【まほいく安価】キーク「18人目もゲームに入れよう」【魔法少女育成計画restart】 (1000)


前々スレ
【まほいく安価】ファヴ「突然だけど17人目を追加するぽん!」【魔法少女育成計画】
【まほいく安価】ファヴ「突然だけど17人目を追加するぽん!」【魔法少女育成計画】 - SSまとめ速報
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前スレ
【まほいく安価】クラムベリー「17人目の追加によって……」【魔法少女育成計画】
【まほいく安価】クラムベリー「17人目の追加によって……」【魔法少女育成計画】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484146685/)

の続き


・なんどめだまほいく並何番煎じ
・安価とコンマで進行
・キャラメイクは1人のみ
・基本的にそのキャラが主人公となり、前スレまでの主人公は準主役的な視点
・突然原作QUEENSまでのネタバレが出ても責任はとれないぽん

・魔法少女育成計画restart(原作2、3巻)が舞台
・これから原作読もうと思っている人はバリバリのネタバレ注意

・頑張って生き残ってほしいぽん


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1484376232


 前スレキャラ

 魔法少女「キノ」のステータス

【魔法の銃で撃ったものを強くしたり弱くしたりするよ】


身体能力……70 ★★★★
精神力……78  ★★★★
知力……36   ★★
幸運……78   ★★★★

スキル「幸運」
スキル「射撃」
スキル「逃げ」

持ち物
「ラピッドスワロー」
「四次元袋」
「カラミティ・メアリ特製重火器」


魔法の国監査部門所属の魔法少女
リップルとコンビを組んでおり、突如送信されたメールによってゲームの招待を受ける


・・・・・・

そこは教室だった。いや、教室のはずだった。生徒の為の机や、教師の為の教卓は今やすべてが炎に包まれている

燃え盛る炎の中、魔法少女が対峙する。片や3人、片や1人。3対1ではあるが、1人である魔法少女の顔には不敵な笑みが浮かんでいた


ラ・ピュセル「もう逃げられないぞ!」

フレイミィ「フッ、逃げる必要など……ここで3人まとめて始末してくれる!」

スノーホワイト「私達はそう簡単にやられたりしない!」

アリス「……」

ラ・ピュセル「3人に勝てるわけないだろ!」

フレイミィ「馬鹿野郎お前私は勝つぞお前!」


戦いの火蓋が切って落とされる。ラ・ピュセルが二振りの剣を振りかざし、フレイミィが炎を飛ばす。ハードゴア・アリスが防御に徹し、ラ・ピュセルとスノーホワイトへの攻撃を妨げる。たとえアリスが黒焦げになろうとも、すぐさま再生し、フレイミィの攻撃はすべてアリスによって2人――特にスノーホワイト――へのダメージはほとんど皆無であった


ラ・ピュセル「ハァァァッッ!!」ズバッ

フレイミィ「ヒヒッ……」ボワッ

ラ・ピュセル「ッ、なんだ!? 炎に消えたぞ……自殺か?」

スノーホワイト「いや、まだ彼女の声が聞こえる。炎との同化……アリス!」

アリス「……」コクッ

スノーホワイト「……」


感覚を研ぎ澄ます。フレイミィが炎に紛れてどこにいるか、確認するまでもない。今、スノーホワイトの背後から虎視眈々と彼女の命を狙っているのだ

フレイミィが飛び出す。延髄を狙った回し蹴り。これは避けられまい――


と思っていたフレイミィの予想を裏切ったのは、スノーホワイトだった

彼女は思い切り身を屈め、フレイミィの回し蹴りを避けてみせた。これにはフレイミィも驚くしかない。何故だ、完璧な不意打ちだったはず

考えている暇は無い。無いのだが、予想外の状況にフレイミィの思考が一瞬だけ遅れる。魔法少女にとってその一瞬がどれだけ重要か彼女は知っているが、それでも目の前の黒い少女が放つものを避けるには及ばなかった

ブシャアアァァァという音と共に、アリスの持つ消火器から消火剤が噴出されていく。スノーホワイトは既にそこにはいない。いるのは隙のできたフレイミィのみ

フレイミィは悲鳴をあげて赤から白へと色を変えた

無力化できた。魔法の国監査部門所属の魔法少女スノーホワイトの仕事はこれで終わりだ。が、スノーホワイトの私物もとい野良魔法少女であるアリスの溜飲はまだ下がらない。消火器を思い切り振りかざし、フレイミィへと叩きつける


ラ・ピュセル「お、おいアリス! 私達の仕事は逮捕だぞ!」

アリス「スノーホワイトを、狙った……報い……」ガンガンガンガンガンガン

スノーホワイト「あ、ありがとう……もういいよアリス」アハハ

アリス「……」ピタッ

アリス「はい」ニタァ


・・・・・・


「いやぁやっぱりいいなぁ……あのフレイム・フレイミィを瞬く間に逮捕! 流石はスノーホワイトだよ」

「そんなにスノーホワイトが好きならファンレターくらい送ればいいぽん」

「ああそれもアリか……でもこっちはこっちで彼女の為のことをしてるんだからまだ別にいいよねー……ゲームの準備できた?」

「全員に招待状を送ったぽん」

「ファルの仕事は信用してるけどー……一応確認しよっか。ああ、漏れはないね。彼女にも送れてる」


彼女――クラムベリーの試験をパスした通称「クラムベリーの子供達」のひとり


 18人目の魔法少女の「名前」

 >>9

シャナ

来たか!
安価下

>>1、誘導貼ってる前スレsageしてしまってるよ

安価下


「名前」

シャナ


 なにか名前を付け加えますか?
 付け加えた場合「シャナ・〇〇」「〇〇××シャナ」「〇〇シャナ××」のようになります
 付け加えないも可


 >>15

安価下

美しい妖精のシャナ

妖精か、似合う魔法ってあるかな?
安価下


名前:美しい妖精のシャナ

 の……人間状態の名前

 >>20

シャナとクエレブレという話を思い出してつい
安価下

安価下

>>19
あー、シャナの名前の元ネタそれだもんな
毒を使うドラゴンの伴侶

安価下

 
龍崎紗南
りゅうざき しゃな?さなみ?

 の……年齢・性格・職業

 >>25

17
引っ込み思案
童話作家

作家志望なのか中卒なのか…


 魔法少女「美しい妖精のシャナ」

 ……の容姿 

 >>30

手乗りサイズ

あ、名前にとらわれず好きな容姿で
ある意味名前がフェイクになってもいいです

安価踏んでたら↓

手のりサイズのテンプレ妖精って感じかな
安価下

手乗りサイズだと色々と不自由があるので申し訳ない再安価
もし体の大きさを変えられるチェルナーのような魔法になったら普段は手乗りサイズになるということで

容姿……>>直下

前スレといい一昔前(驚愕)のラノベ好きだな!

美しい妖精のシャナの

……魔法

>>44

いつでも消えることができる

ドラゴン使役(お供のドラゴンと友達だよ)

透明化かな
それとも一時的な存在消失レベル?

 ステータス

 コンマで決める欄はコンマ二桁で、01~00(100)で決めます


身体能力(公式ステ基準の『破壊力・耐久力・俊敏性』をまとめたステ)……>>↓1コンマ

知性……>>↓2コンマ

精神力……>>↓3コンマ

幸運……>>↓4コンマ

自己主張……性格と職業から★

野望・欲望……性格と職業から★★★

魔法のポテンシャル……★★★

好きなもの……↓5

嫌いな物……↓6

はい

好き…男
嫌い…母
って感じか

にしても、スペックが高め

好きなもの以降は別レスで安価が良かったかもね

安価下

身体能力……54
知力……52
精神力……96
幸運……96

好きなもの……高い物(値段、標高など)
嫌いな物……男

好みは確定
コンマによるステを振りなおしますか?↓2

高いという概念が好きというのもなんか過去に闇がありそう
振り直さない

なんか、resturtのメンツ的にハイテンションになりそう…安価下

但し、ラ・ピュセルはシャナの嫌いなもの的に大地雷である
安価下


 魔法少女「美しい妖精のシャナ」のステータス

本名:龍崎紗南(りゅうざき さな)

魔法:【いつでも消えることができるよ】


身体能力……54 ★★★
知力……52   ★★★
精神力……96  ★★★★★
幸運……96   ★★★★★
自己主張……  ★
野望・欲望…… ★★★
魔法のポテンシャル……★★★

スキル「豪運」……身体能力・知力ロール時に+15
スキル「剣道」……刀を使ったときのみ身体能力ロール+5

持ち物
「太刀」

いつでも消えることができるよってのはどういう形になるんだろう
未来予知能力オミットされたキングクリムゾン状態?


野良の魔法少女
自分がどんな魔法少女試験を受けたのか思い出せない

魔法少女歴は2年。仮に戦いになった時、自分はどう戦えばいいかそれなりに理解している
魔法少女としての外見は低い背丈に真っ赤な長髪に黒いコートを羽織っている
武器は背負った太刀

引っ込み思案な性格


正体は高校生童話作家の龍崎サナ(ペンネーム)こと、龍崎紗南
現在高校2年生
誕生日は12月5日、血液型はAB型

その性格から、高校に友達は1人もいないが、以前出した童話の少ないながらも居るファンからのファンレターが仕事の励み
その豪運から出版社や編集との出会いや付き合いがよく、今度アニメの原作をやってみないかと言われている

幼いころから引っ込み思案な性格を直そうと祖父から剣道を習っていたため、多少長さや形状が違っていても刀剣類の扱いには一家言ある
が、元々の目標であった性格の矯正には至っていない

好きなものは高いもので、高いところや値段の高い物に憧れを持つ
嫌いなものは男性。この年代の女子高生にはよくある傾向である


そして俺は灼眼のシャナを読んだことがない

>>84
しっくり来るのはそれなのかな
攻撃を防ぐだけなら、「存在していない」扱いだからスイムの上位互換的な
弱点は「消えている」から、こちらからは相手に干渉できないとか
または時間制限があるか

>>85
私も原作知らんし、まあ引っ張る必要ないんじゃない
性格面から別物になるだろうし


  ようこそ魔法少女育成計画へ
 これは思い描いた最高の魔法少女になるためのRPGです


 魔法少女育成計画とは?

・初心者でも入りやすい簡単さ&熟練者を飽きさせない奥深さ!
・マジカルトレースシステムにより可能となった現実と変わらない操作感覚!
・リアルの極致に達した超美麗なグラフィク!
・無限に増え続けるアイテムがコレクター魂に火をつける!
・どれだけプレイしても完全無料!課金一切無し!


魔法少女の皆さん、剣と幻想の世界へようこそ!

『魔法少女育成計画』は魔法少女専用ソーシャルゲームとして生まれ変わりました
仲間同士で絆を深め合い、力をもって強敵に立ち向かう。強さと優しさ。知恵と勇気。全てを備えなければ、この世界で生き抜くことなど到底できません
封印されたエリアを開放しながらどんどん先へと進んでいきましょう。最深部に潜む魔王を倒し、ゲームをクリアする頃には、リアルでも魔法少女へと成長しているという、教育、訓練用シミュレーターとしての側面も持つスーパーなRPGなのです
十五人の仲間と協力して魔王を討伐し、世界に平和をもたらしましょう

勿論ゲーム内で受けたダメージ等は現実に反映されません!
たとえ死亡してもゲームオーバーになるだけで、現実で死ぬことは無い安心設計!


・ゲームの目的……魔王を討伐する

・クリア報酬……百億円。ただし魔王を倒したプレイヤーのみ
・エリア開放報酬……百万円。ただしエリアを開放したプレイヤーのみ
・参加賞……十万円。ゲームオーバーしても支払われる

キノも中身全然違うから今更今更
今回のキャラ付けを意識して動かせばいい
>>1が動かすの難しいなら、まだキャラ付けすれば良し

安価下


 参加プレイヤー一覧

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira126311.jpg

+

キノ【魔法の銃で撃ったものを強くしたり弱くしたりできるよ】

美しい妖精のシャナ【いつでも消えることができるよ】

確かに「正真正銘の消失」なら、プフレ級の知能さえあれば無理矢理抜ける事も可能なのかもしれんのか


・・・・・・

~荒野エリア~


照りつける太陽の熱さで目が覚めた。いや、絶え間なく吹く乾いた風のせいか……そんなことはどうでもいいか

ここはどこだろう。私は確か、退屈な高校から下校し、童話執筆のために机に向かっていたはずだ。そこまでは思い出せる

幻覚を見るほど根を詰めたつもりはない。そしてなにより、目の前に広がる状況が肌に伝わってくる時点で幻覚ではない

魔法少女「美しい妖精のシャナ」は困惑していた


シャナ「(…………なに、これ)」


今まで居た自分の部屋ではなく、目の前に広がる光景は見渡す限りの荒野。何もない。本当に何もない。あるとすれば遠くに何か建物のような物が点在しているくらいで、地平線が見えるくらい何もない

テンプレな台詞を吐くなら「飲み過ぎたか」……だが龍崎紗南は未成年であるゆえ飲酒はしない

今までどんな状況でもあまり心を動かすことの無かった紗南にとって、この状況は困惑と混乱を呼び寄せる久々の体験となった


ムクリと起き上がり、背中に手をやる。太刀はある

つまり、今自分は魔法少女なのだ。まぁ視界の端に見えた自分自身を見て察していたが……

シャナは自分の恰好が嫌いだ。紅い瞳に紅い髪、絶世の美少女並のルックスなのはまだいい

が、それ以外は最悪だ。ちんちくりんだし、なにより黒いコートの下に何もないのだ。この荒野くらい何もない。衣類の一切が下着を除いて何もない

魔法少女になって2年が経つ今、今更気にすることもないが、やはり一般女子としての羞恥心は持ち合わせている


シャナ「(…………とりあえず、ここどこだろう)」

『チュートリアル開始!』

シャナ「ッ!?」


周りに気を配り、太刀の柄に手をかける

雰囲気が変わったのだ。今まで何もなかった荒野に、ほんの少しの悪意と殺意を感じる

ふと下を見ると、何もない荒野の地面が盛り上がり、白い骨が見えた


『ガイコツを倒してください!』


アナウンスが響く。なんだこれは。なんだこれは

考える間もなく、地上に飛び出したガイコツ達はシャナ目がけ飛びかかった


 身体能力(54+15=69)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→見事ガイコツ達を倒す
 失敗→油断していた。ガイコツ達はシャナに覆いかぶさる

はい


シャナ「くっ!」ドカッ


太刀を抜いている暇が無い。とりあえず目の前のガイコツの頭目がけパンチ

ガイコツは簡単に砕け、動かなくなった


シャナ「弱い! これなら……!」


インドア派のシャナにも並の魔法少女くらいの身体能力はあり、幼い頃から習っていた剣道で多少の身の動かし方が分かる

パンチ、キックを繰り返して見事シャナはガイコツを全滅させた


『チュートリアル終了! 街へ向かってください』

シャナ「はぁ?」

シャナ「(なんなの……なんなのこれ……チュートリアルって……ゲーム? これゲームなの?)」


訳も分からないまま……更には言われた街とやらの場所も分からないままアナウンスが止まる

シャナはポツンと立ち尽くした


シャナ「(………………とりあえず、その街ってのを目指そう)」


 シャナは歩き出し……直下コンマ二桁
 
 01~10→爆走する車椅子がこちらに向かってくるのを見た
 11~20→遠くでなんか名乗りを上げる声が聞こえた
 21~30→空から声をかけられた
 31~40→襲われている魔法少女を見た
 41~50→アニメで見たことのある魔法少女と出会った
 51~60→楽しい気分になった
 61~89→1人荒野を進んだ
 90~00→刀を持った魔法少女に鉢合わせた

ぼっちである

この時点で会っときたいキャラっているん?


・・・・・・


魔法の国監査部門の一匹狼キノは突如として現れたガイコツ達に困惑しながらも対応した

自分の身体能力を上げ、まず四次元袋の中に入っていたハンドガンでガイコツを打ち抜く。ハンドガンで倒せると分かれば無駄弾を使わないために肉弾戦

そしてガイコツ集団を倒し終わり、街へ向かうようアナウンスが流れる

キノは引退した先輩魔法少女から渡されたバイク型箒「ラピッドスワロー」に跨り、街を探して移動していた

ラピッドスワローだけではない。四次元袋やその中身も引退した先輩からの品だ。ささやかな引退式で泣くキノに餞別としてくれたのだ。あの2人は魔法少女の関係の無い日常で今でも元気にしているだろうか

ただでさえ周りの魔法少女と関わりの無かったキノにとって、2人の引退はいよいよキノを孤高の存在にした

魔法の端末に同僚からのメッセージが来ることは無く、完全に仕事用と化している

だが寂しくはない。何故なら、魔法少女にとって友など必要無いからだ。ここがどこか知らないが、現実で魔法少女に会ったらまず警戒。それが師匠の教えだった

ふと、師匠の顔を思い浮かべるが、なかなかうまくいかない。まぁいっか。ロクに連絡もしてこない師匠などどこかで元気にしているだろう

記憶処理されてるね


キノ「(にしても、本当に街なんてあるのかな……遠くから見えた建物っぽいところに行ってみたけど、ただのビルだったし)」


ラピッドスワローがあってよかった。この距離を走って移動できないことはないが、楽だ

点在する朽ちたビルの中に入ってみたが、特に何もない。誰かがオフィスとして使っていたとか、誰かが住んでいたとか、そういったものも一切無い。初めからもぬけの殻だったのだ


キノ「(とりあえず魔法の国に連絡を………………できない?)」

キノ「(メールが帰ってくる……これは一体……)」

キノ「(…………今できるのは、ここから帰ることか)」


 キノはラピッドスワローを駆り……>>直下コンマ二桁
 
 01~10→爆走する車椅子がこちらに向かってくるのを見た
 11~20→遠くでなんか名乗りを上げる声が聞こえた
 21~30→きつい訛りで話しかけられた
 31~40→襲われている魔法少女を見た
 41~50→アニメで見たことのある魔法少女と出会った
 51~60→楽しい気分になった
 61~89→街を見つけた
 90~00→刀を持った魔法少女に鉢合わせた

はい


キノ「(ん? あれは……街、なのかな?)」


遠くにビル群が見える。今までのぽつぽつとしたものではなく、集結している。街と呼ぶにはまぁ十分だろう

ラピッドスワローのアクセルを捻る。先輩ほどうまくは扱えないが、簡単な速度調節と方向転換ならできる。街へとフルスロットルだ


キノ「(とりあえず、街に行って誰かいれば……)」


そんなキノの願いもむなしく、街はもはや街とは言えなかった。街の建物はそこらに点在しているビルと同じで、人っ子一人いない

昔映画で見た世紀末世界だとキノは思った

人がいない。さて、いよいよ詰まったぞ


・・・・・・


シャナ「はぁ……何にもない……」

シャナ「これ、本当に街なんてあるのか?」

シャナ「それになんか、お腹が……うう」

シャナ「(こんなの、今まで無かったのに……魔法少女なのに、お腹が減るなんて……)」

シャナ「(まるで人間みたい……はぁ……)」

シャナ「お腹空いた……」


シャナは何もない荒野を走るのをやめ、歩いた

自分の性格が話し相手が必要ないものを幸運だと思う。あ、そうだ。帰ったらこの体験を元に1本作ろう。きっといい感じの物語が書けるはず


 幸運(96)ロール……直下コンマ二桁

 成功→どこかからいい匂いがする
 失敗→ファンブル


今日はここまでっす!

凄い安心感

乙ー

出来る限り多くを生き残らせるようにしないとなー
疑似W主人公なのも面白そうで、期待


なんだろう、とても安心する良い匂いがする。どこかで嗅いだような、ノスタルジックな匂いだ


シャナ「(……………………カレー?)」


ガバッと起き上がり、全力疾走。匂いの元を辿ると、そこには4人の魔法少女がいた

1人は下半身が馬になっているケンタウロスみたいな魔法少女、1人は巫女服を着た魔法少女、1人はどことなく人間味の無い外見の魔法少女、そして1人は、手のひらに直接カレーを持つ魔法少女だった


「えっ、誰ですの?」

「Wow、また魔法少女デスか」

「……」

「…………あ、あの……?」


 シャナは……>>直下
 
 1.カレーの乗っている手にかぶりついた
 2.そのカレーをくれと懇願した


シャナ「あ、あの……」

「は、はい?」


さっきまで自分の性格に感謝していたが、今は真逆だ

家族以外の人と話すのはどれくらいぶりだろうか。言葉を選びながら、どもらないように喉から声を絞り出す


シャナ「カレー……ください……」


困惑される。当然だ。この世界? で自分以外の人間など魔法少女しかいない。魔法少女が物乞い、まったく笑い話だ


「えっ、でも……あの、器が無いんですけど……」

シャナ「こっ、この手に……!」

「いいんですか?」

シャナ「ください……!」

「は、はぁ」


手から手へ、カレーが移動する。カレーはとろみがあるとはいえ液状なので、まさに上から下へと拝受される

シャナは手が汚れることも構わず、カレーを口に含み、嚥下した


「で、この人誰ですの? ペチカさんのお知り合い?」

「いえいえいえ! 知りませんこんな人!」


こんな人呼ばわりである

突然の魔法少女の来襲に、4人はとりあえず警戒態勢をとっている。が、いまいち緊張感が無い

シャナはカレーを食べ終わり、地面に手をこすりつけることで汚れを取り、とりあえずコートで拭いて向き直った


シャナ「………………ありがとう、ございます……ごちそうさまでした……」

「お、お粗末様でした……?」


カレーは美味しすぎた。この上ないほど、今までこんな美味しいカレーなんて食べたことがなかった。こんな場所でなければ自分のキャラを忘れて某味っ子アニメのようなリアクションをとってしまうところだ

シャナはまずおどおどと自己紹介をする。今更になって自分の行動が恥ずかしく、4人を直視できない

4人の魔法少女は、ケンタウロスがクランテイル、巫女服が御世方那子、人形のような魔法少女がリオネッタ、そして料理をくれた女神がペチカと名乗った

どうやらパーティーを組んでいるらしい


クランテイル「美しい妖精のシャナ……?」

シャナ「前半の名前は忘れてください……」

リオネッタ「じゃあなんでそんな名前にしましたの? 魔法少女の名前って自分で決められると記憶していましたが」

シャナ「……色々あって」

那子「その背中に持ってるのって、ジャパニーズソードでしょう!? ちょっと見せてくだサイよー!」

シャナ「えっ、あ、これは……」


クランテイル「どうやら荒事をやる魔法少女のようだが……」

シャナ「……」

リオネッタ「今までどれくらいの敵を倒しました? ああ、この辺に出没するガイコツ達のことですわ」

シャナ「…………20、くらい?」


走っている時にガイコツはよく現れた。逃げて逃げられないことはないのだが、むかつくので片っ端から破壊していったらそれくらいに数になったと記憶している


クランテイル「なるほど……」

那子「ワーオ! ストロングサムラーイ!」

ペチカ「………………」


クランテイル「我々のパーティーはとにかく現れるモンスターを退治してマジカルキャンディーを集めるという方針をとっている。故に戦う魔法少女は貴重だ」


突如自分達のパーティーについて話し始める。どういうことかと思うと、そういうことかと分かった

クランテイルは、良ければ自分達と一緒に来ないかと遠回しに言っているのだ

そしてシャナは一言も発しないペチカを見て、察した

この空気、今まで学校で何度も感じたことがある。班決めとかでよくある雰囲気だ

自分も何度も友達同士で組めなかった班に「私が抜けるから組みなよ」と言ったことがある。皆最初は「えーいいよそんなのー!」と言うが、結局は紗南が抜けることになるというのが定番だった。このペチカも、今にも自分が抜けると言い出しかねない雰囲気だ

つまりペチカは戦えない魔法少女で、他の3人は戦える魔法少女だということだ

魔法の端末に書いてあるこのゲームとやらのルールはひととおり読んだ。ガイコツ等のモンスターを倒すとマジカルキャンディーというこの世界での通貨が落ちること。パーティーは最大4人だということ。今ここにいるのは5人

もしシャナが「一緒に行く」などと言い出したら、必然的にパーティーメンバーの入れ替えをする雰囲気になってしまうだろう


 シャナは……>>164
 
 1.4人と別れ、1人街へと向かった
 2.ペチカを引き抜きたいと言った
 

確か次はデイジーが射撃反射で逝くだったか?

安価下


このゲームにおいて、パーティーは大きな意味を持つ。マジカルキャンディーを共有でき、ゲーム内で起こる様々なイベントもそのパーティーの内誰か1人がイベントをクリアすればパーティー全体の得点となる


クランテイル「つまり、パーティーを組めばそれだけ効率がいいということだ」

シャナ「そうですか。じゃあ私も早くパーティーをどこかで組まないとですね」

リオネッタ「あら、行ってしまいますの?」

シャナ「一緒に行動しててキャンディーをそっちのパーティーにとられるのは御免ですから」

クランテイル「なんだと?」

那子「フム、今のはセンセンフコクってやつですね! キャンディー争奪戦デース!」

クランテイル「……我々はそちらの邪魔をするつもりはない」

シャナ「そっちがそうしてくれるなら、こっちも邪魔にはなりませんよ。それじゃ」


ペチカに目を向けると、どこかホッとしたような顔をしている。よかった。命の恩人? に悲しい顔をさせるのは目覚めが悪いし、なにより魔法少女としていただけない

かといってシャナがペチカをこのパーティーから引き抜いたところで、ペチカが得られる恩恵は少なくなる

これからも彼女がこのパーティーにいられますように、と願うと、シャナは再び荒野を進んでいった


カッコつけてクランテイル達のパーティーから離れてから数十分、やはり街は見つからない。ああめんどくさい。インドア派にこんな運動を強いるなんてこのゲームを作った奴は趣味が悪いんだ

シャナが心の中でクソゲー認定していると、再び人の気配を感じた


 シャナが出会ったのは……>>直下コンマ二桁
 
 01~30→爆走する車椅子
 31~60→和気藹々とした4人組
 61~90→名乗りを上げている少女が目立つグループ
 91~00→抜き身の日本刀を持った少女


感じたのは気配だけではない。殺気だ。シャナに向けたものではなく、そこら一帯に振り撒くような殺気だった

すぐ近くだった。魔法少女だ

彼女の周りには破壊されたガイコツが転がっている。つまり、モンスター退治をして、他にもいないか探しているのか。よほどマジカルキャンディーに飢えた奴なんだなと近付いていく。このゲーム内で他の魔法少女とパーティーを組めるということは、彼女とも組めるかもしれないということだ


殺気の元に行くと、そこには抜き身の日本刀をガリガリと地面に引き摺り、ヨロヨロと歩く着物の魔法少女がいた

お互いにその姿を確認する。と、着物の魔法少女が寄って来る


「音楽家……? 音楽家か?」

シャナ「(な、なんだコイツ……)」


せっかくしたくない人付き合いをしてやろうと思った矢先にこれだ。変人じゃないか。ハズレだハズレ。もっかい回そう。だが現状はガチャなどではない。会ったからには対応しなければならない


「音楽家か?」

シャナ「違うし」ボソッ


自分は音楽家などではなく、作家だ。誰かと勘違いしているのだろうか。記憶の中から音楽家をキーワードに引き出しを開けても、学校の音楽室の肖像画しか思い浮かばない

今度はシャナから色々尋ねようと口を開こうとすると、着物の魔法少女が刀を大きく振りかぶるのが見えた


「音楽家ァ……!」

シャナ「ッッ!!?(コイツ、私を!?)」

シャナ「違うって!」

「どこだァ……!」


 シャナは……>>180
 
 1.魔法で避ける
 2.太刀で受け止める

 
 
 そのレスで身体能力(54+15=69)ロール

 
 成功→回避した
 失敗→斬られた
 

1


シャナは自分の魔法が嫌いだ

いつでも消えることができる魔法は魔法をかける対象の視覚、聴覚、嗅覚――あらゆる五感から物理現象、その人の記憶に至るまで自分を消すことのできる認識攪乱能力だが、それには条件がある

まず、消えるには自分の素肌を対象見せる必要があるのだ。常に出ている顔はカウントされず、そのためには腕や足、胴体を露出しなくてはならない。そして、見た肌面積が大きければ大きいほど、対象はシャナを見失う

コートの袖を捲って腕を見せれば視界から消え、脚を見せれば聴覚からも消えて声や足跡も聞こえなくなる。前をはだけさせればその対象が放つ攻撃すら透過してみせる。さらに肌を露出すれば、自分が振れている物すら消すことが可能だ

極論、全裸になれば強い。が、冗談ではない

初めて変身したとき、足まで届くコートの下には下着すら無かった。そして魔法の発動条件は肌の露出。ふざけていた。露出狂だ。痴女だ

だから魔法の国に「せめて下着だけでも」と土下座する勢いで嘆願して、文字通りせめてもの慈悲で下着がコスチュームに加わった。調子に乗ってせめて肌着もと嘆願すると、「魔法少女のコスチュームには意味があるから、これ以上変えられない」と一蹴された。シャナは窓口で「コスチュームっつったってコートだけじゃねぇかよ!」と叫んで帰ったのをいまだに根に持っている

もう1度言う、シャナは自分の魔法が嫌いだ

嫌いだが、今は使うしかない


今にも目の前の魔法少女は刀を振り下ろそうとしている

両者の距離はとても日本刀が届く距離ではないのだが、魔法少女相手に油断はできない。空間を超えて斬撃をするという予想もできる。だから受け止めたり、体を捻って避けるという選択肢を排した

急いでコートの前を開ける。間に合え!


ギリギリ間に合った。が、それは生命がまだあるという意味でのギリギリだった

着物の魔法少女の放った斬撃はシャナに飛び込んでくる。前をはだけて肌さえ見られれば彼女の攻撃は自分を透過するだろう

しかし、1歩、彼女の斬撃の方が速かった


シャナ「ギッ、アアアァァァッ!!」


コートを開けようとしていた右腕の肘から先が落ちる。が、ギリギリコートは開かれ、着物の魔法少女の目にはシャナのおへそが映った

紙一重のタイミングで魔法が発動し、斬撃がシャナを通り抜ける

着物の魔法少女はシャナの姿を見失い、再びうわごとのように「音楽家」とつぶやきながら去っていった


シャナ「ああっ、ガッ、あああぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」


ゴロゴロと転がりまわる。痛い、痛い、痛い!

