高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「1月のカフェで」 (40)

――おしゃれなカフェ――

北条加蓮「――そしたら、いつも着てるセーターがこう、がばーって抱きつくみたいに襲い掛かってきてねー」

高森藍子「そ、それからどうなったんですかっ」ドキドキ

加蓮「あ、これ夢だ。絶対夢だ、って気付いたの。気付いたら逆に、放っておいていいかなーって思っちゃって」

加蓮「なすがままにしたらどうなるのかなー、って、逆に興味が湧いちゃった感じかな」

藍子「ふんふん」

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――まえがき――

レンアイカフェテラスシリーズ第43話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

~中略~

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「18時のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「瑞雪の聖夜で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「膝の上で よんかいめ」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「手がかじかむ日のカフェで」

加蓮「私が1人で寝てる時の話だしさ。こう、周りに影響されてっていうのもない訳だし」

藍子「つまり、加蓮ちゃんが思うままにしか、夢の出来事は発生しない……ってことですよね?」

加蓮「そうそう。いつも着てるセーターが襲い掛かってきて、それからどうなるの? って」

藍子「なるほどなるほど……」

加蓮「気になったんだよねー。こう、私の運命やいかに! って。ナレーションしてるのも私だけどね」

藍子「あはっ、何ですかそれ~。加蓮ちゃんのことなのに、ひとごとみたいになっちゃってますよ?」

加蓮「だって夢だし」

藍子「夢ならなんでもありですね。それで、どうなったんですか? 夢の中の加蓮ちゃんは無事だったんですか!?」

加蓮「それなんだけどさ」

藍子「焦らさないで言っちゃってくださいっ」

加蓮「……焦らすなって言われるとー?」

藍子「焦らしたくなるのが加蓮ちゃんだって知ってますけど私にはこう言うしかないんですっ」

加蓮「あはは。ええと、セーターがこう……」

加蓮「がばー!」テヲヒロゲル

加蓮「って襲いかかってくるでしょ?」

藍子「どきどき……」

加蓮「ぎゅー!」ジブンヲダキシメル

加蓮「って抱きしめられるでしょ?」

藍子「だ、抱きしめられて?」

加蓮「なんか暖かかった」

藍子「暖かかくてっ」

加蓮「おしまい」

藍子「おしま――おしまい!? これから始まる加蓮ちゃんの壮大な冒険のお話は!?」

加蓮「いやそんなのないけど」

藍子「えー……」

加蓮「そういえば起きた時に布団を抱きしめてたなぁ。ぎゅーって」

加蓮「身体が布団を抱きしめたからそんな夢を見たのかな? いや、夢を見たから布団を抱きしめたのかも。ねえ藍子、どっちだと思――」

藍子「どっちでもいいです~~~っ! 私の期待を返してください!」

加蓮「うわおっ。え、何にキレてんの?」

藍子「これから加蓮ちゃんがどうなっちゃうのかな。いつも後ろ向きだからあんまりよくない結果かも? でも最近の加蓮ちゃんなら大丈夫なハズっ」

藍子「なんてあれこれ想像しちゃった私が間抜けみたいじゃないですか!」

加蓮「……まあ、それは間抜けだと思うけど、」

