【ダンガンロンパクロス】最原「…ここは、どこだ?」 (284)

※このSSは1~v3のキャラの中から私が独断で16人選んでコロシアイをさせてみようという趣旨のものです

舞台は才囚学園
ダンガンロンパ、スーパーダンガンロンパ、ニューダンガンロンパv3のネタバレを含みます

【参加者】
超高校級の探偵 最原終一
超高校級の??? 霧切響子
超高校級の幸運 狛枝凪斗
超高校級のギャンプラー セレスティア・ルーデンベルク
超高校級のゲーマー 七海千秋
超高校級の民俗学者 真宮寺是清
超高校級の総統 王馬小吉
超高校級の詐欺師 ???
超高校級の御曹司 十神白夜
超高校級のギャル 江ノ島盾子
超高校級の美術部 夜長アンジー
超高校級のメイド 東条斬美
超高校級のスイマー 朝日奈葵
超高校級の希望 カムクライズル
普通の少年 苗木誠

主人公は最原終一です


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【2階の教室】

最原「……目が覚めたら、こんなところにいたけど」

最原「見た感じ…学校かな?黒板があって、机があって…」

最原「…いや待て待て。そもそもなんで僕はこんなところにいるんだ」

最原「僕はいつものように、学校に行こうとしていたはずだ…」

最原「いつもの歩き慣れた通学路を歩いていたら、急に眩暈がして……」

最原「…だめだ。そこから先は思い出せない」

最原(……ん?)

最原(机の上に……何かあるぞ。紙切れ?)

最原「いや…何か書いてある」


『やっほー、超高校級のみなさん、お目覚めですかー??この手紙を見たら、至急体育館まで集合してくださーーい!』


最原「体育館……?」

最原「そこに行けば何かわかるのか?」

最原「………」

最原「行ってみよう」

【体育館】

最原(体育館に着いた)

最原(…でも、妙だな。僕がここに来たのは今日が初めてなはず)

最原(どうして、迷わずにここまで来れたんだ…?)

最原(……まぁ、そんなことを気にしていても仕方ないか)

最原(まずは、出来ることをやろう)

最原(僕は、不安と焦燥が入り交じった気持ちで、体育館の扉を開けた)

???「あっ、また誰か来たよ!」

???「ククク…これで16人だネ」

???「あと何人くらいいるんだろう?それとも、この人で最後なのかな?」

最原「………!」

最原(そこには、僕と同じようにここに集められたのであろう、15人の高校生がいた)


???「それにしても…奇妙なこともあるものだね。ここに来るまでの記憶が、全員揃ってないなんて…」

???「……ここに僕らを集めた人たちが、僕らの記憶を奪ったと考えるのが合理的でしょう」

???「記憶を奪う?そんな技術、今まで生きてきて聞いたこともありませんわ」

???「どうだろうねー。案外世界ってのは、オレたちが見ているものより広いものなのかもしれないよ?」

最原「あ、あのっ…!」

???「ん、どしたどしたー?」

最原「えっと…みんなも、僕と同じように、気付いたらここにいたの?」

???「ああそうだ。全く、記憶を奪ったにせよ洗脳して誘導したにせよ、俺たちをここに集めた連中は相当ヤバい奴ららしい」

???「しかし、私たちをここに集めた人物は今何をしているのでしょうね?ここに来れば何かしらの説明があると思っていたのだけれど」

???「…気長に待とうよ。暇なら何かゲームでも貸そうか?」


「うぷぷぷぷぷ……」


最原「!!」

「一つ、人の世の血をすすり……」


???「ッ……!なんだ!?」


「二つ、不埒な悪行三昧……」


???「何この声…どこから聞こえてるの!?」


「三つ、醜い浮世の鬼とはボクのことっ!」


???「……あそこよ」

最原(直後)

最原(そう言って、薄い桃色の女の子が指を指した先)

最原(ステージの上の、台の上から…)


モノクマ「呼ばれて飛び出てなんとやら!やっほー!モノクマの登場だよー!」


最原(左半身は愛くるしい白熊、右半身は凶悪そうな黒熊)

最原(そんな、悪趣味なヌイグルミが、飛び出してきた)

???「うわー、すごいねー!神様もびっくりのデザインだよー」

???「……あなたが、僕たちをここに集めた黒幕ですか?」

???「色々突っ込みたいところはあるがまあいい。とにかく説明をしろ」

モノクマ「あーあ。せっかく万を辞しての登場なのにみんな全然驚いてくれないね…」

モノクマ「普通ボクみたいな不思議を見れば恐怖で腰を抜かさない?全く、張り合いがないなぁ」

最原「…おい、そんなことはどうでもいい。いいから早く説明をしろよ」

最原「お前の目的はなんだ。どうして、僕たちをこんなところに集めた」

モノクマ「やれやれ、せっかちだなぁ」

モノクマ「まぁいいよ!そんなに知りたいなら教えてあげる!せっかちなみんなのために、色んな説明すっ飛ばして教えてあげるよ!」







モノクマ「これからミナサンにはコロシアイをしてもらいます」








最原(………)


最原(は?)


モノクマ「いいねいいね、そういう反応だよ。ボクはそういう反応が見たかったんだ」


???「おい、コロシアイとはどういうことだ。そもそもお前に何の権限がある」

モノクマ「え?そのままの意味だよ?」

モノクマ「撲殺刺殺銃殺毒殺圧殺絞殺轢殺呪殺…殺し方は問いません」

モノクマ「とにかく、殺意を持って、仲間の命を奪う。そうすれば…」

モノクマ「この才囚学園から脱出することが出来るのでーす!」

???「…才囚学園?」

モノクマ「うんそう。ちなみにボクはこの才囚学園の学園長なんだ」

モノクマ「偉いんだよー。ただの高校生であるキミたちなんか逆らえないくらい権力があるんだよー」

???「……わ、わけわかんない……」

???「…待ってよ。コロシアイの話が本当だとしてもさ、どうしてボクたちなの?」

モノクマ「なにが?」

???「だって、ボクみたいな何の才能もない、つまらない人間にこんなゲームをさせたところで、面白くもなんともないでしょ?」

???「ボクなんかよりも、もっと才能に溢れた…希望に溢れた人たちの方が、白熱した希望のぶつかり合いが見れると思うんだけど…」

???「…お前は何を言っているんだ」

モノクマ「うぷぷ、そりゃキミ視点から見ればそうなるのかもしれないね」

モノクマ「でも心配ゴム用!!」

モノクマ「ここにいる一人を除いた15人は、全員素晴らしい才能の持ち主だからです!」

最原「……え?」


最原(そういって、モノクマはスマホのようなものをばら撒き始めた)

最原(器用にも、それは僕らの手の中にすっぽりと収まる)

最原「電子生徒手帳…?」

最原(そのスマホ型の携帯端末には、そう書かれた画面が映し出されていた)

最原(…画面をタップすると、映像が切り替わる)

最原(そこには、僕のプロフィールが載っていた)


最原「最原終一……超高校級の、探偵?」


???「…超高校級の幸運?」

???「超高校級だと…?なんだ、この恥ずかしい肩書きは…」

モノクマ「うぷぷぷぷぷ。それがキミたちがここに集められた理由だよ」

???「…どういうこと」

モノクマ「キミたちは未来の人類を担っていくであろう、高校生とは思えない程の才能を持っています」

モノクマ「そんな人たちを集め、閉じ込め、絶望に満ちたコロシアイをさせる…」

モノクマ「どお?最っ高のエンターテイメントだと思わない!?」

最原「なッ………!」

最原(こ、こいつは……それだけのために!?)

???「…狂ってるねー、アンタ」

モノクマ「うぷぷぷ」

???「ま、"絶望"を"楽しむ"っていう考え方は、わからなくもないけどさ」

???「…せいぜい後悔しなよ、このアタシを巻き込んだことにね」

モノクマ「うぷぷぷぷぷ。んじゃ、そういうことでねー!清く正しいコロシアイライフをー!」



最原(…………)


最原(モノクマが去ったあと、僕らは呆然と立ち尽くしていた)

最原(コロシアイ、超高校級、才囚学園…)

最原(そのどれもが現実味がなさすぎて…)



???「……おい、いつまでそうしているつもりだ」

最原「…?」

???「この状況で途方に暮れたくもなる気持ちもわかる。だがそうしていて事態は好転するのか?」

???「で、でも急にそんな事言われても」

???「何もすることが思いつかないのなら、まずは自分に出来ることから始めてみろ」

???「ボクに出来ること…?」

???「そうだ……俺たちはお互いの名前もわからないままだ。まずは、自分の名前と…自分に与えられた才能を、皆で共有すべきではないか?」

最原「…うん、そうだね。まずはそこから始めた方がいいと思う」

???「にゃははー!神った提案だねー。神様も喜んでるよー」

???「フン、ならば言い出しっぺである俺から自己紹介を始めさせてもらうぞ」

十神「俺の名は十神白夜だ。一応超高校級の御曹司、ということになっている」

???「ちょっと待て貴様!!!」

十神「…なんだ?そういえばお前、妙に俺と雰囲気が似ているな。フン、もしや俺のファンか?」

十神「黙れ偽物が!十神白夜はこの俺だ!」

最原「……はぁ!?」

十神(偽)「なん……だと!?」

十神「見ろ!!生徒手帳にはちゃんと俺こそが十神白夜であると書いてあるだろう」

十神(偽)「……まさか、本物がいるとは」

最原「え?え?な、何がどうなってるの?」

???「あははははー!いいね、いいよ、つまらなくないよ十神ちゃん!全くの別人に成りすますなんて…キミの才能は一体何なの!?」

十神(偽)「……チッ」

十神(偽)「…嘘をついてすまなかったな。俺は十神白夜ではない…。俺は、超高校級の詐欺師だ」

最原「さ、詐欺師?」

十神(偽)「…ああ。別人に成りすまし、人を騙し、金を得る…俺は、そういう才能の持ち主だ」

十神「…しかし、体型はともかく、声までそっくりとはな。全く、その姿でどれだけの人間を騙してきたんだ」

???「それにしても…全く、悪い人だよねぇ、十神ちゃんは。もし本物の十神ちゃんがいなければ、キミは超高校級の御曹司を名乗り続け、その権威を使ってオレたちを操ろうとしてたんでしょ?」

???「クックック…危ないところだったよネ。超高校級の御曹司の言葉なら、簡単に信じちゃう人もいるだろうし…事実、さっきまでは君がリーダーシップを発揮してみんなをまとめていたわけだから」

十神(偽)「………すまん」

???「みんな、待ってよ!」

十神(偽)「……え?」

???「確かに十神はみんなを騙そうとしていたかもしれない…でもさ、こうやってみんなで話し合えるようにしてくれたのは、本物の十神じゃなくて、この十神じゃん」

十神「…何が言いたい」

???「それに、さ……誰かに成りすまして、人を騙さないと生きていけないなんて…やっぱりのっぴきならない事情があると思うんだよ」

十神(偽)「…………」

???「…だから、十神のことを、そんなふうに責めるのは、間違ってると思う!」

最原「………」

最原「僕も、彼女の言う通りだと思う」

最原「十神くんは、確かに僕たちを騙そうとしていたのかもしれない。けれど、そこに悪意があったかどうかは、少なくとも今決められることじゃないと思う」

十神(偽)「……ふたりとも」

???「そうだよねー!嘘って言っても、一概に悪い嘘ばかりでもないし…」

???「もー!みんな焦りすぎだよー!そんなに責めちゃ十神ちゃんが可哀想でしょー!?」

???「貴方が言い出したことではないですか」

???「あ、あはは…まぁ、十神くんがいなければ、ボクたちはいつまでもここに立ち尽くすしかなかったもしれないしね」

???「白夜(偽)はいいやつだよー神様も言ってるから間違いないよー」

十神(偽)「みんな…」

十神「…おい、いい加減そこの偽物を十神と呼ぶのをやめろ」

最原「あ、それはそうだね…」

???「でもなんて呼べばいいのかな。十神ー、本名なんていうの?」

十神(偽)「…無いんだ」

最原「え?」

十神(偽)「僕には、産まれた時から戸籍も名前も、何一つないんだよ」

最原「…………」

???「………えっ、と」

十神「…チッ、そういうことか」

十神(偽)「…フン、気にすることは無い」

十神(偽)「ずっとそうだったんだ。誰かの名前を借りねば、自分を主張することすらままならん」

十神(偽)「俺のことは好きに呼べ。詐欺師でも、偽十神でも、なんでもな…」

???「じゃ、豚神って呼ぶねー」

十神(偽)「…は?」

最原「え?」

???「太った十神白夜だからー、豚神!にゃははー!神ったネーミングセンスでしょー!」

最原「いやいやいや、それはさすがに…」

豚神「いいだろう」

最原「えっ!?」

豚神「今日から俺の名は豚神だ!」

最原「ええっ!?」

???「えー、まぁ、豚神がいいならそれでいいけどさー…」

十神「というか、それは結局ややこしいことに代わりはなくないか!?」

豚神「初めて人から貰った名だ」

最原「……!」

豚神「大事にするよ、ええと…」

アンジー「あっ、えっとね、アンジーは夜長アンジーっていうよ!超高校級の美術部なのだー」

豚神「夜長。感謝する」

アンジー「にゃははー!お礼なら神様に言ってよー」

???「じゃ、この流れで私も自己紹介しちゃおっかな」

朝日奈「私は朝日奈葵。超高校級の…スイマー、って書いてるね。泳ぐこととドーナツが大好き!みんなよろしくね!」

???「次はボクかな」

真宮寺「超高校級の民俗学者、真宮寺是清…。まァ、こんなナリだけど、仲良くしてヨ」

セレス「わたくしは超高校級のギャンブラー、セレスティア・ルーデンベルクですわ…以後、お見知りおきを」

???「セレスティアって、あのセレスティア!?」

セレス「おや、わたくしを知っているのですか?」

???「もちろんだよー!とっても有名だよね!いつだったか、ロサンゼルスでキミとゲームをしたこともあったよね!」

セレス「……あなた、何者ですか?なぜロサンゼルスでの出来事を…」

王馬「超高校級の総統、王馬小吉だよ!『ピエロ』って言葉に聞き覚えはなーい?」

セレス「………あの時のクソガキでしたか、全く、神はなんという運命の巡り合わせを…」

朝日奈「な、何の話…?」

最原「さ、さぁ…」

???「…次はボクでいいかな?」

真宮寺「構わないヨ?そんな弱腰になることもないと思うけど」

苗木「いやぁ、弱気にもなるよ。ボクの名前は苗木誠……どこにでもいる、普通の高校生」

最原「…あれ?キミの才能は?」

苗木「ないんだ」

朝日奈「ない?」

苗木「確かモノクマは言ってたよね、『この中の一人と除く、15人の生徒は云々』ってさ」

十神「…そんなことも言っていたな。だがそれは、あの白髪の気持ちの悪い奴のことを指していると思っていたが…」

???「…ボクもてっきりそう思っていたんだけどね」

狛枝「狛枝凪斗、超高校級の幸運…どうやら、ボクはただ運がいいってだけで、ここに連れてこられたみたいだ」

苗木「そしてボクは『特別枠』……何の才能も持たない一般人から、一人選ばれた…ここにはそう書いてあるよ」

最原「そ、そんな理不尽な…」

豚神「理不尽さでいえば、ここにいる全員そう変わらん」

十神「特別枠と幸運…何が違うんだ?」

狛枝「ボクにもよくわからないな。ボクも苗木クンと同じ…なんの才能も持たない一般人だし。この電子生徒手帳には、『人並外れた幸運を持つ少年』って書かれているけど…」

狛枝「確かにじゃんけんには負けたことがないし、くじは必ずいいものを引くし、飛行機が墜落しても一人だけ生き残ったりしたけど…」

狛枝「みんなの才能と比べたら、ゴミカスのようなものだよね?」

最原(……才能っていうより最早能力だよな…)

朝日奈「じゃあ、次は君かな?」

???「…………」ピコピコ

豚神「おい、お前。ゲームをやめろ」

???「…えー。まだこのボス倒せてないのにー」

十神「今はそんなことをしている場合ではない。さっさと自分の名前と才能を言え」

七海「わかったよ。…七海千秋でーす。超高校級のゲーマーでーす。よろしくお願いしまーす」ペコリ

七海「よしっ」ピコピコ

最原(そう言って、七海さんはまたゲームを始めた…)

最原(なんというか、マイペースな人だ…)

最原「えっと、次は僕かな」

最原「最原終一…超高校級の探偵ってことになってるよ。よろしく」

王馬「…へぇ~、探偵さんなんだ」

十神「ククク…このゲームにおいて、ぴったりの逸材じゃないか」

最原「げ、ゲームって…!」

アンジー「探偵がいるんだねー。だったらコロシアイが起きても安心だねー」

最原「ちょ、ちょっと…超高校級なんて言われてるけど、僕の探偵としての実績なんて、たまたま遭遇した殺人事件を一つ解決したくらいで….」

豚神「十分誇れることだろう。たまたま殺人事件に遭遇するなど、滅多にあることではない。その状況下で、冷静に論理的に事件の真実を導くことができる…並の探偵より、余程優れている」

最原「やめてよ、それに…コロシアイなんて、起こってしまったら遅いんだ」

最原「コロシアイなんて、起きてはならないんだよ」


最原(僕がそこまで言うと、一瞬、変な空気になった)

最原(白けたような、呆れたような…でも、そんな空気はすぐに霧散し)


豚神「そうだったな。ここがどこだかは知らんが、少なくとも俺たちの最終目標はここを全員で脱出することだ」

豚神「断じて、コロシアイが始まることではない」

朝日奈「うんうん!豚神の言う通りだよ!」

真宮寺「…まァ、そうだネ。それじゃあ、自己紹介を進めていこうか」

真宮寺「次は君だヨ、長髪の彼」

???「………僕ですか」

カムクラ「…僕は、超高校級の希望」

カムクラ「カムクライズルと、そう呼ばれています」

最原(…呼ばれている?)

