一方通行「実験してたら変なオッサンに邪魔された」(34)


 町外れ。廃倉庫が並ぶ一帯。1人の少年へ向けて銃声が鳴り渡る。
 だが弾丸が少年に当たることはなかった。血を噴き出していたのは、狙撃者の方だった。

「手間取らせンじゃねェよ」

 銃声のした方へくるりと顔を向け、少年は呟く。
 どうせ結果は同じなンだからよ――心の中で吐き捨てる。

 少年は一方通行(アクセラレータ)と呼ばれていた。
 彼は『あらゆるベクトル(向き)を観測し、触れただけで変換する』超能力を持っている。
 超能力自体は、この学園都市ではさほど珍しいものでもない。
 学園都市内では脳の開発が行われており、学生の大半が何らかの能力を保有している。
 それらは、ほとんど一般人と変わらない無能力者(レベル0)から1人で軍隊と戦えるほどの力をもつ、学園都市内でも7人しか存在しない超能力者(レベル5)まで6つの段階に格付けされている。

 一方通行はその7人しかいない超能力者の1人で――――最強の座に居座っていた。


 絶対能力進化計画。学園都市第一位である超能力者、一方通行を絶対能力者(レベル6)へと進化させる実験。
 その実験内容は、学園都市第三位である御坂美琴のクローン、妹達(シスターズ)を2万通りの戦闘環境で2万回殺害すること。

 何も問題が起こらなければ今回も妹達の1人が殺されて終わりとなる。
 実験は10032回目。一方通行は既に10031体もの妹達を殺害していた。

 10032号は一方通行によって反射された弾丸を肩に喰らい、息絶え絶えとなっていた。
 あらゆる向きを変換する、ということはあらゆる攻撃の軌道が逸らされてしまうということ。
 普段一歩通行は向きの変換を『反射』に設定しており、その状態で攻撃しようものならどんな攻撃でも本人へと返ってきてしまう。
 10032号がそうであったように。

 攻撃面でも、触れられれば終わり。血流を逆転させられ即死させられる。
 2万回戦ったとしても妹達が勝利することは決してないだろう。
 それでも、実験を止めることは出来なかった。
 彼女達は――この実験の為に生み出されたのだったから。


「よォ、随分辛そォじゃねェか。今楽にしてやるよ」

 無情に投げかけられる一方通行の言葉。
 逆転は不可能。もう逃げられる程の体力も気力も10032号には残されていなかった。
 一方通行の手が彼女に触れようと、血流逆転をさせようと近づく。

 触れるか触れないかの瞬間で彼は異変に気付いた。
 何かの気配を感じて振り返る。

 そこにはオーバーオールに赤い帽子で、立派なヒゲを蓄えた、小太りの男性が立っていた。
 一般的に見れば彼の姿は酷く滑稽に見えることだろう。
 しかし、僅かだが一方通行はその姿に威圧されてしまっていた。
 そんな馬鹿な、と彼は我に返る。そして実験に紛れ込んだ不穏分子へと声をかける。

「おいおい……、こういう場合はどうすればいいン――――」

 その言葉が最後まで紡がれることはなかった。
 話している途中にも関わらず、赤い帽子の男性が突進するかのようにこちらへと走り出したのだ。


 一体何を考えているのか、一方通行には理解が出来なかった。
 いくら突進して来ようが、どんな能力を持っていようが向きを変換させてしまえば終わり。
 何の考えもなくただ突っ込んできているのだというのなら、それは単なる馬鹿か、一方通行の能力を知らない無知だけだ。
 何の迷いもなく突っ込んできている辺り、男は後者のようだった。

「ま、見られたからには始末しねェとな」

 男に対して何か構えるわけでもなく、一方通行はそのままの姿勢で迎え撃つ。
 どうせ反射してしまうのだから防御行動も回避する必要もない。


 触れれば即殺。それだけだ。だが実際は一方通行の思い通りにはならない。

「あァ?」

 こちらへと突進してきていたはずの男の姿が、突然消え去ってしまったのだ。
 普通なら理解することも出来ないな現象だが学園都市内に限っていえばおかしいことでもない。
 あの男が能力者だとすれば姿を消すのも簡単なことだ。

 どうやら男の能力は『透明化』なのだろう、と一方通行は考える。

 しかし数秒後、彼は自分の推測が間違っていたことに気付く。男は消えていなかった。
 男は頭上――一方通行の真上を飛んでいた。


「ヒィィィィィィヤッフゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 背後からの奇声に思わず振り返る。
 そこには10032号を抱えた男の姿があった。
 だが一方通行は焦るような素振りを見せない。実際焦ってなどはいなかった。

 目にも止まらぬ速さ――男の能力が身体強化系だとすれば尚更一方通行には敵わない。
 いくら拳が硬かろうと、いくら突きが速かろうと、反射されれば自分へと返るのだ。
 しかも自ら触れてくれるのならその瞬間血流逆転で勝負は決する。

 だが超スピードで逃げられてしまうのだけは厄介だ。
 目で追えなかった以上、見失えば殺すことが難しくなる。
 ならばこちらから仕掛ければいい。足付近のベクトルを変換し、それこそまさに超スピードで男へ向かう。
 触れさえすれば、終わりだ。


「ヤッハー!」

 一方通行の手が触れるか触れないかで男の姿はまた消えた。
 今度は一方通行でも彼がどこへ行ったのかが分かった。

 飛んで――いや、跳んでいたのだ。
 男はジャンプをして一方通行をかわしていた。
 だとすればなんという常人離れした跳躍力だろうか。

 男の能力が身体強化系であることが一方通行の中で確信へと変わる。
 しかし、その確信は一瞬で消し飛ぶ。

「ハッ!」

 男は掌から炎の玉を発射し始めたのだ。


 炎はゆっくりと地面で跳ねながら一方通行へと向かってくる。
 こんな軌道が現実にあり得るのだろうか。ベクトルを変換させるにしても多少なりともの演算が必要だ。
 現実に存在する物質ならほとんどは演算無しでも反射が可能だが、学園都市第二位の生み出すような暗黒物質、多大な質量をもつものに関してはいくらか演算をしなければならない。

 これは――この炎は果たして現実に存在するものなのか?
 彼の頭に疑問がよぎる。幸い炎のスピードはあまり速くはない。考える時間は少しだけあった。
 あの跳躍力が能力によるものでないこと、男のおかしな服装、そしてこの炎、おかしい点はいくつもあった。

 相手の正体が分からない以上慎重にならざるをえない。
 一方通行は攻撃を回避し、指先で炎に触れてみる。すると炎は反対方向へとゆっくり向かっていく。
 ――――問題ない。反射させることが出来る。
「ビビらせやがッて……何なンですかァ? てめェはよォ!!」


「マァリオォォォォォォオオオオ!!」

 それは答えだったのか掛け声だったのか。とにかく一方通行は彼の名をマリオだと認識した。
 マリオは跳びあがり、空中から炎攻撃を仕掛ける。
「容赦しねェぞ。クソヒゲがァ!!」
 一方通行に触れた瞬間、炎は打って変わって物凄い速さでマリオへと向かう牙に変わった。
 ゆっくり地面で跳ねたりもしない。ただ、一直線にマリオへ襲い掛かる。


「ヤハー!」

 だがマリオを襲う炎は、再び一方通行へと向けて跳ね返される。
 一瞬、一方通行は何が起こったか分からなかったがすぐに理解する。
 マリオが手に持つ黄色い謎のマント、それで炎を跳ね返したのだ。
 一方通行ほどのものではないにしろ、それはベクトル変換の能力となんら変わりはなかった。
「面白いじゃねェかクソヒゲがァ……。ぶッ殺す!!」


 マリオが炎を出すのと一方通行が加速を始めたのはほとんど同時だった。
 炎がこちらへと向かう中、一方通行は回避行動を一切取らず、一直線にマリオへと突き進む。が、ダメージを受けることはない。
 反射という絶対的能力を持つ彼には、攻撃から身を守る、回避するといった概念がまず浮かび上がらない。
 反射された炎をも抜く速度でマリオへと近づき、そして腕を突き出す。

「死ねッ! ヒャハハハハァ!」

 相手が如何なる能力を持っていたとしても、死んでしまえばそれは意味を為さなくなる。
 マリオの不可解な身体能力も、炎も、マントも。
 一方通行がマリオに触れさえすれば全て無に帰す。

 だが、マリオはそれを許さなかった。
 突然の風圧に一方通行は怯む。――風圧?

 彼の反射は風すらをも受け付けない。
 なら、自分がたった今感じているこの感覚は一体なんなのだろうか。


 彼の能力『一方通行』は自分が触れているものにしか影響を与えられない。
 では自分とは何か。

 一方通行と呼ばれる少年の皮膚には、ほんの僅か――目視出来ないほど薄い保護膜が張られている。
 その保護膜が、一方通行に触れているかいないかを判断し、そして反射が働くのだ。

 逆に言えば、保護膜に触れることなく一方通行自身へ触れることさえ出来れば反射されず攻撃を成功させられる。
 が、保護膜は一切の隙なく彼自身を覆っているのでそんなことは出来るはずもない。

 しかし、彼は今〝風圧〟を感じていた。

 マリオの持つスーパーマントは一方通行の能力とよく似た性質を持つ。
 そのマントで吹き飛ばされたものはベクトル変換と同じように反射され、逆方向へと向かっていってしまう。風でさえも。

 例えば、攻撃が一方通行の保護膜に触れた瞬間に引っ込むとどうなるだろうか。
 遠ざかる攻撃が内側に反射され、攻撃が当たるのだろう、ととある科学者は仮説を立てた。
 その仮説は今現実となり、スーパーマントによって反射された風は一方通行に不可解な感覚を与える。
 その感覚が一方通行に怒りの感情を湧き立たせる。


「ざ…………ッけンじゃねェぞ!」

 屈辱だった。
 いきなり現れた中年男性に、わけの分からない方法で、ダメージを受けてはいないとはいえ絶対防御を打ち破られたのだ。
 だがマリオを殺してしまえば問題は無くなる。明確な殺意が一方通行の中でひしめく。
 一撃。たった一撃当てられればそれだけで、一方通行を破れる者はいなくなる。

 一方通行が風圧の中、再度攻撃を仕掛けようとするが、
 マリオも再度マントを翻す。


 さっきの比ではない風圧が一方通行を襲う。
 まともに体勢を保つことすら出来ず、彼は進路とは逆方向に飛ばされる。まるで、反射されたかのように。

 しかし彼がコンクリートや壁に叩きつけられてダメージを負うことはない。
 反射出来ないものは、あくまでマリオの繰り出す風のみ。
 咄嗟に空中でベクトル変換をし、すっと地面へ降り立つ。

「中々ビビッたが……それじゃァ俺を倒すこたァ出来ねェよ!」

 加速し、マリオへと突っ込む。速度はジェット機を遥かに凌駕する。
 普通の人間が生身でこの速度を出せば一瞬で身体がバラバラになるだろう。
 だが一方通行のベクトル変換ならば身体にかかる重圧、負荷さえも反射してしまえる。


 この速度なら風圧に押されることもない。
 一秒――いや、その百分の一にも満たない速さで。
 一方通行がマリオへ触れるその瞬間。

「!?」

 マリオの姿が視界から消える。
 マリオはマントを持ったまま先程が違わぬ姿勢を保っていたはずだ。
 ならばどうして突然目の前から消えてしまうのか。
 ジャンプするにしても間に合わなかったはずだ。


「オッホー!」

 〝背後〟から聞こえるマリオの声。
 そこでやっと異変に気がつく。目の前に広がる景色は、先程のそれとは微妙に違っていた。

 ここが、似たような建物がいくつも並ぶ廃工場でなければ即座に気がついたはずだ。
 一方通行はマリオのスーパーマントによって、――自身の〝向き〟そのものを変えられてしまっていた。

「あッ……りえねェ!」


 一瞬で振り返る。そこにマリオの姿は無い。
 マリオは――頭上。一方通行の真上へと跳んでいた。
 一方通行が気がつくよりも先にマリオが落下する。

 彼がマリオに気がついていれば、なんとも愚かに思っただろう。
 ベクトル変換を操る一方通行に対して物理攻撃、それも生身で触れることは即ち死を意味する。
 触れた瞬間に反射が発動し、身体がめちゃくちゃに曲がるのがオチだ。

 だが、もうマリオの動きを止める術は存在しない。
 マリオの靴が一方通行の頭へ触れる。

 ――――触れる。


 その瞬間。かつてない一撃が。
 長らく忘れていた感覚を、強制的に思い出さされる。

 それは痛みだった。

「がッ……!? ぐァ……ッ!!」

 それが一体何なのか見当がついたのは、地面に倒れてからだった。
 倒れ、正体不明の感覚に戸惑い、もがき、そして理解する。
 痛い。それも凄まじく。

「オーイェー」

 倒れる彼の前へマリオが着地する。
 激痛が襲う頭を両手で押さえながら一方通行はマリオを見上げる。
 〝一体、何をした?〟


 その答えはあまりにも現実離れしていた。

 マリオは空中でもう一度、ジャンプしていた。
 ゲームで言えば空中ジャンプ、二段ジャンプ。現実ではあり得ない現象。
 それもマリオの能力の1つなのか。現実に起こってしまった以上、一方通行はそれを受け入れるしかない。

「クソが……! ぶッ殺してやる!」

 痛む頭を片手で押さえつつ、なんとか立ち上がる。
 マリオが倒れている最中に攻撃を仕掛けてこなかったのが唯一の救いだ。
 未だ一方通行はマリオの攻撃の正体をはっきりとは掴めてはいないが、空中からくるものだと分かっただけでも大きい。
 二度目が命中することはほぼ無いものだろう。


「死ねェェェ!!」
「オーイェー!」

 加速を始めようとしたその瞬間、再度激痛が頭を襲いまた地面へと伏してしまう。
 マリオは目の前に立っているままだ。だとすればこの衝撃は一体――。

「マァリウォ~!」
「ルウィィージィィィ!」

 全身緑色のヒゲの男がそこにいた。


 冗談じゃない――、一方通行は目の前の光景を信じたくはなかった。
 赤いヒゲだけでも苦戦していたというのに、事もあろうか新たに1人、緑のヒゲがやってきたのだ。

「マリウォ~!」
「ルイーズィ~!」

 マリオと――ルイージと呼ばれた男はお互いに相手の名前を叫びながら抱き合う。
 そして、2人とも感極まった様子で涙を流し始めた。
 中年2人が抱き合って涙を流す場面など突っ込み所満載だが、今の一方通行にはそんなことを考えている余裕などない。

「ふッざけやがッて…………!」

 彼がこれほどの屈辱を感じたのは、今日が初めてだった。
 ふざけた男にわけの分からない技で攻撃され、こちらが倒れていても追撃すらしてこない。

 学園都市第一位、最強であるはずの一方通行に対して舐めてかかってきている。

 その瞬間、一方通行の頭の中で何かが弾ける。


「マリオ!?」

 立ち上がった一方通行を見てルイージが不安げにマリオの名を呼んだ。マリオとルイージは抱き合うのをやめて再び一方通行へと向かい直る。
 あれだけの攻撃を喰らって立ち上がれるはずがない、マリオもルイージもそう判断していたのだ。
 決して一方通行を舐めてかかっていたわけではない。ただ、自分達の力を過信していただけだ。

 だが、それが一方通行に伝わることはない。


「てめェら覚悟しろよォ……? 2人仲良く内臓ぶちまけてやるからよォ!!」

 先程まで彼が感じていた怒りは既に消えてなくなってしまっている。
 目の前の2人をどう殺してやるか、一方通行は楽しみで仕方が無かった。

 無邪気で、邪悪な笑い声が廃倉庫一帯に響き渡る。
 その直後――強風がマリオ達を襲った。


 風は一方通行へ吸い寄せられるように吹き、そして彼の頭上に集まっていく。
 それは思いつきの技であったが、彼の能力を以ってすればマリオ達どころか地球そのものすら破壊してしまえるかのようなものだった。

 ベクトル操作により集められた風が一箇所に集められて、大量の空気が圧縮されていく。

 その結果作り上げられるのは摂氏一万℃を超える高電離気体、プラズマ。

 それはみるみる内に大きくなっていき、遂には十数人を軽く飲み込んでしまえるほどになった。
 それが落とされればどうなるか。一方通行にも、マリオ達にも、見当すらつかない。

「マリオォゥ~…………」

 ルイージが不安げにマリオを見る。その足は震えていた。
 マリオは黙ってプラズマの塊を見つめていたが、やがてルイージへと顔を向け、

 そして微笑んだ。

「レッツゴーゥ!!」
「……オーキドーキ!!」


「死ねェェェェェッ――――!!」

 一方通行がプラズマの塊を地面へ叩きつけるのと、

「ヤッフハァァァァァァァ――――!!」
「ヒッヒッフゥゥゥゥゥゥ――――!!」

 マリオ達が跳んだのは、ほとんど同じタイミングだった。
 轟!という爆音と共に辺り一帯のアスファルトが抉られ、凄まじい砂塵が巻き起こる。瀕死で倒れていた御坂妹は死んだ。
 マリオもルイージも、攻撃した本人である一方通行さえも視界を奪われ誰一人として戦況を把握できない状態だった。


「マァーリオゥー…………」

 運良く攻撃を回避出来たルイージは砂で埋め尽くされる視界の中、マリオを探していた。
 マリオは大丈夫だろうか、見事敵を倒せたのだろうか、確認しようにも目の前の砂がそれを許さない。
 時間が経つにつれルイージの不安が徐々に積もっていく。
 ――おかしい、静かすぎる。

 いくら視界が砂一色だとはいえ、今は戦闘中のはず。
 一方通行が何も行動しないはずはなかった。


「マリオゥ!?」

 ゆっくりと、霧が晴れるように砂煙がなくなっていく。
 それは一方通行のベクトル変換によってもたらされたものだった。

 十秒もしない内に砂は微塵も残さず消え、それはあらわになる。
 ルイージはただ信じられないといった表情で、両手を頬につけていた。

「マ……リオ…………?」

 名前を呼ぶも、返事が返ってくることはない。
 二度と――マリオが言葉を発することはなかった。

 マリオは――――死んでいた。

 胸から突き出ているのは、一方通行の腕。
 心臓を貫かれ、絶命させられたのだ。


「――――ヒャハッ!」

 狂気に満ちた笑顔のまま、一方通行はルイージを目で捉える。

「次はテメェの番だ」

 気がつけばルイージは走り出していた。

 臆病で、いつもマリオの後ろにばかり隠れていた彼だったが、一方通行へと向かっていた。

「マァァァァァリウゥゥゥオオオオオオオ!!!」


 赤い帽子の頼れる兄。マリオはもう戻ってこない。
 悪い亀にお姫様がさらわれても、もう助けに行くことの出来る者はいない。

 怒りと悲しみがルイージの中で渦巻く。
 ――兄さんを殺したあの男だけは許さない!

 対する一方通行はその場から微塵も動かずルイージを迎え撃とうとする。

「あの世で2人仲良く跳びはねてなァ!」

 再度轟音が鳴り響き、勝負は決した。


 長い戦いが、――実際には30分も経っていなかったが、ようやく幕を下ろした。
 死闘を制した方、一方通行は地面へ横たわるマリオとルイージを見下ろしていた。

 結局こいつらはなんだったのだろうか、疑問がわくも当の2人は既に死んでしまっているので聞きようがない。
 〝多少〟想定外のことは起こったが今日の実験も無事終了。
 明日からはまた特にスリルもなく、ただ妹達を殺す毎日が始まるのだ。

 そう思いつつも、自宅へ帰ろうと踵を返した瞬間。

「ッ!?」

 新たな気配に気付く。

 ――――マリオでもルイージでもない。


 振り向いた先、遥か前方にはマリオ達以上に奇妙な格好をした男が立っていた。
 胴体部分だけ青の白いタイツにベルト、フルフェイスからはちょんまげのような謎の突起が突き出している。
 その男はどこからか爆弾を取り出し、一方通行へ向かって自らの名を叫んだ。

「ボンバァァァァァァァァァマン!!!」


END

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