藍子「加蓮ちゃんまで私のこと間抜けって言うんですか!?」

加蓮「あーもー面倒くさいなー!!」

加蓮「てか"加蓮ちゃんまで"って他に誰かに言われたの? 誰かに言われないとそんな言い方にならないよね? ねえ誰に? ねえ」ズイ

藍子「へ? ……え、えと? あの、加蓮ちゃん? 顔がちょっと怖いです……よ……?」

加蓮「いいから早く答えろ」ズイ

藍子「べ、別に誰にも言われてませんっ」

加蓮「いーやウソだ。藍子はこういう時に隠したりするからね。で、誰?」

藍子「本当に誰にも言われてないですよ……」

加蓮「ふーん……?」

藍子「本当ですって……。どうして加蓮ちゃん、そんなに怖い顔をするんですか……」

加蓮「あはは、まあ……ごめんごめん。ほら、もういつも通りだからこっち向いて? あんまり窓の外ばっかり見られたら寂しくなっちゃうなー」

藍子「…………」チラッ

加蓮「ほーらほら、怖くないよー?」

藍子「……怖かったです」

加蓮「ごめん」

藍子「ええと……夢のお話ですよね。想像させるだけさせておいて、その畳み方はひどいですよ~」

加蓮「昨日見た夢の話ってだけなんだから、そんなにあれこれ広げることもないでしょ? なんでそこまであれこれ想像しちゃうのかなぁ」

加蓮「そもそもさー、アンタが話の流れてちょっと聞いてきたってだけで、別に私から話しだした訳でもないんだし」

藍子「そ、そうでしたっけ?」

加蓮「間違いなくそうでした! ……勝手に期待して勝手に裏切られたのをぶーぶー言われてもねー。どうしろって」

藍子「でも加蓮ちゃん、いつも期待には応えてくれますよね」

加蓮「期待されてるって分かってたらね」

藍子「じゃあ、私の気持ちが加蓮ちゃんに伝わっていなかった、ってことですね……」

加蓮「……あれ、なんかそう言われると私すっごいやっちゃダメなことをした気がするよ?」

藍子「あ、いえ、別に加蓮ちゃんはそこまで悪いことをしていないと思いますけれど」

藍子「……あ、そうだっ。セーターのお話で思い出しました。加蓮ちゃん、私の家にマフラーを忘れていましたよね」ガサゴソ

加蓮「え。……あ、あはは、今その話をする? えーと、」

藍子「だから、はいっ。持ってきておきましたよ」トリダス

加蓮「…………へー」

藍子「まだまだ寒い冬は続くんですから、首元もしっかり暖めておかなきゃ。はいっ、加蓮ちゃん。もう忘れちゃダメですよ?」スッ

加蓮「…………」

藍子「加蓮ちゃん?」

加蓮「……うん。ありがと」

藍子「……? 加蓮ちゃん?」

加蓮「べっつにー。藍子って変なところで素直っていうか空気が読めないねーって思ってなんていないよ」

藍子「えぇ!?」

加蓮「ありがと。ちぇー」ブスー

藍子「あうぅ……。えと、その……ま、マフラーは汚れていないと思いますっ。ちゃんと洗い方も調べて、きちんとお手入れしておきましたから」

加蓮「それはありがと。……でも、そうじゃなくてさー」

加蓮(今更そんな理由付けとか、いらないっちゃいらないのかもね……)チラ

藍子「……??」

加蓮「……いっか。なんでもない」

藍子「なんでもないって顔じゃないですよ……?」

加蓮「そっちは鋭いのにそっちは鈍いんだね。変なの。……何か食べない? お腹すいちゃった」

藍子「私も、お腹がすいちゃいました。何か食べましょうか」

加蓮「はいクイズ。加蓮ちゃんは何が食べたい気持ちでしょー?」

藍子「……サンドイッチ?」

加蓮「へぇ、一発で当てるんだ。分かりやすかった?」

藍子「なんとなくっ。あと、想像ですけれど……。ほら、前にサンドイッチを食べた時、すごく美味しかったって一緒に言いましたよね」

