長門「YO」 (27)


長門「制服着て座ってるだけなら猿でも務まるぞ能無しが」

提督「……」

長門「YO お前より風呂場のワラジムシの方がまだ可愛げがあるな」

提督「……」

長門「今すぐ制服脱いで虫にでも転生したらどうだ この蛆虫め チェケラ」

提督「……」

長門「……こんな感じか?」

島風「……」

雪風「……」

秋雲「humm……」

金剛「ンー、どうなんデスかネー」

武蔵「私はいい線行っていたと思うが」

瑞鶴「何か違う気がするのよね」

大和「そうね。テレビで見たのはもっとカッコよかった気がするわ」

長門「ラップとやらは難しいものだな」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1485437354

加賀「思うに、とにかく悪口を言えば良いというものではないんじゃないかしら」

長門「そうなのか?」

瑞鶴「あーそうそう! もっとこうお客さんが盛り上がる感じなのよ」

長門「ふむ」

大和「今のじゃ駆逐の子たちはまったく盛り上がってないわね」


子日「……」

春雨「……」

巻雲「no good」


長門「言葉で観客を盛り上げる、か。なかなか難しいものだな」

武蔵「悠長な事は言っていられないぞ。深海との約束の日までもうあまり時間がない」

加賀「太平洋が懸かっているのよ。魚どもに負けるわけにはいかないわ」

長門「わかっているさ」

陸奥「とは言ったものの、何をしていいのか解らないんじゃ練習しようがないわよ」

長門「だからこうして皆で相談しているんだろう。提督だって忙しいなか私達に付き合ってくれてるんだ」

提督「……」

大和「見ていてください提督。私たちは例え口先でも深海棲艦に負けることなどありえません」

加賀「その通りね。誰が海原の王者であるのか、深海魚共に思い知らせてやるわ」

翔鶴「瑞鶴、他に何かラップについて知っていることはないの?」

瑞鶴「うーん…、さっきから思い出そうとしてるんだけどね。私と大和も深夜番組でチラッと見ただけだし…」

加賀「使えないわね」

瑞鶴「なっ…、なんですってぇ!」

加賀「事実を言ったまでよ」

瑞鶴「あ、あんたなんてさっきからボケーッと座ってるだけじゃない! 何の役にも立ってないのにでかい口叩いてくれるわね!」ガタッ

長門「おいおいおい」

翔鶴「ちょ、ちょっと瑞鶴……」

瑞鶴「止めないで翔鶴姉! いつまでも先輩風吹かせて偉そうに…! そういう所が気に食わないのよ!」

加賀「そうね、私は先輩。あなたは後輩。世代交代なんてないのよこの若輩」

大和「!」

瑞鶴「こ、こんのぉぉ!!」

加賀「コンロ? コンロなら向こうよ七面鳥。ほんと調子だけは一丁前なのがあなたの特徴ね」

大和「!!」

瑞鶴「がああああああ!!!」

翔鶴「瑞鶴ー!! ストップ!! ストーーップ!!」

瑞鶴「ふっざけんじゃないわよこの性悪女!! いい歳してサイドポニーなんて似合ってないのよバーカ!!」

加賀「は? 痛いツインテールが何言ってるの」

武蔵「おいちょっと待て」

長門「いきなり多方に宣戦布告するのはよせ」

大和「ちょ、ちょっと! 今の…! 今のよ!!」

瑞鶴「ポニーテールは引っ込んでて!」

大和「えっ…違うの! そういう話じゃなくて!」

榛名「やはり子供だましなどしないストレートロングこそ最強ということでしょうか」

長門「ふっ」

ビスマルク「わかってるじゃないの」

陸奥「長門たちには悪いけど、長い髪なんて鬱陶しいだけよ」

比叡「あ、陸奥さんもそう思います?」

霧島「奇遇ですねー、私も同意見です」

大和「話広げないで!」

金剛「わかってないデスネー、シスターズ。最強はこのワタシのシニヨンヘアーデース!」

