二宮飛鳥「公園にて」 姫川友紀「鉄棒!」 (19)

P「お疲れ様でーす…っと」

市原仁奈「…」ションボリ

姫川友紀「まぁまぁ仁奈ちゃん、練習すればいつかできるって!…あっプロデューサー、お帰り!」

仁奈「お帰りなせー…」

P「おう。お前らだけ?」

友紀「うん。ちひろさん、用事で午後休だってさ」

P「ほーん。休みてえな俺も。急な野暮用とか降ってこないかな」

友紀「いやぁ、流石に無茶言い過ぎでしょそれ…」

P「ですよねー…っと」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1485593245

仁奈「…」ショボーン

P「…何?なんかあったの?」

友紀「それがね。仁奈ちゃん、今日の体育鉄棒だったんだって」

P「うん」

仁奈「…でも仁奈、逆上がりができなかったのでごぜーます…」

P「…なるほど」

友紀「あたしも最初はできなかったなぁ。蹴ってもぐるんって回れないんだよね~」

仁奈「どうやったらできるのかわからね―…。友紀おねーさんは、できるようになったですか?」

友紀「うん。やってるうちに、だんだんね!プロデューサーは?」

P「俺は…あんま覚えてないな。最初はまぁ当然できなくて…そっからできるようになったっけ?わからん」

友紀「え~…。頼りなーい」

P「別にできなくたって困らなかったし」

友紀「そうかもしれないけどさー…。プロデューサー、もしかして運動音痴?」

P「うっせ。逆上がりできなくて何が悪い」

仁奈「…仁奈は、鉄棒できるようになりてーですよ…」

友紀「うーん…」

P「…。あぁ、でもブタの丸焼きは俺でもできたな。あれは楽しかった」

友紀「いやー、それは誰でもできるんじゃ…」

仁奈「ぶたさん?ぶたさんの気持ちでごぜーますか」

友紀「そうそう。こう、手と足でブラーンって」

仁奈「それなら、仁奈にもできるかな?」

友紀「…あははっ、うん!できるできる!」

仁奈「おぉ…やりてーですよ!ぶたさんのきもち、教えてくだせー!」

P「(焼き豚に気持ちはあるのだろうか)」

友紀「じゃ、今から公園行こっか!良いよね、プロデューサー?」

P「…暗くなるまでだぞ?」

仁奈「やったー!」

友紀「決まりだね!仁奈ちゃん、ついでに逆上がりも練習しよっか?」

仁奈「逆上がり…。うん!仁奈、やるでごぜーます!!」

友紀「よーし、着替えに行こう!更衣室まで…ダーッシュ!」

仁奈「だーっしゅ!」

結城晴「うーっす」ガチャ

二宮飛鳥「やぁ。今日のボーカルレッスン終了だ、プロデューサー」

P「お、お前ら良いところに。飛んで火に入る…」

仁奈「まるやきの気持ちになるですよ!」

飛鳥「…いきなり物騒なお出迎えだね」

晴「?」

――――――

友紀「よーし、やるぞー!おーっ!」

仁奈「おー♪でごぜーます!」

友紀「早速…と言いたいところだけど。まずは軽く準備運動しよっか!」

仁奈「友紀おねーさん、先生みたいでやがりますね!」

飛鳥「…何故ボクらまで着いて来なければならなかったんだ」

晴「まーまー、面白そうだし良いじゃん?」

飛鳥「面白い…?鉄棒が?」

晴「うっわー、そんな露骨に嫌な顔してんの初めて見たぞ…。プロデューサーも後で見に来るって言ってたし、それまでの代わりだろ?」

飛鳥「それだってキミだけでも十分だろう。全く、とんだ巻き添えを食ってしまった」

晴「たまたまオレらしかいなかったんだししょうがねーって。オレ、鉄棒けっこう好きなんだぜ」

飛鳥「ボクはあまり好かない」

晴「バッサリだな…。ま、だったら見てるだけでも良いんじゃねーの?あいつにも2人のこと見とけってしか言われてねーし…な、っと!」クルリン