藍子「その時のことを思い出したり、なんて」

加蓮「……だから変なところで鋭いのに変なところで鈍いのは何なの。わざとやってるの?」

藍子「わざと?」

加蓮「はいはい。すみませーんっ。サンドイッチ2つ、お願いしまーす。飲み物は?」

藍子「じゃあ、ホットコーヒーでっ」

加蓮「私もそれでー」

藍子「それより加蓮ちゃんっ。さっきのこと教えてくださいよ。なんでさっき怒っちゃったんですか?」

加蓮「……わざわざ掘り返すの?」

藍子「だって気になりますし。怒ったっていうより、拗ねちゃったような……。私が何かしちゃったなら、ちゃんと謝りたいです」

加蓮「やだ。絶対教えない」

藍子「そこをなんとかっ」

加蓮「それよりさー藍子、今日って暇? この後とか」

藍子「むー、話題逸らされちゃった……。そこまで聞かれたくないことならいいですけれど~……。今日は1日オフですよ。ショッピングですか?」

加蓮「よかった。んーん、そうじゃなくて。私のお母さんが藍子を連れてこいってうるさくてさー。もし空いてるなら来て欲しくて」

藍子「加蓮ちゃんのお母さんが?」

加蓮「ほら、私、正月前後にずっと藍子の家にお世話になってたじゃん。そのお返しがしたいんだってさ」

藍子「お返しなんて……気を遣ってもらわなくても。……あ、店員さんっ。ありがとうございます」

加蓮「ありがとねー。ま、その辺はほら、放っとくと色々とめんどくさいからね? お母さんも私の顔を見るなりいっつもいっつも同じこと言ってばっかりで……」

加蓮「だからほら、私の為だと思って、思いっきりもてなされてっ」

藍子「……じゃあ、お言葉に甘えちゃいますねっ」

加蓮「助かるー」ワーイ

加蓮「あー、サンドイッチ美味しぃ♪ ……この前さー、久々に自分の家に帰ったら、なんかすごく寂し、」

藍子「!」キュピーン

加蓮「くなかったから全力で私を拉致しようと目をキラキラさせるのはやめようね藍子ちゃん」

藍子「えっ。……そ、そそそそんな目なんてしていませんよ~、やだな~」メソラシ

加蓮「やっぱアンタはもうちょっと演技力を鍛えるべきだと思うの。アイドルとか関係ないレベルで酷いよ」

藍子「加蓮ちゃんをひっ捕まえてぬくぬくしてもらおうなんて思ってませんよ~」

加蓮「これ違う。隠そうとすらしてないヤツだ」

藍子「加蓮ちゃんを私の家に拉致……ら、拉致? するのがダメなら、私が加蓮ちゃんの家に行くのはオッケーですか?」

加蓮「ぜんぜんオッケーじゃないです」

藍子「さっき、私の為だと思ってもてなされて、って言ったのに?」

加蓮「それとこれとは別」

藍子「……私が行かないと加蓮ちゃん、同じことをずっとお母さんから言われ続けちゃうかもしれませんよ?」

加蓮「事務所に連泊するから問題ないね」

藍子「そのうち、事務所に乗り込んで来ちゃうかも」

加蓮「あ、それはダメだ。絶対すごく面倒なことになる」

加蓮「……うちに来るのはいいけど連泊とかするのやめてよ? 1日だけでいいんだから」

藍子「えー」

加蓮「それでお母さんの気も済むと思うし。……まったくもー、お母さんも変なところで頑固っていうか言い出したら聞かないっていうか……」ブツブツ

藍子「加蓮ちゃんとおんなじですね」

加蓮「私? いやいやいや。似てない似てない。私、あんな毎同日じことをしつこく言わないし」

藍子「そうですか? けっこう、同じことを言われているような。……とにかく、今日はお邪魔しますね。あ、お母さんに連絡しておかなきゃっ」ポチポチ

加蓮「私も連絡ー」モグモグポチポチ

藍子「……食べながらスマートフォンを操作するの、行儀悪いですっ」

加蓮「おっとっと。たはは、つい」