蒼龍「あれシニヨンなの?」

飛龍「違うんじゃないかな」

赤城「ドーナツがくっついてるのだと思ってましたが」

加賀「まあ色物ね」

瑞鶴「ぷっ、それをあんたが言うとか……」

加賀「あ?」

瑞鶴「お? やるか?」

大和「お 前 ら 全 員 黙 れ ッ ッ ッ !」バンッ

―――
――


加賀「私は先輩。あなたは後輩。世代交代なんてないのよこの若輩」

加賀「コンロなら向こうよ七面鳥。ほんと調子だけは一丁前なのがあなたの特徴ねくたばれボンクラターキー二割引き」

大和「そうこれ! これよ!」

瑞鶴「なんかさっきより微妙に腹立つんだけど」

大和「でもテレビで見たラップと似てないかしら」

瑞鶴「んー、言われてみればそうかも。音の感じが」

長門「音の感じ?」

瑞鶴「そう。先輩と後輩とか、調子と特徴とか」

武蔵「なるほど、子音か」

赤城「言葉遊びの要領ね」

蒼龍「トイレに行っといれ、みたいな?」

鳳翔「ぷっ…ふふふ、ちょっと蒼龍さん」

瑞鳳「今ので?」

飛龍「沸点低いなー」

長門「だいたいは理解した。ようは親父ギャグのノリで悪口を言えばいいんだな」

大和「まあそうなるのかな…多分だけど」

長門「よろしくカス提督 アルミ缶の方が遥かにお前より価値があるみかん」

長門「カエルがひっくり返る それがお前の死に様だ 烏骨鶏のクソみたいに滑稽だな」

提督「……」

武蔵「子音を合わせろと言っているだろ」

瑞鶴「それじゃただの親父ギャグよ」

長門「むぅ……」

蒼龍「ただの親父ギャグかなこれ」

飛龍「違うんじゃないかな」

長門「おい提督 みすぼらしい姿だまるで廃屋 帝国海軍の恥めこのかざり職」

提督「……」

長門「聞いているのかボンクラ 鏡を見てみろ馬鹿面 士官学校からやり直せナマクラ」

提督「……」

長門「食卓に提督の食肉を並べ食欲ある孔雀に食わせ地獄に突き落としてやるから告別の題目でも考える事だな提督 チェケラ」

提督「……」

瑞鶴「おー」

大和「そうそう! それっぽくなってきたわ!」

武蔵「さっきの悪口より垢抜けたように聞こえるな」

金剛「言葉からリズムを感じるようになりましたネー」

長門「ふふん。コツさえ掴めればこの長門、ラップなど造作もない」

加賀「でも駆逐艦の反応はイマイチよ」


敷波「……」

村雨「humm……」

叢雲「fxxk」

五月雨「no good」

海風「……」


長門「何? まだ足りないというのか」

翔鶴「駆逐の子たちは耳が肥えてるみたいね」

蒼龍「何人か中指立ててるけどどういう意味なのかな」

飛龍「なんだろ。頑張れってことじゃない?」

長門「駆逐たちの激励を無下にはできん。瑞鶴、大和、他に思い出せることはないのか」

瑞鶴「えー…、そんな事言われてもねぇ」

大和「うーん、テレビに比べて言葉が薄味なのかな」

武蔵「今のでまだ薄味なのか?」

長門「思いつく限り口汚く罵っているが……」

大和「ううん、違うの。なんていうのかな、長門が言う事って表面的なことばかりじゃない?」

瑞鶴「あー確かにそうかも。テレビだともっと内面を抉るようなこと言ってたわね」

大和「ええ。外見を貶すより相手の生き様について物申すとか、そんな感じだった気がするわ」

瑞鶴「お前かっこ悪いなー、っていうより、お前のCD聞いたけど全然良くなかったわ、とか。お前偉そうなことばかり言ってるけど自分も出来てないじゃん、みたいなね」

加賀「なるほど。外見より相手のアイデンティティを殴りつけたほうがより響くということね」

長門「少将にもなれないショボい少佐 それがお前だこの小便」

提督「……」

長門「海軍省からの嘲笑 受けて左遷されたのが無能の証左 チェケラ」

提督「……」

長門「こんな感じだろうか」

