真美「双海真美とー」貴音「四条貴音の」 「「生っすか航空宇宙開発局!」 (18)



JAXA 宇宙航空研究開発機構
筑波宇宙センター

真美「ハロハロ~! 全国のアストロノーツなにーちゃんとねーちゃんとばーちゃんとじーちゃんとおかーちゃんとおとーちゃん、駅前のお肉屋さんの西村のおばちゃーん! 双海真美だよー!」

貴音「宇宙、それは人類に残された最後のフロンティア……今宵もまた、日本、そして世界の宇宙開発についての知識を深めてまいりましょう。四条貴音です」

真美「な、な、な、ぬぁぁぁんと! 夏休みだけの臨時コーナーが、生っすかレボリューションのレギュラーコーナーに格上げだよぉ! ディレクターのにーちゃん泣いてたね!」

貴音「真美のおかげですね」

真美「いやいやぁ、それほどでもぉ、あるけど! んじゃまずはねー今日んところは、まず第一弾! ということでね、こんなお題だよ」

『指令その1! ロケットの違いを調査せよ!』


※前作、前前作
真美「JAXAでお仕事?」 真美「JAXAでお仕事?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437824429/)
真美「またJAXAでお仕事?」 真美「またJAXAでお仕事?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438436998/)
の続き?です



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486304273


真美「違い? ロケットって全部同じじゃな 貴音「否!」

真美「うわぁ、いきなり大きな声出さないでよぉ」

貴音「申し訳ございません。少し興奮してしまいました」

真美「そ、そこまで?」

貴音「それでは、まずロケットの歴史に入る前に、基本知識を学びましょう」

真美「いえっさー!

貴音「それでは最近の日本のロケットの問題です。<ひさき>、<あらせ>を打ち上げた日本のロケットの名前は?」

真美「えと、ええーと、パンシロンじゃなくて、バーチャロンじゃなくて……風邪には……」

貴音「……」

真美「や、やだなお姫ちん、そこは『パブロンだろっ!』って突っ込んでくれなきゃ~」

貴音「……」

真美「無言は止めて、ごめん、ごめんね、真面目にやるから…………イプシロンだ!」

貴音「風邪には改源では?」

真美「それ考えてて無言だったの?」

貴音「風邪薬といえば」

真美「それは良いから正解は?!」

貴音「こ、こほん……失礼しました。正解は、イプシロンロケットです」



ひさき:http://www.jaxa.jp/projects/sat/sprint_a/index_j.html
あらせ:http://www.jaxa.jp/projects/sat/erg/index_j.html
イプシロンロケット:http://www.rocket.jaxa.jp/rocket/epsilon/

貴音「ではその燃料は?」

真美「ね、燃料? えー……ガソリン、じゃないよね」

貴音「正解は固体燃料」

真美「こたいねんりょお?」

貴音「イプシロンロケットではコンポジット推進薬というものが用いられており、成分としては末端水酸基ポリブタジエンを結合剤として用い、酸化剤の過塩素酸アンモニウム等とアルミニウムなどを配合し――」

真美「うあうあー! お姫ちん、とりあえず今日はこのくらいで」

貴音「そうですか、推進剤の話は黒色火薬から始まり中々面白いのですが」

真美「次のときにしよー、ね? ね?」

貴音「そうですね。<イプシロン>、それに<ペンシル>から<Μ-Ⅴ>などのISAS系のロケットを始めとして、<H-ⅡA>などの補助ブースターも固体ロケットです。簡単に言ってしまえば、固体燃料ロケットはゴムと酸化剤が燃焼することでガスを発生させて、推進力を生み出しています」

真美「なるほどね! テレビの前の皆、わかったかな?」

貴音「さて。と、いうことは、固体があれば」

真美「液体もあるってことだよね?」


貴音「その通り。史上初の人工衛星<スプートニク>を打上げた<R-7>ロケットも、液体ロケットだったのですよ。そのほかにも<アポロ計画>で使用された<サターンⅤ>、JAXAの宇宙ステーション補給機<こうのとり>を打ち上げた<H-ⅡB>。地球環境観測を行う<だいち>、<いぶき>、<しずく><GPM/DPR>などを打ち上げたのは<H-ⅡA>です」

真美「真美達の後ろにあるのもそうだよね?」

貴音「あれは<H-Ⅱ>ですね。初の純国産ロケットとして、様々なミッションを成し遂げました」

真美「へー、じゃあ液体ロケットの方が凄いの?」

貴音「液体と固体、それぞれに利点があるのです」

スプートニク:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AF1%E5%8F%B7
R-7:https://ja.wikipedia.org/wiki/R-7_(%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88)

サターンV:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B3V

H-Ⅱ:http://www.jaxa.jp/projects/rockets/h2/index_j.html
H-ⅡA:http://www.jaxa.jp/projects/rockets/h2a/index_j.html
H-ⅡB:http://www.rocket.jaxa.jp/rocket/h2b/

だいち:http://www.jaxa.jp/projects/sat/alos2/index_j.html
しずく:http://www.jaxa.jp/projects/sat/gcom_w/index_j.html
いぶき:http://www.jaxa.jp/projects/sat/gosat/index_j.html
GPM/DPR:http://www.jaxa.jp/projects/sat/gpm/index_j.html



真美「どういうこと?」

貴音「固体燃料ロケットの利点は、構成がシンプルで作りやすくコストが安い、そして信頼性も高い、という使いやすさが液体燃料ロケットに比べて勝っています」

真美「火をつければ直ぐ飛んでっちゃうのも利点?」

貴音「まあ、そうですね。ロケット花火に近いですね。ただし、液体燃料ロケットにも燃料を入れたまま保管できるものもあるのですが……」

真美「そうなの?」

貴音「ただし、毒性が強いものもあるので、安全性の面で難あり、かもしれませんね」

真美「じゃあ、液体ロケットのメリットってなに?」

貴音「液体ロケットには、固体ロケットでは出来ない推力制御、再着火が可能、そして推進薬が安いという利点があります」

真美「固体ロケットは、一度火をつけたらぶっ飛んでっちゃうんだよね」

貴音「その通り。より細い制御が出来るのが、液体ロケットのメリットですね。しかも、比推力が高い……推進力が大きいので、より大きな力を生み出せます」

真美「へー」

貴音「ちなみに国際宇宙ステーションへ補給機や人員輸送用のソユーズ宇宙船を打上げているソユーズロケットには、液体酸素とケロシンが。我が国のH-ⅡA、H-ⅡBでは液体酸素と液体水素の組み合わせが用いられています」

ソユーズロケット:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88


真美「ケロリン?」

貴音「カエルではありません。日本の場合、ケロシンは灯油、といっても差し支えはないかもしれませんね」

真美「ファンヒーターの給油って面倒だよね……手にニオイ付いちゃうし」

貴音「まあその話は置いておくとして、CMの後、ロケットの話をもう少し続けます」

真美「チャンネルは、そのまま!」


Without IHI ロケット篇(30秒)
https://youtu.be/B8R45ybG248

三菱重工テレビCM 「Search for MHI」
https://youtu.be/fKzdB3RsQrw

MITSUBISHI ELECTRIC CM / JAXA
https://youtu.be/U9D-PoPs5r4

オロナミンC | 元気の現場 「JAXA」
https://youtu.be/hmKWoqyBzfs


貴音「ここまででロケットには液体燃料ロケットと固体燃料ロケットがある、ということを説明しました。日本のイプシロンロケットは固体、Hシリーズは液体燃料ロケットです」

真美「んでんで」

貴音「ロケットは基本的にこの2種類が主流です。さて、ロケットを語る中で、触れない訳にはいかないお方が何人か居ますが……」

真美「え?! 誰々!?」

貴音「さて、ここで本日のお題二つ目、と参りましょう」


『指令その2!ロケットの歴史を調査せよ!』

貴音「ここで真美に問題です。世界初のロケットといえば」

真美「えー? すぷーとにくが世界初のじんこーえーせーなんだから、そのロケット?」

貴音「ハズレです。実は世界初のロケットは、1926年、アメリカのマサチューセッツ州で打上げられました」

真美「まさちゅーせっちゅ……まちゃちゅーちぇっちゅ……」

貴音「重要なのはそこではありません」

真美「はい……」

貴音「打上げた人の名は、ロバート・ゴダード」

ロバート・ゴダード:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%89

貴音「ゴダードが打上げたのはガソリンを燃料とするロケット、つまり液体燃料ロケットです。このことからゴダードのことを『近代ロケットの父』と呼ぶこともあります」

真美「へー、すごい人なんだね!」



貴音「ただ、彼の生きている間に、この功績が評価されることありませんでした」

真美「そうなの? 見る目がないなぁ」

貴音「彼に対して世間は冷たく、ニューヨーク・タイムズは『物質が存在しない真空中ではロケットが飛行できないことを誰でも知っている。ゴダードは高校で習う知識を持っていないようだ』とまで書きました」

真美「えー、ひっどーい!」

貴音「彼の名誉が回復されるのは、アメリカの宇宙開発が本格化する1950年台を待たねばなりません。現在ではゴダード宇宙センターにその名を残し、人類の宇宙進出の偉大な一歩を踏み出した人物として畏敬の念を払われています」

真美「よかったね……でもおひめちん、それならアメリカがロケットは一番すんごいの?」

貴音「その話をするのはもっと先のことになります」

貴音「さて、時代は遡り、1857年、ロシア帝国で誕生した一人の男性のお話です」

真美「ロシアテーコク? ロシアってれんぽーじゃないの?」

貴音「ロシアの歴史は革命の歴史、ロシア帝国はソビエト連邦を経てロシア連邦となっています。このあたりのお話は歴史の授業で習うと思いますよ」

真美「ふーん。んで、その帝国で生まれた男の人って?」

貴音「名をКонстантин Эдуардович Циолковскийといいます」

真美「え? え?」

貴音「日本語ですとコンスタンチン・ツィオルコフスキーと呼ばれますね」

真美「お姫ちんロシア語話せるの?!」

貴音「何事も鍛錬ですよ」

真美「たんれん」

貴音「はい、鍛錬です……さて、このツィオルコフスキー氏は何をしたかというと、ある公式を発表しています」


真美「えー、真美、公式嫌い」

貴音「まあまあ、ここでは簡単に『ロケット方程式』と言いましょう。かいつまんで言うと『ロケットがすべての燃料を使い切った時、到達できる速度』を導き出すことが出来ます」

真美「???」

ロケット方程式
https://kotobank.jp/word/%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F-791861

貴音「最終到達速度は⊿V(デルタブイ)と表されることもありますが、この速度はロケットの機体が軽ければ軽いほど、つまりすべての燃料を使い切った時点でロケットが軽ければ軽いほど、またエンジンから出る噴射ガスの速度が大きければ大きいほど、⊿∨も大きい値に――付いてきていますか?」

真美「よくわかんないけど、軽くて早い方が遠くまで飛ぶってことで良い?」

貴音「まあ、そういうことにしておきましょう。

貴音「ではこれに関連して、真美、イプシロンやH-ⅡAロケットは、打ち上げの前と後でどんな姿をしていますか?」

真美「打ち上げの前は、でっかい鉛筆みたいな感じで、その後は……何か、ちっちゃくなってる」

貴音「そう、それです!」

真美「うあぁ! いきなり大っきい声出さないでよ!」

貴音「ツィオルコフスキーのロケット方程式によれば、ロケットの重量、厳密に言えば燃料以外の重量は軽ければ軽いほど良いのです。つまり、ロケットの不要部分をどんどん切り離していけば」

真美「あ、そっか。使わないところも持ち上げるのは大変だもんね」

貴音「巨大な推力を持った単段式ロケットというのもアイデアとしてはあるのですが、現状のところそこまで効率の高いエンジンと、軽い機体を両立するよりは、不要部分を切り離す多段式のほうが現実的、ということです」

多段式ロケット:http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/multistage_rockets.html


真美「ロケット鉛筆って、だからロケット鉛筆っていうの?」

貴音「そうですね。最近はあまり見かけませんが、よくご存知で」

真美「何かこの前テレビ局で仕事してたら、ウサミンが話してくれたー」

貴音「ほう……ちなみに多段式ロケットや人工衛星、更に宇宙服、宇宙遊泳、宇宙ステーションのアイデアもツィオルコフスキーは発表しています。ゴダードが近代ロケットの父ならば、ツィオルコフスキーは『宇宙旅行の父』と呼ばれています」

真美「このおじーちゃん、凄いんだね」

貴音「ちなみにツィオルコフスキーは幼い頃にかかった猩紅熱(しょうこうねつ)という病気のせいで、障害耳が聞こえなかったと言われていますが、独学で勉強をしてこれらの方程式やアイデアを発表しているのです」

コンスタンチン・ツィオルコフスキー:http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/kaihatu_pioneer_tsiolkovsky.html



真美「凄い!」

貴音「彼がこの世を去ったのは1935年。まだ人類が宇宙を見上げるだけだった時代に、これだけのことを行った功績は、偉大と言わずしてなんとなりましょう」

真美「すごい人が居たんだねぇ」

貴音「今の宇宙開発や宇宙探査も、こういった偉大な先人の存在あってこそ、ですからね」

真美「それでは、今回の調査はこれにて――」

貴音「実はもう少し続きます。ロケットの歴史は大変奥深いのです」

真美「りょうかーい! 来週もバリバリ調査していくよ!」


貴音「最後に、ツィオルコフスキーの残した言葉で、この回を終わりたいと思います……」


貴音「Планета есть колыбель разума, но нельзя вечно жить в колыбели……」

貴音「地球は人類のゆりかごである。しかし人類はゆりかごにいつまでも留まっていないだろう」

真美「以上! 四条貴音と双海真美の生っすか航空宇宙開発局のコーナーでした!」

貴音「次回は悲劇のロケット、∨-2と悪魔に魂を売った男、フォン・ブラウンをお届けします」

真美「お楽しみに!」

ホントは画像引っ張りたかったけど、利用条件がここだとグレーなのよね…

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