君は自転車に乗れるかな？

・・・そうか

ああいった乗り物はキャスター角とジャイロ効果によって直進時の安定性を・・・

・・・いや、今はこの話は止めておこう

まあ、自転車は進んでいないとすぐに倒れてしまうだろう

では三輪車はどうだ？

そう、支えがなくとも転倒しない

物体が安定するためには、最低三つの支点が必要となるわけだ

自動車は四輪、つまり四つの支点がある

こうなると滅多なことでは転倒しない

すなわち支点が増えるほど安定性は増す、ということだ

図形で言えば三角より四角、四角より五角という具合だ

さて、では角の数をどんどん増やしてみよう

六角七角八角・・・角の数が限りなく無限に近付くと、そこに円が現れる

同じ面積であるなら、円こそが最も安定した形であると言える

樹木や植物の茎、血管や骨の断面などはすべからく円だ

あらゆる方向からの衝撃に対して強く、縦方向の圧縮や引っ張り強度も抜群だ

謂わば自然淘汰のお墨付きというわけさ、素晴らしいだろう？

私も常々そうありたいと思っている

君のように尖った生き方をしている人間には、丸くなるというのに抵抗があるかも知れないがね

・・・いや、批判しているわけではない

私だってそうさ

オンリーワンと言えば聞こえは良いが、この業界は人気投票だとかＣＤの売り上げだとかでどうしたって優劣が付けられる

上に切り込んで行くには、尖った部分は必要だ

そこで私からの提案だ

まずは円錐形を目指してみるのはどうだろうか？

・・・そう、鉛筆の先端のような形状だ

これならば尖りつつ安定性も確保できる

ハハハッ、具体的にどうするべきかと問われてもな

そこは自分で模索してくれたまえ

・・・人間は二本の足で立っている

生まれつき、この不安定な状態を維持する力を持っているんだ


君もまた、生まれ持った才能と努力でアイドルの道の上に立っている

だが、そう・・・支点が二つではやはり不安定なのだ

不安定な物が倒れるのは自然の摂理


失敗して転んでしまっても、それは無様なことなんかじゃない


そして、あらゆる物体は安定しようとする

落とした百円玉は、先ほど言った最も安定した円を下向きにして倒れるだろう？


安定するためには、最低三つの支点が必要だ

二本の足で倒れそうな時は・・・

プロデューサーでも先輩アイドルでも、なんなら私でもいい

誰かに支えてもらいたまえ

恥ずかしいことではない、それもまた摂理だ

フフッ、励ましなんかじゃないさ

私はそんな器用な人間ではないよ


ただの論理的帰結、というやつさ


ふむ、暇ならいつでもラボに来るといい

愚痴くらいならいくらでも聞こう


では、またな！




おわり