寛容植物「まあまあ……許してあげるべきですよ」 (28)


男「ただいまー!」ビッショリ…

男「あーっ! くそっ!」

男「あのクソ天気予報、なーにが『傘はいらないでしょう』だ!」

男「スコールばりのどしゃ降りだったじゃねえか!」

男「頭から足までずぶ濡れだ! ふざけんなってんだ!」

寛容植物「まあまあ……」

男「!」


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寛容植物「いくら気象予報の技術が進歩しても、天気を100%正確に予想するなど不可能です」

男「そりゃそうだけどさぁ……」

寛容植物「それにあなた自身、天気予報でひどい目にあうことより」

寛容植物「天気予報に助けられたことの方が多いのでは?」

寛容植物「もし、この世に天気予報がなければ、あなたは常に傘を持ち歩かねばならないことになる」

男「まあ、そうかもしんないけどさ……」

寛容植物「許してあげるべきですよ」

男「お前がそこまでいうなら……まあしょうがないか」


男「ただいまー!」

男「どれ、コンビニ弁当でも……」ガサゴソ…

男「あーっ!」

男「あの店員、箸入れ忘れてやがる!」

男「ったくぅ~、俺自前の箸持ってないってのに……」

男「今度会ったら文句いってやる!」

寛容植物「まあまあ……」

男「!」


寛容植物「店員さんだって人間です。箸を入れるのを忘れることくらいありますよ」

男「そりゃあるだろうけどさぁ……」

寛容植物「それに、箸がなければ他の食器で食べればいいではないですか」

男「幕の内をスプーンで食えと?」

寛容植物「食べられないことはないでしょう」

寛容植物「普段と違う食べ方をすることで、新鮮な気持ちで食べられるかもしれません」

男「うーん、そういう考え方もあるかもしれないな。やってみるか」


男「ただいまー!」

男「ったく、聞いてくれよ」

男「俺の先輩、めんどうな用事はすぐ俺に押しつけてくんだぜ!?」

男「ムカつくったらありゃしない!」

寛容植物「まあまあ……」

男「!」


寛容植物「先輩だって、あなたのことを思ってやっているのですよ」

男「そうかなぁ? 絶対違うと思うぞ」

寛容植物「違うとしても、任せられていると思うのと、押しつけられているのと思うのでは」

寛容植物「やる気はもちろん、仕事の能率も変わってくると思います」

男「そりゃそうだな」

寛容植物「ならばいっそ、先輩の押しつけを完璧にこなし」

寛容植物「自分の仕事っぷりを見せつけてやるぐらいの気持ちになる方が健全です」

男「なるほど!」


男「ただいまー!」

男「今日は宝くじの抽選会……どれどれ……」

男「……」

男「あーっ、くそっ! かすってもいねえじゃん! 30枚も買ったのに!」

男「こんなもの、こんなもの!」ビリビリッ

寛容植物「まあまあ……」

男「!」


寛容植物「当たらなかったからといって、宝くじにあたるものではありません」

寛容植物「宝くじは当たる確率の方が遥かに低いのです」

男「そりゃそうだけど……」

寛容植物「それに、抽選を待つまでのあのドキドキ感……あれは本物だったはず」

寛容植物「ならば外れた宝くじには、今まで楽しませてくれてありがとう、と感謝すべきです」

男「そういうもんかな」

寛容植物「そういうものですよ」

男「なんか、破った宝くじに申し訳ない気持ちになってきたよ……セロテープで直そう」


男「……出前おせーなー!」

男「頼んでから、もう一時間ぐらい経つぞ!」

男「かけそばなんてそんな時間かかるもんでもねーだろ!」

男「もしかして忘れてんじゃねーか? 電話して催促してやるか……」

寛容植物「まあまあ……」

男「!」


寛容植物「店には店の都合があります。もう少し待ちましょう」

寛容植物「催促したら、向こうが焦ってしまい、味が悪くなってしまう可能性もあります」

寛容植物「結局あなたの首を絞めることになります」

男「うーん、たしかに」

寛容植物「むしろ、この待つ時間をもっと大切にすべきです」

寛容植物「待てば待つほどお腹がすき、おいしくご飯を食べられるのですから」

男「空腹は最高の調味料っていうしな!」

ピンポーン

男「お、来た!」


男「ただいまー!」

男「いやー最近、俺さ、周囲からの評判よくなってきたんだよ」

男「前はいつもイライラしてる感じだったけど、ずいぶん性格が穏やかになったってさ」

寛容植物「それはそれは、おめでとうございます」

男「黙々と仕事こなしてたら、先輩の押しつけも少なくなったしな」

男「これもみんな、お前のおかげだよ」

男「ありがとう」

寛容植物「いえいえ」


男「たださ、みんなと仲良くなったはいいんだけど」

男「困ったことになっちゃってさ」

寛容植物「ほう、どうしたんです?」

男「みんなで食事や飲み会に行く回数増えたから、ちょっと金がないんだ」

寛容植物「おやおや、それは困りましたね」


男「だからさ……」

男「来月だけ、お前の鉢植えに置いておく肥料、ランク落としていい?」

寛容植物「いいわけねェだろうが、このクソガキャァァァ! ブチ殺されてーのか!!!」

男「……」





おわり

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