歌鈴「魔法のかかる五分前」 (14)

「しゃんしゃんしゃん♪はらいたまえ~、清めたまえ~」

ほんじゅちゅ!......じゃないですね......。

本日はいつも通りの平凡な日。

誰か偉い人が来るらしいですけど、私には関係なさそうです。

夕方からトレーナーさんのレッスンがあるだけですね。

ではなんでこんなことを一人で呟いているかといいますと......。

「巫女さん......巫女さんかぁ......」

最近神社のお仕事があんまりできていないような気がします......。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1483521033

アイドルも大変だけどやっぱり実家も恋しい......。

ホームシック......という訳ではないですけど、アイドルが原因で元々の本業が疎かになってはいけません。

「私、お祓いも上手にできないしこんなので大丈夫なのかなぁ......」

なんて思って一人でお祓いの練習をしていますと......

「だ......だぁれだ......?」

「ひゃっ!な、なんでしゅか!」

突然後ろから両目を塞がれてしまいました。

もしかしておばけのしわざかもっ!なんて思いましたが今はお昼ですし多分ちがいますね......

じゃあ誰なんだろうと思いましたが塞いでいるのは両手ではなく袖のようです。

うちの事務所で袖が長いアイドルと言えば......

「こ、小梅ちゃん......で合ってます......?」

「......ぴ、ぴんぽーん。正解......だよ......?」

白坂小梅ちゃんしかいませんね。

「い、いきなりどうしたんです......?」

「あ、あのね......歌鈴さんが一人でぶつぶつ呟いてたから......お、驚かしたくなっちゃって......え、えへへ......」

......見られてたんですね、ちょっぴり恥ずかしいです......。

「な、なにしてたの......?も、もしかして......ゾンビごっこ......?」

「ち、違いますよっ!」

......ゾンビごっこって何でしょう......?

「お祓いの練習をしてたんですけど......あっ!そういえば小梅ちゃんって霊が見えるんでしたっけ?」

「そ、そうだけど......お祓いとかは......できないよ......」

すごいなぁ、ちょっぴり、いやとっても羨ましいです。

「小梅ちゃん、このあと時間あります......?」

「だ、大丈夫......だよ......」

「あ、あのもしよかったら私のお祓いがうまく出来ているか見てもらえませんか?」

そもそもお祓いがうまく出来ているかどうかすら私は分かっていません......

なのでこれを機にはっきりさせてやりますっ!

今日の私は本気ですよ!

「う、うん......それくらいなら......私にも分かると思う......」

「ありがとうございますっ!それでは早速準備してきますね!」

寮から巫女服と幣、それからおじいちゃんから貰ったお守りを持ってきました。

おじいちゃん曰く、これを持っていると悪い霊と良い霊を見極めることが出来るらしいです。

まあ私には見えないんですけどね......

「歌鈴さん、準備......できた......?」

「は、はい!それでは早速......」

と思いましたが、あの子を除霊しちゃうとまずいですね。

「小梅ちゃん、あの子は大丈夫なんですか?」

「あ、あの子は......悪い子じゃないから......大丈夫......だよ......」

なるほど......それなら安心ですね。

ふーっと一呼吸置いてお祓いをする時に唱える言葉......祝詞を唱えてみます。

「かしこみかしこみ~みそぎはらえ~たまいしときに~もろもろのけがれをはらいたまえ~きよめたまえ~」

あ、なんだかうまくいってる気がします。

ひょっとしてこれは成功なのでは......?

「あ、あとはなんだっけ......?な......なんとか~かんとか~......」

......

気のせいでしたね......

「......失敗......みたいだね......」

「は、はうぅ......やっぱりまだまだ練習しなきゃだめですね......」

今日こそは出来ると思ったのになぁ......

「で、でも歌鈴さん......前にお祓い成功してた......よね......?」

「ふぇっ、わ、わたしがですかっ!」

全く身に覚えがありません。

「う、うん......前にお掃除してた時に......歌鈴さん転んじゃったでしょ......?」

あーありましたね......

でもお掃除とお祓いに何の関係が......?

「も、もしかして箒で悪い霊をお掃除してた......とかですか!?」

まさか私にそんな力が......?

「う、ううん......そうじゃなくてね......」

あ、違うんですね......

ちょっとだけ期待してたのに残念です。

「歌鈴さんが足を取られて転んじゃったときにね......アレ......踏んでたよ......」

アレ......?踏んでた......?

「あ、アレって何ですか......?」

恐る恐る聞いて見ます。

「驚かないでね......ゆ......幽霊......だよ......」

「ふええっ、え、えええっ!?」

し、知りませんでした......

まさか無意識の内に霊を踏んづけていたなんて......

「そ、それでね......踏まれた霊は......そのまま成仏していった......よ......」

「な、なんでですかぁっ!?」

「な、なんでかは......分からないけど......歌鈴さんが転ぶときは......大体幽霊を踏んでる......よ......」

「ふぇっ、ええええええええっ!?」

あまりにも衝撃的です。

まさか私がドジしてるうちに除霊を行っていたとは夢にも思いませんでした......。

「だ、だから......お祓いの練習は......しなくても......大丈夫......かもよ......」

そ、そうなのかなぁ......。

「そ、そんなことはありません......と思います......。」

少し気弱な声で答えます。

間違ったお祓いはだめ。

おじいちゃんが昔言ってました。

「わ、私決めたんです。 私をアイドルにしてくれたPさんに、ちゃんと恩返しするためにもドジを治してしっかりするんだって」

ドジをし続けてたらお祓いの練習はいらない......

確かにそうかもしれません。

でも!そうじゃないですよね......!

みんなに認めてもらえる巫女さんになるために......

そしてPさんに安心してもらえるアイドルになるために......

「だから、少しずつお祓いもちゃんとマスターして、ドジも治していけるようにしたいなぁって、そう思うんです!」

......ちょっと熱くなりすぎちゃったかもしれません。

「へ、へぇー......歌鈴さん、すごいなぁ......わ、私も応援するから......頑張って......ね......」

「はいっ!今日はありがとうございました!」

レッスン頑張らないとなぁと思ってたそのときです。

「あ!歌鈴ちゃんと小梅ちゃん! ちょうどよかったにゃ! ちょっと来て欲しい所があるんだけど今大丈夫?」

同じ事務所の前川みくちゃんがなにやら急いでいるような素振りでやってきました。

「は、はい! 大丈夫ですけどどうしたんです......?」

「わ、私も......大丈夫......だよ......」

「話はあとにゃっ! とりあえず来て来て!」

そう言って私と小梅ちゃんを引っ張っていきました。

なんだか今日はいいこと、ありそうだなぁ♪

おしまいです。

歌鈴ちゃんがアニメで喋った少し後に書いてた物を掘り起こしてきました。

遅れたけどお誕生日おめでとう。

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