いろは「ここが先輩のお家ですよ♪」 (37)

八幡(とある休日の朝。起きて最初に目に入ったのは知らない天井だった)

いろは「あ、起きた」ギュー

八幡(そして次に目に入ったのは俺に抱きついて添い寝している一色いろはだった)

八幡「・・・ん?一色?」

いろは「違いますけど」ギュー

八幡「・・・・・・ん?」

いろは「・・・」ギュー

八幡「!?」ガバッ

いろは「あっ」パッ

八幡「な、なんだ、これは、どういう、ことだ、どういうことだ」

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いろは「あはは」

八幡「・・・ここはお前の家か」

いろは「はい。そうですよ」

八幡「何で、俺は一色の家に居るんだ?」

いろは「あ、いえ、ここは一色の家ではないです」

八幡「・・・でも、ここはお前の家なんだろ?じゃあ、お前は一色じゃないのか?」

いろは「さっきもそう言ったじゃないですかぁ?」

八幡(・・・まだ、起きて数秒とは言え、人の顔を見間違えるほど寝ぼけちゃあいない)

八幡(この顔は、間違いなく一色いろはのそれだった)

八幡(しかし、どこかでこいつを一色いろはではないと判断する自分が居た)

八幡(直感的な言い方になってしまうが・・・『俺の知っている一色いろは』ではなかったのだ)

八幡(雰囲気・・・オーラ、なんなら顔付きまでもが違って見えるのだ)

八幡「・・・とりあえず、俺は家に帰るぞ」スッ

いろは「えっ」

八幡(冷静に考えれば、もっと一色を問いただすべきだったんだろうが・・・
こんな状況でどうして冷静でいられようか)

八幡(玄関を見つけ・・・くぐろうとしたが、俺の靴がなかった)

いろは「あ、そこの黒いサンダル使っていいですよ」

八幡(一色の言われるがままにサンダルを履く・・・・・・なんで一色は俺を呼び止めないんだ?)

八幡(まるで俺が戻ってくると確信しているようだ・・・いや考えても仕方ないことか)

いろは「あ、そのまま表札見てください」

八幡(ドアを開けると、一色から声がかかった・・・なるほど、この家の表札を見てみればいろいろ解るはず・・・)



『比企谷』



八幡「・・・・・・はっ?」

いろは「私、もう一色じゃなくて、比企谷なんです」

いろは「それから・・・ここが先輩のお家ですよ♪ダーリン♪」

八幡(一色の話を要約するとこうだ)

八幡(俺は今、10年後の自分自身と入れ替わっているらしい)

八幡(一色は10年前に10年後の俺に会っているため、今日俺がここに来ることを知っていた・・・)

八幡(我ながらあんまり要約できてないな・・・起き抜けにこれは頭が痛くなる・・・)

八幡(ただ、頭痛の種はこれだけではない)

八幡「10年後に・・・お前と結婚・・・?」

いろは「はい!正確には6年後、ですね!大学出てすぐ結婚しました!」

八幡「・・・・・・・・・マジで?」

いろは「マジです!」

八幡「・・・10年かぁ・・・」

八幡(そんだけ経てば雰囲気も顔付きも変わるよなぁ・・・身長も少し伸びたか?)

いろは「あ、それからもう一つ。先輩に言っておかなきゃならないことが」

八幡「言っておかなきゃならないこと?なんだよ」

いろは「とりあえず、窓の外を見てみてください」ピッ

八幡「?」クルッ

いろは「えいっ」ギュウッ

八幡「!?」

いろは「言っておかなきゃならないことっていうのは、私は先輩が大好きってことです!」ギュー

八幡「なっ、お、おい!」グイッ

いろは「もー。抵抗しないでくださいよぉ。いつもなら抱き返してくれるのに」ギュー

八幡「はぁ!?10年後の俺はそんなのになってんのか!」

いろは「付き合うまでが大変だった分、付き合ってからはラブラブですよ?」ギュー

八幡(・・・・・・どこかでそんな感じになるだろうなと思っていた自分がいる)

