女「私さ…」男「そっか」 (22)


もっと触って

もっと確かめて

私の存在を証明して

それができるのは貴方だけ

それが分かるのは私だけ

ほら雨が降り出した

この雨みたいに混ざり合おう

ずっと一緒に

永遠に



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女「あ、雨だ…やだなぁ」

男「どうして?」

女「だってさ、つまんないじゃん」

男「何が?」

女「外に出るのも面倒だし気分も落ち込むじゃん」

男「そうかな」

女「男はそうじゃないの?」

男「僕は好きだよ、雨」

女「ふーん…」


私は雨が嫌いだ

何よりも濡れるのが

気分が沈むのが

鬱々とした感情が押し寄せてくるのが

彼はなんで雨が好きなんだろう?



女「ねえ、男はどうして雨が好きなの?」

男「どうして、か…。うーん…雨の音かなぁ…ぽつぽつ、ざーざーって感じの」

女「どういうこと?」

男「雨の音を聞いてると落ち着くんだ。だからかな。あと雨の時に気分が沈むって言ったじゃん?」

女「うん」

男「僕はそれが心地いいんだよね」

女「うーん…よく分かんないや」

男「これで分かるなら女も雨が好きだろうしね」

女「あ、確かに。で、どうやって帰ろうか?」

男「実はここに折りたたみ傘があってね
…?」

女「あっずるい!半分入れて!」

男「言うと思った…いいよ」

女「ありがと」


雨が好きな理由はよく分からなかったけど

一緒に帰れるし何でもいいや なんて思った


女「ありがとね、良かったら寄ってく?少し濡れてるでしょ?」

男「あー…でもさ…」

女「今日さ、ウチ親いないんだよね」

男「もっとダメじゃん。じゃ、また明日ね?」

女「うん…また明日……」


私に魅力が無いのかな…

どうしてだろう…

ちょっぴり悲しくなった


男「おはよ」

女「……ん」

男「なんかあったの?」


お前のせいだよバーカ!

って言ってやりたい気持ちもあったとか



女「男…一緒にご飯たべよ…」

男「あーちょっと待ってて、パン買ってくるから」


昨日のことは何だったのか

少し聞こうと思ってお昼に誘った


男「お待たせ」

女「買えた?」

男「それがさ、ほとんど売り切れで1個だけ…」

女「なにそれ、私のお弁当少し分けてあげるよ」

男「いいの?」


女「ここの教室は誰もいなくて良いね」

男「そうだね」

女「っと…はい」


お弁当箱のフタに乗せて男に渡す



男「ありがと…ほんと助かる」

女「気にしないで。はい、これ使って」

男「あ、ありがと」


男「わ…めっちゃ美味いこれ…誰が作ってんの?」

女「私だよ」

男「すごい…料理が上手いっていいね」


やった褒められた

これだけですごく満たされた気分になった


男「ごちそうさまでした」

女「お粗末さま」

男「って…女は食べてないじゃん」

女「お箸が一膳しか無かったから」

男「そうだったんだ…ごめんね、ありがと」

女「いいよ別に。いただきまーす」

男「待ってそれって間接キスじゃん、いいの?」

女「男となら良いかなって」

男「気にしないの?」

女「気にしないよ?」

男「ふーん…」

女「あ、誰でも良いってわけじゃないからね?」


念のためにね

これはちょっとドキドキした


女「ごちそうさまでした…そうそう、聞こうと思ってたことがあるんだ」

男「……なに?」

女「昨日さ、ウチに寄っていかないかって言ったじゃん?」

男「そうだね」

女「なんであれ断ったの?」

男「いやそれは…迷惑かなって思ったしそれに…」

女「それに?」

男「やっぱり上がっちゃいけないかなって思って」

女「なにそれ。迷惑ならあんなこと言わないよ」

男「そっか…」

女「それにね、誘ったのは男だからだよ?誰にでも言うわけじゃないんだからね?」

男「え……それって…」

女「私にこれ以上言わせるの?」

男「あー………ごめん…」

女「それでどうなの?」

男「ううん…少し考えさせてもらって良い?」

女「なにを?」

男「返事を」


失敗しちゃったかな

ああつらい

こんなにつらいものなんだ


男「あ、おはよ」

女「………ん」

男「あのさ、良かったら今日、一緒にお昼食べない?」

女「今日はいいや…ありがとね」


なにしてんだろ

せっかく誘われたのに


男「あ、女…帰らない?」

女「あ……うん」


男「なんか今日もすっきりしない天気だね」

女「………」

男「あはは……」

女「………」


こんなはずじゃなかったのに

なんて言い訳がましいな

こんな時でも明るく振る舞えたら良いのになあ



男「あのさ…昨日の返事なんだけど…」

女「………たくない…」

男「女…?」

女「聞きたくない……」


バカみたい

拗ねるなんて


男「女が聞きたくなくても僕は言いたいから言うよ」

女「っ……!」

男「あのさ…考えたんだけ」

女「やめて!聞きたくない!!」

男「どうして?」

女「……だって…私が思ってる答えと違うから…」


なぜか泣きそうになって

それで下を向いていた私の手を

男の手が優しく包んだ



女「………なんのつもりよ…」

男「これは女が思ってた答えと違うの?」

女「バカ…バカ……違うわけ…ないじゃん……」


涙が一粒 地面に落ちた


女「私ね…」

男「うん?」

女「振られるんじゃないかって思ってたんだ」

男「どうして?」

女「私が誘っても断られたから…魅力がないのかなって」

男「それは昨日も言ったじゃん、良くないって思ったからだよ」

女「良くなくない!!私がどれだけ勇気を出したと思ってるの!?」

男「そうだね…ごめんね」


女「あ、そうだ。良くないって思ったってどういうこと?」

男「付き合ってもなかったからね、お堅いかな」

女「堅いと思うけど…その方が好きかな」

男「あはは、よかった」


女「じゃ、また明日ね」

男「うん、また明日」


今日も誘いたかったのだけど

男が用事があるみたいだったから断念した


女「ね、お昼食べよ」

男「いいよ、少し待ってて」

女「またパン?」


女、男「「いただきまーす」」

女「卵焼き…いる?」

男「いいの?」

女「うん、はいあーん」

男「………うん、なんていうか…これは恥ずかしいね」

女「うん…美味しい?」

男「そりゃもう」

女「あのさ…良かったらこれから私がお弁当作ろっか?」

男「いやそれはさすがに申し訳ないよ」

女「私が作りたいの」

男「…そっか、じゃあお願いします」


お弁当を作る、なんて

カップルみたいでワクワクしちゃう


男「あーまだ雨止んでない…どうしようか?」

女「傘あるんでしょ?帰ろうよ」

男「わかった」

女「傘入れてくれる?」

男「いいよ」


この前みたいに傘に入る

男の手に私の手を伸ばしてみる


男「どうかした?」

女「手……つなご」

男「うん」


優しく 力強く 私の手を包んでくれた


女「私ね…雨、好きになったよ」

男「そっか、よかった」

女「男さ、ちょっと濡れてない?」

男「いやそんなに…あぁいや、濡れてるよ」

女「えへへ。ウチ、寄ってく?今日、親いないんだ」

男「あー…それじゃお言葉に甘えて」


男「お邪魔しまーす…」

女「そんなに気を使わなくてもいいのに。とりあえず部屋行こ?」


部屋に招く

それがこんなにも緊張する行為だって知らなかった


男「あぁ…何というか…」

女「何というか?」

男「やっぱり女の子なんだなって」

女「なにそれ、あんま見ないでね?恥ずかしいから」

男「それ矛盾してない?」

女「まあいいじゃん、タオル持ってくるから少し待ってて?」


タオルを取りに行くついでに水を飲む

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる


女「はい」

男「あ、ありがと」


女「はい」

男「あ、ありがと」


男「助かったよ。このタオルどうしたらいい?」

女「私が持ってくよ。なんか飲み物いる?」

男「いいの?」

女「いいよ。好きな飲み物とかないの?」

男「女が飲みたいのでお願い」

女「ん」


ヤカンに水を入れて火にかける

お湯が沸くまでが

長く感じるのは

気のせいだろうか

それとも悪魔のせいだろうか


女「お待たせ、紅茶だよ」

男「ありがとね」

女「ミルクとかいる?」

男「ううん、このままで」

女「あ、私と一緒だ」


何となく気まずい

話題がない

どうしよう


男「………」

女「……あのさ…」

男「な、なに?」

女「私たちってさ、付き合ってるよね」

男「うん」


何を言い出すんだ私の口は


女「じゃあさ…」


ちらっとベッドに目をやる


男「あー………」

女「ダメ?」

男「ダメじゃないけど…」


男の顔が近づいてきた

目を閉じる

心臓が止まっちゃうんじゃないか

それぐらい激しく動いていた


女「ん……」

男「はっ……」


なにこれ

すごい

こんなに幸せなものが

今までにあっただろうか


女「じゃあさ…」

男「うん」





女「私ね…雨、好きだよ?」

男「そっか。どうして?」

女「だってこんなに幸せなんだもん」

男「僕も」


そうして2人でそっと笑った



おしまい

以上です。乙やいいねって言ってくれる方ありがとうございます。返信はしてませんが励みになります。


次の話からは少しテーマが変わって、重め暗めの話になります(該当するところでも警告はしますが念のため)。苦手な方はご注意ください。ではまた。

>>14,15が一部被ってました、すみません。

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