柊志乃「ホーリークーデター」 (40)



モバマスのお姉さん達がメインのシリーズです。
前回のお話の続きとなってりますので、初見の方はこちらからどうぞ。

前回:篠原礼「大人のおつきあい」




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—山梨県・柊ワイナリー本社広報室にて—



志乃「うん、なかなか良い出来ね……ちょっとウチのワインの宣伝が弱い気もするけど
   今回は瞳子ちゃんだし、落ち着いた雰囲気のポスターでいきましょう」

課長「彼女は正統派の方ですから、あまり派手に酒類の宣伝をするとお互いにマイナスに
   なりますしね。社長はもっと宣伝しろと仰いますが、これ以上やるとMBプロさん
   にも怒られてしまいそうですし」ハハハ

志乃「お父様の説得は任せて。瞳子ちゃんのポスターを控えめにした分、LIVEバトル全体
   のポスターで派手に宣伝するから。そっちはどうなっているかしら?」




中堅「はい、こちらになります。まだ草案の段階ですが……」サッ

志乃「本番まで一ヶ月切ってるのよ?ちょっとゆっくりすぎないかしら?」ジロ

若手「す、すみません……なかなか運営本部とアポが取れなくて……」タジタジ

志乃「しっかりしないとスポンサーおろされちゃうわよ?LIVEバトルも年々規模が大きく
   なって他企業もどんどん参入しているし、私達も後れをとるわけにはいかないわ。
   このイベントは私達スポンサーの戦いでもあるのよ」

課長・中堅・若手「「「はい!」」」





コンコン



秘書「部長、MBプロダクションの社長様からお電話です」ガチャ



志乃「社長から?珍しいわね、事務所で何かあったのかしら—————?」





***



—翌日夜・会員制高級ワインバーにて—



志乃「こんばんは〜♪」ガチャ



楓「こんばんは志乃さん。一週間ぶりですね」ニコ

P「無理を言って東京に戻って来てもらってすみませんでした。ご実家のワイナリーの
  お仕事は大丈夫ですか?」

志乃「うふふ……大丈夫よ、私の部下は優秀だから♪」

礼子「あんたの部下に同情するわ。私だったら、こんな飲んだくれの上司の下では仕事
   したくないわね」フン




志乃「あら、ごあいさつね。これでもやる事はやってるわよ?ワイナリーで広報部長の
   仕事をして、MBプロでアイドルをして、それからLIVEバトル運営委員会で役員を
   して。毎日忙しいわ……」ウフフ…

礼子「ウチの事務所ではいつも飲んでるだけじゃない。あんたがウチのメインスポンサー
   なんだから、ウチの将来が不安になってくるわ……」ハア



志乃「うふふ……私を事務所に呼んだのは誰だったかしらねえ……」ニヤニヤ



礼子「…………チッ」







P「アイドルが舌打ちするな。それでは志乃さん、午前中に社長から話を聞いていると
  思いますが、改めて今回の『潰し屋』による被害状況を報告させて戴きます」

志乃「堅苦しい話はいいわ。私が知りたいのは、Pさん達がLIVEバトルで何をしようと
   しているかだけ……場合によっては委員会として止めないといけないしね」

礼子「それも合わせて教えてあげるわよ。言っとくけど今回の件は委員会の責任だからね。
   あんた達がだらしないから、この業界にそんなふざけた連中が入り込んだのよ?
   しっかり反省しなさい」ギロ




P「何をいらいらしてるんだ礼子。志乃さんと何かあったのか?」

礼子「……何もないわよ。それよりさっさと話しなさい」プイ

P「はいはい。すみません志乃さん、それでは説明させて戴きますね—————」



楓(ワイン飲みたいけど、まじめな話をしているし我慢しよう……)ショボン









———



P「まさかベテトレさんが狙われるとは思いませんでした。しかしよく考えれば今回の
  LIVEバトルの瞳子さんのメイントレーナーで、かつ事務所のガードが甘い彼女は
  潰し屋にとって恰好の狙いだったんです……」ギリギリ