瑞鶴「うん、いい感じじゃない」

加賀「言葉のエッヂが立ってきたわね」


磯風「……」

山雲「humm……」

沖波「Yes and no」

夕雲「no good」

初春「:(」

時津風「no」

春風「fxxk」


武蔵「ようやく駆逐艦の反応にも変化ありか」

長門「僅かな変化だが大きな一歩だな」

蒼龍「さっきからたまに聞こえるはっく?ってなんなの」

飛龍「八苦? 苦しいけど頑張ってってことじゃない?」

長門「駆逐たちからの期待も厚い。まだまだ精進しないとな」

金剛「それはどうですかねネ……」

比叡「はっくの意味が解るんですかお姉様?」

金剛「え…ええまぁ…HAHAHA」

武蔵「若者文化にも精通しているとはさすがだな」

加賀「で、どういう意味なの?」

金剛「え、それはその……」

長門「どうした。なんで口ごもるんだ」

金剛「え、えーっとデスネ……」

瑞鶴「ぉあっっっ!!!!」

翔鶴「ひゃっ!?」

飛龍「うわっ!!」

蒼龍「なにもー! びっくりしたー!」

加賀「いきなり大声出さないでくれる?」

瑞鶴「今ので思い出した!! まざはっかーよまざはっかー!!」

長門「まざはっかー?」

瑞鶴「そうそう、テレビでラップしてる人たちがよく言ってた言葉よ」

大和「あー…、言われてみれば使ってた気がするわ」

瑞鶴「でね、これを言うと会場がドーッと盛り上がったの!」

長門「なんだと」

武蔵「魔法の言葉か」

加賀「いまいち信じられないわ」

瑞鶴「ほんとよほんと! 疑うなら試してみればいいじゃない」

長門「それもそうだな。駆逐の諸君、まざはっかー!」


朝雲「fxxk」

荒潮「you die」

清霜「fxxk」

初風「back off」

朝潮「fxxker」

山風「asshole」

野分「kill you」


加賀「……確かに盛り上がってるようね」

瑞鶴「ね? 言ったとおりでしょ?」

蒼龍「でもなんか殺気立ってない?」

武蔵「なに、箸が転んでもおかしい年頃というやつだろう。あのくらいの子たちならそういうものだ」

長門「ふふ、私の一言でこの大歓声か。胸が熱いな」

金剛「……」

長門「YO お前は無能の体現者 恥を撒き散らす街宣車」

提督「……」

長門「服装だけは一人前 でもその中身はショウジョウバエ」

提督「……」

長門「いやハエの方がマシかもな 腰にぶら下げたその刀 返上してきなまざはっかー」

大和「あーすごい、すごくそれっぽい」

瑞鶴「もう完璧よ完璧」

加賀「でも駆逐艦はまだお気に召さないようよ」


初霜「……」

黒潮「fxxk」

親潮「no good」

若葉「:(」


蒼龍「なんか評価も元に戻ってない?」

飛龍「やや厳し目になった感じあるね」

瑞鶴「あーもうどういうこと! 何が悪いっていうの!」

長門「もう一度まざはっかーで盛り上げてみるか」

金剛「そ、それは止めといたほうがいいんじゃないかナー……」

大和「もう私達から言うことなんてないわよ?」

武蔵「売られた喧嘩に乗った身とは言え、門外漢の一夜漬けではこれが限界か」

長門「しょうがない。不完全でも相手は待ってはくれないからな。このまま行くしかないだろう」

大淀「いえ、まだ諦めるには早いですよ」ガチャ

長門「大淀か」

加賀「その紙束の山……、まさかあなたこの為に資料を集めてきたの?」

大淀「はい。事務仕事は私の領分ですから。おかげで少々会議に遅れてしまいましたが」

大和「さすがね」

武蔵「頼りになる女だ」

蒼龍「そういえばうちの会議って大淀以外だれも調べたりしないし資料も作ってこないよね」

飛龍「めんどくさいからね」

大淀「さて、時間もあまりないのでかいつまんで説明させてもらいます」