八幡「いや、だが俺は10年前の俺だ!離せ!」

いろは「いやでーす。懐かしいですもん」ギュー

八幡「こっ、この・・・」

八幡(あぁくそ・・・10年経っただけなのに・・・姿形もほとんど変わっていないのに・・・なんでこいつこんなに)

八幡(エロいんだ)

八幡(こう、抱き着き方が10年前のこいつと一線を画している。体の密着の仕方がこう・・・上手くは言えないが
とにかくエロエロい)

いろは「おやおやぁ?10年前の先輩はうぶですねぇ。年上の私の魅力にたじたじですかぁ?」ギュー

八幡「ぐっ・・・」

八幡(悔しいが、その通りだった)

いろは「・・・なら、このまま押し倒して、散々だった初体験のリベンジを・・・」ムラッ

八幡「何言ってんだお前!」

八幡(っていうか、散々だったのかよ)

いろは「いや、でもそうすると10年前の先輩はもうチェリーじゃなくなっちゃうんですよねぇ・・・
先輩の初めてはいずれにせよ人生で一度きり・・・なら、やっぱり初めては一緒の方が・・・」ブツブツ

八幡「・・・だから、何を言ってるんだお前は」スルッ

いろは「あっ逃げられた」

八幡(ちょっと名残惜しいと思ってる自分が憎い)

いろは「まぁ、ちょうどいいです。朝ご飯にしましょうか」スッ

八幡「そういや、何も食べてないな」

いろは「じゃあ、簡単な物、何か作りますね」

八幡「・・・随分手馴れてるんだな」

いろは「まぁ毎日作ってれば嫌でも馴れますよ」

八幡「毎日?お前仕事は大丈夫なのか?」

いろは「私、専業主婦ですけど」

八幡「・・・・・・まさか、俺、働いてるのか?」

いろは「バリバリです」

八幡「噓だろ・・・?俺が、労働・・・?」

いろは「とか言って先輩、付き合ってからは働く気満々でしたけどね。私のために」

八幡(まぁ・・・どこかでそんな気はしていた)

いろは「そりゃあ、私も家事頑張っちゃいますよっと。はい、出来ましたよ。目玉焼きとその他諸々」

八幡「・・・・・・」モッシモッシ

いろは「どうですかぁ?」

八幡「・・・小町の料理の次にうまい」

いろは「こっちの先輩は、一番うまいって言ってくれたんですけどねぇ」

八幡「・・・そうかよ」モッシモッシ

八幡「ごっそさん」

いろは「お粗末様です・・・・・・さて、何か私に聞いてみたいこととか有りますか?」

八幡「聞いてみたいこと?」

いろは「ええなんてったって未来ですからね。先輩も色々知りたいでしょう」

八幡「・・・・・・競馬」

いろは「ああ、それなら、こっちの先輩が買ってきた奴が」スッ

八幡「なるほど・・・考えることは一緒か。それが当たりなんだな?」

いろは「いえ、外れです」

八幡「・・・?何で外れ馬券買ってんだよ」

いろは「さぁ・・・?先輩はバタフライなんとか・・・って言ってましたけど」

八幡「・・・ほう」

いろは「まぁ、世の中そうそう上手く行かないってことじゃないですか?」

八幡「ま、一応当たりの番号も聞いておくか」

八幡(バタフライエフェクトが、必ず起きるとも限らないのだから)

