橘ありす「待てますか?」P「いつまでも待つさ」 (381)

思いつきで書いたネタで書いていく

※地の文なしで頑張ろうと思ったけど無理だったから地の文あり

※年齢の整合性を合わせるために、誕生日になるまでのありすは11歳です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1485462161

 ――待てますか?

 ――いいから! 待てるか答えてください!

 このときに俺は笑顔で「いつまでも待つさ。ずっと一緒だよ」と答えた。いや答えてしまった。

 すると少女は満面の笑みを浮かべた。それは吸い込まれそうなくらいに可愛らしくて美しくて。

「四年後が楽しみです」

 でも俺は小学六年生と言えど、女の子の本気を甘く見ていた。

P「はぁぁぁあああ……」

ちひろ「どうしたんですか、そんな長いため息なんか吐いて」

P「いやちょっと割と真剣な悩みがありまして、もうどうしたらいいのやら」

ちひろ「Pさんっていつも悩みなさそうに見えるんですけど、確かにここ最近おかしいですね。何かありましたか?」

P「さらっと酷いこと言われた気がしますけど……あーもうどうしよう」

ちひろ「……本当に大丈夫ですか? 良かったら相談乗りましょうか? 金銭的な問題以外なら」

P「抜け目ないですね。でも金銭的な問題だったらどんなによかったものか……」

ちひろ「そこまで重い問題なんですか……?」

P「どうしようかな、いや、うん悩んでても仕方ないよなあ……」

P「すみません、ちひろさん、相談乗ってもらえませんか……」

ちひろ「まあ、私に手伝える範囲なら」

P「ちょっと長くなるけど大丈夫ですかね……あと誰にも言わないって約束してもらえますかね」

ちひろ「いいですよー。いつもたくさんスタドリ買ってもらってますので♪」

ちひろ「長くなるならどこか飲みに行きますか?」

P「それは遠慮しておきます。家に晩飯あるんで……」

ちひろ「晩飯……?」キラン

P「あ、ちょっと待ってくださいね、一本だけ遅くなるってLINEしとくんで……」

ちひろ「ははぁ……噂は本当だったんですね」ニヤニヤ

P「はい?」

ちひろ「Pさん、ずばり、彼女できましたね?」

P「はぁあああああああああああああああ……」

ちひろ「えっえっそこはギクゥッってするところじゃないですか?」

P「彼女だったらどんなによかったものか」

ちひろ「もしかしてホm」

P「どこかの事務員に毒されてないでください。状況はもっと深刻なんです」

ちひろ「???」

P「今、俺は家に晩飯があり、『今日は遅くなるかもだから先に食べておいて』ってLINEしました」

ちひろ「やっぱり彼女じゃないです」

P「違うんです。そのLINEの相手は……その、ありすなんです」

ちひろ「は? ありすってPさんの担当してる、あの橘ありすちゃん?」

P「その橘ありすちゃんです」

ちひろ「110番直と早苗さんをワンクッション置いて通報のどちらが良いですか?」

P「どっちも嫌です! 話を聞いて聞いてください!」

ちひろ「辞世の句はそれでいいですか?」

P「逮捕どころか殺されかかってるじゃないですか俺! 違うんですってば! ほら、結構前にジューンブライドイベントでありすがウェディングドレス着るイベントがあったじゃないですか」

ちひろ「ありましたねー。みんな可愛かったですねー。そしてみんな結婚前にウェディングドレス着たので婚期が遅れますねー」

P「さらっと怖い目で怖いこと言わないでください。その時にですね、ありすに変なこと聞かれたんですよ」

ちひろ「変なこと?」

P「『待てますか? いいから待てるか答えてください』って」

ちひろ「うわぁ……」

P「それで俺はこう解釈したわけですよ。まるで愛の告白みたいだけど、こんな親くらいの年の差の俺にそんなこと言うわけわけないから、このドレス姿が似合うまでプロデューサーでいてくれますか、とかそんな意味かなー、って」

ちひろ「だいぶ無理がありますね……それでなんて答えたんです?」

P「『いつまでも待つさ。ずっと一緒だよ』って」

ちひろ「やっぱり通報していいですか?」

P「違いますってば!! でも、嫌な予感はしてたんですけど、まさか本気とは思えなくて」

P「その翌々週に、俺は思い知りました。」


――――

 ――ジューンブライドイベントの翌々週

 ピンポーン!
 清々しい朝に突然呼び鈴が鳴った。

 ちょうど俺の起きる時間だった。しかし朝は忙しく、余裕がない。今から冷凍しておいたおかずとご飯をチンして、即席朝飯を胃の中にぶち込み、シャワーを浴びて会社に出勤するというギリギリのタイムアタックが開始するのである。

 だのにというのに、来客。運がないというか、時間の無さからいらだちすら覚える。

P「誰だよこんな朝っぱらから」

 ガチャ、と不機嫌気味にドアを開けると、そこにはよく見知った顔がいた。

P「ありす……? どうした、こんな朝早くから」

ありす「おはようございます、あなたのありすです。通い妻にきました」

 もはや突っ込む気もない。

P「あれ、今日朝から予定あったっけ?」

ありす「昨日、明日からPさんの家に行きますね、ってLINEしたじゃないですか」

 あー、なんかそんなやりとりをした気がする。

P「いやしかし朝って……」

ありす「今日から通い妻なので朝ご飯を作るくらい当たり前なのでは?」

P「いやその通い妻ってどこから出てきた。そしてそのワードをここで連呼されるとご近所さんに噂されるからやめい」

ありす「むぅ……とりあえず寒いので中に入っていいですか」

P「まあ、いいけどさ」

 ひょい、と入るありすは結構な大荷物だった。
 通っている私立小学校の制服にランドセルまでは良いのだが、なにやらタッパーらしきものをビニール袋に入れて持ってきていて、キャリーバッグを引いている。

 ……なんとなく、嫌な予感がした。

P「すまん、朝から生クリームとかいちごとかの甘み全開は勘弁してほしいんだが」

ありす「私をいちごに取り憑かれた人みたいに言わないでください。ここ最近料理をちゃんと勉強してきたんですよ?」

 いちごに取り憑かれてるとしか思えない所業を数々行っていた気がするが、今は言うまい。

ありす「キッチン借りますね」

P「あ、おい」

 制止する間もなく、ありすはどんどん奥に進んでいく。ってかなんであいつ俺の家の構造把握してるの。

ありす「――はいどうぞ」

 10分ほどで完成された朝ご飯が出されてきた。ソーセージとベーコンを焼いたものにスクランブルエッグ、たぶん俺の家にあった冷凍ご飯を解凍したご飯。ついでに味噌汁とサラダ付き。
 持ってきたタッパーは材料だったのか。
 どんな料理が出てくるのか戦々恐々していたが、案外普通で拍子抜けした。

 それにしても、メニューこそ簡単なものだが、短時間で作るとなると手際よく作らないといけない。タチバナ流料理スキルを甘く見ていたようだ。

ありす「やはりPさんが起きてからだと簡単なものしか作れませんね。味噌汁もほぼ即席みたいな感じですし……」

P「いや、でも普通に美味いぞ」

 ズズッと味噌汁をすすりながら言う。確かに美味い。味噌汁なんかインスタント出汁の味じゃない。どうなってんだこれ。

ありす「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいです」

 そう言ってありすははにかんだ。何この子可愛い。抱きしめたくなる。
 っていかんいかん、相手はアイドル、俺はプロデューサー。立場をわきまえなければ。

P「……っていうかなんで急に朝食なんか作りに?」

ありす「だって……Pさん約束してくれたじゃないですか。4年後まで、私が結婚できる歳まで待ってくれるって」

P「」

ありす「だから、それは、その、結婚を前提にしたお付き合いを、OKしてくれたって、ことですよね?」

疲れたからここまで
また妄想チャージして頑張る

早苗さんに捕まらないようにイチャラブするSSにしたいなあ

続きの妄想が補充された

――――

P「ってことから始まりまして」

ちひろ「一般的に見たら通学中の小学生を誘拐したと言っても通じる事案ですね」

P「一応プロデューサーですから! セーフですから!」

ちひろ「それで、夜も晩ご飯までありすちゃんが作るようになったと。いいじゃないですか、可愛くて」

P「それだけだったら悩みませんよ……それがですね……」

――――

 ありすが突然通い妻宣言をした夜、俺は遅い帰宅になってしまった。

 スケジュール的には取引先との打ち合わせが終わり次第帰宅、だったのだが、思いの外その打ち合わせが延びてしまい、2時間遅い帰宅だ。

P(まさかありすのやつ、待ってたりしてないだろうな……)

 ふと時計を見ながらそんなことを考えたが、俺の家はオートロックだ。鍵がなければエントランスにすら入れないので、この蒸し暑い夜にいつ帰ってくるかわからない相手を外で待ってるはずもないだろう。

 あれこれ考えていたら気がついたらマンション前まで着いていた。オートロックの鍵穴に鍵を挿して回すと自動ドアのオートロックが開く。

ありす「プロデューサー、遅いです」

 とそこで誰か声をかけられた。誰かっていうか、ありすだ。

P「なんでいるんだよ……」

 ありすはエントランス内のソファーでちょこんと座っていた。可愛すぎるだろ、誘拐されるぞ。

ありす「外は暑かったので、他の住人が出てきたタイミングでオートロックを突破しました」

 どや顔で犯罪すれすれのことを言いやがる我が担当アイドル。

P「住居不法侵入じゃね?」

ありす「405号室の鈴木さんが今度から中に入れてくれるようになったので不法侵入ではないです」

P「お隣のおばちゃんじゃねえか」

ありす「それよりもです。今日は18時から最後のアポで20時くらいには全部予定が終わるはずでしたよね? 今22時半なんですけど」

P「アポが長引いたんだよ。それよりなんで俺のスケジュール把握してるの」

ありす「プロデューサーさんのスケジュール管理アプリのアカウントのパスワード、デスクに貼ってあるじゃないですか。それでログインしました」

P「知ってるか? それ犯罪なんだぞ」

ありす「不正アクセス防止法ですよね? それくらいネットで調べたらわかりますよ?」

 きょとんと可愛く首をかしげるありす。可愛いけどさ、これはきちんと叱ってやらないと。

ありす「でも将来の夫婦なんですから、それくらいじゃ不正アクセスにならないですよ。むしろあらかじめ教えておいてください。何かあったときに困ります」

 もうどこから叱っていいのかわからなかった。

――――

P「という感じで毎日家に来て家事をして帰る、みたいな日が三日間続きました」

ちひろ「私はどちらを通報すればいいのでしょうか。とりあえずプロデューサーさん?」

P「今の話に俺のどこが通報される要素あるんですかね」

ちひろ「あれ、でも三日間?」

P「はい、甘いのは三日間で終わりました」

――――

「……デュサーさん、プロデューサーさん起きてください、朝です」

P「んん……?」

 ありすが通い妻宣言してから四日目、俺はとても珍しい目覚ましで起きた。

 俺が担当するアイドルの声だ。だけど、その音声を使った目覚まし時計は商品化案通らなかったはず……ん?

ありす「もう昨日夜更かししたからって仕事遅刻しますよ」

 いやこれ俺の企画した目覚ましじゃないわ。対話できるタチバナだわ。

P「AI搭載型タチバナか……?」

ありす「何を寝ぼけたこと言ってるんですか、あなたの橘ありすです。今はまだ橘ですけど将来的に橘じゃなくなるのできちんとありすと呼んでください」

 うん、タチバナじゃなくてありすだった。

P「………………ってなんでお前いるの」

ありす「何言ってるんですか、普通に合い鍵で入ってきただけです。朝ご飯できてるので早く起きてください」

 アイカギ? アイカツみたいなものかな? 理解が追いつかないぞ?

P「そういえば良い匂いするなー」

ありす「今日の朝ご飯はきちんと時間取れたので鮭焼いてみました。Pさん、コンロのグリル機能あんまり使ってないんですね」

P「あー、あれ洗うの面倒だからなあ。って待て」

ありす「あ、大丈夫です。ちゃんと洗ってから学校行きますので」

P「違うそこじゃない。ありす、お前さっき合い鍵って言わなかったか?」

ありす「言いましたけどそれが何か?」

P「俺はお前に合い鍵を渡した記憶はない」

ありす「何言ってるんですか」

 ふふっとありすが笑った。天使のような笑顔だ。守りたい、この笑顔。


ありす「今の時代、鍵の写真を撮っておけば、インターネット上で合い鍵注文できる時代ですよ?」

P「可愛い笑顔でなんてこと言いやがる」

ありす「かわっ……!?」

 思わず口に出てしまった。ありすは『可愛い』というワードに顔を真っ赤にしている。

 ……信じたくないが、可愛いと言われるだけで顔を真っ赤にするこの愛しい生物が、今さっきストーカーの手口を告白したのである。

 そこでぐぎゅうと腹が鳴った。

P「……とりあえず朝飯食べるか」

ありす「はいっ♪」

 良い笑顔だ。この笑顔をファンに見せたらきっと卒倒するだろうな。だけどこれ、勝手に作った合い鍵で不法侵入して、勝手に朝ご飯作ってた小学生の笑顔なんだよな。

 朝飯は焼き鮭と納豆、えのきと溶き卵の味噌汁、きんぴらごぼうにご飯という和という感じだった。非常に美味しくて思わずご飯をお代わりした。


――――

P「という感じでありすが家の中に入るのを俺はもう止められません」

ちひろ「」

P「どうしたいいでしょうか?」

ちひろ「ありすちゃんって、そんな子でしたっけ」

P「そんな子だったみたいです」

ちひろ「ちょっと考えさせてください……」

P「その後なんですが」

ちひろ「まだエピソードあるんですか!?」

投下終わり
ちょいちょい書いていくよ
真面目なありすは可愛いなあ

>>32訂正
P「どうしたいいでしょうか?」

P「どうしたらいいでしょうか?」

日付変わるし酉つけとく

意識混濁した一日だったけど、なんとか妄想チャージできたよ


――――

ありす「Pさん朝ですよー」

 今日も可愛い声で目を覚ます。ベッドの上の俺をまたがるようにして乗っかっている可愛い天使がいた。天使じゃなかった、ありすだった。

P「ありす、言ったよな。起こす時に乗っかるのはやめなさいと」

 朝の男とは体の一部分が元気なのである。それが、毎日寝起きに布を隔てて大事なところ同士で圧迫されているのはアイドルとプロデューサーという立ち位置からしていけない気がする。

ありす「なんかこうした方が幼馴染み感あってフラグ立ちそうじゃないですか?」

P「そのフラグ、敗北フラグだからな。とりあえず降りろ」

 残念、といった顔でありすが渋々降りる。もはや担当アイドルがどこに向かっているのかわからない俺であった。
 ありすが普段読んでいる電子書籍を一度親御さんと一緒に確認した方が良いかもしれない。

ありす「朝ご飯できてますので早く食べましょう」

 ナチュラルに朝ご飯毎日作って、夜ご飯も作って、最近じゃ洗濯とかまでしてくれて……睡眠不足とかにならないんだろうか。

 そんなことを不安に思いながら朝飯を食べる。今日はオニオンスープとサラダ、ベーコンと目玉焼きにトーストという洋風な朝だ。

ありす「このいちごジャムは自信作なんです」

 トーストに赤いべっとりとしたものを大量に塗りたくるありす。今日は簡易的なものが多いと思ったら全ての労力をそこに注いだのな。

ありす「あ、でもお弁当は普通にご飯です。このジャムはやっぱり焼きたてのトーストに塗ってほしいので」

 お弁当が用意されてるのももはや日常である。普通の日常がわからない。

P「俺はこのアイドルに逆らうことができない……朝昼晩の胃袋を握られてる……」

ありす「今後一生続くので覚悟しておいてください」


――――

 今日も一緒に家を出て、ありすを学校に車で送ってから事務所へ行く。午前中は仕事を取ってくる営業を今日もドタバタこなす。人と話すのは好きな性分だが、営業とは非常にカロリーを消費する。

 午後は軽く事務作業をしてからありすを迎えに行って仕事場に送り届けなければならない。さっと昼飯を食べて頑張ろう。

文香「Pさん、今日もお弁当ですか?」

 すると俺の担当アイドルの内の一人である鷲沢文香が弁当を見て話しかけてきた。レッスン上がりなんだろうか、ちょっと疲れているようだ。

P「なんだ文香、物欲しそうな目をされても弁当の中身はやらんぞ」

文香「そ、そんな目してません」

 文香は顔を赤くして否定する。

P「なんだ、レッスン上がりで腹が減って獲物を求めてるんじゃないのか」

文香「そんな大食いキャラじゃありませんし……ちゃんとご飯は用意してます」

 よく見るとコンビニの袋を手に提げていた。でも袋の大きさ的に小さいな、サンドイッチが入ってるくらいなんじゃないだろうか。

P「うーん、でももう少し食べないと体力つかないぞ?」

文香「今日はかな子ちゃんがお菓子持ってきてくれるので、こっちは少し少なめにしまして……」

P「……あいつはもう少し食べる量を減らすように言わないとな……」

 はぁ、とため息を漏らしながら言うと、反応に困ったのか文香は縮こまってしまった。

 ……あっぶねえ。今日も弁当に関する話題を回避成功。最近、このお弁当のせいで変な噂が立っているらしいからな、気をつけないと。

 すると、ピロンと携帯が鳴った。LINEの着信音。まあ、こんなタイミング良くメッセージ飛ばしてくるのなんてスケジュール把握してる一人しかいないわけで……

ありす『お仕事順調ですか? 今事務所にいるみたいなので安心ですけど……今日は普通の予定で学校終わりそうです。予定通りの時間に待ってますね』

 なんで事務所にいることがリアルタイムでわかってるのが怖いけど、絶対また不正アクセスなんだろうなあ。もう気にしないことにした。

 さて、もうひとがんばりしないと。


――――

ありす「ふふっ……」

 学校のお昼休み。ありすは顔をほころばせながら文章を打っていた。

 私立の小学校なので案外校則は緩く、普通に通信機器の持込も許可され、休み時間にはみんな各々の使い方で使ってる。

 そんなありすを見てクラスメイトはざわついている。

 あのいつも無愛想でクール・タチバナなありすがはにかみながらLINEに興じているのだ。

「ねえ、橘さん何かあったのかな」

「あの顔は絶対彼氏でしょ。やっぱり芸能界って進んでるんだなあ」

 などとクラスの女子が噂をしている。ゴシップ大好きな今時のJSにとって最高の話題だ。

 だけども、誰もありすに話しかけるクラスメイトはいない。有り体に言えば、ありすは、その性格から、そしてアイドルという特異な立ち位置によって、クラスから孤立していると言っても過言ではない。

 でもありすはそんなことはどうでもよかった。

ありす(Pさんだけは私を見ていてくれる……Pさんだけは本当に私を……Pさんだけがいれば、私はそれで……ふふっ)

 今のありすの心の世界を支配するのは、ただ一人、担当プロデューサーだけがいればよかった。

ありす(そして今日は金曜日。明日から土日。学校はありませんけど、お仕事が詰まってます。つまり、合理性を考えたら……ふふっ)

 そうした上機嫌で、ありすはすでに把握しきっている冷蔵庫の中身を思い出しながら、食材を無駄にしないように立てた献立にプラスアルファを加えつつメニューを考え、仕事の後にプロデューサーと一緒に仲良くスーパーに買い出しに行く妄想を働かせて、午後の授業を乗り切るのであった。

イチャラブ目指してます
イチャラブ目指してます

なんか命にかかわるとか言われて入院進められてるので数日間もしかしたら更新途切れるかも

たぶん薬の副作用で一時的にヤバいことになってただけっぽかった
たぶん安心

妄想チャージ完了したから続き投下


――――

ありす「明日は朝からお仕事ですね」

P「そうだな。金土日で連続仕事なんてハードなスケジュールですまんな」

ありす「全然大丈夫ですよ。今日ここに泊まっていけば明日の朝は楽ですし」

P「確かにそうだなー、いくら家が近くても泊まった方が……は?」

ありす「というわけで、お風呂借りますね」

P「いやいやいや待て待て待て待て」

 晩ご飯を食べ終わり、垂れ流していた金曜夜の映画をそのまま見ていたら、とんでもないことをうちの子が言い出した。

ありす「どうしたんですか?」

 きょとんとした顔で何を尋ねてるのかわからない風なありす。ああもうそういう顔が可愛いんだよ。

P「今、さらっとアイドルとして言ってはいけない爆弾発言しなかったか?」

ありす「してませんよ。これでもプロ意識は持ってるんです」

P「よかった、やっぱり泊まるとかお風呂とかは聞き間違えだったんだな」

ありす「聞き間違えじゃありません。今日も明日もPさんの家に泊まりますしお風呂もきちんと入ります」

P「どこに行ったのプロ意識!?」

ありす「きちんと睡眠や入浴とPさん成分補給などでコンディションを整えるのがプロとして正しき姿勢かと思いますけど?」

P「論破したみたいな勢いで言わないで? お泊まり発言とお風呂発言っていうアイドルとして致命的なミスを犯してるからね?」

ありす「アイドルとプロデューサーですからセーフですよ。一緒にロケに泊まりがけで行ったりするじゃないですか」

 ああ、そっか。セーフか、セーフなんだな。もうたぶん何を言ってもダメだろうからセーフってことにしておこうか。なんか変なワードも聞こえた気がしたけど。


P「でも着替えとか持ってきてないじゃん」

ありす「キャリーバッグの中に入ってますので」

 ああ、初日に持ってきたやつね。使わないままずっと放置されてたから謎に思ってたけどこうやって使う予定だったのか。

 ってそれ最初から土日はここに泊まる予定だったってことかよ。

ありす「では、お風呂行ってきます」

 突っ込む前にすたすたとお風呂に行ってしまったありす。ってか相変わらずあいつ、なんで俺の家の中のこと完全に把握してるんだ。一度たりとも家の中の構造について尋ねられたことないぞ。

ありす「一応言っておきますけど、覗かないでくださいね?」

 直後、ぴょこっと可愛い顔を出して釘を刺してきた。

P「……わかってるって」

ありす「なんで今一瞬間があったんですか」

 ああ、そういうのはダメなんだ。あいつの基準がわからない。そしてどういうのがダメじゃないとか考えてる俺もわからない。

 ちなみにお風呂上がりでパジャマ姿のありすは殺人的に可愛くて死ぬかと思った。ありすが使ったタオルはきっと高く売れる。俺が買うけど。


――――

ちひろ「通報しますね」

P「やめてください不可抗力です」

ちひろ「でも小学六年生のアイドルの使ったバスタオルが販売されたら買うんですよね?」

P「誰のでもいいわけじゃないですから! ありすのだから買うんですから!」

ちひろ「弁解はそれだけですね?」

P「ごめんなさい……ってそこじゃないですよね!?」

ちひろ「Pさんが担当アイドルに手を出したってところでしょうか?」

P「出してません!」


――――

 ぶぉぉおおおとドライヤーの音。今、俺は担当アイドルの髪を乾かしている。

 俺も風呂上がりで、ここは俺の部屋で、俺のベッドの上だ。

 誰がどう見ても事案だ。

P「なあ、ありす。深刻な問題がある」

ありす「急にどうしたんですか、深刻なトーンで」

P「ありすはとりあえず俺のベッドで寝るだろ?」

ありす「はい」

 そこは即答なんだ。

P「そうするとだ、この家には他に寝具がない。俺の寝る場所がない」

 ソファーという選択肢があるっちゃあるが、俺は人を家に呼ぶ性分でもないので、かけるものがないのである。夏とはいえ、さすがにそれで寝るのは仕事に響きそうだ。

ありす「はい?」

 そんな俺のマジな悩みに対してありすは『何言ってやがんだこいつ』みたいな目をする。クールモードだな。

ありす「ここです」

 ぽんぽんと、ありすはベッドを叩いた。意味がわからない。クールモードじゃなかったことしかわからない。

ありす「こういうときに私の身長がまだ小さいことが幸いしましたね。スペースに余裕ができるくらいだと思います」

P「ありす、俺、わからない」

ありす「急にカタコトにならないでください。一緒に寝ればいいじゃないですか、ってことですよ」

P「ありす、俺、ワカラナイ」


ありす「……もうっ」

 同じ言葉を繰り返してると、ありすが勢いをつけて倒れ込んできた。ベッドの上にあぐらをかいて座っていたので、まったく踏ん張りがきかず、一緒にベッドの上に倒れ込んだ。

ありす「ほら、二人で一緒に寝ても、大丈夫ですよ。ちょっと狭いですけど」

 至近距離でそんなこと言われた。風呂上がりで、上気した可愛い顔で。なんだろうすっごい熱い。俺も思わず。

P「あっつい!」

 ぶぉぉおおおとうねりを上げるドライヤーのスイッチを急いでオフにした。

ありす「……雰囲気が台無しです」

P「ドライヤーしてる時に倒れ込んでくるからだ」

 ってか雰囲気ってなんだ。俺とありすはプロデューサーとアイドルだ。そう、だからセーフ。

P「はぁ、寝るか」

ありす「はいっ♪」

 結局俺はしばらく眠れなかった。


――――

ちひろ「手、出してるじゃないですか」

P「出してません! 寝ぼけて抱きついてきたありすを抱きしめ返してすらいません!!」

ちひろ「抱きつかれてる時点でアウトだと思います」

P「どうしたらいいっていうんですか!」

ちひろ「まあ、でもそこまでいくと、下手に拒否しても仕事に響きそうですしねえ……」

P「それなんですよ……」

ちひろ「まあ、でも二晩、頑張ったんですよね?」

P「…………」

ちひろ「……なんでそこで沈黙になるんです? もしかして次の日……」

P「違います、断じて違います。しかし、状況はさらに深刻なんです」

今日の分おわり
KENZENだなあ

薬(意味深)
副作用(意味深)

あっ…

気力と妄想が回復したので書いたよ


――――

P「ふぅ、やっと家についた。きついスケジュールなのによく頑張ったな」

ありす「どうってことありません。もっときついスケジュールでもいけます」

 土日の過密スケジュールを終わらせた俺とありすは一緒に帰宅。もはや違和感がないのが恐ろしい。

P「こらこら、あんまり無理するな。帰りの車の中で疲れて寝てただろ」

ありす「あ、あれはっ……Pさんが隣にいると、その、安心するので……つい……」

P「可愛いこと言うなあ」

 自分で言ってて恥ずかしくなったのか、ありすは真っ赤になって小声で言う。あまりに可愛いから思わず撫でてやろう。

ありす「子供扱いしないでくださいっ。ご飯作ってきます」

 するとプイッとして早足でキッチンへ向かってしまった。うむ、なんかいつものありすが戻ってきた感じするぞ。ナチュラルにご飯作ってるけどな。

P「ありすに家事を全部任せるわけにもいかないし、俺も風呂掃除でもしておくか」

 そう思って靴を脱いで風呂場に行ってシャワーを流し始める俺。

 ピンポーン

P「ん、誰だ?」

 するとなんか呼び鈴が鳴らされた。あまり来客のない家なので珍しい。


ありす「はい」

『宅配便でーす』

ありす「はい、開けますね」

 ありすが応答して、オートロックを解除したようだ。ってあいつ、ナチュラルにインターホンで応答してやがる。ご近所さんに変な噂流れたらどうする。

ありす「Pさん、大きな荷物来るので手伝ってもらえますか」

 ひょこっとありすが顔を出してそんなこと言ってきた。嫌な予感しかしない。

 ピンポーン

ありす「私、出てきますね」

 ドア前まで来たのだろう、さっきとは違うインターホンの音。

「荷物お届けにきましたー。まずサインか印鑑を……あと結構大きいので動線確保してもらっていいですかね」

ありす「シャチハタあるのでこれで、と……運び込めるように準備してあります、どうぞ」

 え、何その準備って。動線確保しないといけないくらいでかい荷物って何。ってかなんでありすはナチュラルに俺の名字のシャチハタ持ってるの。

ありす「寝室こっちです。Pさん、ちょっと来てもらっていいですかー?」

 は? 寝室?

 非常に嫌な予感がして急いで手を拭いて寝室に向かう。すると、なんかでかい段ボールがあった。


「じゃあこのベッドを撤去して、これ設置ってことでいいんですかね?」

ありす「はい。これはほかしちゃってください」

 なんかどんどん話が進んで行っちゃってるんですけど。

P「……おいありす、なんだこれは」

ありす「新しいベッドです。さすがにシングルベッドで一緒に寝るのはやっぱりしんどいかな、と思いまして……セミダブルのもの買ってみました」

P「あー、なるほどね。確かに二晩一緒に寝たけど、やっぱり体勢固定されちゃって体痛くなりそうだったもんなあ」

ありす「私としてはPさんと距離が近いシングルベッドも嬉しいんですけど、睡眠取れなくて仕事に支障を来したら意味が無いので……」

P「うんうん、ありすは偉いなあ……ってなんでまた一緒に寝る前提なんだよ。来週も泊まるのかよ」

 いかんぞ、いかんぞこれは。今週だけは特別に許可したけど、これが常態化したら絶対に問題になるやつだ。

ありす「私もそう考えたんですけど、さすがに土日に毎回お泊まりってなると疲れちゃうと思うんです」

P「よかった、ありすにまだ良識が残ってた」

ありす「失礼ですね、私だってきちんと考えてます。もっと効率の良い方法を」

P「うんそうだな。毎日きちんと家に帰って、そのまま寝て、きちんと休息を取るのが一番効率良いと思うぞ」

ありす「やっぱりPさんもそう思いますか!」

 ありすがぱぁっとした笑顔になった。何この可愛い子。今すぐ抱きしめたい。


ありす「やっぱりPさんの家にずっとこのままいた方が効率良いですよね!」

P「……は?」

 あやうくありすのあまりの可愛さにトリップしかけたが、一気に現実に引き戻された。

ありす「ということでまずはベッドから通販で注文しておきました。組み立てサービス付きです」

 ありすがどや顔をしておられる。小学生にベッド買ってもらう成人男性とは、情けないの極みである。
 いや違う、そこじゃない。

ありす「あ、ちゃんと寸法測って注文したので安心してください」

 いや違う、そこじゃない。

P「ねえ泊まるのって金土日だけじゃなかったっけ。仕事に都合が良いからじゃなかったっけ。明日から学校あるよ?」

ありす「問題ないです。Pさんの家からの方が学校行くにも便利じゃないですか。駅近ですし」

P「俺の倫理観が問題あるって言ってるんだけど」

ありす「ということで今日からPさんと私の同棲生活がスタートしました」

P「スタートしません。親御さんが許してくれません」

 とんでもないことを言い出しやがる。ベッド組み立ててる運送屋のお兄さんがすごい怪訝な顔してるじゃないか。

ありす「両親が許してくれたら良いんですか?」

P「まあ、許可が取れるならな。やってみろ。そして怒られろ」


ありす「言質取りましたよ?」

 ありすよ、まともな大人の意見を聞いてまともに育ってください。
 と考えているとありすがゴソゴソとタブレットを取り出し、何やら操作をしてる。嫌な予感がする。

ありす「じゃーん。既に許可済みです」

 ドヤァとありすが画面を見せてきた。
 何々、家族共有LINEグループ? ありすと両親かー。今時はこうやって親子のコミュニケーションを取るわけね。
 それで、許可ってなんの許可なんだろうな?

ありす『このままPさんの家から学校通った方が便利なのでPさんの家にしばらく泊まりますね』

お母さん『お母さんとお父さんが一緒に帰る時にはちゃんと家に帰ってくるならいいわよー』

お父さん『いつも一人じゃ寂しいよな。すまないな、ありす。楽しんでこい』

P「それでいいのかよご両親」

ありす「二人とも良識があるので」

P「良識があるなら普通、迷惑かかるとか言わない?」

ありす「Pさんの家の家事全般を私がしてることを知ってますので」

 小学六年生に家事をさせてる男って知られてるのか。心証最悪じゃねえか。

ありす「あ、たまに実家の掃除とかもしないといけないので、その時はPさんの家に帰れないです。そこだけはご了承ください」

 何気に俺の家がホーム扱いになってるし、実家っていうパワーワードまで飛び出してきやがった。

 そうこうしている内にベッドが組み上がって、元々あったベッドが運び出されていく。

 マジで問題なるやつだよな、これ。


――――

ちひろ「」

P「もっと深刻でしょう?」

ちひろ「えっえっ、ちょっと意味を理解したくないんですけど、それからずっとですか?」

P「ずっとです」

ちひろ「Pさんの家で?」

P「はい」

ちひろ「ありすちゃんと?」

P「はい」

ちひろ「同棲している?」

P「同棲ではないです」

ちひろ「Pさん、ごめんなさい」

P「謝らないでください、間違えることは誰にでもあります」

ちひろ「そうですね。Pさんが間違えないように今のうちに通報しておきます」

P「だーかーらー!! 俺悪いことしてないじゃないですか!」

ちひろ「担当アイドルの12歳の女の子と一緒に住んで一緒に寝てるって悪いことだと思いません?」

P「問題はあると思ってます。だから相談してるんじゃないですか!」

ちひろ「どうせいっちゅーねん、って?」

P「楓さんみたいなこと言うのやめてください」

ちひろ「ごめんなさい」

P「親公認なので無碍にできませんし、実際、ありすの調子もこの頃からかなり良くなってますし……でも今のままだと絶対にいつか週刊誌とかにすっぱ抜かれて大変なことになります」

ちひろ「うーん、事務所としても爆弾抱えてるみたいな状態ですねえ……」

P「どうしたらいいんでしょうか……」

ちひろ「うーん……ちょっとずつ距離を置いていくとか?」

P「もうやりました」

ちひろ「やったんですか」

P「そしたらこうなりまして……」

とりあえず今日の分おわり
橘流料理の真骨頂を色々考えてるんだけどなかなか出せないな

すまん彼女の誕生日祝うためと旅行と病院で金道日潰れてしまった
お薬でハイになってから書き進んで溜まったから、推敲して朝に投下するよ

ATOK2017にしたら『さぎざわ』入力の『鷺沢』意外にも『鷲沢』で手て来やがる
でかい騒動。本当にやねてほしい

一応生存制約でまた明日ー

すまない、薬で記憶無いけど変なこと書いてたみたいだ。
忘れて欲しい。

いつの間にか書き上がってたから投下


――――

 もぞっと布団の中で何かが動いた感覚がして目が覚めた。
 薄目にカーテンの外が明るくなっているのが見えた。もう朝のようで、どうやら一緒に寝ていた同居中の担当アイドルのありすが起きたらしい。

