チノ「ただいまです」吉良「おかえり、チノ」 (146)

【ラビットハウス】

吉良「今日は、学校は楽しかったかな」

チノ「えっと、まあまあです」

ココア「ただいまー、タカヒロさん」

吉良「おや、ココアくんも一緒だったのかい」

ココア「帰り道でたまたまチノちゃんを見かけてね。チノちゃん、今日は一人で帰っててさみしそうだったら一緒に帰ったんだよ」

チノ「今日はマヤさんもメグさんも用事があって先に帰ったので。別にさみしくなんて」

ココア「大丈夫だよ、チノちゃん。チノちゃんにはお姉ちゃんがず~っとついているからねっ」

ムギュゥゥ~ッ

チノ「ちょ……ココアさん、暑苦しいのであんまりくっつかないでください!」

吉良「……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1483220311

吉良「それじゃあ、私は少し休憩してくるとしよう。部屋にあがっているから、何かあったら言いに来なさい。ただし、ノックをするのを忘れるんじゃあないよ」

ココア「はーい」

吉良「お店のほうはまかせたよ。チノ」

チノ「はい」

吉良「じゃ」

チノ「あ、ちょっと……お父さん」

吉良「ん、何だい?」

チノ「今日も、夜のバータイムは……」

吉良「……ああ、休むことにするよ。まだちょっと、体調が優れないのでね」

ココア「タカヒロさん、大丈夫?」

吉良「心配しなくてもいいよ。すぐに、良くなるから」

【タカヒロの部屋】

ジャカジャカジャカジャカ

吉良「幸い昼間のカフェに来る客は稀なので、ボロを出す心配はないのだが」

トポポポポポポポ

吉良「夜のバーに関しては別だ。この店、意外に夜には客がくるらしい。馴染みの客もな」

吉良「仮にも『バーテンダー』として、粗相のないよう振る舞わなければ……」

吉良「怪しまれてしまう」

トクトクトクトクゥ~

吉良「私が本物の『香風タカヒロ』じゃあないということを、気づかれるわけにはいかない」

吉良「……」

吉良「ちィッ!」

パリーンッ

吉良「バーテンダーの仕事はただ酒を混ぜて作るだけではない。数百と種類のある酒を絶妙にブレンドして客の舌を満足させる『味』を作り出す」

吉良「この技術は奥が深く、長年の経験とセンスがモノを言う。素人の猿芝居で再現などできるものか」

吉良「バカバカしい。何をやっているんだ、私は」

吉良「それもこれも、ヤツらのせいだ。あいつらさえいなければッ!」

ギィィ~

チノ「お、お父さん?」

吉良「チノ?」

吉良「どうした? なぜここにいる? あれほどノックをするようにと注意したというのに」

チノ「い、いえ、何かが割れる音がしたので……気になって」

吉良「ああ。ちょっとグラスが手につかなくってね、落として割ってしまったよ」

チノ「大丈夫ですか? すぐ、ちりとりを」

吉良「いや、いい。自分で片付けるから。チノは下に降りなさい」

チノ「でも」

吉良「本当に、大丈夫だから」

チノ「……分かりました」

ティッピー「……」

吉良「どうした、ティッピー? 何を見ている?」

ティッピー「……」

チノ「行きましょう、ティッピー」

ぴょおおおおんッ

チノ「それでは、失礼します」

バタン

吉良「……」

吉良「あのペットの毛玉。アンゴルモアウサギだったか」

吉良「いつもチノの頭の上に乗っかっているが、何か、気になる」

吉良「とぼけたような顔と図体をしているが、奴の目にはまるで人間のそれのような『意志』を感じる」

吉良「……いや、まさかな。あれはただの『ウサギ』だ」

吉良「もっとも、ただのウサギだったとしても……もし私に対して明確な『敵意』を向けて来たならば」

吉良「その処遇を考えねばならん。念のため、にな」

【ラビットハウス・カウンター】

リゼ「そっか。おやじさん、まだ調子悪いのか」

ココア「そうみたい」

リゼ「もう一週間になるよな。ずっと休んでるから、うちのおやじも気にしてたよ」

チノ「父はこの時間帯を除けばずっと働きづめでしたし、疲れる時もあるでしょう」

リゼ「そうだな。たまには休息も必要ということか」

ココア「それじゃ、タカヒロさんのぶんもみんなで頑張って働かなきゃね!」

チノ「そうですね」

リゼ「ああ」

ココア「じゃあ私はパンを作るね!」

リゼ「私は倉庫の資材を整理してこよう!」

チノ「では私は、お店の前を掃除します」

【店の前】

シャッシャッ

チノ「……」

ティッピー「のう、チノや」

チノ「何ですか、『おじいちゃん』」

ティッピー「ワシはここ1週間、タカヒロの前では一言も口を聞いておらん。なぜだか分かるか」

チノ「なぜです?」

ティッピー「これはワシのカンじゃが……タカヒロのやつに妙な違和感を感じてのう」

チノ「違和感……」

ティッピー「長年連れ添ってきた息子のことじゃ、ワシはタカヒロのことをよぉく知っておる。最近のタカヒロは、間違いなくタカヒロの姿形をしているが……何かが違うのじゃ」

ティッピー「そこでしばらく距離を置こうと思ってな。チノは、何か感じるところはないか?」

チノ「そうですね……」

チノ(1週間前といえば、お父さんが夜のバーを休み始めた日ですよね。あの日に何か……?)

チノ「おじいちゃん」

ティッピー「む、なんじゃ?」

チノ「今日のおじいちゃんは妙に冴えててらしくないです。本当におじいちゃんですか?」

ティッピー「なにおうッ! ワシの頭脳はいつも冴えわたっとるわい!」

【店内】

吉良(少し外の空気を吸って気分転換をするか)

吉良「ん?」


【キッチン】

コネ~ッ コネ~ッ

ココア「今日もおいしいパンを作るよ~!」

ココア「また千夜ちゃんやシャロちゃんにもおすそ分けしようかな」

ザッ

吉良「……」

ココア「え?」

吉良「……」

ココア「わっ! タカヒロさん! もう、急に現れるからびっくりしたよ~」

吉良「綺麗だ」

ココア「へ?」

ガシィ

吉良(実に綺麗な手をしている。柔らかい。だがパン生地がこびりついてパサパサとした感触にはちょっと幻滅だ。

綺麗になめて拭き取ってあげよう。ああ、欲しい。私のモノにしたい……ひと思いに)

ゴゴゴゴゴゴ

ココア「タ、タカヒロ……さん……?」


リゼ「おーい、ココアー。パン作りの小麦粉は足りて――えっ」

吉良「……」

ココア「……」

リゼ「ココアと……おやじさん? 何を……」

吉良「ちょっとよろけて手をついてしまってね。ココアくんが支えてくれたんだ」

ココア「う、うん! そういうことだよ、リゼちゃん」

リゼ「そ、そうか」

吉良「私は用があるので出かけてくるよ。後はよろしく頼む」

ツカツカ

リゼ「ラ、ラジャー」

ココア「……」

リゼ「ココア? どうした?」

ココア「ふぇっ!? ううん、何でもないよ!」

【路上】

吉良「……」


私の名は吉良吉影。杜王町に住む33歳独身のサラリーマン

――だった

人を殺さずにはいられないというサガを持つ

そんな私は、「植物の心」ように平穏で静かな暮らしを望んでいたのだが

そのささやか希望は、あのクソッタレどもによって踏みにじられてしまった

吉良(だが、運は私に味方している)

吉良(『香風タカヒロ』という、ヤツらとは縁もゆかりもない人間に成り代わり、追尾しうる足跡はすべて消し去った)

吉良(『木組みの街』と呼ばれる杜王町の一角は、北欧風のハーフティンバー様式を採用した木造建築が立ち並び、野良ウサギが道々で戯れ、こじゃれたカフェやレストランの多い観光名所)