カムクラ「これでいいですか?」

豚神「…待て、超高校級の希望?お前は、何の才能を持っているんだ?」

カムクラ「………」

カムクラ「知らない方が身のためですよ」

十神「なに?」

カムクラ「それよりも、早く次の自己紹介を進めてください。全員の名前と才能を把握すれば、僕は勝手に消えるので」

最原「ちょ、ちょっと待ってよ、カムクラくん!」

???「……余計な詮索はしない方がいいのではないかしら?」

苗木「どういうこと?えっと、君は…」

東条「超高校級のメイド…東条斬美よ」

東条「誰しも知られたくない秘密の一つや二つあるでしょう」

東条「それを無理に詮索するのは、人としてのモラルに関わる問題よ」

カムクラ「話が早くて助かりますね」

???「なーんか納得いかないとこもあるけど、ま、自己紹介とか早く終わらせたいのはアタシも同じだし、これ以上深入りすることはないんじゃない?」

江ノ島「あ、ちなみにアタシの名前は江ノ島盾子。超高校級のギャルよ。みんなも一回ぐらいはアタシのこと見たことあるんじゃなーい?」

???「……そうね。東条さんのいうことが正しいと思うわ」

霧切「私の名前は霧切響子。これで全員分の自己紹介は終わりよね?」

霧切「…じゃあ、私は行くわ」

最原「えっ、霧切さん!?君の才能は!?」

今気づいたんですけど15人しかいないですね
16人いる気で書いてました
15人ってことにしといてください

カムクラ「言えない、もしくは言いたくない才能なのでしょう」

カムクラ「東条斬美も言っていましたが、人の触れてほしくない領域に不躾に踏み込むのはあまり褒められたものではありませんよ」

カムクラ「では、僕も失礼するとします」

最原「そ、そんな…」

七海「…あ、終わったの?」

七海「じゃあ私も行こうかな…ずっとこんなところにいるわけにもいかないし」

朝日奈「えっ…いや、今からみんなで、これからどうするかを話し合うんだよ!?」

狛枝「ボクは遠慮しておくよ。ボクみたいなゴミクズが、話し合いでみんなの役には立てなさそうだし…」

アンジー「自己紹介してる間に、神様もだいぶ調子が戻ってきたみたいだからー、あとはアンジーと神様だなんとかするよー」

十神「やる事は既に決まっている。この学園内の探索だ。口を動かしている暇があれば足を動かせ」


最原(そんなふうに)

最原(僕と、朝日奈さん、苗木君、豚神君を除くみんなは、散り散りに体育館を後にしてしまった)

うーん、別に全部の展開が定まっているわけじゃないので追加も出来ますが、自己紹介終わっちゃったんで15人で行きたいです
どうしても一人追加したいなら追加したい人の名前ください
一番最初に出た名前の人を追加しましょう

最原「……みんな行っちゃったね」

苗木「まぁ…仕方ないんじゃないかな?やっぱり、こんな状況だし…みんな、誰かを信じることができないんだよ」

朝日奈「でも、一人でどうにかなる問題じゃないじゃん…こんなの」

豚神「…まぁ、15人全員の意志が揃うなんてことは最初から有り得ないとは思っていた」

豚神「4人残っただけでも上出来だ。いなくなった奴らを気に来ていても仕方がない。俺たちは俺たちに出来ることをするぞ」

最原「豚神くん…うん、わかったよ。僕は、君に協力する」

朝日奈「とは言っても、何から始めればいいんだろう…」

苗木「やっぱり探索じゃないかな。モノクマの言った、コロシアイなんて事態にはならないためにも…まずは、出口を探す必要がある」

豚神「そうだな。だが、出口を探すのは他の連中もしているだろう」

豚神「さすがに出口を見つけて、それを俺らに何の相談もせず脱出を試みようとする無鉄砲な奴はこの中には居なさそうだ」

朝日奈「じゃあ、私たちは何をすればいいの?」

豚神「…凶器になりそうなものを、片っ端から回収していく」

ちーたん追加了解。

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苗木「凶器になりそうなものって、どこにあるんだろう」

豚神「それを探すために、こうやって歩いているんだ」

朝日奈「うーん…教室の机とか、椅子とか?」

最原「そういう処分しにくいものはどうしょうもないよね…」

豚神「このコロシアイにおいて注意すべき凶器は、持ち運びやすく、なおかつ殺傷性の高い武器だ」

豚神「食堂へ行くぞ。包丁類は、必ず然るべきところに保管せねばならん」

【食堂】

???「きゃあああああーーーっ!!!」

豚神「!?」

最原「お、女の子の悲鳴!?」

バターン

朝日奈「ど、どうしたの!?何が……」

???「ううっ……ぐすっ……」

真宮寺「…心外だなァ。いくらボクの見た目が怖いとはいえ、泣き出すことはないじゃないか」

苗木「えっ、えっ…?し、真宮寺クン?そ、その子誰…?」

真宮寺「ボクも知らないよ。ただ探索をしにこの部屋に入ったら、この子が机に突っ伏して寝ていたんだ」

真宮寺「起こそうとして肩を揺さぶったら起きたことには起きたんだけど、ボクの顔を見るなり大声をあげて泣き出してしまってネ…」

???「う、うぅ……ご、ごめんなさぁい……」

最原「……あれで全員かと思ってたけど、まだ居たんだね」

モノクマ「あーー!やっと起きた!」

最原「わっ、モノクマ!」

???「ふぇ、ふぇえ…?」

モノクマ「全く!キミがなかなか起きないから先に始めちゃったじゃないか!みんなはキミと違ってせっかちなんだよ!キミのペースに合わせるわけにはいかないんだ!」

豚神「…おい、お前はなんだ。どこから出てきた」

モノクマ「とりあえずキミの分の電子生徒手帳は渡しておくから。じゃあ後のことはよろしくー。コロシアイについての説明もしておいてね。ばいならー」

???「え、えぇっ!?こ、コロシアイ…?」

最原「……まずは、自己紹介からだ。君の名前を教えてくれないかな?」

豚神「超高校級のプログラマー、不二咲千尋…」

不二咲「で、電子生徒手帳には、そう書いてあるよぉ…」

真宮寺「ククク…プログラマーにとっては、寝坊なわて日常茶飯事なのかな?」

不二咲「うう…そんなことないよう…」

豚神「…コロシアイについては、さっきも説明した通りだ」

豚神「この学園は非常に危険だ。恐らくあの手この手で、俺たちにコロシアイをさせようとしてくるだろう」

朝日奈「不二咲ちゃん、一緒に行動しない?一人ぼっちは心細いでしょ?」

不二咲「う、うん!もちろんだよ…こんなことになって、僕、どうすればいいか…」

最原「コロシアイ、か…」


最原(当たり前のことだけど、コロシアイがいけないなんて思っているのは全員ではないんだろう)

最原(命を賭けてでも、ここから出たいという人もいるだろう)

最原(……僕は、信じていいのだろうか)

最原(この人たちは、そうじゃないと…信じ切れるのだろうか)

不二咲「あっ、真宮寺くん…」

真宮寺「何かナ?」

不二咲「ごっ、ごめんなさいっ、急に泣いたりして」

真宮寺「あァ、もう気にしていないよ。この外見を驚かれるのは、初めてではないしネ」

不二咲「それでも、僕が君を傷つけちゃったのは確かだと思うから…謝らせて。お願い」

真宮寺「………」

真宮寺「ククク……いいね、うん。君は美しい心を持っているヨ」

不二咲「し、真宮寺くんがよければだけど…君も、僕たちと一緒に探索しない?…や、やっぱり、人は多い方がいいし…」

真宮寺「残念だけど、それは遠慮しておくヨ。職業柄、探索というのは一人の方がやりやすいんだ」

真宮寺「でも、気が向いたら話しかけて欲しいナ。ボクも君に話したいことがあるし…」

真宮寺「会わせたい人もいるしネ」

不二咲「う、うん…!わかった!ありがとう!」

最原(そう言うと、真宮寺くんは去っていった…)

苗木「会わせたい人って…なんだろうね?」

朝日奈「あっ!もしかしてご両親とか!?」

不二咲「ええっ!」

朝日奈「すごいじゃん不二咲ちゃん!君って結構モテるんだね!」

不二咲「そ、そんな…僕なんて…だって僕は…」

豚神「…おい、その辺でいいか?そろそろ目的を果たすぞ」

最原「あっ、うん!」

【厨房】

最原「…結構広いね」

豚神「学園の食堂として考えた場合には、少々手狭だからな」

苗木「この学園ってなんなんだろうね?食堂のテーブルにも、16人分の椅子しかなかったし…」

苗木「まるで…ボクら16人だけのために作られた学校みたいだ」

朝日奈「わ、私たちのためだけに?何のために」

豚神「コロシアイをさせるため……フン、まさかな」

不二咲「ナイフとか、フォークとか、凶器になりそうなものなら沢山あるけど…これ、どこにしまうの?」

豚神「いや、仕舞うのは包丁だけでいいだろう。そこにダンボール箱がある。これに刃物を入れ、ガムテープで封をし、俺たちで見張るんだ」

不二咲「…電子生徒手帳に、校則と、学園の案内図が載ってるよ」

不二咲「僕たちが泊まる寄宿舎も用意されてるみたい」

豚神「ならば、俺の部屋に置くか。そうすれば、誰もこれを使えまい」

朝日奈「そうだね、そうとわかれば早速包丁を仕舞おう!」

最原「………」

最原(そんなことをして大丈夫なのか…?)

最原(凶器を特定の人物の元に一箇所に集める。他の人に知れたら顰蹙を買うだけじゃ…?)

最原(…でも、コロシアイを止めるのに、これ以上に有効な手立てはない…)

最原(豚神くんを信じるからこその案だけど…)


朝日奈「……あれ?」

朝日奈「包丁が一本無いよ」

最原「!!!」

豚神「なに…?」

朝日奈「う、うん…これを見てよ。ほら、ここに指してあったはずの包丁がないんだ」

不二咲「え、えぇ…!?な、なんで…」

苗木「まさか…もう動き出してるって言うのか?コロシアイなんて…最悪な事態が…」

最原「そ、そんな……」

豚神「……作戦を変えるぞ。包丁を持ち出すという計画はなしだ」

豚神「皆をここに集める。そして、脅威を知らせるんだ」

朝日奈「わかった。みんなを連れてくればいいんだね」

豚神「俺はここで他に誰か来ないか見張っておく。お前らは他の連中を探して来い」

最原「わかったよ!」

最原「急いで探すぞ。みんなが危険だ!」

誰に会いましたか?↓1

最原「東条さん!」

東条「…あら、貴方、最原くん?どうしたの?血相を変えて」

最原「大変なんだ。急いで食堂に来てくれ!」

東条「?一体何があったというの?」

最原「…食堂の包丁が、一つ無くなっていた」

東条「………!」

最原「この中の誰かが持ち出したのは間違いない……今、みんなが危険なんだ」

最原「とりあえず詳しい話をするために、一旦みんなを食堂に集めようって話になったんだ。だから、東条さんも早く食堂に!」

東条「そういうことなら、わかったわ。食堂に行く前に、呼び込みを手伝いましょう」

最原「…東条さん!ありがとう!」


最原「……よし、次だ!」

↓誰に会いましたか?

最原「クソッ、なかなか誰も見つからないな…」

最原「男子トイレになら…」ガチャ

霧切「…………」

最原「うわぁっ!?」

霧切「!?…誰かと思えば、最原君ね」

最原「い、いやいや、それはこっちの台詞だよ霧切さん!なんで男子トイレになんかいるのさ!」

霧切「探索をするというなら、妥協せず隅々とするのが筋だと思うのだけれど」

最原「ああ、もう!正論だけどそういうことじゃないでしょ!」

霧切「ところで何か用?…何か、起きたの?」

最原「あ、うん。そうなんだ。食堂の包丁が一本無くなってて…」

霧切「なんですって?」

最原「このままだとみんなが危険だから、とりあえずみんなに声をかけて、食堂に集まってもらっているんだ」

霧切「なるほど。そういうことならわかったわ」

最原「助かるよ」



最原「もうそろそろ全員かな…」

↓誰に会いましたか?

最原(地下のゲームルームに来た)


王馬「あちゃー、またオレの負けかー」

セレス「ふふふ、全く大したことありませんわね」

王馬「まぁ、ギャンブルはオレの専門じゃないしね」

セレス「あら、では何が専門だというのですか?」

王馬「えー?イカサマ、かな?」

セレス「っ!?」

最原「……あの、ちょっといいかな」

セレス「…私相手に、堂々とイカサマを宣言し、それを全く悟らせないとは…」

王馬「イカサマってバレなきゃイカサマじゃないんでしょ?だいたい、オレがイカサマを使ったって言うのも、オレの嘘かもしれないしね?」

セレス「いいでしょう、私も本気を出させてもらいます」

王馬「あははっ!そう来なくっちゃ!ゲームは本気でやらないとつまらないからね!」

最原(…………)



最原(話を聞いてくれない2人を、なんとか食堂まで連れてきた…)

疲れたのでここまで

【食堂】

豚神「…来たか」

最原(僕らが食堂に着いたときには、既にこの学園にいる16人全員が集まっていた)

最原(不二咲さんはもう既に自己紹介を済ませていたらしく、王馬君とセレスさんに挨拶をすると、豚神君のところへ戻って行った)

狛枝「それじゃ、詳しい話を聞かせてもらおうかな」

セレス「そうですわね。包丁が一本無くなっている…まさか、これの意味がわからない方はいらっしゃいませんよね?」

苗木「包丁が無くなったことは、みんなもう知ってるんだね…」

苗木「そうだよ。ボクらが食堂に探索に来て、厨房を漁っていたら、本来包丁が刺さっているはずの場所に、包丁が無かったんだ」

真宮寺「最初から無かったという可能性はないの?」

不二咲「…うーん、僕らはその包丁があったところを見てたわけじゃないから、一概にそうだと断定も出来ないけど…」

朝日奈「他は全部あるのに、その一本だけないなんて、不自然過ぎるよ」

豚神「……それに、重要なのは包丁が最初から一本足りなかったという可能性ではない」


豚神「この中の誰かが、俺たちの目を盗み、包丁を持ち出した可能性がある。…その可能性こそが、一番の問題なのだ」

東条「……!」

最原「…念のために聞くよ。この中に、厨房から包丁を持ち出した人はいる?」

カムクラ「馬鹿馬鹿しい質問ですね。いたとして、答えるわけがないでしょう」

王馬「そうだよね。この状況で、厨房から包丁を持ち出す理由なんてただ一つ…」

狛枝「誰かを殺すため……そうだよね?」

王馬「もー、狛枝ちゃん!オレの決め台詞取らないでよー!」

狛枝「あはは、ごめんごめん」

アンジー「でもでもー、一体誰が包丁を持ち出したんだろうねー」

真宮寺「モノクマが消えてから、ボクが食堂を訪れるまで結構時間があったはずだから…」

真宮寺「この中の誰でも、包丁を持ち出すことが出来たはずだよネ」

江ノ島「豚神たちは違うんじゃない?だって4人はずっと体育館にいたんでしょ?」

苗木「あと、不二咲さんも違うね。彼は真宮寺くんに起こされるまで、ずっと寝ていたそうだから…」

霧切「…どうかしらね、その子が本当に寝ていたかどうかなんて、誰にも証明のしようがないもの」

不二咲「えっ!?ぼ、僕は本当にずっと寝てて…」

十神「フン、どうだかな。考えてもみろ、仮に俺たちの誰かが包丁を取りに食堂へ訪れたとする。そしたら、そこで知らない誰かが眠っているんだぞ?」

十神「それをスルーして、包丁を取り、正体不明のそいつを起こさずに、何事も無かったかのように帰る…あまり現実味のある話ではない」

東条「…どうかしらね、あなたならそのくらいはやってのけるんじゃないかしら。"超高校級の御曹司"君?」

十神「…やめろ。その臭い二つ名で俺を呼ぶんじゃない」

七海「…でもさ、本当に誰かが包丁を持ち出したのかな?」ピコピコ

豚神「さっきも言っただろう。事実がどうかではない。可能性があるのが問題なんだ」

七海「もし最初から包丁が無かったんだとしたら…きっとこの状況は、モノクマの思い通りだね」ピコピコ

豚神「………」

セレス「一理ありますわね」

狛枝「モノクマがボクたちを疑心暗鬼にさせるために、わざと包丁を一つ少なくしておいた…うん、考えられない話じゃないね」

狛枝「…ボクとしては、この中の誰かが包丁を持ち出してくれていた方が、都合がいいけどね」

最原「……え?」

狛枝「ああただの独り言だよ。気にしないで」

モノクマ「ちょっと聞き捨てならないことが聞こえましたな!」ヒョイ

朝日奈「わっ!また出た!」

カムクラ「…何をしに来たんですか」

モノクマ「ボクが最初から包丁を少なくしてたって?」

モノクマ「そんなことはしていません!ちゃんと包丁は、オマエラの中の誰かに盗み出されたんだよ」

七海「…それを言うためだけに、わざわざ来たの?どうせ信じてもらえないよ?」

モノクマ「あーうん…そだね…ボクが最初から包丁を少なくしていないことを証明する手立てはないもんね…」

モノクマ「まぁ信じなくてもいいけどね!ボクは忠告したからね!仲間を信じるのは勝手だけど、それで殺されてもボクの責任じゃないからね!」

カムクラ「…本当にそれだけのためにここに来たんですか?まだ何かあるんじゃないですか」

モノクマ「あーもう急かすなぁ!全くやりづらくてしょうがないよ!」

カムクラ「いいですから。手短に言ってください。僕も時間を無駄にしたくはないんです」

モノクマ「へいへい、わかりましたよーだ…」


モノクマ「あのね、なんかいい感じにギスギスしてきてくれたから、コロシアイのルールをちゃんと説明してあげようか思ってさ」

最原「コロシアイの…ルール?」

江ノ島「…ルール?コロシアイに、ルールがあるの?」

モノクマ「ま、詳しくはその生徒手帳にある、【校則】を見てよ…」

《才囚学園校則》
・才囚学園での共同生活に期限はありません。

・学園内で殺人が起きた場合、全員参加による学級裁判が行われます。

・学級裁判で正しいクロが指摘できれば、殺人を犯したクロだけがおしおきされます。

・学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、クロ以外の生徒であるシロが全員おしおきされます。

・クロが勝利した場合は才囚学園から卒業し、外の世界に出ることができます。

・シロが勝ち続けた場合は、最後の3人になった時点でこのコロシアイは終了です。

・夜10時から朝8時までの「夜時間」は、食堂と体育館が封鎖されます。

・才囚学園の学園長であるモノクマへの暴力は固く禁じられています。

・モノクマが殺人に関与する事はありません。

・電子生徒手帳は貴重品なので壊さないでください。

「死体発見アナウンス」は3人以上の生徒が死体を発見すると流れます。

・才囚学園について調べるのは自由です。行動に制限は課せられません。

・校則違反を犯した生徒は処分されます。

・なお、学園長の都合により校則は順次増えていく場合があります。



最原(………学級裁判?)

モノクマ「うぷぷぷ…そう。このコロシアイにおいて、卒業するにはただ人を殺すだけではダメなんだ」

モノクマ「その後の学級裁判で…シロ全員を欺き、騙しきらないといけないんだよ」

カムクラ「…そうですか」

十神「ほう。それはなかなか面白いではないか」

王馬「なるほどねー。これは迂闊には殺せないなー。セレスちゃんをいつ殺っちゃおうか頑張って考えてたけど、練り直しかー」

セレス「奇遇ですわね。わたくしもあなたをどうお料理して差し上げるか悩んでいたところでしたの」

狛枝「素晴らしいよ!クロの希望とシロの希望…!その両方がせめぎ合う学級裁判!あぁ…一体ボクは、ここでどんな希望を目にすることが出来るんだろう!」

江ノ島「なんでこいつらこんな絶望的なまでにノリノリなわけ…」

豚神「…まぁ、ルール無用のデスゲームではないというのは、嬉しい情報だな」

最原「それは、そうだね。殺人にそれ相応のリスクが伴う以上、少なからず抑止力にはなってくれるだろうし…」

モノクマ「うぷぷぷ…それはどうかな」

東条「…一つ聞いておきたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

モノクマ「はいはい、何かな?」

東条「事故や自殺…病死の場合は、誰が犯人ということになるの?」

モノクマ「あー、事故や自殺ね。自殺の場合は被害者がクロになるよ。自殺だって立派な殺人だからね。自分という大切な存在を殺しちゃったわけだからさ…」

モノクマ「事故死、病死はどうしよっかな…。『あのコロシアイ』の時の判決から考えると…」

モノクマ「事故は自己責任かな!例えばバナナの皮を踏んで死んだ人が居ても、足元に注意していなかったその人のせい」

モノクマ「…逆に、他の人が仕掛けた罠にかかって、殺意のない殺人を起こしてしまった場合も、クロとなるのは殺した本人だよ」

江ノ島「ちょっと待て、『あのコロシアイ』って…どのコロシアイのことを言ってんの?」

モノクマ「およ?ボクそんなこと言ったかな?」

朝日奈「言ったよ、絶対言った!」

モノクマ「そんな事言われても言ってないものは言ってないからねー。あ、病死は不摂生な生活を送ったその人が悪いってことで」

モノクマ「じゃ、ボクは用事があるからこの辺で。ばいならー」

最原「お、おいっ、ちょっと…」

霧切「…行ってしまったわね」

狛枝「『あのコロシアイ』…この言葉から考えると、これまでにもこういったコロシアイが行われたことがある……」

狛枝「こう考えるのが普通だね」

王馬「えー?ホントにー?こんな面白そうなゲームが定期的に行われてたなら、オレみたいな人間が放っておくはずがないんだけど」

セレス「私も…闇社会には精通しているつもりですが、こんなゲームは存在すら知りませんわ」

十神「…手の込んだ設備、整えられたルール、定期的に行われているゲーム……」

十神「普通に考えれば、見世物にされているとしか思えん。しかし、俺だってそんなゲームの存在は露ほども聞いたことがない」

カムクラ「……その記憶ごと奪われている」

カムクラ「そう考えるのが妥当です」

苗木「記憶を、奪う…?」

七海「…そっか、そうだね。私たちはみんな、ここに来た経緯を忘れている」ピコピコ

アンジー「誰かが私たちを捕まえてー、記憶を奪ってー、ここに閉じ込めたってことー?なんのためにー?」

不二咲「そもそも、記憶を奪うってどうやって…?今の科学技術って、そこまで発展してたようには思えないんだけど…」

王馬「もしかしたら、オレたちは無理やりここに連れてこられたわけじゃないのかもしれないね。ただオレたちが忘れているだけでさ…」

霧切「…何を言いたいの?」

王馬「いや、何でもないよ。ただあくまで一つの可能性って奴。だからそんな難しい顔しないでよ霧切ちゃん」

王馬「でも、そう考えたら色々納得いくよね。…そうでしょ?キミはまだ、自分の才能を思い出せないんだもんね?」

最原(そう言って王馬君は、懐から電子生徒手帳を取り出し、霧切さんに渡した)

最原(……どういうことだ?)

霧切「……あなた」

王馬「もー、ちゃんと用心しなきゃダメだよ?オレが善良な悪の総統だから良かったけど、殺人鬼だったら死んでたかもね?」

セレス「相変わらず手癖が悪いですわね」

最原(…スったのか!?人の電子生徒手帳を!?)

豚神「…王馬、お前は何を言いたい」

豚神「『才能を思い出せない』とはどういうことだ。お前は霧切の電子生徒手帳を見たのか?」

王馬「にしし、そうだよ。まぁ、ここでオレが全部説明しちゃってもいいけど…」

王馬「霧切ちゃん、そろそろ話したら?もう隠し事なんてしてる場合じゃないでしょ?」

霧切「………….」

最原「……霧切さん」

最原(人の電子生徒手帳を盗み見るなんて、決して褒められた行為じゃないけど…)

最原「君は、何を知っているの?もし君の持っている情報が、僕たちの役に立つものなら……協力してくれないかな」

霧切「………」

霧切「……はぁ、わかったわよ。話すわ」

最原「…!」


霧切「私は、記憶喪失なの」

江ノ島「は?」

十神「記憶喪失……?」

霧切「…私がこの学園のロッカーの中で目覚めた時、私は自分の名前も、生い立ちも、何もかもが分からなかった」

霧切「でも、言語能力は失っていないし、社会常識もきちんと備わっている」

霧切「ただ『私に関する記憶』だけが、ぽっかりと抜け落ちていたのよ」

アンジー「自分の名前もー?でも響子はちゃんと響子って名乗ったよねー」

霧切「それは電子生徒手帳にそう書いてあったからよ」

最原「電子生徒手帳に…?」

霧切「『超高校級の??? 霧切響子』……これが電子生徒手帳にあった、私のプロフィール」

霧切「私の知る、唯一の私……」

苗木「……………なんだよ、それ」

苗木「霧切さんは、自分の名前と、自分に何かしらの才能があるってことしかわからないの…?」

王馬「結構徹底的だね。オレは霧切ちゃんの電子生徒手帳から、才能に関する記憶を失ってるんじゃないかって推測しただけなんだけど…」

王馬「まぁ、これではっきりしたんじゃないな?霧切ちゃんは、ここに来る前までの自分に関する記憶だけを失っている…」

王馬「こんな都合のいい記憶喪失なんて、偶然ではありえないよ。……間違いなく、記憶操作をされてる」

カムクラ「……記憶操作の技術の存在が立証された以上、僕らもそれにかけられている可能性が高い」

カムクラ「そういうことですよ」

朝日奈「そんな……人の記憶を奪うなんて。一体誰が、こんな酷いことを」

セレス「…なるほど、ようやく王馬君の言っていたことの意味がわかりましたわ」

最原「……え?」

十神「……予測はつくな。そもそも、俺という存在がこのようなところに閉じ込められているということがまずおかしいのだ」

江ノ島「えー?なになにー?盾子ちゃんさっぱりわかんないんですけどー」

王馬「察しのいい人は勘づいてるみたいだけどさ、その話は後にしようよ」

王馬「今このタイミングだと……面倒な展開になりかねないし」

最原(………)

最原(王馬くんの言いたいことは、わかる)

最原(だけど、やっぱり信じられないな…)

朝日奈「な、何よそれ!煮えきらないなぁ、もう!」

七海「….気付いてないなら、気付いてないままの方がいいんじゃないかな。…と、思うよ」

不二咲「七海さん、それはどういう…」

狛枝「………………ふふっ」

霧切「ともかく、私の知っていることは話したわ」

霧切「…まだ何か質問はある?」

最原(霧切さんのその問いかけには、誰も答えなかった)

霧切「そう。なら私は失礼させてもらうわ」

苗木「霧切さん…!」

霧切「言っておくわ。私はこのゲームが終わるまでに、必ず記憶を取り戻してみせる」

霧切「その為には何だってやる。……だから、その邪魔だけはしないで」

最原(一方的にそう言うと、霧切さんは去って行ってしまった)

最原(僕らの中には、重苦しい空気が流れた)

豚神「……あの分では、協力を仰げそうにないな」

苗木「この中に、誰かを殺そうとしてる人がいるのかもしれないのに…」

カムクラ「あるいは、霧切響子自身がそうである可能性もありますね」

苗木「……え?」

十神「ありえん話ではないだろう、アイツは自分の記憶を取り戻すためなら何でもすると誓った。…少なくとも、誰かを殺す覚悟くらいは、とっくに決めているはずだ」

朝日奈「や、やめようよ!そんなふうに仲間を疑うの!」

東条「…仲間?いいえ、この状況下では、自分以外の全員は自分の敵よ」

朝日奈「えっ…」

真宮寺「まァ、『超高校級』なんて大層な才能を持つ人たちだ。ここから出たいと思う気持ちも人一倍強いだろうネ」

真宮寺「そんな極限の状況下で、あるはずの包丁が一本ない…周りを信じろという方が、おかしな話だヨ」

最原(…………)

最原(悔しいけど、真宮寺君の言う通りなんだよな…)

最原(勿論、包丁が持ち出されていない可能性も、ある)

最原(でも…もし、この中の誰かが……)

江ノ島「はぁ?逆でしょ。こんな状況だからこそ、みんなで協力しなきゃダメなんでしょ」

最原「……!」

狛枝「そりゃ、協力出来たらしたいよ。でも、これがコロシアイゲームである以上、誰かを信じることは…」

江ノ島「なんでアンタら、コロシアイゲームなんかに乗る気マンマンなわけ?」

狛枝「…え?」

王馬「………」

江ノ島「いい?アタシらは拉致られるか、何かして
とにかく外の世界からここに連れてこられたんでしょ?」

江ノ島「だったら、この学園のどっかに、アタシらが入ってきた、外へと繋がる道があるはず」

七海「……でも、学園の外はおーきな壁でぐるっと囲まれちゃってたよ?」

王馬「オレらが入ってからその道を塞いだ可能性もあるし、だいたいそんな抜け道、あのモノクマが用意してるわけが…」

アンジー「おー、それって出口のことかなー?それならあるよー」

王馬「えっ、あるのっ!?」

豚神「夜長…!どうしてそんな大事なことを今まで黙ってたんだ!!」

アンジー「んーとね、聞かれなかったから?」

最原「そんな適当な!」

朝日奈「出口ってどこ!?本当にあったの!?」

アンジー「中庭のマンホールの中だよー。神様と一緒に探索してたら見つけたんだー。神ってるでしょー!」

七海「……大丈夫?ミミックとかじゃない?」

江ノ島「そんなの気にしてる場合じゃないでしょ!一縷でも希望があるなら、それに縋るしかないんだよ!」

豚神「霧切がいないが……仕方がない。急いで中庭に行くぞ、お前ら!」

苗木「おお!」

カムクラ「………」


カムクラ「……僕は遠慮しておきます」

最原「……え?」

王馬「どうしたのカムクラちゃん。キミはそんなにここに残りたいの?」

カムクラ「逆に聞きますが、徒労に終わるとわかっているのに、何故あなたたちは行くんですか?」

十神「徒労かどうかはわからんだろう。なんだ、お前は一度出口を使ったことがあるのか?」

カムクラ「使ったことがなくても、わかりますよ」

カムクラ「…"分析"すればね」

最原(分析…?)

江ノ島「アンタの自信の源が何かは知らないけどさ」

江ノ島「いくら分析して予測したところで、結局やってみないとわからないってモンも多いのよ?」

カムクラ「……ツマラナイ考え方ですね。実に非合理的です」

豚神「……カムクラ。俺たちは別にお前に俺たちと一緒にいることを強制はしない」

豚神「だが、協力し合える範囲では、協力してくれないだろうか」

カムクラ「無駄なことに付き合う気は毛頭ありませんね」

最原「あっ、カムクラくん!」

最原(カムクラくんは、そう言い残して、食堂を後にしようとする)

カムクラ「……ここから出れるのなら、とっくに出ていますよ。僕も、…彼女も、ね」

最原(長髪を靡かせながら、僕らに一瞥もくれず、彼はどこかへ行ってしまった)

とりあえずストップ

【中庭】

最原(結局、カムクラくんも霧切さんも置いて行くことにした)

最原(時間が惜しかったのだ。出れるのなら、一分一秒でも早くこんなところから出たい)

アンジー「このマンホールの中だよー」

十神「……マンホールなのに蓋がないのか」

七海「最初から無かったんだとしたら…モノクマは私たちに何をさせたいんだろうね」

江ノ島「んなこといちいち気にしてても仕方ないっしょ。可能性が1%でもあるならそれに賭けるしかないのよ」

豚神「その通りだ。よし、行くぞ」

最原「うん!アンジーさん、本当にありがとう。君がいなければ、今頃は…」

アンジー「お礼ならアンジーじゃなくて神様に言ってよー」

最原「もう、アンジーさん。今はそんな冗談は…」

アンジー「冗談?何言ってるの?神様は本当にいるんだよ?」

最原「え!?」

最原(急に雰囲気が…)

アンジー「そっかー。終一も神様の声が聞こえないように、洗脳されちゃってるんだねー」

最原「は、はぁ…?」

アンジー「無事ここから出れたら、アンジーがその洗脳を解いてあげるよー」

アンジー「寝ても覚めても、神様のことしか考えられない体にしてあげるー」

最原「………………」

最原(……アンジーさんって、こういう人だったのか….)

朝日奈「ほらっ、最原も早く降りて!」

最原「う、うん!今行くよ」

【デスロード入口】

最原(マンホールの下に降りるとすぐ、『出口』と書かれた看板が見えた)

十神「………なんだ、このあからさまな出口は」

セレス「……帰りたくなってきましたわね」

狛枝「ははっ……何これ」

朝日奈「ま、まぁまぁ、みんな。とりあえず入ってみようよ。まさか入った途端死ぬなんてことには、ならないだろうし…」

王馬「そんなことになったらこのゲームの主催者、及び視聴者は興ざめだもんね」

最原「……視聴者、か」

最原(確かにこの状況は、誰かの見世物となってると考えるのが普通なんだろうけど…)

豚神「…先頭は俺が行かせてもらう」

江ノ島「いいの?」

豚神「ただでさえ俺は信用がないからな。…体くらいは張らせてくれ」

苗木「豚神クン…」

七海「……死にはしないだろうけど、みんな、怪我だけはしないようにね」

東条「怪我をしても、私が治すわ。道具はちゃんと揃っているし」

真宮寺「それでも、しないに越したことはないよネ」

不二咲「……よしっ。覚悟は決まったよ」

王馬「じゃ、豚神ちゃんゴーゴー!」

最原(そうして、僕らは出口へと足を踏み出した)

最原(その先に待っているものが、『希望』だと信じて…)

数十分後……


最原「」

豚神「」

朝日奈「」

苗木「」

江ノ島「」

真宮寺「」

十神「」

王馬「」

不二咲「」

狛枝「」

アンジー「」

東条「」

セレス「」

七海「……何このクソゲー」

最原「何だよこれ……」

狛枝「……これ、クリアさせる気あるの?」

王馬「むしろ……一見して無理ゲーっぽくないのが腹立たしいよね」

東条「……東条斬美の初黒星が、こんな形で訪れるとはね…」

真宮寺「クックック……ボクはもう疲れたヨ」

苗木「く、クソッ…諦めて、たまるかッ…」

豚神「そ、そうだ……もう一度、もう一度…!」

七海「やめておいた方がいいと思うよ?」

最原「な、七海さん…」

七海「これが横スクロールのアクションゲームなら楽勝だったんだけどね。これ、どう考えても私たちにクリアさせる気はないよ」

豚神「なんだと……?」

七海「タイミングも判定もシビアすぎる。初見殺しもたくさん仕掛けられてる。いくらでも失敗出来るゲームなら私一人でもクリアできるだろうけど…」

七海「……生身の人間でこれを攻略しようとしても、先に体が壊れちゃうよ」

狛枝「それは……『超高校級のゲーマー』としての、勘なのかな?」

七海「まぁ…そういうことに、なるかもね」

王馬「……つまり、何もかも、カムクラちゃんの言う通りだったってこと?」

江ノ島「…………」

十神「チッ。アイツは、ここまで予想がついていたというのか?」

狛枝「それはどうかな。…せっかく見つかった出口は、挑戦しても挑戦してもクリアすることが出来ないただのダミーだった」

狛枝「しかも、ぱっと見頑張ればクリアできそうだから…何回も何回も挑戦することを強要される」

狛枝「何度も何度も……ボクたちの望みを、期待を、希望をへし折られる……」

狛枝「徒労なんてもんじゃないよ……これは紛うことなき『絶望』だ…」

苗木「……ぜ、絶望…」

最原「…………」

最原(……こんな気持ちを味わうくらいなら、来ない方が良かった……そういうことなのか…?)

アンジー「ううん、違うよー。だって神様のいうことに、間違いなんてないからねー」

豚神「なに?」

アンジー「確かに頑張って出口を通ろうとしたのは無駄だったかもしれないけどー、そのおかげで、一つ重要なことがわかったよねー」

朝日奈「重要なこと…?」

アンジー「モノクマはアンジーたちをここから出す気がないんだよ」

アンジー「ここから出たいなら、この中にいる誰かを殺すしかないんだよ」

最原「…………」

江ノ島「……その事実こそ、絶望でしょ」

アンジー「でもでもー、これでこれからの方針は立つはずだよねー?」

王馬「……外に出られるのは一人だけ。それを割り切った上で、疑心暗鬼のコロシアイを始めようっていうの?」

十神「それとも…人数を3人にまで減らしてコロシアイを終わらせるか?」

苗木「だ、ダメだよ!そんなことをして生き残ったって、何も……」

アンジー「違うよー?アンジーたちは、一生ここで暮らすんだよー」

アンジー「コロシアイなんて起こさない。ここから出ることなんて考えない。…そうすれば、ほらー!みーんなしあわせー!」

最原「……は?」

東条「何ですって?」

セレス「…うふふ」

王馬「……何言ってるの夜長ちゃん。ここにいる人たちが、そんなことに従うと思う?」

十神「愚問だな。俺は十神財閥のトップに君臨する存在。…俺の損失は、世界の損失だ。こんなところで生を終えるわけにはいかん」

東条「私も……外で待っているご主人様がいるわ。この学園内では、ここのみんなも私のご主人様ではあるけど…受けた依頼は必ず遂行するのが、私の信条なのよ」

アンジー「みんなは外の世界に未練があるんだねー」

アンジー「でも大丈夫だよー。神様にお祈りを捧げれば、そんな些細なことはどうでも良くなるから」

苗木「さ、些細なこと…?」

江ノ島「な、何が神様だ!そんなもん信じるやつなんて…」

セレス「私は夜長さんの意見に賛成ですわ」

最原「え?」

アンジー「おー、セレスは神様の意志に賛同してくれるんだねー」

アンジー「じゃ、早速今夜からでもお祈り始めよー」

セレス「勘違いしないで頂きたいのですが、私が賛成なのは私たちはここで一生暮らすべき、という意見です」

王馬「……どうしたのセレスちゃん。キミってそんなつまらない人間じゃなかったよね?」

セレス「それは貴方の目が節穴だっただけですわ」

王馬「そう。…そういうことならもういいよ。あーあ、キミとはいい協力関係を築けると思ってたんだけどな」

セレス「申し訳ないですが、貴方は私の好みのタイプとは正反対ですの。身の程を弁えなさい、ガキ」

最原「ちょ、ちょっと待ってよ…」

最原「まだ一日目なんだよ!?もう外に出ることを諦めちゃうの!?」

朝日奈「そうだよ!まだ探索してないとこもいっぱいあるし…」

豚神「やめろ!!」

最原(……っ!?)

豚神「……ただ意見をぶつけ合っているだけでは、何も進まない」

豚神「ここから出るか、出ないか……こんなことを議論している暇は、今はない」

十神「ほう?ならば、お前は何を話し合うべきだというのだ?」

豚神「夜長。お前はコロシアイを止める、と言ったな」

アンジー「ん?んーとね、言ったよー。コロシアイを止めてー、みんなでここでお祈りしながら暮らすのが、アンジーの夢だからねー」

豚神「なら、教えてくれ。コロシアイを止める手立てをな」

アンジー「ほうほう、そういうことねー。まずはそこから始めなきゃだしねー。わかったよー」

狛枝「コロシアイを止めるって…?」

セレス「…そんなことが、出来るんですの?」

最原(……そっか。僕は、少し焦ってたみたいだ)

最原(ここから出る方法を模索するにせよ、ここで一生暮らすにせよ……まず、このコロシアイを止めないことには、何も始まらない)


アンジー「えっとねー、神様は、この学園内にある凶器になりうるものを一箇所に集めて、みんなで見張ればいいって言ってるよー」

豚神「……ふ、そうか」

苗木「えっ、それって…」

最原「やっぱり、考えることは皆同じなんだね」

十神「凶器を集めるだと?」

王馬「なるほど、凶器がなければ、殺人なんて絶対に起こらないもんね」

江ノ島「幸いここにはパワー系の才能持ってるやつはいないし、後は手で絞め落とすくらいしか殺害方法は残ってない…」

王馬「うん、素晴らしいアイデアだよ夜長ちゃん!じゃあ早速、凶器を集めて回ろうか!」

朝日奈「うんうん!大変かもしれないけど、みんなで協力すれば、すぐ終わるよ!」

不二咲「ぼ、僕も手伝う!」

豚神「待て、まずは凶器を集める場所について―――」

狛枝「あ、ちょっといいかな?」

豚神「……なんだ」

狛枝「あのさ…みんな一つ大事なことを忘れてない?」

苗木「大事なこと?」

王馬「もー、狛枝ちゃん!わけわかんないこと言ってみんなの団結に水を差さないでよ!」

東条「……いいえ、訳の分からないことではないわ。この今この状況下において、とても重要なことよ」

最原「……あっ、そうか」

七海「厨房の包丁……だよね。それがどこにあるのかわからない以上、凶器を集めるのは不可能に近いよ」

豚神「……そういえば、最初はそういう話だったな」

王馬「あーそっかぁ。そういえばこの中に一人、みんなに嘘をついて包丁を隠し持ってる裏切り者がいるんだったね」

苗木「そ、そんな言い方…」

王馬「いやー、危ないところだったね!狛枝ちゃんが気付いてくれなかったら、オレたちはその裏切り者に丸腰で挑まなきゃならなくなってたよ!」

豚神「………チッ」

狛枝「まぁ、そこまで言うつもりはないけど…。やっぱり、コロシアイを止めることは出来ないよ。一度始まってしまったものは…取り返しがつかないんだ」

セレス「…全く、愚かですわね。環境に適応できないものが生き残れるはずがございませんのに」

十神「フン、いくら才能があるとはいっても、所詮愚民の発想はその程度だな」

豚神「……なに?」

十神「コロシアイを止める方法なんて簡単だろう。……自分が殺されなければいいだけだ」

最原「え……?」


十神「宣言するぞ、裏切り者よ」

十神「お前が俺を殺すなら、逆に俺がお前を殺してやる」


苗木「こ、殺す!?」

王馬「…なるほどね。十神ちゃん、キミはつまらなくないよ」

真宮寺「クックック……そうだヨ。敵が武器を持っているなら、ボクらも武装すればいいんじゃないか」

豚神「ま、待て!そんなことをすれば…」

王馬「逆にこれ以上に、コロシアイを止める有効な手立てはあるの?お互いが武器を持ちあって牽制し合えば、自然とコロシアイなんて起きなくなるよね?」

最原「今はそうかもしれないけど、この状態が何日と、何週間と続けば、更に酷いことに…」

王馬「ならないよ。だってここにはモノクマの取り決めたルールがあるんだよ?」

王馬「誰か一人殺されても、始まるのはバトル・ロワイアルのようなデスゲームじゃなく、秩序に満ちたただの犯人当てゲーム…」

セレス「……誰もが武器を持っている状況下で、どうやって犯人を当てようというんですか?」

狛枝「そこは、皆の超高校級の頭脳を使えば可能なんじゃないかな」

狛枝「ほら、ここには14人もの、才能溢れる希望に満ちた高校生がいるんだ。ボクらにかかれば、不可能なんてないんだよ」

苗木「……ボクも、そう思う」

最原「な、苗木くん!?」

苗木「危険な賭けかもしれないけど、ボクはみんなを信じたい」

苗木「きっと、ここにいる超高校級のみんななら、自衛のための武器を持ったくらいで、コロシアイを引き起こしたりしないと思うんだ」

苗木「ちゃんとその行為の愚かさも、危険性も、弁えていると思うんだ」

七海「…弁えてない人が、厨房から包丁を盗んでいったんでしょ?」

苗木「どうかな…もしかしたらその人も、誰かを殺す意志なんてなくて。ただこんな状況で丸腰だと不安だから、念のために持っておいた…とか、それくらいのことなのかもしれない」

最原(………)

最原(お互いを牽制し合って、コロシアイを止める、か…)

最原(……確かに、少なくとも今夜を乗り切るためには、それしかないのかもしれないな…)

豚神「…お前は、楽観的だな」

苗木「そ、そうかな…。まぁ、人より少し前向きなのが、ボクの取り柄だからね、はは…」

狛枝「……………」

王馬「じゃ、決まりだね!確か倉庫には色々物騒なもの置いてあったから、取りに行くよ!」

セレス「…仕方ありませんわね。付き合いますわ」

東条「…依頼をしてくれるなら、私が全員分を用意さるわよ?」

真宮寺「クックック…ボクは遠慮しておくよ。使い慣れたモノの方が、何かと都合がいいしネ…」

狛枝「ボクみたいなゴミクズのために、東条さんの手を煩わせることはないよ」

東条「…そう、ならいいのだけれど」

江ノ島「ちょっと、アンタら!…マジで、やる気!?」

十神「逆にお前はどうする気だ?まさか、殺人鬼への抵抗手段も持たず、ただ殺されるのを待つのか?」

江ノ島「それは….」

アンジー「んー、まぁ、正直予想斜め上の展開だけどー、コロシアイが止められるならそれでいいや」

アンジー「じゃあねー、誰も死なないでねー」

江ノ島「……チッ」

最原(……そうして、各々が散り散りに、出口のある地下から去っていった)

最原(残ったのは、僕、豚神くん、朝日奈さん、苗木くん、不二咲さん、七海さんの6人)

朝日奈「……わ、私たちはどうするの?」

苗木「ボクたちも……あくまで、自衛のためだけど、何かしら武器を手に入れた方がいいと思う」

不二咲「え、えぇっ…」

七海「………」ピコピコ

豚神「……いや、お前らはいい」

最原「え…?」

豚神「少々狭いかもしれんが…お前らは、今夜から俺の部屋に泊まるといい」

朝日奈「え、ええっ!?//」

不二咲「と、豚神くんの部屋に…?」

豚神「…恐らくだが、ここに残っている奴は全員、自分だけで自分の身を守る手段を持っていない奴だろう」

豚神「なら、俺が守る。こうなった以上仕方ない。コロシアイを止めるために、俺は戦うぞ」

最原「と、豚神くん…!」

苗木「待って、豚神くん。君が戦うというなら、ボクだって戦うよ」

豚神「…なに?」

最原「うん。君一人だけに、背負わせたりしない」

不二咲「…確かに僕は頼りないかもしれないけど、それでも守られてるばかりじゃ嫌だよ!」

朝日奈「豚神、今日は寝ずに私たちを守ってくれるつもりだったんでしょ?…そんなことはさせないよ。やるにしても、交代制だよ」

豚神「……フン、いいだろう」

豚神「お前らは……こんな俺でも、ちゃんと付いてきてくれるんだな」

朝日奈「あったり前じゃん!だって豚神が、一番私たちのこと考えてくれてるんだもん」

朝日奈「少なくとも本物の十神なんかより、よっぽど信用できるよ」

豚神「……そうから」

最原「そうと決まれば、早速武器の調達だね」

苗木「うん。…なるべく、殺傷性の低いものを選ばないとね。ミイラ取りがミイラになっちゃ意味がないから」

豚神「まぁ、倉庫へ行ってみるか」

朝日奈「よしっ、そうと決まればしゅっぱーつ!ほら、不二咲ちゃんも、七海ちゃんも、行こ?」

七海「………いや、私はもうちょっとここに残るよ」

最原「…え?」

七海「うーん、やっぱりもうちょっと、このクソゲーに挑戦してみたくてさ」

豚神「……七海」

七海「あ、勘違いしないで欲しいんだけど、あくまでこれはゲーマーとしての意地だよ」

七海「このゲームは攻略不可能なのは変わりないけど、やっぱり出来るところまでは攻略したいんだ」

七海「このままっていうのも、なんか悔しいしね」

七海「だから、豚神くんたちは私に気にせず、帰っちゃっていいよ。付き合わせちゃうのもなんか悪いし」

豚神「……」

不二咲「……あの、そういうことなら、僕もここに残っていいかなぁ?」

最原「え?」

不二咲「この通路の至るところにあるギミックって、ある程度特定の法則で動いてそうなんだよね」

不二咲「どんなプログラムが使われてるのか、プログラマーとして、結構興味があるというか……」

最原(…………)

最原(こんな状況でも、知識欲が勝るのか…)

最原(やっぱり天才って、普通の人とは違うんだろうな…)

豚神「……わかった。そういうことなら、俺たちは先に帰る。だがほどほどにしろよ」

七海「はいはーい」

不二咲「わかってるよぉ」

朝日奈「え、えー…不安だなぁ」

苗木「まぁ、なんだかんだで大丈夫なんじゃないかな」

朝日奈「……アンタって」

苗木「え、何?」

朝日奈「何でもないよ…」

最原(僕たちは倉庫を物色し、バールのようなものがたくさん入った箱を見つけた)

最原(他には砲丸だったり、ナイフだったり、色々なものがあったけど…)

最原(安全性と速効性を考慮して、結局バールを護身用に持つことにした)



最原「……よし、まだ夜まで時間があるな」

最原「色々あって、まだ探索してない場所が沢山ある」

最原「まずはどこへ行こうか…」


次のうちから選んでください
(教室、音楽室、体育館、図書室、ゲームルーム、寄宿舎、男子トイレ、広場、研究所)

【研究所】

最原(広場に出て、その右手のところに何やら大仰な施設があった)

最原(なんだか、工場のような風貌だけど……ここは、なんなんだろう)

最原(扉を開けると…)

王馬「わー、すっげー!」

最原(目をキラキラと輝かせた王馬くんと)

最原(近未来感溢れる謎の空間があった……)

王馬「あれ、最原ちゃんじゃん。どうしたの?」

最原「いや、色々あって探索できてなかったから、見て回ろうと思って…」

王馬「ふーん…ちゃんと武器は持ってる?」

最原「…………」

王馬「そんな怖い顔しないでよ。しっかし、すごいねこの部屋!オレの組織の研究室よりも、ずっとかっこいいや!」

最原「かっこいい……確かに、そうかもね」

最原(まぁ、男なら一度はこういうのも憧れるかもな…)

王馬「ま、かっこいいだけで、何に使えばいいのかさっぱり分かんないんだけどね。この機械とか。そもそも、ここって何をする部屋なんだろう?」

最原「さぁ……手術台みたいなのがあるけど、医薬品の類はないし…」

王馬「機械系の何かではあるんだろうけど。不二咲ちゃんに聞けば、何かわかるかな?」

最原「そういえば王馬くんって、"超高校級の総統"なんだよね?」

王馬「どうしたの藪から棒に。その通りだけどさ」

最原「いや、一応これから一緒に暮らしていくことになるかもしれないし、みんなのことは一通り知っておこうと思って…」

王馬「ふうん、まぁ最原ちゃんが知りたいっていうなら教えてあげようかな」

王馬「……オレは秘密結社の総統なんだ。構成員が一万人以上もいる、大組織をまとめているんだよ」

最原「……は?」

王馬「すごいでしょ。オレの一言で、世界が動くんだよ?」

最原「いや、さすがにそんな大きな組織なら、僕の耳にも届くはずだけど…」

王馬「誰かに存在を知られちゃったら秘密結社じゃないでしょ!そんなこともわからないの!?」

最原「え、えぇ……」

最原(でも明らかに嘘くさいしなぁ…)

王馬「にしし。…嘘だと思うなら、オレから本当のことを聞き出してみなよ」

最原「………」

王馬「うん、そっちの方がつまらなくないね。じゃあ最原ちゃん!ゲーム開始だよ!」



王馬とゲームをして過ごした…

まだ時間はある。何をしようか?
↓(研究室以外から選んでください)

【ゲームルーム】

最原(…確か、ここへは一度王馬くんたちを呼びに行ったときに来たことがあるんだよな)

セレス「…あら、最原くん。ごきげんよう」

最原「セレスさん、こんにちは」

最原(あの時はセレスさんと王馬くん2人でポーカーをやっていたみたいだけど、今は一人みたいだ…)

セレス「どうしたんですか?お一人でこんなところに来るなんて」

最原「ちょっと探索にね。セレスさんこそ、一人でどうしたのさ。見たところ、ゲームをしている風ではないけど…」

セレス「………」

最原(…なんでそこで不機嫌そうに黙るの!?)

セレス「探索しようにも、ここには何もありませんわ。奥にAVルームがあるだけです」

最原「AVルーム?」

セレス「私と王馬くんで調べてみましたけど、大量のDVDがあるだけで、有用なものは何もありませんでしたわ」

最原「あ、そうなんだ….」

セレス「……ですから、とりあえず探索はここまでにして、少しゲームに付き合ってくださる?」

最原「わ、わかったよ…」

最原(コテンパンに負けた)

最原「さ、さすが超高校級のギャンブラーだね…。全く勝てる気がしなかったよ」

セレス「うふふ、少し大人気ありませんでしたわね」

最原(全くだ…)

最原「そういえば、セレスさん、王馬くんと何があったの?」

セレス「……何故そんなことを聞くんですか?」

最原「いや、ほら自己紹介のときに、顔見知りっぽい会話してたからさ…気になって」

セレス「……最原くん、次はどんなゲームで遊びましょう?」

最原「え!?」

セレス「やはりゲームは何かが懸かってないとつまらないですわね…。では、次負けた人は罰ゲームということにしましょう」

最原「それ僕が100%受けるやつじゃん!」

セレス「よろしいですね?」

最原「はい」


セレスにコテンパンにされた…

まだ時間はある。どこへ行こうか?
↓(研究室、ゲームルーム以外)

【図書室】

最原(図書室に来た…。沢山本があるが、漫画や推理小説は置いているのだろうか….)

狛枝「ああ、最原くん」

最原「……狛枝くん」

最原(……この人は、よくわからないんだよな…)

狛枝「こんなところで会うなんて奇遇だね。キミも、図書室を調べに来たの?」

最原「うん。ちょっとね。狛枝君も?」

狛枝「いや、ボクは…ただ本を読みに来ただけだよ。この学園について記された文献があるかもしれないからさ」

最原「なるほどね….」

最原(……ん?)

狛枝「ん、どうしたの、最原クン?」

最原「いや、あの本棚……少し不自然じゃないかな」

狛枝「えっ?」

最原「ほら、他の本棚の上には本が積み上がっているのに、あの本棚だけ全くない….」

狛枝「本当だ。何でだろうね」

最原「……恐らく、これは」


ゴォォォ

最原「…やっぱりだ。隠し扉になっているんだよ」

狛枝「へぇ、さすがは"超高校級の探偵"さんだね!こんな些細な根拠から、隠し扉に気付いちゃうなんて凄いよ!」

最原「………」

最原(何だろう、この違和感は…)

最原「…ねぇ、狛枝くん」

狛枝「何かな?」

最原「君は前に言っていたよね。自分は人よりも幸運だって….」

狛枝「否定はしないよ。ボクは普通の人より運がいい。例えばこの状況がそうだ」

最原「…え?」

狛枝「ボクはね、才能溢れる人が大好きなんだ」

狛枝「才能溢れる人が、自分の才能を発揮して、希望を輝かせている姿を見るのが、大好きなんだ」

狛枝「ボクはそういう人を、心から敬い、心から応援し、心から愛しているんだよ」

最原「………」

狛枝「そんなボクにとって、この才囚学園は、まさに天国と言わざるを得ない」

狛枝「あぁ、もちろんコロシアイなんて望んでないよ?愛すべき希望が失われるなんて、あってはならないことだからね…」

最原「……僕には、君の言っていることが理解できないよ」

狛枝「当たり前だよ。だってこれはボクだけの価値観で、他の人に理解してもらおうなんて到底思ってないから」

狛枝「でもこれだけは忘れないで欲しいな。キミたちのために、身も心も捧げたっていいと思っている男が、キミたちの近くにいるってことをさ…」

最原(………やっぱり)

最原(この人は、よくわからない)



狛枝を理解しようとして過ごした…

そろそろ夜時間だ

今日はここで終わりにします

【豚神の部屋】

最原「…失礼します」

最原(寄宿舎はどの個室も同じ部屋とはいえ、人の部屋に入るのって少し緊張するな…)

朝日奈「あ、最原。こんばんわー」

最原「あれ?朝日奈さんだけ?」

朝日奈「うん。さっきまで豚神と一緒だったんだけど、いくら待っても不二咲ちゃんと苗木と最原が来ないから探しに行っちゃった」

最原「そうなんだ。少し申し訳ないな。…ちょっとこの学園を見て回ってたんだよ」

朝日奈「け、結構勇気あるね…。私、やっぱり一人は怖くてさ…」

最原「しょうがないよ。こんな状況だし…」

ガチャ

豚神「む、最原、来てたのか」

最原「うん。ついさっきね」

苗木「ごめん、朝日奈さん!ちょっといろいろあってさ…」

朝日奈「いろいろって?」

豚神「…苗木のやつは、ここにいる16人全員に改めて挨拶をして回っていたそうだ」

最原「え?」

苗木「うん。やっぱりこんな状況だしさ、みんなのことは最低限わかっておいた方がいいと思って…」

朝日奈「そ、そんな!危険だよ!みんな武器を持ってるんでしょ!?」

苗木「だからっていって、じっとしてるだけじゃ、何も始まらないよ」

朝日奈「そ、そうだけど…」

最原(…ただの『特別枠』とは思えない行動力だな…)

豚神「…まぁそれはいい。では、何かわかったことはあったか?」

苗木「うーん…やっぱり、少し話しただけじゃよく分からないけど…」

苗木「…少なくとも、霧切さんは信用できる人だと思うよ」

最原「霧切さん…?それって、記憶喪失の人?」

豚神「…なぜ霧切?他に信用できそうなやつもいると思うが」

苗木「いや、なんとなく…かな」

朝日奈「え、えぇ…」

最原(………)

豚神「…まぁ、直にあいつと言葉を交わし、何か感じたものがあるのなら、その感覚は尊重すべきだな」

苗木「あと、七海さんとカムクラクンには会えなかったよ。もしかしたらもう寄宿舎の方に行ったのかな…」

朝日奈「そうだ。そういえば不二咲ちゃんは?」

豚神「不二咲もどこにもいなかった。出口の地下にも、どこにもな」

最原「…それって」

豚神「不安もあるが、七海と一緒なら取り立てて心配する必要はないと思う。ただ今は、襲撃に備えた方がいい」

苗木「そうだね。…もしかしたら、今夜」

朝日奈「や、やめようよ!そんな話より、ドーナツの話しよう?」

豚神「ほう、いいのか?食い物を俺に語らせたら貴様らは眠れなくなるぞ?」

苗木「え、えぇっ!?」

最原「あ、その前にいいかな?」

豚神「どうした?」

最原「実は、僕は図書室を探索したんだけど、そのときに、隠し扉を見つけたんだ」

苗木「隠し扉?」

最原「うん。隠し扉の裏にはまた別の扉があって、その扉を開けるためには、カードキーのようなものが必要らしいんだけど…」

朝日奈「何それ。すごく重要そう」

豚神「よくやった、最原。もしかしたら、その扉が真の出口に繋がっているかもしれない」

最原「うん。だから、明日はみんなでその扉についてら調べたいと思う」

最原「…罠も仕掛けてきたしね」

最原(狛枝くんとひとしきり話をして、狛枝くんが去った後、僕はこっそりカードリーダーの溝に埃を仕掛けておいた)

最原(明日埃がなければ、深夜の間に誰かがその部屋に入ったということになる)

最原(…つまり、この16人のうち誰かが、そのカードキーを持っているという証明になる)

豚神「わかった。今度こそ、皆で脱出するぞ」

朝日奈「おー!」

苗木「希望が見えてきたね」

最原「……」

最原(…たぶん、そう簡単にはいかないだろうけど)

最原(その夜は、交代制で見張りをするとこになった)

最原(朝日奈さん→苗木くん→豚神くん→僕という順に見張りを交代、他の人が見張りをしている間、睡眠を取ろうというものだ)

最原(豚神くんは「睡眠はしっかり取れ」と言っていたし、今日はいろいろあったこともあって、布団に入った途端僕はすぐ深い眠りに落ちてしまった)

最原(そして…)



豚神「…最原、起きろ」

最原「……っ。時間?」

豚神「ああ。とりあえずは何の異変もない。だが用心するに越したことはないぞ」

最原「…わかったよ。今度は僕に任せて、豚神くんはゆっくり休んで」

豚神「ああ」

豚神「……なぁ、最原」

最原(布団の中から、豚神くんの声が聞こえる)

最原「なに、豚神くん」

豚神「お前は…このゲームをどう思う」

最原「…ゲーム、ね」

豚神「?」

最原「僕は、この状況をゲームとして楽しんでいる人が一定数いるのが、異常だと思う」

豚神「…ほう」

最原「王馬くんも言ってたけど、…僕だって信じられないけど、それでも、この状況は、僕たちが忘れているだけで、僕たち自身が望んでいたものなのかもしれない」

豚神「………なるほどな」

最原「だから、僕は苗木くんのようにみんなを信用することは出来ないよ」

豚神「ならば、お前はなぜ俺に従ってくれる?」

最原「みんなは信用できなくても、君だけは。…君だけは、信じることが出来る気がするから」

豚神「…それはなぜだ?」

最原「…いや、理由なんてないよ」

豚神「なに?」

最原「友だちが言ってたんだ。『信じれるかどうかなんて関係ない。最終的には自分が信じたいかどうか』だって」

最原「僕は、君を信じたいから信じるんだ」

豚神「…とても、探偵の言葉とは思えないな」

最原「あはは。そうかもね。…でも、僕はこの考え方に救われたし…。彼のこの考え方に、救われた人も多くいる」

豚神「人を救う、か。探偵というのは、本来そういう仕事なのかもしれないな」

最原「真実を暴くだけが探偵じゃない。しっかりと真実を見据えて、その上でどう行動するかが大事なんだ。…それが、僕の探偵としての持論だよ」

豚神「ククク…。お前にはいい友人がいるんだな」

最原「そうだよ。今の僕があるのは、僕の大切な人たちのおかげなんだ」

最原「……だから、絶対にこんなところからは脱出してみせる」

最原「諦めたりなんかしない」

豚神「…わかった。お前にそこまでの意志と決意があるなら、俺もお前を信じよう」

最原「豚神くん…」

豚神「絶対に生きてここを出て…その、お前の友人とやらに、俺を会わせてくれ」

最原「勿論だよ。みんなも喜ぶと思うよ」

豚神「…付き合わせて悪かった。では、俺も寝るとする。また明日だ、最原」

最原「うん、また明日」



最原(…そういって、豚神くんは眠りに入った)

最原(僕は、倉庫にあったバールを握りしめながら、決意を新たにドアを見据えた)

最原(必ず、一人も欠けることなく、全員で、ここから脱出してやるんだ)

最原(そうじゃなきゃ…彼らに合わせる顔がない)


最原(そして、夜は更けていった)

キンコンカンコーン

モノクマ「才囚学園放送部が、朝八時をお知らせします」

モノクマ「オマエラ、グッモーニン!今日も絶好のコロシアイ日和ですよー!」

モノクマ「さて、今朝は誰が死んでるのかなー?」

モノクマ「アーッハッハッハ!!」

プツン


最原(……朝か)

最原(結局、誰もここには来なかったな…)

最原(やっぱり、十神くんの牽制が効いてるんだろうか)

最原(とりあえず、みんなを起こして食堂に行こう)

朝日奈「よ、よかった…みんな生きてる!」

苗木「最原くん、豚神くん、大丈夫だった?」

最原「うん。これの出番もなかったよ」

豚神「今日のところはなんとかなったが、早々に何か対策を取らないとまずいかもな…」

苗木「まぁ…結構神経使うもんね」

朝日奈「なんだかんだで、ぐっすり眠っちゃったけど….」

豚神「まぁ今の問題は、不二咲と七海だな」

最原「ああ。夜時間の間にひょっこり来てくれるかと思ったら、結局顔を見せてくれなかったね」

朝日奈「うーん…二人ずっと一緒にいたなら、大丈夫だと思うけど…」

苗木「でも、出口のところにはもういなかったんでしょ?心配だな…」

最原「とりあえず、食堂に行こう。もしかしたら、2人とも来ているかもしれないし」

豚神「そうだな」


最原(そうして、僕らは食堂へ向かった)

【食堂】

不二咲「千秋ちゃんっ!それっ!」

七海「ふふ、甘いよ。そんなんじゃ私は倒せません!」

不二咲「ああっ、また負けた…」

七海「やっぱりゲームは対戦の方が楽しいね。たくさん種類持ってきて良かったよ」

不二咲「ううっ、千秋ちゃん、もう一回!」

最原(…………)

最原(そこには、楽しげにゲームをする不二咲さんと七海さんの姿があった)


不二咲「って、あ、豚神くん…」

豚神「おはよう、不二咲…無事でよかった」

不二咲「ごっ、ごめんなさいごめんなさい!僕、ゲームに夢中ですっかり忘れちゃってて…」

七海「…あ、そういえばみんなで豚神くんの部屋に泊まるみたいなこと言ってたね」

苗木「そ、そんな軽いノリで…?」

最原「ていうか、二人はどこにいたの?」

七海「私の部屋でずっとゲームしてたよ。不二咲さん、結構ゲームにも興味あるらしくてさ」

不二咲「え、えへへ…。僕は基本作る方だけど、やるのも好きだから…」

豚神「…武器も持たずにか?」

七海「ゲーム機って結構硬いんだよ」

最原「何をする気!?」

真宮寺「クックック…全く困ったものだよネ。その二人、ここに来てからずっとその調子なのサ」

最原「真宮寺くん」

朝日奈「いや、別に困らないけど…真宮寺ってもしかしてゲーム嫌い?」

真宮寺「まァ、あまり好きではないかな。現実の物語や勝負事の方が、よほど人間の美しさが際立つというのに…」

真宮寺「架空の世界にどうしてそこまでのめり込めるのか…ボクには甚だ理解しかねるヨ」

最原「まぁ、スポーツや芸術と同じように、ゲームを極限まで極めた人は、やっぱり尊敬出来るけど…」

苗木「そうだよね。ボクたちには到底真似出来ない領域にいるわけだし…」

江ノ島「つーか、民俗学のハナシってのもほとんど空想上のお話じゃないの?」

真宮寺「それは違うヨ…。確かに虚構とされる話は多いけど、そのほとんどは実際にあったことを、人間が想像力で膨らましたものだ」

真宮寺「彼らにとってそれは『物語』ではない。彼らが信じる『真実』なのサ」

豚神「そういうものか」

十神「…偽物たちが来たか。ならこれで残すところはあと霧切だけだな」

最原「え?」

最原(十神くんの声につられて辺りを見渡すと、確かにここには既に全員の超高校級が集まっていた)

最原(いや…)

最原「カムクラくんも居ないんじゃ?」

王馬「ああ、カムクラちゃんなら地下に入っていったって江ノ島ちゃんが言ってたよ」

豚神「地下へ…?」

狛枝「まぁ、さすがにカムクラクンは食堂には来ないんじゃないかな。ほら、昨日あんな感じで別れちゃったし…」

アンジー「イズルは何考えてるのかよくわからないからねー。神様もお手上げだよー」

セレス「それをあなたがおっしゃいますか」

東条「…では、霧切さんもここに来てくれるか怪しいわね。せっかく16人分の朝食を用意したのだけれど」

最原「東条さん…ってうわっ!?」

最原(キッチンから出てきた東条さんの持つプレートの上には、豪華絢爛な食べ物がたくさん乗っていた)

王馬「うわー!東条ちゃんすげー!食べていい?食べていいの?」

東条「ええ。ここから出るためにも、みんなで英気を養わないとね」

豚神「フン、そういうことなら仕方ないな。遠慮なく食べさせてもらう!」

十神「…オイ。俺の体であまりがっつくな」

最原「………」

最原(…苗木くんは霧切さんのことを信用できると言ってたけど)

最原(どうなんだろう。…彼女だって、何を考えているのかよくわからないんだ)

最原(記憶もなく、たった1人で、彼女は何をしようとしているのか…)


ガチャリ

霧切「………」

霧切「…おはよう」

最原(霧切さんはそう挨拶だけすると、空いていた席に腰掛けた)

苗木「霧切さん…!」

王馬「あれ?霧切ちゃん、どういった風の吹き回し?」

霧切「…何が?」

王馬「だって、昨日は『邪魔しないで!』なんて言ってツンケンしてたのにさぁ!どうしたの?急に一人が恋しくなった?そうだよね!霧切ちゃんまだ高校生だもんね!」

霧切「…別に。ただ」

霧切「一人ではどうしようもないことを悟ったのよ」

最原(……え?)

十神「フン、ではこれからは俺たちと行動すると?生憎だが俺たちも決してなれ合うつもりはないぞ」

苗木「十神クン!そんなこと言わないでよ。君一人でだって、何も出来ないでしょ?」

真宮寺「そうだネ。こうして一晩経って、全員が生きてここに揃っているというのなら、」

ミス

真宮寺「そうだネ。こうして一晩経って、全員が生きてここに揃っているというのなら、ボクらは脱出のために協力し合うことだって出来るはずだヨ」

狛枝「そうだよ!ここには14人もの『超高校級』才能が揃ってるんだ!カムクラクンがいないのは残念だけど…キミたちが力を合わせれば、不可能なんてないはずだよ」

アンジー「全く、まだ諦めてないのー?あの出口がダミーだったんだよー?モノクマがアンジーたちを出すわけがないでしょー?」

セレス「全くですわ。そうまでして死に急ぎたいのですかね」

最原「いや、出口の手がかりならあるんだ」

アンジー「…ほーう?」

十神「なんだそれは」

最原「狛枝くんも知ってるよね?あの図書室の隠し扉…」

最原「あの扉を調べれば、何かわかるかもしれない」

狛枝「そういえばあったね!いやぁ、すっかり忘れてたよ!」

最原「……」

霧切「調べると言っても、何を調べるの?」

最原「…まず、図書室の隠し扉を開けるには、カードキーが必要なんだ。だから、それを探す」

十神「そんな重要な扉の鍵が、そこらに落ちているとでも?」

最原「もちろん今すぐ見つかるとは思えない。でも、時間さえあれば…みんなで時間をかけて、考えれば、その扉を開ける方法は見つかるはずなんだ」

最原「…だから、お願いするよ」

最原(ここからが、本題だ)

最原「君たちが持っている武器…最初に包丁を持ち出した人を含めて、それを全部集めて、一箇所に保管してしまおう」

最原「そして…このコロシアイを終わらせるんだ」

セレス「…なるほど」

最原「今武器を持ちあったままじゃ、確かにコロシアイは起きないかもしれないけど…協力し合って、脱出を試みることもままならないでしょ?」

最原「そんなの…誰の望みも満たされない」

アンジー「アンジーとセレスはそれでもいいと思うけどねー」

霧切「…確かに、この状況は最初に包丁を持ち出した人物にしても、良くないはずよ」

王馬「そうだね。モノクマの取り決めたルールのせいで迂闊に殺人は起こせないし、起こそうとしたところで返り討ちに逢う可能性もある…」

王馬「だったら、オレらで協力した方が、ここから出るには都合がいいんじゃない?」

十神「…カムクラが包丁を持ち出していた場合はどうするんだ?」

最原「そのときは…そのときだよ。このまま誰も名乗り出ないと言うなら、僕はカムクラクンを探しに行く」

豚神「……」

東条「いえ、その必要は無いわ」

真宮寺「ン?東条さん?」

東条「いつ言い出そうか迷っていたのだけれど…このタイミングが良さげね」

東条「無くなっていた包丁のことだけれど…今朝、キッチンにちゃんと戻っていたの」

十神「なに?」

豚神「なんだと?」

不二咲「えっ、それって…」

東条「やはり、皆で武器を持ち合うことを不毛に思ったのかもしれないわね。とりあえず、もう行方不明の凶器はないわ」

アンジー「ほうほう。それはいい報せだねー。…だったら、終一の言ってた方法も、試せるんじゃない?」

最原「…そうだよ。ねぇ、みんな。自分が持ち出した凶器を取り出してくれないかな」

十神「…フン、まぁいいだろう」

真宮寺「クックック…ボクらには今、いい風が吹いているネ」

王馬「ちぇー、まぁ仕方ないか」


最原(多種多様な凶器が机の上に散らばる)


江ノ島「うわっ…ガチすぎじゃんみんな」

東条「当たり前でしょう。自分の命がかかっているのよ?」

豚神「倉庫にダンボールがあったな。あれを使って、これを封じよう」

苗木「わかった。ボクも取ってくるよ!」

江ノ島「よしっ、じゃあアタシたちも、学園内中の凶器を集めて回ろう!」

王馬「そういうことならさ、よかったらこれ使ってよ」

最原「え…?」

最原(そういって王馬君が差し出した紙には…)

最原(学園内のあらゆる場所にある凶器と、その個数が書かれていた)

最原「お、王馬くんっ!?こ、これ…」

王馬「たぶん記入漏れはないと思うよ。モノクマが消えてから、最原ちゃんがオレらを呼びに来るまでで作ったものだから」

王馬「ちなみに、オレが最初に食堂に来たときは、ちゃんと包丁は全部揃っていた」

豚神「カムクラの扱いをどうすればいいか考えていたが…これがあれば、問題は無いな」

朝日奈「もしカムクラが何か凶器を持ち込んでいたらどうする?」

王馬「それも大丈夫だと思うよ」

最原「…王馬くん?」

王馬「だって包丁を持ち出したのって、カムクラちゃんだからね!」

最原(………は?)

十神「…貴様、さっきから黙って聞いていれば」

十神「そもそもお前は『最初から包丁がなかった』という話になった時、何のアクションも起こさなかった」

十神「それに…今頃になってカムクラが包丁を持ち出しただと?何を言ってるんだ」

王馬「そ、そんなにオレを責めないであげてよ…。オレだって、こんな状況で混乱してたんだ…」

王馬「だから、ちょっと嘘をついちゃうくらい許してくれてもいいじゃーん!」

最原「は、はぁ!?」

王馬「あ、でも安心して。この紙も、さっきの言葉も嘘じゃないから。オレだってここから脱出したいからね」

王馬「オレくらいの嘘つきになると、嘘をついていい場面とついちゃいけない場面の見分けくらいつくようになるんだよ」

狛枝「…それは、『超高校級の総統』にとって必要なスキルなのかな?」

真宮寺「そういう問題じゃないと思うヨ。…君がカムクラ君のことを言ってくれれば、もっと早くこの作戦を実行出来たかもしれないのに…」

王馬「まぁまぁここはセレスちゃんの顔に免じて許してよ!こういうギスギスした雰囲気も、つまらなくなかったろ?」

豚神「………とりあえず、王馬のことは信用して話を進めるしかないだろう」

豚神「コイツの持つ情報には、それだけの価値がある」

最原(王馬くん…「構成員一万人もの組織を抱える悪の総統」なんて、わけのわからない才能だとは思ったけど…)

最原(想像以上に……無茶苦茶だ…!)


江ノ島「ま、マジでこいつ信用すんの!?」

王馬「もー江ノ島ちゃん!オレがこの局面で嘘をつく必要があると思う?」

王馬「食堂に包丁なんてあったら、そりゃーそんな危険なもの、誰かが持ち出さないように隠れて見張るしかないでしょ?」

霧切「…なぜその場で取り押さえなかったの?」

王馬「無理だから」

霧切「え?」

王馬「気付いてる人たぶん何人かいるだろうけど…カムクラちゃんにタイマンで勝てるような人、たぶんここには一人もいないんじゃないかな」

豚神「……」

最原「え、えぇ…?」

王馬「なーんて、嘘だけどねー!ただ黙ってた方がつまらなくないから黙ってただけだよー!」

朝日奈「な、何いってんの!?みんなの命がかかってるのに、なんでそんなこと…!!」

十神「…黙れ。今はそいつに構ってる暇はない。しかし、それはそれとして、確かに王馬のいうことにも信憑性はある」

十神「何より…この凶器を記したこの図、かなり正確なのは間違いない。俺も、俺にあった凶器を探すべく色々な場所を見て回ったからな」

王馬「これでわかったでしょ?カムクラちゃんはオレたちの誰かを殺して、外に出るために包丁を持ち出した」

王馬「だけどモノクマによってコロシアイのルールが設定され、オレたちの全員が凶器を持ち始めたことで、カムクラちゃんはオレたちの殺害を諦めたんだ。だから包丁が戻っていた」

七海「…なら、カムクラくんは今何をしているの?」

王馬「さぁ。どちらにせよ、一人で何かする気なんじゃないかな。だから、今朝も起きるなり地下に行ったんだろうし」

江ノ島「…地下って、そういえは隠し扉のあった図書室があるところじゃない?」

豚神「カムクラも、あの扉を見つけていたのか?」

最原「だというなら、なおさら協力したいよ」

アンジー「まぁまぁー。隠し扉の前にー、やるべきことは凶器を集めることじゃないかー?」

真宮寺「それは…そうだネ。カムクラ君のことも気になるけど、まずはこのコロシアイを終わらせよう」

豚神「…そうだな。ならば早速作戦会議だ」

最原「……うん。わかったよ」

最原(その時ちょうど、ダンボール箱を抱えた苗木くんも戻ってきて、皆で取り決めをした)

①まず、各自それぞれが倉庫にあるダンボール箱に凶器を詰め込む

②その後、僕と豚神くんは学園内に凶器が残っていないか見回り、苗木くんと朝日奈さんは全員のボディチェックをする

③僕と豚神くんが見回りをしている間、残りの人で凶器を詰めたダンボール箱を音楽室へ運ぶ

④音楽室の前を、交代で見張る。交代の前には、ボディチェックをして、凶器を持ち出していないかを確認する

最原(凶器の保管場所に音楽室を選んだ理由は、ただこの中にピアノを弾ける人物がいなかったからだった)

最原(…僕としては複雑な気持ちもあるが、ここから出るためだ。贅沢は言ってられない)

最原(その後はもう大忙しだった)

最原(倉庫へ、中庭へ、教室へ、研究所へ)

最原(いろいろな所へ行き、ありとあらゆる凶器を集めた)

最原(ある程度凶器集めを終えたところで、僕らが帰ると、そこにはすごい数のダンボールが積み上がっていた)


王馬「うは、すげー数だね。これ全部持って上がるの?」

十神「仕方ないだろう。…正直、俺はあまり気乗りしないがな」

アンジー「ノンノン。ダメだよー、外に出たいなんて思っちゃ。アンジーたちはここで一生お祈りして過ごすんだからー」

江ノ島「誰がアンタの神様なんか信じるんだっつーの」

苗木「とりあえず、これで全部かな?」

豚神「…よし、では苗木、朝日奈。ボディチェックを始めろ。終わり次第、俺と最原で、もう一度凶器が残っていないか見回りに行く」

朝日奈「う、うん!任せて!」

最原(ボディチェックをしたものの、凶器らしい凶器は見つからず)


不二咲「じゃ、僕たちはこれを運ぶから、豚神くんたちは見回りお願い!」

王馬「ちゃんとお互いのことを見張っておくんだよ?」

豚神「わかっている。では、また後でだ」

最原「みんなも、頑張ってね」

十神「チッ。なぜ俺の方がこんな力仕事をせねばならんのだ…」

朝日奈「て、ていうか、これ重……」

江ノ島「せめてカムクラも協力してくれれば、まだ楽だと思うのに…」

最原「カムクラくんか…ついでに、彼のことも探してみるよ」

七海「地下にはいなかったの?」

セレス「さぁ。私は図書室とゲームルームを調べましたが、彼には会いませんでしたわ」

東条「いない人を気にしていてもしょうがないわ。さぁ、運ぶわよ」

【裏庭】

最原「…何も無いね。一つくらいは、何かあると思ってたけど」

豚神「王馬の図はやはり徹底していたからな。図書室にあった本も、人を殺せそうなほど分厚いものはすべて処分されていた」

最原「探していないところもこの裏庭だけになったけど…相変わらずカムクラくんは見つからないな」

豚神「全く、どこに隠れているのか…ん?」

最原「豚神くん、どうしたの?」

豚神「……穴が掘られている」

最原「え…?」

最原(豚神くんが指した先を覗くと、確かに、直径5cmほどの小さな穴が掘られていた)

最原「…なんだ、これ?」

豚神「凶器を埋めていた…とかか?」

最原「でも、この穴には何もないよ」

豚神「帰ったら聞いてみるか」


最原(他にめぼしいものもなかったので、僕らは裏庭を後にした…)

最原(そして、音楽室へと向かう)

【音楽室】

最原(音楽室には、既に他の13人が揃っていた)

王馬「あーっ、豚神ちゃん、最原ちゃん!遅いよ!」

セレス「全く…大変だったのですよ?」

豚神「すまない。お前らは、もう終わったのか?」

十神「当然だ。この人数だぞ。貴様らがちんたらやっている間に、全ての凶器はここに運び終わった」

最原「ありがとう…!これで、やっと始めることが出来るよ…!」

霧切「待って。…見回りをして、何か異変はなかった?」

不二咲「そ、そうだね…せっかく凶器を集めても、一つでもこの学園内に凶器が残っちゃってたら意味が無いし…」

豚神「凶器の類は一つも残っていなかった。カムクラが見つからんからどうとも言えんが…少なくとも、今この状況で殺人が起きたとしても、クロは一人に絞られる状況だ」

豚神「実質的に、コロシアイは終わったこととなる」

江ノ島「マジで!?じゃ、じゃあもうこんなとこから出てもいいの!?」

七海「いや、それはまだだよ。それを今からみんなで考えるんでしょ?」

朝日奈「う、そうだよね…むしろ今からが大変なんだよね…」

最原「いや、ただ…裏庭の方に、何かを掘り返したような穴が空いてたんだけど、それについてなにか知ってる人はいる?」

真宮寺「穴…?いや、ボクは知らないなァ」

十神「俺も知らん」

狛枝「あぁ、そのことね…それは、ボクが掘った穴だよ」

最原「…狛枝くんが?」

狛枝「うん。凶器を探して、裏庭を探索していたときのことなんだけどさ…」

狛枝「明らかに何かを埋めたような痕があったんだ」

豚神「……ほう」

狛枝「さすがにこんなあからさまに怪しい痕があったら、いくら察しの悪いクズなボクでも、その穴を掘り返そうと思うでしょ?」

狛枝「そうしてその穴を掘り返してみたらなんとびっくり。小型のナイフが埋められてたんだよ」

東条「小型の……ナイフ?」

王馬「…へぇ、まだコロシアイに未練がある人がこの中にいるんだ」

狛枝「もちろんボクはそのナイフを回収して、ダンボールの中に入れたよ。その後は他にもそうやって凶器を埋めて隠そうとしている人がいないか探していたんだ。でも、その穴以外に、それらしいものはなかった」

豚神「……なるほどな。狛枝、よくやった。もしかすると、今のこの状況がとても危険なものになっていた可能性がある」

狛枝「褒めないでよ!ボクのしたことなんて、豚神くんがしたことに比べれば、大したことないしさ…」

狛枝「ボクは…失いたくないだけなんだよ。愛すべき、輝くべき、希望をさ…」

最原「………」

豚神「…とりあえず、音楽室の見張りを決めるぞ」

東条「今の時刻は12時ね…。一人持ち時間を1時間とすれば、夜時間までに10人で回せるわ」

豚神「夜時間は残りの6人で、交代制で見はろう。確か、倉庫には寝袋もあったよな?」

十神「…この十神白夜に寝袋を使えというのか」

最原「まぁまぁ、そう言わずに…見張りの順番は、日毎に変えた方がいいかもね。朝8時になったら、みんな必ず音楽室前に集合して」

霧切「……わかったわ」

苗木「肝心の順番だけど…」

豚神「話し合う必要性を感じないな。時間を無駄にしないためにも、俺が決めさせてもらう」

十神「…オイ」

七海「いいんじゃない?正直、順番なんてどうでもいいし」

朝日奈「うん。十神は何がそんなに気に食わないの?」

十神「……チッ」

×残りの6人→〇残りの5人

そうして、順番が決まった


十神 12:00~13:00
狛枝 13:00~14:00
真宮寺 14:00~15:00
王馬 15:00~16:00
最原 16:00~17:00
霧切 17:00~18:00
朝日奈 18:00~19:00
セレス 19:00~20:00
東条 20:00~21:00
江ノ島 21:00~22:00
夜時間
豚神 不二咲 七海 苗木 アンジー


アンジー「いいんじゃないかなー?神様もー、これでおっけーって言ってるよー」

東条「文句はないわ。皆もいいわよね?」

狛枝「交代する時には、前任者のボディチェックをしないといけないんだよね。ボクみたいなドクズが、十神クンを疑うなんて畏れ多いよ…」

最原「そういうわけにもいかないよ。…霧切さんは、平気なの?」

霧切「ええ。特に気にしてないわ」

最原「そ、そっか…」

最原(気にされないのも、なんかな…)

最原(とりあえず、音楽室は十神君に任せて、僕らはこの学園内を探索することにした)

最原(とにかく情報が足りないのだ)

最原(図書室に隠し扉があるということ以外、何一つ分かってない)

最原(僕は、隠し扉に仕掛けた罠を見に行ってみることにした)


図書室には誰がいましたか?
↓(十神、カムクラ以外)

王馬「あれ、最原ちゃんじゃん」

最原「王馬くん、王馬くんも、隠し扉を?」

王馬「うん、最原ちゃん、扉に罠を仕掛けたって言ってたでしょ?それを見に来たんだよ」

最原「どうだった?」

王馬「罠っていうのはこの埃のことだよね。残念だけど、埃は残ったままだよ。誰もこの扉を使ってないってことだね」

最原「…そうなんだ」

王馬「ま、これがストレートに出口に繋がってるかもしれないし、そんなに肩を落とさないでもいいんじゃない?…キミは、そうとは思ってないんだろうけどさ」

最原「…………」

最原(この人には、どこまで見えているのか)

最原(それとも…何も見えてないけれど、適当にカマをふっかけているだけなのか)

王馬「ん、どうしたのー?そんな訝しげな顔してさ」

最原「…いや、なんでもない」

最原(この人の真意はわからない、けど…理解しようとする努力は、本当に無駄なんだろうか)

最原「王馬くんは、どっちなの…?」

王馬「ん、なにが?」

最原「君は、この状況を楽しんでいるように見える。けれど、君の行動は全て、コロシアイを止めようとしているように見える」

王馬「……にしし、面白いこと聞くね、最原ちゃん」

最原「答えなくなかったら別にいいけど…。僕は君のことが知りたいよ」

王馬「へぇ、オレのことが知りたいね。オレに関わったやつは、みーんなそう言うよ」

王馬「でも、オレはこれ以上ないくらい素直にみんなと接しているつもりなんだよ?最原ちゃんの知りたいオレってのが何なのかは知らないけど、オレは何も隠しちゃいない」

最原「……」

王馬「オレは自分にだけは嘘をつかないからね。今最原ちゃんと話しているオレ、それがオレの全てなんだよ」

最原「………」

最原(…その言葉も、嘘だとしたら?)

最原(なんて言葉は、ついぞ言えなかった)

最原(そうして僕は王馬くんと別れた)


次はどこへ行こうか?

最原(教室についた)

最原(すぐそこには地下への階段が見える…)

最原(そして…)

最原「…………」

霧切「」モゾモゾ

最原(通気口に頭を突っ込んでもがいている霧切さんの姿があった)

最原「な、何してるの霧切さん…」

霧切「」ピクッ

最原(霧切さんは突然動きを止めたかと思うと、通気口の中からゆっくりと出てきた)

霧切「…何かしら?」

最原「え、いや、なんでもない…」

最原(したいことは想像がついていたので、僕はその場をはぐらかすことにした…)

最原「こんな所に通気口があるんだね」

霧切「ええ。どうやら図書室に繋がっているみたいね」

最原「そうなの?」

霧切「通気口を覗いた時、錆びた紙と、インクの匂いがしたから間違いないと思うわ」

最原「なるほどね…」

最原(霧切さんって、結構洞察力あるな…)

最原「ここを通れば、階段を使わずに図書室に行けるってこと?」

霧切「だいぶ小柄でないと難しいでしょうね。…どうしても肩で詰まるのよ。王馬くんくらいだったら、あるいは…」

最原「あはは…霧切さん、なんか僕よりも探偵みたいだね」

霧切「……そう見える?」

最原「うん。もしかしたら、霧切さんは『超高校級の警察官』だったりして…」

霧切「………」

最原(霧切さんは、それきり黙り込んで、何かを考え始めた)

最原「………あのさ、聞いてもいいかな」

霧切「何?」

最原「君が言ってた、『一人ではどうしようもないことを悟った』って、どういう意味?」

霧切「………」

最原「…君は、やっぱり何かを隠しているよね。一人じゃダメだって思うのならさ、君が知ってること全部、僕たちに教えて欲しいんだ」

最原「僕たちも、知っていることは全部君に教えるから」

霧切「………」

最原「……霧切さん」

霧切「…ごめんなさい」

最原(霧切さんは、そう言うと教室を後にした)

最原(彼女の心境の変化にしても、その言葉にしても、わからないことが多すぎる)

最原(霧切さんと話したという苗木くんなら、何か知っているだろうか…)



次はどこへ行こうか

最原(食堂についた)

最原(扉越しから、誰かが話しているのが聞こえる)

最原(この声は…真宮寺くんと、不二咲さんかな?)

ガチャリ


真宮寺「こうやって、今ボクたちが当たり前のようにしている挨拶というものが出来たんだヨ」

不二咲「わぁ、すごい!民俗学って結構面白いんだね。僕って理系だから、今までそういう話には疎かったんだけど…」

真宮寺「ククク…君なら民俗学の奥深さをわかってくれると思ったヨ。なんならもう少し話そうか?レパートリーはまだまだあるしネ…」

最原(お邪魔しちゃ悪いかな…)

不二咲「あっ、最原くん」

真宮寺「…おや?最原くん。どうしたの?」

最原「あ、ごめん。邪魔するつもりは無かったんだけど…ちょっと、学園内を調べて回っててさ」

真宮寺「邪魔なんてとんでもないヨ。むしろ謝るのはこっちの方だ。つい話に熱が入りすぎちゃってネ…」

不二咲「うん。真宮寺くんのお話、面白くてつい聞き入っちゃったよ。僕も、最初はここを調べに来てたんだけどね…」

最原「そうなの?だったら、一緒にここを調べようか」

最原(めぼしいものは、何も見つからなかった)


真宮寺「ンー…何も無いネ」

不二咲「うーん…ここって危険なものがたくさんあったから、凶器を集めてるときに一通りは調べ終わっちゃってたのかも」

最原「そうか…それなら仕方ないかな」

真宮寺「そういえば、不二咲さんは七海さんと一緒にあの出口に挑戦していたんだよネ?」

不二咲「う、うん。そうだよ。結局、途中で疲れて帰っちゃったけど…」

真宮寺「それで、何かわかったことはないの?」

不二咲「あの出口について?…うん、わかったことはあるといえばあるんだけど…」

不二咲「やっぱり、あのギミックは僕たちをクリアさせるように出来ていない。ギリギリのタイミングで、ゲームオーバーになるようになってる」

最原「…そうなんだ」

不二咲「ただ一つ気になったのは…プログラムを書き換えた痕があるってことかな」

真宮寺「プログラムを?」

不二咲「うん。書き換える前がどういうプログラムだったかはわからないけど…」

最原「………」

最原(これも、何かの手がかりなんだろうか…)

真宮寺「しかし、道具も満足に揃ってない環境で、そこまでわかるなんてすごいヨ。さすが『超高校級のプログラマー』だネ」

不二咲「いや、僕なんて大したことないよ。…この業界じゃ、僕なんかよりもっとすごい人もいるしね」

最原「謙虚なんだね、不二咲さん」

不二咲「謙遜なんかじゃないんだけどな…」

真宮寺「キミは、あまり自分のことが好きじゃないのかナ?」

不二咲「……うん」

真宮寺「それはダメだヨ…。いくら才能があって、美しい心を持っていても、自分を愛することが出来なければ、人生は空疎なモノになってしまう」

不二咲「自分を、愛する…?」

真宮寺「己は自分と切り離せない関係だからネ。好きな自分も、そうじゃない自分も、割り切って受け入れるしかないのサ」

不二咲「……割り切って、受け入れる」

真宮寺「ボクは君がそれを出来る人間だと信じているヨ。だから、是非自分を好きになる努力をしてみて欲しいナ」

不二咲「わかった。…ちょっとずつでも、頑張ってみるよ」

最原「………」

最原(たくさんの場所を訪れて、たくさんの人間を見てきた真宮寺くんだからこそ、言える言葉なのか)

最原(その言葉は、僕の胸にも深く刺さった)

最原(僕は、黙ってその場を立ち去った)



そろそろ交代の時間だ

王馬「あっ、来た来た最原ちゃん!」

最原「…王馬くん。申し訳ないけど、一応体を調べさせてもらうよ」

王馬「どうぞどうぞ。『超高校級の探偵』からボディチェックを受けるなんて、滅多にない経験だしね!」

最原「……」

最原(何故か楽しそうな王馬くんを尻目に僕はボディチェックをした….)

最原(王馬くんは怪しいものは持ち出していなかった)

王馬「どう?これで満足した?」

最原「…うん。大丈夫だよ」

王馬「じゃ、最原ちゃん見張り頑張ってねー。オレはもう一回、学園内を調べてみるよ」

最原「………」

最原(まるで、図書室でのことがなかったかのように振る舞う王馬くんに、不気味なものを感じた)

最原(…本当にこれが、王馬くんの本音なのだろうか)



最原(……あと、30分)

最原(この時間は、思った以上に退屈だ)

最原(電子生徒手帳を眺めるくらいしかすることがない)

最原(…これまでの探索で得た情報を紡ぎあわせて、何か見えるものはないか考えたりしたが)

最原(まるで訳が分からなかった)

最原(『超高校級の探偵』なんて言っても、僕はたまたま遭遇した殺人事件を解決しただけの、普通の高校生なんだ)

最原(なのに、こんなことに巻き込まれて…)

最原(…ダメだダメだ。何を弱気になっているんだ)

最原(ここから出るって約束しただろ。豚神くんを、百田くんたちに会わせるって言っただろ)

最原(こんなところで諦めてたまるか)

最原(僕は絶対に)



ガツンッッ!!!!!



最原「………ぁえ?」


最原(なにがおきたかわからなかった)


最原「がぅっ」ドサッ


最原(きづくとぼくはじめんにたおれふしていた)


最原「………ぁ」


最原(いしきがとおのいていく)


最原(ぼくは)


最原(ぼくは……)


最原(しぬのか)




最原(そして、視界が暗転する)

【音楽室】




最原(………………………)


最原(…………………)


最原(…………)


最原(……)


最原(……ん?)


最原(ここはどこだ……?)


最原(頭が唸るように痛む)


最原(ぼくは……僕は、そうか)


最原(誰かから後ろから殴られて……)


最原(そして……)

僕は目を開けた。

まず僕の目に飛び込んできたのは、溢れんばかりのダンボール箱。

凶器を詰めておいたダンボール箱だろう。

次に目に入ったのは、ピアノ。

赤松さんが見たら喜びそうな、とても立派なグランドピアノだ。

そして、最後に。

そのグランドピアノにもたれかかって倒れている、

頭と胸を赤い液体で染めた、

カムクライズルくんの姿が、

僕の目を覚まさせた。






Chapter 1

嘘と過去と絶望と

非日常編



ピンポンパンポーン

モノクマ「死体が発見されました。死体が発見されました」

モノクマ「オマエラ、死体発見現場の音楽室までお越しくださーい!」





最原「………う」

最原「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

最原(どうして…?)

最原(僕らはどこで間違えた?)

最原(こんなことにならないために、全員で力を合わせて、凶器を隠したんじゃないのか!?)

最原(じゃあ、僕たちのしたことは、何だったんだ…)

豚神「オイ、何があった!!」

苗木「死体って……どういうこと!?」

最原「ッ……!」

最原(…死体発見アナウンスが流れ、みんなが音楽室へ集まった)

江ノ島「……は?何これ」

朝日奈「か、カムクラ……なの?」

王馬「……へぇ」

アンジー「だーから言ったのにねー。ここから出ようなんて思わなきゃ、こんなことにはならなかったのにー」

十神「……フン、これはどういうことだ、最原」

狛枝「そうだね。…なんでキミが見張りをしていたときに、死体が発見されるのかな?」

最原「…それは」

最原「僕が見張りをしていたら、急に誰かに後ろから殴られて…」

最原「気付いたら、音楽室の中にいて、カムクラくんが、死んでたんだ…嘘じゃないよ。本当に、そうなんだ…」

最原(自分でもびっくりするくらい拙い説明だった)

王馬「…後ろから殴られた?最原ちゃんさ、どこ向いて見張りしてたの?」

最原「考え事してて…そういえば、階段の方、見てなかった気がする…」

霧切「……考え事、ね」

最原「ほ、ホントなんだよ!僕だって、こんなことになるなんて……そもそも、どうしてこんなことになってるのか……!!」

真宮寺「もういいよ、最原君」

最原「っ……」

真宮寺「そこから先は、これからある学級裁判で話してもらうからサ」

最原「……学級、裁判……」

最原(始まってしまうのか……)

最原(モノクマが僕たちにけしかけた、最低最悪のコロシアイゲームが……)

狛枝「…そうだね。ひとまずは、この事件の捜査から始めよう」

苗木「うん。……悔しいけど、こうなった以上、ボクたちはクロを見つけるしかない…」

苗木「カムクラクンを殺した、犯人を……」

最原(……そうだ、そうなんだ)

最原(こうなってしまった以上、もう後戻りは出来ないんだ)

最原(やりたくなくても、やるしかないんだ)

最原(やらなければ、みんな死ぬ)

最原「…うん、そうだね。今僕がやるべきことは、言い訳をすることじゃない。この事件の真実を暴くことだ」

豚神「……」

最原「お願いだよ、僕にこの事件を調べさせてくれ。信用がないのはわかってる。だけど、このままじゃ…」

王馬「はぁ?何言ってるの?君はこの事件の一番の容疑者なんだよ?そんな奴に現場を荒らされちゃ―――」

霧切「私が彼を見張るわ」

王馬「え?」

霧切「彼が妙な行動を起こさないよう、私が最原君を見張っておく。これなら、彼に捜査をさせてあげてもいいんじゃないかしら」

最原「き、霧切さん…?」

王馬「…ま、そういうことならいいけど?霧切ちゃんにも大した信用はないけど…君には、最原ちゃんを庇う理由なんてないもんね」

豚神「………」

最原「霧切さん、どうして…」

霧切「この事件、あなたが犯人ならこれほどまでに簡単なものはないわ」

霧切「けれど、もしあなたが犯人でないのなら…その時は、あなたの『超高校級の探偵』の力が必要、だから私はあなたに協力する。それだけよ」

最原「………」

最原(霧切さんはそう、冷たく言い放ったけど…)

最原(それは、僕にとってこの上ない救いの言葉だった)

-捜査開始-

モノクマ「うぷぷぷぷ」

豚神「……モノクマ」

モノクマ「いやー。笑わせてもらったよ。凶器を集めだしたときはホントビビったけどさー」

モノクマ「でもやっぱりコロシアイからは逃れられないよね!これは運命レベルで定められた既定路線なんだからさ!!」

十神「黙れ。いいから用件を言え」

モノクマ「相変わらずせっかちだなー。まぁいいよ。はいはいこれこれ」

モノクマ「ザ・モノクマーズファイル~!」

最原「…モノクマーズファイル?」

モノクマ「ま、検死結果みたいなもんだね。オマエラはまだ高校生だし、そういうのは結構厳しいでしょ」

モノクマ「情報量不足でクロの勝ちー!ってのも、なんかツマラナイしね?」

江ノ島「…この中に、カムクラの死因とか全部載ってるってこと?」

モノクマ「そそ。あ、でも事件の核心に触れるような情報は載せてないからね。それで犯人がわかっちゃうのも興ざめだし」

王馬「…あくまで、面白さ優先なんだね?」

モノクマ「うぷぷぷ。当たり前じゃん。面白いからこんなことやってんだよ」

モノクマ「人の命を弄ぶのが楽しくてたまらないから、こんなことやってんだよ!」

モノクマ「じゃあねー!時間になったら中庭にある、裁きの祠まで来てくださーい!」

やってしまった。
モノクマーズファイル→モノクマファイル
どうしてこうなった


最原(そう言って、モノクマは消えた)

最原(…言いたいことは沢山あるが、今は事件のことだ)

最原(僕は、モノクマに手渡されたモノクマファイルに目を通すことにした)


『犠牲となったのは、超高校級の希望・カムクライズル。性別男、身長179cm、体重67kg。
死体発見現場は校舎2階にある音楽室。
死因は心臓をナイフで刺されたことによる失血死。また、頭部には鈍器で殴られたような裂傷がある。』


最原(……ナイフ?)

最原(ナイフは全部ダンボール箱にしまったはずじゃ…)

コトダマ[モノクマファイル1]を記憶しました!

最原(それを調べるためにも、まずはカムクラくんの死体を見ないとな…)

最原「…いい?霧切さん」

霧切「ええ。見ているから、どうぞ」

最原「うん…」

最原(死体を見るのは、これで2度目だ)

最原(一回目のときは、警察が話していたのを聞いていただけだから、死体を直に調べるのは、これが初めての経験…)

最原「クソッ」

最原(ビビっている場合か!)



最原(モノクマファイルの通り、カムクラくんは胸に刺傷と、頭に何かで殴られたような痕があった)

最原(だけど……何か違和感が)

霧切「…出血量が少ないわね」

最原「え?」

霧切「それどころか、血が完全に乾いている…かなり前に殺されたのは、間違いないみたい」

最原「あ、そうか…」

コトダマ[出血の少ない死体]を記憶しました!

最原「……」

霧切「どうしたの?まだ気になることがある?」

最原「…いや、別に」

最原(カムクラくんの死体から離れ、次は凶器を詰めたダンボール箱について調べることにした)

最原「……ん?」

霧切「どうかしたの?」

最原「いや、このダンボールだけ、異様に軽い…」

霧切「…まさか」

最原「やっぱりだ。…このダンボール箱だけ、中身がない」

霧切「……」

最原(空のダンボール箱…恐らく、これを運び入れたのは犯人だろう)

最原(でも一体何のために…?)

コトダマ[空のダンボール箱]を記憶しました!

最原(その後も音楽室を調べたが、事件に関係のありそうなものは見つからなかった…)

最原(じゃあ、次はここにいる人たちに話を聞いてみることにしよう)

最原(音楽室を調べているのは、王馬くん、苗木くん、七海さん、不二咲さん、そして霧切さんか….)

まずは誰に話しかけようか?

最原「苗木くん、ちょっといいかな?」

苗木「最原くん、どうしたの?」

最原「いや、君が僕たちと別れてから今まで何をしていたのか教えて欲しくて…」

苗木「うん、わかったよ。ボクは音楽室でみんなと別れた後、ゲームルームで七海さんとゲームをしたんだ」

苗木「その後、図書室に行って十神くんと話して…」

苗木「十神くんと別れた後、セレスさんの部屋でポーカーをやって遊んでたところに、いきなり死体発見アナウンスが鳴って……」

霧切「……つまり、あなたは常に誰かと一緒にいたということでいいのね?」

苗木「うん。そういうことに…なるかな」

最原(………)

コトダマ[苗木のアリバイ]を記憶しました!

最原「王馬くん、今大丈夫?」

王馬「わっ!なんだ最原ちゃんか。どうしたの?今度はオレを殺す気?」

最原「……凶器を運び終わってから今までの間、一体何をしていたのか教えてくれるかな?」

王馬「え~。なんで犯人にそんなこと教えなきゃいけないの?」

霧切「……」

王馬「わかったわかったよ、教えるよ。っていっても、話すことなんてないんだけどね」

王馬「図書室で最原ちゃんと話したじゃん?あれ以来オレは誰とも会ってないし、手がかりになりそうなものも見つけてないよ」

最原「…そうなの?」

王馬「ていうか、最原ちゃんが襲われた時間帯のアリバイなんて、わざわざ君が調べることじゃないと思うけどね」

最原「どういう意味?」

王馬「ほら、例えば…狛枝ちゃんが掘り返した穴あるじゃん?一体誰が、あそこに小型ナイフなんて埋めていたのか…とか、そういう凡人には考えつかない切り口で捜査を進めた方が効率がいいんじゃないかな」

最原「………」

最原(確かに、あの穴に凶器を埋めた犯人はまだ見つかっていない…)

最原(もしかしたら、今回の事件となにか関係あるかもな…)

コトダマ[何かを掘り返した痕]を記憶しました!

↓次は誰に話しかけようか?

最原「霧切さん、一応君のアリバイも聞いておいてもいいかな?」

霧切「私も王馬くんと似たようなものよ。途中最原君と会った以外、誰とも会っていないわ」

最原「そうか…」

霧切「ところで気になることがあるのだけれど」

最原「なに?」

霧切「あなたを殴ったという凶器…これが何だったのか覚えている?」

最原「いや、本当に後ろから突然だったから…全く分からないんだ」

最原「でも、結構強く殴られたはずなのに、僕はこうやって生きているし…たぶん、それほど重量のあるものじゃないと思う」

霧切「……そもそも、凶器になりそうなものは全部ダンボール箱に仕舞ったはずなのだけれど」

最原「強いて言うなら教室の机や椅子かな…。でも、一階の教室から椅子なんて担げば誰かに見られる危険が高いし」

最原「2階の教室のを使ったのなら、教室に誰かが入った音で僕が気付くはずだ」

霧切「………」

コトダマ[最原を殴った凶器]を記憶しました!

↓次は誰に話しかけようか

最原「七海さん」

七海「何?」

最原「いや、君が今まで何してたのか聞きたいんだけど…」

七海「ああ、アリバイってやつだね。わかった、話すよ。まず音楽室でみんなと別れたあと、ゲームルームで苗木くんとゲームしたんだ」

七海「苗木くんと入れ違いにセレスさんが入ってきたから、セレスさんともゲームした」

七海「セレスさんが涙目で出ていった後は、十神くんが入ってきて、ゲームに誘ったけど断られちゃった」

七海「その後不二咲さんが入ってきて、いろいろお話してたら、アナウンスが鳴ったんだよね」

最原「…君にも、ちゃんとしたアリバイがあるんだね?」

七海「うん。大体誰かしらと一緒に居たよ」

最原「そうか…」

コトダマ[七海のアリバイ]を記憶しました!

最原「不二咲さん、君のアリバイも聞かせてもらっていい?」

不二咲「うん。いいよ。といっても、真宮寺くんのお話を聞いて、七海ちゃんとお喋りしてた以外に、アリバイはないんだけど…」

霧切「いえ、十分よ。それさえわかれば、あなたが最原君を殴るのは不可能だもの」

不二咲「う、うん…。あっ、そういえば、最原くんが仕掛けたって言ってた、図書室の埃が無くなってたんだ」

霧切「…え?」

最原「そ、それって本当!?」

不二咲「う、うん……。食堂で最原くんたちと別れてから、ゲームルームへ行くついでに、図書室へ行ってみたんだけど…」

最原(それが本当なら…)

最原(僕がカードリーダーの埃を確認してから、不二咲さんが確認するまでの間に、誰かがあの扉を使ったってことか?)

最原(…一体誰が)

コトダマ[カードリーダーの埃]を記憶しました!

最原(さて、ここは一通り調べ終わったかな)

最原(あと調べるべきなのは、やはりカードリーダーの埃を確認しに図書室へ行くべきだ)

最原(後は…ダンボール箱があった倉庫かな)

最原(まずは図書室に行ってみよう)



【図書室】

狛枝「やぁ、最原くん、霧切さん」

最原「狛枝くん」

狛枝「これを見てよ、ほら、昨日最原くんが仕掛けたはずのカードリーダーの埃…」

狛枝「これが、なくなっているんだ」

最原「…知ってるよ。不二咲さんから聞いたんだ」

狛枝「へぇ。不二咲さんはもう知ってたんだ」

霧切「しかし、一体誰が…?こんな扉、使わなくても…」

狛枝「そういえば、今朝、起きて早々地下に行った人がいるらしいね」

最原「…………」

狛枝「ボクの予想が正しければ…彼の『超高校級の希望』の才能は……」

コトダマ[地下へ行ったカムクラ]を記憶しました!

最原「ところで狛枝くん、君のアリバイも聞いてもいいかな?」

狛枝「もちろんだよっ!『超高校級の探偵』からアリバイを聞いてもらえるなんて…光栄すぎるっ!」

最原「………」

最原(……この人だけは、カムクラくんか死んで、ショックを受けている様子はないな)

最原(まるで、この状況になるのを待っていたかのように…)

最原(……いや、考えすぎだ)

狛枝「さて、ボクのアリバイは……と行きたいところだけど、実はアリバイなんてないんだよ」

狛枝「でも一時から二時までの間はちゃんと音楽室前に居たよ。それだけは保証する」

霧切「…残念だけど、それもアリバイとは言えないわね」

狛枝「まぁでも、ボクはカムクラクンを殺してはないよ。ボクみたいなゴミクズが、あまつさえ『超高校級の希望』の命を奪うなんて…そんな大それたこと、出来るわけないでしょ?」

最原「………」

コトダマ[狛枝のアリバイ]を記憶しました!

豚神「……む」

セレス「あら、先客がいましたのね」

朝日奈「あ、最原…」

真宮寺「クックック…こんなところで何をしているのかな?見張り付きとはいえ君にはあまり動き回って欲しくないんだけど….」

最原「……僕は犯人じゃないよ。それを証明するためにも、真実を突き止めなきゃいけないんだ」

最原「だから、君たちの知っていることを教えてくれるかな。それくらいなら、いいでしょ?」

セレス「うふふ、まぁよろしいですわ。この事件には不可解な点も多いですしね」

誰の話から聞く?
↓(連取りok)

豚神「……ああ、いいだろう」

最原(最初に口を開いたのは豚神くん…)

最原(豚神くんは、捜査が始まってから、僕に対する態度が何か変だ)

最原(…やっぱり、僕のことを疑っているんだろうか)

最原(無理もないか…。僕は死体の第一発見者で、有力なクロ候補だもんな…)

最原(……いや、気にしていても仕方ない)

豚神「俺は朝日奈と一緒に校内を見て回っていた」

朝日奈「うん。…あたしは、ずっと豚神と一緒だったよ」

真宮寺「へェ。どうして2人で?」

朝日奈「いや、あたしが1人で闇雲に探し回ったところで大して役に立てないだろうし…」

朝日奈「豚神のサポートできればいいかなって思ってさ」

豚神「………」

セレス「つまり、二人はずっと一緒にいたということでよろしいのですか?」

豚神「ああ、そうなるな」

最原「…そっか」

最原(少し、安心した…)

コトダマ[豚神・朝日奈のアリバイ]を入手しました!

↓次は誰に聞こう?

セレス「では、次は私が」

セレス「私のアリバイは苗木くんが証明してくれると思います」

最原「あ、そうだったね。苗木くんと一緒にポーカーをしてたんだっけ」

セレス「ええ。アナウンスの鳴る小一時間くらい前から興じていましたから、私が最原君を殴り、カムクラ君を殺害するのは不可能です」

霧切「なるほどね」

セレス「では、次に私から質問させてもらってもよろしいですか?」

最原「え、うん。どうぞ?」

セレス「私たちは、凶器を保管する際、ダンボール箱に入れた後ガムテープで封をしましたよね?」

セレス「しかし、死体が発見されたときのダンボール箱は、どれも封をされたままだった…」

セレス「ならば、誰がどの凶器を使って、カムクラ君を殺したというのでしょう?」

最原(……確かに、な)

最原(封をされていなかったのは、空のダンボール箱だけだった…)

最原(…いや、もしかしたら違うのかもしれない)

最原(誰かがダンボール箱の封を開け、その中身を丸ごと持ち出した…?)

最原(だとしたら、その中身はどこへ…?)

コトダマ[封をされていたダンボール箱]を記憶しました!

次は誰の話を聞こうか

真宮寺「ボクは不二咲さんや君と別れてからずっと1人だったヨ」

真宮寺「だからボクにアリバイはないネ」

霧切「…何か気付いたこととかは?」

真宮寺「ンー…強いて言うなら、ボクらにカムクラ君を殺すことは不可能ってことくらいかナ」

最原「不可能…?」

真宮寺「だってそうでしョ?ボクらは学園内にある凶器を全部、音楽室に置いて来ちゃったんだから」

真宮寺「唯一殺せるとしたら、僕らの目を盗んで、武器を懐に隠すことが出来たカムクラ君、彼だけだよ。彼はボディチェックを受けていないからね」

最原「………」

最原(自殺だって言うのか…?)

最原(いや、でも……)

朝日奈「……あのさ、最原。ちょっといいかな」

最原「え、何?朝日奈さん」

朝日奈「最原は、本当に犯人じゃないんだよね?」

最原「勿論だよ。僕はカムクラ君を殺してなんかない」

朝日奈「…じゃあ、なんでカムクラは最原が見張ってるときに死んじゃったの?」

最原「そ、それは……」

最原(……そういえば、なんでだ?)

最原(なんで、僕が見張りのときに、カムクラ君の死体を発見させる必要があったんだ?)

最原(そこに、何か意味があったのか?)

最原(………)


コトダマ[死体発見時刻]を記憶しました!

最原(図書室も一通り調べ終わり、倉庫へ来た)

最原(倉庫にいたのは、東条さん、アンジーさん、江ノ島さん、十神くんだ)

最原(まずは、一通り倉庫を調べてみるかな…)


最原「……しかし、全く何も無いね」

最原(見回りをした時もそうだったけど)

霧切「凶器になりそうなものは、片っ端から詰め込んだもの」

最原「あるのは、…ダンボール箱か」

霧切「まだまだ沢山あるのね。砲丸を一杯に詰めても底が抜けなかったくらいだから、結構強度のあるダンボール箱には違いないのだけれど…」

最原「へぇ、最近のダンボールはすごいな…」

コトダマ[ダンボール箱]を記憶しました!

最原(倉庫は調べてもこれ以上は何もなさそうだし、誰かに話を聞いてみようかな…)

誰に話を聞きますか?

最原「江ノ島さん」

江ノ島「…最原に霧切。どうしたの?」

最原「いや、江ノ島さんのアリバイを聞いておこうと思ってさ…」

江ノ島「ふーん…まぁいいよ。って言っても、話すことなんてないんだけどさ」

霧切「アリバイがないってこと?」

江ノ島「うん。アタシはずっと寄宿舎にいたから…といってもそれを証明する手立てもないんだけど」

最原「そういえば、今朝カムクラくんを見たって言ったのは、江ノ島さんだよね」

江ノ島「ああ、そういえばそうだわ。今朝カムクラの奴が地下に入ってくのを見たの」

江ノ島「声かけようかと思ったけど、昨日のこともあったし…なんか、色々アレでさ」

江ノ島「…まさか、こんなことになるなんて、思ってもみなかったから」

最原「……江ノ島さん」

最原(やっぱり、『超高校級のギャル』には、こんな展開荷が重いのかもな…)

コトダマ[江ノ島の証言]を入手しました!

次は誰に話しかけようか

最原「東条さんは、何かアリバイはある?」

東条「生憎だけどないわね。私はずっと学園中の掃除をしていたから…」

霧切「掃除を?」

東条「ええ。学園内を清潔にして、みんなに快適な生活を送ってもらうことが、私の使命だから」

最原「それはありがたいね。…ちなみに、掃除の途中、変わったことはなかった?」

東条「いえ。特に手がかりとなりそうなものは見つけられなかったけど…」

東条「カムクラくんが持ち出したという、包丁について話しておきたいことがあるの」

霧切「……?」

東条「といっても、事件と関係があるかどうかは分からないのだけれど…。あの包丁は、厨房にあった包丁の中でも一番大きい肉切り包丁よ」

最原「………!」

東条「私も少しカムクラ君の死体を調べてみたのよ。そしたらね…あの傷は、とても大きく、深かった」

霧切「……つまり、カムクラ君を刺した凶器は、カムクラ君が持っていた、肉切り包丁の可能性が高いと…そういうこと?」

東条「ええ。そういうことよ。…まぁ、ただの偶然という可能性もありえるけれどね」


コトダマ[カムクラが持ち出した包丁]を記憶しました!

次は誰に話しかけようか?

アンジー「やっはー!終一たちもアンジーのアリバイを聞きに来たのかなー?」

最原「うん。お願いしてもいいかな?」

アンジー「アンジーはねー、ずっと神様と一緒に居たよー」

霧切「……神様以外とは?」

アンジー「んー、神様以外とは、会ってないなー。でもアンジーはイズルを殺してないよー!神様だってそう言ってるー」

最原「じゃあ、他に何か気付いたことはない?些細なことでいいんだけど…」

アンジー「気付いたこと?ちょっと待ってね、今神様に聞くからー…」

最原「………」

最原(人が死んでも、このノリなのか…)

アンジー「気付いたことじゃないけどー、気になることならあるよー」

霧切「何かしら?」

アンジー「アンジーたちは最初に食堂で凶器を集めたよねー」

最原「うん、そうだよね。それで?」

アンジー「え?終わり」

最原「ええっ!?」

アンジー「なーんか、このことが気になるんだよーって神様が言ってるんだよねー。なんで気になるのかは、神様が言ってくれないからわからなーい」

最原(………)

最原(僕たちがまず最初に食堂で凶器を集めたことが、何かおかしいことなのか?)

コトダマ[食堂での凶器回収]を記憶しました!

十神「最後は俺か」

最原「うん。お願いできるかな…十神くん」

十神「話すことは何もない。俺は見張りを終わらせたあと図書室で苗木と会い、ゲームルームで七海を見かけた。その後は特に誰に会うわけでもなかった」

霧切「…最原くんが見張りをしている時間帯のアリバイはないということね?」

十神「まぁそういうことだ」

最原「他に何か気づいたことはない?一見事件に関係の無いようなことでもいいんだ」

十神「そうだな…図書室にある本が、軒並み薄っぺらい物しか残ってなかったことが不満だった。…それくらいか」

霧切「…本も鈍器になるものね」

十神「全く…縛ることしかできない無能共が。早くこんなところは出てしまいたいものだ」

最原「ちなみに、図書室の隠し扉は調べた?」

十神「調べていない。お前が仕掛けた罠だろう、自分で確認しろ」

最原「……」

コトダマ[完璧に処理された凶器類]を記憶しました!

最原(……これまでの話を総括すると)

最原(僕が見張りをしている時にアリバイがないのは…)

霧切響子
十神白夜
東条斬美
真宮寺是清
夜長アンジー
狛枝凪斗

最原(…この6人か)


コトダマ[アリバイのない人たち]を記憶しました!

ピンポンパンポン

モノクマ「はーい、捜査時間しゅーりょー!」

モノクマ「オマエラ、至急裁きの祠までお集まりくださーい!」



最原(………これで、終わりか)

最原(だけど……)

霧切「…どう、最原くん。なにか分かった?」

最原「うん。霧切さんのおかげだよ」

霧切「……」

最原「君がいたから、僕は…真実に辿り着くことが出来ると思う」

最原「本当にありがとう」

霧切「…いえ。いいのよ」

【裁きの祠】

真宮寺「あァ…遂に始まってしまうんだネ」

狛枝「希望と希望がぶつかり合う学級裁判…!楽しみだなぁ…!」

王馬「……なぁに、この悪趣味な像」

アンジー「んー、これは神様もダメだしだよー。神様ならもっといいものが作れるはずだよー」

霧切「………」

セレス「全く。これから命を懸けたゲームが始まるといいますのに、緊張感が足りませんわね」

苗木「…ボクらは、負けない。絶望なんかに、屈したりしないんだ……!」

豚神「………チッ」

最原「……豚神くん」

豚神「……なんだ、最原」

最原「豚神くんは、僕を信じられないかもしれない。でも、僕は君を信じているから」

最原「僕が真実を示して、僕の潔白を証明するから」

最原「その時は…また、僕と…」

豚神「……違うっ」

最原「……え?」

豚神「俺はお前が犯人だなんて全く思っていない」

最原「え、えぇっ…?なら、どうして…」

豚神「……本来なら、霧切がお前にかけた言葉は、俺が言ってやらなければいけない言葉だった」

最原「………」

豚神「だが、俺は……コロシアイが起きてしまったショックで、それどころではなかった」

豚神「……そんな自分が、嫌でたまらなかったんだ」

最原「豚神くん…」

最原「……豚神くんは悪くないし、誰も君のことを責めないよ。だから、顔を上げてくれ」

豚神「……すまん、最原。俺は、俺を信じると言ったお前を、事実上裏切ったことに…」

最原「そんなことない。僕は君がそうやって僕のために泣いてくれるのが嬉しいんだ」

豚神「………」

最原「だから……今は、前を向いてくれ」

最原「生きてここから出るために」

最原「ここで終わってしまわないように」

最原「僕たちで、真実を掴むんだ」

豚神「………最原」

豚神「ククク…そうだ。落ち込んで俯くなど、『十神』ではない!」

最原「豚神くん…」

豚神「わかった。捜査で協力できなかった分、裁判でお前をきっちりサポートしてやる」

最原「ありがとう、豚神くん」


最原(そして僕らは固く握手を交わした)

最原(豚神くんの手は大きくて、分厚くて)

最原(2人でならなんだってできる気がした)


最原(モノクマの銅像が沈没し、祠へ橋がかかる)

最原(僕らはそれを一人ずつ渡り、祠の中へ入っていく)

最原(全員が入ると、床はいきなり下降しだした)

最原(そのとき、僕はエレベーターに乗っているのだ、ということに気づいた)

最原(エレベーターは、どんどん落ちていく)



最原(まるで、僕らを地獄へ引きずり落とすかのように)



最原(けれど…僕は絶対にそれを地獄だとは認めない)



最原(……エレベーターが止まった)

最原(僕らが降りると、そこはまさに裁判場となっていた)

最原(16人分の席が用意されており、カムクラくんの席には遺影が飾られていた)

最原(……そう、これは、カムクラくんを殺した犯人…クロを決める裁判)

最原("超高校級の希望"カムクライズルくん…)

最原(彼は僕たちと協調しようとしなかったし、僕らを殺そうともしていたそうだけれど…)

最原(それでも、彼が殺されていいわけがない。彼の才能だって、まだよくわかってないのに)

最原(だけど、彼は殺されてしまった)

最原(そしてその犯人が…)


最原(僕たちの中にいる)

最原(未だに信じたくないけれど、それが"残酷な真実"だというのなら)

最原(…僕は向き合わなければならない)

最原(超高校級の探偵として…そして、みんなの仲間として。ここから、生きて脱出するために)


最原(そして幕は開く)

最原(命懸けの騙し合い)

最原(命懸けの裏切り)

最原(命懸けの謎解き)

最原(命懸けの言い訳)

最原(命懸けの信頼)


最原(命懸けの、学級裁判……!!)

コトダマリスト

『モノクマファイル1』>>223

『出血の少ない死体』>>224

『空のダンボール箱』>>225

『苗木のアリバイ』>>229

『何かを掘り返した痕』>>230

『最原を殴った凶器』>>233

『七海のアリバイ』>>237

『カードリーダーの埃』>>238

『狛枝のアリバイ』>>240

『豚神・朝日奈のアリバイ』>>243

『封をされていたダンボール箱』>>245

『死体発見時刻』>>248

『ダンボール箱』>>249

『江ノ島の証言』>>252

『カムクラが持ち出した包丁』>>254

『食堂での凶器回収』>>256

『完璧に処理された凶器類』>>257

『アリバイのない人たち』>>258(ミス。正確には+王馬した7人です。すみません)











今日はこれで終わりです
次回からようやく学級裁判です

すいません
>>258 は+江ノ島で8人です

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