藍子「ふふっ。焦って食べなくても、サンドイッチは逃げませんから」

加蓮「藍子のお腹の中に逃げられる前に食べなきゃ、って思っちゃったよー」

藍子「むー。私、そこまで食いしん坊じゃないですっ」

加蓮「よし、これで送信っと。あ、もしかしてこれ、晩ご飯がやたら豪勢になるかも。今日はこれ以上食べない方がいいかもね」

藍子「そうなんですか?」

加蓮「私も藍子も少食だって知ってるハズなのにね。藍子が来る度に気合を入れるんだから」

藍子「そういえば前にも、食べきれなかったことがあったような……」

加蓮「あれはお母さんが悪い。藍子がお腹いっぱいだって顔をしてるのを見抜けなかったんだし」

藍子「加蓮ちゃんが指摘して、初めて気づいたって感じでしたよね」

加蓮「ねー」

藍子「しまった、って顔でした」

加蓮「ねー」

藍子「ご飯はその、いつもよりひかえめで、お願いします」

加蓮「ダイエット?」

藍子「そうじゃなくて……あんまり多いと、食べきれませんから」

加蓮「ただでさえお肉がないんだからやめときなって、私何回も言ってるつもりだけどなー」

藍子「だから違いますってば~。料理をたくさん頂けるのは嬉しいですけれど、ぜんぶ食べられなかったらなんだか悪い気がして……」

加蓮「気にしないと思うけどなー。ま、一応言っとくね。聞いてくれるか分かんないけど」ポチポチ

藍子「……やっぱり」

加蓮「ん?」カオヲアゲル

藍子「加蓮ちゃん、何度も同じことを言うところ、加蓮ちゃんのお母さんとそっくりですよ」

加蓮「ぅえ?」

藍子「ダイエットのお話、前にもされた覚えがありますっ」

加蓮「それは聞かない藍子が悪い」

藍子「うぅ、それはごめんなさい」

加蓮「……素直に謝られるとそれもそれでアレだよね。なんかごめん」

加蓮「ついうるさくなっちゃうのかもね。ほら、やっぱり藍子のことは心配っていうか……心配じゃないなー。何だろ。何かは分かんないけど、つい言いたくなっちゃって」

藍子「きっとそれが、加蓮ちゃんのお母さんが加蓮ちゃんに想っている気持ちなんだと思いますよ」

加蓮「ってことは、藍子は私の娘? えー、やだよこんな面倒くさい娘」

藍子「……加蓮ちゃんが言いますか、それ」

加蓮「言ったもん勝ちってことで。藍子もどんどん言わないと私に負けっぱなしになっちゃうよ?」

藍子「それなら、次からはもっと遠慮なく言っちゃいますね。ふふっ」

加蓮「うんうん。それがいいよ。……あ、返信来た。うっわーすっごいはしゃいでる」

加蓮「見てこれ。ほら、絵文字。あと顔文字。キラッキラしてる」スッ

藍子「本当ですね。加蓮ちゃんのお母さん、すっごくワクワクしています♪」

藍子「それに、色々お話したいって……うぅ、私、ちゃんとお話できるかな?」

加蓮「あんまりうるさくなったら私が止めなきゃ」

藍子「その時は加蓮ちゃん、お願いしますね」

加蓮「はーい。……と言いつつ」

藍子「と言いつつ?」

加蓮「私もたぶん、お母さん側に回るんだけどね」

藍子「言うと思いましたっ」

□ ■ □ ■ □


藍子「ごくごく……ふうっ。コーヒー、美味し……♪」

加蓮「ごくごく……。なんかさー」ボー

藍子「?」

加蓮「なんか今日、やたら外の……車とか、歩いてる人とか。すっごい忙しなく見える気がする……。藍子もそう思わない?」

藍子「そうですか?」チラッ

藍子「私には、いつもと同じように……」

加蓮「あれっ」

藍子「1月や2月って、なんだかせわしなくなっちゃいますよね。そのせいかな?」

加蓮「言う言う。なんだっけ、2月が去って3月が来て……あれ? えーと、1月が行って、2月が去って……?」

藍子「加蓮ちゃん。1月が行って、2月が逃げて、3月が去るらしいですよ」

加蓮「そうなんだ」

藍子「調べちゃいました。はいっ。ここに書いてありますよ」スッ

加蓮「ホントだ。へー、それぞれ文字を取ってるんだ。1月が"いち"だから"行く"で」

藍子「2月が"に"だから"逃げる"、3月が"さん"だから"去る"」

加蓮「早く時間が過ぎるからって以外にも意味があったんだね」

藍子「こういう語呂合わせって、いっぱいありますよね」

加蓮「お正月のおせちとかにもあるんだよねー」

藍子「ふふ。一緒に調べて、勉強しちゃいましたねっ」

加蓮「トーク番組のネタにでも……うーん、もう遅いか」

藍子「来年、また使っちゃいましょう」

加蓮「来年まで覚えておかなきゃね」

藍子「私と加蓮ちゃん、2人いるんですから、きっと覚えていられますよ」

加蓮「どっちが多く覚えていられるか勝負っ」

藍子「分担すればって言おうとしたのに……。でも、そういうことなら負けませんよ~」

加蓮「おー珍しい。藍子が好戦的だ」

藍子「私だってたまにはっ。勝った方が、お年玉をもらえるってことで!」

加蓮「いーねいーね。絶対勝つよ。3月まではあっという間に過ぎるらしいし、そこからが本番だね」

藍子「ふふ、ですねっ」

藍子「でも、言われてみたら……学校も、3学期ってあっという間に終わっちゃいますよね。3ヶ月もあるハズなのに」

加蓮「なんか気がついたら2月になってて、急に3月になったりするよね。だから外の人たちが忙しなく見えたのかな……」

藍子「1日1日を大切にしていきましょうね、加蓮ちゃん」

加蓮「ん。……じゃー大切にする為にここでだらだらなんてしてられな、」

藍子「え……」

加蓮「ごめん冗談」

藍子「……もう。びっくりすること、言わないでください」

加蓮「いつも言ってるじゃん、こーいうの」

藍子「それでもですよ」

加蓮「ごめんごめん。なんか今日はたまに調子が狂っちゃうなぁ。会話が転ぶっていうか」

藍子「狂わせているの、加蓮ちゃんですっ」プクー

加蓮「あはは。まぁ……その、ここで藍子と過ごすのも、私にとっては大切な時間だよ。……素直に言うとほら、ね? 顔がこう赤くなるし」

藍子「本当ですね。加蓮ちゃん、顔が赤くなってる」

加蓮「い、いちいち言い直すな~」

藍子「よかった。ちゃんと、大切な時間でいてくれて。……でも加蓮ちゃん、最近あんまりカフェに誘ってくれませんよね?」

加蓮「え、そう? あんま変わらないハズだけど……。正月にずっと一緒にいたからそう思うだけじゃない?」

藍子「そうかもしれませんけれど……」

加蓮「あー、あとアレだよ。最近お仕事が……そうそう藍子、聞いて聞いてー。実はさ、もうお花見のCMの予定まで入ってるんだっ」

藍子「お花見ですか?」

加蓮「うん。新しいスポドリのCM。たくさん食べた後に飲むといいポカリのね。身体によくて美味しくて、って。花見をバックに撮るの!」

藍子「体にいい飲み物のCMなんて、加蓮ちゃんらしいっ」

加蓮「こらー。誰が病弱だー。これでも体力はあるんだぞー。……ちょっとは」

藍子「まだ1月なのにお花見のCMが決まっちゃってるなんて、アイドルってすごいですね」

加蓮「なんでこう他人事なのよ。でも凄いよねー。去っちゃう前に確保しちゃえ! 的な?」

藍子「人気のアイドルは、すぐに他の人にとられてしまうかもしれませんから」

加蓮「だーから何を他人事みたいに」

藍子「それに、捕まえておかないとすぐ逃げられちゃいそう」

加蓮「私が?」

藍子「加蓮ちゃんが。1月と加蓮ちゃん、どっちの足が早いかな? なんてっ」

加蓮「1月の街並みには負けちゃうかもね」

