渋谷凛「賢い二択の提示法」 (13)


スマートフォンの電源を落とし、顔を上げる。

時計を見やると針は午後3時を指していた。

おやつの時間。

しかし、2時間後に撮影の仕事が控えているから、そうもいかない。

はぁ、と溜息をこぼして事務所のソファに全体重を預けた。

暇だ。

誰かと話して、暇を潰そうにもプロデューサーは仕事中だしなぁ。

なんて思案していると、事務所に奏がやってきた。

「あら、凛じゃない。どうしたの? ご主人様を待ってる子犬みたいよ? ふふっ!」

「んー、別に。奏はなんか元気だね」

「理由、聞かせてあげるわ」

奏はそう言って、私の隣にどかっと座る。

どうやら何か良いことでもあったらしい。


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奏は、私の了承を得る気なんてこれっぽっちもなくて、話したいから話すって感じだった。

もちろん、人の話を聞くのは嫌いではないし、ちょっとした収穫もあった。

まず、奏がうきうきしてた理由は、今日の仕事帰りに奏のプロデューサーとご飯に行くらしい。

道理で浮き足立ってると思ったんだよね。

こんなこと言うと、奏は必死で否定しそうだけど。

次に、収穫の方はというと、ちょっとした技術を伝授してもらったんだ。

曰く、「実質一択の二択を提示するのがコツよ」とかなんとか。

二人がご飯に行くことになった経緯は、奏のサインを奏のプロデューサーがばかにして、それで拗ねた奏がお詫びを要求したんだとか。

そのときの要求が、キスor高級ディナー。

なるほどなぁ、って感心しちゃった。

「お詫びはキスかちょっと高めのディナー、お好きな方をどうぞ? ふふっ!」とでも言ったんだろうなぁ。

そう思ったら少し、笑えてきた。




撮影を終え、スタジオを出ると辺りは真っ暗だった。

肌を刺すような寒さに思わず、マフラーに顔を埋める。

やっぱり夜になると一段と冷えるなぁ。

タクシーで帰ってもいいけど……ちょっとの距離だし、歩くとしよう。

そう意を決して、通りへ踏み出したところ、軽快なクラクションが私を呼び止めた。

プロデューサーだった。




「迎えに来てくれたんだ」

「丁度、ついさっき仕事終わってな」

「ふふっ、そっか」

助手席のドアを開けて、車に乗り込む。

私がシートベルトを締めたら、いざ発進、のはずだったんだけど、アクシデントが起きた。

ぐぅ、と私のお腹が鳴ったんだ。

あ。そういえばお昼から何も食べてなかった。

そういえば、今何時だろ。

カーナビを見やる。

午後7時。

そりゃお腹も減るわけか。

なんて、くだらない考えばかりがぐるぐると駆け巡り、その後に状況を理解した。

「ははは、お腹空いたよな」

プロデューサーのデリカシーのない、ひとことで恥ずかしくてたまらなくなり、俯いた。

「お腹空くのは、当たり前の事なんだし、恥ずかしがることないだろ?」

なら聞かなかったことにしてくれたっていいのに。

「それにしても、お手本みたいなお腹の音だったなぁ」

追い討ちをかけてくるプロデューサーに対して、次第に腹が立ってくるきた。

「プロデューサーなんかもう知らない」

ふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向く。

この怒りは、きっと正当なもので、空腹からの八つ当たりではないと思う。

決して。




しばらくプロデューサーを無視していると、遂に待ち望んだ言葉が出てきた。

「俺が悪かったって。ほら、お詫びならするから機嫌直してくれよ」

「ふふっ。その言葉、待ってたよ」

「え。……あ、もしかして」

「もう遅いから」

さて、何を要求してやろう。

あ、そうだ。

覚えたての技術を使ってみるのはどうだろう。

奏直伝の、あの技術を。

「じゃあ、えっと、さ。二択。二択で好きな方を選ばせてあげる」

「二択? まぁ、可能な範囲でな?」

「その、ちゅーか……駅前の新発売の高級チョコ、どっちがいい?」




プロデューサーは「了解した」とだけ言って、それきり何も言わなかった。

窓の外を流れる景色はいつものものとは大きく違う。

あれ。

なんか間違えたかな。

あれ?

もしかして、まずいことになった?

え。

待って。

私はどこに連れて行かれるんだろう。

ワクワク




人生で一番ってくらい、どきどきしたドライブを経て、私は、中華料理屋に来ていた。

何故か。

私が聞きたいくらいだよ。

席に通され、お水とおしぼりをもらう。

店員さんは「ご注文の方、お決まりになりましたら、お呼びくださいませ」なんて言って、無責任にも下がっていく。

いや、店員さんに責任を求めるのはおかしいか。

そこで呑気にメニューを捲ってるプロデューサーを問いただそう。




「ねぇ、なんで中華料理屋に来たの?」

「だって中華って言ったし」

ん……?

どういうこと?

プロデューサーが何を言ってるのか、よく分からない。

「え。私、そんなこと言ってなくない?」

「いや、言ってたよ。『中華……駅前の新発売の高級チョコ』って」

あー。

なるほど、そういうことか。

これは、ちょっと想定外だったな。

「それで、中華料理屋に?」

「チョコのがよかった?」

「そういうわけじゃないけど……」

「じゃあ、どういうわけなんだ?」

「いや、あの"か"は中華の"か"じゃなくて。orの方って言うか……」

「青菜炒め、2人前にする? 1でいいかな」

「ねぇ、聞いてる?」

「聞いてる聞いてる。ほら、凛は何が食べたい?」

「あ。私、小龍包が……ってそうじゃなくて。……はぁ、もういいか」

うん。

もういい。

これはこれで悪くない、というか良いし。

高級チョコなんかより、ずっと甘くて美味しい時間が過ごせそう。

なんてね。



おわり

短いな…もうちょっと書いてくれてもいいのよ?

結局ちゅーするながれかと

俺もしぶりんとちゅーしたい

この中華料理屋にはわっほーいって言う看板娘いたりしないかな

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