いや、落ち着け……ゲームの説明にはこうあった。ダメージは現実にフィードバックされないと。ならばこの腕もゲームさえ終われば治る。大丈夫、大丈夫

パニックに陥る中、そう自分に言い聞かせて落ちたコートの右腕部分の袖を使って傷口を縛った

右腕自体は……置いて行った

とにかく、街だ。街に行けば、病院とか……RPGなら宿屋とかがあるはずだ。そこで休んで、傷を癒そう

シャナは着物の魔法少女にいつか仕返しをしてやると誓い、すぐ近くに聳え立つビル群へと足を進めた


・・・・・・

~荒野の街~


到底街とは言えない街にたどり着いたシャナ。必死に病院か宿屋を探すが、建物はどれもそこらにあるビルと同じで、何も無い。ただひとつ、「アイテム屋」という看板のある建物を除いて


シャナ「誰か、いますかー……」


返事は無い。あるのは棚に陳列された回復薬だの保存食だのの売り物だけ。なるほど、マジカルキャンディーで買うのか。今あるキャンディーの数なら回復薬が買える。とりあえず回復薬を買って飲んだ。痛みが引いていく


シャナ「無人の野菜直売所みたいだな」

「おじゃましまーす」


入口から声と人の気配。さっきのこともある。シャナは慣れない左手で太刀の柄を掴み、入り口を睨んだ

 そこには……>>直下コンマ二桁
 
 01~30→黒いナース服の魔法少女がいた
 31~60→茶色のコートを羽織った魔法少女がいた
 60~90→SFチックなスーツに身を包んだ魔法少女がいた
 91~99→探偵風な魔法少女がいた
 


「あれ、先客……って、うわわわわ!」カシャン


SFとかニチアサの戦隊モノに出て来そうなスーツに身を包んだ魔法少女がヘルメットのバイザーを閉じる

シャナは安堵した。さっきの奴が追撃してきたら利き腕を失ったシャナなどものの数ではないだろうからだ


シャナ「……さっきのじゃ、ない……」

「と、とりあえず暴力反対ー!」

「夢ノ島さんどうしたアルかー!?」

シャナ「……ごめんなさい」


相手になにか誤解を招いたときとか、なにかいざこざがあったときの魔法の言葉を発し、シャナは夢ノ島ジェノサイ子と名乗った魔法少女のパーティーと出会った


シャナ「次のエリア?」

ジェノサイ子「そうそう、もうエリア解放したプレイヤーがいるんだよ!」

@娘々「だから通行証を買って、私達も移動するところだったアル」

のっこちゃん「あの、腕……それ元々ですか?」

シャナ「……いや」

デイジー「えっ、じゃあ……ガイコツに?」

シャナ「違う……この腕は――」


シャナはどもらないように、噛まないように、細心の注意を払って先ほどの着物の魔法少女のことを説明した。人の話を聞かない、斬撃を飛ばしてくる、音楽家とやらを探していると


デイジー「音楽家?」

ジェノサイ子「知ってる?」

@娘々「知らないアル」

のっこちゃん「私も……」

シャナ「……だよね。とりあえず注意して」


デイジー「見たところ1人のようだし、私達と一緒に来る? 私達はもう4人パーティーだけど、守ってあげるくらいはできるかも」

ジェノサイ子「さっすがマジカルデイジー! ヒーローの人!」

シャナ「マジカルデイジー…………あっ!」


どこかで見たことあると思ったら、言われて思い出した。あの魔法少女アニメの主人公だ。まさか実在していたなんて

有名人に会った嬉しさが膨れ上がる。自分ってこんなに心が躍るタイプだっただろうか


のっこちゃん「デイジーさん、凄く強いんですよ。デイジービームとかすっごくて」

シャナ「へぇ……」

@娘々「さて、通行証を買うアル! 1枚キャンディー5個アルね」

シャナ「(キャンディー5個……私も買える。どうしよう)」


 >>202
 
 1.ついていく
 2.ついていかない
 


シャナ「じゃあ……すみません、お願いします」

@娘々「任せてほしいアル!」

のっこちゃん「よろしくお願いします」ニコッ

シャナ「じゃあ通行証を…………ん? 他にもアイテムが沢山……」


アイテム屋には先ほどのアイテムの他にもラインナップがあった

「地図」「アイテム図鑑」「モンスター図鑑」「武器」「盾」「R」


シャナ「Rって……ランダム? 『キャンディー100個で1回、もしかしたら激レアアイテムが当たる』って」

ジェノサイ子「なにそれ!? ソシャゲーマーとして引かずにはいられない!」

@娘々「そんなことしたらキャンディーあっという間アル!」

デイジー「地図は今買ったし……武具が売ってるのが気になるわね」

シャナ「…………」


 シャナは……>>205
 
 1.アイテム図鑑を買ってみたらどうかとすすめた
 2.モンスター図鑑を買ってみたらどうかとすすめた
 3.Rをひいてみたらどうかとすすめた
 
 そのレスのコンマ奇数→デイジー達は買った
 そのレスのコンマ偶数→キャンディーが足りない
 


シャナ「Rって、どんなのが出るんでしょうね」

ジェノサイ子「やっぱ気になるかー! おたくもゲーマーだねぇ!」

シャナ「(うざい……)」

のっこちゃん「でも、キャンディーが……4人合わせてもギリギリ足りないですよ」

ジェノサイ子「えーっ!」

@娘々「ほら、次のエリアで稼げばいいアル!」

ジェノサイ子「そっか……そうだね。ゲーム的にエリアが進むごとに敵が強くなってもらえる経験値とかも増えるから」

デイジー「それじゃあいきましょうか」


このゲームの世界は複数のエリアに分かれており、荒野エリアの次は草原エリアだ。そして各エリアを移動するにはアイテム屋――通称ショップで売っている「通行証」が必要になる。買うためのキャンディーは決して高いわけではないので、大量に買い込んでおけばこのシステムは形骸化するだろうなとシャナは思った


・・・・・・

~草原エリア~


シャナ「(今度は一面草原…………荒野よりマシか)」

ジェノサイ子「こういい感じの原っぱだと寝っ転がりたくならない?」

@娘々「ならない」

のっこちゃん「あっ、敵!」

シャナ「(今度は……赤いガイコツ?)」

ジェノサイ子「うっわぁ色違い出てくるの早すぎでしょー……これ作った奴相当の手抜き野郎だ」

デイジー「違うのは色だけじゃないかもしれない! 気を抜かないで!」

@娘々「戦闘開始アル!」

シャナ「(さて、私も戦うべきか……)」


 シャナは……>>215
 
 1.私1人でやると言った
 2.一緒に戦うと言った
 3.黙って見てた

1


シャナ「……」ザッザッ

のっこちゃん「シャナさん?」

シャナ「初めて戦う相手でしょ。私がひと当てする」

ジェノサイ子「えっ」

@娘々「獲物を横取りアルか!?」

シャナ「(ちっ、めんどくさい……)」


 知力(52+15=67)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→初めて戦う相手との危険性を説いた
 失敗→逆に心配された


シャナ「初めて戦う相手は何があるか分からない。それに、これを作った奴は相当の屑野郎。2面目でどんな仕掛けをしてくるか……そっちにとっても、鉄砲玉として私を使えるのはいいだろ? 仮に私がやられても、パーティーに損失は無い」

ジェノサイ子「でもそれじゃ片腕のシャナじゃ……」

シャナ「左手でも刀は振れる。それに白いのと変わらないなら、素手でも勝てるから……まぁ、ヤバそうになったら、お願いします」

デイジー「まぁそこまで言うならいいけど……」

シャナ「(さて、どんな感じか……)」


引っ込み思案のシャナがこんなに前に出ようと思ったのは初めてだ。とにかく今は戦いたくて仕方がない。何故だ

戦って、自分の力を示してみたい

なんでそんな気分なのか、理由は分からない。だが自分の気持ちがそうなっているなら、目の前のガイコツ達に戦わせたくなるような理由があるのか、自分でも分からないがやってみる


まず左ストレートを赤いガイコツの頭に叩き込む。砕け散った

弱い。白いのと大して変わらない。ならこの隙にマジカルキャンディーを稼いでしまおう

後ろから迫る赤ガイコツにローキック。足を追って地に這いつくばらせ、頭を踏み潰す

さて、慣れない左手の太刀だが大丈夫だろうか。というか、そもそも太刀は両手で扱う物だから余計に勝手が悪い

だが相手はカカシも同然のガイコツだ。多少動きが鈍くてもなんの危険は無い

いよいよシャナは調子に乗る。ちょっとカッコつけてわざと大振りになったり、滅多にしない回転斬りなんてしてみちゃう


 身体能力(54+15=69)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→華麗にガイコツ達を倒し拍手を浴びた
 失敗→太刀が手からすっぽ抜け、赤ガイコツに飛んでいった
 


シャナ「ハァァァッッ!」ズバッ


最後のガイコツを倒す。シャナは自然に自然にポーズをつけた後、太刀を鞘へと収めた

すると拍手が背中にかかる

すごいすごいとのっこちゃんに@娘々やジェノサイ子、あのマジカルデイジーからも拍手をもらった

嬉しかったが、ふと冷静になると相当恥ずかしい真似をしたものだと赤面する。この4人は知らないだろうが、普段のシャナは決してこんなことをする人間ではないのだ


シャナ「…………」カァァ

ジェノサイ子「すごいすごい! まるで上様だよ!」

デイジー「あんな殺陣したことないわ!」

のっこちゃん「すごいです!」

@娘々「いやーなんか心強いアル」

シャナ「……とりあえず、相手は強くない」


シャナ「確かにキャンディーの横取りになった。次からはそっちに任せる」

のっこちゃん「じゃあどんどん戦っていく、とか?」

デイジー「まかせて!」

ジェノサイ子「おっ! 必殺のデイジービームですねぇ!」

シャナ「(デイジービーム……生デイジービーム……!)」

@娘々「また見たいアルね!」

デイジー「ふっふっふ、そう言われちゃサービスするしかないわね」


和気藹々と進んでいくと、再び赤いガイコツの集団が現れる

4人がそれぞれ戦闘態勢に入り、早速マジカルデイジーが指で銃の形を作った

あのデイジービームだ。アニメの中でも幾度となく登場した、マジカルデイジーの代名詞。それが生で見られるのなら、このふざけたゲームに来てもまぁ許せるのだろうか


デイジー「デイジービームッ!」


デイジービームは一撃必殺。浴びたものは分子分解され、結果として破壊される

デイジーは赤いガイコツのど真ん中に直径20cmくらいのデイジービームを撃ち込んだ

これを防げるのはバイザーを下せばすべての攻撃を防げるというジェノサイ子の魔法くらいだろう。あんなに簡単に倒せるガイコツに放って倒せないわけが無い

デイジービームが命中する。カッコつけのために的になったガイコツには同情すらするだろう

そして、体の中心……心臓の辺りをポッカリと空けたマジカルデイジーは倒れた


・・・・・・

~荒野の街・とあるビルの中~


魔法の端末に表示されたサポートというコマンドを選ぶと、白と黒の丸っこい電子妖精マスコットが現れた


ファル「こんにちは! マスコットのファルだぽん!」

キノ「ここはどこ?」

ファル「ここはマスターが作ったゲーム『魔法少女育成計画』の中だぽん。概要は招待状メールで読んだから省くぽん」

キノ「魔法の国にメールが送れないんだけど」

ファル「ここは現実世界や魔法の国をはじめとしたすべてから隔離された空間だから、そういうのができないようになってるぽん。だけど安心してほしいぽん! このゲームは魔法の国認定のオフィシャルなやつだから、何の心配もいらないぽん!」

キノ「ふーん……ならいっか」

ファル「他のプレイヤーは続々と次の草原エリアに向かってるぽん。キノも向かわないのかぽん? まだパーティーも組んでないようだし」

キノ「……他の魔法少女は信用ならない」

ファル「別にソロプレイでもいいけど……あ、他のエリアに行くには通行証が必要だから買っておくといいぽん。マジカルキャンディーは敵モンスターを倒すと得られるぽん!」

キノ「マジカル、キャンディー……? うっ……」

ファル「どうしたぽん? 気分が優れないようだけど」

キノ「いや……大丈夫。でもなんで通貨がキャンディーなの?」

ファル「それはかつて行われた試験にマジカルキャンディーを集めるという課題があったため、それを参考にして名義だけ借りたぽん」

キノ「へぇ……それを集めればいいんだ…………いつもみたいに…………」

ファル「早速モンスターを倒してショップへGOだぽん!」

キノ「…………ショップってどこ?」


どうやらこのエリアに残っているのはキノくらいだという。他にもいるようだが、ファルは言葉を濁した。チクリ魔は嫌われるからこれ以上は喋らないらしい。相変わらずだ。ん? コイツと面識あっただろうか……まぁマスコットなんて魔法の国と関わる以上何匹とも出会うからこんな電子妖精タイプの奴とも面識会ってもおかしくないだろう


キノ「……」バキッ


淡々とガイコツ達を仕留めていく。そろそろ100は越えただろうか。いつまで続ければいいんだろう


ファル「あ、あのー……そろそろエリア移動しないぽん? 初期エリアで何匹倒したところで得られるキャンディーはたかが知れてるし、このゲームにレベルなんて概念は無いから延々ここで狩ってても大した意味は無いぽん」

キノ「…………早く言ってよ」

ファル「ちょっと考えれば分かることだぽん! 頭足りてないのかぽん!?」

キノ「…………」


不機嫌になったキノは無言でサポートコマンドを終えた


・・・・・・


デイジービームは確かにガイコツに当たったはずだった。なのに何故放った側のマジカルデイジーに、まるで彼女に当たったかのように本人の腹に穴が空いたのか。それはデイジー埋葬中に襲い掛かって来たガイコツで判明した


ジェノサイ子「くっそぉ! よくもマジカルデイジーを!」


ジェノサイ子が恨みを込めたつぶてをガイコツに投げる。するとジェノサイ子本人が額に何か当たったように後ろに倒れこんだ


ジェノサイ子「いっつうううう~~~~~!! なにこれ! 帰って来た!?」

@娘々「いや、石はガイコツに当たったアル。なのになんで夢ノ島さんが倒れるアルか!? ちゃんとバイザーを下ろさないからどっかから不意打ちを受けたアル!」

シャナ「(いや、今のは…………)」

のっこちゃん「今の、もしかして……飛び道具を跳ね返すんじゃないでしょうか?」

ジェノサイ子「飛び道具を?」

@娘々「なるほど……確かにそれならマジカルデイジーがビームを受けて、夢ノ島さんが倒れたのも納得がいくアル……でも、そんなんで……デイジーは……!」

シャナ「…………早く埋めてあげよう。それが彼女の為だ」



シャナ「……それに、その……」

@娘々「それにここでゲームオーバーになってもマジカルデイジーが本当に死んだわけじゃないアル!」


そうだ、別にゲームオーバーになっただけだ。エリア報酬とかクリア報酬の100万円とか100億円とかべらぼうな金額ではなくても、参加賞で10万円だ。ゲームのテスターのようなものなら納得のいく金額だから別に気にするようなものではない

だがリアルさが売りとはいえ、あまりにリアル過ぎだ。ポッカリ空いた穴から出てきたどこの部位かも知りたくない臓器とか、見ただけで吐きそうになった

これでいい気分なわけが無い


ファル「緊急招集だぽん!」


そんな最低の気分の中、魔法の端末からマスコットが現れた


・・・・・・

~荒野の街~


どうやら飛ばされたようだ。いつの間にか最初の街に戻っていた

それは自分達だけではなく、すべてのプレイヤーが対象のようだった。荒野の街の唯一の水場である噴水広場に17人の魔法少女が集結する


「ここは……最初の街?」

「ふむ、どうやら我々はせっかく草原エリア走破目前といういいところで戻されたわけだ」


パーティーごとに固まっているのが分かる。固まっていない……どこのパーティーにも属していない魔法少女はつまりソロプレイヤーだ。それは2人。その片割れは、シャナにも因縁のある相手だった


ファル「えー、緊急招集とは、マスターのちょっとした手違いをお詫びするために皆を呼んだぽん」

ジェノサイ子「なんだって!? 詫びキャンディーはよ!」

シャナ「……」

キノ「……」


目が合った。が、すぐ逸らされた。ひどく警戒しているようだ。だが真に警戒すべきはあなたの隣にいるそこの甲冑着物野郎だよと言ってやりたい


 精神力(96-20=76)ロール(引っ込み思案のためマイナス20)……直下コンマ二桁
 
 成功→それを伝えた
 失敗→警戒されてるなら仕方ない
 


 96……クリティカル!
 クリティカル報酬「精神力+1」(97)

 
 
シャナ「……あ、あの…………」


キノ「……」

シャナ「そこの、人……かなり、危険です」

キノ「……?」


最初は無視されたが、これは完全なる善意からの忠告だ。茶色のコートを着た魔法少女が着物のアホ(自分の腕を斬り落とした奴なんだからアホで十分だ。むしろアホ呼ばわりで済んでよかったな)を見、視線をこちらに戻す

本当なら声を大にして皆に危険を伝えるべきなんだろうが、大事な話があるであろう場を乱すことは引っ込み思案選手権TOP10に入るだろう自覚のあるシャナにはできない

図太くないわけではない。とにかく無理なのだ。生理的に無理というやつだ


キノ「(危険……まぁ、分かる。雰囲気が尋常じゃない。まるで今まで監査部門を通じて捕まえて来た連中みたいに……)」

キノ「(他の人達は……パーティーを作ってる。危険ではない……? いや、警戒を怠らない)」

キノ「(私に教えて来た魔法少女……この子は)」


 キノの知力(36)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→おそらく善意でのことだろう
 失敗→腕無いじゃん! コワイ!

 
 


 96……ファンブル

 (1つ前のクリティカルと相殺され、そこまでアカン事態にはなりません) 
 
キノ「……何故それを知っているの?」


シャナ「えっ、あ、それは……その人に襲われて。この腕も……ソイツが……」

キノ「(……なるほど、それならまぁ分かる)」

キノ「(あの着物の魔法少女……危険。だからソロ、か……)」

キノ「(けど、この人もこの人で襲われる理由があったんじゃないの?)」

キノ「(……やっぱり、警戒は怠らないようにしなきゃ)」

キノ「…………そう……」

シャナ「(なんだコイツコミュ障か?)」


キノはそれきりシャナから視線を外し、もう話す気は無いという姿勢をとる

そうされたらシャナにできることはもう無い。せめてあのアホにちょっかいだけはかけてくれるなよと念じ、ファルの話を聞くことに専念した


ファル「あ、緊急とは言ったけど、この世界で3日が経つと皆は一斉ログアウトすることになるぽん。これはその前に起こる定期イベントで、3日間の最後には皆ここに集合してもらうことになるぽん」


ファルが言うには、このゲームで3日経過するとログアウトとなる。その3日間は現実世界ではほんの一瞬だそうで、リアルに影響のない優しいゲームだと豪語されていた

そして現実で3日間経つと、再びこのゲームへと戻され、3日間冒険、そしてまた現実、そしてまたゲームと……クリアするまでそれが延々繰り返されるらしい


「なるほど……そういうことか。あ、ひとつ質問したいのだが、いいかな」

ファル「どうぞぽん」


車椅子に座り、首や腕に包帯を巻いた痛々しい姿の魔法少女が弱弱しさを全く感じさせない口調で質問を投げる


「私はこのゲームを始めるとき、17人の魔法少女と協力し、魔王を討伐してクリアしようというメッセージを見た。つまり魔法少女は全員で18人……1人足りなくないかい?」


ジェノサイ子達がビクッとなる。当然だ。せっかく心機一転頑張ろうとしていたのに、デイジーが倒れるあの光景を思い出してしまうのだ


ファル「それはプレイヤーが1人脱落してしまったからだぽん」

クランテイル「もうゲームオーバーになった魔法少女がいるのか?」

ファル「マジカルデイジーだぽん」

「マジカルデイジーって、あのマジカルデイジーっすか!? うっわー……会っておけばよかった」


青い魔法少女が大げさにがっかりしてみせる。うなだれたいのはこっちだという言葉を喉に含め、シャナは空気に徹した。横を見る。茶色のコートを羽織った魔法少女も、あのアホも大人しくしている


ファル「それで、お詫びなんだけど……実は、最初のゲーム説明に誤りがあったぽん。確かにこのゲームで受けたダメージは現実にフィードバックされないし、骨が折れようが体が千切れようが生きていれば現実に戻れて、ここに帰って来たときには元通りぽん」


シャナは安堵した。この腕が一生このままだと思うとやっていけない。引退も考えるレベルだ。が、今の説明に「誤り」という部分は見えない。つまり、ここはどうでもいい部分なのだ


ファル「――けどこのゲーム内で死んだ場合はその限りではないぽん」


空気が変わった。驚きがどよめきに変わり、どよめきが疑問に変わり、一部の物には受け入れ難い事実として入っていく


のっこちゃん「えっ……じゃあ、マジカルデイジーは……」

ファル「現実でも死んじゃったぽん」

ジェノサイ子「はぁぁ!? あ、あんな大穴が空いたんだぞ!?」

ファル「ゲーム内で死んだ場合、現実の体も心臓に強いショックが加わり、心臓麻痺で死んじゃうぽん。これは魔法少女であろうと耐えられるものじゃないから、たとえ変身していても死ぬぽん」

@娘々「ふざけてるアルか……?」


不承不承ながらもこのゲームを続けてきたのは、ゲームオーバーになっても参加賞だけ貰ってその後もいつも通りだと思っていたからだ。それが死んだら現実でもハイおしまいなんて詐欺にもほどがある


「オーイエイエイエふざけんなこんなのアリかよ。書類にバッテンつけて頼んだのにこんな野郎寄越しやがって! ピザのトッピングにカナディアンベーコンを頼んだらジャーマンソーセージ乗っけて来たようなもんさ詐欺だよ詐欺!」


今まで一言も発しなかった薔薇をあしらった魔法少女――何故か一目見た時に違和感を感じた――が怒りをあらわにする


「め、メルっち落ち着くっす! キャラじゃないっす!」

ジェノサイ子「そこの人の言う通りだ! 詐欺だよこんなの! 金返せ!」

ファル「別に課金なんてされた覚えは無いぽん! それにこれは完全に手違いだから許してほしいし、マスターはこうも言ってるぽん。『プレイヤーが本物の魔法少女なら絶対にクリアできるようにしてある』って!」

リオネッタ「じゃあなんですの? 私達は本物の魔法少女じゃないと?」

ファル「それを含めてこのゲームなんだぽん」


ファル「これ以上この事に関しての質問は受け付けないぽん。あと、今回のイベントを伝えるぽん!」

シャナ「(イベント……?)」

ファル「ログアウト時には毎回こうしてイベントが起こるぽん。イベントはランダムで、ラッキーなものからアンラッキーなものまで様々だぽん。飽きさせない仕様だぽん」


ファルのふざけた文句に、もはや誰も口を開かない。ファルはファルで、いつものテンションでそのままイベント内容を告げた


ファル「今回のイベントは『ミラクルコイン』のドロップだぽん。条件は一番最初にこのエリアのモンスターを20体倒したプレイヤーで――」


すると車椅子がぶっ飛んだ。目にも止まらぬスピードで街の外へと走っていく。一同はあっけにとられた


ファル「ああ話を最後まで聞くぽん! まぁこれ以上話すことは無いんだけど……じゃあ頑張ってほしいぽん」


ファルの言葉が終わったころには、車椅子の魔法少女は既に外でモンスターを20体退治してしまったようで、イベント終了のアナウンスが伝えられた


・・・・・・

~紗南の部屋~


龍崎紗南は仕事机に突っ伏していることを自覚した

イベントが終わり、3日目が終わるとログアウトのアナウンスが流れ、美しい妖精のシャナの意識もまた無くなったのだ

時計を見る。確かに時間は経っていないようだ。先ほど淹れていたコーヒーも熱い


紗南「3日……」ボソッ


そうだ、現実でまた3日間経つとあのゲームに戻されるのだ。そう思うとこの3日間も普段通りにとはいかない

紗南は手元にあった原稿用紙の裏にペンで書きこんだ。内容は既に複数作られている魔法少女のパーティー

魔法の端末をいじると、ゲームの参加者一覧が書いてある。流石にそれぞれの魔法は書いていないが、姿を見たことによって外見と名前がそこには表示された


まず、自分

次にソロプレイヤー……茶色のコートを羽織った魔法少女はキノという名前で、あのアホはアカネという名前らしい

次に各パーティーを書き出す。仮にABCも付けておこう


A:夢ノ島ジェノサイ子、@娘々、のっこちゃん、マジカル…………いや、やめておこう

B:クランテイル、御世方那子、リオネッタ、ペチカ……よかった。ペチカはまだパーティーに属している

C:プフレ、シャドウゲール、マスクド・ワンダー……あの車椅子の魔法少女がリーダーをやっていそうなチームだ

D:ディティック・ベル、ラピス・ラズリーヌ、メルヴィル、チェルナー・マウス


人間的な状況把握はこのくらいでいいだろう

さて次は――


・・・・・・


ファル「マスターひどいぽん! ファルにヨゴレを押し付けてヘイト回避なんて!」


ファルに猛抗議を受ける少女――魔法少女キークは、手元にあるルービックキューブをいじりながら適当に返していた


キーク「いーじゃん別に、それくらいでゲームをやめるって言い出したりクソゲーだなんだと言ってくる奴は情弱。本物の魔法少女ならクリアできるんだから」

ファル「そもそも本当の魔法少女ってなんだぽん!」

キーク「そりゃスノーホワイトみたいなのだよ。清く正しく美しく、そこにカッコよさと強さが加わった正真正銘の魔法少女」

ファル「魔法少女は人それぞれだというのが魔法の国の方針だぽん!」

キーク「あまーいあますぎるーそんなんだからいつまで経っても世の中は平和にならなーい」

キーク「ま、いーじゃん。死んだらソイツは本物の魔法少女じゃなかったってこと。マジカルデイジーだってそうだったんだよ」

ファル「……もしかしてマスター、22話が不評だったのをいまだに根に――」


それきりファルは喋らなくなった。キークがそう操作したからだった


ファル「……」

キーク「反省した?」

ファル「ぽん」

キーク「ならよし。それにしても、あの魔法少女キノまで入れられるなんて僥倖ってやつだったね」

キーク「匿名の協力者……っていうのが納得いかないけど、ブルーベル・キャンディを紹介してもらったし……彼女の能力はいいねぇ。まぁこのキーク様の空間だからできたことだけど」


キノに施した記憶操作は、他の魔法少女達に施されているキーク本人が行ったものではない

だがキノは、あの試験を通ってなおかつ記憶を失っていなかった。だから監査部に報告されたり、相棒さんに色々吹き込まれる前に先手を打ったのだ

ブルーベル・キャンディという魔法少女の能力は、色んなキャンディーの精製。そのキャンディーをキークの空間で色々いじり、キノの本当の記憶を抜き、偽りの記憶を埋め込んだ。勿論キノがゲームをクリアできればオートで記憶が戻るようにしてある。公平だ

そのために初期作用として、ゲーム開始時に意識を失わせたが、それでもたかだか数分のはずだ


・・・・・・


キノは目を覚ました。覚まして驚愕した。誰かに膝枕をされていたからだ。一匹狼であるキノに膝枕をしてくる魔法少女をキノは知らない


「あ、目を覚ました? ビックリしたよ。キノいきなり倒れて、10分くらい目を覚まさなかったから」


10分? 現実世界では一瞬しか経過しないのではなかったのか。分からない。目の前――キノを見下ろし微笑んでいる魔法少女のことも分からない。見覚えが無い

キノは急いで飛び退き、彼女に銃を向ける。忍者風な装束を纏った魔法少女だ。外見から推測するに、忍法を使うのだろうか


「ちょっと、キノ? どうしたの?」

キノ「近寄るな!」

「キノ……?」

キノ「お前は誰だ……どうやって私に……!」


「誰って、私だよ、リップルだよ。ボケ?」

キノ「リップル……? そんな魔法少女は知らない」


リップルと名乗った魔法少女に敵意は無い。それどころか、驚き、困惑している顔を浮かべている

だがキノは油断しない。真に悪い奴はその顔を出さないものだからだ。警戒しなければ

ある種の強迫観念めいた師匠の教えが、キノを恐怖に落とす

弾は込めた。師匠と一緒に考えた基本能力強化セット。6発、自分に撃つ


リップル「ちょっとキノ、ふざけるのも――」

キノ「近寄るなって言ってるんだ!」

リップル「…………キノ、落ち着いて。もしかして、頭を打った?」


駄目だ、恐怖心が消えない。なら、恐怖心の弱化を自分に撃てばいい。隙を作らないよう弾を込める。ついでに、防御力の弱化も

1発自分に撃ち、すぐさま銃口をリップルに向ける。撃つ。当たらない。リップルが回避した


キノ「ッ!(強い……!)」

リップル「キノ……何が起こったのか分からないけど……!」


続けざまにこれまた師匠と一緒に考えた基本能力弱化セットをローダーでセット。とにかく当てるために撃つ。当たらない


キノ「くっ……!」


 身体能力(76-40=36)ロール(相手はキノの動きを知り尽くしているため-40)……>>直下コンマ二桁
 
 成功→なんとか逃げることに成功する
 失敗→気絶させられる
 


キノ「くそっ……くそっ!」バァン!

リップル「ッ、キノ!」

キノ「(当たらない! 刀で弾かれても良いように強度の弱化撃ってるのに!)」

リップル「痛くないように……気絶させる!」

キノ「(上段の薙ぎ払い!)」


何故かキノにはリップルの動きが読めた。まるで何度も彼女の攻撃を受けたことがあるかのように――

リップルに隙が出来る。腹を思い切り蹴った。リップルは転がっていく

その隙に四次元袋からラピッドスワローを取り出し、フルスロットルで逃げた。このマシンに追いつける魔法少女はいないだろう


リップル「チッ!」シュバッ


リップルが何かを投げる。それが何かまでは分からなかったが、まだ下段ギアとはいえこのスピードに正確に物を当てるなど不可能だ

キノはとりあえず自分の家と真反対に逃げ、そこから変身を解除。タクシーを使い帰宅した

今日はここまで
ちなみに気絶させられた場合、リップルが記憶の無いキノに、看病と称して言うならば吉岡がリップルにしたようなことをしてた


・・・・・・


今日は日曜だが、龍崎サナとしてアニメ会社の人間と会う予定がある

アニメの原作をやってみないかという誘いを受けてみようと思ったのだ。会社に着くと小さな会議室に通され、定番の挨拶に名刺交換。本来メールでのやりとりのみを希望していたが、やはり実際に会って煮詰めたいという先方の要望が通ってしまうこととなった

普段なら冗談じゃない! と激昂しただろう。だが紗南は怒りをちょっぴり覚えるだけで済んだ。人と話すということは昨日のゲームでこなしたし、なにより学校とは違う。相手は龍崎紗南を求めている。ならばと少しの自信を持って行くしかないだろう

アニメのコンセプトに関しては、すんなりと話がまとまった。紗南が提案した「複数人の個性豊かな魔法少女がRPGの中に閉じ込められてしまう」がウケたのだ

これはいい! やってみよう! と制作会社は二つ返事だった。次にキャラクターを考える。紗南はここでも提案した。ウケた


・・・・・・


細波華乃はラピッドスワローに付けたメアリ特製発信機の電波を追っていた。以前四次元袋の中身を広げて、使えそうな物を分けるという集まりがあった時にリップルが受け取ったものだ。メアリが強化したことによって強度と精度が上がっている

発信機が武器? と首をかしげるも、情報は武器になるという言葉がある以上武器なのだろう

キノが何故自分に向けて攻撃を仕掛けてきたのかは分からない。だが彼女に悪意は無かった。怯えていた。まるでリップルの後ろに悪魔でも見えているのではないかというくらいに

誰だお前はとも言われた。記憶が無くなっているのだろうか。あの、壮絶を極めた試験の事も、生きる術を教えたことも、共に強敵を倒したことも忘れてしまったのだろうか

キノの魔法の端末にメッセージを送っても、送れない。メールが帰ってくるのだ。だが魔法の国からの定期情報メールが送られてくるということは、自分の端末がネットワークに繋がっていないという線は考えられない。つまり、キノの端末が隔離されている

こうなってはもう仕方がない。今までお互い、日常には干渉してこなかった。だがもうこの手段しか無い

誰が何と言おうと、たとえキノが違うと言おうと、リップルはキノの教官であり師匠である。弟子の事は自分の事。一心同体だと誓った

可愛い後輩を――頼れる親友との対話のため、華乃はとあるマンションへとたどり着いた


・・・・・・


結衣は高校を卒業した後、一人暮らしがしたいと親に頼み込んで高くも安くもないマンションの一室を借りてもらった。家賃は結衣と親の半々払い(光熱水費は親負担)にしてもらっている。もっと売れっ子になったら引っ越すか家賃全額負担だと息巻いて、今日も仕事に向かい、親友の華乃にアニメの感想の返事を返しながら帰って来た

1LDKのマンションは暮らし心地が良く、広いお風呂が魅力的だった。我ながらよくこんな良物件を見つけたと思う


結衣「ただいまー……」


今までは親がおかえりと言ってくれたが、これからはそうはいかない。まぁ実家に帰ろうと思えば帰れない距離ではないし、なにより同じN市内だからはっきり言って近所だ

だがN市は広い。複数の町が統合されて出来たこの市は端から端まで行こうと思えばなかなかに遠いのだ。結衣の現在の住処と実家はそういう距離にある

ラピッドスワローは変身していなくても常に部屋に置いてある。別に壁にフックをつけて飾ってあるというわけではなく、ギターのように立てかけてあるだけであるが

いつでもあの先輩のことを思い出せるように、あの楽しかった日々を思い出せるように

先輩は男勝りな魔法少女だった。一人称は「俺」だったし、豪快に笑う様など魔法少女というよりはオッサンだった。よく箒の後ろに乗せてもらったし、一緒に敵と戦ったこともある

敵? ああ、監査部の仕事の時に戦った魔法少女か。確か名前は……だめだ、思い出せない。ド忘れだ。監査部に入って数年、何人も逮捕してきたのだからその中の1人の名前をいちいち覚えていられない


今日も仕事から帰り、「ただいま先輩」と言うために部屋の片隅を見て、結衣は焦った

ラピッドスワローが無い。昨日リップルと名乗る魔法少女から逃げて、帰ってきた時にちゃんとそこに置いたはずなのに、無い。代わりに紙が置いてあった。手紙だ。昔ながらの「〇〇はいただいた」とかいってくる泥棒の仕業だ!


『ラピッドスワローを返してほしければ、明日の夜11時に裏山まで来るように    リップル』

結衣「リップル……!」


昨日のアイツだ。まさか、家が割れていたなんて……駄目だ、駄目だ駄目だ。もう魔法の国に報告するしかない

監査部は恨みを買うことが多い。しょっぴいた魔法少女の友人だったりに狙われることもあると聞く。とりあえず監査部の上司にメールを送ると、エラーメッセージと共に帰って来た


結衣「なんで!? じゃあ監査部のホームページから…………送れない!? 普通の通報なのに!」


どうしてなのかは分からない。だが事実を受け入れるしかない。リップルは自分の力で何とかするしかないのだ

なんとかする……キノを脅かす悪い魔法少女。逮捕できたらそれでいい。が、魔法の国に連絡がつかない以上、ずっとどこかで拘留なんて無理だ。一匹狼はこういうときに不便だ。けど仕方がない。もう……排除するしかない

裏山……詳しい場所は書いていないが分かる。あの裏山だ


・・・・・・


今日もつまらない高校を終え、家に帰ってアニメの内容を練る。魔法少女の中にはヤバいのがいて、見境なく攻撃してくる奴もいる。ゲームの中で死んだら現実でも死んでしまう。等々。すべてあのゲームの中の話しではあるが、紗南なりに風呂敷を広げ過ぎず、分かりやすいようにまとめた。と、ここで壁にブチ当たる


紗南「…………ここから、どうなるんだろう……」


紗南がアニメ会社の連絡担当に送ったメールの内容は、自分が体験したことだが、ついに喋り切ってしまったのだ。ここからはどうしようか、自分で考えるか

自分なら物語をあそこからどうするか……その答えは簡単だった。あと数時間でゲームに戻されるからだ

まず思い浮かぶのはペチカ。あのかわいらしく、空腹の自分に恵んでくれた女神。あの後隠しパラメータとして空腹ゲージがあって、0になると餓死するなんてことを知ったのだから、感謝もひとしおだ

次に夢ノ島ジェノサイ子達のパーティー。多分、なあなあであのパーティーと行動しそうだ。マジカルデイジーはもう居ない。パーティーに入れてくれと言えばすんなり入るだろう

次に……あのアホだ。アカネとかいう宿敵だ。あのゲームにフレンドリーファイアとかプレイヤーキルとかがあれば真っ先にやってやる。だが、そんなことをすれば他の魔法少女からの糾弾は免れないだろう。ならどうするか、他の魔法少女にもアカネは危険だと知らしめた上で倒してしまえばいい。そうすれば正義は我にあり

って、何を考えているんだ! 魔法少女が人殺しなど、あってはならない。それがたとえ自分を殺そうとした相手だとしても、それをやってしまえば自分もアカネと同じ土俵に立ってしまう

なんとかアカネを無力化する方法を……そういえば、キノとかいう魔法少女には一応伝わったんだから、今度ゲームに入ったらパーティーメンバーに伝えよう。そう思い紗南は目を閉じ、仮眠を取った


・・・・・・


昼、マンションで華乃はリップルに変身し、ラピッドスワローの反応を頼りに窓から侵入した。初めて忍者らしいことをする

上階にあった部屋で窓の戸締りを怠るのはよくあることだ。リップルはベランダから見える部屋に置かれたラピッドスワローを見て、次にテーブルの上を見た。アニメ雑誌が乱雑に置かれている。どうやらキノは相当のアニメ好きのようだ。自分も特定の声優にお熱だから人のことは言えないが

ラピッドスワローは部屋のインテリア代わりのように置かれていた。一見すればただの箒であるために、掃除用具の片付け忘れかと思われるかもしれないが、ちゃんと見れば大切にしていることが分かる。失敬した

そしてリップルはトップスピードの遺品を手に、待っていた。来るであろう馬鹿弟子を

来た。時間通りだ。ただ裏山としか伝えなかったのに、キノはちゃんとここに来た。記憶を完全に失っているのなら来れないはずだ。つまり、キノは記憶を限定的に失っている


キノ「……返してもらいに来た」

リップル「よくこの場所が分かったね」

キノ「ッ、ここは私が師匠に稽古をつけてもらった場所だ! お前こそ、なんでここを……!」

リップル「その師匠は誰?」

キノ「そんなことはどうでもいい! 返せ、先輩のラピッドスワロー!」

リップル「……その先輩って誰?」

キノ「監査部の先輩だ。私は魔法の国の監査部門所属なんだ。だから、お前を逮捕する!」

リップル「…………」


舌打ちしそうになる。が、しない。もうなるべく舌打ちはしないようにと決めた

どういうことだ。トップスピードは監査部門なんかに所属したことは無い。それどころか……

まさか、キノは記憶を失っているのではなく、書き換えられているのか?


リップル「師匠のこと、私に説明できる? できないでしょ」

キノ「……師匠は、厳しかった。けど優しかった。私に魔法少女としてのイロハと、魔法少女の危険性を教えてもらった。だから警戒するようにと。私はその考えを受け継いで――」

リップル「その師匠の名前は? 外見は? 師匠が使う魔法は?」

キノ「………………師匠は…………」


キノの表情が困惑に歪む。思い出せない。あんなに強烈な思い出だったはずなのに

と、頭が危険信号を点滅させる。これ以上思い出そうとするな。苦痛を伴うぞ。と。確かに思い出そうとすればするほど苦しくなる。考えるのをやめなくては

駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ! リップル……何故そんなに色々聞いてくる。何故私を苦しめる


キノ「……大人しく返してくれれば、それでいいから…………早く、返、し……!」

リップル「これは返せない。これは今のキノが使うべきではない!」

キノ「なら……力ずくで返してもらう!」


今度は油断しない。絶対に当てる。とりあえずリップルの魔法を封じる。どんな魔法か知らないが、魔法を封じられれば魔法少女にとっては致命的だ

キノはすべて魔法の弱化がセットされたローダーで弾を込め、リップルに向けた


リップル「(本気なの? なら、今度は逃がさない……!)」

キノ「(やっぱり当たらない……やっぱり、踏み込むしかない!)」

リップル「(近接戦? キノ、得意じゃないくせに……)」


 身体能力(76-40=36)ロール(相手はキノの動きを知り尽くしている)……直下コンマ二桁
 
 成功→リップルの無力化に成功
 失敗→キノが無力化される
 


リップルは強い。身体能力はキノより遥かに高く、キノの魔法になかなかかかってくれない

わざと刀で弾きやすいように撃っても、大きな動作をとるリスクを厭わず避ける。厄介だ。けど、その動作は隙になる

キノが接近し、四次元袋から強化済み金属バットを取り出す。これに殴られれば魔法少女といえどひとたまりもない

忍者相手に接近戦を仕掛けるのは愚策だろうが、確実に弾を当てるためだ

リップルは驚きながらも忍者刀の峰をキノに振るった。金属バットに弾かれる。思ったより手に痺れが来る


キノ「(今!)」


金属バットを捨て、リップルの肩を掴んだ。逃がさない。リップルに魔法の弱化を数発叩き込む

これで形勢は明らかだ。リップルは魔法を使えない


リップル「キノ、私の魔法を覚えてないの?」

キノ「なに――ッ!?」


一瞬何が起こったのか分からなかった。リップルの蹴りがキノの腹を捉えたと分かったのは、衝撃で下を向いた時だ

まずい、魔法を封じたが、リップルの戦闘能力すべてを封じたわけではない

師匠から教わった腕折りを試す


リップル「その技を教えたのは誰?」


返された。腕を取られ、銃を落とす。なんだ、なんだというのだ。この敵は、キノを知り尽くしている。キノの動きを、考えを


いや、まだだ。まだ封じられていない手が四次元袋に届く

なんでもいい。この状況を打破できる武器を、見つけた


キノ「うっ、く……!」

リップル「思い出せないなら、これで思い出させてやる!」


リップルが拳を作り振り上げる。間に合え――!

キノはスタングレネードのピンを外し、放った。目を閉じる

轟音と瞼越しの眩い光。次いで耳鳴り。目の前で破裂した物がキノの脳を揺らす


光が収まる。目を開けた。チカチカする

何も聞こえない。三半規管がおかしくなっている。立っていられない

だがこれを間近で受けたのだ。いかにリップルといえど、無事では済むまい

視界の白に色が戻っていく。倒れている少女が見える。やった……リップルを倒した

変身は解けているようだ。少女は忍者装束ではない。歳は自分と同じくらいか……長い黒髪。リップルと同じだ

逮捕……いや、殺さなきゃ…………


まだ息がある

確実な安心のため、四次元袋からハンドガンを取り出し、少女に向ける

少女の顔が見えた。端正な顔立ちは、この前会った時とまったく変わらない

この前? 会った、時……? この少女は……


キノ「……か、の…………ちゃ、ん……?」


え、嘘だ。華乃のはずが……いや、この少女は細波華乃だ。事実だ。何故、華乃? 魔法少女? 華乃が?

華乃が、私を殺そうとした? 嘘だ、華乃はそんなことをする子じゃない。華乃はぶっきらぼうだけどかわいくて、熱心に結衣にアニメのことを話してくれて

その華乃が、リップル。リップルって誰なんだ? 敵? 親友? 華乃……

キノの意識は、甲高い悲鳴を上げると同時に暗転した


・・・・・・

~荒野エリア~


シャナ「…………また、か」


以前ショップで買った地図を取り出す。自分が走破したところが表示されるもので、それなりに埋まっており自分の場所も分かるし街の場所も一目瞭然だ

どうやら戻されるときはランダムらしい。近くに魔法少女――アカネの姿が無いか確認する。よかった。無い

さて、どうするか……>>340


 1.街へ行く
 2.ジェノサイ子と連絡をとる
 3.周りを探索する
 


どうやら再ログインして配置される場所もランダムのようだ。シャナの位置はまだこのエリアの来たことの無い位置だった。地図上の自分の周りがまだ埋まっていないのだ

今更このエリアに何があるかは分からないが、周囲を探索してみよう。もしかしたらジェノサイ子達と会えるかもしれない

連絡をすることもできるが、わざわざ自分から人に話しかけるのが嫌だ。見つけたらわざと出て行ってこっちを見つけてもらおう

地図を埋めるためにひた歩く。以前買った回復薬と保存食はしっかりとアイテム欄を埋めている

歩いていくと、気配があった。ガイコツのではない。これは魔法少女だ

アカネではない。アカネならもっと殺気を振り撒いている

シャナはその気配の元へと向かった


 そこにいたのは……>>直下コンマ一桁
 
 1~2→マスクド・ワンダー
 4~6→プフレゲール
 7~9→ペチカ
 0→キノ
 


見覚えのある茶色コート――コミュ障もとい魔法少女キノだ

キノは跪き、なにか考え事をしているようだった。シャナが近づいても反応が無い


シャナ「……あの」

キノ「………………………………」

シャナ「聞こえてないんですか?」

キノ「………………………………………………………………」

シャナ「……(駄目だこりゃ)」


 >>直下
 
 1.さらに話しかける
 2.反応が無いなら仕方ない
 


ただでさえ人に話しかけるのが嫌だというのに、コイツは反応のひとつもない。こっちが話しかけてるんだから返せ

と、思うだけでは伝わらない。シャナは苛立ちを込め、さらに話しかけた


シャナ「ったく……おいアンタ」

キノ「…………」

シャナ「アンタだよ! 聞いてんのか!」

キノ「…………」


キノが顔を上げる。シャナを認識したようだ。だが以前会った時と違い、その目に光が無い

シャナはどうしたのかと聞いた。が、答えない

困った。だがこのままにはしておけない。ゲームの説明文には他の魔法少女と協力して魔王を討伐しようとあるのだ。プレイヤー同士、仲良くしなければ


とにかく立て、と手を引くと、キノは簡単に立ち上がった

手を引いて歩くとついてくる。ああもうめんどくさい


シャナ「とりあえず街に行く。そこで誰か優しい人に引き取ってもらえ」


本来なら草原エリアまで行って色々する必要があるのだろうが、コイツのお守りをしながら行くつもりはない。街に連れて行って、とりあえず捨てよう

一刻も早くジェノサイ子達に合流しなければ

パーティー間であればお互いがどこにいるのか分かり、連絡も取れるのだが、以前のログアウトまでにジェノサイ子達のパーティーに入るのを忘れていた

自力で見つけるしかないのだ


1時間かけて荒野の街に着いた

そこにいたのは……>>直下コンマ一桁

 1~3→プフレゲール
 4~6→ジェノサイ子達のパーティー
 8~9→ディティック・ベル達のパーティー
 0→アカネ
 


ベル「ん? 君達は……」

シャナ「あ……」

ラズリーヌ「メルっちじゃないっすかー……」


そこには3人の魔法少女がいた。見覚えがある。ディティック・ベルとラピス・ラズリーヌ、それとチェルナー・マウスだ。確か同じパーティーにはメルヴィルという魔法少女もいたそうだが……どうやらそれを待っているようだ


シャナ「(この人達のパーティーにコイツを押し付けられ……ないか。パーティーは最大4人)」

シャナ「……」コクッ

チェルナー「だれ?」

ベル「確か、美しい妖精のシャナだったね。隣にいるのはキノ……何かあったのかい?」

シャナ「……コイツが、なんか茫然自失してるから連れて来た」

ラズリーヌ「元気無いっすかー? そんな時は、大声を出すといいっすよ!」

シャナ「(あ、駄目だコイツ駄目なタイプだ)」


陽気で元気で人当たりがいい。シャナとは真逆のタイプだ。別に嫌いというわけではない。仲良くなれれば越したことはない。が、やはり苦手だ


ベル「君は確かマジカルデイジー達と行動を共にしていたね。その、マジカルデイジーは残念だったね……実は個人的に現実のマジカルデイジーを調べたんだけど、彼女は本当に死んでいたよ……」


それがなんだってんだ。ファルから説明があったのだから当たり前だ。と言ってしまったら相手の気分を害し、このパーティーとの交流が絶望的になるかもしれない

そうですか、と暗い感じで返すとベルは同情を隠そうとせず、困ったことがあったらお互い協力していこうと言ってきた

すると、後ろから「んだ」と頷く声が聞こえてくる


シャナ「ッ!?」バッ

メルヴィル「ながよぐずるこったえれぇだいじだ」

シャナ「……????」

ラズリーヌ「あ、メルっちは仲良くすることはいいことだって言ってるっすよ!」

シャナ「は、はぁ……どうも」


キノ「…………」

メルヴィル「?」

キノ「……ッ」


キノがメルヴィルを見ると、何かに気付いたように目を見開いた

と、キノから敵意が漂ってくる

メルヴィルもその敵意を感じたのか、身構えた


シャナ「ちょ、なにしてんだ! ああごめんなさい。コイツ、なんか再ログインしてからずっとこんな感じで、悪気は無いんです」

メルヴィル「……」スッ


よかった。メルヴィルは悪い人ではなさそうだ。それにしてもこのキノは……まるでアカネだ。いい加減に目を覚ませと頬を叩いてみる


 キノの精神力(78)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→キノが正気に戻る
 失敗→キノがぶっ倒れる
 


キノ「ッ、華乃ちゃん!」

シャナ「………………は?」

キノ「あれ……」

メルヴィル「いつまで寝てんだよヴォケ!」

ラズリーヌ「あ、今のは『起きたようだね』って言ってたっす!」

シャナ「(どこの訛りだ……)」

キノ「…………ゲーム……」

ベル「そう。また来させられたのさ」

キノ「………………」スタスタスタ

シャナ「お、おいおいおい! どこいく!?」

キノ「私は、ソロプレイヤーだ」

ベル「え、あー……まぁそう言うなら止めないけど……」

シャナ「(…………なんだ、コイツ)」


 >>366
 
 1.引き留めてどこかに合流してもらおう
 2.もう知るかこんな奴!
 

1


シャナ「あっおい、待て!」

キノ「……?」

シャナ「1人で行動するのは危ない。前にも行っただろう、1人ヤバいのがいるって」

キノ「……ああ、そういえば」

シャナ「(忘れてたのか!?)」

ベル「ヤバいのって?」

シャナ「アカネという、甲冑みたいなのが付いた着物を着た魔法少女だ。アイツ、この前初対面の私の腕を斬り落としやがった」

ラズリーヌ「なんすかそれ!?」

シャナ「しかも、私からちょっかいをかけたわけじゃない。ただ、音楽家音楽家ってブツブツ呟いて、出会って数秒で斬られた」

メルヴィル「音楽家……」


ベル「それは……警戒しておくべきか」

シャナ「だから、適当にどこかのパーティーに入るべきだ」

キノ「……他の魔法少女は信用ならない」

シャナ「そんなこと言ってる場合か!? 殺されたら死ぬんだぞ!」


 知力ロール……するまでもない。キノはただでさえ弱いオツムが今はさらに冷静ではない
 


キノ「…………分かった」

シャナ「(ホッ……)」

ベル「じゃあ皆揃ったし、草原エリアに行こうか。他のパーティーがさらに次のエリアを開放したみたいだけど、まだ草原の探索は終わっていない」

チェルナー「あっ、狩場がとられる!」

メルヴィル「ゆ゛る゛さ゛ん゛」

ベル「うーん……別に狩場は皆で共有すれば」

ラズリーヌ「とにかく早く行くっすよ! それじゃ!」

シャナ「(私も早く合流しよう……)」

キノ「…………」ガサゴソ

キノ「ッ!(ラピッドスワローが無い……! そうだ、リップル……! 華乃、ちゃん……)」


・・・・・・


何故かまたキノと共に草原エリアに行くことになった。キノは普段は乗り物があるそうだが、現実世界に忘れて来たらしい

しかもまだキノからの警戒が解かれていないようで、数歩離れたところで歩いている


シャナ「(ハァ……早くジェノサイ子達と合流したい。こんなに人恋しくなったのは初めてだ)」


すると、草原エリアのどこかで大量のガイコツの気配と、それと戦う魔法少女達の気配があった


 戦っている魔法少女達は……直下コンマ一桁
 
 1~3→プフレゲール
 4~6→ジェノサイ子達
 7~9→クランテイル達
 0→アカネ
 


ジェノサイ子「なんか知らないけど、ここメッチャガイコツ出るじゃん!」ドカッ

@娘々「今のうちにキャンディー大量ゲットアル!」ゲシッ

のっこちゃん「え、えいっ!」バキッ

シャナ「(ああっ! やっと見つけた!)」


シャナは人生初、人に会えたことを喜んで(ペチカは女神なため人ではない)走った。キノも走ってついてくる。おいなんでついてくるんだよ


のっこちゃん「あれ、シャナさん」

@娘々「おおー久しぶりアル!」

ジェノサイ子「と……あれは誰だっけ?」


シャナ「よかった……あ、あの……パーティーに」

ジェノサイ子「あれ? まだパーティー登録してなかったっけ」

@娘々「そうアル! だからいつまで待っても来なかった!」

のっこちゃん「てっきりもう登録してると思ってて……ごめんなさい」

シャナ「っ……べ、別に……」


物心ついてから初めて、当たり前の仲間として扱ってくれたメンバーに感謝する。自分は卑屈だという自覚はある。だから何しに来たとかそんなことを言われると思っていた

自分の今までの人生を顧みて、シャナは泣きそうになった


シャナ「あ、もういいぞ」

キノ「……1人は危ないって」

シャナ「(コイツバカ正直か!?)」


改めてパーティーに入り、仕方なくキノの同行も許す

どうやらこのポイントはモンスターが大量発生する、所謂「狩場」というやつのようだった。赤いガイコツの群れが現れて、倒して少し経つとまた復活する。キャンディーとり放題だ

シャナとキノも加わり、5人でガイコツを狩りまくる

赤ガイコツの仕様を知らないのか、途中敵に銃を向けるキノを止め、理由を説明するのにヒヤヒヤしたが、問題なくその日は1日狩りで潰した

魔法の端末に表示された時間は残り2日。どうやらこの世界には夜があるようで、5人は野宿としゃれこんだ


ジェノサイ子「それで、キノ氏はどんな人なんですか?」

キノ「……魔法の国の、監査部門に所属してる」

@娘々「監査部門!? じゃあこのゲームのことを通報してほしいアル!」

キノ「それが駄目だった。このゲームの中からも、現実に戻っても魔法の国と連絡が取れなくて……」

ジェノサイ子「くっそー! 通報も許さないとかクソゲーもいいとこだよ!」


シャナ「(こういうときコミュ力ある人はいいよな)」

のっこちゃん「キノさんは、なんで私達がこんなゲームに来たのか、分かります?」

キノ「……ううん、私もなんで呼ばれたのか、皆の共通点がなんなのか、まったく分からない」

ジェノサイ子「やっぱりランダムなテスターなのかなぁ」

@娘々「ランダムでデスゲーム参加とか……ホントに……」

シャナ「(…………そろそろガイコツが復活する時間だ)」

ジェノサイ子「あ、そろそろ時間だね。夜でも狩りはやっておこう」

@娘々「えー休まないアルか?」

ジェノサイ子「魔法少女に睡眠とかいらないじゃん。空腹ゲージも保存食でなんとかなるし」

キノ「空腹ゲージとかあったんだ……」

シャナ「(ああ……ペチカ様の料理が食べたい。あのパーティー羨ましいなぁ……食べ放題なんだろうなぁ…………無理言って引き抜けばよかった。いや待て、3日経てば皆集まるんだからその時にでも……)」


ジェノサイ子「これからキノ氏はどうするんで? やっぱどっかのパーティーに入るとか?」

キノ「うん。この人が1人は危ないって」

のっこちゃん「そういえば、シャナさん腕治ってますね」

シャナ「あ、そうだ! そうだよ!」

@娘々「うわビックリしたアル!」


シャナはアカネについて知っていることを話した。内容はベル達に伝えたものと同じだ。ゆくゆくはこれを全員に話し、アカネ討伐の空気さえ作ってしまえば……


キノ「……でも、本当にちょっかい出さなかったの?」

シャナ「だからそうだと言ってるだろ!」


 知力(52+15=67)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→キノにちゃんと説明できた
 失敗→キノの警戒は解かれないまま
 


シャナ「そもそも、私は普通の魔法少女で、ここにいる連中とは初対面だ。自慢じゃないが初対面の人間にちょっかいを出せるほど不良ではない」

キノ「……」ジトッ

シャナ「な、なんだよ……監査部門だかなんだか知らないけど、叩いても埃ひとつ出ないからな」

キノ「…………分かった」

シャナ「(なんとか警戒は解いたか……なんかどっと疲れた……)」

ジェノサイ子「さぁ行こう! キャンディー狩りじゃぁぁ!」ダッ

@娘々「あっ、待つアル! まだたき火消してない!」

キノ「私がやっておく」


キノが何か知らないけど銃を構え、火に撃ち込んだ。するとみるみる内に火の勢いが弱まり、踏むと消せるくらいになる。キノはそれを踏み消した

なるほど、どんな魔法か知らないけどそれがキノの魔法か。何かを弱くするのか?


再び夜のガイコツ狩りツアーだ。夜の原っぱにガイコツなどホラーだが、もう気にするような相手でもない。むしろガイコツが居ない方が怖いくらいになってきた

魔法の端末に表示されるキャンディーが1000を越した。他の面々も同じくらい――シャナは遅れて来たからもっとあるはずだ。そろそろショップで何かしらのアイテムを買うべきだろう


「  あ  あ  あ  あ  あ  あ  あ  ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー っ っ !  !」


地を揺るがすほどの大声が聞こえ、思わず耳を塞いだのはそのときだった


シャナ「な、なんだ!?」

@娘々「見るアル!」


リアルが売りのゲームは月もリアルだ。が、何故かその月が見えない。代わりに見えたのは巨大な人影だ


シャナ「(な、んだ……コイツ……!)」

ジェノサイ子「ちゅ、中ボス?」

キノ「……いや、魔法少女だ」

@娘々「あんなデカい魔法少女見たことないアル! 30mはあるアルよ!」

シャナ「(あれは、チェルナー・マウス、だよな……? なんだ、巨大化がアイツの魔法か!?)」

のっこちゃん「に、逃げなきゃ……」


確かにあんな奴とまともに戦って勝てる気がしない。どんな攻撃を繰り出しても踏まれればペチャンコであの世行きだろう

何故チェルナーが敵意むき出しで自分達を睨むのかは分からない。さっき彼女達になにかやらかしたというわけでもない


チェルナー「ここはチェルナー達の狩場だ! 勝手に荒らしちゃだめーーーーー!!」


ああ、そうか。さっき言ってた「とられる」ってそういうことか。自分達の狩場なら何でお前ら1日中放っておいたこの野郎


チェルナー「  出  て  い  け  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  !  !  」ズシン

のっこちゃん「ひいいぃ!」

ジェノサイ子「フンッ、たとえ相手が怪獣魔法少女だろうと……この夢ノ島ジェノサイ子は倒せないよ!」カシャン

シャナ「(そうだ、ジェノサイ子の魔法はあらゆる攻撃の無力化……負けることは無い)」

@娘々「なんで魔法少女同士で争うアル! 協力すべきアル!」

シャナ「(@娘々の言う通りだ。話し合いを……)」

のっこちゃん「……」

シャナ「(のっこちゃんは後ずさっている……逃げるという選択肢もアリか)」

キノ「……うわぁ大きい」ポカーン

シャナ「(コイツは……)」


 >>395
 
 1.戦う
 2.話し合う
 3.逃げる

2


シャナ「(魔法少女が相手なら、言葉が通じる。話ができる)」

シャナ「(とりあえず@娘々がしてくれそうだし、ジェノサイ子とのっこちゃんを落ち着かせるか)」

シャナ「ジェノサイ子、@娘々が話し合いをしてくれる。上手くいけば狩場の共有もできるかもしれない」

ジェノサイ子「@娘々が? よ、よし。賭けてみよう」

シャナ「のっこちゃんも、いいな?」

のっこちゃん「……!」コクッ

シャナ「キノ、間違ってもちょっかい出すなよ」

キノ「しないよ。人のことをなんだと思っているんだ」


チェルナー「ここはチェルナー達が見つけた場所なのー!」

@娘々「でも今日一日中狩りをしてたけどそっちは来なかったアル!」

チェルナー「一日中!? 横取りされたー!」

@娘々「この場所に名前の書いた看板でも立ってたアルか!? ここは皆の場所アル!」

チェルナー「この泥棒ー!!!!」ズシン

シャナ「(あ、これだめだ)」


世の中には話の通じない魔法少女というのも存在するのだ


キノ「なんでこっち見てるの?」

シャナ「いや、別に……」


 幸運(96)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→車椅子がやってくる
 失敗→ファンブル(@娘々がプチッとされる)
 


「待ちたまえよ!」ブォン


F1のような音と共に、車椅子が飛んできた。見覚えがある。プフレだ


プフレ「チェルナー・マウス、君は以前私達の狩りを許してくれたじゃないか。ここにいる面々も、狩りをするに値する者達だとは思わないか?」

@娘々「わっ!? 誰アル!?」

シャドウゲール「すみません、すみません……邪魔してすみません……」ペコペコ

プフレ「魔法少女は敵じゃない、≪トモダチ≫だよ!」

チェルナー「いいや! チェルナーが認めない奴は敵だー!!」

プフレ「ならどうやって認める!」

チェルナー「チェルナーが強いと認めたら許す!」

プフレ「だそうだよ」


何が「だそうだ」だ。人の問題に首を突っ込んでくるお前は何様のつもりだ。という言葉もまた、喉に収める

なるほど強いと認めたらか。だが魔法少女同士で戦っている場合ではない。ここは話し合いで済ませるべきだろう。と言おうとしたところで、困った声をあげながらディティック・ベルが走って来るのが見えた


ベル「ちぇ、チェルナー! もう何度も何度も!」

シャナ「(……なるほど、個人の暴走だったわけか)」

チェルナー「だって、こいつらが取った! 倒す!」

ベル「やめてくれよ! ただでさえ君が暴れて肩身が狭いんだから!」

チェルナー「そんなの知らないもん! そもそもあいつはどうした! あの強い奴は!」

シャドウゲール「ッ……」

プフレ「訳あってね」

シャナ「(そうだ、マスクド・ワンダーは……いないのか? パーティーから抜けたのか)」


ジェノサイ子「上等だ! 決闘だこの野郎ー!」

@娘々「もうこうなったら、仕方ないアル……!」

シャナ「(ああそうだ……話し合いなんかしてる場合じゃない。向こうから吹っかけて来た喧嘩だ!)」チャキッ


こうなったらもう実力行使しかない。さっきまで考えていた話し合いとかいう考えは吹き飛んだ。今はコイツと戦いたくて仕方がない


プフレ「……決闘……?」

キノ「……やるしか、ないの?」

プフレ「いや、決闘なら……」

シャナ「行くぞ!」

ジェノサイ子「おう!」

プフレ「いや、双方待ってくれ!」


プフレ「決闘ならば、然るべき時を決めて代表者同士が戦い合うべきではないか?」

@娘々「何を今更!」

ディティック・ベル「そうだよ! とにかく、今こんなことをしても何にもならないから!」


ベルの言葉に追従するようにやっとやってきたラピス・ラズリーヌとメルヴィルもまた合流する。こんなに魔法少女が集結するのはログアウト前の定期イベント以来だ


メルヴィル「んだ」

ラズリーヌ「メルっちも決闘を受けようと言ってるっす」

プフレ「決まりだな」


一体、なんなのだろうか。このプフレという魔法少女は。突然現れたかと思いきや、あっという間に場をコントロールしてしまった

舌打ちするジェノサイ子達を尻目に、シャナは底の知れない魔法少女に興味を持った


プフレ「どうだろうか。我々のパーティーは既に次のエリアの解放条件を知っている。そのチャンスを君達にあげようと思うのだが」

ジェノサイ子「エリア解放!? 100万円!!」

シャナ「……何故」

プフレ「まぁそう思うのも当然だろうね。所謂お近づきになりたいというやつさ。魔法少女同士、パーティーの垣根を越えて協力したいだろう?」

シャナ「(……最初からそれが目的か)」


シャナ達とチェルナーの戦いを止めたのも、次のエリア解放のチャンスを与えたのも、お近づきになりたいと言いながら恩を着せてきている。自分の仲間を増やすつもりだ

そういった人間の思考の裏側を読み取ることに長けたシャナ……紗南はプフレの考えも大体読めていた

だが、このままチェルナーのパーティーと戦ったところで勝ち目があるかは分からない。ならばこの体中ケガまみれのような恰好をした奴と共に歩んでも……


プフレ「さて、返答は?」

ジェノサイ子「受ける!」

シャナ「(まぁ、なるようになるか……)」


ベル「あの、ごめんなさい……ウチのチェルナーが……」

シャナ「……いいえ」


ベルはあくまで申し訳なさそうにしている。このパーティーのリーダーとのことだったが、メンバーを御し切れてはいないようだ

プフレとシャドウゲールと行動を共にしている中で、キノがプフレに誘われていた


プフレ「君は1人なのかい? 我々のパーティーには空きがある。一緒にどうだい?」

キノ「……」ジトッ

プフレ「嫌ならいいんだが……有能な魔法少女は手元に置いておきたいと思ってね」

キノ「……」


 プフレの知力ロール……は彼女の知力が100のため不要。キノはプフレのパーティーに入った
 


ベル達のパーティーと別れて、ジェノサイ子チームとプフレチームが草原エリアのとある場所にやってくる。それは火山の火口だった

溶岩がゴポゴポと鳴り、近くにいるだけで魔法少女といえど汗をかき、とても暑い


ジェノサイ子「この中に次のエリア解放の鍵が?」

プフレ「そうだ。まぁ見ての通り厄介でね。鍵を取るための仕掛けだが、それを解くためには――」

ジェノサイ子「へっ、そんなの必要ないよ!」カシャン

シャドウゲール「えっ?」

ジェノサイ子「とうっ! ダイナミックエントリー!!」ドボン

シャドウゲール「ええええええっ!!?」

プフレ「ほう……」

シャナ「(ジェノサイ子の魔法は、あらゆる攻撃の遮断……マグマの中でも、大丈夫………………なのか?)」


シャドウゲール「あ、あの……あの人大丈夫なんですか?」

シャナ「私に聞かれても……」

@娘々「夢ノ島さんの魔法なら大丈夫のはず……けど、遅いアル」

のっこちゃん「いくらなんでも溶岩は駄目だった、とか……?」

キノ「……」

ジェノサイ子「プハッ、獲ったどー!!」ザパッ

@娘々「夢ノ島さん! 生きてたアルか!」

ジェノサイ子「よいしょっと……言ったじゃん。このスーツを通す攻撃は無いって! それよりこれでメンバー全員100万円だよ!」

シャナ「(そうだ、パーティーに入ってるから全員に100万円ずつ……!)」

@娘々「おおーっ!」

ジェノサイ子「この100万円使ってオフ会する!?」

@娘々「無料酒で全部浪費するアル!」

のっこちゃん「あの、流石にそれは……あと私飲めません」

キノ「私には?」

シャナ「お前メンバーじゃないだろ」

キノ「むぅ……」

……次のエリアって都市で合ってましたよね?

今確認したら都市でした


次のエリアを開放した時点で、ファルからの招集があった

再び魔法少女達が荒野の街へと集められる。せっかく次のエリアに行こうとしたところだというのに、まったく削がれるものだ


ファル「えー、このゲームで死んじゃったら本当に死んじゃうことを伝えていなかったミスを認め、マスターからのお詫びとしてキャンディーが配布されることになったぽん」

ジェノサイ子「やっぱ詫びキャンディーあったか」

ファル「1人につき100個の配布だぽん」

ジェノサイ子「ふざけんな!!!!」


100個じゃショップで買える物も限られてくる。というか、謝罪の気持ちがまったく伝わってこない。逆に煽られている気分だ


ファル「全員にあげるためには1度こうやって集まってもらわないとプログラム上できないので、こうして集めた次第だぽん」

プフレ「ふむ……いい機会だな」


>>418 感謝の極み 都市の次は洞窟→図書館→魔王城だったな!?


プフレ「皆聞いてほしい!」


プフレの言葉に、その場にいた魔法少女全員が彼女を見る


シャドウゲール「お嬢、今ですか!?」

プフレ「今言わずにいつ言うんだ」

プフレ「実は、再ログインした時に我々はマスクド・ワンダーと合流するために移動していた。だが、マスクド・ワンダーは荒野エリアの中にあるビルの1つの中で死んでいた!!」


周りがどよめく。魔法少女が死んでいた。つまるところ意味するものは……


ラズリーヌ「嘘だ! あのマスクド・ワンダーが……!」

プフレ「残念ながら本当だ……後ろから大きな石で殴られていてね、即死のようだった」

クランテイル「ガイコツにやられたのではないか?」

ラズリーヌ「同志ワンダーがそんな死に方するわけねぇっす!」

プフレ「そこな魔法少女の言う通りだ。マスクド・ワンダーは強く、我々としても戦力面で助けられていた。スケルトンなどに殺されるハズがない。ならば何故死んだのか、ここにいる魔法少女が殺したからだろう!」


周囲がさらにどよめく。マスクド・ワンダーが死んだと明かされてから皆が薄々感じていたことをハッキリと、そうだと言われたのだ

つまり、この中にマスクド・ワンダーを殺してのうのうと知らん顔をしている者が居るということだ

マスクド・ワンダーと同じチームだったプフレとシャドウゲールの心中は察するにあまりあるが、ラズリーヌもどうやら交流があったようで、その事実を認められないようだった


プフレ「それだけではない! 少しいいかな? マジカルデイジーが脱落した時、彼女の魔法の端末は?」

ジェノサイ子「……あったよ。一緒に埋葬したけど」

プフレ「その中のアイテムやキャンディーはどうした?」

のっこちゃん「半分は手向けにしようって残して、後は皆で分けました……」

プフレ「聞いたか! たとえ脱落しても、その魔法少女が持つ端末からアイテムやキャンディーが無くなることは無い。だが、我々が見つけた時、マスクド・ワンダーの端末からはキャンディーとアイテムすべてが消えていた!」

シャナ「(つまり……強奪)」

プフレ「その中にはミラクルコインもあった! アイテム図鑑を持っている者は見てくれ!」


シャナはパーティーで買ったアイテム図鑑を見た。ミラクルコインの欄には「1(1)」とある


プフレ「括弧の外はこのゲーム内での上限数、そして中の数字はこのゲームで流通している……誰かが持っている数ということだ! つまり、誰かがミラクルコインを持っているということだ! このゲーム内でアイテムを所持するためには、必ず魔法の端末に登録しなければならない。言い逃れはできない!」


クランテイル「ならどうするというのだ。今から犯人探しか?」

プフレ「そうだ。皆、我々に魔法の端末を見せてほしい。無論私達2人……今は3人を疑う者もいるだろう。我々の魔法の端末も皆に見せよう!」

シャナ「(……こういうとき、事態を円滑に進めるためには……)」


どうする、見せるか見せないかという雰囲気が漂う中、シャナは1歩出た。こんなところで自分の性格を押し通しても仕方がない


プフレ「感謝するよ…………ふむ、どうやら君はシロのようだ」

シャナ「……どうも」


シャナを皮切りに、その場にいた魔法少女は次々と魔法の端末をプフレに差し出した。プフレはシャドウゲールとキノとの3人で漏らしが無いようチェックし、プフレ達の魔法の端末はクランテイルがチェックした

クランテイルチーム、ジェノサイ子チーム、ベルチーム、誰もがシロだ。さて、残るは1人――アカネだ


プフレ「後は君だけだ。さぁ、見せてくれたまえ」

アカネ「…………」

シャドウゲール「ッ(この人……なんだ?)」

シャナ「(ヤバイ……プフレ達にアカネのことは言っていない! キノ、気付け!!)」

キノ「……」


 キノの知力(36)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→プフレに耳打ちする
 失敗→プフレがアカネのことを知らないということを知らない
 


キノ「プフレ……奴は危険だよ」ヒソヒソ

プフレ「なに?」

キノ「奴は出会った魔法少女に音楽家かという質問を投げかけ、斬りかかって来る。そこのシャナもこの前腕を斬り落とされている」

プフレ「…………どうやら、犯人は決まりかな?」

アカネ「…………」


プフレとアカネの間にピリピリとした空気が漂う。いつどちらかが動いてもおかしくない

これには誰も手出しできない。誰一人、プフレとアカネに近付かない。この場の魔法少女は、その雰囲気から誰もがアカネが犯人だろうと察した


シャナ「(奴には借りがある……この空気だ。何かあったら……!)」


右手を太刀の柄にかける。いつ抜刀してアカネに襲い掛かることになってもいいように


プフレ「見せられないというのなら、君が犯人だ。それでいいのか?」

シャドウゲール「ッ……!」

キノ「……!」

アカネ「…………音楽家か?」

プフレ「そんなものではない。音楽家を探しているのか?」

アカネ「どこにいる……答えろ……」

プフレ「知らないな」

アカネ「音楽家は…………音楽家ァ……」


キノ「(なに、この……音楽家……音楽家……)」

キノ「(駄目だ、分からない……ずっと前に、聞いたことがあるはず……なのに…………)」ヨロッ

シャドウゲール「大丈夫ですか?」

キノ「う、うん……」

プフレ「ファル、このゲームでプレイヤーキルをすることによるペナルティは?」

ファル「無いぽん」

プフレ「だそうだ」チラッ


プフレが他の魔法少女を見る。お前らかかれという目だ。冗談じゃない。それはお前達の問題だろう、巻き込むな


だが、この問題を解決しないことにはこの場から離れられないだろう。時間は有限だ。この間にも3日というタイムリミットは迫っている

シャナは焦った。いや、他の面々もそうだろう。正義はプフレにある。アカネは完全なる加害者で、咎めと報いを受ける立場だ

だが、その中で何故アカネはああもあんな感じなんだという考えが浮かぶ。このゲームをクリアすれば何か分かるのだろうか


シャナ「…………」ギリッ


だが、今はあのアカネをどうにかしなければ、下手したら相対しているプフレ達すら危ない

正義感が胸の中で蠢く

最初に動いたのは、アカネだった


アカネ「答えろ……音楽家、どこだァッ!!」ブォン

シャドウゲール「お嬢!」

プフレ「……!」


プフレの車椅子のタイヤ部分にある鳥の彫刻が口からビームを放つ。普段ならそれ武器だったの!? と驚くが、そんな場合ではない

アカネはそのビームを両断してみせたのだ。続けざまに脇差でプフレをジッと見つめ、振り払う

だがその斬撃はシャドウゲールがプフレを突き飛ばしたことによって回避された。何もない空間を斬撃が飛ぶ

キノはというと、アカネに銃口を向け、何かを撃った。あれはなんだろうか、アカネにダメージがあるとは思えない。が、アカネの動きが不自然になった


シャナ「(今だ!)」ダッ


太刀を抜き、いつでもコートを開けられるよう走る。どうやら飛び出したのはシャナだけではないらしい。ジェノサイ子、@娘々、ラズリーヌがシャナに続く


 身体能力(54+15+20=89)ロール(他の魔法少女との共闘とアカネのステータス減により+20)……直下コンマ二桁
 
 成功→アカネを倒す
 失敗→ファンブル(一緒にいた魔法少女が1人死ぬ)


 54……成功!

 
 
シャナ「今日こそ!」


アカネ「ッ!」ズバッ


アカネの斬撃が飛ぶ。だがもう見切った太刀筋だ。コートを開け、肌を見せて斬撃を回避。さらにアカネの視界からも消えた

ジェノサイ子と@娘々が数日で培ったチームワークでアカネの刀と脇差をもぎ取る。アカネの動きは鈍く、どうやら自分でも何故こんなに動けないのか分かっていないようだった

そして、ラズリーヌがアカネに殺到。マスクド・ワンダーの仇と叫んでいるからに一撃で決めるのだろう


 アカネにトドメを刺したのは……>>直下コンマ一桁
 
 奇数→ラズリーヌ
 偶数→シャナ
 


シャナがアカネに見せた肌面積は、物理的にも消えるレベルだ。この状態だとシャナもアカネに手出しはできない

だが、シャナは「いつでも」姿を消せる。つまり、消えないこともできるということだ

アカネの背後に回り、魔法を解除。太刀をその背中に突き刺した


アカネ「ッ、ガ、ハッ……!?」

シャナ「……!」


心臓を一突きだ。これは魔法少女といえど生き延びることは不可能

アカネは最期に音楽家と呟いて息絶えた


シャナ「………………」


自分で勝手に認定したものだが、宿敵だった。これで腕の借りは返した

だが、人殺しをした……気持ちのいいものなどではない。嫌悪感が体中を駆け巡る

アカネの肉を貫いた感触が両手によみがえる

吐きそうだった。でも、吐かなかった。何故だろうか、人どころか魔法少女を手にかけたのも初めてのはずなのに、まるで自分自身、人を殺し慣れているかのように何もない

いっそ吐きたかった。そうすれば、この少しの嫌悪感ともおさらばできる気がしたのに


プフレ「助かったよ。美しい妖精のシャナ」

シャナ「前半部分は、省いてください……」

プフレ「じゃあシャナ。改めて礼を言おう。夢ノ島ジェノサイ子に@娘々、ラピス・ラズリーヌもありがとう。おかげで命拾いした」


シャドウゲール「お嬢……これ」

プフレ「アカネの端末か………………っ、これは……」

キノ「どうしたの?」

プフレ「………………いや。とにかく、これで犯人は退治できた。皆、ありがとう」


アカネの端末はプフレが回収し、その場はお開きとなった。そして、ついでにチェルナーと決闘の日時を話し合っているようだ

シャナも当事者であるため、その話し合いに参加しなければならない。だがプフレとベルとの間で「3日目の夜」と決定。自分は一言も喋らずに済んだ


プフレ「それでは新しいエリアに行こうか。キノ、掴まってくれ」

キノ「?」ガシッ

プフレ「それじゃあいくぞ」ブォン!

キノ「うわあああああああああああああああぁぁぁ!!???!???!?」


・・・・・・

~都市エリア~


プフレ「どうやらこのエリアに出るロボットのパーツは使えそうだ」

シャドウゲール「何にですか?」

プフレ「コイツの強化だよ」


プフレが車椅子を叩く。キノはおろか、シャドウゲールもピンときていないなら難しいことなのだろう


プフレ「これらのパーツを使って……シャドウゲールの魔法でこの車椅子を戦車にするんだ」

シャドウゲール「ええっ!? む、無理ですよ!」

プフレ「無理なものか。機械なら独壇場だろう? さぁパーツを集めるのだ! パンツァーフォー!」


この都市エリアとやらは今までのエリアと違うらしい。なにより、進んでも進んでもビル群なのだ。オマケに出てくるモンスターはロボット。SFのようだった


キノ「……」バキッ

シャドウゲール「どんなパーツが手に入りました?」

キノ「……これ。なんだろう?」

プフレ「ふむ……胸のあたりのパーツだ。察するに、バッテリーかなにかだろう」

キノ「バッテリー……」

プフレ「どうした?」

キノ「いや……じゃあ、もっと集めてくる」


プフレ「そうだ、そろそろ君の魔法を教えてもらってもいいかな?」

キノ「私の?」

プフレ「さっきアカネに撃ち込んだろう? あれからアカネの動きはおかしくなった。つまり、君が何かをしたということだ」

キノ「……」

プフレ「我々は仲間だ。ちなみに私はこの車椅子で猛スピードで走れるという魔法で、シャドウゲールは機械をいじって強化する魔法だ」

キノ「強化…………」

プフレ「さて、君のは?」


 知力ロール……は必要ない。プフレはキノと違って知力100なのだ

 
 
キノは自分の魔法について話した。簡単な堅さや鋭さ、果てには空間にも作用することすべてを喋った



プフレ「なるほど……いやはや、どうやら私達はとんだ当たりを引いてしまったようだよ」

シャドウゲール「確かに、強化弱化は魅力的ですね」

プフレ「シャドウゲールはお役御免だな」

シャドウゲール「なっ! い、いいですもん! 全部キノにやってもらえばいいじゃないですかっ!」

プフレ「冗談だ。キノが変えられるのはあくまで内面的なものだ。外の強化はアテにしている」

シャドウゲール「もう……!」

キノ「……?」

プフレ「改めて、仲間になってくれてありがとう。キノ」

キノ「……いえ」


今日はここまでっす!
諸君、私はラズリーヌが好きだ。諸君、私はラズリーヌが好きだ。諸君、私はラズリーヌが大好きだ

ただ、restartが手元にないせいかちょくちょく展開間違えてるね。ベルっちはプフレが決闘の話を持ち掛けるまで探索メインで狩場独占は知らなかった、なぜならそうして魔法少女達に不和を拡げたい人が居たから。
後、プフレはシャドゲの魔法は戦車の作成と最初から嘘をつく、そうする事でシャドゲの魔法は対した事無いと思わせてたからマジカルキャンディーの数合わせで疑われる事なかった。……まぁ、全部原作と同じってのも味気無いし、面白い内容だし、細けぇ事はって事でもいいけど、一応全部原作では理由あった行動だったからツッコミを。

>>471 Youに感謝しかない なんとかコミック1巻を参考に進めてるけど原作と違いがあって泣く


プフレ「その魔法を誰かに説明したりしたかい?」

キノ「いや……ただ、火を弱めるのは使った」

プフレ「それは誰の前で?」

キノ「夢ノ島ジェノサイ子達のパーティーの前……チェルナー・マウスと遭遇するちょっと前に」

プフレ「ふむ…………では、これから皆に魔法の説明するときは『銃で撃った物の勢いをちょっと弱める』ということにしておこう」

キノ「……?」

プフレ「シャドウゲールの魔法は『戦車の作成』と偽るつもりだ。そして私の魔法は車椅子の操作……見事に3人とも心もとない魔法だろう?」

キノ「それでなんの意味が……」

プフレ「油断させるためだよ。私達のパーティーは大したことないと思わせるためにね」

キノ「…………」

プフレ「君も見ただろう? アカネの端末の中には、ミラクルコインは入っていなかった」

キノ「つまり、マスクド・ワンダーを殺した犯人はまだ生きている……」

プフレ「ファル、プレイヤー全員にアイテム図鑑を確認してみるよう伝えられるかい?」

ファル「反則ギリギリだけどやってみるぽん」


・・・・・・


ベル「犯人が……まだ別にいる!?」

メルヴィル「んだ」

ベル「でも、なんでそれを……」

ラズリーヌ「メルっちはプフレが持つアカネの端末を後ろからコッソリ見たそうっす。そしたら、アイテム欄にミラクルコインは無くて……」

ベル「それは本当なのかい?」

メルヴィル「んだんだ」

チェルナー「あの強い奴を倒した奴、まだいる?」

ベル「みたいだよ……それにわざわざファルからアイテム図鑑を確認しろなんて言われれば……」

ベル「(一体誰なんだ……いや、誰もが犯人たりうる。魔法少女なら…………それに、ログイン直後に殺されたというなら、それこそ犯人は残った15人の内の誰か……)」


・・・・・・


シャナ「…………これ……」

ジェノサイ子「どうしたん?」

シャナ「ファルに言われた……アイテム図鑑のここ……ミラクルコイン」


4人でアイテム図鑑を囲む。ミラクルコインの欄には、アカネのいざこざ以前と変わらず「1(1)」とあった


@娘々「これってつまり……もうドロップイベントがあったってことアルか?」

ジェノサイ子「いや、イベントはログアウト前のあれだけだ……アカネが持っていたのをプフレの端末に移したとか?」

シャナ「…………(アカネが持っていた物をプフレが持っているのは当たり前だ。そんなことでわざわざファルがアイテム図鑑を確認しろなんて言うはずない)」

シャナ「(それに、プフレはアカネの端末を見た時に少し驚いていた。つまり……アカネは持っていなかった)」

シャナ「(アカネの端末は彼女の死体と一緒に埋めた。まぁ、あんな奴だったけど魔法少女だったんだから、殺した私が埋めるのは当たり前だった)」


・・・・・・


ペチカ「アイテム図鑑を確認って言っても……何かあります?」

クランテイル「分からん……」

リオネッタ「そろそろフルポーション流通量が上限に達しようとしていますわ。買い占めなくては」

那子「おかわりでーす!」

ペチカ「あ、はーい」

那子「ハムッ、ガツガツッ! ンクッ、ゴキュッ!」

リオネッタ「もう! もう少し静かに食べられませんこと!?」

那子「私の国じゃこれくらいワイルドに食べた方がお肉も喜ぶんデース!」

クランテイル「……」モグモグ

ペチカ「(よかった……別れ際にプフレさんがお皿をくれて……でもなんでお皿? Rって食器も引けるの?)」


・・・・・・


プフレ「さて、これで察しの良いメンバーは気付いたことだろう。次に他のパーティー……そうだな、@娘々のいるパーティーに助けを乞おうか」

シャドウゲール「なんで@娘々?」

プフレ「彼女の魔法、見ただろう? アカネの刀をもぎ取った時、彼女は自分の持っているお札に封じ込めた。つまり彼女の魔法はお札に物をしまえる能力だ。ロボのパーツの搬入作業にうってつけじゃないか」

キノ「そんなに大量のパーツが?」

プフレ「あの怪獣魔法少女と対等に戦うには、まずこちらの体積を増やすことを考えねばね。キノ、悪いが@娘々のパーティーに協力をお願いしてきてくれないか? 彼女達もバカではない。いつまでも荒野や草原なんかではなく都市エリアにいるはずだ」

キノ「…………………………分かった……」


 キノの幸運(78)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→@娘々のパーティーと出会う
 失敗→一日かかっても見つからない
 


・・・・・・


シャナ「(都市の敵はロボ……電気ショックとかロケットパンチとか銃撃とかミサイル飛ばしてくる以外は普通……)」ズバッ

ジェノサイ子「のっこちゃん、危ない!」

のっこちゃん「ひゃっ! あ、ありがとうございます……」

ジェノサイ子「いいのいいの! このスーツならいつでも肉盾になれるからね!」

@娘々「ホアチャァーーー!! って、危ないアル!」

キノ「あ、いた……ぐえっ!」


@娘々の飛び蹴りがキノをクリーンヒット。回復薬をひとつ使う羽目になってしまった


・・・・・・


プフレ「………………なぁ、護」

シャドウゲール「なんですか。というかここではちゃんとシャドウゲールって」

プフレ「キノ、どう思う?」

シャドウゲール「どう……? まぁ、言葉を信じるなら監査部門のエリートですけど……」

プフレ「いや、彼女の頭だ」

シャドウゲール「頭? 綺麗な黒髪ですね」

プフレ「ハァーーーー……護にもこれが必要か」

シャドウゲール「なんですかこれ?」

プフレ「Rで引き当てたワイヤレスヘッドホンを護が改造した、即席知能アップアイテム「頭よくなる君」だ」


プフレ「説明しよう! 『頭よくなる君』とは司令官ロボの頭脳回路をシャドウゲールの魔法でヘッドホンに取り付け、使用者の脳になんかすごい電流を流して急激に頭をよくするヘッドホンである!! しかも、付属のアンテナで通信もできる!」

シャドウゲール「ああ、このテレタビーズの触覚みたいなのってアンテナだったんですね」

プフレ「どうやらキノは自分の魔法の凄さが分かっていないようだ。戦う時もパンチ力やキック力とか、細かい分類にしている。そのまま筋力とすればいいのに」

シャドウゲール「お嬢、それ陰口っていうの知ってます?」

プフレ「彼女の魔法は世界の万象、概念にすら介入できる危険な魔法だ。が、あの様子では肝心の本人が自分のポテンシャルに気付いていないだろう。この『頭よくなる君』を付ければ……どうなるか興味が無いか?」

シャドウゲール「…………それは本人の意思に委ねましょうよ」

キノ「連れて来たよー」

プフレ「おかえり。早かったじゃないか」


@娘々「なにアルか? 協力してもらいたいって」

プフレ「ああ、来るチェルナー・マウスとの戦いのために、色々と手伝ってほしくてね」

ジェノサイ子「ああそういえば決闘……誰が戦う?」

プフレ「私がやろう。皆の代表として、必ず狩場を皆の物にすると誓うよ」

シャナ「(代表って……いつなったんだよ)」

プフレ「そのためには私の車椅子を強化する必要がある。シャドウゲールの魔法は『戦車の作成』だ。その素材のためにここらのロボを倒してパーツを持ち帰ってもらいたい。大量にね」

ジェノサイ子「うへぇ、お使いクエストか。ま、狩場のためなら仕方ないかな」

プフレ「決闘は今夜なんだ。急いで頼むよ」

のっこちゃん「わ、分かりました!」


プフレ「キノ、ちょっといいかな?」

キノ「なに?」

プフレ「コイツを付けてみないか」

キノ「…………?」

プフレ「なぁに、大したことない。ちょっと変わった意匠のヘッドホンだ。別に害はない」

キノ「…………」


 キノは……>>493
 
 1.言われた通りつけてみた
 2.断った
 3.シャドウゲールを実験台にした
 


キノ「…………ダサい」ボソッ

プフレ「……まぁダサいが重要なのは見た目じゃない。効果だ」

キノ「効果って?」

プフレ「えっ?」

キノ「効果って?」

プフレ「あー……そうだな、シャドウゲールで試そう」

シャドウゲール「えっ!? ちょ、待ってくださいよ!」

プフレ「えい」カシャン

シャドウゲール「ぎゃあああああああああああああ!!!!!!」ビリビリビリビリ!

プフレ・キノ「!?」


シャドウゲール「…………」

プフレ「だ、大丈夫かシャドウゲール」

キノ「大丈夫?」

シャドウゲール「ドウモ、シャドウゲールデス」

プフレ「……ふむ、成功だ」

キノ「なにが!?」

シャドウゲール「コレハコレハ、プフレ、キノ。オ2人ノ体温ハ、26.7℃、25.8℃。キノ、体ヲ温メテクダサイ」

キノ「ど、どうしたのシャドウゲール、熱でも」ピトッ

シャドウゲール「ビビビビビビビビ! ガガガガガガガガ!! ギリリリリリリリリリ!!」

キノ「!?」

プフレ「面白いからこのままにしておこう」


ジェノサイ子「ただいまー、とりあえず第1弾持って来たよー」ヨイショ

@娘々「ほい、大漁アル」ガシャン

プフレ「ありがとう(やはり@娘々の魔法ならこれくらいは集まると信じていた)」

シャドウゲール「アリガトウゴザイマス」

のっこちゃん「……なんですかそのヘッドホン?」

プフレ「彼女の趣味だ」

シャナ「(ロクな趣味じゃないな……)」

プフレ「よし、この調子で頼む。シャドウゲール、早速改造を」

シャドウゲール「了解デス。プロセル1カラ7マデヲ開始シマス」


プフレ「戦車が完成したらキノ、君の魔法でさらにパワーアップしてくれ」

キノ「私の魔法は8分が限界。それまでに倒さないと、強化は切れる」

プフレ「大丈夫さ。ああそうだ、君の弾、少し借りてもいいかな?」

キノ「? いいけど……」

プフレ「シャドウゲール、この弾を発射できる口径の機銃もよろしく頼む」

シャドウゲール「フム、コノ口径ダト…………コレデスネ! オマカセヲ! ショートドリル展開!」ウィーン

キノ「シャドウゲール! 右手はドリルにはならない!」

プフレ「(これ、記憶が残ってたらさらに面白いんだがなぁどうなんだろう)」


・・・・・・


シャナ達が持ち込んだパーツと頭のネジが飛んだシャドウゲールの改造により、プフレの車椅子は見事、十脚戦車へと変貌した。その高さは30m。まさに巨大ロボだ

そして夜、ディティック・ベルのパーティーが合流する。チェルナー・マウスは十脚戦車を見て早速闘志を燃やしていた。どうやらあちらの代表はチェルナーのようだ

ログアウト前までの時間はもうあまり無い。このゲームの攻略にはショップで売られている様々なアイテムが必要で、アイテムを買うためにはマジカルキャンディーが必要で、マジカルキャンディーを効率よく集めるには狩場が必要だ。この決闘はただの私闘ではない。参加プレイヤー全員のクリアに関わるものだ

一見して、正義はプフレにある。だが論ずるばかりが正義ではない。時には――こういった魔法少女の間では力こそが正義となりうるのだ

プフレはキノの銃声を合図にしようと提案した。そのどさくさに紛れて十脚戦車を強化するのだ。キノは攻撃力、耐久力、堅さ、防御力の強化を込める

この決闘に命のやり取りは無い。あくまで自分の主張を通すための殴り合い。勢いで殺してしまえば確実に他の魔法少女の非難を浴びるだろう

銃声が4回鳴る。戦いの始まりだ


 プフレの数値……↓1コンマ二桁
 チェルナーの数値……↓2コンマ二桁
 
 プフレの数値が勝っていた場合……チェルナーに勝利
 チェルナーの数値が勝っていた場合……プフレに勝利(50以上離れていた場合、蒼穹のファフナー第23話「劫掠 ~おとり~」)


先に動いたのはプフレが操る十脚戦車だ。ミサイルをセット、機銃に弾を装填、そして隠し砲塔にはキノの基本能力弱化セットと共に「魔法の弱化」「戦意の弱化」が込められている

オープニングヒットを当てればそこでチェルナーの戦意は消え、ゲームセット。大げさに用意したこの戦車も数秒でお役御免だ


プフレ「(ロックオン……全砲門発射!)」


この決闘は巨大な者同士の戦いのため、近くにいたら危ないとのことで他の魔法少女は遠くのビルの屋上から観戦している。そんな場所にいる彼女達でも耳を塞ぎたくなるような轟音が十脚戦車からもたらされ、多種多様な弾がチェルナーに殺到する

だめだ、避けられない。とベルは目を閉じた。直後に聞こえてくる爆発音やら着弾音やら、とにかく音の暴力だ。昔見た怪獣映画を思い出す

だがベルは思い出した。怪獣に軍隊が立ち向かっていって、その顛末は……


プフレ「なん…………だと……!」

チェルナー「フシュー!」ゴゴゴゴゴ


チェルナーはそこらへんにあったビルを掴み、持ち上げ、盾にしたのだ。キノの弾はもう無い。プフレは舌打ちをして通常戦闘モードに移行した

十脚戦車のアームとチェルナーの取っ組み合いだ。が、十脚戦車のアームは6本あり、2本しか腕の無いチェルナーが必然的に苦戦する

直接組み合っていたアーム2本が引き千切られた。他の関節のモーターが悲鳴をあげ、コックピットには「ALERT」「CAUTION」がけたたましい

だが、ここで引けはしない。機銃を乱射する。チェルナーにとってはチクチクとしたものだろうが、けん制だ。本命はセットし終わったミサイル


プフレ「これで……!」

チェルナー「!?」


ミサイルがチェルナーの顔に直撃し、爆音を上げる。決まった。死んだかもしれないが、魔法少女の生命力に賭けてみよう。プフレはそう思い、ハッチを開けようとして手を止めた


チェルナー「グルルルル…………うがああぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」


チェルナーが更に巨大化したのだ。35、40、45……50mくらいになった超巨大チェルナーが十脚戦車を見下ろし、足を振り上げる

キノは叫んだ。あんなものに踏み潰されては、いくら強度を強化していてもコックピットはグチャグチャだ

シャドウゲールはそんなキノの肩に手を置き「ダイジョウブダイジョウブ、ホラ、脱出装置ガ起動シマシタ」とカクカクと頷く。見ると十脚戦車の後部から飛び出る人間より二回りくらい大きなポッドが見えた


プフレ「AMSから、光が逆流する……! クッ!」カチャリ


プフレが脱出した直後に、十脚戦車はチェルナーに踏み潰され、グリグリとにじられた

シャドウゲールとキノがプフレの回収に行く


シャナ「(……そういえば、あの車椅子が戦車になったんだよな? じゃあプフレはこれからどう移動するんだ?)」

ジェノサイ子「うわああああ! やられたあああ! 狩場がぁぁぁ!」

@娘々「冗談じゃないアル! くぅぅ……これからはあの地主に怯えて暮らす毎日アル……」

シャナ「(長屋住まいかお前は!)」


シャナ「……もう過ぎたことだ。狩場は諦めよう」

のっこちゃん「そうですね……」

ジェノサイ子「納得いくか! あんなのはただの先鋒戦だし! 次、次鋒!」

@娘々「私がいくアル!」

シャナ「ちょ、ちょっと待て!」


シャナだって納得のいかない気持ちはある。プフレはこちらのパーティーの人間ではないから、次にこちらが戦うという理由はあるにはあるが、これではただの負け惜しみだ

理不尽だ、横暴だ、逆らえ! 一揆! 一揆! という気持ちが強くなるのを必死にこらえ、パーティーメンバーを止める


シャナ「とりあえずもうログアウト前のイベントの時間だ……納得いかない気持ちは分かる。けど、今こんなことをしてても仕方ないだろう」

ジェノサイ子「うう……でも……」

シャナ「……コッソリ狩っちゃえばいい」

@娘々「おおー……腹黒アル」

のっこちゃん「いいんでしょうか……?」

シャナ「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ」


真剣な顔でそう伝えたところで、ファルからのイベント招集がかかった


・・・・・・

~荒野の街~


ファル「今回のイベントは…………ああー……とても残念なイベントだぽん」

リオネッタ「ちょっと、脅かさないでくださいます!?」

ファル「脅かしているつもりはないぽん。だけどこれは悲しいぽん。今回のイベントは、『マジカルキャンディーの所持数が一番少ない魔法少女が脱落』だぽん」

ベル「なっ……!」

ジェノサイ子「はぁぁぁ!?」

キノ「…………っ……」ヨロッ

シャドウゲール「オオ、キノ。大丈夫デスカ? オ気分ガ優レナイヨウデスガ」

キノ「だ、大丈夫……」


シャドウゲールにおんぶさせられている形のプフレがファルへと質問を飛ばす


プフレ「ファル、仮にだ。もしもっとも少ない所持数の魔法少女が1人……例えば、0個が2人いたらどうなる? 2人とも脱落か?」

ファル「………………」

キノ「(2人とも、脱落に決まってる…………だって、これは……)」ズキズキ

ファル「仮に2人以上いた場合、今回のイベントは何も起こらずに終わるぽん」


魔法少女達に希望が見えた。なんとか2人以上にしよう

ここでもプフレが仕切った。どうやら彼女は根っからのリーダー気質のようで、ここにいる15人でキャンディーの数を揃えようと言い出したのだ

勿論これには誰もが従った。後で戻してもらうために、各々が自分が持っていた数をメモ帳アプリに書き込み、手近に居た者達とキャンディーを交換し合う

脱落=死であることは誰もが分かっている事実のため、数を揃えるのに数分とかからなかった。端数も発生したが、それはプフレが責任を持って返すということでプフレに追加された

皆で輪になり、隣同士の魔法少女の数が自分のものと合っているかどうか確認する。皆同じだ。これで脱落者は発生しない


シャドウゲール「キノノ端末……異常ナシ! プフレノ端末……異常ナシ!」

キノ「あ、ありがとう……」

シャナ「とっとと見せろ。そして見ろ」

キノ「……」ムッ

シャナ「……異常無いな」

キノ「無い」

シャナ・キノ「(コイツは気に入らない)」プイッ

プフレ「さぁ、いつでもいい。判定を」

ファル「ふぅ……では、皆のキャンディーを調べるぽん。皆所持数は同じ! これで脱落者は――あれ?」

プフレ「……?」


ラズリーヌ「チェルっち!!」


ラズリーヌの叫び声に皆が注目する。見るとチェルナー・マウスが魔法の端末を落とし、仰向けに倒れようとしていた


チェルナー「ト、モ…………キ……」ドサッ

ファル「……今回の、脱落者は…………チェルナー・マウスぽん……」

ベル「ッ!? チェルナー!!」

メルヴィル「なして……なしてだ!」

ベル「チェルナーの端末……っ、チェルナーの持っているキャンディーが……皆より、1個少ない……!」

プフレ「なんだと……?」

クランテイル「確認はしたのか!?」

ラズリーヌ「したっす! ちゃんと自分の端末と見比べて……でも、なんで……!」

プフレ「………………(また、誰かの作為が加わったか)」


発表の直前まで、チェルナーだけではなく誰もが自分と隣の端末を見比べていた。なら、発表される一瞬前に譲渡させ――いや、無理だ。あんなに誰もが誰もを見ていた空間で譲渡機能など隠れて使えるわけが無い

ならどうやって? チェルナーの端末の数は他の魔法少女よりキャンディーの表示数が1つ足りない。1つ少なかっただけで、彼女は命を落とした

誰のせいでもない。誰かが何かをした。やり場の無い怒りが募っていく。やがて魔法少女達は、周りを疑い始めた。この中に、チェルナーが脱落するよう仕向けた者がいると


シャナ「(誰だ? 仮にチェルナー・マウスの端末に細工が出来るとしたら隣にいたメルヴィルとラピス・ラズリーヌ……だが、わざわざパーティーメンバーを殺す動機も無ければここで殺す意味も無い)」

シャナ「(動機で言えば、プフレ達だ……けど、プフレとシャドウゲールとキノはチェルナーの端末に触れてすらいない)」

シャナ「(後の動機は…………私達、か。だけど、できない。私はおろか、ジェノサイ子だって@娘々だってのっこちゃんだって、そんなことできるはずがない)」

シャナ「(誰だ……誰なんだ!?)」


チェルナーとそこまで親交があったわけではない。むしろいがみ合っていた。だが、そんなことで、死を悼まずにいられようか。仇をとらずにいられようか


皆思っていることは同じだ。誰がやった。誰がチェルナーを殺した

が、言えるわけがない。自分がこんなにも強く思っているからこそ、他もそう思っているだろうと分かっているからだ


ファル「…………まもなくログアウトの時間ですぽん」

プフレ「…………」

ファル「マスターからの言葉を伝えるぽん」

キノ「……?」

ファル「『もしかしたらこの中に、魔法少女の中に敵がいるかもしれない』だそうですぽん」

シャナ「(分かってるんだよ!!)」

ジェノサイ子「分かってるんだよ!!」


ジェノサイ子の抗議の声と共に、一斉ログアウトは開始された


・・・・・・


ファル「マスター、細工したぽん?」

キーク「細工? んなことするわけないじゃん」

ファル「じゃあなんで!」

キーク「言ったでしょー? 魔法少女の中に敵がいるかもしれないーって。ファルもそんな感情的にならずにさー気楽にいこうよ。所詮ゲームなんだからさ。昔こんな名言があったの知ってる? 『こんなゲームにマジになっちゃってどうするの』ってさ」

ファル「……マスター、自首しようぽん。今なら減刑されるようファルが――」

キーク「んなことしませーん。あたしは待ってるんだよ」

ファル「待ってる?」

キーク「そう。待ってる」


キークはあくまでマイペースだった。匿名の協力者がクライアントとしてゲームの完成品を見たい。仮にテストいい結果だった場合そのゲームを買い取って我々で広めていきたいと言ってこなければもっとマイペースに行けたのだが、おかげでゲームが終わるまで中断だの情報漏洩だのができない。まぁ中断なんてする気もないし今更できないのだが

キークにはどうしても会いたい人がいた。会って、自分はいかにあなたの役に立てるかと言いたい人がいた。キノを巻き込んだのもそのためだ。協力者からキノの名前が出た時は喜んだ。キノがリップルないしスノーホワイトにでも報告してくれれば、キークの目的は達成にぐっと近づく

だが協力者は、キノの記憶にはこれを使え。とブルーベル・キャンディを寄越してきた。なんでも、記憶を書き換えられたキノの苦しむ様が見たいのだとか。なんとも悪趣味だ。だがキノはあの森の音楽家クラムベリーを倒した魔法少女だ。キークには確信があった。キノはこのゲームをクリアし、書き換えられた記憶に負けず、悪を倒すだろうと

それにキノにはリップルがいる。リップルがキノの異変に気付かないはずがない。師弟愛とやらに賭けてみるか。そうすればキークの崇高な理念はごく一部に明かされる

さぁキノ、見せてくれ。証明してくれ。君はただのゲーム参加者とは違う。君は本物の魔法少女だろう。そして会わせてくれ。私の望む本物の魔法少女に。彼女に


あのクラムベリーがまだ見習いの魔法少女に倒されたと聞いてキークは驚いたものだ

キークは「土地の記憶をよみがえらせる魔法」を持つ魔法少女を捕まえN市に飛んだ。そして見た

複数人の魔法少女がクラムベリーに襲い掛かり、見事倒した記憶を

トドメを刺したのは、あのスノーホワイトと一緒に行動しているラ・ピュセルだが、クラムベリーはずっとキノを見ていた。なりふり構わずキノへと向かい、そして倒れた

複数人のパーティーで悪を倒す。まったく、これでは魔王討伐だ。以前クラムベリーが試みた魔王討伐ではなく、RPGとかファンタジー世界の

そうだ、今開発中のゲームにパーティー制というのを設けよう

キノ達は4人だった。なるほど、定番の人数だ。最大4人にしてやろう


・・・・・・


そのキノは、慟哭の渦中にあった

ゲームから意識が戻り、売り文句通り一瞬しか過ぎなかった現実が襲い掛かる

華乃は相変わらずそこに倒れているし、キノは相変わらずここで叫んでいる。思い出せ、思い出せ。脳が悲鳴をあげようと、頭が破裂しようと思い出せ

私は何故華乃――リップルと戦った。何故リップルと戦わねばならなかった。リップルは敵だった。何故敵だった。師匠の教えを守るため、知らない魔法少女には警戒。自分に必要以上に近付いたリップルは、敵? 敵、敵なのだ。あんなに微笑んで、これから命でも奪うつもりだったのか。あんなに優しい声色で、油断させるためだったのか

リップルって誰だ。誰なんだ


キノ「ひっ、あ……ああああっ! あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


キノは逃げた。そこにいてはいけない。頭が痛い。鼻血が出ていた。魔法少女らしくないぞ。とにかく逃げよう

ラピッドスワローも今はどうでもいい。とにかく、離れるんだ。リップルから。未知から


・・・・・・


細波華乃は目を覚ました。数分か数十分か数時間か、まだ月が出ている

魔法の端末で時間を確認する前に、周りを見た。キノの姿は無い。ラピッドスワローはここにある。どういうことだ?

そして気付く。自分の変身が解けていることに


華乃「ッ!」


キノに見られたか? 分からない。見られたなら見られたでいいが、仮にキノは自分を――華乃を見たとして、どうなった?

分からない。分からない。キノ、どこへ行ってしまったのか。あのマンションに帰ったのだろうか。いや、自分が教えた通りなら、キノは変身を解き、どこか適当な喫茶店で閉店まで時間を潰してホテルに泊まる

ならどうするか。明日改めてキノのマンションへ行くか……いや、明日行動じゃ遅すぎる。なら……>>551

 
 1.監査部に行く
 2.スノーホワイトに連絡をとる
 

2


リップル『ねぇ、今いい?』

スノーホワイト『どうしたの?』

リップル『キノの様子がおかしい』


スノーホワイトに委細すべて話した。キノの元にメールが送られてきてキノが倒れた事。目を覚ましたら自分のことを忘れていた――おそらく記憶を書き換えられているということ。自分で何とかしようとしたが失敗したこと

こうなったらもう頼れるのは監査部門のご同輩だけだ。スノーホワイトに連絡すればその事態はラ・ピュセルとハードゴア・アリスにも伝わる。あの2人はかつてクラムベリーを倒すために結託し、キノや自分と行動を共にしたこともある。キノの危機には駆けつけてくれるだろう

リップルは歯噛みし、泣いた。情けなかった。弟子の問題を、自分ひとりで解決できなかった。師匠失格だ

あのキノが、弱い小動物みたいだったキノが、2回も自分に不覚をとらせたことはむしろ誇らしいのだが、それがいつもの組手ならどれだけよかったことか

ひととおり涙を流し終わり、リップルはスノーホワイトと合流すべくラピッドスワローに跨った


リップル「……使わせてもらうよ、相棒」


・・・・・・


アニメ会社の人に新しい案を送った。なんと魔法少女の中には裏切り者がいて、他の魔法少女の派手な行動に隠れて暗躍しているという設定だった

ウケた。童話作家なのにえげつないことを考えますねー(笑)と返信が来た時には少しニヤニヤした

小さい頃から童話が好きだった。中でも魔法使いの出てくる童話は特に好きだった。魔女とかも好きだった。大きくなったら魔法使いになるんだ! と剣道場で竹刀を振るう祖父に大声を上げ、頭を撫でられた記憶はシャナの人生の中で数少ない「もっとも嬉しかった記憶」だ

なのになったのは魔法少女だった。しかもコートの下は全裸の

こんなはずじゃなかった

自分が想像したのは、もっとローブとか、杖とか、魔法使いや魔女の恰好だった。それだと魔法少女じゃないじゃんとツッコミを受けた。それをしたのはどんな奴だったか覚えていないが、太刀を抜いて冗談交じりに追い掛け回す仲だったからいい奴だったのだろう

そして魔法の国には「魔法使い」という魔法少女とはまた違った存在がいると知って、何故そっちにしてくれなかったと嘆いた

今となっては新米時代のいい思い出だ


ゲームから帰って来た日の翌日、放課後にアニメ会社を通してスポンサー様との面通しがあった

アニメ化は順調にいっているらしい。原作として、紗南も呼ばれた。もうゲームの中で嫌ってほど人と話をしたんだから今更断る理由も無い

あのゲームも少しは人の役に立つじゃないかと思っているところに、アニメ会社の会議室――以前の小ぶりなものではなくもっと大きな――に通され、スポンサーと出会った

驚いた。スポンサーと書かれた名札のある席に、女子高生が座っていたのだ

と、スポンサーの方も驚きの声を漏らしていた。まさかアニメの原作が女子高生だとは思わなかったのだろう

自分と同い年だろうか、美女だ


「それでは、それぞれ自己紹介でもしましょうか」

紗南「……龍崎紗南です。童話作家……」

「人小路庚江です。魔法少女アニメは大好きなので、出資させていただこうと思いまして――」


・・・・・・


3回目のログイン。また荒野に戻って来た。今度はさまよったりする者は誰一人としていないだろう。マスクド・ワンダーの事件を思い出す。ログインしてからすぐに合流しよう。と各パーティーは決めていた

美しい妖精のシャナもまた、都市エリアへと移動し合流していた。次のエリア解放の手がかりを得るためだ。しかし、それは徒労に終わった

なんとプフレのパーティーが既に解放していたのだ。いつだろうと考えると、すぐに答えは出る。シャナ達がせっせと肉体労働に励んでいる最中に、プフレは謎解きを終えてしまっていたのだ

くっそぉ……次会ったら50万請求しよう……という亡者根性を胸に燻ぶらせ、洞窟エリアに移動するとそこにはドラゴンがいた

都市はSFだったが、いよいよファンタジーめいてきた。しかもドラゴンは1匹1匹が結構強い。赤いドラゴンは炎を吐き、黄色いドラゴンは電気を使ってくる。どうやら色によって属性が違う


ジェノサイ子「きかねーって!」ドカッ

@娘々「のっこちゃん、下がっているアル! とりあえずこのシールド+4で……」

シャナ「…………(ついに、魔法を使う時か)」


洞窟の中だから心配していたが、ドラゴンは目を使って相手の姿を追っていた。つまり、視覚に頼っているということだ


シャナ「皆、今から私の方見るな。お願い」

@娘々「コートの袖なんてまくってどうしたアル? 暑いアルか?」

シャナ「見るなっつってんだろ!!」


シャナのコートはちょっとした特別製で、袖を捲った時とか、足を露出するためにダボッた丈を捲ったときにに固定するボタンがある。今回は視覚を封じ、ついでに嗅覚と聴覚も封じるから腕と脚を露出する。シャナは裸足だが、それも魔法少女のコスチュームの内なので、別に足場によって痛みを感じるとかは無い。ただ寒くないか心配されるだけだ


シャナ「……!」ズバッ


ドラゴンに飛びかかる。ドラゴンはシャナにまったく気付くことなくどんどん倒されていき、ついに全滅した


ジェノサイ子「つ、つえー……」

@娘々「シャナさんそんな強かったアルか?」

シャナ「…………いいじゃんそんなこと」


この魔法の弱点を挙げるとすれば、物理的に消えた時に自分も相手に手出しできなくなるのと、1度気付かれてしまえばすべての効果が切れてしまうことだろう

特に後者は、例えば視覚を封じたとしてもにおいを感じ取られたり、足音を聞かれて「そこにいる」と認識されたら魔法が解けてしまう

そしてそれは攻撃するときに絶対物理を解かなくてはならないので、後ろで物理を解いて刀を振りかぶった時の空気の流れを読み取られたら奇襲もおしまいだ

もう1度魔法を相手にかけるためには、1度相手の認識から完全に外れる必要がある。隠れたり、その場から逃げたり。聴覚や嗅覚に長けた相手なら完全に動きを止めるか、なにか別のにおいでごまかさなければならない

とにかく姿を見失わせれば再び肌を見せ、次の奇襲を行う。仮に強敵が現れた時のシャナの常套手段はそれだった

そして、ここのドラゴンはそれらの工夫を行うほどの強敵ではない。シャナの魔法で片っ端から狩りまくった。狩場とやらでも狩った。他の魔法少女が居てもお構いなし。実際クランテイル達と遭遇したが、いざこざを避けるために肌を見せて逃げた

するとキャンディーはみるみる内に溜まっていった


ジェノサイ子「シャナすごいすごい! よし、R回そうぜー!」

@娘々「せっかくシャナさんが集めたキャンディーをドブに捨てる気アルか!?」

のっこちゃん「シャナさんが使いたいものに使ってください。それはシャナさんのキャンディーなんだから」

シャナ「のっこちゃん……!(かわいい!)」


洞窟エリアの街は、荒野や草原のそれとはまた違った「これが街?」感がある

唯一洞窟の中に、天井の無い場所――陽の光が差す開けた場所があるのだ。そこから洞窟の外に出ようとしたら無いはずの天井にぶつかり、これはゲームなんだなと再認識させられたが、まぁ休むには適しているし、モンスターも現れない

ショップに行き、貯まったキャンディーでのっこちゃんにシールドを買う。さて、キャンディーは残り500個

またこの前のようにキャンディーの数を競うイベントだったらどうしようと思わないでもないが、プフレのお陰でその心配はしなくて済みそうだ

Rでも引いてみるか


 幸運(96)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→激レアアイテムゲット
 失敗→地図
 


シャナ「よっ……お、激レアアイテムだって」


シャナ――紗南は生まれつき運がいい。席替えではいつも窓際の一番後ろになれたし、商店街の福引ではティッシュをもらった記憶が無い

それは魔法少女になっても相変わらずだった。思えばこれまでペチカ様にジェノサイ子達に、仲間に恵まれている


シャナ「……これは……呪いの人形?」

ファル「それは身代わり君だぽん!」

シャナ「身代わり君?」

ファル「1度だけ、致命傷を受けてくれるアイテムだぽん! なんとそれも流通量1分の1! いやー運がいいぽん!」

シャナ「へぇ……」


 シャナは身代わり君を……>>直下
 
 1.自分で所持した
 2.ジェノサイ子にあげた
 3.@娘々にあげた
 4.のっこちゃんにあげた
 


ジェノサイ子「Foo! ラッキーガール!」

@娘々「それはシャナさんが持っていた方がいいアル」

シャナ「えっ……でも……こんな貴重な……」

のっこちゃん「それはシャナさんのキャンディーで買ったものですから。それに、シャナさんも前衛に出るようですし」

シャナ「…………じゃあ、そういうことなら」


 シャナは身代わり君を手に入れた!
 
 身代わり君がある限り、ファンブルなどで即死レベルの事態に陥った場合、1度だけ助けてくれます!
 
 ※ゲーム内アイテムの為、現実世界には持ち込めません


こうして装備を整え、再びドラゴン狩りに赴こうとしたところでディティック・ベルと遭遇した

シャナ達は身構える。チェルナー・マウスのいたパーティーだ。とても「やぁ今日はいい天気だね」なんて空気にはなれない


ベル「あっ、ま、待って! 別にもう狩場がどうとか言わないから!」

シャナ「…………」スッ

ラズリーヌ「狩場についてうるさく言ってたチェルナーもメルっちももういねぇっす……」

ジェノサイ子「メルヴィルが? なんで?」

ベル「……こんな誰が裏切り者か分からない状態で誰かと行動するなんてゴメンだって」

@娘々「……まぁ、分からない話でもないアル」

ジェノサイ子「うっへぇ、それホラーとかサスペンスで真っ先に死ぬ奴だよ!?」

ラズリーヌ「メルっちはつえーからそんなことはねぇっす!」


ラズリーヌ「大丈夫! ベルっちはこのラピス・ラズリーヌが守ってあげるから!」ビシィ

シャナ「(……なんだそのポーズ、ふざけてるのか?)」

ベル「……うん、ありがとう。と、君達はドラゴン狩りか。頑張ってくれ」

@娘々「どうせなら一緒に来てもいいアルよ。魔法少女同士、仲間アル!」

シャナ「(その仲間の中に裏切り者がいるんだよ!)」

のっこちゃん「……」

ベル「うん……お誘いは嬉しいけど、今は遠慮しておこう。ごめんね」

ラズリーヌ「ベルっちベルっち、R回したいっす!」


そんな時だった。ファルを通してプフレから洞窟のとあるポイントに全員集まってほしいというメッセージが送られてきたのは


・・・・・・


プフレ「やぁ、集まってくれたね」

クランテイル「なんだ? まさかまた誰か殺されたのか?」

ペチカ「ひっ……!」

リオネッタ「ペチカさん、ご安心あそばせ。ペチカさんは何があろうとこのリオネッタがお守りいたしますわ!」

那子「HEY! ファッキンドール! ペチカを守るのは私デース!」

シャナ「(いいや私だ!)」

シャドウゲール「そういうわけではありません。次のエリアに行く方法が分かったんです」

プフレ「だがそのために、ここにいる魔法少女全員が力を合わせなくてはならなくなった」


今日はここまで
そろそろ誰か1人でも殺さないと……次の更新でしょっぱな誰か殺さないと……こんなのまほいくじゃない……


ジェノサイ子「それで、全員の協力が必要ってどんだけの難関?」

プフレ「ああ。まぁ来てくれ」

リオネッタ「そこは行き止まりですわよ?」

プフレ「洞窟の謎は解いてある。次のエリアに行くには、この行き止まりと見せかけてある地下への扉を開く必要があるのさ」


シャドウゲールが行き止まりの壁を規則的に押していく。すると、壁は音を立てて開き、下へと続く階段が姿を現した

まったく、このパーティーはどれだけの頭脳だと舌を巻く


プフレ「この下には次のエリアに行くための大広間があり、そのための鍵もそこにある」

那子「ならそのキーを取ってイベントクリアデース!」

プフレ「そう簡単には行かないのがこのゲームのようだよ」


下へと続く階段を、自分は勘が良いから斥候をさせてくれとラズリーヌが、この中にいる裏切り者を警戒するために監視も兼ねて殿をメルヴィルが務めながら進む

するとまさに大広間という空間に出た。広いドーム状の空間だ。魔法少女達はすぐさま苦い顔をした

次のエリアに繋がっている梯子が遠くにある。が、そのすぐ下には全長15mはあろうかという巨大なドラゴンが鎮座していたのだ


プフレ「あのグレートドラゴンを倒すのがエリア解放の鍵だ」

シャドウゲール「注意してください。あのドラゴンを中心に30m以内に入ると容赦なく攻撃してきます。ほら、あの赤い線が目印です」

クランテイル「なるほど……アレの討伐はいかにお前達でも無理、と」

プフレ「我々の戦闘力は皆無と言っていい。なにより3人が3人、戦う魔法少女じゃないのだから」

ベル「なら戦う魔法少女で当たればいいって?」

プフレ「相手はあまりに強い。おそらく戦う戦わないに関係なく、ここにいる全員でかからねば勝てない」

ジェノサイ子「あのー、それ、ウチのパーティーに任せてくれない?」


シャナは思い出した。そうだ、ジェノサイ子の魔法ならあんなドラゴンの攻撃も意味は無い。ジェノサイ子が居なくても、シャナの魔法でも倒せるかもしれない

プフレはそれを知っていたはずだ。なのに何故ジェノサイ子だけでなく全員集めたのか


プフレ「いいだろう。元より本命は君だ。私が危惧しているのは、万が一だよ。万が一夢ノ島ジェノサイ子に何かあったら、ここにいる魔法少女全員で助けなければ彼女は竜の餌だ」

ジェノサイ子「お、おいおい脅かさないでよ……この魔法のスーツがあんなドラゴンに負けるわけないって!」

プフレ「よし。ならば君にこの『竜殺し』の短剣を渡そう。これは謎を解いていく上で見つけたアイテムで、ドラゴンに刺せば一撃で倒せるという代物だ」

ジェノサイ子「オッケー! 皆、悪いけど100万円はいただくよ!」

プフレ「ああそうだ、もしドラゴンが何かドロップアイテムを落としたら私達にくれないかい? せめてもの情報料だ。お金はいい。もし夢ノ島ジェノサイ子が失敗して魔法少女全員で当たることになったら私達のパーティー以外で100万円を山分けしてくれ」

クランテイル「まぁ、いいだろう」

リオネッタ「頑張ってくださいまし」スッ

ジェノサイ子「おっ、ハイタッチかーいいねー!」パシッ


ジェノサイ子は手を差し出した魔法少女全員とハイタッチをして、悠々とグレートドラゴンへと向かっていった

赤い線を越えると同時にグレートドラゴンが体躯に見合う炎を吐き出す。が、ジェノサイ子は風が吹いたようにしか感じない


ジェノサイ子「まぁまぁドラゴンさん、そう怒りなすんなって! 良い物を持って来たんですよ」


竜殺しを後ろ手に隠して、完全におふざけムードでグレートドラゴンに近付くジェノサイ子

グレートドラゴンは相変わらず炎を吐き続ける。両者の距離が縮んでいく。ついに肉薄した。グレートドラゴンは怒り心頭だ。その鋭利な爪をジェノサイ子目がけ振り下ろすが、やはりジェノサイ子はものともしない

さて、ここでいよいよお披露目するは竜殺し。その辺の腕なり腹なりに突き刺せばいいだろう


ジェノサイ子「バイバイ、ドラゴンさん!」


と、竜殺しを構えようとし――

ジェノサイ子のヘルメットのバイザーが上がった


ジェノサイ子「えっ?」


ドラゴンは既に次の攻撃の体勢に入っている。爪が迫って来ていた


 ジェノサイ子の数値……↓1コンマ二桁(スーツが言うことを聞かないため-60)
 グレートドラゴンの数値……↓2コンマ二桁
 
 ジェノサイ子の数値が勝った場合……グレートドラゴンの攻撃をなんとか避ける
 グレートドラゴンの数値が勝った場合……ジェノサイ子死亡


ジェノサイ子「なんで、スーツが、くそ!」

シャナ「(……様子がおかしい?)」


シャナの見立ては間違っていなかった。ジェノサイ子の背中には焦りが見える。それもとびっきりの

気付くと体が動いていた。仲間のピンチだ

が、到底間に合うはずもない。シャナだけでなく、その場に居た魔法少女全員が、グレートドラゴンの爪の一振りによってバラバラにされるジェノサイ子を見てしまった


シャナ「ジェノサイ子!!」

@娘々「夢ノ島さん!!」


飛び出してしまった。2人とも

赤い線を越え、グレートドラゴンがこちらを向く


プフレ「2人とも退け!」

@娘々「夢ノ島さん、夢ノ島さん!!」

クランテイル「危険だ!」

シャナ「(ああ危険だ。私は何をやっているんだ?)」


もう何をしようと、ジェノサイ子は……

だが、何もせずにはいられない。あのクソドラゴンが憎い。せめて一太刀だけでも浴びせねば、仲間としてやるせなさすぎる

@娘々も同じ気持ちだろう。その横顔には怒りが目に見える


 身体能力(54+15+5=74)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→グレートドラゴンに一太刀浴びせる
 失敗→グレートドラゴンの攻撃を喰らう


 03……クリティカル!
 クリティカル報酬、身体能力が1上がった!(55)

 
 
@娘々「シャナさん、私がけん制するアル! その隙に!」


シャナ「……!」コクッ


コートを開き、グレートドラゴンに素肌を見せる。するとグレートドラゴンはシャナを見失い、@娘々ばかりを攻撃するようになった

@娘々はその魔法のお札に隠した恐らくゲーム内で手に入れたのだろう岩やら瓦礫やらをグレートドラゴンに飛ばしている。ほとんど炎に溶かされたが、それを免れた数発はグレートドラゴンに命中。身じろぎさせた

それに@娘々は余裕だ。何か切り札でも持っているのだろうか

シャナ「(一太刀なんて言わない……首を落としてやる!!)」


恐らく鱗は堅いだろう。ならば鱗の無い首筋から刃を入れ、一気にスパンとしてしまおう

シャナならできる。手に持つ太刀はそれに答えてくれる


 @娘々の数値……>>↓1コンマ二桁
 グレートドラゴンの数値……>>↓2コンマ二桁
 
 @娘々の数値が勝っていた場合……囮役を見事にやってのけた
 グレートドラゴンの数値が勝っていた場合……@娘々に炎が直撃
 


グレートドラゴンの攻撃は@娘々には当たらない。身のこなしが違うのだ

シャナは他の魔法少女が加勢に来ないのをありがたく思っていた。邪魔が無ければ、仇を横取りされることもない

姿を消し、グレートドラゴンの首の目の前へとやってきた。あとはこのそっ首を一刀両断すればいいだけだ。大丈夫、できる

魔法を解除。と同時に、グレートドラゴンがシャナを認識し、咆哮をあげる


@娘々「シャナさん!? 危ない!!」

シャナ「……!」


太刀はもう振りかぶってある。後は、もう振るだけ


 グレートドラゴンにトドメを刺したのは……>>直下コンマ一桁
 
 奇数→シャナ
 偶数→@娘々
 


シャナ「大丈夫……」


振りぬいた

太刀はグレートドラゴンの喉元へと吸い込まれていき、シャナの確信通り、刃は通った


シャナ「ああああああぁぁぁぁぁ!!」


固い筋だ。丈夫な骨だ。だが、それがどうした

ジェノサイ子の体は柔らかかったか? その爪で簡単に両断しただろう。今度は私が両断してやる!

グレートドラゴンは、討伐された


シャナ「ハァッ……ハァッ…………ハァッ……」

@娘々「……っ、ハァッ……ハァッ……」


後ろからあっけにとられたような視線が送られてくる。まぁ当然か。プフレをして「全員が協力しなければ倒せない」と言わしめたドラゴンをたった2人で倒してしまった

魔法の相性だ。シャナは奇襲に向いている。奇襲に向いているからグレートドラゴンの虚を突けた。@娘々が素早く囮をしてくれたから虚を突けた

誰かが駆け寄ってくる。のっこちゃんだ


のっこちゃん「2人とも…………大丈夫……っ……」グスッ

シャナ「…………うん」

@娘々「うん!」


自分達と共にグレートドラゴンに向かってはいかなかったのっこちゃんを責めるわけがない。のっこちゃんは戦いに向いていない。きっと、無力感に苛まれていたことだろう。シャナ達はこうして仇をとるだけの力があるからまだいい。その力が無い魔法少女は、自分の気持ちと折り合いをつけなければならない

のっこちゃんはとてもメンタルの強い子だと思った


プフレ「……いやはや…………正直言って驚いた」

シャドウゲール「あのグレートドラゴンを……2人で……」

メルヴィル「……つえぇな、あん2人」

ラズリーヌ「つええっす! マジつええっす!」

プフレ「シャドウゲール、竜殺しは?」

シャドウゲール「え、ジェノサイ子さんが…………ま、まさか回収しろとか言いませんよね?」

プフレ「君は本当に察しが良くて助かるよ」

シャドウゲール「うえええ……!」

キノ「私がやるよ」

シャドウゲール「えっ? い、いいんですか?」

キノ「うん。あれくらいの死体、見慣れ…………て、る……」

プフレ「……口だけは立派だが、よろめいているじゃないか」

キノ「これは、何か分からないけど頭が痛いだけ。行ってくるね」


シャナ「………………これ、シールド?」

@娘々「ドロップアイテムみたいアルね。これをプフレが?」

プフレ「ああ、もらえるかな」

@娘々「はいアル」

プフレ「ありがとう。これで100万円は君達の物だな」


大して嬉しくない。ジェノサイ子の命と引き換えに100万円? 彼女の命に価値をつけるだと? 冗談じゃない

シャナは不機嫌な顔を敢えてプフレに見せ、次のエリアに続いている梯子へと向かった


梯子を登りきると、そこは湖だった

ここが次のエリアか? 湖畔エリアとでも言うべきかと思案していると、ファルからただの中継地点だと教えられた

グレートドラゴンとの戦いで疲れた魔法少女へのせめてもの癒しだとか……馬鹿馬鹿しい

だが、何故だろう。心が安らぐ。一緒にいる@娘々ものっこちゃんもリラックスしているようだ

このエリア特有の空気かあるいはなにかしらの魔法作用か。シャナの中の血生臭い気分も少しは晴れた


@娘々「次は……図書館エリアアルね」

のっこちゃん「本がいっぱいあるんでしょうね」

@娘々「のっこちゃんは本好きアルか?」

のっこちゃん「はい! 童話とか……それをクラスの男子に言うと馬鹿にされちゃうんですけど」

シャナ「(……いつか、見せてあげよう。このゲームから出たら)」


進んでいくと見えた湖畔に相応しくない仰々しい扉を開くと、そこはまさに図書館だった

「図書館ではお静かに!」「本は座って読みましょう!」等々、色々と地元の図書館あるあるのような張り紙がある

オレンジ色の証明が強く、辺りにはそこかしこに机や椅子があり、本棚の量も相当だった。都市エリアが端から端まで建物だらけだったように、このエリアもずっと本棚が続いているのだろう


プフレ「………………」

シャドウゲール「……どうしたんですか?」

プフレ「1度、パーティーを解散しようか」

シャドウゲール「………………えっ……?」


プフレ「キノはどうする? 優秀な魔法少女は手元に置いておきたいが……」

キノ「……なんでパーティーを解散?」

プフレ「ひとつ思いついてね。それに今は魔法少女の数が減って、クランテイルのチーム以外には空きが出ている。私はディティック・ベルのパーティーにでも入れてもらうよ」


ディティック・ベルのパーティーは現在2人。キノとプフレは恐らく受け入れてくれる

だが、プフレについていかないという選択肢も大いにアリだと、彼女は言っている。その場合自分はジェノサイ子を失ったあのパーティーに入るのだろう

プフレは決して単独行動はしないようにと言ってきた。流石のキノでも1人が危険だということは理解している


 キノは……>>637
 
 1.プフレについて行った
 2.プフレと別れた
 

1


キノ「…………車椅子はもう無いし、おんぶ役のシャドウゲールもいないなら、私は必要でしょ?」

プフレ「おっと、バレてしまったか……そうなんだ。デカい口を叩いたはいいが、これからどうしようかと思っていた。別れると言うならせめてディティック・ベル達のところまでおぶってくれと懇願していただろう」

キノ「……素直じゃないね」

プフレ「私が素直なものか」


こうして2人はベルのパーティーと合流した

今やすべてのパーティーが図書館に集結し、血眼になって次のエリア解放のヒントを探している。が、なかなかうまくいかない

まさかこの大量の本のどれかに隠されているのか……多分ゲームマスターの性格上本当にそうかもしれない

結局なんのヒントも得られないまま、ファルによる3日目の強制イベントの通知が訪れた


今回のイベントはあまりにあっけないものだった。早押しクイズに答えたら賞金100万円だ

テレビ番組かよというツッコミを全員が心の中でしたことだろう。ここでもプフレの頭脳が光った

が、プフレは途中から答えるのをやめた。気まぐれだ。結局100万円はディティック・ベルが手に入れた


プフレ「護、言った通りに頼むよ」

シャドウゲール「分かってますよ」ムスッ

プフレ「はっはっは、護は可愛いなぁ」

シャドウゲール「いーっだ!」


・・・・・・


キノに2度目の敗北を喫してから1日が経ち、リップルはスノーホワイト達と合流しキノのマンションへと向かった

するとスノーホワイトはすぐさま大変困った声が聞こえると言う

「リップルに困っている」「自分の記憶が分からないことに困っている」「リップルの正体が華乃ちゃんだったなんて、嘘だ」


スノーホワイト「……キノの困ってる声が聞こえる。リップルの正体……が、受け入れられないみたい」

リップル「私の正体……?」


細波華乃を見て、受け入れられないこと? 華乃はただのもう少しで成人を迎える女性だ。魔法少女は平均してこれくらいの年齢が多いと聞くから、スイムスイムの時のようなショックを受けることはないだろう。とすれば、どういうんだ


スノーホワイト「キノはリップルの正体のことを……『華乃ちゃん』って」

リップル「ッッ……!!」

ラ・ピュセル「心当たりがあるようだね」


「華乃ちゃん」……そんな呼び方をするのは2人だけだ。1人は母親、1人は親友

どちらでも華乃にとって非常にショックだ。特に前者だった場合、もう死ねる


スノーホワイト「あと現場に風邪だという連絡を入れないと……って」

リップル「現場…………」

アリス「社会人でしょうか……」

リップル「……確認する」

ラ・ピュセル「お、おい!」


百聞は一見に如かず。再びキノの部屋のベランダに移動し、中を盗み見る。部屋の隅に、クッションを抱いて縮こまる女性が見えた

一見して若いと分かる。それはリップルにとって、受け入れ難い事実であることも


リップル「(………………ゆ、い……?)」ヨロッ

スノーホワイト「知り合い……とか?」ヒソヒソ

アリス「あれは……木野ユイ……!」

ラ・ピュセル「知っているのかアリス」

アリス「今売り出し中の若手声優……可愛いからカッコイイまでこなす万能キャラです。3サイズは上から――」

スノーホワイト「詳しいんだね」アハハ

リップル「………………行こう」

スノーホワイト「どこに?」

リップル「キノがああなる前、単独で監査を任されていた魔法少女のところ。魔法の国のIT部門」


・・・・・・


キークは待つがてら、ファルと問答をしていた。問答といっても、ファルが憤り「もうこんなことはやめよう」とキークに詰めるがキークはどこ吹く風なやりとりだ


ファル「もう5人も死んでるぽん! こんなの、魔法少女選抜試験じゃ……」

キーク「立派な選抜試験だよ。脱落したら死ぬか記憶を失って自由かの違いがあるだけで」

ファル「…………マスター、どうしてもやめないなら、魔法の国に通報するぽん」

キーク「ああ無駄だよ。もうしたから」

ファル「えっ?」

キーク「あの協力者さんは情報を漏らすなとは言ってたけど通報するななんて言ってなかったし、監査部門に、あくまで簡単な監査に見せかけてね。今のところ監査部門でそんな簡単な監査を任せる新人扱いな魔法少女はいないけど、単独で監査したことのない魔法少女2人いた。片方はバリバリの武闘派で、もう片方は後方支援タイプ……なら、後方支援タイプの成長のために寄越してくると思ってたんだ。んで、この前監査部門のデータベースにアクセスしたら私の担当はキノになってた」

ファル「自分で通報って、どうしてぽん?」

キーク「キノがおかしくなればリップルが怒る。リップルはきっと今回の出来事は監査対象に関係があると見抜くはず。そうすれば……ね」


ファル「……マスター、イカれてるぽん」

キーク「あはははっ! 修正パッチも適用されなかった欠陥品がどの口ほざくんだか!」

ファル「……」

キーク「ファルの先輩……ああ、ファヴだっけかが色々やらかしてくれたから、FAシリーズは全品回収。そんなファルを助けてあげたのは、どこの誰だったかなー?」

ファル「…………」

キーク「まぁ怒らないでよ。あくまであたしがやってることは正義の上での行動だよ。魔法少女は神様に選らばれた存在……そこにほんの少しでも不純が紛れ込んでいちゃいけないんだ」


キークが自分に酔って何度目か分からない持論を展開しようとしたとき、部屋の扉が開いた

やっとだ。待ちくたびれた。ちゃんと連れて来てくれたかな?


キーク「やぁやぁリップル。ようこそ、あたしの世界へ」


リップル「…………」

キーク「あれ、スノーホワイトは? リップル1人?」

リップル「……そうだ」

キーク「ちぇっ、リップルなら連れて来てくれると思ったのに……」

リップル「キノに何かをしたのは、お前か?」

キーク「そう睨まないでよーそうとも言えるけどそうじゃないとも言える。そういうこともあるだろうけど、そうじゃないこともあるんだよ」

リップル「答えろ!!」バンッ

キーク「はいはい机を叩かないーお菓子がこぼれちゃったじゃん。まぁ座りなよ」

リップル「……!」

キーク「スノーホワイトを呼んでよ。キノのお師匠様」ニコッ

リップル「…………スノーホワイトには、お前のことを調べるように言った。お前には直接会いたかった」

キーク「ありゃ、突然の告白!? なんてね。別に調べても何も出ないよ。そもそも管理部門のじいさんは魔法少女嫌いで有名だし、行くだけ無駄無駄」


キーク「まぁリップルでもいっか。あたしの考えを聞いてくれる相手」

リップル「…………」

キーク「あたしはね、憤っていたんだよ。クラムベリーの子供達を放っておく魔法の国に」

リップル「子供達……?」

キーク「クラムベリーの試験をパスした連中の通称みたいなもの。ああ、リップルも子供達の1人だね」

リップル「……なら、何故私も試験に入れなかった」

キーク「リップルには再試験の必要は無いからね。スノーホワイト達にもシスターナナ達にも」

リップル「ならどうしてキノを巻き込んだ!!」

キーク「大声出さないでよ……キノはあたしだって予想外だったよ。興味はあったけど、別にゲームに入れる必要無いかなって思ったけど予定が変わったんだ」

リップル「言い逃れをする気か」

キーク「どうせ何を言っても信じてもらえないなら逃げさせてよ。あ、そうだ。お菓子食べる? コーラは好き? まぁ嫌いな人いないよね。ああでも炭酸ダメって人がいるんだよね……リップルは?」

リップル「ひとつだけ……」

キーク「?」

リップル「キノに何かあったら……お前を殺す」


・・・・・・


アニメの原作者にはスポンサーとも仲良くしなければならない理由でもあるのだろうか。紗南は生まれて初めて家族以外の人間とファミレスに入った

世界有数の金持ち、人小路家のお嬢様である人小路庚江に誘われ、まるで友人のように店に入り、どうしてこうなったという気持ちでいっぱいの中、適当にオムライスを頼んだ

人と話すのはもう慣れてきた。だけど人とサシでファミレスのテーブルを挟めと言われて納得できるわけがない。だが納得するしかない。もう子供ではないのだ。スポンサーの機嫌次第でアニメ会社の人達の命運が決まる。庚江からしたら金持ちの道楽だろうが、紗南達おぜぜをもらう側は大変だ


庚江「このコンセプトは非常に興味をそそられる内容だ。それで、龍崎先生はこのアニメを最後にはどうする?」

紗南「どうするって?」

庚江「ハッピーエンドかバッドエンドか……はたまたビターエンドか」

紗南「………………」

庚江「……まぁ急に尋ねたところで難しい問題か。あ、そうそう。外に居る黒服の連中は気にしないでくれたまえ。こういう家だから」

紗南「(どういう家よ……って、そういう家よね)」


庚江「………………龍崎先生」

紗南「はい?」

庚江「この、裏切り者というのは……誰にする?」

紗南「…………まだ、未定で……」

庚江「ふむ……私はね、こう思うんだ。初めから目的が同じなら、何故裏切る必要があるのか。裏切り者によっぽどの理由が無いと裏切りには到達しない」

紗南「まぁ、そうですね」

庚江「だが、この中でただ1人、そもそもの前提が違う者がいたら?」

紗南「前提?」

庚江「仲間と協力して魔王を討伐……だが、1人だけ、例えば、目的が『他の参加者の殲滅』なんて者がいたら、その者が裏切り行為をするには値しないかな?」

紗南「……!」


庚江「……と、あまりスポンサーが口を出すとロクなものが出来ないというのは歴史が証明してくれているからこれ以上の口出しは控えるが」

紗南「いえ……勉強に、なります……」

庚江「他の参加者は怒り狂うだろうね。仲間を殺されているんだ。絶対に見つけ出して報いを受けさせる」

紗南「(……ジェノサイ子…………あれは、事故じゃないの……? 誰かが、そう望んだ?)」

紗南「(何かがあって彼女のバイザーは上がった。そして死んだ)」

紗南「(報いは……受けさせたい)」

庚江「その顔だと、先生も同じ思いのようだね」

紗南「……」

庚江「……最初は、君がマスターかと思っていたが……」ボソッ

紗南「?」

庚江「なんでもない。さぁ食べようか。せっかくの冷凍食品とレトルトの詰め合わせが冷めてはもったいない」


紗南「……」モグモグ

庚江「にしても、魔法少女なんて実在するのかね」

紗南「は?」

庚江「結構ちょくちょくネットに上がってるんだ。魔法少女の目撃談」

紗南「(やっぱ、他にも沢山いるよね)」モグモグ

庚江「私は魔法少女が大好きでね。もしいたら会ってみたいものだ」

紗南「……私は、魔法少女より魔法使いとか、魔女とか……そっちのが」

庚江「おや、そうなのかい?」

紗南「……」コクッ

庚江「……お互い、頑張ろう」

紗南「……そうですね。アニメ、ちゃんと完成させないと」

庚江「ああそうだったね。期待しているよ。先生」


紗南は別れ際に庚江のアドレスを手に入れた。どうやら気に入られたらしい。原作者として、アニメの為を思うならこれはいいことなのだろう

だが、龍崎紗南としてはおおいに迷惑だ

人小路庚江は、常に腹の探り合いを求めて来た。関係ないような話題をしたように見せかけて、結局は同じことを聞いてくる

探られて何かが出るような腹は持っていないというのに、アニメ業界ってこんなにドロドロしていたのか、噂以上だと思ったところで早速庚江からメールが来た


『今日は実に有意義な時間だった。今度友人を紹介させていただきたい。きっと先生も気に入ることだろう』

紗南「…………気に入るかっつーの」


紗南はシャナであった時を思い出す。ガイコツやロボと違い、ドラゴンは生き物だった。生き物を殺すのには抵抗があると思っていたが、その実なんの躊躇も無く殺せた

アカネで慣れたのか、それともまた別の要因か、生き物を斬るのになんのためらいもない。きっとゲームの中だからだろう。なにせ、自分が現実で人を殺したことなどないし殺そうとも思わないのだから


・・・・・・


キーク「それでさぁ、ここからがムカつくんだよ! せっかくあたしがマジカルデイジーをプロデュースしてやったってのにさ! 世の中には本物の魔法少女がなんたるかを分からないバカが多すぎる!」

リップル「……」チラッ


魔法の端末を見る。スノーホワイトからの連絡はまだ無い。資料集めに手間取っているようだ

リップルは手分けをしようと提案した。監査をするには、まず対象のことを知らなければならない。だが今回、キノは資料を見る前に記憶を封じられた。キークの資料は管理部門にまだ保管されているだろう

自分はキークを、スノーホワイト達は資料をと分担し、キークの話を聞き漏らさないように聞く


キーク「あたしの師匠も言ってたよ。魔法少女は正義の存在。強く正しく美しく、それができなければ魔法少女の資格は無い! って」

リップル「お前の師匠?」

キーク「うん。ああ名前は忘れちゃったけど、とにかく素晴らしい人だったよ」

リップル「(…………師匠の名前を、忘れるのか? キノのように記憶をいじられていない限り……)」


・・・・・・


現実で3日が過ぎ、再びゲームへとログインする

最早見慣れた荒野を進む。自分は魔法少女の中でも足が速い方だと思う。プフレは図書館エリアで開始位置変更装置とやらを手に入れたと言っていたのを盗み聞きした。そして彼女は今、ディティック・ベルとラピス・ラズリーヌのパーティーにキノと共に入っている。つまり、この荒野にその4人は居ない可能性が高い

シャドウゲールとは喧嘩別れだろうか、ログアウト前の2人の雰囲気は険悪なものだった。だがシャドウゲールの魔法は大したことが無い。後回しにしてもいい

キノと会えないのは残念だ。色々と聞きたいこともあったし、色々確かめたいこともあった

仕方ない、他……そうだ、グレートドラゴンを2人で倒した彼女達。非常に厄介な存在だ

彼女達も馬鹿ではない。既に図書館へ移動しようとしているだろう。狙えるのはどちらか1人

美しい妖精のシャナと@娘々。さて、どちらにしようか


 >>直下コンマ一桁
 
 奇数→シャナ
 偶数→@娘々
 


視界の片隅に人影が見えた。なんという僥倖。どちらか迷っていたところに自分から飛び込んできた

彼女の能力は自分と似ている。だが、本質はまったく違うものだ。彼女は人前で魔法を見せすぎた。彼女が魔法を発動するトリガーは、おそらく服をはだけること

彼女が消えるとき、毎回袖を捲ったりしていた。ここで仮説が2つ発生する


1つ、服を脱ぐことで姿を消す

2つ、素肌を見せることで姿を消す


恐らく後者だ。洞窟でドラゴンを狩っている彼女は、ドラゴンには見えていなくても仲間には見えているようだった。つまり、彼女の魔法は人を選べる。人を選ぶということは、ただ単純な「服を脱ぐ」なんてトリガーではないはずだ。恐らく自分の姿を消したい相手に、素肌を見せる必要があるのだ

あの人の教えは、魔王塾の教えも入っている。魔王塾は強さを求める。その強さとは単純なものではない。相手の能力を見極め、常に相手の一歩上を行く。それが魔王塾だ

自分もその教えにあやかり、それなりに観察眼を鍛えた。あの人もこれくらい……いや、自分より早く深く相手の能力を見極められるだろう

あの人は生きている。きっと。殺されるわけがない。あの人は絶対なのだ


シャナは走っていた。が、不自然さを感じていた

空気が張り詰めすぎだ。荒野エリアに強敵などいない。スケルトン如きがこんな威圧感を出せるわけがない

狙われている。どこの誰かは知らないが、まさかと思う

次の標的は――シャナだということか

太刀の柄に手をかける。周囲には誰も居ない。物言わぬ暗殺者か、それともシャナと同じステルス持ちか


 身体能力(55+15-30)ロール(不意打ちを受けたため-30)……直下コンマ二桁
 
 成功→暗殺者の攻撃を避けた
 失敗→暗殺者の攻撃を喰らった
 


それは遠距離からの攻撃だった

何かが空を切る音が聞こえる。どこから、誰から

考える前に痛みが訪れた


シャナ「ガ……ッ!」


背中にヒット。まずい、血が……これは、銛か?

だが、致命傷ではない。まだ太刀を振るえる。しかしそんなことで暗殺者から逃げられるかと言われればNOだ

心臓には、ギリギリ届いていない。抜けば血がドバッと出るだろうから抜けない。後ろを見る。誰も居ない


シャナ「な……だ、れ……!」

「んじゃな」

シャナ「……(この、声……は……)」


シャナの意識はそこで途切れた


シャナは覚醒する意識の中、体が動いているのを感じた

身代わり君が発動したのか……いや、違う。身代わり君は死んだときに発動して、全快してくれる。全快したならこの体の痛みは無いはずだ


シャナ「――――!」


自分でも叫んでいるのだと気付くのに数秒かかった

太刀が空を切る感触。何に振っているんだ

見えない暗殺者か。だがお前、映画でよくあるだろう。錯乱して銃を乱射した奴は大抵死ぬだろう。大人しく死んどけ。身代わり君を使わせろ、言うことを聞け自分の体


 身体能力(55+15-60=10)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功(クリティカル)→暗殺者の撃退に成功
 失敗→あっけなく殺された
 


往生際が悪い。ここにお前が生き延びることを望むものは自分を含めて居ないんだぞ。大人しく死ね! 私!

手に、空を切るのとはまた違った感触が伝わる。太刀の切っ先が何かを斬った感触だ

浅い。浅すぎる。こんなの致命傷どころか、ロクにダメージすら――

胸を抉られる感触があった。何かが前から後ろへ貫いていく。多分、銛だろうなぁ

浅いながらも斬った瞬間、焦るような息遣いが聞こえたような気がした。それにさっきの声……あれは……誰、だっけ……


シャナ「………………」

「…………」スタスタスタ

シャナ「…………………………………………」


今度こそ意識は白だか黒だか分からないものになった


しぶとかった。まさかトドメを誘うとした瞬間にあんな鋭い動きをするとは

しかも動きが華麗だった。まるで妖精のように――

だが殺した。頬に一撃貰ったが、こんなもの次のログイン時には消えているだろう

だが死にかけだというのにあれだけの動きをした相手だ。念のため頭をグチャグチャに踏み潰しておこう

靴に血のシミがつくが致し方ない。湖で洗うか

魔法を使う暇も与えなかった。完全勝利だ

満足だ。さて、次の獲物はどうしようか


・・・・・・


身代わり君は死んで初めて効果を発揮する。死んだ瞬間にアイテム欄から消えて5分後に発動。そのタイムラグの間に死体をどうされようと関係ない

燃やされようが粉々にされようがよみがえる。ゲームの中だから、死体はデータとして消えて、新しくシャナというデータがその場に現れるのだ

シャナが目を覚ました時、暗殺者の気配は無かった

魔法の端末をチェックする。やられた。キャンディーとアイテムが無い

畜生! と叫ぶ。だが、過ぎてしまったことは仕方がない

一刻も早く図書館に向かおう。結構出遅れた

…………死ぬ前に、何か重要なことを知ったような……なんだったっけ


図書館エリアに行く途中、洞窟エリアの大広間でシャドウゲールと会った

何をしているのかと聞くと、泣きついてきた


シャドウゲール「プフレって奴は悪魔なんですよ! 私にだけこんな役目押し付けて、自分はのうのうと他の人とぺちゃくちゃぺちゃくちゃ!!」

シャナ「そ、そうか……大変だな」

シャドウゲール「そんな優しいことを言ってくれるのはあなたとキノだけですよおおおぉぉぉ!!」ウワァァン

シャナ「よしよし」

シャナ「(なんだろう……コイツとは普通に話せる。ただキノと一緒にされるのはムカつく)」

シャナ「あの、私の前にここを通った奴はいなかったか?」

シャドウゲール「うう……私は色々準備があって一番最後にここに来てたので、皆先に行ったんだと思います。誰も見てません」

シャナ「……そうか。邪魔したな」


シャドゲールはドロップアイテムが消えた場合、そのイベントが復活することを利用しようとするプフレに言われ、グレートドラゴンのドロップアイテム、シールド+12相当の物を落としては売り落としては売り、その作業を延々繰り返してキャンディーを稼いでいるらしい

プフレというやつはコレクターか? こんなクソゲーのアイテムをコンプなんかして何がしたいんだと言うと、シャドウゲールはまた泣きついてきて「そうですよねぇ!?」と鼻水を服に付けて来た

シャドウゲールはひとしきり愚痴を言ってスッキリしたのか、感謝の気持ちとしてキャンディー10000個をくれた

図書館エリアにたどり着く。@娘々には遅いアル! と言われたが、誰かに襲撃され、殺されて身代わり君が発動したと言ったら逆に謝って来た


のっこちゃん「襲撃……シャナさんが狙われるなんて……!」

シャナ「敵は遠距離の武器を持っていた。あと…………なんだっけ。思い出せない」


シャナは知らない。データとして復活するシャナは、ケガを受ける前のシャナになる……つまり、銛という武器を相手が使っていたことも、死ぬ間際に聞いた声の事も覚えていないというより、知らないのだ。それはケガを受けた後のシャナであるから


図書館エリアの敵は、なんか影だった

片翼の天使のような影、剣を2本構えた影、どちらも人型だが、種類は違うらしい

キノはそれらの影の動きが何故か分かった。特に剣を持った方

モンスターはデータだ。データはデータ通りにしか動かない

そしてモンスターにはクセがあった。例えば天使のような影は不意討ちを好み、剣を持つ影は真正面から向かってくる。他にも細かい動きを分析できる


ラズリーヌ「とりゃぁぁ!」バキッ

キノ「……」ドカッ


「銃で撃ったものの勢いをちょっと弱くする」と魔法を偽った手前、自分への強化は使えない。結構苦戦した

プフレとベルが謎解きに勤しむのをキノとラズリーヌが守る。それがこのパーティーの攻略法だった



シャナは人生で有数の大声を出した。そりゃ出す。ピンチだ。シャナではない。彼女のだ


シャナ「あぶなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」ズバッ

ペチカ「ひゃっ!?」

シャナ「大丈夫ですか、女神ペチカ」

ペチカ「ええええっ!?」

リオネッタ「ちょっと! 私のペチカさんに気安く触らないでくださる!?」

那子「私のペチカデース!」

クランテイル「2人ともやめないか……」ハァ

シャナ「お前ら全員荒事専門だろ!? それなのになんだ! 危うくペチカ様がケガをするところだったんだぞ! このアホ共!!」

那子「うぐっ」

リオネッタ「い、言いますわね……」


シャナ「死ねぇぇぇぇぇ!! お前ら死ねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」ズバッ

ペチカ「あ、あの……モンスター逃げていってます」

シャナ「クソが! 2度とツラ見せんな!!」

クランテイル「それで、我々の獲物を横取りして何の得が?」イライラ

シャナ「そんなつもりは無かった。ペチカ様を脅かすすべてを殺したかった」

那子「クレイジー!」

リオネッタ「いえ……ペチカさんのためなら私もそれくらいやりますわ」

シャナ「同志」

リオネッタ「同志」


魔法少女全員が一部を除いてすべて集結しているのだ。こうして他のパーティー同士との交流も多くなった


時間が経てば探索も進む。探索が進めば余裕が出てくる。シャナは度重なる人との付き合いで自分から話しかけるという前代未聞の行動に出た

とにかく楽しいのだ。ルンルンだ。スキップしたくなる

今までクソゲーとしか思えていなかったこのゲームに少しだけ愛着も湧いてきた


 シャナは……>>702
 
 1.自分のパーティーメンバーと話をした
 2.クランテイル達と話をした
 3.ベル達と話をした
 

血の臭いからメルヴィルを追跡しよう


シャナ「あ」

ベル「あ。ど、どうも」


かつてはいがみあったパーティーだったが、もう理由が無い。理由が無いなら仲よくしよう。皆ファミリーだ

シャナにはなんとなく、コイツは襲撃者じゃないという確信があった。1度戦ったから分かる感覚とでもいうか、ディティック・ベルとラピス・ラズリーヌからは何も感じない

感じるとすれば、くさいのはプフレやキノ、あとこの場に居ないメルヴィルくらいだ。自分のパーティーメンバーは棚に上げておく


シャナ「順調か?」

ベル「うん。まぁね。プフレに助けられてるよ」ハハ

ラズリーヌ「ベルっちもすごいっすよ! 探偵の勘ってやつっすかね」

シャナ「探偵なのは見た目だけじゃないのか」

ラズリーヌ「なんとベルっち、リアルでも探偵なんすよ! 名探偵!」

ベル「ちょ、や、やめてよ恥ずかしい……」


ベルとラズリーヌは現実でも交流があったのかと驚くと、この前のログアウト期間に出会ったのだという

羨ましい。自分にもそんな相手はいないものか……できればペチカとかペチカとかペチカとか

だが紗南はインドアだ。学校と仕事以外で外に出たのなど、ここ数年で両手の指ほどしかない

プフレと目が合う


プフレ「やぁ。随分楽しそうだね」

シャナ「……」

プフレ「おや、私には楽しく話しかけてくれないのかい?」

シャナ「……どうも」

キノ「……」

シャナ「……けっ」

キノ「表に出ろ」


ベル達と交流を深め、自分のパーティーに戻る

@娘々はまだジェノサイ子のことを引き摺っているようだった。まぁ気持ちは分かる。2人はゲーム開始時から一緒だったのだ。自分がペチカを喪ったらと思うと、その心中察するに余りある


のっこちゃん「@娘々さん……」

シャナ「……(仕方ないよ)」

@娘々「…………なんか、変アル」

シャナ「なにが?」

@娘々「……私、魔法少女、やめてたはずアル…………嫌になって。なんで嫌になったのか、思い出せない……なんでやめたのかも思い出せない……なんで……」

シャナ「……(そんなの、私に分かるかよ…………だが、思い出せないことなら、私にもある。どうやって魔法少女になったか……どうやってこの戦い方を確立したか。けど、なんかそれらが『どうでもよく感じる』…………なんで……)」


プフレ「…………なるほど、赤い本だ」

ベル「四角を丸く…………」

プフレ「皆、赤い本を集めてくれ」


次のエリアへの突破口が見えた

そして、ファルは次が最後のエリア――魔王城だという

俄然漲って来た。とっととこのゲームを終わらせて日常に帰る。誰もがそう思った

ただ、キノにとっての日常は分からない。何が本当で何が嘘なのか、キノには分からない


今日はここまで
ここまで進めておいてなんだけど山岳エリアまるまる忘れてたのと、図書館エリアの敵を間違えた可能性があることを私はとあるキャンディーで思い出したのだ


図書館エリアの最奥には、空の本棚がある。その謎を解くカギは、エリア各地に散らばる赤い本にあった

赤い本にはそれぞれ数字が書かれている。法則もバラバラ……かのように思われたが、『四角を丸く』というキーワードから、プフレが円周率を思いついた

全員が協力し合い、赤い本を集めていく。常に2人1組、もしくはパーティー単位での行動だ。戦えない魔法少女に分類される者達は、このエリアの「図書館」という特別ルールを使ってモンスターをやり過ごした

そのルールは、椅子に座ることだ。「図書館ではお静かに!」「本は座って読みましょう!」という張り紙から、モンスター達は座っている者に対して攻撃を仕掛けることはない。魔法少女全員が2日かけて調べ上げたエリアだ。どこに何があるか、もうそれぞれがマスターしている

すべて集め終わる。山積みになった赤い本を3、1、4、1、5……と、順に並べていき、すべてを埋めると本棚が開いた

本棚の後ろには次のエリア――魔王城への道が


プフレ「ここから先はラストダンジョンというやつだ。全員いるな?」


このエリアで手に入れたのだという空飛ぶ魔法の絨毯にフヨフヨと乗っているプフレが周りを見る。見た感じ、居ない者はいない


メルヴィル「……」

シャナ「……? なにか?」

メルヴィル「……んや」

シャナ「あっ、顔……ケガして」

メルヴィル「気さしねで。どさかで切ったみて」

シャナ「(……訛りがキツくて分からないが、気にするなってことか)」


 知力(52+15=67)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→あれは刀傷だ
 失敗→まぁ世話を焼いてやることもない


 95……ファンブル

 
 
シャナ「そ、そうか」


メルヴィル「んだ」

シャナ「(まぁ気にするなって言われたしこれ以上気にしてやる必要も無いか)」
 
シャナ「(うーん……このメルヴィルも怪しいと思ったけど)」

シャナ「(違うっぽいなぁ……まぁこんなキャラの強い奴が暗殺者ってのはなぁ……こういう時、暗殺者って一番影が薄い奴なんだよなぁ)」

ラズリーヌ「先行するっす!」

ベル「気を付けてね」

プフレ「メルヴィル、また殿を任せても?」

メルヴィル「……」コクッ


まさか、生きているなんて……何故生きている? 魔法か?

いや、彼女の魔法はいなくなることだ。再生魔法でもなかろうに。2つ魔法を持つダブルホルダーか? いや、そんな存在はいないはず

視界から消える……生き返る…………だめだ、共通点が見つからない

参加者の魔法は大体見た。蘇生系の魔法を操る者はいない…………ということは、魔法ではない?

アイテム図鑑を見る。それらしきものがひとつ……

「身代わり君」だ。数は「1(0)」……現在流通していない。が、こうして図鑑に登録されたということは、誰かが手に入れて、0ということは使ったということ

図書館エリアは踏破しまくった場所だ。こんなところで死人も出ないだろう。ならば……彼女が使ったのか

だが現在の流通量は0……誰も持っていない。今なら殺しても生き返らない


だが美しい妖精のシャナも、1度殺されているから警戒しているだろう。こちらを微塵も疑っていないのが笑い話だが

つけ入る隙はいくらでもある。だが、パーティーメンバーにああ言った手前、易々と誰かと仲良くするなどありえない

まぁいい。事故に見せかけて殺すなんて、いつでもできる


シャナ「……(ここが魔王城……定番な外観してるな)」

ラズリーヌ「中をちょっと見て来たっす! 大理石の廊下の一本道っす」

プフレ「ふむ……罠の類は?」

ラズリーヌ「まだ確認してねえけど、そこかしこに嫌な予感がプンプンしたっす」

プフレ「ならば警戒するしかあるまい。モンスターは?」

ラズリーヌ「それがまったく現れねぇっす」

プフレ「モンスターがいない? なるほど……これまた面白い趣向のダンジョンだ。イベントダンジョンってやつかな?」


罠はまずい。シャナに一番相性が悪い

シャナの魔法は相手が肌を見なければ発動しない。直視は勿論、ファインダー越しでも消えられるし、監視カメラも欺ける。だが肝心の相手がおらず、罠がそこにあるだけでは消えようが無い

シャナと相対している者が放った爆弾なら透過できるが、ただ元々誰が置いたかも分からない爆弾は流石に透過できないのだ

故に視覚が元々無い相手はシャナがもっとも苦手とする部類で、罠など以ての外である


シャナ「…………」

ラズリーヌ「皆、気を付けてほしいっす。この先、床のどこかからすっげぇ嫌な予感がするっす……」

プフレ「……誰かに確かめろとも言えんな」

リオネッタ「私は言えますわよ」

プフレ「ほう?」

リオネッタ「この大理石の石像……なかなか丈夫そうじゃありませんの」


リオネッタは大理石の石像を動かして見せた。すごい

石像に関節ってないだろ、とか思う前にずんずんと前に進ませ、罠が発動した。矢が壁のそこかしこから飛び出し、床からは炎が上がり、挙句落とし穴があった

幸い石像は一定の距離で置いてあるインテリアだ。いくらでも補充できる


シャナ「(助かった……)」

@娘々「にしても、この廊下長いアル……いつまで進めばいいアルかー」

ベル「確かに長いね……しかも、罠を警戒してゆっくり進まなくてはいけない」

リオネッタ「この石像さんの足は遅いから、我慢してください」

キノ「……石像って動くんだ」


長いこと歩いた。ほぼ半日だろうか。まずい、もう残り半日しかない

焦る。石像歩いてないで走れこの野郎と言いたくなる

石像の10歩くらい後ろで歩く魔法少女達はかなりうんざりした様子だった。そりゃそうだ。図書館で2日、ここで半日、陽の光を満足に浴びていない

と、誰かが不満を漏らしそうなタイミングでショップを見つけた。どうやらテラスのようだ


那子「やっと外デース!」

シャナ「(……別に屋内でもよかったけど)」

ラズリーヌ「はぁー息が詰まりそうだったっす」

ベル「頑張ったねラズリーヌ」


プフレ「そうだ忘れてた。シャドウゲールを洞窟に置きっぱなしだ。キノ、連れて来てくれ」

キノ「……1人は危ない」

プフレ「じゃあ適当に誰か連れていけばいいさ」

キノ「……………………」キョロキョロ

シャナ「(話は聞いた! 目を合わせないようにしよう)」

キノ「(ラピッドスワローがあれば……)」

クランテイル「私がやろうか?」

キノ「?」

クランテイル「私ならお前とシャドウゲールを乗せて移動できる」

キノ「……お願い」


なんか気持ち痩せたシャドウゲールが合流し、ショップを確認する。見慣れたラインナップの中に武器やシールドの最高ランク(2つくらい買ったら皆のキャンディーが無くなるくらい高い)、スタンガン、火炎放射器…………なんだこれ? モンスターの出ないダンジョンで今更こんなものを……


シャナ「(………………まさか、使えって? 人に?)」


それしか考えられない。というか、あからさますぎる

どうやらシャナ以外も察したらしい


プフレ「今更だな」

那子「今は皆いるんデス! この中に裏切り者が居ても怖くありまセーン!」

シャナ「(あのバカ明るいキャラもたまには役に立つな。ああやられれば相手は手出ししにくくなる)」


プフレ「シールド+10と武器+10を買おうか。これから魔王戦だ、シールドはクランテイルが。武器は……そうだな、功績から鑑みるに、シャナか@娘々が適任だと思うが」

シャナ「私にはもうある」

@娘々「私もスタイルじゃないアル」

プフレ「ならメルヴィル、いいかな?」

メルヴィル「わで?」

プフレ「君はどうやら弓矢を使うそうじゃないか。後方支援の火力を上げておこうと思ってね」

メルヴィル「……」コクッ

プフレ「残ったら適当にRでも引けばいいだろう」

リオネッタ「ペチカさん! 私、寸胴鍋を引いてみせますわ!」

ペチカ「が、頑張って」

シャナ「(食器目当ても珍しい……まぁRって狙って引けるようなものじゃ……)」

リオネッタ「寸胴鍋当たりましたわー!」

シャナ「(引けるんかい!!)」


クランテイルのパーティーは食器を集めているようだった。なんでもペチカの料理は食器があれば盛り付けができるから様々なバリエーションになるらしい

確かにシャナがゲーム開始時にカレーをもらったとき、ペチカは手に直接カレーを持っていた。というか手に直接カレーってどんな状況だ

最後の休憩だった。寸胴鍋は大きく、魔法少女全員分の何かを作れそうで、人数分のお椀とスプーンも揃っている

ペチカは大理石を砕いたものを鍋の中に入れ、手をあてるとおじやが完成した


@娘々「ウマーーーーーー!!」

ラズリーヌ「うんめーーーーー!! これめっちゃうまいっす!!」

ベル「クランテイル達はこんなものを隠し持っていたなんて!」

クランテイル「別に隠していたわけでは……」

ペチカ「お代わりは沢山あるので」

シャナ「…………」ジー

ペチカ「どうしました?」

シャナ「……好き」

ペチカ「えっ」


プフレ「以前いただいたおにぎりもそうだったが、味が絶妙だ。まったく、ウチの専属シェフになってほしいくらいだよ」

那子「おーっとペチカは渡しまセン!」

リオネッタ「ペチカさん、無事帰ったら家に来ませんこと?」

プフレ「いや家に来たまえ。給料だけはバカ高いぞ」

ペチカ「あ、あはは……考えておきます」


団欒と呼ぶに相応しかった。誰もがペチカの料理に舌鼓を打ち、褒め称えるに値するその味に感動する

寸胴鍋が空になり、満腹満腹満足満足。英気は養った。さぁ、ログアウトまでに魔王を討伐してしまおう


リフレッシュし、やる気は十分。石像の遅い歩みも気にしないわけではないがイライラはしなくなった

そしてやがて、魔法少女達は最奥へとたどり着く


プフレ「…………どうやらここが、行き止まりのようだ」

キノ「扉……この先に魔王が?」

プフレ「それは分からない。だけど、魔王城って大抵四天王とか中ボスとかいるものではないかと思うんだ」

@娘々「そういうものアルか」

プフレ「注意して開こう」


重い扉を4人がかりで開く。その重量に相応しい重低音が鳴り響き終わり、扉の向こうを確認すると、広間だった

広間の中心には、石像が1つだけ。なかなか凝った意匠で、薔薇をあしらった部分が多数見受けられた


キノ「ッ……!」ズキッ

プフレ「キノ?」

キノ「…………………………大丈夫……っ」

クランテイル「気圧されたか?」

リオネッタ「あれ、もうズバリ中ボスですわね……」


なにかのスイッチが入る音がした。石像が動き始める


クランテイル「来るぞ!!」

プフレ「作戦通り、シールドを持った魔法少女は――」


 魔法少女達の数値……>>↓1コンマ二桁
 石像の数値……>>↓2コンマ二桁
 
 魔法少女達の数値が勝っていた場合……石像にダメージ
 石像の数値が勝っていた場合……1人死亡
 


石像から聞こえてくる音に、魔法少女達は耳を抑えしゃがみ込むしかなかった

なんだこの音は、グワングワンする。とても立っていられない

音が止んだとき、石像は既に目の前だった。右腕を振り下ろそうとしている


クランテイル「させるか!」


シールド+10は石像の攻撃を防いだ。だが、クランテイルの腕に相当な衝撃が行ったのか、苦しそうに顔を歪めている

強い。攻撃の隙を突いてやろうと思ったのに、石像にはまったく隙が無い

@娘々がお札に封じていた岩をぶつけようと投げる。が、効かない。石像に到達する前に何かに斬られてバラバラになったのだ


キノ「……超音波……カッター……」

プフレ「ッ、気をつけろ! あの刃に当たればひとたまりもない!」


メルヴィル「……!」


メルヴィルが武器+10……強力な弓矢の攻撃を石像に加える。ヒットした。効いている

@娘々がその隙を見逃さない。今度は都市エリアのロボが放っていたミサイルをお札から取り出し、次々着弾させた

リオネッタがシールド+8でのっこちゃんやペチカを庇っているのが見える。シャナはどうすべきか……


 シャナは……>>直下
 
 1.腕が限界そうなクランテイルと交代した
 2.@娘々と共に攻撃に参加した
 


クランテイルは巧みだった。攻撃を受けそうになっている魔法少女と石像の間に素早く立ちはだかり、その攻撃をシールド+10で受け止める

が、それが何回も続けば腕への負担がとてつもないものとなる。事実クランテイルの両腕は赤だか青だか、とにかく変色していた

駄目だ、ここで仲間を失ってはいけない。シャナは動いた


シャナ「貸せ!」

クランテイル「……頼む!」

シャナ「(さて、メイン盾だ! これで勝つるだろ!)」


 身体能力(55+15=70)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→防ぎ切った
 失敗→苛烈な攻撃に盾を落とした


 09……クリティカル!
 クリティカル報酬 身体能力が1上がった!(56)

 
 
シャナ「(クソッ、盾は重いし攻撃はもっと重い!)」



ヤバイ。クランテイルって凄かったのか。こんな攻撃、数発喰らえば盾越しでも吹っ飛ばされる

そしてその時はアッサリと訪れようとしていた


シャナ「ぐっ……!」ヨロッ

@娘々「シャナさん!」

プフレ「キノ、奴の強度と攻撃力を弱めろ」

キノ「……」コクッ


キノが石像に向かって2発、撃ち込む。確か、勢いをちょっと弱めるだったか。2発ということは、ちょっと+ちょっとか?

その直後に、@娘々が石像の直上にとんでもない物をお札から放った。ビルだ。荒野エリアから持って来たのか、その大きさは広間の天井スレスレだ

ビルが重力に引かれて石像を叩き潰す。どうやらバラバラになったようで、シャアの足元には石像の右手首が転がって来た

>>755
×→ビルが重力に引かれて石像を叩き潰す。どうやらバラバラになったようで、シャアの足元には石像の右手首が転がって来た
〇→ビルが重力に引かれて石像を叩き潰す。どうやらバラバラになったようで、シャナの足元には石像の右手首が転がって来た


シャナ「っ、ふぅ……」

@娘々「大丈夫アルか?」

シャナ「……ありがとう」

@娘々「いいってことアル!」

のっこちゃん「2人とも、ケガとかありませんか? 回復薬を……」

シャナ「ああ、もらう……あと、クランテイルにも」

プフレ「これで中ボスクリアか……さて、このビルをどかして奥に行こうか」

@娘々「あ、忘れてたアル」


ラズリーヌ「ベルっち、ケガ無いっすか?」

ベル「うん。次は……魔王かな、それとも四天王として考えるなら今のがあと3体……」

プフレ「いや、どうやら……魔王だ」


皆が固唾を飲む。やっとラスボスだ。ここまで色々あった。仲間を喪った。強敵と戦った

暗殺者も今は大人しい。このまま待ち構えている魔王を速やかに倒せばゲームクリア。解放される

行こう、と誰かが言った。ああ。と答える。最後の戦いだ。玉座の間――そこに魔王がいる

と、誰もが思っていた


玉座の間に入ると、そこには玉座があった。玉座だけが


那子「? ダークロードはどこデスかー?」

クランテイル「馬鹿な……魔王がいないぞ!」

プフレ「ファル……これはどういうことだ?」

ファル「おかしいぽん! そんなことは……このゲームにはちゃんと魔王がいるぽん!」

シャナ「(おいおいおいバグかよ!?)」

プフレ「……魔王は、今、ちゃんと、ゲームの中にいるんだな?)」

ファル「そうだぽん、クリア条件は魔王を倒すこと。その魔王がいないなんてありえないぽん!」

プフレ「………………」

ラズリーヌ「ねぇねぇベルっち、今こそ探偵の力を見せるときっす!」

ベル「ええっ!? そんな無茶な」

プフレ「ディティック・ベル、玉座を調べてもらえるかな?」

ベル「玉座を? まぁいいけど……」


ベル「ん? これ……」

ラズリーヌ「どうしたっすか?」

ベル「玉座の裏に、なにか書いてある……なになに」


「魔王は今17人の魔法少女に追われて大変です! 現在はどこかのエリアに潜んでいます」

「玉座の間にたどり着いたことで記憶解放条件が満たされました。記憶解放装置を配布します」

「魔王の危機を知り、モンスターの士気が上がってレベルアップをしたモンスターがいます」


ラズリーヌ「すごいすごい! ベルっち流石名探偵!」

プフレ「………………なるほど、魔王は今まで我々が通って来たどこかにいるということか」

那子「廊下のどこかデース?」

リオネッタ「荒野からここまでのどこかですわよ」

クランテイル「しらみつぶしに探すしかないというのか……!」


キノ「どういうこと? 魔王はどこに?」

プフレ「今のを聞いたろう? 魔王はどこかに潜んでいるんだ。俗っぽく言うならビビって隠れてる」

キノ「魔王なのに?」

プフレ「臆病な魔王もいるのだろう。とにかく探さねば……ログアウトまで時間が無い」

クランテイル「行くぞ!」

ベル「…………」

ラズリーヌ「ベルっち、行かないっすか?」

ベル「ちょっと1人で考えることがあるから、先行っててよ」

ラズリーヌ「分かったっす!」

シャナ「(おいおい1人でって……不用心すぎるだろ。魔王がどこかに潜んでて私達を狙っているのなら、1人は危ない。それに暗殺者も……いや、全員で一丸に行動してるなら大丈夫なのか?)」


 シャナは……>>766
 
 1.ベルと一緒にいると言った
 2.皆についていった
 

1


焦る気持ちがある。もうすぐログアウト、今はどんなすべての事象よりも魔王を見つけ出して討伐することが先決だ

プフレだってそう言っている。あのプフレがそう言うのなら最優先は魔王なのだろう

だがシャナは自分の気持ちよりも考えを優先するタイプだった。それだけの精神力がシャナにはある

焦るほど冷静になる自分がいる。早く、早く魔王を討伐しなきゃ。いや、待て。他にやることは?


シャナ「……1人は危険だ。もし私が魔王ならお前から狙うぞ」

ベル「シャナ……」

シャナ「私もディティック・ベルと残る。皆は魔王を」

@娘々「分かったアル!」タッタッタ

ラズリーヌ「早く行くっす!」タッタッタ

シャナ「…………ラズリーヌはお前にベッタリだったのに、残らないのは意外だな」

ベル「それだけ皆魔王を倒したいでしょ。なにせ100億円だ。でも、今は魔王よりも気になることが……」


シャナ「にしても、せっかくこんな立派な玉座があるのに座らないなんてもったいない魔王だ」

ベル「あはは……ん? 玉座? ッ、そうだ!」

シャナ「どうした?」

ベル「ここ、見て」

シャナ「玉座のメッセージだろう。もう見た」

ベル「玉座には『魔王は17人の魔法少女に追われて』と書いてある」

シャナ「………………ん? 17人? 今私達は12人じゃ……」

ベル「そう。数えなおしてみたんだけど、ゲームが始まった時、魔法少女は18人いたんだ。なのに、ここには17人とあるよね」

シャナ「…………まさか……!」

ベル「……魔王は、魔法少女の中に……」


シャナ「まだヒントは……」

ベル「記憶解放装置……と、モンスターがレベルアップ…………記憶?」

シャナ「記憶…………記憶、だ……」

ベル「どうしたのさ」

シャナ「自分の記憶がおかしいと思ったことはないか? 思い出せないこと……私は、どうやって魔法少女になったのか、どうやってこうやって戦うようになったのか、思い出せない」

ベル「………………」

シャナ「魔法少女にはなりたての頃には教官がつくと聞く。なのに、私は教官が思い出せない。お前は」

ベル「……本当、だ…………なんで、気付かなかったんだ……!」

シャナ「記憶解放装置だ! 配布されたんならアイテム欄に…………クソッ、無い! なんでだよ、おいファル!」

ファル「シャナ、ディティック・ベル。思い出してほしいぽん。このゲームでアイテムを手に入れるにはモンスターからドロップするか……」

ベル「ショップだ!」


ショップを目指し走る。その途中、思いつめたベルの顔が気になった


シャナ「……どうしたんだよ」

ベル「……今まで、1度も役に立ってないから…………やっと、役に立てるんだ」

シャナ「(ゲームに入ってからか? 確かに、ベルが何か華々しい活躍をした覚えはないが……)」

シャナ「何言ってる。ここまで生き残ってるんだ。高望みすんな」

ベル「……うん」

シャナ「(そうだ、生きてるんだ……マジカルデイジーも、ジェノサイ子も死んだ……目の前で死んだ……けど、私は生きてる。生きて……)」


 身体能力(56+15=71)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→廊下に自分達以外の気配を察知した
 失敗→急ごう急ごうと気持ちが逸った
 


 29……成功!

 
 
シャナ「ッ、待て!」


ベル「どうしたのさ、早くショップに……」

シャナ「この廊下に誰かいる」

ベル「ッ……!?」

シャナ「(…………暗殺者か。それとも魔王か? いや、普通に考えて暗殺者=魔王か)」

『仲間と協力して魔王を討伐……だが、1人だけ、例えば、目的が『他の参加者の殲滅』なんて者がいたら、その者が裏切り行為をするには値しないかな?』

シャナ「(なるほどな……確かにそうなら辻褄が合う……)」


魔法少女と関係の無い日常が、今この状況を飲み込むのに貢献してくれている。なんの因果だろうか、シャナは込み上げてくる笑いを押し殺した

姿は見えない。けど、いる

魔法少女はその魔法の性質に近い感覚が特に鋭いのか知らないが、シャナは気配の察知が得意だ。殺気なら特に


シャナ「いるのは分かっているんだ!」

ベル「…………!」ゴクリ


返事は無い。さて、どう来る魔王様

――こう来た

何もない空間から、突如『何か』が飛んできたのだ。シャナは抜刀しそれを叩き落とした。何を叩き落としたのかは分からない。だが音から察するに金属類だ


シャナ「ベル、後ろに」

ベル「う、うん!」

シャナ「(射出物か投射物か……どちらにしろ遠距離武器、私が殺された時と同じ奴だ)」

シャナ「(射出……そういえばシャドウゲールは洞窟の大広間で竜殺しをバリスタみたいなので放っていたな……ということは、シャドウゲールか?)」

シャナ「(いや、アイツの魔法は戦車の作成だ……姿が見えないなんて……ステルス戦車か?)」

シャナ「(あとは……考えたくはないが、@娘々も何かを投げられる……だが、@娘々のはずは……あとは、キノ……アイツは……)」


足音は無い。移動していないのだろうか

だが気配は相変わらずだ。元を辿ろうにも、一撃目を放った時点で殺気がそこら中にある。ここまでされたら察知も難しい

遠距離攻撃ができる魔法少女――シャドウゲール、@娘々、メルヴィル、キノ……死んだ者も入れればマジカルデイジーとアカネもそうか

意外と多い。そして、ソイツが魔王で、今まで笑顔で自分達と接しその裏で殺して回った奴……チェルナー・マウスに細工をした奴


シャナ「(考えるだけ無駄か、とにかくこの状況を……なんとか……)」

シャナ「ベル、>>788


 1.ここで奴と戦う。お前は玉座の間まで逃げろ
 2.逃げるぞ


シャナ「ベル、逃げるぞ」

ベル「逃げるたって……逃げられるのか?」

シャナ「ああ。手を繋げ」

ベル「……」ギュッ


この際正体は誰でもいい。ベルが居る以上、満足には戦えないしベルを逃がしてサシの勝負をして勝てる保証もない。自分が殺されれば、敵は次にベルを狙う

なら、羞恥心を少しだけ抑えよう。コートの前を開けた

何もない空間から、困惑と舌打ちを感じる。この肌面積では自分とベルに対しての五感を封じるのが精一杯だが、これで図書館エリアまで逃げて――


 幸運(96)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→なんとかやりすごして逃げられた
 失敗(ファンブル)→敵そもそもずっと目を閉じていた
 


なんとかやりすごした。壁を這って移動し、襲撃者から逃げた

ベルは自分達に何が起こっているか分かっていないようだが、道中教えればいいだろう。ベルは裏切り者ではないのだから

と、そこでファルによって強制ログアウトイベントが通告された

2人とも荒野の街へと飛ばされる。そこには他の魔法少女もいた。なんだ? 雰囲気が……


 魔法少女達の数値……>>↓1コンマ二桁
 モンスターの数値……>>↓2コンマ二桁
 
 魔法少女達の数値が勝っていた場合……1人犠牲が出た
 モンスターの数値が勝っていた場合……2人犠牲が出た
 


シャナ「(なんだ……? なんか、雰囲気が……)」

ペチカ「うう……グスッ……」

クランテイル「…………」

リオネッタ「……」

シャナ「(なんでペチカ様が泣いているんだ……なんでリオネッタはケガをして1人離れた場所にいるんだ……なんで、御世方那子がいないんだ)」

@娘々「シャナさん……」

ベル「ラズリーヌ、何が……?」

ラズリーヌ「……那子が、死んだっす……」

シャナ「ッ、馬鹿な! 魔王はこっちに来たんだぞ!」

ペチカ「モンスターに…………う、ううっ……」グスッ

シャナ「(モンスターに!? アイツはそんな弱い奴じゃ…………)」

ベル「レベルアップ…………」


プフレ「待て、魔王がそちらへ行った?」

シャナ「ああ……姿が見えなかったが、私とベルを襲ってきた。全員で探していたんじゃなかったのか?」

プフレ「全員で? やはり、……魔王はこの中にいたか…………」

ファル「今回のイベントを発表するぽん!」

シャナ「うるせぇ!」

ファル「落ち着いてほしいぽん。冷静にならないと、勝てないぽん」

シャナ「(……クソッ! なんでマスコットに正論言われてんだよ、私……!)」

ファル「今回のイベントは攻略本の配布だぽん。皆のアイテム欄に配っておいたぽん」

プフレ「攻略本だと?」


その場に居た全員が攻略本を見る。そこにはこうあった。

『魔法少女の中に1人魔王が混じっている』


プフレ「……皆、固まれ!」


プフレの号令に誰も逆らわない。誰かが魔王なのだ。互いが互いを疑い始める

全員いる。ちゃんと全員が

誰が魔王か分からない。そんな状況で小さく固まるのは無理だ。手が届く距離までは近付かない。必然的に内側を向く円となった


クランテイル「リオネッタ、何故パーティーを抜けると? まさかお前が……」

リオネッタ「冗談じゃない……魔王は私じゃありませんわ。けど、彼女なら……」

@娘々「彼女? 誰アルか」


その時だった


 >>直下コンマ一桁
 
 奇数→ベルの言葉と共にログアウトが始まった
 偶数→@娘々が倒れた
 


ベル「皆、記憶だ、記憶解放装置を!」

プフレ「なに?」

ベル「ファル、ショップなんて言わないで配ってくれ!」

シャナ「そうだ、条件解放してるならいいだろ!」

ファル「………………分かったぽん」


それきり、見えていた風景は暗転。紗南は自分が部屋にいることを思い出した


・・・・・・


キーク「ちょっとファルーそりゃないって。気付いた奴がショップに行って買うのがいいゲームバランスだったんだよー?」

ファル「……これ以上死なせたくないぽん! リップル、もう6人も死んだぽん! 早くしないと、皆魔王に――」ブツッ

キーク「余計な事言わないの。で、リップルーそろそろスノーホワイト連れてきてくれないー?」

リップル「……そのマスコット……」

キーク「あ、ファル? FAシリーズだからリップルも思うところあるのかな。コイツ魔法少女のこと好き過ぎてたまにこうして命令違反しちゃうんだよねー困った困った」

リップル「…………」

キーク「……もうログアウトした。キノはまだ生きてるよ。3日間経ったらまたゲームに放り込まれるけど、それまでに顔でも見に行かないの?」

リップル「…………また来る」

キーク「いつでも待ってるよー、次はスノーホワイトと一緒に来てね」


・・・・・・


スノーホワイト達と合流し、キークについてのデータが魔法の端末に送られてくる


リップル「ありがとう……よく管理部門が資料くれたね」

スノーホワイト「もらってないよ?」

リップル「えっ、じゃあこれは」

ラ・ピュセル「スノーホワイトの魔法だよ……」


スノーホワイトの魔法は、彼女が魔法少女になりたての頃とは随分変わっていた。困った声が聞こえるのはそのままに、相手が無意識に困ることも聞こえるようになっていたのだ

管理部門の長である魔法使いの老人は、スノーホワイトに資料の開示を認めなかった。だからスノーホワイトは自分でデータベースにアクセスするからIDとパスワードを教えてくれと頼む。当然認められない

だがスノーホワイトはその疑問を投げかけることによって、管理部門の長に無意識に『ID〇〇とパスワード××を知られたら困る』と思わせることに成功し、まんまと盗んでみせたのだ

リップルは複雑な気持ちだった。スノーホワイトは昔から変わらないように見えて、その実清濁併せ持っていたのだから


アリス「これを手に入れて、弱点を探すんですか……?」

リップル「何かあればいいが……私がキークと話したことを録音してある。これを聞きながら考えよう」

スノーホワイト「それはいいけど、キノはいいの?」

リップル「…………今会いに行っても、また怖がらせるだけだから」

ラ・ピュセル「…………そうか」

アリス「知り合い、だったんですね……」

リップル「……親友だ。高校からの…………私の唯一の……光なんだ」


・・・・・・


記憶解放装置…………ベルはそう言っていた

なら、何故自分には用意されていないのだ

何度もアイテム欄は見た。なのに、それらしいアイテムは無い。キノの記憶は、どうなっているのだ

解放させてほしかった。ベルが記憶と言った瞬間、少し安心したのに。もう、この訳の分からない気持ちの正体が分かると思ったのに


結衣「……………………」

結衣「……師匠…………」


師匠、キノにすべてを教えてくれた師匠。誰だ。誰なんだ

なんで思い出せない。大切な思い出のはずだ。あれから何度も思い出そうとした。何度も鼻血を流した。けど、思い出せない

限界だった

ゲームの中では自分を殺して活動した。プフレに従い、余計なことを言わず、いつもの結衣ではなく、いつもの一匹狼キノでいた

一匹狼……本当なのだろうか。いや、本当だ。自分はひとりで、孤独で……


・・・・・・


吐いた

どれもこれも、記憶のせいだ

魔法少女試験、殺し合い、音楽家、魔王、殺し屋…………全部思い出した

そしてアカネのことを少しだけ理解した。そうだ、音楽家だ。森の音楽家クラムベリー

シャナには姉が居た。引っ込み思案で学校でもひとりだった自分の、唯一心許せる存在が。共に魔法少女になり、喜んだ。自分が露出狂のようなコスチュームだったことをからかわれたり、共に人助けをしたり、親にバレたら大変だねと笑い合ったり

姉は死んだ。クラムベリーに目の前でグチャグチャにされたのだ。憎んだ。憎んで憎んで憎んで、シャナは復讐を決意した

普通に戦ってもクラムベリーには勝てない。復讐には、クラムベリーに近付く必要があった。選抜試験は凄惨な殺し合いと化した。自分がそうさせたのだ。笑顔が可愛かった魔法少女を真っ二つにした。見返り美人の魔法少女の背後から突き刺した。時には壮絶な死闘も演じた

シャナは自分の魔法を研究した。どこまで見せればどこまで消えるか。実験は過酷だった。対象は一般人。ベンチで座っているサラリーマンの前で腕まくりして目の前で手を振っても気付かれないけど話しかけたら驚いていた。それから露出を増やしていき……思い出すのも嫌な体験と共にシャナは魔法を知り尽くした


主に不意討ちをしまくり、最後の2人となり、シャナはクラムベリーの前で御前試合をさせられた

相手は強かった。バリバリの武闘派という感じで、動きに隙が無かった。だが、シャナの魔法の前には無力だ

透過させ、混乱する相手の隙を突いて首を飛ばした。シャナは見事クラムベリーの試験に合格したのだ


クラムベリー「おめでとうございます。生き残ったあなたは合格者です。明日の23時に正式な卒業式をしますので、噴水広場に来てくださいね」

シャナ「………………」

クラムベリー「いつかあなたが私の寝首をかける日を楽しみにしていますよ」


翌日、時間通りに噴水広場まで行った。紗南が生まれ育った街のシンボルとも言うべき広いところだ

そこにはクラムベリーと、もう1人。黒い羽根を持つ魔法少女がいた


「コイツが合格者か……」

クラムベリー「はい。今回もありきたりな人助けの試験をしたのですが……彼女は今回の参加者の中で一番強いことが分かりました」

「何故分かった?」

クラムベリー「私の見る目は確かですよ」

「ふむ……たまには卒業生の元を回るのもいいものだな…………貴様」

シャナ「ッ……! は、はい……!」

シャナ「(なん、だ……コイツ…………)」

「ひとつ手合わせしようじゃないか」


この、シャナがかわいく見えるほどの際どい露出をした魔法少女が「魔王パム」だと分かるのは、この後のことだった


パム「いつでもかかってきていいぞ」

シャナ「…………じゃあ……」


この威圧感、にじみ出る強さ。ハッキリ言って戦意が削げる。が、戦わねばならないだろう。強制イベントというやつだ

大丈夫。この魔法さえあれば、たとえ勝てなくても負けることは無い。シャナは袖を捲って姿を消し、一気に斬りかかった


パム「……甘い」


簡単に避けられた。何故だ。コイツには見えていないはずだった


パム「姿を消すなら、音を出すな!」

シャナ「ガ、ハッ……!」


4枚の内、1枚の羽根が襲い掛かって来た。真っ黒な羽根は色をそのままに人型になり、パンチをしてきたのだ

羽根のくせにえらく思いパンチだった


認識された。近くの林に飛び込み姿を隠す

魔王パムは追ってこなかった。恐らくシャナは逃げ出したりしないと思っているのだろうか。畜生その通りだ。ここで逃げたらクラムベリーに幻滅される。そうなれば近付けない

恥を捨てた。コートをその場に置き、全裸で太刀を持ち魔王パムの前に躍り出る

ほうと笑顔だった魔王パムは次の瞬間、はてと首を傾げた


パム「……クラムベリー、私はここで何をしていた? 誰かと戦っていたような……」

クラムベリー「フフッ、なんでしょうね」

パム「何故目を閉じている?」

クラムベリー「閉じていても音で楽しんでいますから」


隙ありだ。魔王パムの背後で魔法を解き、斬りかかる


勝った。殺す気は無い。ちょっと腕を斬って――


シャナ「え…………」

パム「………………危ない危ない」


魔王パムの反射神経は、人間をはるかに凌ぐという魔法少女のそれすらも超えていた

太刀を振り下ろす、その一瞬の間に魔王パムはシャナを認識、すべてを思い出すと同時に片手で太刀を受け止めたのだ

太刀は掴まれ、羽根は槍となってシャナの腹を貫いている

シャナは崩れ落ちた


シャナ「ぁ………………ぅ……………………」

パム「…………なるほどな。厄介な魔法と言うことか。久々に自分の体で攻撃を受け止めた。確か前は……クラムベリーの時か?」

クラムベリー「魔王パム、せっかくの卒業生を殺さないでください」

パム「ああ、そうだな……よし、すぐに回復魔法を持つ奴を呼ぼう」


クラムベリー「…………手、切りました?」

パム「ん? ああ、薄皮をな」

クラムベリー「素晴らしいじゃありませんか」

パム「ああ。まさかな……年かな?」


魔王パムは思い出していた。最初の一撃。腕まくりをして飛び上がり、月をバックに斬りかかって来るシャナの姿を

まるでそれは妖精だった。太刀が月明かりを反射してとても美しく……


パム「『美しい妖精のシャナ』は外交部門で引き取ろう」

クラムベリー「……(また変な二つ名を)」


外交部門に所属することになったシャナは、魔王塾に入らされた。二つ名は魔王パムに一撃を入れ魔王塾を卒業した証。その二つ名付きが魔王塾に入るとはどういうことかと、シャナは鳴り物入りだった。実に不愉快だった

魔王塾から逃げるように、シャナは外交部門の影となった。その魔法を買われ、殺し屋として……


クラムベリーとファヴの細工で記憶を操作されたシャナからしたら、「自分は普通に魔法少女になったはずなのにいつの間にか武闘派集団の仲間入り」だった

魔王塾は地獄だった。血の気の多い魔法少女が常に勝負を求めてきて、逃げてばかりだった

外交部門のトップから声がかかったのはシャナにとって幸運だったのか不運だったのか

それから数年、何人も殺してきた。物言わぬ殺し屋。太刀の腕もあってシャナの殺害人数は三桁に迫っていた。中には魔法少女じゃない、ただの人間を殺すこともあった

いつからかシャナは心を殺した。言われるがままに殺す……これが自分の求めていた魔法少女なのか。私は何を求めていたのだろうか

私はただ、魔法少女になりたかっただけなのに……


紗南「……………………クラムベリーは、死んだんだったっけな……」

紗南「……何で、あのゲームで……こんな、記憶が……」

紗南「私は………………私、は……」


もう、魔法少女じゃない

なにが魔法少女育成計画だ。失格だ失格。早く脱落させてくれ

復讐を誓っていた。する前に相手がどこかの誰かに殺された

もう生きている意味は無い。早く、姉のところへ……


思い出す。@娘々、のっこちゃん、ペチカ。今まで共に生き残った魔法少女

……最後の最後で、魔法少女になろうと思った

皆は何があっても守る。殺させはしない。死ぬのはせめて自分1人

決死の覚悟があった


・・・・・・


もう見慣れたものだった。どこまでも続く荒野

今回は魔王の襲撃は無い。というか、魔王が誰か……なんとなく察しはつく

メルヴィル……あの、クラムベリーを思い出させる魔法少女。思えば初めて見た時からおかしかった

彼女が魔王なら、遠距離攻撃をしてきたことも納得がいく


パーティー編成を見る

・クランテイル、リオネッタ、ペチカ、キノ

・ディティック・ベル、ラピス・ラズリーヌ、プフレ、シャドウゲール

・@娘々、のっこちゃん、美しい妖精のシャナ


キノはプフレと別れてクランテイルのパーティーに入っていたのか。ということは近くにいる。プフレは開始位置変更装置を持っていた。ベルのパーティーは恐らくこのエリアにはいないだろう


まずのっこちゃんと@娘々に連絡をとった。単独行動するな。メルヴィルが魔王だ。すぐに合流しよう。その旨を伝える

のっこちゃんからはすぐに返信があった。だが@娘々からの返信が無い。まさか、もう……? いや、@娘々は強い。魔王から不意討ちを受けても……

確認している暇は無い。とりあえずのっこちゃんだけでも探さないと


のっこちゃんの反応はビルの中にあった。名前を呼んでビルの中を探す。返事は無い。警戒しているのだろうか。早く姿を見せてあげないと

ビルの一室に入る。反応のあった場所だ。その中を見て――シャナは膝から崩れた

そこにあったのは焼死体だった。誰のかも分からないほどに黒焦げになって、その炭化した右手には……魔法の端末があった

嘆いている暇も無く、自分の魔法の端末にメッセージが届く。シャナはその内容を見て目を見開いた

クランテイルからだった。内容は、ペチカがメルヴィルに人質に取られていると


・・・・・・


前回のログアウト前――正確には那子がモンスターに襲われ死亡した直後。プフレに言われ、キノはクランテイルのパーティーに入れてもらった

リオネッタはあの時、様子がおかしかった。まるで何かを悟ったように、単独行動をすると言い始めたのだ。パーティー編成を確認したら、結局は抜けていなかったようだが

プフレは頭がいい。キノなんかよりもよっぽど。手探りよりも彼女の手助けをした方がゲームをクリアする確率は上がるだろう

と思っている矢先に、プフレに助けてほしい事態が起きた


メルヴィル「それ以上近付いたっきゃこのめらしば殺す!」

クランテイル「くっ……! ペチカ!」

リオネッタ「…………」

キノ「…………チッ……」


ログイン直後にペチカはメルヴィルとリオネッタに捕まっていた

何故メルヴィルが、何故リオネッタが

キノが知らないのは当然だ


メルヴィルは千載一遇のチャンスを台無しにされてたまるかとペチカを人質にとった

リオネッタはお金を必要としている。彼女にはのっぴきならない事情があったが、リオネッタは金のためならなんでもする。そこにつけこみ報酬を餌に言うことを聞かせた

メルヴィルは記憶を失ってなどいなかった。ゲーム開始時からクラムベリーのことを思い、クラムベリーがまだ生きているかもしれない。生きてるなら彼女は何を望む? 自分はどうすればいい……そうだ、彼女が喜ぶこと。血生臭い凄惨な殺し合い

メルヴィルは色を変える魔法を操る。それは最早視覚のみでいえば最強の認識攪乱だろう。自身を透明にしてマスクド・ワンダーを殺し、十脚戦車を倒すほどの力を持ち、裏切られたら厄介なチェルナー・マウスの魔法の端末の画面に魔法を使い、本当は足りていないのにキャンディーが足りているように見せかけた

ジェノサイ子はリオネッタにやらせた。リオネッタは人形を操る。人形と見れればなんでもいい。服は人形とは言えないが、ジェノサイ子のスーツは上下つながっている

試しにリオネッタに魔法をかけさせたら操れると分かった。ならば手段はひとつ。グレートドラゴンに事故にみせかけ殺させる


那子は勝手にモンスターに襲われて死んだ。できればこの手で殺したかったが

シャナは意外だった。まさか生き返るとは思っていなかったし、魔王城の廊下で襲ったときも、彼女を見てしまったら駄目だということは分かっていたのに無意識に目を使い認識してしまった

彼女はいい獲物だ。殺さないと

そして、キノ

クランテイルと並んでこちらを見てくる彼女はクラムベリーを倒した者の内の1人。個人的にも、コイツは絶対殺したい

既に誰もが記憶解放装置を使っている。自分達がクラムベリーの監督のもと、殺し合いをさせられて生き残った者だとは分かっているだろう

自分はクラムベリーの信奉者……お前達はクラムベリーの生徒。さて、どちらが偉いのだろうか

やはり力で示すべきだ


キノ「…………(もう、偽ってても意味は無いよね。魔王はそこにいて、魔法を使わなければ切り抜けられない状況)」


銃に「魔法の弱化」6発フルで込める

メルヴィルはとにかく悪い奴で、魔王だ。彼女を倒せばすべてが終わる

だが、ペチカが人質にとられている。彼女は戦う魔法少女ではない。監査部門として、魔法少女として彼女は死なせない

と、そこで動きがあった

リオネッタがメルヴィルに襲い掛かったのだ

なんだ? 彼女達は仲間ではなかったのか


 キノの身体能力(70)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→リオネッタと共にメルヴィルに飛びかかった
 失敗→走り出すが間に合わない
 

 
 24……成功!


メルヴィル「なっ!? 仲間を裏切って寝返るのか!? 360°も!」

リオネッタ「180°ですわ、この歴史的バカモンが!」

ペチカ「リオネッ……!」

リオネッタ「確かに私はあなたの悪事に加担してきた……けど、この愛には、嘘はつけませんの!」

メルヴィル「何故そこで愛ッ!?」


リオネッタの体は人形のような球体関節だ。人体の構造を無視した攻撃もできる。取っ組み合いには最適だ

彼女はかぎ爪でメルヴィルに斬りかかり、腕を飛ばされた

だが諦めない。まだもう1本残っている――頭部を破壊された

リオネッタの意識はまだある。メルヴィルは強い。手に持った銛で近接戦もこなしてみせる相手だ

メルヴィルに弱みを握られ、金を掴まされ、ジェノサイ子を手にかけた。自分は汚れている。報いを受けなければならない。だが、それでもメルヴィルがペチカに手を出すのだけはリオネッタの愛が許さなかった


キノ「(とりあえず、どちらが敵か……優先順位は…………メルヴィル……!)」


銃を抜き、リオネッタと共にメルヴィルと戦う

リオネッタはもう虫の息と言っていいほど破壊されている。右腕を失い、頭の半分を失い、魔法少女と言えど生きていられないはずだ

だがリオネッタは生きている。彼女の破片を踏む。なるほど、人形だから生きているのか


 リオネッタの数値……>>↓1コンマ二桁
 キノの数値……>>↓2コンマ二桁
 メルヴィルの数値……>>↓3コンマ二桁

 
 
 リオネッタの数値がメルヴィルの数値に勝っていた場合……ペチカを助け出す

 キノの数値がメルヴィルの数値に勝っていた場合……メルヴィルに魔法の弱化を撃ち込む
 
 メルヴィルの数値がリオネッタの数値に勝っていた場合……リオネッタ撃破
 メルヴィルの数値がキノの数値に勝っていた場合……逆にキノの魔法が弱化される


 リオネッタの数値……15
 キノの数値……68
 メルヴィルの数値……68

 
 
 キノとメルヴィルは互角……>>直下コンマ一桁

 
 奇数→どちらも行われる
 偶数→どちらも行われない
 


メルヴィル「いい加減さ、死きゃ!!」

リオネッタ「っ…………ぁ……」


ついにメルヴィルの銛がリオネッタの首を飛ばした。が、リオネッタは倒れない。残った左腕がメルヴィルの肩を掴む

キノはその隙を突いてなんとか1発メルヴィルに撃ち込むことができた。そこでリオネッタの残った体の中から、何か小さい手とその手が握るナイフが見えた


メルヴィル「ぐっ、あ……!」


リオネッタの奥の手だった。リオネッタの本体はその見目麗しい球体関節人形ではない。それはガワで、本体は中にいた

ナイフがメルヴィルの右肩に刺さる。が、それだけだ。メルヴィルは速やかに右手で持った銛を手放し、リオネッタのガワの中へと手を入れ、掴んだ何かを握りつぶした

右肩からナイフが抜け、リオネッタがついに崩れ落ちる。次はキノだ


キノ「(リオネッタ! くっ……!)」


多分、死んだ。この場で崩れ落ちるということは、そういうことなのだ

メルヴィルに撃ち込んだのは1発。まだ完全に魔法を封じるには至っていない

銃をメルヴィルに向ける。が、腕を掴まれ、手首を掴まれ、ギギギと銃口を自分へ向けられた。関節技だった。抜け出せない


メルヴィル「引き金引いてやら」


メルヴィルがキノの指の上から引き金を引いた

キノは額に自分の弾を受け、メルヴィルはキノの腕を放し、腹に蹴りを入れてクランテイルと向き直る

結果、リオネッタがメルヴィルに襲い掛かってから僅か10秒。クランテイルは出遅れ、ペチカはまだメルヴィルの人質。リオネッタは死に、キノは自身の弾を撃ち込まれ仰向けに吹っ飛ぶ

状況は最悪だった


メルヴィルはペチカを連れて逃げ出した。クランテイルはキノを起こし追いかけようとする。クランテイルの下半身を馬にすれば、どんなに速い魔法少女にも追いつけるしキノも載せられる

だがキノは起き上がらなかった。その代わりに、叫んだ


キノ「がっ、あああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

クランテイル「ッ、キノ!?」


どうすればいいか分からない。もうメルヴィルを見失ってしまいそうだ。キノかペチカか、クランテイルには、ペチカを選ぶしかない

キノはここにいるが、ペチカはまだ捕まっているのだ

クランテイルはキノをその場に置き、メルヴィルを追った


記憶が少しだけ開かれる

師匠……彼女は、手裏剣を使っていた。先輩……彼女は、死んだ

音楽家………………音楽家…………彼女は……


キノの目に、逃げる薔薇をあしらった魔法少女が見える


キノ「おん、がく……か……」ムクッ


走り出す。相手は誰かを連れている。多分追いつける。足の速さの強化を……

下半身が馬の魔法少女が追いかけていくのが見える。だが、両者の距離は一定のまま……多分、近付けないんだ。弾を自分に撃ち込む。そんなに強化された実感が無い。でも、構わない


キノ「音楽家ぁぁぁぁァァァッ!!!!」


音楽家へと、駆け出した


メルヴィル「その距離ば維持しろ! さもねどめらしば殺す!」

クランテイル「距離を維持しろ、だと……!」


メルヴィルは考えていた。このままクランテイルに追いかけられ続けても仕方がない。もうすぐ魔法少女達も集結し、自分を打倒しようとするだろう

ペチカは人質にうってつけだ。か弱く、魔法も戦闘向きではない。それでいて皆の人気者だ

とりあえず草原エリアに移動した。さて、次は――


キノ「音楽家ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

メルヴィル「ッ!?」


完全に不意討ちだった。倒れていたからまさか起き上がって、あまつさえ全速力で来るなんて

魔法少女の全速力はとにかく速い。メルヴィルといえど、不意を突かれれば対応できないほどに……

メルヴィルはキノに突き飛ばされ、マウントポジションを取られた


キノ「ぐ、ああああぁぁぁぁぁ!!」


キノがその拳をメルヴィルの顔面へと撃ち込む

1発、2発、殴られるごとにメルヴィルの体がビクンと跳ねた。

メルヴィルはかつてない命の危険を感じた。なにか、なにか打開策は無いのか

あった


 キノの身体能力(70)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→メルヴィルの反撃に気付き本能で飛び退く
 失敗→メルヴィルの銛を腹に喰らう
 


メルヴィル「こ、の――!」

キノ「ッ!」バッ


キノは飛び退いた。メルヴィルの右手に銛が握られているのを見る。突き出されたその銛は、キノがそのままそこにいたら腹に深々と突き刺さっていただろう


キノ「お、んがく…………か…………あっ、あ……ああああああぁぁぁぁっ、ぐっ……ぅぅぅぅぅぅ……!!」

クランテイル「(クッ……一体……なんなんだ、コイツは……!!)」

メルヴィル「(コイツ……殺す…………!)」


 身体能力(56+15=71)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→ペチカを助け出す
 失敗→接近が察知される
 


「オイ」

メルヴィル「ッ!?」


メルヴィルはペチカも何もかもを放り出してそこから飛び退いた。首にかつてないほどの殺気を感じたからだ

今まで居た場所を、ブォンと太刀が通り過ぎていく


メルヴィル「シャナ……!」

シャナ「テメェ…………………………テメェ………………!!」

クランテイル「あれは……!」

シャナ「ペチカ様に何してんだテメェはぁぁぁぁーーーー! このクソがあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」


メルヴィル「くっ……こげな……!」

シャナ「テメェェェェェェェェェ!!! ぶっ殺してやる!!!! 死ねぇぇぇぇぇ!! しねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」


シャナの恐ろしいまでに的確な斬撃がメルヴィルを襲う。メルヴィルは今ならまだペチカを掴んで逃げることができた。が、シャナの怒りがそれを許さない。今度こそメルヴィルは大きく飛び退いた

すぐさまシャナはペチカの腕を掴み、コートの前を開け消える。その後はもう全力疾走だった


ペチカ「シャナ……さん……!」

シャナ「お怪我はありませんかペチカ様……ああっ、野郎……! ペチカ様の服が汚れてるじゃねぇか!! 殺す!!」

ペチカ「……も、戻してください!」

シャナ「っ、なにを!?」

ペチカ「私…………何もできなかった……リオネッタさんが死ぬのも、キノさんがやられるのも……怖くて、動けなくて……黙って見てて……!」グスッ

シャナ「(ッ、リオネッタが死んだ……か…………キノは死んでないみたいだが、さっきのはなんだ?)」


ペチカ「もう……私、足手まといだけじゃ嫌…………戻って、戦いたい!」

シャナ「っ……ペチカ様………………」

ペチカ「あとそのペチカ様ってやめてください」

シャナ「ペチカ様、あなたは戦う魔法少女じゃない……あなたには、戦ってほしくない。お願いです」

ペチカ「そんなの、いや……!」

シャナ「私は戦える。だから戻って戦う。だけど、あなたは……あなただけは……こっち側に来てはいけない」


 知力(52+15=67)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→ペチカは泣きながらシャナの胸に顔を埋めた
 失敗→ペチカの考えは変わらない
 


シャナ「魔法少女は……戦うための存在じゃない。清く正しく美しく……強さなんて必要ない。魔法少女は希望なんです……そして、あなたは私の希望なんです」

ペチカ「…………なん、で……そんなに……」

シャナ「私を助けてくれたから……私にとって、あなたは本当の魔法少女」

ペチカ「っ……グスッ、う……でもっ……悔しい……!」

シャナ「仲間を殺された……気持ちは分かります。だけど、復讐心なんて持つもんじゃない。その先に待つものは……途方もない闇なんですから」

ペチカ「う、っ……あ……リオネッタ、さ…………うわあああぁぁぁぁぁぁぁん!!」

シャナ「……大丈夫…………仇は、とります」

シャナ「(私は自分の気持ちに折り合いをつけられなかった。だけどあなたは……できる。まだあなたには、仲間がいる)」

シャナ「(ペチカ様授乳プレイ)」


シャナはペチカを荒野の街へ置くと、全速力で戻った。野郎ぶっ殺してやる

>>900
×→シャナ「(ペチカ様授乳プレイ)」
〇→没台詞だから無かったことにして



記憶の扉が開いていく。もっと……もっと、開いて……くれ……


キノ「……くら……テイル……」

クランテイル「キノ、無事か!?」

キノ「銃……私の、銃……で……撃って……私の、こと……」

クランテイル「っ、なにを……」

キノ「体に、力……入らなくて…………お願い……」

クランテイル「……分かった。恨むなよ」


クランテイルが残り3発をキノに撃つ。キノはそのすべてを受け、思い出した

自分は、本当は――


・・・・・・


キーク「おっ! 見てよファル! キノ復活だよ!!」

ファル「どうしてそんなに嬉しそうぽん?」

キーク「推しキャラの激アツシーンなんだから当然でしょ!」

ファル「…………」

キーク「ん? お、いいところに……いらっしゃーい!」

リップル「…………」

スノーホワイト「……」

キーク「っ、スノーホワイト……(だ、大丈夫だよね、声とか裏返ってないよね……サインちゃんと貰わないと……あ、でもまずは決め台詞……)」

キーク「始めましてスノーホワイト。ようこそ、あたしの世界へ」


・・・・・・


メルヴィル「殺、す……!」

クランテイル「ああ、来い。私がお前を殺してやる! 魔王!!」


メルヴィルの戦法は人質をとりつつの各個撃破だった。だが、それは半壊している

後に残されたのは増援が来ないうちにクランテイルとキノを仕留める。幸いキノは倒れたまま動かない。ならばクランテイルを……

魔法が弱くなっている。色の操作がうまくいかず、透明になろうとしてもうっすらと見えてしまうのだ


 メルヴィルの数値……>>↓1コンマ二桁
 クランテイルの数値……>>↓2コンマ二桁
 
 メルヴィルの数値が勝っていた場合……クランテイル戦闘不能(40以上上回っていた場合撃破)
 クランテイルの数値が勝っていた場合……時間稼ぎ完了(40以上上回っていた場合撃破)

というより...明らかに消耗してる方とそうでない方で差が作られないよね、不意打ちとかでこちらのコンマは下げられるけど相手は消耗していようと下がらない


クランテイルが動く。彼女はシールド+10を持っている。果たして、メルヴィルは自分の持つ武器+10と力の護符で倒せるかと思案した

馬の速力は人間のそれより遥かに優れている。間合いを詰めるのは容易だが、クランテイルは四苦八苦していた

メルヴィルの弓から放たれる銛は非常に強力で、避ければ地面にクレーターが出来、シールドで受け止めても角度をつけて受け流さなければ簡単に吹っ飛ばされてしまうほどに

だが、クランテイルには切り札がある。彼女は見た動物にならなんでもなれるのだ


クランテイル「(ペチカは逃げてくれた……よかった……彼女さえ生きていれば、後は……!)」

メルヴィル「ッ!?」


なんとか距離は詰めた。十分だ。下半身をグレートドラゴンに変化させ、その爪をメルヴィルに振るう。これを喰らえばいかにメルヴィルといえど――

そんなクランテイルの思惑は、器用に爪の間を飛んできた銛によって、暗闇へと閉ざされた


キノは見た。爪を避けながら銛を発射するメルヴィルを


キノ「(なん、で……クソッ! 動け……動けよ……くっそおお……!!)」


キノの脳は解き放たれた記憶の濁流にダメージを受けていた。首から下の感覚が薄く、戻って来てはいるもののゆっくりだ。キノは自分の無力さに唇を噛み、一筋の血筋を顎に作った


シャナは見た。頭を銛に貫かれ、ダランと力なく崩れ落ちるクランテイルを

あれはクランテイルだよな? クランテイルだ。あれはペチカのパーティーで、あれは……ペチカ……の……


シャナ「クッソオオオオオオォォォォォォ!!!!」


太刀を抜き放つ。メルヴィルは既にこちらに気付いている

構うもんか。お前だけは仕留めてみせる

コートを取っ払った


メルヴィルは、残ったキノを見てゆっくりと歩みを進めた

クラムベリーは見てくれているだろうか。あっという間に2人殺した。強い相手を打倒した

この場にいるのは自分とキノだけ。あとはコイツを倒せば……


 メルヴィルに飛びかかったのは……>>928
 
 1.シャナ
 2.ラズリーヌ
 3.@娘々


 メルヴィルへのトドメは……>>936
 
 1.唐竹
 2.袈裟斬り
 3.グリムハート
 4.心臓突き

 
 
 そのレスのコンマで身体能力(56+15+5+20=76)ロール(不意討ちのため+20)

 
 成功→決まった
 失敗(ファンブル)→避けられた
 


 83……成功!
 ※合計値記載ミス ×76→〇96

 
 
メルヴィルは自分の胸を貫く冷たい鉄の感触を味わった


そして思い出した。自分は駆けてくるシャナがコートを脱ぎ捨てる姿を見たのを


メルヴィル「ガ………………ッはっ……!」

シャナ「………………テメェは……ホントに……死ねよ……!」

メルヴィル「しゃ、な……!」


グリ、と45°太刀を捻る

メルヴィルは断末魔も上げずに力尽きた


足をメルヴィルの体にかけ、深々と刺さった太刀を抜く。反動で少し後ろによろめいた

クランテイルを見る。悔しさで胸が張り裂けそうだ。ペチカになんて言えばいい


シャナ「……っ、う………………」グスッ

キノ「………………シャ、ナ……」

シャナ「っ、お前……」

キノ「……お願い、あと少ししたら……私は全部忘れる。だから、もし私が死んだら……師匠に……リップルに、『ごめんなさい』って……」

シャナ「……魔王は死んだ。自分で伝えろ……というかお前そんな柔らかいキャラだったか?」

キノ「…………はは……」


プフレ「……………………どうやら、魔王は死んだ……のかな?」

シャドウゲール「そのようですが……何故隠れて見ているのですか?」

プフレ「……………………ファル」

ファル「なんだぽん?」

プフレ「魔王が死んだらゲームクリアなんだろう?」

ファル「そうだぽん」

プフレ「もうゲームは終わるのか?」

ファル「……………………」

シャドウゲール「ファル、そう、でしょう? だって、メルヴィルは魔王で……終わったらゲームクリアで……」

ファル「…………まだ、ゲームは続いてるぽん」


プフレ「護、魔王城に戻ろうか」

シャドウゲール「えっ」

プフレ「……仮に、メルヴィルが魔王でない場合の可能性を考えていた」

シャドウゲール「っ……」

プフレ「魔王はメルヴィルを除いた我々の中にいることになる。記憶を取り戻した我々が狙うのはメルヴィル。彼女はそれを読んでペチカを人質にしたのだろう」

シャドウゲール「なんでメルヴィルが魔王じゃないんだ……」

プフレ「さぁね……そして魔王の目的は我々の殲滅だ。こちらが潰し合っているのを陰であざ笑う奴だ。そしてそれはまだ誰かも分からない……ならば、誰かと一緒にいる必要は無い」

シャドウゲール「………………お嬢は」

プフレ「ん?」

シャドウゲール「……お嬢は、魔王じゃない……ですよね……?」

プフレ「…………当然だろう」


ベル「シャナ、キノ!」

シャナ「(ベルに……ラズリーヌ……)」

@娘々「シャナ……」

シャナ「ッ、@娘々! 生きていたのか!」

@娘々「うん……」

シャナ「(……?)」

キノ「………………」ムクッ

シャナ「やっと起きたか。リップル師匠への伝言はナシだぞ」

キノ「ッ、リップル……! 何故お前が……それにリップルは師匠じゃない!」

シャナ「……(なるほど、もうすぐ忘れるって言ってたのは本当だったわけだ)」


シャナ「ペチカ様を迎えに行ってくる。皆は…………そういえばプフレとシャドウゲールは?」

ラズリーヌ「あれっ、さっきまで一緒だったんすけど……」

ベル「本当だ……こっちが先を走ってたから置いてきちゃったのかな」

シャナ「そうか。まぁいい。色々話したいことはあるが、まずペチカ様だ……」

ラズリーヌ「というか何でシャナは下着姿なんすか?」

シャナ「うるせぇな事情があんだよ!!」


怒りに任せてコートを拾い羽織る。とりあえず全員が荒野の街へと移動した


キノ「(……そうだ、プフレ……迎えに行くべきか)」


 >>948
 
 1.行く
 2.行かない
 

2


 今日はここまで

 >>922確かにその通りだったので次からは考慮したコンマ数値となります
 次も多分1人~何人か死にそう……

 アアアアアアアアアアアアアアァァ!!クランテイル死んだ!!ナンデ!??ンアアアアアアアアア!!ケツ出せ颯太ァ!!!!


キノ「(……まぁ、あの2人なら大丈夫か)」

シャナ「ペチカ様! ペチカ様ー!!」

ペチカ「……シャナ、さん?」

シャナ「よかった……ちゃんと隠れていたんですね」

ペチカ「他の人達もいる……あれ、でも……」

シャナ「ッ…………あ、えと……」

キノ「…………クランテイルは死んだ」

ペチカ「え……」

シャナ「て、テメェ!」

キノ「言わないでどうする……死んだよ。クランテイルは、メルヴィルに殺された。私は全部見てた」


再び泣き出したペチカが泣き止むまで、シャナは10分を要した


ラズリーヌ「シャナのコート、随分汚れてるっす。洗ってきたらどうすか?」

シャナ「さっきこの下を見た上でその言葉を吐いてるのか? それにペチカ様の鼻水は回復薬にもなる」

ファル「そんなシステム無いぽん」

ベル「でもペチカは1度顔を洗った方がスッキリするよ。噴水に行こう。あそこなら水もある」


そうだ。このゲームが始まった時、枯れ果てた街だと思っていたのに噴水の水は絶え間なかった。ログアウト前の招集の時にも常に水をたたえていたから、そこで少し色々と考え直す必要があるだろう

とりあえずベル達にメルヴィルを倒した経緯を話しながら進む


キノ「………………魔王は倒した。なら、このゲームは3日目のログアウトでおしまい?」

ベル「どうなんだろう……その辺の説明が無かったね。魔王を倒したのならゲームクリアだけど」

ラズリーヌ「そうっすよね? ファル」

ファル「そうだぽん。魔王を倒せばゲームクリアだぽん」


 知力(52+15=67)ロール……直下コンマ二桁
 
 成功→私達はゲームクリアしたのかとファルに聞く
 失敗→魔王は倒した。3日目を待とう
 


 07……クリティカル!
 クリティカル報酬 知力が1上がった!(53)

 
 
シャナ「………………ファル、魔王を倒した私達はゲームクリアでいいんだよな?」


ファル「魔王を倒した者はゲームクリアだぽん」

シャナ「……? 100億円は私のものでいいんだよな?」

ファル「魔王を倒したプレイヤーが100億円ゲットぽん」

シャナ「………………?」

ラズリーヌ「いやーシャナ100億っすか! 羨ましい~……あ、今度一緒にラーメンどうすか!? この前カレーラーメンっていうのを教えてもらって――」

シャナ「……ファル、私達はゲームクリアしたのか?」

ファル「…………魔王を倒した者はゲームクリアだぽん」

シャナ「(なんだ? ファルは定型文しか喋れないマスコットじゃない……だが、今までの言動から、私達のことを気にかけてくれてるはずだ……)」


シャナ「(魔王を倒すってこのゲームの目的が果たされたなら、その瞬間ファンファーレが鳴ってファルがおめでとうくらい言ってきてもいい。それが無い……このゲームを作った奴が相当のクズとはいえ、クリア条件を達成した時に分かりやすくクリアとか言ってくるだろ……)」

シャナ「…………ファル、魔王はまだ生きてるんだな?」

ファル「…………」

シャナ「違うなら、否定してくれ」

ファル「…………」

シャナ「……………………クソッ……!」

ベル「……まさか………………!」

ラズリーヌ「ベルっち、顔真っ青っすよ?」

ベル「…………ラズリーヌ、魔王は……まだ生きている」

ラズリーヌ「えっ、でもメルヴィルはシャナが倒したって」

シャナ「(メルヴィルは確実に殺した。身代わり君があるかもしれないと5分待ったが復活しなかった。確実に殺した……なら……なら……!)」

シャナ「……魔王は、メルヴィルじゃないんだ」


キノ「な……!」

ラズリーヌ「マジっすか!?」

シャナ「(メルヴィルじゃない……なら、誰だ!? 生き残っている連中の1人……)」

ベル「……考えたくないけど、今魔法の端末を見たら、プフレとシャドウゲールが図書館エリアから魔王城に向かっている」

ラズリーヌ「魔王が潜んでいるのを見抜いたっすか!」

@娘々「…………もしかして、プフレ達が……」

キノ「プフレかシャドウゲール……どちらかが魔王……?」

シャナ「(確かに、あれだけ頭がキレる奴なら誰に怪しまれるわけも無い…………だが………………)」

シャナ「……違う。プフレは私達の中に魔王が居るって分かったんだ。だから奇襲を喰らわないために、私達から一番離れた場所に向かった……」

キノ「…………頭いいな」


噴水広場に着いたが、水は無かった

前回まで湧き出ていた水は無くなり、枯れた噴水がそこにあるだけだ


シャナ「噴水から水が無くなってる……」

@娘々「……グラフィックの手抜きアルか?」

シャナ「さぁ……申し訳ありませんペチカ様。私が持ってる回復薬で顔を洗ってください」

ペチカ「い、いやいいです……」

ベル「……………………」

キノ「……ベル、そんなに離れてると危ない。まだ誰かが奇襲を……」

ラズリーヌ「……ベルっち?」

ベル「……………………この中の、誰かが魔王なら……なんで一緒にいられるのさ……」


シャナ「ッ……!」ジリ

シャナ「(そうだ……誰かが魔王なんだ……)」

シャナ「(ベル、ラズリーヌ、@娘々、キノ…………もしかしたら………………ペチカ様……)」

キノ「…………(この中に、魔王? ……プフレが言っていた。魔王はこのゲーム参加時に既に自分が魔王であることを知っていて、他の参加者を全滅させるために動いていると……)」

キノ「(…………)」チラ

シャナ「………………」

キノ「(…………でも、それはメルヴィルだけで……魔王にも本当は自分が魔王であると伝えていられなかったら……誰かが、無自覚に魔王なんだ……私でさえも……)」


荒野の街にいるシャナ、キノ、@娘々、ディティック・ベル、ラピス・ラズリーヌ

魔王城へと退避したプフレ、シャドウゲール

その内の誰かが魔王なら……


 シャナ達は……>>直下コンマ一桁
 
 奇数→ここにいる誰かだと疑い始めた
 偶数→プフレ達のどちらかが魔王だと疑い始めた


シャナはざっと皆を見た。誰も彼もが同じ顔をして、誰も彼もがお互いの手が届かない距離をとっている

この中の、誰か……なら、誰だ。消去法を用いよう………………駄目だ。皆疑わしい。どんなに皆に貢献しようと、どんなに皆と仲良くしようと、それがすべて演技でないという可能性は捨てきれないのだ

そんな時、プフレから全員にメールが届いた


『魔王は自分で手を下すタイプではない。ファルと問答して色々とヒントを得た。魔王はゲーム開始時から自分を魔王だと知っているし、常にプレイヤーの仲を裂こうとしてきた。私でもまだ正体は分からない。そして断じておく。私とシャドウゲールは魔王ではない』

シャナ「(…………プフレの言うことを信じていいのか? さっきはああ言ったが、それもプフレの計算だったら……)」

シャナ「(このメールの文すべてが嘘だったら、私達はただプフレの掌で踊らされているだけに……)」

シャナ「(それに、自分で手を下さない……まさにプフレだ。だが、そんなプフレが1歩間違えたら死ぬようなチェルナーとの決闘なんかするのか? それにわざわざシャドウゲールを庇う文まで……)」


 知力(53+15=68)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→ファルに確認をとる
 失敗→だめだ、思考が……
 


シャナ「(クッ……だめだ…………疑わしい……誰も彼もが……!)」ギロッ

キノ「……お前……!」

シャナ「そんな目で見るな……私は、魔王じゃ……」

ラズリーヌ「でもプフレの言うことが本当なら、魔王には自覚があるはず! 自分が魔王じゃないって人、手をあげるっす!」ビシッ

ベル「ラズリーヌ……プフレの言うことを前提として、魔王はラズリーヌみたいに皆と仲良くしながら裏から手を引いていたんだよ? 今更私が魔王ですなんて言うはずないだろう……」

ラズリーヌ「え……べ、ベルっち、疑ってるっすか!?」

ベル「……ラズリーヌ、君は仲間なのか? それとも……」

ラズリーヌ「なっ、そういうベルっちこそ……!」

@娘々「…………」

シャナ「(@娘々の様子もおかしい……今までとまったく違う…………もっと明るかったはずだ……@娘々、お前が魔王なのか?)」

キノ「(……分からない…………どうすればいい…………)」


ベル「そもそもラズリーヌは最初からおかしかったんだ! なれなれしくて、現実でも仲良くしてきて……!」

ラズリーヌ「リアルで会いに来たのはベルっちの方っす! もしかしてベルっち、魔法少女じゃ勝てないからって人間の時を不意討ちするつもりだったっすか!?」

ベル「ッ、なんでその話を知ってるんだ!!」

ラズリーヌ「えっ、ベルっち……本当に……?」

ベル「あ、ち、違う! それは、クラムベリーの試験の時の話で……」

キノ「……ベル」

ベル「違うって言ってるでしょ!」

シャナ「(……ペチカ様)」チラッ

ペチカ「……っ」ビクッ

シャナ「(魔王は自分が手を下すタイプじゃない……ペチカ様はきっと、今まであの3人に守られてきたはずだ……自分で手を下さず……)」


 精神力またの名を愛(97)ロール……>>直下コンマ二桁
 
 成功→いや、ペチカは違う
 失敗(ファンブル)→ペチカが……魔王?
 

一旦ここまで 金ローが終わったらまた
疑うのは練習しなくてもできる……なんでだろう

【まほいく安価】キーク「18人目はクリアしてくれる」【魔法少女育成計画restart】
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