神谷奈緒「好きを探して」 (78)

今更ながら、クリスマスの話です。

地の文。奈緒目線。

よろしくお願いします

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「奈緒、雨降ってきたよ」

 窓の外の降り出した雨を見て、加蓮が言った。目の前の紙に頭を抱えていたあたしは「それがどうかしたのか」とぶっきらぼうに答えた。

「プロデューサー」
「は?」

 窓の外を見ていた加蓮は、嬉しそうに振り返って、

「プロデューサーに傘持っていってあげなよ」

 傘立てを見ると、まるでそこが定位置といわんばかりに、黒い傘が今日も置いてあった。

 またか……。大体、なんであの人はいつもいつも傘を忘れるんだ。
 仕事のスケジュールとかは忘れたことがないくせに。

 この場にいない、優秀かどうかよくわからないプロデューサーさんに、
 すっかりあきれながら、あたしは一つため息をこぼした。

 あたしがアイドルを始めて間もない頃、プロデューサーさんが傘を忘れて出かけたことがあった。
 その時も今日と同じように、加蓮が窓の外を見ながらニコニコして、
 あたしに傘を持って行くように提案した。

「なんであたしが」と条件反射のように否定したあたしに、
 加蓮は「私はこれから仕事があるから」と告げ、部屋を出ていった。
 
 残されたのは、あたしとちひろさんと真っ黒な傘。
 事務員のちひろさんに席を空けさせるわけにもいかないから、
 その日はあたしが傘を届けに行くことになった。

 以来、なぜかはよくわからないけど、
 プロデューサーさんに傘を届けに行くのはあたしの役目になっている。


「奈緒?プロデューサー待ってるかもよ?」


 でも、今日は違う。この後、加蓮に仕事の予定は入っていないし、
 あたしには、今やらなければならないことがある。
 だから加蓮。今日迎えに行くのは加蓮で、
 帰ってきてから、みんなにからかわれるのも加蓮、お前だ。
 あたしはいかにも残念そうに、

「いやぁー、ほんとは持っていってあげたいんだけどさ。あたしまだ紙終わってないしさー。
 加蓮はもう書き終わってるみたいだし、この後の予定もなかったよな?
 たまには加蓮が持っていってあげたらどうだ?」

 会心の演技をするも

「私はいいかな。いつも傘を届けるのは奈緒の役目だったし、プロデューサーも奈緒を待っていると思うよ。
 それに奈緒がこのまま事務所に残ってても、その紙はずっと白いままだと思うな。
 だから気分転換も兼ねて奈緒が行っておいでよ」
 
 加蓮の心には響かなかったらしい。
 可愛いを通り越し、少し憎たらしくも見えるような表情で加蓮はくすりと笑っている。

 やっぱり、一筋縄ではいかない。おかしい。あたしの方が年上のはずなのに……。
 あたしはもう一度、今度は大げさにため息をはいて、

「はいはい。わかりました。いけばいいんだろ!いけば!」


 外は幸い、雨は小降りで、風も吹いていなかった。けど寒い。尋常じゃなく寒かった。

 加蓮のやつ、自分が寒い思いをしたくないから、上手いこと言って、
 あたしに行かせたんじゃないだろうな。

 親友のことを勘繰りながら、左手をポケットへ避難させると固い感触。
 取り出してみるとウォークマンが入れっぱなしになっていて、
 ちょうどいいやとあたしはイヤホンを装着する。気持ちばかり、暖かくなった気がした。

 電源をつけ、ランダム再生のボタンを押すと、少し前に流行ったアニメのED。
 ドラムが鳴り始め、雨の音はかき消された。
 キーボードとギターが加わり、物語が始まりへと進んでいく。

 あっ、この曲……。
 アニメの内容を思い返して、あたしは音量を少し下げた。

 あたしと同じ、高校生の女の子がゆっくりと「好き」を歌い始めた。

 アニメが好きだ。
 クラスでそういうのを好きな子がいて、勧められて見たらどっぷりハマった。
 
 最初は一つだけだったけど、どんどん数は増えていき、
 今では、ほのぼの系から非日常系まで、週に何本も追っている。

 アイドルが好きだ。
 秋葉原にアニメのブルーレイを買いに行ったときにスカウトされ、アイドルになった。
 
 デビューしたての頃はレッスンも大変で、逃げ出したい時もあったけど、
 今はとても楽しくアイドルをやれている。
 フリフリの可愛い衣装に、煌びやかなステージ。応援してくれるファンのみんな。
 一つ一つがあたしを輝かせてくれている。

 アイドルのみんなが好きだ。
 凛や加蓮。同じ目標に向かって、一緒に努力し、時には、助け合える素敵な仲間。
 
 しょっちゅうあたしを弄ってはくるけど、みんなといるのはとても楽しい。
 初めてできたすごく大切だと思える自慢の友達。これからもずっと一緒にいたい。

 プロデューサーさんが好きだ。
 あたしをアイドルにスカウトしたプロデューサー。
 街でスカウトされたときは、とても現実には思えなくて、アニメの1話のようだった。
 嫌がるあたしに必死で頭を下げ続けて、その熱意に負けた。

 最初は照れくさかったり、緊張したりで、あんまり話も出来なかったけど、
 今ではお互い軽口をたたき合える仲になった。
 
 凛や加蓮と同じようにあたしのことを可愛いとか言ってからかってくる時もあるけど、
 あたしたちアイドルのことを一番に考えてくれていて、
 少なくともあたしにとっては一番のプロデューサーだ。

 好き。世界にはこの言葉が溢れている。
 
 今朝も加蓮は「どこどこのポテトが一番好きかな。奈緒買ってきてー」と言っていたし、
 今、あたしが聞いている曲も好きを歌っている。
 世界は好きで溢れている。それはとても素敵な世界だと思う。でも、

 だからこそと言うべきなのか、さっき、好きを尋ねられた時、あたしは好きが答えられなかった。

 好きな物、アニメ、アイドルのみんな。ここまでは答えられた。けど、次の、

 好きな人とデートを行くならどこ?という質問を前に、あたしの頭は真っ白になってしまった。

 好きな人……。凛や加蓮、プロデューサーさんの顔が真っ先に浮かんで。
 
 でもそれは、まるで涙を浮かべながら別の世界へと旅立つヒロインのように、
 ゆっくりと消えていってしまったんだ。

 普段は絶対口にしないけど、みんなのことは好きだ。それは間違いない。けど、
 たくさんある好きの中で、みんな同じ好きなのか、それとも別の好きなのか。

 それがあたしにはわからない。


 駅前はたくさんの人で溢れていた。
 寒さを嘆くサラリーマンに、お互いの熱で寒さを乗り越えようとする恋人たち。
 みんながそれぞれの冬を過ごしていた。

 一人一人の顔をぼんやりと確認しながら、駅の構内に入り、改札口まで向かった。
 改札口付近の大きな時計の下では、あたしと同じような、時間を持て余した人がたくさんいたけど、
 プロデューサーさんの姿は見えなかった。

 まぁ、10分も待てばくるだろう。あたしはウォークマンを取り出し、音量を上げた。
 さっきとは別のバンドが、さっきの曲と同じような好きを歌っていた。
 飛ばそうかと思ったけど、めんどくさくなってそのまま聞くことにした。