長門「よろしく頼む」

鳳翔「お茶です。どうぞ」

大淀「あ、わざわざすいません」

加賀「それだけの資料を纏めるのは大変だったでしょう」

大淀「いえいえ、それほどでも。慣れているので」

赤城「大淀さんはいつも頑張っているんですね。でも休息も大切ですよ」

武蔵「そうだな。根を詰めすぎてはいざという時に戦えん」

ローマ「休息の取り過ぎで使い物にならなくなった戦艦もいるようだけど」

ビスマルク「……なんで私を見ながら言うのよ」

プリンツ「お姉さま、ちょっと暑くないですか?」

ビスマルク「そう? 私は丁度いいけど」

プリンツ「さすがにずっと強は少し……」

グラーフ「もう少しそっちへ行ってくれないか。狭い」

ローマ「会議にこたつを持ち込むような戦艦がどこで使えるっていうんだか」

ビスマルク「はっ! そういうセリフはずっと酒飲んでる自分の身内をどうにかしてから言ってもらいたいものね」

飛鷹「なんか耳が痛い事を言われた気がするわね……」

隼鷹「耳っがぁ~痛いぃとぉ~貴女はぁ言ぃうのぉ~」

ポーラ「わかあっちゃ~いるぅんだぁ~そんなぁこぉとぉ~」

隼鷹「されっどぉ~飲まずぅにぃ~いられぇぬ~性よぉ~」

ポーラ「我っらぁ~艦娘ぅ~悲しぃきぃ~乙女ぇ~」

隼鷹「んなはははははははは!!!」

ポーラ「うへへへへへへへへへ!!!」

蒼龍「はいはい、そーいうのは華麗に聞き流してー……これね、間宮さんとこの特製モナカ。運良く買えたの」

大淀「あー! これ大好きなんですよ! やだー嬉しい!」

瑞鳳「うそ買えたの!? いつ行っても売り切れなのに」

蒼龍「ふふふん、まあちょっと裏技をねー」

飛龍「あー…、朝飛ばしてた偵察機ってこれだったんだ」

蒼龍「あっ、ばれちゃった」

日向「ふむ……」

伊勢「……ちょっと日向、何メモってるのさ」

日向「蒼龍の話をちょっと。なるほど、瑞雲にはそういう使い方もあったんだな」

伊勢「いやいやいや、私達には無理でしょ。瑞雲は飛ばしても海上じゃなきゃ着艦できないよ」

日向「為せば成る、成さねばならぬ何事も、というやつだ。試す価値はある」

伊勢「その自信はいつもどこから来るの……」

大淀「んーこのあんこの爽やかな甘さ! お茶にも合うー!」

翔鶴「ふふ…、本当に美味しそうに食べるわね」

大淀「あー美味しかった! 蒼龍さん、本当にありがとうございます。今度お礼させてくださいね」

蒼龍「いえいえ、こんなに喜んでもらえたらこっちも嬉しいからね」

大淀「さて、時間もあまりないのでかいつまんで説明させてもらいます」

長門「よろしく頼む」

大淀「長門さんのラップに足りないもの。まず一つ目が自己アピールです」

長門「自己アピール?」

大淀「はい。ラップ、それも今回のMCバトルと呼ばれるような形式では、相手を下げるだけでなく、いかに自分が相手より優れているかをアピールすることも重要なんです」

加賀「なるほど。お前は弱い、私は強い。たから私の方が偉いんだと、そういう論法ね」

武蔵「解りやすくていい。喧嘩はそうでなくてはな」

長門「ふむ」

飛龍「っていうかこれMCバトルっていうんだ」

蒼龍「バトルってことは相手も反撃してくるのかな?」

大淀「えっ? え、ええ、はい。えっ? 知らなかったんですか?」

長門「初耳だぞ」

加賀「ちょっとどういうことなの瑞鶴」

瑞鶴「だ、だから私も深夜番組でチラッと見ただけなんだってば! 半分寝ぼけてたし!」

加賀「あなた、それでよく『ラップの事なら私に任せときなさい!』なんて調子のいいこと言えたわね……」

瑞鶴「元はと言えばあんたが深海の挑発に乗って『ラ、ラップ? 何言ってるのこの深海魚。ラップ?でも艦娘があなた達に負けることなんてあり得ないのよ』とか言い出したのが原因でしょ!」

飛龍「おっ」

赤城「けっこう加賀さんに似てましたね」

瑞鶴「しかもその帰りに『ね、ねぇ五航戦、あなたラップってわかる?』なんて私の袖掴みながら不安そうに聞いてきたくせに!」

瑞鳳「ぶっ」

陸奥「ふふふ」

蒼龍「加賀さん可愛い所あるじゃん」

加賀「おい今すぐやめろ」

大淀「次に足りないもの。それはフロウです」

飛龍「入ってないの?」

蒼龍「あーばっちいんだ」

陸奥「ちょっと長門、さすがにそれは不潔よ?」

長門「まてまてまてまて」

大淀「あ……、風呂ではなくてフロウです。歌い方や歌いまわし、といった意味合いの言葉ですね」

武蔵「そういえばシャンプーが切れていたから新しいのを入れておいたぞ」

大和「また!? もー武蔵使いすぎよ! あれけっこう高いんだから!」

瑞鶴「大和のシャンプーって匂いからして高級な感じするものね」

武蔵「いや……、私はそんなに使った覚えはないが……」

大和「口答えしないの! っていうか自分で買いなさいよ!」

翔鶴「……」

大淀「……こほん。現状の長門さんは、ただ適当に言葉を繋いではいませんか?」

長門「言われてみればそうかもしれないな」

大淀「MCバトルは曲に乗せて行う以上、曲のリズムに乗せたラップや言葉選びができているかが問われます」

大淀「また、対戦なので自分がラップできる時間も決まっています。よく使われているのは8小節を交互に二回ですね」

長門「ふむ……えっ」

武蔵「曲?」

大淀「えっ?」

大和「あー、言われてみると曲が流れた気がする」

瑞鶴「……確かになんかかっこいい音楽が流れていた気がするわ」

大淀「えっ? えっ?」

加賀「その曲とやらは絶対になければならないものなの?」

大淀「えっ……、いえ、曲やリズムを全く使わない場合もありますが、バトルの環境では一般的とは言えないようで……」

長門「まいったな……、曲なんて軍歌とクラシックくらいしか知らないぞ」

武蔵「何、私たちも昔はあれもないこれもないで何とかやったものだ。そうだろう長門よ」

長門「ふっ、違いないな。ならば使えるものを使うまでか」

大淀「えっ? えっ?」

蒼龍「やっぱり行進曲がいいんじゃない?」

飛龍「派手でいいよね」

ローマ「日本の行進曲じゃなきゃダメってわけじゃないのよね?」

ビスマルク「イタリアなんかよりうちのを使ったほうがいいわよ。退却とか縁起でもないわ」

ローマ「……面白いこと言ってくれるじゃないの。まずはあんたから退却させてやる」

アイオワ「それならMeの所がピッタリじゃない?」

サラトガ「Sure、Anchors Aweigh……まさに艦娘のための曲ね」

ウォースパイト「Ah……、出来ればEnglandのMarchも使って欲しいわね」

コマンダンテスト「それなら是非ワタクシの所もお願いするわ」

大和「あー……、まぁこうなるわよね」

陸奥「だったらメドレーすればいいじゃない」

飛龍「おっ、むっちゃん冴えてるー」

大淀「えっ? えっ?」

大淀「そして最後に足りないもの。それはエンターテイメントです」

武蔵「エンターテイメントだと?」

長門「戦いは遊びではない。なぜそんな物が必要なんだ」

加賀「生憎だけど、私達は深海魚どもをボコボコにして悔し泣きさせること以外興味ないわ。お祭りがしたいのなら他所をあたってちょうだい」

陸奥「武闘派ねぇ」

飛龍「無粋だねぇ」

隼鷹「どおっせぇ~泣ぁく~なぁら~笑いぃ泣ぁきぃ~」

ポーラ「それっがぁ~女ぁの~心ぉ~いぃきぃ~」

蒼龍「おっ、粋だねぇ」

大淀「長門さんたちのお気持ちも解ります。でも、楽しみがなければバトルは罵り合いとかわらなくなってしまいます」

大淀「もちろん、そのようなバトルが無いわけではありません。しかしそれは上限のない侮蔑と個人的な怨恨の精算です。ショーとしては見ていて気持ちのよいものではありません」

大淀「そもそも、勝敗を決するのはぶつけた言葉の量ではなく、観客からの歓声の量。つまり彼女たちを味方につけたほうが勝者となるのです」


陽炎「……」

江風「……」

高波「……」


瑞鶴「……え、マジ?」

大淀「はい。最後に観客の歓声が多いほうが勝者となります。いいですか、あくまでショーということを忘れてはいけませんよ?」

大和「そんなシステムだったの!?」

陸奥「無理じゃない?」

飛龍「全員ニコッともしないもんね」

翔鶴「この子達ってこんなに無口だったかしら」

赤城「反抗期でしょうか」

鳳翔「難しい年頃ですね」

瑞鶴「そんなにムスッとしてるとどこかの空母みたいになるわよ。ほらほら、ニコーってしてみなさい」

風雲「……」

翔鶴「……無反応ね」

蒼龍「ちょっと突いてみよっか……、えいっ」

風雲「fxxk」

飛龍「おっ」

蒼龍「えいっ えいっ」

風雲「fxxk fxxk」

陸奥「ふふふ」

飛龍「こういうおもちゃあるよね」

瑞鳳「ちょっと私にもやらせてよ。えいっ」

蒼龍「えいっ えいっ」

風雲「fxxk fxxk fxxk」

武蔵「……ははは」

長門「ふふ」

鳳翔「うふふ」

金剛「……」

とりあえずここまで

大淀「とりあえずは以上です。今お話した事を考慮しつつ、もう一度やってみてください」

瑞鶴「ええと……、なんだっけ」

武蔵「自己アピール」

加賀「風呂」

蒼龍「祭り」

大和「あと曲ね」

長門「やれやれ、課題は山積みだな」

武蔵「一つずつ潰していくしかないだろう。まずは音楽からいってみるか」

飛龍「CDでもかける?」

蒼龍「えー、なんか地味じゃない?」

長門「確かにな。深海の前でも流すんだ。CDなどでは最悪奴らにナメられる恐れもある」

加賀「それだけは我慢ならないわね」

大和「となると……久しぶりに私達でやってみる?」

長門「ふっ、なるほど楽団演奏か」

武蔵「うむ、派手でいいな」

赤城「あーいいですね! たまには演奏しないと忘れそうですし」

瑞鳳「っていうかもうちょっと忘れかけてるわよ。大丈夫かなぁ……」

加賀「上手く演奏する事が目的ではないのよ。とにかくでかい音を出して威嚇できればそれでいいの」

瑞鶴「そんな熊じゃあるまいし……」

武蔵「ならばティンパニくらいは欲しい所だ。あれがあると締まる」

陸奥「小物ならいいけどティンパニなんて積んだら砲を乗せる所なくなるわよ?」

長門「なら砲を置いていけばいい」

瑞鳳「えー、それはちょっと不用心じゃない?」

加賀「奴らバカだから大丈夫よ」

赤城「こういう時はわりと律儀に約束守ってくれますよね」

蒼龍「サッカーのときだっけ? 五時間くらい遅れていったのにまだ待ってたしね」

飛龍「めっちゃ怒ってたけどね」

大和「みなさーん。各自楽器の準備はできましたかー」

球磨「……北上、お前それ何クマ」

北上「んーこれ? カスタネット」

木曽「うわ、ずるくないか……?」

大井「何言ってるのよ、北上さんらしくて素敵じゃない! 北上さんはね、ありきたりな管楽にあ・え・てカスタネットをチョイスしてるの! そのフロンティア精神パイオニア気質! 天才としか言いようがないでしょねぇあなたもそう思うでしょうねぇ!!」

北上「トロンボーンとかめんどくさいからねー」

木曽「なあ、いいのか球磨姉! ズルしようとしてるぞ!」

球磨「……そういえば多摩のやつはどこ行ったクマ」

北上「あー、そういえばここに来てから見かけてないねぇ」

木曽「えっ……おい! なんでシカトするんだよ球磨姉!? おい!?」

北上「ってかさ、姉ちゃんのそれ何? 何の骨?」

球磨「……キハーダクマ」  

飛龍「はいはい。じゃあみんな並んで並んでー!」

プリンツ「……お姉さま、並ばなきゃいけないみたいですよ」

ビスマルク「え? いやよ、出たくないわ」

グラーフ「クラリネットくらいこたつに入りながらでも演奏できる。出る必要はない」

ローマ「ほら、とっとと出てこいゲルマンカタツムリども」ガンッ

ビスマルク「ちょっと! こたつ蹴らないでよ!」

グラーフ「遺恨こそあれ、今は友軍だぞ。味方への攻撃は軍法会議ものだ。わかっているのか?」

ローマ「ほらほら、早くしないとあんたたちの家をぶっ潰すわよ」ガンッガンッ

グラーフ「話をきけ!」

プリンツ「あっ、いまピシッて言った! どこかにヒビ入りましたよ!」

ビスマルク「あーもうわかったわよ! ほんと野蛮人ねあなた!」モゾモゾ

グラーフ「……ふん。次はないと思え」モゾモゾ

多摩「……」モゾモゾ

大和「みんな楽器持った? チューニング大丈夫?」

飛龍「はーい、いいよー」

大和「じゃあ、さんはいっ!」



テーレーレッテレレッテ テレレレレン♪ ズンチャッズンチャッ♪



隼鷹「いよっ!!」

ポーラ「ルネッサーンス!!」

瑞鶴「あーやっぱり生演奏はいいわね。テンション上がるわー!」

大淀「……あの、本当にこれでラップを?」

長門「ダメなのか?」

大淀「いえ……、ダメというわけではないと思います……。多分……。どうなんだろう……」

瑞鶴「次いで自己アピールだけど……、なんかあるっけ?」

加賀「あなた馬鹿なの? 私たちは艦娘よ?」

瑞鶴「……いや、だから艦娘の何をアピールするかって聞いてんの!」

加賀「はぁ……、本当にわからないの? そんなだからいつまでたってもヒヨッコなのよ」

瑞鶴「……ほぉー、また随分と大きく出たじゃない。 聞かせてもらおうじゃないの、その艦娘のアピールポイントとやらをね」

加賀「そんなの決まってるじゃない。艦娘であるということよ」

長門「ふっ」

武蔵「うむ。解っているな」

瑞鶴「……はぁ?」

加賀「はぁ……、言葉にしないとわからないのね。いいわ、耳をかっぽじって良く聞いておきなさい」

武蔵「見渡すは大洋四方八方、千里万里の海原を駆け、巨砲の唸りは迅雷が如し」

長門「百の敵になお怯まず、千の砲火でなお沈まず、万夫不当の戦船」

加賀「されど陸に上がればたおやめの、日向に咲くは一輪花」

日向「五色たる雲が如き、多幸を翼に飛び立つは万能機」

大和「質実剛健良妻賢母、大和撫子ここにあり」

瑞鶴「っっっ……!」

加賀「いいこと瑞鶴、……これが艦娘よ」

瑞鶴「!」

加賀「そして私たちは艦娘。それだけで最強の証明」

瑞鶴「!!」

加賀「つまり私は艦娘である。ただその一言だけで、もう他には何もいらないの」

瑞鶴「!!!」

加賀「自信を持ちなさい、瑞鶴。あなたもまた艦娘。大丈夫、あなたは誰にも負けたりなんかしないわ。私以外」

瑞鶴「っ……うぅぅぅぅ!」

長門「ははっ、泣くな泣くな。艦娘に涙は似合わないぞ」

瑞鶴「……そうね。私……艦娘……だもんね……!」

武蔵「そうだな。泣いている暇があるなら……笑うんだ」

瑞鶴「うん……! 泣いてなんか……いられないんだから……!」

大和「……やっぱり笑顔のほうが瑞鶴ちゃんには似合うわね」

瑞鶴「ありがとう……! なんだか私、目が覚めたみたい……!」

加賀「瑞鶴……良い顔になったわね」

瑞鶴「加賀……さんっ!」

大和「……ふふっ」

武蔵「……これが師弟愛か」

長門「美しいものだな。見ているこちらも……胸が熱くなる」

陸奥「ちょっと長門、風呂と祭りはどうするの?」

長門「……風呂祭りなど深海に勝ってからすればいい。今はあの二人を見守っていよう」

加賀「頑張りなさい瑞鶴。あなたの艦娘道はまだ始まったばかりよ」

瑞鶴「はいっ……!」

加賀「今夜はあなたの艦娘自覚お祝い会よ。あなたの金で」

瑞鶴「はいっ……!」

おやすみにゃ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom