京太郎「誕生日…かぁ」 (26)



京太郎「はぁ……」タン

ハギヨシ「どうしたんですか?」タン

衣「チー」タン

一「…………」タン


京太郎「いやぁ、今日誕生日じゃないですか。なんでこんな事になったんだろうって」タン

ハギヨシ「それは―――」タン

衣「…衣と麻雀、楽しくないか?」タン

一(ようやくイーシャンテン…うーん、手が思ったほど伸びないなぁ)タン

京太郎「あ、いえ。そういうわけじゃないんですけど…」タン


ハギヨシ「ロン。リーチ、タンヤオ、ピンフ、一盃口、ドラ1で満貫です」

京太郎「えっ!?ちょ、今のなしで!」

ハギヨシ「麻雀に待ったはありませんよ?」

一「あーあ、またキミのトビかぁ」

京太郎「ぐぬぬ…」



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京太郎「くっ…もう一局!もう一局お願いします!」

ハギヨシ「ふーむ…いえ、少し休憩にしましょう」

一「それもそうだね。ちょっと疲れたかも」

衣「ハギヨシ、喉がかわいた!」

ハギヨシ「はっ。今すぐ全員分のお飲みものを持ってきます」


京太郎「あ、じゃあ俺手伝いますよ」

ハギヨシ「いえ、お客様の手を煩わせるわけには」

一「そーそー。だいたい、どこに何があるとか知らないでしょ?」

京太郎「あー、たしかにそうですね」

ハギヨシ「それと、ついでに向こうの様子も見てきますので少々時間がかかるかと。それまで衣様とお待ちください」

京太郎「はーい」



衣「それで、さっきのはどういう意味なのだ?」

京太郎「んー、いつもの誕生日は独りで、もっと淡々と過ぎていったからなぁ」

衣「?」

京太郎「えっと、ようは今すげー嬉しいし楽しいんだけど混乱してるっつーか」

衣「むぅ、衣には京太郎が何を言いたいのかさっぱりだ」

京太郎「そうか…そうだよなぁ…。でもさ、いくらなんでも―――」


ハギヨシ「―――お待たせしました」

衣「わーい、衣の大好きなココアだー」

京太郎「あ、相変わらず早いですね。向こうはどうでした?」

一「ちょうど準備終わったところだったよー。たぶん後一、二分で呼ばれると思う…けど」

京太郎「けど?」

一「―――ちょっとはしゃぎすぎなんじゃないかなぁ、みんな」

京太郎「あ、あいつら……」ダラダラ



「京ちゃーん、準備できたよー」




一「ほら。じゃあいこっか」グイグイ

京太郎「はぁ…」テクテク

ハギヨシ「あまり気が進まなそうですね」テクテク

京太郎「そりゃあそうですよ。わざわざ龍門渕さんに迷惑かけてこんな…っと、着いた」ピタ

一「透華はそういう事気にしないと思うなー」

衣「衣も友達の友達の誕生日を祝うのは初めての事で、楽しみだぞ?」


京太郎「えっ、俺たち友達じゃなかったのか?」

衣「えっ」


京太郎「………。馴れ馴れしくてすみませんでした、以後気を付け―――」

衣「あああ!! ちょっと待て!友達!京太郎と衣は友達!いいな!?」

京太郎「そ、そんなに慌てて肯定しなくても…」


一「もう、早く入ろうよ」

京太郎「つっても、どのタイミングで入ればいいのか…」



『須賀京太郎、にゅーじょー!』



京太郎「はい!?」

一(あ、マイクも借りるって言ってたねそういえば)



一「ほらほら。あ、僕らは一旦離れるから、一人で頑張ってね」

ハギヨシ「ご武運を」

衣「また後で!」

京太郎(ええ…くそっ、いくしかないのか!)


ギィィ



ワーワー パチパチパチパチ


京太郎(な、なんだこれ、なんで結婚式みたいなBGM流れてんの? ねぇ!)テクテク


久『あ、その辺で止まってねー』


京太郎「え、あ、はい」

京太郎(うわぁ、なんでこんな人いるの!? ってかめっちゃ見られてるよ、知らない人から!!)



久『コホン。えー、須賀くん、誕生日おめでとうございます』


京太郎「…ありがとうございます」


久『今日は、日ごろお世話になっている須賀くんの為にたくさんの方々が見えられています』


京太郎「はぁ」


久『一人ずつと言いたい所ですが、時間の関係で一部の方たちのみ挨拶をさせていただきます』


京太郎(いや、一部って誰。そもそも挨拶いらないんだけど)



咲「………」テクテク


京太郎(お、舞台裏から咲が出てきたぞ。ってか咲から挨拶って何言われるんだ?)



久「さっきも言ったけど、このスイッチを上にしたらマイクが音拾い始めるからね?」ヒソヒソ

咲「は、はいっ」ヒソヒソ

久「good luck」テクテク



カチ!  キィィィィィィィィィ


京太郎(ノイズうるさ!)


咲『っ。わ、私は宮永咲と申します。須賀京太郎くんの幼馴染です』


京太郎(お、おう。まずは皆に自己紹介か。無難に)


咲『きょ、京ちゃん誕生日おめでとう!…以上です』


京太郎(は?)


咲「………」テクテク



ザワ…ザワ…



京太郎(みじか! しかもなんかアレでやり遂げたみたいな顔してるし!)

京太郎(おいこれ意味あるの? 他の人もなんか唖然としてるし)




優希「………」テクテク


カチッ


優希『わ、ワタシは片岡優希といいます。えー、須賀京太郎クンの作るタコスはとても素晴らしく―――』


京太郎(誰が食いつくんだその話題!しかもなんか口調正してるのがむかつくんだけど!)


~~~
~~



優希『ワタシはそれを――――であり―――』


京太郎(しかも無駄になげぇ…)


優希『彼は―――であるからして―――』


京太郎(―――けど、真面目に言ってるのが伝わってくる)



優希『―――彼はワタシに勇気と希望を常に与えてくれたのです』ニコッ



京太郎「………!」ジワッ



優希『最後に改めて―――犬!誕生日おめでとう!! 以上だじぇ』



パチパチパチパチ



京太郎「………」ポロポロ

京太郎(………なんか感動した)




京太郎(やべぇ…まじで優希に泣かされる日が来るとは…)

京太郎(おっと、次は順番的に和かな? 地味に何言うか楽しみだぜ)


ザワ…ザワ…


京太郎(ん…なんだ?次のが来ないぞ?)


久『えー、急きょ問題が発生致しましてー、原村和さんと――ついでに染谷まこさんの挨拶を割愛させていただきます』


京太郎「おい」


久『更にー、私もちょっとあれなのでー、割愛させていただきます』


京太郎(あれってなんだよ)


久『―――しかし! その代わりというわけではありませんがスペシャルゲストをお呼びしています!』


京太郎(お、おお!?もしや部長のコネで藤田プロあたりでも連れてきてくれたのか!?)


久『どうぞ!』



照「……はぁ…」テクテク



京太郎(照さん!? えっ、なんで!? 受験は!? もしや大学諦めたんですか!?)

薫(奴に受験戦争を乗り切るのは不可能だと判断した。よって推薦を勧めたのだ)

京太郎(あ、なるほど)



照『私は宮永照、先程の宮永咲の姉です。本日はこのようなおめでたい席にお呼び頂き、誠にありがとうございます』


京太郎(お、おお…照さんがすげぇまともな人に見える)


照『というのも、私と彼は妹の咲と同じく幼馴染ではありますが、東京の高校に入ってからは疎遠で』


京太郎(これ完全に普段と別人だろ)


照『疎遠で……』チラッ


京太郎(ん?なんか手元を見てる? 手元……カンペ?)


ヒラッ


照『あ……』


京太郎(あ、なんか落とした)


照『……。ありがとうございました。以上です』ペコ


京太郎「―――」


ザワ…ザワ…


照「………」テクテク



京太郎(今のは見なかったことにしよう)




ザワ…ザワ…


ハギヨシ「京太郎さん」ヒソ

京太郎「うぉ、ハギヨシさん?」

ハギヨシ「次は京太郎さんの番ですよ」

京太郎「ええ…いきなりなに言えと」

ハギヨシ「大丈夫です、素直に思ったことを口にすればそれでいいですから」


京太郎「はぁ…」テクテク


久「遅い!なんか間が空くと嫌な空気流れるんだから早くしてよね!」ヒソヒソ

京太郎「いや、そんな事言うなら先に段取りとか教えてくださいよ! 無茶振りすぎですって」ヒソヒソ

久「まぁ過ぎたことは今更議論しても遅いわ。とりあえず、気の利いた一言、お願いね」ヒソヒソ


京太郎(気の利いた一言…なに言えば良いんだ…)



カチッ



京太郎『えー、皆さんお手元のグラスをお持ちください』


久(え…?これってまさか…)


京太郎『―――乾杯!!』


久「勝手に進行するんじゃないわよ!!」





京太郎『!?』

久(ああもう、ここまで来てぶち壊しにするなんて…!)

久「しかも何その心外そうな顔! 気の利いた一言ってのはジョーク言えって意味じゃないのよ!?」

京太郎(ぐ…そ、その通りだけど、好き勝手言いやがって!)

京太郎『…和や染谷先輩に便乗して挨拶抜いた部長が言えることじゃないと思いますよ』

久「なんですって!」


京太郎『大方俺と同じで何言っていいか分からなかったから省いたんでしょう?』

久「そ、そんなことないわよ! それと今はまこが部長でしょ!? まこが聞いたら泣くわよ」

京太郎『今それ関係ないですよね!?』


ワーワー ギャーギャー


透華「………」


プツン


透華「お二人とも静粛に!!」

京太郎「!」

久「!」



透華「まったく…せっかくの祝いの席で何をしているのやら…」

京太郎『うっ』

久「ご、ごめん…なさい」


透華「…まずは貴方、マイクを早く切りなさい」

京太郎『あ』


カチッ


透華「やはり、この私が進行役を務めるべきだったのです! だいたい久、貴方は―――」



※この後5分ほど説教が続いた




~~~
~~



京太郎「あの、お色直しってなんですか」

ハギヨシ「竹井様は結婚式をもとに企画を作られたようで…」

京太郎「…だと思いましたよ。それで、何してればいいんですか?」

一「ま、普通に休憩してればいいと思うよ」

京太郎「はぁ」


京太郎(うー…流石に部長―――じゃなくて竹井先輩と喧嘩はまずかったかなぁ…あんなんでも俺の為に色々してくれたんだし)

衣「…そう落ち込むな。京太郎は頑張ったと思うぞ?」

一(一番笑える余興だったのは否定できないなー)


京太郎「…ありがとな、衣」ナデナデ

衣「こ、子供扱いする…な…いや、やっぱりそのままで頼む」

京太郎「ん?」

衣「京太郎の手は大きくて、まるでお父様を思い出す…」

京太郎(…思い出す?って事は既に―――――ってことか? そういやこの子の事なんにも知らないんだよな…)

衣「………」



『須賀京太郎、さいにゅーじょー!』



京太郎「っと、もう呼ばれたのか」

衣「よい、気にせずいってこい」


京太郎「おう、またな」

衣「うん!」




久『はい、では色々すっ飛ばして余興のお時間です!』

久『皆さんにやっていただくのはビンゴゲーム…で・は・な・く、“牌本引き”というゲームです!』


京太郎(牌本引きぃ?)


久『ルールは簡単!胴師…つまり私の選んだ牌が何なのかを当てて頂くだけです!』

久『まぁ、実際は6枚の牌の中から選ぶのですが、本日は大勢いらっしゃるので、筒子の1~9までの牌といたします!』

久『今回は9ゲーム行い、当たった回数の多い方に景品がプレゼントされます!』


京太郎(へー、簡単だし麻雀部っぽいし。竹井先輩も考えたなー)


☆景品表☆

9回当たり:最新式自転車 8:黒毛和牛 ※グラム数は謎 7:魔法瓶 6;懐中電灯 5:洗剤・サラダ油の詰め合わせ 

4:箱ティッシュ×5 3以下:お菓子詰め合わせ



京太郎(これ絶対上位のは龍門渕さんに提供してもらっただろ)


久『ではお手元に配られた牌が正しい数だけあるか確認してください!』

久『さぁ、始めますよー』





久『―――入ります』スッ



京太郎(…さて、今伏せた牌がなんなのか…ま、適当に1とかにしておくか)


咲「―――京ちゃんなににした?」

京太郎「よっ、どうしてここに?」

咲「席、自由になったし良いかなって。それで、京ちゃんは何にしたの?」

京太郎「とりあえず1にしたぞ」


咲「…根拠は?」

京太郎「は?こんなのただの運だろ?」

咲「はぁ…京ちゃん、周り見てみなよ」

京太郎「…?」


照「……!」ギン!