 2、3ほど曲が変わると、見慣れた、冴えない顔が人波の中に現れた。
 あたしは音楽を切り、イヤホンを巻いて、ポケットにしまう。

「遅いよプロデューサーさん」
「わるいわるい、わざわざありがとな」

 特に悪いとは思っていなさそうな、軽い返事のプロデューサーさんは、今日もお疲れのようだった。
 この時期忙しいのは、しょうがないことなのだろうけど。


「それにしても寒いな」

 横でプロデューサーさんが白い息を吐いた。
 スーツも傘も街も空も、みんな暗い色をしているから、いっそう目立って、
 いっそう寒くなった。身をぶるっとすくめてから、あたしも白い息を吐いて、

「ほんとだよなぁ。この前までも寒かったけど、12月に入ってからは本格的というか。
 早く事務所に帰って、温かいものでも飲みたいよ」
「まったくだ」

 プロデューサーさんとの帰り道が好きだ。
 
 みんながいる前では、あたしをからかう立場に回ることが多いプロデューサーさんも、あたしと二人だけの時は違った。
 どうでもいいようなアニメの話から、アイドルをやることへの不安や悩みまで、
 どんな話でも、しっかりとあたしの話を聞いてくれた。
 
 事務所に戻ったら、毎回毎回、他のみんなにからかわれるし、
 あたしも大きな声で否定したり、プロデューサーさんに八つ当たりしたりするけど、
 それでもあたしは、この時間が好きだった。
 この時間はあたしとプロデューサーさん、お互いが素直になれる気がしていた。

 だからなのかはよくわからないけど、多分、
 
 プロデューサーさんなら笑わずに聞いてくれるだろう、
 あわよくば答えを教えてくれるかもしれない、
 
 とあたしは思ったんだと思う。ほんとになんとなく。ただのきまぐれで、
 あたしは、横で白い息を吐いているプロデューサーさんに好きを尋ねてみた。



「……すまん奈緒、もう一回言ってくれ」
「だーかーらー!……好きってどういうことかわかるか?プロデューサーさん」
「奈緒大丈夫か?寒さで風邪ひいちゃったか?」

「あぁ!もう!本気だよ!今日トライアドのお仕事で好きな人について聞かれて、
 わかんなかったから、あんたに聞いてんだよ!なぁ、好きってどういう気持ちなんだよ。
 友達としての好きとか恋人の好きとかわけわかんないよ」
 
 大きく目を見開いてあたしを見ていたプロデューサーさんも、
 あたしが話を続けると、どんどん頷くようになっていって、
 あたしが思っていたことを全てぶちまけ終えたときには、すっかり考え込んでしまった。


「奈緒。この後、時間あるか」

 右手だけで器用に手帳をめくりながら、プロデューサーさんが聞いた。

「さっき言ったトライアド特集の紙に答えないといけないけど、
 それもそんなに急ぎじゃないらしいから、大丈夫だよ」

「そうか。なら行くか」

 プロデューサーさんは手帳を閉じると、立ち止まって、180度綺麗にターン。
 そのまま駅の方へと戻り始めた。

「お、おい!待てって!行くって、一体どこに行くんだよ」

 突然のことに慌てるあたしにプロデューサーさんは笑いながら、こう言った。

「そりゃ、好きを探しに行くんだよ」

「大人と学生1枚ずつで」
「はい。3500円なります」

 受付のお姉さんが笑顔でプロデューサーさんに答える。そして、こっちを見て、また笑顔。
 あたしも愛想笑いを返す。

 ちょっと年の差のカップルか、微笑ましい兄妹に見えているのだろうか。
 それにしても、どうしてこんなことに……。


「ほら奈緒」
 
 チケットを買い終えたプロデューサーさんが、その内の一枚をぴらぴらとあたしの方へと差し出す。
 うん。ちゃんと学生の方のチケットだ。って、

「いやいやいや」
「ん?映画嫌いか?」
「違うよ?映画は嫌いじゃない。確かにあたしは急ぎの用事とかないけどさ?
 あんた社会人だろ?こんな昼間から映画とか見ていていいのかよ」

「今まで無遅刻無欠勤だったし、たまにはいいんじゃないか? 奈緒と同じで俺も急ぎの仕事入ってないし。
 それに早くこの映画見ないと上映期間終わっちゃうからさ」

 はぁ……。帰ってちひろさんに叱られてもしんないぞ。

 あたしがすっかりあきれているとプロデューサーさんが楽しそうに聞いてくる。

「奈緒」
「なんだ?」
「ポップコーン。塩とキャラメルあるけど?」
「塩!」
「飲み物は?」
「コーラ!!」

 いいや。深く考えるのはやめておこう。どうせ叱られるのはプロデューサーさんだし。

「あ、チュロス!プロデューサーさん!チュロスもお願い!」

 エンドロールが流れ始めた。何人かのお客さんは席を立ち、移動をし始めた。
 
 あたしは一応、エンドロールの終わりまで見る派なので、
 ポップコーンをかじりながら、曲が終わるのを待つ。
 横を見るとプロデューサーさんもあたしと同じタイプのようで、少しほっとした。

 それにしても面白かった。自分のタイミングでゆっくり見れるから、
 映画館ではなく、家で見ることの方が好きなあたしだけど、
 最近すごく話題になっている映画だけあり、とてもひきこまれた。
 イヤホンをせずとも大音量で見られるというのも素晴らしいたまには映画館で見るのも悪くない。

「奈緒どうだった?」

 エンドロールを見届けると、照明が点いた。
 感想を言い合っている他のお客さん達と同じように、プロデューサーさんもあたしに感想を求めた。



「いやー、すごく面白かったよ!まず映像が綺麗だった!自然の風景とかも綺麗だったけどさ、
 人の動きとかそういった描写にもすごい力が入ってて!!それに曲も!いい場面でかかってくるんだよなぁ……」

 興奮が収まり切らないまま、あたしが一気にまくし立てると、
 プロデューサーさんは首を横に振って、

「そうじゃなくて」
「うん?」
「好きの手がかりは見つかったか?」

 あたしは絶句した。

「あー、うん……。その……」

 言葉は浮かばず、恥ずかしさだけがどんどん出てくるあたしを見て、
 プロデューサーさんは「まぁ、仕方ないか」と苦笑した。


「なーお、おかえり。プロデューサーも」

 すっかり帰るのが遅くなってしまった事務所では加蓮と凛があたしを待っていた。
 聞けば、あたしが迎えに行ってすぐに凛が事務所にきたとのこと。
 ポテトの袋が置いてあるから、大方、ポテトを食べたいと言った加蓮に凛が折れて、
 二人で買いに行き、その後、事務所で雑談といったところだろう。

 プロデューサーさんは「少しやることがあるから」とデスクに向かい、
 あたしは加蓮達のおしゃべりに混ざっていく。 

「それで?」

 あたしが映画を見ていた間に起こった、加蓮と凛の、ポテトを巡る冒険の話がひと段落つくと、加蓮がにっこり。
 あたしも合わせて、にっこりしておく。ほんとは全然笑えないけど。