 『一緒に寝ていた同居中の担当アイドル』ってセンテンス、威力はんぱない。

 基本的にありすは起きるのが早い。俺ならあと一時間くらいは惰眠を取りたいくらいの時間に起きている。

 早起きして、何をしているかと言うと。主にその日の学校の授業の簡単な予習に加えて夜に洗濯乾燥機で洗った洗濯物を畳むとか、やけに手の凝った朝食やお弁当を作るなどのハードな家事をこなしているのだから素直にすごいと思う。

 ありすが俺の家に泊まり始めてからもうこれで一週間。そういう部分に関してはとても感心していた。

ありす「おはようございます、Pさん。今日も元気ですね……ふふっ」

 ……先ほど、主に、と挟んだのはこういう行為が入るため。

 何をしているかと言うと。ありすは今、布団に潜って俺の男としての象徴部分をにぎにぎしているのである。
 これが今や、毎日の日課である。

ありす「……こんなに硬くしてるなんて、やっぱり期待してくれてたんですかね」

 違う、それは生理現象だ。朝なら仕方ないんだ。ネットで変な知識仕入れてるから微妙に偏ってるから困る。

 いや、正しい知識を仕入れて来られても困るけど。それで攻められたらたぶん、同じ反応起こしちゃうかもしれない。

 どうしてこうなった。


――――

ちひろ「タンマです。一瞬タンマ」

P「話し始めた瞬間に遮らないでくださいよ……」

ちひろ「いやいやいや、衝撃的すぎる始まり方なんで。何をしてるんですか」

P「ナニを握られちゃってます」

ちひろ「セクハラですからね?」

P「ごめんなさい」

ちひろ「はぁ……どうしてそうなっちゃったんですか」

P「いや、最初の三日くらいは普通だったんですけどね?」

ちひろ「耐えきれなくて手を出しましたか」

P「違います。どうやら俺が起きるの遅いってわかったみたいで、ありすがこっそりそういうことをし始めたみたいなんですよ……」

ちひろ「ありすちゃん、想像の斜め上を行きますね」

P「本当にそれですよ……なので俺はちょっとこれは本当にやばいと思って距離を取るべきだと思ったんですよ」


――――


 昼、事務所にて昼食。今日も愛ドル弁当だ。愛ドル弁当ってネーミングいいな、商品化できないかな。

まゆ「あれ、Pさんそのお弁当って……」

P「んん!?」

 ふと急に後ろから話しかけられた。思わず不審者のようにびくっとしてしまった。

 佐久間まゆ。あまり話したことはない子だ。別のプロデューサー担当のアイドルの子だから仕方ないのだが。

P「ど、どうした、まゆちゃん、CuPさんはまだ戻らないぞ」

 弁当は突っ込まれて話が広がると面倒なのでまだそのままにしておきたい案件である。なんとか話題を変えないと。

まゆ「知ってますよぉ。あと30分後くらいに戻ってくる予定ですよね。なのでまゆは待っているわけです」

 なんかデジャヴ。最近のアイドルって自分の担当Pのスケジュール把握するのが当たり前なんだろうか。

まゆ「ところで、そのお弁当なんですけど、ははぁ……そういうことだったんですね」

 どうやら弁当の話題からは逃げられないようだ。

P「この弁当について、どうかしたのか?」

まゆ「少し前にありすちゃんから、料理を教えて欲しいってちょっと前に頼まれまして……一週間くらい猛特訓したんですよぉ」

P「あー、そういうことだったのか。すまないな、うちのありすが」

まゆ「いえいえ、真剣に料理を学びたいって意志が伝わりましたし、私も料理は好きなので……ありすちゃんも覚えるの早くてとっても楽しかったですよぉ」

 評判通り、本当に良い子である。


P「ありがとう、感謝するよ。あれ、でもなんでこれがありすの作ったものだってわかったんだ……?」

まゆ「そのお弁当箱、ありすちゃんと一緒に選んだんです。かなり悩んでたみたいで……あの子、本当にまっすぐで可愛いですねぇ」

P「まっすぐっていうか真面目っていうか……目が離せないよ、ほんとに」

まゆ「ふふっ……そう思ってもらえるありすちゃんは幸せですね」

P「まあ、だから今の行動も周りから誤解を受けかねないから心配なんだよなあ……まゆちゃん、このお弁当がありすのものだっていうのは秘密にしてもらえないか?」

まゆ「どうしてです?」

P「いや、なんていうかさ、変な噂が立ったりしたら大変だからさ……ありすの好意はとっても嬉しいんだけどさ。俺が良くても周りがなあ」

まゆ「ふふっ……わかりました。でも、社内で結構噂になってますよ? 今まで外食か買い食いしかしてなかったPさんが最近ずっとお弁当なので、プロデューサーさんたちの中でPさん彼女できた説が持ち上がってますよぉ」

 まゆちゃんの言葉で冷や汗が出た。結構やばいなあ、これ。尻尾出さないように気をつけないと。

P「まじかー……まあ、なるべくバレないようにしてるつもりなんだけどなあ」


まゆ「バレないように……!? Pさん、もしかして本当にありすちゃんと……?」

P「あ、いや、違って、そういことじゃなくて……なんだその、お弁当のやりとりとかあったら変に疑われるからさ……ありすの作ってくれたお弁当っていうのがバレたらまずいっていうか……」

まゆ「本当にそれだけですかぁ……?」

 まゆちゃんがズイッと乗り出して、俺の瞳をのぞき込む。
 なんだこの圧力……率直に言って相当怖いぞ……

まゆ「……ふふっ、やっぱり何も聞きません。でも、彼女――ありすちゃんは、本気ですよ?」

P「……ああ、そうだな。かつての橘流イタリアンと比べると、同一人物の作れる料理とはとても思えない。あの情熱は大したものだよ」

 思考を張り巡らせて、失言しないように、瞬時に安全な言葉をアドレナリン全開で脳内検索、そして絞り出す。

まゆ「……あなたは、残酷ですねえ……」

 そんなこと言ってもなあ。

 そういえば、気になる噂があった。このアイドル佐久間まゆは担当プロデューサーに並々ならぬ想いを持っているらしく、担当プロデューサーに関わることならば、とんでもないことをよくやらかすと。
 最近のありすの暴走ってもしかして。


P「なあ、まゆちゃん、変な質問で申し訳ないんだけど、ありすに料理以外のアドバイスとかしたりした? 例えば、さっき言ったようなCuPさんに関するスケジュールと現在地把握のやり方とかさ……」

まゆ「私が知ってるのはCuPさんが教えてくれてるからですよ? 今はどこにいるとか、今日のスケジュールとか……色々連絡もらってます。最初は、その、頑張りましたけど……」

 何をどう頑張ったのか聞かないでおこう。

まゆ「でもこっそり鞄にGPS付けたりとかこっそり鍵の型を取るとか……そういう話を小学生にさすがに教えるわけないじゃないですかぁ。CuPさんに怒られちゃいます」

 聞かなかったのに。CuPさんってすごいなあ。

P「うーむ、そうか。ありがとう」

 しかし、手口はありすとは全然違うものだからまゆちゃんに教えてもらったわけじゃないのかなあ。独学かなあ。将来が怖いよ。

まゆ「いえいえ。あ、そろそろCuPさんをお迎えする準備しますね」

 とてて、と給湯室に向かうまゆちゃん。基本的に良い子なんだよなあ。

 それにしてもありすの暴走がありす自身のものとなると、かなり大きな問題だ。
 最近の朝の行為もあるし。

 これは、考えないとな……


――――

P「ただいま」

ありす「むー、遅いです。おかえりなさい」

P「ごめんな、急な残業でさ」

 今日は残業が長引いて遅い帰宅。寝てるかと思ったけど、普通にありすは起きていた。不機嫌だけど。
 だけどそんなありすが可愛いので思わず撫でてしまう。ありすはそれで幾分か機嫌が良くなったらしい。

ありす「先にお風呂入ります?」

P「あー、そうしようかな」

 スーツの上着をハンガーにかけてもらいながらそんな会話をする。家に帰ってきた時にお風呂が沸いているって割と嬉しいことだ。

ありす「わかりました。じゃあその間に晩ご飯準備しておきますね」

 なんだろうなあ、満たされてる感覚がある。

ありす「ちなみに今日の晩ご飯は橘流ハンバーグです」

P「……それ、ハンバーグの中にイチゴ入ってたりするの?」

 っていかんいかん。橘流っていう強いワードで我に返った。今のやりとり、プロデューサーとアイドルがやってていいやりとりじゃない。

ありす「入ってません! 私をなんだと思ってるんですか……イチゴはサラダです」

P「普通はデザートなんだけどなあ」

 ありがとうストロベリー。君の衝撃が俺を正気でいさせてくれる。

 やっぱり、今日から俺が始めたことは、きっと間違いじゃない。きっと。

 ハンバーグは美味しかった。刻んだ大葉と大根おろしを混ぜた特性おろしの上から和風ソースをかけたものだった。
 イチゴサラダって不安になったけど、普通にイチゴだった。

 ありがとうまゆちゃん、君の教育は素晴らしい。

 そうしてその日もありすに抱きつかれながら寝るのであった。

投下おわり

壊れた日本語で変なこと言い始めたらまた副作用でラリってるなあ、って流してください、はい

妄想楽しい
投下


――――

ありす『え、今日も遅いんですか?』

 電話越しから残念そうな声が聞こえた。罪悪感に心が痛い。

P「ごめんな、ちょっと色々と忙しくなってきててさ」

 努めて、なんてことないように言う。でも、これは嘘だ。

ありす『……わかりました。ご飯作っておきますのでチンして食べてくださいね』

P「ああ、ありがとう」

 俺は、なるべく仕事を前倒しに詰め込み、家に帰る時間を減らすことにした。


――――

ありす『……今日は、帰ってこないんですか……』

P「ごめんな、どうしても作らないといけない資料があってな」

ありす『…………わかりました』


――――

ありす『今日も、ですか……?』

P「ごめんな、このまま新幹線乗って大阪まで行ってくることになったんだ」

ありす『………………わかりました』


――――

 そうして一泊二日だけ大阪で過ごして俺はまた事務所に戻ってきた。

 一日半ぶりのデスクだが、やはり自分のデスクは落ち着く。細かい事務用品が俺好みになってるっていうのはとても素晴らしいことだ。

 さあ今日も徹夜仕事だ。嬉しいことに仕事はたくさんあるからな、今からでもやり続ければ朝まで終わるまい。

ルキトレ「Pさん、ちょっといいですか?」

P「あれ、どうしました?」

 はっはっは、とブラックっぷりに内心高笑いしながら出張に持って行った機器とかをデスクに再配置していると、ルーキートレーナーさんが話しかけてきた。

 事務所の方に来るなんて珍しいな。しかも結構遅い時間なのに。

ルキトレ「ありすちゃんと何かありましたか?」

P「えっ、ああ、ありすのことですか!?」

 ギクゥってレベルの擬音がついてもおかしくないくらいに肩が跳ねた。

 やばい、何があった。どこから漏れた。バレたのか。ついにこうなっちゃったのか。センテンススプリングか。
 ありす、ネットで叩かれてるのかな。タブレットでよくネット見てるからそうなったらネットの悪意を隠しきれないだろうな。大丈夫かな、今すぐ連絡しないと……って俺が連絡していいのかな。またさらに燃料になってしまうんじゃ。ってか俺、やっぱり捕まるのかな。


ルキトレ「その反応、やっぱり、何かあったんですね……」

P「いや、その、何かあったっていうか、なんていうか、まだ何もしてないっていうか……」

ルキトレ「はぁ……」

 しどろもどろになってると、ルキトレさんがため息を吐いた。

ルキトレ「ここ数日、ありすちゃんの様子がおかしいんですよ。レッスン全部に身が入ってなくて」

P「は……?」

 なんか、話が違うっぽい。まだアレやコレはバレてないみたいだ。

ルキトレ「今日なんて得意のはずのボーカルトレーニングで居残りレッスンするレベルですよ?」

P「そうなんですか? あのありすが珍しい……」

 でも状況は楽観視できるものではないようだ。ダンスレッスンで湯気が出るくらいにダウンしてしまうならまだしも、歌の方で居残りなんて今までなかったはずだ。

ルキトレ「何かあったならちゃんとフォローしてあげてください。あれでも、しっかりしてるように見えてまだ子供なんですから……」

P「…………すみません」

 それだけ言うとルキトレさんは失礼します、と退室していった。


 ――嫌な予感がした。今までの嫌な予感とはまったく別種の嫌な予感。

 まだ子供だった。

 料理もマスターして、炊事洗濯もできて、しっかりしてて。なんでも一人でこなせてしまうイメージがついていた。ついてしまっていた。

 でもまだ子供だった。

 なんで、あんなにありすは俺に心を開いたのか。ありす自身を見ていたからじゃなかったのか。

 いつも一人だった、とありすは言っていた。もしかすると、俺と一緒に暮らすようになってから、誰かといる環境という暖かさに気付いたのかもしれない。

 落差が激しいほど、傷つく。当たり前のことだ。

 俺は、ありすに対して、ここ数日、何をしていた。上げて落とす、なんていう極悪非道なことをしていたのではないか。

 俺は、馬鹿か。

P「ちひろさん、すみません、帰ります」

 奥のデスクで作業をしていたちひろさんに一言。
 この人もいつまでも仕事してるよな。この会社、ブラック企業大賞に載るんじゃないか。シンデレラ法人だな。ブラックシンデレラだけど。

ちひろ「あれ、まだ仕事が残ってるんじゃ……」

P「前倒しにしてただけなんで明日やっても大丈夫です」

ちひろ「まあ、確かに……」

P「それではお先に失礼しますね」

 乱雑に鞄に荷物を突っ込んで、俺は退社する。

 一秒すらも惜しかった。すぐに家に帰らないといけないと思った。

 冷静に考えてみれば、ありすが俺の家にいるとも限らない。俺が帰らなければ、ありすは自分の家に帰った方が良いに決まってるからだ。

 でも、とにかく、一秒でも早く家に帰ろうと思った。

投下終わり
想定外に長くなってきたな

ありすちゃんの泣き顔って、こう、ぐっとくるよね(ゲス顔)

ごめんなさい、イベント走ってたらこんな時間なってたんで、明日くらいに推敲して投下します

ごめんなさい、待たせました
投下


――――

 自宅のマンションに着いて、俺は重い気持ちでエレベーターに乗っていた。

 俺の部屋は道路側にある。つまり、部屋に電気がついていれば、外から一目でわかるのだ。

 時計を見た。まだ寝る時間ではない。しかし、俺の部屋に電気はついてなかった。

P「そりゃ、そうだよな……」

 エレベーターの中で溜め息と共に呟く。

 ありすに一応LINEを送ってみたものの、既読すらついていない。まあ、事務所を出てから送ったので、まだそんなに時間は経っていないのだが、待つ時間は長く感じられるものだ。

 チン、とベルの音が鳴り、エレベーターが止まった。指定した階に到着したらしい。

 エレベーターを出て、いつも通りの癖でそのままドアノブに手をかけて。開けようとしたところで気がつく。

 ああ、そうだ、鍵を出さないと。いつもなら、俺が一人で帰る時はありすが迎えてくれて、鍵なんてかかってなかった。

 ありすがいることが、日常になっていた。

 それでも体は割と動き出したら止まらないもので、開けようとした筋肉がそのままドアを引っ張った。


P「あれ?」

 ……開いた。ガチっと引っかかることなく。
 鍵はかかってなかった。

P「……ありす、鍵をかけなかったのか」

 普通ならば外出中に自宅の鍵がかかってないということは色々と心配になるものだが、今は虚無感が心を支配していて、何も感じない。

P「……ただいま」

 誰にも聞こえないような小さい声で言った。当然だが、迎えてくれる少女はいない。

P「はぁ……」

 靴を脱いで、スーツのままリビングへ。もうスーツをハンガーにかけるのも面倒臭い。このまま酒でも飲んで寝てしまおうか。

 そう思って、リビングのスイッチをパチッとつける。

P「……っ!?」

 思わず、声を失った。

 ――ありすがいた。ちょこんと、座っていた。

ありす「あ、Pさん……?」

 くるっとこっちをありすが向いた。目元を赤く腫らして、泣きながら。

ありす「Pさん……!」

 だっと、ありすは駆け寄り、俺に抱きついた。

P「ありす、なんで……」

 まず最初に出た言葉がそれだったのは、我ながら最低だと思うが、理解が追いつかなかった。

 ありすがいたことにも驚きだった。電気はついていなかったし、LINEの既読もつかなかったし。けれども、それよりも。

 晩ご飯が用意してあった。二人分だ。俺の分もあるということだ。


 俺は、今日帰らないと言っておいた。今帰ってきたのは突然の予定変更だ。

 今日は鶏の唐揚げらしい。でもおかしい。
 事務所から俺の家までは15分かからない。いきなり俺が帰ると言い出しても、作るのは間に合わない。

ありす「おかえりなさい、ずっと待ってました……」

 ぎゅうっとありすが一層強く抱きしめる。

P「……もしかして、ありす、毎日俺の分も、作っていたのか……?」

 恐る恐る、といった風になってしまった。それはまるで自分の罪を恐れるように。

ありす「はい、もしかしたら、Pさんが帰ってくるかもしれないって、信じて……」

P「……っ!」

 心が罪悪感で圧殺されそうだった。俺は、最低だ。

ありす「……Pさんは、私のこと、嫌いになりましたか。嫌、ですよね、こんな女」

P「違う」

ありす「Pさんが帰ってこなくなって、私、考えてました。考えたら、Pさんに嫌われても仕方ない女でしたね」

P「違う、ありす」

ありす「だって、Pさんの予定、毎日見てましたけど、全部、急いで入れる必要のない予定だったじゃないですか」

P「それは……」

ありす「私のこと、嫌いになったんですよね。だからこうやって、私といる時間を減らしてた、んですよね」

P「違う……」

ありす「Pさんも、お母さんやお父さんみたいに、帰ってこなくなっちゃうんです、ね」

P「違うっ!」

 思わず抱きしめ返していた。


P「ごめん、ごめん、ありす。俺が馬鹿だった。週刊誌に撮られたらとか、ありすの今後とか、そんな体面ばかり考えてて、ありすのことを見ていなかった」

 ぎゅうっと強く抱きしめる。これ以上強く抱きしめたら壊れてしまいそうな、儚い体。こんな少女を、俺は。

P「ありすのため、だと思って馬鹿なことをしていた。俺はプロデューサー失格だ」

ありす「そんなことないです。Pさんは、最高の、プロデューサーです。私が、私が弱いだけなんです。ごめんなさい……」

 未だにありすは自分を責めている。悪いのは俺なのに。なんて、なんて。

P「違う、俺が馬鹿だった。ありすに辛い思いをさせてるだけだった。ありすは、謝る必要なんか、ない」

ありす「じゃあ、Pさんは、こんな私のこと、嫌いにならないで、いてくれるんですか?」

P「俺がありすのことを嫌いになるわけないだろ!」

 もう、ありすは、涙声を隠す余裕すらもなくなっていた。顔をうずめているが、明らかに泣いている。いや、俺が泣かせている。

ありす「Pさんは、ずっと、一緒に、いてくれるんですか?」

P「当たり前だ。ずっと、いつまでも一緒だ」

 俺は大罪人だ。こんな聡明で気高く、そして健気な少女を追い詰めて。この子のためなら、いつまでもこの命を贖罪にかけることも、もう厭わない。

ありす「Pさん、Pさんっ……!」

 泣きじゃくりながら俺の名前を連呼して、ありすはさらにきつく俺を抱きしめた。

 ありすは、そして大泣きした。

 そのままひとしきり落ち着くまで、俺はありすを抱きしめ、頭を撫で続けた。


――――

P「落ち着いたか?」

ありす「はい……お見苦しいところをお見せしてすみません……ぐすっ」

 少し落ち着いて、ありすは会話ができるくらいには回復した。

P「んー、それなら一旦離してもらってもいいか」

ありす「嫌です」

 それでもありすはずっと俺に抱きついたままだった。

P「大丈夫だって、俺はもうどこにも行かない。約束する」

 頭を撫でながら一応言ってみるが、やはり離れてはくれなさそうだ。

ありす「……約束を結ぶなら、担保が要ると思います」

P「急に物騒な単語使うなあ」

 するとありすはうずめていた顔を上げて、俺と向き合った。

 アイドルとしてこんな泣き顔はファンの前では見せられないな。

ありす「でも、大切なことです。私が、信じられる担保をください」

P「そんなこと言ってもなあ……俺に出せるものなんかほとんどないぞ。生命保険の受取先をありすにするか?」

 冗談めかして言ってみたが、その回答ではやはりお姫様は不服らしい。

ありす「違います。ありますよ、Pさんでも、今すぐ出せる、私にだけに価値のある担保」

 じーっと、ありすは俺の目を見つめる。散々泣きじゃくった後だから真っ赤なのだが、それ以外にも、若干表情が上気しているような気がする。


 ……もしかして。

ありす「……キスしてください」

P「それは……」

ありす「私だけの、Pさんであって、Pさんだけの私である契約を、結んでください。そうじゃないと、離しません」

 軽く脅迫だよね、これ。

 でも、これは、さすがにまずい。アイドルとプロデューサーの関係を、越える。

 でも……俺は。

P「いいんだな……?」

ありす「もちろんです」

P「……わかった」

 自分で言っておきながら、心臓が跳ね上がるくらいに鼓動を早くした。

 ダメだと思う。これはいけないことだ。でも、もう、そんな倫理観は関係ない。

P「ありす……」

 片腕で抱きしめながら、もう片手で、ありすの顎を支えて、上を向けさせる。

ありす「Pさん……」

 ありすも、受け入れる準備に入った。身長差があるから、そのままではできない。

 ありすは背伸びして、俺は少しだけかがんで。

 そして――


――――

ちひろ「キスしたんですか」

P「しました」

ちひろ「やっぱり通報していいですか」

P「やめてください」

ちひろ「悪化してるじゃないですか」

P「はい」

ちひろ「雨降って地固まるどころか固まりすぎてコンクリートになってるじゃないですか」

P「コンクリートっていうか、もう鋼鉄ですかね」

ちひろ「通報していいですか」

P「やめてください」

ちひろ「すみませんが想像以上にガチで正直引いてます」

P「そんなこと言っても俺だって男なんですよ! あんな状況で、その、我慢できるわけないじゃないですか!」

ちひろ「それを我慢するのがプロデューサーなのでは?」

P「うぐっ……返す言葉がございません……」

ちひろ「まあ、それでそこからありすちゃんが余計べったりになってしまったと」

P「いつか爆弾発言しないかガクブルしてます」

ちひろ「まあ、それで丸く収まったなら……あまり良くないですけど、まだ良かった、んでしょうか」

P「いや、それがそう簡単にいくこともなくて……」

ちひろ「え、まだあるんですか……?」

投下おわり
まだまだありすちゃんには泣いてもらうから(ゲス顔)

詰め切れなかった小ネタ
・LINEの既読がなかったのは、Pの帰りを待ち続けて、タブレットの充電すらしていなかったため
・毎日作った晩ご飯は次の日の朝食にしたりしてきちんと食べてます
・その日の晩ご飯はきちんと温め直して二人であーんとかしながら食べましたとさ

妄想が少しだけチャージされたよ


――――

ルキトレ「やっぱり何かありすちゃんとありましたか?」

P「は、はひっ!?」

 いつも通り、事務所でお弁当を食べていたらルキトレさんにまたドキッとすることを言われた。驚いて、箸で掴んでいたタコさんウィンナーがデスクの上に落ちてしまった。

P「3秒ルール、セーフセーフ」

ルキトレ「アウトだと思いますけど」

P「セーフ、まだセーフ!」

 ルキトレさんの言うことは本当に心臓に悪い。意味は違うんだろうけど猛烈に否定してしまった。

ルキトレ「それで、どうなんです?」


P「いや、なかった、わけじゃないですけど……まだありすの調子悪いんですか?」

 内心ガクブルしながら聞いてみる。たぶん、まだセーフな段階だと思う。

ルキトレ「調子悪いってわけじゃないんです……むしろ逆なんです」

P「逆?」

 良かった、やっぱりセーフ。

ルキトレ「気合いが入りすぎてるっていうか、気負いすぎてるっていうか……何かを怖がってるみたいに必死になりすぎちゃってるんですよ」

P「そうなんですか……」

 しかし楽観視できるようなものでもないようだ。

ルキトレ「心当たりあるなら、フォローお願いしますね?」

 うーん、今度はなんでだ。


――――

P「なー、ありす」

ありす「なんですか?」

P「なんか最近新しい悩みある?」

 その夜、晩ご飯を食べ終わって、お風呂にも入り、ベッドの上でゴロゴロしながら二人でゲームしてる時に聞いてみた。

ありす「特にありませんけど……あ、ボスの属性変わりましたよ」

 ありすは動じる様子もなく、淡々とゲームを進めている。

P「そうか。俺がスキル使うか」

ありす「それで残りの体力は削り切れそうですね」

P「だなー」

 この様子だと別に取り繕ってるわけでもないな。

P「ふぅ、なんとか倒せた」

ありす「結構時間かかりましたね」

P「最近インフレすごいからなあ」

 ボスを倒し終わって、報酬を受け取って、俺とありすはやっていたゲームアプリを終了した。

P「って、もうこんな時間か」

ありす「そろそろ寝ましょうか」

P「そうだな」

 言って、ありすと一緒に布団の中に入る。

 普通に日常になってるなあ……このままで大丈夫なんだろうか。


ありす「じゃあ、今日も……」

P「はいはい」

 一緒に布団に入って、ありすが求めるように言ってくる。

 それに応えて、俺はありすを抱き寄せた。

ありす「むー、もっと真剣にお願いします」

P「わかってるって」

 お姫様は何か気にくわなかったようで、少し不機嫌そうになる。

 だけど、有無を言わさずに俺が顔を近づけると、ありすも目をつぶって。

ありす「ん……」

 大人しくなって唇同士の接触を受け入れる。

P「おやすみ、ありす」

ありす「おやすみなさい、Pさん」

 唇を離しておやすみを言うと、ありすは強く俺を抱きしめる。

 そうしてその日も終わる。

 おやすみのキスも、日常になっちゃったなあ。


――――

ちひろ「何してんですか!!」

P「うぉぅ!? いきなりどうしたんですか」

ちひろ「どうしたもこうしたもないですよ! 日常って……寝る前に毎日キスしてるんですか!?」

P「寝る前だけじゃなくて、おはようのキスといってきますのキスとただいまのキスもあります」

ちひろ「はいアウト!」

P「いや、待ってください、これには理由がありまして」

ちひろ「生半可な理由じゃ許されませんよ!?」

P「ルキトレさんが言ってたありすの様子がおかしいっていうのが、根幹にあったんです」

投下終了
あんまり時間取れなかったから残りはまた明日とかに

けものフレンズをありすちゃんに見せて語彙力を低下させたい日曜でした

お風呂はさすがにまだ別々です

って当時の橘さんは言ってました


――――

 ありすの様子がおかしいのはすぐにわかった。

ありす「んむぅ……」

P「ありす、眠いなら無理しないで寝たらどうだ?」

ありす「ダメです、予習はきっちりしておかないと……」

 うつらうつらと船をこぎながらノートを開いているありす。真面目だなあ。

P「かと言って、眠気を持ち越して授業に支障が出たら意味ないだろ」

ありす「これでも一応受験生なんです。これくらいじゃ根を上げてられませんよ」

 しかし、そう言って、ありすはまたノートへと意識を集中する。

 私立中学かあ。俺には想像できない世界だ。

 しかし、しばらくすると可愛い寝息が聞こえてきた。

P「……無理しすぎだ」

 俺は起こさないように慎重にありすをベッドまで運んだ。

 そんな日が続き、ありすは日に日に疲労していった。

 なるべくありすの負担を減らすように家事は分担しているが、それでもありすは頑なに家事を続ける。

 目に見えてありすが疲弊していっているのがわかった。


――――

P「明らかにおかしいんだよ」

文香「それで私が何か知らないか、と……」

 数日後、俺は鷺沢文香に相談していた。

P「何か心当たりあったら教えてほしいんだよな。ほら、文香はありすと特別仲が良いだろ?」

文香「……確かに、私はありすちゃんを本当の妹のように思っていますから、ここ最近のありすちゃんの悩みは、とても心配で仕方ないです」

 お、よかった、さすが文香お姉ちゃんだ。

文香「……でも、Pさんはわからないんですか?」

P「ん?」

文香「事実として、私はありすちゃんから色々な相談を受けていますが、一緒にいる時間はPさんの方が長いはずです」

 待って。文香さんどこまで知ってらっしゃるの。というか、

P「怒ってらっしゃる……?」

文香「怒ってるんじゃないです……ちなみに、私は先日、Pさんがありすちゃんを避けるような行為をしてたことも知ってます」

 怒ってるんじゃない、って言うけど怖い。こんな文香を見るのは初めてかもしれない。


P「そ、その件は……俺が本当にアホだったよ」

文香「だった、ですか……Pさんにとっては過去のことは過去のことなんですね……」

P「それは……」

文香「問題は解決したかもしれません……でも、経験としては、残るんです」

P「……あ」

 言われて、気がつく。そりゃそうだ。ありすはまだ子供だ。そんな子供に衝撃的な体験をさせれば、それは当たり前に結果がついてくる。

文香「ありすちゃん、必死ですよ。悔しいですけど、それを任せられるのはPさんしかいません……」

P「アホだった、じゃないな。アホだな、俺」

文香「そうですね」

 うおぅ、めっちゃばっさり切られた。あの文香にこんな辛辣なこと言われると、きついな。

 思わず、ショックでうつむくレベル。

文香「……ちなみに、私は怒ってるんじゃないです」

 そこで優しい声音で言われた。聖母の慈悲か。

文香「とっても、怒ってるんです」

 しかし希望に釣られて顔を上げたら、とっても怖い笑顔がそこにあった。


――――

P「経験としては残る、か……」

 文香に言われたことを缶コーヒーを飲みながら反芻して、溜め息が出た。

P「やっぱり、俺のせい、だなあ……」

 ありすがどこまで文香に相談してるのかわからないが、原因は明らかだった。

P「ありすのやつ、また俺がいなくなるかもしれない、ってトラウマになっちゃってるのか……」

 俺はそれだけのことをしたのだと思う。ありすの状況を鑑みれば、俺の愚行は大罪だ。

 しかも厄介なことに、たぶん本人に自覚がない。

P「今度のオフに遊びに連れて行ってやるか」

 まだ夏休み前だし、遊園地などもそこまで激混みというわけではないだろう。

 ありすに今日の夜にでも提案してみようか、と思いながら残りのコーヒーをグイッと飲みきり、仕事に戻ることにした。


――――

ありす「Pさん、次はあれ行きましょうよ!」

P「そんな引っ張るなって」

 ありすインワンダーランド。言ってみたかっただけだ。

 オフの休日を使って、俺とありすは千葉県にあるのに東京と名の付く夢の国に入国していた。

 さすが夢の国。キャストさんの本気っぷりが半端ないし、あのありすがネズミの耳を付けるくらいにテンションが上がっている。ちなみに俺もネズミの耳付きだ。みくにゃんのファン辞めます。

P「うお、マジでこれ行くのか」

ありす「行きましょうよ、カップルの定番ティーカップです」

P「結構恥ずかしいんだが」

ありす「その次はPさんの好きなところでいいですから」

P「マジで? じゃあコレ」

 パンフレットの中から一つのアトラクションを指さす。

ありす「ぜ、絶叫系ですか」

 示されたものを見てありすの表情が引きつった。水に向かってばしゃーんと入っていくアレである。

P「せっかく夏だし一緒に濡れようぜ!」

ありす「ぬ、濡れ……っ!?」

 すると今度はなぜかありすが真っ赤になって怒り始めた。表情がコロコロ変わるところも可愛いなあ、もう。


――――

ありす「私は怒ってます」

P「ごめんって」

 絶叫した後にぷんすこするありすを宥めながら昼食。夢の国価格が懐に痛いなあ。

P「午後はまったり回ろうか」

ありす「そうですね……もう絶叫系はなしで」

 そんなに絶叫系ダメだったのか。

ありす「せっかくここに来たんですから、あの家とか行ってみたいですよね」

P「あとショーとかも見ておきたいよな」

 とかとか色々と行くところを挙げていく。午後も予定が満載だ。


――――

ありす「たくさん遊びましたね」

P「たまにはこういうのも良いだろ」

ありす「良いですね」

 華々しいパレードを一緒に眺め終わって、ベンチで一息。

ありす「……Pさんと一緒なら、ですけど……」

P「ん、なんだって?」

 ボソッと何かを言ったみたいだけど聞こえなかった。

ありす「なんでもないです」

 聞き返したらありすは若干不機嫌そうになった。聞かれたら困ることだったんだろうか。

ありす「……いつまでもこうしていたい気分です」

 ふと、ありすは空を見上げて呟いた。今度は聞こえた。

P「でもまた明日からは仕事だからなー」

ありす「んもうっ……夢の国にいる間は夢を見させてくださいよ」

 意地悪く言ったらさらに不機嫌になってしまった。ちょっとやりすぎたか。


P「また一緒に来ればいい」

ありす「そう、ですね」

P「ここだけじゃなくて、他の大きいところも一緒に行ったりしよう。大阪のやつとか」

ありす「そうですね」

 ありすの様子は、期待というより不安の方が色濃く出ていた。無自覚なんだろうけども、やっぱり。

P「……大丈夫、ずっと一緒だから」

ありす「ふぇ……?」

 思わず、抱き寄せていた。あまりにその横顔が、今にも壊れそうで、我慢できなくて。

P「不安にならなくていい。俺はありすのそばにずっといるって、決めたからな」

ありす「な、なな……」

 ちょっとキザっぽく言い過ぎたか。ありすが顔を真っ赤にしてワナワナ震え始めた。

ありす「……はい。甘えますからね」

 そう思ったら今度はその震えが収まって、寄り添ってきた。顔は真っ赤なままだけど。

P「任せろ」

 言いながら、俺も恥ずかしくなってきたのでありすの頭を撫でて顔が見えないようにした。

 そうしてその日は遊び尽くした。

 これでありすの不安も払拭できただろうし、ストレス解消とかにもなったかな、と思っていた。

 つまり、俺はありすの覚悟を甘く見てることを、忘れていた。

投下終わり

ありすちゃんに生半可なことしたらふみふみマジギレしそうだなあ、って思いました

ありすちゃんからチョコもらったよおおおおおおおおおかわいいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああ
ありすちゃんくんかくんかhshsありすちゃんからもらったチョコ!!チョコ!!!ルームで微笑むありすちゃん!!!!
はあああああたまらない!!!!ありすちゃんのチョコ血液に注射しよおおおおおおおおおんあああああああああああ
ありすちゃんのチョコと血液が混ざって一体化しゅるううううううううううう体の中に血管の中にいいいいいいいいいい
血管から食べることで効果数倍
これが長年のPの課金の結果たどりついた究極の愛
ドーピングありすチョコだ

さあ諸君、俺がhshsするのを止められるかな?


――――

桃華「Pちゃま! 橘さんが!」

 翌日、レッスン後であろう時間に櫻井桃華が飛び込んできて、俺は認識の甘さを思い知らされることになった。

P「ありすがどうしたのか!?」

桃華「レッスンの後に自主レッスンをしてて、倒れまして……!」

 慌てた桃華の様子に俺も背筋に嫌な寒気が走った。

P「昨日の今日で、かよ……!」

桃華「今、新田さんが介抱しておりますわ!」

P「わかった!」

 俺は事務仕事を放り投げてレッスンルームへと走る。途中、ちひろさんとすれ違ったが、もう何を話しかけられたのか覚えてない。

P「ありす、大丈夫か!?」

美波「あ、Pさん!」

 レッスンルームに着くと真っ赤に茹で上がってへばってるありすが新田美波に膝枕されていた。

美波「無理しすぎたみたいで、酸欠みたいです」

P「酸欠って……」

 よく見ると美波の片手には酸素スプレー。自主レッスンで酸欠になるほど自分を追い詰めるってどんだけだよ。


ありす「んん……Pさん……?」

 俺が騒がしかったからか、ありすは気がついたようだ。

ありす「すみません……ちょっと、うまくいかなくて……」

P「馬鹿、無理すんなって言っただろうが」

ありす「でも……」

P「でもじゃない」

 努めて、俺は優しく叱った。ああもう、昨日すっきりしたと思ったら余計にストイックになってやがる。逆効果かよ。

美波「ありすちゃんを責めないであげてください……すごく、頑張ってたんです」

 すると美波がフォローを入れてきた。まあ、ここだけ見たらそう言うよなあ。

P「頑張るって言っても限度があるんだよな……最近は朝から夜まで無理しすぎなんだよ、ありすは」

美波「朝から夜まで……?」

 やべえ、思わず口が滑った。

P「ああ、いや……とにかくありがとうな、美波。後は俺が介抱して連れて帰るから」

美波「……? わかりました」

 なんとか誤魔化して美波を帰らせる。誤魔化せたのかわからないけど。


――――

ありす「お手間かけてすみません……」

P「まったくだ、昨日息抜きしたばかりなのに」

 帰り、車を出して家まで帰る。車を出さなくとも俺の家までは電車ですぐなのだが、ありすがかなり疲れてる様子だから念のため。

 っていうかナチュラルにありすを自宅に連れ込もうとしてるってことだよな、これ。慣れちゃったけど、慣れちゃダメだったと思う。

ありす「……なんか、自分に納得がいかなくて」

P「だけどレッスンってのは、プランを立てて、過密すぎるトレーニングをしないように心がけないといけないって、ありすならわかってるだろ?」

ありす「わかってますけど……」

P「フィジカル面で他のみんなより弱いのは仕方ない。まだまだこれから成長するんだからさ」

ありす「……それだけではなく、全体的に、歌もダンスも、私は足りないような気がするんです」

 ええ、あのありすが弱音を吐き出した。こりゃ重症だ。

ありす「だから、もっとレッスンしないと、です」

 ありすは思い詰めたように言う。それを見て、俺は率直にヤバいと感じた。

P「……いや、しばらく、自主レッスンは禁止だ」

ありす「えっ……?」

 俺の言った言葉にありすはショックを受けたような顔をする。やめてくれ、そんな悲しい顔をしないでくれ。


ありす「私、できます。まだ頑張れます。家事のことだって、Pさんに手伝ってもらってることが多いのにレッスンで手を抜けません」

P「手を抜け、って言ってるわけじゃない」

 必死になってありすは懇願するように言う。そんなことをさせてるのは、俺が原因って考えると罪悪感で死にたくなるな。

P「決められたレッスンの時間の中できちんと結果を出せるように考える時間を作った方が良いって話だ。今じゃこなすだけで精一杯だろ?」

 なるべくありすを刺激しない言葉を選んで使う。ありすには理詰めが通じるからこういう時に助かる。

ありす「そんなことは……」

P「そもそも、小六で学校とアイドルを両立して炊事洗濯掃除をこなしてるだけでも超人的だから。俺と家事を分担することを負い目に感じる必要もない」

ありす「しょ、将来的には、結婚したら仕事と家事を両立しないといけません。育児が入ってきたら今より大変になると思います」

 ちょっと顔を赤くして反論してきた。っていうかもう子供作ることまで考えちゃってるのこの子。早すぎない?

P「共働きになるならそれこそ家事は分担するだろ。育児だって俺なら任せきりにするつもりはないぞ。だから、頼むから少しは俺に甘えてくれ」

ありす「その言い方は……卑怯です……」

 真っ赤になって、ありすは縮こまった。はい論破。

 これで翌日からありすの自主レッスンは禁止したため、多少は安定してきた。

 しかし、いつまでも何かを制限しておくのは解決とは言えない。というか、ありすは元々、自己制限できていたわけで、それを俺が崩してしまったわけで。どうにかしないといけない。


――――

P「どうしたもんかなあ……」

 今日も事務所で頭をひねる。最近、ありすのことしか考えてないな。

まゆ「Pさん、ちょっといいですかぁ?」

P「あれ、どうした? CuPさん今日は外回りから戻らないぞ」

 そこに佐久間まゆちゃんが話しかけてきた。たぶん知ってるであろう担当P情報を流してあげよう。

まゆ「知ってますよぉ。今日は事務所に忘れ物をしたらしいので届けてあげるんです」

 どこに届けるんだろうなあ。聞かないでおこう。

まゆ「あと、Pさんにお話がありまして」

P「え、俺に?」

 意外だな、まゆちゃんが俺に用なんて。接点はほとんどないのに。

まゆ「ありすちゃんのことです」

P「あー、料理教えてあげてたんだっけ。ありがとな」

 接点その1、ありすのこと。その2はないけど。

まゆ「そのことじゃありません。最近のありすちゃんの様子の話です」

 あれ、なんか雰囲気ちょっと怖くない?

まゆ「まゆ、言いましたよね。ありすちゃんは『本気』だって」

P「あ、ああ……」

 気圧されて頷く。怖いよ、最近普段怒らない子に怒られてばっかりな気がする。

まゆ「昨日、一緒にお料理してたんですけど、ありすちゃんが落ち込んでましてね……何があったのか聞きました」

 待って、まゆちゃんにまで一緒に住んでるのバレてるのかなあ。ってかまゆちゃんとありすって仲良いのね。


まゆ「Pさんは優しいですね? でも今、その優しさにありすちゃんは苦しめられてます」

P「そう、なのかな」

まゆ「そうですよぉ。ただ優しくするだけじゃ意味ないです」

P「……でも元々は俺の軽率な行動が原因だからな。ありすの心の傷を癒やすために、俺は全身全霊で頑張るしかない」

まゆ「……変なところで似たもの同士ですねぇ」

 はぁ、とまゆちゃんは溜め息を吐いた。え、俺そんなに呆れられること言ってるのかな。

まゆ「そもそも、心の傷を回復するなんて無理なんです。それに身を捧げてお互い破滅するなんて、あまりにも悲しいですよ」

P「無理、って言われてもな……」

まゆ「癒やすことだけが解決じゃありません。そもそも、解決ってなんだと思います?」

P「そりゃ、ありすがまた以前みたいに、普通に笑えて普通に頑張れる状態になれれば……つまり、安心させてやることができれば……」

まゆ「そうですね、やっぱり不安をなくしてあげる、これが解決です」

P「でも、俺の力だけじゃダメみたいなんだよな……この前も一緒に夢の国行ってきて、息抜きをしてきたんだけど」

まゆ「夢の国デートですね、聞きました」

 ありすはまゆちゃんのことをかなり信頼してるのかなあ。普通、口が裂けても言えないようなことだと思うんだけど。


P「その時、『ずっとそばにいる』って言ったけど、その次の日からさらに無理してるからな……」

まゆ「そんなこと言ってたんですか……」

 それは聞いてなかったのかよ。

 あれ、よくよく考えたらこれって他のアイドルに言ったらかなりアウトなやつじゃね?

P「逆にありすを追い詰めちゃったのかなあ……」

まゆ「うーん、そうですねぇ。拠り所が、ないからじゃないでしょうか?」

P「拠り所?」

まゆ「悪く言えば、依存できる場所、ですかね。そういうのって、大事ですよ?」

 難しいことをおっしゃる。

まゆ「確かに、思い出も依存できます。けど、やっぱり人間って、目に見えるものが強いんです」

P「目に見えるもの?」

まゆ「例えば、まゆはこのリボンにとある想いを籠めています。想いは持っているだけでも良いですけど、やっぱり目に見える形として表しておくと、より想えます」


P「……なるほどな」

まゆ「なんでもいいってわけじゃないですよぉ。身につけるものがまゆ的にオススメです。指輪とか」

P「うーん、それはさすがにダメかな」

まゆ「大丈夫ですよぉ、ありすちゃんならまだ小学生ですし。まゆは欲しくてもまだもらえないので応援してます」

P「うん、ちょっとそういう方向はやめようか。君たちアイドルだからね」

まゆ「ありすちゃんをこんな気持ちにさせるPさんが言います?」

 マジでありす、この子にどこまで喋っちゃってるのかな。

P「でもアドバイスありがとう、良いこと思いついたよ」

まゆ「また何かあったら相談乗りますからね? まゆはありすちゃんを全力で応援してますので」

 基本的に良い子なんだけど……いやうん、良い子だ。それでいいやもう。CuPさん早く爆発しろ。

 言い終わるとまゆちゃんは普通にCuPさんのデスクのチェストを開ける。うーん、各プロデューサーのチェストって機密書類多いから鍵がかかってるはずなのにな。なんで普通に鍵持たせてるんだろ。

 まゆちゃん、勝手にポイポイと捨てちゃダメだと思う。四つ葉のクローバーの栞、可愛いじゃん。ってかその音楽に関する本、読んでる途中だと思うよ?

 とりあえずまゆちゃんを見てても仕方ないので、思いついたことを即実行するために俺は電話をかけることにした。

P「あー、もしもし、ちょっと頼みたいことがあるんだ。お前にしか頼めない。え、なんだって? そういうのじゃないから。あーもう、今度酒奢ってやるから。静かに、佐藤」

投下おわり

この話、広げすぎたな
CuPさんはなぜか胃薬が手放せないらしいです

ちょっと童貞力が高すぎて難産でした
投下


――――

P「想像以上に疲れたな……」

ありす「でも、喜んでもらえたみたいでよかったです」

 車でありすと一緒の帰宅。

 その日は城ヶ崎莉嘉の誕生日パーティーの帰りだった。

ありす「莉嘉さんはすごいですね。あんなに大きなパーティーでも気ままに楽しめて」

P「ありすも来年からパーティー開くか?」

ありす「私はいいです。私は、その、たぶん戸惑ってしまうと思いますので」

P「まあ、こればっかりは性格もあるからなあ」

ありす「それに両親が毎年準備をしてくれてるんです……たぶん来年も」

P「そうだな」

ありす「……でも、Pさんに誕生日をその日に祝ってもらえるのは、羨ましいかな……」

P「……なんだって?」

ありす「なんでもないです」

 聞き返すと、ありすはむすっとしてそっぽを向いてしまった。

 ……誕生日を祝う側として精一杯笑顔だったが、どこか不機嫌なありす。まあ、その理由はわかりきっているのだが。


 明日はありすの誕生日だ。ありすは当日、仕事はオフで親子水入らずで誕生日を祝う予定になっている。

 ありすは今日の夜は俺の家に泊まるが、明日学校に行ったら、夜は橘家にいるわけだ。

 つまり、俺がありすの誕生日を祝うには今日しかないわけで、それであと二時間足らずで日付が変わろうとしている段階でまだ何もない。

 期待して一日を過ごさせたのは残酷だったな。

 まあ、俺は保護者として最後まで留まらざるを得なかったので、一緒に帰るありすも自動的にパーティーの最後までいた、という事情は最初からありすも予想していたはずなので、そこまで文句は言わないみたいだが。

P「なあ、ありす。今日はまだ家に帰るの遅くなって大丈夫だよな?」

ありす「……いいですけど。予習も終わらせてますし」

 しかしありすが予想していた、ということは、俺も予定を立てているわけだ。

 ありすも気付いたのか、期待したのか、声を弾ませて返事をした。

P「よし、わかった」

 俺ってサプライズとか本当に下手だよなあ、って思いながら家の方向とは違う方向にハンドルを切った。


――――

P「予約してたPです」

 入り口でウェイターに言って個室に案内してもらう。

 連れてきたのはとあるイタリアンのお店。ちょっとお高めだけど小洒落てて、遅くまでやっているお店だ。都会だとこういうお店があるのが嬉しいな。

 物珍しいのか、案内されながらありすは店内を控えめだがキョロキョロと見回している。可愛いなあ。

ありす「Pさんがこんなお店知っていたことに驚きです」

 おい、俺をどういう男だと思っている。

P「前に来た時に雰囲気が気に入っててさ。予約取っておかないと入れないから中々来れなかったんだよなあ」

ありす「……誰と来たんですか?」

 すぅ、とありすの眼光が鋭くなった気がした。ちょっとオーラがクールになったぞ。

P「取引先だよ」

ありす「そうですか、なら良いです」

 誰となら良くなかったんだろう。

「こちらです」

 話していると個室まで着いたらしい。ウェイターが個室のドアを開ける。

 中を見て、俺とありすは一瞬言葉を失った。

 個室の中は横並びで座るタイプだった。いわゆる、カップルシートだ。

 ……マジかよ。

ありす「……取引先と来たんですよね?」

P「いやいや、取引先と来た時は普通の席だったから!」

 そういえば、予約時に誕生日のプランを話してたら男女二人ですか、って聞かれたな。そういう意味だったのかよ。

 っていうかなんで俺は慌てて弁解してるんだろう。まるで浮気を疑われた男みたいに。


ありす「とりあえず座りますよ?」

P「お、おう」

 ありすが率先して座って、後に俺も座る。そうだな、いつまでも入り口に立っているわけにはいかない。

 ウェイターさんはさすがプロだった。俺たち二人がカップルシートに座る様子なんてどう見ても事案にしか見えないのだが、無表情でいてくれる。助かった。


――――

 最初はどぎまぎしたが、そもそもいつも家であーんとかやってたりするんだったってことを思い出して、俺とありすはすぐに冷静になった。いや、それも正直アイドルとプロデューサーとしてどうかと思うんだけども。

 慣れてきて、料理を普通に食べて、他愛のない話をしたりする。

ありす「こういうお店、楓さんとかが似合いそうですね」

P「そうかな。あの人、実は居酒屋で安酒呷るからなあ」

ありす「えぇ……」

P「収入もあるんだし、もうちょっとまともなところで飲んでほしいんだけどなあ……『大将、砂ずり二本!』とか言っちゃうんだよなあ」

ありす「……Pさんって、結構大人の人とお酒飲みに行きますよね」

P「あー……ありす寂しいよな、ごめん」

ありす「いえ、Pさんならその鋼の理性で間違いなど起こさないって信じてますので。私はちゃんと家を守ってますよ」

 ねえ、小学六年生が家を守るとか言うのおかしくない?

P「ありすもお酒飲めるようになったら連れて行くさ」

ありす「その時、子供がいたらなかなか夜にお酒飲むっていうのは難しいと思いますが……」

 この子の脳内どこまで進んでるの。二十歳でもう子供いる設定かよ。


ありす「お酒って美味しいんですか?」

P「美味しいっていうか、楽しい、かな。まあ、美味しいお酒も多いけど」

ありす「こういうお店だとお酒も美味しそうです」

P「ダメだぞ、ありすにはまだ早いからな?」

ありす「……わかってますよ」

P「何、今の間。ありすもついに反抗期か。不良になっちゃうのか」

ありす「そういうわけじゃありません。というか既に反抗期だと思います」

P「それ、自分で言うのか」

ありす「……ただ、お酒が飲めたら……酔っ払ったことを口実にPさんに甘えられるかな、って……」

 ボソッとありすが呟いた。

P「今でも普通に甘えていいんだぞ?」

ありす「……Pさん、聞こえてる時と聞こえてない時の違いってなんなんですか」

 そう言いながらありすはぽてっと寄りかかってきた。

ありす「久しぶりに、こうしてる気がします」

P「そうかな」

 ありすの頭を撫でると満足げにありすは微笑んだ。

ありす「ずっとこうしていたいです」

P「週刊誌にすっぱ抜かれない程度には、これからもこうしてあげるさ」

 ふにゃあ、という表現が正しいくらいにありすの口角が上がった。こうしてると年相応だよなあ、可愛い。


 そんな話をしていると、ふっと照明が薄暗くなった。静かに流れている曲が止まり、バースデーソングがかかり始めた。
 同時に、個室のドアがコンコンコンとノックされる。

ありす「んっ!」

 気を抜いていた時に演出が始まって驚いたのか、ありすはビクッと起き上がった。もうちょっと可愛がりたかったから残念でもある。

 でも、もうそんな時間か。

 日付が、変わった。

「失礼します」

 個室のドアが開いてウェイターが入ってきた。

 手には、大きいろうそく一本と小さいろうそく二本が刺さった、イチゴをたくさん使った特製ケーキ。

 それがテーブルに置かれて、ろうそくの光でありすの表情が照らされた。

ありす「こ、こういうのは、やっぱり恥ずかしいですね……」

 口ではそう言いながらも、まんざらではない様子。真っ赤になりながら言う様子がほんと可愛い。

 こういうサプライズをされるのは想定してたのだろうが、特製イチゴケーキをありすのために用意してあるのは想定外だろう。その証拠にケーキを見る目がキラキラしてる。

P「でも、悪くないだろ?」

ありす「うぅ……そうですね」

P「誕生日おめでとう、ありす」

ありす「あ、ありがとうございます」

 橘ありすは今、12歳になった。

 パチパチと俺が拍手をして、ウェイターも拍手をする。

 拍手をされて真っ赤になったありすがろうそくを消す。ふー、と息を吹き出す時の顔が可愛い。動画に残しておくべきだったか。いや、そこはご両親に任せよう。

 ろうそくが消えて、暗くなったら、照明がまた復活した。照明が復活する頃にはウェイターはいなくなっていた。


ありす「Pさんは本当にサプライズが下手ですね」

P「自分でもわかってる。もっとやりようがあったかもしれないけど、どうしてもありすの誕生日を一番最初に祝いたくて、な」

ありす「……Pさんのそういうところ、好きです。サプライズ下手なくせに、私を嬉しくさせてくれるPさんが」

P「ありがとな。こんな甲斐性無しを良く言ってくれて」

 また、ありすは寄りかかってくる。今更だけどウェイターに見られてたら一発アウトな光景だよな、これ。

P「甲斐性無しだけどさ、一応誕生日プレゼント用意しておいたから」

ありす「期待してます」

P「そういうこと言うなよなー。はいこれ」

 軽口を叩きながら俺は鞄の中から小さい箱を取りだした。黒いちょっともふもふした起毛生地の化粧箱だ。

ありす「ゆ、指輪……!?」

P「違うから。なんで君たちはそういう発想になるのかな。とりあえず開けてみ」

ありす「あ、開けますね……?」

 なんかありすはものすごく緊張しながら開ける。こっちまでドキドキしてきた。
 ってか、そうじゃなくても、俺は今めちゃくちゃドキドキしている。

 これが、今日の本命だからだ。


ありす「これは……ネックレスですか?」

 中身はシルバーのイチゴの形をしたネックレス。中心部にルビーが埋め込まれていて、イチゴらしさを出せてると思う感じ。添えられた銀のプレートに『Happy BirthDay Arisu』と刻印されていた。

P「ありすに似合うかな、って。俺のセンスがなさすぎて超不安だけどさ」

ありす「いいんですか、私なんかにこんな高そうなものを……」

 あれ、想定してた反応と違うな。そこ心配するところなのか。

P「そんな高そうに見える? そりゃ嬉しい。材料費はそんなかかってないんだけどな」

ありす「材料費?」

P「ああ、これ、俺が作ったんだよ」

ありす「えっ……えっ!? Pさんがこれ作ったんですか!?」

 不安そうな表情から今度は驚いた表情へ。やべえ、ありすの反応が楽しい。

P「結構頑張っただろ。シルバークレイって言ってな、頑張れば割と作れるもんなんだ」

 思わずどや顔した。どや顔も楽しい。杏の気持ちがわかる。

ありす「……Pさん、本当にPさんですか? こんなお店知ってたり、こんなアクセサリー作ったり……」

P「失敬な。これでもしゅがは師匠の元で猛特訓したんだ」

ありす「いつの間に……心さんと……」

P「前に無理して仕事詰め込んだおかげで時間に余裕ができてさ。いやー、その驚いた顔が見たかった!」

ありす「そういうこと言うと台無しですからね? ……サプライズ下手、っていうのは撤回しておきますけど」


 嬉しそうにありすはネックレスを取り出して着けてみせる。

ありす「似合いますか?」

 ネックレスをつけて、ありすは満面に笑みを浮かべる。その笑顔は透き通っていて、思わず見とれて。

P「ああ、めっちゃ可愛い」

 思わず口に出ていた。

ありす「ふふっ……ありがとうございます」

 12歳の少女に、俺は本気で見とれた。

ありす「嬉しいですよ、Pさん。今までの誕生日で、一番嬉しい誕生日です」

 ちなみに、ネックレスの裏面にも刻印がしてある。

ありす「一生、大切にします……」

 『Together forever』と。あとでありすが気付いてくれるだろうか。

投下おわり

あ、詰め切れなかった小ネタ

・7月の誕生石はルビー

遅くなってすまない
投下


――――

 誕生日を祝って、料理を食べて。そうして帰宅することにはもう深夜二時を回っていた。

 実はめでたい瞬間なわけだから、お酒でも飲みたかったけども運転を考えて我慢したのだが、結果的によかった。
 昼間のパーティーで想像以上に体力が消費されてたみたいで、電車で帰るとなるとなかなか苦労したかもしれない。

 たぶん、ありすはより一層疲れてるだろうから、やっぱり車で帰ったのは正解だったと思う。

P「ふぅ……ただいまー」

ありす「おかえりなさいです。そして私もただいまです」

P「ああ、おかえり」

 言いながら自然とお互いの唇を重ねる。

 おかえりのキスはもう日常化していて、抵抗もなくなっていた。

 ただ、口の粘膜同士が触れ合った瞬間に。お互いがお互い同士のものであると実感できる感触が、自己の支配欲を満たす。そして、俺だけのありすがとても愛おしく思えて、きっとありすも同じような感情を持った表情をしていて。

 なぜか今日はそれだけでは終われなかった。

 ありすを誰にも渡したくなくて、思わず抱き寄せた。そしてもう一度、唇を近づけて、ありすもそれを受け入れる。

 そんなキスを三度繰り返して、そこではっと我に返った。

 俺は今日12歳になったばかりの少女に何をしているんだ……


ありす「Pさんとのキス、ケーキの味がします」

 唇を人差し指で押さえて。ありすがはにかみながら感想を言う。キスの味のグルメリポートは妙に艶めかしい。

 思わず艶やかな瑞々しい桜色の唇に目を奪われそうになって、また我に返った。

P「ありすのも同じケーキの味だろ。同じ物を最後に一緒に食べてるんだからさ」

ありす「それでも私はケーキの混じった味の中からPさんの味を見分けることができますよ。だから厳密には違う味だと思います」

 なんでそんな鋭敏な神の舌を持った結果の創意物があのイチゴの悲劇なのか。

ありす「Pさん、今、私に失礼なこと考えましたよね?」

P「……どうかなー」

 なんでわかるの女子の勘って強っ。

P「さて今日はもう寝るか。疲れたし、シャワーも明日の朝の方が良いだろ」

ありす「うーん……このまま寝るのは気持ち悪いですけど、仕方ないですね」

P「とりあえず俺はスーツ脱いで着替えてくるわ」

ありす「はい。先にリビングで待ってますね」

 言って、俺はクローゼットのある寝室でスウェットに着替えて、リビングに向かう。

 うーん、ちょっとやばげですなあ。理性飛びかける限界が直前まで来てる感じする。

 なんて考えながらリビングに入ると、またもや苦悩の種が芽を咲かせようとしていた。


ありす「適当に準備しておきました」

 そういうありすの目の前にはお菓子とジュース。そして、イチゴ味のカクテルチューハイ。

P「これから寝るんじゃなかったっけ」

ありす「もうちょっとだけお話したいです」

P「夏休みの受験対策補講みたいの、明日もあるよな」

ありす「わかってますよ? ……でもせっかくの誕生日なんですし、たまにはこういうのもやってみたいんです」

 このお願いは、断れないよなあ。

P「なら今日だけならまあ……でもなんだ、そのお酒は」

ありす「冷蔵庫にあってイチゴだったので持ってきました」

 相変わらず基準はイチゴから始まるんだな。

P「お酒はダメだぞ、ってさっきお店で言っただろ……」

ありす「わかってますよ。これはPさんの分です」

P「おいおい俺は飲むなんて一言も……」

ありす「でもPさんはお酒飲みたい、って気持ちじゃないですか?」

 なんでわかるんだよこの子。思考筒抜けなの。


ありす「さっきのところではPさんが運転するのでお酒を飲めませんでした。なので二次会です。一緒に乾杯しましょう」

 ちょっとはしゃぎながらそんなことを言うありす。そんな可愛さに対抗できるわけがない。

 言いながらもうコップに注ぎ始めちゃってるし。

P「少しだけだからな?」

 なんかありすの要望に正面から挑まれて至上最速で倒された気がした俺であった。

ありす「はいっ♪」

 満面の笑み。まあ、誕生日ではしゃいで笑顔になるなら、本当にプロデューサー冥利尽きるよ。

P「じゃあ、」

P・ありす「「かんぱーい」」

 だが、アルコールというのは人の正常な思考を奪うものであった。


――――

 それから小一時間くらい一緒に二次会を楽しんでから、そろそろ寝ようということになった。

 我慢してたからか、俺はお酒を飲むペースがいつもより早かった気がする。350mlの缶チューハイだが、一時間ちょっとで三本も飲めば人は割とほろ酔いになるもんだ。

P「ありすー、ちゃんとパジャマに着替えようなー?」

 外行きの服のままいそいそとベッドに入ろうとするありすを見て、俺は一応釘を刺す。

ありす「今日はもう疲れたのでここまま寝ます……ふぁあ……」

 しかしありすはそのままベッドに入っていってしまった。相当お疲れモードみたいだ。まあ、仕方ない。昼夜深夜と遊んだわけだからなあ。

ありす「それとも、私が着替えてるところ、見たいですか?」

P「ち、違うっての」

 言われて下着姿のありすを少し想像してしまった。

 ちなみにありすの下着を知っているのは断じてやましい理由ではない。ありすの後にシャワーを浴びると脱衣所のカゴの中にありすの下着が入ってるわけなだけで。


ありす「……別に、見てもいいのに」

P「ん?」

ありす「なんでもないです。Pさん、早く寝ましょう?」

P「わかったわかった」

 急かされて布団の中に入る。酔っているせいか、いつもより体が火照って布団の中が暑く感じた。

 至近距離にありすの顔。可愛いなあ。

ありす「な、なんですか」

P「いや、やっぱりありすは可愛いなって」

 可愛すぎて思わず頭を撫でてしまった。お姫様は不服なのか少し唇を尖らせる。

ありす「今日で12歳になったんです。いつまでも子供扱いしないでください」

P「わかったよ」

ありす「んっ……」

 むすっとしたありすの言葉を遮るように口付けを交わす。おやすみのキス。

ありす「もう一回……」

P「おう」

ありす「んん……もっと……」

P「わかった」

 唇を離すと、ありすが求めてきた。布団の中で腕をありすの腰に回して、抱きしめながらキスをする。


 二度キスをして、三度キスをして。

ありす「もっと、もっと……」

 四度キスをして。

ありす「もっと、Pさんを感じていたいです……」

P「もっとって……」

 まるでお酒を飲んだかのように上気したありすの表情から、俺は邪なことを想像する。いや、ダメだろ。

ありす「……今日で私は一つ大人になりました。だからもう一つ、大人のキスが、したいです」

 そっちか。俺の考えが汚れすぎてた。でも。

P「それは、さすがにプロデューサーとアイドルとして……」

ありす「……もうここまでしてるのに、今更ですよ?」

 主に押しかけられただけ、でもないな。もう言い訳できる段階じゃない。

P「……キスだけだからな」

ありす「はいっ……ん」

 言って、五度目のキス。舌を伸ばしてありすの口腔に侵入させる。

 ありすはそれを抵抗することなく受け入れる。ありすの舌と俺の舌が絡み合う。

 思わず抱きしめる腕にも力が入る。ありすも俺に抱きついて、俺の足とありすの足も絡み合う。

ありす「ぷはっ……もっと……」

P「ああ、もっとだ……」

 その後、タガが外れたように俺とありすはお互いの舌と唾液を貪り合って、お互いを抱きしめたまま眠りについた。


――――

 次の日の朝。

 目覚ましのアラームがけたたましく鳴っているのに気がついた。いつもなら目覚ましがなる前にありすが起こしてくれるので、最近は目覚ましの役割を果たしていないのだが。

P「ん、ありす……?」

 ふと見ると、布団は暑かったのか、押しのけられていた。その代わり、ありすと密着していて、それが熱源になっていたらしい。

P「んん……!?」

 その体に絡みついたありすの様子を見て、変な声が出た。

 色は薄いブルーだった。リボンがちょこんとついていて、綿製のショーツ。それが見えた。

 私服のスカートが寝ている間にめくれ上がったのか、ありすのパンツがバッチリ見えていた。

ありす「んー、もう朝です、か……」

 俺の声でありすも起きたみたいで、自分の様子を見て、固まった。やばい。時が固まった。

P「ってか時間!」

ありす「え、あ、ああ、もうこんな時間ですかっ」

 そこで気がついた。アラームが鳴っているということは、割とギリギリな時間である。

 俺とありすは大慌てで準備して、それぞれ事務所と学校に向かうのであった。


――――

ちひろ「こんな時どんな顔していいかわからない」

P「笑えばいいんですよ」

ちひろ「まったく笑えませんよ!?」

P「ちひろさん落ち着いて、落ち着いて」

ちひろ「これが! 落ち着いて!! いられますかぁ!!!」

P「は、はい」

ちひろ「ロリコン!! 変態!! 小学生にディープキスって何考えてるんですか!!」

P「それはその、酔った勢いというか……」

ちひろ「言い訳すら最低でしたか!!??」

P「その点については深く反省しております」

ちひろ「っていうか何が手を出してないですか!! バリバリ手を出しちゃってますよねそれ!!??」

P「いや、まだ入れてません!」

ちひろ「何をだッ!!」

P「ナn」

ちひろ「通報します!」

P「ごめんなさいマジ勘弁してください」

ちひろ「うわっ、そんな高速な動きで土下座するとか人間の尊厳捨ててません?」

P「尊厳より守りたいものがあるんです」


ちひろ「でも私に自首するなんてなんか間違えてません?」

P「自首じゃないです、悩みを聞いてもらってるはずなんです」

ちひろ「ああ、そういう設定でしたね、話が色々と衝撃的すぎて忘れてました」

P「なので、ここからが悩みの本題なんですが」

ちひろ「ここから!? 今までのは!?」

P「前置きですかね」

ちひろ「プロデューサーがアイドルとディープキスする前置きの悩みって怖すぎるんですけど、先に通報しちゃダメですか?」

P「ダメです。というか通報されないようにしたいんです。ここまでならまだ条例違反にもなってませんし」

ちひろ「……まあ、確かにまだ通報しても罪に問われる段階じゃないですね」

P「悩んでるのは、それ以上の理由がありまして……」

投下終わり

重すぎる愛っていいよね

「覚悟」があるか…?
ずっとお互いに愛する「覚悟」が…
Pの相棒(自称)としてそれが無ければ認めんぞ、橘ァ!(相棒と幸せに暮らせよ、橘ァ!)

お待たせしました
投下


――――

ありす「おかえりなさい」

P「……ただいま」

 翌々日の夜。帰宅すると普通にありすが迎えてきた。誕生日は確かに橘家に帰っていたのだが、その翌日から普通にこれか。

P「やっぱりいたのか」

ありす「実家よりもこっちの家の方が落ち着きますし」

P「うーん、ありすの家の方が広いはずなんだけどなあ」

ありす「私としてはPさんと一緒の方がリラックス効果高いんです」

P「それ、ご両親の前で言っちゃダメだからな? 特にお父さんの前では。俺だったら娘にそんなこと言われたら精神崩壊しちゃう」

ありす「Pさんは溺愛しそうですもんね……でも私たちの子供が大きくなったらちゃんと子離れしてくださいね?」

P「色々早すぎるんだよなあ」

 この子の将来設計、いつの間にか子供が大きくなるところまで進んでやがる。

ありす「それよりも、です」

P「……ああ」

 ありすの表情だけで言わんとしてることがわかる俺も相当手遅れなんだと思う。


 当たり前のように、俺とありすは唇を重ねる。ただいまのキス。一日ぶりのキスだけど、やけに久しぶりに感じた。

 ああ、もうありすがいるのが当たり前の日常になってしまってるなあ。

ありす「私もただいま、です」

P「ああ、おかえり」

 唇を離して、頭を撫でるとありすは幸せそうに言った。


――――

 昨日はカップラーメンで夕飯を済ませたので、ありすの手料理が暖かく体に染み渡る。

 今日は肉じゃが。家庭によって味が違うわけだが、ありすの作る肉じゃがはかなり好きな部類に入る。

 っていうかかつてのイチゴパスタ以外はありすの料理は好きなものばかりだ。まゆちゃん本当にありがとう。

 イチゴ料理もたまにイチゴラザニアとかとんでもないものが出てくるけど、味はなんと美味しいのである。まゆちゃん、本当に本当にありがとう。

 そんなご馳走を平らげて、ソファーでありすを抱きしめながらゲームをしていると、ふと今の心地よさが幸せというものなんだと考えたりした。

P「あー、なんかもう戻れないなあ」

ありす「何がです?」

P「ありすの料理がある生活が当たり前になりすぎて、さ」

ありす「戻る必要はないので心配ないですよ」

 胃袋が握られるってこういうことを言うんだな。身を以て実感してる。小学六年生に握られるのはどうかと思うが。

 ふと時計を見たら結構良い時間である。基本的に俺が仕事終わるのが遅いのでちょっとご飯食べてちょっと色々としたらすぐに寝る時間になってしまう。

P「んー、そろそろ風呂入って寝るか」

ありす「一緒に入りません?」

P「ダメだ」

ありす「むー、そろそろいいじゃないですか」

P「まだそろそろも何も始まってません」

ありす「た、確かにまだですけど、頑張れますよ?」

P「うーん、話が変わってる気がするなあ」

 何がまだなのか突っ込まないでおこう。たぶん下手に突っ込んだらダメなやつだこれ。

P「ほら、先に入っておいで。俺は洗い物とかしておくから」

ありす「むぅ……わかりました」

 ご不満そうな表情でありすはお風呂場に向かっていってくれた。
 これで一安心。

 ……最近、ちょっとやっぱりまずい傾向にあるよなあ。


――――

 ありすがお風呂を上がって、その後に俺もお風呂に入る。効率から言えば、髪の長いありすは髪を乾かすのに時間がかかるため、俺がお風呂入ってる間にドライヤーを使ってもらうのがスムーズというわけだ。

ありす「あ、Pさんおかえりなさい」

 俺もドライヤーで髪を乾かして寝室に行くと、ありすはベッドでタブレットをいじりながら待っていた。

P「ありす、寝る前にタブレットいじってると眠り浅くなるぞ?」

ありす「夜間モードにしてブルーライトカットしてるので大丈夫ですよ」

P「それ、効果あるのかなあ」

ありす「睡眠は精神的なものが大切だから効果あるんじゃないですかね?」

P「信じる者は救われる、と」

ありす「プラシーボ効果とも言います」

 なんか違うと思うんだけどなあ。

ありす「じゃ、寝ましょう?」

P「すぐ寝るなら待ってなくても先に寝ててよかったのに」

ありす「そんな意地悪、言わないでくださいよ」

 俺の言葉にありすは口を尖らせる。まあ、何を待っていたのかをわかりきってて言ったのは確かに少々、意地が悪かったかもしれない。


P「よいしょ、と。悪かったって、ごめんな」

ありす「……わかってるなら、いいです」

 俺は布団に入りながらありすの頭を撫でる。それだけでお姫様は幾分か機嫌を取り戻したようだ。

ありす「Pさん……」

 上気した顔でありすは目を閉じる。

 そんなありすに、俺は躊躇いもなく唇を重ねる。

ありす「んっ……」

 おやすみのキス。もう毎晩することになってしまっているが、一昨日のキスを思い出して、俺の心臓の鼓動が早くなる。

 いや、一昨日のことがなくても、ありすとキスをするのはいつも緊張する。

 それは小学生の少女とキスをするという背徳感。自分の担当アイドルとキスをするという背徳感。いや、それ以上に、目の前の少女が愛しくて。

 これ以上考えてはいけない。最後の一線を越えそうだ。

 思考を中断するために、俺は唇を離した。

P「おやすみ、ありす」

 言いながら、頭をまた撫でる。前まではこうして眠りに入っていた。

ありす「……まだですよ」

 しかし、お姫様は不満らしい。なんとなく、こんな風になる予感はしてたけども。


ありす「一つ大人になった、って言ったじゃないですか」

 今度はありすの方からキスをしてきた。ありすの珍しい行動に思考が一瞬停止した。

 いつもならキスをするのは俺の方からだった。ありすが求めて、俺に気付かせてキスをさせるのがいつもだった。

 不意打ちで考えることができなかった。ありすが舌を入れてきても、俺はそのまま受け入れてしまった。

 遅れて、ああ、またしてしまったと気がつく。

 生々しいキス。12歳の少女とするには不釣り合いなキス。でも、嫌な気はしない。するわけがない。

ありす「んんっ……」

 舌を絡めながらありすは抱きついて足も絡めてくる。それに応えるように俺もありすの舌を味わうように自らの舌を伸ばし、さらに抱き締め返す。

ありす「ぷはっ……ぅんっ……」

 息が続かなくなって、一度口を離した。でも、まだ足りない様子なのは見なくてもわかった。

 今度は俺の方からキスをする。舌を伸ばす。ありすの口腔内を蹂躙するように舌を暴れさせる。

 お互いの口もとが唾液でベトベトになっても、俺とありすは盛ったようにキスを三度、四度とした。

ありす「はぁっ……はぁっ……」

P「……ごめんな、苦しかったか?」


 唇を離して、ありすは荒い息をする。肺活量をアイドルとして鍛えていても12歳の少女。俺が一瞬我を忘れて唇を貪ったのは、きっと苦しかっただろう。

ありす「いいんです、こうしてられて、私、嬉しいです……」

 昼間見せる子供らしい笑顔とはまた違う笑顔を見せて、ありすは言う。その妖艶さに、思わず唾を飲んだ。

ありす「Pさん……私、Pさんにだったら全部、捧げてもいいです」

 続けて、そんなことをありすは言う。いや、ダメだ。これはダメだ。

P「ありす、」

ありす「私、すっごくドキドキしてます」

 制止しようとして言った言葉をありすが遮った。

 寝ている状態で抱き締めていると、どうしても片手で抱き締めることになり、もう片手はフリーになる。そのフリーな片手を、ありすは手に取って。

 俺の手のひらを胸に当てた。

P「お、おい、」

ありす「わかりますか? Pさんのせいで、こんなにドキドキしてるんです」

 パジャマの上からでも、少女らしく膨らみ始めた柔らかな乳房の感触がわかった。
 いや、厳密に言うとただ柔らかいわけではない。強い弾力があって、張りがあって。まるでまだ青い果実のような禁断の感触。

ありす「このドキドキも、Pさんのものです。私は全部、Pさんのものです。だから――」

P「ダメだ」

 今度は俺がありすの言葉を遮った。絞り出すように、理性をフルスロットルで回転させて。


ありす「……なんでですか? 私が子供だからですか? アイドルだからですか?」

P「どっちもだ。それより、まだ、色々早いんだっての」

 俺は諭すように言う。その間も俺の手のひらはありすの小さな胸の感触を味わい続けてるわけだから端から見たら説得力皆無だけど。

P「例えば普通に付き合ってたとして、ありすが俺の家に来てからまだ一ヶ月ちょっとだろ。階段を何段飛ばしで上っていくつもりだ」

 今のありすに対して、まだ子供とか、アイドルとプロデューサーなんて言っても通じないのはわかりきってる。だから、理性の中の情報を全力で検索して、理論を組み立てて、納得させるしかない。

 こんな理論、その場しのぎでしかないけど。

ありす「……」

 じーっと、ありすは俺の目を見つめる。

ありす「……わかりました。そういうことなら、仕方ないです」

 案外あっけなく、ありすは退いた。もうちょっと理屈をこねないといけないかな、と覚悟していたのだが、杞憂だったか。

ありす「寝ましょうか」

P「ああ、そうだな」

ありす「あ、でも……あと一回だけ、キスしましょう」

P「……わかったよ」

 結局、その後したキスは一回じゃ済まなかったけど。

 というか寝る直前に思ったけど、そもそも俺とありすって付き合ってないよね?


――――

ちひろ「おい」

P「はい」

ちひろ「入れる直前じゃないですか」

P「頑張って耐えてます」

ちひろ「なんとなくそんな気がしてましたけど!」

P「はい」

ちひろ「というかどこからどう見ても付き合ってる会話なんですけど!?」

P「でも、まだそういう告白とかしてないじゃないですか」

ちひろ「中学生か! っていうかありすちゃん的にはジューンブライドイベントの時に告白してPさんがOKした的な認識ですよ!」

P「あー、うん、やっぱりそうなりますよね」

ちひろ「断言します。今のありすちゃんはPさんの彼女です」

P「なんかそれ、すっごい犯罪臭しません?」

ちひろ「犯罪者一歩手前の分際でそれ言います?」

P「酷い扱いですね」

ちひろ「事実ですから」

P「不可抗力、っていうのは……はい、往生際が悪いですね、すみません」

ちひろ「ちゃんとわかってるならいいです」

P「なんか怒ってません?」

ちひろ「怒ってません」

P「は、はい」

ちひろ「それで? この話的にはありすちゃん納得して解決したように見えますけど」

P「それが、まったく解決しなかったんです……」

投下終わり
最近なんかこのありすちゃん大人しかったからそろそろ勢いを取り戻してくれないと

投下


――――

ありす「ふふふっ……今日も元気ですね……」

 次の日の朝。まどろみの中でありすの嬉しそうな声を聞いた。

 まあ、やってることはわかる。もう慣れた。慣れてしまってはいけないのだけど。

 ありすは今日も俺の煩悩の元気具合をにぎにぎして確認しているのだ。いい加減、誰かありすに教えてあげてくれないかな。

 まあ、俺は事なかれ主義を貫くのが一番安全だと思うので、寝たふりを続ける。というか、まだ起きるには早い時間だから寝ていたい。

ありす「……起きてない、ですよね」

 ありすの言葉にビクッとしかけたが、俺が半分起きてることに気がついたわけではないみたいだ。

 言ってすぐに、俺の手を握って、引っ張り始めた。

 何を、と疑問に思った瞬間、今度こそ寝てるふりを中断されそうになって、耐える。

ありす「んっ……」

 最初、柔らかいもふもふした感触があった。それはわかる、ありすのパジャマだ。

 だけど、その先。暖かかった。人肌の、しかし子供らしくちょっと高い体温。

 俺の手がありすの肌に触れていた。っていうか、これ、どこを触っている……?


ありす「……ん……」

 綿の感触がした。綿と人肌に締め付けられてる感触がした。人肌の方には毛、らしき感触がかすかに感じられる。

 もしかして、もしかしてこれ。

ありす「……ぁっ……」

 湿った感触がして確信した。

 何やっちゃってんのこの子。

ありす「ぅん……あっ……」

 俺の中指は湿ったところにありすの手によって押し当てられて、前後にこすられる。動きと共にありすが声を漏らす。

ありす「あっ……あん……」

 何やっちゃってんの。何やっちゃってんの。やばいってこれやばいって。

ありす「ん……あっ……ああっ……」

 クリっとした感触がしたと思ったらありすの体が大きく震えて、その後しばらくありすは固まった。手に、もの凄く液体の感触がする。

ありす「はぁ……はぁ……Pさんがいけないんですから……」

 俺、悪いことしてないよね。

 その後、ありすは俺の手をティッシュで拭いて、部屋を出て行った。朝食の準備などをするのだろう。

 どうしよう、このまま起きていってもどんな顔で会えばいいのかわからない。


――――

ちひろ「通報しますね」

P「まだ話し始めたばかりなのに!?」

ちひろ「Pさんがロリコン犯罪者っていうのは既にわかっていましたが、証拠も揃いました」

P「これはさすがに不可抗力ですよね!? 起きられないですよね、こんな状況!?」

ちひろ「とりあえずもうPさんが悪いです」

P「理不尽!? やっぱり怒ってますよね!?」

ちひろ「怒りは、まあありますよ? こんなロリコンがプロデューサーだったなんて、ショックです」

P「とりあえず、とりあえず! 俺の話聞いてください! 俺はどうにかしたいって思ってるんです!」

ちひろ「まあ、ちょっとくらい弁明聞いてあげましょうか」

P「なんだろう、このやるせない感じ……とりあえずありすの問題行動はエスカレートするばかりだったんです」


――――

 朝食の時はあんまり覚えてない。とりあえず平静を装うことはできてたと思う。

 おはようのキスも、いってきますのキスも、いつも通りできてたと思う。

 仕事もその日はあまり手に付かなかった。ありすの朝の感触を思い出して、反芻する度に自己嫌悪に陥る。

 ……やばい。本格的にやばい。

 誰だよこんなこと、ありすに教えたの。

 いや、たぶんネットで調べたんだろうな。フィルタリング機能、仕事しやがれ。

 そんな感じで一日中、ありすのことを考えていた。今日もありすは仕事もレッスンもオフなのが幸いだ。事務所で会ってたら俺は平静でいられる自信はなかった。

 それでも、帰宅する時間というのはやってくるもので、家に帰ればきっとありすと対面することになる。

 というか、事務所出た段階で『トイレットペーパーが切れそうなので帰りに買ってきてもらえませんか』なんてLINEが入ってる事実で、家に帰ったらありすが出迎えてくれることは確定だ。

 いや、もう考えるのはやめよう。別のこと考えよう。トイレットペーパーが切れるの早いなー。この前買ったばかりなのになー。

 あー、それはありすがいるからか。そうか、女子が家にいるとトイレットペーパーの消費速度が格段に上がるもんな。ってまたありすのこと考えてるよ。

 ダメだ、諦めよう。素直にありすを叱ろう。

 よし、と覚悟を決めて、ドラッグストアでトイレットペーパーを買って、いざ帰宅。

ありす「おかえりなさい、Pさん」

P「あ、ああ、ただいま」

 玄関のドアを開けると制服にエプロン姿のありすが出迎えた。ちくしょう、可愛すぎる。学校から直帰っていうのは実はあんまりないから制服エプロンは実はレアだったりする。

ありす「Pさん」

P「ああ……」

 促されて、そのままただいまのキスをする。

 結局、そのまま食卓につく俺であった。


――――

 晩ご飯のおかずはレバニラ炒めと餃子だった。餃子は既製品を焼いただけじゃなくて、恐らくありすが自ら包んだ手作り餃子。それを羽根付きで焼いてた。

 料理スキル上がりすぎだろ。っていうかこのレベルのありすの師匠であるまゆちゃんはどんだけ料理できるんだよ。

 問題はその後だ。

ありす「やっぱりいくら私が三食作っていても、食事だけでは栄養が偏ると思います。なのでサプリ買ってきました」

 と言ってありすが出してきたサプリ。

 マルチビタミン剤。これはいい。
 亜鉛。うん、とりにくいもんね。
 エビオス錠。ビタミン剤飲むと胃腸弱くなるもんね……たぶんそうだよね?

ありす「ちゃんと飲んでくださいね?」

 笑顔で言われた。ちくしょう、断れない。

 というかありすが来てからもうずっと禁欲生活だ。そこにこんな着火剤放り込むなんて、無知故の残酷さか。頼む、無知であってくれ。

 結局、叱れないままお互い風呂に入り、布団に入った。

 おやすみのキスは、やはり舌を絡め合うディープキス。

ありす「んむっ……」

 キスをした瞬間にありすが舌を伸ばしてきた。もう、今更拒否なんてしてられない。

ありす「ぅん……」

 素直に受け入れて、舌と舌を味わい合い、そして俺ももっとありすが欲しくなって。


 お互いにキスまでならセーフだという意識があるのか、キスは過剰なくらいに何度も何度も繰り返した。

ありす「はぁっ……ぁっ……」

 足を絡めるだけでなく、ありすは腰を俺の足に押しつけて、擦り付けていた。

 気付いていたけど、叱るべきだったけど、俺は結局、一言もその点には触れられなかった。

 言ったら、もう戻れないような気がして。

 ただ、キスだけなら、と何度も何度もありすとキスを繰り返して。

 そうして疲れて眠りに入った。

投下終わり

ありすちゃんがキスするの大好きだったらとっても興奮すると思います

ありすちゃんはRじゃなくてNなので

投下


――――

 次の日の朝。

ありす「あぅ……ん……」

 片手に暖かい濡れたものを触る感触で目が覚めた。でも、決して目は開けない。

 たぶん、ありすのしてることに俺が気がついた時点で、色々と終わってしまう気がする。

ありす「んん……」

 だから、ひたすらありすが俺の指を勝手に使って果てるのを待つしかない。

 ふと、思った。ありすが危機感を覚えたらやめてくれるんじゃないか、と。

ありす「あっ……んっ……」

 だから、俺は寝ぼけたふりをして、ちょっとだけ指を動かしてみた。

ありす「ぅぅん……!?」

 コリっとちょっと硬いものに触れた感触があって、その瞬間にありすの体が、見てはいないけど、間違いなくビクンと跳ねた。

ありす「ふぅっ……」

 そしてありすの体の力が抜けてぐったりとした。なんか、罪悪感がすごい。

ありす「……起きてこうしてくれたら、いいのにな」

 俺が起きてたら色々終わるんだぞ、わかってるのか。

ありす「……朝ご飯作らないと」

 しばらくそのまま荒い息を吐いて、落ち着いたらそんなことを言ってありすは日常に戻っていく。

 ……今日、ティッシュで俺の指、拭いてないんだけど。


――――

 何がやばいって俺の限界が近い。

 この問題は叱り方こそ難しいが、確実にありすを止めなければいけない。

 でも、俺はたぶん心のどこかでありすの暴走を役得と甘受してる側面もあるだろう。だから、言えばいいことを、言えない。

 禁欲生活だ、これがきっといけない。

 男には解放時間を作らないといけないのだ。解放してないから、ありすに対してまでそういうものを求めてしまうのだ。きっとそうだ。

 ちょうどいいことに、今日はありすは橘家に帰っている。

 ありすの両親は激務で家に帰ってもクタクタ、もしくは帰らないことすらある。なので家の中の掃除などはありすが自主的にやっているというわけだ。

 それで今日は橘家が散らかり始める頃合いということで掃除しに一度帰っているのである。

 僥倖だ。今日は抜けるだけ抜いてやる。

P「ただいまー、って言っても今日はありすはいないんだよな」

 と一人で言ってて寂しくなった。俺という男は面倒臭い生き物だな。

 するとブルっと携帯が震えた。画面を確認してみると、ありすからLINE。

ありす『ご飯は冷蔵庫にありますのでチンして食べてくださいね』

 料理してから行ったのか。小六の家事スキルじゃないな、ほんと。

P「ってか、家に帰った瞬間にメッセージ飛んでくるって、やっぱり俺の動きって監視されてるんだろうなあ……」

 今更ながらに思うが、結構怖いよな、これ。


P「まあ、いい、飯よりまずは性欲だ」

 とりあえず俺は寝室のPCデスクに座る。

 ありすがいる時には絶対開けない秘蔵フォルダ。外付けハードディスクの中に『業務』というフォルダを作り、さらにその中に英語のフォルダでわかりづらく秘匿してある。

 『新○美波似現役JD』というタイトルのファイルを探す。ありすが来るちょっと前にアダルトサイトで購入したが、まだ中身を拝見していないのだ。

 そして、フォルダを開いて、明らかな異変に気がついた。

P「あ、あれ……ない……?」

 見慣れたはずのエロ動画ファイルが綺麗に消えていた。その代わり、何やら別のファイルが置かれている。見たことのないファイル。

 ダブルクリックして開いて見る。今更ながらだが、謎のファイルを開くなどセキュリティ意識の欠片もない行為だったけど、興味が勝ってしまった。

 それは、電子書籍のファイルだった。インストールした覚えのないリーダーが起動して、書籍の内容が表示される。

P「綺麗な表紙だな……ん!?」

 表紙だけは綺麗だった。少女の映っている幻想的な表紙。書かれている格言もなんかかっこいい。

 でも、数ページめくって、言葉を失った。

 ありすと変わらないくらいの少女が出ている、エロ漫画だった。ロリエロ漫画だった。

P「嘘……だろ……」

 もう誰の仕業なのか、確かめるまでもなかった。っていうか、パソコンにはパスワードをつけていたし、このフォルダに辿り着くなんて知っていなければ不可能だし、そもそもなんで犯人はこんな漫画のこと知ってるんだよ。

P「あんまりだ……あんまりだぁぁぁ……美波似の現役JD素人モノなんて最高の動画がぁぁあ……」

 ゴミ箱も探した。当然ながらなかった。たぶん、復旧不可能だろう。

 泣く泣く、俺は犯人の残したエロ漫画を使わせてもらうこととなった。案外いけた。こういうのも悪くないな、うん。


――――

P「ということがあって、ありすにどう対応していいのかわからないんです。それが今回の悩みです」

ちひろ「突っ込みたいところがありすぎるんですけど」

P「はい」

ちひろ「まず、無難なところから言わせてもらいますね」

P「はい」

ちひろ「担当アイドルを性的な目で見るな」

P「仕事には持ち込まないように、プライベートで頑張ってガス抜きしてるんですよ!」

ちひろ「他の子の似てる動画集めてたりしませんよね?」

P「今となっては電子の闇に葬られたので、真実も闇の中で」

ちひろ「おい」

P「でも、でもこれ俺被害者ですよね!? しかも健気に頑張ってますよね!?」

ちひろ「うーーーーん、もうなんというか、ありすちゃんもPさんも、二人ともダメです」

P「俺もですか!?」

ちひろ「だって、この問題、Pさんがヘタレなだけですよね」

P「うっ……」

ちひろ「ありすちゃんにきちんと言えない、流されてばかり、そしてしかも結局ありすちゃんのような年代の子の出てるアダルト漫画で性欲を発散している。Pさん、ダメダメじゃないですか」

P「怒ってますよね……」

ちひろ「怒ってるんじゃなくて、めちゃくちゃ不機嫌なだけです。Pさんがそんな人だったなんて、幻滅しました」


P「で、でも、俺も一人の男なんですよ! 可愛い女の子がいればそりゃ、感じるものがあるに決まってるじゃないですか!」

ちひろ「私にもですか?」

P「無論ですよ! ちひろさんに似たAV女優の名前言えますよ!」

ちひろ「さすがにPさん気持ち悪いです」

P「ぐっ……」

ちひろ「まあ、百歩、いや、千歩譲ります。問題はありすちゃん、ですよね?」

P「……そうです、なんとかしたいんです、本当に。俺が煩悩の塊だったとしても、担当アイドルに手を出すほど公私混同してません」

ちひろ「ほとんど手を出してるようなものですけどね?」

P「うっ……まあ、でも……こんなこと、さすがに文香やまゆちゃんとかに相談できるわけもないし……そもそもアイドルの子にも他のプロデューサーにも言えるわけもなくて……」

ちひろ「それで私を頼ったわけですか」

P「なんか女性的な目線から何かアドバイスください……打開策ください……毎晩のキスの度に精神すり減らして耐えてるんです……もう限界です……」

ちひろ「アドバイスって言っても……ん?」

P「どうしました?」

ちひろ「いえ、ちょっとメッセージが……え゙」

P「……ちひろさん? 顔真っ青ですけど大丈夫ですか?」

ちひろ「いいいいいいやなんでもないですよ!?」

P「……すっごい冷や汗かきながら言われても」


ちひろ「なんでもないですっ! いやー、そうですねー、ありすちゃんのことについてのアドバイスありますよ、はい!」

P「ほ、ほんとうですか!」

ちひろ「いいですかPさん、13歳以下と合意の上でも肉体関係を持ったら犯罪です」

P「はい。それは重々承知してます。調べましたし」

ちひろ「調べたんですか……まあ、でもよく考えてみてください」

P「んー……?」

ちひろ「犯罪は、バレなければ犯罪ではありません」

P「……はい?」

ちひろ「ありすちゃんのこと、責任取りましょう。そして、隠しましょう。隠すなら、私も協力します」

P「いやいやいやいや!? ちひろさん、いきなり何を言い始めるんですか!?」

ちひろ「もう後に引けない状態まで来てます! Pさんも腹くくってください! 女性的な目線からは以上です!」

P「……マジですか」

ちひろ「マジです」

P「……早苗さんに通報とかは?」

ちひろ「しません。約束します」


P「……そうは言われても……」

ちひろ「いいから! 今日はもう帰りましょ? ね? 家でありすちゃんも待ってるでしょ?」

P「どうしたんですか急に……」

ちひろ「いいですから! 早く帰らないと先に鍵しめちゃいますよー?」

P「ちょ、準備早っ!? わかりました、わかりましたって!」

ちひろ「では帰りましょうか!」

P「とりあえず今日は帰りますけど、また話聞いてくださいね!? これ、頼れるのちひろさんしかいないんですから!」

ちひろ「後日談なら聞きますから、早く帰りましょう!」

P「後日談って……」


――――

 こうして、俺の相談は強制的に終了した。話しただけで全然アドバイスもらえなかった。

 今から家に帰ると、きっと今日もありすがいるだろう。おかえりのキスをして、ありすの作った夕飯を食べて、寝る前にきっとまた……

 いつまでもつかな、俺の理性。


――――

ちひろ「なんで、わかったんですか……」

『だって、ちひろさん、わかりやすすぎますよ?』

 電話越しにでも声の温度がとてつもなく冷たいのがわかった。ここまで恐ろしい少女だとは思ったことがない。

ちひろ「あのデータも……」

『ダメですよ、パソコンのパスワードを数字八桁に設定していては。しかもあの人の誕生日、なんてヒントを入れていては』

 淡々と、アドバイスするように少女の声で言う。なのに、どうして、ここまで恐ろしいのか。

ちひろ「中身、どこまで見たんですか」

 たぶん、パスワードをきちんと設定していたとしても、関係ないと思う。

『ぜーんぶコピー済みです。大丈夫ですよ、私としてもアイドルを続けたいのでこれを公表して事務所倒産、なんてことはしませんから』

 少し、声色に温度が戻った。優しさが見えた。

ちひろ「……それならよかっ――」

『でも、なんで、パスワードがPさんの誕生日だったんでしょうかね?』

 それに僅かに安堵した瞬間、声の温度が急降下した。

ちひろ「ひっ……」

 温度差に思わず、半分以下の年の少女に対して、おびえた声が漏れる。

『ちひろさんも、私の敵ですか?』

 きっと、目の前にいたらギラついた眼光で睨み付けられていたかもしれない。12歳の少女が出せるとは思えない迫力の眼光で。

ちひろ「ち、違いますよ? 大丈夫、私は応援してますから」

『……ならいいですけど。くれぐれも、邪魔したら……わかってますね?』

 それだけ言うと、電話はプツッと切れた。


 一気に脱力した。けれど、冷や汗が止まらない。

 知られたデータも重大すぎる。会社存続に関わるレベルだ。
 そして、あの少女はどこまで知っているのか。

 恐らくあの少女以外も誰も気付いてないはずの、この恋心。
 それがいとも容易く、ぽっきりと折られた。

 それ以上に、どこまであの少女が把握しているのか、底が見えなくて、深淵の闇を覗いたようで、寒気が止まらなかった。

 とりあえず、思えることは一つ。

ちひろ「Pさん、ありすちゃんを幸せにしないと、ダメですよ……」

投下終わり

「ちひろさんって絶対Pさんに気があると思ってました」

後日談投下


――――

まゆ「お疲れ様です」

ちひろ「あ、まゆちゃんお疲れ様。どうしたの? CuPさんはまだ戻らないし、レッスンまで時間あると思うんだけど……」

まゆ「CuPさん、明日から出張ですからねぇ。荷物とか整理しておこうかと思いまして」

ちひろ「アイドルの仕事じゃないと思うんだけどなあ……」

 言いながらまゆちゃんはCuPさんのデスクを整理し始めました。普通にアイドルに鍵付きチェストの鍵を持たせてるのはセキュリティ上よろしくないと思うので、今度注意しないといけませんね。

ありす「お疲れ様です」

ちひろ「ありすちゃんもお疲れ様。どうしたの? レッスンにはまだ早いしPさんはまだ戻らないけど……」

ありす「Pさんのこの後は文香さんの仕事の打ち合わせですのでPさんが来るまでに資料を整理していようかと……」

ちひろ「うーん、ありすちゃん、私頭痛くなってきました」

ありす「そうですか。風邪なら早退した方が良いと思います」

 言いながらありすちゃんも普通にPさんのチェストの鍵を取り出して整理し始めました。

 この事務所、何かがおかしい気がします。


――――

P「くぁー、終わらない」

ありす「コーヒーおかわり淹れましょうか?」

P「あー、ありす頼む」

ありす「了解です」

 普通にありすちゃんはPさんのコーヒーを淹れてきています。豆を挽いて美味しいコーヒーを作ってきてくれます。

 ……当たり前のようにずっとありすちゃん、Pさんがいるとき事務所にいるんですけど。

 帰る時はいつも一緒……

 そろそろ疑いの目が向けられてますよ。


――――

ありす「はい、あーん」

P「うん、美味い。出汁巻き卵はありすが作るのが一番だな」

ありす「Pさんと卵の趣味が合って良かったです」

 ふふっとありすちゃんが笑いました。

 そんなありすちゃんをPさんが優しく撫でて、ありすちゃんは幸せそうな表情になります。

 幸せそうなありすちゃんを見て、Pさんも幸せそうな表情をします。

 あの、ここ事務所の中なんですけど。

 隠す気ないですよね。


――――

P「ちひろさん、相談があります」

ちひろ「はい。ではまず、顔面を殴らせてください」

P「はい……はい!?」

ちひろ「はいって言いましたね? いきますよ?」

P「な、なんでですか!? 俺、何か悪いことしましたっけ!? そんな怒らせるようなことしましたっけ!?」

ちひろ「大丈夫、10連でSR確定です」

P「いやそんな釘パンチみたいに言わないでくださいよ!? 俺から出るSRってなんですか魂ですか!?」

ちひろ「じゃあ一連目いきますよー」

P「ストーーップ! ダメ、ダメ、暴力ダメ落ち着いて」

ちひろ「……冗談ですよ、そんなにおびえないでくださいよ」

P「目が冗談じゃなかったんですけど」

ちひろ「イライラしてるのは本当ですから☆」

P「ええっ」


ちひろ「どうせ、相談なんてわかってますからね。ありすちゃんでしょう? ありすちゃんのことなんでしょう?」

P「まあ……そうなんですけど……なんでそんなに怒ってるんですか」

ちひろ「さあ? でもこれだけは言っておきます」

P「は、はぁ……」

ちひろ「事務所内でいちゃつくな」

P「い、いちゃついてませんよ!?」

ちひろ「ほー? ほーーーー? 事務所内であーんしたり、ありすちゃんを膝の上に乗せて抱き締めたまま仕事したり、何かある度にPさんが頭を撫でてありすちゃんがはにかんだり、そんな砂糖を詰め込んで煮込んだみたいなことを事務所で毎日やっておいて? これがいちゃついてないと?」

P「す、スキンシップの一環で」

ちひろ「ほーーーーー?」

P「怖い、怖いですよ、ちひろさん。そんな芳乃ちゃんみたいにならないで」

ちひろ「……まあ、百歩、いや千歩譲って、良いとしましょう」

P「千川だけに?」

ちひろ「譲るのやめましょうか?」

P「ごめんなさい」


ちひろ「はぁ……それで? 今度は何がありました?」

P「いや、あんまり言えないことなんですけどね……この前の相談の後、まあ、その、ありすと関係持ちまして」

ちひろ「ついにやりやがったか」

P「なんかその後から事務所で俺とありすの関係を疑われてるような気がするんです」

ちひろ「完全にただの自業自得だっ!!」

P「ひぇっ」

ちひろ「Pさん! あなたが! 場所をわきまえず! ありすちゃんと毎日いちゃこらしてるからでしょうがッッ!!」

P「俺はそんなつもりじゃ……」

ちひろ「あー、はい、ヤっちゃったんですね。小学生の児童とヤることヤっちゃったんですね。はーーー……」

P「児童って言われるとなんかもの凄く罪深い響きが」

ちひろ「響きどころか実体まで罪そのものです。まあ、最近確かに距離感近すぎるとは思いましたけど、以前の相談から限界まで早すぎませんか」

P「いや、実はあの相談した夜に……」

ちひろ「早すぎですよ!?」

P「だ、だって、ありすが家で待っててちひろさんとの関係疑われて、そんなことないって言ってたら、その、ずるずると……」

ちひろ「うわぁ……」

P「ドン引きしないでくださいよ……」

ちひろ「ドン引きしてるのは色々と……まあ、いつかこうなることは想像してましたけど……」


P「やっぱり距離が近すぎますかね? なんかもう普通にしてるつもりなのに色々と周りに疑われて……」

ちひろ「疑いも何も有罪ですけどね?」

P「最近、感覚が麻痺してきてるのでどうしたらよいかな、と」

ちひろ「はぁ……もう無理じゃないですかね?」

P「そんな、見捨てないでくださいよ」

ちひろ「はいはい……じゃあ、CuPさんに対するまゆちゃんのアタック、どう思いますか?」

P「アイドルとしてはあまりよろしくないですね」

ちひろ「そこはちゃんと認識あるんですね。でもPさんとありすちゃんがしてることは一緒レベルです」

P「えっ!?」

ちひろ「自覚ないんですか。なら、その行動をCuPさんとまゆちゃんに置き換えて、ダメだって思うものはしなければいいんじゃないですかね?」

P「なるほど……助かりました。でも、これだと事務所内でやってることほとんどアウトになりません?」

ちひろ「だからそう言ってんだろ」

P「ひぇ……」

ちひろ「ああもう、爆発しやがれです。楓さんと飲んできます!」


 そのままちひろさんは乱暴に出て行ってしまった。なんかもの凄く怒らせてしまった気がする。

 明日、きちんと謝らないとな……

P「……でも、なんであんなに怒ってたんだろ」

終わり

ハッピーエンド☆

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