志乃「トレちゃん達は外部スタッフだし、アイドルとは違ってガードが甘くなるのも
   仕方ないわね。いっそのこと、4人共ウチの専属トレーナーとして雇っちゃう?」

礼子「それはベテを連れ戻してからにしなさい。あの子自分の姉妹にも何も言わずに、
   一人で抱え込んでいたみたい。その結果、瞳子のLIVEバトルのセットリストを
   連中に渡して失踪したんだから。どうしてそうなったかは知らないけどね」フン





P「俺達が気付くのが遅かったので、もうリストはかなり業界内に出回っていました。
  このままLIVEバトル本番まで気付かずに瞳子さんを送り出していたらと考えると
  ぞっとしますね。現在大急ぎで新たなリストを作り直しています」

礼子「Pとマスがつきっきりでレッスンつけたら、今からでも本番には間に合うでしょ。
   瞳子はウチのエースだし、この程度で負けるほどヤワじゃないわ」



志乃「さすがPさんと礼子ね。いえ、今回は礼ちゃんのお手柄かしら。これで問題は解決、
   予定通り瞳子ちゃんはLIVEバトルで大活躍して、めでたしめでたしね♪」ウフフ…






礼子「……それ本気で言ってるのあんた?それとも酔ってるのかしら?」ギロ



P「落ち着け礼子。志乃さん、これは一時的な解決に過ぎません。今回はひとまず切り抜け
  ましたが、連中はいつまた仕掛けてくるか分からないし、ベテさんも失踪したまま
  です。事件は何一つ解決していないんです」

志乃「LIVEバトルが近いこの忙しい時に、そんな人達を相手にする暇はあるのかしら?
   このまま潰し屋さんに気付かれないように瞳子ちゃんの準備をして、LIVEバトルが
   終わってからにしてもいいんじゃないの……?」ジロ

楓「それでは遅すぎます志乃さん。善は急げ……いや、悪は急いでやっつけないと」




P「今、連中は完全にウチの事務所を陥れたと思い油断しているでしょう。この機を逃す
  わけにはいきません。俺達は今回のLIVEバトルを利用して、逆に連中を業界から
  完全に排除するつもりです。今後のアイドル達の事も考えて……」

楓「ベテさんも心配です。みんなも心配しているし、早く助けてあげないと」

志乃「うふふ……優しいわね楓ちゃんは。でもベテちゃんは潰し屋さんに買収されたかも
   しれないわよ?瞳子ちゃんのリストも自分から渡した可能性だってあるし。
   それでもまだあの子を信用出来るの?」

楓「む、そんな意地悪を言う志乃さんは嫌いです。ベテさんはそんな人じゃありません。
  バッカス様に誓ってもいいですよ」プクー




礼子「あんたさっき『4人共』ウチの専属トレーナーとして雇うって言ってたじゃない。
   本当は分かってるんでしょ?いつまでもくだらない事聞くんじゃないわよ」フン

志乃「あら、そうだったかしら?うふふ……ごめんなさいね楓ちゃん。みんな良い子ね。
   これもPさんのおかげかしらねえ……?」フフ…



P「俺はプロデュースしかしてませんよ。志乃さんが良い子だと言った彼女達を潰し屋から
  守る為にも、LIVEバトル運営委員会のあなたの協力が必要なんです。どうか俺達に
  力を貸してくれませんか—————」









***



—同時刻・隠れ家的ダーツバーにて—



早苗「ここにいたのね。探したわよ真奈美ちゃん」カランカラン

夏美「うわ、カウンターに突っ伏してる。どんだけ飲んでるのよあんた……」スタスタ

真奈美「……ん?早苗さんと……夏美か。何の用だ……?」ヒック

夏美「『何の用だ……?』じゃないわよ。ベテさんがいなくなってからあんた事務所に
   全然来ないし、みんな心配してるのよ?」

真奈美「私だってたまには一人になりたい時もある……ほっといてくれ……」ゴクゴク




早苗「はいはい、とりあえずお酒飲むのやめましょうね。真奈美ちゃんにお話がある子を
   連れてきたの」ヒョイ

真奈美「私に……?」ピク



瞳子「久しぶりね真奈美。あんたでもヤケ酒するのね」カランカラン

菜々「こんばんは〜♪」キャハ☆



真奈美「と、瞳子……!? それに菜々さんまで……」ギョッ





瞳子「少し良いかしら?あんたが私とベテさんの事で気を病んでるなら、一言だけ言って
   おこうと思って」

真奈美「……そうか。余計な心配をかけてすまなかったな。早苗さん、少し瞳子と二人に
    してくれないか?」



早苗「ん、わかった。じゃああっちでダーツしてるわ。行こっか夏美ちゃん、安部先輩♪」

菜々「『菜々ちゃん』でお願いします!! 敬語も禁止です!! 」ムキー!!

夏美「はいはい行きますよ安部先輩。でも本当に[ピー]歳なんですか?ウサミン星人って
   凄いですね……」マジマジ

菜々「ナナは17歳です!! ウサミンパワーでおしおきしちゃいますよ!! 」ウードッカーン!!








———



真奈美「LIVEバトルの方は大丈夫なのか……?」

瞳子「明日からマスさんとPさんと新しいセットリストでレッスンする予定よ。不安が
   ないと言えば嘘になるけど、私はPさんを信じてるから……」

真奈美「そうか……そこまで瞳子の信頼を得るとは、P君は大したものだな」フフ…

瞳子「Pさんだけじゃないわ。あんたの事も事務所のみんなの事も、私は信頼してるわよ。
   もちろんベテさんの事もね」ニコ



真奈美「……それは人が好すぎるんじゃないか?あいつはお前の情報を売ったんだぞ?
    それどころか自分の姉妹や仕事も全部捨てて、何も言わずに姿を消したんだ。
    私はあいつを許せない!! 」ドンッ!!





瞳子「ベテさんがそんな人じゃない事はあんたも知ってるでしょ?だから私や事務所に
   隠れて、ベテさんが抱えていた顧客のレッスンをしていたのよね?マスさんも
   あんたに申し訳ないって言ってたわよ」



真奈美「全部お見通しか。隠し通せるとも思ってなかったが。ベテとはこの業界に入った
    頃からの仲でな。時には親友として、時にはライバルとして互いに競い合って
    いたんだ。昔からプライドが高くて融通が利かない奴だったよ……」フッ…

瞳子「似た者同士ねあんた達。礼さんが教えてくれたから、事務所の皆はベテさんの事を
   責めていないわよ。怒っているのはあんただけだと思うけど?」ジロ






真奈美「怒っている?いや、少し違うな……私はただ、あいつが勝手にいなくなった事が
    悲しいんだ……あいつがアイドルと一線引いて付き合う奴なのは知っていたが、
    せめて私にくらいは……相談してくれてもいいじゃないか……」ポロポロ


    
瞳子「あんたも怒ったり泣いたり忙しいわね。昔はトレーナー仲間だったかもしれない
   けど、今のあんたはアイドルじゃない。ベテさんはトレーナーとして、誇りを
   持って自分の仕事をしてるだけよ」ヤレヤレ

真奈美「だがそれももう終わりだ……あいつの信用は地に落ちた……私に出来る事は……
    あいつがいつでも復帰出来るように、あいつの居場所を守ってやる事だけだ……
    それももう無意味かもしれんが……」グス





瞳子「誰がベテさんを信用してないって言ったのよ。今皆でベテさんを連れ戻そうと
   色々やっているのよ?それに潰し屋にも、ただやられっぱなしじゃないわ。
   LIVEバトルで反撃する計画が進行中よ」

真奈美「だ、だが一体どうやって……」

瞳子「あんた何も知らないの?てっきりレナさんと連絡を取り合ってると思ってたわ。
   あの人今、ラスベガスに行ってるのよ?」



真奈美「ラスベガス……?どうしてそんな所に……」キョトン









***



志乃「簡単に言ってくれるけど、私も色々大変なのよ?元々アイドル側は運営の介入を
   快く思ってないし、委員会からも事務所と仲良くしすぎると怒られちゃうし……」

礼子「そんなの知らないわよ。健全で公平なLIVEバトルの開催と、アイドルを守るのが
   委員会の仕事でしょ?だったらあんたもしっかり働きなさい」フン

P「志乃さんはいつも通り、委員会の仕事をやって戴くだけで結構です。つまり言い方は
  悪いですが、俺達の計画を見て見ぬふりして委員会に黙っていて欲しいんです」

楓「志乃さんは酔っていて何も知らなかったんです。その間にクーデターが起こって、
  LIVEバトルがえらいこっちゃになるだけですから」




志乃「いくら私でも仕事中は飲まないわよ。それに委員会の人間としては、クーデターが
   起ころうとしてるのを黙って見てるわけにはいかないわねえ……」ウフフ

P「社長も説明されたと思いますが、俺達が壊そうとしているのはLIVEバトルを取り巻く
  しがらみや業界関係者の既得権益で、ステージとアイドルはしっかり守ります。ただ
  ウチの事務所と柊ワイナリーも無傷では済まないと思いますが……」オソルオソル

礼子「潰し屋を排除しても連中を雇った人間が業界にいれば意味がないし、そもそもこの
   業界は余計なしがらみが多すぎるわ。一回全部ぶっ壊して浄化した方が、あんたの
   ワイナリーもこれからの事を考えるといいんじゃない?」




志乃「いくら私でも仕事中は飲まないわよ。それに委員会の人間としては、クーデターが
   起ころうとしてるのを黙って見てるわけにはいかないわねえ……」ウフフ

P「社長も説明されたと思いますが、俺達が壊そうとしているのはLIVEバトルを取り巻く
  しがらみや業界関係者の既得権益で、ステージとアイドルはしっかり守ります。ただ
  ウチの事務所と柊ワイナリーも無傷では済まないと思いますが……」オソルオソル



礼子「潰し屋を排除しても連中を雇った人間が業界にいれば意味がないし、そもそもこの
   業界は余計なしがらみが多すぎるわ。一回全部ぶっ壊して浄化した方が、あんたの
   ワイナリーもこれからの事を考えるといいんじゃない?」









志乃「たしかにイメージは良くないかもしれないけど、しがらみも既得権益も悪いこと
   ばかりじゃないのよ?私達だって、それに助けられる事もあるんだから。それを
   壊しちゃったら、今後の仕事が減るかもしれないわよ?」ジロ



P「志乃さんの仰ることもごもっともです。ですが俺達は今までそういうものに出来る限り
  頼らずに、アイドルを育ててきた自負があります。それにウチのアイドル達はみんな
  ファンに愛されてますから、そう簡単に仕事を失う事はないでしょう」

楓「柊ワイナリーのワインも大好きですよ。私達に負けないくらい、世界中にファンも
  沢山いるでしょう。もし運営委員会を外されても、みんなひーらぎ(贔屓)にしてくれ
  ますよ。ただ私としては、もうちょっと安いと嬉しいですけど……」ボソッ





志乃「ありがとう楓ちゃん。そう言ってくれると嬉しいわ。今若い人達がもっと気軽に
   買えるように価格を抑えたワインを作ってるから、楽しみにしててね」ウフフ…

礼子「あんたがウチの事務所にいるのは、委員会の人間としてMBプロを見張るため
   でしょ?今までウチが間違った事があったかしら?今回のクーデターだって、この
   業界の為にやるの。ウチだけ余計な労力を割いて馬鹿馬鹿しいと思うけど、あんた
   もウチのスポンサーなら腹を括りなさい」ギロ



志乃「ちょっと違うわよ礼子。私が見張っているのはMBプロじゃなくてあ・ん・た♪
   それにスポンサーをやっているのは、MBプロとPさんにアイドル業界の未来を
   託したからよ。私だってアイドルの子達を守りたいんだから……」ウフフ…






礼子「だったらあんたはスポンサーらしく、黙って金だけ出しときなさいよ。どうして
   委員会に怒られてまでアイドルをやる必要があるのよ……」ゴゴゴゴゴ…



志乃「うふふ……どうしてかしらねえ…… Pさんに、じゃなくてPさんのプロデュースの
   腕に惚れちゃったからかしらぁ……」ウフフフフ…



P(どうして俺の前だとこの二人はこんなに険悪なんですか?本当に普段は、四天王の
  メンバーで仲良く飲んでるんですか……?)ヒソヒソ

楓(アイドルの王様と運営委員会のお姫様ですから色々あるんですよ。それから鈍感な
  プロデューサーは、ワイン樽の中でじっくり熟成されて死ねばいいと思います)ニコ

P(なぜ!? )ギョッ!




志乃「まぁ最初から止めるつもりはなかったけどね。午前中の会議で、社長にも許可を
   出したわよ。それに私が反対しない事を見越して、もうとっくに色々準備して
   動いているのでしょう?礼ちゃんはどこに行ったのかしら……」ジロ

P「礼さんは潰し屋が過去に日本の社交ダンス界で行った悪事の証拠を集めて、イギリスの
  社交ダンス協会に行きました。そちらから連中と当時の関係者を糾弾するそうです。
  今回の件が起きる前から、礼さんは一人で潰し屋を調べていたそうですから」



礼子「あの子の恨みは相当なものよ。連中さえいなければ、礼は日本を代表する社交
   ダンスのダンサーになってたんだしね。いわゆる7年越しの復讐ってやつかしら。
   このクーデターに乗じて連中を必ず潰すって言ってたわ」フン








志乃「うふふ……今の礼ちゃんはさながら復讐に燃えるジャック(騎士)かしら。私が
   クィーンで礼子がキングで、なかなか洒落が利いてるじゃない……」ウフフ…



楓「ええふだ(良い札)揃ってますね、絵札だけに。ふふっ……」

P「なんの事ですか?」キョトン

礼子「あんた本当に鈍いわね。それでよくアイドルのプロデューサーが務まってると
   思うわ。さてと、それじゃお姫様の許可も下りたし私は帰るわ」スクッ




志乃「あら、飲んでいかないの?もうちょっとゆっくりしていきなさいよ」

礼子「私も色々やる事があるのよ。それにあんたとPが揃うと昔話になるからうんざり
   するわ。あんた達もさっさと帰りなさいよ」スタスタ

P「一応言っておくが、お前はやりすぎるなよ。むしろ今回は俺と志乃さんに任せて、
  じっとしていてくれると助かるんだが……」

礼子「それは無理ね。ウチの事務所に手を出した事を、死ぬほど後悔させてやるわ」スタスタ





バタン



P「ありゃ相当怒ってるな。またどこかで大暴れしなければいいが……」

楓「礼子さんは優しい人ですから。プロデューサーもわかってますよね?」ニコ

志乃「礼子もそのあたりは弁えているわよ。この件はLIVEバトル全体に影響するしね。
   私も礼子を見張っているし、Pさんは事務所とみんなを守ってね♪」ウフフ…





バタン



P「ありゃ相当怒ってるな。またどこかで大暴れしなければいいが……」

楓「礼子さんは優しい人ですから。プロデューサーもわかってますよね?」ニコ

志乃「礼子もそのあたりは弁えているわよ。この件はLIVEバトル全体に影響するしね。
   私も礼子を見張っているし、Pさんは事務所とみんなを守ってね♪」ウフフ…





P「『見張っている』ですか。懐かしい言葉ですね。礼子がいなければ志乃さんとこうして
  飲むこともありませんでしたよね」キュ、キュ、キュ……ポンッ!



志乃「そうねえ。私もまさか自分がアイドルをやるなんて思わなかったわ。でもPさんや
   楓ちゃんのおかげで毎日楽しいわ。皆で飲むお酒も美味しいしね……」トクトクトク…

P「そう言って戴けるとこちらも助かります。この件が片付いたら改めて飲み直しましょう。
  四天王全員が相手でも朝まで付き合いますよ」ス…

楓「ふふっ、それは楽しみです。酔いつぶれても寝かせてあげませんよ?」ス…

志乃「うふふ……祝勝会ね。瑞樹ちゃん達やレナちゃん達も呼んで盛大にやりましょう。
   ウチのワインも沢山準備するわ……」ス…



P・楓・志乃「「「カンパイ」」」カチン









***



P(ここで俺達と志乃さんの出会いについて少し話そう—————)



P(MBプロが設立して4年目のある日、礼子が社交界のパーティーで大暴れをして
  謹慎処分となり、委員会の方が事務所に来ることになった—————)





ちひろ(?歳)「ど、どうぞ……粗茶ですが……」コト

志乃(26歳)「お気遣いなく。私はマイボトルを持って来ているから……」ゴト

P(26歳)(ワインボトル……?)

志乃「Pさんもいかが?ウチのワインだけど」サッ→ワイングラス

P「いえ、結構です。まだ仕事中ですので……」

志乃「あらそう?残念……」キュッキュッキュッ…ポン!




P(真昼間から出先で堂々とワインボトルを空けるなんて、一体何者だこの人……)

ちひろ(委員会の中でもとびきり厄介な人が来ましたね。彼女柊志乃ですよ)ヒソヒソ

P(ご存知なんですかちひろさん?)ヒソヒソ



ちひろ(LIVEバトル運営委員会のスポンサー『柊ワイナリー』のお嬢様で、ご自身も
    役員をしておられるとか。委員会には最近入ったそうですけど、その美貌と
    振る舞いから『運営委員会のクィーン』と呼ばれている大物です)ヒソヒソ



P(マジですか……胃が痛くなってきました……)キリキリ






志乃「社長さんは委員会本部で聴取を受けているから、事務所の案内はPさん達がして
   くださるのよね?安心して、私は話を聞きに来ただけだから……」ウフフ…

P「ひゃ、ひゃいっ!! どうじょ納得しゃれるまで思う存分聞いてくだしゃい!! 」カチコチ

ちひろ「う、うちは清廉潔白、一点の曇りもないクリーンな企業です!! 私は生まれてから
    一度も嘘をついたことがありませんから!! 」ギクシャク

P(怪しさ満点でしょう!? 何ですかその胡散臭さ百点満点のセリフは!! )ヒソヒソ

ちひろ(噛みまくってるプロデューサーさんに言われたくありませんよ!! )ヒソヒソ

志乃「うふふ……面白いわねあなた達……」クスクス





———



志乃「さて、今回の『高橋礼子がアメリカの大富豪に一本背負い事件』だけど、かなり
   深刻な事態になってるのよ。MBプロどころか日本のアイドル業界が潰される……
   いえ、国際問題になりかけてるわ」ゴクゴク



ちひろ「」バタッ

P「ちひろさ—————ん!? しっかりしてくださ—————い!! 」ユサユサ

志乃「ただあの人、不思議と社交界のお偉いさんに人気があるからかばってくれてる人も
   いるわ。そもそも事件の発端は、そのぶん投げられた大富豪が礼子さんにしつこく
   愛人にならないかって迫っていたからみたいだし……」ゴクゴク

P「あのバカ……なんでもかんでも荷物みたいにぶん投げやがって…………」ハア




志乃「そういえばPさんは礼子さんとは幼馴染みでしたっけ?そのまま大人になって
   アイドルとプロデューサーになるなんて、ロマンチックねえ……」ウフフ…

P「ただの偶然ですよ。俺だって好きであんなじゃじゃ馬のプロデュースしてるわけじゃ
  ありません。あれじゃ嫁の貰い手がなくなるぞあいつ。もう26なのに……」ハア

志乃「あら、私も26なんだけど、Pさんから見れば行き後れになるのかしら……?」ジロ

P「い、いえいえ!そんな事は全然ありません!柊さんは美人でお淑やかだし、引く手も
  数多でしょう!礼子とは雲泥の差ですよ!」アタフタ

志乃「そうでもないのよ。私に近づく男は、みんな私と一緒に飲むと離れてしまうのよね。
   『お前と一緒にいると早死にする』って言うのひどいと思わない……?」ゴクゴク

P「は、ははは……ソウデスネ……」(目を逸らしながら)






志乃「でもPさんが礼子さんの事を好きじゃないって聞いて安心したわ。これで委員会も、
   安心して礼子さんを業界から追い出す事が出来るわね」サラリ



P「え……?ど、どういう事ですか……?」ピク

志乃「言葉通りの意味よ。今回の事件の落としどころとしては、高橋礼子のアイドル業界
   からの追放で落ち着きそうよ。あ、MBプロとPさん達はお咎めなしだから」ウフフ…

P「そ、そんな……!どうして礼子だけが追放されるんですか!! だったら俺と社長も
  連帯責任でしょう!? 」ガタッ


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