吉良(年間を通して観光客の出入りが多い地域。人を隠すのはやはり人の中ということだ)

吉良(問題は……『香風タカヒロ』という人間が、どこにでもいるようなサラリーマン風情じゃあなかったこと)

吉良(もう少し、成り代わる対象を吟味しておけば……いや、それはいうまい。あの時は一刻を争っていたのだ)

吉良(大事なのはこれからの振る舞い。長らく店を閉めているのはまずい。変わりばえのない、普段通りの『日常』を演ずることが、周囲からの警戒心を削ぐ最適の方法なのだから)

ドッ

「きゃっ」

吉良「ああ、すみません。ぼんやりとしていて、肩がぶつかってしまったみたいですね。大丈夫ですか。手を貸しますよ」

青山「いえ、こちらこそ。ぼんやりとしていて……あら、タカヒロさん」

吉良「……ッ」

吉良(美しい……手だ)

青山「最近はバータイムをお休みしていると聞きました。お体のほうは……」

吉良「ああ、心配いりませんよ。すぐに」ギュウ

青山「……っ?」

吉良「すぐに、良くなりますから」サワサワ

青山(な、なんでしょう……?)

吉良「すぐに、ね」ギラリ

青山「っ」

吉良「……それでは、私はこれで」

青山「は、はい」

スタスタ……

青山(思わず、目をそらしてしまいました。あの方と目を合わせるのには、もう慣れていると思っていたのに)

【路上】

女A「ねえねえ、このパンフにのってるお店、行ってみな~い?」

女B「なになに、ラビットハウスゥ~? 可愛い名前ねェ! 行ってみましょうよォ」

吉良の同僚「ラビットハウス? やめとけ! やめとけ! 
あの店は客の入りが悪いんだ。
『ちょっと寄ってみようぜ』って入っても居心地がいいんだか悪いんだか……。
『ラビットハウス』築33年、戸建て住宅。
接客はまじめでそれなりにこなすがいまひとつ安定感のない店員。
なんかアンティークっぽい気品ただよう内装と外観をしているため、ミーハーにはもてはやされるが、オリジナルコーヒーからは使い勝手のいいインスタントの味しかしないんだぜ。
悪いとこじゃあないんだが、これといって長所のない、うだつの上がらない店さ」


パシャッパシャッ

露伴(ヤツを捜すための手掛かりの収集、という意味合いもあるが)

露伴(この『街』の異国風の景観は他所じゃあ見れないので、仕事上の資料集めとしても有益だ)

露伴(観光客は多いが、街の中では『車』が通れないから自由に行き来できるのもまたいい)

露伴(日も陰ってきたな。今日はこのへんにして引き上げるとするか)

露伴(そういや明日、この街の喫茶店で編集者と打ち合わせをする予定だったな。さて、何という名前の店だったか。後で確認しておこう)


サァァァァ


露伴「吉良吉影――お前は一体、何者になったのだ」

杜王町のなかにあんな空間があるのか

ほぼ放浪小説家に近い青山さんは手首だけにされそう 
そうなったら編集者の真手 凛が咄嗟にラビットハウスに向かって「翠ちゃんいないっー」とか言いそう

期待

同僚は本当になんでも知ってるな

>>22
原作でもあの警告で女子社員を間接的に助けたからな。
同僚は何気にすごい

クソスレ立てた1に死を

クソ発言をした>>24に死を

続きに期待

―翌日―

【甘兎庵】

編集「いやァー、露伴先生には毎度頭が下がりますよォ~~」

露伴「ありきたりなゴマすりはもういいよ。原稿は渡したんだ。これで十分だろう。何なら再来週の分も渡しておこうか」

編集「いえいえー、また後日、お伺いさせていただきますゥ!」

露伴「じゃ、今日のところはもういいだろう」

編集「そうですねェ、それでは会計はこちらのほうで済ませておきますので~~」

露伴「いや、ぼくが持つとしよう」

編集「ええっ……ですが」

露伴「今回はぼくのおごりだ。ぼくはこの店にくるのは初めてでね。もう少し店内でゆっくりくつろいでいこうと思うんだ。先に行ってくれ」

編集「は、はあァ……それはそれは。では、お言葉に甘えて」

ギィー……バタン

千夜「またのお越しをお待ちしております」

露伴「『再来週の分まで』と言ったのは失策だったな。編集をやってる人間にとってはマンガ家なぞ描かせてナンボだ」

露伴「それが売れるマンガ家だったら猶更。ちょっとくらい時間の余裕でもあってみろ。やれスピンオフだ書き下ろしだと急き立ててくる」

千夜「……」

露伴「どんなに面白いマンガも綿密な取材と作者の豊富な実体験なしには成立しえない。取材や体験の時間に制限はないのだよ。いつだってできるし、時間が許す限りいつまでもできるわけだ」

露伴「だからマンガ家の生涯に時間の余裕などありはしない。マンガを描く合間に取材をしているわけではない、まず取材があってこそのマンガなのだ」

露伴「取材から得られた『リアリティ』をもって初めて、読んでもらう価値のあるマンガができあがる。ぼくはそう思う」

露伴「君はどう思う?」

千夜「え。えっと、そうですね。私も和菓子のネーミングを考えるときは……」

露伴「君に聞いているんじゃあない。ぼくの後ろのテーブル席に衝立越しで座っている君に聞いているんだ」

千夜「あら」

青山「!」ビクッ

青山「わ、私、ですか?」

露伴「君、小説家なんだろ?」

青山「えっ、どうして……それを?」

露伴「ぼくがさっき担当と連れ立って店に入ったとき、気の強そうなマネージャーとやり取りしていただろう。これだけ近い席どりだ。自然に話が耳に入ってきてね」

青山「ああー、そうでしたか。あなたは……漫画家さんだそうですね」

露伴「ああ。ぼくの名は岸辺露伴。マンガ家だ」

青山「きしべ、ろはんさん。聞いたことがあるような……ないような」

露伴「ぼくのことはいい。広い意味での『表現者』として同じ土俵に立つ者が、創作に対してどういう認識を持っているのか。それに興味が沸いてね」

青山「興味ですか。あ、申し遅れました。私は、青山ブルーマウンテンといいます」

露伴「青山ブルー……聞いたことがあるぞ。フザけた名前の小説家だと思っていたが、最近、原作が映画化されたとかいう」

青山「『うさぎになったバリスタ』。ご存知でしたか」

露伴「あいにく、映画も小説の方も目を通したことはないがね」

青山「いえいえ、お構いなく」

千夜(何だか私が空気になってるわー)

露伴「話を元に戻そう。極限まで『リアリティ』を追求する創作過程について、君はどう思う?」

青山「リアリティですか。そうですね。私もよく閃きを探して街を彷徨ったり、体験したことを書いたり、じーっと観察したり」

露伴「……」

青山「それから、グルメリポートを書いたりもしていまして――」

露伴(雑誌とかに載ってる著者インタビューに出てきそうなありきたりな言葉ばっかりだ)

露伴(物書きってのは変わったヤツが多いからな。直に会えたんだからもっと生々しいハナシを聞けるんじゃあないかと期待したが、アテが外れたな)

露伴「さて、ぼくはそろそろ行くと――」ガタッ

千夜「『うさぎになったバリスタ』にもモデルになったひとがいるんですよね、青山さん」

青山「はい」

露伴「……ほう」

青山「『うさぎになったバリスタ』はラビットハウスというお店のマスターをモデルに描いた小説なんです」

露伴「内容を知らないからなんとも言えないが、題名を字面通りに解釈したら、バリスタがウサギになるという非現実的な話だが?」

青山「では、お話しします」

―――――――
――

つまんね

露伴がラビットハウスを訪れてティッピーを本にするのかな?

