[安価あり]グッドラック、キャプテン (25)

バイオハザード風です
グロとかあるかもしれないのでこっちで

クライヴ・コーポレーション。
ありとあらゆる分野で様々な事業を展開する多国籍企業だ。
表向きも、実際も、不祥事を起こすことがめったにない。
今や、1日に一度はロゴ(リングで囲まれたCを囲う羽)を目にする。
······さて、ここである男が登場する。
ダグラス·レカード。
東洋系の顔立ちの男だ。
肩書きは、クライヴ·セキュリティ·システムの小隊長。
前任者が入院したため、急遽配属になった。
彼の物語は、序章を迎える。

「必要なもの全部持った?忘れ物ない?」
「大丈夫だよ、姉さん。心配しすぎだ」
姉のアリサは、なお心配げに眉を下げている。
ダグラスは肩をすくめ、自分より頭ひとつ小さな姉を抱きしめた。
「大丈夫だって。今日は挨拶くらいで帰ってくると思うから」
「······うん。わかった。いってらっしゃい、ダグ」
そこで、ダグラスが右の手首にあるべきものがないことに気づいた。
「······っと。腕時計、忘れるとこだった」
アリサは少し呆れた感じで笑うと、二階へ上がっていった。
「はい。これ忘れちゃダメだよ」
「ありがとう。じゃあ、行ってきます」
ドアを開けて、外へ出た。
穏やかな太陽が街の看板を照らしている。

<Welcome to Crive City!>

忘れ物はない、の言葉は正しかった。
警備は厳しいクライヴ社の中へ入り、警備部を目指す。
配属は第一小隊。前任者曰く、最強の部隊らしい。
ドアを開けた。
「はざぁ~ッス」
一番近い机に座っていた女が間延びした声をかけた。

忘れ物はない、の言葉は正しかった。
警備は厳しいクライヴ社の中へ入り、警備部を目指す。
配属は第一小隊。前任者曰く、最強の部隊らしい。
ドアを開けた。
「はざぁ~ッス」
一番近い机に座っていた女が間延びした声をかけた。

なぜ二回書き込んじゃったのか

呆然とした。
12人小隊と聞いていたのに、わずか5人しかいない。
「······他のメンバーは、どこだ?」
「サボりッス。あ、ウチはオリベラ・ノヴァック」
オリベラが沈黙すると、少し奥でレミントンを整備していたスキンヘッドの黒人が
顔をあげた。
「カルロス・ボーウィン、ショットガナーです」
続けて金髪の軽い感じがする男が口を開く。
「ケヴィン・タリス。ケイヴでいいぜ、隊長!」
妙にハイテンションだ。
「バックアップ······シノ·ヒロセ······」
とてもローテンションだ。
そして最後の一人は、大きなソファーの上でピヨピヨと眠っている。
「起きてくれ、君。おーい」
軽く揺さぶると、少女は気の抜けた声を漏らして跳ね起きた。
「ひにゃっ、ふぇっ?······あ、もしかして隊長さんですか?私、朝霧 夕菜です」
「ひとつ聞いていいか?」
「何でしょうか」
夕菜はちょこんと首をかしげる。
「君は何歳だ?」
「えっとー······19歳です」
「そ、そうか。はははは······」
ダグラスは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
どうみても中学生だ。

酉付けました

「えー、ごほん。俺が、今日から隊長になったダグラス・レカードだ。よろしく」
何となく緩い雰囲気の漂う第一小隊オフィスで、特に会話もなく時間が過ぎていく。
夕菜以外は。
「隊長は、どこの方なのですか?」
「んー······極東に母がいて、父は西洋。小学校のときはずいぶんからかわれた」
「へぇー·····私も、極東出身なのです」
「そうか。どうしてこの国にいるんだ?」
「留学したらこのお仕事が見つかって、始めたらいつの間にかすっかり馴染んでしまいました」
等と脈絡もない話をしていると、いきなり警報が鳴り響いた。

もういいや、安価は出さない!

ダグ「仕方ない、左へいくぞ!」
ケイヴ「なんだよこいつら!わけわかんねえ!」
オリベラ「いてっ!くそ、噛まれた!」
ダグ「ほら立て、急ぐぞ!」
全員がそれぞれの武装を撃ちまくり、なんとか道を開く。
ダグ「走れ、走れ!逃げるんだ!」

30分ほども走っただろうか、ようやく安全そうな部屋を見つけて駆け込み、鍵をかける。
ダグ「はぁ、はぁ······大丈夫か?」
カルロス「オリベラが噛まれました。銃弾も残りわずかです」
ダグ「······このままだと、万策尽きてあいつらの餌になるってわけか」
ケイヴ「······ちくしょう······まだ死にたくねぇ!」
ダグ「そんなことを言っても始まらない。なにか方法を考えるんだ」
夕菜「············これはだめなのですか?この部屋の通気孔は、カルロスさんでも通れます。
順番に中へはいって、いろんなルートを探すのはどうでしょうか」
ダグ「それは名案だ。それでいこう。とすると、地図が必要だな。持ってないか?」

夕菜「地図ならみんな持っているのです。これなのです」パラリ
ダグ「······下へいく通路は調べなくていいだろう。4番隔壁通路にカルロス、
2番ゲートにオリベラ、ケイヴはこの部屋で待機していろ。夕菜、俺と来い。
いいか、一時間したらここへ戻って情報を交換する。いくぞ」
シノ「あの······私は」
ダグ「······PDW(個人用防衛火器)は扱えるか?」
シノ「あまり、得意じゃ、ないけど······」
ダグ「ふむ······。だけど、ライフルは使いにくいだろう?」
シノ「大丈夫。私の銃はSCAR-Hだから、ストックを折り畳める」
ダグ「······。カルロスの同伴につけ。火力を補うんだ」
シノ「了解······。カルロス、お先にどうぞ」

カルロスが最初に、シノがそのあとに続く。
何本かに枝分かれしている配管の中で地図を確認し、隔壁通路へと匍匐前進で進んでいった。
オリベラが頷き、通気孔の中へ入る。
ごそごそという音が遠ざかっていき、最後にダグラスと夕菜が侵入した。
夕菜「はうぅー······埃っぽいのです······」
ダグ「そんなことを言っても仕方がないだろう。ほら、もう少しだ」
夕菜「7番エレベーターシャフトに向かっているのです?」
その通り、とダグラスが返し、止まった。
前を金網が塞いでいる。
夕菜「撃って壊したらどうでしょう」
ダグ「跳弾で大怪我したいなら止めないぞ」
夕菜「では、どうするのです?」
ダグ「こうするんだ」
少し下がらせ、体を縮めて腕を引く。
3秒ほど動かず、いきなり凄まじい速さの拳を放った。
ごがしゃぁん!
金網は歪み、ひしゃげて外側へ吹き飛んだ。
それはシャフトの中を落ちていき、少しあとに金属音がした。
夕菜「ひゃぁ······見たことなかったけど、すごく深いのです」
ダグ「落ちたらまず助からんだろうな。降りるぞ」
夕菜「ひぇっ?え、えぇっ?ほ、本気なのです?」
ダグ「当たり前だ。手をのばせ」
夕菜が首を傾げつつ手を差し出すと、ダグラスは手をとって。
いきなり、外へ飛び出した。
夕菜も引っ張られ、まっ逆さまに落ちていく。
だが途中でエレベーターのワイヤーを掴んだ。
激しく火花が散り、急減速する。
夕菜「じ、自殺でもするのかと思ったのです······」

ダグ「生き残ろうとしてるのになぜ自殺なんかするんだ。もういいぞ、手を放せ」
エレベーターの天井に耳を当て、中の様子をうかがう。
ダグ「······危険はなさそうだ。下りよう」
がぱんと整備用ハッチを開き、中に滑り込む。
小柄な夕菜が中へおりると、ダグラスが受け止めた。
ダグ「スリー·カウントで外に出る。······敵はいなさそうだ。いくぞ······」
夕菜「ちょっと待ってくださいなのです。どうして、私たち下へ来ているのです?」
ダグ「何が起きたか調査するためだ。場合によっては、この施設をまるごと爆破しなければいけない」
夕菜「?······なんの音でしょう?」
その音は、扉の向こうから聞こえた。
硬い何かで床をひっかくような音。
ダグ「······今はまだ出ないほうがよさそうだ」
夕菜も同意し、腰を降ろす。
ダグ「いったい、何が起きてるんだろうな······。いまさらながらに恐ろしくなってきた」
夕菜「······隊長、私は、いままで言ってなかった事があるのです。実は、この施設は······」
夕菜「きゃぁっ!?」
突如として、扉から鋭い爪が生えた。
ダグ「!? なんだ!?」
ぐぐっと扉がこじ開けられる。
正面の壁に、何本もの針が突き刺さった。
ダグ「こいつがさっきの音の正体か!」
M93Rを立て続けに撃つ。
パパパッ!パパパッ!パパパッ!
軽い3連射の音が重なるが、扉の向こうにいる生物は全く怯む様子がない。
ダグ「これじゃだめか。夕菜、下がれ!」
右のレッグホルスターからキンバーを抜き、まっすぐに相対して構えた。
ダグ「これで効かなきゃ退くしかないな······」
したなめずりをすると、ハンマーを起こす。
怪物の頭が中に突っ込まれた。
ダグ「喰らえっ!」
放たれた銃弾は見事に命中し、血飛沫を散らす。
2発、3発と命中するたび大量の血液と肉片が飛び散る。
夕菜は顔を背けた。
ダグラスも返り血で赤黒く装備を染めるが、射撃は止めない。
9発を撃ちきってスライドがストップした。
詰めていた息を吐き出しながら、様子をうかがう。
怪物はしばらくぐらついていたが、やがて倒れふした。
夕菜「隊長、どうしてこのモンスターを倒せたのでしょう?」
ダグ「ホローポイント弾だ。.45ACPのゴールデン·セイバー。昔、フルメタルジャケットを使って
ひどい目にあったことがあるんでな······倒せたとはいえ、まだいてもおかしくない。
早く調査を終えて、脱出しよう」

用語解説 いらない人は飛ばし読みしてください
キンバー·カスタムTRE-RL2
アメリカのキンバーが製造するM1911のクローンモデル。
TRE-RL2は下にさまざまな追加オプションが装着できる。

だが、ライフルは~
屋内戦では、銃身の長いライフルよりも小型のサブマシンガン、ハンドガンやカービンのほうが
より有効に戦闘できるとされている

SCAR-H
ベルギーのFNハースタル社が開発したバトルライフル。
7.62×51ミリNATO弾を使用するため射程が長いのが主な特徴であり、
アサルトライフルとの区切りになっている

M93R
ベレッタ92を基に開発されたマシンピストル。
命中精度よりも瞬間的な制圧力、つまり連射力を求められたために連射サイクルが
非常に速い。
3点バースト、もしくはトリプルタップと呼ばれる3発発射したら止まる機構が組み込まれている。

ゴールデン·セイバー
レミントン社が製造する先端に切り込みの入った特殊弾。
生物などの目標に命中すると、先端が拡張して花びらのように開く。
跳弾の危険は少ないが苦痛は大きいため、ある条約に批准した国は軍事目的で使用することが
禁止されている。

ふたりが歩き出す。
夕菜が少し足を止め、怪物を振り返った。
夕菜「きゃ!?」
バネ仕掛けのように怪物が跳ね起き、爪を振るう。
ビシュッ
肉を切り裂く音がして。
夕菜を引き戻したダグラスの左前腕にぱっくりと傷を作った。
ダグ「ぐぅっ······!」
血が滴り落ちる。
それでもM93Rを撃ち込んで、今度こそとどめを刺した。
夕菜「隊長!大丈夫ですか!?いま、手当てしますから······」
ダグ「待て。今は、安全な場所を確保することが先だ······っぅ」

夕菜の肩を借りて頑丈な部屋を見つけ、鍵をかける。
ダグ「ちっくしょう、いてえな······」
夕菜「······血が止まらないのです······。隊長」
ダグ「んー?なんだ?」
夕菜「ごめんなさい」
夕菜の持つMP5K-PDWのトリガーが引かれた。
ファイアリング·ピンが雷管を叩くまでに、さまざまな変化が起きた。
まず、ダグラスの体をとてつもない灼熱感が走り抜けた。
その感覚が極限まで研ぎ澄まされ、停滞したような時間の中で思考が脳内を満たす。
――撃たれる?
――回避しなければ
――左に動いて
――背後に回って
――落とす――
体は反応した。同時に銃弾がさっきまで彼の頭があった場所を通りすぎる。
限界を越えた速度で射線から逃れ、夕菜が目を見開いた時には後ろを獲っている。
右腕は首に、その手首を左の関節で固定して手のひらを後頭部に当て、一気に締め上げた。
世界が元に戻る。夕菜が激しく抵抗しはじめた。
夕菜「げふっ······!かはっ······ひっ······」
ダグ「なぜ撃った!······夕菜、何を隠してる!?答えないと、締め落として化け物のエサにするぞ!」
夕菜の抵抗はやがて弱々しくなり、最後にダグラスの腕をタップした。
腕が離れる。
夕菜は床に倒れこんだ。
夕菜「げほっ、げほっ!かふっ······うぇ、げほっ!」
嘔吐しそうなほどに咳き込んでいる。
しばらく床に這っていたが、起き上がるとぺたりと座って息を整えた。

ダグ「夕菜、言え。なぜ、俺を射殺しようとした?」
静かで、悲しげで、交渉の余地が全くない、命令。
夕菜「······ここは、製薬研究所などではないのです。ここは、軍事転用された生物兵器の
研究所。私たちアルファチームの役割は、部外者の立ち入りを防ぎ、事故が起きた際に
それを制圧、処理することなのです」

ダグ「······なんだよ、それ······」
夕菜「私たちは、ウィルス感染者の症状を学びました。まずは、血液の著しい凝固阻害。
次に身体の灼熱感と代謝の上昇による猛烈なかゆみ。食欲の増加。それらの過程で十分なエネルギー摂取ができなければ、
あのゾンビへ変わります。正式名称はP-parad、といいます」
目を伏せたままで言う。
夕菜「その主な感染経路は体液です。血液、唾液、キスなどの粘膜接触でも感染は拡大します」
ダグ「唾液······じゃあさっき引っ掻かれた俺もか?」
夕菜「···········きっと、例外ではないのです」

夕菜がダグラスの目を覗きこむ。
夕菜「······あれ?」
ダグ「なんだ?」
夕菜「目が、赤くなっていないのです」
ダグ「目?俺の目は金のはずだが」
しばらく考え、あきらめたように首を横に振った。
それを見て、ダグラスも不思議そうにした。
ダグ「ここにもきっとゾンビ共が来るぞ。早くいこう」
夕菜「······気にして、いないのですか?」
ダグ「少なくとも今はゾンビにはならないんだ。早とちりはよくないが、
それだけで部下を見殺しにするほど愚かじゃない」
それを聞いて、夕菜は悔やむように顔を歪めた。
ダグ「············そうだな、もし俺がゾンビになりかけたらためらいなく撃て」
夕菜「え?」
ダグ「ほら、行くぞ」
今のダグラスの表情は、腹を決めたようだった。
何かを諦め、何かを望むような顔。
なぜか、夕菜の鼓動が高まって、締まるような疼きが走った。
ダグ「······あれ?血が止まった」
夕菜「へ?本当ですか?······よかったぁ······」
確かに、出血は完全に止まっていた。
だが、鉈で切り裂かれたような傷が、たかだか包帯で止まるわけはない。
むしろ、その方が変だ。
そんなことを考える余裕すらないふたりは、周囲を警戒しながら進んで行くのだった。

どうでもいいけど、反応が無いってむなしいなぁ······

ダグ「ここだな。耐圧ドアを開けてくれ。俺が中に入る」
夕菜「了解なのです」
ダグラスが部屋の中へ消えると、夕菜の思考は千千に乱れた。
なぜ、いきなり射殺しようとした自分を再び信じてくれるのか。
また撃つとは思わないのだろうか。
ダグ「夕菜。おい、夕菜?聞いてるのか?」
夕菜「は、はい!」
ダグ「ここの壁は照明内蔵なんだな。······ん?これは······プリズムレーザー発振器?」
夕菜も首を傾げる。
そんなもの、何に使うのだろう?
ダグ「あー······夕菜。少し、まずいことになりそうだ。加速器に火が入った」
夕菜「······。―――――!? す、すぐに逃げてください!」
ダグ「ドアが開かない」
夕菜「そんな―――嘘!」

誰かー······読んでくれてる人いますかー······

壁が光を放ち、赤い光が迫ってくる。
逃げることも、避けることも不可能。
ならば―――――。
ダグ「通ってくれよ······!」
UTS-15のスイッチを切り替え、発砲した。
二つ目の弾倉に入っていた弾は、FRAG-12。
世界最小サイズのグレネード弾だった。
光を透過するためのガラスがグレネードの破片で割れ砕け、エネルギー管が露出する。
素早くM93Rに持ち換え、21発を景気よく連射。
伝導する回路を絶たれ、一部分沈黙する。
それを繰り返すうちに、部屋は完全に制圧されていた。
夕菜「隊長、大丈夫でしたか!?」
ダグ「ああ、一応問題はない。生きてる」
夕菜「よかった······。何かあったらどうしようかと思ったのです」
ダグ「何を言っている。まだこれからだぞ」

ダグ「今から中に入る。一緒に来た方が良いと思うぞ」
夕菜「じゃあ、そうするのです」
主制御室に入ったふたりは、周囲を手早く探っていく。
ダグ「ここなら、誰か撃ち殺しても絶対外には聞こえないな······」
夕菜「······さっきのお返しとか言って、撃たないでほしいのです」
ダグ「撃たない撃たない。というか、俺は自分の身が心配だ」
ぐぅ、と夕菜の腹が鳴った。
きゅぅ、と声を漏らして真っ赤になる。
ダグ「ははは、ここで少し休むか」
軽い笑いをこぼしながら壁際に座った。
腕時計が示す時間は、別れてからまだ30分と経っていない。
隣で味気ないレーションをほおばっている夕菜は、何か思案しているようだった。
ダグラスもエネルギーバーをかじり、話しかける。
ダグ「故郷に家族はいるのか?」
夕菜「はい。お姉ちゃんが一人いるのです。私よりずっとかわいくて、頭もいいのです」
ダグ「そうか······俺にも、姉がいる。って言っても、クライヴシティにいるけどな」
夕菜「······私は、お姉ちゃんと喧嘩別れで留学しているのです。いままではずっと
大好きだったのに、急に私を家に閉じ込めようとして、私がいやがったら怒って。
もう放っておいてって言って、一度も連絡を取っていなくて。······今、どうしているのでしょう············お姉ちゃん······おねぇ······ちゃ······」
極度の緊張に晒されていた反動だろうか、箍が外れたように泣き出した。

15分ほど過ぎると、夕菜は泣き止んでいた。
会ったときの気丈な笑みを浮かべ、ダグラスに声をかける。
夕菜「隊長、ご迷惑をおかけしました。もう、大丈夫なのです」
ダグ「そうか。なら、そろそろ戻ろう」
エレベーターシャフトまで来たとき、夕菜が困ったような声をあげた。
夕菜「これでは上に戻れないのです······」
そう、上から降りてきたが上がる方法は考えていなかったのだった。
ダグ「大丈夫さ。そのために一番小柄な夕菜を連れて来たんだから。
背中に掴まって。違う、前に手を回すんだ······そうそう」
夕菜がしっかり掴まったことを確認すると、ダグラスはおもむろに
ワイヤーを握った。
M93Rをセミオートにセットし、もう一度確認。
ワイヤーを撃って切断した。
たちまち凄まじい速度で上にすっ飛んでいく。
夕菜「~~~~~~!"#&('<')[[{}]]!?」
最初に出てきた通気孔の出口辺りに来るなりワイヤーを放す。
滑り込んで勢いを殺し、止まった。
夕菜「隊長といたら命がいくつあっても足りなさそうなのです······」
ぐったりした声で呟く夕菜に苦笑いだけを返す。
部屋の中へ戻った。
しかし――――
そこには、誰もいなかった。

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