照(照魔鏡…発動…)


まこ(…過去に久と遊びで牌本引きをやった時のパターンからして最初は…)

まこ「―――これじゃな」スッ


菫「…狙い撃つ」スッ



京太郎「な、なんだこの異様な空気は…!」

咲「ね? 皆適当に選んでる人なんていないでしょ?」

京太郎(オカルトってずるい。本当にそう思いました。)


咲「ちなみに、部長があれだけ大騒ぎしたのに進行役も降板せず胴師になったのも…わかるよね?」

京太郎「ああ、あの人のオカルト的に納得したわ」



~~~
~~



京太郎「結局、お菓子詰め合わせか…」

咲「まぁまぁ、三回は当たったんでしょ?」

京太郎「そうなんだよなぁ。あと一回だったのに…ってか、お前それ」


咲「ん?お肉の引換券だよ? 帰りに換えてもらうの」

京太郎「うっそだろ!?」

咲「ほんとは全部当てられたけど、自転車あんまり使わないし…」

京太郎「………」

咲「そんな泣きそうな顔で見ないでよ!?」



照(お菓子、たくさん)

菫(ふぅ、全部的中…照の付き添いで来たが思わぬ所で大物をもらったものだ。確か亦野が欲しがってたし、くれてやるか)

まこ(ちょうど油を買い足そうゆぅて思うとったところだしタイミングがええなぁ)



京太郎(あー、みんな良い笑顔だなぁ……ほんとに泣きそう)



~~~
~~




京太郎『えー、今日は俺なんかの為にこんなに集まって頂き、ほんとうにありがとうございました』

京太郎『―――以上です』ペコ



パチパチパチパチ



~~~
~~



京太郎「………ふぅ、終わったああああ」

一「おつかれー」

京太郎「ありがとうございます。…あれ、ハギヨシさんや他の皆は一緒じゃないんですか?」

純「ハギヨシなら清澄の連中と後片付けしてるぞ」

京太郎「なるほど」

京太郎(こんだけ色々場所とか貸してもらったりしたら、片付けぐらい手伝わないとまずいよな…)


一「あー、キミは休んでていいよって、清澄の元部長さんから伝言だよ」

京太郎「いやいや、悪いですって」

純「おめぇ今日の主役だろ? そいつ働かせてどーすんだって」

京太郎「楽しむだけ楽しんで後は任せるのも後味悪すぎなんですって…」


衣「…京太郎、本当に楽しめたのか?」

京太郎「ん…? まぁ、正直疲れるから一度で良いとは思ったけど―――大勢でわいわいやるのも悪くなかったよ」

衣「そっか…!」





京太郎「なぁ、今更なんだけど」

衣「ん?」

京太郎「どうしてこんな祝い方になったんだ?」

一「ああ、それは…」


純「『どんな内容でも良いから、飛び切り盛大な方法で祝いたい』と、清澄の元部長から言われたんだ」


京太郎「はぁ?」

衣「普段散々世話になってるから、らしいぞ?」

一「それでどんどん議論が深まって膨らんで、熱くなって煮詰まって最終的にこんな事になったんだけど…清澄の誰からも反対意見は出なかったらしいね」

京太郎「……おいおいまじかよ。絶対半分は悪趣味な嫌がらせかなんかだと思ってたのに」

一「まぁ、結果がアレってのもどうかと思うけど」


京太郎(あんま言いたくないけど頭悪い人しか居なかったのか? 途中で止めるなり引き返すなりすりゃよかったのに)

純(うーん、結婚式って意見最初に出したの誰だったっけ…原村和? いやまさか)




ハギヨシ「……それで、結局手伝うことに?」

京太郎「ええ」

久「まぁ、こうなるとは思ってたけど」

咲「せっかくの配慮が無駄になっちゃったねー」

京太郎「悪いな」


和「でも助かりました。少々重いものもありましたので」

優希「いn…京太郎!これも運ぶじょ!」


京太郎「容赦ねーな! ってか、和パーティの間どうしてたんだ?」

和「すみません、準備が終わった時点で倒れてしまって…それと、遅れましたが誕生日おめでとうございます」

京太郎「お、おう!そうだ、俺からも―――」



京太郎「皆、ありがとな!」



「「どーいたしまして!」」




カン!

完全に見切り発車… 当初の予定では麻雀無双するはずがどうしてこうなった
しかし今年も無事京ちゃんの誕生日を祝えて満足です!
読んでくださった方、ありがとうございました!

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