いろは「他には、何か有りますか?先輩」

八幡「何で・・・敬語なんだ?」

いろは「?」

八幡「一応・・・俺は今、お前の年下ってことになるんじゃないのか」

いろは「先輩だって敬語使ってないじゃないですか」

八幡「いや、そうだが・・・10年後の俺にも敬語で先輩呼びなのか」

いろは「まぁ、先輩は先輩ですからねぇ。八幡さんっていうのも何かよそよそしいですし」

八幡「・・・そういうもんか」

いろは「それに先輩って敬語萌えじゃないですかー?」ニヤッ

八幡「・・・・・・・・・へぇ。10年後の俺は敬語萌えなのか」

いろは「ふふっ、強がったって無駄ですよ。高2の冬に目覚めた。って本人から聞いてるんですから」

八幡「ペラペラと喋りやがって・・・!」

いろは「まぁ、旦那の期待に応えるのも妻の役目ですしねー?」ニヤニヤ

八幡「はぁ・・・子供ができたら混乱するだろうに」

いろは「こども・・・・・・」

八幡(一色が俯きながら言葉を反芻した。そこは照れるのか・・・)

いろは「ほ、他に何か聞きたいことは?」

八幡(聞きたいこと・・・聞きたいこと・・・)

八幡(有る。まだまだ有る。が・・・今、この時代のこいつに聞いてもいいのか・・・?)

いろは「・・・奉仕部のこと、ですか?」

八幡「!」

いろは「大人になって会ってみると、案外解かりやすいですよね、先輩」

八幡「・・・いいのか、聞いて」

いろは「旦那の口から別の女の名前が出るのはとっても不愉快ですけど!別に何聞いてもいいですよ。
だって先輩、まだ高校生ですもんね。そんな頃の話をつつくような器の狭い女じゃないですよ。あなたの嫁は」

八幡「・・・あの二人は、雪ノ下と、由比ヶ浜は、今何してる?」

いろは「内緒です☆」

八幡「!?」

いろは「もし教えちゃったせいでルート変更なんかされちゃ嫌ですからね。私ルートを確定させてからにしてください」

八幡「器の狭い女だ・・・」

いろは「あ、ちなみに小町ちゃんは大志君と結婚しました」

八幡「はああああああああ!?!?!?」

いろは「毎日奉仕部で二人きりだったのが効いたんでしょうねぇ」

八幡「んんんんんんんあっっ!?」

いろは「沙希先輩は『八幡兄さん・・・』と呟いて満足気でした」

八幡「えっ」

いろは「ブーケトスは平塚先生を押し退け既婚の私が取りました」

八幡「譲れよ!俺が居るだろ!」

いろは「・・・はい」キュン

八幡「うっ・・・」

八幡(ちょっと恥かしい事言ってしまった)

八幡(そして平塚先生はまだ・・・)

八幡(そんなこんなで色々な話を聞いた)

八幡(結局、大事なことは伝えてくれなかったが、それでも色んな話を聞いた)

八幡(俺の職業のこと、世間のこと、ハンターハンターの最終回のこと)

八幡(俺のことだ。聞きたいことなんてすぐ尽きると思っていたが、話は夜まで続いた)

八幡(それだけ、未来とは未確定な物だらけだということなのだろう)

八幡(そして、晩飯も食べ終わり、ハンターハンターの最終巻を読み終えた時だった)

いろは「そろそろ、寝ましょうか」

八幡「・・・ああ」

いろは「一緒に」

八幡「やだよ・・・俺は一人で寝る」

いろは「我が家にベッドは一つしか有りませんが?」

八幡「噓だろ・・・」

八幡(毎晩一緒に寝てるのか・・・)

八幡「・・・解ったよ」

八幡(どうせ、今日だけなんだから)

いろは「電気消しますよー」ギュー

八幡(・・・もう離せと言う気も起きない)

八幡「おう」

いろは「・・・はい」パチッ

八幡「・・・」

いろは「・・・どうでしたか?今日は」ギュー

八幡「さぁな・・・何て言ったらいいか解らん」

いろは「ふふ・・・それは良かったです」

八幡「・・・なぁ」

いろは「・・・なんですかぁ?」

八幡「何か、聞きたいことないか」

いろは「・・・?」

八幡「まぁ、お返しみたいなもんだ」

いろは「今度は先輩が私の質問に答えてくれるんですか?」

八幡「・・・おう」

いろは「・・・」

八幡「・・・」

いろは「・・・・・・子供」

八幡「・・・ん?」

いろは「子供・・・欲しいですか?」

八幡「・・・・・・」

八幡(俯いた理由は、照れただけじゃないってことか・・・)

いろは「10年後の先輩に聞いたら、気まずくなっちゃう気がして・・・」

八幡「今の俺と10年後の俺とじゃ、考えが違うかもしれんぞ?」

いろは「それでも、いいですから。聞きたかったんです。先輩に」

八幡「・・・お前は?」

いろは「私は・・・どっちでもいいです」

八幡「どっちでもいい・・・って。本当か?」

いろは「・・・はい。普通に子供欲しいですし・・・ずっと先輩と二人きりっていうのも素敵です。
でも、どっちにしたら良いか、分かんなくて」

八幡「・・・・・・俺は、正直、自分の子供を上手く愛せるか自身がない」

いろは「・・・・・・はい」

八幡「けど、俺とお前の子供。なら、愛せる気がする」

いろは「・・・!じゃ、じゃあ、先輩も子供欲しいんですか!?」

八幡「やっぱりお前どっちでも良くないじゃねぇか」

いろは「あ・・・・・・」

八幡「まぁ、言いたいこと言えば良いんじゃねぇの?」

いろは「・・・ありがとうございます」ギュウッ

八幡「・・・どういたしまして」

いろは「・・・向こうに帰っても元気でいてくださいね」

八幡「・・・おう」

いろは「ちゃんと私に勉強教えて、同じ大学通えるようにしてくださいね」

八幡「おう」

いろは「初体験は血がドバドバで痛すぎてまともにできなかったですけど、あれ私の体質のせいなんで。
先輩は気にしないでくださいね」

八幡「何言ってんだお前」

いろは「・・・・・・私を、選んでくださいね」

八幡「・・・・・・」

いろは「・・・おやすみなさいです。先輩」

八幡「・・・知ってる天井だ」

八幡(どうやら帰ってきたようだ)

八幡(・・・ん?何だこの紙)



『未来の俺より』



八幡(・・・ほう)



『可能性は、一つじゃない。』

『もしかしたら雪ノ下だったかもしれないし、由比ヶ浜だったかもしれないし
 別の誰かだったかもしれないし、一生独身だったかもしれない。』

『俺はいろはを選んだが、お前には、お前の選択をして欲しい』



八幡「言われなくても、解ってるっつーの」ビリ

八幡(『私を、選んでくださいね』・・・悪いな。あれは聞かなかったことにさせてもらう)ビリビリ

八幡(この時代のお前から、同じ台詞を聞くまでは)ビリビリビリ

八幡「・・・」ポイッ

小町「おにいちゃーん、起きたー?」トントン

八幡「おう、起き・・・」

結衣「ヒッキー起きたの!?」ドンッ

八幡「!?由比ヶ浜!?なん・・・」

雪乃「起きたのね、比企谷君」

八幡「!?」

結衣「だ、誰だった!?お嫁さん誰だったの!?」

雪乃「比企谷君。あなたの将来の伴侶は誰だったのかしら?」

陽乃「あ!比企谷君起きてる!」

戸塚「あ、こっちの八幡だ」

平塚「比企谷ァ!」バンッ

沙希「兄さん!」

いろは「せ、先輩!」

八幡「な、なん・・・!?」

小町「えっと、昨日のお兄ちゃんが皆を呼んで・・・説明はいらないか」

八幡(やはり・・・いや)

八幡(きっと俺の青春ラブコメは間違っている。)




                                            終わり

いろはすが一番可愛いという風潮。一理しかない。

読んでくれてありがとうございました。

10年後八幡も見たいけど他のルートの10年後ヒロインも見たいな

>>27

お前が書くんやで

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