おもしれ

吉良はココアになったりタカヒロさんになったり忙しいな

元軍人のタカヒロさんをよくシンデレラに連れて行けたな
KQがあっても全く騒ぎを起こさずにとは

まだ?

おもろい

期待

はよ

まだ?

はやくして

早よ書けや

【ラビットハウス】

ココア「は~、チノちゃんがいないと力が出ないよ~。ティッピーも一緒に行っちゃったからもふもふできないし」

リゼ「ああ、今日はチマメ隊で野外演習してるんだったな」

シャロ「まあ、そういう日もあるでしょ。元気出しなさいよ」

リゼ「シャロは今日、バイトとかは大丈夫なのか?」

シャロ「はい、今日は半月ぶりにお休みなんです!」

ココア「シャロちゃん、お店手伝ってくれてありがとう」

シャロ「いいのよ別に。他に予定もないし」

リゼ「チノがいなくて人手が足りなかったところだ。助かるよ、シャロ」

シャロ「あ、ありがとうございますっ! でも……」


ガララァ――――――――ン

シャロ「ほんと、お客来ないですね……この店」

リゼ「ああ……驚くほど来ないな。何かの組織の陰謀かも知れないな」

ココア「また期間限定のキャンペーンを考えよっか」

リゼ「それもいいかもな」

ジャリ……

ココア「あ、タカヒロさん」

シャロ「どうも、お邪魔してます」

吉良「……」

吉良(朝のチノの言動……ティッピー、やはりやつには何かがある)

吉良(『腹話術』で実際にあんな声を出すことができるのか、私には判断できないが)

吉良(確かめなければ。そして、場合によっては始末せねばなるまい)

吉良(人間がひとり消えたら騒ぎになるが、ペットの一匹や二匹、いなくなったところでそう大事にはならない)

吉良(問題はチノのほうだ)

吉良(私に対して何らかの疑念を抱き始めているのだとすれば……看過できない)

吉良「どうだい、店の方は」

リゼ「見てのとおりで」

ココア「タカヒロさん、今日から夜のバーを再開させるんだって」

シャロ「あ、そうなんですか」

吉良「体調も回復したのでね。気持ちの整理もついたし。そのつもりだ」


カランコロン♪


リゼ「お、客が来た!」

ココア「いらっしゃいませ」

シャロ「いらっしゃいませ~、お好きな席にどうぞ」

吉良(ん、な……)


「やっぱこういう店って不良一人じゃあ入りづれーしよォ~」
「不良二人でも同じだろーが。ってオイ、客一人もいねぇぞ」
「おお、いいじゃねーか。貸し切りだぜッ」
「オレそんなにハラ減ってねーんだけどなあ~」


吉良(なぜだッ! なぜこいつらが、この店にィーッ!)

【路上】

マヤ「ってわけでさ、もうびっくりして」

メグ「へー、それはたいへんだったねぇ。ね、チノちゃん」

チノ「……」

ティッピー「……」

メグ「チノちゃん?」

マヤ「おーい、チノ!」

チノ「あっ! えっと、何ですか?」

マヤ「もー、ちゃんと話聞いてた?」

チノ「すみません、ちょっと考え事をしていて」

マヤ「あ、いいっていいって、別に謝んなくても」

メグ「何か心配事?」

チノ「心配といいますか。……ちょっと変な話なんですけど」

マヤ「変な話? 何それ、面白そう!」

チノ「いや、面白くはないと思いますけど……とにかく気になっていて」

メグ「悩みがあるんだったら、私たち、相談に乗るよ」

マヤ「誰かに話した方がすっきりするって。私らが力になるよ」

チノ「マヤさん、メグさん……」

マヤ「ま、とりあえずどこか店にでも入ろっか」

メグ「ここからだと甘兎庵が近いよね」

マヤ「じゃ、千夜んとこ行こう! チノ、それでいい?」

チノ「いいですよ」

ティッピー「……」

チノ(おじいちゃんに言われるまでは、そこまで気にしていませんでしたが)

チノ(確かに、最近のお父さんはちょっと変わりました)

チノ(毎朝、ラジオを聴くようになったり)

チノ(髑髏マークのネクタイをしたり。そういう趣味はなかったはずです)

チノ(それに、少し神経質な雰囲気で)

チノ(そして、今朝の出来事……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

―朝―

【ココアの部屋】

ココア「ZZZZZ」

チノ「ココアさん、朝ですよ。起きてください」

ココア「むにゃ……チノちゃん~もう食べられない……ZZZ」

ティッピー「いい寝顔じゃのう」

チノ「まったく、ココアさんは……。おじいちゃんは先におりていてください。私はもう少し待っているので」

ティッピー「それはできんな。今降りたらタカヒロと二人きりになるだろう。どうも気まずくての」

チノ「そこまで毛嫌いしてはお父さんが可哀想ですよ。違和感といってもおじいちゃんの気のせいなのかも知れませんし」

ティッピー「んー、とはいえ」

トントンッ

チノ「!」

ティッピー「!」

ギィィ

吉良「おはよう、チノ。ココア君の部屋にいたのか」

チノ「おはようございます」

ティッピー「……」

吉良「ん? どうしたんだい。ちょっと緊張したような顔をしているね」

チノ「い、いえ。そんなことは」

吉良「……」ジロリ

ティッピー「……ゴクリ」

吉良「ただの空耳だったのかも知れないが。今、この部屋の中から、チノのほかにもう一人、別の声がしたね」

チノ「……」

吉良「ココアくんの声じゃあなかったな。しわがれた、老人のような声だった。あれはいったい、何の声だったのかな」

チノ(……え?)

ティッピー「だっ……。……」

吉良「む?」

ティッピー(いかんいかん……つい『誰がしわがれた老人じゃ!』と叫ぶとこじゃった)

吉良「……。この部屋にはチノと、眠っているココアくん、あとはティッピーしかいないようだが」

吉良「どうなんだ、チノ?」

チノ(何の声って? そんなこと、お父さんはよく知ってるじゃないですか)

チノ(なのに、何でそんなことを聞いてくるんですか)

チノ(この人は……)

吉良「チノ。まさか――」

チノ「……『腹話術』です」

吉良「何だって?」

チノ「うさぎはほとんど鳴かないので、ティッピーの気持ちを想像して、私が声を当てているんです。ちょっと練習をしていました」


チノ「私が腹話術が得意だということを、お父さんはよく知ってますよね」


吉良「……」

吉良「……。そうだったね。チノは、腹話術が得意だ」

チノ「!!」

チノ(ティッピーが『おじいちゃん』であることを知っているのは私とお父さんの二人だけ)

チノ(それなのに、この『お父さん』はその秘密を知らない)

チノ(この人は……お父さんじゃない? でも、まさか……そんな)

ココア「ふぁ~あ~……あ、チノちゃん! おはよ~~って、あれ、タカヒロさんも?」


チノ「……」

ティッピー「……」

吉良「……」


ココア「みんな、どうしたの?」

チノ「いえ、何でもないです。おはようございます、ココアさん」

吉良「……朝のコーヒーを淹れるから、二人とも身支度をしたら降りてきなさい」

ピシャリ

チノ「……」

ココア「えっと、チノちゃん、何かあったの?」

チノ「いえ、何でもないです。ココアさんには関係のない話です」

ココア「ええー、私だけ仲間外れ!? ひどいよ~チノちゃんっ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チノ(ココアさんに変な心配を掛けたくはありません)

チノ(でも自分ひとりで考えてももやもやして……。誰かに話してしまえば)

チノ(……本当に話してしまっていいんでしょうか)

チノ(もし、お父さんにそっくりな人がお父さんのフリをしているのだとしたら)

チノ(あの人は誰なのでしょう? あの人の目的は? 本当のお父さんは今どこに?)

チノ(いっそ、直接聞いてみたほうが手っ取り早いかも知れませんが……)

ガラリッ

マヤ「おーす、千夜! 遊びに来たよっ」

メグ「こんにちはー」

チノ「お邪魔します」

ティッピー「……」

千夜「あら、3人ともいらっしゃい。チノちゃん、今日はティッピーも連れてきたの?」

チノ「はい」

千夜「噂をすれば影が差す、ね」

チノ「噂?」





露伴「『ティッピー』だと? 今、確かに『ティッピー』と言ったかね」┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨




<to be continued



何ていうか…その…下品なんですが…フフ……
ぴょんぴょん…しちゃいましてね…

バイツァダストをとりつけられるのは1人まで
タカヒロを怪しむのは1人と一匹
どうするんだこれ


スタンド使いではないけどうさぎは喋ります

私はサンドイッチを作らねばならない
と言う性を背負っているが幸せに生きて
見せるぞ!!

スタンド同士は引かれ会うのにいつまでも杜王町にいるからこうなる。

おもしろい

同僚詳し過ぎワロタ

上空ではカラスにさらわれるあんこの傍を「吉影ェ~」とか声が聞こえる写真が飛んでるのだろうか

【ラビットハウス】


吉良「……」


億泰「このガイドを見てよォ、なんつーの。ピーンと来たっつーか。いっぺん寄ってみるかーって思ったわけ」

仗助「ま、オレはこいつの付き添いみたいなもんでよ」

リゼ「そういや前にラビットハウスの紹介記事を書いてもらったことがあったな」

ココア「あ、そうだったね!」

シャロ「そのガイド、こっちのページには『フルール・ド・ラパン』ってお店が載ってまして」ペラ

億泰「ふんふん」

シャロ「ハーブティー専門の喫茶店なんですが、豊富な知識を持ったスタッフがあなたの健康状態に合わせたハーブティーを丁寧に紹介してくれますよ」

億泰「ほォ~」

シャロ「お薦めのお店なので興味がありましたらぜひご来店ください」ニッコリ

リゼ「さりげなく自分の店まで紹介して満面の営業スマイル!」

ココア「シャロちゃん、商売上手な子!」

吉良(なんて日だ……。ティッピーとチノの挙動に神経を尖らさざるをえない。それだけでも心の平穏が脅かされているというのにッ!)

吉良(東方仗助と虹村億泰ッ!)

吉良(なぜよりにもよってこいつらがこの店に来る……? もっと名の知れた、評判の店など掃いて捨てるほどあるだろうに)

吉良(私の同じく特異な能力を有する『スタンド使い』……スタンド使い同士は引かれ合うとでもいうのか)


リゼ「メニューをどうぞ」

億泰「おう、ンン~どれどれ……そーだなァ」

億泰「オレはこのサンドイッチとこっちのケーキ、それからココア特製パンケーキってやつも頼むぜ」

仗助「オメー、そんなに食うのかよ」

億泰「今日昼飯食い損ねたからマジに腹減っててよォ~」

シャロ「甘いものがお好きなんですか?」

億泰「オレ不良なんだぜェ~。不良が甘いもん食ってうつつ抜かしたりとかしねーぜ」

仗助「こいつ超甘党だぜ。月曜の朝なんかには通学路の途中の店でアイス買って食ったりしてよォ~~」

億泰「あァ? だってよォ~、ガッコ始まる憂鬱な月曜の朝だぜェ~。甘いアイスでも食って慰めにしねーとやってらんねーよッ」

仗助「やっぱ好きなんじゃねーか」

ココア「学校に行く前にアイスっ!」

リゼ「何という不良!」

シャロ「不良……なのかしら」

吉良(不幸中の幸いは、こいつらが私の正体を知ってこの店に来たわけではないということか)

吉良(私はこの喫茶店のマスター・香風タカヒロなのだ。何も恐れることはない。堂々として、客と店主としての関わりを演じていればいい)

吉良(だが、もしこいつらがこの店の常連にでもなったりしたら……最悪の事態だ。常にこいつらの目を欺くために神経をすり減らす生活を送るなど、あってはならない)

吉良(それに、こいつらの仲間が連れ立って店に来る可能性もある。あの空条承太郎が来店するおそれもある)

吉良(それだけは避けなければ。何としてもッ!)

吉良(徹底的にクソみたいな料理を提供して二度とこの店には来ないように仕向けるか)

吉良(いや、待てよ)

吉良(やつらは私の正体を知らない。今、この状況は逆にチャンスなんじゃあないか?)

リゼ「飲み物は何に?」

億泰「そォーだなァ、このオリジナルブレンドってやつにすっぜ」

シャロ「そちらは?」

仗助「オレはハラはそんなに減ってねーからなァ~。カプチーノで」

ココア「ご注文は以上でよろしいですか?」

億泰「おうよ」

ココア「かしこまりました~♪」

シャロ「少々お待ちくださいませ」

ココア「よーし、パンケーキを用意するよ~」

シャロ「ケーキはこっちだったわね」

リゼ「あとサンドイッチだな。コーヒーは」

吉良「コーヒーは私が淹れよう」


億泰「おお、アンタがここのマスターか。オレ結構味にはこだわりあっからよォ、腕前見せてもらうぜェ~~」

吉良(そうだ。これはまたとない好機なのだ)

吉良(幸い他に客はいない。料理を出し終えたら、ココアたち3人は休憩を取らすなりなんなりして退け)

吉良(この場で、仗助と億泰を始末する。いつものように、跡形もなく爆殺する)

吉良(3人には客は帰ったと説明すれば問題はあるまい)

吉良(私の生活を脅かすリスクは、たとえわずかでも消し去ってしまうのだ。この杜王町で、これからも静かに暮らしてゆくためにッ!)

吉良(やつらを確実に始末する方法)

吉良(このコーヒーを、爆弾に変える。それぞれコーヒーカップに注ぎ、提供する)

吉良(そして、やつらがコーヒーを飲み終えたところで起爆スイッチを押す)

吉良(やつらは肉体の内部から爆発し、なすすべもなく粉砕され、無に帰す。証拠は何も残らない)

吉良(確実に、な)ゴゴゴゴゴゴゴゴ

こういうとこで水を差すのは無粋かもとは思うんだが

キラークイーンがポットの中のコーヒーを爆弾に変えて
そのコーヒーが二つのカップに注がれたとき
見かけ上爆弾が二つに増えたように見えるけど
カップの中のコーヒーは爆弾のままなんだろうか?

>>78
空気弾の時は割れた弾が両方爆発してたような

>>79
ということは一度爆弾にしたものは見かけ上複数に分かれていても
一つの爆弾として扱われるってことか

爆弾にした液体ぶちまけて一斉に爆破するのとか便利そう(小並)

大きな石を爆弾に変えて砕くか握り潰す
それを掴んで投げて適当なタイミングで起爆
...最強じゃないか。キラークイーンって液体は爆弾に変えられたっけ

>>81
海みたいなデカイのは無理そうだがその“物”としてある程度の大きさまでならやれそうだ

エアガン

確かにエアガンなら高速で当たるからいいかもしれないけど
不便すぎないか?

スタンドで石を投げたほうが速い
どっちにしろ連射はは利かないんだから

【甘兎庵】

露伴「ふむ」

ティッピー(な、なんじゃこの若造は……さっきからワシのカラダをじろじろと、舐めまわすようにッ!)

露伴(見た目はまあ、特に変わったところは無いな。アンゴルモアウサギか。この種類のウサギは初めて見たが。足は何処だ?)

チノ(なんだこの人……)


マヤ「なー千夜、あの人誰?」

千夜「有名な漫画家さんらしいのよ」

メグ「変な髪形だねー」

千夜「それは言ってはいけないと思うわ」

露伴「ちょっと触らせてもらおう」ガシィッ

チノ「っ!」

ティッピー「痛っ! 何するんじゃ~ァ!もっと優しく扱わんか!」

露伴「!!」


露伴「なん……だと……」

露伴「ウサギが、しゃべった?」

チノ「ぃ、ぃぇ……」

ティッピー「……っ」

千夜「今のはチノちゃんの腹話術なんですよ」

露伴「腹話術だと?」

チノ「……」

ティッピー「そういうことじゃ」

露伴「……」

マヤ「そうそう、チノの特技」

メグ「上手だよねー」

露伴「なるほど、腹話術か。ほうほう」

チノ(な、何なんですかこの人は? どうしてこんなにティッピーに興味を……)

露伴「それは納得の理由だ。――と言って」

露伴「この岸辺露伴が引き下がるとでも思ったかね?」

ダッ!!

ティッピー「!?」

露伴「こいつはちょっと借りていくぞ!」


チノ「なっ!?」

マヤ「ティッピーが!」

メグ「さらわれちゃった~!」

千夜「あらあら……」

チノ「千夜さん、どういうことですか? どうしてあの人はティッピーを?」

青山「すみません、私が『うさぎになったバリスタ』のことをお話したばっかりに」

マヤ「どういうこと?」

千夜「あの漫画家さん、とても研究熱心な人なの。リアリティーを追及するんだ……って」

千夜「きっと、ティッピーが本当にチノちゃんのおじいさんの生まれ変わりか何かだと思い込んでいるんだわ」

チノ「!!」

チノ(そんな……そんなことはっ)ダッ

千夜「あ、チノちゃんっ」


「ちょっと甘いものでも食べたい気分だなァ。
由花子さんはどうですか?
このお店なんて、雰囲気あって寄ってみたいなーって、僕思うんですけど」

【路上】

露伴「ここまで来れば邪魔は入るまい」

ティッピー「……」

露伴「ぼくは普通の人間よりも、周りをよく観察しているつもりだ」

露伴「ティッピー、お前が二言目を発した時、ぼくは咄嗟にあの小娘の口元に視線を集中させた」

露伴「素人目に見ても、腹話術を使っているような素振りはなかったよ」

露伴「もう一度、話してもらおうか。お前は『何者』なのかを」

露伴「仮にお前が青山の小説の通り、本当に元は『人間』だったのならば」

露伴「現実にどういった経緯でウサギになってしまったのか」

露伴「今、こうやってウサギになったお前は何を感じているのか」

露伴「そこに興味があるのだよ」

ティッピー(この若造、小説の話を聞いてワシの正体を嗅ぎつけたというのかッ!)

ティッピー(なぜワシのことを知りたがっておるのじゃ? 興味? それだけか?)

ティッピー(怪しい! 今のタカヒロも怪しいがこいつも相当怪しいぞ!)

ティッピー(絶対に喋らんわい!)

露伴「もっとも、これは非常にデリケートな事情ともいえる」

露伴「だから、あえて無理矢理聞き出すつもりはないさ」

ティッピー(何じゃと?)

露伴「ちょっとの間、ゆっくり眠っていてくれればいい――『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』!」

ティッピー「!!?」

パラリィィィ~~~


露伴「ある程度の知能を持つ動物なら『本』にできる。どれどれ」

露伴「……な、なに? これはッ……!!」


<死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死>


露伴「『死』だと?」

露伴「ヘブンズ・ドアーで読めるのは対象が記憶している嘘偽りのない『人生の体験』」

露伴「それが『死』の文字で埋め尽くされているということは……こいつはもう死んでいる、ということになる」

露伴「そんなはずはない。こいつはついさっきまでピンピンしていた。生きていたんだぞ」

露伴「ハッ……待てよ」

露伴「青山の話だと、モデルとなった先代のマスターはすでに亡くなっているという」

露伴「ティッピーはマスターのペットとしてそれ以前から飼われていた」

露伴「ティッピーがマスターの死後にただのウサギではなくなったとするならば」

パラパラパパラパラッ

露伴「!……あるぞ!『死』に塗りつぶされる以前の記憶がッ!」

露伴「おそらく、ただのウサギだったころの記憶だ。読める!」

露伴「何か、何かないのか。死んだマスターがティッピーに『乗り移る』きっかけの手掛かりはッ」

露伴「む、これは」

<苦労して建てた念願の喫茶店だが、経営が軌道に乗らんのう>

<いっそウサギになれたら、どんなに楽かのう>

<おじいちゃん、このもふもふしたのなに?>

<おじいちゃんのごちゅうもんは、うさぎさんになることなの?>

<おじいちゃんに『おまじない』をかけてあげるね>

<いつかうさぎさんになれますように>


露伴「『ウサギになりたい』という言葉の主は先代マスターだな。おそらく飼い主の会話を傍らで聞いていたのだろう」

露伴「では『おまじない』をかける……この発言は誰のものか」


「か、返して……ださい」

露伴「追ってきたのか」

チノ「はぁ……はぁ……」

チノ「お願いです……」

チノ「ティッピーを……返してください」

露伴(先代マスターを『おじいちゃん』と呼んでしかるべき人間)

露伴(この娘かッ!)

露伴(この娘が知っているのか、『うさぎになったバリスタ』の真相をッ!)

【上空】

吉廣「まずいッ! まずいぞォ~ッ!」

吉廣「岸辺露伴があの小娘にスタンド攻撃を仕掛けておるッ!」

吉廣「このままでは吉影のもとにたどりついてしまうッ!」

吉廣「吉影に知らせねば! 今すぐにィ~ッ!」


ひゅるるるるるるるるゥ~~~


吉廣「む、なんじゃ、上から?」


パクゥ~ッ

【路上】

千夜「ごめんなさいね、探すのを手伝ってもらって」

康一「いえ、いいんですよ。ぼくも露伴さんの知り合いですから。まったくあの人は。自分の創作のためなら何でもするような人なんですよ」

千夜「露伴さんもチノちゃんもどこに行っちゃったのかしら?」

康一「時間的にそんなに遠くにはいっていないと思いますけど」


ひゅるるるるるるぅ~~


康一「! 何かか上から落ちてくる! 向こうの原っぱの方に!」

千夜「あら」


ドスンッ


あんこ「……」ゴゴゴゴゴゴゴ

康一「そ、空からウサギが降ってきた?」

千夜「あんこだわ」

康一「知っているんですか?」

千夜「うちのお店の看板ウサギなの。よく鳥にさらわれるのよね」スタスタ


千夜「さ、あんこ。帰りましょうか」ヒョイ

あんこ「……」

千夜「あら、何かくわえているわ。何かしらこれ、写真?」

吉廣「放さんかァーこのクソウサギがァ~!」


康一「! 写真の親父ッ!!」


吉廣「! お前はッ!」

千夜「写真の……親父?」


康一「千夜さん! その写真に触れちゃあダメだッ!

千夜「この写真がどうかしたの? 何も写ってないみたいだけれ……ど……」

ギラリ

千夜「え、な……写真の中から……や、矢?」

吉廣「小僧、そこから一歩も動くなよ。少しでも動いたら矢でこの娘の脳天を貫くぞ」


康一(千夜さんには親父の姿は見えていないが、矢は実体があるから見えているんだ)

康一(この距離ならぎりぎり、エコーズの射程圏内だろう……けれど、ちょっとでも動きを見せたら)

康一(あの親父は躊躇なく千夜さんを矢で貫くだろう。スタンド使いの素質がない人間は、矢で貫かれると死んでしまう!)


吉廣「……」ジリ

千夜(な、何なのかしら……この状況。何が起こっているの?)

千夜(や、矢が近づいて来る……)ジリ

あんこ「……」

吉廣(あの小僧のスタンドの射程圏はそんなに長くはないはず。この娘に矢を突き付けて後退りさせる)

吉廣(射程圏を抜ければ飛んで逃げる。もうわしを追っては来れまい。何としてもこの場は乗り切らねばならんッ!)

ジャリッ

吉廣「抜けたッ」

ビュゥゥン!

康一「……」


吉廣「よォし!逃げおおせたぞいッ!」

ぎゅるるるるるるるるるぅ

吉廣「な、何じゃこれはァ~!? か、髪の毛ェェェェェ!?」

ぎゃるるるるるるるるるぅ

康一「僕のスタンドからは逃げおおせたようですが、残念でしたね。僕には仲間がいるんです」

康一「ありがとう、由花子さん」


由花子「こいつが例の写真の親父なのね」

康一「写真の面を内側に折り曲げて。そうしたら、何もできないから」

由花子「分かったわ」グニィ

吉廣「」

康一「露伴さんは見つかった?」

由花子「まだだけれど、やっぱり康一君のことが気になっちゃって(そっちの女と一緒なのも気に食わなくて)」

千夜「……」

康一「あ、千夜さん。大丈夫……ですか?」

千夜「写真の中から矢が出てきたり……女の人の髪の毛が何メートルも伸びたり……うふふ……私夢でも見てるのかしらぁー」

露伴「おーい、康一君、それとプッツン由花子! ちょうどいい所に」

康一「露伴さん!……その腕に抱えてる子は」

由花子「何、誘拐でもしたの?」

露伴「冗談を言っている場合じゃあない。この小娘、香風智乃というのだが」

チノ「zzz」

露伴「ちょっとした好奇心からこの娘を『本』にして読んでみたところ、いろいろと分かったことがあってだな」

康一「分かったことって?」

露伴「時間が惜しい。詳しい話は後だ。ただ一つ、言えることは」

露伴「この娘の父親――香風タカヒロが、吉良吉影である可能性を否定できないということだ」

康一「何ですって!」

千夜(また私が空気になってるわー)

露伴「あくまで推測の域を出ないが、香風タカヒロ本人に当たって確かめる価値は十分にあると思う」

康一「それは大きな成果じゃないですか!」

由花子「こっちにも成果があるわ。写真の親父を捕まえたわよ」

吉廣「ぐぬぬぅ~!」

露伴「なんだと!」

康一「矢も回収しました。これで、写真の親父がこれ以上新たな敵スタンド使いを生み出すことはできない。吉良は孤立無援のはず!」

由花子「で、その香風タカヒロというのはどこにいるの?」

露伴「ラビットハウスという喫茶店のマスターとして働いているはずだ」

康一「ラビットハウスですね! 確かめに行きましょう! 吉良が次の殺人を起こす、その前に!」

露伴「ああ」

由花子「その店の場所は?」

千夜「私が案内します」

康一「千夜さん」

千夜「さっぱり事情は掴めませんけど……何か、大変なことになってるんだなってことは私にも分かりました」

千夜「ラビットハウスには私の大切な友達がいるんです。みんなが心配で、居てもたってもいられなくて!」

千夜ならスタンド発現しそうだけどな。
遠隔操作型の

バイツァダストが発現しないから吉良オワタ

由花子さんが活躍してる
いいね、いいね!

続きに期待中

【ラビットハウス】

億泰「何つーかなァ~」もぐもぐ

億泰「例えるならドリンクバーで飲む本格焼酎、ちょっと値の張るコンビニのサンドイッチ」

億泰「けっして悪くはねぇんだが、飛び抜けて美味いっつーわけでもねぇ」

リゼ「微妙に辛口のコメント!」

億泰「……ッ……」ボロボロ……

シャロ「泣くほど!?」

億泰「だがよォ……」

億泰「女が真心込めて作ってくれたパンケーキの温かさ……ぐっ……」

億泰「腹が幸せっつーのは……こういうことを言うんだなァ~」

ココア「ありがとう。またいつでもお店に来てねっ!」

億泰「おう、また来るぜ、嬢ちゃんよォ」

仗助「……つーか、コーヒーはまだ出てこないのか?」

シャロ「えぇと、まだマスターが用意している最中みたいで」

ココア「おいしいコーヒーを淹れるのには時間がかかるんだよ」

億泰「おー、言われてみりゃ、そうだろうなァ。よく分かんねーけど」

仗助「……」

シャロ「そういえばさっき、味にはこだわりがあるって言ってましたけど、行きつけのお店とかあるんですか?」

億泰「おう、あるぜ。トニオっつーイタリアの料理人が開いている店があんだけどよォ~~」

億泰「この店の料理がこれまたスゲェんだぜ。聞きてぇか?」

ココア「うん、聞きたい聞きたいっ」


仗助(さっきのマスター、キッチンの中に入ったままずっと顔を出さねえ。ちと、妙だな。コーヒーを淹れるっつても、こういう専門の喫茶店ならよォ)

リゼ(おやじさん、いつもはカウンターテーブルでハンドドリップで淹れているのに。今日はキッチンで用意してるのか?)

【厨房】

吉良(カプチーノやカフェラテのベースになる『エスプレッソ』。エスプレッソの淹れ方が、コーヒーの味を左右する決め手になる)

吉良(挽いた豆を、『かき氷』のような形になるよう、やや多めにフィルターに入れ)

吉良(粉を平らにして不要な量をそぎ落とす。タンパーで粉を上から押し固める)

吉良(フィルターへの詰め方が適量で、密度が均一であるほど湯の通りが安定し、『うまみ成分』が抽出される)

吉良(とはいえ、今回は既に用意してあるコーヒーを使うがね)

吉良(奴らの目の前でコーヒーを淹れるのは、具合が悪い。スタンド能力を使う必要があるからな)

吉良(キラークイーン!)ボゥゥン

吉良(今、キラークイーンはポットの中のコーヒーを爆弾に変えた)

吉良(コーヒーは『ひとかたまりのモノ』として一つの爆弾となっている)

吉良(従って)

トポポポポポ

吉良(二つのカップに分けたところで一つの爆弾であることに変わりは無い。スイッチを押せば、同時に爆発する)

吉良(仗助と億泰。どちらか一方だけを消せば、もう一方が必ず不審を抱くことになる)

吉良(二人まとめて同時に始末すること。これが絶対条件だ)

吉良(さて、あまり長く待たせると怪しまれるな。そろそろ出すとするか。まず、人払いをしないとな)

【店内】

シャロ「へぇー、凄いんですね。そのトニオさんの料理って」

ココア「今度みんなで行ってみる、シャロちゃん?」

億泰「マジでオススメだからよォ~。目からウロコっつーか、目ヤニが綺麗に流れ去るぜ」

リゼ「め、目ヤニ……」

仗助「オメー、食べ物屋で汚ねー話すんじゃねーよ」


吉良「ココアくんたち、ちょっと来てくれるかな」

【ラビットハウス近郊・物陰】


千夜「見えますか? うさぎがコーヒーカップを抱えた看板の下げてある……」

露伴「ああ、分かるよ。あの店がラビットハウスか」

康一「お店は開いているようですね」

千夜「この時間帯は、いつもはチノちゃんたちが店番をしているの。今はココアちゃんとリゼちゃんがお店に出ていると思うわ」

由花子「マスターは不在、ということなの?」

千夜「いえ、いらっしゃるときもあります」

露伴「中の状況が分かればいいのだが。マスターは不在なのか、店員と客は何人いるのか」

千夜「私が携帯電話でココアちゃんに連絡を取ってみます。ココアちゃんはラビットハウスに下宿しているからいる可能性が高いわ」ゴソ

千夜「あら?」

康一「どうしました?」

千夜「携帯が……ないわ。どこかで落としちゃったのかしら」

由花子「公衆電話から掛けてもいいんじゃないの?」

千夜「それもそうですね。近くにあったと思うので、行ってきます」

康一「僕も付き添いますよ。承太郎さんや仗助くんたちにも連絡してきます。万一に備えて、加勢してもらいましょう」

露伴「ああ、頼むよ。康一くん」

由花子「私たちはここからラビットハウスを見張っているわ」

【甘兎庵】

チノ「ぅうーん……。……はっ!」

チノ「こ、この部屋は?」

ティッピー「ZZZ」

チノ「ティッピー……」

チノ(えっと……私は確か、連れ去られたティッピーを追って……それで)

チノ(何が起きたんでしょうか……)


マヤ「あ、チノ!」

メグ「目が覚めた?」


チノ「マヤさん、メグさん。えっと……ここは?」

マヤ「千夜の部屋だよ。しばらく寝かせておいてくれって頼まれてさ」

メグ「千夜ちゃん、急用ができたからって、あの漫画家さん達と一緒にどこかに行っちゃって」

マヤ「私らが代わりに店番してるんだ」

チノ「そうなんですか」

青山「チノさん、お身体の具合は?」

チノ「いえ、大丈夫です。あの……私は、眠ってたんですか? よく覚えてないのですが……何があったのか」

青山「私は現場に居合わせなかったので分からないのですが」

青山「露伴さんは何かを知ったかのような様子で、『事情は後で説明しよう。説明せざるを得ない場合に限ってな』と」

チノ(露伴さん……。あ、あの人。ティッピーを連れ去った張本人)

チノ(事情というのはいったい? 私たち家族の秘密に関すること?)

チノ(私はあの人にティッピーのことを話してはいません。もともと知らない人と話すのは苦手ですし)

チノ(それにおじいちゃんだって、あの人に話したりはしないでしょう)

チノ(第一、それを知ったところで、私たちを置いて急いでどこかに行く事情なんてあるでしょうか?)

チノ(それも、部外者である千夜さんまで連れて)

チノ(何か……何かが起こっている)

ティッピー「ZZZ」

チノ(それが家族に関する事情であるならば……露伴さんが向かった先はやはり)

チノ(私の家――お父さんのところなのでしょうか?)

【ラビットハウス】

億泰「静かに、なっちまったァ」

仗助「ああ」


吉良(リゼとシャロには小麦粉が切れているので買い出しに行くよう言い渡した。しばらくは戻って来るまい)

吉良(ココアには休憩を取らせた。今は自分の部屋に戻っている)

吉良(今、この場には私と仗助、億泰の3人しかいない)


億泰「おいマスター! もったいぶってねぇでいい加減コーヒー出せよな」

仗助「もう冷めきってんじゃあねーの?」


吉良「はい、大変お待たせいたしました」

吉良「今、お出ししますので」

ヴーンヴーン

吉良(む)

吉良(携帯が……?)

吉良(非常時の連絡手段として用意したこの携帯電話、これにかけてくる相手は一人しかいない)

吉良(何かあったのか?)

吉良「失礼、もう少々お待ちをッ」タッ

【電話ボックス】

康一「今は露伴さんと由花子さんが店の様子を窺っています」

康一「はい、はい、分かりました。それでは」ガチャン

康一「仗助くんたちは不在だったけど、承太郎さんとは連絡がつきました。すぐに駆け付けるそうなので、僕たちはここで待機していましょう」

千夜「は、はい」

千夜「あの……。もし本当に吉良っていう人がタカヒロさんの姿をしてなりかわっているなら……本当のタカヒロさんは今、どこに……」

康一「……言いにくいことですけど、もう、亡くなっています。僕たちの目の前で吉良に殺されました」

千夜「そんな……」

康一「まだマスターが吉良だと決まったわけじゃないけれども、それが現実になってしまうかもしれない」

康一「だからこそ、これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。何としても、吉良を倒さなくちゃあいけない!」

康一「千夜さん、友達のココアさんとは連絡は取れたんですよね?」

千夜「ええ。でも、上手く説明できる自信がなかったから、とにかく店を出るようにって伝えたわ」

【ラビットハウス・洗面所】

吉良「何の用だ」

≪よく聞け、吉影ェ≫

吉良「声が聞こえづらいな」

≪わしは今、岸辺露伴の持つカバンの中に押し込まれておる。大きな声は出せん。やつらに捕まった≫

吉良「なんだとッ……」

≪捕まる直前に近くの小娘から携帯電話を掠め取った。奴らは気づいておらんはずじゃ≫

≪露伴はスタンドを使って香風智乃の思考を読んだ。お前に繋がる手掛かりを掴んだに違いない≫

≪外の様子は見えないが、露伴たちがお前のいる喫茶店に向かっておるのは間違いないッ≫

≪もし店にいるならば今すぐに逃げろッ! 逃げるんじゃ~ッ!≫

吉良「ッ」ガリガリガリ

吉良「何ということだ……」

吉良「この店には仗助と億泰がいる……」

吉良「そこに私の事情を知っている露伴や承太郎たちが加わったら……」

吉良「ぐ、ぐッ」ガリガリガリガリ

吉良(落ち着け! 落ち着くんだ)

吉良(まだヤツらは現れていない。不本意だが、今は逃げ切ることが先決だ。このまま裏口から……)

吉良(ハッ……待て!)

吉良(私は今、コーヒーを爆弾に変えている。あの爆弾を処理しなければ、次の爆弾を作り出すことができないッ)

吉良(仗助たちに気づかれないように、厨房のコーヒーを片付けなければ)


ガシャーン!!


吉良「!?」

【ラビットハウス近郊・物陰】

露伴「だから言っているじゃあないか」

露伴「あの店のマスターは殺人鬼の可能性がある。店員や客に身が危険にさらされる可能性があるんだぞ」

シャロ「リゼ先輩、何なんですか、いきなり……この人達」

リゼ「おやじさんが殺人鬼だと? 何を根拠に! 怪しいやつらめ!」チャキ

由花子「口で言っても伝わりそうにないわね」

露伴「そのようだな。穏便に協力してもらいたかったんだがね。仕方がないな」

【店内】

億泰「あちゃ~」

仗助「おいおい……」

ココア「ご、ごめんなさい~!」


吉良「何の音だ!」ザッ


ココア「あの、えっと」

ココア「千夜ちゃんから電話があって、よくわからないけど……急いで外に出てって」

ココア「……それで出ようとして、そしたら」

ココア「お客さん達のコーヒーがまだ出されてなかったら、運んであげようと思って」


吉良「落としてしまったのか。何てことをしてくれるんだッ!!」

パァン!

ココア「あ、…………」

億泰「お、おいオメーよおッ」ガタッ

仗助「何もぶつことはねぇんじゃあねーの?」ガタッ

吉良(コーヒーが床にぶちまけられてしまった。あちこちにしぶきが飛んでいる……これではやつらに気づかれずに処理できない……)

吉良(ここで爆発させれば私が『吉良吉彰』であることがバレてしまう……)

吉良(早く逃げなければ露伴たちが来る……)

吉良(どうする?どうする?どうする~ッ!!)


吉良「ふ、ふ、ふ……ははははッ……」

ココア「タ、タカヒロ……さん?」


仗助「何だ……このオッサン」

億泰「様子がおかしいぜ」

吉良「幸せというものは、細やかな『気配り』と大胆な『行動力』さえあれば、享受できるものなのだよ」

吉良「私はそのことをよく知っているし、実際、そういうふうに生きてきた。これまで――そして、これからも」


吉良(あちこちにまき散らされたコーヒー弾……)

吉良(砕けて散乱したコーヒーカップ……)

吉良(イスやテーブル、店内にある備品の数々……)

吉良(私は)

吉良(どんな手を使っても)

吉良(生き延びて――みせるぞッ)


カチッ


<to be continued


全部爆破したら当人の巻き添えは無いのかな?

この吉良は最終決戦で自分を顧みずにスイッチを押すな

続きマットるレス

続きマットるレス

もう5月なのに、まだ更新してないのか。結局このssも中途半端かよ!

上げんな

【ラビットハウス近郊】


シャロ「あ、あ、……?」

リゼ「――」

露伴「現在、客が二人。店員の一人が休憩中でマスターも店内にいるようだ。この二人は買い物を頼まれて出てきたらしい」

由花子「客がいるのね。もしマスターが本当に吉良だったとしたら、いきなりスタンド能力は使えないわ。目撃者を増やしたくはないでしょうし」

露伴「ああ、奴は他人に成りすまして身を隠すことが目的だからな。こちらとしては客の存在は好都合ともいえる」

由花子「でも人質として利用される可能性はあるわね」

露伴「確かにな。だが、店内の状況が分かっただけでもこちらは断然有利になる。客が帰らない限りマスターは店を離れられないからな」

シャロ「あ、あなたたち! リゼ先輩にいったい何を? ……催眠術?」

由花子「ある意味、催眠術みたいなものかしら」

露伴(客の二人は不良の学生風。一人はガタイが良くてブカブカの学ランにハンバーグのようなリーゼント。もう一人は刈り上げで顔面に傷のある涙もろい男)

露伴(ハンバーグのようなリーゼント?)

露伴「この客の二人ッ!」

シャロ「へ?」

由花子「どうしたの?」

露伴「まさか――」


\ドォンッ!!!!!/

【電話ボックス付近】


千夜「!」

康一「どうしました、千夜さん?」

千夜「今、何か……音が聞こえたような」

康一「音? 音ならいろいろ聞こえてますけど。人の話し声とか、車の音とか」

ゴロロロロロロロロロロロロ

康一「せ、戦車!?」

千夜「おかしいわ。この辺りの道は普段は車の通行が禁止されているのに。近く何かあったのかしら」

康一「何か……緊急事態が? 悪い予感がする」


「待たせて済まない、康一くん」

【ラビットハウス】


シュ――――


億泰「な、何が……起きたんだァ。うぐァッ……」

仗助「動くんじゃ……ねぇ。億泰……」

億泰「仗助! オメー、どうしたよ、その傷! 血塗れじゃあねーか! 折れた木片とか、ガラスの破片があちこち突き刺さってるぜ!」

仗助「ケッ。オメーも人のこと言えねーての」

億泰「ぐお、確かに俺もケガしてらあ……。何だ、今のは。床から急に火花が飛び散ったようにッ」

仗助「見ろ。カウンターの上のポットも破裂している。おそらく、あのぶちまかれたコーヒー。あれが爆弾にされていたんだ」

億泰「な、何だとォ! 爆弾っつーことはまさか!」

仗助「ああ、見たぜッ! あのマスターの右手の動き。奴は確かに『スイッチ』を押していた!」

億泰「あのマスターが吉良吉彰! コーヒーを爆弾に変えてたってえことは、俺達二人に飲ませて爆死させるつもりだったのか!」

仗助「おそらくな……。俺達がこの店に来たのは偶然だが、これを俺達をブッ殺す好機と見たんだろうぜ」

億泰「ヤロォ! 汚ねー手を使いやがってぇーッ!!」


露伴「仗助! 億泰!」


仗助「岸辺露伴!」

億泰「山岸由花子もか!」

露伴「これは……お前たち、吉良と交戦したんだな? やはりマスター・香風タカヒロが吉良だったのか!」

由花子「あんたたちも吉良のもとまでたどり着いていたのね」

億泰「い、いや……俺たちはよォ」

仗助「どうやら、見えてきたぜ。なぜ吉良は、自分の正体がバレることを覚悟でヤケっぱちな自爆行為に出たのか」

仗助「どういうルートかは知らないが、露伴たちが奴の正体に気付いて、迫ってくることを知った吉良は間一髪で逃げるためにこの方法を選んだ」

露伴「お前たちの事情は知らないが、今はとにかく吉良だ。奴は――」

シャロ「お、お、お客さん!? そ、その怪我はっ……」ガクガク

リゼ「……」

由花子「あんたたち! 入ってこないように言ったでしょう!」

仗助「かすり傷だぜ……。億泰のやつは俺が治すから心配いらねー」


「お、おい……何だ今の爆発ッ!」
「テロか!?」
「見て! 怪我人がいるわよォ~~!」


露伴「まずい! 店の周りに野次馬が集まり始めた。紛れ込まれるとまずい。早く吉良を捜さなければ!」

由花子「奴は逃げたのッ?」

仗助「いきなり爆発を食らったからな。だが、ここにいないってことは逃げたんだろうな」

億泰「そういや、あのおっちょこちょいの嬢ちゃんもいねえぜ!」

シャロ「コ、ココアのことよね? ココアも爆発に巻き込まれたの!?」

仗助「照準の合った着弾ではなかったから、俺達も爆発して消し飛ばされずにすんだ。あの子も消えてなくなっちまったわけじゃねえはずだ。となると……」

億泰「吉良が連れてったってのか?」

ピポパポパポ

リゼ「おやじか。私だ」

シャロ「リゼ先輩」

リゼ「至急、ラビットハウスに衛生兵の派遣を要請する」

リゼ「ラビットハウスにテロリストが侵入して人質を取って逃走している」

リゼ「直ちに追跡を開始するので応援を願う」


<安心しろ。すでに緊急配備をしている。俺はお前のことを『いつも見守っている』からな>プツッ


リゼ(……おやじ)

リゼ「犯人はタカヒロさんの姿に化けている爆弾魔。そういうことでいいんだな?」

リゼ「シャロ、ケガ人の介抱を頼む」

ダッ


露伴「おい、待て!」

仗助「コラ! 行くな! 相手は普通の人間じゃあねぇ!」

リゼ「私は軍人の娘だ! 大切な友達が傷つけられるのを黙って見ていられるかッ!!」


リゼ(無事でいてくれ……ココア!)

【住宅街】


凛(あら、あれってラビットハウスの……)

凛(そんなことより翠ちゃんを捜さないと!)

凛(締め切りは明日までだって伝え忘れちゃったし。相変わらず連絡付かないし。もう甘兎庵にはいないだろうし)

凛「翠ちゃーん! どこー?」


吉良(人探しをしているのか。まったく、ご苦労なことだ)

ココア「――」ひょい

吉良(万一、知人に出くわしたり、露伴たちに出くわしたりした場合、コイツを利用して切り抜けようと思っていたが)

吉良(そろそろ片付けるか。爆音に驚いて気絶しているから静かで都合もいい)

吉良(フフ……)

吉良(あれだけ近距離で爆破しながら私はほぼ無傷。咄嗟にスタンドでテーブルを引き寄せてガードしたとはいえ、これは奇跡的だ)

吉良(さらに、爆音を響かせたことで店の周囲に野次馬がわんさか集まった状況も、逃走するには好都合だった)

吉良(そして親父からの電話。カバンの中にいるとはいえ、ある程度周りの音を拾って情報を収集できる。露伴はまだ、現場から動いていない)

吉良「ふっ。ハハハハハハッ!」

吉良「やはり! やはり運はこの吉良吉彰に味方しているッ!」

吉良「さて、まずはお荷物を処理して安息の地に向かうとしようじゃあないか」

ココア「――」

吉良「ペロリ」

吉良「ふふ、君の手はとても甘くてコクのある味がするね。まるでココアのようだ」

吉良「私が好きなのは『女性の手』。他の部分は必要がないんだよ」

吉良「静かに、要らない部分を爆発させてあげよう」


ジャリ


チノ「ココアさんを放してください、この変態」

おつ

ここでチノか。いいぞ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom