周子「一日だけの友達。名前も知らないあの子」 (22)


一日だけの友達。名前も知らないあの子。でも、ずっとずっと記憶に残っている大切な思い出。



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周子「そう言えばフレちゃんの金髪を見て思い出したんだけどね」

フレデリカ「ふんふん?」

周子「あたし、小さい頃に一回だけおフランスに行ったことがあるんよー」

フレデリカ「ワーオ♪ 地元じゃーん!」

周子「そーそー。あれ? でも、フレちゃん昔フランスに住んでたんだよね?」

フレデリカ「フレちゃんも住んでたよー☆ その時の物語を話してたもーれ?」

周子「どうせ時間あるし、じゃあちょっと昔話ね」

フレデリカ「パチパチパチパチ~♪」


あれはあたしがまだ五歳になるかならないぐらいかのお話。

親父がフランスのなんとかっていうイベントで、自家製の和菓子を売ることになったんだよね。

塩見ファミリー初めての海外ってことで、あたしすっごく浮かれてたんだ。

だって人生で初めての海外だったからもうわくわくだよね。

飛行機だってなんだって見る物全部がキラキラして見えたんだ。


でも、いざフランスに着くと、途端にみんなばたばたし始めちゃってさ。

最初こそは全部が初めての場所だったから楽しかったよ?

何もかもが違うんだもん。楽しくないわけがないよね。

だけどそんな時間はすぐ終わっちゃってさ。

おでかけは誰かが一緒じゃないとダメ。

だからといって、お手伝いもさせてくれない。

ずーっとホテルで何言ってるのか分かんないテレビを見るだけ。

だからあたし、ホテルを飛び出すことにしたんだよね。

ロリシューコちゃんの大冒険、みたいな?


ホテルを出ると、すぐにおっきな通りがあってね。

車もたくさん、人もたくさん。

みんななんでかニコニコしてたんだよねー。

だからあたしもなんだか楽しくなっちゃってさ。

スキップなんてしながら、フランスの街をルンルン気分で歩き回ったんだ。

ウィンドウショッピングしながらあっちへふらふら~、こっちへふらふら~。


そんなことをしているとあら大変。

幼いシューコちゃんはなんと迷子になってしまったのです!