友紀「おっ、さっすが晴ちゃん!きれいな逆上がり!」

仁奈「晴おねーさんすげー!うめー!」

晴「ヘヘッ、だろ?…で、仁奈は何してんだ…?」

仁奈「ぶたさんの気持ちになってるのでごぜーますよ!」プラーン

飛鳥「これがまるやきの気持ちか…なるほどね」

友紀「仁奈ちゃん上手上手!落ちないようにね!」

晴「ははっ、何だそりゃ。…それじゃ、オレは足だけで…こうだ」ブラーン

仁奈「うああー!さかさまだー!!」

友紀「おっコウモリ!やるなぁ晴ちゃん…」

飛鳥「…フフッ、流石だね。足癖の悪さは伊達でなはいということか」

晴「…それ褒めてんのか?」

飛鳥「良いかい仁奈、晴のような足癖の悪い人間になってはいけないよ」

晴「やっぱ褒めてねーだろ!」

――――
――

晴「こう、腹をな。グッと持ち上げるんだよ。んで回る」

仁奈「お腹を…ふんっ!…うぅ」

晴「んー、良い線行ってるとは思うんだけどな…」

飛鳥「(しばらくして逆上がりの練習が始まったが…)」

飛鳥「やはり、なかなか上手くはいかないようだね」

友紀「うん。まぁ、個人差もあるからね…」

晴「仁奈、ちょっと休憩するか?」

仁奈「…もうちょっとやりてーです」

友紀「疲れたら休んでも良いんだよ?」

仁奈「おねーさん達と鉄棒で遊ぶの、仁奈楽しいでごぜーますよ。だから、もっとやりてーです!」

晴「…へへ、そうこなくっちゃな!よし仁奈、今度は背中支えてやるよ」

仁奈「うん!」

飛鳥「…楽しい、か」

友紀「飛鳥ちゃんは、鉄棒好き?」

飛鳥「好きじゃない。むしろ嫌いな部類に入るね」

友紀「ありゃ、苦手だったかな」

飛鳥「…逆上がりが可能か、と問われれば限りなくyesに近いハズなんだ。キミや晴ができるのだから、同じ人体の構造をしているボクの身体でできないという謂れはない」

友紀「んん…?」

飛鳥「しかし人の身体は、時に己の想像以上に不自由なものさ。…翼もなしに、鉄の棒きれで宙を舞おうだなんてどうかしているよ、全く」

友紀「つまりできないんだね…。じゃあ、練習してみる?前は難しかったかもしれないけど、今ならあっさりできちゃうかも」

飛鳥「気持ちだけ受け取っておくよ。今のボクはしがないただの観測者さ。…それとも、この服のまま鉄棒をやれだなんて無慈悲なことを言うつもりかい?」

友紀「それもそっか、スカートだもんね」

飛鳥「そもそも今さら鉄棒ができたからどうだという訳でもないんだ。できるようになりたいだなんて感じたこともないからね」

友紀「…あっははは!」

飛鳥「おや、鉄棒ができないことがそんなに可笑しいかい?もしくは…克服もせず言葉で取り繕って、年不相応にスれた態度を取るこんなボクを嗤ったのかな」

友紀「違う違う。さっきプロデューサーも、おんなじようなこと言ってたから。俺は逆上がりなんかできなくても困らなかったーって。ふふっ!」

飛鳥「プロデューサーも?」

友紀「鉄棒できなくて何が悪いんだーって。2人とも負け惜しみじゃなさそうだし、もうおかしくって!」

飛鳥「…。フッ、フフフッ。やはり、どこかシンパシーを覚えずにはいられないな、彼には」

友紀「それにさ。よく分かんないけど、あたし、笑ったりしないよ?誰にだって、苦手なことあるのは当然だし。あたしも、苦手なことでいっぱいだよ」

飛鳥「…」

友紀「野球もね、例えば打つので敵わないから走るのとか守備を極めたり、苦手なコースの投げ込みしたりとかさ。練習のやり方にも色々あるんだよね。自分にできることを頑張ったり、できないことをできるようにするとか、人によって違うと思うんだ」

