だろうから

翡翠「…そう言えば昨日の事、知ってる?翡翠の騎士とスパーダの事」

暁「……ああ、知ってるぜ。久々に面見せやがって…」

暫く普通の世間話をして、スパーダの事を話題にあげた瞬間、表情が変わった

翡翠「スパーダと言えばさ、やっぱり去年の事件を想い出しちゃうよね…」

暁「そりゃそうだろうさ。昨日ちょっとニュースに取り上げられてた。奴が顔を見せたのも合ってな」

分かりやすいくらい、スパーダへの敵意が感じられる
私は一呼吸おいて、本題を切り出す

翡翠「……私、どうしても去年の事件の事知らないといけないんだ」

暁「そいつはどういう――」
翡翠「私、去年の事件で暁さんがインタビューに出ているのを知っちゃった」

そう言いながら、ファイルを開き、暁さんに見せた


翡翠「……話、聞いてもいいかな?」

暁「……この記事に書いてあることが全てだ。他に言えることなんてねーよ」

翡翠「……妹さん、魔法少女なんでしょ?」

暁「なっ!?お前…なんで…」

この発言はちょっとした賭けだったけど、どうやら見事当たっていたらしい
スパーダが魔法少女を剣で貫いている瞬間の画像は多く出回っているし、それは話題によく上る
だけど、一般人を殺したという情報は全く信憑性の無いデマばかりで、そんな映像記録も残っていない

そんな中、暁さんのインタビュー記事には妹が殺されたと書いてあった
恐らくどこもまた似たようなデマだと思い、対して取り上げられなかった

だけどもし、それが真実だとしたら

逆説的にあの魔法少女が妹さんなんだろうと予想できた

翡翠「私もね!私も魔法少女なの。だからどうしても、スパーダの事を知っておきたいの」

暁「………」

暁さんは義理堅い人だと思う
だから先に此方の秘密を告白した、このまま答えてくれればいいけど…


暁さんは溜息を吐きながら、ぼりぼりと頭を掻く

暁「……こりゃ参ったな。俺も白状しねぇと駄目か」


暁「『繋がれ』」


突如光が発生したかと思うと、目の前に居た暁さんは別人に姿を変えていた

黒い袴に、赤い布地に彼岸花の刺繍が入った着物、桜を模った簪
大正ロマンと言った佇まいの清楚な女性、その手には日本刀が握られていた

直ぐに再び眩い光に周囲が包まれる
もう一度光が収まった時、そこにはいつもの暁さんの姿

暁「とまあ、こういう事だ。ったく、こんな狭い場所に何人居やがるってんだ」

翡翠「…!…あ、はは…そうだね。うん、驚いた」

確かに驚いたが、そういう想定をしてないわけじゃなかった
暁さんも魔法少女だったのだ


暁「さーてと、ここまで来たら話してやるよ。…どっから話したもんかな」

そうして、暁さんは当時の状況を語ってくれた

暁さんがショッピングモールに来たのは、事件が起きた直後の事
妹さんとショッピングモールで待ち合わせをしており、一緒に居たわけではなかった、
着いたときには既に現場は大混乱だったという

外に逃げようとする人の波、それを必死にかき分けて妹の姿を探した
そこで目にしたのが、同じ魔法少女であるはずのスパーダが、魔法少女の背中を剣で貫くその姿
目を疑う事態はそれだけで終わらず、魔法少女は姿を変えて自分の妹の姿になったという

その当時の暁さんは魔法少女ではなく、妹が魔法少女だったことすら知らなかったらしい

暁「…その数日後だよ。俺が魔法少女になったのはな」

暁「……もし俺がもっと早く、魔法少女になっていれば、アイツを救えたかもしれねぇな」

暁「…あの時は荒れてたな。周りに当たり散らして、姫神にも殴り掛かって、周りの奴らには俺が頭おかしくなったと思われだすし。散々だ」

暁「話はこんなもんだ。大した話でもねぇだろ?概ねインタビュー通り。それ以上の内容は話せねぇよ」

そう、話を締めくくった
確かに、殆どインタビュ―に乗っていた内容だったけど、一つだけ新たな事を聞けた

動画として映像に残っていたのは『魔法少女を刺すスパーダの姿』
だけど、その後『人間の姿に戻った』というのは初耳だった


暁「ただ本気で解せねーのは姫神だ。『自分は正しいと思ったことしかしない。今までも、これからも』何て言いやがったのに、活動休止しやがった」

暁「その逃げの行動にも腹が立ったが、次に姿見せたのは翡翠の騎士殺しと来た。アイツは信用ならねぇ、やっぱりアイツは狂った人殺しだ」

暁「……あんなのが姉貴で、弥勒の奴も可哀想だな」

翡翠「弥勒……?」

暁「アイツの姫神の弟だよ。知らねーのか?」

翡翠「ああ……うん、思い出したよ」

姫神弥勒
年は忘れたけど、中学生ぐらいだったと思う
よく沙耶香さんを迎えに来る
沙耶香さんには弟さんが居たんだったね

翡翠「暁さんって、弥勒君と仲良いの?」

暁「ん?まぁ……なんだ、姫神とは幼い頃からの付き合い、ぶっちゃけ幼馴染なんだわ。あんま言うなよ、噂されると困る」

衝撃の真実が告げられたと同時に、チャイムが鳴る
休み時間が終わってしまった

私は慌てて弁当を包み、暁さんと一緒に教室に戻った


放課後


授業が終わった後も、暁さんの話を思い出していた

暁さんのこの証言によって、『スパーダが魔法少女を剣で貫いた』あの映像は殆ど真実だといってもいいだろう
つまり、間違いなく暁さんの妹を殺したのはスパーダなのだろう

あの暁さんのインタビュー記事は事件があってしばらく経ってから刷られた記事
暁さんの話によると、魔法少女になってから数日後

あの記事の目的は、スパーダの眼を自分に向けさせたかった
それで間違い無い筈だ

スパーダは活動休止していたから何もなかったけど、こうして再び活動を再開した
そうなってしまった以上、暁さんが何もしないとは思えない

一番最悪の事態は、あの二人が戦い、どちらかが命を落とす事

私(翡翠の騎士)とスパーダの誤解もだけど、あの二人の仲介もした方がいいよね
事情を知ってるのは私ぐらいだろうし

ああもう、何だか疲れてきた……


これからどうしよう?

行動安価
安価↓1

弥勒くんに接触できないか


>>511採用:弥勒君に接触


と言う所で今日の更新はここまでです

捜査というか情報集めパートは大事なんですがダレるのが問題ですね

ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


そろそろ再開


弥勒君とどうにか接触できないもんかな?
弟さんなら姉である沙耶香さんの事をよく知っているだろう

今日も沙耶香さんを迎えに来ていないかな?


そう思い、校門に向かった


幸運判定
4以上で成功

直下コンマ


コンマ判定:4 成功



……居た

校門には弥勒君が居た
あの一件、沙耶香さんが活動休止を宣言して以来、沙耶香さんを心配してか、毎日こうして迎えに来るのだ

沙耶香さんはまだ校舎の中に居るらしい
これは好都合かもしれない

翡翠「あ、あの姫神弥勒君だよね」

弥勒「はい。僕は弥勒ですが…その制服、姉様のお友達ですか?」

翡翠「え~…うん」

弥勒「そうでしたか。姉様の事で、何かお話でも?」

こういう事はよくあるのだろうか、特に私を怪しんだりせず話を促してくれる
これは有り難い

…屈んで目線を合わせてくれるのが、なんか腹が立つけど


弥勒「……いえ分かります。昨日の件ですよね。昨日、突然姉様が活動を再開なされたこと」

翡翠「…!うん、弥勒くんなら何か知ってるかなって。例えば、翡翠の騎士をどうして敵視してるのか」

弥勒「………詳しくは僕も存じておりません。ですが、どうか勘違いなさらないで欲しいのです」

翡翠「勘違い?」

弥勒「姉様は…姉様は……僕を…いえ!姉様は心優しい方です。あの行動もお考えあっての事。決して、悪戯に世間を混乱させたいと思っているわけではないのです」

弥勒「お友達だと仰るのなら、どうか責めないであげてください。姉様は絶対に正しい判断をして下さいます」

翡翠「…そうなんだ。弥勒君は、沙耶香さんの事を信頼してるんだね」

弥勒「はい当然です。…ですが、翡翠の騎士の件は僕も納得がいきません。あの方は信じてもいいと思うのですが」

翡翠「そうだよね。私もそう思う!翡翠の騎士は沙耶香さんと戦いたくないと思ってるよ!弥勒君からもそう言ってあげて!」

弥勒「は、はい…分かりました」

ここぞとばかりにちょっと強引に話を取り付ける
弟から言われれば、多少は考えを改めてくれると思うんだけど


沙耶香「誰と話をしているの」

後ろから声がかかる
どうやら沙耶香さんがやって来たらしい

弥勒「姉様!昨日の事でお話があります!」

沙耶香「…こんな人前でやめて。後で聞いてあげるから」

常に余裕のある冷ややかな表情の沙耶香さんにしては珍しく、ちょっと嫌そうに眉を顰める

沙耶香「…さようなら。ほら、行くわよ」

私に軽く頭を下げると、すたすたと歩いていく
その後を慌てて弥勒君は着いていった

ついていくわけにもいかず、私はその場に取り残される

弥勒君はどうやら沙耶香さんのあの行動に反対らしい。それはちょっと有り難い話だ
そう簡単に変わってくれるとは思わないけど、会話の余地をくれるくらいに、譲歩してくれるようになればいいんだけど

…そういえば弥勒君、ちょっと変な事を言っていた気がする
『僕が』…だっけ?何か、知ってるのかな




私はすぐに家に帰り、自室のPCを開いた
そこに可憐から貰ったUSBを差し込む

そこには一つのファイルがあって、いくつもの動画ファイルがあった

翡翠「なんだろこの名前…?」

動画ファイルには名前がそれぞれあり、『10:12~10:14』よく分からない数字の羅列だ
不思議に思いながらも動画ファイルを開く

息を飲んだ

流れてくる映像はピントのずれた酔いそうなカメラワーク
何度ノイズを走らせながら映し出される、騒乱の記録
割れる音、壊れる音、叫ぶ声
その動画は、あの事件の当時の映像だった

他の動画を確認すると、どれも同じ事件の違う視点からの映像だった
可憐はどうやらネットアップされた動画を全て保存していたらしい
…成程、これは他の人には見せられない


いくつか見ている内に、動画ファイルの名前の意味も分かった

翡翠「…時間だ。この動画が撮られている時間」

『11:02~11:05』と書かれているファイルと『11:03~11:05』と書かれているファイル
そのどちらにも共通する人の叫び声が入っている
いくつかのファイルの数字の後に『?』が入っているあたり、どうやら何度も見返して可憐が時間を予測したらしい

『10:12~10:14』が一番最初で『12:41~12:44』というのが最後の動画ファイルだ
総計二時間半以上の長さの動画ファイル。同じ時間帯の動画もいくつかあるから、これの1.5倍くらいの長さの動画時間

これらを見て、聞いて、探して、こういう風に整理したとなれば生半可の作業量ではない

翡翠「……可憐、警察官か何かなの?」

何て事を考えてしまうくらい、常軌を逸した作業量と本気加減

可憐の魔法少女に対する情熱は普通じゃない
そう、改めて認識してしまった


翡翠「……私、これ全部見るの?」

オルス「僕も手伝うよ!」

翡翠「うん、頼むよ。何か気づいたことがあればどんどん言ってね」

私達は気合を入れて、動画の確認作業に入った


イベント判定
4以上で発生

直下コンマ


コンマ判定:7 成功

一応一通りに目を通し、どの動画にどんな映像化を簡単にメモしていく
その上で気になった動画を中心に細かく見返す

翡翠「……ん?んん!?ちょっと待って、巻き戻していい?」

オルス「どうしたんだい?」

翡翠「……と、ここ。ここに魔法少女が居るよね?」

オルス「うん」

翡翠「この姿覚えていてね。えっと…どれだっけ…これかな。……あった、ほら。分かる?」

オルス「………全員別人。4人目の魔法少女だね」

翡翠「そうだよ、4人なんだよ。最後現場に残った魔法少女はスパーダだけ。その筈なのに、現場には4人居る。二人は死んで、残り一人は誰なの?」

オルス「…待って、あの映像…スパーダが魔法少女を刺したあの映像。……見て翡翠ちゃん!!」

翡翠「……どれとも違う。5人目だ。どうして5人も居るの?頭がこんがらがって来た…」

どういう事だろうか?スパーダと死んだ魔法少女二人、それ以外にも二人?
どうしてそれが今まで明らかになっていないの?


オルス「それとね、僕はアンノウンについて見てたんだ。アンノウンの姿を一つ一つ覚えていった。合計で10体だ」

翡翠「…あれ?でも確か…消滅を確認されたアンノウンは11体の筈」

オルス「…考えていたんだけど、一体誰が消滅を確認して、カウントしたのかな?」

オルス「僕の予想でしかないんだけど、カウントを報告したのはスパーダなんじゃないかな?」

翡翠「…あり得ると思うよ。寧ろ他の人じゃ不可能だ。こうやって後からじっくり動画を確認でもしない限り」

オルス「でも、魔法少女の死んだ姿は確認されている。この数は誤魔化せない筈だよ」

オルス「そして、何故か水増しされているアンノウンの消滅数。ここから考えられる可能性は…」

翡翠「……死んだ魔法少女は3人居て、そのうち一人がアンノウンとしてカウントされている」

オルス「もしそれが、スパーダが刺している魔法少女だとしたら?」

翡翠「あの魔法少女は…魔法少女の姿をしたアンノウン?」

オルス「どうかな?この推理、ちょっと強引すぎるかな?」

翡翠「……可能性としては十分あり得る。でも不可解な点が二つあるね」

翡翠「暁さんの証言と。どこにも居ない、消えた魔法少女」

オルス「…そうだね、そこだけは動画からじゃ分からないよ」

翡翠「……やっぱり、一度沙耶香さんの口から話を聞かないといけないのかな」


閃き判定
4以上で成功

直下コンマ


コンマ判定:5 成功


私はある事を思いつき、姫神沙耶香について調べ出す
それはすぐに見つかった

姫神沙耶香、彼女は事件発生直前、弟とショッピングを楽しむ姿が確認されている

そう、あのショッピングモールには姫神沙耶香さんだけではなく、弥勒君も居たんだ

翡翠「…ちょっと、見えてきたかもしれない」

あの事件にはいくつもの秘密が隠されていたんだ
スパーダだけじゃない、魔法少女も、アンノウンも、弥勒君のとこも
多くの秘密が抱え込まれた事件だったんだ

脳細胞がぎゅるぎゅると覚醒していく感覚に、興奮を覚えていたその時

誰かから連絡が入る
陽一君だった

『○○で何かヤバい騒ぎが起きてる。冗談抜きで近づくなよ』

ヤバい騒ぎ?
どういう事だろうか?

不思議に思いながらも、私はその場所へと向かう事にした


あの時のようにアンノウンが現れたっていう報告じゃない事を怪しく思い、私は近くまで変身していってから、一度変身を解いた
少し遠くの方で破壊音が聞こえてくる

私は走ってその方向に行き、そして目にした

自分が考えていた、最悪の事態という奴を…


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ずっと、ずっと待っていた
もう我慢の限界だ

もういいだろう?

そろそろ、裁かれてもいいだろう?
俺が、赦してなるものか
誰が忘れようとも、俺だけはお前の罪を知っているぞ

暁「姫神いいいいいいいいいいいい!!!!」

沙耶香「っ!しつこいですわよ、あまり私を怒らせないで下さいまし」

刀が空を切る
姫神が俺の背後に居る
その繰り返しだ、そんな事、もう見切った

アイツは必ず跳んで避ける
凄い速さだが、必ず着地という体勢をとる

もう既にお前の降り立った場所には仕掛けてある


沙耶香「…!!?」

暁「『針の筵』」

アイツが着地した場所に、無数の刀が地面から突き出る
小さな刀が散弾のように飛び散る

それでも反応し、アイツは大きく後ろへと飛んだ
しかし、あの背後に回られるほどの速さではない

暁「もっと大きく!!」

手に持っていた刀を投げ捨て、新たな刀を生成する
隣にあるビルよりもさらに大きく、雲に触れそうなほどの巨大な質量

暁「『大太刀・山斬り』」

その質量兵器を容赦なくアイツに向けて振り下ろす
アイツの落下する速度よりも早く、アイツの体に刃が触れようとしている

姫神「ああもう!こんなもの!貴女は大馬鹿ですわ!」

暁「死ね、クソッたれ!!」

姫神は手に持つ剣で俺の大太刀を受け止めようとしている
関係ない、圧し潰す!


グンッ!

体が揺れる
振り下ろされようとした刀に体が引っ張られる

暁「なっ!?」

方向は、俺の真後ろへだ

空中で、しかも不意を打ったはずの一撃
アイツの大きさの何万倍もの巨大な刀

それを、あの細腕が跳ね上げただと!?

マズイ

そう確信した俺は刀を手放す

暁「もっと細かく!!」

号令と共に大太刀は姿を変える
普通の大きさの刀に姿を変える
あの質量の分だけ


暁「潜れ」

地面に叩きつけられようとしていた無数の刀は全て地面に沈んでいった

暁「…チッ…お前、速さが能力じゃねーのかよ」

沙耶香「能力ではありませんわ。魔法とお言いなさい」

暁「るせー、俺は魔法少女じゃねーんだよ」

この余裕が腹立たしい
お前を殺すために技を磨いてきたって言うのに、どれもこれも捌きやがる

それに、俺に攻撃してこないのが何よりムカつく

暁「何で俺にはその剣を向けない?」

沙耶香「魔法少女を殺す趣味はありませんの」

暁「俺の妹は…朱莉はなんだっていうんだよ!!」

沙耶香「…さあ」

ああやっぱりだ、俺は舐められてる
クソ、負けて堪るかよ
ここで勝ってコイツを屈服させないと、俺の心の収まりがつかない


暁「降りて来い…『驟雨』」

地面から飛び出した小太刀が、今度は雨となって空から降り注ぐ
速さには速さと範囲で対抗する

小太刀一つ一つが弾丸のように地面に穴を穿っていく

沙耶香「…ですから、懲りませんのね」

目の前に、姫神が居た
剣先が喉につきつけられる

だが、負傷している
やはりこいつは速さで動いている。瞬間移動の類ではない
それと、攻撃手段は剣だけだ。遠距離の攻撃を持っていないな

沙耶香「あのですね、もう終わりにしませんこと?私、翡翠の騎士を待っているの」

暁「知ったこっちゃねーよ。お前が死ぬまで止まらねー」

沙耶香「実力差はお分かりで?貴女、私が手加減して無ければ何度も死んでますわよ」

暁「なら殺せよ!なんで俺と戦う気が無い!?どうしてそう俺を馬鹿にする!!」

沙耶香「馬鹿だからですわよ」

暁「…いちいち癇に障る奴だよ、お前は!!」


地面から刀を抜き取り切りかかる
それを避けることなく受け止められる

沙耶香「…貴女、分かりやすすぎますわ。言葉で魔法を制御するなんて二流ですわよ」

暁「これが一番上手くいくんだよ」

沙耶香「それで?次はどうするのですか?地面に潜らせた刀を飛ばしますか?」

暁「分かってんなら話がはえーよ!『大太刀』!!!」

先ほど出した大太刀よりも幾分か小さい大太刀それでも大きさはビルほどある
その太刀を俺とアイツの周囲を隙間なく埋めている

沙耶香「あ、貴方バカですの!?自分も圧し潰されますわよ!!」

暁「今しがたテメーが俺を馬鹿だっつったんだろーが!俺はバカだよ!だから、俺ごと潰れやがれ」

巨大な質量を伴った刃がギィっと地面を砕きながら倒れてくる

沙耶香「クッ!!」

暁「上も開いてねーよ。よーく見て見な、死の刃がお前を見てるぜ」

暁「『大太刀・津波、天誅』」

空から蓋をするように、無数の小太刀が降り注ぐ


文章訂正

× 空から蓋をするように、無数の小太刀が降り注ぐ
○ 空から蓋をするように、無数の小太刀の切っ先が此方を睨んでいた


刃が降りてくる、その瞬間を待ち受ける
跳べば自動的にそれに向けて小太刀が発射されて、針の山だ

欠点と言えば、俺も攻撃を受けちまうだろうというくらいだ

沙耶香「…はぁ……この穴だらけの地面、一体被害はいくら掛かるかお分かり?」

暁「どーでもいーよ。戦姫が何とかしてくれんだろ」

沙耶香「そういう無責任さ、どうかと思いますわよ」

暁「お前もな。俺の妹を殺した責任、果たして逝けよ」

沙耶香「……その為にも、まだ逝けませんわ。それに、弥勒は私が守ってあげませんと…」

暁「ふんっ…心にもない事をよく言えるぜ。だが、これで終わりだぜ。姫神」

津波のような質量の蓋
コイツを捕まえるには、これくらいしか思いつかなかった


慈悲なき刃が、轟々と土煙をあげて、地面に叩きつけられる


とてつもない豪音が響く
聞いたこともないような破壊音

結果的に、俺は生きていた

振り下ろされた大太刀を、アイツは平然と剣で受け止めていた
俺に振り下ろされるはずだったものも、食い止められている

暁「…お前、無茶苦茶過ぎんだろ」

沙耶香「貴女がそれを言いますか」

剣を払い、大太刀が反対方向に倒れていく
どんな剛力だ

さてさて、千日手か
質量と重さじゃ殺せねぇってわけらしい

刀をもう一度正眼に構える

沙耶香「いい加減、もう止めなさい。貴女の魔法では私は殺せませんわ」

暁「殺してみなきゃ、分かんねーだろ」

俺は姫神に、もう一度切りかかった

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


葵「……と、言う感じで止めるに止められなくて」

翡翠「そっか。ありがとう教えてくれて」

翡翠の騎士に変身した私は、かつてないほどの破壊規模に戦慄していた
それをしていたのが暁さんと沙耶香さんとなれば尚更だ

そこにはおろおろしていた葵ちゃん(マルヴァ)の姿もあり、状況の説明をしてもらっていた

確かにこの破壊力、葵ちゃんが下手に向かえば死にかねない
手を出せなくて当然だ

暁さん(魔法少女としては彼岸と呼ばれているらしい)の魔法は『刀の生成』
あらゆる大きさ、形の刀を自由に、そして無限に、どこからでも作り出せるという魔法らしい

そんな魔法でこの破壊跡という事は、相当スケールの大きな戦い方をしているらしい
そしてそれを捌ききっているというスパーダにも驚きだ

……これが基本スケールじゃないのかもしれないけど、マルヴァの魔法の微妙さが良く分かる
この魔法の差っていったいどこから生まれているんだろう?
こんなのに日ごろ囲まれてたら、マルヴァがコンプレックスを持っていても仕方ないよね


翡翠「……止めた方がいいよね」

葵「い、行くんですか?」

翡翠「うん。誰かが止めないと」

葵「……ごめんなさい、見てるだけしか出来なくて」

翡翠「大丈夫だよ。マルヴァは周囲の人たちを守ってあげて」

葵「…はい!そちらはお任せします!」

そう言って葵ちゃんと別方向に駆ける
騒乱の真っただ中、魔法少女同士が戦う戦場に…


さて、止めるとは言ったけどどうしようか?

暁さんを止めるべきなんだろうけど、どうしたら止まるのかな?

暁さんも沙耶香さんも熱くなっているはずだ
冷静な判断なんて期待できない

……やばい、考えれば考えるほど、どうにもならない気がしてくる

でも、私がやらないと
全ての真実に気づいているのは、多分私だけだ

あの二人を止められるのは私だけだ


翡翠「止めて!!」


大声を振り絞り、私は剣を向けて向かい合う二人の間に立った


暁「…翡翠の…騎士…どうしてここに」

沙耶香「漸く出てきましたわね。翡翠の騎士様」

翡翠「……戦いを止めて。話し合おう」

二人の視線が此方に向く
一先ず、二人の争いは止められたかもしれない

だけどここからだ

暁「正義の味方だか何だか知らねーが、これは弔い合戦だ。お前の出る幕じゃねー」

沙耶香「やれやれですわね。翡翠の騎士、直ぐにこの子を黙らせます。そして、決着をつけましょう」

翡翠「そのどちらも…必要ないよ。私とスパーダも、彼岸とスパーダも。戦う理由はない」

暁「はぁ!?お前も見たことあるだろ!コイツが魔法少女を刺し殺す瞬間を!」

沙耶香「………」

沙耶香さんはその時確かに、唇を噛みしめるような顔をしていた
いつものように余裕着々で煽るようなことも言わず、否定も肯定もしない

……辛い事実だろうけど、知って貰わなければならないだろう。あの時沙耶香さんが刺した人物の事を


会話安価
安価↓1

本当にそれは魔法少女だったのかな?


>>547採用


翡翠「本当にそれは魔法少女だったのかな?」

暁「…は?何言ってやがる、アイツは魔法少女だ。間違いねぇよ、俺の妹だぞ!!違うとしたら、あの場で死んだアイツは何だ!!」

翡翠「その答えを、貴女は知ってるよね。スパーダ」

沙耶香「……驚きましたわ、そんな事まで知ることができるんですのね」

暁「なんだよお前も!お前らが何知ってるってんだよ!!」

沙耶香「あの子は魔法少女じゃありませんでしたわ。紛れも無く『アンノウン』でした」

暁「……は?おいおい、馬鹿じゃないのか。何処をどう見ればそうなるんだよ。どう見ても人間、あんな怪物どもとは違うだろ!!」

沙耶香「貴女は無知過ぎますわ。『アンノウン』の事を知っていて?」

暁「『欲望の獣』だろ。自らの歪んだ欲望を吐き出して暴れまわる獣だ」

沙耶香「じゃあその種類は?」

暁「意味が分からねぇ種類なんて一つだけだろ。それとも無数か?アイツらは『アンノウン』以外の何物でもねぇだろ」


沙耶香「種類は二つ。『依代を見つけられず発狂する獣』と『依代を蝕む寄生獣』この二つ。それがアンノウンの特性」

沙耶香「あの子はあの場で、『寄生』されたの。私はそれを目の前で見た」

暁「…どういう…事だ?」

驚いたのは此方もだった
アンノウンだろうとは予想できていたけど、まさかあの場で生まれたばかりのアンノウンだとは知らなかった
欲望を吐き出す獣という事も、それには2種類居るという話も

暁「……どうしてお前はそれが分かる。どう見てもアイツは魔法少女だった。お前の勝手な独断と偏見じゃないといえるのか?」

沙耶香「あの子が他の魔法少女を殺したとしても?」

暁「…なんだよ…それ?」

沙耶香「最初は仲間だと思いましたわ。理性がありました。アンノウンに立ち向かってくださいました。だけど、傷つくうちにあの子の体は変化していった」

沙耶香「最後には理性を無くし、背中を預けていた仲間を殺しました。背中を見せた獲物だというかのように」

暁「んだよ…それ……知らねーぞ…」

沙耶香「たとえですわよ。たとえ、あの子が魔法少女だとしても、見境なく周りを破壊しつくし、殺す人。それは間違いなく怪物ですわ」

暁「…信じられるかよ…そんな事…」


沙耶香「呼びかけにも答えなかった。会話も成立しなかった。今まで見てきたアンノウンそのもの」

暁「……いや、やっぱり違うはずだ。今までぶっ殺してきたアンノウン、アイツらは死んでもそのまま消滅した。朱莉は違う!最後に人間に戻っただろう!!」

沙耶香「他の魔法少女を見ましたか?死んだ、魔法少女の姿を。あの子たちは死んだときどんな姿でしたか?」

暁「ッ!」

沙耶香「魔法少女の姿のままでしたわよね?」

暁「た、偶々かもしれないだろ!!」

沙耶香「………じゃあ、貴女の体で証明いたしますか?」

暁「…いいぜ。やってやるよ、お前の体でな」

翡翠「え?ちょっとそれは駄目だよ!!」

折角まとまりかけたのに、再び戦おうとする二人を止めようとする

その時だった


「もう止めてください姉様!!」

何者かが間に入ってきた
少女の声だった
その姿も少女、魔法少女そのもの

その魔法少女を、私は知っていた
あの動画の中に居た、4人目の魔法少女。どの記録にも乗っていない、消えた魔法少女の姿だ

暁「んだテメー!今度は誰だよ!!」

沙耶香「っ!!馬鹿!どうして来たの!!」

少女「もういいんです。もう全部、終わりにしましょう姉様」

少女は深く目を瞑ると、体に光を纏う
そうして光が消えた時には、その正体を現した

暁「……は?え?…どういう事だよ……弥勒」

消えた魔法少女の正体
それは、姫神弥勒だった


翡翠「…やっぱりそうだったんだ」

暁「やっぱりってなんだよ。騎士、テメーはなんで知ってる?つか、男だろ?弥勒、お前なんで?」

弥勒「…姉様、お話してもよろしいですよね?」

沙耶香「………ああ…いずれ、こうなる運命だったのですわね」

そうして、語りだす
あの場で起きた本当の事件の姿を

沙耶香「あの場に、魔法少女は5人居ました。私と亡くなってしまわれたお二人。そして、私の目の前で魔法少女になった二人」

沙耶香「貴女の妹、『赤月朱莉』。そして『姫神弥勒』私の弟ですわ」

沙耶香「本当に驚きましたわ、男が魔法少女になるなんて信じられなかった」

沙耶香「初めは5人で戦っていた。だけど、徐々に朱莉さんの様子がおかしくなっていったの」

沙耶香「傷つくたびに怒りを露わにし、理性を無くし、獣となっていく過程を眼にしました。そして……仲間を殺す姿も」

沙耶香「私は迷いながらも彼女を殺した。そして、すぐに最悪の事実に気付きましたわ」

沙耶香「弥勒の事よ。あの子は魔法少女ではなく、『アンノウン』になったと」


沙耶香「私はすぐに変身を解かせた。まだ理性のあった弥勒は、一応元の姿に戻れましたわ」

沙耶香「私は弥勒を守るために、その事実を完全にもみ消しました。絶対に他所に漏れないように徹底しましたわ。その為に魔法少女としての活動もやめた」

沙耶香「活動を止めている間、魔法少女の事を調べましたわ。どうにかして、私の弥勒がアンノウンではないかもしれないという可能性を信じて」

沙耶香「調べた結果、魔法少女は女性だけだった。……弥勒を除いて」

沙耶香「奇跡でも起こらない限り、弥勒は魔法少女じゃなくアンノウン」

沙耶香「……これがあの事件の真相ですわ。私はあの場でアンノウンである弟を庇いたいがために、あらゆる追求から逃げた。それだけですわ」

語り終えたとき、暁さんは震えていた
それは悲哀ではなく、怒りだろう

暁「お前は、お前は俺の妹を殺したのに!なんでお前の弟はのうのうと生きてやがる!!!」

沙耶香「…そう言われるのが怖くて、私は逃げてましたのよ」

弥勒「でも、これで終わりです。姉様は悪くありません。あの場で、最も正しい判断だったと思います。ですから、怒りが収まらぬというのなら、僕を殺してください」

弥勒「僕のようなアンノウンが居たと知られれば、姉様は間違っていなかったと証明されます。ずっと辛かった、僕を庇う為に非難を受ける姉様の姿」

弥勒「僕は生きているだけで罪人だ。どうか…姉様をお許しになって下さい」

弥勒君はそう言って深々と頭を下げた
暁さんに首を差し出すように


暁「……こんな幕切れか。何も…救われねぇな」

暁さんはその刀を振り上げた

翡翠「ま、待って待って待って!」

慌てた男の声がシリアスな空気をぶち壊す
両者納得と言った雰囲気だったが、私は何も納得いっていない

暁「なんだ?つかまだ居るのか。お前、関係ないからそろそろ帰っていいだろ」

翡翠「いや、納得いかないよ!確かにこれで暁さんと沙耶香さんの因縁は晴れたかもしれないけど、私は何も解決してない!」

翡翠「私はどうして襲われたの!?」

その理由が語られる物だとばかり思っていたが、ついぞ語られない
このままでは襲われ損だ

沙耶香「それは当然、貴方がアンノウンだからですわ。今は理性を保っているようでしたけど、欲望が目覚めたらどうなるか分からない。だから、何かが起こる前に殺すのですわ」

翡翠「ち、違うよ!私はアンノウンじゃない!」

沙耶香「アンノウンは皆そう言いますのよ」

翡翠「…じゃあ、貴女はどうなの?」

沙耶香「は?」

予想できていなかったといった、間の抜けた声でスパーダは口を開けている


翡翠「貴女は証明できるの?自分は、絶対にアンノウンではないと」

沙耶香「ば、馬鹿なことを。絶対に違いますわ」

翡翠「凶行に走り、理性を無くしたという『赤月朱莉』さん。その子の見た目は間違いなく魔法少女だったんだよね?」

沙耶香「…確かに、見た目ではわかりませんでしたわ」

翡翠「今の弥勒君だってそうだ。誰が見ても魔法少女だった」

沙耶香「でも、いつ暴走するか!」

翡翠「沙耶香さんがそうならないという保証は?暁さんがそうならないという保証は?」

沙耶香「…それ…は……」

翡翠「私はそれが答えだと思ってる」

沙耶香「……つ、つまり…魔法少女は『アンノウン』だというの?」

翡翠「少なくとも、それと同じ危険性を秘めていると思う。何かがきっかけで、暴走してしまう可能性は否定できないよね」

沙耶香「……そんな…それじゃあ…それじゃあ…あの時、私が殺してしまった彼女は…まだ…『魔法少女』だったと?」

私は頷いた
沙耶香さんは真っ青な顔で、膝をついた

多分だけど、それが魔法少女の正体なんだ


沙耶香「私は…私は……間違ってしまったというの?」

翡翠「スパーダ…貴女は気付いてたんじゃない?気づいてたから、あんな戦い方をしていた」

翡翠「極端に傷つくことを恐れた戦い方だった。私の時も、さっき暁さんが戦っていた時も」

翡翠「そして、それは同時に暁さんに反撃をしなかった理由の証明にもなるんじゃない?」

沙耶香「……」

暁「お前…そうなのか?」

沙耶香「……ええ、本当ですわ。活動を休止した理由…弟の為だけじゃない。私の為でもあった」

沙耶香「私は…ああなることが怖かった。貴女がああなってしまうのが恐ろしかった」

沙耶香「傷つくことがトリガーとなって暴走する魔法少女を見てしまったから…」

暁「………なんだよ!何なんだよお前!クッソ…なんだよ…俺……俺はバカだな…」

暁「…何のために俺らは居るんだ。戦い続けた果てに、何がある?最後には理性を無くした獣になるのか?」

暁「なんだよそれ!……誰も…何も…救われねぇ」

握っていた刀を地面に叩きつける
その瞳には、涙が浮かんでいた


弥勒「…翡翠の騎士様。では、貴方は何者なんです?」

弥勒「姉様たちのように魔法少女でもない。かと思えば、理性を無くした獣でもない」

弥勒「貴方は…何なんです?」

翡翠「……」

そうなんだよね、ずっとその事で悩んでた
魔法少女のつもりだったけど、どうしても姿が違う

血の通っていない、鎧だ

だけど、刃が体を貫こうと痛みの無い体だった
衝撃とか、苦しいとかは感じるけど、痛みも疲れも何も感じない

何となく予感がある
きっと腕を切り飛ばしても、この体から血は出ない
痛いと思っても、それは視覚的痛覚であって、冷静なれば何てこと無い筈だ

その為の体なんだと思う

『傷ついてもいい体』なんだ

やっと分かった、私がこんな姿の理由が
あんな鎧の姿を持って生まれてきた理由が


私は『騎士』なんだ

彼女たちの前に立つべき騎士

その身をもって、彼女たちを守る騎士

私は魔法少女でも、アンノウンでもない

何かしたいと逸る気持ちの正体はこれだった
こんな姿になったのには、理由があったんだ

『翡翠の騎士』は彼女たちの代わりに、戦うために生まれたんだ

それならば、言うべき言葉は……



と言う所で今日の更新はここまでです
メッチャいいところですが、こんな時間では安価も来ないと思うので、持ち越しです

言うべき言葉を考えておいてくださいね


ではでは、こんな朝方までお付き合いいただきありがとうございました


ちょっと姫神沙耶香の内面、行動理由が描写不足だなと思ったので補足です


彼女はとっても小心者で、臆病でした
ありとあらゆる『万が一』を恐れての行動と、言葉ばかりです
『魔法少女の暴走を恐れていた』というのが一番肝となる考えで
魔法少女と寄生型アンノウンが同一の存在であるというのは、考えられるけど信じたくなかったという感じです


キチンと伝わっている方にはただの蛇足だと思いますが、自分が読み返して分かりにくいと思ったので、補足を書きました
お目汚ししました



翡翠の騎士のヤッターカッコイイ!な決意の言葉考えてきましたか?
何?末路を知っている?なんのこったよ(すっとぼけ)


そろそろ再開です


私は『騎士』なんだ

彼女たちの前に立つべき騎士

その身をもって、彼女たちを守る騎士

私は魔法少女でも、アンノウンでもない

何かしたいと逸る気持ちの正体はこれだった
こんな姿になったのには、理由があったんだ

『翡翠の騎士』は彼女たちの代わりに、戦うために生まれたんだ

それならば、言うべき言葉は……


安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

愛と正義の魔法女騎士翡翠ちゃん、私に任せなさい


>>567採用


翡翠「なんなのか、と問われればこう答えるしかない」

息を飲む
3人の視線が集中する


翡翠「私は―――愛と正義の魔法女騎士翡翠ちゃん!!」


翡翠の騎士は、今季最大の大寒波を叩きだした

弥勒君は目を点にして呆然としている
沙耶香さんはふらふらと額を押さえて、眉間を揉んでいる
暁さんはあんぐりと口を開け、何も言えないようだ

翡翠「……決まった」

暁「決まってねーよ!?お前…お前、ホント…何でこのタイミングでふざけられるんだよ」

翡翠「ふざけてないよ。本気も本気、私のこの鎧は魔法少女の為にある」

翡翠「皆の為に、私が居るんだ。皆が傷つかないように、私があなた達を守るよ」

翡翠「だから、私に任せなさい」

変わらず、明るい口調で私は胸を張ってそう言った


翡翠「何を隠そうこの鎧、この体。痛みも何も感じない。その事はさ、スパーダが良く知ってるでしょ」

沙耶香「…確かに、貴方、剣が体を貫いても血が出ませんでしたわね」

翡翠「でしょ?この体なら、いくら傷ついてもいい。魔法少女が傷つくことによって暴走するというなら、代わりに私が盾となる」

沙耶香「馬鹿馬鹿しい…そういう貴方は、アンノウンではないと証明できるんですか?」

翡翠「私はアンノウンじゃないよ。私は決して理性を無くさない。約束するよ」

沙耶香「そんな事、口ではいくらでも言えます。万が一ということを――」
翡翠「じゃあ、万が一なんて起こさなければいい」

きっぱりと彼女の言葉を否定する
彼女の不安を否定する

翡翠「弥勒君を見て、彼はどうだった?この一年間、一度として理性を失って暴走した?」

弥勒「誓って言えます。僕は変身をしても、魔法を使っても、一度として暴走はしなかった。アンノウンにならなかった」

翡翠「うん、だよね。この子そが生き証人だ」

翡翠「彼は寄生型アンノウンかもしれない。暴走する危険を秘めているかもしれない。でも、今ここに居る彼は間違いなく人間で、魔法少女だ」

翡翠「だったら、それでいいじゃない。私たちは皆、同じ仲間なんだよ。助け合えばいいじゃない」

翡翠「怖さに怯えて、疑心暗鬼で、誰も信じられないまま、間違ってしまう方がずっと怖いよ!」


翡翠「貴女だってそうでしょ、スパーダ」

翡翠「本当は信じたかったはずだ、仲間に…友人に…剣を向けたくない筈だ。あの時だって…とても辛かったはずだよ」

翡翠「あの時…赤月朱莉さんを殺したのは、間違っていたのか、正しかったのか…誰にもわからない」

翡翠「でも、後悔してるよね?」

沙耶香「……ええ…ええ…当たり前じゃない。朱莉…小さい頃からずっと知っていた…友達ですもの」

沙耶香「あの日から、片時も忘れたことはありませんわ。あの日の私の行動を、懺悔しなかった日はありませんわ」

翡翠「…だからさ、もう終わりにしよう。傷つくことも、傷つけることもしなくていい」

翡翠「辛い事、痛い事、苦しい事。全部私が持って行くから」

翡翠「どんな事があっても、私が魔法少女を守るよ」

そう言って、座り込む彼女に手を差し伸べた
彼女は漸く上を向いて、私の手を取ろうとして…引っ込めた

沙耶香「……貴方を信頼したいと思っている私が居る。貴方を信じたいと心から願っている」

沙耶香「でも…でも…どうしても一つだけ恐ろしい事があるの」

沙耶香「だから、約束してくださる?もし私が暴走してしまったとして…その時、私が大切な弥勒を失う前に…私を殺してくださる?」

翡翠「………」


会話安価
安価↓1

勿論
でもそんなことは私が絶対起こさせないから


>>578採用


翡翠「…勿論。約束するよ」

翡翠「でも、そんなことは私が絶対起こさせないから」

沙耶香「……大した自信ですこと。でも…そうね、もう一度…仲間を信じてみたいと思いますわ」

彼女は私の手を取って、立ち上がった

弥勒「姉様、では…」

沙耶香「ええ…もう翡翠の騎士を殺そうとしないわ。弥勒、これからはアナタも…私を助けてね」

弥勒「はい!お約束します!」

スパーダ…いや、姫神沙耶香は弟を優しく抱きしめた
その表情からは、冷たさも、険しさも、悲しさも無く、穏やかなお姉ちゃんの顔だった


暁「……たく、変なこと言ったかと思えば綺麗に纏めやがってよ」

翡翠「暁さん」

暁「名前知ってても、今は彼岸って呼んどけ」

やれやれだ、と溜息を吐きながら暁さんは姉弟の抱き合う姿を見ている

暁「…俺は最後まで道化って訳か」

暁「何も知らず、勝手に怒って、勝手に決めつけて、孤立して…」

暁「でもよ、沙耶香はやっぱり…朱莉を殺したんだよな」

翡翠「………」

私は小さく頷いた
確かに、これだけはどうしようもない事実だ
彼女の事はいくら責められるような状況では無かったとはいえ、複雑な思いを抱いている事だろう

暁「……まだ、俺の中でアイツを赦し切れていないところがある」

暁「だけど、もしあの事件の時、俺と姫神の立場が逆で、暴走を始めたのが弥勒だったとして、アイツが仲間を殺したとしたら……」

暁「…きっと俺も、同じことをしただろうぜ」

暁「……当たり前だよな、大事な家族を守りたいと思って当然だ」

暁「だからこれ以上は、俺は何も言わねぇよ」

そう言って、暁さんは背を向けて歩き出す


沙耶香「待って暁!」

暁「俺を名前で呼ぶなよ。もう友達じゃねえんだからさ」

沙耶香「……本当にごめんなさい!私が…弱かったから…」

沙耶香さんは深く頭を下げる
その声は震えていて、涙の粒が零れだしていた

暁「…やめろよな。そんな事されても困るんだよ」

沙耶香「分かっていますわ!ですから、これは私の我儘…自己満足ですわ」

沙耶香「ごめんなさい……貴女にはどれだけ言っても言い足りない」

沙耶香「赦してくれとは言いませんわ…だけど、ほんの気まぐれでも構いません。昔のように、私に声をかけてください」

沙耶香「どう思われようとも、私にとって…貴女は大切な幼馴染ですから」

暁「…………もっと俺が大人だったら…ここで気のいい返事もできたのかな」

暁「じゃあな、沙耶香」

決して振り向くことなく、暁さんは去って行った
最後の言葉には、友達としての思いが込められていたと、私には思う


帰り道
月の光を浴びながら、私はオルスと歩いていた

全て終わったとマルヴァにも報告しておいた
マルヴァ曰く、死者は出ていないらしい

なんでも戦姫が周囲に結界のようなモノを張り巡らせ、人避けをしていたらしい
この後、町の修復までしてもらう事を考えれば、本当にお世話様だ
日本の人々は、彼女には本当に足を向けて寝られないな

オルス「……ねえ翡翠ちゃん。あの、さっき話してた魔法少女の事なんだけど」

翡翠「傷つき続けることで、やがて理性を失うって話?」

オルス「うん、それを知っててなお、キミは傷つくことを選ぶのかい?」

翡翠「ああ、アレね。そもそも、傷つくことでやがて理性を失うって話、アレは間違ってる」

オルス「え?」

翡翠「葵ちゃん、知ってるよね?あの子を助けた時の事、覚えてる?」

オルス「うん、ボロボロで…満身創痍だった」

翡翠「それなのに、あの子は最後まで誰かを助けることを選んだ。あの子は何時も傷ついて戦ってたんだよ?」

翡翠「だからきっと、傷つくことで暴走するっていうのは、間違いなんだと思う」


オルス「翡翠ちゃんはそれに気づいていたのに、あんな事を言ったの?」

翡翠「駄目だったかな?…でも、アレがあの場で一番ベストな選択だったと思う」

翡翠「だってほら、結局傷つかないように戦えられれば、それが一番でしょ?」

オルス「翡翠ちゃん…」

翡翠「弥勒君も、暁さんも、沙耶香さんも…可哀想だよ。あのままじゃあ、誰も救われないままだった」

翡翠「翡翠の騎士の話もそう。私が、そうだったらいいなって思ったから行っただけ。何の確証も無い話だよ」

翡翠「でもさ、それを本当にしちゃえばそれでいいと思わない?例え嘘でも、私がアンノウンで、弥勒もアンノウンでも」

翡翠「私が騎士としてあり続けて、弥勒君が魔法少女としてあり続けられれば、もうそれは嘘じゃないと思う」

翡翠「……私、思えば嘘ばっかりだね。このままじゃ、天罰くらっちゃうかな?」

オルスはそっと私の手を握ってくれた
小さな手だけど、包まれるように暖かく、とても安心した

オルス「僕は、それで間違ってないと思う」

翡翠「ありがとう、オルス」

ギュッとオルスの手を握り返す


翡翠「……ねえオルス、やっぱり怖いって言ったら怒られるかな」

オルス「誰も怒らないよ。あんな話を聞いたら、怖くて当然さ」

翡翠「魔法少女って何なのかな…アンノウンと何も変わらないとしたら、私達が戦っている敵は誰?」

翡翠「私の知ってる魔法少女の誰かが、ふとした切欠で…ううん、何の前触れも無く、アンノウンとして襲い掛かってくるのかな?」

翡翠「……もし私が、誰かを傷つけたりしたらどうしよう?」

翡翠「ねえ怖いよ、オルス……私…アンノウンじゃないよね?」

オルス「…うん、僕を信じて。どんな時でも僕が必ず、キミの傍に居るから」

翡翠「……信じていいんだよね?オルス…アンノウンじゃないよね?」

オルス「勿論だよ。僕は絶対、キミを裏切ったりしない」

翡翠「…ありがとう。信じてるからね、オルス」

月光差しこむ夜道
照らされる一人と一匹

影は、一つしかなかった


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


深夜イベント

視点選択

1、とある屋上
2、夕原可憐
3、四条葵
4、オルス

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

3


>>587採用:3


私は寝付けないまま、ベッドでゴロゴロしていました

葵「うぐぅ!?」

お腹にとてつもない重量が乗ります

葵「もうマーリン!乗る時は乗るって言ってくださいよ!」

マーリン「私の勝手でしょ、もっと腹筋鍛えなさいな。ほら、トレーニングするんでしょ」

葵「えぇ…今からですか?」

マーリン「そこでサボるから、アンタは落ちこぼれなのよ」

葵「むぅ……」

渋々と私はマーリンをお腹に乗せたまま腹筋を始めました
これが中々しんどくて、苦労します


トレーニングをしている間も、私の頭の中には翡翠の騎士から聞いた話が回っています
それと、今日のあの戦いの事

マーリン「また余計いなこと考えてる」

葵「いいじゃないですか、葵だって悩みはあります」

マーリン「馬鹿が何考えても一緒よ。出来ることだけ考えなさいな」

葵「この人でなし!それでも葵の相棒ですか!」

マーリン「従者としての忠言よ。アンタにはアンタにしか出来ないことがあるじゃない」

葵「…むぅ…そうですかねぇ…」

マーリン「ほら!動き止まってるわよ!」

葵「うっ!うぅっ!!お腹の上で跳ねないで下さいよぅ!」

ヒィヒィ言いながら、腹筋50回を3セットこなしました
終わったころにはくたくたで、頭の中がすっからかんです


運動した後はスッキリした気持ちでした
でも、ベッドで寝っ転がっていると、やっぱり考えてしまいます

葵「ねぇマーリン、こんな事をして意味があるんですかね?」

マーリン「無いと思うなら止めるといいわ。体鍛えたいって言い出したのアナタよ?」

葵「ううん…そうなんですけどぉ…鍛えてても、アンノウンにはあんまり意味ないですし…」

葵「……今日のあの二人の戦い、見ましたか?」

マーリン「ええ、見たわよ。酷いもんだわね。周りの被害考えなし、こっちは大変だったわ」

葵「……沙耶香さんは先輩ですけど、あの彼岸て人は葵と同期です。葵の方がちょっと先輩なくらいです」

葵「葵の方が、アンノウンと戦った経験だって多いです。…でも、葵の方が弱い」

マーリン「…またその話?」

葵「……葵だって頑張ってるのに、あの人の方が出来ることも多い、それは助けられる人も多いって事です」

葵「葵…どうして弱いんでしょう?」

マーリン「…ふっ…馬鹿ねアンタ。アンタは強いわよ、その辺の魔法少女よりずっとね」

マーリンは私のお腹から飛び降り、電気の紐を引っ張った

マーリン「子供は寝る時間。とっとと寝なさい」

珍しくマーリンが褒めてくれたことにびっくりしながらも、やっぱり納得がいきませんでした
それでも、寝ることは大事なので、葵は眠ることにしました


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次の日の朝

私は、テレビに釘付けになっていた
きっと私だけじゃない、多くの人が、その言葉を耳にしただろう

それは、姫神沙耶香…スパーダの活動再開の記者会見だった
そして、同時に謝罪会見でもあった

彼女はその時の事件の様子を、包み隠さずに話した
自分が犯した行動、弟の弥勒の事、そして魔法少女の危険
そして…頼りになる味方と語った、『翡翠の騎士』の事

何をいまさらと多くの人が思っているだろう
半信半疑で、彼女の話を信じられないという人の方が多いだろう

だけど、この話を聞いた魔法少女は気を引き締めたはずだ
もっと強くならなくては、と

それは、私も同じだ
もっともっと強くならなくては

皆を守れるように、もしもの時、彼女たちを止められるように



……余談だが、今回の会見で姫神弥勒という男の魔法少女の存在が公となり、『男の娘』だとか言って一部の方々は大興奮していたらしい


休み時間、意外な人物に呼び出しを受けた

姫神沙耶香さんだ
普段の姿の時に、声をかけられるのは初めて…いや二度目か

今の彼女につい先日までの冷たく、怖い雰囲気はなく
昔のような、落ち着き払った、穏やかで気品あふれる雰囲気を取り戻していた

翡翠「あの…私にどんな用が?」

沙耶香「貴女でしたわよね、昨日…弥勒に『翡翠の騎士を信じて』と口添えをしたのは」

翡翠「あ、あぁ…はい。そうです」

沙耶香「感謝しますわ。あの時、弥勒からああも強く説得されていないと、問答無用で翡翠の騎士に襲い掛かるところでしたわ」

沙耶香「あの時、翡翠の騎士と話が出来て良かった。貴女の言葉が、巡り巡って、私は救われましたわ」

翡翠「そんな大袈裟な!」



沙耶香「少なくとも、私は感謝としたいと思ってるわ。貴女にお礼がしたいの」

翡翠「え、えぇ……えっと……う~ん…あ!それじゃあ、そのそちらに居る、ライオンさんの事、紹介してくださいますか?」

沙耶香さんは大きく目を見開くと、やがてニヤリと怪しく笑った

沙耶香「…そう、貴女もなのね。こんな奇縁もあるものなのですわね」

沙耶香「紹介するわ。彼は『リオン』」

レオン「…どうぞ、お見知りおきを。あまり話すことも無いでしょうが」

レオンと呼ばれたライオンは、低く重厚な老人の声で軽く頭を下げた

沙耶香「それじゃあね、翡翠。いつでも話し相手になりますわ」

そう言って沙耶香さんは優雅に去って行った
…唐突な距離感にかなり驚いているが、きっと本来の沙耶香さんはああいう人なんだろう

私は、沙耶香さんと連絡先を交換し、お友達にならせていただいた


文章訂正

名前はレオンが正しいです
すみません


昼休み

屋上に行くと、やっぱり暁さんが居た
また来たな、と呆れたようだったけど、私は隣に座ってご飯を食べ始める

暁「…朝の記者会見、見たか?」

翡翠「うん。見たよ」

暁「俺はよ、こんな時になってまだ、未練タラタラだ」

暁「蒸し返したくねーし、蒸し返すべきじゃないって分かってるけどよ。…俺の大切な妹だったんだ」

翡翠「…うん、分かるよ。そう簡単に、割り切れないよね」

暁さんは沙耶香さんと違い、どこか寂しそうな、悲しそうな姿だった
こればっかりは時間しか、解決する手段が無いだろうと私は思う


暁「……あのさ、友達…だよな。俺らって?」

翡翠「?そうだと思ってたんだけど、違った?」

暁「いや、あぁ…んなこと言うの情けねぇ話なんだが…」

照れくさそうに頬を掻きながら、暁さんは話す

暁「友達リハビリに付き合ってくれ」

翡翠「…はい?」

暁「ああぁ…なんつーか。一年間ぼっちだったからよ、友達との付き合い方とか、どんな話すればいいのか分かんねーんだよ」

翡翠「…今みたいに話せばいいんじゃない?」

暁「それが出来ないから相談してんだろ!……気が向いたらでいいからさ、こうして話し相手になってくれればそれでいいよ」

翡翠「それくらい全然いいよ」

暁「ホントか!いやぁ良かった…最近の話し相手と言えば、コイツ位だからな」

そういう暁さんの肩には、可愛らしいハムスターが乗っていた


翡翠「……誰それ?」

暁「ん?ああ紹介してなかったな。コイツは『サムライ』可愛いだろ」

サムライ「暁様の従者を務めてござります。サムライと申す者に候」

妙に神妙な喋り方だが、幼い子供の声でそのミスマッチ差が何とも言えない雰囲気を作り出している

暁「な?馬鹿っぽくて可愛いだろ?」

翡翠「あ、あはは…」

人によって相棒の扱い、全然違うんだなという感想を抱いた私だった

そんなこんなで、暁さんと連絡先を交換した


放課後


帰り際、沙耶香さんと弥勒さんが校門で話している姿を見かけた
目が合うと、弥勒君は沙耶香さんに何か言ってから、こっちに小走りでやって来た

弥勒「姉様から聞きました、貴女も…えっと同士の方だったんですね」

翡翠「あぁ…うん、そうなんだよ」

弥勒「驚きました、僕達の周りにはこんなにも沢山、仲間がいらっしゃったんですね」

翡翠「そうだね。それには、私も驚いた」

弥勒「僕…恥ずかしながら、実戦の経験が無くて、姉様と特訓もしたことあるのですが…攻撃を当てることで精一杯なくらいで…」

翡翠「そ、そうなんだ…」

私(翡翠の騎士)は一度も攻撃を当てられたことが無いとは言えなかった

弥勒「ですので、先輩さえ良ければご教授願いたいと」

翡翠「あぁ…うぅ…そ、それなんだけど……」

これ以上話が拗れるのはまずいと思い、私は葵ちゃんに話したときと同じ設定の話をした


弥勒「…そうでしたか。いえ、そうですよね、悩んで当然です」

翡翠「うん、だから戦いに関しては…あんまりお手伝いできないかな」

本当は翡翠の騎士として戦いの練習相手になってくれれば、こっちもとても助かるんだけど


弥勒「…でも、それならそれで、お話を聞いていただきたいと思います」

弥勒「姉様の事とか」

翡翠「沙耶香さんの事?」

弥勒「ええ、姉様…かなり変わった方でしょう?数少ないお友達ともなれば、お互い話すこともありましょう」

弥勒「それに、姉様のこと以外でも…僕はまだ、魔法少女として歩き出したばかりです。そんな僕だからこそ、より近い視点で、貴女のお役に立てるかと」

翡翠「…つまり、お友達になりましょうって事」

弥勒「はい!……お嫌ですか?」

翡翠「ううん、私こそお友達になれると嬉しいな」

弥勒「ホントですか!?ありがとうございます!!」

翡翠「…うん、だからいい加減、先輩を子ども扱いしないでね」

弥勒君は私に会わせて屈み、感謝を述べながら頭を撫でていた


弥勒「はっ!つい、えと…先輩は見た目がその…お若いですから」

翡翠「そうだよ、幼いよ!悪かったね!」

弥勒「いえいえ、可愛らしいですよ」

翡翠「うぐぅ!!なんという爽やかスマイル…これだからイケメンは…許す!」

弥勒「許されました!」

弥勒君、意外とノリがいいな

弥勒「そうだ、この子も紹介しておきますね」

そう言いながら手を上へと伸ばすと、その手には真っ黒い烏が乗っていた

弥勒「彼女は『ハナコ』と言います。ちょっと口が悪いですけど、とってもいい子ですよ」

ハナコ「ちょっと!私をそんなダサい名前で呼ばないでよね!!もう最悪!弥勒ってセンスがダサいから嫌いよ!」

翡翠「う、うんよろしくね」

そんな流れで連絡先を交換し、ちょっと変わった性格の弥勒君と友達になった


その日は、何事も無く平和に一日が過ぎた

魔法少女になってから、多くの人と繋がるようになってきた
そして、あんな宣言をした以上、戦いはもっと大変なものになっていくだろう

それでも、自分で決めたことだ
出来ることを頑張るだけ


そうして私は、驚くくらいに休まる暇のない、非日常すぎる日常を過ごす……



というわけで、シナリオの都合上、ここから一週間ほど時間を飛ばします
その一週間を日常、コミュニケーションパートとして消化したいと思ってます

その日程みたいなものを決めてもらいたいと思います
その内容はこの中から、多数決で決めます


1、コミュニケーションは一日1回。深夜イベント無し。テンポ重視、メインシナリオとっとと見たいという方向け
2、コミュニケーションは一日2回。深夜イベントは合計2回。キャラの掘り下げメイン
3、コミュニケーションは一日1回。深夜イベント無し。戦闘描写は見せる。戦闘みたいと言う人向け
4、コミュニケーションは一日2回。深夜イベントは2回。戦闘描写2回。全部乗せ欲張りセット。結構大変

安価↓5までで最多得票の進行とします


最多得票:2


コミュニケーションは一日2回。深夜イベントは合計2回。キャラの掘り下げメイン
で、進行することに決まりました

というわけで、次回からはぐだっとした日常メインとなります

キャラクターとの個別ルートとかはありませんが、仲良くなった相手次第で終盤とかエンディングの展開が変わります

大まかなシナリオルートは二つ用意してます
前にちょっと触れましたね


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました

すっかり忘れてたけど、葵ちゃんの知り合いだという甲さんや漣ちゃんにも展開次第では会えるかな?
せっかくキャラ作ったんだし交遊関係を広めておきたい


そろそろ更新再開のお時間です


>>614
私も実は出すかどうか迷ってるんですよね
ぶっちゃけキャラ数的に居なくても問題はないのですが、見たいと言う方が居ればお出ししたいかなとも思ってます


というわけで安価で決めましょうかね

1、日常編の前に甲と漣の物語の幕間を追加する
2、葵ちゃんの紹介で日常編にも登場する感じにする
3、別にこのままフェードアウトでも構わない

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

2


>>618採用:2


ではでは再開です


名前:姫神沙耶香
性別:女性
年齢:18歳


【容姿】
赤みがかった黒髪ウェーブを描く長い髪、瞳の色は緑
身長は169cm。とてもスタイルがいい


【内面】
優雅で、落ち着きある、上品な立ち振る舞い
威圧的で高圧的な発言も多く、自信に満ち溢れている
……ように見えるが、実際は小心者かつ臆病者
その上で行動力と決断力を持っており、財力と権力も相まって、暴走すると手がつけられない
非常に鋭い観察眼と、弁舌能力があり、戦闘センスは魔法少女一と言っても過言ではないだろう
この世の何より血の繋がった弟を愛している


【魔法】

『スパーダ(剣振るう黒の修道女)』
衣裳は修道女、シスターと一般的に呼ばれる方々のような服装そのまま
基本となる色は黒、そして白。銀で出来た十字架のネックレスをつけている
長いスカートには深くスリットが入っており、足を覗かせる
煽情的な黒いタイツに、ガーターベルトをしている。タイツにはバラを思わせる意匠が施されている
靴は革の様な材質の編み上げブーツ。ヒールはとても高い

彼女の魔法は『力の指向性の変更』
大雑把に説明すると、あらゆる熱量、力と分類できるもの。例えば衝撃や圧力、重力や摩擦と言ったモノ
これらの向きを自由に動かし、自由に割り振りが出来る
体重、摩擦などを移動力に割り振り、さも瞬間移動したように見せかけたり
高層ビル並みの巨大質量が降ってきても、その重さや速度を好きに割り振り、簡単に切り払うことができる
もっと簡単に説明するならば、とてつもなく早く、とてつもなく固く、とてつもなく力強い
単純な物理攻撃では彼女に傷一つつけられないだろう
汎用性の高い魔法も脅威だが、彼女の最も恐ろしい点はその無駄のある行動だろう
彼女はわざと行動に規則性のある『無駄』を作り、魔法を誤認させる
真剣勝負の最中、生半可な技量では出来ないだろうが、彼女はそれが出来る。それがスパーダという魔法少女である
この上何か奥の手を秘めているらしい…


『銀のロングブレード』
一見十字架のようにも見える、銀の剣
スパーダの専用武器
決して欠けず、折れず、振るわれた剣筋はスパーダ以外には決して変えられないという特性を持つ


名前:レオン
性別:男性?
年齢:??


【容姿】
大きな雄ライオン。立派な鬣を携えている
低く、ガラガラとした威厳ある老人の声で話す


【内面】
落ち着いた、感情の起伏の薄い性格
口数も非常に少ない
冗談も通じない為、よくつまらないと言われることを、割と気にしている
狩りとかあんまり得意じゃない
何が出来るの?と問われれば、主人である沙耶香様の椅子になってゴロゴロ喉を鳴らす位だ
好きなものは姫神沙耶香

名前:赤月 暁(アカツキ アキラ)
性別:女性
年齢:17歳

【容姿】
腰辺りまである黒髪を一つにまとめている。所謂ポニーテール
切れ長の黒目
身長は172㎝と女の子にしては大きい

【内面】
一人称が俺で、男子のように振る舞う。所謂俺っ娘
自分の性別が『女』であるという事に強い嫌悪感を持っており、現在のような性格になった
別に女性自体が嫌いではない。寧ろ女子にとことん優しい
そんな性格になったのには、何らかの事情があるらしい



【魔法】

『彼岸(花香る和装の剣士)』
黒い袴に、赤い布地に彼岸花の刺繍が入った着物、桜を模った簪
大正ロマンと言った佇まいの清楚な女性の姿に変わる
髪型は普段通りのポニーテールを解いている
靴は編み上げのブーツ。ヒールの高さは普通くらい
靴下も履いているが、普通は見えない
彼女の魔法は『刀を操る』というもの
好きな場所、好きなタイミング、好きな形、好きな大きさで刀を生成する
彼女の号令によって自由自在に配置され、形を変えて、標的を攻撃する
自由度が高すぎる故に想像力がモノを言う
シンプルに強いを体現する魔法

『日本刀』
普通の日本刀。モデルは薄緑
特筆すべき能力は無い、おっきくなったりちっさくなったりする
結構無茶な扱われ方をする消耗品


名前:サムライ
性別:男性?
年齢:??


【容姿】
丸々としたジャンガリアンハムスター
頭のてっぺんの黒い模様が濃く、丁髷のようにも見える
窮屈そうな甚平を暁に無理やり着せられている
武士のような口調の割に幼い子供のような声で話す


【内面】
義理堅く、忠義溢れる性格
真面目すぎる堅物とも言える
前時代的な武士のような口調で話す
そんな姿を暁「ハム畜生の癖にアホらしくて馬鹿っぽい」と可愛がっている
愛とは、様々な言葉で表現されるが、彼女ほど辛辣な愛の言葉はないだろう
今日も彼?は「おやめくだされ、おやめくだされ」と言いながら頬を突っつかれている事だろう
好きなものは赤月暁


弥勒君はまだ作り途中です
許して



一日目

一回目のコミュ相手


1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>625採用:1
※男面子人気っすね…



その日、学校が休みだった私はグダグダと家で過ごしていた

オルス「翡翠ちゃん、今日は外に出ないのかい?」

翡翠「え~…寒いからいいよ…」

オルス「そうかい?まあ、特に用も無いなら無理に出る必要も無いか」

翡翠「そうそう、偶には休まないとねぇ~。とりゃあ!」

オルス「うわわっ!も、もう…翡翠ちゃん…」

オルスを抱き上げて、存分にもふもふする
最近はこうして二人っきりでゆっくりすることもあまりなかったな…

今日は存分に可愛がってやろう



会話、もしくは行動
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

ブラッシング


オルスコミュのすゝめ
(あくまで参考程度に)

未だに謎の多いオルス、『聖獣』の話題や友達なる相手の話題とか
翡翠の過去の話をしてみてもいいかもしれない。子供の頃の話とか
行動は一緒に散歩をしてみるといいかもしれない。無論、存分にモフってやってもいいだろう


安価↓にずらします


>>630採用:ブラッシング


翡翠「……そうだ、オルスオルス、キミにいいモノを見せてあげよう」

オルス「僕に?プレゼント…かい?何か買ってたっけ…?」

翡翠「実を言うと、ずっと昔に買ったまま使う事の無かったモノなんだけどね」

翡翠「えっと………あった!じゃ~ん」

オルス「……ブラシ?」

翡翠「そうそう、うさぎのブラッシングの為の奴ね。気持ちいいと思うよ」

翡翠「ほら、服脱いで」

オルス「じゃ、じゃあ…お願いしようかな」

オルスの声は期待で上ずっている様だった
……どうでもいいけど、オルスって毛皮の上に服を重ね着してるんだよね。ホント、どうでもいいんだけど


シャッシャッ

と気持ちのいい音をたてて、毛を梳く
オルスも気持ちよさそうに、時折ぶぅぶぅと鳴いている
うさぎはあんまり鳴かないけど、怒ってる時も喜んでる時もぶぅぶぅ鳴くから、ホントに喜んでくれてるか心配になるらしい

翡翠「気持ちいい?」

オルス「うん…とっても心地いいよ……」

オルスの声は明らかに蕩けている
どうやらちゃんと喜んでいるようだ

翡翠「それにしても、オルスの毛って本当に綺麗だね。毛並みを整えるブラッシングなのに、引っ掛かりとか全くないし」

オルス「そうでしょ?僕の自慢なんだ!抜け毛も無いし、ダニもつかない。アレルギーの人も安心だね!」

翡翠「ふふふっ…そっちの方がアピールポイントなんだね」

オルス「くしゃみもしないし、糞もしない。アレルギー対策は万全なのさ!」

翡翠「まあ確かに、ご飯も食べないし、ウンチは出ないよね」

翡翠「…オルスが本当に実在するウサギだったら、パパだって安心して飼ってくれただろうねぇ」


翡翠「……一人暮らしになったら、やっぱりウサギ飼いたいなぁ。このブラシもそう思って買っちゃったんだし」

オルス「ぼ、僕が居るでしょ?」

翡翠「あれ?ペット扱いは嫌なんじゃないの?」

オルス「う、う~ん…確かに…そう思われるのも嫌だけど…」

オルス「翡翠ちゃんのお膝に僕以外が座って、僕以外のウサギが撫でられて、こうして気持ちよさそうにしてると思うと…」

オルス「むぅ…あんまりいい気はしないかなぁ…」

翡翠「ふふっ、嫉妬してるの?」

オルス「そうなのかな?複雑なウサギ心なんだよ…」

翡翠「オルスはオルスで、悩みがあるんだねぇ」

ウサギとしての自分と、相棒としての自分の境界線に悩むオルスを、和んだ気持ちでブラッシングしてあげた


この日二回目のコミュ相手


×、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>639採用:9



漣色葉の魔法少女としての設定
見た目のコンセプトとか、イメージカラーとか、使用武器とか

安価↓3までの内容をMIX

質量の有る分身を出して戦う


>>641-643採用
※こやつ、なんという纏まりのある設定…!容姿の指定が無いのに姿が簡単に想像できるのは凄い



また、アンノウンが現れたという話を聞き、私はすぐに現場に向かった
……が、私(翡翠の騎士)が何かをする前に解決されていた

そこにはマルヴァと忍者が居た
…基、忍者のような魔法少女『朧』が居た

私は変身を解いて、彼女たちに近づいた

翡翠「お疲れさま!マルヴァさんとオボロさん!」

葵「翡翠せんぱ…翡翠さん。はい、見てたんですね」

翡翠「うん、朧ちゃん小さいのに凄いんだね」

色葉「………」

翡翠「……朧ちゃん?」

葵「ああ…えっと…朧は喋れないんですよ。そういう設定なんです」

色葉「!…!!…!」

何も言わないが、ハンドサインや仕草なんかで必死で否定している事だけは分かった
ちょっと変わった子らしい


変身を解いた二人と、3人で夜道を歩く
色葉ちゃんは必要ないと伝えてきたが、一応相手は小学生だと言う事で、家まで送ってあげている


翡翠「色葉ちゃんだよね。葵ちゃんから話は聞いてるよ、私も同じ魔法少女の輝翡翠。よろしくね」

色葉「はい、よろしくです。輝さん」

普通に返事をされることにやや面食らう
朧の時は頑として口を開かなかったのに…

翡翠「色葉ちゃん、小学生なんだよね……私の周り高校生ばかりだから、あんまり意識したこと無かったんだけど」

翡翠「色葉ちゃんみたいに、小学生の魔法少女もたくさん居るのかな?」

色葉「さぁ、色葉は知らないですよ。あんまり居ないんじゃないですかね、色葉くらいですよきっと」

葵「い、色葉ちゃん…朧の時は話をしないから…魔法少女の知り合いは、全然居ないんだと思います…」

翡翠「成程…」

痛く納得してしまった

初めて会話をする相手だ
割と素は明るい子みたいだし、ちゃんと答えてくれそうだね

どんな事を話そう?

会話安価
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

ところで漣ちゃんの変身時の外見は「漆黒のドレスにベール」じゃなかったっけ(参照:>>242)
まあ今の装いも物凄くイメージしやすい見た目だし一向に問題ないけど
このレスは安価に含まないでください

あなたの使い魔はどんな動物なの?


>>650採用:


>>648
うむ!そうでしたね、見事に忘れてました
朧は二種類の変身がある。これで行きましょう


翡翠「そうだ、オルス」

呼ぶと、私の腕の中にすっぽりとオルスが納まって現れた

翡翠「この子が私の相棒なんだ。あなたの相棒はどんな動物なの?」

色葉「『ぽんた』、出ておいで」

ぽんた「お呼びとあらば」

翡翠「んなっ!?」

ぽんたという間抜けな可愛い名前で呼び出された、色葉ちゃんの相棒は
黒髪黒目の長身のお兄さんだった。何故か葉っぱを頭に乗せている

翡翠「…えっ!ええっ!?」

流石に驚きが隠せない
相棒って普通は可愛い動物なんじゃないの!?


色葉「紹介するです。ウチのぽんたです」

ぽんた「どうぞ、よろしく。私、陰に潜む身。頭目のお呼びに応え参上いたした次第です」

翡翠「いやいやいや…えっ?本当に?…っていうか、頭目?」

ぽんた「へい、ご存知の通り『朧』は我ら陰に潜む者の頭目でございやす」

翡翠「ど、どど…どういう事?」

ぽんた「……っていう嬢ちゃんの設定ですぜ」

ボフン

と煙が噴き出したかと思うと、色葉ちゃんの頭の上には、ぬいぐるみのような狸が乗っていた
その頭にはぽんたさんがしていたように、葉っぱを乗せていた

色葉「もう!やめやがれってんです!設定とかじゃないです!」

ぽんた「嬢ちゃん、まだまだ夢見ちまうお年頃なんでゲスよ」

翡翠「そ、そうなんだ……」

色葉「こら!変な語尾をつけるなです!」

ぽんた「コイツも嬢ちゃんの設定なんですがねぇ…」

色葉「何時の話ですか!!ぽんたは朧の忠実なるしもべで、影であり、腹心です!普段はイケメンのお兄さんですがその正体はタヌキです!」

ぽんた「…まあこういう感じでヤンスよ。翡翠殿」

翡翠「……魔法少女…奥が深いなぁ…」

葵「い、いえ…色葉がちょっと凝り性なだけかと思いますよ…先輩」

魔法少女にはまだまだ私の知らない世界があるなと改めて思った


二日目

一回目のコミュ相手

1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
×、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>656採用:7

昼休み
私は陽一君を訊ねて、隣のクラスまで来ていた

翡翠「陽一君、お昼ご飯一緒にどう?」

陽一「…!!い、行く」

陽一君はなんだか動揺していた様子だったけど、快く了承してくれた
一緒に話をしてた男子に背中を叩かれてたけど…ああいうの、男の子は良くするよね

陽一君の要望であんまり人が居ない場所を探して、一緒に食べ始める

陽一「……」

何故かチラチラと視線をこちらに向けてくる
どうしたのだろうかと首をかしげると、陽一君は顔を赤くし上の方を見つける

……本当にどうしたんだろう

翡翠「あの…大丈夫?」

陽一「あ、ああ…なんだ…その……女の子に、昼飯誘われたのは、初めてだったから…緊張する」

翡翠「ふふっ、いつも通りでいいんだよ。普通に話しながら食べようよ」

陽一「ふ、普通な…普通……」

何度か息を吸ったり吐いたりして呼吸を整えると、何とか普段通りに戻ったように思う
陽一君、ちょっと心配になるくらい初心だ


陽一「輝はさ、えっと…料理とかすんのか?」

翡翠「ううん、あんまりしないかぁ。お母さん主婦だから、家事は全部任せっきり」

陽一「…そ、そっか…」

何だか落ち込んでいるように見える
なんで……って、そっか

翡翠「あぁ…ごめん、ちょっと無神経だった?」

陽一「ん?何がだ?」

翡翠「だって…その、陽一君…あの、お母さんが居ないん…だったよね?」

陽一「あぁ……そう、だな。うん、別にそれが気になったわけじゃないから、安心していい」

翡翠「そうなの?それじゃあどうしてあんな…」

陽一「輝の手料理を……い、いや!何でもない!何でもない!全然!本当に何でもない!!」

翡翠「……?良く分からないけど、料理もあんまりしないかな」

陽一「そ、そうか…いや、本当に何でもないぞ。だから、気にするな」


陽一「……家族…か」

翡翠「陽一君は今、お父さんと暮らしてるの?兄弟とかは…」

陽一「親父も…居ない。婆ちゃんの家に居候してる」

翡翠「…!そう…だったんだね…」

陽一「きょうだいも……もう居ない」

翡翠「……そっか、何だか…寂しいね」

陽一君のお母さんの話は聞いたことあったけど、お父さんも兄弟も亡くしているとは知らなかった
私が思った以上に、陽一君は過酷な境遇にあるらしい

陽一君のお母さんの事件
これを私が知っているのには理由がある。いや、私以外の人もほとんど知っているだろう

何故ならば、その事件こそが『アンノウン』が確認された一番最初の事件だからだ
陽一君のお母さんは今日本中で起こっている、『アンノウン』事件の最初の被害者なんだ

だから、その人の息子という事で学校でちょっと噂になるくらいだった


翡翠「その…お父さんもアンノウンに?」

陽一「いや、親父は俺を捨てていなくなった」

陽一「……いつもそうなんだ、大事な時に…俺はいつも、何もできなかったから」

陽一「…悪い、湿っぽい話した。こんな話聞きたくないよな」

翡翠「ううん、話題を振ったのは私だから。ゴメンね」

陽一「謝る事じゃない。…そうだ、輝はどうなんだ?」

翡翠「私?」

陽一「お前の家族。主婦の母親と、父親はどうなんだ?」

翡翠「ぱ…じゃなくって、お父さんは我が家の稼ぎ頭。あんまり家に居ないけど、ちょっと怖くて、でも優しい人だよ」

翡翠「煙草の匂いは嫌いだけどね」

陽一「…そっか。兄弟とかは居ないのか?」

翡翠「兄弟?ああ……」


コンマ判定
5以上で……

直下コンマ


コンマ判定:6 ぼやけた記憶


私のきょうだい

そう考えた時、強烈な異臭を感じた
熱い…痛い…苦しい……
臭い…この臭い……『何かが焼けている』

翡翠「うっ!」

何だか胸が苦しくなり、体を丸める

陽一「お、おい!大丈夫か!お、お茶の、飲むか?」

翡翠「……だ、大丈夫…大丈夫だから」

暫くギュッと目を瞑っていると、何とか気分が落ち着いた
異臭も、胸の苦しみも無くなっていた


翡翠「えっと…きょうだいだよね。私……ん?お姉ちゃんが…居たと思う」

陽一「…?居たっていうのは、どういう意味だ?」

翡翠「あ…うん……あれ?お姉ちゃん…の筈なんだけど。2歳年下なんだ…アレ?妹だっけ?」

陽一「……輝、顔色悪いぞ。本当に大丈夫か?」

翡翠「なんでだろ……何で分かんないの?…私…昔…お姉ちゃんが居た気がする。二人でお留守番してた…それから…それから?」

陽一「おい!輝!!」

陽一君に肩を掴まれる
そこで、ハッと現実に帰ってこれた

陽一「大丈夫か?」

心配そうに私の顔を覗いている

翡翠「陽一君…うん、ごめん。なんか気分悪いかも…」

陽一「…保健室行くぞ。今のお前、普通じゃない」

翡翠「一人で…行けるから……」

覚束無い手つきで弁当を包み、私は保健室に向かった
フラフラとした足取りで、あまり記憶が無い

その日の私は熱を出し、午後の授業は受けられなかった

ベッドで横たわっている間、ずっと自分の姉妹の事を考えていた
……家族の事なのに…どうしても、思い出せなかった。本当は居ないんじゃないかという気もしてくる

でも…あの異臭は…?
私…二人でお留守番してた………

あそこに居たのは…私と…誰?


という感じで今日の更新はここまでです

若干グダッちまいましたが、コミュパートはこんな感じで進みます
陽一君はヒロインなんで案外重要ポジかもしれない。……そうでもないかもしれない


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


そろそろ再開です

二日目

2回目のコミュ相手

1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
×、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉
10、???

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>670採用:4


保健室のベッドで横になっていると、ある人が私を訪ねて来てくれた
姫神沙耶香さんだ


沙耶香「貴女、もう熱は平気?」

翡翠「沙耶香さん…えっと、まだボーっとするかもしれないです」

沙耶香「そう、突然体調を崩したって言ってたけど」

翡翠「はい、ご飯を食べていたら本当に突然…」

沙耶香「……理性は、ありますわよね?」

翡翠「え?はい…あると思います」

沙耶香「ならいいわ。…ごめんなさい、警戒するに越したことは無いと思って」

翡翠「あはは…いえ、心配してくださってありがとうございます。本当に、ちょっと体調が悪かっただけです」

そう言いながらベッドのヘリに腰かける
外を見ると日が暮れかかっており、もう下校の時間だった


沙耶香「起き上がって平気ですの?」

翡翠「ああ、はい。もう熱はないと思います。ボーっとするだけで」

沙耶香「そう…じゃあ、ちょっとお話でもしましょうか」

翡翠「あ、いいですよ」

沙耶香「それじゃあ失礼しますわ」

そう言って沙耶香さんは指を鳴らす
すると、何処からかレオンがやってきて床に寝そべる

その上に、沙耶香さんは腰かけた

翡翠「あ、あの…それ…」

沙耶香「?何かおかしなことでも?」

翡翠「い、いえ……」

沙耶香さんとレオンとの関係は相棒というよりも、主人と従者とか奴隷とかみたいな感じなのかな
…本当に、人によって全然扱いが違うんだね

レオンは嫌がっている様子も無いため、お互い納得済みなのだろう


沙耶香「では、いくつか質問よろしいかしら?」

そう言った瞬間、空気が塗り替えられる

翡翠「…!…は、はい!」

沙耶香「クスッ…そんなに硬くならないでいいわ。リラックスして…ね?」

翡翠「は、はい…」

そう言われても心臓はバクバクと音をたてている

沙耶香さんが私と目を合わせた瞬間、冷たいものが背筋を駆け巡ったのだ
足を組み替え、クスリと笑いながら、私を真っ直ぐに見つめている

沙耶香さんが纏っていた雰囲気というのが一瞬で様変わりしたのだ
私を心配して声をかけてくれていた時は、優し気な、温かな雰囲気だったのに

こう、尋問モードとでもいうのだろうか?

とにかく、相当な威圧感の中、質問はされた

沙耶香「まず、そうね…『翡翠の騎士』。彼の存在を知ったのは何時?」

翡翠「え?えっと…」


会話安価
安価↓1

騎士が初めて現れた時から


>>676採用


翡翠(嘘、つかない方がいいよね)

翡翠「騎士が初めて現れた時から…です」

沙耶香「……その時、貴女は何をしていましたか?」

翡翠「えっと…き、気絶してました」

沙耶香「……そうよね、貴女…その時は病院に運ばれたんですものね」

翡翠「は、はい」

沙耶香「それ以前から、知っていたということは無い?」

翡翠「いえ、そんな…あの時初めて見ました」

翡翠(あの時、私が初めて魔法少女、翡翠の騎士になったんだから。それ以前から知るのは絶対に不可能だよね)


沙耶香「……では次ですわ。貴女、『翡翠の騎士』の行動をどう思っていますの?」

沙耶香「魔法少女の為に戦うと宣言なされた、あの方の言葉、信用できます?」

翡翠「それは……」


会話安価
安価↓1

…どうでしょう
でも、私は信じたいです


>>678採用


翡翠「…どうでしょう。でも、私は信じたいです」

沙耶香「その根拠は?」

翡翠「えっ?えと……私達は魔法少女に守られてばかりでした。あ、今は私も魔法少女なんですけど」

翡翠「…でも、魔法少女を守ろうとしてくれる人は居なかったと思います」

翡翠「魔法少女ではない人たちは、守られるのが、ある意味当たり前で」

翡翠「魔法少女も…多分、体を張って守るのが当たり前になってたんじゃないかなって思うんです」

翡翠「そんな中で、魔法少女を守るって宣言したのは…えと…すごく…いい事だと思ったから…です」

翡翠(自分の事をこんな風に語るのってなんか恥ずかしいな…)


沙耶香「そうなのね。ふふふっ…じゃあ次の質問よ」

沙耶香「ずばり、『翡翠の騎士』の正体をどう思っていますの?」

沙耶香「色々な説がありますわよね?貴女の考えを教えてくださる?」

翡翠「う、う~ん……」

翡翠(わ、私なんて言えないよね……どうしよう?)


会話安価
安価↓1

中の人など、星の数だけいるのでは?


>>681採用


翡翠「中の人なんて、星の数ほどいるんじゃないでしょうか?」

私の答えに沙耶香さんは怪訝な顔をする

沙耶香「それは、複数の人が翡翠の騎士だと?」

翡翠「それは考えたことありませんでしたけど、それもあるかもしれません」

翡翠「弥勒君のように男の人の魔法少女があらわれたので、もう姿だけでは性別はわかりません」

翡翠「ですので、中の人の可能性はいくらでもあるんじゃないかなって…」

沙耶香「……つまり、貴女はアレは人間だと仰るのね」

翡翠「え?ち、違うんですか?」

沙耶香「いえ、違うとか違わないとかの話ではありませんわよ。でも今の反応、『中の人が居る』という確信あっての反応では無くて?」

翡翠「い、いえいえいえ!そそそんな!!」

沙耶香「でも、そうなのね…世間では『痛みを感じない』『血が出ない』『理性を失わないと言った』この事から、人では無く機械のようなシステムだと言う意見が大半ですわよ」

翡翠「そ、そうだったんですね……」

沙耶香「それでも貴女は、迷いなく人だと仰るのね」

そう言いながらクスリと笑う
私は冷汗だくだくだ

さっきからの質問と言い、私の事見透かしたうえでの質問何じゃないかと思ってしまう


沙耶香「それじゃあ最後の質問よ」

沙耶香「貴女にとって…『翡翠の騎士』って何かしら?」

翡翠「……」

翡翠(何…と改めて問われるとちょっと難しいな。…私だけど)

なんと答えよう?


会話安価
安価↓1

なんでもないわ。ただの幻

孤独な存在だと思います


>>685採用ですが、連続で同じ方の安価なので下にずらそうかと思います
↓3までで最もコンマの高いものを採用とか、コンマが絡んだり、範囲安価の場合は連取りを規制しないつもりです


なので、今回は>>686採用で進めます


翡翠「…孤独な存在だと思います」

沙耶香「……へぇ、どうしてそう思うの?」

翡翠「魔法少女と翡翠の騎士は仲間だと思ってます」

翡翠「でも、翡翠の騎士は一人です。翡翠の騎士を守ってくれるのは、翡翠の騎士以外に居ません」

翡翠「こうして誰も正体を知らないわけですし……」

翡翠「だから…孤独なんじゃないかなって……」

これは半分本音だった
実際はオルスが居るから孤独じゃないけど
でも、もしもオルスが居なかったらと思うと、恐ろしく思う

そもそも、オルスが居なければ、こんなにも頑張っていなかったはずだし

第三者の視点で翡翠の騎士を見れば、私はきっとこう思っただろうという答えだった


沙耶香「…これで質問は終わりですわ。答えて頂いて、感謝します」

翡翠「いえ、そんな…」

沙耶香さんが頭を下げると、張り詰めていた空気が一瞬にして解けた
これで終わりらしい

翡翠「あの、私も聞いていいですか?」

沙耶香「何かしら?」

翡翠「どうしてこんな質問を?」

沙耶香「あら、どうしてでしょうね?」

どうやら答えてくれる気はないらしい

沙耶香「でも安心して、翡翠さんの事、私は信用していますわ」

翡翠「そ、そうですか…」


結局沙耶香さんの真意はよくわからないまま、解散という流れになった
沙耶香さん…何がしたかったんだろう?
でも、あの見透かしたような視線だけは勘弁してほしいと思う私だった


深夜イベント


1、輝翡翠
2、夕原可憐
3、オルス
4、朝陽一

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>694採用:1


その日の夜、私は写真のアルバムを引っ張り出してきていた
ずっと幼い頃からの私の写真、それを一つずつ確認していった

翡翠「……あった」

そして、見つけた

その写真には4人の人が写っていた
まだ幼く、自我の形成すら曖昧な頃の自分
お母さんの肩を抱くお父さん
そして、幼い赤ん坊を抱いたお母さん

どうして思い出せなかったんだろう?
不思議なくらい、自然に記憶が蘇った

この子の名前は『瑠璃(ルリ)』
私の2歳年下の妹だ

私の足は自然と、階下へと向かっていた


リビングの隅
それはいつもそこにあった
だけど、いつしか私は忘れてしまっていた

そこにあったのはお仏壇
飾られている写真は、幼い笑顔の、私と同じ顔をした少女

その写真を見て、私はすーっと涙を流した

どうして思い出せなかったんだろう
その事が悔しくて、私は涙が止まらなかった

瑠璃
私と同じ顔をした女の子

私よりも2歳年下なのに、背格好もほとんど同じだった
どっちがお姉ちゃんなのか分からないって言われるくらい、しっかりした子だったと私は記憶している

よく笑い、よく泣く子だった
私と違って我儘で、怒られるのはいつも瑠璃だったように思う

あれをしよう、これがしたい
私の手を引っ張るのはいつも瑠璃だった
私は困った顔をしていたと思うけど、とっても楽しかった

私と同じ顔をした、私と全く違う女の子



瑠璃は死んだ
あの時―――二人でお留守番していた時に


そうだ、この一軒家に移り住む前、私たち家族はマンションに住んでた

お父さんとお母さんがお出かけしていて
私と瑠璃ちゃんでお留守番

私は11歳、瑠璃ちゃんは9歳
小学3年生と5年生
2歳も離れた私たちは、とてもよく似ていた

性格は似ても似つかなかったけど
その姿だけは瓜二つだった

身長、体重、服の趣味も一緒で
二人でお互いの服を貸し合ってたね

そんな私たちだったけど
一つ、違いがあったとすれば…瑠璃ちゃんの顔には可愛い泣きぼくろがあった
私はそれが羨ましいって思ってた

お母さんとお父さんも、泣きぼくろがある方が瑠璃だって言ってた
私には無い、あの子だけの個性だ


ああ…思い出す
今も夢に見る……


原因は何だったんだろうか/
                 ――はそれを知っている


突然、台所から火の手が上がった/
                      ―しはそれを知っている


私達は何とかして、火を止めようとしてた/
                          ―たしは泣きながら謝ってた


頭痛がする
記憶に霞がかかったように、ノイズが走る
どうしても…その瞬間を思い出せない

結果だけは、今ここにある

この体が、その結果だ
私の目の前に飾られた写真が、その結果だ

ただ一つだけ、鮮明に耳に残る言葉がある

『お姉ちゃんに任せて』

確かに私/瑠璃はそう言っていた
どうしてそんな事を言ったのかは、思い出せないけれど


私の足は階段を上っていた

自分の部屋の扉のノブを掴んで、傍と気づく
私の部屋の隣に、部屋があった

誘われるように、私は扉を開く

殺風景な部屋だった

布団の無いベッドの骨組み
新品のようにまっさらな勉強机には、花瓶が置いてあった

その意味を理解し、また泣いた

内装を始めて見せてもらったとき
『ここを私の部屋にする』
そう言って瑠璃は聞かなかった

お父さんは自分の書斎にするつもりだったらしいから、かなり悩んでた

一番日当たりのいい部屋

ここの主は何処にもいない
あるのは、使わるはずだった家具だけ

私は狂ったように、一晩中、眠るまで泣いた

※???イベント解消



三日目

一回目のコミュ相手

1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
×、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>705採用:2


今日は可憐と昼ご飯を食べていた

可憐「最近さ、どこ行ってたの?あたしを一人教室に置いてさ」

翡翠「屋上とか」

可憐「屋上!?このバカ寒い時期に!?」

翡翠「う、うん…暁さんが居たから」

可憐「…アレとご飯食べてたのね。あたしより暁がいいっての!?」

翡翠「そういう問題!?」

可憐「もう最悪だったの!キモイ男子に囲まれてさ!愛想笑いしながらご飯食べるの、しかもお弁当ちょっと食べさせてとか言うのよ!?嫌々あげたけど…」

可憐「もうやだ…あたしは翡翠しか友達居ないんだからね…ほっとくと寂しくて死んじゃうんだから。ウサギみたいに…」

翡翠「ウサギは寂しくても死んだりしないんだけどね……」

愛の重すぎる友達を慰めながらご飯を食べる
可憐は本当に、男の子のこと嫌いだよね……ちやほやされるのは好きらしいけど


可憐「そういやさ、あたしが貸してあげたあの切り抜きとか、結局何だったの?」

翡翠「うぇ!?え…えっと……」

可憐「……最近『あの人』と仲良いのが関係してたりするわけ?」

翡翠「あの人…?ああ沙耶香さんか。まぁ…関係してるかな」

可憐「ふ~ん…あんな人と仲良くなったんだ。別に好きにすればいいけど」

翡翠「あ、あはは…もう……」

こうなると可憐はちょっとメンドクサイ
友達にまで嫉妬しなくてもいいのに…別に可憐も私の友達なのにね

翡翠「そういえばさ、可憐がくれたあの動画。アレ、どうしたの?」

可憐「何って、アップされてた動画を消される前に保存しただけ」

翡翠「それはなんとなくわかるんだけど、あのファイル名だよ。よくあんなに細かく仕分けできたね」

可憐「まぁね、あたしレベルの女子力があれば、アレくらい余裕よ」

翡翠「流石に女子力でどうにかなるモノじゃないと思うんだけど……」

可憐も微妙に良く分からない子だ
分かりやすい部分もいっぱいあるけど


コンマ判定
4以上で何かに気付く

直下コンマ


コンマ判定:7


翡翠「そう言えば可憐、どうしてジャージに着替えてるの?」

可憐「え?この後体育っしょ?だからよ」

翡翠「そっか…忘れてた…」

トイレから帰ってくるの遅いと思ってたけど、着替えてたのか
…違う、違和感は感じてたけどこれじゃない

なんだろう?

改めて、マジマジと可憐の顔を見る

翡翠「……ん?ねえ可憐」

可憐「なに?」

翡翠「可憐ってさ、いっつも化粧してるよね」

可憐「ッ!?」

可憐はハッとして顔を隠す
やっぱりだ、妙に違和感があると思った


翡翠「もしかして今日、化粧してない?」

可憐「べ、べ別に!し、してるよ?」

翡翠「嘘。だって、黒子見えてるよ」

可憐「ッ…!…ちょ、ちょっと今日は…顔に…水がかかって……」

翡翠「……!また、あの子達?」

可憐「急ぐとやっぱ駄目だわ……ごめん!あたし、化粧直してくる」

翡翠「可憐!……行っちゃった…」

私の引き留めにも応じず、可憐は教室を出て行った


可憐は『顔にほくろが多いから恥ずかしい』と言っていつも化粧で隠している
オシャレには人一倍うるさい可憐だ、手抜きをするようなことは普通はしない

つまり、普通じゃない状態で化粧をしてたんだろう

まただ、最近は絡んでこないと思っていたけど、私の見ていないところで一悶着あったらしい

可憐は可愛い。正直に言ってめちゃくちゃモテる
頭もいいし、料理も裁縫も完璧、運動だってできる
恰好は派手だけど、成績がいいから先生から見逃してもらっている

だからだろう、特別な扱いを受けているからか
可憐には敵が多い
具体的に言うと、同学年の女の子と仲が悪い

顔に水がかかったっていうのも、つまりはそういう事なんだろう
トイレから出てきたとき、着替えていたのにも納得がいく

次の授業が体育だから、都合が良かったんだろう

悲しい気分になる
すっかり忘れていた日常の中での、嫌な顔

アンノウンとか魔法少女とか、そんな非日常とは違う
悪い何者かを排除すれば止まるという事ではない、嫌な敵だ

この問題ばかりは、『翡翠の騎士』ではどうにもならない

程なくして可憐が戻ってくる
その表情は笑顔で、いつもと何ら変わらないことを口にする
私はその姿に悔しさを覚えたけど、なるべく私も普通に言葉を返した

そういう対応を、可憐は求めているだろうから


三日目

二回目のコミュ相手

1、オルス
×、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

8


>>714採用:8、甲鳳麗


と言う所で、今日の更新はここまでです

お付き合いいただきありがとうございました


更新遅くなってすみません
明日はもっと早くに再開したいなぁ……


というわけで、再開です



甲鳳麗の魔法少女としての設定
見た目のコンセプトとか、イメージカラーとか、使用武器とか

安価↓3までの内容をMIX

レイピア


>>725-727


翡翠「…これで、終わりかな」

陽一君からの通報があり、アンノウン討伐に精を出していた
同時に3体相手にしたときはどうしようかと思ったけど、案外何とかなるもので
だけど、それは背中を預けた彼女の協力あっての事だろう

翡翠「助かったよ…えっと……ハジメちゃん」

目の前の少女に礼を言う
彼女は『甲鳳麗』、魔法少女姿の時と同じ名前なので、名前を呼ぶときは冷や冷やしてしまう

鳳麗「いいっていいって!おっさんも、まあまあ頑張ってたよ」

翡翠「お、おっさ……う、うん…ありがとう…」

葵「ハジメさん!失礼ですよ!」

翡翠「あ、あはは…いいんだよ」

その後、甲ちゃんは葵ちゃんに連れられて事後処理に回った
その間に私は身を隠し、変身を解いて、頃合いを見て二人に声をかけた


帰り道
私と鳳麗ちゃんの二人

途中まで葵ちゃんも含めて3人だったけど、帰り道の方向が違うという事で別れることになった

葵ちゃんと鳳麗ちゃんは仲があまりよろしくないようで、道中でも何度か言い合いになっていた
だけど、ああいう事が出来るっていうのは、ある意味で仲がいいよね

ともあれ、今は鳳麗ちゃんと二人きり
魔法少女の時はかなり目を惹く黄色と黒のツートンカラーだったけど
今の私服はゴシック系?っていうのかな、黒と白の女の子らしい服装だ

金髪とオッドアイの事もあって、妙に様になっている

鳳麗「ん?じろじろ見んなって、気になるだろ」

翡翠「あ、ご、ごめんね…」

神秘的な雰囲気に似合わず、口調は結構乱暴だ


帰りの間、まだ結構時間がある
何か話そう


会話安価
安価↓1

つ、使い魔見せろください


>>730採用

翡翠「あ、あの…」

鳳麗「なんだよ」

翡翠「つ、使い魔見せろください」

緊張で変な言い回しになってしまった
その所為か分からないけど、鳳麗ちゃんは意味が分からないという風に首をかしげている

鳳麗「…使い魔?ってなに?」

翡翠「え?あれ?えっとじゃあ…マスコット?『聖獣』?とにかく、変身するときに手を握る相手」

鳳麗「ああ、コイツか。そんな名前なんだな、コイツ。『イヌ』ほら出て来い」

イヌ「はいはーい。もう、もうちょっとちゃんと名前をつけて欲しかったわよねぇ。貴女もそう思うでしょ?」

翡翠「う、うん…」

現れたのは黒い犬
ラブラドールレトリバー?だっけ
大きな犬だった

その名前にも驚いたが
口調は女性口調なのに、声が完全に男性だった事だ
……きっと、こういう子もいるんだろう


鳳麗「犬なんだし、イヌでいいじゃん。名前考えるのめんどいし」

イヌ「ごめんねぇ、この子めんどくさがり屋で。でも、いい子なのよ?自分に素直すぎるだけで」

翡翠「あ、あはは…うん。そんな気はする」

自分に素直すぎる、という表現はまさにぴったりだと思った
何でもかんでもズバズバ言うし、でも口が悪いっていう印象でもない
乱暴なもの言いだなって思うくらいだ

翡翠「あの、魔法少女の時と結構性格違うよね。それも理由があるの?」

鳳麗「戦うのが好きなだけ、かな。楽しいときはあんな感じだよ」

翡翠「成程…」

だから今はダウナーな感じなんだね
うん、やっぱりこの子は自分に正直な子なんだな

鳳麗「じゃあアタシ、こっちだから。夜道、気をつけな」

翡翠「うん、ありがとう。またね」

そうして鳳麗ちゃんと別れた


四日目

一回目のコミュ相手


1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
×、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

5


>>735採用:5


昼休み・屋上
私と暁さんは一緒にご飯を食べていた

翡翠「暁さん、今日は珍しくパンじゃないんですね」

暁「そうだな、今日は気分が乗ったから弁当作って来たんだよ」

翡翠「あ、暁さんの手作りなんですね」

暁「んだよ、その意外そうな顔。俺が料理出来ちゃ悪いって?」

翡翠「う、うん。何かそういうの好きじゃ無そうだと思って。…こう、女性的だし」

暁「あぁ…そう言われるとこっちも納得するしかねーけどよ」

暁「料理とか裁縫とか、一人遊びばっかり上手くなっちまったよ」

自嘲しながら、暁さんはそう語った
こういう事を言うって事は、暁さんも誰かと繋がりたいって思ってたって事だよね
意外と寂しがり屋なのかもしれない

そんな暁さんと会話しながらご飯を食べる


会話安価
安価↓1


短いですが、今日はここまでですかね
明日は夕方ごろから始められたらなぁ…(願望)


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


安価↓

いつか料理教えてほしい


>>739採用


そろそろ再開です


翡翠「やっぱり、料理とかってできるといいですよね」

暁「まぁ…な、出来て損はねーよ」

暁「…え?お前、料理出来ねーの?」

翡翠「あはは…恥ずかしながら…」

暁「マジか…結構衝撃的だ。普通逆じゃね?翡翠みたいな大人しそ―な奴が家庭的で、俺みたいなやつがそういうの駄目っていうのが」

翡翠「やってくれる人が居るとどうしても…」

暁「あーな、成程な。俺も妹が居る時はずっとやってもらってたし、気持ちは分かる」

暁「やってみたら、大したことねーぞ?結構できるもんだ」

翡翠「ホント?ふふっ…それならいつか、料理とか教えて欲しいな」

暁「は?いや…だ、駄目とは言わねーけど…俺でいいのか?」

翡翠「うん、こういう付き合いも友達っぽくないかなって」

暁「……そっか、こういう特技があれば友達付き合いのきっかけになるのか。一人遊びも、案外無駄じゃなかったな…」

暁さんはちょっと嬉しそうに微笑んでいた


暁「…なあ、ちょっと真面目な話していいか?」

翡翠「何かな?」

暁「お前ってさ、大切な人っている?」

翡翠「大切な…人?」

何だかつい最近、別の人にも似たようなことを聞かれた気がする
その時はオルスって答えたっけ

暁「俺はさ、大事な奴が3人居た。一番大事な奴は、俺の妹…その次が姫神と弥勒だった」

暁「でも、一番大事な奴が死んで……その次に大事な奴だった相手も…同時に失った」

暁「なんつーかよ、すげぇ虚無感なんだ。姫神と仲を戻したいって気持ちもあるけど、もう二度と以前のようにはなれないっていう確信もある」

暁「ちょっと前までは復讐心が活力だったけど、それすらも消えちまった」

暁「生きる意味っつーか、戦う活力っつーかよ。そういうのが、ぽっかり消えちまった」

暁「例えばよ、お前は俺の友達だぜ。でも…弥勒とかと同じくらい大切かって言われると…まだ、そうなれていない気がする」

暁「青臭い拘りかもしれないけどよ、共に居る時間が長い奴ほど、大切だと思える気がするんだ」


暁「お前はさ…大切な友達、居るか?」

翡翠「………」

あんまり、意識してこなかった気がする
元より、あんまり友達も居ない
最近はちょっと増えたけど

でも、暁さんが言うような、大切な友達って言うと、やっぱりオルスだと思う

オルスの為に何かしたいと思ったのが、始まりだったし
頑張ろうと思える、勇気の原動力は間違いなくオルスだ

でも、よくよく考えてみると、オルスとは一週間とちょっとの仲だ
案外付き合いは浅いのかもしれない

と、なると付き合いの長い友達と言えば可憐だろうか

可憐とはもう…中学の頃からだから5年かな
結構長い間、一緒に居るな…



翡翠「多分…居るかな」

取り敢えずは、そう答えた
オルスと可憐、同列に語っていいかは考え物だが、どちらも大切な存在だ

暁「……そっか、お前はそいつらの事。どれだけ知ってる?」

翡翠「え?」

暁「知らないことが多いからって、大切じゃないって事にはならない。それくらいは俺にもわかる」

暁「かつては俺もそうだったからよ」

暁「でもだ、その大切な奴を守りたい、信じたいって思うんなら話は別だぜ」

暁「そいつの事、本当に信じていいのか…考えておけよ」

暁「ちゃんと相手の事を知っておかねーと……俺みたいに、空虚になっちまう」

暁「そいつを失いたくないって思うなら、ちゃんと話しておけよ。俺からのアドバイスだ」

微笑みながら、私の肩を叩く
その笑顔は、本当に悲しげで…胸が締め付けられるような思いだった

……守りたいと思う大切な人の事、私はどれだけ知ってるだろう
そう考えさせられる、一言だった


四日目

一回目のコミュ相手


1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
×、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>748採用:6


弥勒「…?どうしたんですか?」

翡翠「い、いえ…ナンデモナイヨ…」

放課後
お話がしたいという弥勒君に連れられてやって来た喫茶店

とてもお洒落な場所で気後れするのもあるけど、それ以上にそのお値段だ
……た、高すぎる
学生のお小遣いで軽々きていいようなお値段じゃない

メニューを持つ手がガクガクと震えていた
何とか一番安そうな飲み物だけ注文する

翡翠「み、弥勒君は…普段からこういう所に来るの?」

弥勒「はい。姉様のお気に入りのお店なのですよ」

翡翠「そ、そっか~…」

私は苦笑いをするので精いっぱいだ
恐るべし、お金持ち


翡翠「それで、話って何なの」

弥勒「…はい。戦いの事です」

弥勒「この前初めて、アンノウンと戦いました」

弥勒「僕は勝ちました。それで…消滅するアンノウンを見ました」

弥勒「彼らは…何なんだろうと思いまして」

翡翠「…確かに、生体が謎だよね」

弥勒「はい、突然発生し、発生原因すら分からない。そして…最後には痕跡も無く消えていく」

弥勒「彼らは何を想って生まれ…何を目的として、行動しているんでしょう?」

弥勒「『欲望の獣』と呼ばれてますよね。その由来はご存知ですか」

翡翠「…知らないかな」

弥勒「そうですか、ではご説明します」

弥勒「彼らには我慾しかないと言われています。対話も不可能で、他者や周りの都合を一切考えない。周りが見えていないんです。ですが、ある一つの事に異常なまでの執着を見せています」

弥勒「見た事、ありませんか?」

翡翠「……」


閃き判定
4以上で成功

直下コンマ


コンマ判定:7


今まで戦ったアンノウンの事を思い出してみる
一番初めに戦った触手のアンノウンは、そういえば少女に執着を持っていたような気がする
一番初めに目をつけられたのは私だし、その次も小さい女の子だった

二回目に戦った棘を放つアンノウンは、やたらと人を殺すことに固執していた気がする

つまり、そういう事なんだろうか

翡翠「…うん、見たことあるかも」

弥勒「そうですか!良かった…ここからが本題なんです」

弥勒「アンノウンに秘密があるとすれば、そこだと思うんです。その執着が、アンノウンを生んでいるんじゃないでしょうか?」

翡翠「……考えたことも無かった」

執着、願望、感情の発露がアンノウンの発生原因か
無くはないのかもしれない


弥勒「それでですね、あの…姉様の言葉をお借りすると『寄生型アンノウン』と称されていました。僕の相棒です」

翡翠「ああハナコさん」

ハナコ「その名前止めなさいよ!!」

翡翠「うわぁ!?」

驚きの声をあげ、周囲から視線を集めてしまう
ごめんなさい…庶民でごめんなさい…!

ハナコさんは弥勒君に諌められ、取り敢えずは静かにしてもらっている
弥勒君からはとても謝られた

弥勒「あの、話を戻しますと…もしハナコがアンノウンだとしたら。その何らかの執着や、願望がアンノウン化のトリガーじゃないかと思ってるんです」

弥勒「朱莉さんの時は、例えば『痛み』という感情が、トリガーだったのではないかなと」

翡翠「おお……なんだか、とても鋭い意見だと思う」

弥勒「本当ですか!」

翡翠「そのトリガーに気付ければ、アンノウン化を押さえられるかもしれないからね。考察する余地はあると思うよ」

弥勒「ありがとうございます。それで、ハナコに我慾や執着が無いか聞いてみたんですけど……そんなものないと言われて…」

弥勒「これは、ハナコはアンノウンじゃないという事なんでしょうか?それとも、僕の仮説が間違っているのでしょうか?」

翡翠「むむむ……」

いい攻略の糸口だと思ったんだけど、ハナコ本人から、執着や我慾が無いと言われると
弥勒君の言うように、ハナコさんがアンノウンという説か、我慾がアンノウン化のトリガーという説のどちらが間違っていることになると思うけど…

ハナコさんに何か、別の質問をぶつけてみようか


会話安価
安価↓1

翡翠の騎士を知っていますか?


>>755採用


翡翠「翡翠の騎士を知っていますか?」

ハナコ「はぁ?それくらい知ってるわよ」

翡翠「翡翠の騎士は、アンノウンですか?それとも魔法少女ですか?」

ハナコ「知らないわよそんな事」

翡翠「………」

どうやら質問のチョイスを間違ったらしい
その後、いくつか質問してみたけど、どうにも確信へと迫れずに解散となった

願望…我慾…執着…
それらの感情がアンノウンかのトリガーかもしれない…か

一応は、心に留めておいた方がよさそうだ


五日目

一回目のコミュ相手


1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
×、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>760採用:1


ぴるぴるぴるぴる

携帯の呼び出し音のような音が私の体から響く
あまりの驚きに、体がビクリと震えるが
周りの人は音に気付いていないようで、それがオルスのあの携帯電話?なのだと分かる

オルス(ご、ごめんね翡翠ちゃん!)

翡翠(もう、授業中は困るよ)

オルス(本当にゴメン!)

オルスは私の体から出て行き、電話をしにどこかへと向かった
全く、授業中くらい電話の電源は切るべきだよね

そう思い隣に目をやると、教科書を盾にスマホを弄っている友人が一人

………可憐、なんでそんな不真面目なのに私より成績いいんだろう
世の不条理に涙を流しそうになりながら、真面目に授業を聞いた


麗らかな陽光差し込む中庭
その隅っこにあるベンチで、今日はパンを食べていた

珍しく今日は一人
……オルスと二人きりでの昼食だ

翡翠「ねえオルス」

オルス「なんだい?」

翡翠「そう言えばオルスって、料理とかできる?」

オルス「えっ!?し、したこと…ないかな……ご、ごめん」

翡翠「謝らなくていいよ、ちょっとした気まぐれ。うんうん」

別に、今日みたいにお母さんがお弁当を作れない日に代わりに作って欲しいとか思ってない
全然思ってない

困ったような顔のオルスをよそに、パンをかじる
…まあ偶には悪くないかな

ご飯を食べながら、オルスと話す


会話安価
安価↓1

自分の過去を話しながらオルスの過去も聞いてみる


>>763採用

翡翠「オルスにはさ、私の妹の話はもうしたっけ」

オルス「…!ううん……ずっと気づいてたけど、その…触れられたくないのかと思ってたんだ」

翡翠「あはは…うん、そうだよね。ずっと…忘れてたみたいだから。でも、もう大丈夫だよ」

翡翠「妹が居てね…瑠璃って言うんだ」

翡翠「2歳下なんだけど、しっかりしたいい子だった。私そっくりの顔をした、私と全然違う子」

翡翠「きっと今頃生きていたら…私の背なんか追い越してたのかな。発育良かったもん」

翡翠「私なんか…11歳の頃から全然変わらないんだ」

オルス「で、でも!翡翠ちゃんは今のままが一番かわいいよ!!」

翡翠「ふふっ、ありがとオルス」

翡翠「…そうだ!オルスの話してよ」

オルス「えっ?僕の話かい?」

翡翠「そうそう、オルスの過去の話。よく考えたら、オルスの事あんまり知らないからね…」

オルス「………」


コンマ判定
5以上で……

直下コンマ


コンマ判定:2


オルス「……気づいてくれないモノだね…」

翡翠「えっ?」

オルス「あ!なんでもないよ!そうだね、僕は…生まれたばかりなんだ」

オルス「僕は、キミから名前を付けてもらって初めて生まれたから。それ以前の記憶は曖昧なんだ」

翡翠「そう…なんだ……親とか、分からないの?」

オルス「マザー…か。会ったことは無いけど…連絡はよく取ってるよ」

翡翠「そうだったの!?」

オルス「うん」

オルスは意外と親孝行をしているらしい
安心?したかな…うん、相変わらずよく分からない生態だと思うけど

オルス「……僕は光から生まれたんだ」

翡翠「光?」

オルス「…うん。あの光が…僕という自我を呼び起こしてくれたんだ…」

翡翠「…ひかり……」

何の事だろうと首をかしげる
オルスは、それ以上語れることは無いよと言った

光…?
それに、気づいてくれていないって言ってたけど。以前会ったことがるのかな?
何処だろう…?
それとも…何時?

考えても考えても、思い出せなかった

五日目

二回目のコミュ相手


×、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>768採用:7


学校からの帰り
玄関先でバッタリ陽一君と出会い、私達は一緒に帰ることになった

陽一「…えと…平気か?」

翡翠「ん?何が?」

陽一「この前…熱出して倒れただろ」

翡翠「ああ、うん…もう平気だよ。ゴメンね、心配かけて」

陽一「いや、輝が無事ならいいんだ…」

陽一「……きょうだいの事、ちゃんと思い出せたか」

翡翠「うん、私2歳下の妹が居たの。名前は瑠璃」

陽一「居たって事は……輝も…」

翡翠「……うん、もう居ないんだ。6年も前になるのかな、火事で…ね」

陽一「…そっか、辛い事…思い出させたんだな」

翡翠「お互い様だから。これでお相子だよ」


ちょっとしんみりした空気になりながら、一緒に歩く


陽一「……なぁ、輝」

翡翠「ん?なぁに?」

陽一「…俺って、何なんだろうな」

翡翠「哲学的な問いだね…」

そう指摘されたのが恥ずかしかったのか、ちょっと頬を赤くしながらも話を続ける

陽一「…ずっと一人の時間が多くてさ。変なこと…考えちまうんだ」

陽一「俺が居なくなって悲しむ人は…もう婆ちゃんくらいだ…」

陽一「いや、もしかしたら婆ちゃんも俺の事を…厄介だと思ってるかもしれない…」

陽一「……俺が変わって…悲しむ人は誰も居ない。今の俺が無くなっても…多分、誰も悲しまないと思う」

陽一「親父の愛も、母さんの愛も無い…人に誇れる特技も無い。ずっと続けてきた習慣も、誰にかに褒めらるような趣味も無い」

陽一「腕が無くなっても、それは多分俺だろう。足も無くなって一人で動けなくなっても、それは俺だろう」

陽一「鼓膜が破れて音が聞えなくても、喉が壊れて喋れなくなっても、目が潰れて何も見えなくなっても……それは多分俺だろう」

陽一「じゃあ、何が残ってれば俺なんだ?俺には何もない…」

陽一「……馬鹿みたいだけど、ずっとそんな事を考えてる」

陽一「なあ輝、お前はどう思う?自分を、自分たらしめるものってなんだろう?」

翡翠「………」

自分を自分たらしめるもの
アイデンティティーと呼ばれるモノ

……なんと答えよう


会話安価
安価↓1

きっと関わる人によって様々な異なる「自分」が存在していくと思うよ
少なくとも私にとって陽一君はいなくなったら悲しんでしまう存在だと思う


>>773採用


翡翠「きっと関わる人によって様々な異なる『自分』が存在していくと思うよ」

陽一「様々な異なる『自分』…?」

翡翠「うん…個性っていうのかな。私のお母さんは料理が上手だし、美味しい料理を作ってくれるって思う。でもお母さんより上手な人なんていくらでも居ると思う」

翡翠「だけど、そうだったとしてお母さんの料理が上手っていう個性が、失われるわけではないと思う」

翡翠「もっと上手に作れる人からしたら、お母さんの料理は美味しくないかもしれない。つまり、その人にとって私のお母さんの個性は料理が上手な事にはならないよね」

翡翠「だから、見ている人の問題なんだと思う。貴方を見ている人の中に、『自分』は居る。何も無いって陽一君は言ったけど、そんな事ない」

翡翠「腕無くても、足が無くても、喋れなくなっても、陽一君は陽一君だよ」

翡翠「今あるナニカを失ったら、貴方じゃない別の存在に変わるんじゃない」

翡翠「今そこにある、陽一君の全てが陽一君だよ。何か欠けちゃったとしても、貴方が失われることにはならない」

翡翠「だって、少なくとも私にとって陽一君は、いなくなったら悲しんでしまう存在だと思うから」

翡翠「…これだけじゃ、何も無いっていう思いは埋まらないかな?」

陽一「……!」

陽一君は驚いたように、目を見開いた
私の言葉に予想していなかったと、その表情は如実に語っていた


陽一「……輝は…俺を見ていてくれてるのか?」

翡翠「うん、当然だよ。朝、背中を見つけたらおはようって声をかけるし」

翡翠「元気がなさそうだなって思ったら、大丈夫って心配するよ」

翡翠「だって、友達でしょ?」

陽一「……そっか…そうだったんだな…」

噛みしめるように、そう口にする
陽一君の表情は徐々に微笑みに変わっていった

陽一「…その…えと…き、気持ち悪いこと言ってもいいか?」

翡翠「えっ?あ、あんまり言わないでもらえると…え?下ネタとか?」

陽一「ち、違う!そ、そんな雰囲気じゃないだろ!?あ、でも…あんまり下ネタとか…い、言わない。好きじゃ…ないし」

翡翠「ホント?あはは…ごめん、いきなり変なこと言うから驚いちゃって…」

陽一「……やっぱりやめておく、言ったら気持ち悪がられそうだ」

翡翠「どんなこと言おうとしてたの…?」

陽一「も、もういいだろ。恥ずかしい…から」

自分でもやってしまったと思っているのか、顔を真っ赤にしている陽一君
そんな陽一君と、一緒に家まで帰った
別にいいと言ったけど、結局家まで送ってもらったのだった


深夜イベント

1、オルス
2、『とある屋上』
3、朝陽一
4、夕原可憐

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

3


>>777採用:3


翡翠「じゃあね陽一君。また明日」

陽一「あ、ああ…またな」

手を振って別れの挨拶をする
輝は、玄関の扉を開けて、中に吸い込まれていった

俺は、ずっとその場に立ち止っていた
顔が紅潮していくのが分かる
いや、体中が熱を放って治まらない


   「だって、少なくとも私にとって陽一君は、いなくなったら悲しんでしまう存在だと思うから」


彼女の言葉が、頭をずっと巡っている
彼女にかけられた言葉は全て覚えている

でも、その中でも、とびきり心に突き刺さる言葉だった

俺は居た堪れなくなり、早足でその場を去る
寒い風が吹き付けるが、俺の体の熱は一向に冷め止まなかった


いつもの場所で、夜風に当たる
不思議なくらい、俺の体は温かいままだ

人間、なんとチョロイものだろうか

好きな人に、欲しかった言葉を言われただけで、こんなにも世界が輝いて見えるだなんて
不幸の星の下に生まれたと思っていた今までの自分に、今の自分の姿を見せてやりたい

俺はきっと…とても幸福なんだ

母さんが死んだとき、妹が死んだとき
俺は世界を呪った

ずっとずっと願っていた
ずっとずっと考えていた

俺の中に巣食う、空虚な穴
俺を見てくれている人なんて、何処にもいないと絶望していた

ずっとずっと探していた

生きたいなんて思ったことは一度も無い
ただ、まだ死ねないから生きていただけだ

俺は……ずっと探してたんだ


―――――理由を探してたんだ


俺が今生きていることに、理由が欲しかった

誰かに、生きていて欲しいと言って欲しかっただけだったんだ

それを、好きな人に言って貰えるなんて
何物にも代えがたい幸福だろう

ああ…こんな事、言えないよな
言えるわけがない
気持ち悪いに決まっている

一目惚れなんてそんなものだ

そぶりを見せない一目惚れなんて、気持ちの悪いストーカーと何ら変わりない


今まで生きてきた中で、一番うれしかった


その想いを胸に秘め、俺は漸く、覚悟を決めた


「『――――』」


夜風に吹かれ、音が消える

彼の言葉は誰にも聞こえない
彼の想いは、誰にも聞こえない

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


6日目

1回目のコミュ相手


1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
×、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

2


>>785採用:2


今日は教室で可憐と一緒に昼食を食べる

可憐「…あ、そろそろクリスマスじゃん」

翡翠「ああ…もうそんな季節なんだね」

12月に入ってから、結構経ったモノだ

可憐「アンタさぁ、折角のクリスマスっていうのに浮いた話の一つも無いわけ?」

翡翠「う、うん…無いけど…」

可憐「はぁ~あ…花の女子高生がそんなので言いわけ?憧れたりしないの?」

翡翠「そりゃあ、ちょっとは憧れるけど…」

翡翠「そういう可憐はどうなの?」

可憐「あたし?アンタ、あたしが男を好きになると思う?無い無い興味な~い」

翡翠「それなのに、私には文句言うんだね…」

世話焼きの小母さん的な可憐のメンタルに呆れながら、昼食を食べる


会話安価
安価↓1

友達や知り合い呼んで軽いパーティーでもする?


>>788採用


翡翠「去年はどうしてたっけ?」

可憐「確か~…アンタの部屋で二人で騒いでたね」

翡翠「じゃあ今年は、友達や知り合い呼んで軽いパーティーでもする?」

可憐「お!いいねぇ!…ああでも、あたしアンタ以外友達居ないよ?」

翡翠「大丈夫、私が誰か呼ぶよ。…あ、男の子呼んでも平気?」

可憐「え゛っ!?」

『無理』と可憐の顔は言っていた

翡翠「良い人だよ?」

可憐「あたしにとって良い人か分かんないじゃん!」

可憐「あ~あ…世の中翡翠だけだったらいいのに…」

翡翠「無茶を言う……」

可憐「あたし別に困らないけどなー、可憐と二人きりの世界とか」

翡翠「断言してもいいけど、絶対凄く困るよ……それに、私の他の大切な人が死ぬのは嫌だなぁ…」

可憐「ハハッ、流石のあたしも冗談よ。馬鹿ね」


そんなこんなで可憐とクリスマスの話をして過ごした
可憐の返答は『アンタと一緒に居たいから、他の奴が居ても我慢してあげる』だそうだ

今年はちょっと賑やかなクリスマスになりそうだな
私は、ちょっと心を躍らせた


文章訂正

×「あたし別に困らないけどなー、可憐と二人きりの世界とか」
○「あたし別に困らないけどなー、翡翠と二人きりの世界とか」


一人キリじゃないか(憤慨)


6日目

2回目のコミュ相手


1、オルス
×、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


うむ、今日はここまでですかね

安価とりは次回更新の時にもう一回するので、>>791は無効とします


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


そろそろ再開です

6日目

2回目のコミュ相手


1、オルス
×、夕原可憐
3、四条葵
4、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>797採用:4


今日は沙耶香さんに誘われて、空き教室で昼食を食べていた
学校の教室で、二人きりでご飯を食べる経験なんて一度も無い
ちょっと緊張しながらもご飯を食べる

翡翠「あの…今日はどんな御用ですか?」

また質問攻めにされるんじゃないかと、ビクビクしながらも会話を促す
きっと、用があるからわざわざ二人きりでの食事を用意したんだろうし

沙耶香「それはご飯の後でもいいでしょう?」

沙耶香「貴女から私に聞きたいことは無くって?」

沙耶香「答えられる範囲でよければ、お応えしますわ」

翡翠「う、う~ん……」

結局また質問攻めにあうのかと思うと、ちょっと憂鬱だけど
沙耶香さんに聞いてみたかった事か……

何かあるかな?


会話安価
安価↓1

クリスマスとかってお暇…なわけないですよねごめんなさい


>>801採用


そうだ、クリスマスパーティの事があった
沙耶香さん…誘ってみようかな

翡翠「あのぅ…つかぬことをお聞きするんですが…」

翡翠「クリスマスとかってお暇…なわけないですよねごめんなさい」

沙耶香「あらあら、どうして謝るんですの?」

翡翠「いえ…だって…沙耶香さんが…その、クリスマスに暇なんてないだろうって…我ながらそう思いまして…」

沙耶香「そうね、それは…どちらの意味かしら?」

そう言いながら沙耶香さんはニタリと笑う
予想してなかったリアクションに、私の頭の上には?が浮かんでいた

沙耶香「あら、貴女天然でしたの?」

翡翠「へっ?あの…はい、クリスマスに友達とパーティしようと思ってて、それにお誘いした次第で、それ以外に他意は…」

沙耶香「そうでしたの。なら、一応それにもお答えしますわ」

沙耶香「お誘いは有り難いのですけれど、忙しくなるので参加できませんわ」

そう、ハッキリと断られた
まあ駄目で元々、当たって砕けるつもりでのお誘いだったから問題ない


昼食も食べ終え、お茶を飲んで一息ついたところで、沙耶香さんは本題を切り出してきた

沙耶香「私の本題もクリスマス…いえ『Xデー』についてですの」

翡翠「『Xデー』ですか?」

沙耶香「ええ、貴女『Xデー』の事、ご存知?」

翡翠「えっと……そうですね…3年前、あの謎の光が世界中に降り注いだ日。ぐらいでしょうか…」

沙耶香「その日から、世界の形が大きく変わったこともご存知よね?」

翡翠「ああ、はい。そうですね」

沙耶香「我々魔法少女と、アンノウンが生まれたのもそう。『Xデー』が始まり」

沙耶香「あれから3年間、我々…魔法少女とアンノウンは戦い続けていることになりますわ」

沙耶香「私、思うんですの。この戦いで、得たモノは何かしら?」

翡翠「え?」

沙耶香「貴女はどう?この3年間で、戦いを通して、得たモノってあると思うかしら?」

翡翠「……」


得たモノ
戦いで得たモノ
考えたことも無かった

身近な大切な人をを守るための力だと思っていたこの力
確かに、守れたものはあるかもしれない
でも…相対的にはどうだろう?
………多くのモノを人を、失っている気がする

なんと答えようか?

会話安価
安価↓1

まったくないとは言えませんが、やっぱり失ったものが多すぎると思います


>>804採用


翡翠「全くないとは言えないと思います。私達のような魔法少女として、アンノウンに立ち向かう力を得ていますから」

翡翠「…それでも、失ったものが多すぎると思います」

沙耶香「そうよね、私も概ね同じ意見ですわ」

沙耶香「壊れた町の修繕は『戦姫』が行っていますけど、死んだ人を取り戻してはくれませんわ」

沙耶香「このままの状態が続けば、失っていくばかりですわ」

沙耶香「ねえ翡翠さん。アンノウンはどうして生まれてくるんでしょう?考えたことはおあり?」

翡翠「どうして…ですか…」

沙耶香「ええ、おかしいと思わない?我々魔法少女は日夜、戦いを続けていますわ」

沙耶香「消滅が確認されたアンノウンはゆうに1000を超えます」

沙耶香「それでも、戦いは終わっていない。ねえ、どうしてだと思います?」

翡翠「戦いが終わらない理由……」

なんだろうか?
なんと答えよう?


会話安価
安価↓1

魔法少女側かアンノウン側か、あるいは人間のいずれかが意図的に戦争を長引かせている


>>806採用:


翡翠「……魔法少女側かアンノウン側か、あるいは人間のいずれかが意図的に戦いを長引かせている。でしょうか?」

私の返答に、沙耶香さんはにんまりと笑う
どうやら大正解らしい

沙耶香「見込んだ通り、中々鋭いですわね」

沙耶香「ええ、私もその可能性を睨んでおりますの」

沙耶香「問題は、『誰が』『何の目的があって』そうしているのか。ですけれど」

沙耶香「貴女は、何か思いつきませんか?」

翡翠「そう…ですねぇ……」

考える
この戦いで得をする?
誰が得をしている?
何を…得としている?

アンノウンが生まれることに…アンノウンが倒されることに?
あるいは…罪なき人が死ぬことに?

それとも、全く予想もつかないようなナニカが仕組まれていたりするのだろうか?


翡翠「……分からないです」

色々と考えてはみたが、結局はこの結論に至った
そもそも、アンノウンも魔法少女も、完全にどんな目的があって生まれたのか知りえていない
どれだけ考えてみようとも、想像の域を出ない

沙耶香「ですわよね。私にも分かりませんもの」

沙耶香「そこで、ですわ。視点を変えて考えてみたらどうかしら?」

翡翠「…?」

沙耶香「『誰が』『どんな目的で』戦いを長引かせようとしているのか、これは分かりませんわ」

沙耶香「ですが、『戦いを長引かせられるモノ』これは限られてくるのではなくって?」

翡翠「…!成程、確かに…そうですね。『戦いを長引かせられるモノ』が分かれば、逆説的に、それが黒幕ですよね。だって、戦いを続けたいと思ってるんですから、何かしらの得があってそうしているはずです」

沙耶香「そう、そこで『Xデー』に戻りますわ。あの日から変わったというのなら、その時、何かがあったはずですわ」

沙耶香「始まりの何かが…生まれたはずですわ」

沙耶香「あなたが知りえている情報だけで、何か予想は立てられるかしら?分からないなら、分からないでもいいけれど」

翡翠「始まりの何か……」


『Xデー』について知っていることは数少ない
25日になると必ず現れるあの箒星と、毎年のように降ることになったあの光

始まりの何か…か

どんな存在が生まれたか、あるいは…誰が、何が怪しいか
予想がたてられるだろうか?


会話安価
安価↓1

宇宙からの異星人や未知のエネルギーによるもの?


>>809採用


翡翠「宇宙からの異星人や未知のエネルギーによるもの…とかでしょうか?」

沙耶香「ふふふっ…そうね、そういうのもあるかもしれませんわね」

沙耶香さんは愉快そうに笑う
…どうやら、あまり本気にされなかったらしい

あの箒星とか、謎の光とか、とてつもなく怪しいと思うんだけどなぁ……

沙耶香「私の予想をお話しますわ」


沙耶香「私は、『星涙の戦姫』が怪しいと思ってますわ」


翡翠「えっ!?」

まさかの解答に度肝を抜かれる
そんな事あり得るのだろうか?俄かに信じられない


沙耶香「今までの、『戦姫』の行動を思い出して欲しいの」

沙耶香「確かに、毎日のように壊れた町を修繕してくださるのはとても助かりますわ」

沙耶香「ですが、我々…魔法少女を助けようとしてくれることは滅多にありませんわ。あれほどの力を持っていながら」

翡翠「そ、それは……」

確かに、してくれるのはいつも事後処理だけだ
それでもとても有り難い事なんだけど
だけど…私を一度助けてくれた時、一撃でアンノウンを倒したあの力
アレだけの力があれば、私達他の魔法少女は必要ないんじゃないかと思うくらいだ

翡翠「でも彼女は魔法少女じゃ…」

沙耶香「ええ、私もそう思っていましたわ。でも、今はそんな前提通用しなんじゃなくて?」

翡翠「……確かに、そうかもしれませんけど…」

そうだ、それに関しては私自身が証明したようなものだ
魔法少女とアンノウンの境界線は曖昧だ

彼女…『星涙の戦姫』がアンノウンの可能性だって勿論あるのだ


翡翠「ううん…でも…その、言いがかりの域を出てないんじゃないかなって」

沙耶香「…確かに、これだけですと、そうですわね」

沙耶香「でも、私の見立てが正しければ…あの『星の涙』という戦姫が放つ魔法」

沙耶香「あの『星の涙』……『Xデー』に降り注いだ、あの光と同じものですわ」

翡翠「なっ!?ああ…でも……確かに、似ているかも」

思い出してみると、あの包み込むような優しい、温かな七色の輝きは
『Xデー』に降り注いだ、あの光と酷似しているような気がする

沙耶香「始まりの魔法少女…『星の涙』……魔法少女に非協力的とも取れる姿」

沙耶香「はたして、信用していいのかしらね?」

翡翠「………」

沙耶香さんからそう言われたとき、私は否定しようと思った
私達は彼女に間違いなく救われているところがあるはずだから

…でも、口が動かなかった

沙耶香さんの言う可能性を、否定することも出来なかったから

そこで、休み時間が終わり
私達は分かれて教室に戻った


凄くどうでもいいんですが、この日二回昼ご飯食べてる……

沙耶香さんとの会話は喫茶店か何かという事にしておいてください

※???コミュ解禁



7日目

1回目のコミュ相手


1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
×、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉
10、???

安価↓3までで最もコンマの高いものを採

10


>>816採用:10


強い風が吹き付ける屋上
私は、冷汗が止まらなかった

どうして…どうしてこなったんだっけ……?

翡翠の騎士じゃない、輝翡翠は目の前の現実に混乱していた

オルス「紹介するよ、僕の友達なんだ!」

自慢げに目の前の彼女を紹介するオルス
オルス…アナタはどうしてこんなに冷静なんだい?

今日の私は確か、学校が休みで、部屋でゴロゴロしてた

そしたらいつものようにオルスの電話が鳴って、それで…そうだ『友達』と話してたって言ったんだ
そしたら、会いに行くことになって、ついて行ったら……

行ったら……


目の前に『星涙の戦姫』が居た




翡翠「……オルス、え?いつも電話してたっていう友達…ってえ?彼女なの?」

オルス「うん、そこに居る彼女さ。名前は……ああ、確か…まだ無いって言ってたね」

翡翠「へ?何言ってるの?『星涙の戦姫』さん――」

そう言いかけた時

「キャハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

甲高い少女の声がこだまする
慌てて視線を音の方に向ければ、そこに居たのは

悪魔だった

10cmほどの小さな体躯
天に伸びる2本の角に、ゴムっぽい材質の可愛い尻尾、極めつけは蝙蝠のような羽

正に、誰もがイメージする悪魔。小悪魔だった

小悪魔「ギャハッ!ゴメンねぇ、お姫さまってば照れ屋でさぁ」

オルス「紹介するね翡翠ちゃん。僕の友達の小悪魔ちゃん。その相方の『星涙の戦姫』さんだよ」

小悪魔「よろよろ~!」

小悪魔が可愛く手を振る
私は茫然としながらも手を振り返した


『星涙の戦姫』はというと、何も言わずに私に目を合わせようとしない
照れ屋って言われてたけど、照れてると言うよりは本当に困ってそうだ…

翡翠「あ、あの…私なんかが会いに来てよかったのかな?」

小悪魔「良かったのかってぇ~?そりゃあもう大・迷・惑!!」

小悪魔「これからアタシ達やること山積みなわけ」

小悪魔「でも、ど~してもってオルスが言うから、会うだけ会ってやったの」

翡翠「そ、そうなのオルス?」

オルス「うん、翡翠ちゃん彼女のファンでしょ?何か話したいんじゃないかなって」

翡翠「う、うぅ…あ、ありがとうオルス……」

感謝の気持ちは本当だ
しかし、それ以上に困った

こんなタイミングで会う事になるなんて思いもしていなかった
しかも会話の機会まで作って貰えるなんて

更にいえば、輝翡翠として話が出来るのだ
これ以上の機会なんて、二度とないかもしれない

……何の話をしようか

会話安価
安価↓1

とりあえず一緒に写真とりませんか?


>>822採用


翡翠「…と、とりあえず一緒に写真とりませんか?」

戦姫「……!!」

戦姫さんは驚いたように後ずさりをする
ちょっと待ってとジェスチャーで此方に伝え、少し離れたところで小悪魔さんと話をしている

小悪魔「はぁ恥ずかしい!?別に写真位いいじゃない」
小悪魔「でも?でもじゃないの!面倒だからサッサとしなさいよ!!!」

小悪魔さんに凄くどやされている
照れ屋だと言うのは、案外嘘じゃなかったらしい
ちょっと悪いこと言っちゃったかな…

程なくして戦姫さんは戻ってきて

戦姫「…いい、ですよ」

と、顔を真っ赤にしてそう言った
私はその照れ顔だけで、ご飯3杯は軽く平らげられると、声高々に宣言したい


翡翠「ありがとうございます!ありがとうございます!!我が家の家宝にします!!」

戦姫「…!!」

戦姫さんは顔を真っ赤にして首を振り、両手を突き出している
『そんなそんな』と言外に伝わる
その仕草も大変愛らしいものだった

私のスマホの中には戦姫さんとのツーショット写真
彼女がピースをして写っているツーショット写真なんて、きっとこの世でこのスマホの中だけだろうな

後で待ち受けにしようかと思うくらいの、最高の瞬間だった
しかし、誰かに見られると面倒なので、私一人で観賞するようになることだろう

小悪魔「これで十分?アタシ達、もう行かないといけないんだけど」

翡翠「えっ!?もうですか?あぁ…もっと話したかったなぁ…」

翡翠「あの、今日はありがとうございました。わざわざ、時間を割いてもらって」

戦姫さんは『いいんですよ』と首を横に振る
何処までも懐の深いお人だ

やっぱり、彼女が沙耶香さんの言うような黒幕にはとても思えない


戦姫「…もうすぐ、4度目の『Xデー』がやってくる」

去り際に、彼女は警告するように私に語り掛けてきた

戦姫「新たな世代の、アンノウンが産声を上げ始めた」

戦姫「今までとは比べ物にならない力を持った、血肉を喰らうアンノウンが姿を現す」

戦姫「もうすぐ……貴女にとって…最悪の日が来る」

戦姫「どうか、間違えないで…」

戦姫「………『終わりを告げる騎士』」

翡翠「えっ!ま、待って!!」

呼び止める声は遅く、彼女は大きく飛び上がると、直ぐに姿が見えなくなった


翡翠「今…私の事を…『騎士』って……」

オルス「……彼女…それを知ってたから、会おうとしてくれたのかな?」

翡翠「分からない……」

新たな世代
血肉を喰らうアンノウン
私にとって最悪の日
そして、『終わりを告げる騎士』

彼女の言う言葉は、何一つ知らない事ばかりだ

ただ一つ、分かることがあるとすれば
彼女は私たちが知らない多くの事を知っているということくらいだ…


7日目

2回目のコミュ相手


1、オルス
2、夕原可憐
3、四条葵
×、姫神沙耶香
5、赤月暁
6、姫神弥勒
7、朝陽一
8、甲鳳麗
9、漣色葉

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>829採用


時刻は夜
薄暗い公園のベンチで、私は弥勒君と一緒に居た

翡翠の騎士としてアンノウンを退治していた時、同時刻、すぐ近くで弥勒君も戦っていた
合計3体のアンノウンの内、2体を私の手で倒した

戦姫さんの警告もあってか、かなり警戒して戦ったけど、今まで戦った相手と大差ない強さだったと思う
もう倒した総計は10体に近くなるかな?
私も強くなったのかもしれない

ともあれ、先に二体倒し終わり、変身を解いて弥勒君が戦い終わるのを待っていた
弥勒君と一緒に帰ろうと思っていたんだけど、迎えが来ると言う事なので、私はついでに送ってもらう事になった

その待ち時間の間、こうして二人で時間を潰しているというわけだ

翡翠「凄いね弥勒君、一人でアンノウン倒しちゃうなんて」

弥勒「いえそんな…僕なんてまだまだです」

弥勒「もっともっと……強くなりたいんです。そうじゃないと、大切なモノを守れませんから」

弥勒君は自分の手の平を見つめながら、そう言った


弥勒君と、どんな話をしようか?


会話、行動安価
安価↓1

お姉さんがアンノウンについてはなしあうことがなかった?


>>831採用


翡翠「お姉さんがアンノウンについてはなしあうこととか、なかった?」

弥勒「え?そう…ですね……姉様は日頃のようにアンノウンについて調べていますから。よく話題には上りますが…」

弥勒「姉様は、僕達…魔法少女とアンノウンの戦いを終わらせようと考えているようで」

弥勒「最近はよく『マザー』という言葉をよく耳にしますね」

翡翠「『マザー』?…お母さん?」

弥勒「ええ、仮称ではありますが、アンノウンを生む母胎の事のようです」

弥勒「存在しているという確定事象ではありませんが、その可能性があると仰っていました」

翡翠「ふぅむ…確かに、アンノウンを生みだす母胎のようなモノが見つかれば、それを退治すれば、戦いを終わらせられるかもしれないね」

弥勒「ええ、姉様も同じ考えなんだと思います」

弥勒「ただ…その肝心の母体が何なのかは、分かっていないようでしたけど…」

弥勒「『Xデー』に全て答えが出るとも言ってましたけど…どうなんでしょうね?」

翡翠「うぅん……どうなんだろう…」


沙耶香さんはやっぱり色々な事を考えて、想定して行動をしているようだけど
『マザー』か…何かつい最近、聞いたような……

そんな事を話していると、迎えのリムジンがやってきて、私はその中に拉致され…基、送ってもらった
その広すぎる車内に怯えながら、私は家に帰った


と、言う所で今日の更新はここまでです

次回からはメインシナリオとなります
一気に終盤へと突入するつもりです
お楽しみに


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


更新サボってすみません!!
書き溜めあるんで許してください!!!

いつもよりだいぶ早いですが再開です


翡翠「ふぅ…これで一段落かな」

オルス(お疲れさま、翡翠ちゃん)

12月23日
『Xデー』を目前に控えた今日
私はいつものように、アンノウンと戦っていた

かれこれ戦闘経験は10回を超えただろうか?
想像以上に休まる日も無く、ほぼ毎日こうして戦っている

心のどこかで、物足りなさを感じる

その正体は分からないけど、何だか…モヤモヤしてしまう

オルス(そろそろ帰ろうか………翡翠ちゃん?)

翡翠「ん?ああ…うん。そうだね。帰ろうか」

曖昧な靄を振り払い、変身を解いて日常に戻る


今日の朝の事を思い出す
沙耶香さんから、ある連絡が届いた

多分私だけじゃなくて、色んな人に届いているんだろうけど
その内容は『暫く家を空けます。その間、皆さんをお助けできないので、どうかご無理をなさらぬよう』

との事だった

知り合いの魔法少女全てに送っているのだろう
そういえばクリスマスは忙しくなると言っていたけど、それが関係しているんだろうか?

とにもかくにも、沙耶香さんはどこかに行っているらしい

沙耶香さんが抜けるのは戦力的にとても痛いが、これといってアンノウンに苦戦しているわけじゃない
この感じだと、特に問題なくクリスマスを迎えられるだろう

そんな事を思っていた時


――――――視界に何かがチラついた


翡翠「雪…?」

空から、白い泡のようなモノが降ってきている
ゆらゆらと揺れ落ちるそれは、地面にぶつかると光を放って消えていった

七色の淡い光を弾けさせて

私はハッとして空を見上げた

私の目に映る空には、雲一つない
その代わり、その身を燃やす、美しい箒星がその輝きを地上に分け与えていた

その光景はまさに『星の涙』と称されるに相応しい光景だった

翡翠「……綺麗……っじゃなくて!なんで!?」

最初は見とれていたが、直ぐに異常に気付き、驚嘆する
あの箒星は毎年『Xデー』の度にその姿を見せる

しかし、今は12月23日
『Xデー』よりも二日も早い


翡翠「どういう…事…?」

閏年の所為とか?
引力とかの影響で、二日早まったの?
ありもしない天文知識を引っ張り出して、目の前の現象に答えを出そうとしていた時

悲鳴が聞こえた

咄嗟に声の方向に振り向く
その方向からは土煙が上がっている

別の方向からも悲鳴が聞こえる
悲鳴は、ドミノ倒しのように連鎖し、それに呼応するように様々な破壊音が鳴り響く

翡翠「アンノウン!?なんで、こんな同時に?」

オルス「翡翠ちゃん!どうするの!」

翡翠「どうするも何も決まってるじゃん!行くよ」

          アクセス
    「―――『繋がれ』」


翡翠の騎士に姿を変え、私は再び夜の町を駆ける



翡翠「はぁ…はぁ…!次は…!」

オルス(翡翠ちゃん!ちょっと休憩しよう!)

翡翠「そうは言っても…何なのこの多さ……」

疲労の溜まらないこの体でも、流石に辟易としてしまう
一つ一つは強くも無いが、今まで経験したことも無いほどの数数数!!

戦闘経験が10を超えたかなと、思っていたころがもう懐かしい
既に10体近くのアンノウンを倒して回った

それでも尚、悲鳴と破壊音は鳴りやまない

翡翠「どうなってるの……」

こんな時に沙耶香さんが居てくれたら…
戦姫さんはどうして居るだろう?

肝心な時に、最大戦力の二人の姿が見えない
沙耶香さんはともかく、戦姫さんは何をしてるんだろうか?
もしかしたら、見えない場所で頑張ってくれているのかもしれないけど


遠くから此方に駆けよってくる姿を見つける

葵「翡翠の騎士さん!ご無事でしたか!!」

やって来たのは葵の花の魔法少女

翡翠「あお…じゃなくて、マルヴァ。こっちはもう大分片付いたよ」

ここで戦闘を繰り広げる前、葵ちゃんと一度会っていた
彼女はこの数のアンノウンがやってくることをあらかじめ予感していたらしく、集められるだけの戦力を集めてくれていた

そして、区画ごとに分かれて各々がそこに湧いたアンノウンを片付けている。といった状況だ

葵ちゃんは後方支援に回っていて、各方面での連絡とか、救助、避難誘導をやってくれているらしい
居なくてもいい魔法少女なんてよく言ったものだ
彼女が居なければ被害をここまで防げていないだろう


翡翠「そっちはどう?」

葵「一際激しい○○区は彼岸がかなり頑張ってくれています。××区の方はファウストが終わらせて、今△△区に向かっているそうです」

翡翠「そうなんだ」

ファウストは弥勒君の魔法少女としての名前だ
どうやら相当頑張ってくれているらしい

翡翠「それで、これから私は何処に向かえばいい?」

葵「えぇ…では、あちらにお願いします。つい先ほどまで何かと激しい交戦が繰り広げられていたんですが…」

翡翠「何かって…魔法少女じゃないの?」

葵「はい。…言いにくいのですが、アンノウン同士が戦っていたように思います」

翡翠「アンノウン同士…?…まあ分かったよ、とにかく行ってみる」

葵「はい!よろしくお願いします!」

奇妙な疑念を抱きながらも、立ち止まっている時間も惜しいと、私は葵ちゃんと別れて指定された場所に向かった



辿り着いた場所は商店街
見渡す限りシャッターが閉め切られており、人の気配を感じない

やけに静かな場所だった

しかし、そこにはありありと、破壊の形跡が見て取れた

翡翠「何かがあったのは間違いなさそうだね…移動したのかな…?」

オルス(…!待って翡翠ちゃん、音が聞こえないかい?)

オルスにそう言われ、私は歩みを止めて耳を澄ます
………確かに、何かを漁るような音が聞こえる

私はゆっくりと音のする方向へと歩みを進める

そして、私は見た
見てしまった



アンノウンの血肉を喰らう、人間の姿を



翡翠「ヒッ…!」

あまりに歪な光景に後ずさる
しかし、直ぐに冷静になる

アレは人間ではない

よくよく見ると肌の色が青すぎるし、体がやけに刺々しい
それに、私(翡翠の騎士)と同じくらいの背格好だから2m30cmほどの大男という事になる
こんな人間、普通は居ない

多分、アンノウンなんだろう
今まで見たことの無い、人型のアンノウン

幸いというべきか、あちらは私に気付いていない

さて…どうするか
ちょっと卑怯だけど、不意打ちで仕留めるとしよう

そう考えて、ハルバードを握る手に力を込める



ハルバードを振り被ったその瞬間

「待っていたぞ」

低い男の声だった
どうやら気配には気づいていたらしい

アンノウンはそう言ってから振り返る

その口元には真っ赤な血が滴っている

アンノウン「我を喰らいに来たか。翡翠の騎士よ」

アンノウン「我も随分と喰ろうたものだ。おかげで、こんなにも姿を変えたぞ」

珍しいアンノウンだった
こうして対話から入ってくるタイプのアンノウンとは、一度も会ったことが無い
…言ってることの意味は何も解らないけど

私も何か言おうか……


会話安価
安価↓1

お前は何だ、何者だ


>>848採用


翡翠「お前は何だ、何者だ」

今まで見てきたアンノウンと明らかに違うその雰囲気
こう聞かずにはいられなかった

アンノウン「クハッ!ハハハハハハハ!!!」

大きく口をひん曲げて、空気を吐き出すように笑う
笑う、笑うなんて感情があるのかこのアンノウンには

アンノウン「可笑しなことを言う。我とは何ぞや?とは、何ぞや?」

アンノウン「ハハハッ!それは我の名を問うておるのか?それとも、我の存在する意味を問うておるのか?」

翡翠「…随分哲学的な事を言うんだね。アンノウンの癖にやけに知性がある」

アンノウン「ハハハハッ!そうだろうとも、我は人故な。いや…人の成れの果てというべきか……」

目の前のアンノウンは、何を愁いているのか目を伏せる
それは悲しげだと形容できるだろう

このアンノウンは妙に情緒を感じさせる
しかし、人?その成れの果て?
さっぱり意味が分からない

今までの欲望の獣とは全く別物の存在だ

果たしてアンノウンであるかどうかさえ疑わしくなってくる


アンノウン「我が何なのか…か……回答があるとすれば、我は喰らう獣」

アンノウン「アンノウンを喰らうアンノウンよ」

翡翠「アンノウンを喰らうアンノウン…?」

確かに、アンノウンを食べていたけども
どういう事だろうか?その行動に、どれほどの意味があるんだ?

アンノウン「汝もそうであろう?」

翡翠「は?何言ってるの、私は食べないよ」

アンノウン「可笑しなことを言う」

笑い交じりに愉快そうに口を歪める
私は非常に不愉快だった


アンノウン「ほぅ…怒るか。それが汝の果たすべき望みか?」

翡翠「さっきから意味の分からない事ばっかり…!」

このアンノウンは何をしているというんだろうか
私の事を旧知の仲のように話しかけてくるし
本当にコイツは何を知っているというんだ

しかし、アンノウンではあるらしい

ともなれば、やることは一つしかないよね

アンノウンを喰らうアンノウンか

これが本当なら、もしかすると、悪いアンノウンではないのかな?
…どうする?



1、対話を試みる
2、アンノウン倒すべし

安価↓1


>>853採用:1



なんと言おうか?
安価↓1

なぜあなたはアンノウンを喰らうの


>>855採用


翡翠「なぜアナタはアンノウンを喰らうの」

アンノウン「その為に生まれたのだろう?汝は妙な事に疑問を持つのだな」

翡翠「私が知ってる前提で話すのは止めてよ。知らないから聞いてるんだし」

アンノウン「……?まあよいか、我にはどうでもいいことだ。我はもう問答は飽いたぞ」

アンノウン「槍を取れ。死合おうぞ」

翡翠「待って!これだけ聞かせて!!アナタは魔法少女の敵なの!?」

アンノウン「下らん事を言う。奴らが我らの敵なのであろう」

翡翠「つまり…アナタは私の敵なの?」

アンノウン「応ともさ。言うたであろう、我はアンノウンを喰らう獣ぞ!!」

翡翠「ッッ!!!」

鋭い蹴りが飛んでくる
反応が遅れた

この翡翠の騎士の眼でも追いきれないほどのスピードだった

何とか腕で防いだが、かなりの衝撃が全身を伝う


翡翠「げほっげほっ…!くっ…結局…対話は無意味なんだね」

翡翠「でも、ちょっと安心した…」

翡翠「お前が魔法少女の敵だと言うのなら、やることは決まってる」

私はハルバードを構え直し、刃を向ける

翡翠「お前を倒して、他の魔法少女の救援に行く」

アンノウン「クハハハッ!そうだ、それでいい!!」

アンノウン「所詮同じ穴の狢よ。我らの喉を潤すのは、刃向かう敵の血のみ!!」

アンノウン「存分に死合おう!!その先に答えがあるッ!!」

笑う
アンノウンはただひたすらに笑う

何が楽しいのかも理解できない
が、理解する必要も無い

倒すべき敵だ

いつものように、この槍斧を振るうだけだ


ダン!!

と、音をたてて地面を踏みしめる
アンノウンは深く腰を落とし、手を前に向けて構えのような形をとる
いや、構えなんだろう。拳法のような構えだ

警戒し、私は刃を向けてにじり寄る

追い風だけが、目の前のアンノウンの髪を揺らす

アンノウン「…ハッ!!」

翡翠「ッ!!」

掛け声が聞こえたと思った瞬間には、目の前に居た
予想以上に速い

眼前に迫る拳を、寸でのところで躱す

拳の風圧が、背中を押す追い風を吹き飛ばす


アンノウン「フッ…!」

短い呼吸と共に、膝が跳ねあがってくる
しかし、それは見えている

タイミングを合わせ、一歩大きく引きながらハルバードの石突きを鳩尾に向けて跳ね上げる

アンノウン「ほう…!」

完璧なタイミングだと思われたカウンターは、両手で包み込むように受け止められる
膝が上がっている窮屈な体勢のまま、これを受け止められるのはアンノウン故か

私は後ろに飛んで一度距離をとる
近距離は危険だと、判断した

地面に着地する瞬間、もう目の前までアンノウンは迫っていた

近距離戦闘を生かすためのこの速さなのだろう
しかし、それにわざわざ乗ってやるほど酔狂ではない

翡翠「風よッ!!」

ハルバードに力を送り、竜巻を作り出す
周囲のあらゆるものを吹き飛ばす突風だ

流石のアンノウンも進行できずに地面に足を食い込ませて耐えている


アンノウン「成程な…!それが汝の力か!!」

翡翠「このまま行くよッ!!」

吹き荒れる暴風のままにハルバードを横薙ぎに振るう
目の前にある建物ごと激しい破壊音を立てて薙ぎ払う

アンノウン「ぐおおおおおおおおッ!?」

体を風に刻まれながら、激しくきりもみ回転し宙に浮く
しかし、地面に叩きつけられることは無く、四足で地面に跡を作りながら着地をした

アンノウン「クハッ!凄まじいな!これが騎士の力か!!」

翡翠「押し切らせてもらうよ!!」

風を継続させたまま、一歩踏み出す
地面にクレーターを作るほどの脚力で前進し、一足跳びでアンノウンに真上に飛ぶ

翡翠「コイツで終わり!!!」

背中まで振りかぶり、そのまま渾身の力を持って振り下ろす
激しい追い風が速度を上げ、更に相手の体勢を整う暇を与えない


振り下ろされたハルバードは、爆発のような風の塊を生み出し
やがて収縮した

周囲の建物が軋みをあげて倒壊していくほどの風力

だが、アンノウンは立っていた
肩に三日月刃を食い込ませながらも、柄を掴み、私の一撃を止めたのだ

アンノウン「…これは我も本気を出さねばなるまいな…」

翡翠「戯言を――――!?」

瞬間
体が宙に浮く

強烈な苦しみと共に、背中に何かが次々とぶち当たり破壊していく

翡翠「ガハッ……!」

服飾店だったであろう店の中身をグチャグチャにし、私の体は漸く地面に倒れることができた
どれくらいの距離を飛んだだろうか?

頭がグラグラする

揺れる視界の先で、深く腰を落として拳を突き出すアンノウンの姿が見えた


殴られたのか?
一切反応できなかった

その上、この破壊力だ

鎧の胸の辺りはひび割れながら凹み、拳の跡がついている

ハルバードを杖代わりに、立ち上がる
いくら痛みが無いとはいえ、バッタンバッタン体を打ち付ける感覚には、流石に酔いのような頭痛を感じる

アンノウン「ほう、心臓を正確に打ち抜いたつもりだが。まだ立ち上がるか」

アンノウン「我の拳を受けてなお立ち上がった豪の者は、汝が初めてだぞ」

翡翠「ゲホッ…ゴホッ……はぁ……中々…ッ利く…」

これがアイツの本気か
なるほど、なるほど

凄い
これは強いな

『面白い』じゃないか!!

翡翠「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

体を奮い立たせるように、私は叫んだ
心の内に燻る感情のままに


翡翠「風よ!!」

嵐と共に前進する
周囲の被害は度外視だ
ごめんね戦姫さん!!

心の中で謝りながら突進する

アンノウン「受けて立つぞォ!!!」

アンノウンもまた叫ぶ
腰を深く落としたか前から一歩も動かない
鉤爪のような足の先と踵を地面に食い込ませ、なんとかその場で立っている

脇を閉め、強く柄を握り込む

止まることを一切考慮しない倒れるような全力疾走
破壊の嵐と共に駆ける、突進による刺突

翡翠「貫けッ――――!!!」

待ち構えるアンノウンに向かい、一直線に飛んでいく


アンノウン「…ハァッ!!!」

ダン!!!

という力強い震脚
その軸足に全体重を乗せた蹴りが飛んでくる

破壊の嵐は拒絶するようにアンノウンの肌を切り裂いていく
しかし、それでも蹴りは止まらない

爆発的な風の波を突破し、鋭い蹴りはハルバードを握る私の手を捕えた

メキメキメキメキ

嫌な音と共に、嫌な感覚が駆け巡る
気付いたときには体はグチャグチャに回転していた

真横に蹴り飛ばされたのだ

私の全力の突進を、真っ向から打ち破ったのだ


このアンノウンは姿や、態度だけではない
その強さすら今までのアンノウンとはケタ違いだ

ふと、戦姫の言葉を思い出す

新たな世代のアンノウン
今までとは比べ物にならない力を持った血肉を喰らうアンノウン
貴女にとって最悪の日

なるほど、それは今日という日を差していたのか

私はよたよたと何とか立ち上がる
その時、気が付く

左手だ
左の手首があらぬ方向にねじ曲がっている

左手首は完全に破壊され、まだくっついているのが不思議なほどだ
指を動かそうとしてみるが、壊れた玩具のようにプルプルと震えるだけだ

しかし、痛みはない

不思議な体だ
これだけ破壊されてもなお、痛みはない

だからだろうか?
こんな逆境だと言うのに、闘志だけは止めどなく溢れ続ける


アンノウン「ほう…まだ立つか。面白い…面白いぞ!!」

アンノウン「我は『闘争』を求むる獣」

アンノウン「もっとだ!もっと死合おうぞ!!!」

アンノウンが何事か叫んでいる
上手く聞き取れない
耳もイカレタのだろうか?

あれだけ全身を打てば当然か

妙に納得しながら、私は体に力を込める

左手が潰されて、上手くハルバードは振るえない
アイツに大きな手傷を与えた、大上段の大振りはもう出来ない

だが、私にはまだ右腕がある

深く息を吸い込みながら、地面を強く踏みしめる
ハルバードの柄の真ん中あたりを握り、息を吐きながら標的を見据えた


……こいつを外せば、もうこれ以上の攻撃は残っていない
ならば…ならばこそ、次の事なんて考えない!!

翡翠「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

全身から振り絞るように叫ぶ

一歩
呼吸のリズムを整える

二歩
全身に充実した力がこもる

三歩
コンクリートの大地を叩き割るほどに踏切った

全身が悲鳴を上げて軋む
全ての全力が、この私の右肩に向けて注がれた

投擲

強さの殆どをハルバードに依存した私にとって、最後の手段でもあり
最大の攻撃

打ち滅ぼさんと放たれた槍は、音をも超えた突風となって標的へと一直線に飛んでいく


あるいは、それは避けられたのかもしれない
あるいは、風の力が避けることを許さなかったのか

どちらにせよ、同じ事

アンノウンは投擲されたそれを、仁王立ちで待ち構えていたのだ

アンノウン「フッ!ウゥッ!!」

胸に三角刃が突き刺さる直前
その手は柄を掴んだ

しかし、勢いは殺し切れず、刃は徐々に肉に突き刺さる

アンノウン「グッ…!」

遅れてきた追い風が、ギリギリと槍の背中を押す
柄を握るアンノウンの掌はズルズルに剥けて血を流す
胸には三角刃が半分も突き刺さっている

アンノウン「グゥッ…オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

それでも…それでも、アンノウンは吠えた
血を吐き、痛みをこらえながら

真っ正面から投擲を受け、そして…受け切った


風が止む

アンノウンは血を口元から流しながらも、ニヤリと笑った

アンノウン「素晴らしい…これが、汝の全力か…!」

アンノウン「そして、これが我の全力かッ!!!」

アンノウン「なんと素晴らしい!!これほどまでに、我は強くなっていたのか…!」

胸に突き刺さる刃を引き抜きながら、噛みしめるようにそう言った

深く腰を落とし、深く息を吸う
そして―――

一歩

二歩

三歩

アンノウン「返すぞ―――!!」

私と全く同じモーションで放たれたハルバードは、見事に私の体を串刺しにし、壁に磔にした


脱力する
全身に力が入らない

強い
これは強い

ここまで完璧に負けてしまってはどうしようもない
取れる攻撃手段を取って、全てに全力を尽くしてのこの結果だった

笑えてくるな

翡翠「ははっ……はははははは……」

自然と口が動いていた

全身が脱力して、指一本動かせる気がしないと思っていた矢先のこれだ
不思議なものだ

ああ、不思議だ

こんなにも敗北感に溢れているのに
この胸から沸き起こる感情はなんだ?


不思議だ

どうしてこんなにも、心は奮い立つ

翡翠「ははっ……ははははははははは…!」

ああ、笑いが止まらない
嗚呼…顎が…顎が痛む…!!

翡翠「くふっ…くはっ…!…くははははははははははははは!!!」

溢れる
溢れる溢れる
感情が溢れて止まらない

そうか…ずっとこれを探していたんだね

心のどこか、靄を作っていた
見ないふりをしていた
見えないふりをしていた

何度戦いを経験しても、何体アンノウンを倒そうと
あの時、スパーダと相対した時のような胸のときめきは感じなかった

それが、今はどうだ?



溢れて止まらない――――――!!!!



翡翠「くはっ!はーっはっはっはっは!!」

気持ちがいい
そうか、これが…これこそが『喜び』!!

嗚呼…痛む…顎だけが痛んで止まない……

アンノウン「これだけ打ちのめされてなお笑うか、騎士よ。クハッ…!いいぞ!とてもいい!!」

アンノウンが何事かをイイながら近づいてくる

聞こえないな
聞こえないよ
ハッキリと言って欲しいな

笑い声で聞こえないよ

ガンガンと笑い声が木霊する
頭の中で反響する


同じ穴の狢とはよく言ったものだ

『闘争』を求むる獣

成程、言い得て妙だ
この内から溢るる感情を言葉にするなら、間違いなく本能

己の内に眠っていた、獣の本能だ

翡翠「アハハハハハハハハハハハハ!!!!」

笑う、笑う
叫び散らすように
吠えたてるように


笑うほどに/
  痛みを感じるほどに

力が増してくる/
          壊れていくのを感じる

内なる獣が叫びたてる/
               内なる声が私を呼ぶ




1、『喜び』を賛美せよと
2、僕が傍に居るよと

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>876採用:2



ご飯を食べるのでちょっと休憩

21:10頃再開予定


   『僕が傍に居るよ』


声が聞こえた
瞬間、スッと溢れていた感情が止まる

頭が冴えていく
心の鼓動は落ち着きを取り戻し、冷静に今の私を把握する

なんだ?何が起こってたんだ?
おかしい…さっきの私は明らかに狂っていた

オルス(翡翠ちゃん!聞こえる?)

翡翠(オルス…聞こえてるよ)

オルス(はぁ…良かった……漸く答えてくれたね…)

オルス(ずっと声をかけていたんだよ)

翡翠(そうだったんだ……ありがとう、オルスのおかげで帰って来れたよ)

実際、あのままオルスの声が聞えなかったらどうなっていた事か
想像するだけで身震いする


冷静に状況を把握する
どうにも、最悪と形容するに相応しい

此方は磔、満身創痍
対する彼方はまだまだフルパワーで戦えると言ったご様子

最大の武器であるハルバードを使ってこれである

圧倒的に、力が足りない
小刻みに震える右腕が胸に突き刺さるハルバードを引き抜こうとする
刃がまるっきり壁に埋まり、びくともしない

この鎧でもまだ、力が足りない

それでも何とかハルバードを引き抜くことに成功する
貫通している体からも引き抜いて、漸く胸のつっかえが取れたような気分になる

疲労か、はたまた破壊ゆえか
イマイチ体に力が入らない
ハルバードを持つのもやっとだ

フラフラと立ち上がる間にも、ゆっくりと目の前のアンノウンは迫ってきている


さあどうする
考えなくては

翡翠(この翡翠の騎士の力でも、まだ及ばないなんて…)

オルス(ハルバードの力でも通じなかった相手だ、この鎧の身体能力では到底相手になりそうもないよ)

翡翠(分かってる…分かってるけど……)

翡翠(もう私にこれ以上…何も無いよ……)

オルス(………)

そう、これが現実だ
どうしようもない力の差がそこにあるのだ

覆せない力量差が目の前に存在している

そうと知れば、狂っていた方がまだマシだったか
なんて、流石にそれは無いか

翡翠(さぁて、どうする?オルス)

力も無い
立ち上がるのさえやっとだ

だけど、幸い闘志だけはまだ曇っていない


オルス(……しょうがないか…)

オルス(翡翠ちゃん。僕に秘策がある)

翡翠(何?何でもいいよ、言ってみて)

オルス(………もう一度笑ってくれないか?)

翡翠(え?ど、どういう事?)

オルス(ごめん、さっきの事もあるから…怖いよね)

オルス(でも、僕を信じて欲しい)

オルス(それしか、逆転の一手は無いんだ)

オルス(………信じてくれないかい?)

翡翠(……)

先ほどまでの狂った自分が思い出される
オルスの声さえ聞こえなくなるような、恐ろしい感情の奔流

『喜び』

だと心の内が叫んでいたあの感情
笑う事で発散されるあの感情を、もう一度繰り返してもいいのかな?
また、オルスの声が聞えなくなって…もう二度と聞こえなくなったりしたら………


どうする?


発言、または行動安価
安価↓1

うん、わかった。信じるよオルス


>>885採用


翡翠(……うん、わかった。信じるよオルス)

…オルスが、信じて欲しいと言ったんだ
私が信じてあげなくて、誰が信じてあげる!

大きく息を吸う
急に、不安がやってくる
心の隙間に吹き付けるように、最悪の光景ばかり浮かぶ

例えばそう……私が目の前のアンノウンと何ら変わらない、闘争を求むる獣になってしまったら

……いや、違う
怖いさ
怖いに決まってるよ



だから笑うんじゃないか!!


ヒーローってそういうモノだ
逆境にあってこそ、輝かしく笑うべきだ

絶望を振り払う、勇気の笑顔だ

翡翠「はーっはっはっはっは!!!!」

空気を吐き出すように、笑い声を絞り出す
カッスカスの声になるまで笑い声を絞り出す

ドクン!!

心臓が高鳴る
絶え間なく、胸の真ん中が鎧を内側から暴れて打ち震える

翡翠「い…痛いっ!!」

顎が、顎が割れるように痛む
嫌な感覚がする

気持ちの悪い、嫌な感覚が私を攫おうとする

その度にオルスの声が私を引っ張る
うん、大丈夫だよ

私はここに居る。オルスの傍に居るよ


メキメキメキメキ!!

ついさっき聞いたばかりの嫌な音が、体中から鳴っている
無理やり体に芯を淹れられているような、不愉快な感覚が全身を串刺しにしている
そして、それ以上に顎だけが異常なまでに痛む

幼い頃になった虫歯なんて比じゃないくらい痛い

それでも耐える
耐えて耐えて耐えて

そして、止んだ

ふと、痛む顎を押さえていた両手を見る
そこにはちゃんと両手が揃っていた

正常だ
正常だからこそ、おかしいのだ

私の左手は砕けて使い物にならなくなっていたはずだ
それが元に戻っている

それだけじゃない、人の指を包むような丸い流線型の手甲が、刺々しい形に変化している
それはまるで、猛獣の爪のような、鋭い鋭い鉤爪のようになっていた


不自然な姿がチラつく
砕けた鏡が隣にあった

そこで、改めて私の姿を見て驚愕した

翡翠「あ…あ、あ………」



翡翠「顎が伸びてる!?」



恐らく、今後二度と使うようなことの無い言葉を、私はハッキリと己に突っ込んだ
いやしかし、それ以上形容する方法が無いってくらいに顎が伸びている

西洋の騎士と呼ぶようなフルプレートの甲冑姿は大きく変化していた

翡翠色の美しい光沢を放つ、陶器のような装甲はそのままなのだが
その両手は獲物を引き裂かんばかりに刺々しい爪となり
その背中には、銀灰色のモッサモサの毛が生えている
蹄のようだった両足も、地面に突き立てられるほどの鋭い爪が食い込んでいる

そして極めつけは顔だ

ひたすら武骨だった兜には、犬の口を想わせる恐ろしい大顎
そして、これまた犬のような耳が生えていた
正確に言えば、犬の耳を模したような形に兜が変化していた
そして、その目は私の者とは思えないほど、真っ赤に爛々と揺らめいている


翡翠「あ、顎…顎が伸びたよオルス!?」

オルス(お、落ち着いて翡翠ちゃん。大丈夫だよ)

翡翠「いや、だって…こういう強化イベントは新武器とかじゃない!?顎が伸びたんだよ!?」

オルス(べ、別にいいじゃない顎が伸びたって!狼みたいでカッコイイよ!!)

翡翠「狼…ああ…狼か」

言われてみればしっくりくる
鏡に映る自分の姿も、若干猫背気味だし

ハッとして胸を触る

穴は塞がっている
どうやらこの姿に変化するタイミングで、全ての負傷は回復したようだ


アンノウン「ほう、汝…まだ余力があったか。良いぞ、我も昂って来た!」

アンノウンは餌を見つけた飼い犬のように、嬉しそうに此方に駆けよってくる

翡翠「この戦闘狂め……受けて立つよ」

翡翠「オルス、これが秘策って事は…勝ち目はあるかな?」

オルス(どうだろう?正直賭けだった)

オルス(奇跡的にこの姿のままで、翡翠ちゃんは自分を保っている)

オルス(そんな賭けに買ったんだ。どうにかできそうなじゃいかな?)

翡翠「ふふっ…肝心なところで運頼みなんだから」

翡翠「でも、分かるよ」

力を感じる
全身に痒みを覚えるほど、この体を堪能したくてたまらないと心が叫んでる

溢れんばかりの力が、この体にはある


翡翠「第2ラウンドだ。ここでケリをつけよう」


私は向かい来るアンノウンを、真っ直ぐに見据えた


と、言う所で今日の更新はここまでです

第2形態はヒーローものの嗜み



第2形態の力と特徴は一応考えているのですが、安価で特徴を決めてもいいかなと思うんですが、どうしましょうか?
というわけで、それを安価で決めたいと思います


1、安価で特徴を決める
2、>>1が既に考えていた設定を使う

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

乙です
安価は2で


>>896採用:2



では、第2形態の能力は私が考えていた設定まんまで進めます

今日の所はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました


そろそろ再開です


さて、この新しくなった体はどんなことができるだろうか
私はハルバードを両手で握り直す

……?

妙な感覚を覚え、片手を離す
…妙に持ちづらい、爪の所為かな?

少し短めに持って、左手を自由にする
その持ち方が、中々しっくり来た
これも新しい姿の影響かもしれない

そうこうしている内に、もうアンノウンは目前まで迫っていた

アンノウン「フンッ…!!」

強烈な震脚
これはもう見た、これは予備動作だ
私のあの突進を真っ向から蹴り破った、あの蹴りの呼び動作

回避?迎撃?
決断を迫られる
その時……

風を感じた


音が鋭敏に感じ取れる
臭いを感じる
見えていない筈なのに、空気の流れが手に取るように理解できる

その感覚をつかみ取った瞬間

風景が歪み、うねる

目の前のアンノウンの足が、空気を切り裂き進んでいる
そこには風が生まれていて、間違いなく空気は揺れている

本来ならコンマ一秒にも満たない超高速

その筈なのに、まるでスローモーションのように目の前の動作がつかみ取れる
私はそれを目で追っていた

私の反応速度を確実に超えていたはずの蹴り
それを、私は完全に把握し、剰えそれよりも早く動き、紙一重で回避する

蹴りは眼前を通過する

完全に避けきったと確信した時、映像は本来の速度に戻った
蹴りの後を追うように、風圧が全身を襲う


アンノウン「ほう!避けるか、ならば…!」

蹴りを放って体が捻られているまま、軸となっていた足が地を蹴る
回転の力そのままに二連撃目の蹴りだ

私は、そう来ることを『事前に知覚していた』

風のうねりが
空気の揺れが
それを教えてくれていた

『危機察知能力』

風を感じ取る感覚の強化と共に、その能力が格段に上昇していた

二撃目の蹴りも問題なく紙一重で回避する
当たる気がしない

それに、まだ見えている


蹴りを外し、軸を失った体は宙に浮いたままだ
その体勢のままでは、満足な防御も出来まい

翡翠「フッ……!!」

短く息を吐きながら、見よう見まねの蹴りを放つ
不思議だ、鎧の肉体の筈なのに、体操の選手のようにしなやかに体が撓る

脇腹に蹴りが突き刺さる
そして…

パァン!!!

という強烈な空気の破裂音が遅れてやってくるほどの高速の蹴り
アンノウンの体は私がされた様に、きりもみ回転しながら商店街の建物にぶち当たっている

ゾワゾワという感覚が全身を駆け巡る
間違いない、身体面が格段に向上している

翡翠「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」

意思を乗り越え、月に向かって吠え立てる
全身が猛っている、足りないと

まだまだこの渇きは満たされやしないと!!


地面を踏みしめ、タメを作る
そして……一歩を踏み出す

体が軽い

5m以上吹き飛んだアンノウンにたった一歩で詰め寄る
今までの騎士の走りは周囲を破壊しながら進む、竜巻のような突進だった
だが、今の私の走りは殆ど無音だった

そよ風のような嫋やかさだ

倒れ伏すアンノウンの背中に向けて爪を振り下ろす
アンノウンは寸でのところで飛び上がり、回避する
爪はアンノウンの長い髪を引き抜きながら、コンクリートの床をバターの様に溶かし砕く

前転の要領でそのまま一回転し左足の爪を振り下ろす
アンノウンは両腕で胸のあたりを守りながら、更に一歩後退して避ける
爪の切っ先は腕の皮をそぎ落としながら、地面に突き刺さる
がっちりと大地を掴んだ足に力を込め、前へと前進

アンノウンの後ろには建物の壁
完全に追いこんだ


アンノウン「先ほどまでとは段違いだな…!?」

さらに下がろうとして、アンノウンの背に壁が当たる
どうやら避けることに必死で追い詰められていたことにすら気づいていなかったらしい

勢いのままにハルバードを突き出す
ハルバードの切っ先からは旋回する風が生まれ、突き穿たんと猛進する

アンノウン「クッ…!」

アンノウンはその巨体を縮め小さく丸まる
そのまま地面を転がり、脇の下をくぐって何とか回避する

そして即座に反転

今度壁に追い詰められたのは私
拳による突きが私の背中に向けて放たれようとしている

そう…そう来ると既に読んでいた

ハルバードが壁に当たると同時に迷いなく手放す
そして跳躍

真上ではない
壁に向かってだ

軽やかな動きで壁に貼りつく
この姿になってから、あらゆる動作に重みを感じさせない


…1

そう、心の中で数えたはずだ
壁に貼りついて回避する
それは相手も読めて問題ない

今までの私の連撃から、私は流れるように攻撃を仕掛けてくるとそう読んでいたはずだ
その壁を蹴り台にして飛びかかってくると

そう、それで間違っていない
1秒後、普通に考えてその瞬間にカウンターの蹴りを放つのは間違っていない

そう、普通であれば

アンノウン「ッ!!?」

蹴りは空を切る
アンノウンの表情は完全に虚をつかれたと語っていた

私は壁に貼りついていた
文字通りに

壁に爪を食い込ませ、完全に体を固定していたのだ


何も物体を捕えていない渾身の蹴りは空回りし、上体をぶれさせる
コンマ一秒のタメが、その隙を生んだ

その瞬間を決して逃さない

壁から体を外す
体は重力に従い自由落下する
その間際、壁に突き刺していたハルバードを引き抜きながら振り上げた

ふらつきながらアンノウンは体を捻って避けようとするが、この距離でこのリーチを避けきれるわけも無い
斧のような半月刃がアンノウンの片腕を切り飛ばす

アンノウン「ぐぅ…!」

苦悶の表情
されど、悲鳴はあげない

アンノウンは腕を押さえながら後退する

完全に形勢は逆転だ


アンノウン「クハッ…クハハハハハハハ!!」

アンノウン「これは凄い…流石は騎士か…!強いな…!」

アンノウンはそんな状況でも変わらずに笑う
怯えも震えも見せない

翡翠「そんな状態でも、まだ笑えるんだね」

アンノウン「くはははは…これが笑わずにいられるか!」

アンノウン「我はこのために生まれたのだ!!『闘争』に生き!闘争の果てに沈む!それだけが望みよ!!」

翡翠「じゃあ…お望み通り終わらせてあげる!!」

ハルバードを振り上げ、足を踏み出す

アンノウン「奥の手とはな…こういう時にこそ使うモノよ!!」

アンノウン「全種開放…!!」

切り離され、地面に落ちていた片腕が弾け飛ぶ
その腕の大きさに問うてい納まり切りそうにも無い肉の枝が、無数の網のように押し寄せる


翡翠「なっ…!?」

ノーモーションによる炸裂
完全に不意を打たれた

危機察知能力が格段に上昇しているからこそ、その予兆を感じさせなかったものに対して無警戒だった

足が止まる
集中し、軌道を読む

が、あまりにも数が多すぎる
これでは壁が迫っているのと何ら変わりない

判断が遅れる
背後は壁、全面も肉の壁

吹き飛ばすか?切り開くか?はたまた上か?

私は……


行動安価
安価↓1

切り開く


>>911採用

切り開く!

ハルバードを振り肉の壁を切り裂く
風の衝撃波を飛ばし、強引に前へと道を切り開いた
肉の網をかき分け何とかその先にあるモノを眼にした

……いや、正確に言うと何も無かったのか

アンノウン「一手…我の方が上だ」

声は真上からした
その方向に振り向いたときにはもう遅い

巨体にのしかかられ、馬乗りの状態にされる

翡翠「ぐっ!ううぅ!!うっ!!」

胸のあたりに座られ、足は腕を絡め取る様に極めている
想像以上に重く、必死で振り払おうにも全く体の身動きが出来ない


暴れようともがくが、呻き声が漏れるだけで体が動くに至らない

アンノウン「無駄だ。この体勢で無理に動くと、壊れるのは汝の体ぞ」

アンノウン「…これが汝の奥の手だったか。完全にやられたな、見くびっていた」

アンノウン「速さだけなら誰にも負けんと自負していたが、自惚れだったようだ。我の方が劣っていた」

アンノウン「だが、最後の知恵比べ。奥の手の見せ所は、我の勝ちだったようだな」

ニンマリと口の端を歪める
心の底からしてやったりと笑っている

アンノウン「ふっ…!」

切り開かれた腕の切断面が奇怪に蠢く
蠢いていた肉は激しく絡み合い、やがて腕の形をとる
真っ赤な剥き出しの肉の腕が完成していた

アンノウン「これが我の能力よ。『肉の芽』と我は呼んでいる」

アンノウン「体内で作り出す肉の芽は、自由自在に膨張し、強靭な繊維の塊となるのだ」

アンノウン「生半可な刃ではビクともせぬのだがな、その刃の鋭さには恐れ入った」

つらつらと己の能力を語りだす
剰え、私を称賛する

私はその姿に激しい怒りを覚えた


翡翠「まるで、もう勝ったかのような言い草だね」

アンノウン「ああ、もう勝っている。次の一撃で終わる」

真上に突き上げた真っ赤な肉の塊の腕が激しく蠢きだす
中から中から肉の繊維が溢れだし、絡み合い、形をとっていく

それは成人男性の足の太さほどだった腕が、一回り、二回りと巨大化していく
その質量を、その強度を、より強固なものに仕上げていく

アンノウン「どんな気分だ、自分の目の前で、何もできず、死の鉄槌が編み上がっていく様を見るのは」

どんどんどんどん膨れ上がる
膨張する

肉の糸は縋りつくように上へ上へとせり上がる

そして、その肉の蠢きが止む
点をも貫かんばかりに掲げられた巨碗が完成していた

アンノウン「…全種収縮」

音をたて、肉の塊が折り重なっていく
折りたたまれ、捻じれ、その質量はそのままに、小さく小さく収縮していく

やがて、巨碗は収縮し、一本の腕が完成していた


アンノウン「『死王鉄槌・閻魔天』」

アンノウン「この槌が、汝の全てを塵へと返そう」

圧倒的な質量の収縮体
それが、このアンノウンの最大の攻撃なのだろう

これがあの速度で振り下ろされれば、今の私の体は完全にバラバラに砕け散るだろう

ドクンドクン

心臓が跳ねている
恐怖だろうか?いや違う、高揚だ

不思議だ、これほどの絶望を前にして、この体はまだ生きようと吠えたてている

しかし、何が出来る?
足は動くが敵に届かない
腕は完全に極められ、もがくほどに締め付けられる

ならば、私には何が残っている?


アンノウン「汝の罪を聞こう」

アンノウン「汝は何を望み、この現世に現れた」

アンノウン「汝の罪、汝の生、汝の肉」

アンノウン「その全てを、我が持って行こうぞ」

翡翠「罪…?」

私の罪?
意味が分からない
その言葉の意味も、こうして私に問いかける意味も

沸々と胸の奥で何かが煮えたぎっている

ああ…まだだ…まだ足りない!

まだ私は吠え足りないよ!!!

腕も足も、体も完全に拘束されている
動くのは、この口くらいだ

私は………!!


行動安価
安価↓1


行動、発言安価に修正です

安価↓1

全ての神々を殺戮するため


>>918採用
※カルマ値が急上昇


翡翠「私の罪だって!?そんなもの知ったことじゃない!!」

翡翠「私の罪?私の命?私の血肉?」

翡翠「持って行けるのなら!持っていって見せろ!!!」


                     お前たち
翡翠「この世の全ての!私を嘲笑う『神』を殺し尽すことが私の望みだ!!!」



吠え、猛る
この言葉はきっと『私』じゃない

アンノウン「……傲慢なりし、『現世を喰らう飢狼』よ」

アンノウン「…ならばこそ、良し!」

振り下ろされる死の鉄槌
一切の慈悲も無く
寸分の同情も無く

我が身へと死の概念が形となった槌が振り下ろされる


体砕ける音がする
関係ない、くれてやる
腕も何も、持って行くといい

だが、勝利だけは私が持って行く!

完全に極められた状態で上体を起こす
当然ながら腕は絞め上がり、肩が完全に砕ける

だが、これで首が自由に動かせる

吠える
我武者羅に吠え、その大顎を開いた

そして、振り下ろされんとする腕に喰らいついた

バキバキバキバキ!!!

破壊音が鳴り響く
破壊されたのは………


コンマ判定
3以上で………

直下コンマ


コンマ判定:6  


アンノウン「…クハッ…!これはこれは…やられたな…」

死王の槌は粉々に砕かれ、鈍重な音をたてて地面へとその破片を散らしていく
私の大顎が、絶望の全てを打ち砕いた

翡翠「グルゥオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

吠え散らしながらアンノウンの首に喰らいつく
ミシミシミシ!!と音をたて、核を砕かんと締め上げる

対するアンノウンは、一切抵抗を見せない

ただ悲し気に、喉を震わせる

アンノウン「嗚呼…ここで潰えるか…我が業も……」

アンノウン「常世も…幽世も…現世も……最早どこにもない…」

アンノウン「なれば…我が帰るのは……母の腹か…それとも…汝の腹か…?」

アンノウン「…悲しき獣よ…憎悪を望むか?」

アンノウン「………帰ってこれなくなるぞ…我のようにな…」

牙と牙が噛み合い
その首を噛み千切ったことを確認した


血が噴き出す
肉が零れる

それは…それはなんと…甘美な光景だろうか

痛む

肉を掬いあげ、月明かりに照らす
てらてらと艶めかしく血が流れ続けている

頭が痛む

鼻腔内に芳醇な香りが流れ込む
そうだ、食べなくては
その為に殺したんだから

頭の中で何かが騒いでいる


私じゃない/僕じゃない


知ったことか
私は………


コンマ判定
7以下で………

直下コンマ


コンマ判定:3 賛美せよ


その血肉を飲み込んだ

ドクン!!

眼が冴えわたる
全身に力が漲ってくる

蘇る
意思が蘇ってくる

そうだ!これだ!!私はこれを求めていたんだ!!!

ああ、憎悪なんて馬鹿なことだ
私はただこの『喜び』を欲していた

屍に牙をたて貪り食う
犬の様に、飢えた狼の様に

漲る
昂る
行き渡る

快感が突き抜ける
恍惚とした快楽が我が身を打ち震わせる

嗚呼、賛美せよ
これこそが『喜び』なのだ

血肉を喰らい始めると、もう声はどこにも聞こえなかった


全ての肉を喰らい終える

翡翠?「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」

月に向かって遠吠えをする
全身にみなぎる悦びを表現するように

空っぽだった鎧の中身に、肉が編み上がる感覚がする
絡み合う肉の繊維が膨張し形を作りあげている

これが本来の『私』なんだろう

生まれるべくして生まれた、全てを喰らう飢狼
終わりを吠えたてる狼

フェンリル

それこそが『私』の名前


やがて、空から何かが飛来する

全ての光を飲むような黒で出来たドレス
まるでウエディングドレスかのような華やかで、目を奪われる妖しい出で立ち

その黒に映えるように、美しい金髪がたなびいている

金色の美しい瞳さえハッキリと見えた
月夜に映える、まるで物憂げなその印象は、きっと彼女の泣き黒子がそれを感じさせているのだろう

その姿を見て、自然と私は傅いた
王妃に忠誠をたてる騎士の様に、私は首を垂れる
                                
                                マザー
フェンリル「ああ…お待ちしていました…我らが主『星の涙』」

星の涙と呼ばれた乙女は、優しい手つきで私の頭を撫でる

星の涙「…ごめんね…巻き込んで…でも、もうどうしようもなくって…」

星の涙「行こう、翡翠」

フェンリル「勿論です…我らが希望」

飢狼は月夜に吠え立てる
美しい夜を擬人化したような乙女は、その目元に真っ黒な涙を湛えていた



BADEND


というわけで二度目のBADENDでございます

いやぁ、まさかあんな発言安価が来るとは思わなかったですね
勿論いい意味で

結果的に大変悪乗りしてしまいました
やっぱり悪落ちって楽しいネ!


次回はコンティニュー場所から再開します
ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


BADENDに突入しましたけど、そのまま続けてカルマルートでもよかったかもしれないとちょっと思った

そろそろ再開です


再開場所

1、>>917
2、>>931


安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

そんなことしたら死に戻りの方向とより酷い方向に持って行こうとする荒らしとの戦いになるに花京院の魂を賭ける


>>945採用:1


>>944
流石に冗談ですよ
カルマルートは一応考えていましたが、もうフラグ取り逃ししてます



では再開


アンノウン「汝の罪を聞こう」

アンノウン「汝は何を望み、この現世に現れた」

アンノウン「汝の罪、汝の生、汝の肉」

アンノウン「その全てを、我が持って行こうぞ」

翡翠「罪…?」

私の罪?
意味が分からない
その言葉の意味も、こうして私に問いかける意味も

沸々と胸の奥で何かが煮えたぎっている

ああ…まだだ…まだ足りない!

まだ私は吠え足りないよ!!!

腕も足も、体も完全に拘束されている
動くのは、この口くらいだ

私は………!!


発言、行動安価
安価↓1

私に罪があるとすればあの時妹を救えなかったこと
だからこそ私はここで[ピーーー]ない
妹の分まで生きるんだ


>>948採用


翡翠「私に…私に罪があるとすれば…」

思い起こされる記憶
何時しか目を背けていた記憶

翡翠「私に罪があるとするなら、あの時…妹を助けてあげられなかったこと…」

アンノウン「そうか、それが汝の罪か。良いぞ、我が持って行こう」

翡翠「その必要はない、これは私の物だから」

翡翠「だからこそ、私はここで死ねない!!」

翡翠「妹の分まで生きるんだ!!」

アンノウン「組み敷かれてなお吠えるか、『現世を喰らう飢狼』よ!」

アンノウン「ならば、この一撃!生き延びて見せよ!!」

振り下ろされる死の鉄槌
一切の慈悲も無く
寸分の同情も無く

我が身へと死の概念が形となった槌が振り下ろされる


生きる
生き延びて見せる

喰らいついてでも!!

翡翠「うおおおおおおおおおおお!!!」

吠える、口を開く
大顎の牙をむく

全力で首を伸ばす
ミシミシと体が悲痛な叫びをあげる
だが、痛みはない

ふり絞る
勇気を、全力を、全霊を持って吠えたてる

肩が破壊されていく
その事に恐怖は無い

私が一番怖いのは、ここで敗北する事だ!!

喰らいつく
死王の槌に、その牙を突き立てた……


アンノウン「…クハッ…!これはこれは…やられたな…」

死王の槌は粉々に砕かれ、鈍重な音をたてて地面へとその破片を散らしていく
私の大顎が、絶望の全てを打ち砕いた

アンノウン「それが本当の奥の手か…腕も、体も、武器を封じられて尚も突き立てる牙」

アンノウン「破壊の大顎…それが、汝の力か……」

私の上に馬乗りになっているアンノウンが脱力していくのを感じる
必殺の一撃を粉砕された敗北感からか、とにかくこれを好機と私は、何とか下敷きの状態から這い出した

ボロボロと崩れ落ちる己の腕を見ながら、アンノウンは笑っていた
挑発的で好戦的なあの笑い方ではなく、何かを憐れむような悲しげな笑い顔だった

アンノウン「くはっ……哀れよな…この槌、この腕は…何のために振るわれていた…」

アンノウン「罪を頂く…か……傲慢なりし、我が業よ…」

アンノウン「さぁ、トドメをさせ。我が肉体は汝に捧げられるがためにここにある」

アンノウン「持って行け、騎士よ。我が業、我が罪、我が肉体……終わらせてくれ……」

翡翠「……」

恐ろしいほど呆気なく、アンノウンは敗北を認めた
何処までも闘争を求めていた、猛る獣と同一の存在と思えないほど、その声は柔らかさを感じさせた

私は……


会話、行動安価
安価↓1

仲間になろう


>>952採用


翡翠「……トドメは刺さないよ」

アンノウン「何だと?」

怪訝な顔をして睨む
その表情には、怒りのようなモノが感じ取れた
古風な武人のような性格のこのアンノウンの事だ、介錯を拒否されたことに怒りを覚えているのだろう

翡翠「私…どうしても、アナタの事が敵だとは思えない」

翡翠「……ねえ、私達…魔法少女の仲間にならない?」

アンノウン「………!」

アンノウンは私の言葉に目を丸くする
そしてやがて、ニンマリと口の端をあげた

アンノウン「くはっ…!くはははははははは!!!」

アンノウン「ふふっ…ハハハハハハハハハッ!!」

笑う、大口を開けて愉快そうに笑い転げる


翡翠「そんなに、おかしい事かな?」

アンノウン「ははははっ!これが笑わずにいられるか!」

アンノウン「汝、気でも狂ったか?」

翡翠「……そうなのかも。でも、そんなに悪い事だと思わないよ」

翡翠「私、言ったんだ。魔法少女もアンノウンも、殆ど同一の存在なのかもしれないって」

翡翠「その行動が理性を持ち、正しさを実行できているのなら、アンノウンであっても魔法少女と何ら変わりはないと思う」

翡翠「アナタはアンノウンを喰らうアンノウンなんでしょ?それなら、私達は仲間になれると思う」

アンノウン「………」

アンノウンは再び面食らったように目を丸くする
だがやがて、合点が言った様に頷いた

アンノウン「何かが可笑しいと思っていた」

アンノウン「嫌に噛み合わぬと思うておったわ。成程、汝…よもや己が何なのか知らぬのではあるまいな?」

翡翠「…え?どういう事?」

アンノウン「ククッ……ハーッハッハッハッハ!!これは傑作だ!!」

アンノウン「まさか、本当に気が狂っているとはな!!」

アンノウンは再び笑う
涙を流して喉をからして笑い叫ぶ
私は、その姿にただ茫然と、言われた言葉の意味を考える事しか出来ない


やがて笑い声はピタリとやみ、アンノウンは真剣な顔で私を睨む

アンノウン「…いずれにせよ、もう遅い」

アンノウン「我は既に、この身に業を蓄えすぎた」

アンノウン「最早止まれぬよ」

そう言い放ち、冷ややかに笑う

アンノウン「そも、この身は汝に捧げられるために肥えた肉袋よ」

アンノウン「汝が喰らうほか、この身は終われん」

アンノウン「放っておけば、いずれ別の何者かの腹に蓄えられる定め」

アンノウン「されば、汝が喰らおうと、生かそうと、いずれ滅ぶ」

翡翠「そんな…!」

アンノウン「我を繋ぎ留めたる核はとうに砕かれておる。故に、こうして無駄な語らいしか出来ぬほど、力を失っておる」

アンノウン「汝が我を裁くのだ。『翡翠の騎士』いや『現世を喰らう飢狼』か?」

アンノウン「決めよ。汝がのみ、我の罪を裁ける」

翡翠「………」


私は………


行動、発言安価
安価↓1

のどかに二人で暮らしましょう


>>957採用


翡翠「戦えないって言うなら、戦わなくてもいいよ」

翡翠「でも…でも生きてればそれだけで…」

アンノウン「カッ…!下らぬ、汝は我が思うたよりも遥かに愚かであったか…」

アンノウン「我に帰るべき居場所などない!!」

アンノウン「腰を落ち着ける心すら持ちはしない!!」

アンノウン「我が身を犯す業を償い、贖う方法などありはしない!!」

アンノウン「幽世と現世が混ざり合ったこの世で、帰りつく居場所などありはしない!!」

アンノウン「されど、汝のみ…その理より外れし唯一絶対の存在だったのだぞ!!」

アンノウン「我に残った微かな理性を…想いを踏みにじるか……」

アンノウン「不抜けめが!…我の方も愚かであった。眼すらも濁り切ったか」

アンノウン「…下らぬ語らいであった」

そう言いながらアンノウンは残った片腕で自らの首を掴む
そして、迷いなくそれをへし折り引きちぎった

噴水のように鮮血が飛び散り

ゴロリと、首が投げ捨てられた


終わった
私が手を下すまでも無く

業に飲まれた鬼は、己の手を持ってその身に引導を渡した

私に決断を迫った時、あのアンノウンは間違いなく穏やかな顔をしていたように思う
少なくとも、こうして転がるような憤怒に満ちた顔では無かった

私は…私は間違った決断をしてしまったんだろうか

生きて穏やかに暮らせば
いつかその業と罪を贖える日が来るんじゃないかと、ここで死ぬ以外の道があるのではないかと思っての言葉だった
その結果がこれだ

嫌な後味だけが残る

アンノウンを討ち果たしたというのに、私の心は深く沈み、淀んだままだ

翡翠(…ねえオルス、私…間違ってるのかな…)

オルス(………きっと、答えはないよ。誰にも、あの選択が間違いか、正しいかなんて答えられない)

オルス(まだ他の子達は戦っているよ、そっちに行ってあげよう)

翡翠(…うん。そうだね)

私は無理やり気持ちを切り替え、他の魔法少女の救援に向かった


翡翠「もう終わり……なのかな……」

周囲を見渡す
辺り一面、この世の終わりの様に荒れ果てているが
悲鳴は聞こえない

何かが破壊される音も
戦闘を知らせる土煙も
もう何も見えない

何時しか、降り注いできていた光の粒も消えていた

町並みはシンと静まり返る

ここから、あのいつもの日常の姿に戻れるのだろうかと不安になる
今日は何かがおかしかった

箒星もそう
アンノウンが大量に活動を始めたのもそう
あの、異質なアンノウンもそう

思い出す、私にかけられた数々の意味深な言葉を
アイツは私を知っていた
少なくとも、私の知らない私(翡翠の騎士)を知っている様だった

私は…何も知らない…


コンマ判定
6以上で……

直下コンマ


コンマ判定:5 不発


変身を解き、帰路につく

オルスと二人
月明かりに照らされた道を歩く

珍しく、二人の間に会話は殆ど無かった

話したいことはいっぱいあるはずだ
訊かなきゃならないことが山ほどあるはずのなのに、怖くて言葉に出来なかった

感情に飲み込まれそうになった私
『現世を喰らう飢狼』
アンノウンを喰らう獣
私に捧げられるために肥えた肉

様々な意味深な言葉が多く飛び交った

そのどれもが、最悪の事態を予想させる

でもオルスは信じていっていた
私はアンノウンじゃないと、確かにそう言った

……でも、私はオルスの事も翡翠の騎士の事すら何も知らない

考えたくない
でも、考えてしまう

目を背けたい真実が、視界にチラつく

私は耐えきれず、声を出す


会話安価
安価↓1

私は何で翡翠の騎士になったんだろう…


>>963採用


翡翠「……私は何で翡翠の騎士になったんだろう…」

ポツリと、呟いた
多分、オルスに言った初めての弱音だった

翡翠「おかしいよ、私だけ変だ…」

翡翠「私だけ、他の人と全然違う」

翡翠「可愛いくて、素敵な…他の魔法少女と全然違う」

翡翠「ねぇ何でなのオルス?あなたなら、知ってるでしょ?」

翡翠「ううん、知ってないとおかしいよ。だって、オルスが私を翡翠の騎士にしたんだから」

オルス「………」

翡翠「ねえ、答えてよ!オルス!!」

悲痛な叫びだった
責め立てるように、私はオルスを糾弾した


オルスは泣きそうな顔で私を見上げる

オルス「…キミは、魔法少女だよ」

翡翠「…嘘だ。絶対嘘だよ」

オルス「嘘じゃない。本当なんだよ」

翡翠「じゃああの姿は何!私の中に居たあの衝動は何なの!?」

翡翠「オルス、言ってたよね?私の『喜び』が原動力だって」

翡翠「『喜び』ってああいう事なの?」

オルス「ち、違う…僕は…キミに笑顔になって欲しくて……」

翡翠「ねぇ、誤魔化すのは止めて。オルス……」



翡翠「あなたはアンノウンなんだよね?」


ついに口にする
ずっと、懸念していた可能性だった
こうであったならば、全ての事象に説明がつく

翡翠の騎士になった時に現れる、心の昂りも
あの時私に言ったアンノウンの言葉の数々も

全部納得できる

でも、オルスの否定の言葉だけがその可能性をないモノとして考えさせていた
でももう…見て見ぬふりは出来そうもない

翡翠「あなたがアンノウンなら、全部…納得できる」

翡翠「だって、翡翠の騎士はアンノウンって事になるから」

翡翠「私だってこんなこと言いたくない」

翡翠「でも…でも……もう信じられないよ!」

オルス「……!!」

私はボロボロと涙を流す
裏切られた怒りか、それとも悲哀か
最早自分ですら把握できていない


膝を折り、体を抱く
体が震えて立っていられなかった

私の頬に柔らかい何かが触れる

オルス「泣かないで…翡翠ちゃん……僕は、キミに泣いていてほしいんじゃないんだ」

オルス「笑って欲しかった…笑いかけて欲しいだけなんだ……」

オルスの小さな手が私の涙を拭う
だが、涙は止めどなく溢れ続ける

オルス「…ごめん…ごめんね翡翠ちゃん」

オルス「信じて欲しいとしか言えないよ…!」

オルス「僕は知ってる。君は…僕はアンノウンじゃない」

オルス「だから…信じて…!」

オルス「翡翠ちゃんの気持ちは十分に理解しているよ。でも…それでもこうとしか言えないんだ…」

オルス「どうか…僕を信じて…」

オルスの言葉に虚飾のようなモノは一切感じられない
絞り出すような必死の声
苦しそうで、辛そうなその声は、嘘を言っているようには感じられなかった

でも、状況の全てがオルスの言葉を否定している

私は……私は……


会話、行動安価
安価↓1

ごめんなさい・・・
自分でもどうしたらいいのかわからないの・・・


>>969採用


翡翠「ごめんなさい…」

翡翠「…分かんないよ…もう、ぐちゃぐちゃだ…」

翡翠「自分でもどうしたらいいのかわからないよ…」

オルス「翡翠ちゃん……ごめんね…僕が何も証明できないから…」

オルス「…でも、でも…僕は君の傍に居るよ」

オルス「僕は翡翠ちゃんが大好きだから…」

優しく私の頭を撫でる
その労わる仕草も、苦しそうな言葉も
否定できないほど本物で

その事にまた、心が痛んだ

嗚咽を漏らし泣き続ける

往来の真ん中
人一人いない街の中で、私はぐちゃぐちゃの心のままに嘆きを吐き出し続けた


深夜イベント


1、オルス
2、姫神沙耶香
3、星涙の戦姫
4、『星の涙』

安価↓3までで最もコンマの高いものを採用


>>974採用:3


矢を放つ
祈りと願いのこもった矢は、『星の涙』と称される光を振り撒きながら壊滅した地表に降り注ぐ
悲しき戦いの爪痕を一つ残らず修復していく

はぁ…と息を吐く

冷たい空気に触れた息は白い形を見せた

戦姫「…もう時間が無い」

小悪魔「そういう割には大したアクション見せないじゃないのよ」

戦姫「……嫌でもその時は来る」

小悪魔「まぁそうね。嫌でも来るわ。終わりは来る」

小悪魔「で、結局どうするの?あの翡翠の騎士」

戦姫「………選ばせるよ。彼女が決めることだから」

小悪魔「結局他人頼みなのね、この屑!………と言いたいけど、こればっかりはアンタの方が正しいか…」

話をしていると、電話が鳴る
こんな状況で呼び出しがあるなんて、理由は一つだけだろう
そもそも、かけてくる相手は一人しかいない

………きっと、もう限界だろう

明日に全てを決めないと
そう思いながら、電話に出た


という感じで、今日の更新はここまでです

次回更新の時に次スレたてます


ではでは、お付き合いいただきありがとうございました


次スレです!!
【オリジナル】安価とコンマで戦いを生き抜く その2【魔法少女】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1488199381/)


こっちが埋まってからあっち使います

ではでは、再開です


朝、目を覚ます

酷く体が怠い
頭痛もするし、全身に疲れを感じる

昨日、一晩中泣き続けたせいだろう
きっと顔をしているに違いない

それでももぞもぞと布団から這い出し、学校に行く準備をする
だが、その動作を止めた

別に学校に行きたくないというわけではない
ただ単に、今日は学校が無い事を思い出したのだ

もう、冬休みだ

そんな事すら頭から抜け落ちていた

ドサッと布団に倒れ込む
私の隣には、オルスは居なかった

あれからずっと私の中に閉じこもったまま、出てきていない
私に気を遣っているのだろう

多分、呼べば出てくるんだろうな

そんな事を考えながら、再び目を瞑る


寝よう寝ようと思っていたが、眼が冴えて全然眠れない

不思議なものだ
二度寝しちゃいけないなと思う時ほど、甘く私を誘ってくるのに
何も考えたくない時に限って、私を誘いに来ないなんて

寝返りをうとうとして、やめた
それすらも億劫だ

脱力
全身、足の指先に至るまで力が入らない

ついこの前まで、何かをしていたいという衝動に駆られて動き回っていた時とは大違いだ

……当然か
あの衝動の正体は、私に巣食う『獣』とやらが原因だったんだから

もうどうでもいい

いつになく鬱な私だった


しかし、そんな状態でもお腹は減るもので

仕方なしに起き上がり、リビングルームに向かった

食卓の上には置手紙と共に、作り置きのおかずが置いてある
お母さんは今日出掛けているらしい
……そう言えば、何か言ってたっけ?

何だったかと思いながら、パンを齧る

特に理由も無くスマホを開く
そこに映し出される数字は『12月24日』

クリスマス・イブだ

そうだそうだ、お母さんとお父さんはこの日の為に休みを取ったと言っていた
二人仲良くデートらしい
今時珍しいくらい仲のいい夫婦だと思う

そっか……クリスマスか……

こんな日に、私には虚無感ばかりが募っていく


ご飯を食べて、顔を洗って、歯磨きをして、着替えをして
することと言えばベッドに寝っ転がっていた

本当に、全身からやる気というやる気が無い

我ながら、相当参ってるらしい

思い出すのは自分と、あのアンノウンの姿
考えれば考えるほど、よく似ているように思う

次に思い出されるのはオルスの言葉
声は震えていた
恐れ、怯えというよりは悲しみに震えていた

ただ、信じて欲しいと言った

私は初めて、そんなオルスの言葉を受け入れられなかった

ああ…考えれば考えるほど憂鬱だ
どうして……私がこんな目に……


そんな時、電話が鳴る
けたたましい呼び出し音に鬱陶しく思いながらも、相手を確認する……


電話をしてきた人
安価↓3までで最もコンマの高いものを採用

可憐


>>989採用


電話の主は可憐だった

翡翠「はい、もしもし」

可憐「もしもし~?起きてる~?」

翡翠「うん、さっき起きたんだ」

可憐「そうなの?なんか元気無さそうね。どうかしたわけ?」

翡翠「どうかしたっていうか……う~ん…」

可憐「何よ歯切れ悪いわね。あたしに話してみなさい。友達でしょ?」

翡翠「うん…」

友達だから、言いにくいというか
誰にも言えないというか

今思うと、オルス以外に私が翡翠の騎士だって知っているのは誰も居ない
……誰かには話しておくべきだったかな?

嫌に孤独を感じてしまう

ともかく、何かは言わないといけないだろう
この今の気持ちを吐き出してもいいし、誤魔化して普通を装ってもいいけど


さて、何て言おうか?

会話安価
安価↓1

自分自身がとても嫌な存在だと思ったことはある?
そんなときどうすればいいのかな?


>>993採用


翡翠「自分自身がとても嫌な存在だと思ったことはある?」

可憐「……どういう事?」

翡翠「何て…いうのかな。凄く虚しい気分なんだ…」

翡翠「信じてたものに裏切られたっていうか、ずっと自分はいい事をしてきたと思ってたのに、実はそれは茶番の思い込みで私は悪い人だった…違うなぁ…」

翡翠「ごめん…上手く言えないけど……自分の事が何も分からなくなったの…」

翡翠「自分の中がぐちゃぐちゃで…何も…何も信じられない。ねえ、そんな時…どうすればいいかな?」

可憐「………そうね、そういうの分かるかも」

翡翠「そうなの?」

可憐「…あたしもさ、ちょっと人間不審な部分があったじゃん?」

翡翠「……そう…だね…」

昔を思い出す
可憐、中学の時はそれはもう大荒れだった
…いじめが原因で、その中心だった子を病院送りにしたりして、警察沙汰になったくらいだ

そう思うと、今は多少丸くなっているのかもしれない

……残念ながら、まだ…蟠りは解けてい無いようだけど


可憐「ぶっちゃけるとさ、あたし…どいつもこいつもぶっ殺して回ろうと思った」

翡翠「ええっ!?そ、そんな!駄目だからね!?」

可憐「過去形でしょーが、ちゃんと最後まで聞きなさい」

可憐「…あたしさ、アンタも知ってると思うけど、ぶっちゃけ天才じゃない?」

翡翠「ぶっちゃけ過ぎだよ……まぁ、実際何でもできるけど」

可憐「陸上部の奴らの誰よりも早かったし、誰よりも高く遠くへ飛べた」

可憐「一日中勉強してるよーな、根暗なガリ勉君よりテストの点数よかったし」

可憐「顔に下手くそな化粧塗りたくって可愛くなったつもりの奴より、ずっとモテた」

可憐「そんな私に嫉妬して、私の足を引っ張って、あわよくば踏み台にしようとしてくる奴ら…大嫌い」

可憐「中学の時…私にとって、周り全てが敵だった」

可憐「憎くて仕方なかった。素の私を見せれば才能に嫉妬して、合わせて手を抜けば馬鹿だと罵られた」

可憐「あんな奴ら、こんなろくでもない人間。全員殺しても私は罪に問われるはずがない!なんて、無茶苦茶なこと考えてたよ」

笑いながらとても物騒な事を話す
初めて聞く、可憐の当時の本音だった


可憐「でもさ……あたしにはアンタが居たよ」

翡翠「……!」

可憐「こんな大馬鹿野郎なあたしの傍に居てくれたから、あたし…我慢できた」

可憐「一番荒れてて、アンタともこんなに仲良くなかったとき、アンタが私とご飯食べようとか言ってきたよね。あたしが何て返したか覚えてる?」

翡翠「忘れるわけないよ。『失せな糞チビ』だった」

可憐「いやぁ…酷いわ…我ながら……」

翡翠「凄い形相だったからね。私もよく逃げ出さなかったと思うな」

可憐「だってあんな時期にわざわざあたしと一緒に居たいとかいう奴なんて、体目当ての屑男か、いじめの差し金かのどっちかでしょ?」

可憐「……でも、あんたも段々ハブされてるのに気づいて、この子本当に私を気遣ってるだけなんだって気づいた」

可憐「あんたさ、あの時…あたしがいじめを受けてたから、だから傍に居てくれようとしたんだよね。自分がどういう目で見られるか知ってながら」

翡翠「……うん、そうだよ。だって、放っておけなかったから」

可憐「だから…アンタが居てくれたから、世の中敵ばかりじゃなかったって思えた。ぐちゃぐちゃだった自分が、いつの間にか治まってた」

可憐「…うん、つまり…あたしなら大事なアンタと一緒に居れば、大抵の悩みは解決すると思ってる」

それが可憐の答えらしい


可憐「こうやってアンタと話してるとさ、気分がスッとする」

可憐「嫌な事ばっかり積み重なって、イライラしてても、アンタと話してるとちょっと許せるような気がするんだ」

可憐「大事な友達を信じられれば、もうそれで良くない?なんて思うわけよ」

可憐「アンタはさ、あたしじゃ…満たされそうもない?」

翡翠「……どう…だろう」

翡翠「…でも、ちょっとスッキリしたかも」

可憐「そお?ならよかった」

可憐「まあそれに、仮によ?アンタが悪い奴なわけないでしょ」

可憐「アンタみたいに優しい子が、良い子以外の訳が無い」

可憐「もしアンタを悪者だっていう奴が居るなら、あたしがとっちめてやるんだから!」

翡翠「ふふふっ…もう、やめてったら」

可憐「漸く笑ったわね。ちょっとは元気出た?」

翡翠「…うん。ありがと」

可憐「いいって事よ。友達でしょ?」

不思議と、自然と笑えた
大事な友達と話をしていると、イライラとか嫌な事とかちょっと許せるような気がするって、こういう事なのかな
ちょっとだけ、可憐の言ってることが分かった気がした


可憐「ああそうそう、本題いい?」

翡翠「へ?ああそっか…可憐からかけてきたんだったね」

翡翠「それで、何?」

可憐「クリスマスパーティの準備、どうなったの?」

翡翠「……あ」

可憐「アンタ…まさか…」

翡翠「ごめん、何も準備してない…」

可憐「アンタねぇ……とにかく、場所くらいは決めなさいよね」

翡翠「ああ、場所なら私の家でいいかも。両親も今日は帰ってこないから」

可憐「そう、ならアンタの家でいいけど。取り敢えず、今はさっさと準備しなさいな」

翡翠「う、うん。そうする」

可憐「なんか手伝って欲しい事があれば言いなさいよ」

翡翠「うん。ありがとね」

可憐「お礼はいいから…誰かを誘うなりサッサとしなさいよね。当日に誰か捕まるとも思えないけど……」

そうして、電話を切る
私はここにきてようやく、今日の予定を思い出したのだった


では、ここが埋まったら次スレで再開します
適当に埋めてやってください

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