それでも三つ子の魂なんとやらって感じで、その時はなんとかなるーって思ってたんだよねー。

帰り道はどこだろーってフランスの街を歩いていたら、おっきな公園が見えたんだ。

本当に大きな公園で、ここまで大きなのは京都でもお目にかかれないぞーなんて。

でも、こんな場所は絶対に見てないから、ここに入ると帰れなくなるんだろうなーって思いながらも好奇心に負けちゃって。

あたしはよっしと気合いを入れてその公園に入ったんだ。


ジョギングしてるおじさん、犬の散歩をしてるお姉さん。他にも色んな人がそこの公園にいた。

あたしを見るとみんな不思議そうな顔をして通り過ぎて行った。

そりゃそうだよね。幼い女の子が一人で歩いてるんだもん。

そうやって公園の中を歩き回っていると、足がくたびれちゃってさ。

あたしは近くにあった木でできたベンチによっこらせって座ったんだよ。

そしたら視界の隅にきらって光るものが見えたのね。


なんだろーってそっちを見たら、金色の髪の毛を太陽の光できらきらさせた女の子が一人でベンチに座っていてね。

俯きながら膝に置いた何かに、一生懸命ペンを走らせてるの。こう、しゃっしゃーって。

あんまり一生懸命だから何してるんだろうーって観察してたら、あたしの視線に気が付いたその子が顔を上げたのね。

エメラルドグリーンの瞳が遠目からでもすっごく綺麗だった。

あたしたちはお互いじーって見つめ合ってたんだけど、どちらともなくふふって笑っちゃったんだ。

なんだか気持ちが通じ合った気がして、あたしはその子の隣まで歩いて行って、座ることにしたんだ。


「何してるの?」って聴くと、その子が「お絵かきしてるんだー」って笑いながら教えてくれた。

何を描いてるんだろって気になって覗き込むと、そこにはすっごく上手にスケッチされた絵があって。

あたしは思わず「すごーい!」って言っちゃったんだよね。

そしたら女の子がね、「ありがとう」ってお人形さんみたいに整った顔で、嬉しそうに笑ったんだ。


女の子とあたしは手を繋いでいろんな所に行ったんだ。

落書きだらけの路地裏。

綺麗なお花が咲いている秘密の花壇。

よくわからないオブジェを見て、私たちはけらけらと笑いあった。

石畳の道を、ずっとずっと歩いて行く。

大人からすればそれはたいしたことない距離だけれど、幼い二人にとっては大冒険。

楽しくて楽しくて、ずっとこの時間が続くと思ってた。


でも、空は気が付けばオレンジ色になっちゃっててさ。

急にここが自分の知ってる場所じゃないんだって分かっちゃって、さっきまで楽しかったのが嘘みたいに恐くなったんだ。

帰らなきゃって。どうしようって。

なんだか心細くなっちゃって泣きたくなったんだ。

そしたらね。うん、今思い出しても少し恥ずかしいんだけどさ。

その女の子がぎゅって私を抱きしめてくれたんだ。

「大丈夫だよー」

って、暖かい声で。

そしたらそれはそれでなんだか安心しちゃったような、まだ恐いような気分になって、あたし泣き出しちゃったんだ。わーんわーんって。

お母ちゃんとお父ちゃんを泣きながら呼んだんだよね。

その間女の子はずっとあたしを優しく抱きしめてくれてた。


あたしの顔が涙と鼻水でぐっちゃぐちゃになったとき、聞き慣れた声がしたんだ。

あっ、と思って顔を上げたら、遠くからあたしたちを見かけたお母ちゃんが安心しきった顔で走って来てさ。

そしたらあたしはもうそれだけでわんわん泣いて、お母ちゃんの元へ走って行ったの。

その時お母ちゃんがなんて言ったのか、あたしはもう覚えてないんだけどね。多分心配したよとかそんなのだったと思う。

しばらくお母ちゃんにぎゅってされてたら、女の子のことをはっと思い出してさ。

そっちを向くと金髪の女の子はにっこり笑ってこう言ったんだ。

「またね」

って。


それだけ言い残すと、女の子はあたしたちに背を向けて、そのままどこかに行っちゃったんだ。

次の日がちょうど帰る日だったから、あたしはお母ちゃんに無理言ってその女の子を探した。

結局会えなくてさ。だからあたしは初めて会った公園のベンチでずっと待ってたのね。

でも、結局飛行機の時間が来ちゃって、あたしは会いたかったなーって思いながら日本に帰ることになったんだ。


周子「名前も知らない金髪の女の子。日本に帰ってからも、たまーにその子のことを思い出しては、あの子元気にしとるかなーとかって考えちゃうんだよねぇ。でもね、あたし最近気が付いたんだ」

フレデリカ「ほうほう」

周子「あれはあたしがいつものようにその子のことを思い出していたときのこと……」

フレデリカ「ごくり……!」

周子「あれ? なんで日本語で会話してたんだろーって」

フレデリカ「わーお……世界の謎ですな塩見殿」

周子「そうなのですよ宮本殿……」

フレデリカ「うむむ……この謎を解くために必要なもの……あっ、フレちゃんモンブラン食べたーい♪」

周子「食べ物かーい! でも、あたしも色々お話してお腹すいたーん。LiPPSのみんなでケーキ食べに行こっか」

フレデリカ「いいねー☆」


フレデリカ「あっ、そうだ。アタシ思うんだけどねー。きっとその女の子が成長してその絵を見ると、苦笑いしちゃうと思うんだー。下手っぴだなーって」

周子「へ? どうして?」

フレデリカ「フレちゃんも、絵の勉強してるからねーっ。うん。でも、その絵にはきっと、幸せな想い出がたーっくさん詰まってるから、ずっとずっと大切にしまってると思うの」

周子「………………」

フレデリカ「名前の知らないあの子がすごいって褒めてくれたから、その絵を見る度にその子も元気かなーってにこにこ笑うと思うんだー」

周子「フレちゃんそれって……」

フレデリカ「名探偵フレデリカ! ここに見参! なーんて♪」

周子「さっすが名探偵フレデリカ! どんな事件もしゅばっと解決!」

フレデリカ「フフーン♪ さっ、周子ちゃん行こ行こ~!」

周子「あっ、フレちゃん待っ! もー……フレちゃんにはかなわんわー」



フレデリカ「フンフンフフーン、フレデリカー♪ フレフレフレデリカー♪」



終わり

ところでフレデリカを書くのって難しくないですか??

友人に助けられてなんとか書き上げることができました。
この場をお借りして再びお礼を。

また、当SSを読んでいただき、ありがとうございました。

前作です。
卯月「周子さんと牧場体験です!」
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