「二人はどこで遊んできたのかな?」
「べ、べつに。ただ迎えに行っただけだって」
「嘘。大体、迎えに行くだけで2時間もかかるわけないでしょ?ね?凛?」
「そうだね。プロデューサー、今大丈夫?」

 凛が呼ぶとデスクの方からプロデューサーさんが「なんだ?」と顔をだす。

「奈緒と何してたの?」
「映画見てたぞ」
「映画!?ふーん……。奈緒?私たちに何か言うことあるよね?」
「ご、ごめんなさい」

 こうなることはわかっていた。
 顔をしかめた凛を見ることが出来なくて、あたしは視線をずらした。

「それにしてもなんで二人で映画行ったの?私と凛も誘ってくれてよかったんじゃない?」

「そ、それはほら!」
「「奈緒は黙ってて」」
「……はい」
 
 あたしに聞いてもちゃんとした答えが返ってこないとわかっているからか、
 凛と加蓮はプロデューサーさんに狙いを定める。

「それはだな……」

 プロデューサーさんは人差し指で頬をかきながら、困ったように、こっちをちらっと見た。

 いやいやいや。おいおい。言うのか?あれはあんたにだから話せたのであって……。
 それを凛と加蓮に聞かれてしまったら、年上の威厳どころか、
 これから一生、ずっと茹でタコとして過ごす羽目になってしまう。

 あたしの必死のアイコンタクトが伝わったのか、
 プロデューサーさんはもう一度あたしの方をちらり。わかったという風に頷いて、
 
「俺が奈緒と映画見たかったんだ」

 へ?

「それはアイドルとプロデューサーとしてどうなのかな。プロデューサー」

 鋭い目つきで、なぜかプロデューサーさんではなく、あたしの方を見ている凛と
 
「え?それってどういうことなの?プロデューサーもしかして奈緒のことが好きなの?」

 目を輝かせながらプロデューサーさんを問い詰める加蓮。

「なっ、なっ、な」

 そしてタコになってしまったあたし。

 ……わかってない。わかってないぞ!何がわかっただ!全然わかってない!
 ごまかすにしても、もっと別の方法でごまかすことが出来たはずだぞ!プロデューサーさん!!

 顔を真っ赤にして口を膨らませているあたしに、プロデューサーさんは首をかしげながら

「そりゃ好きだよ?なおなお可愛いし。まぁ、凛と加蓮のことも同じくらい好きだけどな」

 あ、凛の目が元に戻った。……って

「なおなお言うなー!」

「あー今日も楽しかった」

 加蓮が満足そうに言う。ほんと毎日楽しそうで羨ましい。


 いや?あたしも今日は途中までは楽しかったよ?
 映画を見て、そのまま家に帰ればよかった。
 あぁどうか神様。来世ではあたしをツッコミではなくボケで。
 弄る側の人間でどうかよろしくお願いします。


「プロデューサー私達帰るね」
「おう。大丈夫か?車で送っていこうか?」

 よく通る凛の声に、机の方から少し元気のなさそうなプロデューサーさんの声が返ってくる。

 平日の昼から映画行ってたら、あたしがちひろさんの立場でも怒るよ。
「どうしてわたしも誘ってくれなかったんですか?」って怒り方は、ちょっと違うと思うけど。

 でも、あたしのせいでちひろさんの仕事も背負うはめになったのは、
 少し申し訳ないというか、なんというか……。映画も見せてもらったし、
 せめて今日くらいはありがとうって言うべきじゃないのか、あたし。


「雨もだいぶ弱まってきたし、大丈夫。じゃあねプロデューサー。お疲れさま。お仕事頑張ってね」
「おつかれー」
「……おつかれさま。……です」
「おう、おつかれさん」

 結局、思っただけで言えなかった。こういうところ直していかないとなぁ。
 後でライン送っておくか。って寒っ。

 お風呂を終え、自分の部屋に上がる。
 
 お母さんにばれないように、ポテチと飲み物もくすねてきた。
 日付が変わるまでの約2時間。これは誰にも邪魔されないあたしだけの時間。
 さて、今日はどのアニメを消化していこうか。

 意気込みながら部屋に入るとスマホが緑色に光っていて、
 プロデューサーさんにラインを送ったことを思い出した。

「今日はありがとう。あとごめんな。あたしのせいでちひろさんに叱られて」
「別に気にしてないよ。なおなおこそ凛と加蓮にいじられて大変そうだったじゃないか」

 ……まったくこの人は。

 あたしは口を膨らませ「なおなお言うな!」と文字を打ち込み、そのままベッドへダイブ。
 布団にくるまりながら、スマホをタップしてアニメを物色し始める。

 やがて、本日のラインナップが決まったころに通知がなった。
 まさかあの人まだ仕事してるんじゃないだろうな?

「ごめんごめん。ところで明日の仕事終わり空いてるか?」

 特に疑問に思わず、「空いてるよ」と返信する。それから、さっきより短い間隔で通知。

「ご飯いこう。何食べたいか考えといてくれ」
「うん。了解。他に誰くるんだ?」
「ん?俺と奈緒だけだよ。他に誰か誘うか?」

 はい?
 固まる思考。かちかちと動きだす時計の針。

 まさかプロデューサーさんってあたしのこと……?

 少しして、頭に浮かんでいる疑惑をぶんぶんと追い払う。

 ないない。大体、クール部門きっての天然ジゴロって言われてるような人だぞ?
 これはほら!凛とか加蓮がよくやられてるいつものやつだ!

 もう一度ラインの文を見る。やっぱり「俺と奈緒だけ」って書かれてる。
 そして目がいった既読の文字。
 プロデューサーさんから連絡が来て、10分が過ぎようとしていた。

 あたしめっちゃ悩んでるって思われてないか?

 起き上がり。ベッドに座り直して、おでこに手のひらを当てた。
 どっからどう見ても悩んでいる人だった。

 プロデューサーさんとは成り行きで二人になることはあった。今日の映画もそうだ。
 でも前日から約束をして二人。ってことは今までなかった。
 
 食事の話が出たときは凛や加蓮がいたし、
 事務所でアニメ鑑賞会を開催するときは比奈さんやキュート部門から菜々さんが来ていた。
 だから、二人での食事のお誘いにあたしは本当に悩んだ。

 やっぱり、凛と加蓮呼んだ方が……。二人きりだと緊張しちゃうかもしれないし。
 
 凛や加蓮を呼ぼう、と文字を打ち始めて、すぐに消した。
 お誘いが来てから30分経っていた。


 宛名に書かれた名前から、
「好きを探しにいく」って言ったときのプロデューサーさんの顔が浮かんだ。

 いつもは頼りなさそうなのに、大切なときはしっかり決めてくる、
 あたしの一番のプロデューサーさん。

 あたしをアイドルにスカウトしたとき。あたしを始めてステージに送りだしたとき。
 ライブ終わりに、良かったよと迎えてくれるとき。
 
 いつもあたしに綺麗な魔法をかけてくれた。
 もしかしたら今回も……。


 結局、十文字もいかない言葉を打つのに、あたしは一時間以上を費やしてしまい、
 その日はろくにアニメも見れなかった。

「奈緒ちょっといいか」
 
 今年のクリスマスの計画を話し終え、さてそろそろ帰ろうか、って
 凛と加蓮と帰りの支度をしていると、プロデューサーさんがあたしに声をかけた。

 きた。まったく、全然素振り見せないから、
 忘れているんじゃないかって少し心配だったんだぞ。
 
 あたしから、聞きにいけばよかったけど、横には凛と加蓮がいるし……。
 ほら、今も訝しそうに、こっちを見ている。

「なんだ?」
「実は頼みたいことがあってな」

 あたしはちらっと、二人を伺う。

「プロデューサーそれ時間かかりそう?」

 凛が聞く。

「あー、結構かかるかもな」
「そうか。……なら、あたしは残るからさ。凛と加蓮は先に帰ってて」

 プロデューサーが言い、あたしもそれに乗っかった。

「そっか。じゃあ仕方ないね。奈緒、プロデューサー、また明日ね」

 加蓮が言って、二人は事務所を後にする。なんとかうまくいったみたいだ。

「それで?あたしは何をすればいいんだ」

 ほんとは頼みごとがないのは知ってたけど、あえて、あたしは聞いた。プロデューサーさんは少し考えて

「コーヒーでも入れてもらおうかな。二人分。全力で仕事終わらせるから、そこでもう少し待っててくれ」
「はいはい。早く終わらせてくれよ。コーヒーの飲みすぎでお腹一杯になるのも嫌だからさ」
「……善処する」

 結局、あたしがコーヒーを飲み終えるより先に、プロデューサーさんの仕事が片付いて、
 暗くなる前にあたしたちは事務所を出た。昨日と違って晴れているからか、空気が気持ちいい。

「奈緒、お腹の具合は?」
「コーヒーもそんなに飲まなかったし大丈夫だよ」

 プロデューサーさんはくすりと笑って、

「好き嫌いはあるか」
「うーん。特にないかな。よっぽど変なものでなければ大丈夫」
「そうか。なら、ラーメンでも食べにいくか」

 ……。なんというか……その……。信じていた仲間に裏切られた気分だ。

「それ、あたしならいいけど凛や加蓮には絶対するなよ」
「わかってるよ」

 その「わかってるよ」は、あたしのことを気の置けない間柄だと思ってくれているのか、どうなのか。
 あたしは大げさにため息をはいた。

 元気の良い、勢いのある声に迎えられ、あたしたちは券売機に並ぶ。
 プロデューサーさんはとんこつ大盛とご飯。あたしは少し迷って、塩にした。

 まさかのカウンターか?と思ったが、プロデューサーさんにも、
 あたしを女の子扱いする心がかろうじて残っていたらしく、テーブル席に入った。
 
 しばらく、寒い寒いと世の中を嘆きあっていると、ラーメンが運ばれてきて、
 今では、この世に生まれきてよかったと二人とも幸せを噛みしめている。

「でもさぁ、自分で言うのもなんだけど、女の子とご飯でラーメンってどうなんだ?
 ラーメンは好きだから、別に問題があるわけじゃないけどさ。
 てっきりもっとお洒落な店に連れて行ってくれるものだと期待してたんだぞ」

 この前漫画に書いてあった、美味しいラーメンの食べ方を参考にして、
 レンゲの中でミニラーメンを作りながらあたしは聞いた。

 プロデューサーさんはスープを一口飲んでから、

「そら、大人の女性相手だったら、お洒落な店連れてくけどな?奈緒は高校生だろ?
 高校生のカップルはラーメン屋デートとか当たり前だぞ?」

「そういうものなのか?」
「そういうものだ」


 プロデューサーさんは頷いて、またスープを一口。どうやらそういうものらしい。
 
 というか、昨日と今日のこれはデートのシミュレーションみたいなものだったのか。
 なんか想像上のデートと比べて全然どきどきしないぞ。あたしはミニラーメンを一気に放り込んで、

「ほんとはプロデューサーさんがラーメン食べたかったわけじゃなくて?」
「……そんなことはないぞ」
「おい!なら、今の間はなんなんだよ!」
「……早く食べないとラーメン冷めるぞ」
「いやいやいや。ごまかし方、下手くそか!!」



「それでなおなおよ」

 プロデューサーさんが聞いた。
 事務所を出た時よりも気温は下がっているはずなのに、寒さは感じなかった。ラーメンパワー恐るべし。

「なんだ」
「なんかわかったか?」
「うーん」


 映画にラーメン屋。ここ2日間、
 一般的?な高校生がするデートまがいなことをプロデューサーさんとしている。

 2日前と比べて何か変わったか?と考えてみても、特になにも変わっていない気がした。
 あたしの中での好きは、不透明なままだった。


「ここのラーメンはとんこつより塩の方が美味しいってことかな」
「やっぱり?俺もそう思った。ってそうじゃなくて」

 あたしが言った冗談に「これは先が長そうだ」とプロデューサーさんは苦笑した。

 雨が嫌いだ。

 服も髪も濡れて乾かさないといけなくなる。
 服は乾かすだけでいいけれど、髪は女の子の命というだけあって乾かすだけではいけない。
 とりわけあたしは、他の人より髪の量も多く、クセも強いので、
 セットしなおすのに時間がかかってしまう。それがとてもめんどくさい。
 だから雨の日は極力外には出ず、暖かい部屋の中で、談笑するなり、アニメ鑑賞していたい。なのに、

「どうしてあんたはいつも傘を忘れるんだよぉ!」

 昨日はあんなにいい天気だったのに、今日は一転、雨模様で。
 空はどんより、今にも降りそうな灰色で。空気は、冬にしては嫌に暖かかった。

 なんとか雨に遭わず、たどり着いた事務所で、みんなとクリスマス会のことを再び確認しながら、
 あたしは窓の外に降るなよ!降るなよ!って祈りを捧げた。

 でも結局、あたしの祈りは神様には届かなくて……。ぽつぽつと降り出した雨。
 にやにやし始める加蓮。そこからの展開は早かった。


 イルミネーションが施され、すっかりクリスマスモードになった街は天候のせいか、
 人のいない遊園地みたいで、少し不気味に見えた。
 
 足を速めて、改札口まで向かうと、今日はプロデューサーさんが先に待っていた。ほっと一息ついてから、

「どうしてあんたはいつも傘を忘れるんだよぉ!」

 プロデューサーさんは「ごめんごめん」といつも通り調子よく謝った後、
 あたしから受け取った傘を、ステッキのように軽く地面で鳴らして、

「さて今日はどこに行きましょうかお嬢さん」

 いや。あんた仕事いいのかよ……。









 連れてこられたのは事務所からほんの少し離れた通りの、裏側にあった喫茶店。
 毎日通っている道の裏側にまさかこんな店があったとは。全然気づかなかった。
 
 新しくできたのかとプロデューサーさんに聞いたら、ずっと前からあったとのこと。
 店内ではジャムや洋菓子の販売も行っていて、おばあさんも優しそうな人だった。
 今度、みんなを連れてきてやろっと。きっと気に入るに違いない。

「いやぁ。たまたま散歩してたら、この店見つけてな。
 ほんとは毎日でも通いたいんだが、仕事あるから、こういう時しかこれないんだ」

 プロデューサーさんはサンドイッチにかぶりつく。ほんとおいしそうに食べるから、
 あたしも食べたくなったけど、さすがに「ひとくち、ちょうだい」とは言えなかった。
 ラーメンは大丈夫でもサンドイッチは無理だ。レベルが高すぎる。
 あたしは腹いせに、ちょっといじわるしたくなって

「でもさ、普通の女子高生がこんなちゃんとした喫茶店でコーヒー飲むか?
 スタバとかなら行くけどさ」

 プロデューサーさんは、サンドイッチをお皿に戻して、

「奈緒が昨日、大人扱いされたそうにしてたからさ?だから今日は大人っぽく、
 喫茶店に連れていったら喜ぶかなと思ってな」

 ほんとは自分が飲みたかったんじゃないのか?と追撃しようかと思ったけど、
 大人なあたしは黙ってあげることにした。
 プロデューサーさんは、訝しそうにしているあたしを見て、

「ほら、事務所でのコーヒーとは味が全然違うだろ」

 とごまかし、カップを傾けた。

 コーヒーにミルクも砂糖も入れてしまう大人なあたしは、
 本当はコーヒーの味の違いなんてわからないけど、
 プロデューサーさんを真似て、コーヒーを飲んで、

「まぁそうだな」とごまかした。

 優しい味が口の中に広がって、まるで……。……。
 ……うん。やっぱりわからない。


「それで奈緒よ。わかってきたか?」
「……事務所と喫茶店の味の違いなら」

 お決まりの質問にお約束で答える。プロデューサーさんは、

「まぁ難しいよな。こういう話はさ」

 と少し真面目モードに。椅子とピッタリくっついていた背中をゆっくりと上げ、
 あたしの方へと身を乗り出した。

「プロデューサーさんはそういった経験はないのか?」

 そういえばプロデューサーさんの恋バナきいたことないな、と唐突に思った。

「俺か?うーん。普通に恋愛してきたよ。今は全くだけどな」
「相手のことは好きだったのか?」

 プロデューサーさんは、娘を見るお父さんのような優しい表情を浮かべて、

「好きじゃないと付き合わないさ。でも、奈緒みたいにそんなに深く考えてなかったけどな。
 この人いいな。って感じで、お付き合いしてたし」
「やっぱりそういうもんなのかなぁ」

 あたしはコーヒーを一口飲んで、考えを巡らす。
 
 難しいなぁ。好きも、コーヒーも。
 甘い!苦い!それだけだったら、もっとわかりやすかったのに。



「奈緒もさ、深く考えるのはやめたらどうだ?ほら、恋は考えるものではなくて、落ちるものだっていうだろ」

 プロデューサーさんは自分の頭を人差し指でつついた。

「考えるのと感じるのは違うんだよ。理性か本能か、みたいな 話だな。
 恋は理性じゃなくて本能的なものだから、考えても答えは出ないんじゃないか?」

 理性か本能……。うん。わからない。
 
 すっかり考えこんでしまったあたしを見て、
 プロデューサーさんは「考えるなって言われた矢先に考えてるぞ」と笑った。

「前言撤回。やっぱり、奈緒は考え続けるのがいいかもしれないな。
 まだ若いし、俺の言ってることが正しいとは限らないもんな」

 続けて、

「それに奈緒が考えるのやめてしまったら、俺もサボりづらくなるしな」

 と無責任に笑った。


 あたしの好きを探す冒険は続いた。
 プロデューサーさんは色々な場所にあたしを連れて行ってくれた。

 昨日はファミレスの横の席に座っていたカップル。
 今日はイタリアンの店でワインを飲む恋人達。
 プロデューサーさんが連れていく場所で、あたしはいろいろな好きを観察した。

 でもそれはあたしにとって、どこか、非現実的なものだった。
 どれも好きに間違いはないのだろうけど、あたしが探している好きではない気がした。

 あたしはそれらを見る度に、カルピスとコーラを混ぜると案外いけるとか、
 どうでもいいことを口にした。そのたびにプロデューサーさんは優しい笑みを浮かべた。



 あれ?ふと、そう思った。
 あたしの好きを探す冒険が始まって1週間が過ぎた夜のことだった。

 あたしは自分の部屋で、明日はどこに連れていってくれるのかな?
 美味しいところならどこでもいいけど……。
 なんて考えながら、プロデューサーさんの連絡を待って過ごしていた。

 そしたら、そうだ!クリスマスのプレゼント交換!
 交換用のプレゼントまだ買っていなかった!明日、どこかに連れていってもらおう!
 と名案が浮かんできて、早速

「明日はプレゼントを買いにいきたい。どこか連れてってくれ」

 とプロデューサーさんに連絡を送った。

 プロデューサーさんは今日も遅くまで仕事をしているのか、
 なかなかラインに既読が付かなくて。

 あの人、一体いつ休んでいるんだろうと考えていると、
 お母さんが「お風呂沸いたよ」とあたしを呼んで、お風呂に入った。

 お風呂を出てすぐに、乾ききっていない髪にバスタオルを巻きつけて、あたしは自分の部屋に戻った。
 
 プロデューサーさんから返事来ているかなとスマホを確認するも、返事は来ていなかった。
 既読も付いていなかった。

 なーんだ。まだ見ていないのか。残念。と息を吐いて、

 あれ?と思った。

 返信が来ていないことにではなく、
 返信が来ているかもしれない、と急いでお風呂から上がった自分に気づいて、あれ?と思った。


 あたし、プロデューサーさんからラインがくることを楽しみにしていた?
 連絡のやりとりが楽しい。ではなく、連絡がくること自体が楽しみになっている?

 相手の返事を気にし始めたら、恋の初期症状。
 アニメのキャラか、事務所の誰かが言っていた言葉を思いだした。

 あたし、まさかプロデューサーさんのこと……?少し考えて、
 ……ないない!何回か一緒に食事しただけで恋に落ちるなんてありえないだろ!

 確かに、プロデューサーさんのことは好きだけども、そういう好きじゃないし、
 そもそも、そういう好きがあたしにはわからないわけで。

 でも、あたしがプレゼントを買うのに、わざわざプロデューサーさんを誘う必要はなかったんじゃ……。

 そこからは底なし沼にはまったようだった。
 
 髪をちゃんと乾かしているときも、パソコンでアニメを見ていても、
 気づけばプロデューサーさんが浮かんできて……。考えまいとすればするほど、深くに沈んでいった。

 考え事から逃れるように、あたしはベッドに飛び込んだ。
 目をつぶり、羊を数えてみたけど、頭は冴える一方で、なかなか眠りにつけなかった。

「奈緒、イブは15時に事務所に集合ね。プレゼント交換用のプレゼントも忘れないでね」

 3日後に迫っていたクリスマスパーティーの最終確認を加蓮が進める。
 
 他のアイドルのみんなは「プレゼント買った?」とか、「まだなら一緒に買いに行こうよ」
 とか話していて、事務所はすっかりクリスマス気分になっていた。

 あたしも他のみんなに当てられて、
 クリスマス……。プレゼント買いに行かなきゃ。何にしようかな。
 って、クリスマスのことを少し考えてみるけど、
 すぐにプロデューサーさんの顔がプレゼントの端から、ひょこっと表れて、どんどん大きくなっていく。


 これはまずいな。我ながら思う。
 昨日から、ずっとプロデューサーさんのことを考えてしまっている。

 相手のことをずっと考えるのは好きって証拠。
 これもどっかで誰かが言っていた。

 プロデューサーさんの連絡を楽しみに待っていて、プロデューサーさんのことをずっと考えているあたしは、
 客観的に見て、プロデューサーさんに恋をしている。

 じゃあ主観的には?

 あたし自身はプロデューサーさんのこと、どう思っているんだろう?

 プロデューサーさんのことは好きだ。でも、まだわからない。
 
 恋愛としての好きなのか、友情としての好きなのか。答えが出ない。

 ここ数日、プロデューサーさんとたくさんの好きを見てきたけど、あたしの好きが見つからない。

 これが好きってことなのか。あたし今、この人に恋をしているんだ。
 そう思える、確信のような、決定的なものが欲しかった。



「奈緒?話聞いてた?」

 ぼんやりとしていたあたしに、加蓮が気づいて、話を振る。

「ごめん。全く聞いていなかった」

 全く話に集中できていなかったあたしが、申し訳ない気持ちで素直に謝ると、加蓮は、

「奈緒、今朝から元気ないよね」

 あたしの横に座り、あたしの顔を心配そうに覗き込んだ。

「大丈夫?何か悩み事でもあるの?私でよかったら聞くよ?」

 自慢の親友は、そう言うと、あたしの手を握った。
 握られた手は、どこか力強くて、あたたかかった。
 
 他のみんなは空気を読んでか、あたしたち二人の世界には入ってこなかった。
 一歩離れたところで、「奈緒ちゃんが元気ないなんて珍しいね」
 とあたしのことを心配してくれている。
 

 いっそ相談してしまおうか。
 あたしは救いを求めるように、加蓮を見つめた。加蓮はあたしに優しい微笑みを返した。

 あたしだけでは見つからなかった答えも加蓮となら見つけられるかもしれない。
 普段なら「奈緒、なに言ってるの?」って笑い話にされそうだけど、
 あたしが真剣に話せば、加蓮も真剣に聞いてくれるはずだ。

 プロデューサーさんのことが気になってる。
 でも、これが恋なのかわからなくて悩んでるって相談して。
 そしたら加蓮は、「それは恋だよ」ってあたしのことを後押ししてくれて。
 
 プロデューサーさんにアタックする作戦を、ポテトを食べながら、
 一緒に考えたりするようになるのかもしれない。

 でも、結局、あたしは何も加蓮に言えなかった。

 恥ずかしかった。
 
 あたしがプロデューサーさんのことを好きかもしれないって、加蓮に伝えるのが。

 怖かった。
 
 加蓮もプロデューサーさんのことを好きだったとしたら?と考えると。

 わからなかった。
 
 自分が本当に好きかどうかもわかっていないのに、
 プロデューサーさんのことを好きって、みんなに宣言していいのかが。

「実はさ……。昨日、アニメにのめり込んじゃって夜更かししたんだ」

 とあたしはおどけて答えた。



「ごめん。今日はちょっとプロデューサーさんに用事あるから」

 事務所でやることもなくなり、帰りにポテト食べに行こう
 と立ち上がった加蓮と凛にあたしは言った。

「終わるまで待つよ」と言った凛に、加蓮はゆっくりと首を横に振って、

「じゃあ今日は私と凛の二人でいくね。奈緒また明日ね」

 昼間から加蓮はずっとあたしに気を使ってくれていた。
 あたしの元気のない原因が寝不足ではないことを、加蓮は見抜いているようだった。
 
 事務所を後にする加蓮に、ありがとうとごめんを言い、
 あたしはプロデューサーさんのことを待った。


「奈緒待ったか?」

 ウォークマンの曲が何回か変わると、プロデューサーさんがデスクの方から姿を見せた。

「そんなに待ってないよ。大丈夫」

 イヤホンをポケットにしまって、あたしはプロデューサーさんの顔を眺めた。
 
 昨日からずっと、あたしの頭の中にいるプロデューサーさん。
 実際に会ったらあたしは好きを確信するんじゃないか、と内心ドキドキしていたけど、

 そんなことはなかった。
 胸も鳴らないし、身体の温度も平常のままだった。

 プロデューサーさんは「俺の顔に何かついてるか?」と自分の顔をぺたぺた触りながら、
 聞いてきて、その慌てる様子があまりにもおかしくて、あたしは笑ってしまった。

「あはははっ。何もついてないよ。プロデューサーさん。さぁ早く買いに行こうぜ」

 うん。やっぱりいつも通り。昨日までと同じ、冗談を言い合える仲のいい関係じゃん。
 さっきまであんなに、恋かも……。って、悩んでたのがバカみたいだ。
 恋の予感は外れちゃったけど、それならそれで意識しなくていいし、気楽でいいや。
 
 拗ねているプロデューサーさんに「ごめんごめん」と謝って、
 あたしは今日もプロデューサーさんと好きを探しに出かけた。


「すっかりクリスマスだな」

 街のイルミネーションを見上げながら、プロデューサーさんが呟いた。
 街中に取り付けられた灯りは、クリスマスとイブの日に、
 もっと大々的にライトアップするらしいけど、今でも十分に明るく、街を彩っていた。
 
 あたしは両手を自分の息で温めながら、

「プロデューサーさんはイブもお仕事か?」
「昼間はな。夜はあいにく過ごす相手もいないし、
 事務所でお前らのパーティーに混ぜてもらうよ」

「あたしたちプレゼント交換する予定だけど、プロデューサーさんも一緒にやるか?」
「残念なことにプレゼントを用意してないんだ」
「買いに戻るか?あたしが買った店。他にも魅力的な物いっぱいあったし」

 ほんとは買いたかったけど、あまりにも大きくて、
 持ち運ぶことを考えると買えなかったクマのぬいぐるみのことを思い出した。


「んー。いいや。プレゼント交換終わって、ケーキ食べるときだけ混ざろうかな」
「それはどうなんだ。大人として」
「……わかった。ケーキくらいは買ってくるよ」
「チョコレート!買ってくるなら、チョコレートケーキにしてくれ。
 かな子が王道の苺のケーキ。愛梨さんがフルーツタルト作ってるから」

 あたしがチョコレートケーキを所望すると、
 プロデューサーさんは「承りました」とふざけて、二人でくすりと笑った。

「奈緒、何かわかったか?」

 駅の改札まであたしを見送ると、いつものようにプロデューサーさんは聞いた。

 あたしは、
 
 ――実は少しわかりそうだったんだ。
 プロデューサーさんのことを好きかもしれない。って、思っちゃって、
 大変だったんだぞ。アニメを見る元気も出ないくらい悩んだんだからな。
 まぁ、結局、違ったんだけど。――

 なんて、言えるはずもなくて、

「プロデューサーさんがチョコレートケーキを買ってきてくれることがわかった」

 今日もひねくれた。

「そっか。じゃあイブに事務所で」
「うん。ケーキ楽しみにしてる」


 電車の中、席に座り、シートに頭を預けると、既に、
 プロデューサーさん、どんなケーキ買ってくるかな、って考えているあたしがいて、
 あれ?と思った。

 どうして?あたし、もうプロデューサーさんの事を考えている。
 さっきまで一緒にいたときは何とも思わなかったのに……。
 だからあたしは、プロデューサーさんに恋をしていない。って、さっき答えを出したのに……。
 
 プロデューサーさんのことじゃなくて、ケーキのことを考えていたと言いわけするも、納得できなくて。

 ウォークマンの音量を下げ続け、最終的に電源を切った。
 目を瞑ったら、プロデューサーさんのことばっかり浮かぶので、車内の人たちを観察することにした。

 仕事疲れのサラリーマンに、あたしと同年代の学生たち。
 
 この人達みんな、自分の好きを持っているんだろうな。
 そう考えると羨ましくなった。持っていない自分が悲しくなった。

 誰か、恋の魔法でも、惚れ薬でもいいから……。
 
 あたしに……。
 


 雪が好き……だった。少なくとも今日までは。

 雪が降ること自体めずらしくて、子供の時は、雪が降るだけで犬のように庭を駆けまわったりもした。
 庭一面、真っ白にならないかなぁと、小さいあたしは雪が降るのを楽しみにしていた。

 でも実際に降ってみると、どうやらあたしの考えが甘かったようで……。

 クリスマスイブ。天気は大雪。
 首都圏の人は雪に慣れていないから、突然の大雪で大パニック!
 ほとんどの交通網が麻痺してしまったとニュースで言っていた。

 世間では、ホワイトクリスマスなんて素敵。って、声もあるらしいが、それは都内にいる人だけの話。
 千葉県民であるあたしは、クリスマスパーティーが開かれる事務所に何とかしていかないとならなかった。

 お昼ごはんを食べ、熱を身体に貯めこみ、雪と寒さに負けないようにと長めのブーツを履いた。
 姿見に映った、ブーツと服の組み合わせが、ちょっと合っていない気もするけど、まぁいいか。

 外は一面、銀世界だった。雪はずいぶん積もっていて、止む様子もなかった。

 あたしはウォークマンを取り出して、曲を聞こうと思ったけど、危なそうだったので、やっぱりやめた。
 ウォークマンをしまい、傘を差して、新世界へと飛び出した。
 透明な傘はすぐに真っ白に染まった。

 30分ほど雪道に苦戦して、最寄り駅についた。
 この雪の中、外に出ることを諦めちゃったのか、人はあまりいなかった。

 構内に入って、暇そうにあくびをしていた駅員さんに復旧の目処を尋ねてみたけど、
 駅員さん自身も詳しくわかっていないようだった。

 わかったのは、あたしの持てる限りの、東京へ行く手段は絶たれてしまったということ。
 一人クリスマスが決定したということ。

 加蓮に「完全に詰み。今日はいけそうにない。来れた人だけで楽しんでくれ」
 
 とラインを打って、あたしは来た道を戻り始めた。

 駅前は、東京ほどじゃないけど、イルミネーションが飾られていて、
 でも、夜じゃないから光ってなくて、どこか寂しく感じられた。

 どうして雪は白いんだろう?
 空にも、イルミネーションにも、道路にも、世界中に雪が溢れていた。

 神様が色を塗り忘れたのかな?
 あたしが神様だったら、もっと暖かい色にして、街中を明るく照らすのに。
 そもそも今日という日に、こんなに降らせないけど。

 部屋に戻って、服を部屋着に着替え、パソコンの電源を入れた。
 一人パーティーだ!と開き直って、アニメ鑑賞会を始めてみたけど、長く続かなかった。

 今頃みんな楽しんでいるのかな?
 完全に手持無沙汰で、ベッドに横たわり、事務所の様子を想像してみた。
 凛や加蓮、みんなの楽しそうな笑顔が浮かんできた。

 あたしも、その場にいたかったな。
 そしたらこんな退屈なクリスマス過ごさなくて済んだのに。
 なんで、今日に限って大雪なんだろう。

 暇をやり過ごそうと、目を瞑った。
 真っ暗な中に、みんなの顔がぼんやりと浮かぶ。

 凛、加蓮、お前らが今食べているチョコレートケーキはな。
 あたしが食べたいってプロデューサーさんに……。

 ……プロデューサーさん。

 3日前、最後に会った時、あたしはプロデューサーさんのことを好きではないと決めたのに。
 
 でも、別れたらすぐに、プロデューサーさんのことを考えてしまって。
 
 またわからなくなってしまって。

 なぁ、プロデューサーさん。
 
 今度会えた時、あたしはまた勘違いだったって、
 
 やっぱりプロデューサーさんのことは好きじゃなかったって思えるのかな。

 それとも……。

「奈緒」

 誰かがあたしを呼んでいる。どこか遠いところから。

「奈緒」

 その声は凛にも、加蓮にも、プロデューサーさんのようにも聞こえて、
 全部違っているようにも聞こえた。

 大体、あいつらは事務所にいるはずだから、ここにいるわけがないだろ。
 って、ここってどこだ?真っ暗で暖かくて……。


「奈緒!」

 身体を揺さぶられる。目を開けると、お母さんが目の前に立っていた。
 寝ぼけているあたしに、お母さんは「サンタさん来てるよ」と言って部屋を出ていった。




 サンタさん?

 時計を見ると時間は19時を過ぎていた。どうやら寝てしまっていたらしい。

 でも、こんな時間にサンタさん?しかもあたしのところに?

 目をこすりながらリビングに入ると、黒いスーツ姿のサンタさん。
 ではなく、プロデューサーさんが、お茶をすすっていた。

 突然のことにあたしは声を荒げて、

「なんであんたここにいるんだよ」

「こら!奈緒!プロデューサーさんでしょ!」とお母さんがあたしを叱る。
「ご、ごめんなさい」

 一呼吸ついたら、さっきより少し落ち着いた。 

「それで、なんでここにいるんだ?プロデューサーさん」
「そりゃ俺はサンタさんだからな」

 プロデューサーさんは嬉しそうに言うと、
 テーブルの上に置いてあった紙袋をあたしに渡した。

「これ?あたしに?」
「うん。奈緒は一年間頑張ってたしな。これはご褒美みたいなものだ」
「開けていいか?」
「ああ」
 
 開けてみると、何種類かのチョコレートケーキが入っていて、
 覚えていてくれたんだと同時に、
 あたしのためにわざわざ買ってきてくれたのかと思うと、嬉しかった。

「お母さん。ちょっと奈緒さんと出かけてきていいですか?」

 あたしが慎重にケーキを冷蔵庫に運んでいると、プロデューサーさんが聞いた。  

「はい。大丈夫ですよ。何なら帰ってこなくても大丈夫です」

 お母さんは笑って、あたしとプロデューサーさんは困り顔になった。

「いえ、ちょっと出かけるだけですから。すぐに帰ってきます」

 プロデューサーさんは真面目に答えた。それはそれでなんとなく複雑だった。

「一体、どこに連れて行ってくれるんだ。プロデューサーさん」

 あたしが聞くと、お母さんが

「奈緒?その格好でお出かけするの?」

 えっ?あっ!
 あ、あたし……。……部屋着のままだった。

「ちょ、ちょっとまってて。いま、今、着替えてくるから」

 あたしは慌てて階段を駆け上がった。


 ずいぶんと今日は女の子らしい服装だな」

 服を着替え、玄関を出ると、プロデューサーさんが物珍しそうにあたしを見た。
 確かに、いつも好んで着る服よりモコモコ成分は多かった。

「べ、べつに。ブーツに合う服を考えたら、こうなっただけだ」
「そうか。似合ってるよ」
「っ……。そ、それで、どこに連れて行ってくれるんだ?」
「駅前が綺麗だったからさ。見に行こうかなって。奈緒、見てないだろ?」

 そう言うとプロデューサーさんは、今日は傘を忘れなかったみたいで、
 大きな黒い傘を広げ、あたしの少し前を歩いていく。
 あたしも傘を差して、プロデューサーさんの後ろをついていく。

 雪は昼間、駅に向かった時よりも勢いが落ちていて、
 あたしの傘もプロデューサーさんの傘もゆっくりと白に染まっていった。

「ところでさ、どうやって、うちまで来たんだ?」

 歩くスピードを上げ、プロデューサーさんの横に並び、
 さっきから気になっていた質問をあたしはぶつけた。
 プロデューサーさんは得意げに、 

「サンタさんだからな。トナカイで来たに決まってるだろう」
「……今トナカイ見えないけど?」
「うちのトナカイは恥ずかしがりなんだ」
「普通、サンタさんはトナカイじゃなくて、そりに乗ってくるもんじゃないのか」
「……そりは途中で壊れてしまってな」

 プロデューサーさんの言いわけがおかしくて、あたしは、くつくつと笑いをこぼした。

「なんかごめんな。わざわざこんなところまで」
「気にするな。可愛いなおなおのためだ」

 プロデューサーさんは用心深く雪道を進んでいく。
 
 あたしは立ち止まって、少し置いてけぼりになって、
 慌てて、その背中を追いかける。

 本当はもう一つ気になっていることがある。

 どうして、あたしの家まで?
 
 わざわざ、電車が止まっているクリスマスの日に。

 ほんとにケーキを届けにきただけ?
 
 それとも、他に……。

 心臓が鳴り始めて、ライブ前のような緊張感が漂った。
 深呼吸して、冬の冷気を身体いっぱいに吸い込んだけど、熱は冷めなかった。


 駅前は、大規模とまではいかないけど、それでも、たくさんの灯りがライトアップされていた。
 
 雪の勢いも弱まったからか、ちらほらとカップルの姿も見え、昼間よりも明るく、あたたかく見えた。

 うん。やっぱり雪は白でいいや。

「見ろよ奈緒、どこもかしこもクリスマスだぞ」

 東京の方が綺麗なはずなのに、
 プロデューサーさんは楽しそうにイルミネーションを見上げている。
 
「そうだなぁ」と返すけれど、あたしは、もはやそれどころじゃなくて。

 

「奈緒?どうした?」
「な、なんでもない」

 どうして、わざわざ会いに来て。そんなに楽しそうに笑ってるんだ。
 こんなの……。いやでも……。勘違いしてしまう。

 

「奈緒」

 一通り、駅前のイルミネーションを1周して、駅の広場に戻ってくると、
 プロデューサーさんが振り返り、あたしの名前を呼んだ。

「これ」

 プロデューサーさんは、スーツの内ポケットからラッピングされた綺麗な小袋を取り出し、あたしに渡した。

「これ……って?」
「クリスマスプレゼントだ」
「あれはダミー。こっちが本命だ」

 袋の上から触ってみると、少し硬い感触。
 指輪?でも、指輪にしては大きすぎる。
  
「開けていいのか?」
「もちろん」

 どきどきしながら、リボンを引っ張り、ゆっくりと袋を開く。

 中には、綺麗な星が入っていた。

「似合うかな?」

 真ん中に星がついた青のブレスレットを着け、あたしは聞く。

「似合ってるよ」

 その一言で自然とあたしは笑顔になる。

「喜んでもらえてよかったよ」

 プロデューサーさんは、ほっと息を吐くと、続けて

「実はな。そのブレスレット、凛と加蓮ともセットなんだ」

 ……うん?

「凛には星の形のイヤリング。加蓮にはネックレスだな。
 二人ともすごく喜んでくれてた。ほんとプロデューサー冥利に尽きるよ」

 あたしが聞いてもいない、聞きたくなかったことを、
 プロデューサーさんは一人でしゃべっている。

 ……わかってない。わかってないぞ!全然!女の子の気持ちをわかってない!

「どうした奈緒?」
「どうもしてない」

 口を膨らませてあたしは答える。

 でも、わかった。あたしの気持ち。

 さっきまでのどきどきや、今のもやもや。
 
 いつからかはわからないけれど、あたしは恋を始めていて。
 気がつけば、この人のことを好きになっていた。

 他の人にとってみれば、ありきたりな話かもしれないけど、
 
 あたしにとっては初めての。
 あたしが必死で探して、やっと見つけた、あたしだけの好きだった。


「さっきまであんなに喜んでいたのに、実は気に入らなかったのか?」
「そんなことはない。その……。ありがと。な。プレゼント。嬉しかった。大切にする」
「そうか。それは良かった。ところで奈緒よ」
 

「何かわかったか?」

 いつもの調子でプロデューサーさんは聞いた。
 けど、あたしにとって今日は特別で。

 今日はクリスマスで、大雪で、事務所のパーティーにも参加できなくて、
 
 でも、プロデューサーさんがチョコレートケーキを家まで持ってきてくれて、
 二人でイルミネーションを見に行って、プレゼントにブレスレットを貰って、
 
 そしてあたしは好きを見つけた。

 
 アニメみたいだ。そう思った。

 主役はあたしとプロデューサーさん。脇役はいない。
 
 イルミネーションと真っ白な雪があたしたちを祝福していて、

 あとはあたしが勇気を出すだけ。
 
 エンディングはかかり始めていて、もしかしたらエンドロールも流れているかもしれない。だけど、




「わかんない」

 これはアニメじゃなくて現実だ。
 これはエンドではなく、あたしにとってはスタートなんだ。それに、
 あたしは主人公をやるより、ヒロインの方が向いていると思うんだ。


「そうか」
 
 第二部の主人公に決まったプロデューサーさんは、大げさに白い息を吐いて。
 でも、あたしには、まんざら嫌でもなさそうに見えて。
 
 だからあたしは「プロデューサーさん!」と大きな声を上げて

「どうした奈緒?」
「これだけは言っておく」


 ほんとはもっと伝えたいことがたくさんある。
 
 それは日ごろの感謝から今日のことまで。
 伝えたいことはいっぱいあるのに、全部伝えられる言葉がない。
 それに、少し恥ずかしいしな……。
 
 だから一つ。シンプルにたった一つ。言葉も気持ちも。

 あたしはたった一つの言葉に、一つの思いを込め、今日という日を祝わった。
 
 とびきりの笑顔で。


「メリークリスマス、プロデューサーさん」




 好きを探して        おしまい

書いていて、すごく苦戦して、
今までの書いたものと比べると、あまり自信がないのですが、一生懸命書くことは書いたので、投稿しました。

感想よろしくお願いします

皆さんコメントありがとうございます。
コメントが励みになります。嬉しいです。

上でも書いた通り、今回、奈緒の魅力を出せているか不安だったのですが、皆さんに可愛いと言ってもらえて安心できました。

よい年越しを過ごせそうです。では、皆さんもよいお年を

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