神谷奈緒「始まりの記憶」 (14)

アイドルマスターシンデレラガールズ 神谷奈緒のSSです
短いです

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地方でのミニライブの帰り道、車を運転している俺に担当アイドルの奈緒が話しかけてきた

奈緒「なぁPさん、今更なんだけどさ、なんであたしをスカウトしたんだ?」


いきなり聞いてくるなぁ

しかもちょっと恥ずかしい話を……


P「前にも言わなかったっけ? 街を歩いていたら、かわいい女の子が目に入ったんだ。それが奈緒だったって」

奈緒「かわっ!? ……かわいいは余計だ! そこだよ、そこをもっと細かく教えてよ」

P「細かくって……あまり面白い話じゃないけどな」

奈緒「興味あるんだ。あたしにとっては面白いかもしれないだろ?」

P「わかったわかった……。うちの会社ってさ、アイドル1人にプロデューサー1人だろ?
  プロデューサーになった人間は、自分でアイドルを見つけてくるのが決まりなんだ」

奈緒「へ―、初めて聞いたよ」」

P「あまりこの事を話すプロデューサーは少ないからね。で、ある者はオーディションで選んだり、
  またある者は街でスカウトしたり。皆それぞれだよ」

奈緒「それで、Pさんはアタシをスカウトしたのか」

P「最終的にはね。でも最初はオーディションに来た子から選ぼうと思っていたんだ。楽だし」

奈緒「楽って……よくサボるPさんらしいなぁ」

P「俺の事を良く分かっていらっしゃる。嬉しいねぇ。いつも俺を目で追っているからか?」

奈緒「っ! 別に、そういう意味じゃないから! 付き合い長いし、自然に分かってきただけだからな!」

P「いやいや、担当アイドルとの絆がこんなに深まるとは、俺は嬉しいよ」

奈緒「……Pさん、な~んか話を逸らそうとしてないか? 続き! さっきの続き話してよ」


……作戦失敗。奈緒を恥ずかしがらせて、この話を終わらそうとしたのに

ま、この際全部話して奈緒をもっと恥ずかしがらせてやるか


P「どっからだったか……あぁ、オーディションが楽ってやつだな。その通り、オーディション会場で良い感じの女の子がいるかどうか見てたんだ」

奈緒「それでそれで?」

Pさん「残念。その子たちには悪いけど、俺が良い!っていう子はいなかった」

奈緒「ふーん。……じゃあなんであたしだったんだ? あたしよりかわいい子なんていくらでもいるだろ?」

P「今からそこを話す。静かに聞いてな」

後ろには車は全くいない

俺はアクセルを踏む力を少し弱め、ゆっくり走ることにした


P「結局、オーディションじゃ見つからなくて、街でスカウトしようとしたんだ。それでも全然だった。
  同期でプロデューサーになったやつは皆アイドルを見つけているのに、俺はまだ見つけられなかった」

奈緒「……」

P「上司からは早くアイドルを見つけないと、プロデューサーを辞めさせるって言われてさ。そろそろまずいなーって所で、奈緒に出会ったんだ。
  奈緒を見た瞬間、俺はこの子をアイドルにしたい!って心の底から思ったんだ」

奈緒「へ……へー……ふーん……」

P「奈緒、顔赤い」

奈緒「うっうるさいな! そんな事言われたら誰だって照れるだろ!?」

奈緒の顔は薄暗い車内でも分かるくらい赤くなっていた

まだまだ、更に赤くしてあげよう


P「やっと見つけた、やっと俺のアイドルが目の前に現れた。……俺はね、奈緒に一目惚れしたんだ」

奈緒「!!!」

P「周りにはたくさん人がいたのに、奈緒だけは輝いて見えた。そして、一番かわいかった」

奈緒「か……かわ……! またかわいいって……」

P「本当にかわいかった。アニメキャラのキーホルダーを手に持ってニコニコしている奈緒が」

奈緒「あ、あれは! ずっと探してた物が手に入った……から」

P「うん。あの自然な笑顔が、最高にかわいかった。何度でも言うよ、奈緒はかわいい」

奈緒「~~~!」

P「おー、照れてる照れてる。……あの時、お互いのタイミングが少しでも違っていたら、俺達は出会っていなかったのかもなぁ。
  今こうして、奈緒の照れ顔を見られるのも何かの縁か」

奈緒「どうだろ。Pさんならあたしが何処にいても見つけていたかもな」

P「そうか?」

奈緒「なんとなくだけど、そんな感じがする」

P「……ま、そうかもな」

奈緒「でもあの時のPさんは凄かったな。いきなりあたしに近づいてきて
   《 君はかわいい!もっと輝ける!アイドルになりませんか!? 》って言うんだもん。すごい迫力だった」


奈緒はその頃を思い出してか、ケラケラと笑い始めた


P「必死だったからなぁ……。改めて、アイドルになってくれてありがとう。あの日から、俺は毎日幸せだよ」

奈緒「……うん」

奈緒は顔を真っ赤にしながら、それだけ言って黙ってしまった

いつもの威勢の良い返しが来ない

怒らせたかと心配した俺は、奈緒に声を掛けようとした


P「えーと……奈緒、あのさ」

奈緒「Pさん!」

P「! なんだ?」

奈緒「Pさん、あたし……さ。あたしも! アイドルになって良かった!」

P「奈緒……」

奈緒「あたしはずっと、かわいい恰好とかに憧れてた。でもあたしはこんな性格だろ?
    ……だから、似合わないと思ってた。こっそりかわいい服を買っては家で着てみて、でもその服で外に行く勇気はなかったんだ」

P「……」

奈緒「そんな時、Pさんに声を掛けられて、アイドルになって、かわいい服を着せてもらって……
    たくさんの出会いや、たくさんの経験をさせてもらって……本当にPさんには感謝してる。ありがとう」

P「……こちらこそ、ありがとな」


それから奈緒の家に着くまで、俺たちの間に会話はなかった。でも、それが心地よかった

……奈緒からは依然熱気が放たれているようだけど


P「……よし、到着っと。奈緒、着いたぞ」

奈緒「あぁ、うん。意外と早く感じたな」

P「あははっ! 奈緒、まだ顔が赤いな」

奈緒「あ、当たり前だろ! あんな……恥ずかしいこと話したんだから」

P「元はと言えば、奈緒が話せって言ったんだけどな」

奈緒「く~~! ばかっ! ばかPさん!」

P「もういつも通りの奈緒に戻ったな。良かった良かった」

奈緒「はぁ……じゃあ、また明日」

P「おう、また明日。今日もかわいかったよ」

奈緒「……へへっ」


俺の言葉に、奈緒ははにかんだ笑顔で返してくる

……この笑顔に俺は惚れたんだ


奈緒「あ、そーだ! ……Pさん!」

P「ん?」


ドアを開け、家に入る寸前だった奈緒が引き返してきた

奈緒「……あたしがアイドルになって一番嬉しかったことは、Pさんと出会えたこと……だからな! お、覚えとけよ! おやすみ!」

P「……」


走り去っていく奈緒の顔は、今日一番の赤面だった

恥じらい乙女からの予想外の言葉

俺はしばらくの間放心していた

くそぉ、ドキドキした

俺はこの胸の高鳴りを必死に抑えながら、事務所に戻る

___あぁ、明日が楽しみだ

終わり

少し積極的な奈緒もかわいいです

依頼出してきます

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