飛鳥「…時には未熟なままでも構わない、と」

友紀「そうそう。だから人ができないこと笑ったりしないし、頑張るなら応援したいって思うなぁ」

飛鳥「この特訓もそれで?」

友紀「うん。仁奈ちゃん、逆上がりできるようになりたいってちょっと悔しそうだったから、力になりたいなーって!」

飛鳥「…眩しいね。火傷してしまいそうなくらいに」

友紀「お、大袈裟だなぁ…。特訓って言うほど立派なものでもないんだけど…」

飛鳥「それでもさ。きっと、仁奈にも届いている。キミの想いは」

友紀「そうかなぁ…へへっ。飛鳥ちゃんも、何か頑張るぞって時は言ってね!あたし、全力で応援しちゃうから!」

飛鳥「…あぁ。その時は、よろしく頼むよ」

友紀「ていうか、年不相応って言えばあたしもだよね。鉄棒とか、ひっさし振りだったもん…」



仁奈「やった!できたでごぜーます!!」

飛鳥「!」

友紀「!!ホント!?」

晴「本当だぜ?仁奈、やればできるじゃん!」

仁奈「ふん、じゃなくて、ふーん!ってやったら、ぐるー!って回れたのでごぜーます!」

飛鳥「少し目を離していた間に…進化が著しいな、全く」

晴「踏み込みが足りてなかったんだよな。キックの基本なんだぜ?」

友紀「くうぅ…見てなかったなんて、あたしのバカ…。仁奈ちゃん、もう1回!もう1回やろう?」

P「…おっす、お疲れさん。なに騒いでんだ?」

友紀「あっプロデューサー!遅いよー!今仁奈ちゃん逆上がりできてたんだよ!?」

飛鳥「…(まるで見ていたような…ボクも見逃したけれど)」

P「おぉ、やるじゃん仁奈。やったな」ナデリナデリ

仁奈「ふふーん、でごぜーます!」

晴「なあ、もっかい見せてやれよ仁奈」

仁奈「うん!見ててくだせー…。ふーん!…あれ?」

晴「…ありゃ」

仁奈「ふーん!…うぅ」

飛鳥「…」

友紀「うーん、ちょっと疲れちゃったかな?」

仁奈「でも!さっきはできたですよ!?ね、晴おねーさん!」

晴「ああ。ちゃんとできてたぜ、逆上がり」

仁奈「だから…プロ、デューサー…」ジワ

P「…あーもう、泣くな泣くな。別に嘘だなんて思っちゃいないさ、仁奈。1回できたんだろ?」

仁奈「うん…」

P「すごいじゃないか。よくやったよ」ナデナデ

仁奈「でも…うぅ」グス

P「今日1回できたら、明日は何回できる?はいユッキ」

友紀「はい!2回!」

P「ん。じゃあ明後日は?飛鳥」

飛鳥「…。明後日は4回、その次の日は8回だ」

仁奈「おぉ…」

P「そうそう。そんで、いつか100回でも1000回でもできるようになる。だから安心しな。最初の1回が肝心なんだから」

友紀「そうだよ!『2000本安打も1本から』ってよく言うよ?」

P「聞いたことねえな」

仁奈「にせんでごぜーますか…」

P「…ゆっくりで良いんだよ、仁奈。いつかできるようになったら、その時また見せてくれ。約束な?」

仁奈「うん!」

晴「…やるじゃん、プロデューサー」

飛鳥「フフッ、そうだね」

P「よし、んじゃ今日はもう終わりにしとけ。ちょっと暗くなってきたし」

友紀「そうだね。続きはまた明日にしよ、仁奈ちゃん!」

晴「なープロデューサー、オレ喉乾いた!」

P「ならコンビニ寄って帰るか。ジュースでも買ってやるよ」

晴「やりぃ!オレ、ガルガリくんな!」

P「ジュースっつってんだろ」

友紀「じゃああたしビール!」

P「自重しろ」

飛鳥「ボクはダッツでいいよ?」

P「高え」

仁奈「ええと、仁奈はね、仁奈は…」

P「…あぁもう、ほら行くぞ。歩きながら決めとけ」

友紀「よしっ仁奈ちゃん、お店まで競争だ!それー!」

仁奈「あ!ま、待ってくだせー、友紀おねーさーん!」

晴「おっ、走るんなら負けねーぞ!」タッ!