藍子「そんなことないですよ。加蓮ちゃんだって、誘わないとすぐに逃げちゃって、なかなかカフェにもご一緒できなくなっちゃいますから」

加蓮「え、そんなに誘わなかったこと根に持ってたんだ……」

藍子「……なんてっ。加蓮ちゃんが急に忙しくなったことは知っていますから、あんまり無理になんて言いません」

加蓮「ん」

藍子「そういえば、モバP(以下「P」)さんが嬉しそうに言っていましたよ」

藍子「加蓮ちゃんが情熱的だと、自分もやる気になるって。プロデュースしていて、すっごく楽しい、時間があっという間だって♪」

加蓮「へぇ、Pさんがそんなことを……。へー。そんなことをねー」

藍子「あはっ。にやにやしてる……」

加蓮「してない」

藍子「そうだっ。今日の加蓮ちゃん、まだ撮っていませんでしたっ」ガサゴソ

加蓮「今日もよろしくお願いしますね、専属カメラマンの高森さん」キリッ

藍子「ああ、いつものアイドルモードになっちゃった……。にへらっ、ってしてる加蓮ちゃんを撮りたかったのに」

加蓮「そんなもの撮らせてたまるかっ」

藍子「アルバムにいっぱいあるんですよ~。加蓮ちゃんの写真」

加蓮「……だよねー。撮られてるもんねー結構。そのアルバム、何したら譲ってくれる?」

藍子「じゃあ、いろんな写真を撮らせてくれたら譲ってあげます」

加蓮「意味がない!」

藍子「だって私、加蓮ちゃんの専属カメラマンさんですから♪」

加蓮「クビだクビー」

藍子「お仕事、加蓮ちゃんの方からやりたいって言ったんですか?」

加蓮「そーそー。藍子の家にお世話になり終わって、自分の家に帰った時にね――」

藍子「!」キュピーン

加蓮「はいはい、寂しくないから身を乗り出さないの」

藍子「……い、意地を張らなくてもいいんですよ~? も、もおー、加蓮ちゃんってば意地っ張りなんだからー」

加蓮「何? 大根ってあだ名でもつけられたい? それ結局寸胴って言われてるのと大して変わらないと思――ごめん嘘だから闇子ちゃんモードになるのやめて」

加蓮「と、とにかく。家に帰った時にさ。急にやる気になったっていうか、スイッチが入ったっていうか……」

加蓮「前に言ったっけ? 今はのんびりしてるけど、どうせすぐにやりたいことが見つかるって」

藍子「言っていましたね」

加蓮「お陰さまで。やりたいことが、いっぱい見つかりました」

藍子「お花見のCMとか?」

加蓮「そうそう。あとね、バレンタインのイベントに、春の新作キャンペーンに、それ用の雑誌取材に。あともちろんLIVEも!」

藍子「ホワイトデーのイベントに男の子役で出たいんだ、って加蓮ちゃんに相談されてる時のPさん、見ててちょっとだけ面白かったです♪」

加蓮「見てたなー?」

藍子「ついっ」

加蓮「ついって」

藍子「お話しているのが見えて、聞き耳を立ててしまいました」

加蓮「盗み聞きー」

藍子「だって加蓮ちゃんが楽しそうで、Pさんも楽しそうだったら……それに、2人ともなんだかイタズラっぽく笑っていますもん。気になっちゃいますよ~」

加蓮「そっか」

藍子「その時のおふたりの写真が……」ポチポチ

加蓮「盗撮!」

藍子「人聞きの悪いっ」ハイコレ

加蓮「んー……うっわー、この悪巧みしてますって顔」

藍子「ふふ。つい撮りたくなる気持ちも分かりますよね?」

加蓮「分かる分かる。ちょっとこの顔はファンには見せられないなー」

藍子「ファンの皆さんなら、そんな加蓮ちゃんもいいって言ってくれると思いますよ」

加蓮「ビミョー。あんまり言ってくれない気がする。なんとなくだけどね」

加蓮「イベントって毎年のことなのかもしれないけどさ。それに、別にお正月にのんびりしてたから……って訳でもないんだけど」

加蓮「色々やらなくちゃ、って思って。……ううん、それも違うかな」

加蓮「何かやりたいって思って。ホワイトデーの男の子役なんてあるの、探して初めて知ったよ」

藍子「やる気まんまんですね、加蓮ちゃん」

加蓮「やると決めちゃったからね」

藍子「今の加蓮ちゃんを見てると、私も何かに挑戦したくなっちゃいます……!」

加蓮「やっちゃおうやっちゃおう」

加蓮「何がいいかな? やっぱり新衣装でLIVE? んー、それも面白そうだけどもっとこう欲しいなぁ」

加蓮「例えばー……バレンタインに告白する女の子役? 乙女な藍子ちゃんが見れそうだね。それともホワイトデーでお返しに悩む男の子役? ふふ、藍子と役を取り合うのも面白そう♪」

藍子「……い、色々やるのは、やっぱり加蓮ちゃんにお任せしちゃいます」

加蓮「えー。そこで退くのは無しじゃない?」

藍子「だってぇ……。楽しそうな加蓮ちゃんを見るの、すっごく楽しいですもん。ずっと見ていたくて……」

加蓮「アンタは観客じゃなくてアイドルでしょ?」

藍子「分かってますけどっ」

加蓮「なかなか乗ってくれないものだね。……ま、無理強いはしないけど」

加蓮「ただほら、私は私で頑張ったし、今だって頑張ってるからさ。次は藍子の番……なんてちょっと思ってみたりしたかなー、って」

加蓮「藍子が張り合ってこない子だってのは知ってるけどさ、ここら辺でこう、加蓮ちゃんが張り切ってるなら! 的な……そういうの、ちょこっとだけ期待したんだけどね」

藍子「うぅ……」

加蓮「……」

藍子「……じゃあ」

加蓮「お」

藍子「その……今は、加蓮ちゃんを見ているってことで」

加蓮「んー」

藍子「私も何か、やりたいことを見つけたら……それがもし、すっごく難しいことだったりしたら、その時は……」

藍子「加蓮ちゃん。私の応援、してくれますか?」

加蓮「ふふっ、もちろん! 加蓮ちゃんの応援はすごいよー? どーせやるなら全力でやらないとね!」

藍子「す、すごいことになりそう……!」

加蓮「ふっふっふー。そうだね、例えばLIVEがしたいって言ったら……まずは私や藍子の周りにいる子を全員巻き込みます」

藍子「全員!?」

加蓮「Pさんにも無理を言って大きな舞台にねじ込んでもらっちゃおう。いやいっそ大きな舞台を作ってもらっちゃおう」

藍子「む、無理は言っちゃダメですっ! 加蓮ちゃんの言うことならPさん聞いちゃうんですから!」

加蓮「それと、よくお世話になるスタッフさんにも声をかけなきゃ」

藍子「どれだけ大きな舞台にしちゃうつもりですか!?」

加蓮「サプライズ演出は基本中の基本。藍子が思いっきり目立つようにしちゃいましょう!」

藍子「きゃ~~~~~っ!」

加蓮「それもこれも、私に溜めさせた藍子のせいだからね」

藍子「しかも私のせいなんですか!?」

加蓮「ふふふふふふふ……」

藍子「か、加蓮ちゃんの笑顔が今まで以上にすごいことに……! 関わっちゃダメだって体が言ってる気がする……!」

加蓮「……ま、それはだいたい冗談だとして」

藍子「ほっ……。……だいたい? え、あの、だいたい? ってことは冗談じゃない部分もあるんですか!?」

加蓮「どうだろうね。でもさ……これはマジな話、どっちでもいいと思うよ?」

藍子「どっちでも……ですか?」

加蓮「うん。丸投げってことじゃなくてね? 今まで通りでも、何か新しいことをやってみるのでも、どっちでも」

加蓮「私はどっちでも応援するし――あ、うん。応援ってさっきほどじゃなくて……顔を青ざめなくていいから……」

加蓮「ともかく。藍子がやりたいようにやっちゃってよ。迷ってるようなら背中を押す……ううん、私が引っ張ってあげる。私だって、いつも藍子に手を引いてもらってるもんね」

藍子「……はいっ。その時にはお願いしますね、加蓮ちゃん」

加蓮「あ、でも私的にはやっぱり色々やってる藍子ちゃんが見たいなぁ。ねね、やっぱり今から私と一緒にオーディションに出ない? ほら、ホワイトデーの男の子役」

藍子「それは……あはは、考えておきますね」

加蓮「はぐらかされてなかったことになるヤツだねー」

藍子「そ、そんなことないですよ? ただしっかり考えて、やっぱり私には合わないかなぁとか、加蓮ちゃんを見守る方がいいかなぁってなるだけで」

加蓮「やっぱ周りから固めて拒否れない状況に持っていった方がいいのかなぁ……」

藍子「それはダメ~~~っ」

加蓮「あははっ。……ね、藍子。藍子がまた何かやりたいことを見つけた時、私も混ざっていい?」

藍子「へ? でも、これ以上お仕事を増やしちゃったら加蓮ちゃんが疲れちゃうんじゃ……」

加蓮「えー。やっぱり私なんかより他の子の方がいいのー?」

藍子「そうじゃなくてっ」

加蓮「ふふふ」

藍子「か、加蓮ちゃんこそ分かって言っていますよね?」

加蓮「さー? 私、鈍感だから分からないなー」

藍子「…………」ジトー

加蓮「藍子ちゃん。ジト目が痛い」

藍子「加蓮ちゃん。ジト目に気付く人は鈍感って言わないと思います」

加蓮「いや誰でも気付けるって今のは」

藍子「本当に気付かない人は気付きませんよ?」

加蓮「実体験?」

藍子「私じゃなくて、加蓮ちゃんの体験ですけれど」

加蓮「私の体験……」

藍子「加蓮ちゃん、たまにPさんに目や表情で訴えかけてますけれど、Pさんに気づかれないことがたまにあって、その度にほっぺた膨らませてますよね」

加蓮「あぁそういう。分かってるなら気を遣って言ってくれればいいのに」

藍子「変に気を遣った方が、加蓮ちゃん、嫌がるかなぁって」

加蓮「あー。確かに、気づかれないこと前提でやってることもあるもんね。……こうして考えると我ながら面倒くさいことになってるね、私」

藍子「ふふっ。そんなの、今さらじゃないですか」

加蓮「言うなぁ」

藍子「さっきの加蓮ちゃんじゃありませんけれど、どっちでもいいと思いますよ。観客席にいても、一緒にやってくれても」

藍子「でも……どっちからでもいいので、私のこと、見ていてくださいね」

藍子「私もちゃんと、加蓮ちゃんのことを見ていますから!」

加蓮「はーい。お互い様だね」

藍子「お互い様ですね」

加蓮「どこまでも」

藍子「いつだってっ」

……。

…………。

加蓮「そろそろ帰ろっかー」

藍子「はーい。あ、今日は加蓮ちゃんの家にお邪魔するんでしたよね、私」

加蓮「忘れちゃってた?」

藍子「色々なお話をしていたから、つい。……ちょっぴり遠回りして、お腹を空かせて帰っちゃいませんか? たくさん歩いたら、ご飯も食べられそうですから」

加蓮「あ、それいいね!」

藍子「冬の景色もいっぱい撮っちゃいましょう。あと、加蓮ちゃんの姿もっ」

加蓮「今日は写真の話で寝れなくなりそうだね」



おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。

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