グルガン「ニムネを労りに来た」(37)


本SSは同人R-18ゲーム「グール×グーラ・コンパーニャ」の重大なネタバレを含んでいます。

よって未プレイ、または未クリアの方には非推奨となっております。

また、主人公の名前(原作ではプレイヤーが入力)は間を取って「グルガン」にしてあります。

本SSには独自解釈が多々あり、エロい要素はないです。

以上の事柄を了承される不死者の方は、お付き合い頂けると幸いです。


夜の帳が下りると人間は多くが眠りにつき、街の門は閉ざされる。

かつてはここ、エイドラッカもそうだった。

四方を壁で囲まれた堅牢な街……自分が居住しているノイナルクと対を成す地。

あの『事件』から二ヶ月が経過した今、この街は大きく変化していた。

夜になっても門は開放され、街に居住する民の何割かが夜闇の中を当たり前のように活動する。

赤い瞳、尋常ではありえない色の冷たい肌、そして痛みを感じない頑強な肉体を持つ『不死者』

――グール、グーラと呼ばれる存在として。


「もーグルガン様ってば、一体どこに行ってたの?」


目の前で頬を膨らませている少女の名はヴェラデナ。

赤い瞳と灰色の肌は彼女がグーラであるということの証明であり、自分の名を様付けで呼ぶのは彼女が自らの眷属であることの証明である。


「んもう! ちゃんと聞いてるのグルガン様!」


聞いてる聞いてると、僅かばかり痙攣を起こした手で小さな冠がちょこんと乗った頭を撫でる。

癖のある髪の毛は以前と変わらず程よい反発と手触り、それと何かの花であろう香りを持っていた。


「む、むう~。頭を撫でてごまかそうとしても駄目よ!」


顔をにへらと緩ませ、長過ぎる袖から覗く小さな手で己の手をぺたぺたと触る姿には『女公』としての雰囲気は一切感じられない。

未だに彼女の大半を占めるのは幼い女の子のわがままと愛らしさ、清く優しい心。そして何よりも眷属としての服従心なのだろう。


「リ、リクスも何とか言ってちょうだい!」


ヴェラデナはキッと目を細めるが悲しいかな、誰が見ても分かるほど口元がにやついている。

この前貰った手紙にはリクスにポーカーフェイスを習っているとか書いてあったが、まだ完全に習得できてはいないようだ。


「それは表情作りの出来栄えを評しろ、ということでしょうか」


隣でじっと控えていたリクスが冷静な声と共にヴェラデナを見下ろす。

リクス。緑色の髪を後ろで束ねた細身の女性だ。彼女の容姿もまたグーラとしての特徴を備えているが、何よりも特徴的なのは腰に携えた細剣だろう。

近衛将としての剣の腕は凄まじい。他に剣を扱う強力な眷属が二人いるが、彼女もそれに匹敵する剣士だ。


「ちがーう! せっかく招待したのに街をふらふらしてたグルガン様に文句を言うのー!」


好きでふらふらしていた訳ではない。ほうほうの体で街の中に戻った直後だったのだ。……まだ衣服の下は自分と彼女達の体液べとついている。

「そうおっしゃいましても今回は我々に落ち度がありますので」

二人が話しているのは数時間前の出来事についてだ。

一言で言えばエイドラッカへ入った瞬間、自分はこの街の眷属達にさらわれた。


……眷属化した女性は自分にほぼ服従し、主に強く依存する。

数日なら何の問題もないが、『事件』の後色々とやることもあり一ヶ月はこの街を訪れていなかった。

だから彼女達は飢えていた。自分はさしずめ、餌を抜かれ続けた犬の前に差し出されたドッグフードだった。

攫われた先の小屋で、自分の精を絞り尽くす勢いで群がってきた眷属達の顔が頭をよぎる。

盗賊の三人組、料理上手な田舎娘、猫と兎の獣人二人、小柄な鍛冶師……全てあの『事件』の最中、自分が眷属とした女性達だった。


「次からは城内までしっかりと護衛をつけましょう。グルガン様の身に何かあってはいけませんから」


リクスが腕を組み見慣れた思案顔になる。

自分も乗り気になって誘拐された節があるので、彼女達を責めないでやって欲しい。


「それは問題ありません。……私も気持ちは分かりますので」


仏頂面のリクスに頼むと、彼女は少しだけ口元を弓なりにして微笑んだ。

言葉の最後がよく聞き取れなかったが、まあよしとしよう。


「ぐむむー。大体グルガン様を呼んだのは私、エイドラッカの女公なのよ! 一番偉いんだから一番先にお会いする権利があるわ!」

「ヴェラデナ様、話の主旨が逸れています。そろそろ本題へ」

「あ……うん、そうね。じゃあグルガン様。手紙にも書いたけど、お願いできるかしら?」


お安い御用だ。元々そのためにエイドラッカへやって来たのだから。


ヴェラデナから軽く説明を受けて女公の居室を後にした自分は今、一人で一階層下の部屋まで下りてきている。

補政官室。事件の後に立ち入るのは始めてだ。本来はわざわざ寄る意味もない。

普段は警備のために兵士が立っているそうだが、今は人払いがされていて廊下の静けさが増している。


あの時はたしか、ここで彼女の演技に騙されてリクスの制止を振り切り、その後――


……やめよう。自分がグールとなってからの行動で最も大きい失態を犯した。それだけだ。

過去の記憶を振り払い、視線を目の前の扉に戻す。

さて、目的の眷属は今ここで『償い』をしているらしい。


扉を開く。女公の居室と同じく外光が入らぬよう施工された部屋を、ランプの薄明かりがぼんやりと照らしている。

そんな部屋の奥、巨大な机にかじりつく水色の髪が目に留まった。


「防壁西側の森林伐採は停止――ノイナルクとの交易は夜間により比重を――旧ボホトック家の資産分配は――」


あの時と同じでこちらに全く気付いていないので、特に気配を消すこともせずぶつぶつと独り言を放つ彼女の真後ろに立つ。

その間も彼女は大量の書類を手で探っては引き寄せ、あるいは向こうへ押しやり、同時に手元のペンを高速で走らせる。


「手が放せないので資料はそこに置いてください」


彼女は背後の気配に気付いたのかちらりとこちらの足元を見やり、書類を探る左手を止めて机の僅かに空いたスペースを指差した。


ドレスコートの袖から覗く手の色はこの街でも珍しくないものとなった灰色だ。

後頭部で髪を結うのはやめたのか、真っ直ぐ切りそろえた水色の長いそれが背中まで垂れ下がっている。


「聞こえましたか? 急用でなければ後でお願いし……ひゃあっ!?」


はきはきとした口調からグーラ化する前の性格に戻っているのかと思ったが、杞憂だったようだ。


「え……あ……グ、グルガン様……?」


振り返った際に一瞬だけ見せた険のある表情を崩し、おどおどと自分の名を呼ぶ様にはかつての面影は残っていない。


「ど、どうしてここに……?」


彼女の名はニムネ。自分の眷属であり、『事件』を引き起こした罪人で、元々はこの街の補政官だった。

本来は囚人として牢獄に入れられているべきで、実際一ヶ月前まではそうだった。


「あ、あの……?」


しかし補政官を務めていた彼女は非常に優秀で、そのポストが空白になると途端に問題が噴出するようになった。

サミュレを筆頭に街の貴族も共同で仕事を処理しようとしたが結局元のようには行かず、ニムネを補政官に復帰させようという提言がなされた。

それをヴェラデナが聞き入れ、自分も承諾した。公表されてはいないが、今や補政官の仕事の大半は再びニムネが務めている。

彼女が問題を起こせばヴェラデナと自分が責任を負うと内々に知らされているのもあって、特に軋轢も生じていない。

元々眷属となった女性が自分の損失になるような真似をするはずもなく、現に彼女は真面目に職務を遂行しているとか。


「な、何か問題がありましたか? そ、それとも私の体をお使いに……?」


それにしても……聞いていた通りだ。

目の下に隈ができている上に、頬も少し痩けている。それに部屋に入った時から感じていたが、彼女は臭う。

風化した香水のような、妙な匂い。風呂にもろくに入っていないのだろう。

ちょうどいい。自分も体を清めたかったところだ。


入浴しよう。


「え?」


風呂に入るから一緒に来るんだ。仕事は放置。


「な、なんで私なんか……ひゃっ! い、行きます、行きますから。引っ張らないでください……」


部屋の奥に書類で埋もれた扉があり、その先に彼女の居室がある。


「んっ……手、手を放してください……」


わたわたと慌てるニムネを引っ張って、居室の奥にある浴室へ連れ込んだ。

そして着ていた服を常人ではありえない速さで脱ぎ、籠に投げ入れる。


「えっと、あの」


そんな自分の姿を見てビクビクとするニムネにさっさと服を脱げと急かすと、いそいそと彼女は服を脱ぎ出した。


浴室はそれなりの広さがある。大人二人ならば十分だ。

タイルが敷き詰められた綺麗な床と壁、椅子や桶など一通り必要な物も備えてある。というより、殆ど使われていない。

湯船も広々としており、先程からお湯の注ぎ口から湯気が上がっている。これなら不死者の冷たい体が浸かっていても湯が冷めることはないだろう。

今回はいかがわしいことはなしだ。早速適当にかけ湯をして湯船に浸かろう。


「はい……」


ニムネはバスタオルを巻いた胸元に桶を抱え隣に控えている。


「あ、あの……お背中、流します……」


その必要はない。自分がニムネの背中を流すから桶を渡すように。


「そ、そんな。グルガン様のお手を煩わせるなんて……」


いいから渡すように。


「うう……はい」



ニムネはおずおずと桶を差し出す。必然的に隠れていた胸がタオル越しに浮き上がるが、精力が減衰している今の自分には特に影響しない。

先に搾り取られていて正解だった。そんなことを思いながら、お湯をすくって椅子に座らせたニムネの頭にかけていく。


しばらくの間、お湯が浴室の床面にはねる音と二人の不死者の呼吸音だけが響いた。

目の前で背中を縮こませるニムネはリラックスとは程遠く、まるで滝に打たれる修行僧のような雰囲気すら醸し出している。

これでは褒美にならない。

ざばりざばりと自分にも湯をかぶせ、湯船に入るためニムネに立ち上がるように声をかける。


「は、はい……えっと、少しお待ちください」


湯船に髪の毛が浸かるのを嫌うのだろう。ニムネはその水色の髪を手早く結い上げた。

以前と似た髪型のニムネが目の前にいる。入浴時のノーテや髪をほどいたリクスもそうだが、女性は髪型一つで印象がかなり変わる。

髪を下ろしたニムネは先入観無しに見れば淑やかな美女そのもので、今の姿はなんというか、あまり好きではない。

だからといって髪を下ろせと命令する気にもなれず、黙ってこちらの指示を待つ彼女を湯船に浸からせ自分もその後に続く。


「………………」


手の届く位置で対面し、正座するニムネ。

俯いているように見えるが、ちらちらとこちらを伺っているのはすぐに分かった。


「あう」


気付かないふりをして油断させてからタイミングを計って目を合わせると、ニムネは更に眉を下げ湯に顔を沈める勢いで俯く。


「ぶくぶく……」


こうしてじっくり観察すると彼女は別人になったのだと改めて感じられる。

元々は自信たっぷりかつ高圧的な性格の持ち主だった。

グールである自分に罵詈雑言を吐くのは勿論、精神の眷属化を回避してこちらを欺き殺そうとしてきたこともある。


「ぶくぶくぶく……」


そんな彼女を自分が犯し尽くし、一度のまぐわりで大量の精液を注いだ結果その性格は逆転した。

眷属とした女性が従順になるのは当たり前だったが、性格まで変わってしまったのは後にも先にもニムネだけだろう。


「ぶくぶくぶくぶく……」


このまま放っておくと溺死しそうだ。

手を伸ばして湯に浸かった頭をひっ掴み、持ち上げながら体ごと引き寄せる。


「ぷはあっ!?」


バランスを崩したニムネが自分の胸に寄りかかった。



「グルガン様……っ」


ニムネは震えながら必死に腰を引いて上体を起こそうとするが、肩に置いた自分の手がそれを許さない。

……ところで、一度に大量の精を注がれたニムネは眷属の中でも一際敏感になってしまった。

どのくらい敏感かと言うと、まだ彼女が牢屋に閉じ込められていた時に気まぐれでフェラチオをさせただけで達したほどだ。

しかしどの程度弄ると達するのか、体の部位によってどのくらいの差があるのか。本格的にまぐわったことがないので分からない。

眷属の中で一番謎に包まれている彼女の体の感度を試してみたい気もするが、今はその時ではない。


「あっ!」


ニムネの肩に置いていた手にぐっと力を入れて体の向きを変えさせ、後ろから震える体を抱きすくめた。

体温は他の眷属と殆ど変わらないが、やはり肉付きが悪い。それに――


「あう、ううっ……!」


あの時のように彼女の目から涙がこぼれていた。

慌てて謝罪と共に腕の力を緩め密着の度合いを減らすと、ニムネは安堵と疑問が両方浮かんだ表情でこちらを見上げる。


「な、何もなさらないのですか……?」


しない。恐怖や不安を伴うほど大きな快感を与えては褒美にならないからだ。


「ほ、褒美?」


仕事の成果に対する報酬。

正確に言うなれば、サミュレや他の貴族総出でも処理しきれない膨大な量の仕事をこなしていることへの報酬だ。


「そ、それは償いですから」


グーラの体に物を言わせて昼夜問わず働けとは誰も命令していない。

おまけにリクスやサミュレが休息を取るように勧めても無視し、働き詰め。

毎日何かに取り憑かれたかの如く書類の山に埋まり、食事も殆ど取らない。

このままではいくらグーラとはいえ倒れてしまう……そう危惧したヴェラデナに呼ばれ、自分はここへやって来たのだ。


「で、でも。悪いのは私です。命を払っても許されない罪を償わねばなりません。……仕事を沢山こなすぐらい、平気です」


良いも悪いも、許すも許さないもない。しかも平気じゃない。

大事なのは罪を自覚し、償う意志を持ち続けること。

今のニムネは自分自身を必要以上に追い詰めている。それで体を壊したら結局は誰かに迷惑がかかってしまうだけだ。

それに何よりも、主である自分はとっくにニムネを許している。完全な眷属となった、その瞬間から。


「グ、グルガン、様」


主の命令だ。仕事の時間を減らし、しっかりと食事と睡眠を取ること。

さあ、眷属ならば従うと誓うんだ。


「は、はい。分かりました……!」


またニムネの瞳から涙が流れるが、その表情は晴れやかなものに変わっていた。


「グルガン様、あの……」


それから何事もなく風呂から上がり着替えていると、ニムネがおずおずと話しかけてくる。

前よりも表情は明るく、白いバスローブに包まれたに灰色の体、それとサラサラになった水色の髪がよく映えていた。


「えっと、その……ほ、褒美というのは、入浴させてくれたこと……ですよね」


確かにそれも褒美の一つだが、あくまでついでとしてやっただけだ。

もし彼女が何か望むならできる限り叶えてやりたい。主として眷属を満足させるのも役目の一つだ。


「ほ、本当ですか? で、でしたら」


まあ他の眷属といえば自分とまぐわることを褒美とする者が多いのだが……さて、彼女はどうだろう。


「えっと、これから仮眠を取ろうと思うんです。で、ですので、そ、そ、添い寝をしてくれませんか……?」


それならお安い御用だ。


「や、やった。ありがとうございます……!」


快諾するとニムネは嬉しそうに目を細めて笑みを浮かべる。初めて見る彼女の笑顔はとても可愛らしい。


「え? か、かわいい……? はう……」


両手で顔を覆い隠すニムネだが、はみ出ている耳が真っ赤に染まっていた。


その後体と髪を乾かし、ニムネと共に就寝の準備を済ませた。

僅かに外から聞こえる小鳥のさえずりが伝えている……不死者は今が眠る時間なのだと。

それにしても、彼女の望みが添い寝で良かった。正直に言うと、今日はもうイコルの杯の中身でも飲まなければ出そうになかった。


「……? 何かおっしゃいましたか、グルガン様?」


何でもない。本当に。


「そうですか? では眠りましょう!」


こちらを向いて枕に頭を預けるニムネは本当に嬉しそうに笑う。

いささかテンションが高過ぎる気もするが、これで本当に眠れるのだろうか。


「ふふ。グルガン様の匂い……」


気付いたのだが、彼女は主に対する依存の度合いが小さいように感じる。

ベッドの上で掛け布団をかぶり、互いに向かい合って横になる。

賢者ではない時の自分なら当然襲いかかり、他の眷属なら無理矢理にでもイチモツを勃たせようとする今の状況。

しかしニムネは目を閉じて安らかな笑みを浮かべるだけだ。

やはりあの時、イコルの杯の力によってありえない量の精を注いだことが影響しているのかもしれない。

いや待て、さっきも遠慮がちに聞いてきたことを思えば単に性欲を我慢しているだけの可能性もある。

思考の末一応聞くだけ聞いてみるかと思い、名前を呼んだ。


「すや……すや……」


本当に眠ってしまった。

自分が言うのもおかしいが、なんて健全な眷属なんだろう。


――ニムネと添い寝をし半日が経った夜、女公の居室にて報告会が行われた。


「そうですか、聞き入れてくれましたか……!」

「良かったですね、サミュレ様」


橙色の髪と青い肌を持つエイドラッカの貴族サミュレ、そしてその従者であるプシカ。やはりどちらも自分の眷属である。

今回自分がこの街に赴く理由を作ったのはサミュレ。彼女がニムネの身を案じ、ヴェラデナへ相談したのが始まりだった。

随分ニムネのことを心配していたのだなと聞けば、彼女はふっと笑みを浮かべる。


「グルガン様を主とする者同士として気遣っただけです。それに彼女に倒れられてはまた仕事が増えてしまいますから」

「サミュレ様は照れてらっしゃいます」

「い、いや。そ、そんなことはないよ」


プシカに弄られ赤面するサミュレに他意はなく、どこか肩の荷が下りたように朗らかだ。


「やっぱり先生が直接言ってあげるのが一番でしたね!」

「ええ。投薬が必要とならず私も安心しています」


二人の家族である幼女セラの言葉に同意するのは女医のノーテ。彼女達もまた、自分のグーラだ。

今回もし自分の説得が通用しなかった場合、ノーテが薬を使いニムネを強制的に眠らせる手筈になっていた。

心配しすぎだとも思うが、まあ念には念をということだ。特にニムネの場合は。


「食事もしっかり取られていましたし、よほどのことが無い限り大丈夫でしょう」


ノーテはカルテをぱらぱらとめくり、桃色の髪を揺らして満足気に頷いている。

彼女のお墨付きがあるならばもう心配はいらないだろう。


さて……これで自分の役目は果たされた。

今回はこれにてと立ち上がる。ノイナルクに戻る時だ。


「グルガン様、もう帰っちゃうの?」


何日も空けるとマリーカが寂しがる。それに、同行してもらったイリナも既に門で自分を待っている。

また今度と提案しヴェラデナの頭を撫でる。癖のある髪のふわふわとした感触が少し病みつきになりそうだ。


「えへへ……嬉しい。でも、私達だって『食事』がしたいな」


ゆらりとした妖艶な笑みを向けられ、背筋がぞくりと震えた。


「ねえグルガン様。他の子達にはあげたのに、私達だけお預けなんて嫌よ? 皆もそう思うでしょ?」


ふと視線を感じ顔を上げる。気が付くと皆が自分を見つめていた。


「はいそれはもう! サミュレ様はどう思われますか?」

「え!? ど、どうといわれても……そ、その、私はしてもらいたい……随分ご無沙汰だし、うん。セ、セラはどうだ?」

「私も先生と気持ち良くなりたいな!」


三人が和気あいあいと。


「リクスもグルガン様に愛して欲しいでしょ?」

「私はグルガン様のご意思に従います」

「そんな堅いこと言って~。知ってるのよ、リクスが自分で慰めてるの……もう何日目かしら?」

「どどど、どうしてそれを」

「女公だもの。部下のことは何でも知ってるわ!」


二人がこそこそと。

「グルガン様、実はアレットさんと共同で作った新しい精力剤があるんです。こちら短時間の性交にうってつけでして」


最後にノーテが鞄の中身を漁りながらにこりと笑った。

分かった。そこまでお膳立てまでされては仕方ない、やろう。

眷属は皆平等に満足させてやらねば。それも主の役目だ。


「やったぁ! じゃ、早速しましょ?」

「先生、こっちへどうぞ!」

「ふ、複数人でやるのは初めてだな。上手くできるだろうか……」

「大丈夫ですよサミュレ様。きっと一杯気持ちよくして頂けます」

「うう……なんでバレていたのだ」

「えっと注射器を消毒して……と」


ヴェラデナとセラに手を引かれる自分の周りを、皆が期待と興奮が入り混じった様子で囲む。

――本当に、ある意味で大変なことになってしまった。

かつてマリーカが口にした言葉を思い出しながら、心の中で苦笑するのだった。



以上で終わりです。
ここまで読んでいただけるグール様方にお礼を。ありがとうございます。

そして未プレイの生者様につきましては、ぜひ原作をご購入の上プレイしてみてください(できれば一作目から)。

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