P「…あれ、俺今歩きながらって言ったよな」

飛鳥「ああ、言った」

P「せわしない奴らめ」

飛鳥「全くだね」

P「あー…悪かったな、飛鳥。いきなり見てやってくれとか」

飛鳥「なに、ボクは大したことはしていないさ。晴も友紀も、あれでなかなか面倒見が良いからね」

P「まあそうかもしれんけど。それでもな」

飛鳥「たまにはこんな日も悪くない。…最初は億劫だったのは認めるが」

P「…やっぱり鉄棒嫌いか」

飛鳥「『やっぱり』だって?知っててボクを巻き込んだのか。非道いヤツだな、キミは」

P「いや、何となく。鉄棒できなさそうだなぁって」

飛鳥「…。まぁ良いさ。同類のよしみだ」

P「そりゃどーも」

P「誰か怪我とかしなかったか?」

飛鳥「アクシデントは起きなかったよ、そこについては安心してくれ」

P「そっか、そりゃ良かった。怪我でもされたら大目玉だったよ、特にちひろさんに」

飛鳥「どうだか。そんなに心配していないように見えたけど?」

P「まあな、友紀もいたし」

飛鳥「(彼女と少し目を離していた、とは言い辛いな)」

P「他に、何か特別変わったことあった?」

飛鳥「特別、か。…フッ。特別というのなら、何ということはない」

P「おう?」

飛鳥「ボクは既に知っている、…気付いている。眼に映る景色、日々の出会いや経験。それら全てが、そこでしか得られない特別に煌めく宝物だということに。…キミのおかげでね」

P「…。そうか」

飛鳥「きっと仁奈にとっても、今日のエピソードは特別なものだったさ」

飛鳥「…惜しむらくは、仁奈の初めての逆上がりという記念すべき瞬間を、この眼に焼き付けることができなかった点かな」

P「なんだ、見てなかったの」

飛鳥「少し立ち話をね。…最後に1つ、改めて気付いたこともあった」

P「?」

飛鳥「ボクは。…いや、ボクらは。存外良いオトナ達に恵まれているんだと、そう感じたよ」

P「ふーん…。よく分からんが、良かったな」

飛鳥「フフッ…。さぁ、ボクらも往こうか。時間は待ってくれても、彼女らは待ってくれないだろうからね」

P「おう」




P「…マジでダッツ買うの?」

飛鳥「さて、どうかな」

後日のおまけ

仁奈「仁奈、今日の体育で逆上がりができたのでごぜーますよ!」

龍崎薫「うわあ、仁奈ちゃんすっごーい!かおる、まだ鉄棒にがてなんだぁ…」

仁奈「ふふーん、でごぜーます!晴おねーさんにせんせーになってもらったのですよ!」

友紀「…うん?」

薫「いいなぁ、かおるも教えてほしい!」

仁奈「薫ちゃんも、今度一緒に晴おねーさんに鉄棒教えてもらうごぜーます!」

友紀「あ、あれ~?仁奈ちゃん、あたしは…?」

仁奈「友紀おねーさんと飛鳥おねーさんは、仁奈の逆上がり見てくれなかったでやがります。まだまだしゅぎょーがたりてねーですよ」

友紀「うえぇ、そんなぁ…」

P「(お前も見てなかったのかよ)」

おわりです
友紀と飛鳥の絡みが見たい担当Pでした。鉄棒云々に関しては完全に妄想なのであしからず
相性の良い組み合わせなんじゃないかなと個人的に思っている4人です

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom